羽入「僕はいらないのです」


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1 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/21(木) 23:39:59.79 ID:hoisXfbl0

どうか嘆かないで。
世界があなたを許さなくても、私達はあなたを許します。

どうか嘆かないで。
あなたが世界を許さなくても、私達はあなたを許します。

だから許しに行こうと思います。
あなたとまた笑いあう為に。

昭和59年6月
平和な村は鬼を屠ったとされる巫女を祭り、平和を満喫していた
毎日が楽しく、何一つ不安の無い明日
だけどそこに居ない人が居る
泣きながら笑う神様
贖罪を繰り返すことしか出来なかった悲しい神様

5 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/21(木) 23:47:25.88 ID:hoisXfbl0

〜前原圭一〜

誰かがずっと謝ってる
彼女は何を謝っているのだろう
それに聞き耳を立てるのは悪い気がしたけど聞いてみる
『ごめんなさい』
彼女はまだ謝り続けてる
彼女は俺に謝っているのだろう
だから俺は許そうと思う
だから俺を許して欲しい
取り返せないミスなんかない
次から気をつければいい
もしそれが運命というのであれば
運命なんて簡単に打ち破れるのだから

6 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/21(木) 23:52:30.97 ID:hoisXfbl0

圭一「ん・・・朝か・・・って、何で俺泣いてんだ?」

母「圭一、お休みだからっていつまで寝てるの?朝よー、もう起きなさ・・・あら?珍しいわねー。あんたが私が起こすより早く起きるなんて」

圭一「ああ、何か変な夢見ちゃったらしくてさ」

母「あら圭一?あんた泣いてるの?なーにー、もしかして怖い夢でも見ちゃったか♪」

圭一「そ、そんなんじゃねえよっ!・・・ったく・・・」

母「あらあら怒っちゃった?取りあえずもうすぐ朝ごはんだから顔洗ってらっしゃい」

圭一「はいよ。じゃあ着替えてから下りるんで先行ってて母さん」


圭一「何かモヤモヤするぜ・・・なんだってんだちくしょう」

7 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/21(木) 23:55:30.98 ID:hoisXfbl0

圭一「おはよう父さん」

父「ああ、おはよう圭一。さっき母さんから聞いたぞ?なんだか泣いてたらしいじゃないか。怖い夢でも見たのか?」

圭一「ち、違うって!母さん!親父に言ったの母さんだろ!全く・・・」

母「ごめんなさい圭一、でもあんまり珍しかったから」

圭一「息子を血も涙も無いような奴みたいに言うなよ・・・ったく。あ、ご飯は大盛りでお願い」

母「はいはい♪あんたってほんとよく食べるし遊びまわるしで、まるで田舎の子供みたいよねぇ」

圭一「んー?だって朝食は一日の始まりの栄養源だろ?お!この漬物美味そうだな。新商品?」

母「そうよー。あんたってお漬物とか不思議とうるさいんだから、母さんこれでも苦労してんのよ?」

圭一「結構結構。・・・むぐむぐ・・・うーん・・・美味いんだけど、何か一味足りないような・・・」

母「またそれ?もー、あんたその一味が足りてる美味しいお漬物どこで食べたっていうの?」

圭一「いや、食べたことはないんだけどさ、何か違うんだよな・・・あむっ・・・うん、違う」

8 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/21(木) 23:58:32.71 ID:hoisXfbl0

少し騒がしいが明るい家庭
いつもの平和な家庭
何一つ不満など無い
なのに俺は何でいつも何かが足りないような気がしてるのだろう

「続いてのニュースです」

圭一「あ、母さん醤油取って」

母「はいはい。お父さん、お食事中はテレビじゃなくてご飯に集中してくださいっていつも言ってるでしょ?もう!」

父「あ、ああ。すまんすまん。ただな、今やってるニュースの場所、どこかで見たことある気がしてな」

圭一「ニュース?どれどれ」

「ここ、雛見沢村では、今夜行われる綿流し祭に向けての準備が進んでおります。ここ雛見沢は自然が多く、希少な動植物の宝庫であり・・・」

父「ああそうだそうだ、雛見沢!思い出したぞ。昔、父さんここに旅行に行ったことがあってな。その時の髪の長い女の子が印象的で・・・って圭一?どうしたんだ圭一?」

圭一「・・・雛見・・・沢・・・」

9 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 00:03:14.52 ID:QeADfOxW0

圭一「げほっ!!うぐっ!!」

母「圭一!!どうしたの圭一!?しっかりしなさい!!」

父「どうしたっていうんだ圭一!!母さん、救急車を早く!!」

圭一「げほっ・・・待ってくれ・・・親父、お袋。大丈夫。もう落ち着いたから・・・」

母「大丈夫ってあんた・・・汗びっしょりじゃない!やっぱりお医者さんに診てもらった方が・・・」

圭一「いや、大丈夫だよ本当に。ただ・・・思い出したんだ」

父「思い出した?思い出したって何をだ?」

圭一「俺がやらなくちゃいけない事。男としてやり遂げなくちゃいけない事を思い出したんだ」

母「何を言ってるの圭一?お父さん、やっぱりお医者さんに・・・」

父「待て母さん。・・・圭一、それはどうしてもやり遂げなくちゃいけない事なんだな?」

圭一「・・・ああ。友達を・・・仲間を助けて、そして謝らなくちゃいけないんだ」

11 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 00:07:32.30 ID:QeADfOxW0

母「どうしましょ・・・やっぱり受験の疲れなのかしら?元気そうに見えて、本当は無理をしてたのよね圭一?」

圭一「俺は正気だよ母さん。父さん、説明しろって言われてもどう説明していいかわからない。だけど俺は行かなくちゃいけないんだ!!男として!!」

父「・・・行ってきなさい圭一。父さんは止めないぞ」

母「お父さん!?」

父「母さん、圭一の目は正気を失ってる目じゃない。むしろ、これ以上にないぐらい冷静だ。そして、何よりも何かをやり遂げようとする男の目だ」

圭一「親父・・・」

父「行ってきなさい。そして、必ずその友達を助けてやりなさい。これは父としてではなく、男としての約束だ」

圭一「ああ、勿論!!」

母「・・・・はぁ、全く誰に似たのやら・・・圭一、約束してちょうだい。あなたが何をするのかわからないけど、絶対に誰かに迷惑をかけるような事をしないこと。
  そして・・・無事に帰ってくること。約束できる?」

圭一「ああ、約束する」

母「・・・はぁ・・・しょうがないわね。あんたって子は、変なとこで父さん似なんだから。わかったわ、行ってらっしゃい」

圭一「お袋・・・」

13 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 00:11:02.75 ID:QeADfOxW0

圭一「あのさ、父さん母さん」

父「ん?どうした?」

母「なあに?今更『冗談でしたー』とか言わないでしょうね?」

圭一「いや、違うんだ。あのさ・・・えっと・・・」

「ごめんなさい」

母「いきなり謝るなんて、急にどうしたのよ圭一?」

父「お前は何か悪いことをしたのか圭一?」

圭一「えっと・・・うまく言えないんだけどさ、どうしても二人にちゃんと謝んなくちゃいけない気がしたんだ。その・・・色々迷惑かけちゃったなって」

母「ほんと今日のあんたは変なことばかり言って。母さんあんたが何を言いたいのかよくわからないけど、これだけは言える。あんたは母さんの自慢の息子よ」

父「母さんの言うとおりだ。お前は自慢の息子だ。だけど、お前がそれでも謝りたいというなら、父さんはお前を許そうと思う。例えお前が何かとんでもない間違いをしてしまったのだとしてもな」

母「そうね。例えあんたが世界中から嫌われたって、お父さんと母さんは圭一の味方よ」

圭一「父さん・・・母さん・・・ありがとう。それじゃあ俺・・・」

「行ってきます!」

14 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 00:14:50.25 ID:QeADfOxW0

〜竜宮礼奈〜

何度でも、今度こそはと私は諦めない。
惨劇を避けられなかったとしても。

何度でも、私は諦めない。
惨劇を避けられなかったとしても。

何度でも、例えそれが苦痛だったとしても私は諦めない。
例えそれが喜劇に見えたとしても

挫ける事を知らず、最後まで戦い続ける。
そんな彼女は、ただただ神々しかった。

私は諦めない。

15 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 00:20:29.98 ID:QeADfOxW0

礼奈「あははっ、それほんとに?」

「そうなんだよ。コイツさぁ、折角礼奈に彼女紹介してもらったっていうのに、いっつもケンカばっかで」

礼奈「でも、それは彼女さん、きっと・・・もっと愛して欲しいからケンカするんじゃないかな?かな?」

「えー?何で?普通は好きになってもらいたかったら、ケンカなんてしないんじゃないか?」

礼奈「えっとね、上辺だけで皆に好かれるようになるのはとても簡単なの。本心を言わず、誰にも相談せず、自分の意見をあまり言わない。
   でも、それじゃあ本当に自分の事を愛してもらうことなんて出来ない。私は・・・そう思うな、思うなっ♪」

「何か礼奈が言うと変に説得力あるよな。うん、俺もそんな気がしてきた」

礼奈「そういう風に言われたら照れちゃうな・・・えへへ。あ、でもね、私だって誰かにそう教えてもらったから気付いたんだ」

「へえ、そいつってもしかして・・・礼奈の好きな人とかか?」

礼奈「え!?え!?違うよ違うよ!きっと違う!!だって私、その人の事よく覚えてないし・・・でも、少しだけ・・・少しだけその人が私を好きになってくれたら・・・私は凄く幸せなんだと思う・・・かな。かな」

17 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 00:25:59.92 ID:QeADfOxW0

『手を伸ばせ!こっちへ来い!!』

僅かに覚えてる言葉
未来には絶望しかないと思っていた
どんなに頑張っても頑張っても報われないと思っていた
だから拒絶した
家族も、仲間も、世界も
だけどあの人は手を伸ばしてくれた
あの人たちは手を伸ばしてくれた
誰か私を愛してください
そんな簡単な事を言えなかった弱い私に手を差し伸べてくれた

「ちょっとどうしたんだよ礼奈!急に泣いたりして!!」

礼奈「え・・・?私・・・何で・・・」

私はあの人を。あの人達を。家族を。世界を愛していた。

19 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 00:28:17.55 ID:QeADfOxW0

礼奈「ただいまー」

父「お帰り礼奈」

母「お帰りなさい礼奈」

礼奈「あれ?お母さんどうしたの?今日はお仕事じゃないの?」

母「そのつもりだったんだけど、何だか急にお父さんと礼奈に会いたくなっちゃって」

礼奈「え!?また!?・・・もう、そんな事じゃいつかお仕事クビになっちゃうよ?」

母「えへ、ゴメンね?でも、私売れっ子だし、もし万が一クビになっちゃったとしても、家にはお父さんがいるじゃない♪」

礼奈「もー・・・いくらお父さんもお母さんもお仕事うまく行ってるからって甘えすぎだよ!娘としては心配だよ」

父「はは、怒られちゃったな母さん」

母「反省しまーす・・・」

礼奈「でも・・・ちょっとだけ嬉しいかな、かなっ♪」

20 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 00:33:20.48 ID:QeADfOxW0

自分には才能が無いと一時期伸び悩んでいた父も、横で頑張って応援する母や娘に励まされ、その才能を開花させた
そんな父と母は非凡ながら、何よりも家族を愛した
そんな二人の間で、娘もまた家族を愛した
友人を愛し、隣人を愛し、世界を愛した
何の不安も無い未来
全ては順風満帆

礼奈「お母さん、お夕飯作るから手伝ってもらってもいいかな?かな?」

母「りょーかい♪」

何が不満なんだろう?
それはあの人が隣に居ないから
何が悲しいのだろう?
それはあの人達が隣に居ないから
何が悲しいのだろう?
それは救えなかった誰かがいたから

でもそれは全て「い」い事、「い」やな事

母「ん?そうしたの礼奈?考え事?」

礼奈「・・・ううん。何を考えてたか忘れちゃった。えへ♪」

21 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 00:37:38.77 ID:QeADfOxW0

礼奈「明日はお休み〜♪今日は早く寝て、明日はお父さんとお母さんとお買い物〜♪はぅ〜☆」


『ぺたぺたぺた』

礼奈『え・・・?』

『ぺたぺたぺた』

礼奈『・・・・誰?』

『ごめんなさい』

礼奈『ごめん・・・なさい?』

『ごめんなさい』

礼奈『何で・・・何でそんなに悲しい声なのかな・・・?かな?』

『・・・・・・』

22 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 00:42:01.27 ID:QeADfOxW0

それは間違いなく浅い眠りが見せた夢。
今では消えてしまった世界。
恐れていた音

でも不思議と今は怖くなかった
むしろ悲しかった
傍に駆け寄って抱きしめてあげたかった

でも思い出せない
それが誰なのか、なぜ悲しんでるのか
だから諦めよう。このまま深い眠りにつけば、目覚めたとききっと忘れる

『そんときゃ置いてく。さくさく置いてく。きりきり置いてく』

きっと忘れる

23 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 00:47:03.49 ID:QeADfOxW0

礼奈「・・・・・・どうして冷たいんだろ・・・だろ?」

『嘘。ちゃんと待ってるよ』

礼奈「は・・・はぅ〜・・・」

『レナが来るまでずーっと待ってる。いつまでも』

礼奈「・・・ごめんね圭一君。ちょっとだけお寝坊しちゃった」

母「礼奈?起きた?さあ、早く準備しなさーい。置いてっちゃうぞー?」

礼奈「お母さん、それにお父さんも・・・少しだけお話があるの。聞いてくれるかな・・・かな?」

母「え・・・?どうしたのよ急に?具合でも悪いの?」

礼奈「ううん。私・・・レナは行かなくちゃいけないとこがあるの」

母「・・・・・・詳しく聞かせてもらっていい?」

24 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 00:51:50.10 ID:QeADfOxW0

礼奈「・・・という訳なの。こんな話信じてもらえるとは思ってない。でもレナは行かなくちゃいけないの。だから止めても無駄だよ。多分もう時間が無いの」

母「止めないわよ。だって私は礼奈の事信じてるもの。そして、礼奈の話してくれた私とお父さんが別れちゃった世界っていうのも・・・多分、礼奈が私達を説得してくれなかったら本当にあった世界だと思う」

父「・・・そうだな。母さんのいう通りだ。父さんたちは礼奈に本当に感謝している。そして信じてる。だから・・・行ってきなさい礼奈。お父さんとお母さんは礼奈が帰ってくるのを待ってるから」

礼奈「お父さん・・・お母さん・・・ありがとう・・・。レナは・・・レナはきっと帰ってくる。だから、その為に預かってて貰いたい物があるの」

父・母「?」

礼奈「一度捨ててしまった、礼奈の「い」の文字。今までのいい事もいやな事も忘れたくない。もう二度と捨てたくない。だから、無くしちゃわないように預かってて欲しいの」

父「わかった」

母「ご飯作ってまってるからね・・・レナ」

レナ「うん!!」

25 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 00:56:51.78 ID:QeADfOxW0

レナ「あ、お母さん・・・あのね・・・あのね・・・」

母「どうしたのレナ?どこか痛いの?」

レナ「・・・うん。ずっと痛かった・・・。ずっとずっと痛くて泣いてた」

母「・・・・・・」

レナ「ごめんなさいお母さん・・・力になれなくて・・・信じてあげられなくて・・・ごめんなさい・・・」

母「いいのよ。それにねレナ、謝らなくちゃいけないのはきっと私。ごめんなさいレナ・・・辛かったでしょ・・・ごめんなさい・・・」

レナ「お母さん・・・お母さん!!うわぁあああああっ!!」

母「・・・大好きよ・・・レナ」

レナ「レナも・・・レナもお母さんが大好きなの・・・大好きだったの・・・やっと気付いた・・・気付かせてくれた人達が居た・・・」

母「だから、今度はその人達を助けにいくんでしょ?しっかりしなさい!お母さんの子でしょ!頑張れ!頑張れレナ!!」

レナ「うん・・・頑張るよ・・・今度こそ・・・今度こそみんなで幸せになる。だから・・・だから」

「行ってくるね!」

26 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 01:01:08.25 ID:QeADfOxW0

〜園崎魅音・詩音〜

砂漠にビーズを落としたと少女は泣いた。
ならば私が真実を欲するあなたを癒そう。
少女達は百年かけて砂漠を探す。

砂漠でなく海かもしれないと少女は泣いた。
ならばあなたの欲する真実を共に探そう。
少女達は百年かけて海底を探す。

海でなくて山かもしれないと少女は泣いた。
ならば二人で砂漠も海も山も空も越えよう。
例え何年かかったとしても。

27 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 01:06:19.97 ID:QeADfOxW0

魅音「詩音?あなたまたバイト断ったんですって?義郎おじさん困ってましたよ〜」

詩音「あちゃー・・・でもさ、義郎おじさんあたしにあの制服着せようとするんだよ!?あんなのあたしに似合わないって言ってんのに〜」

魅音「何言ってるんですか!私に似合うんだから、詩音だって似合うに決まってます!私が保証します♪」

詩音「お姉・・・それ遠まわしな自慢?」

魅音「私にとって自慢なら、詩音にとっても自慢になるんですからいいんです♪」

詩音「まあ・・・悪い気はしないけどさあ。でも、あたしが女らしい格好ってのも・・・ねえ?」

魅音「全くもう・・・詩音は昔から男っぽすぎます!そんなんじゃ彼氏の一人もできませんよ?いいんですか?このまま鬼ババみたいにしわくちゃになるまで一人ぼっちでも」

詩音「また婆っちゃをそんな風に言う・・・ああ見えて結構優しいんだからね?」

魅音「はいはい。詩音は鬼ババのお気に入りですからねえ。もう詩音が頭首になっちゃえーって感じですよ全く」

詩音「あはは、よく婆っちゃにも言われるよ・・・でも、婆っちゃは何だかんだ言いながら魅音の事も大事にしてるよ」

魅音「・・・・むぅ」

詩音「お?今の悟史になんか似てたよ?かー!愛だねえ!おじさんなんだか恥ずかしくなっちゃったよ」

魅音「こ、コラ!冷やかさないの!!全くもう・・・」

28 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 01:11:43.69 ID:QeADfOxW0

詩音「彼氏・・・か・・・」

魅音「例の『白馬の王子様』ですか?」

詩音「いやいや、何度も言ってるけど、そんなカッコイイもんじゃないよ・・・そんなんじゃないんだけれど・・・なんでだろ・・・あたし、ずっとその人を待ってなきゃいけない気がするの」

魅音「顔がいい訳でもなくて、強い訳じゃなくて、口先だけが達者な王子様・・・ですよね?」

詩音「むー・・・その言い方だと凄くかっこ悪い人みたいじゃん」

魅音「あははっ、さっき冷やかされたお返しです♪・・・でも、本当は凄くカッコイイんですよね」

詩音「うん。ここぞって時は凄く頼りになる。きっとそんな人」

魅音「早く迎えに来てくれるといいですね・・・王子様」

詩音「・・・うん」

29 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 01:16:16.08 ID:QeADfOxW0

ずっと無くしていた半身を手に入れた感覚
満ち足りていなかった物を手に入れた感覚
でも少女達は失っていた
でもそれが何かはわからない
とても悲しかった気がする
とても嬉しかった気がする
とても救われた気がする
とても絶望した気がする
気のせいと言ってしまえばそれだけの感覚
でも何故か二人には気のせいと思えなかった
だから待ち続けていた
どんな困難も打ち破れる王子様を

30 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 01:22:06.88 ID:QeADfOxW0

詩音「あれ?ここ何か建つの?」

魅音「えっと、確かアパート・・・だったと思います」

詩音「へー・・・」

魅音「詩音?どうしたの?」

詩音「へ?どうしたって何が?って、お姉もどうしたのさ?」

魅音「え?え?」

少女達は泣いていた
分譲地にアパートが建つ
ただそれだけなのに泣いていた

31 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 01:28:37.04 ID:QeADfOxW0

詩音「あれ・・・?どうしたんだろ?何で・・・何で・・・」

魅音「わかりません・・・わかりませんけど・・・とても・・・とても悲しい」

「おーい、そこコンクリ流しといてくれー」

詩音「だ・・・駄目っ!!やめて!!ここを壊さないで!!」

「はぁ?何を言ってるんだ嬢ちゃん。壊してるんじゃなくて建ててるんだよ俺達は。あ!そこじゃなくてそっち!そうそこ!一気にやっちゃってくれ!」

魅音「駄目です!!ここは・・・ここにアパートなんて建てちゃ駄目なんです!!」

「ちょ・・・ちょっと何すんだよ嬢ちゃん達!!そこは現場なんだ!!あぶねえぞオイ!!」

詩音「駄目ったら駄目なのっ!!ここは・・・この場所は!!」

魅音「どきなさいあんた達!!ここは・・・この場所は!!」

「「圭ちゃんの家なんだからっ!!」」

32 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 01:33:58.89 ID:QeADfOxW0

「おい!誰か呼んで来い!!ってイテぇっ!!こいつ噛み付きやがった!!」

「こっちの方はスタンガン出しやがったぞ!!何だってんだチクショウ!!ひとまず撤収しとけ!!誰か応援呼んでこい!!」


詩音「はぁ・・・はぁ・・・うぐっ・・・!!圭・・・ちゃん・・・圭ちゃん!圭ちゃん!圭ちゃん!!」

魅音「ざ・・・ざまあみろってんです・・・ぜぇ・・・圭ちゃんの家には・・・指1本触れさせてたまるもんですか!!」

詩音「詩音・・・あたし思い出したよ・・・」

魅音「ええ・・・私もですよお姉」

詩音「あはは・・・今じゃあんたがお姉だけどね・・・ほんとは・・・ほんとは・・・これが正しかったんだよね・・・」

魅音「・・・やめてくださいよもー。やっぱり私じゃ鬼ババのお相手は務まりません」

詩音「詩音・・・あたし・・・あたし・・・ひぐっ」

魅音「ほら!また泣く!昔っからお姉はそうなんですから。そんなんじゃ・・・そんなんじゃ園崎家次期頭首として皆に笑われちゃいますよ?」

詩音「うっ・・・ひぐっ・・・だって・・・だって・・・」

魅音「でも、今日だけは・・・今だけは泣いていいです。あたしも一緒に・・・一緒に泣いちゃいますから・・・」

34 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 01:36:30.32 ID:QeADfOxW0

少女達はお互いに懺悔する
十の「ごめんなさい」
百の「ごめんなさい」
千の「ごめんなさい」
そして許しあう
千回謝ったら許すと少女が言った
少女は千回謝れなかった
少女は謝ることさえ出来なかった
少女はもう居なかったから
ようやく少女達は行き着く
なんだ、探してたものはこんなにも近くにあったんじゃないか
そして少女は手を取り合い言う

「「行こう!」」

35 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 01:41:59.10 ID:QeADfOxW0

〜北条沙都子〜

大空の下の蛙は幸せでした。
大空の下は興味を引くものばかりだったから。

大空の下の蛙は幸せでした。
大空の下では何があっても楽しかったから。

そしてあなたも幸せでした。
大空の下はどこまでも続いてると知ったから。

36 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 01:46:46.51 ID:QeADfOxW0

沙都子「欲しいもの・・・でございますか?」

悟史「うん。何かあるでしょ沙都子?ほら、例えば新しい・・・例えばそう!ぬいぐるみとか!!」

沙都子「うーん・・・そうですわね・・・じゃあ」

悟史「うんうん!」

沙都子「私、カボチャが欲しいですわ」

悟史「え?カボチャ?カボチャってあのカボチャ?カボチャのぬいぐるみ!?」

沙都子「何で私がカボチャのぬいぐるみなんて欲しがるっていうんですの」

悟史「えっと・・・じゃあ?」

沙都子「今夜のおかずに決まってるじゃありませんこと?今日はカボチャの煮付けを作る予定ですの♪魅音さんに教えてもらったんですが、とーっても美味しゅうございましたのよ♪」

悟史「えーっと・・・そういうのじゃなくてね、もっとこう・・・むぅ」

沙都子「おかしなにーにーですわねー。何を企んでますの?私を何かのトラップにかけたいなら、にーにー一人じゃ無理でしてよ?おーっほっほっほ♪」

37 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 01:50:41.17 ID:QeADfOxW0

兄が何を言いたいのかなんてわかっていた
そしてここ最近、本人は隠れているつもりでアルバイトをしているのも知っていた
兄が買おうとしてるのは、きっとあのぬいぐるみ
興宮のおもちゃ屋にあったクマのぬいぐるみ
確か10万円はしたと思うのに、それを妹の為に買うつもりなのだ。
だけれども、あのぬいぐるみが私の手に渡ることは無いだろう。
おもちゃ屋には事前に事情を説明し、絶対に売らないで欲しいと頼んである。
そして、買いに来たときに私からのお手紙を渡して欲しいとも頼んである。

トラップは最後の最後でほんのひとつささやかに。

いつも私は言ってましてよにーにー

38 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 01:54:21.36 ID:QeADfOxW0

悟史「え?売れないって何でですか?」

「あんた『北条悟史』君でしょ?」

悟史「そ、そうですけど・・・あの、もしかして僕が・・・北条だからですか?」

「はっはっは、違うよ。まあこれを読んでみなって」

悟史「手紙・・・?」

親愛なるにーにーへ

悟史「これって・・・沙都子の字・・・」

「それを全部読んで、どうするか決めな。あんた、いい妹を持ったなぁ」

39 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 01:59:14.80 ID:QeADfOxW0

親愛なるにーにーへ

今頃、ぬいぐるみが買えなくて驚いてらっしゃるでしょう?
私知ってましたのよ?にーにーが私の為にぬいぐるみを買おうと、一生懸命アルバイトしているのを。
嬉しかった。本当に嬉しかった。
でもね、にーにー
そのぬいぐるみを買うためのお金は、大事に取っておいてくださいまし。
そのお金は、にーにーが将来一人暮らしをする為に使ってくださいまし。
あら?また驚かれました?
にーにーが雛見沢を離れ、もっともっと沢山お勉強したり、いいお仕事をするようになる。
最初ににーにーがそうしたいんじゃないかと気付いたときは、正直、少し寂しかった。
でも、お父様やお母様や魅音さんと話して私気付きましたの。
にーにーにはにーにーの人生がある。にーにーだって自分のやりたいことをする資格がある。
そして何より、にーにーには幸せになってもらいたい。
私、とても強くなりましたの。
苦手だったカボチャやアスパラガスを食べれるようになりましたの。
ブロッコリーとカリフラワーの違いもわかるようになりましたの。
だから安心してくださいまし。

私は、こんなにも強くなりましたのよ。

『沙都子』

40 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 02:04:21.65 ID:QeADfOxW0

悟史「沙都子・・・沙都子・・・」

「最初はさ、こっちも商売だからって断ったんだよ。でもその子、『お願いします!』って言って土下座までしそうになってね」

悟史「・・・・・・」

「事情を聞いたらこっちまで泣きそうになったよ。本当に君のことが大好きなんだなって思った」

悟史「沙都子・・・」

「だから売れない。・・・わかってくれるかい?」

悟史「僕は・・・」

41 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 02:08:28.95 ID:QeADfOxW0

沙都子「さぁて、これで今日の晩御飯の仕込みは万全ですわねお母様」

母「ええ。いくらお祭りだからって、お父さんきっと夜中に小腹が空いたって言い出すに決まってますもの・・・ふふ」

沙都子「ほんと、よく食べるしよく騒ぐ人ですわ。もう少しだけ紳士的になってくれればよろしいものを」

母「でも、賑やかでいいじゃない。沙都子だってお父さんのこと大好きでしょ?」

沙都子「う・・・ま、まあ嫌いじゃありませんことよ。一緒のお食事だって、そこそこは楽しゅうございましてよ」

父「ん?何だか楽しそうだの。お!こりゃ美味そうだ!沙都子が作ったのか?」

沙都子「コラー!摘み食いは厳禁でしてよっ!!あ!それは少し失敗したやつだから食べちゃだ」

父「美味い!!美味いぞ沙都子!!お前はいい嫁さんになる!!」

沙都子「ちょ、ちょっと何を言い出しますの!しかも食べたら駄目だって言ってるのに。まったくもう!お母様も何か言ってやってくださいまし」

母「あなた、沙都子をお嫁になんて何を言うんです!反省!!」

沙都子「って、ツッコミ入れる場所が違いますわよ!!二人とも反省しなさいませ!!」

42 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 02:13:02.78 ID:QeADfOxW0

家族での賑やかな食卓
少女がずっと夢見てきたものは、ここではいたって日常的なもの。
悲しいことや辛いことが一切無いわけじゃない
泣いたことや怒ったことが無かったわけじゃない
だけどそれは、幸せや喜びからしたら小さな事
大切な人達が傍で笑ってくれる。
それだけで充分で、この幸せを他の誰かにも分けてあげたくて
だから少女は大事な人をもっと大事にしたくて

沙都子「そろそろにーにーも帰ってくる頃ですわ。さあ、お祭りの準備を致しましょう二人とも」

父「お?もうそんな時間か。よっしゃ!準備するか!」

母「そうですね。うふふ、今年も楽しいお祭りだといいわね沙都子」

沙都子「ええ。きっと楽しいに決まってますわ!お〜ほっほっほ♪」

43 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 02:17:32.27 ID:QeADfOxW0

悟史「沙都子・・・」

沙都子「あらにーにー、遅かったですわね。もう皆さん準備なさってまして・・・え?」

悟史「これを沙都子に」

沙都子「クマの・・・ぬいぐるみ・・・え?だってこれは!これは・・・」

悟史「手紙読んだよ。お店の人から話も聞いた。そしてこれを買ってきたんだ。僕はどうしてもこれを買って沙都子に渡さなきゃいけなかった」

沙都子「そんな・・・だってこれ凄く高くて・・・それに・・・あのお金は・・・」

悟史「お金なんか問題じゃないんだ。僕は今日これを買って沙都子に渡して、そして言わなくちゃいけない事があるんだ」

沙都子「言わなくちゃ・・・いけない事?」

悟史「うん。沙都子・・・待たせちゃってごめん。弱い兄でごめん。そして、強くなってくれて・・・ありがとう」

沙都子「にーにー・・・?」

44 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 02:22:38.87 ID:QeADfOxW0

悟史「僕はずっと見ていた。動かない身体でずっとずっと。何度も泣いた。何度も怒った。何度も何度も絶望した。」

沙都子「えっと・・・話が見えませんでしてよ?」

悟史「いいから聞いて沙都子。沙都子、お前はやらなくちゃいけない事があるんだ。忘れちゃってる事があるんだ。本当は僕が行ってあげたいんだけど・・・残念ながら僕じゃ駄目みたいなんだ」

沙都子「忘れてる事・・・」

悟史「そう。忘れてる事。沙都子を大事にしてくれて、沙都子も大事にしたいと思ってきた人達の事」

沙都子「私の大事な人達は家族ですわ!もういますわ!!」

悟史「いや、沙都子の家族は僕たちだけじゃない。沙都子・・・」

沙都子「えっ・・・にーにー・・・もう私頭を撫でられて喜ぶ歳じゃ・・・」

悟史「思い出して沙都子。僕の居ないとき、僕の代わりに沙都子の頭を撫でてくれた手を」

沙都子「私を撫でてくれた手・・・」

45 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 02:27:10.19 ID:QeADfOxW0

沙都子「圭・・・一・・・さん・・・」

父「沙都子、悟史?どうした?」

母「あら?沙都子泣いてるじゃないですか。一体どうしたの?」

悟史「思い出したかい沙都子?」

沙都子「はい・・・はい・・・私は・・・私は・・・」

悟史「沙都子、魅音を・・・いや、詩音を頼むね」

沙都子「・・・はい!!」

父「一体何の話しとるかわかるか母さん?」

母「わかりませんけど、何だか邪魔しちゃいけない話みたいですね。私達は大人しく見ておきましょうお父さん」

父「ふむ。そうだな」

46 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 02:32:09.45 ID:QeADfOxW0

沙都子「お父様、お母様・・・・ごめんなさい」

父「急にどうした沙都子?」

母「また何かイタズラしちゃったの?」

沙都子「いいえ違いますわ。私はどうしてもお二人に謝らなくてはいけませんの。本当に酷いことをしてしまったから・・・」

父「沙都子、その酷いことっちゅうのは取り返しがつかんような事なのか?」

沙都子「取り返しがつかないと思っていましたわ。私はずっとこの罪と隣りあわだと思っていたんですの」

母「・・・後悔してるいのね?」

沙都子「・・・はい。だから、許してもらえるとは思っておりません。でもこれはケジメですの。過去の私の、そして私の罪への」

母「沙都子がどんな罪を背負ってしまったのかは私にはわからないし、お父さんもわからないみたいだけど」

父「多分・・・いやきっと、父さんも母さんも恨んでおらんはずだ。いや、むしろきっと、そんなものを背負わせてしまって申し訳なく思っとる」

47 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 02:36:04.02 ID:QeADfOxW0

井戸の外の世界が知りたくて。
私は井戸の底から這い上がろうとしました。

井戸の外の世界が知りたくて。
何度、滑り落ちて全身を打ち付けても上り続けました。

母「ごめんね沙都子・・・」

でも気付きました。
上れば上るほどに落ちる時の高さと痛みは増すのです。

外の世界への興味と全身の痛みが同じくらいになった時、
私は初めて蛙の王さまの言葉の意味がわかりました。

父「すまんかったな・・・頑張ったな・・・」

だけど。それでも。

沙都子「ごめん・・・なさい・・・ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!!うわああぁぁぁんっ!!」

私は大空の下にありたいと思いました。

49 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 02:43:20.22 ID:QeADfOxW0

沙都子「にーにー、私強くなりまして?」

悟史「うん。今じゃ僕が守ってもらう方かもしれないぐらいにね」

沙都子「あら?まだまだ私は強くなりましてよ?」

悟史「は・・・はは。えっと、あんまり強くなりすぎちゃうと、ちょっとだけ大変かも」

沙都子「まあ!可愛い妹が頑張っているというのに何て事を言いますの?もう!」

悟史「ははは。ごめんごめん。あ、沙都子」

沙都子「はい、何ですの?」

悟史「気をつけて・・・」

沙都子「ええ。今度はみんなも呼んで、お父様やお母様やにーにーとご一緒に晩御飯を食べましょう。それではにーにー」

「行ってまいります!」

50 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 02:47:39.39 ID:QeADfOxW0

〜古手梨花〜

だって、これから
もっともっと幸せになるんでしょう?

これくらいじゃ、妥協なんてしないと言ったでしょう?
私たちは、これまでの幸せを全部取り戻すだけじゃない。

利息分まで幸せにならなくちゃ。

私は百年分を。
あなたは千年分を、ね。

51 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 02:52:19.11 ID:QeADfOxW0

ひぐらしが鳴いている
もうすぐ綿流しのお祭りが始まる
みんなとの待ち合わせに向かわなくちゃ
みんな?みんなって誰?
ボクは大事な大事な奉納演舞の準備があるじゃないですか
昔、この村を襲ったという恐ろしい鬼を静めるための演舞
古手家の巫女に代々伝わる大事な神事
だけど何故だろう
ボクはこの演舞があまり好きじゃないのです

『鬼さんは本当に恐ろしかったのですか?』

ボクが昔お母さんに聞いたこと
お母さんは少しだけ驚いてこう言った

『恐ろしいから鬼なのよ?』

でも何故かボクは
この鬼さんが可哀そうで可哀そうで仕方なかったのだ

52 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 02:56:52.37 ID:QeADfOxW0

でも時間は無常にも流れる
お母さんや村の人に巫女の衣装を着せてもらう
神事用の剣を握る
昔、鬼を打ち滅ぼしたとされる剣だ
最初は凄く重くて、小さなボクにはとても振るえなかった
でも、歳を重ねるごとに少しずつ大きくなっていくボクの身体
今では重いけれども振るえないような重さではなかった
今年こそ上手く成功させるんだと軽く振るってみる
剣先からぴゅぅっという風を切る音が聴こえた
最初は軽くと思っていたのに、段々と力強く振るいだす
ぴゅうっ、ぴゅうっ、ぴゅうっ

なぜボクは泣きながら剣を振るっているのだろう

53 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 03:01:17.40 ID:QeADfOxW0

梨花「はぁっ・・・はぁっ・・・はぁっ・・・」

これは神事なのではないのですか?
神聖な儀式なのではないですか?
悪い鬼さんを静めるために剣を振るうのではないのですか?
なぜボクはこんなに悲しいのですか?

梨花「はぁっ・・・ぐすっ・・・ひっく・・・」

教えてください鳴き続けるひぐらしよ
ボクは何を忘れてしまっているのですか?
教えてください泣き続けるひぐらしよ
泣いているのは誰なんですか?

54 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 03:05:32.78 ID:QeADfOxW0

梨花「ぐすっ・・・汗をかいちゃったのです・・・」

暗い気分を変えるために休憩しようと、ボクは飲み物を探す
部屋を出ると、誰が置いたかはわからないけれど赤紫色の液体が入ったコップがあった
ふらふらとボクはそれを手に取り、少しずつ口に含む
本当は喉も渇いていたし、一気に飲みたいところだけれど、これはそうやって楽しむものではないのだ
でも何故だろう?何か物足りないのは?
そうだ、辛いキムチなんかが良く合うだろう
トコトコと外に出て、家の冷蔵庫を開ける
こんな所をお父さんやお母さんに見つかったら何と言われるだろう?
冷蔵庫にあった激辛とラベルの貼られたキムチを取り出し口に入れる
あの人に見つかったらきっと怒られてしまうだろう
いや違う
きっと大慌てするだろう
いつもみたいに『あうあう』と言いながら

55 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 03:10:14.85 ID:QeADfOxW0

『あうあう!!辛いのです!!辛いのです!!やめて欲しいのですっ!!』

あら?ならこっちを飲むからいいわ

『あうあうあぅ〜・・・それも駄目なのですよ・・・』

全く我が儘ね。ならいいわ。両方食べるから。

『梨花はいっつも意地悪なのですよ・・・僕は甘いものがいいのですよ・・・』

またお菓子?いつもあなたはそればかりね。まあいいわ、なら今度シュークリームを買ってあげる。

『本当ですか!?わーいなのです♪』

だから今は我慢なさい。

『あうあうあう!!辛いのです!!不味いのです!!気持ち悪いのです〜・・・』

57 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 03:11:31.89 ID:QeADfOxW0

梨花「全部忘れるわけ・・・ないじゃない・・・」

身体と心に傷を負った神様

梨花「全部忘れられるわけ・・・ないじゃない・・・」

笑いながら泣いていた神様

梨花「忘れていいわけ・・・ないじゃない!!」

それでも一緒に居てくれた神様

梨花「待ってなさいよ・・・今度こそ・・・今度こそっ!!」

居なくなってしまった神様

梨花「運命なんて打ち破ってみせる!!」

58 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 03:15:20.79 ID:QeADfOxW0

母「あら梨花?え・・・どこにいくの!?」

父「おいおい、もうすぐ奉納演舞の時間だろう梨花?」

梨花「行かなくちゃいけないの」

母「え・・・!?ど、どうしたの梨花!?あなた少し変よ!?」

梨花「変・・・そうね。きっとそう。あなたはずっとそう思っていたんだと思う」

母「あなた、今日の演舞をお休みさせましょう。きっと疲れてるのよこの子」

父「そ、そうだな。ちょっと公由さんに相談して」

梨花「待って!!ちょっとだけ待って!!私は言わなくちゃいけない事があるの二人に」

59 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 03:19:43.34 ID:QeADfOxW0

母「言わなくちゃいけないこと?」

父「どういうことだい梨花?」

梨花「・・・流石にちょっと恥ずかしいわね」

『駄目ですよ梨花』

梨花「・・・そうね。ここで恥ずかしがってちゃ駄目よね・・・私って本当にいつもそう。だから言えなかった。こんな簡単なことが」

父・母「・・・・」

梨花「・・・ごめんなさい」

母「え?」

梨花「ごめんなさい。そして・・・私は二人とも大好きだった。信じてもらえないけれど大好きだった」

60 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 03:23:10.02 ID:QeADfOxW0

何を言っても拒絶しかされないと諦めてた。
何を言っても無駄だと流されていた。
そして取り返しがつかなくなった後に気付いた。
家族とはかけがえの無いものだということ。

梨花「ごめんなさい・・・お父さん・・・お母さん・・・」

父「梨花・・・」

母「梨花、私は信じるわ梨花のことを。だって・・・私も梨花のことが大好きなんですもの」

父「ああ。お父さんだってそうさ。むしろ感謝しているぐらいだよ。こんな可愛い娘に育ってくれてありがとうとね」

梨花「・・・ひっく・・・ぐすっ・・・」

母「ほら、いらっしゃい梨花・・・」

梨花「・・・お母さんっ!!お母さんお母さんお母さん!!ごめんなさい・・・ごめんなさいっ!!」

61 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 03:27:13.13 ID:QeADfOxW0

梨花「・・・ひっく・・・」

母「落ち着いた?」

梨花「・・・うん。それじゃあ私、もう行かないと・・・みんなが待ってるの」

父「どうしても行かなくちゃいけないのかい?」

梨花「ええ」

母「そこは危ないところなんじゃないの?」

梨花「危ないかもしれないけれど、それでも行かなくちゃいけないの。全てを終わらせ・・・いえ、始めるために」

母「・・・そう。でも、お母さんは行かせたくない。可愛い娘が危険な目にあうかもしれないっていうなら尚更ね」

梨花「そう言われると思ったわ。だけど、それでも私は」

母「だから約束して」

梨花「え?」

母「必ず戻ってくるって。もし約束を破ったら・・・そうね、ハンバーグ無し♪」

62 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 03:31:23.21 ID:QeADfOxW0

梨花「はん・・・ばーぐ?」

母「そう。ハンバーグ無し♪梨花の分までお父さんとお母さんが食べちゃうの」

父「そうだな。約束を破る悪い子には罰が必要だしな母さん」

梨花「そ、それは嫌なのですよ・・・みぃ・・・」

母「ふふ、なら約束して。絶対に帰ってくるって」

梨花「はい・・・なのです・・・」

母「よし♪なら行って来なさい。頑張ってくるのよ?」

梨花「はい!それじゃあお父さん・・・お母さん・・・」

「行って来るのですよ、にぱー☆」

63 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 03:35:45.92 ID:QeADfOxW0

〜鬼ヶ淵沼〜

梨花「・・・・・・」

「やっぱ梨花ちゃんが一番乗りか」

梨花「圭一・・・来てくれたのですね」

圭一「当然だろ?俺は前原圭一だぜ?仲間の居ない未来なんて打ち破ってやる!」

梨花「ありがとう・・・」

「そうだね。誰かが欠けた先にある幸せな未来なんて間違ってると思うな」

圭一「よおレナ。遅かったじゃねえか」

レナ「えへへ、少しだけお寝坊しちゃった。ごめんね」

圭一「おいレナ!それ・・・」

レナ「あ、これね、ここに来る途中で買ったんだけど・・・やっぱり変かな?かな?」

圭一「いや、変じゃないっつうか似合いすぎてるぐらいだけど・・・鉈を買いに来た女子高生・・・店の人の恐怖が手に取るようにわかるぜ」

梨花「レナも・・・来てくれたんですね・・・」

64 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 03:39:19.55 ID:QeADfOxW0

「あっちゃー、おじさん達3位入賞できなかったかー」

「もー!だから言ったじゃないですか。お姉は昔っから時間にルーズなんですよ」

レナ「あははっ♪魅ぃちゃんと詩ぃちゃん仲良く遅刻だねっ♪罰ゲームは何かな?何かな?」

魅音「ちぇっ、だって色々準備ってものがさー」

詩音「私はテキパキ準備しましたよ。お姉は効率ってもんが悪いんですから」

圭一「ははっ、急に賑やかになりやがったな」

梨花「魅ぃ・・・詩ぃ・・・ありがとう・・・」

65 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 03:43:06.45 ID:QeADfOxW0

梨花「圭一」

圭一「ああ・・・それじゃあそろそろ」

レナ「だね・・・。行こうかみんな」

魅音「そう・・・だね」

詩音「やっぱり沙都子は・・・連れて行かないんですか?」

梨花「ええ。沙都子はもう充分戦った。充分強くなって今の幸せを勝ち取った。それは誰にも奪えないものだもの」

詩音「そうですね。それに、沙都子がいればきっと悟史君も大丈夫でしょうし・・・あは、ちょっとだけ寂しいですけど」

魅音「詩音・・・あんたも残っ」

詩音「ストップ。お姉、最後まで言ったらぶっ飛ばしますよ?」

魅音「・・・ごめん」

詩音「よろしい。・・・私達は離れちゃだめなんですよ。二人で一人なんですから」

66 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 03:48:43.31 ID:QeADfOxW0

圭一「よっしゃあ!そんじゃあ・・・んぎゃああああっ!!目がっ!!目がああああっ!!ゲホッ!!ハクシっ!!」

レナ「け、圭一君っ!!・・・クシュッ!!この臭い・・・コショウ!?」

「お〜っほっほっほ♪私を置いていこうとした罰でしてよ〜♪」

梨花「沙都子っ!?どうして!?」

沙都子「どうしてもこうしてもありませんわ梨花。家族を救うのに理由がいりまして?」

詩音「でも、沙都子が来たら悟史君がっ!!」

沙都子「ねーねー。にーにーからの伝言ですわ『二人とも頑張って』だそうです」

詩音「悟史君・・・もしかして悟史君も思い出して・・・」

沙都子「ええ。私に思い出させてくれたのもにーにーでしてよ」

詩音「悟史君・・・私の事も心配してくれたんだ・・・あんな事をしてしまった私を・・・ありがとう・・・悟史君・・・」

67 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 03:52:38.91 ID:QeADfOxW0

沙都子「そうだ。圭一さん、これを」

圭一「げほっゲホッ!!うー・・・?これは・・・バット?」

沙都子「ええ。にーにーのバットですわ。そしてにーにーから圭一さんへ伝言です」

圭一「伝言?」

沙都子「『僕は一緒に行くことができない。だから僕の代わりにこれでみんなを守って欲しい』にーにーはそう言ってましてよ」

圭一「・・・よし、任されたぜ悟史!!俺は絶対にみんなを守ってやる!!お前のこのバットでな!!」

梨花「待って沙都子」

沙都子「なんですの梨花?」

梨花「・・・やっぱりあなたは連れて行けない」

68 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 03:55:34.62 ID:QeADfOxW0

沙都子「梨花、もしも心配だから連れて行けないというのでしたら、私怒りますわよ」

梨花「心配なだけじゃないっ!!」

沙都子「じゃあなんですの?幸せな私の生活を壊したくないとでも?だとしたら的外れでしてよ。だって羽入さんだって私のかぞ」

梨花「その家族がっ!!家族が・・・また私の家族を・・・あなたを殺すかもしれないのよ!?そんなの・・・そんなの私は二度と見たくないっ!!」

沙都子「・・・・・・」

梨花「あなたにわかる!?私の気持ちが!!大好きな人が大好きな人を殺すのを見てしまった私の悲しみが!!」

沙都子「・・・わかりませんわ。わかるわけありませんわ。
    だって私は・・・私はその大好きな人を怖いと思ってしまい、その挙句に心配させたくなかった人の目の前で殺されてしまったんですから」

梨花「そうよ!!だからあなたは連れて行けない!!ここで幸せに暮らして・・・お願いよ沙都子・・・」

沙都子「お断りしますわ梨花。今度こそは逃げませんの私。にーにーと約束したんですもの。もっともっと強くなるって。
    だから逃げないっ!!今度こそ変えて見せる!もし殺されると言うのでしたら最後まで足掻いてやる!」

梨花「そ、そんな簡単なもんじゃないの運命は!どうせまた殺されてしまう!きっと殺されてしまう!!」

圭一「ちょっと待ってくれ梨花ちゃん」

69 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 03:59:45.82 ID:QeADfOxW0

梨花「なによ圭一?あなたも沙都子を連れて行けって言うの?嫌よ私は。もし連れて行くというのならあなたも置いていくわよ」

圭一「なら俺は追いかける。沙都子を連れて梨花ちゃん達を追いかける。そして運命を変えてやる!!沙都子も守ってやる!俺がみんな守ってやる!!」

レナ「あはは、レナは圭一君に守ってもらうほど弱くないんだけどなっ♪だからレナも守るよ。みんなを」

魅音「おじさんだってそうだよ。あの時は守れなかった。だから今度こそ守って見せる。そうでしょ詩音?」

詩音「もちろんですよ。何より私は悟史君から言われてるんですから。沙都子を守って欲しいって。ついでですから皆さんの事も守っちゃいます♪」

圭一「そういうこった梨花ちゃん。ここには守ってやれる仲間が沢山居る。誰かが危険になったら誰かが守る。」

沙都子「私ももう守られてるだけじゃありませんのよ梨花。あなたを、そしてみんなを守ってみせる。だから連れて行ってくださいまし」

梨花「・・・どうなっても知らないのですよ?とってもとっても危険かもしれないのですよ?」

沙都子「百も承知ですわ♪むしろ返り討ちにして差し上げましてよ。お〜っほっほっほ♪」

梨花「それは・・・それはとってもとっても怖いのです。きっと危険さんもガクガクぶるぶるにゃーにゃーなのですよ・・・にぱー☆」

沙都子「それじゃあ梨花・・・」

梨花「ええ。沙都子も一緒に行きましょうなのです。みんなで羽入救出作戦なのですよ。ふぁいと、おー!なのです♪」

一同「「おー!!」」

70 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 04:03:25.41 ID:QeADfOxW0

詩音「ところで梨花ちゃま、どうやってあの時代に行くっていうんですか?私達、なんとなくこの場所に来てみたはいいけど、行き方なんてわかるんですか?」

圭一「それもそうだよな。こうやってじーっとしててタイムスリップできるなら、今頃みんな時間旅行しちゃってるはずだし」

梨花「みんな、思い出して下さい。あの惨劇が続く中、ボクはどうやって時間を越えてきましたか?」

魅音「ちょ・・・ちょっとまさか!!」

レナ「死ぬ事・・・それが鍵なんだね梨花ちゃん」

梨花「そうなのです。ボクが死ぬと羽入とボクの力で時間が巻き戻った。あのカケラの場所まで行けばきっとまた・・・桜花がいるはずなのです」

沙都子「でも、今は羽入さんはいませんでしてよ?それなのにどうやって時間を越えますの?」

梨花「だからここなのですよ沙都子」

沙都子「ここって、鬼ヶ淵沼でしょう?ここがどう関係しますの?」

梨花「昔、羽入から一度だけ聞いたことがあるのです。その頃のボクには難しくてよくわからなかったけれど、これだけはわかったのです。羽入がこの村に最初に来たのはここなのです」

詩音「鬼が湧き出した鬼ヶ淵沼・・・」

梨花「ええ。そして黄泉の国・・・別の世界に通じていると伝えられる沼なのです」

71 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 04:05:18.91 ID:QeADfOxW0

圭一「さ・・・流石に怖いな」

レナ「うん・・・さっきから足が震えちゃってるよ・・・あはは」

魅音「下手すりゃただの集団自殺でしかないもんね・・・おじさんもちょっとだけ怖いや」

詩音「あ、あはは。お姉は意気地なしですねー。私なんていつでもオッケーですよ?」

沙都子「そ、その割には掴んだ手が震えていましてよ詩音さん?お、おほほほ」

梨花「沙都子も震えてますのですよ。ボクも震えていますです。みんな、さっきはああ言いましたですが、これは確実性が全く無いボクの憶測なのです。辞めるなら今のうちですよ?」

一同「「・・・・」」

梨花「じゃあ行って来ますですよ。みんな・・・無理だと思ったら本当にやめておいてくださいなのです。ボクだけでも大丈夫なのですよ」

一同「「・・・・・・」」

梨花「・・・じゃあ、行きますです!!羽入!!待ってて!!わああああああああっ!!」

72 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 04:05:48.18 ID:QeADfOxW0

圭一「へん!何を言ってるんだ梨花ちゃん!!よっしゃ!俺がいっちょ男って奴を見せてやるぜええええっ!!おりゃあああああっ!!」

レナ「あっ!!圭一君!!レナも行くよっ!!待って!!たああああああっ!!!」

魅音「よっしゃ!!おじさんも続くよっ!!そりゃあああああっ!!」

詩音「はぁ、みんな無茶苦茶すぎますよ・・・まあ、私も人の事いえないんですけどねっ!!てりゃああああっ!!」

沙都子「にーにー・・・行って来ますわ!!やあああああっ!!」

6人を飲み込んだ沼は、さっきまでの喧騒が嘘のように静かだった。
夕焼けに染まる少年と少女の決意を見たのは

鳴き続けるひぐらしだけ。

73 名前: ◆ADZP4KwVH2 [sage] 投稿日:2008/08/22(金) 04:13:00.59 ID:QeADfOxW0

以上で羽毟り編の解こと「日暮編」前編終了なのです。
全て書き溜めはしていましたが、規制などがどうなってるのかよくわからなかったため、思いのほか投下に時間がかかってしまい、見ていてくれた人にはご迷惑をかけてしまいました
楽しんでいただけたら幸いなのですよ、にぱー☆

需要があるかはわかりませんが、一応今回もtxtを残しておきますのです。
おまけとして、前回の誤字修正分も入れておきましたので、もし前回のをお持ちの方がいたら差し替えてもらって欲しいのです。

ttp://www.uploda.org/uporg1625131.zip

よくよく考えたら付ける必要が無い気もしましたので、今回はパス無しになってるのですよ、にぱー☆

それでは次回、8月が終わるまでには仕上げたいと思っている後編にてお会いしましょうなのです♪



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