キョン「長門っ!」 長門「……やめて」


メニュー
トップ 作品一覧 作者一覧 掲示板 検索 リンク SS:アスカ「何が式波よ」

ツイート

1 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 04:32:20.75 ID:HrK3MLWr0

前スレがまたしても落ちてしまった。>>1の新スレッド残機が復活したので再開する。まずは前回のおさらいから。

               _. -−- ._
.         ,..イ´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:´ ̄`丶、
       /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\
      /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
.    /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヘ
  ∠:ィ:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ:.:.:.',:.:.:.:.:ハ:.:.:.:.:.:\
    /:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:!:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.ハ:.:.:|:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.:.:.:トゝ
.   |:.:':.:.:.:.:.:.:.:|:.:∧:.:.:.:.:!、:.:.!.、:._」',...L:.:.:.:.:|:.:.:.:.:.N
.   l:.:l:.:.:.:|:.:.:下'ト ヽ:.:.:| x|'´\! ',:l:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.:.|
    V||:.:.:.V:.:.|,ィ=ミ、\!  ィイ¨'トヽ:.:.:.:.:ハ:.:トソ
      リ、:.:.:.\|:{ ヒ,ハ     ら、j.| |:.:.:.:.,'ノ〉:|′
        ヽN:.:.:.:| ー‐'     ー-' ,!:.:.:./イ/ヾ
        l∧:.:.ヽ   '_     /:.:.// '′
           \:.|`  _,..__ .ィ ./:.:./ー、
          `rァ ´ /  l  ,./:.:/  ∧
            /′ /三ミ 、///     ヽ
         / .′ /   `y ´      ヘ.
        ,′|  |   /     .ィ´ ̄ヽ.〉


4 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 04:34:10.33 ID:HrK3MLWr0

不揃いなおかっぱ頭を、少しあいた窓からなびく風に時折揺らせながら長門有希はいた。
古泉と朝比奈さんの姿は見えず、皇帝よろしく普段なら鎮座ませます我らが大いなる団長様は
何かしらの用事で遅れてくるとのことだった。

だから、本日のSOS団の活動は事実上の長門の静かなる読書であり。
ゆえに文芸部室は、そんな読書大会の舞台であった。

今思えば、ただ惰眠をむさぼるには、俺は非常に若すぎたのさ。

5 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 04:34:59.17 ID:HrK3MLWr0

「長門」
「…何?」

ハードカバーから目を離し、俺の目を見つめ返しながら答える長門。
昔のこいつなら、本から目を離さずに返答してきたことだろうと思うと
常に身近で、この超高性能美少女アンドロイドの変化を感じ取って来た俺としては
随分と感慨深いものだったと言える。

その嬉しさもあってだろう。
――いや、最後の高校生活に何か刺激的な思い出がほしかっただけ
ということはもはや否定しない。



6 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 04:36:06.34 ID:HrK3MLWr0

「長門。ゲームしないか?」
「……」

少しだけ不思議な表情を浮かべ、長門が上目づかいの瞳の色を変化させたことは見逃さなかった。
単純に疑問の表情だ。

俺たちの高校生活も残り数か月。

この3年間。長門は本当に変わった。
統合ナントカの力は健在にせよ、随分と表面上のスペックは人間に近づいた。
…と思う。

最近では人間らしい表情を見せ始め、露骨な感情の変化こそ見せつけてくれることはなかったが
その機微は、初期のそれにくらべ各段に解りやすいものになっていた。
古泉はおろか、あの朝比奈さんまでが長門の評価を改めるほどになったのさ。



8 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 04:37:27.41 ID:HrK3MLWr0

余談だが、そんな長門の魅力が世に広まることになり、谷口を含む男子勢による長門争奪事件が
発生したこともあったっけ。今となってはいい思い出だ。懐かしい。

蛇足だが
北高美少女ランク再改めの結果、長門は谷口いわく『AAランク+だな』だそうだ。現金な奴だな。
いや、一年入学当初Aランクに含めていたあたり、ある意味で先見の明はあったのかもしれない。
しかしながら、長門の評価がいつぞやの朝倉と同じという結果に苦笑せざるを得ない。

単純に、宇宙人萌えなだけじゃないのか?こいつは。

……やれやれ。

9 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 04:38:29.67 ID:HrK3MLWr0

グラウンドの応援団の野太い合唱が心地よく聞こえる。

「…ゲーム?」
「ああ」
「…あなたが望むなら、私は構わない」


――らめっこ。
男は女の子をさわる。
女の子は何をされても「らめー☆」と言ってはいけない。


俺は長門のカーディガンに手をかけ脱がし始める。長門は抵抗はしない。

10 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 04:40:06.81 ID:HrK3MLWr0

「……」
ハードカバーを脇に置き、俺をまじまじと見つめる長門。
今更ながら、本当に端正な顔をしてるな、こいつ。
その程度の表現しかできない俺のボキャ貧具合が無性に腹が立つ。

長門の肩に手をかけ、撫でる。しなやかなカーブを描き華奢なラインを連想させる。

11 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 04:41:18.33 ID:HrK3MLWr0

「……」

反応はない。

長門のシャープな輪郭を描く、のど元に指先をそっと触れ
そのまま頬へと移動させる。やわらかい。

13 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 04:42:26.41 ID:HrK3MLWr0

「………」

長門の黒い瞳に俺が映る。
その中の自分がどんな表情をしているかまでは目視できるレベルじゃない。

反応なし。か。

「長門 恨みっこなしだぜ」

14 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 04:43:13.65 ID:HrK3MLWr0

「……」

部室を支配するのは俺の声と三点リーダーのみ。
静寂の文芸部を、乱入するそよ風がなんとも蛮勇をふるっているようで滑稽だった。
そよ風がひとしきり、独り相撲を演じ飽きたころ――

――俺は長門のセーラー服に手をつけた。

16 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 04:44:21.59 ID:HrK3MLWr0

胸がはだける。

パイプ椅子に腰かけた長門に対して、立っている俺の姿勢の角度的な関係上
そのはだけた隙間から、長門の少女としての蕾が垣間見れる。


下着はつけていない。

18 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 04:45:42.45 ID:HrK3MLWr0

俺は改めて、過去に自分は宇宙人だと告白した目の前の存在が紛れもなく少女であることを認識する。

「……」

長門の視線が初めて俺からそらされる。
そのまま下を見つめ、少しうつむき加減のまま、なされるがままの無垢な少女は先刻同様黙りこくる。

右の胸。
左。

目の前の少女のわずかな気配を逃さないように、俺は神経を集中させる。
やかましいはずの応援団の渾身の三三七拍子も、もはや俺にとっては部屋の中で聞く遠雷の如く、背景以下の存在に成り下がっていった。

「……ぁ」

19 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 04:46:57.82 ID:HrK3MLWr0

僅かな吐息を洩らす程度の声。
左の乳首。そこが弱点か。

「悪ぃが勝負あったぜ長門!」

俺の中に、これほどのサディスティックな情動が秘められていたことに今更ながら驚く。
恐らくハルヒにさんざん鍛えられていた俺は、俺自身気付かないうちに
その性質をラディカルに変貌させていたのかもしれない。

いや、他人に理由を求めるのは卑怯かもな。
これは俺自身の若さってやつだ。

20 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 04:47:53.14 ID:HrK3MLWr0

右手をセーラーの隙間から滑り込ませ、入念に長門の大切な部分を弄ぶ。

「…ぅ…ぁ」

長門が体を少しくねらせる。
その頬を朱色に染めているのは、おそらく夕日の仕業ではないだろう。

あと一息。長門に一言『らめぇええええ☆』と言わせれば俺の勝ちだ。

俺は、長門の表情をひとしきり確認した後、最後のひと押しをかけた。






「キョンくん らめぇええええ☆」

目に涙を浮かべながら 紅潮し恍惚な顔をした朝比奈さんが入口で悶えていた。

21 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 04:49:34.33 ID:HrK3MLWr0

なぜ朝比奈さん?ホワイ?
脳内で検索エンジン「キョングル」が立ち上がり、「理由」を打ち込む。
当たり前だが朝比奈さんが、入口にいるということは彼女はこの部室にやってきたということだ。

突然のイレギュラーがやってくる、直前。
長門は明らかに、今の朝比奈さんと同じ表情をしていた。

今の長門は…

無表情。

…読めたぜ。

23 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 04:50:42.08 ID:HrK3MLWr0

「なるほど、絶頂のまさにその瞬間。負ける瞬間!運よくやってきた朝比奈さんと連結情報を”入れ替えた”のか。
この場合は長門の感覚神経を、朝比奈さんに移し替えたってところだろう。
でもまだまだ甘いな!俺もこの三年で成長したことを見せてやるぜ」

俺は、容赦なく長門を体を揉みしだく。
やわらかい、白い肌が俺の手の中に納まるのが心地いい。

「ひっ」

俺の手が動くたびに長門の代わりに朝比奈さんが悶える。
…正直溜まりません。

24 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 04:51:57.45 ID:HrK3MLWr0

長門の太ももの内側に手を這わせる。

「っひゃいっ!」

座り込む朝比奈さん。スカートが乱れてますよ。薄いピンクは未来色。

朝比奈さんは、ようやくこの状況に気付き始めたようだ。

「キョンくぅん やめてくださぁい…」

26 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 04:53:32.76 ID:HrK3MLWr0

半涙ながらに、哀願する未来系美少女朝比奈みくる!
哀れ、悪逆帝王が指一本触れもしないにもかかわらず 服は乱れまくり、呼吸が荒い。

まぁ いたいけな朝比奈さんの頼みを無下に出来るはずもなく――
ってそもそも最初からその言葉を聞きたかっただけの俺は朝比奈さんをあっけなく解放することにする。

「古泉」
「はっ ここに」

27 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 04:54:18.91 ID:HrK3MLWr0

スマイル0円古泉一樹、颯爽と参上。
呼ばれた次の瞬間には、床に片膝をついて待機するその光景は、まるで悪の親玉とその配下を連想させる。

その立ち居振る舞いは一挙手一投足が洗練され、まさに有能多才を物語るに十分だった。
貼り付けられた表情は笑顔のポーカーフェイスと呼ぶにふさわしい。
俺は、そんな古泉を呼びつけた。

その登場までわずか0.2秒。御苦労セバスチャン。もう帰っていいぞ。

28 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 04:55:50.03 ID:HrK3MLWr0

「さ、朝比奈さんこちらへ」
「ひゃ ひゃい!」

突然の古泉の出現に驚いたのか、自身の乱れた服に一瞬のためらいを覚えたのか
それとも未だに恍惚に支配されているのか、はたまたその全てが影響か
放心する朝比奈さんを古泉は手際よく促し、二人はその登場シーンの印象とは裏腹にあっけなく退場した。

刹那、長門に感覚が戻り始めるのが俺には感じられたのさ。

29 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 04:56:56.32 ID:HrK3MLWr0

――――計画通り!

「長門。お前らしい見事な切り抜け方だった。…が、残念だったな」

俺は素直に勝ち誇って見せた。
黒い二つの汚れなき瞳が、俺をきっと捉える。潤んでいるのは気のせいだろうか。

「しかし詰めが甘かった。お前は朝比奈さんがこの部室に入ってくると同時に、この部室を隔離した。
あの時の…朝倉の時と同じような壁が一瞬、朝比奈さんに開けられた入口に確認できたのさ。これは経験者にしかわかるまい。
そして、もうひとつ。いつぞやのカマドウマ事件だ。あの時の空間を生み出したのは、長門。お前の遠い親戚みたいなもんだって言ってたな。
あの空間には古泉の力も限定的に解放される。つまり、逆説的にお前が生み出したこの空間にも古泉も入り込む事が出来る。
あのタイミングで、ここにあのニヤケ面が登場したことは別段不思議でもないんだ。」


どんなことでも経験とは、後々に財産に出来るものらしい。
あの朝倉に殺されかけた出来事や、コンピ研部長氏失踪事件が、この事実に気付かせたのだから。

30 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 04:58:09.56 ID:HrK3MLWr0

「そして次に俺はこう考えた。ズバリ空間を隔離した理由。その答えは簡単だ。
朝比奈さんに対して行った情報の入れ替えは、その隔離された空間でのみ有効。
これはお前が以前、朝倉との対決で割り込んで俺を救ったことから推測できる」

長門が少し驚いた顔で俺を見つめ直す。
俺は続ける。

「なぜならば、もし外部から干渉できる力があるならば、わざわざ空間に侵入せずとも
お前は朝倉を排除できたはずだからだ。あの時お前は朝倉の手を゛直接゛掴んであいつの情報連結を解除したんだ」

雪のような白さを取り戻しつつあった長門の頬に再び朱が差す。
俺は容赦なく、とどめを刺す。

31 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 04:59:26.14 ID:HrK3MLWr0

「つまり、逆説的に内部から外部への干渉も不可能!」

もうお前を庇うものは何もないぜ…!

ここまで言い切った後、
俺の脳内で華麗にオーケストラの幕が閉じられ、壮絶な拍手喝采の海が巻き起こった。
その観客の一人に、間違いなくこの長門有希という少女は含まれていたと思う。

これで、もう長門がまとえる鎧はない。心おきなく、さっきの続きができるというもんだ。

33 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 05:01:39.34 ID:HrK3MLWr0

「…そう」

呟いた長門は、諦めたような眼差しを見せた後 一瞬だけ切なそうな顔をした。

思えば俺は長門には助けられっぱなしだった。
そんな長門を、一度とは言え出しぬけたのは 俺の成長もそうだが
やはり、色々と良い意味で人間離れしたSOS団メンバーたちの超人的活躍に他ならないだろう。

猪突猛進でパワフルだけど、どこか憎めない仲間想いのハルヒ。
クールで、いつも縁の下の力持ちだった副団長古泉。
愛くるしい風貌で、部活の緩衝材になってくれた朝比奈さん。

――そして…
いつも最後には、俺が抱えるトラブルを解決してくれた長門。

34 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 05:03:26.08 ID:HrK3MLWr0

そんな長門にしてみれば、いつも助けてばかりだった俺みたいな奴に
一度とは言え、煮え湯を飲まされたことが悔しいんだろうな。

長門は再び、うつむき加減に顔を下げる。観念したということか。

「…あなたがそれを望むなら、私はそれを受け入れる」

静寂にすらかき消されてしまいそうな声で呟く長門に俺は

35 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 05:05:33.26 ID:HrK3MLWr0















――続きを読みたければ一人あたりワッフルを二個買ってきなさい!


39 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 05:08:07.18 ID:HrK3MLWr0

以上でおさらいは終了。購入したワッフルは私に供給すべき。それでは再開する。

               _. -−- ._
.         ,..イ´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:´ ̄`丶、
       /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\
      /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
.    /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヘ
  ∠:ィ:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ:.:.:.',:.:.:.:.:ハ:.:.:.:.:.:\
    /:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:!:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.ハ:.:.:|:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.:.:.:トゝ
.   |:.:':.:.:.:.:.:.:.:|:.:∧:.:.:.:.:!、:.:.!.、:._」',...L:.:.:.:.:|:.:.:.:.:.N
.   l:.:l:.:.:.:|:.:.:下'ト ヽ:.:.:| x|'´\! ',:l:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.:.|
    V||:.:.:.V:.:.|,ィ=ミ、\!  ィイ¨'トヽ:.:.:.:.:ハ:.:トソ
      リ、:.:.:.\|:{ ヒ,ハ     ら、j.| |:.:.:.:.,'ノ〉:|′
        ヽN:.:.:.:| ー‐'     ー-' ,!:.:.:./イ/ヾ
        l∧:.:.ヽ   '_     /:.:.// '′
           \:.|`  _,..__ .ィ ./:.:./ー、
          `rァ ´ /  l  ,./:.:/  ∧
            /′ /三ミ 、///     ヽ
         / .′ /   `y ´      ヘ.
        ,′|  |   /     .ィ´ ̄ヽ.〉


41 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 05:10:06.12 ID:HrK3MLWr0

続きを読みたければ一人あたりワッフルを二個買ってきなさい!


突然の謎のメッセージの出現と同時にテストプレイを終えた俺に、ハルヒの燦然ときらめく笑顔が飛び込んできた。

「どうよキョン!このゲームの出来具合は!これで今度のコンピ研との対決ももらったわね!」
「いろいろ突っ込みどころがありすぎる」

ハルヒはなによ…と言わんばかりに俺を睨みつける。

43 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 05:11:38.37 ID:HrK3MLWr0

「そもそも三年生って設定なのに朝比奈さんが普通にいるってのはおかしいだろ!勝手に脳内留年させてんじゃねえよ」

そもそもエロゲかよ!って突っ込みを、いの一番にしたかったのだが
俺の口がそうさせなかった。その単語を口にするのも憚られたんだ。素直じゃないよな。

「はぁ?あんた可笑しくなったんじゃない?我らがSOS団にみくるちゃんがいちゃ何がおかしいっていうのよ!?
何で同じ学年のみくるちゃんが留年なんかするわけよ」

44 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 05:13:33.64 ID:HrK3MLWr0

一連のやり取りを見守っていた古泉が、そこでハルヒには聞こえないように俺の耳元に囁いてくる。相変わらず顔が近い。

「…ほら 朝比奈さんなら 僕たちと同学年になったじゃないですか」

……そうだった。
俺たちが三年に進学する前、つまりは二年の終わりごろ。
朝比奈さんは、ハルヒの近くで監視を続けるために、今度は「同学年」として現れたんだ。勿論留年したわけでは断じてない。
最初から「同級生だった」という設定での再登場だ。凄い努力とはこういうことを言うのだろう。
卒業式の涙は一体なんだったんだ?

勿論生徒や周囲の記憶の改ざんには、今も窓際でハードカバーと格闘中の文学少女が一枚かんでいることは言うまでもないだろう。

45 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 05:15:39.60 ID:HrK3MLWr0

「本当に。僕も驚きました」

古泉が笑う。
この場合、朝比奈さんの行動うんぬんというより、そんなことを今更ながら失念していた俺に対する笑いの意味合いが大きいだろう。

話の渦中の当の本人は、慌てふためいた表情でお茶っぱをひっくり返したりしているのだが。

「キョン!あんた頭打ったんじゃない?」

「いや、俺の勘違いだ。すまん!非常にすまん!朝比奈さんには全身全霊をもって謝るぞ!朝比奈さんすみませんでした!」

「ひゃ、ひゃい!あ、あのキョン君…」

みなまで言うな分かってる。

これ以上この話題に深入りするのは、色々とまずいだろ?
俺はゲームの内容に話を戻すことにしたのさ。 

46 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 05:18:19.90 ID:HrK3MLWr0

「大体っ!この主人公の名前。これ最初にプレイヤーが入力する意味ないだろ!」

これは正直な感想だった。

「なんでよ?自分の名前を入れることで、こういうゲームは感情移入できるんじゃない」

「違う!俺の指摘したい所は断じてそこではない!
そもそも、その入力した名前はどこで出てくるんだ。全部俺のあだ名でしか呼ばれんだろうが!」

それは現実世界での抵抗も含まれていたと思う。

47 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 05:20:22.73 ID:HrK3MLWr0

「そんなの気にしちゃだめよ。それにちゃんと二人称でも呼ばれるでしょ」

それだけかよ。つか気にするだろうよ。普通。
何でプレイする連中はわざわざ自分の名前を入れて、ことごとく『キョン』などと呼ばれないといけないんだ。
この瞬間、噴飯ものだぞ現実。

第一、このゲームのテキスト。展開。こいつ絶対確信犯だろ。

49 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 05:23:01.67 ID:HrK3MLWr0

ここまで来ると、このSOS団という存在自体…
いや、俺の高校三年間そのものが、俺という個人を担ぐためだけに存在した壮大な装置ではないかと勘ぐってしまう。
分かっててやってるだろ。

「これは戦うウェイトレス、ミクルちゃんと悪い魔法使いユキのスピンオフシリーズよ!
名前はあえて本名にして設定と取り巻く環境に特に力を入れたわ。」

ハルヒ曰く、これはすべてフィクションらしい。
すべて目の前の、破天荒少女の頭の中からひねり出されたものらしい。

50 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 05:25:12.29 ID:HrK3MLWr0

「…まぁいいじゃないですか。涼宮さんらしいですよ」

古泉よ。お前はいいのか。俺の手下、しかも悪の子飼いみたいな扱いだぞ。
ここは軽く怒るところだと思うぜ。

「僕は別にかまいませんよ。面白いじゃないですか」

そろそろ食傷気味のニヤケ面。
お前ならそう言うと思ったよ。予想通りの反応に苦笑せざるを得ないのは仕方ないだろう。

――いや
苦笑しているのは、古泉のこんなリアクションを解りきっていながら聞かずにはいられなかった、自分に対してかもしれない。
ハルヒにいたっては、「さすが古泉君はわかってるわ」とかなんとか自画自賛だ。

52 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 05:27:15.40 ID:HrK3MLWr0

「…これを次の文化祭で出展するのか?」

止めてほしい。

「勿論!今年もコンピ研の連中をぎゃふんと言わせてあげるわ!」

コンピ研とSOS団のゲーム合戦は恒例行事となりつつある。
キッカケは亡きコンピ研先代部長が卒業間際に、ハルヒに最後の勝負を仕掛けたことに端を発する。
勿論彼は結局盛大に玉砕したのだが。

やれやれ……無茶しやがって… 

53 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 05:29:20.54 ID:HrK3MLWr0

それにしてもあの部長氏め。とんだ置き土産をしてくれたもんだ。

ハルヒ曰く、コンピ研連中とのゲーム制作対決は伝統行事にするらしい。
我らSOS団の―――というよりも北高の伝統行事だと言って憚らない。

何でもSOS団が完膚なきまでに連中を叩き潰すことで、コンピ研に絶対の力量差を叩きつけ
その臣従を再確認させるのが目的らしい。

正直意味がわからない。

ハルヒはすっかり自己満足モードだ。パソコン画面の前で「うん!」とか「ふむ」とか妙な声を上げている次第だ。

54 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 05:31:35.66 ID:HrK3MLWr0

―――それにしても

古泉が切り出す。

「このゲームは涼宮さんの内面を如実に反映していますね。微笑ましい限りです」

このエロゲ―が?こいつの?ありえんだろ。
あいつがこんな事考えているはずない。少なくとも俺の中のハルヒは、露骨なエロゲ―なぞ作り出すキャラではない。
この三年間のハルヒとの高校生活が、俺にそう語りかけていた。

55 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 05:33:53.39 ID:HrK3MLWr0

「考えても見てください。涼宮さんも健全なうら若き女性です
こうしたことに興味を持たれるのは、至極自然な流れでしょう」

それは分かる。なにせ、いつぞやあいつ自身が俺に言ってきたことだからだ。
しかし、俺が言いたいのはそんなことじゃない。
だが、こいつとももう3年の付き合いになるわけで、古泉の独特の言い回しや、こいつの言いたいことは大体理解できるようになっていた。

56 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 05:35:53.53 ID:HrK3MLWr0

「お前の言い分じゃ、このゲームはあいつの欲望や希望そのものと言いたげだが?」

団長席で画面を注視しながらゲームのチェックに精を出すハルヒを尻目に俺は古泉に言った。
古泉の言うことが事実なら、このゲームはハルヒの願望だということになる。

「ええ。まさにその通りです。このゲームの内容は涼宮さんの願望を表わしています。考えても見てください。
…この三年間、本当に色々なことがありました。」

古泉は目を細める。思い出を振り返っているのだろうか。

57 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 05:39:44.06 ID:HrK3MLWr0

「本当に充実した高校生活だと思いませんか?少なくとも僕はそう思いますよ。
確かに涼宮さんのパワーには圧倒される事ばかりでしたし、大変だったと思うことも正直あります。
それでも平均的な高校生としては、これ以上ない充実したイベントの毎日だったと断言できます」

それは…そうだと思う。本当に楽しかった。
もちろん時々ハルヒの奇天烈な思い付きにウンザリしたりしたこともなかったこともないし
ハルヒの非常識超絶能力の餌食になりかけたこともあった。

しかしそれでも―――
高校入学前に、描いては破いていた平凡なキャンバス像を目の前の涼宮ハルヒという一人の少女が
大きく塗り替えてくれたことは もはや否定はしない。

58 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 05:41:10.23 ID:HrK3MLWr0

古泉は一呼吸おいて続ける。

「…ですが。それでもたった一つだけ足りないものがあります」

いつもの古泉の笑顔だったが、どこか少し切なさを湛えた、そんな風な笑顔に見えた。

窓際でハードカバーと格闘中の長門の頬にそよ風がかかるのが見える。
そろそろ夕日も手を振っている。

そんな妙に哀愁漂う情景と、どこかしら含みのある古泉の切なそうな笑顔は
俺が一瞬の思考の世界に入り込むには十分だった。

59 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 05:43:06.56 ID:HrK3MLWr0

―――足りないもの…か。

何だろう。俺にも心当たりはある。が、どうしても適切な言葉が出てこない。
解ってるんだが、出てこない。出そうとしても脳内の俺の別人格が邪魔している。
そんな感じだった。

余程、俺は歯がゆい顔をしていたのだろう。

古泉はあっさりと”それ”を言った。

61 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 05:45:20.98 ID:HrK3MLWr0

「それは“恋愛”です。正常な若い男女がこれだけの時間を共に過ごしたにも関わらず
僕たち…いえ、あなたにはそうした出来事は一切ありませんでした。
もちろん涼宮さんにも……」

―――このゲームはそんな涼宮さんの欲求不満の表れなんですよ…

古泉はそう言葉を結んだ。

63 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 05:48:04.32 ID:HrK3MLWr0

なんだかんだでハルヒも普通の女の子で、心のどこかでは
ああいう風な一般的な高校生がする妄想をしていたことに、少しの親近感を覚える。

そうした一面があったことに、なぜか俺の心は高揚した。

考えてみれば、俺にとってハルヒとはどこか神聖で侵しがたい存在だったような気がする。
古泉がいつぞやハルヒを神と形容したことがあったが その時には仰々しさを覚えたことは事実だが
今の俺にとっちゃ、そこまで一笑に付すことはできない。

65 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 05:50:12.34 ID:HrK3MLWr0

ハルヒは、俺にとって―――
SOS団にとって、団長であり、神であり、法であり、その全てだった。

俺はそんなハルヒを恋愛対象として見ることで、そんなハルヒを貶める事になるかもしれないことを
何となく恐れていたのかもしれない。

だったら、もしハルヒがSOS団の団長でもなく、別段特別な能力もなく
普通の女の子だったら…

―――俺はどうしたんだろう?

66 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 05:52:43.24 ID:HrK3MLWr0

思考が音となり、映像となり、それらに対する的確な単語が当てはまる。
そうして一つの結論が見え隠れしはじめたころ、言い難い興奮が俺をつつんだ。
何となくそんな自分の考えが周りに垂れ流されていないか、気になり俺は首を軽く振り、思考を一旦停止する。

「ふふ あなたも不器用な方です」

そんな俺の変化を知ってか知らでか古泉が茶々を挟む。

68 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 05:54:47.33 ID:HrK3MLWr0

「気にする必要はないと思いますよ?いたって普通の想いです。
いや、それどころかあれだけの女性陣に囲まれながらあなたはむしろ、よく理性を保てたと思いますよ」

それは、俺が男らしくないということか。

「いえいえ滅相も。僕はあなたがこのSOS団に対してどのような想いを持っていたか分かっているつもりです。
あなたは、あなた自身の欲望でこの環境を壊してしまうことを恐れた。付かず離れず、大人の距離で彼女と接し続けたと僕は評価します。
それに彼女はああ見えて、恋愛は奥手です。勿論中学校時代の奔放さは伺っていましたが、あれは彼女の一種の照れ隠しではないかと思っています。
彼女自身、自分の在り方を模索していた時期なのでしょう。…まぁそんな彼女の犠牲になった男子生徒諸兄らには気の毒に思いますが…」

珍しく苦笑する古泉。
そんなにひどかったのか、あいつ?

70 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 05:58:26.72 ID:HrK3MLWr0

「ええ。キスはおろか手すら繋がなかったと聞いています」

告白しハルヒにOKをもらった男たちの無念が聞こえてくるようだ。
なぜか俺の頭の中に谷口の顔が何度も往復していたんだが、なんだったんだろうな。

「さて、そんな彼女も高校生になり、当然、世間一般の同年代の少女がするように恋愛に興味を持ちます
しかし、彼女は素直になれない。それはなぜか それは彼女にとっても初めての気持ちだったからです」

「…え?古泉 今、何て…?」

71 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 06:00:13.93 ID:HrK3MLWr0

本当に鈍感ですね。と古泉は微笑んだ。

「あなたも薄々彼女の気持ちに気付いているんじゃありませんか?」

なんだって?ハルヒの気持ち…?
ハルヒがなんだって?

俺の脳内に活字が廻るだけで、要領を得ない。視野が急激に狭まる。
なぜか鼓動は激しくなるのだけは、はっきりと理解できる。

74 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 06:02:26.93 ID:HrK3MLWr0

「考えても見てください。彼女があなたをSOS団に入れた理由。
ただの人間でしかないあなたを、彼女はなぜ誘ったか?考えるまでもありません」

いつの間にか俺と古泉は、団長席から離れた位置に腰かけていた。
いつものオセロの定位置だ。

いつの間にかハルヒの姿が見えない。どうやら、ひとしきりゲームを見直した後ハルヒは部屋を飛び出して行ったらしい。
行き先はコンピ研だな。

76 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 06:05:37.99 ID:HrK3MLWr0

正面に位置した友人に俺は問いかける。
その時の俺はどんな表情をしていたんだろうな。

「…なぁ古泉。それはつまりハルヒも俺を…」

その先は言葉にならない。
もう古泉というフィルターを通して、俺のあいつに対する気持は仄かというレベルを通り越して、赤裸々に筒抜けだというのに。
我ながら、脆弱な抵抗だぜ。…やれやれ。

78 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 06:07:21.98 ID:HrK3MLWr0

古泉は、そんな俺の反応を楽しむかのように答えない。ニヤケ面が、そんな陳腐な俺の考えを見透かしているようで
無性に腹立つ。こいつめ。今からハルヒを焚きつけて、特盛りの神人でも御馳走してやってもいいんだぜ。

それはご勘弁をと、笑いながら古泉は困った顔を作って見せた。

これはオフレコですが…と前置きした上で古泉は口を開く。
その顔には幾ばくか真剣なものが感じられた。

79 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 06:09:47.95 ID:HrK3MLWr0

「これはオフレコです。ここだけの話です。絶対に他言無用でお願いします」

「やけに絡むな」

「いえ、これは涼宮さん本人の希望でして…」

この一言で、古泉がこれから語る内容が
ハルヒの内面…それもかなりの深い部分に触れることを予想させた。

俺は気づかないうちに体を前にのめらせる。

82 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 06:12:30.86 ID:HrK3MLWr0

「顔が近いですね。まぁいいですが。真剣に聞いていただけるそうでうれしい限りです。
さて、コンピ研とのゲーム対決で使う、あのゲームですが…」

「あのエロゲ―がどうした」

「はい。それなんですが、あのゲーム。実は涼宮さんご本人も登場されます。それも長門さんや朝比奈さんと同様、実名で」

正直、わが耳を疑ったね。
その次に古泉が俺を担いでるくらいは考えた。

83 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 06:15:11.88 ID:HrK3MLWr0

ハルヒは、今まで朝比奈さんをダシにコンピ研から新型パソコンを強奪したり
朝比奈さんをネタに映画を撮影したりと、自分自身を出し惜しみしていたと思う。

正直、今まで何度、自分がやったらどうなんだ?と突っ込んだかわからない。
そんなハルヒが、まさか自作のゲーム それもこんなジャンルに登場することは心底意外だったのである。

だが、目の前にいる微笑の学友は嘘を言っているようには見えない。

84 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 06:17:48.39 ID:HrK3MLWr0

「あなたも思うところがあると思いますが…これは事実です。勿論彼女のボイスも収録済みです。
そのような経験がないにも関わらず、彼女は非常に良い演技をしてくれました。
さて、そんな彼女の好演技は一体誰に対してのものなのか?」

「あいつなりに芽生えたサービス精神だろうよ。当然プレイヤーに対してのものだろう」
簡単に思いついた答えが口をつく。

86 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 06:20:32.18 ID:HrK3MLWr0

「それは違いますよ」

一蹴する古泉。

「いいですか?先ほど、あなたがご指摘の通り。このゲームには、プレイを始めた最初、主人公の名前を入力するシーンがあります。」

俺の脳裏に、ゲームのプレイ画面が映し出される。
確か長門のボイスで「あなたの名前を入力してほしい」と言われて名前を打ち込むシーンだ。

そのシステムに対してハルヒはプレイヤーが感情移入しやすくするためだと言った。
確かにその理屈は認めざるを得ないが、それでも入力した名前のいかんにかかわらず、『キョン』としか呼ばれないのでは意味がない。

87 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 06:23:10.87 ID:HrK3MLWr0

「お気づきのとおり、あのゲームはいかなる名前を設定しても、
"キョン"としか呼ばれません。この呼び名は、あなたなら一番ご存じのはずですが?」

当たり前だろう。不名誉な俺のあだ名だ。
この高校生活で本名よりもこのあだ名で呼ばれた回数の方が圧倒的に多い。
担任の岡部ですら、最終的にはそう呼ぶようになったのだから。

谷口や国木田もそろそろ俺の本名が怪しくなってる頃だと思う。

88 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 06:26:23.03 ID:HrK3MLWr0

ゲームプレイ中、何度呼ばれたかわからない俺のあだ名を俺は反芻する。

「つまり、誰がプレイしたとしてもゲーム中の主人公はあなたということになります。
このゲーム自体、涼宮さんのベクトルはあなたただ一人に対して向けられて作られたと言い換えてもいいでしょう。
素直になれない彼女らしい、ずるい手です」

それはつまり―――

「涼宮さんはあなたと、そのような事を望んでいる。という明確な意思表示だと思いませんか?」

91 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 06:28:25.92 ID:HrK3MLWr0

一瞬めまいを感じたと思う。それだけ古泉の衝撃な発言だった。
そんな俺を尻目に古泉はなおも続ける。

「ここからはあくまでも僕個人の推察です。
先ほども言いましたとおり、このゲームで涼宮さん本人は登場します。
が、それは完全なる隠しキャラクターとしてです。普通にプレイしていただけでは到底エンディングにはたどり着けないでしょう
恐らく彼女としても、おおっぴらに登場するわけにはいかなかったんでしょうね。
そこにはある願いが込められていると僕は感じます」

93 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/16(火) 06:32:48.90 ID:HrK3MLWr0

「……それは?」

「それはつまり。自分を他ならぬ"あなた"に見つけ出してほしいという願いです」

俺に対して気持ちをぶつけたい。
だが、あけっぴろげに伝えることは照れ臭くて出来ない。
だからゲームの登場人物として劇中での邂逅を選んだ。

それらの想いも含めて、見つけ出してほしい 気付いてほしい。
そういう気持の表れだと、古泉は言った。

「…それに妙なんですよ」

「…え?」

149 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/17(水) 00:07:29.73 ID:iiaZr62u0

                _, -―‐―- 、
               /斗──= 、―-、\
              /'´>‐‐──-\  ヽ`ニヽ
             ////   l     ヽ  ∨ヽ\
           __〃 l   |     {  ヽ    |    V-、/
         く // │l ト、ノ   ヽ  \‐-!  |  トく \
        //| l l |l┼匕_\|\ \ {_\|  j  l{ ヽ/}
        </レV|ヽ小 ヾ心  \l〃⌒|   八ーW
         // /| \ヽハ弋ヒ}   ,  ::::::│/ / 从リ
          / /|__l |  rfV \ :::  t=ー ァ  // / `>、_       ごめんネ!
         ∨ {ヘハヽト:!ハ\.> _`ー_,.イl/∨l / /\-、___
.             ヽ从| | lヘn\ゝト、 7  :|八 '/  /   ノ`'|lllレ│
                  | l人j {ヽミ :|二ニ二|  / /       |l斗' |\
                  { ヽ `}\ ∨ ,'  j '/    ォ<__/__ヽ、j _}
                /ム , /}小\∨ r//     / )><_|寸|/ /
            /_|l`三彡ハ \∨l/       //「「|    ̄ _/
           {/ \二イ  `ーォ≧≦二ニ ≠  \>‐‐=彡'
           |     /   / / / ハヽ  │   `rー‐'´
           l     /    人く/イ|  L_>、    /ヘ
            `ー‐'´   /   '/ | !   \ヽj/ / /^ヽ
                r‐'´    ,' /j j    ヽト、   /  ノ\_
               }    / ///      ∧ヽ      /

発表延期のお知らせ。

2008年12月16日23時50分発表予定で告知しておりました
>>1の妄想につきまして、諸般の都合により発表を延期いたします。
楽しみにお待ちくださっていた読者の方々に、心よりお詫び申し上げます。
発表時期につきましては、『涼宮ハルヒの驚愕』 と同時発表となります。
なにとぞご了承ください。

150 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/17(水) 00:12:32.47 ID:iiaZr62u0

前回のおさらいとあらすじ。

               _. -−- ._
.         ,..イ´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:´ ̄`丶、
       /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\
      /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
.    /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヘ
  ∠:ィ:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ:.:.:.',:.:.:.:.:ハ:.:.:.:.:.:\
    /:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:!:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.ハ:.:.:|:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.:.:.:トゝ
.   |:.:':.:.:.:.:.:.:.:|:.:∧:.:.:.:.:!、:.:.!.、:._」',...L:.:.:.:.:|:.:.:.:.:.N
.   l:.:l:.:.:.:|:.:.:下'ト ヽ:.:.:| x|'´\! ',:l:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.:.|
    V||:.:.:.V:.:.|,ィ=ミ、\!  ィイ¨'トヽ:.:.:.:.:ハ:.:トソ
      リ、:.:.:.\|:{ ヒ,ハ     ら、j.| |:.:.:.:.,'ノ〉:|′
        ヽN:.:.:.:| ー‐'     ー-' ,!:.:.:./イ/ヾ
        l∧:.:.ヽ   '_     /:.:.// '′
           \:.|`  _,..__ .ィ ./:.:./ー、
          `rァ ´ /  l  ,./:.:/  ∧
            /′ /三ミ 、///     ヽ
         / .′ /   `y ´      ヘ.
        ,′|  |   /     .ィ´ ̄ヽ.〉

古泉一樹が妙だと言った。私がワッフルを所望した。

153 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/17(水) 00:17:11.19 ID:iiaZr62u0

「…それに妙なんですよ」

「…え?」

「本当は"少し"妙と言い換えた方がいいかもしれません。
実は主人公の名前の件ですが、あれは少し変なんです」

声のトーンが少し低かった。こういう場合は何か嫌な予感がする。
そして総じて、何かしらのトラブルに発展する事が多かった。今までの経験が俺にそう語りかけていた。

俺は少し緊張する。

155 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/17(水) 00:19:39.47 ID:iiaZr62u0

「さて、あのゲームの主人公の名前ですが、あれにはいささか奇妙な点があります。
あのゲーム、名前を入力するシステムを採用しているところからお分かりになります通り
ゲーム内にはプレイヤー本人の名前が登場するはずでした」

そりゃそうだろう。しかしながら、結果として全て"キョン"と変換されてしまうらしい。
これでは名前の入力など、自己満足以外の何物でもない。

「…いえそれは違うんです。ですが真実、先ほど言いましたとおり全てあなたの名前に転換されています」


156 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/17(水) 00:22:02.63 ID:iiaZr62u0

名前じゃない。あだ名だ。

「失礼そうでした。で、ですね。これはおかしなことなんです。
システム周りはご存じのとおり、僕とコンピ研が共同担当させていただきました」

コンピ研連中の徹夜明けのB級ホラー映画の顔が浮かび上がる。
彼らの、自らが対戦するゲームの製作を手伝わされるとは 連中も考えてみれば気の毒である。

157 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/17(水) 00:23:46.27 ID:iiaZr62u0

「ですので、だからこそ解るのですが 僕たちはそのようなシステムに仕上げたつもりはありません。
きちんと入力した名前でプレイできるように組みあげたはずです。
これに対しては先ほど、僕は涼宮さんの願望がそうさせたと推測しましたが、これはあくまで僕のご都合主義であって実は少し矛盾を孕んでいます」

どういうことだ。俺はさっきの理由付けで納得しているのだが。
―――いや、満足していると言ったほうが正しいのかもな。

158 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/17(水) 00:25:30.74 ID:iiaZr62u0

「さっきの僕の言い分ですと。涼宮さんはあなたに好意を寄せている。今更隠しませんが、これは事実です。
ですが、彼女はその印象とは裏腹に恋愛に関しては臆病で、ご承知のとおり素直でいらっしゃらない
そんな彼女が、あなたに対して想いを吐露するためにゲーム内に登場し、ゲーム内のあなたに対してアピールをした。僕の理屈はこうです」

解りやすい。正直ハルヒの性質を分かっているつもりの俺には、何となくだが理解できた。
むしろそうであってほしいという希望的観測も含めてだが。

古泉は続ける。

159 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/17(水) 00:27:35.87 ID:iiaZr62u0

「…ですが少し奇妙ではありませんか?彼女がやりたいのは、さりげなくあなたに対して気付かせることです。
それなのに、主人公の名前が"キョン"に固定してしまえばその実、あなたに対して直接アピールしているのと変わりません」

たしかにそうかもしれない。…いやそうだろう。
いくら鈍感な俺でも、隠しキャラでハルヒが登場すればハルヒの気持ちとやらに気付いただろう。
―――いや、それどころかヘタをすれば邪推してしまうかもしれない。

さっきは古泉の説明を受け入れたが、考えてみればそんなリスクをハルヒが犯すだろうか?

そんな考えを古泉は読み取ったかのように口を開く。

160 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/17(水) 00:29:49.93 ID:iiaZr62u0

「そうなんです。もし、あなただけに気付いてほしいのならば
やはり主人公キャラクターの名前は、各プレイヤーに入力させるのが確実です。
ご存じのとおり、あなたのあだ名があなたが望む望まないにかかわらず、もはや周知の事実です。
そういう現実を前提にすると、プレイヤーの名前を強制的に"キョン"という呼び名で呼んでしまえば
あなたはおろか不特定多数のプレイヤーにさえ自身の秘密を暴露することになりかねません」

162 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/17(水) 00:31:16.07 ID:iiaZr62u0

俺は正直、ハルヒは恋愛に疎い方だと思う。
興味はありこそすれ、積極的な行動は出られない。
そんなタイプだと三年になった今だからわかる。
だから中学時代のハルヒの奔放な恋愛関係は、古泉の言うような照れ隠しの表れだと納得したし
あいつがもし、俺に対して好意を寄せていたならばこういう手段でアピールしてくることも納得できた。

164 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/17(水) 01:08:36.38 ID:iiaZr62u0

「もし、この方法で涼宮さんがあなたに対して想いを伝える方法を取るならば
主人公の名前は各人の自由意思に設定をゆだねて、そのプレイヤーの一人として、あなたがプレイしたその時に
あなたの自分の名前を入力してもらった時の方が意味は強いでしょう」

その方が、俺もうれしいだろう。いやうれしいと断言する。
なぜならば初めて劇中とは言え、ハルヒに本名を呼ばれることになるのだから。

165 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/17(水) 01:13:14.91 ID:iiaZr62u0

「確かに、僕の思い過ごし…かもしれません」

古泉は苦笑した。

―――ですが

再び真面目な顔を見せる。

「それ以上に重大な事実があります」

166 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/17(水) 01:15:48.28 ID:iiaZr62u0

そこで古泉に告げられた事実は、俺にとって信じられないものだった。

「あのゲームのシナリオですが」

テキストというべきかもしれません。古泉は言いよどむ。





「あのゲーム内のテキストは一体だれが執筆したのでしょうか?」

167 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/17(水) 01:28:06.18 ID:iiaZr62u0

話がとんでもない方向に転がった。

「…は?ハルヒじゃないのか?」

少なくとも俺ではない。俺が担当したのは相変わらず雑用だ。
いや、それどころかシナリオあたりは普通にハルヒ自身が担当したと思ってすらいた。

「いえ、涼宮さんの担当したのはプロデュサーです。
全体的な進捗度の確認と、作業の指示と企画の提案のみしか、彼女の実務は確認しておりません。」


168 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/17(水) 01:31:27.33 ID:iiaZr62u0

確かにそういえばそうだった気がする。
それ以上に、周りに協力を仰いだり、いろいろな材料を仕入れてきたり
ハルヒが直接ゲーム内のシナリオに介入できる機会はそうはなかった。

それ以前に、コンピ研と古泉が共同で作り上げたシステムの根幹にハルヒが改竄をできるとは思えなかった。

だったら…

「…長門じゃないのか?」


169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/17(水) 01:34:58.89 ID:iiaZr62u0

こういう事が出来る人物は、俺の中では長門以外あり得なかった。
しかしそれにしても理由は見当がつかない。

「…長門さんじゃありません。あなたなら何となく解るはずです。それと同時に朝比奈さんでもあり得ない。」

俺たちが三年になると同時に、再登場した同学年に"朝比奈さん"は俺が言うところの非日常に対して
積極的に介入することはなくなった。

あくまでも安定期い入ったハルヒの監視がメインになり、以前の長門のような"観測者"としての役割を演じる必要が出来たらしい。

だとしたら考えられるのは…

170 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/17(水) 01:37:59.07 ID:iiaZr62u0

「もちろん僕でもありませんよ。念のため。機関もあずかり知らぬ事です。」

そうだとしたら、このゲームは一体…
俺の背筋に冷たいものが走るのがわかった。

「―――何やらきな臭い感じがしてきました。そもそも今回のゲーム作りには不可思議な点が多すぎます。
製作過程の記憶が曖昧と言いますか、全員何かしら納得出来る符合するものが存在しことすれ
個々の部分では、明らかに超意識的な何かの干渉が示唆されています」

172 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/17(水) 01:38:57.71 ID:iiaZr62u0

当たり前だ。あのゲームには俺達SOS団の…
いや、はっきりいってしまえば俺自身の高校生活におけるSOS団のイベントが事細かに、このゲーム内に描写されている。
あの朝倉に殺されかけた事件なんかがそうだ。

ちなみにゲーム内では朝倉涼子も登場する。
やはりゲーム内の"キョン"は殺されかけたりする。
色々な考えが頭をめぐる中、古泉は軽く咳払いをした。

「…まぁいずれにせよ。僕たちの杞憂に終わるかもしれませんが。
あなた達二人のふがいなさ…おっと失礼。」

古泉はわざとらしく首をすくめて見せる。

「あなた達二人の純情さにしびれを切らせた善意の第三者が
あのような手段をもって、あなた達の仲を取り持とうとしただけかもしれません」

173 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/17(水) 01:40:49.02 ID:iiaZr62u0

古泉の反応を見る限り、そこまで憂慮している感じはなさそうだ。

俺は一抹の不気味さを残しながらも少し心を落ち着かす。

俺の感情が凪を取り戻すとほぼ同時にハルヒが部室に戻って来た。
ハルヒは風を切る大股で突き進み、そのまま団長席に腰をかけた。
鼻歌を口ずさんでいるあたり、機嫌はすこぶる良いようだ。

古泉の話がふとよみがえる。

174 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/17(水) 01:43:31.32 ID:iiaZr62u0

このゲームはハルヒ本人の希望である。ハルヒ自身の気持ちの表れである。

そこまでは正解のような気がする。しかしこれは、古泉なりの気のきかせた解釈でしかなく
やはり俺個人の希望でしかないのかもしれない。

なぜか意識せず俺の顔に血が上る。
普段なんとも思わずに映っていた黄色いカチューシャの映える頭が、今は少し特別な感じがした。

「まぁ、あなたも思うところはあると思いますが、涼宮さんの気持ちは本物ですよ。これはガチです。
あなたもいい加減覚悟を決めるべきです。こればかりはあなたも一人の男性としてハッキリさせるべきでしょう」

175 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/17(水) 02:02:44.92 ID:iiaZr62u0

目の前に広がっていたハルヒの姿が、突然古泉の顔のアップで塗り替えられる。

「うわっ いきなりなんだ!」

「ふふ、涼宮さんに見とれているところをお邪魔します。
ですが誤魔化し続けられる程、もう僕たちの時間は残されていませんよ?」

それには激しく同意する。勿論ハルヒが再度時間を巻き戻すという可能性も無きにしもあらずだが。
それにしたって、結局は巻き戻されるたびに記憶はリセットされるわけで
全体で過ごせる時間には結局限りがあるということになる。

176 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/17(水) 02:04:15.05 ID:iiaZr62u0


「あなたは涼宮さんの事を一体どう思っていらっしゃるのですか?
…あぁ、涼宮さんは涼宮さんなんていうトートロジーで誤魔化すのはなしですよ?」

ぐっ…!こいつめ。
ツボを押さえてやがる。

「…ハルヒは俺にとって…」

長門がハードカバーを閉じる。
朝比奈さんがそれを合図に帰り支度を始める。

「おや?もう時間のようですね。最後まで聞きたかったのですが今日はこの辺にしておきましょう」

こいつ、からかいやがったな。

177 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/17(水) 02:06:01.98 ID:iiaZr62u0

「涼宮さん、僕はそろそろ帰ります。日も短くなってますので涼宮さんも確認作業も程々にお早めにお帰りください」

「ありがと。古泉君も気をつけてね お疲れ様!」

古泉は団長席に一礼した後、もう一度俺の耳元でささやく。

「…あのゲームですが、実は僕本人も攻略対象の隠しキャラクターとして」

「帰れ」

古泉は「それは残念だ」などと言いながら、苦笑いをし、二人の美少女をひきつれて退室した。

178 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/17(水) 02:08:31.65 ID:iiaZr62u0

そうして俺は、ハルヒと二人で文芸部室に残されて
この状況自体、古泉達の計らいによって仕組まれたものであると気づいてしまったのさ。

全く下世話と言うかなんというか…

やれやれ。
 

179 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/17(水) 02:12:46.85 ID:iiaZr62u0

某国の攻撃に起因するサーバ落ちやサル等の理由によって大幅に時間を消費してしまった。本日はここまでとする。

               _. -−- ._
.         ,..イ´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:´ ̄`丶、
       /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\
      /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
.    /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヘ
  ∠:ィ:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ:.:.:.',:.:.:.:.:ハ:.:.:.:.:.:\
    /:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:!:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.ハ:.:.:|:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.:.:.:トゝ
.   |:.:':.:.:.:.:.:.:.:|:.:∧:.:.:.:.:!、:.:.!.、:._」',...L:.:.:.:.:|:.:.:.:.:.N
.   l:.:l:.:.:.:|:.:.:下'ト ヽ:.:.:| x|'´\! ',:l:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.:.|
    V||:.:.:.V:.:.|,ィ=ミ、\!  ィイ¨'トヽ:.:.:.:.:ハ:.:トソ
      リ、:.:.:.\|:{ ヒ,ハ     ら、j.| |:.:.:.:.,'ノ〉:|′
        ヽN:.:.:.:| ー‐'     ー-' ,!:.:.:./イ/ヾ
        l∧:.:.ヽ   '_     /:.:.// '′
           \:.|`  _,..__ .ィ ./:.:./ー、
          `rァ ´ /  l  ,./:.:/  ∧
            /′ /三ミ 、///     ヽ
         / .′ /   `y ´      ヘ.
        ,′|  |   /     .ィ´ ̄ヽ.〉

なお次回の再開は18日になる。また続きを閲覧するためには一人あたり2ワッフル必要となる。


182 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/17(水) 02:34:32.53 ID:iiaZr62u0

次回予告

徹夜続きの生活のツケがようやく出てきたのか、深い眠りに落ちて行ったハルヒ。
熟睡の旅に出かけたのか、起きる気配がない。

そんなハルヒの頬に触れてみる。やわらかい。軽やかな寝息が耳に届く。
俺はハルヒのセーラーの中におもむろに手を入れる。
二つの大きな柔らかい胸が俺を迎えてくれる。

…どうせこいつは俺に気があるんだ。このまま事に及んでも問題あるまい。

俺は眠っているハルヒの少し開いた太ももに手を滑り込ませた。

ハルヒ「…っ!?ちょ、ちょっとキョン何してるのよ!やめなさい!」
キョン「ハ、ハルヒ…!」
ハルヒ「ば、ばか これは団長命令よ!やめなさい!………ん!…ぁ…」
古泉「ところでオプーナを買いませんか?」


次回 涼宮ハルヒの純潔


朝比奈みくる「童貞短小で小心者のキョン君は、よりにもよって涼宮さんが眠ってる間に彼女の貞操を奪いにかかります。
       睡姦なんて変態です!哀れ涼宮さんは、意識のない内に少女から女への階段を上らされてしまうのでしょうかぁ?
       キョン君らめぇぇ☆」

古泉「相変わらず本編では空気ですが、余計なところでしゃしゃり出てきますね」

長門「朝比奈みくるは未来に島流しにするべき」

183 名前: ◆fpcisz/JEI [] 投稿日:2008/12/17(水) 02:44:37.09 ID:iiaZr62u0

今回の>>1の次回予告はあてにならない。気をつけるべき。

               _. -−- ._
.         ,..イ´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:´ ̄`丶、
       /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\
      /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
.    /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヘ
  ∠:ィ:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ:.:.:.',:.:.:.:.:ハ:.:.:.:.:.:\
    /:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:!:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.ハ:.:.:|:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.:.:.:トゝ
.   |:.:':.:.:.:.:.:.:.:|:.:∧:.:.:.:.:!、:.:.!.、:._」',...L:.:.:.:.:|:.:.:.:.:.N
.   l:.:l:.:.:.:|:.:.:下'ト ヽ:.:.:| x|'´\! ',:l:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.:.|
    V||:.:.:.V:.:.|,ィ=ミ、\!  ィイ¨'トヽ:.:.:.:.:ハ:.:トソ
      リ、:.:.:.\|:{ ヒ,ハ     ら、j.| |:.:.:.:.,'ノ〉:|′
        ヽN:.:.:.:| ー‐'     ー-' ,!:.:.:./イ/ヾ
        l∧:.:.ヽ   '_     /:.:.// '′
           \:.|`  _,..__ .ィ ./:.:./ー、
          `rァ ´ /  l  ,./:.:/  ∧
            /′ /三ミ 、///     ヽ
         / .′ /   `y ´      ヘ.
        ,′|  |   /     .ィ´ ̄ヽ.〉

次回こそは18禁ゾーンに突入する。該当事項に抵触する人は閲覧を自重してほしい。



ツイート

メニュー
トップ 作品一覧 作者一覧 掲示板 検索 リンク SS:キョン「ハルヒ。好きだ付き合ってくれ」ハルヒ「嫌よ」