涼宮ハルヒの吸血鬼


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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/07/30(月) 17:34:53.88 ID:1LzEajZD0

首を絞め、血を啜る北高の怪物

 2007年2月、日本のある地方で住民を恐怖に震え上がらせる連続殺人事件が起きた。
犯罪史上に名高い「西宮の怪物」事件である。4年後に鶴屋率いるちゅるや政権が誕生する
政情不安な時代であった。

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2007/07/30(月) 17:35:37.69 ID:1LzEajZD0

生き血を啜るバンパイア

 2月3日の夜遅く冷たい風の中、女性事務員朝比奈みくるは急ぎ足で家に向かっていた。
人影の途絶えた裏道のはずなのに、背後から誰か近づいてくる足音が聞こえた。そう思った瞬間、
人間業とは思えないすさまじい力で頸を絞められていた。耳元で男の低い声が囁く。
「静かにしろ。声を立てるな」
 この直後、彼女は失神したため、後のことを何も覚えていない。気がついたときは病院のベッドで
手当てを受けていた。頭部に24箇所もの鋭利な刃物による刺し傷があった。なかでもこめかみの
傷は酷く、ざっくり割れた傷口からは脳髄が見えていたという。幸い命は助かったが、回復するまで
長期間入院しなければならなかった。所持品は何も奪われていない。性的暴行を受けた形跡もない。
真面目で親切な被害者は、他人から恨みを買うような理由もない。では犯人は、何の目的で
被害者に瀕死の重傷を負わせたのか。

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2007/07/30(月) 17:42:09.20 ID:1LzEajZD0

 それから5日後、町外れの建築現場から幼い少女祇園乃妹(ぎおんのもえ)の死体が見つかった。
着衣に乱れはないが、なぜか衣服に蝋が染み込んでいた。絞殺された後、頭部を13箇所も鋭利な
刃物で抉られている。レイプはされていないし、乳房と性器にも損傷はない。犯行の手口が朝比奈
みくる殺人未遂事件と同じであることから、警察は同一犯の仕業とみて捜査を進めた。
 3人目の犠牲者となったのは、55歳の機械工谷口だった。彼は深夜酒に酔って公園のベンチで
寝ているところを不意に襲われたらしく、犯人と争った様子はない。頭部と上半身に20箇所の刺し傷
があり、こめかみの深い傷が致命傷になっていた。またもや犠牲者からは何も奪っていない。

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2007/07/30(月) 17:46:25.64 ID:1LzEajZD0

 4月2日の夕方、16歳の少女坂中は自宅近くの道を一人で歩いていた。しばらくすると背後から
誰か足早に近づいてくる気配を感じた。多分友だちがふざけて飛びついてくると思った坂中は、
厚いコートの襟を立てて身構えた。これが結果として彼女の命を救うことになる。坂中は背後から
何者かに凄い力で頸を絞められ、仰向けに地面に押し倒された。だが勇敢にも坂中は、手を伸ばし
男の顔に力一杯爪を立てた。一瞬、ひるんだ男が坂中の頸から手を離した。この際に彼女は必死で
逃げ出し助かった。ただ暗くて犯人の顔はさだかではないという。

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2007/07/30(月) 17:50:26.66 ID:1LzEajZD0

 翌日の夜、今度は帰宅を急ぐ女性工員が襲われたが、たまたま通りかかった人に救われた。
「背後から突然頸を絞められ、気を失ってしまったの。何者かに草むらを引きずられていくとき
意識を取り戻したんだけど、怖くて声が出ない。そのまま目を閉じてじっとしていると、男が身を
かがめ私の胸に耳をつけて心臓の音を聞こうとしたの。恐ろしくて心臓がどきんどきんと音を
立てたわ。てっきり殺されると思ったそのとき、男は急に立ち上がって素早く暗闇の中へ消えて
いった。すぐに数人の足音が聞こえてきたので、大声で助けを求めたのよ」

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2007/07/30(月) 17:56:05.32 ID:1LzEajZD0

 7月に入り、さらに3件の絞殺未遂事件が起きた。被害者は若い女性2人と少女だった。
7月30日、朝倉涼子という16歳の女性がアパートの自室で死体となって発見された。死因は
絞殺だった。
 西宮市民の間に恐怖が広がった。人々は姿を見せない犯人を「怪物」と呼んで恐れるように
なった。老若男女の別なく襲いかかる怪物が、町を徘徊している。怪物は足音もなく背後から
襲いかかり、人間とは思えない力で頸を締めつけ失神させる。そして鋭利な刃物でめった刺し
にすると素早く逃走するのだ。怪物は被害者の所持金を何1つ奪わないし、レイプもしない。
ならばいったい犯人の動機は何なのか。やがて不気味な噂が囁かれるようになった。犯人は
生き血を吸うバンパイアだというのだ。被害者のこめかみを刃物や金槌で傷つけ、傷口から
生き血を吸うというのである。警察当局は捜査本部を設置し、総力をあげて犯人を追及したが、
手掛かりが少なく捜査は難航した。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/07/30(月) 18:04:08.72 ID:1LzEajZD0

俺の苦悩を引き受けろ

 西宮市内の労働者が暮らしている地区に、一組の若い夫婦がひっそりと暮らしていた。18歳の
キョンは、鋳物工として真面目に働くガッチリした男であった。いつもキチンとした服装に帽子を
かぶった姿は職人というより紳士そのもので、実際の年より少し若く見える。ハンサムではないが
魅力的な容貌の持ち主で、落ち着いた口調で話す礼儀正しい男だった。妻ハルヒはキョンと同じ
18歳。地味な服装と痩せた体つきだったが、美人であったためキョンと同様若く見える。市内の
料理店で夜勤の清掃婦として働いていた。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/07/30(月) 18:10:02.26 ID:1LzEajZD0

 キョンは仕事が終わるとまっすぐ家に帰り、ハルヒと質素な夕食をとるのが常だった。仲間と
飲んだり騒いだりすることが嫌いなのだ。何が楽しみで生きているのかわからない変わり者、
と仲間たちからは言われていた。
 キョンは、ハルヒが仕事に出かけ深夜に帰宅するまで一人で暇を持て余していた。ハルヒは
深夜に一人で帰宅するのを怖がっていた。今評判の怪物吸血鬼が恐ろしくて仕方がないのだ。
「キョン、今夜迎えに来てくれない?吸血鬼に襲われて生き血を吸われるなんて考えただけでも
ぞっとするわ」
 キョンはいつもの落ち着いた口調でなだめるように言った。
「心配しなくてもいい。お前が襲われることは絶対にない。それでも怖いというなら今夜は迎えに
行こうか?」
 しかし妻思いのこの男は、外見からは想像もつかない凶暴な怪物、抑制できない殺人衝動に
とりつかれたサディストだった。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/07/30(月) 18:21:15.48 ID:1LzEajZD0

「定期的に人を殺したい強迫欲求が起きる。ハルヒが仕事に出かけたあと、毎晩のように格好の
獲物を探して暗い町をさまよい歩くんだ。殺しの強迫観念はしだいに激しさを増してくる。とくに
捕まる前の数ヶ月前は酷かった。この衝動は人を襲うまで決して収まることがないんだ。犠牲者
の頸を両手で絞めているときに絶頂感が訪れ射精するが、犠牲者を切り裂いているときに
オルガズムに達することもあったな。殺すかどうかは、いつ絶頂感に達するかで決まるんだ。」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/07/30(月) 18:26:58.02 ID:1LzEajZD0

 キョンは少女祇園乃妹の殺害について、つぎのように供述している。
「07年2月8日は午後6時頃に家を出たな。町外れの教会の前で10歳くらいの少女と出合った。聞くと
家に帰る途中だというじゃないか。送ってやろうと言うと素直にうなずいたので、手をつないで歩く
ことにした。人気のない場所で少女の頸を絞めたらすぐにぐったりしたので、空き地まで抱きかかえて
いった。そこに横たえてハサミを取り出し、少女のこめかみに突き刺したんだ。
 死体はそのままにしていったん家に戻った。衣服に付いた血液を洗い流し、ハサミも洗った。蝋を
ビンに詰めて死体のある場所へ行き死体を焼こうとしたが、近くに人がいたので中止にした。死体を
使って自慰なんてしなかった。性器には触りもしなかったな。ただ激怒から絞め殺したんだ」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/07/30(月) 18:31:25.11 ID:1LzEajZD0

 注目すべきことは、キョンが殺人の動機を激怒であると供述していることだ。ではいったい何に
怒っていたのか。彼は、怒りの根元は社会への復讐だという。
「子どもの頃に受けた野蛮な扱いは、犬以下だった。いつも自分に言い聞かせていたもんだ。
<時を待つんだ。きっと思い知らせてやるときがくる。極悪人になるんだ>ってね。俺は復讐の
仕方をあれこれ空想しては楽しんだ。俺は確かに罪のない人を、俺が受けた野蛮な扱いとは
まったく関係ない人たちを殺した。しかし"社会への恨み"を晴らすには、俺の受けた苦悩を
別の人間に引き受けさせなければならないんだ。その人たちが俺に殺される理由を知らない
としても仕方がないな。誰をどのように殺すかは、俺が決める。もしこの理屈を筋が通らない
と言う人は、そう思っていればいい」

ちと休憩。できれば保守お願いします。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/07/30(月) 18:43:47.06 ID:1LzEajZD0

俺の身体と魂には、暗く罪悪に満ちた病気がある

 キョンは10歳のとき、窃盗罪で捕まり少年院へ送られた。それから1年間服役し、2000年に11歳で
出所している。この後、自由の身でいられたのはわずかに数ヶ月だけだった。窃盗と放火を繰り返した
挙句、翌年に逮捕されたキョンは、2年間少年院に入って、2003年、14歳のとき釈放された。その
数ヵ月後、キョンはまたもや殺人未遂で補導され少年院へ送られた。釈放されたのは17歳のときだ。
10歳から17歳までの間に娑婆で過ごしたのは、わずかに1年足らずだった。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/07/30(月) 18:47:56.64 ID:1LzEajZD0

「投獄されるたびに社会への憎しみは深まっていった。俺はまるで少年院に入るために生まれて
きたようなものじゃないか。俺の身体の中に極悪人だった父の悪霊が入り込み、盗み、放火、
殺人など凶悪な犯罪をやらせるんだ。俺は少年院に閉じ込められている間に、あらゆる種類の
犯罪者どもから熱心にその手口を学んだ。これを肝に銘じて二度とヘマをやって捕まらないと
誓った。少年院での楽しみは犯罪実話雑誌を読むことだった。釈放されたら、どえらい残忍な
殺人を犯して世間の奴らをあっと言わせてやる。そう想像するのが俺の楽しみだった。世間の
奴らに復讐を誓うことで、つらい少年院暮らしにも我慢ができたんだ」

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/07/30(月) 18:55:23.58 ID:1LzEajZD0

「独房では仕事がなく、あらゆる空想に耽った。突拍子もないこと、たとえば世界を改変する能力を
持つ少女と出会うとか。それ以外には女のこと、淫らなことだ。いずれ出た後でやろうと思った。
俺はそれに暴力をつけ加えた。一人夜中にベッドに横たわり、目を閉じてそんな空想に耽るんだ。
すごく楽しかったぜ。
 たとえばこんな空想だ。誰かに襲いかかり怪我をさせる。奴は断末魔の苦しみにもがいている。
傷口からドクドクと鮮血が噴き出してくる──。こんな具合に頭の中で想像すると、もうエクスタシー
が訪れてくる。たいていここで射精してしまうんだ。誰かの腹を切り裂いたり、身体を酷く傷つける
ことを空想すると、最後には完全なオルガズムを得ることができるんだ。嘘だと思うかもしれないが、
現実に体験したんだ。俺の身体と魂には、暗く罪悪に満ちた病気がある。これが強烈な性の欲求と
活動の根源なんだ。こうした空想に浸るため、わざと騒ぎを起こして独房に入ることにしていた。
凶暴な囚人でさえも独房と聞くと震え上がったが、俺は平気だった。一日中何も仕事をしなくても
いいのが最高だったぜ。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/07/30(月) 19:02:43.68 ID:1LzEajZD0

 大惨事を起こす空想にも耽った。何千人もの人間を列車事故で殺すとか、水道の貯水場に毒を
混入して大勢を殺すとか。あるいは田舎の小学校へ行って、チョコレート菓子の中へ毒薬を混入
して生徒に食わせるとか。他の囚人たちが裸の女のことを思い浮かべて興奮するように、俺は
そんなサディスティックな空想で快感を感じた。この空想の根底には社会への復讐の意味が
あると思う」
 後にキョンは、精神鑑定にあたった著名な心理学者古泉一樹教授に、犯行の動機には
「社会への復讐」と「性的快楽」が混ざり合っていたと告白している。
 キョンは、人間を殺すことの快楽をつぎのように告白している。
「あるとき、少女をハサミで殺し、こめかみの傷口からあふれる鮮血を吸った。その瞬間に絶頂感
を感じ射精した」

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/07/30(月) 19:09:13.39 ID:1LzEajZD0

機械工谷口殺害については、つぎのように供述している。
「2月12日の夜8時ごろ家を出てから3時間ほど暗い町中を獲物を求めてさまよったが見つからなかった。
帰ろうとしたとき公園のベンチでイビキをかいて寝込んでいるアホそうな男を見つけた。酔っ払いらしい。
ハサミを取り出しこめかみを一撃した。深く食い込んだハサミをやっと引き抜くと鮮血が吹き出した。
男は地面にうつぶせになってすごいうめき声をあげた。それからハサミを頭と頸に突き立てた。傷口から
噴き上がる鮮血を見た瞬間に射精してしまった。男は俺の足首を凄い力でつかんだが、背中を数回
刺すと動かなくなったんで、ブーツをつかんで草むらへ隠した。あたり一面血の海だった。それから
男のブーツから俺の指紋を拭い、その場を立ち去ったんだ」

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/07/30(月) 19:21:41.28 ID:1LzEajZD0

 古泉教授を信頼したキョンは、自分の倒錯性欲のすべてを赤裸々に告白している。2010年、古泉教授
はキョンの告白をもとに著書「サディスト」を出版した。それまで知られることのなかったサディズムの
異常心理を分析したこの書物は、現在もその価値を失っていない。
 キョンは、8月8日の少女長門有希殺害をつぎのように供述している。
「動物園近くの道をぶらぶら歩いていた。そのときは誰かを襲おうなんて気は少しもなかったんだ。
ベンチで休んでいると見知らぬ少女が近づいてきて話しかけてきた。俺は容貌には自身がある。
おだやかな雰囲気の親切そうな若い学生に見えるからだ。不思議と子どもにも好かれる。図書館へ
行こうと誘うと、少女はうなずいてついてきた。途中の林の近くで人がいないとき、この子を殺そうと
決めたんだ。
 隙をみて少女の頸を両手で思いきり絞めると、少女は簡単に失神した。しばらくして意識を取り戻して
助けを呼ぼうとしたので、また絞めつけて失神させた。完全に殺してしまおうとハサミを取り出し、
柔らかい頸筋へ突き刺した。傷口からおびただしい血が流れだすと、どういうわけか少女はまたも意識
を取り戻した。か細い声で『殺さないで』と言ったのだ。俺はハサミを振り上げ、心臓に突き刺した。
胸の傷口から真っ赤な血が勢いよく噴き出したその瞬間、鮮血の噴き出す音をはっきり聞くことができた。
これで少女は死んだ。殺すのに1時間ぐらいはかかっただろうか。

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/07/30(月) 19:29:23.83 ID:1LzEajZD0

 死体をどこへ埋めるか長いこと考えた。(そうだ、これからときどき死体を埋めた場所に散歩に来ること
にしよう)。この素晴らしい考えに、ドキドキするほど興奮した。眺めのよい場所を探し、大きな木の
かたわらに深い墓穴を掘った。すると、なぜか本当の葬式をしているような気持ちになってきたんだ。
少女の死体を抱きかかえ、やさしく墓穴へ横たえると、最初の土を丁寧に死体にかぶせていった。
そのあと俺しか知らない少女のお墓へは、30回くらい訪れただろうか。そこに身体を横たえ真下に眠る
少女のことを思うと、なんともいえない満たされた感情を味わえるんだ」

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/07/30(月) 19:37:34.67 ID:1LzEajZD0

 連続殺人者の多くは、殺人の様子を生々しく思い出すことでそのときの性的興奮と快感を再体験する
ことが知られている。そのため彼らは、犠牲者の身につけていたものを保管する。それは写真、身分
証明書、装身具、化粧品、下着などである。また犯行現場へ足を運ぶことも少なくない。いわゆる
「犯行の再体験」と呼ばれている行為だ。
 捕まらないことに絶対の自信をもつキョンは、捜査本部に手紙を送り、図書館に行く途中の林のどこに
死体を埋めたか地図で示すことまでした。警察はその示された場所を掘り起こし、長門有希の死体を
発掘した。
 9月になるとキョンは凶器を金槌に変えた。12月までに2人が撲殺され、1人が絞殺された。4人が襲われ
重症を負わされた。2008年になっても犯行は続いていた。5月までに、9件の絞殺未遂事件と一件の金槌
による殺人未遂事件が起きた。

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/07/30(月) 19:46:42.25 ID:1LzEajZD0

殺人鬼の思いやり

 2008年5月中頃、キョンは逮捕の近いことを覚悟するようになっていた。自分はいかなる極刑に
処されても平気だが、心残りはハルヒのことだった。ハルヒはキョンが西宮の吸血鬼だとは夢にも
思っていない。深夜一人で帰るのを怖がるから、迎えに行ったことも少なくない。
 ハルヒは不幸な人生を送ってきた女だった。郊外の小さな洋服屋の娘として育ったハルヒは、
成人するとあこがれの大都会東京で女中として真面目に働き始めた。ところが悪い男に騙された
挙句、売春婦にされてしまう。兄の手によって救い出されたハルヒは、さらに結婚を約束した若い
男に裏切られ、その男を刺殺した罪で2年間服役した。出所後にふとしたきっかけからキョンと
結婚して、2年前から一緒に暮らしていた。キョンが逮捕されれば、たちまちハルヒが生活に苦しむ
ことは目に見えている。それでなくとも当時の日本のインフレはすさまじいものがあった。だが
西宮の吸血鬼逮捕につながる情報の提供者には、多額の懸賞金が与えられることになっている。
懸賞金がハルヒの手に入れば、少なくとも路頭に迷うことはあるまい・・・。

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/07/30(月) 19:56:36.07 ID:1LzEajZD0

 5月23日の夕方、キョンはハルヒをレストランに誘った。彼は食事をしながらハルヒに告白した。
おだやかに話したつもりだったが、ハルヒの驚愕は予想をはるかに越えていた。彼女はショックの
あまり何も食べられなくなった。二人は店を出ると公園の河べりを歩いた。15ヶ月もの間、西宮の
市民を恐怖に陥れた吸血鬼が、怪物が、目の前にいる。
 彼女はキョンが前科者であることは知っていた。人生の半分を少年院に閉じ込められていた
凶暴な男であることも知っていた。しかし、それはあたしと知り合う前のこと、知り合ってからは
何も悪いことはしていないと信じていた。真人間になったものとばかり思っていたのに、キョンは
完全にあたしを欺いていたというの?目の前の紳士面をした男は、どう見ても恐ろしい怪物では
ない。今まで一度たりとも疑ったことはない。
 キョンは長い時間をかけて犯行の詳細を話し、どうにかハルヒに事実を納得させた。
「俺はいずれ捕まるから自殺してもいいが、それだとお前の暮らしが心配だ。まだ若いといっても、
身体の弱いお前が一人で生きるのは容易ではないだろ。どうしても大金が必要だ。俺には多額の
懸賞金がかかっている。これをハルヒ、お前のものにさせたい。それにはお前が警察へ密告することだ。
しかし俺にはまだやることがある。明日詳しいことを話すから、警察に告げるのはその後にするんだ」
 そう言ってキョンは、ハルヒに翌日ある教会の前で会うことを約束させた。

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/07/30(月) 20:04:29.37 ID:1LzEajZD0

 翌日、教会の前まで行ったキョンは驚愕した。すでに付近一帯は緊張に包まれていたのだ。
通行人や立ち話をしている人たちが警察官であることは察しがついた。物陰には私服警官が
うようよしているに違いない。ハルヒが約束を破り、警察に密告したことは明らかだ。ハルヒは
なぜ信用してくれなかったのか。だがいずれにしても、ハルヒは俺を頼りにしてくれたたった
一人の人間だ。キョンは教会へ向かって歩き出した。付近にいた男だちが即座にキョンを取り
囲んだ。
 2008年5月24日、西宮の怪物、キョンは逮捕された。キョンは1年4ヶ月の間に12人を惨殺し、
25人に重傷を負わせたことになる。
 翌月になって拘置所内のキョンにハルヒからの手紙が届いた。懸賞金の一部にあたる金額を
受け取ったという知らせだった。

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/07/30(月) 20:13:45.05 ID:1LzEajZD0

頸絞めの快楽、吸血の快楽

 キョンの犯行の特徴は殺人未遂が多いことだ。これは彼の殺人動機と密接な関連がある。彼はつぎの
ように告白している。
「奇妙に思われるかもしれないが、俺は人の頸を絞めると、性的絶頂感が得られ射精するんだ。男は
力が強いから狙わない。抵抗する力の弱い女子どもを狙うんだ。女の頸は意外に柔らかいから絞め
やすい。温かい頸を両手で絞めると、呼吸を止められ痙攣する身体の微妙な動きがぜんぶ手に
伝わってくる。この瞬間に性的絶頂感が押し寄せ射精するんだ。俺は相手を殺そうと絞めるんじゃない。
ただ性的オルガズムの快感を得るために人の頸を絞めるんだ。セックスと同じで、すぐ射精するときも
あれば時間がかかるときもある。すぐのときは失神だけですむが、時間がかかれば相手は死んでしまう。
なぜそうなったかは自分でもわからん。
 少年の頃、おかしな売春婦としばらく暮らしたことがある。その女はセックスしながら頸を絞められると、
激しく痙攣しながら快感に悶え失神する変な癖があった。15歳の頃には、知らない土地で知り合った
女の子とセックスしているときに、『これは愛の行為だから心配ない』と言って安心させ、頸を何回か
絞めつけたことがある。そのうち彼女の口から血が流れ出てきた。そのときオルガズムに達したんだ。
これがすべての始まりってわけだ」

59 名前:サイコパス ◆2hvhgO6UGM [] 投稿日:2007/07/30(月) 20:20:25.99 ID:1LzEajZD0

 一方キョンは、ハルヒとの夫婦生活には淡白だったようだ。
「結婚した直後でさえも、ハルヒの身体はたまにしか求めなかった。ハルヒから『あたしたちは結婚
しているの、してないの?』と催促される始末だったな。なぜかハルヒの裸体を見ても興奮しないから
困ったもんだ。ハルヒが勃起を助けてくれるが、すぐに萎えてしまう。いつも妄想にふけらないと
勃起は続かなかったから苦労したぜ」
 キョンにとって普通の夫婦生活は刺激が少なく満足できるものではなかった。どちらかといえば、
義務的な行為だったのだろう。キョンの脳の中の中枢神経は、暴力とセックスの結びついた強烈な
刺激にしか反応しなくなっていたのではないか。キョンは、たとえハルヒ以外の女性とセックスしても、
勃起が続かないから性的オルガズムに到達することは不可能だったと告白している。
 人の頸を絞めることで性的絶頂感に達するというのは普通の人間には理解しがたいが、しかし
これ以上にキョンを性的に興奮させ、快感をもたらす行為があった。それは人間の生き血だった。
人の身体から噴き出す鮮血こそが、キョンの究極の快楽だったのだ。

61 名前:サイコパス ◆2hvhgO6UGM [] 投稿日:2007/07/30(月) 20:32:16.85 ID:1LzEajZD0

「少女佐々木を金槌で殺し、こめかみの傷口から溢れ出る血を吸った瞬間に、性的絶頂感が全身を走り
射精した。少女橘京子のときは頸筋の傷口から血を飲むと快感に包まれた。少女九曜周防を殺したときは、
手についていた血をなめただけで射精した」
 キョンの告白によれば、白鳥の頸を切って射精したことまである。
「2008年の春、夜中じゅう町を歩き回ったが、獲物を見つけられず手ぶらだった。町はずれにある湖の岸辺
に一羽の白鳥が羽を休めて寝ていた。そっと忍び寄って頸を切り落とすと、音を立てて鮮血が空中へ
噴き上がった。そこへ口をつけて血を飲んだ瞬間射精した。血を飲み過ぎたせいか、後で気持ち悪くなって
吐いてしまったけどな」
 キョンは、事故で血まみれになって死にかけている人を見ただけでも性的に興奮する。
「俺は人の血を見るとそれだけで興奮してしまうんです。あるとき、電車の脱線事故に出くわしました。
電車の下敷きになった血まみれの男がうめきながら死にかけていた。助けるふりをして男の身体に手を
触れた瞬間、全身に快感が走り射精したんです」
 キョンは人の頸を絞めつけたり、人のこめかみを突き刺したり、生暖かい生き血を浴びると性的絶頂感
から射精するが、このときペニスには手も触れない。しかしその快感は自慰や性交とは比べようがないほど
強烈なのだと告白している。
 キョンはなぜこれほどまで鮮血に性的興奮を感じるのか。それを知るには彼の生い立ちから見て
いかなければならい。

66 名前:サイコパス ◆2hvhgO6UGM [] 投稿日:2007/07/30(月) 20:59:25.74 ID:1LzEajZD0

9歳の殺人者

 1989年にキョンは生まれた。13人の兄弟姉妹の3番目だった。父親は鋳物職人だったが乱暴者の
大酒飲みのため、わずかな賃金も酒代に消えた。一家は常にどん底の暮らしだった。父親は夜酒に
酔って家に帰ると、いやがる妻に力ずくでセックスを迫るのが常だった。狭い二間だけのあばら屋に
ひしめく子どもたちの目の前で。父親の暴力的な性行為は幼いキョンの脳裡に焼き付いたことだろう。
それが暴力とセックスが結びつく大きな要因になったのではないか。
 キョンは悲惨だった子どもの頃のことを、憎しみと怒りを込めて繰り返し語っている。
「おふくろだけがしっかりした働き者だった。兄貴たちは盗みで捕まり刑務所へ入った。狭い家で家族が
ひしめき合って暮らしていた。親父が窓や家具を叩き壊すことも珍しいことではなかった。そのうえ
抵抗もできない妻や子どもたちに、残忍な暴力を振るいやがった」
 父親はすでに何回も入獄したことのある前科者。キョンが4歳のときには、実の娘を強姦した罪で
1年3ヶ月服役したことすらある。キョンの父親への怒りは一生消えることがなかった。

70 名前:サイコパス ◆2hvhgO6UGM [] 投稿日:2007/07/30(月) 21:08:53.04 ID:1LzEajZD0

 しかし当時は、どん底の貧困家庭や酒飲みで乱暴な父親は多かった。そこで育った子どもたちの
ほとんどは、苦しみに耐え普通の社会人に成長している。ではなぜキョンだけが怪物になってしまった
のか。その一因となったのは、キョン一家と同じ建物に住んでいた野犬捕獲人だと思われる。その若い
男は、野犬を捕らえては業者に売って暮らしを立てていた。野犬を買い取った業者は、肉を食用にする
一方で脂を火傷の薬として商売していた。その頃はどこの町にもこんな男が何人かいたのだ。
 この野犬捕獲人が、キョン少年に野犬を虐めることを教えた。尻尾を切断したり針で急所を刺したり
しては、犬が苦しむのを見て楽しむような男だった。ペニスを愛撫して射精させてやると犬は喜んで
なついてくると教えたり、牝犬の性器を刺激して自分のペニスを挿入して射精して見せたりもした。
この手ほどきによって、キョンは獣姦による快感を知った。男はキョンを近くの牧場へ誘い、山羊、鶏など
と獣姦することまで体験させた。
 鮮血と性的快感を結びつけたのは屠殺場の印象だという。牛・豚・山羊・馬などの家畜は、屠殺されるや
頸筋を鋭利な刃物で切り裂かれて鮮血を抜かれ、食肉にされていく。血まみれの解体作業は強烈な
印象としてキョンの脳裡に焼き付いた。

72 名前:サイコパス ◆2hvhgO6UGM [] 投稿日:2007/07/30(月) 21:15:33.69 ID:1LzEajZD0

 あるとき牧場で山羊を犯そうとしていたキョンは、あまりに暴れ回る山羊に癇癪を起こしてナイフを
山羊の腹に突き刺した。ほとばしる鮮血を見たとき、それまでに体験したことのない強烈な快感と
ともに射精していた。これ以後、彼はたんなる獣姦だけでは満足できなくなり、より強い刺激を求める
ようになっていく。家畜を虐めることに血を流す残酷行為が加わった。キョンは、10台前から10台半ば
の少し前まで、性欲のはけ口として血まみれの獣姦を続けた。最高の性的快感は性行為の最中に
羊を殺すことだったと告白している。

76 名前:サイコパス ◆2hvhgO6UGM [] 投稿日:2007/07/30(月) 21:26:52.23 ID:1LzEajZD0

 最初の殺人は、わずか9歳のときだ。仲間の少年二人と河へ泳ぎに行ったとき、筏に乗って遊んでいる
友人の一人を河へ突き落とし、助けようとした別の少年をも突き飛ばして溺死させたというのだ。だがこの
事件は、なぜか事故死として処理されてしまった。9歳の少年が殺すなどと誰も思いもしない時代だった。
 10歳になったキョンは、鋳物工として働き出したが工場の雇い主から現金数百万円を盗んで家出した。
しかしすぐに警察に捕まり、少年院へ送られた。
 補導されたキョンは、1年間矯正少年院で過ごした。釈放された数ヵ月後に、キョンは幼い少女を絞殺した。
この事件は、8年後にキョンが自供するまで迷宮入りになっていた。
 キョンはこの事件を8年後に自供している。彼は家の中の様子について、細部まで正確に記憶していた。
供述が当時の捜査記録と完全に一致したことから、キョンの犯行であることを疑う余地はなかった。キョンは
すべての犯行について驚くべき正確さで記憶していた。

79 名前:サイコパス ◆2hvhgO6UGM [] 投稿日:2007/07/30(月) 21:32:48.97 ID:1LzEajZD0

怪物の最後の願い

 キョンは、自己の歪んだ性的快楽のために平然と人間を殺した。何の慈悲も持ち合わせない冷血なけだもの。
彼は決して後悔しない。人間を殺してもうなされることもない。深夜、ハンマーで女性を殴り殺し性的絶頂感に
達したあと、何事もなかったかのようにハルヒとおなじベッドでぐっすり眠れる怪物──。
 2009年7月7日、キョンはギロチンで処刑された。
 キョンの最後の言葉は、つぎのように記録されている。
「鋭い鋼鉄の刃で、俺の首が胴体から切り落とされた瞬間、鮮血がピューッと噴き出る音を聞くことができたら、
これこそ究極のエクスタシーなんだが。やれやれ」

やっと終わったよー\(^o^)/疲れたww



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