ハルヒを殺した。


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トップ 作品一覧 作者一覧 掲示板 検索 リンク SS:マスオ「お父さんは?」サザエ「15年も前に死んだわよ」

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1 名前:電波王▲▲ ◆DD..3DyuKs [涼宮ハルヒ] 投稿日:2011/08/27(土) 18:37:37.03 妹 ID:2L2bZ6QP0 ?2BP(1602)

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嘘じゃない。本当だ。
この手で殺した。感覚が覚えている。

ナイフが肉を裂く手応えも。
噴き出す血の温かさも。
鼻をつく体液の臭いも。
嗄れた苦悶の叫びも。
なにも、かも。

忘れたいと願えば願うほど、
そいつらは色彩鮮やかに蘇る。

六月の初め、梅雨の香りが街に広がり始めた頃。
俺は、狂いかけていた。

12 名前:電波王▲▲ ◆DD..3DyuKs [涼宮ハルヒ] 投稿日:2011/08/27(土) 18:43:26.62 妹 ID:2L2bZ6QP0 ?2BP(1602)

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「あーもう、最悪」

窓の外の曇り空をそのまま映し出したような不機嫌顔でハルヒが言った。
帰宅準備に勤しむクラスメイトたちを眺めながら俺は訊いてやることにする。

「どうしたんだ? 何かあったのか」
「……………」

シカトですか。そうですか。
『今日はみくるちゃんに新作コスプレ試そうっと』とかなんとか言ってはしゃいでたお前が、
どうして終礼の間に落ち込んでるのか、いささか興味があったんだがな。

「まあいいや。さっさと部室行こうぜ。
 朝比奈さんのお茶を飲んだらお前の陰気も吹き飛ぶだろうよ」
「無理よ」
「はぁ?」

さっきよりも更にトーンダウンした声に、俺は思わず振り向いて、

「……あたし今日、団活いけなくなっちゃったから」

ずいっと押し出された携帯画面を直視した。
なになに……今日は早く帰ってきて……差出人は母親、か。
ハルヒを直帰させたい理由は書かれていなかったものの、
その短い、手紙なら走り書きとも言うべき文章は、読んだ者を何故か不安にさせる。
俺はからかうように言ってみた。

「親からのメールの方が団活より優先順位高いのな」
「あたしのお母さんは、いっつも眼が痛くなるほど絵文字とか色々使うの。
 なのに、このメールはちっとも飾られてない。何かあったんじゃないかって思うのが普通でしょ?」

21 名前:電波王▲▲ ◆DD..3DyuKs [涼宮ハルヒ] 投稿日:2011/08/27(土) 18:56:42.24 妹 ID:2L2bZ6QP0 ?2BP(1602)

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ハルヒのお母さんとは何度か面識があった。
目鼻立ちの整った、妙齢の女性だった。
印象的なのは、初めてハルヒの家にお邪魔したときの爆弾発言である。
玄関に上がった俺を見て一言、

「あら、あんたにも彼氏できたのね。母さん嬉しいわ♪」

とハルヒに笑いかけたあの人は、
本当にハルヒによく似ていた。
確かにあの人が、こんな素っ気ないメールを打つとは考えがたい。
考えがたいのだが、

「心配なら電話してみりゃいいじゃねーか。
 一発で解決するだろ。
 そんでどうしても急を要する用事なら帰ればいいし、違うなら部室行こうぜ?」

俺の言葉に「やっぱSOS団はあたしがいないと締まらないわよねー」だの
「団長がいないと団員が弛むのは目に見えてるしー」だのぶつぶつ言っていたハルヒは、
やがてこんなことを言いだした。

「あんた、そんなにあたしに部活に行って欲しいの?」
「え、いや、まあ……」

完全な不意打ちだった。
喉に餌を詰まらせたアヒルみたいに言葉を詰まらせた俺をニヤニヤと見つめてくるハルヒ。
そんな眼で見るなよ。このヘタレな口から出るのが、月並みな科白だと知ってる癖に。

「どうなのよ?」
「あー、お前がいないとSOS団が纏らないというか、なんというか……」
「はい不合格」

23 名前:電波王▲▲ ◆DD..3DyuKs [涼宮ハルヒ] 投稿日:2011/08/27(土) 19:04:41.00 妹 ID:2L2bZ6QP0 ?2BP(1602)

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ずびし、と突きつけられる人差し指。

「今日は帰るわ」

あっという間に支度を済ませて、

「みんなにはあたしが急用で休むって伝えといて。
 あとみくるちゃんには勝手に部室にある新作コスプレ試さないように強く言い聞かせておいてね!」
「了解しやした」

一旦決めたら梃でも意志を曲げないハルヒである。
引き留めるのはとっくに諦めていたさ。
SOS団よりも私情を優先した団長殿は去り際に、

「いいこと、キョン。特に二つ目のことは絶対に忘れちゃ駄目だからね」

と念を押していった。
自分の欠席理由よりも、朝比奈さんの新作コスプレ初お披露目延期の方が大事なのかよ。

「やれやれ」

溜息を吐きつつ、教室を出る。
窓外の風景はいつの間にか、すっかり鈍色に変色していた。
見るからに重そうな雲の隙間からは、今すぐにでも大粒の雨が降ってきそうだ。
そういやあいつ、傘もってたっけ……。
今頃校門付近をダッシュしているに違いないハルヒを想いつつ、俺は部室棟に向かった。

25 名前:電波王▲▲ ◆DD..3DyuKs [涼宮ハルヒ] 投稿日:2011/08/27(土) 19:11:27.92 妹 ID:2L2bZ6QP0 ?2BP(1602)

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「お待ちしていましたよ。
 なかなかあなたが現れないので、直々にクラスに赴こうかと思っていたところです。
 なんといってもあなたはこの協議におけるキーパーソンですからね」

出迎えてくれたのは涼しげなアルト。
その声が部室の蒸し暑さを払拭してくれればありがたいのだが、
非常に残念なことに言っていることの意味不明性と、
声の持ち主の得体の知れないスマイルによって、俺は更に不快な気分になる。
俺は空いたテーブルの一角に腰掛けながら、

「一々大袈裟なんだよ、お前は。
 ちょっとHRが長引いてただけだ。ああそれと、ハルヒの奴は帰ったぜ。
 なんでも家の用事があるそうで――」
「はい、どうぞ」

発言を遮るように、湯飲みが置かれる。
仄かな淡緑。控えめな芳香。
口につけて当然の感動に浸りつつ、先輩を誉め殺す。
いつもながらに見事な御手前です。とっても美味しいですよ。

26 名前:電波王▲▲ ◆DD..3DyuKs [涼宮ハルヒ] 投稿日:2011/08/27(土) 19:14:31.04 妹 ID:2L2bZ6QP0 ?2BP(1602)

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「うふふ。ありがとう」

朝比奈さんは軽く微笑んで、俺の隣の席に腰掛けた。
その笑顔が、ほんの少し……そう、ほんの少しだけ古泉のそれと被ったのは気のせいだろうか。
今更だが、今日のMy sweet angelはメイドでもバニーガールでもなくノーマルモードだ。
珍しいな。朝比奈さんはハルヒから、部室では何らかの衣装に着替えるようにと命令されているのに。

「閑話は不要。早急に協議を開始すべき」

突然だった。意識外から耳に入ってきたその冷たい声に、俺は飛び上がりそうになる。

27 名前:電波王▲▲ ◆DD..3DyuKs [涼宮ハルヒ] 投稿日:2011/08/27(土) 19:18:27.99 妹 ID:2L2bZ6QP0 ?2BP(1602)

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「なんだ長門、そこにいたのか。
 今日は窓際じゃないんだな。この前読んでたハードカバーはどうした?もう読み終わったのか?」

長門は沈黙を貫く。古泉が代弁するかのように語り出した。

「重ねて言いますが、今日は協議を行う予定でした。
 若干時間がズレ込んではいますがね。涼宮ハルヒとあなたを除く団員――つまり、
 朝比奈さんと長門さん、そしてこの僕が、各々後背勢力の代表者として
 協議の場を設けるのはこれが初めてではありません。
 僕たちはこれまでにとある”重要懸案”について、幾度も意見交換を交わしてきた。
 今回あなたを召喚したのは、その議題について一応の決着がついたからです。
 組織の上層部はかねがね、涼宮ハルヒの周辺環境情報改変能力による弊害を憂いていました。
 たとえ閉鎖空間を消滅させたとしても、彼女の現実世界への干渉はそのままだ。
 要は後手後手に回っているんです。これではキリがない。
 例え致命傷ではなくとも、生傷だらけの世界はいずれ破綻する。
 そこで浮上したのが、彼女の能力を抹消案……いえ、改変能力のみの抹消を目的とした打開案です――」

28 名前:電波王▲▲ ◆DD..3DyuKs [涼宮ハルヒ] 投稿日:2011/08/27(土) 19:22:40.31 妹 ID:2L2bZ6QP0 ?2BP(1602)

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「はいはい、ちょっと待った」

そう一気に喋るなっての。俺はあくまで余裕をもってお茶を啜り、

「お前らの悪いところは、理解力の乏しい人間に、
 自分と同じような頭が据わってると思いこんで話すところだ。もっと簡略化かつ集約化して言ってくれ」

古泉はお馴染みの呆れたポーズをしてから辺りを見渡した。
さっきからあれだけ古泉が喋りまくっているというのに、長門と朝比奈さんは一度も言葉を挟まない。無論、今も。

「わかりました。話の概要はいたってシンプルです。
 僕たちはそれぞれの組織の代表者として話し合いを続けてきました。
 その話し合いがつい先日決着し、この忌まわしい現状を打破する案が決議されました。
 涼宮ハルヒの殺害です」

32 名前:電波王▲▲ ◆DD..3DyuKs [涼宮ハルヒ] 投稿日:2011/08/27(土) 19:26:54.96 妹 ID:2L2bZ6QP0 ?2BP(1602)

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殺害。読んで字の如く、害を殺す、即ち排除する。
なるほど、閉鎖空間を無尽蔵に生み出すハルヒを害とするなら、
確かにあいつの改変能力ごとあいつを葬る去るっていうのは実に合理的な手段だな。

「で、それは何の冗談だ?」

部室の重たい空気を肌で感じながらも、
それを認めたがらない自分がいて。
自然、俺はぎこちなく笑って問い質す。
なのに古泉は、こんな時に限って無表情の貌で宣告した。

「この状況で諧謔を弄するほど僕は不真面目な人間ではありません。
 彼女の殺害は決定事項です。あとは実行されるのを待つのみ――」

33 名前:電波王▲▲ ◆DD..3DyuKs [涼宮ハルヒ] 投稿日:2011/08/27(土) 19:30:32.97 妹 ID:2L2bZ6QP0 ?2BP(1602)

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「ふざけるのも大概にしろ!」

体が勝手に動くとはこのことか。
気づけば俺は身を乗り出して、古泉の胸倉を掴んでいた。
自分の唇が震えているのが分かる。
今すぐにでも怒鳴りつけて殴り飛ばしてやりたいのに、
思いつく言葉は水泡のように浮かんでは消えて、空いた右手は骨が抜けたみたいに弛緩したままで。
横目で隣席の朝比奈さんを見る。落ち着いていた。
この部室で誰よりも荒事を嫌うはずの彼女は、
ただ俺の湯飲みから零れたお茶の反射越しに、事の趨勢を眺めている。
なんだよ。なんでいつもみたいに半泣きで俺を引き留めないんだよ。
あんた平和主義者だろ。平然と仲間の殺害仄めかしている奴を許していいのかよ……!

「離してください。あなたは一度、冷静になる必要がある」

不意に、俺の手首に力が籠められる。激痛が走って、握力が失せた。
古泉が襟元を正しつつ座り直した。この"なんでもない"と言いたげな仕草に腹が立つのは俺だけか?

34 名前:電波王▲▲ ◆DD..3DyuKs [涼宮ハルヒ] 投稿日:2011/08/27(土) 19:36:41.30 妹 ID:2L2bZ6QP0 ?2BP(1602)

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「僕は比喩が好きではありません。
 特にこんな喩え話は特に嫌いです。
 しかしあなたに現実を直視させるためには、これが一番てっとり早い」

古泉は目元を押さえながら、再び話し始めた。
芝居がかった声が部室の湿った空気に全然似合わない。

「例えばとある完全な密室に、銃を持った少女がいるとしましょう。
 彼女はその銃の扱い方を知らないし、それどころか己が銃を所持している事実さえ認知していない。
 しかし銃を所持している以上、暴発の危険性はつきまとう。
 そして不幸なことに、密室には数百人の人間が限られた空間を分割して居住している。
 彼らの内の何人かは、一人の少女が銃を持っている事実とその危険性を知っている――」

そこで古泉は初めて俺に視線を投げかけた。
冷たくて蒼白い、見るものを切りつけるような瞳だった。

35 名前:電波王▲▲ ◆DD..3DyuKs [涼宮ハルヒ] 投稿日:2011/08/27(土) 19:40:36.53 妹 ID:2L2bZ6QP0 ?2BP(1602)

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「さて、ここで真実を知る彼らが執るべき行動とはなんでしょう?」

俺は答えられない。だが、答えは出ているも同じだった。

――殺してでも銃を奪い取る。

それが、最善手だ。何も知らない人間の安全を保つ、一番の方法だ。
そんなこと分かってる。理屈は分かってるのさ。
たった一度だけ、そう、初めてハルヒのトンデモ能力について聞かされたその日の夜、
微睡む直前に考えたことがあった。
皆を悩ませているその能力は、ハルヒの死によって一緒に消えてなくなってしまうのではないか、と。
でも次の日になったら忘れていた。いや、意図的に忘れようとしていたのかもしれない。
身近な誰かの死というものは、どんな複雑な事情があるにせよ願っちゃいけないもんだから。そいつは一言で言うなら、タブーだ。

36 名前:電波王▲▲ ◆DD..3DyuKs [涼宮ハルヒ] 投稿日:2011/08/27(土) 19:43:47.80 妹 ID:2L2bZ6QP0 ?2BP(1602)

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俺は反論を始める。
何のために?
崩れかかった己の倫理観のためじゃない。
自分の命をいいように扱われようとしている、ハルヒのためにだ。

「お前の言いたいことは分かった。
 一人は皆の為に、皆は一人の為に。要はそういうこったろ?」

皆の平穏無事な日常のために、一人が死ぬ。
確かに正論だな。非の打ち所のない正論だ。

「でも、だからってハルヒを殺すことの正当化にはならないぜ。
 つーか、俺がさせねえ。
 例えハルヒが世界を揺るがす危険因子だとしても、
 俺にとっちゃあ一人のクラスメイトで、我侭な団長サマなんだよ。
 死なれたら困るんだよ。イヤなんだよ。
 それはお前だって同じだろ? なあ、そうだろ古泉?」
「……………」

俺の懇願じみた問い掛けに対して、古泉は長門みたいに口を閉ざした。
こいつは卑怯だ。正論を楯にして、本心を隠しやがって。
思い切り睨付けてやったが、古泉の能面を見る分に効果は薄いようだ。
膠着状態が続く。
今まで黙っていた長門が俺に水を向けてきたのは、丁度、そんな時だった。

44 名前:電波王▲▲ ◆DD..3DyuKs [涼宮ハルヒ] 投稿日:2011/08/27(土) 19:58:29.87 妹 ID:2L2bZ6QP0 ?2BP(1602)

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「涼宮ハルヒの殺害が決定された以上、後は実行に移すだけ。
 あなたが覚悟を決めればいいだけのこと」

覚悟? 何の覚悟だ?
俺がそう問いかける前に、古泉が割って入ってきた。

「時期尚早ですよ、長門さん。
 既にこの場においての実質的なコンセンサスは得ています。
 彼には心の整理をする時間が必要だ。そう慌てないでください」
「おい待て、さっきから何を言ってるんだ。
 コンセンサス?
 俺はお前らの意見にはこれっぽっちも賛同しちゃいないぞ」

嘘だ。俺は感情論を無視した正論を少なからずとも理解している。

46 名前:電波王▲▲ ◆DD..3DyuKs [涼宮ハルヒ] 投稿日:2011/08/27(土) 20:06:19.36 妹 ID:2L2bZ6QP0 ?2BP(1602)

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「それに心の整理ってなんだよ。おい、説明しろ!」

自然と語気が荒くなる。鼓動が早くなる。
理性の灯火がかき消えようとしていた。
どうしてそんな哀しそうな目で俺を見つめるんですか、朝比奈さん。
どうして諦観と疲弊に塗れた目で俺を見据えるんだよ、古泉。
どうしてそんなに無機質な瞳で酷い言葉を口にするんだよ、長門――。

「涼宮ハルヒの殺害を遂行できるのはあなた一人。何故なら、」
「うるせえ」
「聞いて」
「うるせえっていってんだろうが!」

耳を塞いだ。俺が聞いていないことを知って尚、長門は壊れたラジオみたいに話し続けていた。
薄々感づいていた。つーか、どこの阿呆でも分かるよ。でもさ、……こんなの酷すぎるだろ。

48 名前:電波王▲▲ ◆DD..3DyuKs [涼宮ハルヒ] 投稿日:2011/08/27(土) 20:19:30.07 妹 ID:2L2bZ6QP0 ?2BP(1602)

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言葉は不要だった。
誰が筆を執った脚本かは知らないが、実によくできた悲劇だと思う。
先程の比喩を引用してみると、話のタネは単純だ。
少女を殺してでも銃を奪い取ろうとしたところで、
その少女の意志とは無関係に弾丸は発射されて、そいつを撃ち殺す。
識域下の正当防衛……いや、過剰防衛か。
とにかく、正攻法じゃその少女に警戒された瞬間にジ・エンドってわけさ。

だが、その少女が気を許す相手ならどうだ?

少女は無警戒のまま接近を許す。
そして――


「あなたに彼女の殺害を依頼することが、どれだけ惨いことかは重々承知しています。
 ですが、なんとしてでも実行していただきたい。
 計画では、あなたに依頼するのはしばらく間をおいてから、という予定でしたが、
 あなたが察知してしまった以上は仕方がありません」

どうかお願いします、と頭を垂れる古泉。
その光景はペルソナを被った古泉には似合いのようで、その実、異様な気味の悪さを醸していた。

「なんでこんなことになっちまったんだよ……」

俺は泣きそうになる。
どうしてこんなことに? 何故? どうして?
疑問符がぐるぐると頭の中を回っている。
つい昨日までみんな笑ってた。部室は穏和な空気に満たされていた。
誰も不幸せなんて思っちゃいなかった。SOS団の時間は充実していた。
なのに、何で今俺たちは、その中心人物を殺す話なんてしているんだ? わけわかんねぇよ。

49 名前:電波王▲▲ ◆DD..3DyuKs [涼宮ハルヒ] 投稿日:2011/08/27(土) 20:22:28.25 妹 ID:2L2bZ6QP0 ?2BP(1602)

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誰も読んでないなこりゃ

寝よう



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