長門「キョンくん、選んで」


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2 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/12(木) 19:08:52.91 ID:UO8alU9t0 ?2BP(0)

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 俺は中三の春、あいつに出会った。
 一人称が僕で、頭がいい、スポーツに夢中なあいつだ。
 そして冬、俺はあいつに告白した。
「ねえ、キョンくん」
「どうした?」
「僕ね、キョンくんにマフラー編んできたんだ」
 あいつの小さい手が俺の首へ伸びて行き、マフラーをやさしく掛ける。
「あっ」
 そんな声を漏らし、空を見上げた。俺も空を見上げる。
「雪だ」
 あいつの名前と同じ。
 雪が降ってきた。
「……有希」
「キョンくん。愛してるよ」
「ああ、俺もだ」

 ――四ヶ月後。

4 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/12(木) 19:13:57.46 ID:UO8alU9t0 ?2BP(0)

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 いやはや、俺も耳を疑ったね。
 確かに俺だって大概馬鹿なことをやってきた。
 しかしだな、人生というレールを外さないよう、慎重に、こそーっとやってき
た。
「東中学出身、涼宮ハルヒ」
 寝ている奴の顔に落書きはしても、万引きのような大それたことはしない、結
局怖くて、悪いことはできないんだ。
 だから俺は、これまでも、そしてこれからも、ずっと平凡に生きていくんだと
思う――東中学出身、涼宮ハルヒと違って。
 俺がそう確信したのは次の瞬間、そしてそれが覆されるのに、一ヵ月も掛から
なかった。
「ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力
者がいたら、あたしのところに来なさい。以上」
 さすがに驚いて振り向いた俺の視線の先には、じめっとしたネクラオタクがい
るのかと思ったら――
 えらい美人が椅子に腰掛けていた。
 黒色の長髪にカチューシャ付けて、整った目鼻立ち、そして意志の強そうな大
きな目。
 もし仮に人の目をどれだけ引けるか大会があれば、おそらく日本代表になるだ
ろう、クラス中の視線は彼女に集中していた。
 東中学出身、涼宮ハルヒ――ここまでは普通だったが、しかし、何故今宇宙人
たらなんたらを言っちまったんだ? そんなの個人的に言えばいいじゃねえか。
 そんなことも虚無に消え去り、担任が次の生徒を指名したところで、俺の脳は
これに関しての思考を停止した。
 ――という、嘘のような真のお話が、なんと高校入学初日に起こったのだ。

6 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/12(木) 19:15:28.95 ID:UO8alU9t0 ?2BP(0)

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 恐怖の自己紹介から数日。
「有希、学校行くぞ」
 両親が海外に長期滞在しているらしく、有希はマンションで一人暮らしだ。
「あー、待って待ってー」
 ドアの向こう側でどたどたと、下の階の住人に訴えられそうな騒音がしばらく
鳴り響き、
「用意できたよ。行こっ、キョンくん」
 何食わぬ顔で俺の右手を握る有希。
「……おい、有希。早起きって知ってるか?」


「今日からお弁当だね。ちゃんと昨日メールしたとおり、キョンくんの分も作っ
てきたよ」
 成績優秀、スポーツもでき、その上料理まで上手い。こいつこそ宇宙人だと思
えるほど万能だ。一割でいいから分けてくれ。
「ん。ありがと」
「昨日学校探険してたんだけどね、ここもちゃんと文芸部室あったよ」
「そっか。鍵開いてたらそこで食っていいかな、昼飯。後々入部したいしな」
「キョンくんってば、本当本の虫だね。いったい私と本、どっちが大事なの!?

「そろそろ校門だ、そんな恥ずかしい問いはやめてくれ。お前が大好きに決まっ
てるだろ」
 俺がそう言うと、有希は顔を真っ赤にした。


7 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/12(木) 19:16:21.21 ID:UO8alU9t0 ?2BP(0)

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「じゃあねっ、キョンくん。お昼休みにまた来るからねー。ばいばーい」
「うん。ばいばい」
 有希に手を振りながら教室に入ると、谷口が恨めしそうな目で見てきた。
「おいキョン、あいつは何だ。お前と彼女、どういう関係だ?」
「何って……」
 一応、伏せておきたいのだ。中学時代仲のよかった奴らは言い触らしはしない
だろうし。
「だって、長門有希はAランクマイナーだぜ? 何で一緒に登校してきてんだ?



8 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/12(木) 19:19:18.76 ID:UO8alU9t0 ?2BP(0)

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「おい、谷口。お前が勝手に女子にランク付けするのは構わない。『お前はAラ
ンク、お前はB、お前の方がブスだ』なんて言わないかぎりな。
しかしだな、何で入学してちょっとしか経ってないのに、Aだのなんだの、ラン
クを付けれるんだ? まさか教師が壁にこいつはAで〜なんて書かないだろうし

「確かに、それもそうだな……勘?」
 俺も大して関心はなかったが、しかし勘だけでそんなことが分かっちまうのか

 もう一つ気になったのだが、何故俺と谷口は仲がいいんだ? いや、ウマが合
わないとかではなく。
 最近は俺と谷口、そして国木田の三人でいるのがフォーマルだ。俺と国木田な
ら分かる、同じ中学だったからな。しかし、何故谷口と仲がいいんだ? まあ、
いいに越したことはないんだが。
 そんな些細な引っ掛かりも、やはり担任の起立を促す声で吹っ切れた。
 しかし、何日経っても涼宮の前の席には慣れないな。

9 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/12(木) 19:28:37.58 ID:UO8alU9t0 ?2BP(0)

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「げ、岡部来やがった」
 ああクソ、貴重な朝の時間を谷口で消化しちまった。
 今日も担任が、部活はいかに大切か、まだ慣れないだろうが勉強に励め、なんて常套句を発しただけで、HRは終了となった。
 授業を適当に聞き流していると、あっという間に昼休みとなった。
 ただ、今日はいつもと違った。
 涼宮の近くに女子が集まっていた。
 だが――
「キョンくんっ! 行こっ!」
 そんな物珍しい情景も、有希によって阻まれた。
「ああ、有希。行くか」
 俺は有希の手作り弁当を持ち、教室を出た。

10 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/12(木) 19:35:02.88 ID:UO8alU9t0 ?2BP(0)

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 一週間が経ち、踏ん切りがついた。
「ねえ、涼宮さん」
 私は彼女に話しかけた。
 何で。
 何で――私は存在しているの?
「何よ」
 私は一回目の人生で、どう言葉を掛けたっけ。
 覚えてない。
「えっと……あ、あの自己紹介、どこまで本気だったのかなーって」
「何であんたに言わなきゃいけないのよ。それとも何、あんた、宇宙人なの?」
「……! ち、違うけど、ちょっと気になっちゃって……」
「そうなの。じゃああなたには用も興味も全くないわ。ばいばい」
 何で?
 12月――いえ、4月の時点で私は……。
「あっ、あの、ドラマ、見た? 昨日の」
「興味無い」
 いくつか私が話題を振ってみたが、やはり結果は一緒。
「朝倉さん。涼宮さんは……お昼、食べましょ」
 やっぱり私は、ここでも同じ立場だった。

12 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/12(木) 19:44:45.89 ID:UO8alU9t0 ?2BP(0)

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「おい、有希。どこ行くんだ?」
「ちょっとこっちー」
 俺の腕を引っ張って、有希は文芸部室を通り越し――
 コンピューター研究部。
 プレートにはそう書かれていた。
「……? 有希?」
 俺が声を掛けた瞬間、
「失礼しまーす」
 有希が戸を開け、すたすたと中へ入って行った。
「ああ、君がキョンくん……か?」
「誰すか?」
 俺が質問すると、彼は部長だということを示し、
「これを見てくれ」
 パソコンの画面を指差した。

YUKI.N>あなたが判断して。あなたの未来はあなたが決める。彼女の覚醒までが期限。

 その下に、有希に見せてはならない、『キョン』と呼ばれている人に見せてほしい、といった注意書きがあった。
「部長……さん? 何です、これ?」
「いや、我々もよく分からないんだ、済まない」
 いや、いいんですよ。
 それよりも気になったのは、何故親切にも俺にこのメールを見せたかだ。
「分からないんだが、なんとなく、見せなければいけないような気がしてな」
 理由になっていないような気もするが、まあいい。
「丁寧に、ありがとうございました」
 部長氏にお辞儀し、パソコンの画面を見ないよう後ろに下がっていた有希と共にコンピ研を後にした。

13 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/12(木) 19:50:00.28 ID:UO8alU9t0 ?2BP(0)

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 済みません、鍵が開いていたので、お邪魔しました。
 こんにちは、長門有希さん。
 はは、そんなに驚かなくても――はい、少々面識がありまして。
 僕の名前は古泉一樹。
 お久しぶり、ではなく――初めまして、ですね。
 はい。僕は文芸部とは関係ありません。いえ、少なからず関係はありますが――しかし、部長でもなければ部員でもありません。
 ――ただの、団員です。
 彼女からの指令というかアプローチがあったので、僕からあなたへ、メッセージです。

 手短に言うと――この世界は、涼宮ハルヒによって改変された世界です。

18 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/12(木) 20:18:26.83 ID:UO8alU9t0 ?2BP(0)

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 簡単に説明すると――回りくどいと彼に怒られてしまいますからね――涼宮ハルヒには世界を思いどおりにする力があります。
 そうすると、我々のような存在が現象として起こり得る説明がつきます――所詮悪魔の証明ですので、原因と結果、どちらが先かは不明です。
 我々――つまり、宇宙人、未来人、超能力者。
 この時空間内では異なりますが、元々我々が存在していた時空間では、あなた、長門有希は宇宙人でした。
 そして僕、古泉一樹が超能力者で、きっと茶道部にいる――今は二年生の教室でしょうが――朝比奈みくるは未来人。
 嘘だと思われても仕方ありません。
 きっと彼女なら証拠を――いや、そんなことができるのなら……ええと、彼女に『TPDD』とでも言って頂ければ、何か進展するはずです。
 僕の超能力は、この時空間内では立証不可能です――涼宮ハルヒの精神状態すら分からない、申し訳ないです。
 あなたは僕たちが元いた世界では、読書好きの――宇宙人でした。
 長門さん、あなたは違いますよね。では何故文芸部室に? はあ、彼が……。
 この一年半――いえ、こちらでは時間すらリセットされていますが、元いた世界での一年半です。
 一年半、僕たちはずっとあなたに頼りっきりでした。そうですね、半年前のあの日くらいでしょうか、立場が逆だったのは。
 別段この冗長を信じろとは言うつもりはありませんが、しかし、覚えておいてほしい。
 この世界は、僕たちが存在していた世界とは別です。
 そして僕は、回帰を求めます。
 ――彼に、伝えておいてください。

19 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/12(木) 20:28:54.49 ID:UO8alU9t0 ?2BP(0)

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「一限目終わってここに来たら、一樹くんがいて――」
 コンピ研から出、文芸部室にて。
 俺がAランクマイナーとやらの有希と飯を食っているとは、谷口はどう思うんだろうな。
「で、信じたのか?」
「ちょびっとね。二限目の休み時間、教えてもらった教室に行ったらみくるちゃんいたし。タイムスリップはできなかったけどね」
「みくる……先輩だから、朝比奈さん、か」
 何故文芸部室に俺らがいるのかと言うと、朝比奈さんと同じ教室に部長がいて、許可を取ったからだそうだ。放課後、入部手続きとかしなきゃな。
 嘘っぽいが、古泉とやらの話は信憑性がありそうだな。
 古泉……? そんな奴いたか?
「古泉か。ホモっぽい名前だな」
「ホモっぽいってどんなのさ。あはは」
「で、さ。本当なのかな。有希が無口読書少女もとい宇宙人……」
「キョンくんが本を読まなくて、僕が読書ねー」

21 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/12(木) 20:36:09.55 ID:UO8alU9t0 ?2BP(0)

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 昼休みが終わる前に、やはり有希と手を繋ぎながら、教室に戻ってきた。
「……で、お前は長門有希と何してたんだ」
 正直に『あーん』とかしてましたなんて、言えるわけないよなあ。
「んー。いや、普通に飯食ってた」
 そう怒るな、谷口。
 ふと後ろを向く。
「……何よ」
「涼宮……」
「話しかけないでよ」
「曜日で髪型を変えるのは、宇宙人対策か?」
 涼宮の表情が変わる。
「いつから気づいたの?」
「あーいや、別に……」
 そうこうしているうちに、五限目が始まった。
 変わらない日常。
 古泉が言うには、もう変わったということか。
 憂鬱になっちまったよ。

23 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/12(木) 20:42:51.27 ID:UO8alU9t0 ?2BP(0)

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 マンションで有希と別れ、晩飯が何か考えながら帰路に着くと、
「キョンくん」
「はい?」
 偉い美人が俺を呼び止めた。
 うちの制服を着ている。
「朝比奈みくるです。話は聞いている?」
「何でも、未来人だとか」
 古泉だなんて知らない奴を信じるつもりはないが、真っ向から疑うのも野暮だろう。
「はい」
 信じられないかもしれませんが、朝比奈さんは続ける。
「私は未来人です。証拠は見せられません。未来との連絡がつきません」
 立ち話もなんですから、移動しましょう。そう言って、朝比奈さんは手招きをした。

24 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/12(木) 20:49:39.95 ID:UO8alU9t0 ?2BP(0)

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 果たして、俺が導かれた場所は公園だった。
「座ってください」
「……はい」
「古泉くんからの話は伝わっているようですね。ということは、私からも、メッセージです」
 まさか、二人で話を付けて俺を騙しているのかも知れん。
「『選んで』――彼女からの、メッセージです」
 しかし、朝比奈さんの表情は真剣そのものだった。
 ここらで後ろから未来から来た朝比奈さんが来たら面白いな、なんて思ったが、現実は非常だ、誰も現れやしない。
「念のため」
 という前置きの元、朝比奈さんは、有希が話したのと同じことを語った。
「時間とらせて、ごめんなさい」
「いえ、いいですよ」
「キョンくんだけがあたしの希望です」
 そう言って、小走りで公園から出て行った。
 朝比奈さんは、泣いているような気がした。
 誰だって、自分が全然知らない世界に来てしまったら心細いだろう。
「そんなこと言われてもなあ……」
 俺はこの世界が気にっているしな。

27 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/12(木) 20:53:40.04 ID:UO8alU9t0 ?2BP(0)

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「キョーンーくん、ご飯だよ」
 無邪気にそう言う妹に、いらないという旨を告げ、俺は寝た。
 今日は疲れた。
 俺にそんな難しいことを尋ねないでくれ。
 俺は関係ないんだ。
 涼宮自身はどう思ってるんだ?

30 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/12(木) 21:31:14.82 ID:bvQO4/9mO

 次の日。
 俺に向ける谷口の目線はより冷ややかなものとなっていた。
 いつもとは違い、今日は涼宮に変化があった。
「ねえ、涼宮さん。昨日のドラマ見た?」
「うるさい」
 朝倉が涼宮に話し掛けていた。
 しかし。
 俺は考えた。
 しかし、涼宮が世界を変えたのなら、何故敢えてそんな嫌われ役を演じているんだ?
 もっと思い通りになってもいいんじゃないのか? それとも、自分すら巻き込まれているから自覚がないだけか?
 暖簾に腕押し、休み時間ごとに朝倉はコミュニケーションを計っていたが、頑なに涼宮は無視していた。
 あの話が本当なら、何故何も手にできないようなポジションに――?

 事件は、昼休みに起きた。

32 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/12(木) 21:45:23.83 ID:bvQO4/9mO

 いつものように、有希が教室に入ってくるや否や、
「長門さん!?」
 そう叫んだ朝倉に突き飛ばされ、
 俺は意識を失った。


「ここは……?」
 目の前が真っ白だった。
 体が横を向いているのを感じた。
「保健室よ。ごめんなさい」
 横を見ると、ベッドに伏している俺を、椅子に座りながら看ている有希と朝倉が視界に入った。
「キョンくん、大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ。今何時だ?」
 朝倉が腕時計が示す時間を読み上げた。どうやら今は五限目らしい。
「……何でお前らがいるんだ? 授業は?」
 二人とも、俺の看病だと言う。
 朝倉は照れ臭そうに付け加えた。
「それに、長門さんと喋りたかったから」

33 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/12(木) 21:53:07.82 ID:bvQO4/9mO

 私は考えた。
 自立進化の可能性を秘めた彼女すら消し去ったあの時、私は消えたはず。
 あれは二回目。
 一回目のチャンスは四月。
 あそこでキョンくんを殺そうとしたから、消えた。
 でも、何でもう一回チャンスが与えられたの?
 そんなことを考えていると、長門さんが教室に入ってきた。
 ――それを利用して、キョンくんを突き飛ばした。


「長門さん」
「ええっと、朝倉、さん?」
「うん。長門さん……」
 他愛もない会話をし、キョンくんが目覚めるのを待った。
 全然違う、私の知らない長門さん。
 そんな長門さんでも、私の精神は安定した。
 でも――

35 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/12(木) 22:14:15.18 ID:bvQO4/9mO

 保健教師が、病人以外禁制、と物申したため、俺たちは退室に至った。
「なあ、朝倉。お前には記憶があるのか?」
 もしか、朝倉にも『元いた世界』の記憶があるのかも――
「記憶? ……何とも言えないわ」
「そっか」
 自分が元いた世界と離れたら、きっと悲しいんだろうな。
 少し怖くなり、拳を強く握った。
 それを察したのか、長門がそっと手を持ってくれた。
「キョンくん……」
 朝倉から、不穏な雰囲気を感じた。

36 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/12(木) 22:18:54.38 ID:bvQO4/9mO

「ねえ、キョンくん」
「ん?」
「……ううん、なんでもない」
 有希と別れた後、朝倉と微妙な距離を、肉体的にも精神的にも取っていた。
 とても耐えられない空気だったが、教室というゴールがあり、本当に助かった。
 今日くらい、有希に甘えてもいいよな。
 ――寂しい、か。


38 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/12(木) 22:25:05.93 ID:bvQO4/9mO

「有希、帰ろ」
「おおっ。キョンくんがこっち来るとは、珍しいねっ。鏡の中には入れそうだよ」
「何の話だ」
 有希の教室に行き、一緒に下校。
 言われて気付いたが、それもそうだな、俺が有希に会いに行くとは、真相心理では切羽詰まっているのかな。


「手ぇ繋ご」
 確かにいつもなら、ここで一旦断ったかも知れない。
「家、来る?」
 確かにいつもなら、真顔でこんなに恥ずかしいお願いできるはずもなかった。
「うん。行くっ」
 ――まあ、有希の笑顔を見たらそんなこと、どうでもよくなるんだがな。

39 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/12(木) 22:32:54.04 ID:bvQO4/9mO

「おおっ、キョンくん。あっ、有希も来てるっ!」
 我が妹ながら、こいつは遠慮という気持ちを持ち合わせていないのだろうか。
「おかえりんこ!」
「あっ、お邪魔しまん……。……!」
 有希が悶える。
 えっちなことは感心しないぞ、妹よ。
「えへへっ。えっちなことは感心しないよ!」
 俺の心を読んだかのように、妹が言う。
「妹ちゃん。僕とキョンくんはね、実はもう■■■■■■■」
 おい、有希。まだそんなことまで――
「そして■■■が■■な■■■■――!」
 ほら、妹が赤面してるだろ。
 さらに追い打ち、妹の耳元で有希が囁く。
「……! ご、ごゆっくり〜」
 そう言い残し、妹は去っていった。
「おい、有希。今、何て言ったんだ?」
「ふふっ。秘密」

42 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/12(木) 22:43:19.12 ID:bvQO4/9mO

 ここに書くことが躊躇われるほどの甘えを散々有希に見せた後、有希は言った。
「ねえ、キョンくん。僕、思うんだ――悲しくないかな、って。だって、違う世界に迷い込んじゃったみたいでさ。僕、両親が海外に行ってるから何だか分かるよ。キョンくんもさ、小さい頃、迷子とかなったことない?」
 心細い――
「どう思うんだろうね」
 俺だって、本を読むから分かる――感情移入だ。
 本当かどうかは分からないが、俺まで悲しくなってきやがる。
「元の世界ってのは、本当に本物なのかな」
「ほんとにほんもの?」
「逆にさ、元の世界が『改編後』って可能性はないか?」
「真偽がどうであれ、一樹くんやみくるちゃんは悲しそうにしてたよ」

43 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/12(木) 22:47:41.44 ID:bvQO4/9mO




 耐えられない――!





44 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/12(木) 22:56:37.05 ID:bvQO4/9mO

 何故か俺の脚は文芸部に向かなかった。
 涼宮ともぼちぼち喋るようになったある日。
 俺が朝倉に突き飛ばされてから二週間ほど経った、ある日。
 四月の終わりが近づく。
 席替えで涼宮と席が離れ、あまり話さなくなった。
「キョンはいいよな。毎日長門有希と昼飯が食えるんだぜ」
 俺の後ろに座っている谷口がぼやく。
「お前も一緒に食ってるだろ」
「谷口、そんなこと言うなら僕も一緒に食べてやんないよ」
 俺の右に鎮座している国木田が諭す。
 ――もうすっかり、元の世界云々なんて忘れかけていたある日。

45 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/12(木) 23:03:37.18 ID:bvQO4/9mO

「お」
 下駄箱に手紙が入っていた。
 谷口ならまだしも、すわ有希に見つかってしまったらとんでもないことになっちまう。
 急いでトイレの個室に駆け込み、手紙を開封する。

 放課後、一年五組の教室に来てください。

「告白……のわきゃーないよなー」
 何故かふと、物静かな有希が頭に浮かんだ。
 それに連なり、四月に起きた事件を思い出す。
 メッセージ。
 迷う。
 悲しい。
 寂しい。
「涼宮ハルヒには、世界を思い通りにする力がある」
 そう呟き、背筋がぞっとした。

47 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/12(木) 23:08:29.64 ID:bvQO4/9mO

 いつものとおり有希が昼食を食べに来る――今日は残念ながら手作り弁当ではない。
「なあ、有希。今日は先に帰ってくれ。ちょっと用事あるから」
「えっちなことは感心しないぞ!」
「分かった分かった」
 それに追い打ちを掛けるかのよう、谷口が口を開く。
「キョン、浮気か? こんなに可愛い長門さんがいるのに」
 ええい白々しい。何が長門さんだ、鼻の下伸ばしやがって。
 一人で飯を食う涼宮は、俺に言わせると『不幸』に見えた。
 涼宮、お前が何か企んでいるのか?

49 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/12(木) 23:23:49.19 ID:bvQO4/9mO

「お前か……」
 そいつは、全てを見透かしたかのような目で、俺を舐めるかのように見た。
 綺麗な夕日に映える、美しい長髪。
「お久しぶり。本当、懐かしい日々だったわ」
「その口振りからすると、お前に『元の世界』の記憶はあるんだな」
 早計かもしれないが、これで俺が『元の世界』だなんて馬鹿げた仮説を信じる判断材料が増えたってわけだ。
「その辺、微妙なのよね」
 はあ、と大きく溜め息を吐き――
「私ね、このまま生活を続けようとしたの。だって、楽でしょ?」
 人間はさあ、よく『やらなくて後悔するよりも、やって後悔したほうがいい』って言うよね――
 何かの思念が頭に響く。
「でもね、やっぱり駄目みたい」
 現状を維持するままではジリ貧になることは解ってるんだけど――
「耐えられないわ――この生活。何で私の両親なんて存在するの? 何でマンションに住んでないの? 何で何で何で――」
 どうせ今のままでは何もかわらないんだし――
「長門さん……」
 でもね――
「やらなくて後悔するよりも、やって後悔した方がいい」
 あなたを殺して涼宮ハルヒの出方を見る――
「だから私はあなたを殺して、この世界を改編した者の出方を見る」


50 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/12(木) 23:29:58.41 ID:bvQO4/9mO

 教室で俺を待ち構えていた朝倉は、後ろ手に持っていたそれを露にする。
「ナイフ……? おい、朝倉。冗談はやめろ」
 いつもと変わらない笑顔を浮かべ、朝倉は言う。
「冗談だと思う? 私も死の概念は分かるわ」
 ナイフを顔の高さまで上げ、続ける。
「暗くて、狭くて、冷たいの」
 涙を少し浮かべ、続ける。
「そして――二度と長門さんには会えない」
「……有希?」
 あの時も。
 あの時も――言っていた。
 有希と喋りたい、と。
 おい、涼宮。お前が作った世界で殺人が起きていいのか? どこかで聞いているんじゃないのか?
 ――あのナイフ、本物だろうな。

53 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/12(木) 23:37:56.64 ID:bvQO4/9mO

 ナイフを下ろし、朝倉は言う。
「キョンくん。そう、それよ、それ。ずっとそれにイライラしていたの」
 今朝手紙を読んだ時のように、背筋がぞっとした。
「何で部外者のあなたが、そうもぬけぬけと長門さんのことを呼び捨てにできるの?」
 朝倉は震えていた。
 目に涙を浮かべ、唇を噛み締め。
「あ、ああ、分かった。だからその、一旦ナイフを置いてくれ。意味が分からないし笑えない」
 有希を呼び捨てにする俺が憎いから殺す――?
 はは。笑うしかない、傑作だ。
「うん、それ無理。あなたのことが憎いもん。無駄なの」
 俺はドアに駆け寄ったが――
「ドアが開かない……」
「だから無駄だって。無駄。二度も言わせないでよ。私は無駄なことが嫌いなの」
「何でお前……そんな、ひっ、人殺して……えっ、俺、死ぬ? 助けっ……」
 いつもと変わらない笑顔を浮かべ。
「うん、それ無理。死んで」
 そして――

56 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/12(木) 23:44:34.28 ID:bvQO4/9mO

 果たして俺は、無事だった。
「一つ一つのプログラムが甘い。空間閉鎖、情報閉鎖共に不完全。この時空間内でエラーが発生した模様、あなたは動揺している」
 有希がいた。
 文字どおり空間を『破って』来た。
 俺の意志が効かない教室内に――
「長門さん……!」
 朝倉は、構わず泣いた。
 涙を浮かべるだけでなく、号泣した。
「何故泣く?」
 そんな二人を見て、
「有希? え? 帰ったはずじゃ?」
 そんなことしか言えなかった。
「後で説明する。彼女と二人きりにさせて」
 有希は静かに言った。
 ドアを引くと、何の引っ掛かりもなく、スムーズに開いた。
 有希の言い付けを守り、教室の外に出る。

57 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/12(木) 23:50:32.70 ID:bvQO4/9mO

 三回目の私には何の指令も与えられなかった。
『普通』の生活が、役一ヵ月続き――

 耐えられない――!

 私の精神は崩壊しそうだった。
 私の精神を安定させる、唯一のぶれのない存在。
 長門さん。
 彼女はキョンくんに――
 盗られた。
 私は何もしてないのに。
 長門さんも何もしていない。
 キョンくんが悪い。
 いずれにしろ、私の最期は――
 キョンくんを殺さなくちゃいけないのか。
「……手紙、ね」
 所謂『普通』の家の『普通』の自室で――そこに長門さんはいない――呟いた。
 一回目の私を踏襲し、手紙でキョンくんを呼び出すことにした。

58 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/12(木) 23:57:28.40 ID:bvQO4/9mO

 あの時のことを思い出した。
 結局はどうあがいても、無駄だったのね。
 私は意図的になのか、教室の空間閉鎖、情報閉鎖を緩くした。
 長門さんが助けてくれると思った。
 長門さんが救ってくれると思った。
「うん、それ無理。死んで」
 そう言った時、長門さんが現われたのが嬉しかった。
「後で説明する。彼女と二人きりにさせて」
 私は長門さんに抱きついていた。
「ということは、長門さん。あなたが世界を改編したの?」
「そう。目的は二つ」
 私と長門さんは、見つめ合っていた。
「一つは、あなたに」
「……何?」
「ごめんなさい。ありがとう」
 今度は長門さんが私に抱きついてきた。

61 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/13(金) 00:04:01.55 ID:RTM0+Z0lO

「あなたに言いたかった。そして、またもう一度、あなたに会いたかった」
 長門さんの唇と私の唇とが重なった。
「……ありがとう」
 長門さんは泣いていた。
 時間軸で言うならば、この世界になる前、長門さんは二年生の秋のはず。
「みんなが、長門さんを変えたのね」
 長門さんに芽生えた感情――
「もう一つ理由があるみたいだけど、私、どうせもうすぐ消えるんだし、聞かないわ――」
 いいえ。
 私の言葉を遮り、長門さんは二つ目の理由を話してくれた。
「ふふ。長門さんらしいわね」
 私もいつの間にか泣いていた。
「ばいばい、長門さん」
 そう言って、私は自分自身の情報連結を解除した。
「実を言うとね、この一ヵ月、本当に楽しかった。長門さん、ありがとう」
「あなたはとても優秀。だから――」

 好き。

62 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/13(金) 00:11:56.02 ID:RTM0+Z0lO

「朝倉も長門さんのことを好きって言ってたけど、長門さん、あんたも好きなんだな」
 長門さん――俺は彼女のことをそう呼んだ。
 朝倉との対話は終わったのか、長門さんは俺を教室に呼んだ。
「そして二つ目が――」
 長門さんは口を開き、言葉を紡いだ。
「あなたに愛されたかった」
 元の、『正しい』世界で俺が有希にアクションを起こさなかったから、長門さんは『活発な自分』を作った。
 俺が読書家になったのは、
「SOS団に思い入れがあったから」
「そのSOS団とやらで、涼宮――ハルヒは不思議を見つけようとするわけ、ですか」
「そう」
 中学三年生の冬、告白されたのは嬉しかった――と長門さんは言った。

63 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/13(金) 00:20:44.86 ID:RTM0+Z0lO

「幸い後一週間ほど、今月が残っている。選んで」
 宇宙人を間近で見たからには、俺も信じなきゃいけないわな。
「一週間か。長門さん、じゃあ、四月の終わりに来てくれ。それまでに返事は決めておく」
 分かった、と言って、長門さんは闇に消えていった。

「どっちか、ねえ」

 何故俺に世界を任せるんだ、有希?

64 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/13(金) 00:32:14.11 ID:RTM0+Z0lO

 ハルヒはいつもと変わらず、孤独だった。
 有希はいつもと変わらず、幸せそうだった。
 朝倉は、転校したことになっていた。
 朝比奈さんは、どこかさみしそうだった。


「つーことだ、有希」
 俺は最終的に、長門に相談することにした。
「キョンくんはどうしたいの?」
「分からないんだ」
「僕はどんなキョンくんでも、愛せるよ」
 だから、有希は続けた。
「キョンくん、選んで」

66 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/13(金) 00:40:52.52 ID:RTM0+Z0lO

 結局俺は。
 赤い手編みのマフラー。
 いや、記憶の戻った今なら分かる。
『ハルヒの手編みのマフラー』をベースに、『長門の手編みのマフラー』を作ったんだ。つまり、俺がもらったマフラーは、元の世界ではハルヒが編んだ。
 元の世界で俺は、ハルヒと付き合っていた。
 結局記憶があるのは俺だけか。
 ちゃんと有希は幸せにしてるか? 頑張れよ、俺。
「何よ、ぼうっとしちゃって」
「ううん。ハルヒの編んでくれたマフラー、暖かいよ」
「ありがと」
 会話を続けながら、二人歩いていると、雪が降ってきた。
「変なキョン」
 俺は幸せだ。

67 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/13(金) 00:43:55.29 ID:RTM0+Z0lO

 四月の終わる日。
「決めた?」
「俺は遅刻しないことで有名なんだ」
「でも……」
 何故か長門さんは笑っていた。
「決めました」


「そう。あなたがいいなら、それでいい」


「長門さん、幸せにな」
 俺は選択した。

69 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/13(金) 00:54:32.72 ID:RTM0+Z0lO

「それでいいの? 私は愚か。あなたが涼宮ハルヒと上手く行っていて、それに逆恨みし、この世界ではあんな扱いをしてしまった――それで、いいの?」
 放課後の教室。
 丁度あの時のような夕日。
「できるんなら、してくれ」
 俺が長門さんに提示した条件――
「あなたという個体を別の時空間内に存在させることは可能。そして古泉一樹らも」
 長門さんは、いつも俺に見せるような笑みを作った。
「長門有希を、幸せにして」
「分かった。長門さんも、幸せに」


 俺の選択とは――
『選ばない』こと。
 二人俺たちを形成し。
 別の。
 楽しい人生を歩ませる。
 そっちの俺と長門さん、幸せにしてるか?
 俺は幸せだ。

70 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/13(金) 00:55:06.17 ID:RTM0+Z0lO

 長門さんが消え去り、俺はあることをした。
 ハルヒの下駄箱に、紙を入れた。

 明日、駅前の喫茶店に来てくれ。


 次の日。
 俺を見付け、テーブルに着くハルヒ。
「おい、涼宮」
「何よ」
「宇宙人、いたぞ。それも、すごく身近に」
「ふうん。誰よ」
「聞いて驚け。なんと有希が――」


  完

72 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/13(金) 00:59:15.18 ID:RTM0+Z0lO

永らくお付き合い、支援、保守、有難うございました。

批評など受け付けております、後学の為、お気付きの点があればご指摘ください。

私がSSを書き始めた時、ぷん太さんにまとめてもらおうとしていました。
しかし今、私はぷん太さんがまとめたくなるような作品を書こうとしています。

では、次回、
キョン「そして、俺がジョン・スミスだ」
でお会いしましょう。

75 名前:うかり ◆2rPWxrbSIg [] 投稿日:2009/03/13(金) 01:07:25.88 ID:RTM0+Z0lO

かなりの蛇足となってしまいますが。
>>20さんの言ったとおり、このSSは『これ』が初めてではありません。
2月23日、夜中の三時頃まで一心不乱に同タイトルのスレッドにてSSを書いていました。
しかし、考えがまとまりませんでした。
そして3月6日、同名スレッドを立てましたが、規制によりdat落ちしてしまいました。
今回、ようやく思いを文字にすることができました。
ありがとうございました。
蛇足というならかなりの蛇足ですが、朝倉さんが消えた後、谷口が「WAWAWA、WAAAAAAAAANNABEEEEEEEEEE」、キョンが「台無しだッ! くそ野郎ッ!!」という流れを考えていましたが、良心が囁き、没にしました。

またいつか会うことがあれば、その時はよろしくお願いします。



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