長門有希「・・・・飲んで」


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3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 10:37:11.77 ID:rerg02Qq0

朝倉「・・・嫌よ、おいしくないもの」

長門「飲まなければまた苦しむことになる」

朝倉「・・・・・・それは・・・分かってるけど」

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 10:41:06.18 ID:rerg02Qq0

長門「・・・これはあなたのため。少しの辛抱」

朝倉「少しですって!?あなたはこれがどれだけ苦いかしらないから・・・」

長門「・・・私は・・・」

朝倉「もう帰って!ちゃんと飲むから・・・もう帰ってよぉ!」

長門「・・・分かった」

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 10:46:24.25 ID:rerg02Qq0

バタン

朝倉「・・・・・・」

ガチャ

長門「どうだった?」

朝倉「だめね」

長門「・・・・・・」

朝倉「キョン君は今とても苦しんでるわ。私の演技も下手だけど・・・慎重にかつ優しく接してあげないともっとひどく追い返されるかも」

朝倉「長門さんはちょっと・・・その・・・感情に乏しいからね。もっと思いやりをもって接してあげないと」

長門「・・・私は・・・これでも気遣って・・・」

朝倉「相手に伝わってこその思いやりよ」

長門「・・・・・・」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 10:59:09.53 ID:rerg02Qq0

俺がこの病院に入院してからすでに一週間がたった。窓から見える景色にも飽き始め、最初の日に比べ訪ねてくる人も少なくなった。
かたわらにおいてある週刊雑誌も、古泉が持ってきてくれたその日によみ終えてしまい、今は少し目を引いた記事を時折読み返す程度だ。

「原因不明です」

そう医師に告げられたのは入院した次の日のことだ。俺は一週間前に突然高熱を出して部室で倒れ、そのまま病院に運ばれた(救急車を呼んでくれたのはハルヒだそうだ)。
なぜ原因不明なのか・・・。別にこの病院が小さすぎてきちんとした検査ができないからとか、ここの医師が使えないからとか、そういうことで原因が分からないわけではない。

・・・俺は知っているんだ。

この病気の原因。そしてこの病気にかかった者の行く末を。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 11:12:06.17 ID:rerg02Qq0

朝倉「宇宙人・・・つまり私たち特有、そのはずだったの」

俺が朝倉にこの病気のことを聞いたのは医師に原因不明の旨を伝えられた日の夜だ。

朝倉「長門さんが処理してきた案件・・・その中にはあなたが知らないものも多数含まれるわ。そしてその結果・・・」

朝倉「長門さんの体には一種の腫瘍みたいなものが出来てしまったのよ。それは今までに蓄積された疲労であったり、長門さんが様々な非有機生命体と
戦った結果たまった悪性の・・・まあ袋みたいなものね」

あまり聞いていて気持ちのいい話ではないが、俺の頭のスペックをはるかに超える宇宙人用語を使わずに説明してくれるのはありがたい。

朝倉「私たちは当然普段疲労など感じないけれど、それは私たちが溜め込んだ疲労や病気を情報として体内に保存し、あとでしっかり処理しているから」

朝倉「その情報体はもちろんたまりすぎれば本人に悪影響を与えるし、場合によってはその人の周りの人にまで影響することも有る」

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 11:17:07.06 ID:rerg02Qq0

朝倉「でもそれは私たちの間でのお話。本来人間その他の有機生命体にまで影響を与えるようなことはないわ」

朝倉「でも・・・それが起きてしまった」

ここまで言われれば馬鹿でも分かる。つまり長門の悪性腫瘍が俺に移ったってわけだ。

朝倉「私たちが溜め込んでいる悪性情報の量は、ヒューマノイドインターフェースのスペックだからこそ耐えられるもの」

朝倉「普通の人間に移れば・・・それは・・・」

そこから先は聞きたくないような気がした。宇宙人が溜め込んだウイルスのかたまりだ。そんなものを人間が抱え込んでしまったら・・・。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 11:20:03.52 ID:rerg02Qq0

しかし俺は聞いた。その先を

キョン「頼む。いいから話してくれ」

朝倉「・・・有機生命体が影響を受けた例は今までないから確かなことはいえないんだけど・・・」

朝倉「少なくとも・・・・・・・・・その・・・」

キョン「・・・言ってくれ」


朝倉「半年は・・・もたないと思うわ」

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 11:32:58.08 ID:rerg02Qq0

聞いた瞬間はそれほど驚きはしなかった。それぐらいのものだとは思っていたからだ。だが少し時間をおくと、「死」というものへの恐怖が拭えなくなってくる。
今は熱も引いており、少しからだがだるい以外には特に問題はないが・・・そのときが近づけばきっと苦しみも強くなっていくことだろう。

朝倉「長門さんは目もあてられないほどに取り乱していたわ」

朝倉「自分がもっと早く情報を処理していれば、あなたに影響が及ぶことはなかったって」

朝倉「それからはずっと泣きっぱなしでね、しかたないから私があなたのところへ来たの」

朝倉「長門さんは言ってたわ」

朝倉「『私が・・・全部私が悪いと伝えて。必ず私も会いにいくから。でも今は・・・いけそうもない』ってね」

朝倉の話を聞いたところで別段長門に怒りなど感じなかった。自分の今の状況を理解するのに精一杯だったからかもしれない。
俺は・・・むしろ取り乱したという長門の方が心配で、恨みや怒りといった負の感情は持っていなかったんだ。

少なくとも・・・その時は。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 11:47:31.31 ID:rerg02Qq0

そんなことを思い出しながら、俺はまた窓の外に目をやる。飽きたとはいえ他にすることがないのなら、
かわりばえのしない窓の外の景色にでも何か新しいものを見出すしかない。
訪ねてくれる人は最初は多かったが、一週間たった今はひと段落といったところだ・・・といのはさっきも語ったか。

入院して初めて思ったが、お見舞いに来てくれるというのは嬉しいものだ。みんなの顔をみるとつい話をするのに夢中になってしまい、
そして俺は、今度来るときは暇つぶしのために何か持ってきてくれと頼むのを忘れてしまう。

家族に事情を話せないのもつらいところだ。妹はあまり心配していないようだが、原因不明という言葉が両親に与えた
効果は大きかった。両親は息子は治るのかと医師につめよるが、医師はなんともいえませんとあいまいに返事をするばかり。
そりゃそうだ。これは宇宙的規模の病気なんだからな。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 11:57:04.51 ID:rerg02Qq0

家族の次に訪ねてきてくれたのはSOS団のメンバーだった(朝倉の訪問をお見舞いと呼ぶなら話は別だが)。
その中に長門はやはりいなかった。事情を知っているゆえに来ていない理由を聞くのは気が引けたが、なにも聞かないのも不
自然だと思い、俺はハルヒにそれとなく声をかける。

ハルヒ「ああ、有希は風邪引いちゃったみたい。学校も休んだわ」

そういうことになってるのか。俺はあながち間違いではないなと思った。たしかに長門は風邪だったわけだからな。
ハルヒはまるで自分のもののようにお見舞いの品を食べまくったあと、早く部活に出れるようになりなさいよ!と言
いいながら俺の肩をバシンとたたき、悠然と帰っていった。お前は何をしにきたんだ。


・・・まあ楽しかったけどよ。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 12:08:36.41 ID:rerg02Qq0

ハルヒたちと一緒に帰ったかと思われた朝比奈さんと古泉が、しばらく後に再び病室の扉を開いたときは少し驚いた。
やはりこの二人は事情をしっているらしい。朝比奈さんはさっきとは違い目に涙を浮かべていた・・・いや浮かべてくれていた。
古泉は相変わらずのニヤケ面・・・でもないな。いつもよりはいささかまじめそうにに見える。もっともこいつまで泣きながら抱き
ついてきたら、俺は点滴を引きちぎってでも抵抗するがな。そういう行為は朝比奈さんがしてくれれば十分だ。

「死」

それがこの病気の果てに待っているとしっているものは少ない。家族すらもしらないことだ。朝比奈さんも古泉も、そのことを知っているから
こそ悲しんでくれる・・・と考えるのはうぬぼれだろうか。俺は・・・単なる鍵として・・・いや、そんなことは考えたくないな。

キョン「古泉、今度ボードゲームでも持ってきてくれよ。暇でしょうがないんだ」

古泉「ええかまいませんが・・・僕も昼間は学校がありますのでね」

そうだった。朝比奈さんも古泉も・・・そしてハルヒも、学校が終わった後、このクソ暑い中わざわざ来てくれたんだ。
まったく病人になるとつい自分本位になっていけない。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 12:20:55.70 ID:rerg02Qq0

古泉「しかし・・・思ったより気にしていなさそうでよかった」

古泉「てっきりもっと落ち込んでいるかと思っていましたよ」

キョン「まだいまいち実感が湧いてこなくてな。それに半年もあるんだ。もしかしたら治療法が見つかるかもしれないだろ」

古泉「われわれ機関も今総力をあげてこの病気のことを研究中です。もっとも宇宙的な病気に関しては専門外のことなのでお力になれるかは分かりませんが」

それが俺という人間のためではなく俺の持つ「鍵」という役割を重視してのことだということは明らかだったが、それでも自分を救うために一生懸命になってくれて
いるのは嬉しいことだ。

みくる「私も・・・今未来と連絡をとりあっています。未来でなにかしら特効薬が開発されている、もしくは開発できる技術があるかもしれませんので・・・」

朝比奈さん、あなたがそうやって心配してくれるだけで俺にはどんなに特効薬になることでしょうか。

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 12:21:16.07 ID:rerg02Qq0

帰り際、古泉が振り返る。

古泉「ああそうそう、さきほどは渡し忘れていましたので」

そういって古泉は近くのコンビニでかってきてくれたであろう週刊雑誌をベッド脇の机に置いた。

みくる「きっとまた来ますね」

古泉「ではお大事に」

死に至る病にお大事にとはいってくれる。それは皮肉のつもりなのか?


・・・まあ、嬉しかったけどよ。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 12:28:27.46 ID:rerg02Qq0

その次に訪ねてきてくれたのは谷口と国木田だ。

谷口「おいキョン!お前が休んでるおかげでひまでしょうがないぜ」

キョン「そんなこといわれてもなぁ」

国木田「ハハ、谷口は友達が少ないんだね」

そんなたわいもない会話をつづけていると、あっというまに日が暮れた。クラスの連中も心配してるぜと教えられたときに、またも嬉しく
感じてしまった俺を一体誰が責められよう。

谷口「じゃあな。早く治せよ」

国木田「またねキョン。早く学校来なよ」

キョン「ああ、今日はありがとな」

扉の向こうに消える二人の姿を見送りながら、俺はカナカナが鳴く声を静かに聞いていた。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 12:39:26.50 ID:rerg02Qq0

鶴屋さんは、ENOZのメンバーと一緒に来てくれた。我らが名誉顧問である鶴屋さんはともかく、ENOZのメンバーとはそんなに親しくはないのだが・・・。

鶴屋さん「早く治して部活にくるっさ!ハルにゃんがめがっさつまらなそうにょろよ」

あいつがねえ・・・。

財前さん「私たちまたライブやるからさ。早く治して見にきてよ」

なるほどそれは見てみたいかもしれない。文化祭の曲は完成度高かったからな。


その日は休日だったので、午後にもうひとり来客があった。佐々木だ。

佐々木「くつくつ。君が病に倒れたと聞いてね」

なーに笑ってやがるんだお前は。

佐々木「ああ・・・いやすまない。てっきりもっと辛そうにしているんじゃないかと思っていたんだが、思いのほか元気そうなんでね。つい笑い声が出てしまったよ」

中学時代からのつきあいだが、いまだに笑いのツボがよくわからん。まあなんとなく心配はしてくれていたんだということは伝わったが。

佐々木「僕はもう行くよ。次に会うときは病院の外であいたいものだ」

キョン「・・・今日はありがとな」

「病院の外で会う」という部分には答えず、俺はただ礼をいった。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 12:50:23.34 ID:rerg02Qq0

そんなわけで、俺は今古泉にもらった雑誌を手に取り、時折窓の外を眺めつつ、オリンピック関連の記事をよんでいるわけだ。
もうよむのは三回目くらいなんだが、なかなか興味深い。

お見舞いにきてくれた人と話していると、不思議と「死」については忘れられる。
先に待つ自分の暗い運命から、一瞬だけ目を背けられる。
そういう点で、この雑誌はいまひとつといわざるを得ない。
まあ、何回も読み直しているのだから仕方のないことかもしれないが。

一通り記事を読み終わってしまった俺は、しかたなく目をつむる。
せみの鳴き声が聞こえる。
ジーというアブラゼミの声と、ミーンミーンというミンミンゼミの声がまじり、よりいっそう夏らしさをひきたてる。

早くひぐらしの鳴く頃になってほしいものだと、夕暮れ時に思いを馳せていると、コンコンと扉がノックされた。

どうぞーと声をかける。数秒の間を置いて、扉が開いた。


キョン「・・・久しぶりだな・・・長門」

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 13:23:04.60 ID:rerg02Qq0

見た目はそんなに変わっていなかった。少なくとも取り乱しているという感じはなかった。
今日は制服ではなく、空色のワンピースを着ている。

キョン「まあ座れよ」

俺は病室においてある、色を見る限りベッド脇の机とセットになっているらしい椅子を、長門に薦めた。長門はコクッとうなずき、自分の持ってきた荷物を
机の上において、静かに椅子に腰掛けた。

長門「・・・ごめんなさい」

長門の第一声だ。

長門「全て私の責任。私が悪性情報をもっと早くに処理していればあなたに影響が及ぶこともなかった」

長門「私が情報処理を後回しにしたばっかりに・・・あなたは・・・」

長門はそこで言葉につまり、うつむいた。自分の行動で他人に迷惑がかかった。そうなれば俺だってその本人と話すのは嫌だろう。目を背けたくなるだろう。
ましてそれが命にかかわることなら・・・。

だが長門は、少なくとも話している間は俺の目をまっすぐ見据えながら話してくれた。その液体ヘリウムのような目で、俺の視線を受け止めてくれた。

キョン「・・・長門、俺は・・・俺はなにも怒っちゃいないぜ。お前のことをうらんでもない」

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 13:34:30.16 ID:rerg02Qq0

長門「・・・・・・」

キョン「長門、俺は今まで何回お前に命を救われたかしれない」

キョン「お前がいなきゃ、俺は今ここにはいないんだ」

少し皮肉っぽく聞こえてしまったかもしれないが、断じてそんな意図はない。俺はあくまで長門への感謝のつもりで言ったんだ。

キョン「おおかたお前のことだから・・・やることが多すぎていろいろ溜め込んじまったんだろう?」

キョン「ハハ、お前は他人に相談しないやつだからなぁ」

俺はつとめて明るく振舞う。

それが長門の安らぎになるだろうし、そして長門への感謝にもつながるからだ。

キョン「だからよ、次に何か溜め込んじまったら・・・誰かにちゃんと相談しろよ」

キョン「朝倉とかさ、あいつバックアップのために再構成されたんだろ?それに古泉だって朝比奈さんだって・・・時にはハルヒだって力になってくれるさ」

キョン「別に相談する相手は俺でなくてもいいんだ。お前が頼りたい奴に頼ればいい。というより俺じゃ力になれないことのほうが多いか。ハハ・・・」

長門「・・・・・・・・・」

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 13:41:47.81 ID:rerg02Qq0

長門「どうして・・・」


長門「どうしてあなたは・・・私を責めないの?」

長門「どうしてあなたに謝りに来たのに・・・私が慰められてるの?」

長門「私は・・・私は・・・ウウッ・・・グスッ」

・・・こんな風に長門が泣いているのは初めてみた。今まで緊張していた心が、フッと緩んで涙が出てきてしまったんだろう。
俺は長門の頭を優しく撫でてやる。

キョン「ひとつお願いがある」

長門「・・・グスッ・・・何?」

キョン「もし今回の件を後悔しているなら・・・二度と同じ轍をふまないでくれ」

長門「・・・・・・」

キョン「溜め込まないでまわりに相談するなり、すぐに処理するなりしろ。もしまた誰かに移すようなことがあれば・・・」

キョン「そのときはお前を許さない」

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 13:50:31.92 ID:rerg02Qq0

長門「・・・・・・」

長門「・・・分かった。もう二度とこんなことは起こさない」

キョン「そうか。分かってくれればいいんだ」

液体ヘリウムのような瞳の奥には、しっかりとした決意が秘められているように感じた。

長門「・・・そういえば」

長門「あなたにこれを持ってきた」

長門は机の上の鞄から一本のビンをとりだした。大きさはリポビタンDくらいだ。中には、ドロッとした
群青色の液体が入っている。

キョン「なんだそれは?」

長門「情報統合思念体に申請した薬。本来我々のための薬だから、効くかどうかは分からない」

長門「ただ、飲まないよりはいくらかマシな筈。さあ飲んで。ちなみに対有機生命体の安全性は確認済み」

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 14:01:56.38 ID:rerg02Qq0

そもそも青い液体などあまりみない。あるとしてもせいぜい水色のソーダくらいだ。
普段見ない色の飲食物に抵抗を覚えるのは当然だ。俺はとりあえず顔をしかめてみる。

長門「大丈夫。さあ」

どうやらしかめ面は意味をもたなかったらしい。とりあえずそのビンを受け取る。
まずにおいをかいでみるか。

・・・・・・

どれほどの匂いかと思っていた俺は拍子抜けした。ほとんど無臭だ。これで無味ならありがたいんだが・・・いやそれはそれで不味いか。

俺はいよいよそのビンを口元に寄せる。長門がせっかく持ってきてくれた薬だ。飲まないという選択肢はない。
そして俺は一気にそれを流し込んだ。

もしかしたら人類で、いや長門たちのいう有機生命体で一番最初にこれを飲んだ生物なんじゃないか俺は?
ああ、そういえば安全性は確認済みっていってたな。その実験体になった奴が飲んだ後どういう顔をしていたか
長門に聞いておけばよかったと思いながら、俺は液体がのどを通りすぎるのを待った。

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 14:08:35.47 ID:rerg02Qq0

最初は無味だった。俺は歓喜した。これならいけると。
そして数秒後、半分以上中身の残ったビンをもったままむせ返る俺がそこにいた。

まさか後から来るとは・・・かつてない不味さ・・・いや、不味いとかそういう次元じゃないな。
おまけにドロドロしていて飲みにくいことこの上ない。
そしてようやく立ち直った俺は、手元のビンを見て絶望する。

まだこんなに残ってるのか?

俺はわずかな希望をもって長門の顔を見る。

長門「頑張って」

なるほど。頑張って全部飲めということか。
俺は深呼吸をし、残る半分にとりかかった。

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 14:16:36.61 ID:rerg02Qq0

結果的に言えば、たしかに体は楽になったような気がする。
だるさが抜け、頭がハッキリした。
だが飲み続ければ治るならというならともかく、このだるさを取り除くためだけにあの液体にチャレンジするのは、
出来ればもう遠慮したいと俺は思った。

長門「今日はありがとう」

キョン「こちらこそありがとな」

長門「・・・また来る」

きてくれるのはありがたいのだが、次に来るときもあの薬が随伴してくるのだろうか。
そんなことを考えながら、俺は長門が扉を閉めるのを見送った。


カナカナが鳴いている。

来てくれたことは確かに嬉しかった。

こうやって普通に話せるのが、退屈な病院生活の中で一番の楽しみだった。

また会って、話をしたい。

この時はまだ、そう思っていた。

この時は。

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 14:30:03.12 ID:rerg02Qq0

半年というのは、通常六ヶ月程度のことをさすと思う。
しかし、宣告されたその六ヶ月を待たずして、俺は壊れはじめた。

その日は、SOS団の面々が遊びに来ていた。文字どおり「遊び」にだ。

古泉は俺の頼んだとおり、来るときはいつもボードゲームを持ってきてくれた。
今日はオセロだ。ハルヒと長門と朝比奈さんは、夏みかんをほおばりながらトランプをやっている。

キョン「さあお前の番だぞ」

古泉「ふむ・・・」

今日も俺は古泉の盤面を黒で埋め尽くすべく奮迅していた。いやこいつに勝つのに頑張る必要などあまりないのだが。

古泉「おや?こんなところがあいてるじゃないですか」

キョン「!」

キョン「なかなかやるな。見落としてたぜ」

キョン(さあどうするか・・・)

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 14:33:45.20 ID:rerg02Qq0

ハルヒ「これだ!・・・あ〜ちがうじゃないのも〜!」

キョン(ここに置けば大量にひっくり返せるな・・・)

ハルヒ「さあみくるちゃんよ!はやくしなさい!」

キョン(うるさいやつだな・・・。ん?・・・あそこにおいて四つ角への布石にするのもいいな)

ハルヒ「はやくひきなさいよみくるちゃん!迷ってたって分からないわよ!」

キョン(ここの端に置けば・・・。くそ・・・集中できん・・・)

ハルヒ「やった〜。みくるちゃんババ引いた!」

キョン(うるさいな・・・うるさいうるさいうるさい)

ハルヒ「あっがり〜!」


キョン(ッッ・・・!)


キョン「黙れ!」

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 14:38:45.37 ID:rerg02Qq0

ごめんミス


ハルヒ「!」

ハルヒ「え・・・?」

キョン「うるさいんだよ!少し黙ってられないのか!」

ハルヒ「・・・キョ・・・ン・・・?」

みくる「・・・・・・キョン君」

キョン「ハァ・・・ハァ・・・!」

何を言ってるんだ俺は・・・。
なんでこんなことで・・・。

キョン「ハァ・・・ハァ・・・すまん、なんかイライラしててな」

ハルヒ「・・・そ、そう・・・。・・・あ、わ、私たちもう帰るわね!長居しちゃったし」

キョン「そうか?・・・分かった。またな」

ハルヒ「う、うん・・・」

古泉「・・・・・・」

長門「・・・・・・」

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 14:43:10.76 ID:rerg02Qq0

ハルヒたちが出て行ったあと、俺は頭を抱えた。
なんであんなことで大声だしちまったんだ?
ハルヒがうるさいのなんていつものことじゃないか・・・。

なんかきまずい別れ方しちまったな・・・。
少し・・・寝るか・・・。

〜病院の外〜

古泉「長門さん・・・あれは・・・もしや」

長門「おそらく・・・」

古泉「・・・そうですか・・・」

みくる「キョン君・・・」


ハルヒ「なにやってんの〜?さっさとタクシー拾って帰るわよ!」

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 14:48:55.39 ID:rerg02Qq0

〜長門の部屋〜

朝倉「そう・・・もう」

長門「コクッ」

朝倉「・・・キョン君には・・・教えてないのね?」

長門「・・・いいだせなかった」

朝倉「私もよ」

朝倉「・・・とにかく・・・今のうちに教えるしかないわね。あなたはここでまってて。また私が言ってくるわ」

長門「待って」

朝倉「?」

長門「私が行く」

朝倉「でも・・・」

長門「こうなったのも私の責任。私が伝える」

朝倉「あなた・・・伝えられるの?辛いことよ?やっぱり言い出せませんでした、なんて言わないでよ?」

長門「・・・大丈夫」

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 14:55:22.65 ID:rerg02Qq0

〜夜 病院〜

夕方寝ちまった分、俺の目はさえていた。消灯時間が過ぎ、今しがたこの病室の電気も消されたところだ。
ふと窓の外を見る。誰かが覗いているような、そんな気がする。

見るな・・・見るな・・・見るな・・・

こっちを見るな!


・・・落ち着け。ここは四階だぞ。誰かが覗けるわけがない。

結果的に、だれかが覗くことはなかった。
そいつは、覗く過程をすっ飛ばして病室まで入り込んできたからだ。


キョン「お前は・・・長門・・・?」

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 15:03:56.48 ID:rerg02Qq0

長門「・・・・・・」

月明かりのみを頼りに侵入者を識別する。やはり長門だ。

キョン「どうした長門。忘れ物か?」

長門「・・・今からいうことを・・・良く聞いて」

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 15:04:22.35 ID:rerg02Qq0

〜翌日 病院〜

ハルヒ「めずらしいわね!昨日の今日であんたが私たちに来て欲しいだなんて」

キョン「ああ、急に顔が見たくなってな」

ハルヒ「何年寄りくさいこといってんのよ!昨日有希に頼んだらしいけどいつのまにそんなやりとりをしたの?」

キョン「それは・・・あれだ、お前がジュース買いに行ったときあったろ。あのときだよ」

ハルヒ「ふ〜ん。でも来て欲しいなら直接私に言えばいいのに」

キョン「それは・・・・・・」

古泉「彼は恥ずかしがりやですからね」

ハルヒ「な〜るほどね!まったくどうでもいいところでシャイなんだから」

普段なら茶化されてると取る所だが、このときばかりは古泉に感謝した。

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 15:09:48.27 ID:rerg02Qq0

ハルヒ「それで?何をする?」

キョン「あ〜そうだな。なんでもいいが・・・みんなで出来るのがいいな」

ハルヒ「じゃトランプにしましょ」

キョン「そうだな。そうしよう」

長門「・・・・・・」


〜昨日 病室〜

長門「・・・今からいうことを・・・良く聞いて」

キョン「?・・・ああ」

長門「あなたはさっき、妙にイライラしていたはず」

キョン「ああ・・・そうだな。まったくあんときは悪かった」

長門「それはあなたのせいではない」

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 15:17:13.18 ID:rerg02Qq0

長門「これは病気の症状」

キョン「病気の?俺のかかってるやつか?」

長門「そう。この病気は本来私たちヒューマノイドインターフェース特有のもの」

長門「蓄積されたストレスにより、私たちも少しばかりイライラすることがある」

キョン「ああそれでか・・・・」

長門「しかしそれは私たちの話。人間にこの兆候があらわれた場合、症状はこれだけではおさまらない」

キョン「どういうことだ?」

長門「・・・まだ人間に関する事例がないから確定的なことはいえないけれど、簡単に言えばストレスをうまく処理できなくなる」

長門「つまり、蓄積されたストレスの袋は肥大し、自分のことを考えるので精一杯になる」

俺はさっき、自分の手を思いつかずにイライラしていたことを思い出した。

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 15:23:30.00 ID:rerg02Qq0

長門「自分のことしか考えられなくなり、相手のことまで気にかける余裕がなくなる」

長門「そして・・・やがて情報の飽和が起こる」

キョン「それはどんなものなんだ?」

長門「・・・いっさいの外部情報を受け付けられなくなる」

長門「つまり最終的には・・・他人の拒絶」

長門「誰かが自分の視界に入るだけで耐えられなくなり、その人を攻撃する」

キョン「・・・・・・まわりの人間がみんな嫌いになっちまうってことか?」

長門「嫌うとか、信用できなくなるとか、そういった次元ではない」

長門「受け入れられなくなる。その存在を。だから徹底的に拒絶する」

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 15:31:00.29 ID:rerg02Qq0

長門「この間高熱などの症状も出る」

長門「さらに症状が進行すると、まわりの無機物の存在も受け付けられなくなる」

長門「周りのものを破壊し、自分のまわりに何もない状態を望むようになる」

長門「そして・・・」


キョン「・・・死ぬ・・・か」


最後の部分をいえないまま、黙ってしまった長門のあとを俺が継ぐ。自分でいってしまうのもなんだがな。

しかし思ったより悲惨だな。他人といられなくなるなんて。自分ひとりになるなんて。
これじゃまるで死んだほうが・・・。


ああ、そうか。


だから死を・・・選ぶんだな。

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 15:31:22.46 ID:rerg02Qq0

逃げられない。

逃げる気も起きない。

人は絶望し、


体が、脳が、心が、

死んだほうがいいと叫ぶようになる。

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 15:38:32.77 ID:rerg02Qq0

はいはいミスミス


キョン「・・・・・・長門」

長門「・・・何?」

キョン「頼みがあるんだ」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

そういうことで、俺は長門に頼んでまたSOS団をつれてきてもらった。
いずれそうなってしまうなら・・・俺は今の時間を精一杯生きたい。
といっても相変わらず体はだるいし、ましてや退院も出来ない。

だから今は・・・たとえ病室でのトランプでもいい。

こいつらと、みんなとつながっていたい。

ハルヒの手札から引いたババに顔をしかめながら、俺はそう思っていた。

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 15:41:48.01 ID:rerg02Qq0

それからは、俺はたくさんの人にお見舞いに来てもらうことを望むようになった。
といっても病院内では携帯は使えないので、きてもらったときをのがさず
「次はだれに来て欲しい」などとお願いすることしか出来ない。
こんな俺の我侭にも、文句一つ言わずに付き合ってくれるみんなを見て、俺は本当に
いい仲間をもったと思った。

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 15:46:05.89 ID:rerg02Qq0

家族とのつながりもより大切にした。
来てくれたときはかならず全員とじっくり話したし、妹の学校の話も聞いてやった。
もう長いこと学校に言ってない俺には、なかなか新鮮な話も多かった(谷口や国木田とはバカ話ばっかりだからな)。

しかし事実は話せない。

例えそれが家族であろうと。

妹が、俺が退院した後に一緒に何をしたいかを無邪気に話しているのを聞いている間、
俺はこぼれそうになる涙を必死にこらえていた。

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 15:57:12.25 ID:rerg02Qq0

そうやってみんなと話している間にも、時々誰かにキレそうになるときがあった。
一番最初の時はまったく前情報がなかったが、長門の話を聞いた後は俺自身
特に気をつけるようにしていた。幸いまだ自分で意図して抑えれば我慢できる程
度の癇癪だったので、あれ以来本気で怒ってしまうことはなかった。

しかしそれも、病気が進行するにつれて抑えがきかなくなっていく。

俺は楽しく話していたい。

しかし俺自身がそれを許さない。

相反する二つの意思にさいなまれる俺の様子は端から見ればそうとう奇妙だっただろうが、
古泉や朝比奈さんがこれはあくまで病気の症状だから、とフォローを入れてくれた。

それを理解し、俺がこんなになっても訪ねてきてくれるみんなの優しさを思い、俺は夜中に何度も泣いた。

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 16:05:05.42 ID:rerg02Qq0

〜超能力者機関本部〜

古泉「彼の症状は深刻です」

古泉「お願いします。涼宮さんに事実を伝えることを許してください」

上層部A「ならん。なんども言ったはずだぞ」

古泉「しかし・・・」

上層部B「確かに鍵の存在は重要だ。そして涼宮ハルヒに事実を伝えれば、彼女は彼を救いたいと願うかもしれん」

上層部B「だが彼女はそれの上を行く願望を実現させる可能性がある」

上層部C「すなわち、彼女は世界をまるごと作り変えることによって彼を救おうとする可能性があるということだ」

上層部A「万に一つも世界崩壊の危険がある限り、涼宮ハルヒに事実を伝える許可はあたえられん」

古泉(・・・くそ・・・わが身がかわいいだけの老害が・・・!)

82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 16:18:06.84 ID:rerg02Qq0

みくる「なんでですか!?特効薬はもう開発されてるんでしょう?」

みくるの上司「残念ながら・・・これは『規定事項』だそうだ・・・」

みくる「!・・・そんな!」

みくる「キョン君が死ぬのが・・・規定事項・・・?」

上司「・・・みくる君」

みくる「うそよ・・・うそ・・・」

みくる「そんな・・・そんなわけないじゃないですか!でたらめいわないで!」

上司「落ち着け!朝比奈特派員!」

みくる「!」

上司「私も上に聞いたばかりで正直混乱している。だがこれも我々のため、そして君の時代の人間の未来のためだ」

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 16:26:51.40 ID:rerg02Qq0

みくる「そんなはずありません!私の知っている規定事項では・・・」

上司「間違いなくいえることは!」

みくる「!」

上司「これが最初から規定事項だったわけではないということ」

みくる「どういう意味ですか?」

上司「完全な規定事項ではなかったということだ」

みくる「・・・意味が分かりません。だってこの時代が進めばやがて・・・アレ?でも・・・いや規定事項が・・・」

上司「我々は時を移動する者だ。当然時軸を超えて他の時代に影響を及ぼすことが出来る」

上司「だが我々の行動すらも全て包み込む大きな『運命』という流れがあるのも確か・・・学校でならったな?」

みくる「・・・はい」

上司「このこともその流れのうちということだ」

みくる「・・・私は・・・」

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 16:33:55.61 ID:rerg02Qq0

みくる「大切な人を犠牲にして作られた未来なんて・・・私はいりません!」

上司「偽善だな。人はいつの時代もなにかを犠牲にして進歩してきた」

みくる「・・・・誰よ・・・誰よ!未来を変えたのは!」

上司「聞き分けたまえ!」

上司「こちらの時代を出発する時に!人は運命には逆らえないと教えたはずだ!」

上司「誰が変えたとかそういう問題ではないんだ!全ては決まっていたことだ!」

みくる「・・・ウウッ・・・」

86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 16:34:51.50 ID:rerg02Qq0

上司「・・・みくる君」

みくる「・・・ウウッ・・・グスッ」

上司「泣いても運命は変わらないが・・・・笑って彼を見送ることはできる」

上司「・・・いっておいで。『今』を大切にな」

みくる「・・・はい」

ガチャ ツーツー

みくる「・・・ウウッ・・・」

みくる「私・・・キョン君になんて言えば・・・」

87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 16:38:01.82 ID:rerg02Qq0

まだ半年にははやいぜおい・・・。

いよいよ俺はもうだめらしい。

もうみんなを・・・傷つけたくない・・・。

みんなの顔を・・・見ていたくない・・・。

みんな・・・みんな・・・


俺のそばに・・・・来ないでくれ!

90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 16:46:12.01 ID:rerg02Qq0

訂正

〜機関本部〜

古泉「このまま隠し続けることは不可能です!彼が亡くなれば結局涼宮さんは世界を作り変えるでしょう!確実に!」

古泉「ならばここで事実を伝え、涼宮さんに賭けるのが最良の策のはず」

上層部A「そうなれば世界崩壊の危機が迫るとさっきいっただろう!今すぐ滅ぶよりも彼が亡くなるまでのわずかな時間に対抗策を考えたほうが・・・」

古泉「怖いだけでしょう?」

上層部A「・・・今なんと言った古泉一樹」

古泉「あなたたちは消えるのを恐れているだけだ!世界が消えるのが少しでも遅くなって欲しい、そう思っているんでしょう?」

91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 16:51:49.67 ID:rerg02Qq0

古泉「だから少しでも世界が崩壊する可能性のある行動は絶対にとろうとしない!臆病だから!」

上層部B「口が過ぎるぞ古泉!全ては世界のためだ!」

古泉「自分たちのためでしょう!」


古泉「人一人助けられないで世界が救えるわけがない!」


上層部A「・・・・・・もうよい」

上層部A「お前は・・・あの団体に長く触れすぎた」

古泉「・・・・・・」

上層部A「こいつを連れて行け」

多丸兄弟「ハッ!」

古泉「・・・・・・」

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 17:00:05.42 ID:rerg02Qq0

訂正だ

〜機関本部地下〜

ドサッ

古泉「グッ・・・!」

古泉「僕をどうするつもりですか」

多丸兄「・・・・・・」

古泉「フン・・・別に拷問でもなんでも・・・」

ガチャ

古泉「・・・・・・!」

古泉「も、森さん・・・?」

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 17:09:02.46 ID:rerg02Qq0

森さん「古泉」

古泉「・・・はい」

森さん「世界よりも仲間をとったそうだな」

古泉「・・・いいえ」

森さん「なに?」

古泉「僕は・・・世界も友人も救えない・・・ただの役立たずです」

森さん「・・・・・・」


ツカツカ

バチーン!


古泉「ぐあ!」

古泉「な、何を・・・」

100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 17:13:39.19 ID:rerg02Qq0

森さん「自ら役立たずを名乗るな!自分の可能性にふたをするな!」

古泉「・・・!」

森さん「聞いたぞ。上層部相手に啖呵をきったそうだな」

古泉「・・・・・・」

森さん「お前が役立たずなわけがない」

森さん「こんなに・・・仲間を想う気持ちがあるじゃないか・・・」

古泉「!」

古泉「・・・・・・」

古泉「ウ・・・ウウッ・・・・・・・グスッ」

森さん「抗えない運命というものはある。だがそれは・・・お前のせいじゃないんだ」

森さん「だから・・・」

森さん「今は泣いていい」

102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 17:18:34.92 ID:rerg02Qq0

今日も誰もこなかった。

いいんだ。

いいんだこれで・・・。

誰も来ないほうが心が落ち着く。

そんなことを考えながら

俺はただ、ひぐらしの声を聞く。

103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 17:19:39.26 ID:rerg02Qq0

長門「飲んで」

朝倉「・・・嫌よ、おいしくないもの」

長門「飲まなければまた苦しむことになる」

朝倉「・・・・・・それは・・・分かってるけど」

長門「・・・これはあなたのため。少しの辛抱」

朝倉「少しですって!?あなたはこれがどれだけ苦いかしらないから・・・」

長門「・・・私は・・・」

朝倉「もう帰って!ちゃんと飲むから・・・もう帰ってよぉ!」

長門「・・・分かった」

104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 17:20:19.39 ID:rerg02Qq0

バタン

朝倉「・・・・・・」

ガチャ

長門「どうだった?」

朝倉「だめね」

長門「・・・・・・」

朝倉「キョン君は今とても苦しんでるわ。私の演技も下手だけど・・・慎重にかつ優しく接してあげないともっとひどく追い返されるかも」

朝倉「長門さんはちょっと・・・その・・・感情に乏しいからね。もっと思いやりをもって接してあげないと」

長門「・・・私は・・・これでも気遣って・・・」

朝倉「相手に伝わってこその思いやりよ」

長門「・・・・・・」

105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 17:24:53.99 ID:rerg02Qq0

長門「彼は・・・」

長門「彼は私のせいで苦しんでいる」

長門「私の・・・ウウッ・・・せいで・・・」

朝倉「こら、しゃんとしなさい」

朝倉「彼に追い返されそうになっても・・・それでも世話をすると決めたのはあなた」

朝倉「泣いてる暇なんてないはずよ?」

長門「・・・・・・」

長門「・・・そうだった」

長門「そう決めた」

長門「行ってくる」

108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 17:29:50.85 ID:rerg02Qq0

窓の外の景色がこれほどすばらしく見えたことはない。
他人を受け入れられない今、俺の楽しみはもはやこの景色をすみからすみまで眺めることだけだった。
無機質な病室の中など見ていたくない。
景色は、遠いゆえに俺を裏切らない。


そこだけが

俺の世界だった。

109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/08(金) 17:39:29.68 ID:rerg02Qq0

扉をたたく音がする。俺は返事をしない。
俺がもはや普通のコミュニケーションがとれない状況にあると分かってから、
病院側が俺の病室を面会謝絶にするまでそう時間はかからなかった。

だからどうせこれも、手袋をつけ帽子を目深にかぶった看護士が、
まるで違う動物を見るかのような目つきで俺の様子を伺いながら部屋に飯を置いていく、
その合図にすぎないと思ってたんだ。

しかし、開かれた扉の奥にいた人物は、病院関係者ではなかった。

なるほどこいつなら、面会謝絶などものともしないだろう。
今日は窓からではなくきちんと玄関から入ってきたらしいそいつは、
看護士たちと違って俺のことをしっかりと見つめていた。

一番最初に訪ねてきてくれた時と同じ、空色のワンピースを着て。

115 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/08(金) 17:55:43.07 ID:rerg02Qq0

そういや>>1じゃなかったわ 酉つける


不思議と長門を追い出そうという気は起きなかった。それは一番最初にお見舞いに来てくれた時の、
あの安らかな時間を、そのとき長門が着ていた空色のワンピースが思い出させてくれたからかもしれない。

長門は、調子はどう?などという無粋なことは聞かない。ただツカツカと以前俺が薦めた椅子に向かい、
前と同じ位置に鞄を置いて静かに腰掛けた。

長門「これを」

今日はいやに仕事がはやいな。いっさいの無駄な動作と言動を省いてさしだされたのは、
あの群青色の薬だった。

116 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/08(金) 17:59:15.97 ID:rerg02Qq0

あれ?動作と言動っておかしいな まあいいか


長門「・・・・飲んで」

キョン「・・・・・・」

実はあれから何回か、俺はこの薬の世話になっている。
長門によれば効果はどんどんあがっているらしいが、結局病気の方もひどくなっているのでよくなったという実感はあまり湧かない。
それにこの薬、どうやら効能と味が反比例するらしく、今では一番最初に飲んだときよりも数倍まずいように感じる。

俺は今までの経験により得た「鼻をつまみながら飲むといくらかマシ」という知識に従い、
ビンの中身を飲みほした。

117 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/08(金) 18:06:16.16 ID:rerg02Qq0

俺はなんでこんなものを飲んでいるんだろう。

不味い 不味い

なんでコイツはこんなものを飲ませるんだ?

・・・・出て行ってくれよ

キョン「出て行ってくれ!」

長門「!・・・落ち着いて」

キョン「黙れ!」


谷口「うぃーっす!って・・・おい!」

国木田「キョン!なにをやってるんだ!」

ちょうど俺を訪ねてきてくれた谷口と国木田のおかげで、俺は長門を攻撃せずにすんだ。
受付で面会謝絶の知らせを聞いた後、こっそりと俺の病室まで来たところ、俺のどなりごえが聞こえたらしい。

118 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/08(金) 18:14:19.00 ID:rerg02Qq0

国木田「びっくりしたよ。入ったらキョンがいきなり長門さんに襲い掛かろうとしてるんだもん」

谷口「長門〜、ナースコールを使えばよかったじゃねーか」

長門「その・・・びっくりしてて」

国木田「でもナースコールで誰かが来てたら僕たち追い出されてたけどね。長門さん、大丈夫?」

長門「・・・コクッ」

まったく恥ずかしいところを見られてしまった。
そして、こんな俺の暴走を目の前で見ても、なお俺のもとを離れないでいてくれるこいつらに俺はまたも感謝した。

谷口がちらほらワンピースの話題をだす。そりゃこいつらには私服の長門は新鮮だろうからな。
国木田も「似合ってると思うよ」とか「その色は好きだな」とか合わせてやがる。
こんな積極的なやつだったっけ?まあ谷口はいつもどおりだが。

121 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/08(金) 18:25:44.27 ID:rerg02Qq0

結局、それは俺に気を使ってくれてのことだったのかもしれない。
その場は終始和やかだったし、おかげで俺も随分楽になった。
発作もおきなかったしな。

国木田「キョンは運命って信じる?」

キョン「なんだやぶからぼうに」

国木田「もし運命があるならさ、僕たちがここにちょうどココに来たのもそのおかげだと思うんだ」

国木田「だからさ、きっと神様も、キョンに悪いことなんてしてほしくないんだよ」

谷口「そうだな。考えればすげえ偶然だからな」

キョン「そうか・・・。ありがとな」

運命か・・・。それが俺を良い方に縛ってくれるなら俺も最後まで精一杯生きてやるさ。

長門たちは谷口や国木田たちと一緒に帰っていった。
面会謝絶の件で病院にとやかくいわれていないといいんだが。

そして再び、一人になった。

124 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/08(金) 18:32:09.47 ID:rerg02Qq0

訂正wwww眠りについくってなんだwww


久々にいい時間だった。

楽しかったよ。

空はもう暗くなり、運ばれてきた飯を食い終える。


こんな風にまた話せれば・・・よかったのにな。

楽しい思い出は、それが限られたものであればあるほど逆に辛いものになる。

面会謝絶の今、もうこんな機会は訪れないかもしれない。

だからただ、今はこの思い出を覚えていたい。

そんなことを考えながら俺は眠りにつく。


その日が、俺が正常でいられた最後の日だった。

128 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/08(金) 18:36:17.09 ID:rerg02Qq0



日の光

理解できるのは それだけ

ベッド?

扉?

ぼやけた俺の頭は、それ以上の情報を拒絶する


俺自身のことははっきり分かる。聞いた話も覚えている。
ただその他の・・・

物?情報?


俺の中に・・・


入ってくるな!

129 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/08(金) 18:40:41.89 ID:rerg02Qq0

prrrrrrr

ガチャ

ハルヒ「・・・古泉君?」

古泉「涼宮さん、たったいま病院から連絡が入りました」

ハルヒ「え・・・」

古泉「危篤だそうです」

ハルヒ「・・・そんな・・・!」

古泉「僕は他の人たちにも連絡しなければいけません。先に病院へ向かって下さい」

ハルヒ「わ、分かったわ!」

ガチャン

131 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/08(金) 18:43:11.95 ID:rerg02Qq0

みくる「危篤!?分かりましたすぐ行きます」

長門「そんな・・・!昨日は・・・。・・・すぐ向かう」

谷口「なんだと!?マジか?すぐ行くぜ」

国木田「本当かい!?分かったすぐ行くよ」


古泉「連絡がつくのは・・・五人だけですか・・・」

古泉「・・・しかたありませんね。僕も急がねば」

134 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/08(金) 18:48:46.57 ID:rerg02Qq0

運命か・・・・

そうか俺がこうなるのも運命か・・・

俺がこうなることは・・・


〜病室前〜

医師「ご家族がすでにいらっしゃいます。どうぞお静かに」

古泉「容態は?」

医師「信じられないことに意識があります。しかもはっきりと」

医師「しかしかなりの危険状態であることには違いありません」

古泉「分かりました。ありがとうございます」

136 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/08(金) 18:57:28.46 ID:rerg02Qq0

ああ・・・みんなの顔が見える


親父・・・おふくろ・・・今まで育ててくれてありがとうな

妹よ・・・しっかり育って俺を安心させてくれ

朝比奈さん・・・そんなに顔をゆがめないでください。かわいい顔がだいなしです

古泉・・・いろいろ迷惑かけたな。今思えばお前は親友だったのかもしれない

谷口・・・思えば一年の最初にあっというまに仲良くなったよな。もうお前のナンパ話が聞けないと思うと残念だ

国木田・・・お前とは中学からのつきあいだな。一番付き合いが長い友人かもしれないぜ


長門・・・何度でもいうぜ。お前は何も悩まなくていいんだ。俺はお前に何度も救われた・・・


声が出ているかどうかはわからない。伝わったかどうかも分からない。だが次の言葉は、確実に声とはならなかったと思う
最後にまわしたのが失敗だったかな・・・

ハルヒ・・・今まで楽しかったよ・・・・


俺がいなくなっても・・・世界を諦めないでくれ

146 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/08(金) 19:47:44.63 ID:rerg02Qq0

世界を諦めない

それがどんな意味を持つのか

俺の家族も

谷口や国木田も

そしてハルヒ自身も分からなかっただろう

そもそもこの言葉は声になっていないのだ

それなのに・・・俺はいったい


何を望んでこんな言葉をかけたようと思ったのだろう

148 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/08(金) 19:51:12.72 ID:rerg02Qq0

世界が・・・消えるかもしれないから?

ハルヒが・・・俺のいない世界を望まないだろうから?

そんなことを考える俺は、死に際になって少し傲慢になっているのだろうか

ハルヒが自分のことを想ってくれていると考えるのはうぬぼれだろうか


世界を変えてくれる思っているのは・・・俺自身なのか

150 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/08(金) 19:57:10.82 ID:rerg02Qq0

なんども病室に来てくれて

俺に薬を渡してくれて

きっとこれまで一番俺の世話をしてくれたのは長門だろう


だがどうだ、死ぬ間際になって

思い出すのはハルヒのことばかり

そりゃそうだな

今まで俺たちの間ではいろいろありすぎた

それはSOS団のメンバー全員にもいえることだ

だが、あの時閉鎖空間に招かれたのは俺だけだ


その自負心が

ここにきて俺をうぬぼれさせるのか

151 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/08(金) 20:02:40.66 ID:rerg02Qq0

そして俺は思い出す

昨日の谷口や国木田との会話のこと

長門が薬を渡してくれたこと

古泉や朝比奈さんが、わざわざ帰る前に引き返してもういちど見舞ってくれたこと

鶴屋さんやENOZのメンバーがライブにさそってくれたこと

そして俺を一番に想ってくれていたであろう家族のこと


想い出は   平等だ

153 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/08(金) 20:05:21.91 ID:rerg02Qq0

声になるかわからない

だけど

最後にみんなに

お願いがあるんだ


どうか笑ってくれないか


今まで散々みんなをはねつけてきた俺だけど


どうか笑ってくれないか


最後の記憶は、みんなの笑顔にしたいんだ


だから


どうか


笑ってくれないか

155 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/08(金) 20:08:03.42 ID:rerg02Qq0

見えたかどうか分からない


いやきっと見えた


伝わった


ありがとう


ありがとう


さようなら


さようなら

157 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/08(金) 20:13:56.87 ID:rerg02Qq0

世界は変わったのか


世界は消えたのか


今は何も分からない


俺は歩いている


前を見て歩いている


歩いている


第一部 完

197 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/08(金) 22:46:20.56 ID:rerg02Qq0

ここは・・・どこだ


戸惑いつつも、俺は歩みを止めない


何も見えない


・・・いや、「暗闇」が見えている


自分でもなにをいっているのか分からなかったが、不思議とそんな感じがしていた


第二部

198 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/08(金) 22:46:41.23 ID:rerg02Qq0

なぜ歩みを止めないのか

何も見えないのに

それは

先に待っているから?

誰かが待っているから?


俺はやがて歩みを止める

一人目だ

201 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/08(金) 22:49:15.99 ID:rerg02Qq0

長門「・・・・・・」

キョン「よう。ここはどこだ?」

長門「・・・ここは、涼宮ハルヒが作り出した閉鎖空間」

キョン「やっぱり作り出しちまったのか。だが死んだはずの俺がここにいるのはどういうわけだ?」

長門「正確にはあなたは死んでいない」

202 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/08(金) 22:49:40.18 ID:rerg02Qq0

キョン「本当か?」

長門「涼宮ハルヒは・・・あなたが死ぬ直前に世界を崩壊させた」

キョン「なんだと?じゃあ・・・世界は・・・」

キョン「世界は・・・消えちまったのかよ・・・」

長門「そうなる」

204 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/08(金) 22:54:21.87 ID:rerg02Qq0

やっぱりあいつにとってはかなりの衝撃だったってわけか。嬉しい反面、やりすぎだという感もぬぐえない。
世界を崩壊させるようなことをあいつは言っていたか・・・?と、一瞬思ったが、よく考えたら死ぬ間際の俺の
耳にはあいつらの声はほとんど届いていなかったな。

キョン「なあ長門。あいつは・・・俺の死に際に立ったハルヒはどうだった?」

長門「あなたの名前を何度も呼んでいた。とても取り乱していた」

世界を崩壊させちまうくらいに・・・か。それと長門、呼んでいたのは俺の名前じゃなく俺のあだ名だと思うぞ。

206 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/08(金) 22:56:19.04 ID:rerg02Qq0

キョン「ところで体もなんともないのはなぜだ?」

長門「ここはただの閉鎖空間ではない。前の世界での情報は全て前の世界といっしょに消滅した」

長門「今ここにあるのは、涼宮ハルヒの記憶にもっとも強くやきついた私たちのイメージを元に、私たちの意志が可視的になった物」

なるほど。俺たちの意志があるから記憶もあるし、ハルヒの中のイメージを元にしてるから俺もお前も制服なのか。

207 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/08(金) 23:03:02.48 ID:rerg02Qq0

しかしさすがにショックだった。俺の家族も消えてしまったのか?他の連中は?そこまで考えて、
俺は質問に答えてもらっていないことに気がついた。

キョン「長門、俺がここにいるのはどういうわけだ?いやお前も・・・他の連中も来ているのか?」

長門「来ている。涼宮ハルヒの作り出したSOS団のメンバーは本人を除いて全員」

キョン「ハルヒ自身は来ていないのか?」

長門「涼宮ハルヒの意志は更に別の空間にいる。無意識下で新しい世界を創造中」

キョン「ここはその一時避難所みたいなものか」

長門「そう。新世界の創造が終わればこの世界は記憶とともに消え、私たちの意志は新しい世界の元へ召喚されることになる」

211 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/08(金) 23:08:19.36 ID:rerg02Qq0

話がでかくなってきた。
まあ俺たちがハルヒに選ばれたメンバーとしてここに招かれたのは光栄だ。しかし・・・

キョン「お前ここに来たことあるのか?」

長門「ない。涼宮ハルヒが根本的に世界を作り変えたのはこれが初めて。あなたの死はそれほどの衝撃であり、それだけあなたを大切に思っていたということ」

耳まで真っ赤になった俺は、暗闇がそれを隠してくれることを望んでいた。
しかしこの暗闇、あたりは暗いのに、なぜかお互いの姿ははっきり見えるらしい。
まったく肝心なときに役に立たないな。

213 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/08(金) 23:10:50.11 ID:rerg02Qq0

キョン「だが・・・話を聞くかぎり、お前箱の世界にかなり詳しいように見えるが」

古泉「分かってしまうというやつですよ」

ニヤケ面を隠そうともせず、二人目が現れた。

214 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/08(金) 23:11:27.95 ID:rerg02Qq0

うん、これは訂正だ

キョン「だが・・・話を聞くかぎり、お前はこの世界にかなり詳しいように見えるが」

古泉「分かってしまう、というやつですよ」

ニヤケ面を隠そうともせず、二人目が現れた。

217 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/08(金) 23:15:53.51 ID:rerg02Qq0

古泉「どうも。長門さんも。またお会いできて光栄です」

キョン「ああ。で、分かってしまう、というのはどういうことだ?」

古泉「いつだかお話したでしょう?我々は涼宮さんに望まれたからここにいる。分かってしまうのだからしかたがない」

キョン「それはお前たち超能力者の話だろう」

古泉「いえいえ。望まれて存在する・・・という点では長門さんも同じですよ。特にこの空間においてはね」

キョン「だが俺には『分かってしまえ』ないんだがな」

古泉「それはしかたのないことです」

古泉「あなたは普通の人間ですからね」

218 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/08(金) 23:20:56.65 ID:rerg02Qq0

なにやら釈然としない。
俺は古泉にもう一度詳しく聞こうとしたのだが、さすがに止めざるをえなかった。

可憐なる三人目の招待客が登場したのではしかたない。

みくる「みんな・・・あ、ああ・・・キョンく〜ん!」

キョン「どうも、朝比奈さん」

朝比奈さんは、いつぞやの閉鎖空間から脱出した次の日のように俺に抱きついてきた。
長門は相変わらずの無表情だ。古泉はニヤニヤしながら俺を見つめている。殴ってやりたい。

221 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/08(金) 23:29:00.56 ID:rerg02Qq0

キョン「なにはともあれ・・・これで全員そろったわけだな」

長門「・・・まだ」

キョン「何?」

古泉「・・・こちらへ」

古泉もなにやら知っているようだ。
朝比奈さんも、少しおびえた様子を見せつつもしっかりとしたあしどりで古泉に促された方向へ進んでいく。

キョン「長門、ここに呼ばれたのはハルヒ以外の団員だけじゃないのか?」

長門「そう。涼宮ハルヒは新しい世界でも私たちといることを望み、私たちを一旦ここに送った」

キョン「じゃあもう・・・」

長門「『呼ばれたのは』私たち四人だけ。しかしもう一人、自分の力でここに介入した存在がいる」

古泉「招かれざる・・・五人目というわけです」

228 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/08(金) 23:38:52.12 ID:rerg02Qq0

どういうことだ?この空間にハルヒが呼び寄せた以外の人間がいるってことか?

古泉「もともと今回の件・・・つまり長門さんの悪性情報があなたに影響を及ぼしたこの件は、規定事項ではなかった。そうですね、朝比奈さん?」

みくる「・・・はい。未来の上司によれば、これは最初から規定事項だったことではなく、いわば後から書き加えられた規定事項なんだそうです」

みくる「そもそも規定事項が変更されるなんて、よほどのことがないかぎりありえません」

古泉「しかしそれは実際にそれは起こった。つまり・・・」

長門「それだけの力を持った者が動いたということ」

キョン「じゃあそいつが今回の件の黒幕ってことか?」

古泉「それがその人物の意図した結果かは分かりませんが」

240 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/08(金) 23:49:49.88 ID:rerg02Qq0

キョン「そいつが狙ったとおりにはいかなかったってことか?」

古泉「この世界には流れというものがありますからね。雰囲気といいますか・・・」

古泉「まあそのことに関してはもっと詳しく教えてくれるでしょう・・・、彼がね」

242 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/08(金) 23:50:12.37 ID:rerg02Qq0

いつのまにか、目の前には一人の人間がいた。角度が悪く顔は見えない。
片ひざをたて、静かに座っている。どこかで見たことがあるような気がする。
それにこれは・・・北高の制服?

「やっぱり来ちゃったか」

黒幕という割には疲れた声だ。

「残念だよ。やっぱりこれうなるのか・・・」

俺はその声に聞き覚えがあった。さっき聞いたばかりのような・・・

「こうして会うのは初めてだねキョン」

いいながらそいつはこちらを向き、そして俺は凍りついた。

まさか・・・そんな・・・ばかな・・・そんなことが・・・

「病院でも聞いたけど・・・あれからいろいろあったしね。・・・改めて聞こうかな」


国木田「キョンは・・・運命を信じるかい?」

250 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/08(金) 23:55:04.07 ID:rerg02Qq0

理解と受容は違う

頭で分かっていても、心が受け付けないってやつだ

俺は今まさに、そんな状況に直面していた


中学時代からの付き合いだ

SOS団よりもずっと長い


そんな友人が・・・今目の前で・・・

黒幕として佇んでいた

252 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/09(土) 00:01:24.00 ID:3Ctb6BEx0

キョン「どういうことだよ」

国木田「・・・・・・」

キョン「お前が・・・俺たちを巻き込んだのか?」

国木田「そうなるね。言い訳をするつもりはないよ」

言い訳なんてしてもらいたくない。だが理由は知りたかった。

キョン「どうしてこんなことを・・・?」

国木田「・・・生きるためかな」

257 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/09(土) 00:07:27.57 ID:3Ctb6BEx0

キョン「なんだと?」

国木田「僕はね、朝比奈さんのように時を移動することも、古泉君のように超能力を使うことも、長門さんのように情報を操作することも専門じゃない」

国木田「でも僕には、今あげたどの三人にもない力がある」

国木田「僕はね、世界を超えることが出来るんだ」


その力に、思うところはあった。
記憶のそこから浮かび上がってきたのは、ハルヒのあの自己紹介。

キョン「じゃあお前はまさか・・・」

国木田「お察しのとおり」


国木田「・・・僕は異世界人、涼宮さんが集めるべき最後のピースだよ」

263 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/09(土) 00:11:08.65 ID:3Ctb6BEx0

キョン「・・・異世界人?」


そう、たしかにいなかった

ハルヒが望んだはずなのに

俺たちのもとへはこなかった

いつか来るんじゃないかとは思っていたさ

だが・・・国木田が・・・異世界人?

予想の斜め上をさらに超える意外性に、

俺は戸惑いを隠せなかった

267 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/09(土) 00:18:34.72 ID:3Ctb6BEx0

国木田「僕は・・・普通の人間とはあきらかに違う時間の流れを生きている」

国木田「その点では・・・未来人と少し似ているかもしれないね」

朝比奈さんがビクッと肩を震わせる。だがおびえているわけではないようだ。

国木田「僕はもういくつもの世界を見てきた。でもそれは違う世界じゃない。一つの世界なんだよ」

国木田「ひとつのゲームを・・・何週も繰り返している感じかな」

国木田「終わりはあるけど、違いはない」

話している国木田は、さっきの声を聞いたときも思ったが具合が悪そうだ。

キョン「おい・・・お前大丈夫か?」

国木田「大丈夫・・・まあ・・・最後まで聞いてよ」

大丈夫といいながら、しかし国木田はそこから立とうとはしなかった。

270 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/09(土) 00:28:39.15 ID:3Ctb6BEx0

キョン「同じ世界が繰り返されるってのはどういう意味だ?」

なんとなく分からなくもないが。

国木田「言葉どおりだよ。この世界、正確には前の世界は、もう何回も何回も繰り返しているんだ」

国木田「あるとき突然終わり、また始まる。ある一点から先にはいけないんだ」

国木田「それはもちろん涼宮さんの力によるものだよ」


国木田「僕は異世界人ゆえに、一つ悲しい性質をもっている」

国木田「僕は『異世界人』でなければならないんだ。だから、必ず二つ以上の世界が存在していないといけない」

国木田「いつまでも縦に閉じた一のつ世界にいると、異世界人でいられなくなってしまうのさ」

国木田「まあつまり・・・死ぬってことなんだけどね」

274 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/09(土) 00:39:11.20 ID:3Ctb6BEx0

キョン「死ぬ・・・」

国木田「うん」

国木田「異次元空間なら自分で作れるんだ。でもそれはあくまで僕の作り出した『擬似異世界』。違う世界とまでは呼べない代物だ」

国木田「僕は生まれたときから異世界人だった・・・と、記憶している」

国木田「しかし、それは涼宮さんが三年前、いや四年前に起こした情報爆発の結果、僕に植え付けられた偽りの記憶かもしれないんだ」

国木田「・・・だけど僕は異世界人だからね。『世界』を変える涼宮さんの力も、『異世界』には影響力を及ぼせなかったのかもしれないし・・・」

国木田「そしてそうでないのかもしれない」

国木田「現に僕は、『涼宮さんに願われたにもかかわらず』今まで君たちの前に異世界人として現れたことはないし、SOS団にも加わっていない」

キョン「・・・だが・・・今まで異世界というものを経験したことがないなら、どうして自分に今あげたような力があると分かるんだ?」

国木田「それは古泉君たちと一緒さ」

国木田「分かってしまうんだからしかたがない」

276 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/09(土) 00:46:48.02 ID:3Ctb6BEx0

国木田「涼宮さんが世界をループさせる時が来ると、僕はさっきあげた擬似異世界空間でそれをやりすごした」

国木田「イメージは僕自身の力、なら次の世界に受け継げるものは・・・分かるよね?」

キョン「記憶・・か」

国木田「そのとおり。そうやって僕は記憶を失うことなく、今まで繰り返される世界を見てきたんだ」

国木田「でももう・・・それも限界でね。いよいよ異世界人としての自分が保てなくなってきた」

国木田「別にループが始まる一点より先にいけなくてもいい。ただ生きるために、新しい世界に行きたかったんだ」

国木田「そこで僕は考えた。涼宮さんに・・・」

国木田「新しい世界を作ってもらおうとね」

279 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/09(土) 00:56:07.57 ID:3Ctb6BEx0

国木田「そのためには涼宮さんがもういやだと強烈に考えるほどのインパクトが必要だ」

古泉「大切な人が・・・消える・・・とか?」

久しぶりに国木田以外の声を聞いた気がする。

国木田「・・・そうだよ」

国木田「僕は長門さんの管理する悪性情報に異次元から干渉した。本来ありえない、『有機生命体への感染』が起こるようにね」

国木田「もっとも情報の影響をうけやすいのは、自分の持つ情報量が一番少ない人間だ」

国木田「長門さんが普段接触する人間は五人。朝比奈さんや古泉君はすでに未来人、超能力者として一般人よりはるかに多い情報を持っている」

国木田「そして涼宮さんは・・・いうまでもないね。となれば感染する可能性があるのは・・・」

キョン「・・・俺だけ・・・か」

国木田「・・・そうだよ」

281 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/09(土) 01:08:23.68 ID:3Ctb6BEx0

国木田「・・・もっと怒れよキョン。僕を殴ったっていい」

国木田「僕は・・・自分の命惜しさに・・・」


国木田「友達を・・・犠牲にしようと・・・したんだ」


言葉が出なかった

国木田が異世界人

そして俺を亡き者にしようとした張本人

そんなことが・・・簡単にうけいれられるだろうか

そして混乱する俺の前で

国木田の体が横にぐらりと傾いた

284 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/09(土) 01:17:09.14 ID:3Ctb6BEx0

キョン「国木田!」

俺があわてて国木田の下へかけよると、古泉も急いで国木田のもとに寄る

俺を殺そうとした奴を相手に、俺は何をやっているんだろう

だけど・・・

キョン「分かるよ国木田・・・」

キョン「分かるさ」

国木田「いいや分からないよ」

キョン「・・・!どうしてだ?」

国木田「ずっと一人で・・・死に追われ・・・自分が誰かの力によって作り上げられた存在かもしれないと悩み続ける苦しみが・・・本当に分かる?」

285 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/09(土) 01:22:18.04 ID:3Ctb6BEx0

想像を絶する苦しみだろう。たしかに俺には分からないかもしれない

キョン「だが自分の命がかかっていたら、きっと俺も・・・」

国木田「いいや、キョンはやらないよ」

国木田「キョンはそんなことしない」

国木田「長い付き合いだ・・・それくらい分かるよ」

キョン「なら俺は長い付き合いにもかかわらず、国木田のことをきちんと理解してやれなかったということになるな」

国木田「・・・そういうつもりじゃ・・・」

キョン「国木田!お前も新しい世界へ行けば生きながらえられるんだろ?」

キョン「それからやりなおせばいいじゃないか」


国木田「・・・もう、無理なんだよ」

287 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/09(土) 01:33:13.50 ID:3Ctb6BEx0

キョン「なんでだよ!?」

古泉「僕たちがここにいるからでしょう」

キョン「何?」

国木田「・・・僕は自分の作り出し空間に入って・・・そしてここに吸収されてしまった」

国木田「まさか涼宮さんが・・・わざわざ君たちのために空間を作り、そこに呼び出すなんてことをするとは思わなかった」

国木田「涼宮さんの作った・・・空間のほうが・・・僕のそれよりすっと強大だ・・・。だから僕は・・・この空間に吸い寄せられた」

国木田「もう僕は・・・自分の空間に戻ることは・・・出来ない。そしてこの空間から次の世界へ行けるのは、涼宮さん自身に招かれた君たちだけだ」

国木田「こんな空間をつくりだしてしまうほど・・・涼宮さんがそれほどまでに・・・君たちのことを大切に思っているとは・・・本当に思わなかったよ」

国木田「僕はこの空間からでることはできない・・・。もう・・・おわりなんだ」


そのとき、なにもない虚空にひびが入り、閉鎖空間の崩壊が始まった

289 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/09(土) 01:40:33.01 ID:3Ctb6BEx0

古泉「涼宮さんが新世界の創造を終えたようですね・・・」


今までの思い出が頭を駆け巡る

中学

高校

そうだ

一番長く付き合ってきたのはコイツなんだ・・・

キョン「国木田!」

国木田「・・・何?」

キョン「お前が自分に自信がもてなくてもよ、俺の中にはお前の思い出がしっかり残ってる。俺は四年前よりも前から・・・お前が存在していたと断言できるぜ!」

国木田「ありがとう・・・キョン・・・」

キョン「国木田!しっかりしろ!」

国木田「長門さん・・・本当にごめん。僕のせいで・・・いらぬ後悔をしてしまったと思う。それから・・・いつか見た長門さんのワンピースは・・・よく似合っていたよ」

国木田「朝比奈さんも古泉君も・・・ごめんなさい」

国木田「キョン・・・最後に・・・本当にごめん・・・。こんなこといえた立場じゃないけど・・・楽しかったよ」

キョン「国木田!」

291 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/09(土) 01:43:20.61 ID:3Ctb6BEx0

国木田を立ち上がらせようとする俺を、長門が止める

そうか・・・コイツは・・・ハルヒに選ばれてないから・・・

古泉や朝比奈さん、そして俺や長門の体が消え始める

振り返ったとき・・・もうそこには何もなかった

誰もいなかった

でも

最後に

さようなら、と聞こえたような気がした

292 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/09(土) 01:46:35.89 ID:3Ctb6BEx0

キョンたちは・・・いっちゃったか


なんであんなことしたんだろうな

うらやましかったのかな・・・キョンたちが

そこに自分がいないことが悲しかったのかな


みんなと一緒に・・・あそんでみたかったな


自分の命さえも・・・涼宮さんにあたられたものかもしれない

でも、そうは信じない

僕という人間は自分の意志で存在していたと信じたい

293 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/09(土) 01:47:54.21 ID:3Ctb6BEx0

そうか・・・

もしも神様がいて

もしも運命があって

もしもその神様が涼宮さんだったとしたら


僕は・・・一度でいいから・・・


神に・・・抗ってみたかった

294 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/09(土) 01:49:32.21 ID:3Ctb6BEx0

もし僕がいなかったら


みんなはどうしていただろう


もし僕がいないと分かったら


誰か・・・泣いてくれるかな


キョンが・・・泣いてくれるかな


また・・・会えると良いな・・・


また・・・会いたいな・・・

295 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/09(土) 01:54:00.18 ID:3Ctb6BEx0

世界は巡る


世界は戻る


そして今、世界は変化をとげたらしい


新しい世界でも、俺は記憶を失わなかった

それは、俺の持つ情報量が少ないがゆえに記憶を保存しておくスペースがあったからかもしれない


でも、きっとそうではないと俺は思う


崩れ行く世界から旅立ったとき


忘れないで・・・という声が


聞こえた気がするから

299 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/09(土) 02:03:36.35 ID:3Ctb6BEx0

長門も朝比奈さんも古泉も、まだハルヒの傍若無人っぷりにはいまいち慣れていないらしい

朝比奈さんは日々メイドの修行をさせられ

古泉は相変わらずのイエスマン


そして長門は・・・相変わらずの読書魔だ


でも「アイツ」はもういない


俺はといえば・・・やっぱり雑用を押し付けられる毎日


変わったことといえば・・・そうだな


自分の部屋に・・・小さな写真たてがひとつ増えたことくらいか

301 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/09(土) 02:11:33.38 ID:3Ctb6BEx0

ふと、長門の呼んでいる本の題名が気になる

キョン「長門、何を読んでんだ?」

長門「・・・・・・」

長門は無言で表紙を見せる

タイトルは・・「異世界人」

あまりにストレートすぎて俺はめまいがした

やはり・・・かすかに記憶があるのだろうか


よし、今日、うちに誘ってやろう

302 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/09(土) 02:15:31.11 ID:3Ctb6BEx0

なあ長門

見せたい写真があるから・・・うちまで来ないか?

大事な写真でな、家からは出したくないんだ

きっとお前も気に入るぞ

待ってるから・・・きっと来てくれよ


長門は律儀にも、一旦家に帰ってから来てくれたらしい


家の窓から、長門が歩いてくるのが見える


いつだったか・・・あいつが似合うといっていた


あの空色のワンピースを着て




307 名前: ◆Mene.OWFJw [] 投稿日:2008/08/09(土) 02:18:43.89 ID:3Ctb6BEx0

終わりです
こんな遅くまでかかってしまい申し訳ない
見ていてくれたみんなにもいろいろ要望はあっただろうし、
ん?なところもあるかもしれないけど
これが俺の限界だ

だけど何よりもこの遅筆を詫びたい。すまんかった
最後までおつきあいありがとう

では



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