長門有希の決意


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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/27(金) 22:41:57.66 ID:gPOWxCCn0

「朝比奈さん?」


放課後部室のドアを開けるといつもいるはずの長門の姿はなく、ハルヒの言いつけ通りきちんとメイド服に身を包んだ朝比奈さんが一人ちょこんと座っていた。


朝比奈さんはグチャグチャになった団長様の机を片づけていたようで俺が入ってきたことに気づくと一言挨拶を交わした後お茶を煎れる準備をし始めた。


長門のいつも座っている場所はというと本がきっちり整頓されていて…


「あれ?長門来てるんですか?」

「いえ、私が来たときは誰もいませんでしたよ?」


長門の座っている場所にはらしくもなく読みかけであろう本が開かれたまま置かれていた。


他の本が数冊開かれた本の横に奇麗に並べられていて、その様子はまるで長門が本を読んでいる途中に突然消えてしまったように不自然なものだった。

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/27(金) 22:52:15.16 ID:gPOWxCCn0

「ありがとうございます」

朝比奈さんの煎れてくれたお茶を受け取りじっくり堪能しようと湯呑を口へ近付けると同時に勢いよくドアを開けハルヒが入ってきた。
ハルヒの大げさな入室に慣れているお陰で俺はなんとかお茶を吹き出さずにすんだものの朝比奈さんはびくりと肩を震わせていた。

「キョン!喜びなさい!新しいみくるちゃんのコスチュームが決まったわよ!」

朝比奈さんが俺の後ろでびくびくしているものだから良いところを見せようとハルヒにガツンと言うつもりだったが、それはハルヒが目の前に差し出してきたものによって一瞬にして遮られたのであった。


「メイド服って暑いでしょ!?これからの季節にそなえてスク水にしてみたの!」

朝比奈さんの悲鳴と共に俺は静かに部室を出た。

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/27(金) 23:02:32.45 ID:gPOWxCCn0

部室の中から朝比奈さんの助けを求める声が聞こえてきたが俺は助けてあげるとこが出来ない。スク水最高です。グッジョブハルヒ。


「おや?今日も騒がしいですね。今日は何を?」
「気になるなら入って確かめてこい」
「それは遠慮しておきます」

遅れてきた古泉と他愛もない話をしながら待っているとハルヒが朝比奈さんと共に飛び出してきた。


「古泉くん良いところに来たわね!撮影係を任命するわ!」
「ふぇえ、キョンくん…」
「水泳部をどかしていざプールで撮影会よ!」

目を輝かせたハルヒは朝比奈さんを強引に引っ張ってどこかへ消えてしまった。おそらく言葉通りプールへ行くのだろう。


「おやおや、大変な役を任されてしまいましたね。さあ行きましょうか」

「俺はいい、いろんな意味で我慢できそうにないからな」

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/27(金) 23:11:04.81 ID:gPOWxCCn0

古泉の後姿を見送ったあと蒸し暑い部室へと戻る。
正直朝比奈さんの水着姿を拝みたいけどこれから起こるであろう様々な問題を想像するだけで頭が痛くなる。

朝比奈さんの水着姿はハルヒがとった写真を拝借して堪能するとしよう。


椅子に座ってぼんやりしていると窓から入ってきた風でパラリと開いたままの本がめくれた。
なんとなく元のままに戻しておきたくて立ち上がり近づくとこれまたなんとなく本を手に取ってみた。

題名から想像するに恋愛小説だろう。長門もこんなものを読むものなのかと思いつつページをめくると蛍光ペンらしきものである一文に線が引かれていた。

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/27(金) 23:15:40.21 ID:gPOWxCCn0

『あの公園で待っているから、あなたがくるまでいつまでも待ってるから』

一瞬目を疑ったが本の横に蛍光ペンが置かれている。確かに長門が引いたものなのだろう。

長門が?本に落書き?この一文を?なぜ?
様々な疑問が浮かんでくるのは走り出しながらで俺は部室を飛び出していた。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/27(金) 23:21:38.83 ID:gPOWxCCn0

「長門!」

走り出してから何分経っただろう。いや何十分経ったかもしれない。一生懸命走ったつもりだったが俺が公園に着いたのは空の色がオレンジに染まった頃だった。

「………」
「やっぱりここに居たのか、どうしたんだ?」

この公園で前にも待ち合わせをしたがあの時も俺は息を切らしていた気がする。

「……座って」

俺は数回深呼吸した後言われるままにベンチへ、長門の隣へと腰をかけた。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/27(金) 23:30:48.07 ID:gPOWxCCn0

「……涼宮ハルヒは何をしている?」

何分経っても沈黙が続く中痺れを切らした俺が口を開きかけた瞬間、やっと長門が口を開いた。

「何って朝比奈さんの撮影会だと思うけど…まあ今頃水泳部の顧問あたりにどやされてる気がするがな」

「あなたが部室を出た時に涼宮ハルヒはその場に居た?」
「は?」
「質問の仕方を変える。あなたは涼宮ハルヒがいる中で私のために部室を出た?」


「あぁ、いや、ハルヒどころかみんないなかった」
「……そう」

俺が先に帰るとハルヒの機嫌を損ねるかもしれない、と心配してくれているのであろう。
なぜか長門が一瞬寂しそうな顔をしたのは気のせいだ。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/27(金) 23:39:16.92 ID:gPOWxCCn0

「ところで一体どうしたんだ?」
「………」
「本に線なんか引いて。お前だったら前みたいに果たし状っぽく適当な紙に書くだろうに」

「……あの本、読んだことある?」
「あれ恋愛ものだろ?俺はそういう系はちょっとな。まぁ長門がお勧めするんだったら…」
「お勧め」

俺の言葉を遮る様に真っ直ぐな瞳で俺を見上げながら長門は言った。いつもの長門と少し違う気がしたがどうして呼び出されたのか、ハルヒがまたなにかしでかしたのかと頭がいっぱいで大して気にすることはなかった。

「わかった、今度読んでみるよ」
「今日読んで」
「でも長門が読みかけなんじゃ…」
「私はもう読み終わっている」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/27(金) 23:50:38.95 ID:gPOWxCCn0

そんなこんなで長門の強引な押しに負け、俺はあんまり得意ではない恋愛小説とやらを読む羽目になったのであった。
そしてまた続く沈黙。そんなに深刻なのか?ついに世界が終わるのか?

「あのさ、長門…」
「……これ」

またしても言葉を遮られてしまった。長門が差し出したのは缶ジュースで俺は喉も渇いていたのでなんの躊躇いもなく受け取った。

「あぁ、ありがとう」

水滴が沢山ついているのを見ると買ってから随分時間が経っているのだろうことは安易に想像がついた。
手に触れた缶は案の定少しぬるくてそれでも今の俺にはありがたい差し入れだった。

「ところで、さ」
「美味しい?」
「え?あ、」

俺はプルタブを開けジュースを口内へ一気に半分ほど押し流した。

「…うまい」
「良かった」

という風に呼び出された理由を問おうとすると遮られてしまう。なぜ?WHY?

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/27(金) 23:59:26.94 ID:gPOWxCCn0

「なが…」
「来て」

あれから何回かチャレンジしたものの全て遮られてしまい困っていた矢先、長門が立ち上がった。
言うなら今しかない。どうする?どうする?俺!

「ちょっと待て」
「………」
「長門、どうしたんだ?ハルヒがまた何かしたのか?」
「彼女は関係ない」

ハルヒの名前を出した途端、長門は人が変ったように喋りだした。

「私があなたに…あなたと図書館へ行きたかったから呼び出した」
「図書館?前に行った所か?」
「そう」

長門なら一度行った場所は一発で記憶しそうなもんだけどな…意外だ。

「場所を忘れた、案内してほしい」

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/28(土) 00:05:22.59 ID:48+7IUY20

「部活が終わった後じゃダメだったのか?」
「返却期限が今日までの本がある。図書館は夜遅くまで開いていない。帰る時には閉まっている恐れがある」

長門の場所を忘れたという言葉を信じるなら話は繋がる。でもなんでだ?

「なんで直接言わなかった?俺が本のしるしに気づかなかったらどうしてたんだ」
「……わからない」

わからない?いやわからないのは俺の方ですよ長門さん。
まぁハルヒに比べれば可愛い我が儘なので俺は図書館へと長門を案内することにした。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/28(土) 00:12:13.11 ID:48+7IUY20

俺たちが図書館を出て荷物を取りに学校へ戻る時には既に空は真っ黒に染まっていた。
俺的にはそのまま帰宅しても良かったのだが長門が学校へ戻るというのでそういうわけにはいかない。
可愛い団員が襲われたらハルヒになにされるかわからないからな。まぁ長門なら変質者なんぞ返り討ちにしてしまいそうだけど。


「まだハルヒたちいるかねぇ」
「………」
「朝比奈さんは無事だったのだろうか…」
「あなたは、」
「……ん?」
「あなたは叶わない恋の話は好き?」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/28(土) 00:19:51.83 ID:48+7IUY20

急になにを言い出すんだ?それに今日はよく喋る。長門らしくない…いや長門が喋ってくれるのは嬉しいことだけど。

「いや叶っても叶わなくとも恋愛物はあまり見ないかな」
「……そう」
「でも叶わない夢を追う話は嫌いじゃない…その夢が誰かと結ばれたいって事ならやっぱり叶わない恋の話は嫌いじゃないのかもしれないな」
「…あの本は叶わない恋の話。読んで」


それっきり学校に着くまで長門は喋らなくなり俺の他愛もない話に頷いたり首を振ったりするだけだった。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/28(土) 00:30:03.99 ID:48+7IUY20

学校は外から見ると電気がついている部屋は少なく、部室の電気も例外なく消えていた。

部室の電気をつけると真っ先に目に入ったのは脱ぎっぱなしのスクール水着でその隣にはいつもの物とは違うメイド服が何着か散乱していた。
たぶん水着の撮影はすぐに先生達によって止められたのだろう。それから朝比奈さんのファッションショーが始まったわけだ。くそう、見たかったぜ。

「……これ」

散らばった服を拾い集めていると長門に言われていた本を差し出された。服を集めて机の上へ置いてから受け取ると長門はさっさと帰ってしまった。
送ろうか、と声をかけようと思ったが机の上にデジカメを見つけてしまったので長門の後姿には何も言わないでおいた。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/28(土) 00:38:15.56 ID:48+7IUY20

それから俺は猛ダッシュで家に帰った。とりあえず走った。今日走ってばっかだけどとにかく走った。

部屋に篭って正座しながらデジカメと向き合い、ゆっくり手を伸ばす。


あぁ…先生の頭やらハルヒやらでスク水の朝比奈さんが隠れているじゃないか。何やってんだ古泉。死刑なんだから。ほんとに。

落胆しつつもメイド服に身を包んだ朝比奈さんをスライドショーで堪能していると最後にスク水朝比奈さんの写真があった。
背景から考えて部室で撮影したのだろう。ハルヒグッジョブ。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/28(土) 00:46:17.55 ID:48+7IUY20

しばらく写真を堪能して明日朝比奈さんファイルに追加しておかないとその前にコピーもしておきたいななどと考えていると眠くなってきたので俺はそのまま睡魔に身を任せることにした。


『あの公園で待っているから、あなたがくるまでいつまでも待ってるから』


夢を見た。


『あの公園で待っているから、あなたがくるまでいつまでも待ってるから』


真っ暗な闇の中に見覚えのあるベンチが一つ。座っているのは俺一人。


『あの公園で待っているから、―――がくるまでいつまでも待ってるから』

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/28(土) 00:52:01.39 ID:48+7IUY20

次の日学校へいくと真っ先にハルヒに首根っこを掴まれて拉致された。

「あんた昨日どこ行ってたのよ!」
「とりあえず…おはよう」
「おはよ…ってそうじゃないでしょ!あんたがいなかったせいで私が怒られたんだから!みくるちゃんは泣きだすし小泉君は笑ってるけだし!」
「あぁ…それは古泉が悪いな」
「真面目に聞きなさいよ!だいたい…」
「…どうした?」
「……もういいわ、今日は最後まで部活参加しなさいよ」

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/28(土) 01:04:28.71 ID:48+7IUY20

突然ハルヒは大人しくなり先に教室へと戻って行った。
その時の俺はあいつは気分屋だから、と大して気に留めることはなかったがハルヒの突然テンションサガール病はそれから何回か発生した。

最初は授業中。いいこと考えた!日曜日は海へ行きましょ!そしたら撮影し放題だわ!と突然立ち上がったハルヒに

「日曜は雨だし今は授業中だぞ」
というと
「そうね…ふぅ…」
と溜息をつかれたり、休み時間にキョン!今日中にサイトのトップ画を昨日とったみくるちゃんにしなさい!と言われたので

「前に話した通りネットに顔写真なんかのせるもんじゃありません」
といったら
「わかってるわよ…言ってみただけじゃない!」

と怒られたりした。それ以外にも昼休みや掃除の時間なんかも同じようなことがあった。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/28(土) 01:14:18.25 ID:48+7IUY20

あの日か?女の子の日か?なんて聞けることなくあっという間に放課後がやってきて俺は部室へと重たい足を運んだ。

部室に入るなり「遅い!何で私と同じクラスなのに2分も差があるのよ!」と団長様から怒られた。

いつも通り軽くあしらっていると朝比奈さんが近付いてきた。

「あの…キョンくん、カメラ知りませんか…?あの中を誰かに見られたら私…私…」

しまった、登校した時にデジカメを戻しておくべきだった。やばい。明日こっそり戻しておこう。

「大丈夫ですよ朝比奈さん、俺が明日までに見つけておきますから」
「ありがとうキョン君、でも中はみないでね…」


ごめんなさい朝比奈さん、全部じっくりと見ました。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/28(土) 01:22:55.71 ID:48+7IUY20

「ちょっと二人ともなに話してるのよ!キョン!遅れた罰として私を扇ぎなさい!」

「はぁ?だいたい古泉もまだ来てないだろ?」
「ずべこべ言わないの!暑いから早く扇いで!」
「はいはい…仕方ないな…」

俺は朝比奈さんの肩にポンと手を置くと鞄から下敷きを取り出してハルヒを扇ぎ始める。

ハルヒは満足そうにパソコンをいじり始めたし朝比奈さんは冷たいお茶の用意を始めた。長門は…

長門はじっとこっちを見ている。なんだよ、私も扇げってか?勘弁してくれ。
俺が長門から目を逸らした瞬間ハルヒがまたあの病気になった。


「…もういい」

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/28(土) 01:29:17.63 ID:48+7IUY20

「……?」
俺と朝比奈さんの動きが止まった。またか、どうしたってんだ?マジであの日か?

「もう扇がなくていいって言ってるでしょ!?暑っ苦しいから離れてよ!」

何言ってるんだこいつは?自分が扇げって言ったんだろ?
「………」

朝比奈さんが小さくおろおろしている。可愛い。…って言ってる場合じゃなくて。

「……帰る」

立ち尽くしたままの俺にぶつかりながらハルヒは部室から出て行った。

…え?今何が起こっているんだ?なんでだ?俺なんかしたか?

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/28(土) 01:34:30.91 ID:48+7IUY20

「どっ、どうしましょう…」

ハルヒが出て行くなり朝比奈さんが駆け寄ってきた。どうする?どうするって?どうして?

「放っておけば直りますよ」
「そうでしょうか…キョンくん、涼宮さんとなにかあったんですか?」
「…朝比奈さん、そのことも含めて相談にのってもらえませんか?」
「ふぇ、私でよければもちろんです」

ぽち、とつけっぱなしのパソコンの電源ボタンを押すと鞄を持ってドアへと向かった。

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/28(土) 01:39:15.74 ID:48+7IUY20

「長門、悪いが先に帰る。戸閉まりと…もし古泉が来たら今あったことを話しておいてやってくれ」

長門が頷いて俺は朝比奈さんと部室を出るつもりだったが…長門は頷かなかった。

「どうしたんですか?キョンくん」
「あ、いえ、行きましょうか」

長門が頷かなかったのは本に夢中だったからで、それに長門なら言われなくてもそれくらいすると思った俺は部室を後にした。
よく考えれば今から俺は朝比奈さんと放課後デートをするのか、うひょー

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/28(土) 01:44:54.52 ID:48+7IUY20

「…というとこがあったんですよ」

俺は歩きながら朝比奈さんに今日あったハルヒの突然テンションサガール病を全て話した。

「そうだったんですか…なにか思い当たる節は?」
「そうですね、一つだけ…昨日先に帰ったからじゃないかと思ってるんですが」
「え…?」

え…?えってえ?絵?え?


「それはないと思います」

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/28(土) 01:50:44.23 ID:48+7IUY20

「涼宮さんはキョンくん相手にそんな小さなことでそこまで怒らないと思うし…それに昨日は、」
「……昨日は?」
「むしろ体調が悪かったのかなって心配してましたよ?」


心配?ハルヒが俺を?あいつも可愛いことあるじゃねーか、うん。って、

「それじゃあ何故…?」
「……キョンくんは昨日どうして先に帰ったんですか?」
「長門に呼ばれて…」
「長門さんに…?」


暫くの沈黙の後朝比奈さんが立ち止まった。長門?長門がどうしたってんだ?

「はぁ…私帰りますね」

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/28(土) 01:56:49.38 ID:48+7IUY20

はぁ…はぁ?溜息?朝比奈さんが溜息!?俺はこれほどまでに我が耳を疑ったことがあるだろうか?

「あの…」
「キョンくんって、なんでも私に相談するんですね」
「………」
「そういうのちょっと重いのでやめていただけませんか?…では」


重い?おもい?え?朝比奈さん?今何て?聞き間違いですよね?え?ではって…朝比奈さん?え?


「朝比奈さん…!?」
「…………」
「あの…気分悪くさせてすみませんでした!!」

立ち止まって振り返った朝比奈さんの目には涙が浮かんでいた。きっと俺が悪いんだろう。朝比奈さんを泣かすなんて最低だ、俺は。

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/28(土) 02:06:11.27 ID:48+7IUY20

暫くぼーっと立っていると足がガクガクと震えだしたので家に帰ることにした。
情けない、こんなんじゃもしかしたらハルヒが起こった原因も俺にあるのかもしれないな。

明日朝比奈さんに謝ろう、もちろんハルヒにも。


家に帰ると倒れるようにベッドへ寝ころんだ。目を瞑った瞬間声が聞こえた気がした。誰の声でもない、ただの女の声。


『あの公園で待っているから、あなたがくるまでいつまでも待ってるから』


ああ、そういえば本読まないとな。鞄から取り出してパラパラとめくるがどうも読む気がしない。


「はぁ…」

溜息と同時に本を閉じると鞄の奥へ押し込んだ。

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/28(土) 02:13:49.12 ID:48+7IUY20

「ハルヒ、昨日は悪かったな」

俺は朝一番にハルヒに頭を下げた。ハルヒはというと…机に頬杖をついたまま窓の外を見ている。無視か?無視されるくらいのことをしてしまったのか?

「キョンくん!!」

大声を出しながら我が教室に入ってきたのは朝比奈さんだった。朝から朝比奈さんを拝めるなんて今日はいい事でもあるのだろうか。

「キョンくん…来て!」

ハルヒにもう一度謝った後朝比奈さんに着いていった。あぁ…朝比奈さんの彼氏が出てきて俺の女を泣かせおって!とか言いわれて殴られるのだろうか。


「キョンくん…」

人気のない体育館裏。告白の名所で殴られるのか、俺は。

「ごめんなさいっ!!!!」

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/28(土) 02:21:29.21 ID:48+7IUY20

「私、あんなこと言うつもりなんかなくて、私、ほんとにひどいこと…」
「あ、朝比奈さん…?」
「ごめんねぇ…ごめんねキョンくん…!」


朝比奈さんが謝っている?なぜ?謝るのは俺だったはずでは…?


「口が勝手に動いて…言いたくなかったのに…私…っ」


瞬間俺は激痛で意識を失いかけた。あぁ、この状況から俺は朝比奈さんに平手打ちを食らったのだろう。
あれは手か?バットくらいの威力はあったな、はは。

「……っ、…!」


タイミングがいいのか悪いのかチャイムが鳴ったことによって朝比奈さんは逃げるように去って行った。

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/28(土) 02:27:59.76 ID:48+7IUY20

それから俺はとことんハルヒに無視をされ朝比奈さんは早退し古泉に関しては学校にさえ来ておらず放課後長門と二人部室でぼーっとしていた。

「…読んだ?」

長門の声が俺を現実世界へ呼び戻す。

「…あ、と…まだなんだ、悪い」
「…そう」
「なぁ長門俺―――…」


重い、朝比奈さんに言われた言葉が頭をよぎって相談しようと開いた口を閉じた。


「……?」
「いや、なんでもない」
「朝比奈みくるには相談できて私には出来ないこと?」

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/28(土) 02:34:13.42 ID:48+7IUY20

しまった、長門さえも傷つけてしまったのか。

「私は愛されない」
「……なが、」
「あなたの世界に私はいない」
「………」
「だから私の世界にもあなたがいない。そんな寂しい世界はいらない」
「………」
「だからこの世界から消える覚悟であなたを愛する」
「長門………?」
「……主人公がいうセリフ。私はここが好き」
「わかった、今日帰ったら読むよ」
「……そう」

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/28(土) 02:40:00.80 ID:48+7IUY20

それから長門は喋らなくなり俺も早く帰りたかったのですぐに解散した。

家まで送る、と言ったら早く本を読んで欲しいからと断られた。正直読む気はしなかった。


家に帰って本を読み始めてみたが3ページ目でやめた。恋愛ものの展開は見えている。主人公と相手役がくっついて終わり。そんなのつまらないじゃないか


本を鞄にしまうと俺は布団にもぐった。古泉は閉鎖空間にいるのだろうか。

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/28(土) 02:47:49.82 ID:48+7IUY20

次の日学校へ行くとハルヒがいなかった。欠席かと思ったらチャイムと同時に教室へ入ってきた。


「おはよう、ハルヒ。どうしたんだ?」
答えは早く返ってきた。
「あんたと喋りたくなかったからよ」

これにはさすがの俺もぐさっときた。それ以来話しかけることが出来ず机に伏せて寝たふりを演出していたら突然首根っこを掴まれた。この感じは、間違いない、ハルヒだ。

「キョン、ちょっときて」

ハルヒと口をきかなくなって一日半。久しぶりに聞いたハルヒの声は震えていた。

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/28(土) 02:56:36.83 ID:48+7IUY20

授業をさぼって部室にハルヒと二人。これが普通の男女だったらいい雰囲気になったりするのだろうか。

「キョン、キョン、ごめんね」

ハルヒが突然抱きついてきた。さっきよりずっと声が震えている。
この状況、今朝の朝比奈さんと似てないか?また叩かれるのか?俺は。

「キョン、私ずっとキョンに謝りたかった、冷たい態度でキョンを傷つけて…ずっと喋りたかったの、頭でそう思ってても口が、体が動かなくて」
「………」

そう、朝比奈さんも同じようなことを言っていた。

「キョン、お願い私に近づかないで…もうキョンを傷つけたくないっ…」

「ハルヒ…?」


俺から離れて顔を上げたハルヒの目から一粒の涙が零れた。


「私キョンのこと――――…」

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/28(土) 03:03:13.13 ID:48+7IUY20

ハルヒが最後まで喋り終える前におかしなことが起こった。歪んでいる。部室が。いや、世界が。

この感じは前に体感している。朝倉が襲って来た時…。

「ハルヒ!?」

気がついたらハルヒがいなかった。それもそうか、だってこの世界は―――…


「長門、お前なんだろ?」

背後から気配がした。それが長門であると振り向かなくとも分かった。


世界はまだ歪んだままだった。

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/28(土) 03:07:27.13 ID:48+7IUY20

「長門、情報操作ってのは便利だな」
「………。」
「言いたくない言葉も言わせることができるし、したくないこともさせることができる」
「何が言いたいのか理解できない」
「………。」
「私がやった、と?」
「違うのか?」
「…違わない」
「どうしてそんなこと…」
「あなたこそ、どうして」

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/28(土) 03:14:01.88 ID:48+7IUY20

長門が近付いてくるのがわかる。俺は動かない。いや、動けない。

「したくないことを涼宮ハルヒにやらされていたのは、あなた」
「………。」
「いつも命令されて、あなたは逆らわない。昨日も扇がされていた。何故?」
「そりゃ団長の命令は絶対だからな」
「そんなの、違う。私はあなたが苦痛と感じる世界は嫌」
「苦痛?」
「そう」
「俺は苦痛じゃなかった。むしろハルヒと朝比奈さんが泣いている方がよっぽど苦痛だ」
「……どうして…私は…あなたが好き」

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/28(土) 03:20:58.92 ID:48+7IUY20

背中に長門の体温を感じる。暖かいんだな、宇宙人も。

「私は涼宮ハルヒが憎いと感じる」
「どうしてだ?」
「なんでも思い通りになる神なんて、卑怯。私だってあなたが好きなのに」
「………」
「どうして?どうしてあなたを神に取られないといけないのかわからない。悪魔…。」
「長門、」
「あなただって決められた道を歩くのはつまらないはず…」
「長門、」
「私もあなたが好き。だからこの世界を変えたかった」
「長門!違うだろ!?」

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/28(土) 03:29:18.30 ID:48+7IUY20

「俺が恋愛物を好まないのはラストが必ず同じだからだ」
「………」
「でも俺はこの世界が、ハルヒの作った世界が好きだ」
「………」
「俺があいつを好きになったのはあいつが願ったからじゃない。俺が願ったからなんだ」


背中に冷たい感触がした。振り向くと長門は透けていた。

「長門………?」
「私は愚かだった。本当に自分の思い通りの世界を作っていたのは私…悪魔は私」
「長門、おまえ、なんで、」
「涼宮ハルヒは重要な観察対象。その観察対象を私は無理矢理変化させてしまった」
「そんなの、お前ならなかったことにできるだろ!?」
「………」
「お前は、情報操作が得意なんだろ!?」
「情報統合思念体は私を許さない。決められた罰は私の消滅」

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/28(土) 03:36:08.69 ID:48+7IUY20

「私は愛されない。あなたの世界に私はいない。だから私の世界にもあなたがいない。そんな寂しい世界はいらない」
「長門…おいうそだろ…」
「だからこの世界から消える覚悟であなたを愛する…これが私の決意。覚悟」
「長門…俺の世界にだってお前はいるんだ!ハルヒ、朝比奈さん、古泉、長門…みんな俺の世界なんだよ!」
「……本、読んだ?」
「……ま、だ、」
「……そう」


俺はこのとき初めて長門が笑っているのを見た。笑うというよりは微笑む、の方が合っているのかもしれないが。


世界が元に戻った。ハルヒが倒れている。長門は、いない。

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/28(土) 03:41:24.76 ID:48+7IUY20

それからハルヒは何事もなかったかのように元気を取り戻していた。
放課後部室に行くとハルヒに朝比奈さん、古泉がそろっていた。長門がいないだけで元の世界に戻っていた。

長門が、いない。こんなの俺の世界じゃない。


ハルヒや他の奴らに問いただしても誰一人長門を覚えている奴はいなかった。


なぜ情報統合思念体は俺にだけ記憶を残したのか。


「本、読んだ?」

長門の声がする。俺は部室を飛び出していた。

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/28(土) 03:48:52.04 ID:48+7IUY20

教室にある鞄を逆さまにして教科書やらなにやら全部床に落した。
本を見つけるとその場に座ってページをめくる。

内容は恋愛ものだった。嫌いなはずなのにすらすら読めた。
内容は俺が体感したこととそっくりだった。

魔女である少女が他の女の子たちを操って好きな人から遠ざける。散々傷つけられたのに少年は自分とは違う女の子を好きだというのだ。ここまでは同じ。そう、ここまでは。


そのあと魔女は少年を殺してしまうのだ。死んでしまえば永遠に自分だけのものになる、と。


俺はこのとき初めて知った。恋愛物はハッピーエンドだけじゃないということを。そして、長門が本当に俺を思ってくれていたということを。

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/28(土) 03:55:10.02 ID:48+7IUY20

俺はまた走った。これ以上スピードが出せないくらい全力で走った。


向かった先は、公園。座る場所は、見覚えのあるベンチ。


「長門…なんで消えちまうんだよ。お前はまだやってないことがあるだろうが」


長門が座っていた場所を優しくなでる。


「ハルヒ達に謝ってないだろ…?それに…俺ともまだいっぱい思い出作らなきゃいけないんだよ…」


草が風で揺れている。世界は、揺れていない。


視界が、揺れている。

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/28(土) 03:58:53.86 ID:48+7IUY20

『この公園で待っているから、長門がくるまでいつまでも待ってるから』


禁じられたワードを呟けば最後。意識が遠のいていく。
忘れるのか?俺は長門を忘れるのか?そんなの嫌だ。嫌なんだ!

なぁ長門、俺は今苦痛だ。忘れたくないのに忘れなきゃいけないのか?


長門…

「なが…と…」


世界が、止まった。

90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/28(土) 04:06:44.61 ID:48+7IUY20

俺は今まで何をしていたのだろう。蒸し暑いベンチに一人寝ころんでいた。

自分が何をしていたのかよくわからない。取り合えず学校へ、部室へ戻るとハルヒにこっぴどく叱られた。

「急に飛び出すんだもん!心配したわよ!」
「涼宮さんそれくらいにしてあげてくださいー」
「そうですよ、男の子には急に走りたくなる時があるのです」
「なによそれ!ちょっとばかキョン!聞いてるの!?」

「………」
「お、なに読んでるんだ?」
「魔女と少年の恋愛物」
「なんかおもしろそうだな、貸してくれよ」
「……こくり」

「ちょっとキョンってば!!!有希からもたまには何か言ってよ!」


「………ありがと」




96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/06/28(土) 04:09:10.64 ID:48+7IUY20

みなさん眠い中支援本当にありがとうございました。
おやすみなさい。



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