佐々木「キョン、2010年度日本シリーズ第五戦が始まるよ」


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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 18:28:49.56 ID:GNnoLtAk0

「あれ? キョンくんどこいくの?」

 試合開始直前にもかかわらず席を外そうとした俺を見て、妹が声をかけてきた。

「ああ、ちょっと俺の部屋に用事があってな」

「キョンくん、試合見ないの?」

「いや、見るさ。だが、テレビは俺の部屋にだってあるだろ?」

「ええー、キョンくんどうしてここで見ないの? みんなもいるのにー」

 妹のツッコミも当然だろう。このリビングにはSOS団を始めとした関係者が詰め掛けているんだからな。

 そいつらを放っておいて自室でテレビ観戦なんてのは、正気の沙汰ではないってことは自分でもよくわかっているさ。

 だが、今日だけは見逃してくれ。そう言ってやりたい気分だった。

「すまん、俺はもう行くぞ。時間がないんでな」

「あ! もー、キョンくんてばー」

 妹の抗議を振り切り、階段を一段飛ばしで駆け上がる。少しでも早く、部屋で待たせてるあいつに会いたかったからな。

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 18:29:13.50 ID:GNnoLtAk0

「キョン、こんなことをして本当によかったのかい?」

 俺のすぐ隣に身を寄せる佐々木が、やはり申し訳なさそうに口を開いた。

「別に今日くらいはいいだろ。それに、俺も佐々木も賭けには負けちまったことだしな」

 部屋には俺と佐々木の二人きりだけだ。昨日、去年の記憶を取り戻した俺が、二人だけで観戦しようと提案したのだ。

 周囲との調和を重んじる佐々木であったが、意外にも快諾してくれた。こいつも去年のように試合を楽しみたいらしい。

「それでは、僕はロッテを応援することにしよう」

「よし、わかった。じゃあ俺は中日だな」

 稲葉ジャンプこそないが、ロッテの応援はノリのいい曲ばっかりだからな。応援でこいつがバテなけりゃいいんだが。

 そんな心配をよそに、佐々木は嬉しそうに飛び跳ねている。

「ふふ、一度でいいからロッテの応援をしてみたかったのだ」

 佐々木、えらいはしゃぎようじゃないか。それじゃまるで、遠足を明日に控えた小学生みたいだぞ?

 日ハムが敗退して以来、ずっと暗い表情しか見てなかったからだけに、佐々木の柔らかな笑顔は胸の奥底にまで沁みこむようだった。

 こんな勝手ができるのも今日だけだろう。だからこそ、思いっきり楽しんでやるつもりだ。半年の空白を少しでも取り戻すためにも。

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 18:29:54.66 ID:GNnoLtAk0

※このスッドレは『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズに登場したキャラクターが、キョンを賭けて担当チームを応援するスレです。
※原作『涼宮ハルヒの驚愕』までのネタバレがあるかもしれません。アニメだけしか観ていない方はご注意下さい。
※話の流れは実際の試合展開に順じます。
 → 地上波「千葉テレビ」、BS「NHK-BS1」、CS「JSPORTS2」で視聴できます。

【主な登場人物】
 ・キョン:中日ドラゴンズ担当(読売ジャイアンツファン)
 ・佐々木さん:千葉ロッテマリーンズ担当(北海道日本ハムファイターズファン)

【お知らせ】
 ・当スレの佐々木さんとキョンは、2009年日本シリーズに登場したキャラクターと同一です。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 18:33:34.90 ID:GNnoLtAk0

一回表 鴎0−0竜 一死一塁 P:ペン
荒木 左飛
大島 よんたま

「このペンって奴はどんなピッチャーなんだ?」

「ロッテにシーズン途中から加入した外国人投手のようだね」

「シーズン終盤にはあのダルビッシュと投げ合って、勝敗こそつかなかったものの10回無失点の好投をしたのだよ」

 ダルビッシュと投げ合って無失点に抑えたのかよ……。

「まあ、それ以外ではあまり調子も上がらないようなだけどね……」

 初回からフォアかよ。コントロールは良くなさそうだな。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 18:38:16.35 ID:GNnoLtAk0

一回表 鴎0−0竜 一死二三塁 P:ペン
森野 左二

「ずいぶんランナーを気にしてるみたいだな」

「そうだね。バッターへの集中が切れなければ……ああっ!」

「さすが森野だな。ここでツーベースかよ」

「次はあの和田なのだね……」

 佐々木、試合が始まってまだ10分も経ってないんだ。青い顔をするのはまだ早いぞ。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 18:40:16.02 ID:GNnoLtAk0

一回表 鴎0−1竜 二死二塁 P:ペン
和田 左犠飛

「よっしゃ! さすが和田だぜ!」

「清田もピッチャー出身だけあって、肩もいいのだけれど……。大島の脚が勝ったようだね」

 初回に先制点なんて幸先がいいな。

 まあ、これが巨人だったら、なんて思いたくなる気持ちもあるんだが……。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 18:43:10.12 ID:GNnoLtAk0

一回表 鴎0−1竜 チェンジ P:ペン
ブランコ みのさん

「やれやれ、ブランコはまた三振か」

「ロッテからすれば、ブランコの不振に助けられているきらいがあるね」

「和田が好調であるだけに、彼を敬遠してブランコで勝負という計算が成り立つのだから」

 昨日もブランコが一本でも打ってりゃ楽に試合を決められたって場面が多かったからな。

 まあ中日にとってはブランコの出来が勝負を左右しそうだ。

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 18:47:23.49 ID:GNnoLtAk0

一回裏 鴎0−1竜 無死一塁 P:中田賢
西岡 二失

「♪ラーラーララーラー スピードスター!」

「この応援って、スピードスターって言ってたのか」

「そうだね。しかし、そんなことを訊くとは、キョンはどんな間違いをしていたのだい?」

「”にしーおかー”って名字を呼んでるとばかり思ってたぞ……」

「まあ、名前をコールする応援だから、そういった勘違いもわからなくはないのだが……」

 佐々木、微妙な表情はやめてくれ……。

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 18:50:09.51 ID:GNnoLtAk0

一回裏 鴎0−1竜 一死一塁 P:中田賢
清田 からさん

「さすが中田だな。いい球投げるぜ」

「ストレートの伸びもいいのだね。清田が二度もバントを失敗していたくらいなのだ」

「ロッテはレギュラーシーズンでの犠打が少なかったチームだからね。そういった影響もあるのかも知れないよ」

 まあ、日本シリーズで調子のいい清田を抑えられたんだ。こっちにとっちゃ結果オーライだろ。

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 18:52:55.54 ID:GNnoLtAk0

一回裏 鴎0−1竜 一死一二塁 P:中田賢
井口 左安

「さすが井口だね。ストレートにも力負けしなかったよ」

「昨日もホームラン打ってたからな。井口は調子が良さそうだぜ」

「選球眼の良さもあって、フォアボールも多く選んでいるのだが、打点もまた多いのだよ」

「ファイターズ四番を務める打点王小谷野に次ぐ、パ・リーグ二位の成績を収めていたのだからね!」

 佐々木、余計な情報が紛れていた気がするんだが、俺の気のせいか?

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 18:54:25.02 ID:GNnoLtAk0

一回裏 鴎0−1竜 一死満塁 P:中田賢
サブロー 遊安

「やったやった! サブローがつないだね!」

「荒木も食らいついたんだがな……」

「次はシーズン男の今江だね! これ以上ない展開ではないか!」

 中日としたらこれ以上ないピンチだな……。

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 18:56:14.60 ID:GNnoLtAk0

一回裏 鴎0−1竜 一死二三塁 P:中田賢
今江 左二タイムリー!

「やったぁ! さっそく逆転だよっ!」

「くそっ、あっさり過ぎるだろ……」

「♪ナーイスバアッティン! おおおお ナーイスバアッディン! いまえ!」

 しかし、なぜ佐々木はこんなにロッテの応援になじんでるんだ……?

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 18:59:26.67 ID:GNnoLtAk0

一回裏 鴎3−1竜 一死一三塁 P:中田賢
福浦 右タイムリー!

「♪おーおおおー おーおおおー おーおおおおおーおお おーおお そーれそれそれ!」

 佐々木が絶好調だな……。なんとかこの流れを止めて――って、おい!

「やったー! 福浦も続いたね! すばらしい繋ぎの野球ではないか!」

 昨日大チョンボをした福浦にまで打たれるとはな。そろそろ止めないと、試合が決まっちまうぞ?

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 19:00:46.08 ID:GNnoLtAk0

一回裏 鴎4−1竜 一死一二塁 P:中田賢
金泰均 中タイムリー!

「♪なーろーぼーろー きむてーきゅーん」

 佐々木、その発音は合ってるのか?

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 19:04:19.64 ID:GNnoLtAk0

一回裏 鴎4−1竜 二死一二塁 P:中田賢
里崎 からさん

「里崎は調子が上がらないね」

「中日にとったらありがたいな。これ以上タイムリーなんて打たれたら堪らんぞ」

「CSでは天使……あ、いや、その……救世主的な存在だったのだけれどね」

 佐々木、どうやったら救世主と天使を言い間違えられるんだ?

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 19:08:48.60 ID:GNnoLtAk0

一回裏 鴎4−1竜 チェンジ P:中田賢
岡田 左飛

「ふむ、岡田も凡退してしまったね」

「こっちとすれば、ようやく終わったって感じだぞ……」

「中田もいいストレートとフォークのコンビネーションがいいんだが、ストレートを狙い打ちされちまったな」

「ロッテとしてもペンの出来が良くないだけに、まだまだ安心できないね」

 このまま点が入りまくるバカ試合にもつれ込んでくれればいいんだがな。

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 19:11:40.49 ID:GNnoLtAk0

二回表 鴎4−1竜 一死一塁 P:ペン
野本 みのさん
谷繁 よんたま

「野本のラストボール、本当にストライクだったのか……?」

「キョン、野球において審判は絶対なのだ。不満を漏らしてはいけないよ」

 そんなことはわかってるよ。だからな佐々木、そんな笑顔で諭さないでくれ……。

87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 19:13:57.15 ID:GNnoLtAk0

二回表 鴎4−1竜 二死二塁 P:ペン
英智 投ゴ(ペン体勢を崩す・進塁打)

「お、強攻策か――おいおい、あれを捕ったのかよ……」

「センター前に抜けようかという当たりだったね……。捕球後に体勢を崩したのも頷けるよ」

 結果として進塁打にはなったが、アウト一つ取られちまったか。

88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 19:17:12.19 ID:GNnoLtAk0

二回表 鴎4−1竜 チェンジ P:ペン
堂上直 からさん

「この回は抑えたといえ、やはりペンのコントロールは良くないね」

「ストレートもカーブも浮いちまってるな。まあ序盤だけあってストレートの威力はありそうだが」

「ふむ……、中盤以降疲れてきた時にストレートを痛打されるかもしれないね」

 ロッテも中日も昨日は中継ぎを投入していたからな。早い段階での先発交代はなさそうだ。

95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 19:19:53.09 ID:GNnoLtAk0

二回裏 鴎4−1竜 一死 P:中田賢
西岡 みのさん

「♪ラーラララーラー ラララララーラー つーよーし!」

 佐々木が応援をしながらピョンピョン跳ね回ってやがる。

 やれやれ、稲葉ジャンプに興じてたこいつを思い出しちまうな。

97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 19:21:49.75 ID:GNnoLtAk0

二回裏 鴎4−1竜 一死一塁 P:中田賢
清田 中安

「♪おー きよーたー におーかー ぜーんりょくでとばっせ!」

 佐々木、歌詞を間違わなかったか?

106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 19:26:30.27 ID:GNnoLtAk0

二回裏 鴎4−1竜 一死二塁 P:中田賢
井口 (中田ボーク・落合監督抗議)

「今のはボークなのか?」

「どうだろうか? 僕も意外に思ったのだけれど……」

「しかし、これで得点圏かよ。最悪だな……」

「♪うーてー いぐち! たーのーむーぞー いぐち!」

 この井口の応援はイヤすぎるぞ……。

112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 19:31:39.23 ID:GNnoLtAk0

二回裏 鴎4−1竜 チェンジ P:中田賢
井口 投ゴ
サブロー 捕邪飛

「やれやれ、一時はどうなるかと思ったが、無失点で抑えてくれたな」

「まあ、こちらにもチャンスはあったのだ。及第点と言ってもいいくらいさ」

「しかし佐々木、お前はどうしてそんなにロッテの応援を知ってるんだ?」

 先ほどから佐々木はほぼ完璧と言って差し支えないほどに、ロッテ側の応援歌を披露していた。

「それは……、その……」

「ファイターズとロッテの試合を観戦していると、この応援をずっと聞かされるのだ……」

「ロッテの攻撃中、こちらはじっとしているからね。球場全体に響く声援では、嫌でも覚えてしまうのだよ……」

 なるほど、お前も妙なところで苦労してたんだな。

110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 19:29:03.94 ID:an63zs2EO

佐々木は稲葉とキョンどっちを取るんだろう

115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 19:34:12.29 ID:GNnoLtAk0

>>110
「稲葉さんはもちろん好意の対象となる存在ではあるが。キョンに対する思慕とは異なるのだよ」

「稲葉さんへの好意はアイドラトリーに属していて、キョンへの想いは……、えっと、その……」

 佐々木、無理に言わなくていいからな。俺の方が恥ずかしいぞ……。

120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 19:38:01.65 ID:GNnoLtAk0

三回表 鴎4−1竜 チェンジ P:ペン
荒木 中安
大島 一ゴ(二塁封殺)
森野 遊ハーフライナー
和田 二飛

「荒木がヒットを打ってくれたんだが、あとが続かなかったな……」

「ペンも球は荒れているが、それが狙いを絞らせないように働いているようだね」

 中日からすれば、森野と和田がそろって凡退なんて信じられないぞ……。

123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 19:43:42.51 ID:GNnoLtAk0

三回裏 鴎4−1竜 一死一塁 P:中田賢
今江 よんたま
福浦 右飛

「♪おーおーおー おーおーおおーおーおー いまえ!」

 佐々木は飽きもせず、ロッテの応援に興じている。

 中日側に立ってみてよくわかったが、この応援を背に投球しなくてはならない中田は集中しづらいだろうな……。

125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 19:46:21.50 ID:GNnoLtAk0

三回裏 鴎4−1竜 一死一二塁 P:中田賢
金泰均 左安

「おおっ! 不振のたえきゅんが二打席連続ヒットだよっ!」

 おい、たえきゅんなんて呼び方はどこで教わったんだ?

「♪おおおお なーいすばあってぃん! きむたえきゅん!」

 聞いちゃいねえか……。

130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 19:51:28.81 ID:GNnoLtAk0

三回裏 鴎4−1竜 チェンジ P:中田賢
里崎 三ゴ(二塁封殺)
岡田 中飛

「ふむ、里崎のゴロはセカンドでアウトを取ったのだね」

「ベースまで離れてた上にランナー今江だったからな。いい判断だったと思うぞ」

 続く岡田も抑えたか。

 上位から7番まで繋げられちまってるが、里崎と岡田がブレーキになってるのは助かるぜ。

131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 19:56:48.79 ID:GNnoLtAk0

四回表 鴎4−1竜 チェンジ P:ペン
ブランコ 遊ゴ
野本 右飛
谷繁 中飛

「ブランコは極度の不振に陥ってしまっているようだね」

「今の打席も当てただけになっちまったからな」

「当たれば看板まで持っていくようなフルスイングが怖かっただけに、調子が気がかりだよ」

 今シーズンだって不振と言われながら、けっこう数字を残してたくらいだからな。

 このまま終わってくれるんじゃねえぞ。

135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 20:03:18.75 ID:GNnoLtAk0

四回裏 鴎4−1竜 一死三塁 P:中田賢
西岡 左安
清田 一犠打(西岡盗塁成功)

「西岡は不振じゃなかったのか?」

「これまで打率一割台だったからね。しかし、これをきっかけに本来の調子を取り戻すのではないだろうか」

 金泰均の調子も上がってきたみたいだからな。ナゴヤドームに帰るとはいえ、中日にとっちゃ厳しいぞ。

「西岡盗塁で、清田の送りバント成功。そして次は井口なのだね」

 またあの応援が来るのか……? いろんな意味で最悪だな……。

137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 20:06:27.51 ID:GNnoLtAk0

四回裏 鴎4−1竜 二死三塁 P:中田賢
井口 からさん

「♪うーてー いぐち! たーのーむーぞー いぐち! うーてー……ああっ!」

 やれやれ、大当たりの井口は三振で抑えたか。

 これでツーアウト三塁。あと一つがんばれよ!

146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 20:10:43.13 ID:GNnoLtAk0

四回裏 鴎6−1竜 チェンジ P:中田賢
サブロー 左2ランホームラン!
今江 中飛

「やったぁー! すごいすごい! サブローがホームランだよっ!」

「マジでか……」

 あと一つで無失点だったんだが、最悪の結果になっちまったか。

「♪ちーばー ろってまりーんずー」

 はしゃぎまわるこいつにも、そろそろお灸を据えてやりたいところだ……。

153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 20:15:21.69 ID:GNnoLtAk0

五回表 鴎6−1竜 チェンジ P:ペン
英智 一ゴ(ペン好フィールディング)
堂上直 三直
荒木 二直(井口好捕!)

「おいおい、今のはセーフじゃ……」

「キョンがそんなに声を上げるなんて珍しいこともあるものだ。ふふ、二人になってみるものだね」

 くそっ、そんな顔できるのも今のうちだからな、佐々木……。

 この回は抑えられちまったが、中日はがんばってくれよ。佐々木を涙目にさせてやりたいんだ……。

156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 20:19:04.01 ID:GNnoLtAk0

五回裏 鴎6−1竜 一死 P:中田賢
福浦 遊ゴ

「♪うてふくうらー うてふくうらーあー いっぱつかーませー」

 俺がハモらされてるのは、佐々木に命令されて仕方なくなんだからな……。 

163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 20:23:23.88 ID:GNnoLtAk0

五回裏 鴎6−1竜 一死一二塁 P:中田賢
金泰均 右安
里崎 中安

「これで3−3かよ。今までの不調はなんだったんだ……?」

「しかも、センター、レフト、ライトと打ち分けているからね。来期も恐ろしいバッターとして立ちふさがりそうだよ」

 ああ、そういやお前は日ハムファンなんだよな。熱心に応援してるから忘れてたぞ。

「……っ! もう、キョンのバカ!」

 我ながら少し意地悪なツッコミだったと思うがな。

 だからといって肩をポカポカ殴るんじゃない。

168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 20:26:05.99 ID:GNnoLtAk0

五回裏 鴎6−1竜 一死満塁 P:中田賢
岡田 右安

「やったやった! これで満塁だよっ!」

 ワンナウト満塁で西岡かよ。中日は苦しいな。

「♪つーよーし! にしおか!」

 この応援も苦境に拍車をかけてるが……。

172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 20:32:35.56 ID:GNnoLtAk0

五回裏 鴎7−1竜 二死二三塁 P:中田賢
西岡 中犠飛(ランナータッチアップ)

「うんうん、さすがだね。最低限の仕事をしてくれたよ」

「また失点しちまったか……。しかしピッチャーは代えないんだな」

「昨日あれだけ中継ぎ投手をつぎこんだのだから、簡単には代えられないだろうね」

 それに中日側とすれば、反撃の芽もなかなか見えない状況だからな。使えないってのが本音なのかもしれん。

177 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 20:34:38.10 ID:GNnoLtAk0

五回裏 鴎9−1竜 二死一塁 P:中田賢
清田 中タイムリー!

「やったぁ! 清田はルーキーながら勝負強いバッティングをするね!」

「こうなっちまうとロッテ打線は止まらないな……」

「♪いぐちうてー いぐちうてー ララララーラー」

 佐々木の応援も止まらなくなっちまったな……。

185 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 20:40:02.39 ID:GNnoLtAk0

五回裏 鴎9−1竜 チェンジ P:中田賢
井口 三邪飛

「ふむ、抑えられてしまったようだね」

「五回で8点差とはな。やれやれ、心の中にまで寒風が吹いちまってるよ」

「キョン、それはいけないね。幸運なことに、僕は今火照ってしまってね。ちょうどクールダウンしたいところだったのだ」

「キョン……、しばらくじっとしているのだよ……?」

 佐々木はそう言うと、俺の胸に腕を回してきた。

 こいつが落ち込んでる時にはずっとこんな感じだったんだが、改めてされるとなんだか気恥ずかしいな……。

198 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 20:46:05.04 ID:GNnoLtAk0

六回表 鴎9−1竜 一死一二塁 P:ペン
大島 左安
森野 中安
和田 中飛

「よしよし、ノーアウトでランナーが出たな」

「ふむ……、このあとは好調の森野と和田が控えているからね。点差があるとはいえ怖い場面だ」

「おお、森野も続いたな! 大島は俊足だから、内野を抜ければ点が入るぜ!」

「ここで和田とは、怖い場面だ。ここまで絶好調なのだから……ふぅ、センターフライで抑えてくれたようだね」

「くそっ! 抜けなかったか」

「キョン、今の場面は『落ちなかったか』と表現するべきではないだろうか……」

201 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 20:49:18.53 ID:GNnoLtAk0

六回表 鴎9−2竜 一死二三塁 P:ペン
ブランコ 中ニタイムリー!

「よっしゃ! よく打ったぞ、ブランコ!」

「ふむ、不振のブランコにタイムリーとは、リードしている場面とはいえあまり流れが良くないね……」

「ん? ロッテの監督が出てきたな。この点差でピッチャー交代かよ」

「立ち上がりのコントロールを考えれば、6回途中まで良く投げてくれたと褒めるべきではないかな」

204 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 20:51:27.64 ID:GNnoLtAk0

六回表 鴎9−2竜 ニ死二三塁 P:ペン → 古谷
野本 三飛

「ここで内野フライかよ……」

「古谷は巧く攻めたね。失点せずにアウトカウントを稼げたことは大きいよ」

 だが、まだ得点圏に二人もランナーがいるんだ。あと一本頼むぜ!

207 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 20:56:44.07 ID:GNnoLtAk0

六回表 鴎9−2竜 チェンジ P:古谷
谷繁 捕邪飛

「くそ、凡退しちまったか……」

「ふふ、今の攻撃でキョンの体も温まったのではないかな?」

 ん? ああ、少しばかり昂奮したかもしれないな。しかし、それがどうしたんだよ、佐々木。

「胸に耳をつけるとキョンの鼓動が聞こえるのだ。とくんとくん、というように気持ちのいいリズムが聞こえるよ」

 佐々木、リアクションに困るボケをするんじゃない。どうツッコめばいいのかわらかないじゃないか……。

217 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 21:02:30.27 ID:GNnoLtAk0

六回裏 鴎9−2竜 チェンジ P:中田賢 → 清水昭信
サブロー 右安
今江 遊飛
福浦 一併殺

「今の当たりでゲッツーを取られてしまうとは……」

「昨日のサードライナーといい、福浦はついてないな」

「ゲッツーになってしまうほど強い当たりだった、ということなのだろうけどね」

 中日からすれば、ラッキーだったってことなんだろうがな。

220 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 21:07:52.32 ID:GNnoLtAk0

七回表 鴎9−2竜 ニ死 P:古谷 → 薮田
英智 → 藤井 二ゴ
堂上直 みのさん

「藤井も堂上弟も、今ひとつ調子が良くないな」

「特に堂上直倫は将来を嘱望される選手だけに、中日としては歯痒い場面だろうね」

 井端の調子も良くないからな。落合もどっちを使うか悩むところだろう。

222 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 21:10:06.93 ID:GNnoLtAk0

七回表 鴎9−2竜 チェンジ P:薮田
荒木 みのさん

 荒木まで見逃し三振かよ。やれやれ、ハンズアップでもするかね……。

「♪しょおーりのー よろこびはー おーおーなーみーとーなーって」

 佐々木の熱中ぶりにもお手上げだなこりゃ。

227 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 21:13:33.32 ID:GNnoLtAk0

七回裏 鴎9−2竜 無死一塁 P:清水昭信
金泰均 右安

「これで四安打かよ……」

「顔に近いところから落ちてくるカーブを弾き返したね。たえきゅんの打撃センスには脱帽してしまうよ」

 佐々木、たえきゅんには絶対にツッコんでやらないからな……。

232 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 21:19:50.49 ID:GNnoLtAk0

七回裏 鴎9−2竜 一死一三塁 P:清水昭信
里崎 中飛
岡田 よんたま
西岡 中飛(タッチアップ)

※金泰均 → 塀内(代走)

「里崎は倒れてしまったが、岡田はよく選んだね」

「またピンチかよ。やれやれ、厳しい局面から抜け出せないな」

「ふふ、ロッテとしてはこのまま十桁得点したいところだろう」

 佐々木、10億点なんてどれだけ時間がかかると思ってるんだ……?

238 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 21:26:04.72 ID:GNnoLtAk0

七回裏 鴎10−2竜 チェンジ P:清水昭信
清田 二ゴ(清水悪送球・塀内生還)

「やれやれ。清田は抑えたが、結局失点しちまったな」

「中日にバッテリーミスとは珍しいね。しかし、抜け目なく三塁へタッチアップしたことが奏功したようだ」

 これで8点差か。

 ロッテベンチとすれば、中継ぎをどう温存するかに意識が向きそうだな。

「ふむ、ピッチャーは吉見に変わるのだね……」

 ここで吉見かよ。セ・リーグ時代を知っているだけに、大丈夫なのかとツッコミを入れたくなるぞ……。

256 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 21:31:38.81 ID:GNnoLtAk0

七回裏 鴎10−4竜 二死 P:薮田 → 吉見
大島 中飛
森野 三邪飛(今江好捕!)
和田 左安
ブランコ 左2ランホームラン!

「あんなバッティングができるのだね……」

 和田が吉見のカーブを待って、レフト前に運んだ打撃に驚いているようだ。

「スイングを止めて、そこから再び動き出してボールを叩くなんて……。プロの世界とは本当にすごいのだね」

 佐々木、お前が和田のバッティングに感心してる間に、ブランコがホームラン打っちまったぞ。

「本当にピッチャー吉見で良かったのだろうか……」

 まあな。だが中日とすればありがたい交代だったぞ。

260 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 21:35:52.90 ID:GNnoLtAk0

八回表 鴎10−4竜 チェンジ P:吉見
野本 からさん

「中継ぎを温存したいという気持ちはわかるのだけれど、ブランコを勢いづかせてしまったのではないだろうか」

「勢いなんて、そんなに当てにならねえんじゃねえか?」

「中日だって第二戦と第四戦にいい勝ち方をしたが、結局こんな試合展開になっているくらいだからな」

「ふむ……、ロッテにも当てはまる部分があるだけに、今年の日本シリーズは本当に先が読めないね」

 まあ、一番読めなかったのは昨日の勝敗だったがな。十回裏は本当に終わったと思ったぞ。

267 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 21:44:06.90 ID:GNnoLtAk0

八回裏 鴎10−4竜 チェンジ P:清水昭信 → 久本
井口 三直(堂上直好捕!)
サブロー 中飛
今江 二飛(岩崎好捕!)

※和田 → 岩崎(ニ)
  ブランコ → 小田(捕)
  谷繁 → 堂上剛(左)
  堂上直(ニ) → (三)
  森野(三) → (一)

「いい当たりもあったのだが、中日守備陣のファインプレイに阻止されてしまったね」

「まあ、守備隊形も代えてきたくらいだからな」

「いよいよ最終回。ロッテは勝利まで目前だ」

 この点差でピッチャーコバヒロかよ。容赦ねえな……。

272 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 21:46:51.36 ID:GNnoLtAk0

九回表 鴎10−4竜 無死一塁 P:吉見 → 小林宏
堂上剛 よんたま

「しかし、キョン」

「ん? なんだよ、佐々木」

「妹くんは、どうして小林宏を『ロリくん』と呼んでいるのだろうね」

「知らん」

「キョン、本当は知っているのだろう? 僕に教えてくれてもいいではないか」

 アホか、そんなスラングを教えられるかよ……。

278 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 21:51:09.92 ID:GNnoLtAk0

九回表 鴎10−4竜 ニ死一三塁 P:小林宏
藤井 → 中田亮 からさん(堂上剛二進)
堂上直 左安
荒木 三邪飛

「コバヒロの出来が悪そうだな」

「そのようだね。ブーちゃんは抑えたのだけれど、球が外に抜けていたくらいだ」

「お、堂上弟も続いたのか」

「荒木は抑えて、これでツーアウト一三塁だね。仮に中軸まで回ることになれば、ロッテも苦しくなるね」

288 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 21:57:02.79 ID:GNnoLtAk0

九回表 鴎10−4竜 試合終了 P:小林宏
大島 中飛

「やれやれ、負けちまったか」

「ふふ、その割りに悔しそうではないね。キョン」

 まあ本当に応援してるチームじゃないからな。ある程度冷静に見れたってのが正直なところだよ。

「僕もそうだね。やはりファイターズの試合が一番楽しくもあり、苦しくもあるよ」

「でも……、それでも今日は楽しかったよ、キョン。こんな風に僕を誘ってくれて本当にありがとう」

 俺だって楽しかったさ。お前のはしゃぐ姿なんて本当に久しぶりだったからな。

 俺も佐々木も充分に楽しめたことだ。また次からは妹やら古泉やらと一緒に応援するかね。

296 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 22:07:23.55 ID:GNnoLtAk0

 試合終了の余韻に浸っていると、ドアをノックする音が聞こえてきた。

「開いてるぜ」と、声とかけると、恐る恐るといった調子で橘が首を出してきた。

「あ、良かった。そっちも終わったんですね」

 ああ、まあな。そっちは妹がうるさかったんじゃないか? ロッテがあれだけ打ってたんだからな。

「いえ、こっちは静かでしたよ」

 どういうことだろうか、あれほど盛り上がった試合なのに、当事者が静かだったってのはおかしい話だよな。何かあったんだろうか。

 そんな風に俺と佐々木が首をかしげていると、橘は妙に顔を赤らめてとんでもないことを言い出しやがった。

「あ、あの……、二階から佐々木さんの大きな声と、その……、何かが跳ね回るようなギシギシって音がして……」

「それでみんな静かになっちゃったんです。あ、妹さんは気付いてなかったみたいですよ。安心して下さい」

「…………え?」

 待て、橘。俺と佐々木は普通に応援していただけなんだ。それをどうして顔を赤らめるようなリアクションしてるんだよ。

 俺にはお前たちが何か勘違いしてるような気がしてならないんだが……。

 佐々木は俺の胸に真っ赤に染まった顔を埋めてしまい、弁解する気配も見られない。

 一方の俺も、弁解の言葉がまったく浮かばなかった。アホみたいな勘違いをしているこいつらを説得する気力なんか残っちゃいなかったからな……。

300 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/04(木) 22:13:54.38 ID:GNnoLtAk0

お疲れ様でした!

昨日、劇的な逆転勝ちを収めた中日でしたが、
序盤で流れを掴んだロッテに痛い黒星を喫してしまいました。

日本シリーズ優勝に王手をかけたロッテがこのまま決めるのか、
ホームを得意とする中日が逆王手を決めるのか、次の試合も楽しみです。

次回の予定なのですが、明後日11/06(土) 18:00過ぎにスレ立てしようと思っております。

本日はお付き合い頂き、ありがとうございました。
よろしければ、また次回もお付き合い頂ければ幸いです。

310 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/04(木) 23:40:16.10 ID:GNnoLtAk0

 橘から伝えられたとんでもない勘違いは、目撃者の証言により一応解消されたようだ。

「まあ、それもそうよね! キョンにそんな度胸があるはずないし!」などと、一人納得するハルヒには少しばかり腹が立ったがな。



 SOS団三人娘はいつものように古泉のタクシーで帰宅し、橘は一人でタクシーに乗り込んでいた。

 そして佐々木はといえば、俺と腕を組みながらゆっくりと家路を歩いていた。

「今日は楽しかったね、キョン」

 端正な顔に優美な微笑みを浮かべる佐々木は、掛け値なしに可愛かった。

 本当に俺なんかがこいつと付き合っていいのだろうかなんて思ってしまうほどだ。

「俺も楽しかったぞ。またあんな感じで観戦できたらいいな」

 なぜだか知らんが妙に火照ってしまった顔に、初冬を思わせる冷たい夜風が気持ちよかった。

 いつまでもこのままで居られればいい。そんな風に思ってしまう。

 佐々木発案の妙な賭けだって、なかったことにしてやりたいくらいだった。

311 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/04(木) 23:41:31.97 ID:GNnoLtAk0

「送ってくれてありがとう、キョン」

 徒歩で十分ばかりの距離、同じ学区に住んでいるのだから当たり前でもあるのだが、やはり物足りなく感じてしまう。

「何言ってんだ。せめてこのくらいはさせてくれよ。俺はもう親友とは違う存在になっちまったんだからな」

 古泉以上に回りくどい表現に、我が事ながら苦笑いが浮かんでしまった。素直に恋人って言えばいいんだが、やはり照れくさいのだ。

 そんな俺に、佐々木は悪戯っぽい笑みを浮かべて、

「ではそんなキョンに、僕から二つのお願いがあるのだが、もちろん聞いてもらえるね?」

 そんなこと答えるまでもないだろ。お前の言うことならなんだって聞いてやるさ。

「ふふ、ありがとう。ではまず一つ目のお願いだ。この手紙を読んでもらいたい。あ、封を開けるのは家に帰ってからにしてくれたまえ」

 佐々木から手渡されたのは、如何にも女の子が好みそうなパステル調の封筒だった。

 手に取った感触が妙に厚かったことは少し気になったが、次に伝えられた佐々木のお願いにそんな些末事など吹き飛んでしまった。

「では二つ目のお願いだ。キョン……、僕に……キスして欲しい」

 うっとりとするような笑顔を見せられてしまっては、俺に拒否権などあろうはずもなかった。

313 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/04(木) 23:42:48.73 ID:GNnoLtAk0

「ありがとう、キョン」

 長い長い抱擁のあとに、双頬を染め上げた佐々木がこんなことを口にしていた。

 それはこっちの台詞だぞ、なんて言ってやりたくもあったのだが、やはりそんな度胸の持ち合わせもない。

「もうこんな時間になってしまった。名残惜しくもあるのだが、もう家に入らなくてはね」

 そして佐々木は、最高の笑顔で別れの挨拶を口にした。

「キョン、本当にありがとう。そして――



 ――さようなら



 この時の俺は、のぼせあがっていたのかもしれない。

 背を向けた佐々木に、「また明日な」などという間抜けな返事をしてしまったのだから。

                            <2010年度日本シリーズ第六戦につづく>

316 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/04(木) 23:46:50.42 ID:GNnoLtAk0

今回のおまけで思わせぶり幕引きをしてしまいましたが、
賭けに関するSSは『みんな幸せに』という目標を掲げて書いております。

残された時間も最大であと二戦となりました。
おまけにつきましても、最後までお付き合い頂ければ幸いです。



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