初スレたて成功したらハルヒの小説書く


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6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 02:03:34.59 ID:8th7bOoV0

立ったので投下します。

――涼宮ハルヒの受難――

ことの始まりはよく晴れた金曜日だった。でも、別に何の変哲もない日。

「よぉハルヒ」

いつもと同じ朝の挨拶。

「……おはよ」

「何だ?朝っぱらからテンション低いぞ」

「うっさいわねー」

ハルヒは来る日曜日の予定を考えていた。




8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 02:04:54.88 ID:8th7bOoV0

「はぁ……。何か面白いことないかしら」

世界は広いと言うが、ハルヒの取り巻く世界は狭い。

――やれやれ、と額に手を当てるキョン。

「お前が面白いと思うことなんて簡単に起きるか」

否。世界は広くてもハルヒが求めるものが限定的なだけだ。

「とりあえずあさって日曜。駅前に11時ね。放課後、詳細を話すわ」

にべもなく、ハルヒは返答もきかず、机に顔をうつ伏せた。


9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 02:06:09.76 ID:8th7bOoV0

放課後の文芸部室。ハルヒはまだ来てない。

それはいいのだが、いつも真っ先に部室にいるはずの長門がいない。

キョンが何か事件の可能性を予感しつつ、古泉とオセロに興じていると――

「おっまたせー」

バンッとドアを開けてハルヒ登場。

「有希……まぁいいわ。最近、SOS団の活動が弛んできてると思ったので、次の日曜日に――」

と、開け放したドアから長門が入ってきた。

「有希!今、話始めたところだったのよ!次の日曜――」

長門はハルヒに目もくれず、真っ直ぐキョンの元へ向かう。


10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 02:06:48.94 ID:8th7bOoV0

「有希……?」

「ん?何だ、長門」

長門はいつもの無表情のまま言い放った。

「私は貴方が好き」

一気に部室の空気が止まった。

「あの……長門?今なんて?」

「私は貴方が好き」

「ちょっ……長門さん?」

古泉が口を挟む。朝比奈は目を見開いて停止していた。

「貴女一体何を……」

「黙って」

「……」

「有希……?」


11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 02:07:34.20 ID:8th7bOoV0

ハルヒが長門の背中に声をかける。長門はハルヒに横目をやり

「気にしないで。それだけだから。今日は帰る。この人と」

と言ってキョンの腕を掴んだ。

「なっ…待て長門!」

「「長門さん!?」」

「ちょ……有希!?」

長門は華奢な身体からは想像出来ない力でキョンを引っ張っていき、部室に残る面々に宣言した。

「涼宮ハルヒの能力はもうない。私が奪った。」

驚愕と焦りで三人の顔色が変わる。

唯一、事情を飲み込めないハルヒ。

「有希……なに言って、」

そんなハルヒにいつもと違うどこか鋭い眼光で

「貴女にこの人は渡さない。この人は私のもの。そう決めた。」


12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 02:08:42.17 ID:8th7bOoV0

「なっ長門!お前――」

キョンが焦った顔で声を荒げる。

長門はそんなキョンの顔を見上げた。

「!?………な、が、と」

長門の目はいつもの暗闇よりも明るかった。

そのコールタールのような輝きにキョンは口を閉ざし

「……あぁ。お前の気持ちは分かった。一緒に帰ろう」

と、妙に生き生きした表情で笑って言った。

「っ!キョン!?」

「キョン君!?」

「悪いなハルヒ、朝比奈さん。そいじゃ」

「待って下さい、貴方は、」

「古泉。人の恋路を邪魔しないでくれるか?」


13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 02:10:10.58 ID:8th7bOoV0

キョンは長門の肩を抱き寄せ、部室から出ていき、パタンとドアを閉めた。

日曜日の駅前。時刻は午前11時前10分。

古泉、朝比奈、ハルヒの面々はすでに集合していた。

待っている三人の顔色は冴えない。と、そこに

「おぉ。お待たせ」

と、キョンが長門と手を繋いで歩いてきた。

三人の顔色がますます険しくなる。

朝比奈は困った顔で、古泉はどこか探るような目で、ハルヒは切なげな表情で。

「待たせた」

長門がハルヒに声をかける。

「……ふん。まぁいいわ。いつもの喫茶店に行きましょ。遅れた二人のおごりで」

つんけんと歩いていくハルヒの背中に

「やだ」

長門が言った。ピタリとハルヒの足が止まる。


14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 02:11:34.21 ID:8th7bOoV0

「私達は遅刻していない。貴女におごる筋合いはない」

いつもの調子で言い放つ長門。

「ふ、ふぇ…」

怯えた目をしてハルヒ、長門をチラチラと見やる朝比奈。

「ハルヒ。俺は別に構わんぞ」

さすがに空気を読んでフォローするキョン。

「大丈夫ですよ、朝比奈さん」

朝比奈さんにも優しく笑いかける。

ハルヒは少し震えた声で

「……悪かったわね。いいわ。とりあえず行くわよ」

と、一人で喫茶店へ歩き出した。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 02:16:44.81 ID:8th7bOoV0

喫茶店での空気は最悪だった。二人を除いて。

「いいって長門。俺が出すよ」

「駄目。貴方が今朝遅れたのは、私のマンションまで来てくれたのが原因。」

「したいからそうしたんだ。気にしなさんな。」

「でも、」

バンッとクジを握った手をテーブルに叩きつけるハルヒ。

「おごらなくていいから、さっさとクジを引きなさい!」

「全く…なに怒ってんだハルヒ?」

言いつつ伸ばしたキョンの手と長門の手が重なる。

「あ…悪い。長門。」

慌てて手を引っ込めるキョン。

「いい。貴方から先に」

そんな二人のやり取りを見ていたハルヒの手は、クジの割り箸を折れんばかりに握っていた。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 02:18:08.24 ID:8th7bOoV0

二手に別れての不思議探索。

古泉、朝比奈ペアとキョン、長門、ハルヒの三人に決まった。

クジ引きの時に古泉が

「長門さん。何か細工しませんでしたか?」

と意味深な質問したことなど、今のハルヒにはどうでもよかった。

よく晴れた天気。道の両側の街路樹が風になびく度、木漏れ日が優しくきらめく。

道に設置されたベンチにはカップルの姿もチラホラ。

そんな公園の小路を行く目の前の二人。

他人には中睦まじい二人の後、少し距離を置いて続くハルヒなど眼中に入らないだろう。

ハルヒはいつかの野球場での孤独感を思い出していた。


19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 02:18:59.43 ID:8th7bOoV0

長門が何やらキョンと話している。

キョンの耳元で長門が囁いている様子にハルヒの胸が締め付けられた。

「なぁハルヒ。図書館に寄ってもいいか?」

振り返りハルヒに問うキョン。ハルヒは顔を背け

「……勝手にすれば」

と短く答えた。キョンは少し微笑み

「意外だな。図書館に不思議がある要素でもあるのか?」

「…別に」

ハルヒは久しぶりに見たようなキョンの微笑みに妙な安心感を抱いていた。


20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 02:19:47.50 ID:8th7bOoV0

図書館に入るなり、キョンと長門は別行動になった。

長門はしばらく歩き回って本棚の前で本を読み、キョンはイスに座り、雑誌を開いたままうたた寝している。

ハルヒは本棚の前で分厚い本を立ち読みしている長門に少し話かけた。

「最近、キョンと仲良さそうじゃない?」

普段より幾ばくか含みのある声。

「貴女には関係ない」

長門は本から目を離さない。

「ま、そうだけど」

ハルヒは肩をすくめて

「でも意外だったのよ。あんたとキョンがねー。いつの間にそんなに親密になってたの?」

まるで何でもない世間話のような声で続けた。

「貴女には関係ない」

同じ言葉。長門の目線に変化なはい。


21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 02:20:49.38 ID:8th7bOoV0

「ちょっと…!」

ハルヒは苛立ち、長門に詰め寄る。

「あんたはそうかもしれないけど、私には関係あるのよ!」

長門はやっと本から目を離し、暗い瞳でハルヒの目をじっと見て

「なぜ」

と短くきいた。

「な、なぜって、そりゃ」

途端に動揺するハルヒ。


22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 02:21:40.90 ID:8th7bOoV0

「貴女は彼の何?貴女はいつまでたっても彼に対してやぶさかなまま」

「キ、キョンをどう扱おうとあんたには関係ないでしょ!」

「いつまでもそうしてるから、私が彼を奪った。」

長門の語調は変わらない。ハルヒは胸に不快感が湧き出るのを感じた。性格のことを言われているわけじゃない。周りから変に思われるのには慣れたはず。

この不快感はそれとは異質だ。まるで――

「貴女は彼が好き」

自分の心に土足で入ってこられるような気分。

「……」

「私には彼を幸福にする意思も覚悟もある。貴女とは違う」

ハルヒは未だに信じられなかった。また認めたくなかった。


23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 02:22:32.64 ID:8th7bOoV0

「いつから…」

「貴女がSOS団を作るきっかけになったのは彼の存在があったから」

自分の心を見透かされているだけじゃない。

「彼は貴女にとって世界を変える鍵だった」

心の深いところまで汚されてゆく不快感。こいつは、長門有希はそこまで知っていて…

たまらなくなってハルヒは怒りを露にした。悲しみを隠すため、ただ悔しさをぶつけたかった。

「あんた…!」

「でも、それは私にとっても同一。彼は私にかけがえのないエラーを与えてくれた」

「エラー、ですって…!」

ますます激昂するハルヒ。自分にとって大切なものをぞんざいに扱われた気分。


24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 02:23:35.14 ID:8th7bOoV0

「貴女も思っていたはず。恋は精神病の一種だと」

「なっ…!」

「私にとっては意味が違う。こんなにも一個の存在が自己の潜在意識下に影響するのは想定外。でも、嬉しい誤算だった」

「もっと簡潔に言いなさいよぉっ!」

もう冷静にはなれないハルヒ。

「私は彼を愛している」

ハルヒの希望通りの簡潔な言葉は、彼女の心を満足させるものではなく――

「そして彼も私を愛している」

絶望に近い感覚を抱かせた。


25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 02:25:29.37 ID:8th7bOoV0

「キョンが、何で…?」

「彼が階段から落ちた時から」

「キョンが…?まさか、そんなはず」

「貴女には到底分からない」

自分の知らないところで、あの病院で、自分が付きっきりで看病していたはずのあの空間で、二人は何をしていたのか。

「そんな…」

めまいがする。ハルヒは先ほどの怒りなど忘れて呆然と立つことしかできない。

「安心して。今後の団体行動には支障を出さない」

長門の言葉など今のハルヒの耳には届かなかった。


27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 02:27:03.52 ID:8th7bOoV0

その日の不思議探索はすぐに終わった。

珍しく団長自ら、解散を言い渡したのだ。

「珍しいなハルヒ。こんなに早く終わるとは」

気軽にかけられたキョンの声に答えぬままハルヒは足早に帰っていった。

「キョン君…」

朝比奈が恐る恐るといった風にキョンに話かける。

「ん?何ですか朝比奈さん」

「僕も貴方に少しききたいことがあります」

古泉もそれに続いた。

「少しお時間を頂きたいのですが。よろしいですか?」

古泉の普段通りの慇懃な言葉使いは、どこか有無を言わせぬ語気を孕んでいた。

「ああ。俺は構わないが…」

チラリと長門を見るキョン。

「構わない。先に帰る。また」

長門は静かにキョンの目に答えた。


28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 02:28:36.52 ID:8th7bOoV0

再び昼の喫茶店に集合する三人。

四人がけのテーブルに古泉と朝比奈が座り、向かい合う形でキョンも座った。

「何だ?何か重要な相談でもあるのか?」

と言うより尋問みたいだな、とキョンはなんとなく感じていた。

「えぇ。相談と言うより」

「キョン君、長門さんと……その」

「えぇ、付き合うことになりました。それが何か?」

あぁそのことかと言わんばかりのキョンの態度。

「甚だしく意外ですね。あまりに突然すぎる」

冷静な声とは裏腹に実のところ、古泉はキョンに怒りを覚えていた。

「貴方は事の重大さが分かっているのですか?」

「何だ、俺が長門と付き合うことがそんなに重大なのか」

キョンは撫然としている。


29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 02:29:16.74 ID:8th7bOoV0

「まだ理解して頂けてなかったとは…」

ふぅ、と古泉はさも呆れた言わんばかりに肩をすくめた。

「ハルヒのことなら長門が何とかしてくれたじゃないか。お前もバイトがなくなって良かったんじゃないのか?」

「本当に長門さんの言葉を鵜呑みにするつもりですか?」

「あぁ俺は長門を信じてる」

さも確信ありげにキョンは言う。

「貴方、正気ですか?」

「あぁ俺は至って正気だ」

「仮に、です。長門有希の言葉が真実だとしても――」

古泉はここでいったん言葉を切り

「貴方はこのまま涼宮さんを放っておくつもりですか?」


30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 02:31:48.32 ID:8th7bOoV0

言った。言ってしまった。はっきり言ってここからは私情だ。

形はどうあれ涼宮ハルヒの能力が失われたとなれば、機関も自分の超能力も存在理由がない。

また、こんな事態になっても未だ閉鎖空間が発生していないことが何よりの証拠だ。

涼宮ハルヒの能力が長門有希によって奪われた。もしくは消去された、と言う――

「放っておいて何が悪い」

しかし古泉はそんな事実よりも

「涼宮さんの気持ちの問題ですよ」

キョンとハルヒ――二人の気持ちをとったのだ。

「お前が何を言いたいのか分からん」

「えぇ正直、僕も混乱しています」

「何だそりゃ」

「いえね。貴方が随分と身勝手に見えまして」

「ますます意味が分からんぞ」


31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 02:33:47.27 ID:8th7bOoV0

「キョン君!」

嫌悪になりつつある間に割って入る朝比奈。

「あの……その。キョン君は本当に長門さんのことが好きになったんですか?」

「えぇ…まぁ」

少し照れくさそうに頬をかくキョン。

その仕草に、その表情に朝比奈は何とも言えない悲しみを、古泉は怒りを覚えた。

「ですが貴方は――」

「何だ古泉。朝比奈さんも、おかしいですよ。話がそれだけなら俺はこれで」

「「っ!」」

古泉と朝比奈は微かに逡巡したが、キョンを止めることはできなかった。


32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 02:35:12.55 ID:8th7bOoV0

残された古泉と朝比奈は互いに何も言わずただ下を向き、古泉は目頭を押さえていた。

「本当に……これで良かったんでしょうか?」

朝比奈が口を開く。古泉は答えることができない。

「あの…古泉君?」

「すいません朝比奈さん。今回ばかりは僕も」

「そう、ですよね…」

「一応、彼を信頼していたんですけどね…」

いつか自分がキョンに言ったこと。三年前、力が発現して恐怖のあまり自殺を考えたこと。

――僕としては貴方に全てのゲタを預けてしまってもいいと思っているんですがね。

あの軽い調子の言葉は自分の彼に対する純粋な信頼の証だった。

裏切られたというのは自分の一方的な感情であるが、それでもどうしようなくやるせなさが込み上げてくる。

また、一方の朝比奈もそんな古泉と似た感情を抱いていた。


34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 02:36:53.55 ID:8th7bOoV0

翌日の学校。それは普段と変わらない朝だった。

「よぉハルヒ」

「……」

ハルヒは窓の外から目を離さない。それもいつものことと、キョンは別段気にすることはなかった。

担任が入ってきてのHR。担任は教壇に上がるなり

「あー、突然だが転校生を紹介する」

と快活な声でビッグニュースを口にした。

一気に色めきたつ教室。ざわつく生徒を前に

「と言っても、戻ってきた感じなんだが、まぁ入りたまえ」

と意味深な発言をして転校生を促す担任。そして入ってきた転校生は――

静まり返る教室の中、ガタッとキョンは机を揺らす。

「朝倉涼子です。またよろしくお願いします」


35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 02:38:46.53 ID:8th7bOoV0

「何、で…あいつが」

キョンは誰にも聞こえないよう一人呟く。

「あー、朝倉はまた急な都合でこっちに戻ってくることになったらしい。ま、以前と同じく仲良くするように」

朝倉涼子は微笑みを絶やさず指定された席につく。

そんな彼女の様子を呆然と見送るキョンに対し、ハルヒは我関せずとばかりに窓の外を眺めていた。


昼休み。授業の合間の休み時間に朝倉の回りにできていた人だかりも落ち着いてきたところで、キョンは朝倉に近づいて

「ちょっといいか」

「ん?いいわよ。何?」

屋上前の階段の踊り場に朝倉を連れていく。


36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 02:40:22.57 ID:8th7bOoV0

「どうゆうつもりだ。また俺を殺しにきたのか」

「連れてきていきなりひどいなぁ」

「とぼけるな。何の目的で…って、お前生きていたのか」

「えぇそう。生きて舞い戻ってきたわ。でも迂濶ね、キョン君。私が貴方を殺しにきたんならこんな場所に二人きりは危ないんじゃない?」

咄嗟に一歩引いて身構えるキョン。

「ふふっ。冗談よ。でもまぁ、今回も貴方を殺したい気持ちに変わりはないかも」

「どうゆう意味だ?」

「さぁ?自分の胸に聞いてみることね」

用は終わりと言わんばかりに、キョンを残して、朝倉は軽やかに階段を降りていった


37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 02:42:18.48 ID:8th7bOoV0

瞬く間に朝倉涼子が戻ってきたことは学年中に知れ渡った。

もちろん古泉、別学年の朝比奈、そして放課後、朝倉が朱に染まる教室の中で待つ誰かにも。

「どうして」

朝倉が待っていたその人は音もなく教室に入ってきて開口一番、短く問いた。

「観察のためよ。長門さん」

朝倉は飄々とした態度で答える。

「そんなはずない。情報統合思念体は涼宮ハルヒを観察する必要はなくなった」


38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 02:43:22.54 ID:8th7bOoV0

「貴女も思念体の全てを把握してる訳じゃないでしょ」

「それは誤認。私は思念体の全て」

「一介のヒューマノイドインターフェースがあんな大容量を掌握できるとは思えないんだけどなぁ」

「何が目的?」

「何であれ、貴女の邪魔をしにきたんじゃないわ。ほっといて構わないわよ」

「その言葉が真実だという保証はない」

長門の言葉を受けて朝倉は微笑んで答えた。

「貴女とキョン君の邪魔をする気はないということよ」

「……」

「これでいいでしょ?はっきりしたし、私は帰らせてもらうわ」


39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 02:44:29.25 ID:8th7bOoV0

「朝倉さん」

朝倉のマンションの前には古泉と朝比奈が立っていた。

「もう、めんどくさいなぁ。今度は貴方たちに説明しなきゃいけないの?」

びくり、と朝比奈の体が震える。古泉はそっと朝比奈を握って言った。

「下手な真似はしない方が賢明ですよ。僕たちが会っていることは近隣住民が知っています。何かすれば疑われるのは貴女です」

朝倉はため息をついて

「そんなことどうにでもなるんだけど」

ますます身構える古泉と朝比奈。朝倉はクスッと笑って言った。

「貴方たちに敵対する意思はないわ。むしろ助けにきたんだから」

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 02:56:13.54 ID:8th7bOoV0

レスくれた人ありがとう。もうダメと思って酒買ってきた。続きやる。

「どうゆう意味です?」

「長門さんのことっていれば分かるでしょ?」

人差し指を立て軽くウインクする朝倉。

「じ、じゃあ…長門さんはやっぱり…」

朝倉の仕草に緊張が少しとけたのか、怯えていた朝比奈も口を開いた

「えぇ。まともじゃないわね」

古泉も少し警戒を解いた風で朝比奈に続く

「貴女は長門さんがおかしくなった原因を知ってるんですか?」

朝倉は可憐に前髪かきあげ

「恋の病ってとこかしら?」

まるで軽い冗談のように可憐に笑って答えた。


45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 02:57:17.99 ID:8th7bOoV0

朝比奈、古泉はそのまま朝倉のマンションに上がるように言われた。

「状況はどこまで把握してるの?」

「どこまで……えっと、長門さんがキョン君のことを……その、好きだって唐突に言い出して」

「えぇ。それから涼宮さんの能力を奪ったと言いまして」

朝倉の問いにとつとつと返答する朝比奈と古泉に、うんうんと頷く朝倉。

「まぁだいたいそんな感じで合ってるわ」

「はい…。閉鎖空間が発生していないことから、長門さんの発言は真実だと信じられます」

「でも、分からないんです…。何故、急に長門さんがキョン君に告白して、しかも涼宮さんの力を奪うだなんて…」

「その疑問は当然よね。例え、ヒューマノイドインターフェースが束になっても涼宮さんの能力を一時的でも、発現できないようにするなんて不可能だもの」

「え…?一時的にって…」

つぶらな瞳を丸くする朝比奈


46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 02:58:19.79 ID:8th7bOoV0

「長門さんの効力は永続的ではないと?」

古泉も懐疑的な声できいた

「もちろん。永続的に止めるのは不可能よ。でも、そんなことしなくても情報統合思念体の狙いは別にある」

朝倉は全ての事態を把握しているようだ。

「思念体?長門さんではなくて?」

古泉の言葉に少し笑いを含んだ声で朝倉は答えた。

「あのねぇ。長門さん一人が本当に思念体を統括できると思ったの?」

「じ、じゃあ長門さんは…」

「ご推察の通りよ朝比奈さん。長門さんは思念体に操られているわ」


47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 03:00:48.98 ID:8th7bOoV0

「では、思念体の指令で長門さんはあんなことを…?」

「そうよ古泉君。それにキョン君は長門さんに操られているわ。急にキョン君の態度が変わったのはそのためよ。だからお願い。長門さんを悪く思わないであげて」

なるほどと、古泉と朝比奈は合点がいったように頷く。

鎮痛な面持ちの朝倉に朝比奈が遠慮がちに質問した。

「で、でも思念体は何でそんなことを…?」

「ごめんなさい。私たちの内輪での事情がこんな事態を招いたの。」

「な、何で朝倉さんが謝るんですかぁ…」

「朝倉さん。内輪とは思念体内部で、何か問題が…?」

「えぇ…。急進派が革命を起こして思念体の意思を支配したの」


48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 03:03:28.12 ID:8th7bOoV0

キョンを長門が操り、長門は思念体に操られ、その思念体は急進派の意思の下にある。

「別に重大なことでもないの」

と朝倉は言う。

「過去に何度も思念体は急進派に支配された。急進派だけじゃない。穏健派にも、その他の派閥にもね」

「でも、時がくれば元通り。思念体は正常の状態に戻るわ。たった一つの意思に支配され続けるなんてあり得ないもの」

「時がくれば、とは?」

「早くて一年」

永遠に等しい時間を生きる思念体にとっては短い期間らしい。

「ふえぇぇ。そ、それじゃ、何もかも手遅れになりますよぅ」

「ちなみに思念体が涼宮ハルヒの能力を封じられるのは一週間が限界」


49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 03:04:26.53 ID:8th7bOoV0

古泉が微かに顔をしかめる

「なるほど…。では先程の思念体の狙いとは」

「えぇそうよ。かつての私と同じ。今度はキョン君を操り、涼宮ハルヒの出方を見る。」

「そ、それって…」

人のいい朝比奈はイマイチ事情が分からないようだ

「つまりこうゆうことです。朝比奈さん」

彼にしては苦い顔で古泉が説明する

「急進派はキョン君と長門さんを恋仲にすることで、涼宮さんの感情を害し、
その時の情報爆発を観測するのが目的だということです」

古泉の説明に朝倉も頷く

「ひ、ひどい…。涼宮さんの気持ちを理解しておいて…」

朝比奈は今にも泣き出しそうな顔で言う

「一週間……つまり今日含めあと4日。この期限内にありとあらゆる方法を使って涼宮さんの感情を害し…」

「期限が切れると同時に発生する情報フレアを観測する、と言うことですか」


50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 03:07:42.01 ID:8th7bOoV0

「そ、それじゃあ世界は崩壊してしまいますよぅ」

すでに涙目の朝比奈

「えぇ。一週間の間に溜まりに溜まった涼宮さんの感情が爆発するとなると…」

古泉もいささかお手上げといった調子でうつむく

しかしそんな二人を前に朝倉は

「ちょっとちょっと。それじゃあ私が来た意味がないわ」

と慌て気味にとりなす

「貴女が?」

古泉が顔を上げる。

「わたしは急進派とは別の意思の思念体から秘密裏に派遣されてきたの。貴方たちとコンタクトをとるには私の姿が適格と判断されて、メモリ空間にあった朝倉涼子の体がこの世界に再構成された。
もちろん今の私は急進派とは無関係よ。それで貴方たちの協力を仰ぎに来たってわけ」

「しかし我々の力ではどうにも…」

「打開策がないわけじゃないわ。まぁ私一人じゃ無理だけど。結局涼宮さん次第ってとこね」


51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 03:09:23.74 ID:8th7bOoV0

「ど、どうゆうことですかぁ?」

朝倉は見たこともないような真剣な目で策を話し出した

「いい?作戦は早い方がいいわ。つまり明日ね。それまでに下準備を済ませておくこと」

朝倉はまず古泉に切り出した

「貴方は明日の学校で涼宮さんにこう言うの――」

次に朝比奈に

「貴女は長門さんを指定した場所に連れてきて」

「ええぇぇ!?そんなぁ無理ですよぅ」

朝倉は冷たい視線をして

「世界がどうなってもいいの?」

まるで脅すかのように言った

「わ、わかりました」

しずしずと頷く朝比奈に、朝倉はニコリと笑った。

「よし。じゃあ、これから作戦の全貌を話すわね」


52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age] 投稿日:2009/08/04(火) 03:10:05.42 ID:8th7bOoV0

夜の七時前十分、学校の校庭の真ん中に朝倉は立っていた。

辺りは異様な静けさ。まさに嵐の前。

「――来たわね」

朝倉が呟きに朝比奈に連れられた長門は答えた

「それは違う。貴女の狙いは明白だった。私はただ、誘いに乗っただけ」

朝比奈の横で淡々と言葉をつむぐ

「朝比奈さん。下がって!」

朝倉の声に、ひぇっ、と情けない声で答える朝比奈。

「朝比奈さん、こっちですよ」

いつの間にいたのか。校庭の隅の茂みには古泉とキョンがいる

「……!」

キョンの姿を見て微かに長門の目が揺らいだ


53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 03:11:15.51 ID:8th7bOoV0

「どうする長門さん?彼の前で手荒な真似ができるかしら」

どこか狂気を秘めたような長門の目が朝倉に戻る

「問題ない。後で記憶をいじればいい」

「あらら、それひどくない?やっぱり愛しの彼には見られたくないんだぁ」

クスクスと朝倉は微笑んで

「そんな、汚れきった自分の姿は」

その挑発がきっかけだった。

ヒュンと風切り音が鳴り、朝倉がいた空間を無数の銀の槍が薙ぐ

「どこ狙ってるの長門さん?」

一瞬で飛びのいた朝倉が尚も長門を煽る。


55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 03:18:28.03 ID:8th7bOoV0

すると長門はしゃがみ、校庭の地面に手を当てた

「何だ…これは」

古泉と一緒にいるキョンが呆然とする

長門の手が地面に触れた瞬間、広い校庭の砂地は真四角に切り取られ、折りたたまれ正方形の空間と化した。

縦横を白い砂の壁が隔てている

「空間閉鎖完了。これで貴女に逃げ場はない」

長門は全く抑揚なく告げた

「………」

対する無表情の朝倉に無慈悲な長門の手が振り上げられる


56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 03:19:13.30 ID:8th7bOoV0

「消えろ」

今まできいたことのない口調で長門が手を振り下ろす――しかし

「!!!」

振り下ろす手は途中で止まった。長門の目に明らかな動揺が走る

砂で覆われた空間が崩れ、代わりに灰色の空が辺りを包んだ。

これは――閉鎖空間。古泉は安堵の声で呟いた

「信じていましたよ……涼宮さん」


57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 03:21:02.95 ID:8th7bOoV0

数時間前。古泉はハルヒを部室に呼び出した

「お願いです涼宮さん。何も言わず僕の言うことをきいてくれませんか?」

「何よ。古泉君」

「短刀直入に言って、今日の午後七時。キョン君のことを強く想ってもらいたいんです」

「はぁ!?どうゆうことよ!」

突然の古泉の言葉にハルヒは声を荒げる

「キョン君のことを大切に思っていらっしゃるんでしたら…」

「あんな奴、もうどうでもいいわ!有希とイチャイチャしてればいいのよ!」

「涼宮さん!」

古泉の強い語調にビクリと身を竦めるハルヒ


58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 03:22:26.20 ID:8th7bOoV0

「後生です。涼宮さん。これが最後のチャンスかもしれないんです」

「古泉君、一体どうゆう、」

「キョン君は操られています。長門さんに」

「ち、ちょっと古泉君!」

「長門さんは宇宙人です」

古泉の言葉に息を飲むハルヒ

「更に言うなら朝比奈さんは未来人、そして僕は超能力者です」

古泉は告白した。ハルヒを説得する以上、これしかないと思ったのだ

「古泉君、本当…なの?」

「事実です。そして貴女には願望を実現する能力がある。貴女に願われたから、僕たちはここにいます」

もう後戻りはできない。

「僕の言うことを少しでも信じて頂けるなら、お願いします。」


60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 03:24:42.89 ID:8th7bOoV0

これ以上言うことはない。古泉はハルヒを残し、部室を後にした。

しかし小泉は予想していた。いや、これは賭けだった。閉鎖空間が発生する地点は学校の校庭。

「んっふ。やっぱり素直じゃないですね、涼宮さん。こんなに彼が好きじゃないですか」

白雪姫、sleeping beauty。彼と初めてキスを交わしたこの場所をおいて他にないと――

「あり得ない。私の空間を侵食するなんて」

長門はただ、灰色の空を眺めるだけだった


62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 03:27:26.38 ID:8th7bOoV0

「これで形勢逆転ね。長門さん?」

長門にゆっくりと歩み寄る朝倉。

「この閉鎖空間内では私たちの能力は制限されるわ。特に、貴女のはね」

朝倉に手をかざす長門の手にわずかな電流が走る

「……」

しかし長門は大きく後方へ跳び、両手を振り上げ、力いっぱい無数の槍を朝倉に放つ

――が、その槍を横から紅の光弾が吹き飛ばした

「まだ若干、貴女の情報制御下にあるとはいえ、ここは閉鎖空間です」

古泉が茂みからいつもの笑顔で出てきた。その手にはカマドウマを退治した時の赤玉が浮かんでいる


63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 03:35:42.73 ID:8th7bOoV0

「僕も少なからず協力しますよ」

「悪いけど死んでもらうわよ長門さん!」

朝倉が作り出したナイフを手に、突進する。

古泉も長門に向けて、紅の矢を投的した。「

キョンは茂みの中から動けない。長門が戦場に出ないよう指示を送っている

「くっ…長門」

それでも長門を想うキョンの視線に長門は微かに目線を返した

迫る二つの脅威に長門は為す術ないと思われたが――

長門はハエを落とすように赤玉をかき消し、迫るナイフの切っ先を掴み、そのままもう一方の手で

「ぅぐっ…!」

朝倉の腹を貫いた。

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 03:36:51.04 ID:8th7bOoV0

「っ……!」

腹を押さえて膝をついた朝倉の頭上に長門のかかとが振り下ろされる

朝倉は素早く横に避けた。地面に落とされたかかとから蜘蛛の巣のような亀裂が走る

「無駄なこと。今の私は思念体から絶大な力を与えられている」

「朝倉さん!」

咄嗟に古泉は長門に再び赤玉を投げつけるが、その長門は古泉の目の前にいる。

「なっ――がっ!?」

古泉の脇腹に長門の膝がめり込む。そのままがっくりと倒れこむ古泉

「万事休す、ですか……」


65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 03:38:47.95 ID:8th7bOoV0

「や、やめて下さぁい!」

古泉が倒れたまらなくなったのか、隠れていた朝比奈が光線銃を長門に構えた

「そ、それ以上二人に危害を加えると――きゃっ!?」

ジュッと音がしてドロドロに溶解する光線銃

「そ、そんな…」

冷たい足取りで朝比奈に近寄る長門

「邪魔は許さない」

「ひ、ひぇ…」

長門はあくまでゆっくりとした、余裕を感じさせる歩みで、恋焦がれる名を口にした。

「あの人――キョンは私のもの」

長門がキョンの名を口にした瞬間、校庭の中心が輝いた


66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 03:40:22.04 ID:8th7bOoV0

「……!」

長門の目が光に照らされる。

だんだんとまばゆい光は球をなし、その中から現れたのは――

「そこまでよ……有希」

SOS団の団長でありこの空間のもうひとりの支配者、涼宮ハルヒだった

「す、涼宮さぁん!」

朝比奈が泣きそうな声を上げる中、ハルヒは毅然と長門を指さして

「有希。貴女にキョンは渡さない。あいつは私のもんよ」

いつもの調子で宣言した


67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 03:42:18.84 ID:8th7bOoV0

「まさか涼宮さん自身が閉鎖空間に転移してくるなんて…」

これは朝倉にも予想外だった

「涼宮さんが現れてから空間の空気が濃くなった気がします」

古泉の言う通り、長門の体には白い電流がまとわりついている

「なぜ現れた」

「決まってるじゃない。あんたの目を覚ましにきたのよ」

「私は正常。よってそれは詭弁。貴女は彼への好意を認めたの?」

長門の言葉にハルヒは堂々と

「えぇそうよ。認めてあげるわ。私はあそこにいる、あんな奴が」

告白した

「大好きになっちゃったのよ!」

ハルヒは媚びもせず、照れもしない。キョンが好きだとはっきり口にした


68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 03:43:12.45 ID:8th7bOoV0

「でも残念。彼はもう私の虜」

「ふん。操り人形がよく吠えるわね」

「私が彼を好きなのは事実。そして彼もまんざらではない。先にアクションを起こしたのは、私」

「……そうね。それは認める」

ハルヒは少し下を向いたが、すぐにキッと長門を見据る

「でもね。誰がなんと言おうとまだ可能性があるなら私はそれに賭けるわ。簡単に諦める自分は私自身が許さない」

「有機生命体の生殖本能は厄介」

「キョンはそんなのじゃない。あいつは、ただの――」

――私の胸に暖かいものをくれた人

「ただの何の取り柄も魅力もない、私の、大切な奴よ」


69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 03:45:18.17 ID:8th7bOoV0

「貴女には何も言う資格がない」

ハルヒの告白にも長門は無表情のまま

「涼宮ハルヒを敵性と判定。排除行動を開始する」

涼宮ハルヒに突撃していく、が。

「……!」

本来の長門ならハルヒの眼前に到達するまで、一秒もかからないだろう

「いいわ……有希。いい加減イライラしてたのよ」

長門の走る姿はまるで本当の人間のようだった。それは華奢な体で精一杯駆ける文芸部員そのままのイメージ

「……キョン」

切れる息の中、長門は愛しいその名を呟く


70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 03:46:55.13 ID:8th7bOoV0

「私を4日間もウジウジさせたこと、後悔させてあげる!」

と、ハルヒの後ろで巨大なものがうごめいた

「あ、あれは――?」

「神、人……?」

呆然と、起き上がる巨大なそれを見つめ呟く朝倉、古泉。

しかし長門は止まらない。ただハルヒに向かって懸命に走る

その長門にハルヒは叫ぶ。神人が唸る。

「あんたがどんだけあいつを好きでも――」

絶対に譲りたくないものはハルヒにもある

「キョンは絶対、渡さないんだからぁっ!」

ハルヒの叫びと同時に振り下ろされた神人の巨腕に、長門は何の抵抗もできず押し潰された


71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 03:48:08.36 ID:8th7bOoV0

「長門!」

キョンが叫ぶ。神人は校庭に腕をつきたてたまま動かない

固唾を飲んで成り行きを面々の中、ハルヒの仁王立ちする様はまさに、この世界の若き女王そのものだった

瞬間、空が割れる。灰色の空がガラスのように崩れ、星のきらめく夜空に変わる

それと同時に、神人は陽炎のようにゆらめいて消えていった

「お、終わった…」

古泉と朝比奈が安堵のため息をつく

「長門さんは…?」

腹の傷を修復した朝倉が巨人の拳が下ろされた所に行くと、そこには静かに寝息を立てている長門がいた。


72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 03:49:08.74 ID:8th7bOoV0

「朝倉さん。長門さんは?」

古泉も朝倉の傍らに歩いてきた

「大丈夫。体も心も正常そのもの。思念体内部の急進派は退けられたみたいね」

「よ、よかったぁ…」

朝比奈もペタンと地面にへたり込む

「は、ハルヒ…?」

キョンが正気を取り戻したようだ。頭を押さえ、ブンブンと軽く振る

「俺は一体…?」

「あんた……!」

ハルヒがつかつかとキョンに歩いていき、頭にゲンコツをくらわせた

「な、何しやがる!」

立ち上がって抗議の声を上げるキョン。対するハルヒも、少し上にあるキョンの顔にいつもの怒鳴り声を上げた


73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 03:50:29.18 ID:8th7bOoV0

立ち上がって抗議の声を上げるキョン。対するハルヒも、少し上にあるキョンの顔にいつもの怒鳴り声を上げた

「何じゃないわよ!あんたのせいで私がどんだけ…!」

と、ハルヒの体が転移してきた時のような光を放ち始める

「そっか……これは、夢……」

ハルヒがポツリと呟くと、ハルヒの足元は上に向かって砂のように結晶化し、さらさらと消えだした

「ハルヒ……お前」

キョンがハルヒに声をかける。ハルヒはムッとした顔でキョンを見た

「……夢だから言っとく。さっき私が言ったことは全部本当だからね」

ハルヒの頬が微かに染まる


74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 03:52:12.37 ID:8th7bOoV0

「私はあんたが好き。あんたが誰を好きでも私はあんたが好き。本当はあんたも私を愛しなさいって言いたいけど……」

「なっ…」

普段から想像できない表情のハルヒにキョンの顔も赤くなる

「だから……」

ハルヒは少し逡巡するかのように目線をそらし

「今度の夢は、私から」

キョンに唇を重ねた。

キョンは目を閉じる暇もなかった。唇に一瞬柔らかい感触を残した唇は、すぐに砂になり消えていった

キョンは校庭の真ん中に呆然とつっ立っていることしかできない。

――俺、今、何、された?

てな具合にキョンが呆けていると、ポンと肩に手を置かれた


75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 03:53:58.98 ID:8th7bOoV0

「とりあえず今日のところは帰りましょう」

「古泉……」

「長門さんは朝倉さんが何とかしてくれるそうです。何も心配いりません。朝比奈さんもお疲れのようですし」

「あ、あぁ…」

「では…朝倉さん!後はよろしくお願いします!」

離れたところで長門を介抱している様子の朝倉に古泉が手を振ると、朝倉も笑って手を振りかえした

「さ……」

キョンは古泉に促されつつ、朝比奈と一緒に三人で帰宅していった

キョン達が帰った後

「もういいわよ長門さん」

朝倉は寝ている長門に声をかけると、長門はムクリと起き上がった


76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 03:55:21.29 ID:8th7bOoV0

「大丈夫?」

「肉体の損傷は完治している。活動に支障はない」

「そう。よかったわ」

ふぅ、と一息つく朝倉。

「それにしても驚くべきは涼宮さんの力ね。まさか神人から貴方を通して直接、思念体の急進派を揺さぶるだなんて。おかげで長門さんを倒さずに、思念体は正常に戻れた」

すると長門はわずかに目線を下げ

「今回の件は私にも責任がある」

無表情のまま口にした

「気にしすぎよ長門さん。貴女がそんなこと言うなんて。全ては急進派のせい」

笑ってとりなす朝倉に長門はポツリと言った

「私のエラーを、利用された」


77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 03:57:02.13 ID:8th7bOoV0

「私の、エラーを…」

壊れた人形のように繰り返す長門の頭を胸に抱く朝倉。

「いいのよ長門さん。この世界で生きている以上、仕方ないわ」

朝倉は見たくなかった。自分の胸を濡らすものを

「私の……私の、せい……」

「思念体は貴女の処分を検討したりしない。むしろ責任を感じたからこそ、神人に壊された貴女を再構成させたんだもの」

全く無表情の長門の白い頬には透明な筋が流れていた

「それに貴女が突然いなくなるようなことがあれば、涼宮さんはカンカンよ。貴女はSOS団の一員なんだから」

黒い海のような校庭の中で、しばらくの間、二人は時間の流れに互いの身を委ねていた


78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 03:58:23.20 ID:8th7bOoV0

エピローグ

――翌日の朝。

全く昨日のあれはなんだったんだ一体。

「おはようございます」

後ろから古泉が来て横に並んだ

「あぁ、おはよう」

気だるく挨拶を返す

「時に、昨日はよく眠れましたか?」

したり顔で覗きこんできやがる

「お前、やっぱり昨日のあれ覚えているのか」

忘れていてくれよ

「もちろんですとも。よかったですね、名実ともにアダムとイヴじゃないですか」

「殴るぞ」

「冗談です。失礼」


79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 03:59:52.67 ID:8th7bOoV0

古泉はコホンともったいぶった咳をした

「しかし涼宮さんの気持ちは違うようです」

あぁ、やっぱりおかしいと思った

「なぁ今日、金曜だろ?先週の」

古泉は爽やかな笑顔で答えた

「おや、気づいていましたか。どうやら涼宮さんは先週の金曜からの出来事をなかったことにしたいようですね」

「しかしなぜ俺たちの記憶がそのままなんだ?」

「僕たちに忘れてほしくないこともあるんでしょう――特に貴方に」

「何だそれは?」

きいてみると、古泉は呆れたように肩をすくめ

「貴方との、キスですよ」

ちっ。そうゆうことかよ


80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 04:01:42.39 ID:8th7bOoV0

「どうやら涼宮さんもいささか混乱したまま、時間を巻き戻すよう願ったようで…」

ったくあいつは何なんだ

「はぁ……本人は夢だったと思っているのか?」

「えぇ。そう思い込んでますね」

「そうかい。それは、」

「残念ですか?」

「まぁな……ってお前!」

何言わすんだこいつ。

「んっふ。そのことでお話がありますよ。教室に行く前に部室に来て下さい」


81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 04:02:59.00 ID:8th7bOoV0

部室に行って教室のドアを開けると、おいハルヒ。何だそれ

いつか見た光景と重なる。とりあえず俺は机に鞄を置いた

「よう、元気か?」

ハルヒは平坦な調子で答えた

「最悪。また悪夢を見ちゃった。しかも長いのよ。ホントいい加減にしてほしいわね」

あれを悪夢と思えるお前の頭はどれだけご都合主義に生きてんだよ

俺はさて――と先程の部室を思い出す

古泉に連れられて部室に行くと、そこには朝比奈さんと長門、朝倉までいた

「貴方でももう分かっていると思いますが」

古泉が切り出した。何だ、貴方でもって

「これからのことは貴方次第です」

「何のことだか」

「涼宮さんに好意を伝えるかどうか、ということですよ」


82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 04:04:53.26 ID:8th7bOoV0

おいおいおい

「まさか誤魔化したりはしないわよねぇキョン君?」

朝倉まで何だ

「以前、長門さんの願った世界で涼宮さんに会いたかったって感じたんでしょ?」

「んなっ!?」

「二回もキスしておいてまだ煮えきらないなんて」

小悪魔みたいな笑顔でこいつは…

「心配しなくてもSOS団は継続しますよ」

古泉が話を戻す

「まぁ多少、従来と変わる部分はあるでしょうが」

「……いいのか?」

一同に頷く団員たち


83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 04:06:47.29 ID:8th7bOoV0

「大丈夫ですよぅ。キョン君」

「長門も?」

お前も昨日――ってなかったことにされたが――覚えているんだろ?

「構わない。あれはこちらの不手際。謝罪すべきこと」

「あぁいや…」

手を振って気にしてない、の意思表示。

「僕たちは貴方の意思を尊重します。どうすべきか、選択権は貴方にあるんですから」


84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 04:08:05.98 ID:8th7bOoV0

――と言われたものの、どうする?

こいつがどう思っているかは明白で、俺の気持ちも決まってる

俺は、こいつが、涼宮ハルヒが好きだ

「何よ、人の顔ジロジロ見て」

――でも、大切なものはもう一つあるんだ。こいつが俺を見つけて、作り上げたもの。

こいつが築きあげた王国。そいつを少しでも変えることになるなんて真似は、俺にはできないね。

「なぁハルヒ」

俺たちは大丈夫だ。これからも色々あると思うけど、気持ちが一緒なら、きっとずっと二人で歩いてゆける

だからこいつに言ってやる言葉は、たった一言

「似合ってるぞ」

――終わり――


85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/08/04(火) 04:11:25.31 ID:8th7bOoV0

投下終了。我慢して読んでくれた人、批評くれた人ありがとう。
なんかつまらん上にニュー速では浮いてんな、俺の文章。

しばらくロムに戻ったがいいかな・・・。じゃ、おやすみ



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