【艦これ】 提督「瑞鳳に媚薬を飲ませてみた」 1 名前: ◆ZOMUybyhxg[sage saga] 投稿日:2014/07/24(木) 20:55:36.74 ID:27knkYjCo 媚薬の飲ませるSSを見てたらいてもたってもいられなくなったので、衝動的に書いてしまいました 途中から急に地の文が入りますが、そこだけご勘弁を 書き溜め済みですので、数分おきに投下します 2 名前: ◆ZOMUybyhxg[sage saga] 投稿日:2014/07/24(木) 20:56:38.98 ID:27knkYjCo 瑞鳳「提督、任務娘さんから今日の仕事貰ってきましたよ」 提督「うん、ご苦労だった。それで、今日の任務は?」 瑞鳳「今日の任務は……午前10時、午後1時にこの鎮守府近海を航行する輸送艦の護衛。あと、ここ最近深海棲艦の目撃情報が増加しているらしいから、『近海の警備を怠るな』って」 提督「ふむ、特に変わった任務はなし……と」 提督「そうだな……じゃあ、輸送艦の護衛には第1艦隊を当ててくれ。警備は、引き続き第3艦隊の子たちに頼んでくれ」 瑞鳳「ん、わかった。そういう風に言っておくわね」 提督「おう、頼んだ」 4 名前: ◆ZOMUybyhxg[sage saga] 投稿日:2014/07/24(木) 21:00:25.53 ID:27knkYjCo 提督「それにしても、今日は暑いなー。初夏の暑さとは思えんな。舐めてるとすぐ汗が出てくるよ」 瑞鳳「たしかに今日は暑いわね……そういえば、空調機とかつけないの? 司令室ぐらいつけてもいいのに」 提督「それがさ、お上の方が『暑さに強くなるため』とかなんとか言って、許可を下ろさないんだ。この鎮守府は学校かよ……」 瑞鳳「ひえー……それまた大変ね……」 提督「例年通りだと、空調機の使用許可が下りるのはもう少し先だからな。今年も例外はないってことだろう」 提督「そんな感じで、今は我慢しろってことだな。ったく……暑すぎて仕事に支障が出そうだよ」 5 名前: ◆ZOMUybyhxg[sage saga] 投稿日:2014/07/24(木) 21:05:49.86 ID:27knkYjCo 提督「汗がしたたりそうだ……。ん……瑞鳳はあまり汗かいてないのか?」 瑞鳳「私? 少しだけならかいてるけど……って、これ女の子に聞くこと?」 提督「おっと、それはすまない……。いやしかし、汗をかいたなら水分補給は必要だよな。うん、今日ぐらいの猛暑日なら、水分補給は必須だよ。うん」 瑞鳳「ん、確かに私もそう思うけど……言い方不自然すぎない……?」 提督「……そんな訳で、スポーツドリンクを作ったんだ。って言っても、粉を水で溶かすだけの簡単なやつだけどな」 提督「これを瑞鳳に進呈しよう。ほれ」 瑞鳳「あ、ありがと……う? んっ、冷たい……」 提督「凍らせておいたからな、今日の昼ごろには丁度良く溶けるはずだよ。喉が渇いたら飲んでくれ」 瑞鳳「そう……じゃあ、せっかくのご厚意だしありがたく貰ってくわ。ありがと!」 瑞鳳「それじゃ、持ち場に戻るわね!」 提督「おう、頑張れよ!」 6 名前: ◆ZOMUybyhxg[sage saga] 投稿日:2014/07/24(木) 21:09:01.42 ID:27knkYjCo 提督(よし、なんとか瑞鳳に媚薬入りの飲み物を渡したぞ……!) 提督(あれを口にするのは昼すぎだろう。だとしたら効果が出るのは、恐らく今日の夜か……) 提督(媚薬を混ぜすぎた感があるが……大丈夫だろうか……?) 提督(まぁやってしまったことを悔やんでも仕方がない。あとはなるようになるだけだな) 提督(しかし一体どうなるやら……少し怖くなってきたぞ……) 7 名前: ◆ZOMUybyhxg[sage saga] 投稿日:2014/07/24(木) 21:14:34.00 ID:27knkYjCo 台本ここまでです 地の文つきに移行します 8 名前: ◆ZOMUybyhxg[sage saga] 投稿日:2014/07/24(木) 21:20:40.87 ID:27knkYjCo  今日の報告書にひと通り目を通したあと、提督は壁に掛けられた時計の方へと目をやる。  針はすでに9の文字を過ぎていた。  提督の座る椅子後方に飾られた窓の、透き通ったカーテン越しに外の景色を見渡そうとする。だがとっくに日は落ちており、月光に照らされた夜空しか見ることができなかった。  今、期待と不安の両方が、提督の胸の中をぐるぐると駆け巡っている。どちらかといえば、期待のほうが大きいだろうか。  部屋の暑さを忘れるほどに、提督は緊張感のようなものを感じていた。  そろそろ瑞鳳が、この部屋へやってくる頃だ。  瑞鳳はどうなったのだろうか。そのことを考えながらでは仕事に手がつくわけもなく、提督はほとんどの仕事を明日に持ち越してしまいそうだった。  「心の準備をしておくかな」なんて提督が呑気な事を考えていると、コンコンと控えめな音が部屋に響く。 「提督、瑞鳳です……呼ばれた通り、来ました……」  扉越しに聞こえる声は先入観からだろうか、少しこもっていて、いつもと様子が違ったように聞こえた。  そのせいもあって反応に戸惑り、少しどもりながら提督が答える。 提督「あ、ああ……入っていいよ……」  少しの間が沈黙を作ったのち、徐々に扉が開かれる。   11 名前: ◆ZOMUybyhxg[sage saga] 投稿日:2014/07/24(木) 21:29:04.38 ID:27knkYjCo  こつこつと音を立てながらゆっくりと部屋に入る瑞鳳。明らかに具合がおかしい――。  おかしいと感じるのは提督だけだろうか。いや、恐らく誰の目にも明らかだった。  弱々しくも荒い息遣い。紅潮した頬。その澄み切った瞳には、うっすらと涙を浮かべている。  肩を大きく揺らしながら息を吸い、怠そうに、何かを発散させようとするかのよう、じんわりと息を吐く。  心なしか崩れた上着からは、白い肌が顔をのぞかせていた。  その上半身に滲んだ汗が、その姿をさらに艶めかしく演出している。  媚薬を盛ったという事実を知る提督だけが、それを理解できるのだろうか。誰が見ても、彼女が何かを求めていることは一目瞭然なのだろうか。  その様子に提督は息を呑む。姿を見ただけで脳が揺さぶられる。  この妖美な姿に、見惚れない男はいないだろう。提督も例外ではない。  如何わしさを振りまく彼女を、誰にも見せたくないとまで瞬時に思わせた。  時間にすればほんの数秒、数十秒の出来事だが、それ以上に時間が過ぎているのかと、脳が錯覚させていた。  瑞鳳を見つめながら固まる提督に、瑞鳳が困ったような表情で呼びかける。 瑞鳳「あの、提督……用事……って、なんですか……?」 提督「う……その、なんだ……報告書を作るのを手伝ってもらおうと、思って……だな……」  提督が瑞鳳に目を這わせる。その状況を作ったのが提督だったとしても、それを聞かざるを得なかった。 提督「それより……調子が悪そうだが……大丈夫か……?」 瑞鳳「その、なんだか……体がすごい暑くて……頭がふらふらするの……」  そう言いながら瑞鳳は潤んだ瞳で提督を見つめる。その吸い込まれそうな視線に、提督は頭がクラクラする。  今の提督の視界には、瑞鳳しか映っていなかった。   12 名前: ◆ZOMUybyhxg[sage saga] 投稿日:2014/07/24(木) 21:35:37.29 ID:27knkYjCo 提督「そ、そうなのか……」 提督「その、なんだ……そんな様子じゃ仕事も手につかないだろ……。報告書は俺一人で作るから、部屋のベッドで休んだらどうだ……?」  提督は部屋の隅に置かれたベッドへ目を泳がせる。  卑しい気持ちからではない。瑞鳳のあまりの変化に驚愕し、心の中で葛藤しながらも、提督は瑞鳳の身を案じることを選択した。  それに、この状態の瑞鳳を外へ出してしまうと、誰にどんな目で見られるかわからない。  提督だって男だ。今、この状況を少しの間だけ独占することを選んだ。 瑞鳳「うん、そうする……」  この提督の発言をどう受け取ったのか、瑞鳳はあっさりと承諾する。  しかし、瑞鳳は動く気配を見せなかった。 提督「どうした? 手伝いだったら本当に大丈夫だから、少し休んどけ」 瑞鳳「……歩くの辛いから、提督……連れてって……?」  うつむきがちに言葉を発する瑞鳳。  その台詞に、提督は言葉を詰まらせる。自らの心臓が恐るべき速さで鼓動しているのがわかった。  握りこんだ手が熱くなる。何かを抑えこむように、呼吸を荒らげる。  もう一度確認するように、「いいのか……?」と提督が尋ねると、瑞鳳はゆっくりと頷いた。  瑞鳳の側に提督が立つ。すると瑞鳳はゆっくりと右手で提督の手を掴み、もう片方の手で軍服の裾を優しく握る。そして肩を、自ずと提督の方へ寄せる。  雪のように白い肌が提督の手と重なる。その光景に、提督は固唾を飲む。  瑞鳳の手から温もりを感じる。提督の体温は上昇していたが、それ以上に、瑞鳳は火照っていた――。   13 名前: ◆ZOMUybyhxg[sage saga] 投稿日:2014/07/24(木) 21:42:04.83 ID:27knkYjCo 提督(まいったな……こりゃ完全にやりすぎた……)  提督が徐々に足をベッドへ向かわせると、その後を追うように瑞鳳がついてくる。  瑞鳳と二人きりの空間。いつもなら、他愛ない会話が提督の口から飛び出すことだろうが、今はそれが出てこない。出せなかった。  自身の手を掴みながらついてくる瑞鳳の顔を、提督は見ることが出来ない。  だが、その彫刻のように繊細な、白い手から伝わってくる緊張や、不安を感知することはできた。  提督がベッドに辿り着くと、提督の手を握ったままの瑞鳳は躊躇いがちに、手をゆっくりと離す。  ベッドに腰を下ろした瑞鳳。それを見届けた提督は、自身の何かを振りほどくように、元の場所へ戻ろうとする。  提督が瑞鳳に後ろ背を見せると、瑞鳳が口を開いた。 瑞鳳「提督も……ベッド……座って……」 提督「う……」  その言葉を聞いた提督は拒否することができなかった。  一度は落ち着きを取り戻した心臓の鼓動が、再び早まる。  操り人形のように体を動かす提督。ゆっくりとベッド――瑞鳳の隣に腰を下ろす。  二人の間に沈黙が流れた。提督は瑞鳳の方を向くことができない。  瑞鳳が再び提督の袖をぎゅっと握りこむ。  先に沈黙を破ったのは瑞鳳だった。 15 名前: ◆ZOMUybyhxg[sage saga] 投稿日:2014/07/24(木) 21:48:44.94 ID:27knkYjCo 瑞鳳「やっぱり今日の私、なにかおかしいよね……こんな風になっちゃって……提督も、困ってるよね……?」  上目遣いで瞳を潤わせながら提督を見つめる瑞鳳。提督は心ここにあらずだった。  提督が硬直していると、瑞鳳がゆっくりと、自らの体を提督の方へと寄せる。  瑞鳳と提督。二人の衣服が擦れあう音が、部屋の空気を変える。その音で、提督ははっと我に返った。 提督「そ、そうだな……今日のお前は様子が変だ……! だから早く休んだほうが――」  提督の言葉を遮るよう、瑞鳳がその身を提督の胸へとうずめた――。 瑞鳳「体の、奥が……あついの……」  またたびに酔う猫のように、その体を提督に擦らせる。  しっかりと整えられた灰茶色の髪が、提督の顔を掠める。シャンプーのいい匂いが提督の鼻を包んだ。  目の前に居るのが男だということを認識しているのだろうか。襟から胸元にかけて服がはだけ、その綺麗な肌が空気に触れていた。しかし、瑞鳳が気にする様子はない。 瑞鳳「んっ……こうしてると……頭が……真っ白になって……」 提督「瑞鳳ッ……! それはまずい……!」  瑞鳳は体を擦るのをやめない。  その行為によって何かが吹っ切れてしまったのか、体を擦らせる瑞鳳の口から、吐息が嬌声となって提督の肩にかかる。  すでに、瑞鳳は提督に抱きつくような形になっていた。優しく、それなのにしっかりと瑞鳳が提督を抱きしめるたび、服から白く透き通った肌がこぼれた。   16 名前: ◆ZOMUybyhxg[sage saga] 投稿日:2014/07/24(木) 21:55:43.56 ID:27knkYjCo 瑞鳳「提督……んっ……好き……」 提督「ッ……! 今なんて……」  提督は心臓が飛び出しそうになる。脳が段々と思慮を破棄していくのがわかった。  この溢れ出る感情に、身を委ねてしまいたい。  その光景をただ見つめる提督は、またしても激しい葛藤に襲われていた。  激しい感情の波が、脳内を行ったり来たりしている。もう提督は、自分の体を押さえつけるのが精一杯だった。  そんな提督を知ってか知らずか、瑞鳳はお互いの汗を交じり合わせるかの如く、さらに体を密着させようとする。 瑞鳳「んっ……好き……大好き……」  瑞鳳が甘くささやく。  提督の手が震える。我慢の限界だった――。  瑞鳳を強く抱きしめたい。抱きしめて自分の物にしてしまいたい。瑞鳳は拒まないだろう。  それができたら、どれだけ心が満たされるだろうか。そもそも、今ここでそれをしたとして、咎める者は誰もいない。  事実を知るのは提督と瑞鳳だけなのだ。真実を知るのは提督だけなのだ。  今すぐ瑞鳳を抱きしめ、そっと体を押し倒せばそれで終わりだ。  提督はおもむろに、その手を瑞鳳の腰へと伸ばしていく――。   17 名前: ◆ZOMUybyhxg[sage saga] 投稿日:2014/07/24(木) 22:02:00.58 ID:27knkYjCo  しかし、寸前のところで提督は手をとめた。  それはできない――。  やってはいけないと、僅かに働く脳が呼びかけている。瑞鳳の口から漏れたものが嘘偽りなかったとしても、今は駄目だと――。  信頼を裏切るなと、心の声が提督の頭の中を走り回った。  伸ばしかけた手の首を、もう片方の手で掴むと、提督が大きく深呼吸をする。  ゆっくり手首を離し、瑞鳳の肩を優しく抱き寄せると、そのまま自分の崩れた衣服を整えた。 提督「今夜起こったことは全部夢だったんだ、忘れた方がいい。すまなかったな、瑞鳳」  提督は顔を極限まで瑞鳳に近づける、そして――。  その頬に、口づけをする――。  ピクリと体を動かした瑞鳳。小さく声を漏らすが、拒絶しなかった。  司令室は無音に包まれている。この空間だけ、時間が止まっているかのようだった。  瑞鳳は動かない。提督の行動を待っているようだった。提督は無言のまま、そっと口を離す。  乱れた瑞鳳の服装を、軽く整えてやる。それだけで瑞鳳は理解したようだった。  今の提督にはこれしかできなかったが、これで十分、満たされている。瑞鳳はどうかわからないが、これでどうか勘弁願いたかった。 提督「……ベッドは好きに使っていいから、今日はここで寝てくれ。きっと明日には良くなってるさ」 瑞鳳「……提督は、どこで寝るの……?」 提督「俺は床さえあればどこでも寝られるから、大丈夫だ。……っとそうだな、今夜は暑くなるし床だけで寝るのはちょっとキツイか。よし、空調機もこっそりつけとこう。もし寒くなったら言ってくれよ」 提督「今から俺は報告書を作るから、瑞鳳は勝手に寝ててくれ。体が怠いのは……どうにか我慢してくれ……」  再び心に迷いが生じないよう、まくし立てるように話す提督。提督の言葉に、瑞鳳は素直に従った。 瑞鳳「うん、わかった……じゃあ今日は、提督のベッド……借りるわね……」  その消え入りそうな声を背中で聞き入れ、提督は机へと戻っていった。   18 名前: ◆ZOMUybyhxg[sage saga] 投稿日:2014/07/24(木) 22:10:02.38 ID:27knkYjCo 提督「ふぃー……報告書完成、っと……」  仕事を終えた提督は壁の時計に目を向ける。  深夜0時を回っていたが、大量の書類を相手にするには、まぁこんなものかと言ったところで、大した感情は生まれてこなかった。  提督はベッドへと視線を移動させる。瑞鳳の眠りを妨げないよう、部屋を机のスタンドのみで照らしていたので、明かりは薄暗く、ここからは瑞鳳の顔を見ることができなかった。  提督は立ち上がり、ベッドへと向かう。 瑞鳳「んぅ……すぅ……すぅ……」  そこに瑞鳳が居ることを確認する。どうやら眠ることができたようだ。  少し乱れたその服から、チラリと白い肌が見えた。  すやすやと寝息を立てていることを確かめると、提督は自らの軍服を脱ぎ、肌を隠すよう、優しく瑞鳳に羽織らせる。  もう瑞鳳に異変はないようだった。そのことがわかると、どっと疲労と眠気がこみ上げてくる。 提督「まさかあんなことになろうとは……本当にすまなかったな……」 瑞鳳「ん……」  提督は静かに呟く。瑞鳳の額に流れる汗をそっと手で拭うと、無防備な頬にまたしても口づけをしようとしたが、一歩手前のところでやめた。  そのままベッド隣の床下に座り、ゆっくりと体を倒す。ほんのり冷たい床が、気持ちよかった。  空調機がごうごうと鳴っている。その音は、提督の耳には入らない。  ほっと一息ついて目を閉じると、提督の意識は少しづつ闇に包まれていった。   19 名前: ◆ZOMUybyhxg[sage saga] 投稿日:2014/07/24(木) 22:18:11.91 ID:27knkYjCo  固い床の感触を体に浴び、提督はゆっくりと目を覚ます。  体を起こすと、瑞鳳に掛けたはずの軍服が、上半身からひらりと落ちた。  しわしわになったそれを拾いながら提督は立ち上がる。提督は立ち上がるとほぼ同時にベッドを見た。  瑞鳳の姿がない。それに、ベッドのシーツが外されている。多分、自分が使用した事を気にして、洗濯をしに行ったのだろう。  別にそんなこと気にしなくてもいいのに。と提督は思ったが、彼女も女の子だ。やっぱり気になるのだろう、と一人で納得する。  そんなことを考えていると、司令室の扉が開かれ外から瑞鳳が入ってきた。  瑞鳳の様子は、昨日とは打って変わって普段通りのようだったが、提督の顔を見るなりほんのりと頬を赤らめる。 瑞鳳「うぅ、その……おは、よ……」  伏目がちに挨拶をする瑞鳳。何故かそれだけで提督はドキリとする。 提督「昨日のことは気にするな……悪い夢だったんだよ」 瑞鳳「き、昨日の……あぅ……」  昨晩の出来事を思い出したのか、瑞鳳の顔が火を噴き出しそうなほど真っ赤になる。  それを見た提督も、昨晩のことが走馬灯のように蘇る。  提督の身体に重ねられる瑞鳳の綺麗な手。白い肌。甘い表情。艶めかしい息遣い。  また心臓の鼓動が早まりそうになり、無理矢理心を落ち着かせる。  気まずい空気を振り払うように、提督が声を出す。 提督「とっ、とにかく! 早く忘れた方がいい!」  取ってつけたような態度になってしまったが、瑞鳳も昨日のことはあまり思い出したくないのか、それに同調する。 瑞鳳「うん……! そ、そうね!」  瑞鳳は自分の感情を吹き飛ばすかのように、すぅーと深呼吸をすると、何度か瞬きしたあとに、いつも通りの調子で提督に語りかける。 瑞鳳「それじゃ、今日の任務を聞いてきたから、それを教える……前に……」   20 名前: ◆ZOMUybyhxg[sage saga] 投稿日:2014/07/24(木) 22:23:37.73 ID:27knkYjCo  瑞鳳は提督をまじまじと見つめる。それに釣られ、提督は自分の外観に目をやった。  寝起きのせいか服が着崩れていて、だらしない格好をしていることに気づき、急いで服装を整える。  それを見ていた瑞鳳がくすりと笑った。まだ本調子ではないかもしれないが、だいぶ調子は元に戻ったようだ。 提督「よし……と、これで問題ないか? じゃあ、よろしく頼む」 瑞鳳「わかりました! 今日の任務は――……」  いつもと同じように瑞鳳が伝える。それ対し、提督もいつも通り返す。  昨日の朝おこなった会話と同じやりとりが交わされる。 瑞鳳「ん……これで朝の報告は終わりだけど……」 瑞鳳「……提督、ちょっと止まってて――」 提督「ん? わかったけど……」  報告を終えた瑞鳳が、急に提督の側へと歩き出す。  一歩一歩何かを考えながら歩いているようなその姿に、自然と提督の目がいく。  目の前まで行くと、瑞鳳は提督と目を合わせる。なにを考えているのか、提督にはわからない。 瑞鳳「その……椅子に、座って欲しいんだけど……」 提督「ああ……」   21 名前: ◆ZOMUybyhxg[sage saga] 投稿日:2014/07/24(木) 22:30:47.19 ID:27knkYjCo  促されるように椅子に座る提督。目線が瑞鳳より低くなる。  提督を座らせた瑞鳳は、まだ何かを思い悩んでいるようだった。  瑞鳳は深呼吸を一回すると、顔を提督の顔へとぐっと近づける――。  瑞鳳の穢れのない瞳が、目と鼻の先にある。その表情は、何かを決意している。  提督が言葉を発しようとすると、それを阻止するかのように――瑞鳳が言葉を重ねる。 瑞鳳「これは、ゆうべのお返し――ちゅっ……」  唇と唇が重なりあう――。  柔らかい感触が、提督を包む。  突然の出来事に提督は表情が固まり、状況を瞬時に理解できない。  だが、やがてそれを理解すると、提督は目を丸くする。文字通り目の前には、目を閉じたまま顔を真っ赤にする瑞鳳がいた。  唇を合わせるだけの軽いキス。それなのになぜか甘い香りがする。  心拍数が上がる――。すべての血液が逆流しているように感じた。体を動かそうとしたが、脳がそれを拒否した。  脳がアドレナリンを分泌する。それはほんの一瞬の出来事だったのかもしれないが、永遠にも感じる時間が流れた――。   22 名前: ◆ZOMUybyhxg[sage saga] 投稿日:2014/07/24(木) 22:35:56.34 ID:27knkYjCo  やがて瑞鳳はその唇を離し、くるりと踵を返すと、無言のまま歩き出す。  その光景を呆然と見守る提督。瑞鳳は扉の前まで立つと、ふわりと振り返り、火照った顔を提督に向ける。 瑞鳳「それじゃ、仕事に戻るわね……じゃあね、提督」  言い終わると、瑞鳳は司令室をあとにする。この一件は、これで終わりだと言わんばかりだ。  一人になったところで、ここまで放心状態だった提督の脳が徐々に時間を取り戻す。  手に力が入らない。脳が揺れている。呼吸も荒くなっていた。体全体が、瑞鳳の虜となっている。  五感が震えていた――。儚く消えてしまいそうな出来事を前に、湧き上がる熱情が全身を駆け回っていた。  この感情が過ぎ去ってしまう前に、その一部始終を脳裏に焼き付けようと、脳が勝手に働きかける。  早まった鼓動を抑えきることができない提督は、一人虚空に向かって呟く。 提督「瑞鳳……そりゃ反則だろ……」  結局、その日以来瑞鳳がそれに触れることはなかった。  またいつも通りの瑞鳳と、いつも通りの提督になる。  本当にあのキスが夢であったかのように、簡単にそれは、遠い出来事になってしまいそうだった。  変わらぬ日々。あっさりと元の関係に戻る二人。別にそれでも提督は構わなかった。  一つ変わったことがあるとすれば、二人っきりの時間が、心なしか増えたことぐらいだろうか。 ――完   23 名前: ◆ZOMUybyhxg[sage saga] 投稿日:2014/07/24(木) 22:39:12.65 ID:27knkYjCo 以上で投下終了です 本当はエロいのが書きたかったのですが、今の技量では不可能だと思い断念しました・・・ 拙く短い文章でしたが呼んでくださりありがとうございました