みくる「あわわ・・・キョン君に古泉君・・・男性同士で・・・」


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527 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/02/02(土) 19:52:01.98 ID:JkUeFcum0

「ちょっとキョン!何か面白いことしなさいよ!」

涼宮ハルヒは、どうやらご機嫌斜めのようだ。
かといって俺にハルヒの機嫌を取る義理はないし、いきなり面白いことと言われて思いつくような芸人魂は持ち合わせていない。
「なんかこうバーンとなってグァーンとなるようなことはないのかしら!?」
「とりあえず日本語を喋ったらどうだ?」
なんでこんな擬音で会話するようなやつが成績上位なんだろうか。
忌々しい あぁ忌々しい 忌々しい

「キョン!この前の変顔でも暇つぶしになるわ、やってみせなさいッ!」
「やだね。」
朝比奈さんが居る前でそんなことなどしたくない。
それに、長門の目線を自ら味わうことなど誰がするものか。

528 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/02/02(土) 19:58:46.07 ID:JkUeFcum0

「じゃあ、みんなで何かゲームでもしますか?」
余計なことを言うな古泉、それでハルヒが暴走したらお前に責任取らせるぞ?
「ゲームねぇ・・・この際退屈しのぎになるんだったらなんでもいいわ。でも何にする?五人全員が楽しめるものっていったら・・・」
「待て、俺はいい」
「64でもあればいいんだけど・・・」
見事にスルーされるのはもう突っ込まないが、このご時世に64はないだろう。
しかも同時プレイできるのは4人までだった気がするが。
「王様ゲーム」
部室の窓際でいつものように分厚い本を読みふけっていた長門が、呟くように言った。

533 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/02/02(土) 20:09:22.06 ID:JkUeFcum0

王様ゲーム!?
なんでそんなハルヒの暴走が確定されたものをわざわざ選ぶのだろうか。
長門お前、ひょっとして・・・
「もしかして有希、夏の合宿の王様ゲーム楽しかったの?」
ハルヒの言葉に1ミクロンほど体を震わせた(ように見えた)長門は、少し間を置くとコクリと頷いた。
「じゃぁ王様ゲームにしましょう!ちょっと待ってなさい、道具を調達してくるわ!」
そう言うとハルヒはドタバタと音を立ててながらどこかに走っていった。
調達?強奪の間違いじゃないのか?
「やれやれ、これで一安心ですね。」
古泉が笑顔を崩さずにパイプ椅子の上で背伸びをした。
こいつも背伸びとかするんだな。
「一安心って、何がだ?本当の波乱はこれからだぞ?」
「いえ、僕は涼宮さんが退屈だとバイトに行かなければならないので、彼女が「面白いもの」を見つけて安心したのですよ。」
なるほど。
バタンッと蹴る様に扉を開き、満面の笑みを浮かべたハルヒが帰って来た。
その手にはしっかりと五本の割り箸が握られている。
「お前、それどっから持ってきた?」
「職員室からもらってきたのよ。体育教師がいつもカップラーメンを食べるために机の中に割り箸を買いだめしてるのは知ってたもの。ちょうど職員室には居なかったし。」
「居なかったって、勝手に引き出しを開けて持って来たのか?」
「知らないの?学校の敷地内に入ったものは全て生徒のものなのよ!常識よ、常識。」
そんな常識は初めて聞いた。

537 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/02/02(土) 20:20:53.23 ID:JkUeFcum0

ハルヒは机の上に番号と王という文字がしっかりと記入された割り箸を無造作に置くと、
「ほらみくるちゃん!ゲーム始めるわよ!」
とお茶を汲み終わったばかりの朝比奈さんを呼んだ。

「みんな割り箸は取ったわね?それじゃ、王様だぁれっ!」
俺は始める前に一応意義を唱えてはみたが、華麗にスルーされて終わった。
こうなったらいっそ王様になってハルヒの困った顔でも拝みたいとでも思った。
が、俺の割り箸に書かれた文字は1。
「あ、私王様ですぅ。」
朝比奈さんがおずおずと手を挙げる。
「じゃみくるちゃん、なんでもいいから命令言ってみなさいッ!あ、先に言っとくけど王様の命令は絶対よ、絶対!」
まさかトップバッターになるとは思っていなかったのだろう、朝比奈さんは動揺しまくっている。
そんな表情も可愛いですと俺は密かに思いながら、自分に当たることがないようと祈っていた。
「えぇと・・・それじゃ、3番さんが眼鏡をかける・・・っていうのはどうですか?」
「いいわね!有希、眼鏡貸して?」
無言のまま長門はポケットから眼鏡を出し、ハルヒに手渡す。
ということは、3番は長門ではないようだ。

539 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/02/02(土) 20:27:26.17 ID:JkUeFcum0

「ありがと。で、三番は誰ッ!?」
ハルヒの語尾はあがり続けている。
この状況が楽しくてしょうがないのだろう。仕切っているということは、ハルヒは該当していないんだな。
朝比奈さんは王様だし、俺の番号は1だ。
ということは・・

「僕・・・ですか」
苦笑いに近い表情を浮かべた古泉は、意気揚々としたハルヒの手から眼鏡を受け取ると、まるで危ないものでも触るような手つきで装着した。
「あら、以外とサマになってるわね。やっぱり地顔がいいものねぇ、キョンと違って。」
最後に一言多いが、眼鏡をかけた古泉にそこまで違和感がないのは確かだ。
それどころか、これはこれでその手の女子にウケそうだな。
「光栄です、閣下。・・・あれ?この眼鏡、度が・・・いえ、なんでもありません」
長門の異様な視線に気づいた古泉は、口をつぐむといそいそと眼鏡を外し、長門に返した。

540 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/02/02(土) 20:35:38.23 ID:JkUeFcum0

「次いくわよ!ほら、みくるちゃんもボーッとしてないで早く棒引きなさい!」
「はっ、はいぃっ」
次は王様になりたい。
自分の直感を信じ、引き抜いた棒のに書かれていたものは・・・1。
結局俺には平凡な人生しか用意されていないのだろうか等と他愛無いゲームで悟りそうになる。
「今度はあたしが王様ね!さて、どんな命令にしようかしら?」
よりによって王様がハルヒとは・・・また夏の合宿のような目にあうのはごめんだ。
「ん〜・・・じゃぁ、1番に3番と4番がほっぺちゅー!」
「はぁ!?」
俺は思わず叫んでしまった。

543 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/02/02(土) 20:44:30.27 ID:JkUeFcum0

何も今該当しなくていいのにと、俺は自分の微妙な運を呪った。
「あら、1番がキョン?」
「待て待て待て待て、いくらなんでもそれはないだろう!?」
「いいじゃない、ほっぺなんだし。それに忘れたの?王様の命令は絶対!あんたもゲームに参加してるんだから最低限のルールぐらいは守りなさいよねッ!」
強制参加だろうが!
「で、3番と4番はだれ?」
「・・・私。」
長門が3と書かれた棒切れを見せる。
俺が心の中でガッツポーズをしたのは言うまでも無い。
そりゃ俺だって男だし、キスされるのが嬉しくないわけではない。
もうこうなったからには体裁なんて気にしないことにした。
これで4番が朝比奈さんだったら万々歳なのだが・・・

「・・・どうやら、今日は厄日なようですね。」

547 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/02/02(土) 20:52:24.92 ID:JkUeFcum0

「あら、また古泉くん?まぁいいわ、早くやっちゃって!ほら、みくるちゃんこっち来てなさい♪」
♪じゃないだろ♪じゃ!
「では長門さん、お先にどうぞ」
なんでお前は承諾してるんだよと突っ込みたくなるが、古泉の言うとおり俺がゲームを中断し、ハルヒの機嫌を損ねたら大変なことになる。
ここは辛抱しろ、俺・・・
と拳を固めて我慢していると、
「・・・・しゃがんでくれないと、届かない」
と長門が僅かだが感情のこもった声で言った。
「あ、あぁ、すまん」
動揺しつつも長門と同じ目線になるように少し膝を曲げた。
――――チュッ
少しの間をおいて、一瞬だけ長門の小さな唇が俺の頬に触れた。
・・・小学生じゃあるまいし、ハルヒのゆうにほっぺちゅーだけでこんなに動揺する俺が変なのだろうか。
また元の姿勢に戻った長門の表情に変化はない。
生まれて三年の長門でさえそうなのだから、きっと俺がウブすぎるんだろう。

554 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/02/02(土) 21:05:44.14 ID:JkUeFcum0

「・・・有希、家に帰ったら唇消毒しときなさいね。はい次は古泉くん!時間ないんだからさっさとやるわよ!」
相変わらず失礼なやつだ。
しかし、少しハルヒのテンションが下がった気がする。
そんな考えは一瞬で、俺は男のキスにどうやって対処するかを考えることにした。
「では・・・いいですか、キョン君?」
先に言っておくが俺にそんな趣味はひとっかけらもない。
古泉はというと、笑顔でも真顔でもない微妙な表情だった。
まぁそれが一般なんだろう。
「・・・さっさとやれ。」
「では、失礼します。」
覚悟を決め、グッと目を硬く閉じる。

「・・・終わりましたよ、涼宮さん」
「はい、お疲れ様!それじゃ次・・・「最終下校時刻になりました。校舎内に残っている生徒は、すみやかに下校してください」
ハルヒの声と放送委員のアナウンスが重なる。
「あら、もうそんな時間だったのね。全く、キョンがぐずぐずしてるから・・・」
ブツブツとハルヒは荷物をまとめはじめる。
「でも楽しかったわ。またやりましょー!じゃ、みんな帰るわよ!ほらほらみくるちゃんが着替えるから男二人は出てった出てった!」

557 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/02/02(土) 21:14:13.13 ID:JkUeFcum0

「ふぅ・・・」
俺達はいつものように部室の扉に背を預け、朝比奈さんの着替えを待った。
「みくるちゃん、さっさとしないと置いてっちゃうわよ!」
「あわわ、待ってくださいぃ〜」
「あたしが手伝ってあげるかさっさと脱ぐ!」
「ひゃぁっ、て、手伝ったら余計時間かかっちゃいますよぉ〜」
ドアの向こうから俺に余計な想像をさせる会話がされている。
「今日はお互い災難でしたね。」
いつもの笑顔に戻った古泉が、ドアの向こうに聞こえないように小声で同意を求めた。
「全くだ。」
「でも僕は楽しかったですよ、最後のキスは別として。」
「・・・なんだお前、そんな趣味あったのか?」
「だっ、だから別としてって言ってるじゃないですか!」
「冗談だ、慌てるってことは図星じゃないのか?」
「・・・キョン君も涼宮さんに劣らないぐらい失礼ですよ。」
何とでも言え、こうやって古泉をウサ晴らしにでも使わないとハルヒたちの会話が俺の思考回路を変な風に持っていくのだ。

古泉にそんな趣味がないのは確かだろう。
長門にキスされた右頬と、古泉にキスされた左頬を同時に撫でる。

音もない、静かなキスだった。
だけど確かに、その感触は俺の頬に残っている。
なんだか変な気分だ。

561 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/02/02(土) 21:20:44.63 ID:JkUeFcum0

「こんな風に、なんの意味もなくみんなで騒ぐのも楽しいですね、という意味ですよ」
古泉は若干遠い目で話していた。
「・・・まぁな」

「帰るわよ!」
ハルヒの無駄にでかい声とともにドアが唐突に開いたので、俺達は前に倒れこみそうになった。
「それじゃ、帰りましょう」
最近は五人全員で下校することが日課になってきている。

「長門、今日は本を持ち帰らないのか?」
「・・・取ってくる。」
「有希が忘れ物なんて珍しいわね。」
俺もなんだか長門の人間らしい一面を見たが気がした。
たまには、三年に一回ぐらいならこんな日があっても悪くないと思った。

〜fin〜



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