キョン「おいハルヒ、さっきからなに見てるんだ?」


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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/05(火) 18:45:37.66 ID:RZnAHkYS0

俺は背もたれに寄りかかり、少し仰け反った姿勢でハルヒに質問を投げかけた。

「うるさいわね!どうでもいいでしょ!」

うっとうしいから喋りかけるなという口ぶりだ。
ハルヒは依然として熱心にパソコンのディスプレイを眺め続けている。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/05(火) 18:47:02.85 ID:RZnAHkYS0

やれやれ、今日のハルヒは少しおかしい。
部活動開始時からずっとこんな調子なのだ。一体何を見ているのか気になるのも無理はあるまい。
静かにネットサーフィンするのはけっこうなことだが、こいつの場合はいつ突拍子もない行動を取るのかわからん。
しかもいつもハルヒが行動を起こすのは、こんな風に静かになった時期の直後なのである。
嵐の前のなんとやらという言葉はまさにこいつのためにあるようなものであって・・・

「どうしたんですか?あなたの番ですよ。」

俺の思考をさえぎってにやけ顔で話しかけてきたのは古泉だ。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/05(火) 18:48:41.87 ID:RZnAHkYS0

「投了なさいますか?」

「俺はこんな圧倒的勝利の目前で投了するほど馬鹿じゃねぇよ。」

俺と古泉はいつものように将棋を指していた。
また勝敗もいつものように、あっさりと結してしまうのだ。

「王手だ。というかもう詰みだな。古泉、お前もう少し強くなったらどうなんだ?」

「おや?もう詰みですか?いやまだ王の逃げ道はあるはずです。」

古泉が必死に盤上を眺めている間に、俺はハルヒのもとへと行った。
もちろんハルヒがパソコンで何を調べているのか確かめるためだ。

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/05(火) 18:52:00.63 ID:RZnAHkYS0

ディスプレイを覗き込むとそこには、霊がどうとか、ポルターガイストだとか、
オカルト系のサイトが映し出されていた。
そのサイトの中央には眉毛の濃い男性の写真があり、その男性の紹介文と思しきものが書かれていた。

「・・・霊能力教師?」

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/05(火) 18:54:19.52 ID:RZnAHkYS0

俺がそう呟くとハルヒが突然言った。

「キョン!今週の土曜に会いに行くわよ!」

「・・・誰にだ?」

「この霊能力教師に決まってるじゃない!実際に会って話を聞くのよ!!
そして左手を見せてもらいましょう!!」

「・・・なぜ手を見せてもらう必要があるんだ?」

「あんたこの記事読んでなかったの?この教師の左手は「鬼の手」なのよ。」

開いた口が塞がらないとはよくいったものだが、本当に口が塞がらなくなるんだな。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/05(火) 18:58:30.46 ID:RZnAHkYS0

俺はため息を一度つき、こうハルヒに言った。

「お前はこんなゴシップ記事に信憑性があると思うのか?行ってもがっかりするだけだぞ!」

「あたしが行くって決めたら、絶対行くの!団長命令なんだから!みんなもいいわよね?」

そう言ってハルヒは未来人、宇宙人、超能力者に賛同を求めるような眼差しを向けた。

「わ、わたしは行ってもいいです。」

「団長の仰せのままに。」

「・・・構わない。」

俺以外の団員は絶対服従である。

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/05(火) 19:01:32.50 ID:RZnAHkYS0

そしてハルヒはほら見ろといわんばかりの顔つきで俺を見下しこう言った。

「あんたも来るのよ!!いいわね!!」

「・・・わかったよ。」

俺が仕方なく同意の意を示すと、ハルヒは満足したようで
再びパソコンのディスプレイに目をやった。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/05(火) 19:03:49.62 ID:RZnAHkYS0

言い負かされた俺が席に戻ってくると目の前のにやけ顔が話しかけてきた。

「なかなかいいじゃありませんか?僕個人としては楽しみですが。」

「何が楽しみだ。どうせまた面倒なことに巻き込まれるに決まってるだろうが。」

「いえ、今回は一概にそうも言い切れませんよ。」

「どういうことだ?」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/05(火) 19:07:00.06 ID:RZnAHkYS0

「今までは、閉鎖空間や野球大会など、確かにあなたにとって面倒なものだったかもしれません。
しかし今回は違います。涼宮さんはすでに「霊能力者」と思われる人物を見つけ、その方に会いに
行こうとしている。このことはつまり我々に似た者が他にも存在している可能性が高い
ということになります。」

「おいおい、まさかそいつが仲間入りする可能性があるってことかよ。
これ以上ややこしいメンバーが増えるのは勘弁してくれ。」

「まぁこれはあくまで僕の推測にしか過ぎませんが、あながち間違いではないと思いますよ。
幸い「霊能力者」のポストに就いている団員はいませんしね。」

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/05(火) 19:12:31.49 ID:RZnAHkYS0

「ちょっと二人とも!!なにこそこそ喋ってるのよ!!」

その時ハルヒが訝しそうな目を向けて俺たちに言った。

「何でもない。男の話だ。」

「何よそれ!!どうせキョンが古泉君にやらしい話をしてたんでしょ?」

まったく人を変態呼ばわりとは失礼なやつだ。そんなハルヒを無視して俺は古泉に聞いた。

「そんなことより古泉。王の逃げ道見つかったか?」

「・・・参りました。」

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/05(火) 19:14:31.28 ID:RZnAHkYS0

翌日。
一日中後ろの席から聞かされる霊の話で疲れ果てた俺は、ハルヒから逃げるように部室へと向かった。
まったく土曜日が憂鬱である。
部室の前に来ると、ドアをノックし朝比奈さんの着替え途中であるかどうかの確認作業を行う。
しかし、返事がない。
俺が一番最初なんて珍しいなと思いつつドアを開けると、

「あ、朝比奈さん。いたんですか?」

そこには朝比奈さんがいた。しかし何か様子がおかしい。
メイド服には着替えておらず制服のままでイスに座り、頭を抱えているのだ。

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/05(火) 19:16:14.94 ID:RZnAHkYS0

「大丈夫ですか?気分が優れないんだったら、保健室に行きましょう。
ハルヒには後で言っておきますから。」

「・・・。」

それでも何も答えないので、俺は心配になり顔を覗き込んだ。
すると次の瞬間、なんと朝比奈さんは突然俺の腕に噛み付いてきた。

「オォォォォォォ・・・・。」

「うわぁぁ!!朝比奈さん!!どうしちゃったんですか!!」

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/05(火) 19:42:30.11 ID:RZnAHkYS0

人間の歯とはいえ、本気で噛み付かれるとかなり痛い。血が出てきたがそれでも朝比奈さんは離さない。

「ぐあぁ!!いててて!!止めてください朝比奈さん!!」

俺は仕方がないので力でねじ伏せることにした。

「いててて!!やめて!!や、やめ・・・止めろこの雌豚!!!」

「ギャァァァァ!!」

さすがに顔を傷つけるのはまずいので、内藤ばりのボディーブローを朝比奈さんのレバーに打った。
すると少しひるみ口が離れたので、俺はその隙を衝き、払い腰→袈裟固めのコンボを完璧に決めた。
どうして朝比奈さんがこんなに狂ってしまったんだ!!
日頃のフラストレーションがここで爆発してしまったのだろうか。

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/05(火) 19:44:08.31 ID:RZnAHkYS0

「ちょっとキョン!!何勝手に一人で部室行ってる・・・ってエェェェェェェ!!?」

このタイミングでハルヒが入ってきやがった。また面倒なことになったぞ。

「キョン!!か弱いみくるちゃんに何本気で袈裟固め決めてるのよ!!」

「ぐおっ!!」

ハルヒがお得意のドロップキックを俺にかましたおかげで朝比奈さんは解放されてしまった。

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/05(火) 19:47:09.76 ID:RZnAHkYS0

「みくるちゃん!大丈夫!?」

「オォォォォォォ・・・・。」

「え?」

ハルヒが危ない!!そう思い俺がハルヒをかばいに行こうとすると、

「いってぇぇぇぇぇぇ!!」

朝比奈さんは目の前にいるハルヒではなく、再び俺を狙ってきたのだった。しかも今度は足に噛み付かれた。
なぜハルヒを狙わん!!

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/05(火) 20:08:57.90 ID:RZnAHkYS0

「どうしちゃったのみくるちゃん・・・。」

「おいハルヒ!!朝比奈さんの手を縛るんだ!」

「あたしがいじめすぎたのが原因ね・・・ごめんねみくるちゃん。」

「いててて!ハルヒ!懺悔はいいから早くしろ!!」

その後、遅くやってきた古泉と長門のおかげで
朝比奈さんの手足を縛り、口にはガムテープをつけることに成功した。
ちなみに俺は保健室に行き傷口を治療してもらった。幸いにも傷は浅かった。

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/05(火) 20:45:43.21 ID:RZnAHkYS0

「いやぁ驚きましたよ。一体彼女に何があったのでしょうか。」

「まさかいきなり全力で噛み付いてくるとはな。」

「とり憑かれたんだわ。」

「は?」

「みくるちゃんは霊にとり憑かれたのよ。」

「なんでそう言い切れるんだよ。」

「霊にとり憑かれた人間はこういう行動を起こすことがあるってこの前ネットでみたわ。
除霊してもらわなきゃまずいわね・・・そうだわ!
今から霊能力教師のところへ行きましょう!除霊してもらうのよ!」

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/05(火) 21:05:52.33 ID:RZnAHkYS0

俺はこのときハルヒに聞こえないように小声で長門に質問していた。

「長門、これは本当に心霊現象なのか?」

「おそらくそう。」

「お前がなんとかすることはできないのか?」

「できない。これは統合思念体も理解できない概念のもの。」

長門がどうすることもできないなら仕方がないか。
朝比奈さんのためを思い、俺たちは童守小学校へと向かった。

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/05(火) 21:10:18.94 ID:RZnAHkYS0

長門に朝比奈さんを眠らせてもらい、俺がおんぶして行くこととなった。
怪我人に無茶させやがって。ハルヒ曰く「下っ端」の俺はこういう機会でしか役に立たないからだそうだ。

小学校は比較的に近い場所にあった。
校門に入ると、学校はすでに終わっているようで校庭には数名の生徒しか残っていなかった。

「あれ高校生だぞ。」

「何しにきたんだ?」

などと散々不審な目で見られた。
こころなしかここの小学生の体の発育がいいような気がする。

87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/05(火) 21:16:54.11 ID:RZnAHkYS0

職員室でハルヒは近くにいるひげが大量に生えた不潔な教師に話しかけた。

「すみません。鵺野鳴介先生はいらっしゃいますか?」

「鵺野君?あぁなるほど。おーい!鵺野くん!」

ひげ面の教師に呼ばれて振り返った男は、間違いなくあの写真の教師だった。カップラーメンを食べている。
どうやら食事中だったらしい。鵺野教師は俺がおんぶしている朝比奈さんを見ると急いで駆け寄ってきた。
カップめんを喰いながら。

「む・・・これは憑かれているな。よしちょっと場所を移そう。」

鵺野教師にそう促され、俺たちは別室にやってきた。

92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/05(火) 21:34:18.68 ID:RZnAHkYS0

依然として眠っている朝比奈さんをイスに座らせ、鵺野教師の除霊とやらが始まった。
窓から何人かの小学生が覗き見しているのが気になる。

「みくるちゃんは助かるの!?」

ハルヒが心配そうな表情で尋ねる。

「大丈夫だ。ただの低級な動物霊にとり憑かれたに過ぎん。では始めるぞ。」

「南無大慈大悲救苦救難・・・とり憑きし霊よ!!姿を現せ!!」

「オォォォォォォ・・・。」

そう唱えた瞬間!朝比奈さんの体から何かまがまがしい化け物が現れたのだ。

「あれが・・・霊?」

96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/05(火) 21:47:00.38 ID:RZnAHkYS0

長門以外の全員が絶句していた。
そして鵺野教師はおもむろに左手の手袋をはずすと、そこには爪の鋭い赤い手が出てきた。
どうやら鬼の手の噂はマジだったようだな。

「やはり鬼の手は本当に存在していたのですね。」

珍しく真剣な表情の古泉である。
鵺野教師は鬼の手を振りかざし、化け物を切り裂いた。

「はっ!!!」

「ギャァァァァァァァァァァ!!」

103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/05(火) 22:15:59.41 ID:RZnAHkYS0

除霊が完了すると再び手に手袋をかぶせ、鬼の手を隠した。

「除霊は終わったよ。もうこの娘は心配ない。あと何分かしたら目を覚ますだろう。」

俺たちは呆然としていた。霊能力教師の実力に圧巻されたのだ。
すると鵺野教師は俺たちに言った。

「少し時間をくれないか?話があるんだ。」

110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/05(火) 22:29:35.81 ID:RZnAHkYS0

朝比奈さんが目を覚ますと、真剣な表情で鵺野教師は語り始めた。

「朝比奈くんといったかな?今までにこういった経験は?」

「い、いえ、ありません!初めてです。」

「俺が見る限り、彼女にはさほど強い霊感が見られないし、今までにそんな経験もない子が
いきなりとり憑かれるというのはふつうじゃ考えられないことなんだ。」

「じゃあ何でみくるちゃんはとり憑かれちゃったのよ!!」

「とり憑かれた場所の霊的磁場が強かった場合、可能性はあり得る。」

「残念ながら今まで北高で心霊現象が起きたという話は聞いたことがありませんね。」

「いやそれともうひとつ、霊感の強い人間が近くにいる場合だ。」

112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/05(火) 22:42:54.12 ID:RZnAHkYS0

そして鵺野教師はいきなり俺に顔を向けこう言った。

「おそらく君の霊力に引き寄せられたんだろう。」

なんだって?俺に霊感があるとでも言いたいのか。
俺がそう言おうとする前にハルヒが先に突っかかって行った。

「ありえないわよ!キョンは平々凡々の代名詞とも言える存在なのよ!
霊能力なんてあるはずがないわ!!」

「いやこれは事実だ。彼からは凄い霊気を感じる。今まで様々な生徒と携わってきた俺だが、
彼ほどの霊力を持った人間を見たことがない。」

あたかも俺がすごい人間のように言いやがる。

128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/06(水) 00:38:56.67 ID:tpYbSnud0

「俺は今まで霊なんか見たことありませんし、こういう経験をするのも初めてです。
自分でいうのもなんですが、霊感なんかこれっぽっちもないですよ。」

「君は今まで霊力が潜在していたことに気付かなかっただけだ。つい最近、
何かのきっかけで自分の能力に目覚めてしまったのだろう。」

きっかけだと?そんなものは・・・・・・・いや残念ながら思い当たる節が見つかった。
どうやら俺はだれかさんのせいで霊能力に目覚めてしまったらしい。
古泉がこっちを向いて肩をすくめるポーズをしてやがる。

129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/06(水) 00:45:27.88 ID:tpYbSnud0

「ここからが話の本題だ。これからもきっと周りで霊現象が起こるだろう。
しかし、事が起こる度に俺に助けを呼ぶわけにもいかない。俺も一応担任を持っているからな。
そこで、だ。
キョン!君には霊能力者になってもらう!!」

「なんだって!?そんなものになれるわけねぇだろ!!」

「それおもしろそうじゃない!!やりなさいよキョン!!」

「修行をしてもらうからな。覚悟しろよ。」

「おいおい!!」

という風に半ば強制的に俺は修行をやらされることとなった。
毎日放課後、童守小に行かねばならんらしい。
とりあえず俺は数珠をもらい簡単な除霊法を授けた貰った。

132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/06(水) 00:53:33.84 ID:tpYbSnud0

その日の帰り。
古泉は相変わらずの調子で話しかける。

「いやぁ驚きましたね。まさかあなたが霊能力者のポジションに就くとは。」

「なんで俺が霊能力者になるんだ。まったく忌々しい。
さっきから浮遊霊がたくさん見えるし、最悪の気分だぜ。」

「しかしこれは仕方のないことだと思いますよ。あなたが原因で、あなたにしか
できないことなのですから。」

「だけどなぁ!根本的な原因はハルヒにあるだろうが!!」

「それを言っても仕方のないことです。僕たちもできるだけバックアップしていきますので
がんばりましょう。」

「はぁまったく・・・やれやれ。」

「あのぅ・・・キョンくん。」

そのとき朝比奈さんが上目遣いで目を潤ませながら話しかけてきた。

「ホントにごめんなさい!!怪我までさせちゃって・・・。」

「いえいえいいんですよ!気にしないで下さい!元はといえば俺が原因なんですから!」

「そうよみくるちゃん!謝る必要なんてないわ!
それにこいつだってみくるちゃんにがっつり袈裟固め決めてたんだから。」

「いらんことを言うな!」

137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/06(水) 01:09:43.37 ID:tpYbSnud0

それからというもの俺は毎日足しげく童守小に通った。
途中で逃げ出したかったが、ハルヒたちが引率してくるのでそうもいかない。

一週間も修行をすると俺は低級霊くらいならなんとか除霊できるレベルにまで成長した。

「すごいぞキョン!こんなにも早く成長するのはふつうじゃ考えられんからな。」

「はぁ。」

「もっと喜びなさいよキョン!ぬ〜べ〜が褒めてんのよ!?」

ハルヒはここの小学生に感化され、いつのまにか鵺野教師のことを「ぬ〜べ〜」と
呼ぶようになっていた。

138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/06(水) 01:17:59.80 ID:tpYbSnud0

「ぬ〜べ〜!!大変だ!!」

突然鵺野教師のクラスの生徒が走ってやってきた。確か立野という名前の子だったような気がする。

「どうした!?広?」

「校庭に頭が二つある馬鹿でかいやつが現れたんだ!!はやくきてくれ!!」

「・・・やはりきてしまったようだな。わかった!すぐ行く!キョン!!
君たちはここで待機していてくれ!」

139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/06(水) 01:21:02.36 ID:tpYbSnud0

「いや先生・・・俺も行かせてくれ。修行の成果とやらをここで発揮したいんだ。」

曲がりなりにも俺だって男なのだ。自分の力を試してみたい。

「・・・しかし妖怪は、霊力の高いものを襲ってくるんだぞ。君の身が危なくなる。」

「覚悟の上です。それに先生もいるんだからなんとかなりますよ。」

「まったく君というやつは・・・。まぁいい。いい経験にもなるだろうからな。
安全なところで見ているんだぞ。」

「はい!!」

「ぬ〜べ〜はやく!!」

立野少年にせかされ俺たちは校庭へと駆け出した。

143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/06(水) 01:26:31.82 ID:tpYbSnud0

どうやらいたようなのでがんばります


「ちょっとキョン!!待ちなさいよ!!」

「ハルヒたちはここにいろ!!」

「あんたなに・・・。」

走っていたせいでハルヒの声は途中でかき消された。
古泉と朝比奈さんがハルヒを止めていたのがちらっと目に入った。

校庭に出て、妖怪を目の当たりにすると俺は絶句した。
妖怪が想像以上に巨大だったためだ。
その二つ頭の巨大な化け物が斧やら剣やらを振り回して暴れているのだ。
さすがの鵺野教師も表情が固まっている。

「まずいな・・・これは両面すくなだ。とても俺一人の手に負えるものではないぞ。」

145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/06(水) 01:33:51.34 ID:tpYbSnud0

確かにこの化け物からは凄まじい霊気を感じる。
なによりサイズが違いすぎる。鬼の手を持ってしても厳しいだろう。

「ぬ〜べ〜・・・大丈夫なの?」

稲葉郷子が心配そうに言った。

「大丈夫だ。俺はお前たちを必ず守る。安心しろ。」

146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/06(水) 01:38:43.47 ID:tpYbSnud0

鵺野教師は頭をやさしくなでると、両面すくなに鋭い眼差しを向けた。
そしてすくなの元へ走っていった。

「いくぞ!くらえ!!白衣霊縛呪!!」

「グアァァァァ!!」

両面すくなが経文を体に巻きつけられ、身動きが取れない間に鬼の手で攻撃を試みる。

147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/06(水) 01:43:10.40 ID:tpYbSnud0

「南無大慈大悲救苦救難!鬼の・・・ぐぁっ!!」

しかし、あと少しのところで経文が破られ、鵺野教師は吹き飛ばされてしまった。

「ぬ〜べ〜!!」

「先生!!」

俺と生徒たちが駆け寄る。どうやら頭から血が出ているようだ。

「先生!俺も戦わせてくれ!!このままじゃみんなやられちまう!!」

「ぐっ・・・いやしかし・・・。」

「ぬ〜〜べ〜〜!!!」

その時、遠くから先生を呼ぶ声がした。

149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/06(水) 01:48:48.37 ID:tpYbSnud0

その時、遠くから先生を呼ぶ声がした。
小学生とは思えないようなプロポーションの持ち主、細川美樹である。
彼女の首が伸びているように見えるのはきっと気のせいだろう。

彼女は後ろに長髪のイケメンを引きつれてきた。


「玉藻先生つれてきたわよっ!!」

150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/06(水) 01:52:35.37 ID:tpYbSnud0

彼の姿を見とめると先生は目を輝かせた。

「玉藻!!来てくれたのか!」

「我が好敵手にこんなところで死なれてもらっては困りますからね。」

「すまない。助かった。」

どうやら彼も霊能力者のようだ。
そしてまた先生を呼ぶ声がした。

「鵺野せんせー!!私も一緒に戦わせてください!!」

151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/06(水) 02:04:10.34 ID:tpYbSnud0

今度は着物を着た美少女が空を飛んでやってきた。
後ろのほうに栗田まことの姿が見られる。どうやら彼が呼んできたようだ。


「ゆきめくん!!君もか!!」

「私先生のパートナーですよ!当たり前じゃないですか。」

「・・・みんなありがとう。美樹、まこと。助かったよ。」

「私だってぬ〜べ〜クラスの一員なのよ!こんなことくらい当然だわ!」

「そうなのら!当然なのら!!」

152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/06(水) 02:08:01.75 ID:tpYbSnud0

そうこうしているうちに両面すくなが反撃を仕掛けてきた。
俺たちと全く違う方向にいた生徒に斧を振りかざしたのだ。

「まずいっ!!」

先生が駆け出したが、どうあがいても間に合わない!!無常にも斧は振り下ろされた。
生徒に直撃したと思われたが、斧はぎりぎりのところで止まっていた。
その理由はすぐにわかった。

「長門!!」

「物理的攻撃を防ぐことなら可能。」

長門が直前にシールドを張ってくれていたのだ。やっぱり頼りになるぜ長門は。

155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/06(水) 02:13:12.07 ID:tpYbSnud0

最後に一丁


「彼女は一体・・・?」

「いや先生、それよりこいつを早く仕留めなければ大変なことになりますよ。
周りの霊気を吸収してどんどん巨大化している。」

「そうだな。みんな行くぞ!!」

「「はい!!」」

188 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/06(水) 13:10:25.61 ID:tpYbSnud0

初めに、玉藻と呼ばれるイケメンは飛び上がり攻撃を仕掛けた。

「くらえ!!妖狐火輪尾の術!!」

「グオォォォォ!!」

手から火を放ち攻撃するも全く効いていない!!

「効いていないだと・・・!!」

193 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/06(水) 13:18:04.82 ID:tpYbSnud0

「どいて変態キツネ!!私がやるわ!!」

続いてゆきめと呼ばれる少女が鋭く尖った氷をぶつける。

「オォォォォォ!!」

「効かない!!どうしてなの!?きゃあっ!!!」

「くっ!!」

二人とも先生と同じように吹き飛ばされてしまった。

194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/06(水) 13:23:19.17 ID:tpYbSnud0

「玉藻!!ゆきめっ!!大丈夫か!?」

「大したことはありません。それより問題はやつです。この妖狐の力を持ってしてもダメージ
を与えられないとは・・・。」

「一体どうしたらいいの?」

その後も三人は完璧な連携で攻撃をかわして続けていたが、すくなにダメージを与えない限り
それは意味を成さなかった。

195 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/06(水) 13:32:59.66 ID:tpYbSnud0

「こうなってはしかたがない。鬼の手を開放するぞ。」

「なんですって!?そんなことをしたらあなたの体が鬼に侵食されてしまうぞ!!」

「ギリギリのところで美奈子先生に侵食を食い止めてもらうんだ。もうそれしか方法がない。」

俺は先生が鬼と化すところは見たくない。それに

「先生!それは危険すぎる!もし失敗すれば鬼が復活してしまうことになるんですよ!」

「分かっている!しかしそれしか方法がないんだ!!」

196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/06(水) 13:37:09.32 ID:tpYbSnud0

「・・・もしそうするのなら私の体にも鬼の力を逆流させてください。
そうすれば鵺野先生の負担が減る。」

「そんなことをしたら玉藻、お前まで・・・。」

「わたしもやります!三人で鬼の霊力を分担すればかなり楽になるでしょ?」

「ゆきめまで・・・すまない。」

197 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/06(水) 13:39:32.47 ID:tpYbSnud0

三人で体を寄せ合うと、先生は鬼の力を開放し始めた。

「美奈子先生!お願いします!!はぁぁぁぁぁ!!!」

すると先生の腕はみるみるうちに鬼に侵食されていく。

「ぐぁっ!!行くぞ!!」

三人はすくなの元へと再び走っていった。


「くらえ!!鬼の手!!!!!!!」

198 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/06(水) 13:44:22.87 ID:tpYbSnud0

鬼の手が巨大化し、見事両面すくなを捕らえたかに思われれた。
だがしかし、

「なにっ!!かわした!!」

すくなは図体に似合わず俊敏な動きで鬼の手をかわしたのだ。

「ぐぁ・・・くそっ!!」

「鵺野先生!!次で決めないと私たちが持ちませんよ!!」

202 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/06(水) 14:15:51.01 ID:tpYbSnud0

「先生!!俺がやつの動きを止める!!」

俺は先生に向かってそう叫んだ。
もう俺しかいないんだ!!俺がやるしか・・・。
俺はもうただの高校生じゃないんだ。

「キョン!!危険だ!!下がっていろ!!」

「なんとかしてみせる!!おぉぉぉぉぉぉ!!」

「!!彼の霊力が上がっていく!!」

「あれはまるで鵺野先生とおなじ・・・。」

「・・・ものすごい霊力だ。」

209 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/06(水) 14:24:48.82 ID:tpYbSnud0

俺は無我夢中だった。
なぜ自分がこんな力を発揮できるのか。
今まで平凡な学生として暮らしてきた俺にこんな力がうまれるとはな。

そこらへんはハルヒに感謝すべきなのかもしれん。

「鵺野先生!彼は一体何者なんだ?我がライバルと同じ・・・いやそれ以上の力を!」

「おぉぉぉぉぉ!!!」

「オォォォォォォォォ・・・。」

「動きが止まった!!今のうちです先生!!」

「よし!!行くぞ!!」

210 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/06(水) 14:28:58.04 ID:tpYbSnud0

「南無大慈大悲救苦救難・・・
「貧狼巨門隷大文曲廉貞武曲破軍・・・

「鬼の手!!!!!!!」

「ギャアァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」

211 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/06(水) 14:34:36.65 ID:tpYbSnud0

鬼の手が胴体に直撃し、両面すくなは粉々になった。
ようやく戦いが終わったのである。

「ぐっ・・・美奈子先生!!鬼を封印してください!」

先生の体も無事元に戻った。

「キョン。君のおかげだ。助かったよ。まさか妖気封印ができるとはな。」


「君はいい霊能力者になるだろうな。アディオス。」

212 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/06(水) 14:36:16.42 ID:tpYbSnud0

俺はいろんな人から感謝の言葉を受け、とてもいい気分だった。
平凡だった俺はこういう経験をしたことがなかったからな。


まだ俺はこの後に起こる面倒に、気がついていなかったのだ。

215 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/06(水) 14:56:13.44 ID:tpYbSnud0

数日後。


「ちょっとキョン!!まだたくさん回ってないところあるのよ!!へばってないで早く行くわよ!」


「ったくわかったよ。」


その後俺はすっかり霊能力者として知れ渡ってしまい、除霊の依頼が
たくさん舞い込んで来るようになってしまったのだ。
ハルヒはそれをSOS団の活動の一環に加えて、俺は出張除霊サービスとして各地を回っているのだ。

216 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/06(水) 14:59:25.09 ID:tpYbSnud0

「キョンくん、大丈夫ですかぁ?」

「ええ、なんとか。お気遣いありがとうございます。」

朝比奈さんが優しい言葉をかけてくれるだけで疲れなんて吹っ飛びますよ。

「仕方ない。行くか。おい古泉、お前もついてこいよ。またハルヒにどやされるぜ。」

「うぅぅぅ・・・。」

「古泉?」

「・・・・じぃ。ひもじいよぉぉぉぉ!!!」

「古泉君!!どうしたの!?その顔!!」

「きゃあああ!!」

古泉はまるで何日も飲まず喰わずだったかのようにやせ細り、普段のイケメン顔とは
うってかわって凄まじい形相をしている。

217 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/06(水) 15:00:53.07 ID:tpYbSnud0

「ひもじい・・・。うおぉっぉぉぉぉぉ!!」

「・・・。」

そんな冷ややかな目で見つめるなよ長門。古泉はとり憑かれているんだ。

「ちょっとキョン!!どういうことなの!?」

「どうやら餓鬼魂という妖怪にとり憑かれたようだな。」

「古泉君は助かるの!?」

「安心しろ。俺が必ず助けてやる。」

なんたって俺は


「霊能力者だからな。」


END

219 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/06(水) 15:04:06.16 ID:tpYbSnud0

保守、支援してくれた人本当にありがとう。

それと最後らへんがちょっとgdgdになってしまい申し訳ない。


以下ぬ〜べ〜について語るスレ



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