【艦これ】那珂ちゃんは、うれないアイドル


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1 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/21(木) 17:45:54.59 ID:HCfrBtOx0

昨日の夜中、ふっと那珂ちゃんスレを見かけて
書いてみたく、建ててみました

今回はネタではなくシリアス?にやりたいと思います
字の文を挟んでやってみます
あまり慣れていないのでつたない文だったらすいません

3 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/21(木) 18:01:25.02 ID:HCfrBtOx0

那珂ちゃんは、売れないアイドルです
いつも頑張ってるけど、思ったようにいきません

周りのみんなは、応援してくれるけど
お金がもらえるわけでもないし、本当に応援してくれてるのか、わからない

「私も変わった努力をしようかな」
そう、ぽつりとつぶやきました

「どうかしたの?」
と、川内お姉ちゃんが声をかけてくれました

「あのね、私、アイドルとしてもっといろんな人に見てもらいたいの」

「うちの艦娘だけじゃなくって?」

「うん、だからね、なにかできる事がないかな、って」
そんな、縋るような言い方で話しました

「うーん、そうだ、街中に行ってみたら?」

「街?」

「うん、アイドルなら人に見てもらうのが仕事でしょ、それなら、一般の人にみてもらうとか」
川内おねえちゃんらしい意見でした

「そっか、やってみようかな」

「それなら私は、那珂ちゃんのファン一号ね!」
川内お姉ちゃんは、とっても優しい
言うのは簡単だけど とっても温かい言葉に感じた

わたしは、この鎮守府に居て長いけど、あんまり出撃とかはさせてもらえない
戦艦の人たちや、私よりとっても強い人が居るからだ。
べつに、気にしては居ないけど
提督の役に立ちたいって気持ちも、あるかな

「とにかく、やってみようかな」
私に頑張れることがあるなら、出来る事があるなら、いっぱい、いろんなことをしてみたい

そんな思いつきで、街に出てみることにしました



5 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/21(木) 18:16:33.06 ID:HCfrBtOx0

「どうしようかな…」

とりあえず、街に出てきてみたものの
どうしようか、考えていませんでした

「どこか人が集まりそうな場所がいいかな」

とにかく、それらしいところを探して歩いてみることにしました

ですが、なかなか見つかりませんでした
たまに、路上アイドル、というのを見かけますが
なかなか、それらしいところもみつかりません

結局見つけたのは、人通りはあまりない裏路地でした

人が居ないのがあってか、道が広く感じられるところでした

「とりあえずここでやってみようかな…人、来るかな?」

歌の練習をするつもりで、歌いながら踊りました
見向きする人も居ましたが、なかなか足を止めてくれる人は居ませんでした

「おい!うるさいぞ!」
と、近くに家があったのか、男の人に怒られてしまいました

「ごめんなさい! 場所を変えてやります…」
私が悪いから、しょうがなく場所を変えてやることにしました



「はあ…疲れたなあ」
場所を探すつもりで、歩き回っていたので、疲れてしまいました
時間も、もう夕方でした。

「今日は戻ろうかな…」
と、立ち上がると、ふと目の前に公園が見えました

「気が付かなかった…」
疲れていたのか、目の前に公園があることに気づきませんでした
公園は、場所も広く、人通りもあるのでここにしようと決めました

「明日、ここでやろう」
ですが、もう時間も時間だったので、今日はやめました
はやく鎮守府にもどって、ご飯を食べたい… そう思いながら、足を進めました

6 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/21(木) 18:51:47.71 ID:HCfrBtOx0

「那珂、今日は鎮守府に居なかったけど何をしていたの?」
神通お姉ちゃんが訪ねてきました

「あのね、街でアイドルとしての私をみてもらうためにどこか、場所を探してたんだ」

「どこか場所は見つかったんですか?」

「うん、見つかった、でも見つけた頃は夕方だったから、戻って来たんだ」

「ふふ、通りで疲れた顔をしているなと思いましたよ」

「えー、アイドルは顔が命なのに〜」

「がんばってくださいね、時間が空いたら行ってみます」

神通お姉ちゃんは、よく出撃をさせてもらっているらしい
そうだよね、神通お姉ちゃんは武闘艦なんて言われるくらいだから…

でも、姉であることは変わりないし、応援してくれてるとも言ってる
とっても嬉しかった

「今日は早く寝て、準備をしなきゃ」
そうして、人がたくさん集まるのを想像しながら準備を進めました

そうやっていると、作業もはかどりました


「あ、那珂! 今日はどうだったの?」
川内お姉ちゃんが遠征から戻って来たみたいです

「あ、ううん、今日は場所を探して終わっちゃった」

「そっか、じゃあ明日からやるの?」

「うん、場所も見つけたからそのつもりかな!」

「明日、お休みなんだっ、私も行っていい?」

「え、なんだか恥ずかしいなあ…」

「アイドルならみてもらうのが仕事なんだからっ! ね、いいでしょ?」

「うん、わかった、川内お姉ちゃんならいいよ!」

「私も、行ければいいのですが…」
神通お姉ちゃんはすこし残念そうな顔をしていました

「神通おねえちゃんは忙しいから、いつでもいいよ、忙しいのはわかってるから」

「はい、またその時に」

姉妹っていいなって思いました
とっても私を優しくしてくれるのが嬉しかったな…

7 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/21(木) 19:13:32.10 ID:HCfrBtOx0


翌朝…

「那珂ちゃん起きてー!!」

朝の目覚ましが鳴り響いた…
と思ったら、川内お姉ちゃんの声でした

「ううん… もう朝…?」

「那珂、今日は外でやるんでしょ! 早く行こうよ!」

「今は…7時… まだ早いんじゃないかなぁって…あはは」

「早くから行けば人も集まるよっ! 早く行こうよー!」

「せめてご飯たべさせてほしいよぉ…」

一番楽しみにしてたのは川内お姉ちゃんでした
でも、そんなありがた迷惑じみたことも
私はとっても嬉しかったなって


「じゃいこっか!」

「今日も天気がいいねっ!」

「ほんとだ…」

とっても天気が良かった…けど暑いなぁ…



「昨日見つけたのはここだよ」

「やっぱり朝だからあんまり人いないね〜」

「散歩してる人と朝市くらいだね…まあこれがいつもどおりなのかな?」

鎮守府から少し離れたところなのでよくわかりませんでしたが
とにかく、やってみることにしました

「じゃ、とりあえず初めてみるよ」

「うん、いつでもどーぞ!」

そうして、私は歌い始めました

歌ってる時はとっても楽しく、いろいろな事を忘れられる気がしました
周りの人は、目は向けてくれましたが、止まって聞いてくれることはありませんでした

でも、そんなことも気にしないで歌って踊り続けました…

川内お姉ちゃんがニコニコしながら見てくれてるから、どうでもよくなってました

「うるさいなぁ…」

「朝からなんだ?」

そんな言葉も耳に入ってきました
当然だよね、朝早くから女の子が歌ってても、変だよね

だけど、私はやめなかった。楽しからやめれなかった


「ふぅ…」

「那珂ちゃん日に日に上手くなってるよー!」パチパチ
川内お姉ちゃんが褒めてくれました

パチパチ…  パチパチ…

とってもまばらでしたが、拍手を来れた人もいたようです

「よかった」

ふと、川内お姉ちゃんの後ろを見ると、小さな女の子が私に拍手をくれていました

11 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/21(木) 20:56:36.40 ID:HCfrBtOx0

「お姉ちゃん、歌上手だね」
女の子が私に言いました
川内お姉ちゃんは気づいてなかったようで
少しびっくりしていました

「ありがとう、あなたはどこからきたの?」

「…病院からきたの お散歩するっていって、病院の人に連れてきてもらったの」

「わざわざ見てくれてありがとうね、私、とっても嬉しいよ!」

「お姉ちゃん、またここで歌うの?」

「また、聞きたいの?」

「…うん!」

この子はとても小さかった
服の上からでも、多少痩せているのが解るくらいだった
こんな子が…と、初対面なのに、同情するような気持ちが沸いてしまった

「あんまり、体調良くなさそうだけど…無理してこなくていいからね?」

「ううん、またくる」

「そっか」

わがままを言ってるようにも聞こえたけど
それでも嬉しかった

「都合のいいときだけでいいから、また朝にここに来るから、ね?」

「うん」

「ーーちゃん、そろそろ行きますよ」

名前は風が吹いてよく聞き取れなかった

「はーい、じゃあお姉ちゃんばいばい」

「ばいばい」
そうして、看護師のような人に連れてもらって

「ね、那珂ちゃん、初めてなのに、拍手もらえたじゃん、しかもファンまで出来ちゃってさ!」
川内おねえちゃんはとっても嬉しそうだった
自分のことみたいに喜んでいた

「うん、なんだか楽しくなってきちゃった! まだ見てくれる人は少ないけど、きっと皆止まって見てくれる、よね?」

「うん、あの子もまた来てくれるし…那珂ちゃんのファン第二号だねっ!」

「どこまでのびるかなぁ♪ すっごく楽しみ!」

「じゃあ、そろそろ戻ろっか?」

「うん、付き合ってくれてありがと、お姉ちゃん」

「いいのいいの、大事な妹なんだから」

ぽんぽん、と優しく頭を叩いてくれました
こんなに褒められたり、拍手を貰うのはいつぶりだろうな…
なんて思いながら、お姉ちゃんと帰ることにしました



12 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/21(木) 21:10:27.66 ID:HCfrBtOx0

今日はとっても楽しい一日でした

と、言っても 朝あんなことがあったから浮かれてるだけ…だったけど

「那珂、朝から機嫌が良さそうだけど、何かあったの?」
神通お姉ちゃんが訪ねてきました

「えへへ、あのね、朝公園で歌っていたら、小さな女の子がまた来てくれるって言ってくれたの」

「上手くいったんですね、よかったじゃないですか」

「うん! 拍手も貰ったからね、とっても嬉しくなっちゃった」

「その子は那珂ちゃんのファン第二号ってことになったよ、一号は私だけどねっ!」

妹バカ…シスコンとでもいうのかな?でも、嫌な気持ちはしない

「あら、てっきり私が2号かと思ってましたが… じゃあ私は3番目ですね」

「もう、ふたりともやめてよー」


「おーい、神通」
提督が、神通お姉ちゃんを呼びました

「じゃあ、私行ってくるからね、那珂もがんばってね」

「うん、神通お姉ちゃんも気をつけて」


「どうしたんだ、嬉しそうな顔して」

「いえ、那珂がまた新しいことを初めて、どうやらうまくいったみたいで、、とっても嬉しくなっちゃって…」

「お前ら姉妹は仲がいいな、俺は一人っ子だから羨ましい」

「提督も、那珂のこと、たまには気を遣ってあげて下さい」

「ああ、その、新しく始めたことも気になるからな」


親しげに提督と話している神通お姉ちゃんを見送りました
毎日、出撃をしているので、とっても心配です

「じゃ、私もそろそろ遠征とか行ってくるから… また明日も行くからねっ!」

「うん、頑張ってきてね、お姉ちゃん」

神通お姉ちゃんや、川内お姉ちゃんはとっても忙しそうだった…
だけど私はなんのとりえもないし、やれることもない
自分の力がないことにたびたび悩んでしまう時がよくあった

だけど、歌って忘れたり、駆逐艦の子たちと遊んでいるときはすっかり忘れることにしていました

13 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/21(木) 21:46:31.10 ID:HCfrBtOx0

「ね、那珂ちゃん!」
元気よく話しかけてきてくれたのは、雷ちゃんでした

「どうしたの?元気なさそうな顔しちゃって」

「ちょっと考え事してただけだよ、ところで、何?」

「出撃してないみんなを誘って海に出かけましょ! 最近暑いっていってみんな外に出ないからね…」

「うん、そうだね 丁度私も暇だったから よし、いこっか!」
私が出来るのは、駆逐艦達の御守りくらい…
それくらいしかやれることがないので、やれることはやることにしていました

「ひゃー…やっぱり暑いね、朝と比べたら大違いだよ…」

「那珂ちゃんは朝何かしてたの?」

「うん、あのね 何か新しいことを初めてみたくて、公園に行って歌ってたんだ」

「那珂ちゃん、歌上手だもんね」

「那珂ちゃんアイドルだもん! なんてね」

「いつか歌みんなに聞かせてね! 私も遊んでくる!」

雷ちゃんは、小さいのにしっかりしているし、優しい子だなぁ…
だけどどこか、子供っぽさが残るような…
ちょっと変わった子だった

私は、日に焼けたくないし、あまり暑いのは得意じゃないので
パラソルの下で、皆が遊んでいるのを眺めてるだけだった

「みんな、楽しそう」

私は悩んでいるのに…
何も出来なくて悩んでいるのに
駆逐艦の皆はとっても楽しそうにはしゃいでいる
ああいうのを無邪気、っていうのかな、うらやましかった

「那珂ちゃんも遊ぼー!」
と、駆逐艦の子が誘ってくれました

「那珂ちゃんはアイドルだし、お肌を大切にするから遊びません!」

「えー! 那珂ちゃんわがままー!」

14 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/21(木) 22:06:48.74 ID:HCfrBtOx0


あの子はいま何をしているんだろう

朝、来てくれたあの子、ファン…っていうのかな

小さな子のいうことだとしても…いや
小さな子の言うことだから、無邪気で正直なのかな
私の歌が上手と褒めてくれた

特別歌が上手ではないけど、そうやって褒めてくれた…
また明日も来るかな

「あ、いたいた」
と、後ろから駆けてきたのは川内お姉ちゃんでした

「どうしたの? 今日は早いんだね」

「うん、別の遠征隊を組むらしいから一旦外されたんだ。 海に行ったっていうから来てみたけど…暑いねぇ」

「肌が焼けちゃうからここから動けないや」

「ふふ、那珂はアイドルだもんね、わかるよ、私は」

「ね、朝のあの子、明日も来てくれるかな?」

「来るよ! だって来るって言ったもん!」

「あはは…そうだね」

「それと、明日は出撃お休みらしいから、もしかしたら神通も来れるかもしれないよ」

「本当? やったー!」

歌に自信がある訳じゃないけど、ぜひ一度見てもらいたいな
と思ってたから、つい喜んでしまった


「はぁ、喉乾いちゃった!」
と睦月ちゃんが駆け寄ってきた

「飲み物貰っていいですか?」

「うん、いいよー、皆にも分けてあげてね」

「お茶飲む人ー!!」

はーーい!!

「あはは、可愛いなあ」

「うん、本当に」

17 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/21(木) 22:28:12.28 ID:HCfrBtOx0


夜になって、神通お姉ちゃんが戻って来た

「おかえり、神通!」

「お姉ちゃんお帰り」

「はい、ただいま戻りました… ふぅ、なんだか疲れました」

「大丈夫?」

「大丈夫です…ドッグの入渠も済ませてきましたし、あとはいつもどおり過ごすだけですね…」

帰ってきて神通お姉ちゃんに真っ先に聞きたいことが合った私は
さっそく聞いてみることにしました

「ね、お姉ちゃん、明日出撃おやすみって聞いたけど…」

「はい、お休みですね… 朝に、那珂の歌、聞きに行っても?」

「うんうん! もっちろん!」

「良かったねー、那珂」

「うん、明日の朝は早いんだから! 早く起きないとねっ!」

「でも今日先に起きたのは私だよー?」

「今日は行く時間決めてなかったの!」

「あはは、ごめんごめん」

「もうお腹が好きました…まだ夕食は?」

「食べてないよ、三人で行こっか!」

「えーっ、那珂ちゃんアイドルだから食事制限しないとぉ〜」

「じゃー那珂ちゃんは置いてっちゃおうかな!」

「やっぱり行くー!」
こんなおばかみたいな会話も楽しかった…
やっぱり、やることは違くても姉妹なんだなって、思えて嬉しかった


18 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/21(木) 22:55:38.58 ID:HCfrBtOx0

朝…

「朝だよぉー、ふたりとも起きようー」
今回は静か目な目覚ましだった
と、言うより眠そうだった

「お姉ちゃん夜が得意なんじゃなかったっけ…」

「朝が苦手とは言ってないもんねっ」

「んん… もう朝ですか…」

「疲れてるみたいだからしょうがないね…」

「神通、今日も行くけど、来る?無理しなくてもいいけど」

「いえ、大丈夫です…行きますよ」

「ふふ、よかった」

今日も、あの子はいるかな?
また拍手してくれる人はいるかな?

期待と不安が混ざって、変な感じだった



「今日もいい天気だねー」

「うん、今日も張り切って歌えちゃうなっ!」
昨日は快晴だったけど、今日は雲が多かった
あまり暑くはないから、これくらいの天気が一番好きだな

「昨日は海の上でも暑かったですし、これくらいが丁度いいですね」

「あ、神通お姉ちゃんもそう思った?」

「はい、でも朝ですからまだ過ごしやすいんでしょうね」

「暑くならないうちに行こうよ! あの子、待ってるかもしれないよ」

ー…


「あ、やっぱりあの子居たね」

「ほんとに来てくれたんだ…」
こちらに気づいた女の子は、手を振ってこっちに駆け寄ってきてくれた

「ほんとに来てくれた!」
今日はやたら人ということが合うなあ…

「えへへ、あなたこそ」

「こっちのお姉ちゃんだれ?」

「私のお姉ちゃんだよ、 歌うのを見に来てくれたんだ」

「はじめまして、神通です。」

「はじめまして!」

人見知りをしないいい子だと、いまさらになって気づいた

「ね、お姉ちゃんはやく歌うとこみたい」

「しょうがないなぁ…」
それから歌う場所にラジカセを置いて歌う準備を初めて、歌うのを始めた



19 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/21(木) 23:10:37.59 ID:HCfrBtOx0

やっぱり、歌ってる時は楽しかった

女の子は、ものすごく輝いたような目で私を見てくれた
川内お姉ちゃんや、神通お姉ちゃんもニコニコしながら聞いてくれた

昨日に比べて人が多いけど、やっぱり止まってくれる人は居なかった
…しょうがないかもしれない
私が他人の立場だったら素通りするかもしれない
しょうがない、しょうがないけど  ちょっぴり寂しかった

「はい!聞いてくれてありがとー!」

パチパチ  パチパチ… パチ
拍手は昨日と同じくらいだった

「やっぱりお姉ちゃんすごい、憧れる」

「あなたは歌手にでもなりたかったの?」

「ううん、私はアイドルになりたかった お姉ちゃんみたいな」

「私はアイドル…アイドルだけど、まだちゃんとしたアイドルじゃないんだ」

「でも、お姉ちゃんは私のアイドルだよ」

「私はね、売れてないアイドルなの」

「じゃ、お金、あげる」
と言って、女の子は100円玉を差し出した

「ううん、いいの お金は貰えない」
そういって、女の子の腕を握って、そっと腕を下げた

「でも…」

「いいんだよ、  そういえば、お名前はなんていうの?」

「わたし?」

「うん、そういえば、聞いてなかったから」

「あい、あいっていうの 私」

「へー、あいちゃんっていうんだ!」
と言って、千田お姉ちゃんが見計らったように声を掛けた

「そういえば、こっちのお姉ちゃんも名前、聞いてなかった」

「私は川内、っていうの、この三人の中でいちばんお姉ちゃんだよ!」

「川内お姉ちゃん、川内お姉ちゃんも、また那珂ちゃんと来るの?」

はっとした
そういえば、名前をまだ教えてなかった
昨日、帰るときに川内お姉ちゃんが話したのを聞き取ったのかな

「うん、私も来れる時はくるよー」

「わたし、お姉ちゃんたちとお友達になりたい」

「私達が?」

「うん、川内お姉ちゃんも、神通お姉ちゃんも、那珂ちゃんもお友達になりたい」

「人見知りをしない、いい子ですね、私達で良ければ、いいですよ?」

「ありがとう! 嬉しい」


20 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/21(木) 23:26:09.62 ID:HCfrBtOx0

そういえば、と思ってちょっと聞いてみた

「ね、あいちゃんはアイドルになりたいって言ってたよね?」

「うん」

「よかったら、歌ってるところを聞いてみたいな」

「わたしの?」

「うん、だめかな?」

「いいよ、あんまり上手くないかもしれないけど」
そうして、置いてあったマイクを手にとって、今歌っていた音楽を歌ってくれた

その声は、とっても綺麗な声だった
ほんとの歌手みたいな、私では到底およばないような、透き通った声だった

歌は特別うまかった程でもなかったが
声が後ろから支えるように、さほど気になりもしなかった

「お、終わり…です」
パチパチパチパチ

「すごい!とっても上手だったよ!」

「とっても綺麗な声でした」

「那珂ちゃん、越されちゃったなあ」

「ありがとう、ございます、う、うれしいです…」
あいちゃんは、顔が赤くなっていて とっても可愛かった

「あ、居た居た…あいちゃん、もう時間ですよ」
そこに、昨日の看護師のような人が来た

「ごめんなさい、何かお邪魔をしていませんでしたか?」

「いえ、何も、あいちゃんが歌ってくれたんですけど、とっても綺麗な声をしていましたね」

「え…あいちゃん、なんともない!?」

「あ、なんとも、ないです」

「この子、心臓に病を抱えているんです… あまり負担のかかるようなことは…」

「わかりました、こちらこそ心配かけさせちゃったみたいで」

「いいえ、いい気分転換になったと思いますし… ありがとうございました では、失礼します」

「ばいばい、お姉ちゃん」

「ばいばい、また明日ね」


「あの子、とっても綺麗な声でしたね」

「うん、色々無ければ、歌手になれてたのかもしれないのにねー」

「うん、またあの子の声聞いてみたいな」

「無理させたらダメですよ?」

「うん、わかってるよ」

「今日は時間もあるから、どこかに出かけない?」

「いいですね、お休みを頂いたので、せっかくだから…私は賛成です」

「日焼けしたりしたら、お姉ちゃんたちのせいだからね!」

21 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/21(木) 23:51:24.05 ID:HCfrBtOx0

その日は、どこかで外食をしたり
食べ物めぐりをしたり、カラオケにも行ったりした

…もちろん那珂ちゃんが一番だったけどね!

「あー!おしかったなぁ」

「惜しかったって…川内姉は私に負けていませんでしたか?」

「あーー神通それを言わないでよ!」

「神通お姉ちゃん、とっても上手だったよね!」

「ふふ、那珂がいちばんだったじゃないですか?」

「ふふん、当然だよっ」

「那珂ちゃんにはかなわないなぁ」

「アイドルなだけありますね?」

「もう、褒めないでよー」

「私、明日は出撃があるので行けませんから…また行ける時に誘ってくださいね」

「うん!というより誘わなくても来てほしいよ!」

「そこまで無礼じゃありませんよ?」

「神通らしいや」

どこにでも居るような姉妹だった
とっても仲良くて… 誰からも羨ましがれるような姉妹
…だといいな!

「そろそろ帰ろっか、長く鎮守府を出過ぎちゃったからね!」

「そうですね、戻りましょうか」

「えー、もう帰るの?」

「那珂ちゃん日焼けしたくないんじゃなかったの〜?」

「もう、前のことはいいの!」


「おい神通、何処行ってたんだ」

「すいません…お休みなのですこし遊んでいました」

「え、もしかして出撃だったの神通?」

「あ、いや、明日の出撃について1つ話したいことあっただけだ 神通、あとで来てくれ」

「はい、申し訳ないです」

「神通おねえちゃんも多忙だね、まるで那珂ちゃんの未来みたいにっ!」

「お、那珂ちゃん言うねぇ」

22 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/22(金) 00:41:33.67 ID:z2kazm2Y0

「はー!もうお昼時だから眠いや」

「那珂ちゃんも少し眠くなってきたかな…」

「私寝るっ!おやすみ!」

「ふふ、明日は何を歌おうかな」

「那珂は楽しみなんですね?」

「うん、あいちゃんが来てくれるからね、いつか立ち止まって聞いてくれる人が来るといいな…」

「私は応援しますよ、がんばってくださいね」

「うん、ありがとう」

「私は提督のところ行ってきますね、ではまたあとで」

「いってらっしゃーい」

「たまには、食堂で歌ってみようかな」
と、いうより元々はここで歌っていたので
今更歌ってみようかな…と、言う程でもなかったけど

ーーーー

「みんなー!那珂ちゃんだよーっ!!」
わーーーー!!那珂ちゃーーん!!!

と、行っても集まるのは駆逐艦の子達なんだけどね…
誰も来ないよりは、嬉しいし楽しいからいいけど…
たまに、鎮守府のいろんな人も見てくれる

会ったときなんかは、歌ってくれたことを褒めてくれる
戦艦の人や空母の人に言われたりすると、とっても嬉しい


「聞いてくれてありがとー!!」
パチパチパチパチパチ
那珂ちゃん歌うまーい!! きゃー那珂ちゃんかわいいー!

「那珂ちゃんさいこおおお!!!」

なにやら野太い声が聞こえて拍子抜けした

23 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/22(金) 00:54:28.39 ID:z2kazm2Y0

「て、提督…」

「珍しくやってたからな、久々にはしゃいでみた」


「那珂、朝外に出て歌を歌ってるんだって?」

「うん、そうだよ 歌ってたらね、小さな女の子が聞きに来てくれてね、なんだか楽しくなっちゃって」

「俺も行ってみたいな」

「提督も来てくれるの?」

「なら、私も」
と、後ろからひょこっと現れたのは
提督の秘書の響ちゃんだった

「響ちゃんも来てくれるの?」

「やってるというなら、是非行ってみたい」

「そんなぁ恥ずかしいなぁ」

「アイドル名乗っててそれはないだろ、那珂ちゃん?」

「不意にその呼び方しないでよー!」
提督は、とっても優しい
あまり鎮守府の役に立ってないこんな私でも
優しく話しかけてくれる

「ま、やりたいって思ったことがみつけられたなら、やってみるといいんじゃないか」

「…うん、そうするよ」

「頑張ってね」

「響ちゃんまで…那珂ちゃんのファン4、5番目だね!」

「はは、そうきたか、まあそういうことでいいぞ」

「那珂さんはいつでも元気そうで羨ましい」

「そう?アイドルでも悩むときはあるんだよー?」

「ふふ、いいね、頑張って楽しめることがあるのは」

「響ちゃんはないの?」

「…あまり考えたことがなかった」

「そっか、見つけれるといいね」

「ああ」

24 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/22(金) 01:11:41.22 ID:z2kazm2Y0

「じゃ、私も戻るね、聞いててくれてありがとね、提督、響ちゃんも」

「おう、頑張れよー」

「ダスビターニャ」

ーー

「ふう、なんか疲れちゃった…」
そう言ってベッドに腰掛けると

「ぐぎゅっ!?」

「あ、川内お姉ちゃん!?そうだ、寝てたんだっけ、ごめん…」

「ふええ…いま何時ぃ?」

「6時だよ、もう起きる?」

「起きようかな… 那珂ちゃんどこ行ってたの?」

「食堂で歌ってた!そのあと、提督と響ちゃんが朝に聞きに来てくれるって話になった!」

「ふうん…」
そんなふうに興味なさげにぼーっとしてる川内お姉ちゃん
髪もくしゃくしゃで、どこかまだ目が覚めてないような…

「って、歌ってたの!? 私も呼んでよー!!」
と思ったら、私も呼んでほしい、とのことだった

「え…あ、なんかごめんね…」

「ふん、まあいいけど…」

「そんなに、私の歌が聞きたいの?」

「うん!だって大切な妹だもん!」

「っ…」
よくこんなことがさらって言えるなあ…
そう思いながらちょっと恥ずかしがった

「? どうかした?」

「いや、なんでもない!」

34 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/22(金) 15:56:43.15 ID:z2kazm2Y0

また、朝が来た
今日は雨が降っていた

「今日は、行けないかなぁ」

「うん、あの子も流石に来ないだろうね」
そうやって、川内お姉ちゃんも一緒に残念そうにしていた

「きょうは雨だから遠征も出撃もないから、ゆっくりしよっか」

「うん、じゃあ、鎮守府の中で歌っちゃおっかな?」

「お、やっちゃうのー?」

「やっちゃおー!」

アイドルだから笑顔を作るのは得意だった
今日はあの子に聞かせてあげられないと思うと、とても残念だった
私のこころは、今日の空模様みたいだった

「まあ、でも朝だからね…お昼食べてからにしよっか」

「…うん!」


そのまま時間は流れるけど雨は止まない
私の気持ちもなかなかすっきりしない

もしかしたらあの子が来てるんじゃないかなと
どこかで期待している自分がいた

「那珂、元気がなさそうですけど、どうかしましたか?」

「うん、あいちゃんが待ってるかなぁ、って」

「外も雨ですし、多分出かけてはないと思いますけど…」

「…やっぱり、私行ってみる」

「でも雨がすごいですよ?」

「行ってみなきゃわからないから… 提督がいたらすこし出るって伝えておいて!」
そうして、私は鎮守府を飛び出した

確かに、凄い雨だった 夏なのに、ちょっと寒く感じた


36 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/22(金) 16:07:14.24 ID:z2kazm2Y0

そうこう考えているうちに、公園についた

「いた…」

傘を指していたけど、びしょ濡れになっていた

「あ、お姉ちゃん 来てくれたの!」

あいちゃんは、屋根のあるベンチの下で座っていた
私を見るなり、雨に濡れて私に駆け寄ってきた

「どうして雨の中、いるの?」

「お姉ちゃんが来ると思ったから、そうやって待ってたら、来てくれた」

そう言ってあいちゃんはにっこり笑った

「…もう、でも、病院にいたんじゃないの?」

「…抜け出して来ちゃった」

「…悪い子、わたしも、鎮守府を抜け出して来ちゃったよ」

ふふふ、と一緒に笑った
とりあえず、屋根の下に座ることにした

「雨、止まないね」

「そうだね」

「ね、お姉ちゃん なにか歌って」

「うーん…じゃあ、てるてる坊主歌ってあげる」

「あ、私も知ってる!」

てるてる坊主 てる坊主
あした天気に しておくれ
いつかの夢の 空のよに
晴れたら金の 鈴あげよ

「これ、明日天気にする歌だね…」

「でも止むかもしれないよ」

「ふふ、そうかな」

てるてる坊主…てる坊主…――

37 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/22(金) 16:27:47.44 ID:z2kazm2Y0

「あ、居た! やっぱりここに…」

いつも付き添いにいる看護師さんだった

「もう、病院を抜けだしてダメでしょ?」

と、あいちゃんを見たら、あいちゃんは眠っていた

「あら、寝ちゃってる…」

「ごめんなさい、私に会いたいってらしくて…それでちょっとだけ、ここに」

「雨の中、わざわざごめんなさい、この子は濡れてないみたいですし、このタオル使って下さい」

「ありがとうございます…」

「体が弱いのに…あいちゃん、起きて」

「ん…」

「ほら、病院に戻りましょ」

「ん、やだぁ…」
そうやって私にすりよってきた

「もう、わがまま言ったらだめでしょう? 先生も心配してるよ?」

「ね、あいちゃん、私はまた来るから、戻らなきゃ、ね?」

「…  わかった」
渋々だが、ちゃんと受け入れてくれた
まるで自分の子供をあやすみたいで、ちょっとだけ母性みたいなのが出た

「明日も絶対来てね」

「うん、来るよ またあしたね」


38 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/22(金) 16:37:14.19 ID:z2kazm2Y0

「私も帰らなきゃな…」
今度は、ちゃんと傘をさして歩いて帰ることにした

ぴちゃ、ぴちゃ、ぴちゃ

そんな、自分が雨を踏む音しか聞こえなかった

「明日雨止むかなぁ」

と、歩いていると、見るからにガラの悪そうな男の人が二人
雨の当たらない部分でふたり突っ立っていた

しかもジロジロ見てくる、なんなんだろう
ヒソヒソ話している  嫌な予感がした

周りを見ると、私とあの男たちしか居なかったので、私は走った
(なんだか、まずい気がする…)

走りだした瞬間に、首後ろの襟を掴まれた
(やっぱり…!)

「な、お嬢ちゃん、なんで一人で走ってるの?」

「…なんですか」

「雨の中薄暗いのにねぇ、どうしたんだい?」

「世の中物騒だからね、一人じゃ危ないよ? ちょっと保護してやるから、な?」

「その物騒なのがあなたたちでしょ? 私は帰る場所があるので離してください」

「だぁからあ、帰るまでが危ないんでしょ?」

「やめてください」
と、手を振りほどいて逃げようとした

「チッ…聞き分け悪いなこいつも」

「きゃ…」
そうやって腕ごと引っ張られて、誰も通らないような路地裏まで引っ張られた

「何する気ですか…」

「なんだっていいじゃん?」

「朝からこういうことしてるんですか?それって人としてどうなんですか?」

 パンッ
顔を叩かれた
「ふん、お前に俺たちがどう言われようと関係ないけど…まあ言われればムカつくよね」

「こいつどうするんだよ?」

「はは…連れ込んで色々遊んでやってもいいけどな」

「おいおい…またそうやっていたぶるだけいたぶって逃がすのか? 面白くねえな」

「じゃ、とりあえず遊びに付き合ってくれよ」

 ガスッ
今度はお腹を殴られた
「う、っ… けほっ」

「はあ…またかよ、まあいいけどさ…」


ーーー

40 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/22(金) 17:25:55.59 ID:z2kazm2Y0

「は?那珂が出かけた?どこに」

「多分、ここから少し離れた公園だと思いますけど」

「…いつ出たんだ」

「2時間くらい前です」

「ちょっと行ってくる 響に出かけるって言っといてくれ」

「は、はい」


ばしゃ、ばしゃ、ばしゃ

「那珂…どこだ」

「公園は…あの公園だよな なら通る道はこのへん…」


「傘… 那珂のやつか」

「ならこの辺りじゃ…」

―やめてよっ!

「! 那珂…」

ーー
「そんなことして何が楽しいの…? 本当にやめて…!」

「何しようが口出しされる筋合いなんか無いね、誰か来るだろうが、少し黙っとけよ」

そうやってまた腕を振りかざしてきた
「やめ…」

パシン……

「あれ…」


「おい、お前ら何やってんだよ…」

「あ、何だお前」

「そこら辺に居る鎮守府の最高司令官ですが」

メキメキメキ…
そんな音をたてて、男の腕を握りつぶしていた

「いでぇっ…いででっ!!」

「ちょ、お前やめろっ…」
ガツッ  バタン

足払いをして、もう一人の男を倒した


「お、朝から喧嘩かぁ、やれやれっ」

と、通りがかったおじさんが野次を飛ばしていた

「あのなぁ、こいつはうちの鎮守府の大っ切な艦娘…もとい部下だ 手出したからにはただで済むと思うなよ?」

「や、やめろ、やめろっ、謝る、謝るからよっ…」

「那珂」

「はっ、はい」
何故か敬語になってしまった

「こいつらに何された」

「か、顔をはたかれたのと、お腹を殴られた…」

「そうか」
ドスッ

私は生まれて初めて、あんな音を聞いた


41 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/22(金) 18:11:36.19 ID:z2kazm2Y0

「ぐ、えっ…」
男の一人目はバタリと倒れた

「え、っちょやめろって、俺はなにもしてねえ…」
パーン!

すごい音がした

「いっ、て…」

「これで全部だ、次お前らが何かしてたら殺すからな」

「くそ…戻るぞ…」

サアアアアア…

ーーーここまで1レス

「ふう…」

「あ、て、提督」

「うわあ、めっちゃ怖かった…」

「えっ」

「いや、まだあいつらより体でかかったからよかったけど…めっちゃ怖い」

さっきまであんなにカッコ良かったのに
ものすごく残念なことを言い出した

「それ言わなければ、カッコ良かったのになあ…」

「べつにカッコつけようとなんかしてないからな、 那珂は大丈夫か」

「う、うん、ありがとう、探しに来てくれて」

「おう、風邪引かないうちに戻るぞ」



帰りは一言も喋らなかった
提督のお役に立ててないのに、むしろ助けてもらって
とっても申し訳ない気持ちでいっぱいだった

「提督、ごめんね」

「何度も言うなよ、大丈夫だって」


帰ってからは、川内お姉ちゃんと神通お姉ちゃんに叱られた

提督は響ちゃんに仕事をほっぽり出したから叱られていた

説教が終わるなり、私と提督は笑った




風邪を引くといけないから、私は誰も居ないお風呂に入った
「はぁ…」

世の中には、物騒な人もいるとよく聞かされていたけど
まさか自分が絡まれることになるとは思わなかった

「提督、かっこよかったなぁ」

ちょっとだけ提督に"ホレて"しまったのかもしれない

でも、心のなかで
アイドルは皆のもの! なんて事を言ってごまかした

「てるてるぼうず、てるぼうず… あーした天気にしておくれ…」

浴場で、声が虚しく鳴り響いた


43 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/22(金) 19:51:33.79 ID:z2kazm2Y0

私は、お風呂から上がるなり、部屋にてるてる坊主を吊り下げた

「ん、那珂ちゃんなにしてるのー?」

「てるてる坊主作ってるの、明日晴れにしたいから」

「今日、あいちゃん来てたの?」

「うん…病院から抜け出して来ちゃったんだって」

「ふふ、本当に那珂ちゃんのことが好きなんだね…  私も作っていい?」

「うん、いいよ」

「てるてる坊主なんて、作るの何時ぶりだろうなぁ…」

「出撃できてるときに、夜戦に行けるって話になって、必死にやったなぁ、あはは」

「ふふ、川内お姉ちゃんらしい」

カチャ
「あ、那珂、もどってたんですね」

「うん…ごめんね、心配かけて」

「もう、ちゃんと反省したんですか?」

「し、してますっ…てへっ」

「もう、あなたを思ってのことなんですからね」

こつん、と軽くげんこつされた


そうこうして、てるてる坊主を作っていたら
作りすぎて机がいっぱいに埋まっていた

「つ、作りすぎちゃったね」

「じゃあ鎮守府の窓にでも下げておこうか…」

「あ、私も貰っていいですか?」

「いいよー」

「明日出撃なので、ぜひ晴れてほしいんです」

「神通お姉ちゃんは忙しいね…」

「いーなー、神通は出撃できてさ」

「ふふ、出撃も結構精神を使うんですよ?」

「ま、そうかもねぇ… じゃ、那珂、下げてこようよ!」

「うん、そだね」


44 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/22(金) 20:52:35.85 ID:z2kazm2Y0

「…よし、明日、晴れるかな」

「神通も出撃って言ってたし、晴れるといいね、一緒にまた公園に行こうね」

「もちろん!」

「今日は戻ろっか、明日も朝早く言って、今度は皆の足、止められるといいね!」

「拍手をくれる人はいたし…  出来るといいな、私の歌で」

「出来なくっても、私や神通、あいちゃんだっているからね! さ、戻ろう!明日に備えて早寝だー!」

「お姉ちゃん夜好きなんじゃないのー?」

「朝が嫌いとは言ってないもんねー」




「では、行ってきますね 今回の出撃は、ちょっと長くなるそうです」

「そっか…頑張ってきてね! そしたらまた一緒に出かけようね!」

「はい、もちろん  では、行ってきます」
いつものように、神通お姉ちゃんは、笑顔で部屋を去っていった

なんともない顔をいつもしてるけど、本当はとっても辛いのは、私にだってわかる
いつも、もしかしたら帰ってこないんじゃないかなって思う時もあったりなかったり…

「行っちゃったね…」
時間は朝の5時だった

「もう行こっか、あいちゃん、いつも早く来てるみたいだし」

「そうだね、よし行こう!」

「おっと、お前は遠征だ」

「そうでしたぁ〜」
と、ズルズル引っ張られていった川内お姉ちゃんでした

「さて、行こっかな」

そうして、一人で公園に向かいました


45 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/22(金) 22:01:52.21 ID:z2kazm2Y0

まだ明るくなったばかりの公園は
とても空気が澄んでいて、人もいつもより少なかった

やっぱり早すぎたのか、あいちゃんの姿はなかった
まだ早いので、すこし座って待ってることにしました

すこし待っていると、いつもどおりあいちゃんがやってきました

私を見つけると、ぱあっとした笑顔で駆け寄ってきました

付き添いの人は「走ったらダメよ、なんて言っていた」

よく見ると、付き添いの人がいつも見る人とは違かった

「あ、どうもはじめまして… あなたが、その那珂、ちゃんですか?」

「あ、はい、そうです  あいちゃんから?」

「はい…とっても歌がお上手だっていっつも自分のことみたいに話してくるので、一度見てみたいと思って来たんです」

「ね、神通お姉ちゃんと川内お姉ちゃんは?」

「二人はお仕事でいないの、 私はお仕事があんまりないから、ね」

「那珂ちゃんはアイドルがお仕事でしょ?」

「あ…」

「そうでしょ? だって、いつも朝来てくれるし」

「…うん! そうだよ、那珂ちゃんはアイドルの仕事で忙しいんだから!」

「うふふ、やっぱりそうだ ね、今日は何歌ってくれるの」

「えへへ、今日はね…」

あいちゃんのために、今日はたくさん歌ってあげた
時間もたっぷりあったからね!

でも、あいちゃんが思ってるようなアイドルじゃないことはもちろん解ってたけど
今だけは、あいちゃんがいる今だけは、あいちゃんのアイドルで居たかった

46 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/22(金) 22:33:03.99 ID:z2kazm2Y0

今日は川内お姉ちゃんも、神通お姉ちゃんも居なかったけど
あいちゃんが居てくれるだけで楽しかった

「ね、お母さん、歌とっても上手でしょ、那珂ちゃん」

「ふふ、ほんとに」
この人はお母さんだったんだ
今良く見てみれば、顔も似てるな、と思った

「ありがとうございます」

「あい、そろそろ戻らないと」

「えー…  じゃあ、いっかい、いっかいだけ那珂ちゃんの歌きかせて」

「しょうがないね…  お願いしてもいいですか?」

「はい、是非!」

そして、あいちゃんのアンコールに答えるべく もう一つ、歌を歌った

私は、作曲などが得意ではないので、普通に出回っている曲を歌ったりしていた

でも、こっそり作曲は頑張っている… いつかお姉ちゃんたちや、あいちゃんにサプライズで聞かせようと思っていた
と、私の思っていたことを読み取るように、あいちゃんが聞いてきた

「那珂ちゃんが作った歌はないの?」

「わたしはね、あんまり得意じゃないから…まだ作ってないんだ! でも、いつか作って、必ず聞かせてあげる」

「ほんと! たのしみにしてるね!」

「うん、その時になったらねー」

「じゃあ、そろそろ行こう、あい」

「…うん」
しょんぼりしていた


「ばいばい那珂ちゃーん! 那珂ちゃん大好きー!」
と、帰り際に声をいっぱいにして叫んでくれた

「私も世界一あいちゃんが好きだよー!」

なんて、言ってしまった

そして、あいちゃんの姿は見えなくなってしまった

…今日も人は止まってくれなかったなぁ

「ふふ、楽しかった そろそろ帰ろう…」

48 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/23(土) 00:04:53.77 ID:ViY1TXzc0

「あ、那珂ちゃんおかえり〜」

「もどってたんだ、お姉ちゃん」

「うん、今日も簡単な遠征だったからね… 今日はどうだった!?」

「今日はね、あいちゃんのお母さんが来てくれたよ、とってもそっくりでーとっても優しかったよ!」

「いーなーいーなー 私も見てみたい…」

「あの子、病院にいつもいるみたいだから、今度お見舞いにいってみようか」

「あ、賛成!それいいね、 神通が戻って来て、行ける時に三人で行こう!」

「今日帰ってきたら伝えてあげなくちゃ!」





49 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/23(土) 00:06:12.47 ID:ViY1TXzc0

夜… 夜になって
ある出来事があった

「みんな…よく聞いてくれ」

提督が食堂に来て、みんなを集めてこれから話をするみたい
なにか出撃であったのかな? それとも新しい艦娘かな

そこで、耳に入ったのが
「神通が航行中に行方不明になった」


「え…」

「えっ、ちょっと!提督!?」

「川内か…すまない、戦闘中にどこかに行ったみたいなんだ」

「神通は無事なの!?」

「わからない…」

川内お姉ちゃんが一番驚いていました
もちろん、私も

「でもっ、既に制圧した海域なんでしょ? そんなこと…」

「そう決まった訳じゃない、まだ騒ぐことじゃないんだ」

「まだ探してないの…?」
私も、自然に口が開いてしまいました

「いや、もう日も落ちるから、捜索は明日だ」

「私が行ってくる」

「待て川内!」

パシ

そうやって、腕を掴んだのは私でした
「だめだよ、川内お姉ちゃん」

「なんで? 那珂は心配じゃないの…?」

「心配だよ? だって、とっても優しいし、時には叱ってくれるし…いますぐにでも行きたいよ?」

「じゃあ、なんで?」

「だって、もう日も落ちるし… 神通お姉ちゃんは大丈夫だよ、だって、強い人だもん、私達がいなくなったら、また迷惑かけちゃうでしょ?」

「…そうだけど   じゃあ、探すのは明日の朝なの?」

「ああ、朝一で駆逐艦と空母達に捜索してもらう その間、出撃、遠征は休みだ」

「…わかったよ、 絶対、絶対に見つけてね…?」

「もちろんだ、総力上げて探すつもりだ… 今日は休め」

「…」

川内お姉ちゃんは何も言わずに出て行きました

50 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/23(土) 01:15:05.60 ID:ViY1TXzc0

川内お姉ちゃんは、朝まで部屋から出ませんでした
ご飯も食べずに、寝込んでいるようで 何か、考え事をしてるみたいでした

もちろん、私だってとっても不安だけど
今の私にはなにも出来ないから、 神通お姉ちゃんが無事なことを祈るだけでした

「…」
そのまま食堂で、ぼーっとしていました
すると、ある人が、声をかけてくれました

「あノー…那珂チャン…ちょっといいデスカー?」
金剛さんでした
周りのお姉さん的な人で、出撃の時に金剛さんの姿hあいつもあって
なんだかんだ提督に頼られてる人です
「…はい」

「神通が出撃してる時、私も一緒でシタ」

「一度、テキとの戦闘が終わって、更に進もうとするト、神通が居なくなって…」

「私が着いていながら、申し訳ないデース…」

「金剛さんが悪いんじゃないよ」

「デモ…私は旗艦デ、周りへの気配りができてれば神通ハ…」

「いいの、別に私は、金剛さんを攻めたりもしない、ただ神通お姉ちゃんが、無事なのを祈るだけだから…」

「ゴメンなさい…  結局は、私の責任デース…」


「金剛」

提督が金剛さんに声をかけました

「ちょっと今日のことを聞きたい、来てくれ」

「わかりマシタ…   じゃあ、那珂…ほんとにゴメンネ。」

何も言えませんでした
私は誰かが悪いとか、誰のせいとかは思ってない
でも、神通お姉ちゃんがどうしていなくなったのか考えると
心のつっかえがとれないみたいな、複雑な気持ちになる

結局、部屋に戻ることにしました

部屋に戻ると、川内お姉ちゃんは静かに、背中を向けて膝を抱えて座っていました

51 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/23(土) 01:25:56.93 ID:ViY1TXzc0

「那珂、何か、言われた?」

「金剛さんが、ごめんって」

「金剛さんが旗艦だったんだよね…」

「うん…」

「金剛さんは責めない…いや、責められないよ…」

「私もそうだよ…?」

「神通、今頃どうしてるんだろう」

「私も、心配だよ」


ーーーー

「きゃっ…」

「神通!?大丈夫デスかー!?」

「っ…ええ、はい 大丈夫です 攻撃を続けて下さい」

(よし、もう少しで倒せる…!)

ザパーン!!

「うっ…高波…? あっ、ああっ!」


気を失っていた川内は、いつの間にか皆を見失っていた
「っ… はっ   皆さんは…」

「はぐれてしまった…のでしょうか」

離島の浜辺にぽつんと打ち上げられていた神通は、大人しくしていることにしました

「下手に動いたら深海棲艦に…  あんなところに…」

神通の目に映ったのは、戦艦や重巡がいる艦隊でした

「これはうごけそうに…ありませんね…」

そのまま夜を迎えた…

「私、どうなるんでしょう…」

「妖精さん…?」

神通に付き添っている妖精…
艦娘全員には、出撃時に妖精が付き添い、いわば乗艦していた

「きっと戻れる…?」

「そうですよね…きっと、きっと探しに…」

「今頃ご心配をかけているんでしょうか…」

「…陸に上がって休みましょ…痛っ…」

神通は、打ち上げられた時に、足をくじいたらしく、歩くので精一杯だった

「どのみち、戻れませんね…」

52 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/23(土) 01:50:31.52 ID:ViY1TXzc0

そして、朝になった
提督は、昨日言ってた通りに
皆が起きる時間より前に、空母機動部隊を捜索に当てた
艦載機で探して駆逐艦の足で見つける、だそうだ
川内お姉ちゃんは、今日は遠征は無かった
「那珂、今日も行くの?」

「…うん、だめ…かな?」

「…」

黙りこんじゃった
「私ね、神通お姉ちゃんが居なくなってずっとへこんでるよりも、元気を出して、神通お姉ちゃんを信じてみようって思ったの 川内お姉ちゃんは、神通お姉ちゃんが強いの、知ってるでしょ?」

「わかってるけど、さ…」

「なら、元気だそうよ、ね? 神通お姉ちゃんはぜったい戻ってくるよ」

「うん、そうだよね、きっと…いや、絶対そうだ… よし!」
と、気合を入れるように、自分の顔をパチン、と叩いた

「痛ったたたた…」
痛がっていた

「あははは…川内お姉ちゃんはドジだね」

「どうせドジですよっと、さ、行こ?」

「うん!」
私達は、元気を出して 神通お姉ちゃんが帰ってくるのを願いました


いつものように、あいちゃんは早くから来ていました

「あ、川内おねえちゃん!」

と、とてとてと駆け寄ってきました

「おはようあいちゃん、いっつも元気だねぇ」

川内お姉ちゃんは昨日今日までの落ち込みが嘘みたいでした

「ね、お姉ちゃんはやく聞かせてよ! 今日ね、私もお歌練習してきたんだ」

「ほんとに? じゃあ那珂ちゃんと勝負しちゃおっか!」

「いいよー!」

今日は、いつもと違う曲をたまたま選んだ
それは、遠く離れた恋人と再会できることを願うような歌で

たまたま私達と同じような状況で…

我慢していた涙が少しこぼれてしまった
そのせいか、歌に力がいつもより入った気がした

歌い終わったら、私はその場でうずくまってしまった

「…ひっ、く 神通お姉ちゃん…寂しい… 寂しいよ…」

「…お姉ちゃん?」

不思議そうにあいちゃんは訪ねてきました

「ごめんね… 急に泣き出しちゃったりしちゃって…」
パチ…パチパチ パチ… パチ…

そう言うと、周りから拍手が聞こえてきました
ゆっくり顔を上げると、みんな穏やかな顔で、私を見ていました

「あ、ありがとうございまっ… ひぐっ… ございますっ!」
情けない声で嗚咽をしてしまった

「那珂、神通が無事っていったのは、あなたじゃない…ね?」

「うん… うん… だけどねっ… 寂しくて… がまんできなぐっで…っ」

「お姉ちゃん、なかないで…?」

「‥んぐ、ありがとう、ごめんね…?」

53 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/23(土) 02:02:07.32 ID:ViY1TXzc0

私が落ち着いてから、神通お姉ちゃんがどうなったかを、あいちゃんに説明した

「そうなんだ…」

「うん…寂しくって、我慢できなくなったの」

「でも、神通お姉ちゃんはまた帰ってこれるよね?」

「うん、絶対帰ってくるよ 那珂ちゃんがそう言って、朝元気づけてくれたもん」

「えへ、ちょっと恥ずかしい…」

「神通お姉ちゃんがもどってから…みんなの前で歌ってもいい?」
子供ながら、そういうところで気配りできるのは凄いな
と、不思議に感心してしまった

「うん…そのほうが神通お姉ちゃんも喜ぶからね…」

「ね、あいちゃん こんど神通が戻って来たら、お見舞いに行ってもいいかな?」

川内お姉ちゃんが、きさくに話を切り出してくれました

「…! いいの! 来てくれるの!」

「もっちろん、那珂もいくよねっ」

「あいちゃんや、お母さんがいいって言うなら…」

「おかーさん呼んでくる!」

とても嬉しそうに向こう側へ駆けて行った… その時

「んっ… げほっ…」

と、急にあいちゃんは、その場に倒れこんでしまった

「あいちゃん!! 大丈夫、どうしたの!?」

私はびっくりして、駆け寄りました

「…」

あいちゃんは返事をしませんでした

「あいちゃん…そろそろ戻る… ああっ!あい!」
と、お母さんが駆け寄ってきました

「すいません…わたしたちと話していて急に倒れこんじゃって…」

「いえ、今はいいんです、とにかくすぐ病院に連れて行きます!」
そして、私は川内お姉ちゃんの方を見た
こくり、と頷いた

「私達も行かせて下さい! こうなったのも私の責任もありますから」

「はい、お願いします…」

少し走ると、病院は目と鼻の先だった

あいちゃんのお母さんは、先生らしき人に話、あいちゃんはそのまま担架で移動されて
手術をする部屋に入って行きました

私達はその入口の前で待っていることしか出来ませんでした

「あい…あい… 大丈夫、大丈夫よね…」
あいちゃんのお母さんはとても不安げな顔をしていた

あの時の川内お姉ちゃんのような顔をしていた

59 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/23(土) 16:45:13.34 ID:ViY1TXzc0

数時間経って、病院の先生らしき人が出てきました

どうやら、もう少し遅かったらダメだったらしい

…外出も前よりは控えると言う話になり、会えるのは一週間に1回や2回程度になった

「ご心配おかけして、本当にごめんなさい」

「いえ、私達の責任でもあるので…」

「元々、体が弱いので… 実は、もう半年も…」

それを聞いて凍りついた
あんなに元気なあいちゃんが、半年で…
それを考えると、とても不安な気持ちでいっぱいになった

川内お姉ちゃんはあいちゃんのお母さんに

「よかったら、お見舞いに来てもいいですか? 朝の後、時間があるので」

「はい、ぜひお願いします、あいも喜ぶと思うので…  出来る限り、外出もしたほうがいいことになっているのでその時は、また」

「…はい、ありがとうございます 無理は、させてあげないでください… 私達、もう戻りますね」

「今日は色々有り難うございました…また会いに来てあげてください」

川内お姉ちゃんは、私を引っ張るように、病室を出ました


「那珂、辛いのは私も一緒だけど、一番大変なのはあいちゃんと、あいちゃんのお母さんなんだよ」

「わかってる…けど」

「ほら、シャキッとしなよ 帰ろう」

「…うん」

大事には至らなくてすんだものの、あいちゃんと会えるのも
あと数えられるくらいになってしまうと思うとやっぱり、わかっていても寂しい…
私にやさしく声をかけてくれたあいちゃん…ずっと一緒にいれると思ったのに





60 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/23(土) 17:18:50.99 ID:ViY1TXzc0

鎮守府に戻ると、何か足りないような部屋がそこにあった

そうだ、神通お姉ちゃんがもどってないんだ

よく考えると最近は
変な人に絡まれたり、神通お姉ちゃんがどこかに行っちゃったり
あいちゃんが残念な目にあったり… 色々と大変なことばかりだった

「那珂、大丈夫?」
それを察すかのように
川内お姉ちゃんが声をかけてくれました

「うん、大丈夫」

大丈夫じゃないのに大丈夫って言っちゃった。
自分で、自分の心が荒んでいるのがよくわかりました。

すると、どかどかと、足音が聞こえて、提督が、私達の部屋のドアを殴るように開けました

「神通が居た…!」

ーー

「ご心配、おかけしました…」

港に皆が集まり、帰ってきた神通お姉ちゃんを出迎えました

「お姉ちゃあん!!」

神通お姉ちゃんを見るやいなや、そのまま抱きついてしまいました

「ごめんなさいね、心配かけて…本当に」

「もう、神通!ほんとに心配したんだからねっ!」

笑顔の川内お姉ちゃんでしたが、ちょっとだけ泣いているのが解りました
一番心配していたのは川内お姉ちゃんなのに、やっぱり私とは違うや、お姉ちゃんだもんね

「いままでどうしてたの…?」

「どこかの島に打ち上げられちゃってて…足を挫いてたの だから、ほら」

神通お姉ちゃんの足元に目をやると、包帯が巻かれていました
戻ってくる前に、簡単に応急処置をしたらしいです

「大丈夫なの…?」

「戦って傷つくより、全然なんともないです」

「よかった…」

またぎゅう、と強く抱きしめて、そこに神通お姉ちゃんがいるということを
改めて、体で感じることが出来ました…帰ってきたんだなって

「そ、それより、ちょっとお風呂に入りたいかな…」

と、ちょっとだけ恥ずかしそうに神通お姉ちゃんはいいました

「うん、部屋で待ってるから」

「わかりました、またあとで」

61 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/23(土) 17:47:07.64 ID:ViY1TXzc0

今日は、最近あったことや
積もる話、川内お姉ちゃんが一日落ち込んでた話をしました…

「もう!那珂だって泣いてたでしょ!」

「だってー…」

それと、あいちゃんのことも、これからのことも少しだけ話しました

「…そうですか、でもよかったですね、大事にならなくて」

「うん、でも、会えなくなるのが、一番怖いかな」

「私達が会いに行けばいいじゃないですか お見舞い、行ってもいいんでしょう?」

「那珂、明日は行くの? 公園に」

「うん、行くつもりだよ 私だってやれることが見つかったんだから」

「ふふ、そうだよね、那珂ならそう言うと思った」

「私も、お休みを貰ったので行ってもいいですか?」

「神通お姉ちゃん、足大丈夫なの?」

「ええ、丁度海にいたので、足が冷やせましたし、明日までには治ってると思いますよ」

「神通なら無人島でも生きていけそうだね!」

「もう、それはどういう意味ですかっ?」

「あはは、冗談だよ! たくましいって意味なんだけどねー」

「あら、私は女性ですよ?」

「じゃあ、頼りがいがあるってことで!」

「それでいいです」

また…またいつもの日常が戻って来たな
と実感できた 3人でまた揃えて良かった

べつに神通お姉ちゃんを信じてなかったわけじゃないけど…
まあそんなことはどうでもいいや!

65 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/23(土) 20:10:36.51 ID:ViY1TXzc0

そしてまたまた朝がきた
今日は曇っていた、雨は振りそう…なほどでもなかったけど
涼しい一日になりそうだった

「川内お姉ちゃん起きてー! 行くんでしょー?」

「んんー…なんだか今日はやる気がぁ…」

川内お姉ちゃんは、曇の日はとてもやる気が無くなります

「あいちゃんのとこ行くんだよー! お見舞いするのー!」

「うーん、わかったよー…」

「ふたりとも、起きてましたか、おはようございます」

神通お姉ちゃんはとっても早起きだった
どうしてかって聞くと、出撃のせいで早起きが癖になってしまったらしい

「ね、神通お姉ちゃんも今日は行くよね!」

「はい、是非」

「あ、足大丈夫なの?」

「ばっちりです、もう包帯は外してますけど…走り回るのは危ないかもしれませんね」

「走り回らないよー、さ、行こ!」

「まだご飯食べてないよー…」

「もどって食べればオッケー!」

「着替えさせてよ゛ー…」

……

「今日は涼しいねっ」

「いつもより過ごしやすい…かもねー」

「こういう天気も嫌いではないですね…」

「私はあんまり好きじゃないなー…パッとしないし」

「川内お姉ちゃんはいつも元気だからね!」

「太陽の光を浴びて目覚めたいな、私は」

66 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/23(土) 20:53:30.64 ID:ViY1TXzc0

曇ってたからか、いつもより人通りが少なかった公園は
とても静かだった  あいちゃんは、来ていなかった

「まあ、あんなことがれば、次の日はこれないよね」

「しょうがないね、さ、居なくてもやるんでしょ?」

「もっちろん!」

「今日はどんなのを歌うんでしょうか」

にこにこしながら期待をしてくれていた
姉妹の仲だけど、とっても嬉しかった

私は、歌っている時が一番楽しくて、心が安らぐ
そんな気がした…  そうじゃなくてもそうでありたかった

那珂ちゃんはアイドルだもん…

歌い切ると、前よりは拍手は聞こえなかったけど、どこかで見覚えのある人が拍手をしていた

…提督が追い払った男の一人だった

私が視線を向けてることに気づくと
その場を足早に去っていった

「私も認めてもらえたのかな…」

「那珂、どうかした?」

「あ、ううん! ね、どうだった? 上手だった?」

「もっちろん! 那珂ちゃん最高っ!」

「綺麗な歌声ですね、羨ましいです」

「神通お姉ちゃんも、きれいな声してるのになぁ」

「神通も歌ってみたら?」

「い、いえ!恥ずかしいです…」

「やってみなよー!」

「私も聞きたーい!!」

「も、もう…もうやりませんからね?」

と言って、しぶしぶ歌ってくれた
悔しいけど、神通お姉ちゃんはとっても綺麗な声をしていた

73 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/23(土) 22:31:42.06 ID:ViY1TXzc0

私達は、やることを終えた後 あいちゃんがいる病室へ向かいました
前まで来ていた看護師の方が、私を見るなり、案内をしてくれました
病室に着くと、静かに本を読んでいるあいちゃんがいました

「こんにちは」

「あ…那珂ちゃん!」

「もう体は大丈夫なの?」

「うん、あの、ごめんね 急に倒れたりしちゃって」

「ふふ、いいんだよ それと、神通お姉ちゃんが戻って来てくれたの」

「こんにちは、お元気でしたか」

「神通お姉ちゃん!」

と、ベッドに腰掛けながら、抱きついていました

「すいません、わざわざお見舞いに来てもらって」

あいちゃんのお母さんは少し嬉しそうな顔で言ってくれた

「いえ、私達も会えなくて寂しかったので…」

「あいちゃん、外に出かけていいって、先生に言われたの?」

川内お姉ちゃんが、期待を寄せるような目で聞いた

「うんとね、前よりはあんまりだめだけど、ちょっとならいいって!」

「そっか、よかったね」

「那珂ちゃんの歌聞きたい!」

「だめだよ、ここは病院だから 明日次来れる時にね?」

「じゃ、明日行く ね、お母さんいいでしょ」

「はいはい、いいですよ」

そこで、あいちゃんだけに話をしていることをこそこそと話した

「もう少しで曲が完成できるかもしれないんだ、今度歌うから、二人には内緒ね?」

「…! うん!」

「? 那珂、何話したの?」

「ふふ、内緒!」

「内緒だよー!」

「えー気になるじゃーん、教えてよー」

ーーー…

81 名前:響提督 ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/23(土) 22:55:05.95 ID:ViY1TXzc0

「じゃあ、あいちゃん、私達帰るね ごめんね、お邪魔して」

「ううん、楽しかったよ、明日は行くからね!」

「うん、じゃ、失礼しました…」

「はい、お気をつけて…」

結局、お昼すぎまで居座ってしまった
その後、また姉妹三人で食事したりした

今日はとても楽しかった
歌を聞かせてあげられないのがちょっぴり残念だったけど
また明日から会えるんだ、って思うと、そんなことどうでもよくなった

「今日は楽しかったですねぇ…」

「神通また提督に怒られるんじゃない?」

「そうかもしれませんねぇ…」

「神通お姉ちゃんらしくないなぁ… 明日は何歌おうかな」

「そういえば、那珂は曲は作ったりしないんですか?」

…いままで秘密にしてたことだった

「え、えー?出来ないよそんなの… 那珂ちゃんお馬鹿だから、ねっ?」

といって、お得意の那珂ちゃんスマイルでごまかした

「ふふふ、那珂らしいです」

「ま、もし作るって鳴ったらいつでも言ってね! 私も手伝うよー!」

「ふふ、その時に、なったらね?」

その夜も、なんにもない夜だった

みんなで喋って、みんなでご飯食べて、みんなと一緒に眠る
そんな毎日がとっても楽しかった
私も、本物のアイドルになれればなぁ

その夜は夢を見た
私とあいちゃんが、アイドルとしてデビューして
とっても楽しく歌や踊りを踊ってる夢だった

だけど、あいちゃんが、アイドルをやめるなんて、夢の中で言い出して
私のところから、私からだんだん離れていく夢を見た
行かないで。

「行かないで…」

と、目が覚めた… 私は泣いていた
気づくと、川内お姉ちゃんが頭を撫でてくれていた

「那珂、やな夢でも見た?」

「…うん、ちょっとだけ」

話を聞いてくるのかと思ったけど、川内お姉ちゃんは何も言わなかった
ただ頭を撫でてくれてた、いろいろ考えているうちに、また眠った

120 名前: ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/24(日) 00:26:57.37 ID:/HyX8uez0

次の日は、あいちゃんが公園に来てくれるということで
早起きをしてしまいました… まだ5時前でした

「まだこんな時間…」
ふと、横を見ると すぐとなりで川内お姉ちゃんが眠っていました
昨日の夜中の事を思い出して少しだけ恥ずかしくなった

「曲作るの進めようかな…」
ねぼけ目で、机を漁り、書きかけの歌詞を取り出しました

……
好き、大好き、世界一、あなたが好き
簡単な言葉を並べただけでしたが、私にとってはとっても意味のあるものでした
気づいている…いや、気づいてるわ、皆が私を、ハートの視線で見つめてる…

今の私はハートの視線はおろか、拍手も貰えるかぎりぎりなところなのに…
どこか、心のどこかでは、ちゃんとしたアイドルで居たいという気持ちがあったのかもしれません

「ん、ううん…」

川内お姉ちゃんが目を覚ましました

はっとした私は、その紙を机の中にしまいました

「あれぇ…那珂、起きてたの…?  いま何時?」

「い、今…5時…くらいだよ」

「そっか…那珂、大丈夫だった?」
多分、夜中のことだろう、と頭をよぎった

「あ、うん…ごめんね、なんか、迷惑かけたみたいで」

「ん、いいよ、大丈夫  今日は晴れだね…」
そういって川内お姉ちゃんは窓を開けた

快晴とまではいかないが、雲はまばらにあるものの、空は晴れ渡っていた

「ん…」
窓を開けた音で、神通お姉ちゃんが起きてしまいました

「あ、ごめんね神通、起こしちゃったみたいで」

「あ…いえ、おはようございます…」
髪がぼさぼさで、ぽけーっとしている神通お姉ちゃんの顔は
いつものきりっとしている性格からは想像も出来ない顔でした

「神通お姉ちゃん、へんな顔」

「えっ… あっ!いやその… 起きてすぐなので…えと…」
と、顔を赤らめていた
どうやら、神通お姉ちゃんは、寝起きにいろんな顔を見せるらしい



121 名前: ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/24(日) 00:37:51.56 ID:/HyX8uez0

そしていつもの日課…
ご飯を食べて、さっそく向かうことにしました

「さ、ふたりとも行こ! 置いていっちゃうよー!」

「慌てなくても公園やあいちゃんは逃げないよー」

「あいちゃんと会えるのがたのしみなんでしょう、きっと」

「…それもそうだね」

那珂ちゃんの、数少ないお友達。
毎日会うのが楽しみで仕方なかった


そして、いつものように…ではなく
車いすに座っているあいちゃんが居た
後ろには、お母さんが付いていた

「お母さん、あいちゃん、おはよう」

「おはよ!」

「おはようございます」

「実は、あんまり体を動かすと、負担がかかってしまうと言われたので、車いすを使ってるんです」

「でも、少しだけなら歩けるよ?」

と、ぺたぺたとこちらに歩いてきたので
こちらもチョットだけ歩いた
「ぎゅ」

と言って足元にしがみついてきた

「ねえ、今日も歌ってくれるんでしょ!」

「ふふん、今日はね、神通お姉ちゃんも歌うよ」

「ほんと!」

「ええっ?聞いてないですよ那珂!」

「もちろん歌ってくれるよねー?」

「ねー!」

と、調子よく合わせてきてくれたので
神通お姉ちゃんもしぶしぶ受け入れてくれた

「もうやりませんって言ったのに…」

「ふふん、まあ私もちゃんと歌うから、ね!」

「へへ、神通やったじゃん、綺麗な声聞かせてあげられるよ?」

「川内お姉ちゃんも歌おうねー!」

「ねー!」

「ええっ!私も…?」

そうやって、私達の間だけの公開ライブが始まるのでした

122 名前: ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/24(日) 00:50:35.63 ID:/HyX8uez0

今日はいつもより静かめな曲を歌った
下手したら、眠くなっちゃうような

それのおかげもあってか、ベンチに座って聞いてくれる人がちらほら居た

あいちゃんは、神通お姉ちゃんの膝の上でニコニコしながら聞いていた
その隣で、あいちゃんのお母さんも座って聞いてくれた

「はぁー… はい、以上ですっ、聞いてくれてありがとー」
パチ…  パチ… パチ

拍手はいつもより少なかった…けど気づいたことがあった

私が歌い終わってから、ベンチから離れる人、その場から離れる人が多く居た
聞いててくれたんだ! と、嬉しくなった
そんな中、ひたすら拍手を続ける中年のオッサンが居た

「なんだろうあの人?」

「那珂ちゃんのファンだー!」

「変わった人で… あれ、提督じゃないですか?」

「え?」
2度見すると、歩いて拍手しながら近づいてきた

「よう、那珂 いい歌声だったぞ、さすがうちの鎮守府のアイドル」

「な、なんで提督が?」

「ん、朝お前らが出かけるのを見てな、着いて行ってばれないようにあそこに座ってたんだ」

「提督も来たいと仰ってましたし、いずれ聞かせたかったんでしょう? なら、いいじゃないですか」
と、神通お姉ちゃんがもっともらしいことを言ってくれた

「那珂ちゃん、このおじさんだれ?」

「お兄さんだよ」

「うんとね、このおじさんはね、私達の上司! 提督さんって言うの」

「おい」

と、神通お姉ちゃんの膝から降りて、提督のもとに駆け寄った
「おじさんはじめまして! 私あいって言います! いつも那珂ちゃんにはお世話になってますぅ…」
と、頭をぺこりと下げた

「だからお兄さ… いやまあいいや 人見知りしない子だなぁ… はじめまして、那珂ちゃんの上司です!」

いつも見せないにかっ、とした笑顔を見せた

「面白い顔ー!」

提督は顔面蒼白だった

123 名前: ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/24(日) 00:58:13.42 ID:/HyX8uez0

「わー!高い高い!」

あいちゃんは提督に肩車されていた

「すいません、わがままばっかり言ってて…」

「いやいいですよ、全然、うちにいる小さい子より良い子です」

「小さい子…ですか?」

「あっ…うちの鎮守府っていうのはですね…」

と、誤解を余計に招くような言い回しをして
とてもあたふたしていた

「ふふ、あいちゃん楽しそう」

「男の人が珍しいんじゃない?」

「そんなことないと思いますけど…」

「なんだ那珂、肩車して欲しいのか」

「別にしたいって言ってないもん! それに私スカートだよっ!?」

「ははは、顔赤いぞ」

「顔赤ーい!」

「…もう、あいちゃんも提督もばか」

「那珂ちゃん照れるなよっ!」
パシン、と背中を軽く叩かれた

「もー1やめてよー!」

そういえば思い出した、あのことを

「そういえば、川内、神通お姉ちゃん、歌うんでしょー?」

「うっ…」

「そ、それはー…その」

「お、二人が歌うのか、聞いてみたいなあ、なああいちゃん?」

「聞きたーい!!」

どうでもいいが、提督の帽子をあいちゃんがかぶっていて、なんだか愛らしかった

138 名前: ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/24(日) 22:09:38.82 ID:/HyX8uez0

私達は、その後
川内お姉ちゃん、神通お姉ちゃんの歌を聞いた後
あいちゃんのお見舞いに行くことにした

ちなみに提督は帰った、このまえの神通お姉ちゃんの件で上に報告しないといけないそうだ
また提督の嫌いな書類の片付けが待ってるらしい

「那珂ちゃんはここにくるので二回目だよね?」

「うん、そうだね あの時はすやすや眠ってたよ」

「ありがとう、ごめんね、迷惑かけて」

「いいんだよ、もうびっくりしちゃったんだからね」

「うん…まだいっぱい那珂ちゃんと遊びたい」

「え?」

そう言ってスカートを掴んできました

とても真剣な顔をしてうつむいていました

「いっぱい遊ぼう? 今度遊ぶときは、たくさん歌用意しちゃおうかな」

「うん!」

ぱあっと明るい顔で答えてくれました

きっと先が短いことは、小さいながらも
あいちゃんでもわかってるんだと思う

こんな小さな子なのに、死と隣合わせなのかと思うと
いたたまれない気持ちになった


色々話したりして、あっという間に時間が過ぎていった

「那珂、そろそろ昼だけど」

「もうそんな時間なの?  じゃあ、あいちゃん、私達もう帰るね」

「帰っちゃうの?」

「また来るよ」

「明日も行くから…」

「あい、先生にダメって言われてるでしょ」

「でも…」

「もう会えなくなるわけじゃないんだから、我慢しなさい」

「…」
ムスッとした顔で下を見つめました

「また来れる時にね? はい、約束」
小指を差し出して、指きりげんまん、をした

「「ゆーびきりげーんまーん嘘ついたらはりせんぼんのーます…」」
二人で歌って、約束をした

「絶対ね!」

「うん、もちろん ばいばい」

「あいちゃんまったねー」

「さようなら」

141 名前: ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/25(月) 00:10:17.15 ID:aUbU6GcJ0

「ほんとに那珂ったら歌うのすきだよねー」

「急にどうしたの?」

「だって私、歌うの恥ずかしかったよ? 那珂はなんともないようにしてるんだもん」

「私のお仕事、わかるでしょ?」

「それはもちろん」
と、促すように神通お姉ちゃんが川内お姉ちゃんを見る

「アイドル、ね、分かってますよ!」

「せいかーい! まあ、そういうことだよ!」

「アイドルが恥ずかしがってたらダメだもんね…流石那珂だね」

「ふふん、もっと褒めてもいいよ!」

「全く、調子いいんだから」

そんな、他愛のない会話をして鎮守府の方へと足を進めました


私は歩いてる最中に、作曲について考えるようになりました
毎日少しずつではありますが、ちゃんと作ってました
もう少しで完成しそうなので、あいちゃんが次来れる時にお姉ちゃんたち含めて、お披露目しようと思っています
そのとき、あいちゃんやお姉ちゃんたちがどんな顔をするか、想像するだけで笑顔になってしまいます

「那珂、どうしたのですか? そんなにニコニコして」

「ふふ、アイドルは笑顔を作るのが得意なんだよっ」

「そうでしたか、じゃあ、笑顔の練習ですか?」

「ん、まあ、そうだねー 神通お姉ちゃんも笑ってみなよ、ほら にこっ、て」

「こ、こうですかね…」

顔がひきつっていました、今日は神通お姉ちゃんのいろんな顔が見れて楽しいです

「ぷっ、あははは! 顔がひきつってるよ… ふ、ふふふふ…」

「もう、笑うこと無いじゃないですかっ!」

神通お姉ちゃんはとっても優秀だけど
どこか、ドジっぽいところがあった
でも、そこがいいところでもある神通お姉ちゃんでした

149 名前: ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/25(月) 23:24:35.76 ID:aUbU6GcJ0

「那珂は前よりずっといきいきしてるよね、最近はさ」

「ん、そう?」

「きっとやることが見つかったからじゃないですか?」

「うふふ、そうかもね、毎日が楽しい…と言えば別になるかもしれないけど 前よりは楽しい時間がずっとあるなぁ」

確かに楽しい時間もいっぱいあったけど
ちょっと悲しいことやびっくりすることとか
色々あった 川内お姉ちゃんの一言から、こんなにも充実した
生活を送れていることに、とても満足していた…

けど、少しだけつっかえることもあったり…

ふと、神通お姉ちゃんが窓を開けて空を見上げました

「明日は…雨が振りそうですね」

「どうしたの?突然」

「ちょっと雲行きが怪しいと思ったので… もし振ったらどうします?」

「まあ…おとなしくしてようかな… やりたいこともあるし」

「やりたいこと?やりたいことって何!?」

川内お姉ちゃんが目を輝かせてつっこんできました

私のやりたいこととは、曲を作るということです
作曲です  誰の力も借りないで完成させたかった

「ふふ、秘密! 絶対教えない! …でも、もう少し経ったら教えてあげる」

「またそのことー? もったいぶっちゃってさぁ…」

「まぁ,いいじゃないですか 今知らなくても今度知れるんですから、ね?」

「はーいはい、わかってるよ」

「それと、私一日だけ秘書を明日やらせていただくので、明日はあまり部屋にはいませんので…」

「提督って秘書変えるような人だっけ?」

「秘書としての仕事量とか適正とか…そういうのを確かめたい…と、言ってましたね」

「ほんとのとこどうなんだろうね…」

「もし何かあったら提督にだって容赦しないんだから」

「私もっ!」
バターン
扉が急に開き…そこには提督が居ました

「お前らもう夜中だぞ! いい加減寝ろ! あと俺はなにもしないからなっ!」

聞かれてたようです

150 名前: ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/26(火) 00:01:34.00 ID:RDjYUoGV0


朝は、神通お姉ちゃんの言った通り雨でした

あいちゃんは、今日は来るのはダメと言われていたので
丁度が良かった…のかな?  とにかく、有意義に過ごそうと決めました

「ハァー… 活力が出ない…」

そういえば川内お姉ちゃんは曇りの日だとやる気がでないのでした

「私、おとなしくしてるね…」
といってぐったり横になりました

私にとっては都合がいいので、一つ返事を返してやることをやることにしました


作る歌のコンセプトは…恋…ベタだけどそんな感じ

私はあいちゃんに、恋人ににた感情を抱いている
へんな意味ではなくて、もっと一緒にいたいとか、会いたいとか
そういう感情だった。曲は、私のために作るんじゃなくて、誰か聞いて貰う人を考えて作った
だから、恋とかいうコンセプトにした。

色々なあいちゃんとの思い出…
と言っても、会って一週間ほどだけど、私にとってはとても深い、深い思いでになっている

他の人とは違う…特別を感じた… 私の心境をそのまま
紙に写すように、筆をどんどん進めていった

もちろん、一番最初に教えたいのはあいちゃん本人だから
私の気持ちが伝わるような歌に仕上げてやろう、と思っていた

あいちゃんの喜ぶ顔… もちろんお姉ちゃんたちの喜ぶ顔
それを考えると、自然と筆が止まりませんでした



必死にやっていると、いつのまにかもうお昼でした

なにかやることや楽しいことがあると、時間は進むのが早い

学校によく似ている、学校で過ごすより
自宅で好きなことをやってたほうが時間が短く感じる…

と提督が昔話をするようにつぶやいていたこともあった

そんなこんなで、単語とかを書きためているうちに
お昼も過ぎ、夜になっていました

151 名前: ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/26(火) 00:17:50.38 ID:RDjYUoGV0

「いま戻りました」

私は、ぶっ通しでやり続けていたから、いつの間にか寝てしまっていたようです

「那珂、もう夜中です…  なんでしょう、これ」

この時私はもちろん眠っていたので、神通お姉ちゃんにばれてしまったようです

「ふふ、そういうことですか…」

神通お姉ちゃんは、そっと紙を戻して、渡しを起こしてくれました

「那珂、もう夜中ですよ 眠るならお布団の方で」

「う…ん?  んー… もう夜中ぁ?」

「そうですよ、川内姉さんも起きて…」

「起きてるよー」

川内お姉ちゃんはほんとに一日中横になっているだけでした

「あっ」
ふと私は作曲に関係ある紙をみて、見られていないことを祈って
いそいそと片付け始めました

「那珂、どうかしましたか?」
…この時の神通お姉ちゃんはいじわるだった

「な、なんでもないよっ  もう夜中なら寝なきゃね、明日はあいちゃん来るかな」

「きっと来ますよ」

「ふふ、そうだよね、そうだよねっ、 あいちゃんだもんね!」
私はあと少しで作曲が終わることを、誰よりも早くあいちゃんに伝えたくてたまりませんでした

158 名前: ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/27(水) 00:43:11.05 ID:gHC1jd7W0

翌日になって
また朝早くに目が覚めた
理由はもちろん… 言わなくてもわかるよね!

「ふふ、あいちゃんになんて言おうかなぁ もう少しでできる、じゃ面白くないなぁ…」

「んー…?」

ひとりごとをつぶやいていたら川内お姉ちゃんが目覚めました
結構眠りが浅いことがいまさらになって解りました

「那珂、また早起きしたのー…?」

「うん、あいちゃんに伝えたいことがあってね!」

「今日は晴れてるねぇ…」

寝ぼけ顔で川内お姉ちゃんは言いました

「さ、着替えてみんなで行こ!」

「那珂は楽しみなことがあると朝からでも元気だねぇ…」

「元気はアイドルの秘訣だよっ!」

「あれ、神通は?」
そういえば、神通お姉ちゃんが居ないことに気づきました

「さあ? お散歩でも行ったんじゃないかな」

神通お姉ちゃんは海辺に行ったらしいです
それを先ほどみかけたと言った響ちゃんが居たので、行ってみることにしました

「神通お姉ちゃん」

「あ、那珂… おはようございます」

「どうしたの?こんなところで」

「いえ、なんだかよくない夢を見てしまって、なかなか寝付けなくてここに」

「よくない夢って?」

「……いえ、なんでもありません そんなことより、私お腹が空きました」

「え?」

「さ、私の夢なんか面白くないですよ、はやくご飯を食べてあいちゃんのところにいきましょう?」

「あ、うんそうだね!」

このときの神通お姉ちゃんは、何か気にしているようでしたが
私は気に留めませんでした、だってあいちゃんに会えるんだもんね…

160 名前: ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/27(水) 00:55:11.98 ID:gHC1jd7W0

私達は、いつもどおりに いつもどおりの道で
いつもの公園につきました

ですが、あいちゃんの姿はありませんでした

「あいちゃん、どうしちゃったんだろう…」

「昨日は冷え込んだので、体を崩したとか…」

「あるねぇ、なかなか夜は寒くて寝付けなかったよ」

「でも、だいじょうぶだよね さ!私もやることやっちゃいまーす! では歌いますっ!」

私が声を出すと、何人か目を向けてくれたりした
それを合図にベンチに座る人も居た

「ねぇ那珂…ファン、できてるんじゃない!」

私はとっても嬉しくなりました
まだ決まったわけではないけどとても嬉しくなりました

「よかったですね、那珂」

「…うん!」


「おーい早くやれーい」
そんな声が聞こえてきました

そこに見えたのは、知らない男の人でした

でも、ここに来る度に、何回か見かけたことのある顔だった
きっと私の歌を聞いていてくれた人なんだろうって、思った

「はーい! いまやりまーす!」

♪〜♪♪

いつもどおり、ですが毎回違う曲を歌っていました
新しい歌にチャレンジするのも好きだし
好きな音楽を一生懸命歌うのも好きなので、幅広いジャンルを歌ったりしていた
今日は静かな曲を歌った、まるで冬景色を歌ったような、そんな曲だった

…パチ…パチパチ… パチ…
歌い終わるとまたいつも通りの拍手が聞こえた

拍手をもらうと、自然と笑ってしまうようになりました

「那珂、嬉しそうだね」

「うん!」

「やっぱり、那珂はこういう事が合ってるんでしょうね」

「えー、元から、だよっ!」

ははははは…
そんな笑いも、かすかに周りから聞こえてきた

161 名前: ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/27(水) 01:06:52.09 ID:gHC1jd7W0

公園を去った私達は、すぐさまあいちゃんのいる病院へ向かった

病室を訪れると、ちょっとだけ元気がなさそうなあいちゃんがいた

「あ、那珂ちゃん…」

「おはよう、あいちゃん 今日は元気がなさそうだけど…」

「今日行けなくてゴメンね? なんだか、あんまり元気が出なくって…」

「あいちゃん昨日からこんな調子なんですよ」

付き添いでみかけた看護婦さんが話した

「昨日、寒かったですし、 体が冷えちゃったんじゃないですか?」

神通お姉ちゃんが口を開いた
看護婦さんも、「そうねえ」と相槌をうっていた

「ごめんね、ほんとはいきたかったんだけど」

「いいんだよ? あいちゃんが来たいときに来ればいいからね」

「うん… 私も、一緒に歌いたかったなあ」

「いつでも聞いてあげるよ、 じゃー、那珂ちゃんはあいちゃんのファン1号になっていい?」

「ほんとに?」

「うん、あいちゃんも私のファン、私もあいちゃんのファン、いいでしょ?」

「うん! やったあ! じゃあ川内お姉ちゃんも神通お姉ちゃんもね!」

「え、私も?」

「私もですか?」

「だめ、かな?」

「いやいや、いいよ! あいちゃん声綺麗だもんね、また聞きたいなあ、って」

「私もです、お言葉に甘えて、私達姉妹はあいちゃんのファンですよ」

「えへへっ」
確かに嬉しそうだったけど
どこか疲れているような表情だった
「あいちゃん、横になったら?」

「え、だいじょぶ…」

「具合よくなさそうだよ?」

「あ、うん、じゃあ横になるね」
ぼそっと、耳元で語りかけた
「あいちゃんあのね、前言っていた私の歌、もう出来るよ」

「ほんとに!」

「明日までにはできるから、明日歌ってあげる」

「那珂ちゃんの曲か…楽しみにしてるね!」

「うん、自信たっぷりだから、楽しみにしてていいよ!」

162 名前: ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/27(水) 01:34:05.20 ID:gHC1jd7W0

「…さて、そろそろ私達、帰らなくちゃ」

「もう帰るの?」

「ふふ、いつもそう また明日会えるんだから、ね?」

「那珂ー 二人で先に行ってるよー」

「うん、わかったー あと、これ、買ったお菓子だけど、食べてね」

「うん、ありがと!」

「じゃあ、そろそろ私、行くね」

「那珂ちゃん」

「どうしたの?」

「私、那珂ちゃんのこと大好きだよ」

「どうしたの?急に。変なの」

「ふふっ、そう思ったから言っただけ」

「なんか、きょうのあいちゃんは変だよ」

「那珂ちゃんもあたしより変わってるもん」

「もう、やめてよー… じゃあね、ありちゃんまた明日、来れたらでいいからね?」

「うん、明日はぜったい行く。 またね、那珂ちゃん」

「ばいばい」


あいちゃんが少し変わったことを言う以外は
何もない普通の日でした
曲ができるという伝えたいことを伝えることも出来たし
私は充実感に満ちあふれていた

「さ、曲完成させなきゃ!」

速く足を進めて、お姉ちゃんたちと帰りました

163 名前: ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/27(水) 01:59:07.68 ID:gHC1jd7W0

その夜
私は夢中で曲を完成させました
曲名は「恋の2-4-11」
数字にはいろんな意味が込められていて
私にとって初めての自分の曲。 とても達成感が合った

いますぐにでもお姉ちゃんに知らせたかった…
だけど、最初に伝えるのはあいちゃんと決めていたので、こらえにこらえて、我慢した

「終ったー!!」

一週間ほどかけてやっと完成した曲
…私はちゃんとした音楽家ではないので歌詞に、それらしい音符を振っただけの簡単な楽譜と歌詞
だけど、曲のリズム、音程の上下はちゃんと頭に入っていた
さすがに、練習なしというのもつらいので、二人にはばれないように、外で練習することにした

「わたし、ちょっと外出てくるね」

「ん、いってらっしゃーい」

「気をつけてくださいね」


外は真っ暗だった
あんなに暑かった昼間が嘘みたいで
外はすっかり涼しくなっていた

空には、太陽に変わって、月と星がひろがっていた

さっそく、鼻歌で曲のリズムを確認した後、細い声で歌った

「気づいてるわー…みんなが私をーハートの視線でー…」

音程リズムはバッチリだった
あまりの嬉しさと興奮に、CD化とか そういうのを妄想しながら歌った
あんまりに夢中で、後ろからの足音に気が付かなかった

「那珂」

「ひゃっ!!」

私はびっくりして紙を落としてしまった

「歌の練習か?  ん、何だこの紙」

「ああぅ、えっとそれは…」

「ふん、ふん ほー… これ、那珂が書いたのか」

「あ… うん… まだ誰にも教えてなかったんだけど…」

「そうか、悪いな  恋?好きな人でも居るのか」

「えっとね、恋とかじゃないんだけど… まあ、色々考えたんだ」

「ふうん、まあそれは今度聞くさ  あいちゃんに、聞かせるつもりだったのか」

「うん、お姉ちゃんたちにも内緒にしてたんだ」

「お前らしいかもな…」
提督は、海に向かって座り込んだ

提督は、たばことかは吸わないとか聞いていたのだけど
おもむろにたばこを取り出した

「提督、タバコ吸ってたっけ?」

「ん、ああ  ほんのたまにだ」

どこかの噂で、提督はうまそうにタバコを吸う
と聞いていたが、私にはよく解らなかった

「那珂、明日も行くんだろ、いいのか」

「うん、そろそろ私も戻るね」

「…おう、おやすみ」

「おやすみ、提督」

168 名前: ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/28(木) 00:08:25.31 ID:SGuPV+370

その夜は、なかなか寝付けませんでした
きっと、わくわくしているから…?

「明日、どんな顔してくれるかな」

でも、それだけじゃ無いような気もして、よくわからないけど
眠ることが出来なかった…  だが、目をつむっていたらいつの間にか寝てしまいました


眠りにやっとつけたと思ったら
また朝早くに目が冷めました
外は薄暗く、涼しかった 私は、昨日やりかけた歌の練習を始めた

その時、海猫がうるさく鳴いた
びっくりしてへたり込んでしまった
「なんだったんだろう…」

海猫たちは、どこかへ飛んでいきました

歌の練習を続けていると、太陽が登ってきました
東の空から、私へのスポットライトのようでした

そんなふうに考えながら、私は歌い始めました



いつのまにかもう皆が目覚めている時間帯になっていました

夢中になれることがあると、時間は早くすぎるもの…
それを身にしみて感じた

「さて、そろそろ行こっかな」

私は自分の部屋へと戻りました

169 名前: ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/28(木) 00:38:44.36 ID:SGuPV+370

「おっはよー!」

「那珂、おはよう どこ行ってたの?」

「外に散歩…かな」

「随分と早起きみたいでしたけど、ほんとに散歩、ですか?」

「別になんでもいいじゃん、ね? ほら、ご飯食べに行こ!」

「那珂、随分元気だね、何かあったの?」

「ふふん、べっつにー?」

二人には、とても話したい…ことでしたが
あえて私は言いませんでした、驚く顔が見たいからです

この頃の私は確かに前よりいきいきしていたと思う
毎日が楽しかった、やりたいことも毎日やれたから
夜はぐっすり眠れるし、悩みもぜんぜんと言っていいほど無かった


朝の食事も済ませ、私達はいつもの公園に向かった
まるでその時の気分は、少年がほしい物を買ってもらった時…のような高揚感だった

だけど、またあいちゃんの姿は無かった

「またあいちゃん、来てないや」

「まだ気分が良くなかったのでは?」

「私、心配になってきたな…」

「那珂、どうする?」

「まだ、あいちゃんに何があったか決まった訳では…」

「私、あいちゃんのところに行ってみる 早く伝えたいこともあるからね」

曲が出来た事と、あいちゃんが心配なこと
ふたつの気持ちが入り交ざって、複雑な気持ちだった

やらないで後悔するよりはやって後悔しろ、とずっと前に提督に言われたのを思い出した

私は迷うこと無く病院に足を進めた

171 名前: ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/28(木) 01:25:52.64 ID:SGuPV+370

病院に着き、早速あいちゃんの病室へ足を運んだ

今日の病院はなんだか静かだった

そしてあいちゃんの病室に着き、ノックをした
「那珂です、入ってもいいですか」

返事がない…とおもったら、ものすごく小さな声で「どうぞ」と聞こえた

病室に入ると、あいちゃんのお母さんがあいちゃんのベッドの前で俯いていました

「おはようございます、お母さん、それと、あいちゃん」

あいちゃんは眠っていました

「ちょっと、朝早すぎたかな…すいませんこんな時間に」

あいちゃんのお母さんは何も言いませんでした

「あいちゃん、私だよ 那珂だよ もう朝だよ…」

あいちゃんのほっぺをつついて起こそうとしました


けど、伝わってきたのは冷たい感触でした

考えたくないことを考えてしまった


後ろで川内お姉ちゃん、神通お姉ちゃんとあいちゃんのお母さんが話していました

私は整理が追いつかなくて
話は耳に入ってきませんでした…
「あいちゃん、あのね、私の曲、完成したよ」

「ぜんぶ、自分で書いたんだ だからね、聴いてよ」


「何か言ってよ…」

「那珂、わかってるでしょ」
川内お姉ちゃんが低い声で私に言いました

「え…」
振り向くと、俯いた神通お姉ちゃんと、こちらを見て泣いている川内お姉ちゃんが映りました

「…どうしたの? 皆泣いちゃって、さ」

「那珂っ!」
大きく揺さぶられました

「やだよ… やだ… 嘘だよ…ねぇ…そうでしょ…?」

「私っ、だって…信じたくな、っ…信じたく…」

ねぇ、あいちゃん 起きてよ  もう朝なんだから…
そんな言葉をかけようとしましたが、声が出ませんでした

「あいちゃん、あいちゃん…なんで… なんでなの?」

「もっといっぱい遊びたかった…  作った曲も、いちばんに聴いて欲しかった…」
私は昨日のことを思い出しました
元気のなかったあいちゃんが浮かびました
あいちゃんが最後に私にかけてくれた言葉
「那珂ちゃん、私那珂ちゃんのこと大好きだよ」

「うっ、あ、いちゃあん…  ごめんね、ごめ、っ…ごめんねぇ だいすきって、言ってあげられなくて…」

病室には、虚しく声が響きました

あいちゃんの事を一番わかっているのは
あいちゃん自身でした

172 名前: ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/28(木) 01:40:35.06 ID:SGuPV+370

あいちゃんは、早朝の朝早く…
私が目覚めた頃にはもう亡くなっていたそうです

あいちゃんのお母さんは、昨日からつきっきりであいちゃんを診ていたそうです

だんだん、だんだん息が薄くなって
最後に言い残した言葉が、「ごめんね」だったそうです

その後、お葬式などに呼ばれましたが

私はまだ受け入れることが出来なくて、出席しませんでした

神通お姉ちゃんは私達が行かない代わりに行ったそうです

そしてそれからまた日が経ち、お墓参りに行くことになりました


お墓に刻まれたあいちゃんの名前を見て、わたしはやっと受け入れることが出来ました


あいちゃんが、いなくなってしまったと

天国に、いっちゃったって


この頃の私は、空っぽでした

歌を歌うことも、ごはんを食べることも
ねむったりするのも出来ませんでした


川内お姉ちゃんと神通お姉ちゃんは、鎮守府でのやること…

お仕事があるので、立ち直りが追いつかないまま、頑張って仕事をしているそうです


わたしはつよくなかった お姉ちゃん二人のように強くなれなかった

だから、ずっと閉じこもっていた


わたしは、二人が仕事をしているときに、あいちゃんのお墓をひっそり訪れました

まだ、約束していたことがあったからです

「あいちゃん、久しぶり」


「私と、約束してたこと、あったでしょ  作った歌を、歌うって」

「だから、歌うね」

私はあいちゃんのお墓の前で歌いました
…心をこめて、あいちゃんを想って

歌い終えると、雨が降ってきました
「あいちゃん、ありがとう」

あいちゃんが泣いてたんだと思います

173 名前: ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/28(木) 02:00:39.19 ID:SGuPV+370

その後、数ヶ月が経って
私は立ち直ることが出来ました
あいちゃんを忘れたわけではありません

でも、いつまでも悲しんでたら、あいちゃんも喜ばないかな、なんて
それから、公園で歌をうたうことをまた再開しました
もちろん、川内お姉ちゃん、神通お姉ちゃんも一緒に聴いてくれました

私が再開すると、見たことのある人の多くが私を囲んで、私を見ていてくれました
だって、アイドルだもんね!

それからまたいつものようにしていると
ある若い男性が声を掛けてきてくれました
なんでも、雑誌の記者だそうで、私を取り上げてくれる、というのです
それからというもの、公園には人だかりができて、私はやっと、本物のアイドルになれた気がしました

「あいちゃん、私、変われたよ   ほんとうのアイドルになったよ」
空がとっても青かった
きっとあいちゃんは笑っているんだと思います

「わたしはいつまでもあいちゃんのファンだよ… あいちゃんは私のファン、そう言ってくれたよね」

「なら、私を、見ていてよ  私の活躍を、見届けてよ」

「那珂ちゃーん、写真お願いしまーす」

「はーい!」
ーーー
またあいちゃんのお墓を訪れた

そこにはあいちゃんのお母さんの姿がありました
「那珂さん、こんにちは」

「お久しぶりです、お母さん」

「最近、雑誌やテレビで、お忙しいところでしょう?」

「…あいちゃんが、あの時励ましてくれなかったら 今の自分はないと思うんです」

「だから、こうしてまた来させてもらいました」

「いえ…あいも喜んでると思います」


「あいちゃん、久しぶり」
「私ね、雑誌に載ったんだよ、テレビにも出たんだ」
「まだライブとかは…やるほどじゃないけど いつか絶対するのが目標なんだ」
「いつまでも、見ててよね、あいちゃん   だって私のファンだもんねっ」

私は、もう泣かないと決めました あいちゃんに涙を見せたくないから

「私、もう行かなきゃ」

「ばいばい、あいちゃん また来るからね。」

もう寂しいことなんてありませんでした

あいちゃんが…私を見ていてくれるからです

174 名前: ◆Ew3/imucfM[saga] 投稿日:2014/08/28(木) 02:08:03.54 ID:SGuPV+370

…これにて完結です

完結のシメ方は、これでよかったでしょうか

自分としては、このスレを無事完結させることが出来て良かったです

このような、湿っぽいSSを書くのは今回で二度目となりますが
如何だったでしょうか。
自分なりには、今回はとてもうまくかけた…と思っています

その他の判断は皆さんにお任せします



途中途中、不快になるような発言をしたり

そのような発言が見られたりしました…
その他ひっくるめて、見ている方には申し訳ないと思っています

本当にごめんなさい

すべて自分の未熟さや、成長できていないのが原因です
どうかお許し下さい

自分は、前レスで申した通り、SSを書くことを一旦やめることにします

どのくらいの期間で戻ってくるかは決めていませんが
きっと、また自分のしたことすべてを反省し、見直し

また別の名前でSSを書きたいと思います

私のSSを楽しみにしている方(が、居ればですが…)
がいたら、申し訳ございません

きっと戻るので、その時は是非、レスを残していって下さい

最後に、ありがとうございました
そしてごめんなさい   では、見ていてくれた方、お疲れ様でした



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