金剛「テートクのハートを掴むのは、私デース!」瑞鶴「!?」 1 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 01:35:38.32 ID:+zkL4m9C0 今日から君がこの鎮守府の提督だ。 ──なんで私なんだ。 良い働きを期待しているよ。 ──嫌だなぁ……。 ────── ──── ── 提督「鎮守府に着任する。これより、艦隊の指揮を執る」 電「は、はい! よろしくお願いします、司令官さん!」 電(このお方が電の司令官さん……。若い男性ですが、少し小柄ですね) 電(でも司令官さん、目に光が無いのです……大丈夫なのでしょうか……) 提督「……うん?」 電「どうか……なされましたか?」 提督「他の艦船はどうした」 電「え、えっと……電、だけですよ?」 提督「……は?」 電「ですから……その……この鎮守府に居る艦船は、電だけですよ?」 提督「…………」 提督「駆逐艦一隻で……」 電「は、はい?」 提督「どうしろってんだクソがああああああッッッ!!!!!」 電「ひぃ!?」 拝啓、亡き父と母へ。 私の死亡先は海のようです。 2 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 01:45:20.89 ID:+zkL4m9C0 電「はう……はわわわ……あぅぅ……」 提督「──あ。ああ、すまん。取り乱した」 電「びっくりしたのです……」 提督「だが、駆逐艦一隻でどうしろと。なんだ? 爆弾積んで敵母港に神風特攻か?」 電「ち、違います違います!! 建造したり海で拾ったりして仲間を集めるのです!」 提督「……は?」 電「え、えっと……ですから──」 〜駆逐艦説明中〜 電「──というコトなのです」 提督「便利だな、これ→」〜駆逐艦説明中〜 電「はい?」 提督「いや、こっちの話」 提督「まあ、やる事は分かった。最初に頂いた資源もあるし、まずは建造でもするか」 電「はいなのです」 3 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 01:51:44.45 ID:+zkL4m9C0 電「……でも、どうして建造なのですか? 海で拾ってきた方が、消費資材が少ないと思うのですが……」 提督「…………」 電「あ……すみませんすみません! 司令官さんに意見をするなんて──」 提督「いや、気にしなくて良い。これからも意見は言ってくれ。私一人の考えでは足りん所もあるからな」 電「え? は、はい」 電(見た目と違ってマトモなお方……なのです) 提督「さぁて、各資材はこんくらいでいいか。頼んだ」 妖精「え、これマジで?」 電「?」 提督「構わんよ。やってくれ」 妖精「まあ、提督が言うのなら……」ガッチャガッチャ 電「あの……資材はいくらご投入を?」 提督「オールナイン」 電「え?」 提督「上限いっぱいとも言う」 電「ええええええええええええええ!!?!」 4 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 02:05:41.13 ID:+zkL4m9C0 電「な、何をやってるのですか司令官さん!? 貴重な資源がぁ!!!」 提督「構わんよ」 電(えええ……司令官さん、本気ですか……? 身動き取れなくなっちゃいますよ……?) 電「まともじゃなかったのです……」 提督「よく言われる。ああ、バーナーも使っちゃって」 電「うう……本当に大丈夫なのでしょうか……」 妖精「あたしシーラネ」ゴォォォ 〜新しい船が出来ました〜 提督「ほう」 電「あわ……あわわわわ……」 金剛「英国で生まれた、帰国子女の金剛デース! ヨロシクオネガイシマース!」 金剛「貴方が提督ですカー?」 提督「ああ。これからよろしく頼む」 金剛「ィエース! 私にまっかせてクダサーイ!」 5 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 02:12:20.85 ID:+zkL4m9C0 金剛「そちらのレディのお名前は?」 電「あっ。い、電と申します。金剛さん、これからよろしくお願いします!」 金剛「ハイ! 私の実力、見せてあげるネー!」 金剛「ところで、他の艦娘たちはドコですか?」 提督「いや、この鎮守府は君たち二人しか艦娘は居ないよ」 金剛「……ホワッツ!? どういう事ですカ!?」 電「あの……司令官さんは今日、着任されたばかりなのです……」 電「そして、初めての建造で金剛さんが進水されたのです」 金剛「……と、いうことは資材は」 電「雀の涙しか残ってないのです……」 金剛「Oh……」 金剛(私……来る鎮守府を間違ったのカモしれません……) 提督「では、二人共。早速ですまんが、すぐに出撃準備をしてくれ。旗艦は金剛に任せる」 金剛(大丈夫なのでしょうカ……私達……) 10 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 02:20:30.09 ID:+zkL4m9C0 〜鎮守府正面海域〜 電「あ、あの……司令官さん?」 提督「うん?」 電「ど、どうしてついてきたのですか? 危ないですよ……?」 提督「お前達が戦場に出ているのに、上官である私が安全な場所でのうのうとするのは嫌だ」 提督「それに、無線だけでは分からないモノもある。的確な判断を下すなら前線に立つべきだ」 金剛(言ってる事はマトモなのですガ、そもそもテートクが居なくなったら私達もどうしようもできないデス……) 提督「そら、敵さんのお出ましだ」 金剛・電「!」 提督「総員、戦闘準備。敵影から見るに駆逐艦一隻だが気を緩めるな」 提督「金剛、砲塔をそのまま左に20°調整」 金剛「え?」 提督「敵が射程内に入り次第そのまま斉射」 提督「電はそのままでいい。もし第一射が外れたら撃つから準備だけしておけ」 電「は、はい!」 金剛「わ、わかりマシタ!」 11 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 02:30:14.87 ID:+zkL4m9C0 提督「──今だ。金剛、テーッ!!」 金剛「ファ、ファイヤー!」 ロ級「ヒャhhバゴォォン! 轟沈 金剛「おお……」 電「す、凄いのです司令官さん! 金剛さん!」 提督「気を抜くなと言ったはずだが?」 電「あっ──」 提督「沈みたいのか、電」 電「ご、ごめんなさい!!」ビクッ 提督「……分かれば宜しい」 電「あ……」ナデナデ 電(温かい……。司令官さん……変な人で、厳しいけど優しいのです) 提督「…………倒した敵艦から何か浮かんでるな」 金剛「あれは……艦娘のデータですネ。持って帰って実体化させまショー!」 提督「なるほど。だから『拾ってくる』か」 提督「私が回収する。金剛、電は周囲に敵が居ないか索敵をしてくれ」 提督(……敵艦から艦娘のデータが出てくる、か) 提督(まるで艦娘が沈んだのが深海棲艦みたいじゃないか……) 14 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 02:50:24.47 ID:+zkL4m9C0 金剛「むっ! テートク! 2時の方向から敵艦が来ますヨ!」 提督「! 数と艦種は」 金剛「軽巡が一隻と……駆逐艦が二隻デス!」 提督「そうか。連戦になるな」 提督「二人共、まだいけるよな?」 電「い、電は全然大丈夫なのです!!」 金剛「テートクのおかげでピンピンしてるヨー!」 提督「良い返事だ。戦闘準備に入れ」 金剛・電「ハイ!」 提督「……なんだあれは。一隻だけ突出してきたぞ」 提督「金剛、さっきは細かく指示をしたが……狙えるか?」 金剛「イエース! この距離ならまず外しまセーン!」 16 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 03:07:54.24 ID:+zkL4m9C0 提督「よし。金剛、テーッ!!」 金剛「ファイヤー!」 イ級「ひぃぃッッハアアアア!!!」ヒョイ 金剛「なァッ!?」 提督「チ。避けられたか。よく見てやがる」 提督「電は突貫してくる敵艦を撃て。金剛は奥の軽巡だ」 提督「避ける事も考えて前門と後門で時間差で撃つんだ」 電「電の本気を見るのです!」 イ級「オウフ!」ボゴォン! 中破 後方イ級「!」サッ ドォン! 大破 電「あ、当たったのです!」 金剛「ノー! 敵旗艦を庇われまシタ!」 提督「だが、速度を維持できなくなったみたいだな」 17 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 03:22:14.49 ID:+zkL4m9C0 提督「敵から砲撃がくるぞ。総員、衝撃に備えよ!」 電「はわわわわ!!」miss 金剛「シット! 至近弾!!」3ダメージ 提督「反撃だ。奴等の息の根を止め──!?」 提督「チッ……金剛は5時の方へ砲撃! 電は敵旗艦になんとしても当てろ! 挟まれた!!」 金剛「なんですッテ!?」 電「ひぃ!」 駆逐ハ級「奇襲はいいものですたい」 金剛「なんて奴ネ! 主砲、砲撃開始!!」 駆逐ハ級「俺は不可能を可能にsバガァァン! 撃沈 軽巡ホ級「まだだ……まだ終わらんよ!」小破 電「だ、ダメです司令官さん! 止めれません!!」 提督「もう雷撃距離か……。金剛は敵軽巡へ全門斉射。電は魚雷と主砲を残りの駆逐艦へ撃て」 提督「相手の錬度は低いが、気を引き締めろ」 18 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 03:47:20.23 ID:+zkL4m9C0 金剛「バーニング──ファイヤー!!」 電「な、なのです!」 軽巡ホ級「馬鹿なぁ……ありえん……有り得んぞぉ!!!」 撃沈 駆逐's「「へべれげッ!」」 撃沈 提督「……周囲に敵影はあるか?」 金剛「──ノー。反応無いデス」 電「…………電の方も何も反応ないです!」 提督「よし……戦闘終了。二人共よくやってくれた」 金剛「……テートク」 提督「うん?」 金剛「ごめんなさい……」 提督「……話が見えないんだが?」 電「? ……?」 金剛「……出撃の際、私はテートクが前線に来るのを見てミステイクだと思いまシタ」 金剛「でも、テートクが指示を出してくれなかったら今頃、私達がこうして居られたかどうか怪しかったデス」 金剛「だから、ごめんなさいテートク」 電「金剛さん……」 19 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 03:55:33.92 ID:+zkL4m9C0 提督「気にするな。ここは鎮守府の正面海域。そして初出撃だ。気が緩むのも無理はないだろう」 金剛「でも! それでも私は……間違っていました……。下手をしたら、私達はロストしていたのかもしれまセン……」 提督「……分かった。その件については後で処罰を行う。今は母港に帰ろう」 提督「こうして生きて帰れるのも、二人が居るからこそだ」 金剛「テートク……」 電「司令官さん……」 提督「さて、では帰ろう。だが、索敵を怠るなよ?」 金剛・電「──はいっ!」 20 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 04:04:51.26 ID:+zkL4m9C0 〜母港〜 提督「二人共、燃料と弾薬を補充。そして金剛は風呂を済ませた上で私の部屋に来るように」 金剛・電「ハイ!」 金剛「って、テートク? どうして入渠なんデスカ?」 提督「至近弾を貰っていただろ、金剛」 金剛「でも、資材が……」 提督「足りるだろう?」 金剛「あ、あの……掠り傷ですカラ、私はまだまだ大丈夫デ──」 提督「金剛」 金剛「サ、サー!」ビクッ 提督「私の命令が聞けないと? それとも慢心してそのまま出撃し、沈みたいという願望でもあるというのか?」 金剛「ノ、ノー! 違います! 私はただ──」 提督「異論は認めん。例え掠り傷であったとしてもしっかりと修理をする事」 提督「……その傷が原因で沈んだら、後悔してもしきれなくなる」 提督「指示は以上だ。各員、指示が遂行次第、休息を取るように」 電「は、はい!」 金剛「……はい」 21 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 04:20:07.09 ID:+zkL4m9C0 〜提督室〜 コンコン──。 提督「入れ」 金剛「……金剛、出頭しまシタ」 提督「そうか。少し待っててくれ」 金剛「…………? 何をしているんデスカ?」 提督「報告書だ。先の戦闘での戦果と被害、そして新たに手に入った駆逐艦二隻の進水とかのな。進水は明日だが」 金剛(……出会った時も思いましたケド……テートクは、なぜ死んだ目をしているのでしょうカ) 提督「待たせた。すまない」 金剛「い、いえ!」 提督「そうか。では早速、本題に入らせてもらう」 提督「金剛、お前は私の行動が間違っている思っていた……と言っていたな?」 金剛「……ハイ。ごめんなさい……」 提督「気にするなと言っただろう?」 金剛「それはダメです! それでは、いつかテートクを軽視する者が出てくると思いマス!!」 金剛「だから、ケジメは大事デス!」 提督「……ふむ。確かにそうだな」 22 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 04:32:05.10 ID:+zkL4m9C0 提督「……………………処遇を決めた」 提督「金剛、お前を私の私欲に使わせてもらおう」 金剛「────!! ハ……イ……」 金剛(そうデス……テートクも年頃の人デス……) 金剛(本当はディスライクですが、これもケジメ、デス)ギシッ 提督「どこへ座っている。こっちだ。椅子だ」 金剛「……ホワイ?」 提督「いいから、ベッドではなくこっちだ」 金剛「……?」チョコン 提督「じっとしていろよ」 金剛「……あのー、テートク?」 提督「んー?」 金剛「なんで、私の髪をブラッシングしてるのデスか?」 提督「処遇」 金剛「処罰じゃないんですか?」 提督「じゃあこれが罰だ。私への不敬と私への助言。二つ合わせて+-0といった所だろう」 23 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 04:50:23.56 ID:+zkL4m9C0 金剛「では、なぜブラッシング?」 提督「金剛の髪を梳きたかったから。言っただろう、私欲に使わせてもらうと」 金剛「プッ……アハハハ!」 提督「どうした、何がおかしい」 金剛「だって、これじゃあ罰にならないじゃないデスカ」 金剛「私、ブラッシングされるの好きですよ」 提督「そうか。じゃあこれからもブラッシングをして良いか?」 金剛「もっちろんデース!」 金剛(テートクのブラッシング、とっても優しくて丁寧デス……気持ち良いネ) 提督「だが、あまり男に髪を触らせるんじゃないぞ?」 金剛「何を言ってるんですか、テートク」 金剛「私、誰にでも触らせる訳じゃありませんヨー?」 提督「……そうか」 24 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 05:02:36.72 ID:+zkL4m9C0 金剛「ハイ♪ テートクだからデス!」 提督「……そうか」 金剛「むー……。反応が薄いデース……」 提督「ほら、ブラッシングは終わりだ。しっかりと休息を取るように」 金剛「ぅー……もうちょっとしてほしかったデース……」 提督「あと三十分もすれば食堂が閉まるが?」 金剛「そ、それはテリブルです! テートクも急ぎましょう!!」 提督「あっこら! 私はまだ仕事が──」 金剛「体調管理も仕事の内デース! 栄養をしっかり取らないと、指揮できなくなりマスヨ?」 提督「……そうだな。食堂へ行こう」 30 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 13:23:00.34 ID:uKhsAYXN0 〜食後、提督室〜 提督「ふぅ……。さあ仕事だ」ギシ 金剛「ハイ!」 電「なのです!」 提督「……ところで、どうして二人がここに?」 電「秘書なのです!」 金剛「テートク、私達も手伝いマース!」 提督「ああ……そうか。まだ秘書を任命していなかったな」 提督「だが、秘書は一人しか付ける気がない」 金剛「それじゃあ、どっちか一人デスカ?」 提督「そうなるな」 提督(さて……どっちに任命するべきか……) 提督(…………フタフタサンマル)チラッ 提督「よし。二人共、そこのソファーに座ってくれ」 提督「そのまま私から命令があるまでジッとしている事」 金剛・電「?」 31 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 13:47:18.80 ID:uKhsAYXN0 〜十分後〜 電「…………」コックリコックリ 提督(ふむ、やはり船を漕ぎだしたか) 金剛(あ、ナルホド。まだ幼い電には眠い時間ネ) 電「!!」フルフル 提督「…………」ジッ 電「!!!」ハッ 提督「…………」 電「……………………」ビクビク 提督「電、明日の為にゆっくり休んできなさい」 電「うぅ……ハイ……」トボトボ 提督「ああそうだ、電」 電「……?」 提督「今日一日ご苦労。また明日も私に力を貸してくれ」ナデナデ 電「!」 金剛「!!」 電「ハ、ハイなのです! 司令官さん、金剛さん、お先に失礼します」 ガチャ──パタン 32 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 14:16:14.42 ID:uKhsAYXN0 提督「さて、金剛。正式に任命する。私の秘書となり、サポートしてくれ」 金剛「…………あのぅ」 提督「うん?」 金剛「私も……撫でてもらって良いデスか?」 提督「秘書になってくれるのなら」 金剛「ハイ! なります! 高速戦艦金剛、提督の秘書の命、受け取りました!!」 提督「うむ。よろしく頼む」ナデナデ 金剛「はうぅ……」 提督「それでは仕事だ。時間が押している。書類の左上に提出先が書いてあるから、それを分けてくれ」 金剛「ハイ! 任せてくだサーイ!!」 提督「ああすまん。その前に」 金剛「?」 提督「紅茶を淹れてくれ。金剛も喉が渇いたんじゃないか?」 金剛「! 分かりました! 紅茶はとっても得意デース♪」 提督「期待しているよ」 …………………… ………… …… 33 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 14:37:13.62 ID:uKhsAYXN0 金剛「テートクー、日付が変わりましたヨー」 提督「ん、もうそんな時間か」 提督「金剛、君はもう休んで構わない。ご苦労だった」 金剛「……テートクは?」 提督「私はまだやらねばならない仕事がある。ほら、そこの書類の束とかな」 提督「金剛のおかげで山から盆地くらいにはなった。これからも頼む」 金剛「……終わるまで手伝ってはイケマセンか?」 提督「ならん。体調管理も仕事の内なのだろう?」 提督「朝になったらまだやっていない事を──ああ……失敗した」 金剛「? テートク?」 提督(電に起床時間を伝えるのを忘れていた。参ったな……方法は無くもないが、あまりやりたくない) 金剛「?」 提督「いや、気にするな。独り言だ」 金剛「あの、テートク……私に何か出来る事はアリマセンか?」 提督「……どうした?」 金剛「私、もっとテートクの役に立ちたいデス! だから、何か指示を下サイ!」 提督「……そうか」 提督「じゃあ就寝しろ。起床はマルロクマルマルだ。マルロクサンマルまでに提督室へ来るように」 金剛「ええええええええええ!!!? テートクーッ!!??」 34 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 14:56:59.09 ID:uKhsAYXN0 提督「お前はこの小さな鎮守府の最重要艦だ。そして明日も朝から新しい事をする。早めに寝てくれないと困るのだよ」 金剛「ウ。ううー……分かりまシタ……」 金剛「……テートクもしっかりスリープして下さいヨ?」 提督「約束する」 金剛「…………一緒にスリーピングしても──」 提督「金剛」 金剛「ソ、ソーリー!! お先に失礼します!!!」 提督「ああ、おやすみ」 金剛「良い夢を!」 ガチャ──パタン 提督「…………小さなミスは数多く、大きなミスは三つ」 提督「一つ、各資材を浪費した事」 提督「一つ、電に中破した駆逐イ級ではなく軽巡ホ級へ攻撃させた事」 提督「……一つ、金剛に必要以上に気に入られてしまった事」 提督「……やり辛くなるな」 35 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 15:07:19.47 ID:uKhsAYXN0 〜翌朝〜 提督「電、起きているか」コンコン ……………………。 提督「…………」コンコンコン 電『わひゃあ!? はっはい!! どなたですか!?』 提督「私だ。起きたか?」 電『し、司令官さん!? ご、ごめんなさい! 寝過ごしてしまいました!!』 提督「いや、起床時刻を伝えていなかった私のミスだ。それに、寝過ごしてはいないから安心しておけ」 電『は、はい……ありがとうございます……』 提督「三十分後のマルロクサンマルに提督室へ来るように。今日進水する駆逐艦達を紹介する」 …………………… ………… …… 36 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 15:18:19.83 ID:uKhsAYXN0 提督「今日進水した二隻の駆逐艦を紹介する」 雷「雷よ。カミナリじゃないわ。そこのとこもよろしく頼むわね!」 響「響だよ。その活躍ぶりから、不死鳥の通り名もあるよ」 電「雷ちゃん! 響ちゃん!」 金剛「知り合いデスか?」 電「はい! 姉妹艦なのです!」 雷「元気みたいね! 良い事よ!」 響「見た所、暁は居ないみたいだね。すぐに会えるかな」 提督「安心しろ。すぐとは言わないが、見つけよう」 雷「さっすが司令官! 頼りになるわ!」 響「司令官、スパスィーバ」 金剛「…………」 提督「そんなに悲しそうな目で見るな。どれくらい時間が掛かるか分からんが、金剛の姉妹艦も見つけるよ」 金剛「……約束デスよ?」 提督「ああ、約束だ」 37 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 15:40:12.18 ID:uKhsAYXN0 金剛「──アハッ。センキュー、テートク♪」 提督「…………」 金剛「?」 提督「さて、と。進水して間もないんだが、君たち駆逐艦は遠征してもらう」 金剛(テートク、一瞬だったけど……すっごく悲しそうな顔してた……) 雷「遠征?」 響「資源はとても大事だからね。遠征で資源を拾ってこなければ、すぐに枯渇してしまうだろう」 提督「…………」 響「? 司令官?」 電「あの……あ、あの……」 電「……既に、ほとんど枯渇状態なのです」 雷・響「……え?」 38 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 15:55:20.40 ID:uKhsAYXN0 〜駆逐艦説明中〜 雷「オールナインって……」 響「どうしてだい、司令官?」 提督「深い意味は無い。強いて言うなら、直感だな」 提督「だが、そのおかげで金剛が早期にここへ来てくれた」 金剛「ヨロシクね!」 響「……司令官、ちょっと良いかな」 提督「許可する」 響「見た所、母港もまだまだ小さい。そして資材は枯渇寸前と聞く」 響「戦艦である彼女をまともに運用できるのかい?」 金剛「────っ」ビクッ 提督「できんよ」 金剛「あ……」 提督「だから、君たち駆逐艦には遠征に出てもらう」 提督「その間、金剛は母港を守ってもらおう。だが、ジッとさせる訳ではない」 提督「装備の開発や秘書としての仕事もある。彼女には資材のあまり掛からない仕事を任せる気だ」 金剛「テートク……」 提督「──この鎮守府はまだまだ弱小だ。この国の明日の為に協力してくれ」 39 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 16:06:02.03 ID:uKhsAYXN0 雷「勿論よ司令官! もーっと私を頼りにしても良いのよ?」 響「…………」 提督「まあ、それは建前だ」 電「建前なのですか!?」 響「たて……まえ……」 提督「当たり前だ。国の為など二の次。一番はお前達を誰一人とて沈ませず戦争を抜け出すことしか考えていない」 響「……それは、司令官としてどうなのかな?」 提督「知らん。ここは私の城だ。私のやりたいようにやらせてもらう」 提督「それに、上も私へ大して期待しておらんよ。尻尾さえ振っておけば後はどうとでもやれる」 提督「例え、駆逐艦一隻を犠牲にして敵主力戦艦を五隻討ち取れる戦況でも、私は撤退命令を出す」 響「エゴだね」 提督「エゴの塊だよ、私は」 響「……司令官としては最底辺だね」 電「響ちゃん!?」 響「でも、嫌いじゃない。むしろ好ましい」 響「司令官、作戦指示を。私は司令官の為に動きたい」 提督「ああ。だが、その前に──」 40 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 16:16:18.75 ID:uKhsAYXN0 ────────────。 響「なっ……ななななななんで!? なんで私は吊るされてるんだ!?」 提督「上官への暴言は許されるものではない」 提督「むしろこの程度で良かったと思え」 電「ひ、響ちゃあああん!!!」 雷「──あ、下着が見えそうね」 金剛「……プリティピンク」 響「ッ!?」ビクッ 響「さ、流石にこれは……恥ずかしいな……」 提督「反省はしたか?」 響「……もし、していないと言ったら?」 提督「そうか」クルクル 響「あ、あああ……! た、たたた高くなった!?」 雷「完全に丸見えになったわね」 電「はわわわわわわ!!」 響「ひぅっ!!」 41 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 16:26:28.32 ID:uKhsAYXN0 金剛「テ、テートク……そろそろ降ろしてあげては?」 提督「…………」チラ 金剛「!!」ビクッ 提督「……あと二分吊るしておこう」 響「ううう……」 〜二分後〜 響「たった二分だったのに……物凄く長かった……」 電「だ、だだ大丈夫ですか、響ちゃん!?」 響「ん、ああ。どこも痛くないよ。……心はちょっと傷ついたけどね」 提督「…………」ジッ 響「!! し、司令官! 先程の暴言、申し訳ありませんでした!!」 提督「……本当に身体は痛くないか?」 響「え? はい……どこも痛くないですけど……」 提督「ならば良し。駆逐艦達は十分……いや、二十分後までに遠征準備をして第二艦隊船着場へ集まるように」 提督「私は先に待っている」 42 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 16:43:35.25 ID:uKhsAYXN0 電「……響ちゃん、本当にどこも痛くないのですか?」 響「うん? ああ、ほら、毛布に包んで縛られていただろう? どこも痛くないよ」 電「え、毛布……?」 雷「あら、電ったら気付いてなかったの?」 電「あうう……」 金剛「バット、どうして大人しく吊るされたのですか? 縛られたのは隣の部屋デスから、詳しくは分からないのデスけど」 響「あ、ああ……それは……」 提督『抵抗すれば撃つ。言葉を発しても撃つ。大人しく縛られるのと、私にこの部屋を大規模な掃除をさせるのとどっちが良いか選びたまえ』 響「──と、リボルバーを眉間に当てられて……」 金剛・電・雷(怖ーーーー!!!!!) 響「ハッタリなのは分かっていたから抵抗も出来たけど、従うことにしたよ」 雷「ハッタリ?」 響「弾倉に弾が入ってないのが見えたんだ。間違っても弾が出ないようにする為だと思うよ」 電「心臓に悪いのです……」 44 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 16:54:01.95 ID:uKhsAYXN0 響「──っと、毛布が汚れてしまったね。不用意に床へ置くんじゃなかった」 金剛「あ……」 響「うん?」 金剛「い、いえ。なんでもないデース!」 金剛「その毛布、皆が遠征に出てる間に洗っておくヨー」 響「ん、了解した。頼んだよ」 金剛「まっかせなサーイ!!」 金剛(……この毛布、提督のベッドにあった物なのデス。という事は……) 48 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 17:04:49.78 ID:uKhsAYXN0 〜その夜〜 提督「ふむ……仕事は終わりか」 金剛「途中でスコールになって、遠征も練習だけで切り上げちゃいましたからネー」 提督「あれはかなりの痛手だった。特に燃料が痛いな」 金剛「どうにかしてやりくりしないとイケマセンねー……」 提督「そこは上へ申請して少し多めに頂く事にする」 提督「今回の遠征、敵艦が現れて至近弾をいくつか貰っただろう?」 金剛「え? ハイ……」 提督「損傷箇所をいくつかでっち上げておいた。修理に使った燃料と鋼材を余分に要求したよ」 金剛「そ、それって大丈夫なんデスか!?」 提督「無論ダメだ。だが、現場に居た人間しか分からないくらいの水増しだ。まずバレんよ」 金剛「ほええ……」 提督「金剛、分かってはいると思うが──」 金剛「ハイ! 私は提督の味方デス!」 提督「感謝する」 提督「それでは、今日の仕事は全て終了。金剛、部屋に戻って休息を取れ」 金剛「ハイ!」 ガチャ──パタン 49 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 17:15:14.40 ID:uKhsAYXN0 提督「……寒いな。毛布は乾いてないし、代えの毛布を備蓄倉庫へ取りに行くか」 〜倉庫物色中〜 提督「無い……だと……?」 提督「仕方が無い……。風邪を引かないようにしなければ……」 ガチャ──パタン 提督「うん?」 金剛「おかえりなさい、テートク!」 提督「…………なぜここに居る」 金剛「ちゃんと毛布を取りに自室に戻りまシタ」 金剛「そして、休息を取る為にここへ来まシタ」 提督「私が聞きたいのはそういう事ではない。どうしてここで寝ようと思っているんだ」 50 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 17:23:41.49 ID:uKhsAYXN0 金剛「だって、テートクの毛布が乾いてまセン」 提督「備蓄倉庫から取ってくる。だから自分の部屋へ──」 金剛「午前中に備蓄倉庫を確認しましたケド、毛布なんて無かったデス」 金剛「毛布は一枚。加えて寒い中にこのスコール。私達の二人が風邪を引かない為には一緒に寝るしかないデス」 提督「……分かった。私は毛布無しで寝る。だから──」 金剛「テートクが風邪を引いてしまったら、明日の仕事に影響が出てしまいマス」 提督「暖房を使って──」 金剛「暖房用の燃料、まだ無いですよネ?」 提督「代えの服ならある。それを何枚か着て──」 金剛「三着しかないデス。それでは風邪を引いてしまいマス」 提督「……はぁ。参った。降参だ」 金剛「ヤッタ! 私の勝ちネ! テートクー、カムヒアー!」 提督「帽子と上着くらいは脱がせてくれ。皺が付く」 提督「それと、私は男だと分かっているよな?」 金剛「勿論デスよ?」 提督「……自分の身の安全を考えないのか?」 金剛「テートクはそんな事しまセン! それはこの間の処遇で知っていマース!」 提督「分からんぞ。仮に金剛の予想が外れて襲ったらどうする」 金剛「襲われたらデスか? うーん……」 金剛「……テートクなら、受け入れちゃうかもしれまセン。アハッ」 51 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 17:30:54.65 ID:uKhsAYXN0 提督「冗談でもそういう事を言うもんじゃない」コツン 金剛「アウチッ。むー……テートク、ノリが悪いデース……」 提督「まったくお前というヤツは……」 提督「電気、消すぞ」 金剛「ハイ。準備オッケーデース!」 提督「何の準備だか……」 提督「それじゃあ、失礼する」モゾ 金剛「アンッ」 提督「ソファーで寝る」 金剛「ジョークですってばテートクー!」 提督「次は無い」モゾ 金剛「はーい……」 金剛「……ねぇ、テートク」 提督「なんだ?」 金剛「テートクはやっぱり優しいデス」 提督「とんだ勘違いだな」 金剛「私の中では優しい人デス」 提督「……そうか」 52 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 17:41:16.42 ID:uKhsAYXN0 金剛「響に罰を与える時も、痛くないように毛布を使ってましたし」 金剛「吊るしている時も、響の表情をずっと見て苦痛がないかどうか確認していました」 提督「そうか、そう見えたか」 金剛「遠征の準備も、五分で終わるものに二十分もくれました」 金剛「充分に響へフォローできる時間です」 提督「…………」 金剛「他にも、響へ銃を突きつけたと聞きましたが、弾が入ってなかったそうです」 提督「万が一にも誤射しない為だ」 金剛「本当に脅すなら弾が入っていないと意味がないです」 提督「…………」 金剛「そして、さっきも私を気遣ってくれました」 提督「当然だろ」 金剛「私は──私達は、提督の道具です。本来だったら気遣う必要なんてないです」 提督「私のやりたいようにやっているだけだ」 金剛「気遣ってくれてるのは、今もです」 提督「…………」 53 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 17:51:41.94 ID:uKhsAYXN0 金剛「提督、背中を向けてくださってます。私を少しでも安心させる為です」 提督「……………………」 提督「勘の良いヤツだ」 金剛「あはっ」 金剛「提督、こっちを向いてください。背中を眺めるのは、寂しいです」 提督「…………」 金剛「向いてくれなかったら、私がそっちへ行きますよ?」 提督「分かった分かった……」モゾ 金剛「提督♪」ギュー 提督「む」 金剛「やっぱり、あったかいです……。提督も抱き締めてください」 提督「……拒否権は」 金剛「ありません!」 提督「……分かったよ」ギゥ 金剛「あはっ。あったかい……」 金剛「ここ最近で、一番心を落ち着けて眠れそうです……」 54 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 18:02:50.60 ID:uKhsAYXN0 提督「……そうか」 金剛「はい。提督、おやすみなさい……良い夢を」 提督「おやすみ」 提督「……………………」 提督(……困ったなぁ。本当、困った……) 〜翌朝〜 金剛「ん……」 提督「おはよう、金剛」 金剛「てーとく……?」 金剛(なんでテートクが私の部屋……じゃない!) 金剛(そうでシタ! 私、テートクと一夜を──)ガバッ 金剛「いち、やを……」 金剛「あうあうあう……! あう……?」 提督「どうした金剛」 金剛「……テートク、お仕事デスか?」 提督「ああ。午前中に終わらせておきたいからな」 金剛「…………」 金剛(テートク、ロマンチックじゃないデース……) 55 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 18:11:56.99 ID:uKhsAYXN0 金剛「って、午前中に?」 提督「そうだ。今日一日は全員に暇を出しておいた。この濃霧じゃ出撃なぞできんよ」 提督「加えて資材が枯渇する寸前だ。資材は明日届くから、どっちにしろ明日じゃないと動けん」 金剛「ナルホドー」 提督「まあ、何もしない訳にはいかないからな。何か装備でも作っておこうか」 提督「ところで金剛、顔を洗ってきた方が良いんじゃないか? まだ軽く寝惚けているように見えるが」 金剛「え? いえそんな事は──」 提督「そうだな、ゆっくりと時間を掛けてきて良いぞ。今日は時間があるからな。秘書の仕事はそれからだ」 金剛「! ハイ! 行ってきマース!」 ガチャ──パタン 56 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 18:15:59.01 ID:uKhsAYXN0 金剛(って、テートクはどうして私が朝にバスタイムするの知ってるのでしょうカ……?) 金剛(……………………そういえば、書類が半分終わってましたネ) 金剛(今は……マルロクマルマル。という事は、最低でも一時間前には起きていたのデスか) 金剛(私の部屋からシャワー室へ行くにはテートクの部屋の前を通らないと行けナイ) 金剛(だから、私が朝にバスタイムを知っているのデスか) 金剛「……昨日の仕返しデスかね? ふふっ」 金剛「──楽しいデス」 …………………… ………… …… 58 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[] 投稿日:2013/10/18(金) 18:35:18.86 ID:uKhsAYXN0 〜工廠〜 提督「で、だ……金剛」 金剛「ワオ……」 提督「お前、何やった?」 金剛「何もやってないデスよ……?」 提督「じゃあなんで、妖精達は建造してるんだ……?」 金剛「提督のご指示じゃなかったんですか……?」 提督「いや、私じゃない……勿論、秘書以外の者が建造に関わる事もできない」 金剛「…………」 提督「…………」 金剛「これ、どう見ても空母デスよね?」 提督「……ああ、それも正規空母だな」 59 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 18:44:32.22 ID:uKhsAYXN0 妖精「お、やあ提督」 提督「……何を造ってるんだ?」 妖精「空母」 提督「資材はどこから?」 妖精「港に沈んでた艦をリサイクル」 提督「…………どうやって?」 妖精「あたし達にできない事なんて……一杯あるけど、これくらいならできるよ」 妖精「昨日、提督が駆逐艦達を思いながら遠征練習してるのに心を打たれちゃってね。」 妖精「いやぁ、良かったよアレ! 『資材を持って帰れないと判断したら資材を捨ててでも帰ってこい』なんてさ!!」 妖精「ありゃあ普通の提督には言えないよ」 提督(そうなのか……?) 金剛(たしかに、死んでも持って帰ってこいって言う人がほとんどでしたケド……) 62 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 19:09:10.98 ID:uKhsAYXN0 妖精「という訳で、あたし達からのプレゼント。おお、丁度出来たっぽいね」 瑞鶴「──はじめまして! 翔鶴型航空母艦2番艦、妹の瑞鶴です!」 提督「」 金剛「」 瑞鶴「って、あ、あれ?」 妖精「ふふん。ちょっと本気出しました。どうせなら良いモノをプレゼントしたいしね」 提督・金剛「どうしよう……」 妖精「……あれ? お気に召さなかった?」 提督「いや、こんなに難しい船を造ってくれて物凄くありがたい」 金剛「だけどネ、妖精さん……」ピラッ 妖精「うん? 資材倉庫の情報紙? ……え?」 瑞鶴「なになに? 見せて?」 瑞鶴「……うわぁ」 妖精「これ、運用できないじゃん……」 瑞鶴「え……私、来るところ間違えた……?」 金剛(私と全く同じコト考えてマスね……) 妖精「ま、まあ! ここからは提督の腕の見せ所ということで……さいならー!!!」 64 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 19:21:20.14 ID:uKhsAYXN0 瑞鶴「……提督さん、大丈夫?」 提督「どうしよう……ホントどうしよう……」 瑞鶴「ですよね……」 金剛「駆逐艦達に遠征を頑張ってもらいまショウ……」 提督「それしかないな……」 瑞鶴「……ちなみに、なんだけど……ここの艦娘保有数は?」 金剛「駆逐艦三隻と、私達だけデース……」 瑞鶴「…………詰んでるじゃないの!?」 提督「……金剛、駆逐艦たち全員に伝えてくれ」 提督「ヒトサンマルマルから作戦会議……それも非常に重要な、と……」 金剛「分かりまシタ……」 瑞鶴「…………」 提督「…………」 67 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 19:32:22.39 ID:uKhsAYXN0 瑞鶴「……提督さん、どうする? あの……なんだったら解体しても──」 提督「それは認めない」 提督「それとも、瑞鶴は解体されたいのか?」 瑞鶴「そりゃ……嫌だけど……」 提督「ならばそれが答えだ。私はお前を解体しない」 瑞鶴「……どうやっても極貧生活になるわよ?」 提督「いくら普通の女の子になるからといって、解体で悲しそうな顔をする艦娘を見たくない」 瑞鶴「……エゴね」 提督「エゴの塊だよ、私は」 瑞鶴「加えて大馬鹿だと思うわ。この先、上手くやって極貧生活。下手を打ったら敵に殺されるっていうのに──」 グチグチグチグチグチグチグチ。 提督「…………そうかそうか」 瑞鶴「──え? あ……」 …………………… ………… …… 69 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 19:44:00.57 ID:uKhsAYXN0 雷「休みが作戦会議になるくらい重要な事って何かしら?」 電「きっと、とっても大変な事があったのです」 響「それだと緊急召集を掛けると思うけど……うん?」 瑞鶴『たーすーけーてー!!』 電「だ、誰かの悲鳴が聞こえてくるのです!」 雷「行きましょう!!」 響「……なぜだろう。とても同情したくなる声だ」 〜提督室隣の部屋〜 電「ここなのです!」 雷「えいやーっ!!」バターン! 瑞鶴「あ、た、助け──いや待って! まず見ないでぇ!!」 雷「吊るされてる……」 電「響ちゃんみたいになってるのです……」 響「提督、何があったんだい?」 70 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 19:58:50.22 ID:uKhsAYXN0 提督「八分に渡る上官への暴言、侮辱、その他諸々の罪で吊るし上げた」 瑞鶴「だ、だからってこんな辱め──」 提督「時間追加」 瑞鶴「ひぃっ!?」 金剛(瑞鶴さん……同情するネ……) 電「…………」 雷「あーあ……司令官を怒らせちゃったのね」 響「むしろ八分もよく続けれたと思うよ。私にはできない」 瑞鶴「だ、だって……」 響「安心して良い。私も吊るされた。昨日」 響「それにしても、そこまで言ったのなら、どうして懲役刑じゃないんだい?」 瑞鶴「!?」 響「いやむしろ、そんなに長々と言ったのならその場で銃殺してもおかしくないと思うんだけど」 瑞鶴「!!?」 71 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 20:15:39.62 ID:uKhsAYXN0 提督「知らん。私はそんな腐った法に従う気はない」 提督「この鎮守府内だけだがな」 瑞鶴「それはそれでどうなの提督さん……」 提督「そうか」 瑞鶴「わぁぁああ!! 嘘嘘! ごめんなさい!!!」 提督「嘘をついてまで私を貶めたかったのか?」 瑞鶴「あの……その……」 提督「…………」ジッ 瑞鶴「えっと……う……」 提督「…………」ジッ 瑞鶴「ぅ、ううう……」ジワ 提督「ところで皆、もうすぐヒトサンマルマルだが?」 全員「!!」ビクゥ 雷「は、はいい!!」 電「い、急ぐのです!!」 響「もうあんな思いはゴメン!!!」 金剛「あ、あの、私もですか?」 提督「うむ」 金剛「オ、オーケー!! テートクも程ほどにネー!?」 ──パタン 76 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 20:37:35.96 ID:uKhsAYXN0 瑞鶴「うぅ……うえぇ……」ポロポロ 提督「…………」クルクルホドキホドキ 瑞鶴「ぐすっ……?」 提督「悪かった。もしかして痛かったのか?」 瑞鶴「…………」フルフル 提督「本当だな?」 瑞鶴「…………」コクン 提督「そうか……。泣くほど嫌がるとは思っていなかった。すまない」 瑞鶴「う……」ジワッ 瑞鶴「うう〜〜ッッ!!!」 提督「っとと?」 提督(なぜ抱き付いてきた……) 81 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 20:54:00.81 ID:uKhsAYXN0 瑞鶴「教えて……どうしてこんなに罰が甘いの……」 提督「さっきも言っただろう。私はあんな法に従うつもりはない」 瑞鶴「……それだけ?」 提督「建造直後とはいえ、既にお前は私の艦だ。誰が捕まえたり殺したりするものか」 瑞鶴「でも……私はあんなに沢山……」 提督「だから罰を与えた。充分に恥ずかしかっただろう」 瑞鶴「そりゃ……そうだけど……」 提督「…………」 提督「……私は、悲しまれたりするのが苦手なんだよ」 瑞鶴「……?」 提督「本当なら気にするなと言ってやりたい。だが、それではダメだと秘書に叱られてしまってね」 提督「だから、こうしてケジメをつけている。吊るされるのは嫌だろう?」 瑞鶴「…………」コク 提督「それに……お前を刑に処したら、姉の翔鶴がやってきた時に悲しむ」 瑞鶴「…………」 瑞鶴「……優しすぎ」 提督「悪いか?」 瑞鶴「ううん……そういうの、好き……」 82 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 21:02:18.54 ID:uKhsAYXN0 提督「ところで、顔を洗ってきた方が良いだろう。抱き付くのもそろそろ止めておいた方が良い」 瑞鶴「え?」 提督「ん?」 瑞鶴「…………」 瑞鶴「──ピィッッッッ!?!!??!」ビックゥ 瑞鶴「ご、ごごごごごごめんなさいいいい!!!!!!!」ダッシュ 提督「…………嵐のような娘だ」 〜一方、隣では〜 電「い、いいいい今、とんでもない声が聴こえてきたのです……!」ビクビク 雷「何をやったのかしら、提督……」オドオド 響「まるで鴨の首を絞めたかのような声だったね……」ガタガタガタ 金剛(気になりマース……) …………………… ………… …… 85 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 21:12:43.73 ID:uKhsAYXN0 提督「さて、諸君」 金剛・瑞鶴・電・雷・響「ハイ!!!」ビシィッ 提督「……これから作戦会議を行う。議題は『不足している資材の調達方法』についてだ」 金剛・瑞鶴・電・雷・響「────」ピシッ 提督(やたら皆気合が入っているな……) 提督「手元の資料を見て貰えば一目瞭然だが、現在この鎮守府の資材は枯渇寸前となっている」 提督「運用できて駆逐艦三隻が限界だろう。だが、駆逐艦達には遠征をしてもらわなければならない」 提督「この現状を打破するに有効な手段が無い。そこで、諸君らにも知恵を分けて欲しい」 提督「何でも良い。思いついた者は手を挙げて述べてくれ」 電「あの……資材が集まるまで遠征のみというのはどうですか?」 提督「一番確実で効率が良い意見だ。だが、昨日のように敵艦が近くに居る可能性が高い」 提督「そこを狙われて轟沈してしまったら、それこそこの鎮守府は終わりだ」 86 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/18(金) 21:25:09.63 ID:uKhsAYXN0 雷「はい! 護衛に金剛さんを付けるのはどう、司令官?」 提督「それだとマイナスになってしまう。この近海で得られる資源は少なくてな……」 響「夜、海岸を影にして遠征をするのはどうだろう?」 響「私達が昼に寝れば、夜を通しての遠征ならできると思うよ」 提督「ふむ……。これを見てくれ」 響「これは?」 提督「本部からの情報だ。夜になると、赤や黄のオーラを纏った敵艦が複数出没するらしい」 提督「奴等の戦闘能力は非常に高いものとされるようだ。重巡が駆逐艦に落とされたという報告もある程だ」 響「これは……提督は許可してくれそうにないね」 提督「うむ」 提督「何度でも言うが、資材を持って帰れないと判断したら資材を捨ててでも帰ってこい」 瑞鶴「資源を捨ててでもって……貴重なんでしょう?」 提督「資源など時間を掛ければいくらでも手に入る」 提督「だが、君達は君達しか居ない。例え同じ設計図で組み立てても、それは彼女等であって君達ではない」 金剛「提督……」 87 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/18(金) 21:34:07.23 ID:uKhsAYXN0 金剛「ぁ──」 瑞鶴「あの、良いです?」 金剛(──の……) 瑞鶴「ちょっと賭けになっちゃうのがネックなんですけど、艦娘を増やすのはどう?」 提督「増やす?」 瑞鶴「敵艦を撃破すれば艦娘のデータが手に入るでしょう? 初期投資という事で、海からデータを拾ってくる」 瑞鶴「修理や補充ができなくなるのは痛いけど、艦隊を二つに分けて出撃すれば、二倍のチャンスが巡ってくるわ」 瑞鶴「近海の敵も減らせる。新たに手に入った艦娘で遠征も出せる」 提督「…………」 瑞鶴「ど、どう……?」ビクビク 提督「……保留。他にも良い案が無いか考えてから検討しよう」 提督「いや、むしろこの案を基にどう動くか考えた方が良いだろう」 金剛「!」 瑞鶴「やった!」 91 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 22:03:48.07 ID:uKhsAYXN0 提督「金剛、何か他に案はあるか?」 金剛「え、あ……その……」 金剛「……無いです」 提督「…………そうか。では、瑞鶴の案を基に話を進めよう」 金剛(大体同じ案だったけど、瑞鶴の方がしっかりとしていました……) 金剛(劣化の案なんて、言えません……) 提督「…………」 …………………… ………… …… 93 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 22:18:02.72 ID:uKhsAYXN0 提督「──よし、練り固まったという所だろう。諸君、お疲れ」 提督「この会議での作戦を明日までに頭に叩き込んでおく事。良いな?」 瑞鶴・電・雷・響「ハイ!!!」 提督「……宜しい。では各自自由行動」 提督「ああ金剛、お前だけは残ってくれ」 金剛「……え?」 提督「お前は私の秘書だ。やってもらいたい事がある」 金剛「──ハイ」 提督「駆逐艦達は瑞鶴にこの鎮守府の案内をしてやってくれ」 雷「はーい、司令官。瑞鶴さん、いっきますよー!」 瑞鶴「あ、こ、こら。引っ張ったら──」 ──パタン 94 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 22:36:17.54 ID:uKhsAYXN0 提督「……さて、人払いは済ませた」 金剛「!」ビクッ 提督「金剛、私が何を言いたいのか分かるか?」 金剛「……私は、役立たずでシタ」 金剛「ろくな案も出せず……かといって煮詰めることも、本当に何も出来なかったです……」 金剛「ごめんなさい……提督……」 金剛「私、役に立てなかった……」 提督「ああ、違う」 金剛「──え?」 提督「私が言いたかったのはそうじゃない」 提督「だが、聞きたかった事が聞けた」 金剛「? …………?」 提督「会議中、何か思い詰めてるようだったからな。気になっていた」 提督「悲しい顔をさせたk……いや、聞き流してくれ」 提督「ゴホン。明日の作戦に支障が出るからな。ケアが必要だ」 金剛「…………」 95 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 22:46:23.75 ID:uKhsAYXN0 提督「……どうした? ノーマル駆逐艦からクリティカルを貰ったかのような顔をして」 金剛「あははっ。なんでもないデス」 金剛「涙、ひっこみまシタ!」 提督「良い事だ。泣くのは嬉しい時だけで良い」 金剛「ふふっ、そうさせて下さいネ、テートク♪」 金剛「I don't mind that everthing is a lie」 提督「む?」 金剛「As long as I love you forever」 提督「……流暢だな。聞き取れなかった」 金剛「内緒デース♪」 金剛「ただ……一つ言うなら」 金剛「私、こんなに惚れやすくないはずなんですけどね」 提督「……………………」 金剛「それじゃあ、グッナイ提督♪」 ──パタン 提督「…………は?」 96 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 22:55:10.82 ID:uKhsAYXN0 カチャ…… 金剛「あのぅ……」 提督「……なんだ?」 金剛「髪、梳いてくれますか?」 提督「……さっき良い夢をって言わなかったか?」 金剛「ぅー……」 提督「…………」 金剛「ダメ、ですか?」 提督「……椅子に座りなさい」 金剛「ヤッター!」チョコン 提督「嬉しそうだな」 金剛「そりゃあモッチロン!」 金剛「んー♪ やっぱり気持ち良いデース♪」 提督「そんなに良いのか……?」 金剛「ハイ! 提督のブラッシングは優しくて丁寧デス!」 金剛「もう私、テートクの虜ですヨー?」 提督「冗談……じゃないんだよな?」 97 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 23:08:37.29 ID:uKhsAYXN0 金剛「おっ。テートクはコミックスとかでよくある都合の良い難聴はないみたいですね」 提督「なんだそれ」 金剛「告白とカー、それに順ずる言葉ダケ聴こえなくなる現象デス」 提督「もはやそれって分かっててやってるだろ」 金剛「まあ、コミックスですからネー」 提督「それもそうだな」 金剛「ネー、テートクー」 提督「うん?」 金剛「今日も一緒にスリーピングして──」 ガタッ! 金剛「!?」 提督「……誰だ? 現れなかった場合、明日、全員を縛り上げて──」 ガチャ──パタン! 瑞鶴「わ、私です!」 102 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 23:31:01.47 ID:uKhsAYXN0 金剛「瑞鶴?」 提督「……無断で部屋に入ってきた事についてだが」 瑞鶴「あぁっ!? ご、ごめんなさい!!!」ビクビク 提督「いや、現れろと言ったのは私だ。不問にする」 提督「だが、どうして盗み聞きしていた?」 瑞鶴「それは……その……」 瑞鶴「えっと……ですね……」 瑞鶴「…………」 提督「瑞鶴」 瑞鶴「ひゃいッ!?」 提督「……………………」 瑞鶴「ぅ……」ビクビク 提督「話せ」 瑞鶴「はいぃ……」 金剛(ちょっとだけ可哀想デス……) 103 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/18(金) 23:38:47.27 ID:uKhsAYXN0 瑞鶴「あの……この通路を通ろうとした時、金剛さんが入っていくのが見えたの」 瑞鶴「なんだかすっごい笑顔だったから、つい気になって……」 金剛「あ、あぅぅぅ……」 瑞鶴「えっと……差し支えなければ聞いても、良いですか?」 提督「…………」チラ 金剛「…………………………」コク 提督「髪を梳いてくれとねだってきたので梳いている」 金剛「ス、ストレート過ぎですよ提督ー!!」 提督「回りくどく言った方が良かったか?」 金剛「…………いえ、このままの方が良かったデス」 瑞鶴「……仲が良いですね」 提督「懐かれてしまってな」 金剛「懐いてるんじゃありまセン。惚れているんデス」 瑞鶴「なぁ!?」 提督「お前の方がストレートじゃないか……」 金剛「開き直りまシタ!」 104 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/18(金) 23:50:54.78 ID:uKhsAYXN0 提督「……女心は分からん」 瑞鶴「……あの」 提督「うん?」 瑞鶴「私も立候補して良いですか」 金剛「ホワッツ!?」 提督「…………」 金剛「ど、どうしてですか!? 貴女、今日来たばっかりじゃないですか!!」 提督「それ、昨日来たばかりのお前が言えるか……?」 金剛「……あー…………」 瑞鶴「分からないんです」 提督「ん?」 瑞鶴「なんか、金剛さんが提督さんと……その……恋仲、になるのがとても嫌って思って……」 瑞鶴「でも、提督さんの事が好きかって言われたら、合ってるような違うような……良く分からないの」 提督「…………」 瑞鶴「だから、金剛さんが提督さんと恋仲になる立候補をするなら、私も──」 提督「話の途中ですまんが、一つ言わせてくれ」 瑞鶴「え?」 105 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 00:11:16.50 ID:Dt4axTQb0 提督「私は金剛の想いを受け入れるともなんとも言っていないし、そもそもハッキリとした……いわゆる告白は受けていない」 金剛(言いましたのにー……) 提督「そもそも、私にとって二人は昨日今日、出会ったばかりなんだ」 提督「そんな出会ってすぐ決めれるほど飢えておらんよ」 提督「金剛がそこの所をどう思っているのか知らないが……」 金剛「アピールするだけですよ。私は食らいついたら放さないんだから!」 金剛「あ、でも、嫌がってたら流石に諦めますケドね」 金剛「提督が振り向いてくれるまで、ささやかに想い続けます」 提督「…………分かった。憶えておく」 提督「瑞鶴もそれで良いか?」 瑞鶴「え? は、はい……」 提督「それじゃあ二人共、今日は解散。明日に備えよ」 金剛「ハーイ」 瑞鶴(…………?) 瑞鶴(なんか、無理矢理に追い出そうとしてる……?) ──パタン 提督(…………はぁ) 提督(本当に困った……) 提督(……………………やりづらい……) 106 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 00:22:46.58 ID:Dt4axTQb0 〜翌日〜 響「晴れたね」 提督「ああ、晴れたな」 提督「──これより第一艦隊、第二艦隊に分かれ、南西諸島沖に向けて出撃してもらう」 提督「第一艦隊は瑞鶴、電、雷」 瑞鶴・電「はい!」 提督「第二艦隊は金剛、響」 金剛・響「ハイ!」 提督「昨日も言ったが、今から言う事は何がなんでも守れ」 提督「『まだいける』と思ったらもう危ない。そして『もう危ない』と思ったらいつ沈んでもおかしくないと思え」 提督「慢心は死を招く。海の上では気を抜くな」 全員「はい!!」 提督「金剛、響。私の留守中、母港を守ってくれ」 金剛・響「ハイ!」 提督「出撃する。第一艦隊、出撃」 107 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 00:34:25.21 ID:Dt4axTQb0 〜南西諸島沖〜 瑞鶴「……普通に出てきたからなんとも思わなかったけど」 雷「どうして司令官も一緒に来てるの?」 提督「電は知ってるが、お前達が戦場に出ているのに、上官である私が安全な場所でのうのうとするのは嫌だ」 提督「あと、無線だけでは分からないモノもある。的確な判断を下すなら前線に立つべきだ」 瑞鶴「もっともだけど、危なくないかしら……」 瑞鶴「提督さんが居なくなったら、私たち何もできなくなるわよ?」 提督「だからこその指示だ」 雷「? どういう事?」 提督「……本当は演習で経験を積ませるのが良いんだが、何せ資源が無いからな。私のせいで」 瑞鶴・電・雷(認めてたんだ……) 109 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 00:46:48.47 ID:Dt4axTQb0 提督「それゆえ、今の艦隊は錬度が低い」 提督「それを補うために、私が直接指示を出しているんだ」 提督「正直に言うと、さっきのは建前だ。錬度が高くなれば無線で指示をする方向に切り替わるかもな」 電「かも……ですか? それは、ずっとこのまま一緒に海へ出るかもしれないという事ですか?」 提督「……よく聞いているな、電。そういう事だ」 提督「人間、誰しも矛盾した心を持っている」 提督「私の言った建前も、本当の理由も、どっちも私の本心なんだ」 提督「そして、どちらも──む」 瑞鶴「! 船の影! 偵察機、飛ばします!」 ……………………。 111 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 01:10:19.38 ID:Dt4axTQb0 提督「……敵か。数と艦種は」 瑞鶴「数は2。駆逐ロ級とイ級です!」 提督「総員、戦闘準備開始。瑞鶴、攻撃機と爆撃機は飛ばせるか?」 瑞鶴「いつでも!」 提督「良い返事だ。飛ばせ」 瑞鶴「はい! 皆、アウトレンジで決めてよね!!」 艦爆妖精「任せろ嬢ちゃん」 艦攻妖精「……敵艦確認。沈めます」 艦戦妖精「今回は休みなのー」 ブゥゥゥン……ッドォォォオオン!!!! 瑞鶴「……敵艦、全滅させたみたいよ」 提督「よくやった瑞鶴。流石だな」 瑞鶴「──あ」 瑞鶴(……胸が高鳴るくらい、すっごく嬉しい) 112 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 01:23:06.92 ID:Dt4axTQb0 雷「おおお!!! 凄い凄い!! 射程距離に入る前にやっつけた!!」 雷「これが瑞鶴を先に出させた理由かー」 提督「そうだ。射程外から一方的に攻撃できるのは、とてつもない武器だ」 提督「ところで、瑞鶴、雷」 瑞鶴・雷「?」 提督「電の方を見てみろ」 電「他に敵は居ないみたいです──って、はい?」 提督「二人がしていなかった索敵を、電は一人やっていた」 瑞鶴・雷「あ……」 提督「出撃前、私が言っていた事を暗唱せよ!」 瑞鶴・雷「ヒッ──! 『慢心は死を招く。海の上では気を抜くな』です!!」 提督「うむ、よく憶えていた。そして、さっきの君達はどうだったか答えてくれ」 瑞鶴・雷「慢心していました!! 申し訳ありません!!!」 提督「そうか。よほど海の底へ沈みたいようだ」 瑞鶴・雷「────!!」ガクガクブルブル 113 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/19(土) 01:45:08.17 ID:Dt4axTQb0 提督「処罰は帰ってから行う。だが、私も鬼ではない」 提督「先程の行為を覆すほどの活躍を見せてくれたら、処罰は無しとしよう」 瑞鶴・雷「ありがとうございます!!」 提督「うむ。良い働きを期待しているよ」 電(凄いのです……! 緩んでいた緊張の糸をすぐさま張り直したのです!!) 電(凄いなぁ……司令官さん) 電(そして、瑞鶴さんのあうとれんじ攻撃も凄いのです! これだったら被害が最小限なのです!) …………………… ………… …… 114 名前:少なかったからもう一個[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 01:46:19.40 ID:Dt4axTQb0 瑞鶴「むっ! 敵艦と思われる影を確認しました!!」 瑞鶴「──偵察機の報告によりますと、軽巡、雷巡が各一隻、駆逐が三隻のようです!!」 瑞鶴「飛ばしましょうか」 提督「意味は伝わるが、必要箇所を省略するな。それが元となって伝達に齟齬が発生する」 瑞鶴「は、はい!! 失礼しました!」 提督「ちなみに、各艦の大きさ、陣形は?」 瑞鶴「軽巡がへ級。雷巡がチ級。駆逐はロ級一隻、ハ級が二隻。陣形は単縦陣のようです」 提督「ふむ……陣形はこのまま維持。まずはハ級の二隻を艦爆、艦攻で攻撃しろ」 瑞鶴「え? は、はい」 艦爆妖精「いいのかい提督さん? 真っ二つにしてやるぜ」 艦攻妖精「了解しました。殲滅します」 艦戦妖精「まーたお仕事無しですよ……」 ブゥゥゥン……ッドォォォオオン!!!! 瑞鶴「! 一隻は撃沈、もう一隻は大破炎上! ですが、直に沈むと思われます」 提督(やはりか……まだ火力が足りない。駆逐艦を狙わせて正解だった) 125 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 11:43:34.08 ID:VCXgUKuM0 提督「総員、砲雷撃戦に入る。駆逐艦は主砲用意」 提督「空母は第二次攻撃隊発艦始め」 提督「敵に攻撃を許すな」 提督「電、恐らく敵の駆逐艦は旗艦の軽巡を庇おうとする。さっきの先制攻撃で随分敏感になっているはずだ」 提督「それを逆に狙え。最初っから駆逐艦を狙うんだ」 電「はいなのです!」 提督「瑞鶴は電の発砲後、敵旗艦の軽巡へ総攻撃。一切の妥協をするな」 瑞鶴「はい!」 提督「雷は敵軽巡と駆逐の両方を狙っておけ。落とし損ねていたら撃つから、いつでも撃てるようにしておく事」 提督「そして威嚇に今、敵旗艦に撃て。当たらなくて良い。敵駆逐艦を誘い出す」 雷「任せて司令官! テーッ!!」 敵軽巡「ぴぎぃ!?」ゴォン! 中破 雷「あ、船橋に当たっちゃった」 提督「よくやってくれた! 敵が怯んだこのチャンスを逃すな!」 提督「電、困惑している駆逐艦へ斉射! 瑞鶴、第二次攻撃隊に攻撃命令!」 電・瑞鶴「はい!!」 敵軽巡「Nooooooo!!!!」 撃沈 敵駆逐「連中の艦隊はバケモノか!?」 撃沈 126 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 11:56:30.71 ID:VCXgUKuM0 瑞鶴「……提督さん、攻撃隊が一発目で敵軽巡を沈めたらしいから、敵雷巡にも攻撃していいかって聞いてる」 提督「許可する。──雷、残った敵雷巡へ撃て!」 瑞鶴「はい!」 雷「はーい!」 敵雷巡「えっちょ──おおおばあああああきるぅぅぅううううう!!!?!?!」ドゴドゴドゴドゴ 撃沈 提督「うむ。敵は全滅したな」 瑞鶴・電・雷「周囲に敵影ありません!」 提督「うむうむ。索敵ご苦労」 提督「やればできるじゃないか」 瑞鶴・雷「!」パァ 瑞鶴・雷「──ハッ!!」キョロキョロ 提督「うむ。もう慢心していないようだな」 提督「──さて、データも回収したし、帰ろうか」 提督「……索敵を怠るなよ?」 瑞鶴・電・雷「はい!!」 …………………… ………… …… 127 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 12:12:27.12 ID:VCXgUKuM0 金剛「あ、帰ってきたネ!」 響「! ご苦労様、皆」 金剛「お疲れサマ!」 金剛「戦果リザルトはどうでシタ?」 提督「上々だ。まさかデータを四つも持って帰れると思わなかった」 金剛「ワーオ! コングラッチュレイショーン!!」 響「という事は、私達は出撃しない方が良いかな?」 提督「このデータが何によるかだが、大方しなくても良いだろう」 …………………… ………… …… 128 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 12:27:23.06 ID:VCXgUKuM0 提督「……確認する。君達の名前は──」 提督「神通、川内、那珂、暁で間違いないな?」 神通「はい」 川内「うん、そうだよー。で、今夜って夜戦の予定とかある?」 那珂「那珂ちゃん、有名だー!」 暁「ええ、そうよ司令官さん」 暁「って、皆!!」 雷「暁!」 電「暁ちゃんなのです!」 響「……これは驚いた。まさか一発で拾ってきてくれるなんて」 提督「私も正直、驚いてる」 金剛「あのー……提督、これって」 提督「ああ」 金剛「第三艦隊の保有許可が下りるネー!!」ダキッ 提督「なぁ!?」 金剛「やったヨー! 凄い嬉しいネー!」ギュウゥ 130 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 12:39:32.40 ID:VCXgUKuM0 提督「……金剛、時間と場所を弁えろ」 金剛「はっ!」 全員「……」ジィ 金剛「あ、アハハ………………ゴメンなさい……」 提督「喜ぶ気持ちは良く分かる。が、今後無いように」 金剛「ハイ……」 提督「それはさておき……」チラ 瑞鶴・電・雷「!!!」ビクッ 提督「処遇を決めよう。三人共、提督室へ行くように」 提督「金剛、響、すまないが四人に鎮守府の案内をしてやってくれ」 金剛「了解デース」 響「いってらっしゃい、司令官、三人共」 133 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 12:53:29.80 ID:VCXgUKuM0 瑞鶴・電・雷「…………」ガタガタガタ 川内「……なんであの三人、震えてるの?」 響「司令官の怖さを知っているからさ」 神通(こ、怖いお方なんですか……)ビクビク 那珂「そんな風には見えないけどー?」 暁「ええ。むしろ優しそうな人よね」 金剛「いずれ分かる日が来ると思いマース」 金剛(でも……『処遇』ですか。やっぱり優しいですね、テートク♪) …………………… ………… …… 135 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 13:10:26.47 ID:VCXgUKuM0 〜提督室〜 提督「……ここに呼ばれた理由は分かっているな?」 提督「出撃前の私の命令に従えなかった者が二名居る」 瑞鶴・雷「はい……っ」ビクッ 提督「それとは別の理由で、電にも来てもらった」 電「は、はい……」オドオド 電(なんでしょうか……私、何か失敗したのかな……) 提督「まずは雷」 雷「はい!!」ビクッ 提督「戦闘終了後、命令をしていたのにも関わらず気を抜き、慢心した」 提督「だが、最後の戦闘において敵旗艦軽巡に直撃弾を与え、指揮系統を狂わせて敵に攻撃させなかったのは事実」 提督「資材を消費できない中、今回の出撃で一切の被害を出さなかった事へ非常に大きな貢献してくれた」 提督「よって、罰は無しだ」 雷「え、あ──ありがとうございます!」 140 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 13:27:09.34 ID:VCXgUKuM0 提督「次に、瑞鶴。一歩前へ」 瑞鶴「はい!」ビクン 瑞鶴(どうしよう……私、雷みたいに特別な戦果を挙げてない……) 提督「先に述べた雷と同じ過ちを犯している、が──」 瑞鶴(おまけに戦闘中に何回も注意された……!! つ、吊るされる!?) 提督「──会敵七隻中四隻撃破。雷との共同戦果二隻」 提督「今回の出撃で一番貢献してくれている。よくやってくれた」ナデナデ 電・雷「!!!」 瑞鶴「──え? あ、あれ……はひ!?」 電(瑞鶴さん、お顔が真っ赤なのです) 雷(物凄く嬉しそう……。良いなぁ……) 提督「これにて今回の処遇は終わりだ。電以外は下がりなさい」 瑞鶴・電・雷「え?」 提督「なにかね?」 瑞鶴・雷「い、いえ!! 失礼しました」ピシッ 提督「ああ、午後からは行動を自由とする。燃料と弾薬が補充できないのはすまないがね」 瑞鶴「は、はい……」ポー 雷「はいっ司令官!」 カチャ──パタン── 提督「──さて電」 電「は、はい!!」ビクッ 提督「紅茶とココア、どっちが好きかな?」 電「…………ほえ?」 …………………… ………… …… 142 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 13:40:11.95 ID:VCXgUKuM0 提督「大した話ではないのだが、少々気になってね──ココアの甘さ加減は丁度良いかい?」 電「はい……とっても美味しいです……。けど、どうしたのですか、司令官さん?」 提督「なに。電は敵艦を沈めると悲しそうな顔をしていると気付いてね」 電「…………」 提督「それはなぜか、私には分からんのだよ。だから教えてくれないか?」 電「……………………」 提督「…………」 電「あの……怒りませんか?」 提督「知らん」 電「ええっ!? こ、ここは『怒らないよ』とか言う場面じゃないですか!?」 提督「知らん。私が怒るかどうかは話の内容を聞かないと分からんよ。私はエスパーではないからね」 提督「それとも、私が怒りそうな内容なのかな」 電「司令官さんなら怒りそうにない……と思います。けど……」 提督「…………けど?」 電「『司令官』という立場だと、怒るのが普通かな……と思うのです」 提督「ふむ。言ってごらん」 143 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/19(土) 14:01:25.73 ID:VCXgUKuM0 電「はい……。あの………………戦争って、殺し合いですよね……」 電「敵も私達と同じだと思うのです……。家族が居て、仲間が居て、大切な人が居て……中には、仕方がなく戦ってる人も居ると思うのです」 電「だから……沈んだ敵も、できれば助けたい……。そう思っちゃうんです……」 提督「……………………」 電「司令官さん……。戦争には勝ちたいけど、命は助けたいって……おかしいですか……?」 提督「……どうだろうな」 提督「…………すまん、私は電の悩みを解決する事ができない」 電「です、よね……。敵を助けても、帰らせちゃったらまた戦場に──」 提督「それもあるが、私が言いたかったのはそうじゃない」 電「え?」 提督「…………」 電「……相容れれない……のですか?」 提督「確かに敵と会話を設けた事は無い。だが、それが理由というわけではない」 144 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 14:27:23.27 ID:VCXgUKuM0 提督「電」 電「はい?」 提督「……電の悩みの答えは、電の思っているよりも深海の闇の中にある」 提督「触れると取り込まれるぞ」 電「………………取り込まれる……?」 電「司令官さん……? どういう事なのですか……?」 提督「知らなくて良い。できるならば──」 提督「──その悩みを忘れた方が、幸せだ」 …………………… ………… …… 145 名前:思ったより短かったからもう一個[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 14:28:27.69 ID:VCXgUKuM0 提督「さて、この書類を片付けねば」 金剛「ワーオ……まさにマウンテンね……」 提督「この程度で音を上げていたら、この先やっていけなくなるぞ」 提督「鎮守府を快適にすればするほど、この書類は増えていくからな」 金剛「ンー……大きくするのも問題なのデスねー……」 提督「できるなら、程々が一番だな」 金剛「ですネー……。あ、紅茶にしますか、コーヒーにしますか、それともココア?」 提督「金剛が飲みたいヤツを頼む」 金剛「ハイ! では紅茶を淹れますネ」 ……………………。 146 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 14:41:54.56 ID:VCXgUKuM0 金剛「お待たせネ」 提督「ん、ご苦労」ズズ 提督「……………………」 金剛「? どうしたんデスか、テートク?」 提督「金剛、お前の茶を飲ませてみろ」 金剛「え!? い、いや……それは…………」 提督「上官命令だ」 金剛「……ハイ」 提督「…………」ズズ 金剛「…………」ビクビク 提督「……やはり、薄いな」 金剛「あう……バレてしまいまシタ……」 提督「金剛の紅茶は、出涸らしを使っていたのか」 金剛「ハイ……」 提督「見えない所で健気だな、金剛。そうやって少しでも節約しようとしていたのか」 金剛「そもそも、たかが秘書の私も紅茶を飲んでいるのがおかしいのデス」 金剛「テートクは優しいから私に紅茶を飲むの許可してくれていますケド、本来だったらダメなんデスよ?」 提督「秘書の特権だ。私の城ではそうなっている」 149 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 15:04:30.54 ID:VCXgUKuM0 金剛「そう言うと思っていたネ」ソッ 提督「む」 金剛「大好きですよ、提督」ギュ 提督「金剛、時間と場所を弁えろと言ったはずだろう」 金剛「今は仕事前のティータイムです」 提督「ここは提督室だが」 金剛「私達以外、誰も居ません。つまり、誰の目にも触れません」 提督「……まったく、抜け道を探すのが上手いな」 金剛「提督の秘書になる為の必須技術だと思いますよ?」 提督「ごもっとも」 金剛「──サテ! デスクワークをしましょう!」 提督「ああ。だが、その薄味の紅茶は私が貰う。そして、これからは使えなくなるまで私の紅茶にも出涸らしを使う事」 金剛「え?」 提督「私も鎮守府の懐に貢献せねばな」 金剛「あはっ。やっぱり、提督は優しいです」 提督「私のやりたいようにやっているだけだよ」 150 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 15:14:42.86 ID:VCXgUKuM0 提督「──さて、今日の遠征練習についてだが、金剛はどう思った?」 金剛「──まだ錬度が足りないと思いマス。あれではまだ、敵が現れた時に無駄撃ちしそうデス」 提督「同意見だ。だが、上から指示された近海の警備任務の項目をギリギリながらクリアしているのも事実」 提督「そこでだ。彼女らにはしばらく警備任務と海上護衛任務で────」 金剛「海上護衛はまだ早いと思いマス。実戦で経験を────」 提督「そうだな。その方向でやって────」 金剛「こっちの資料によると────」 提督「防空射撃演習か────」 金剛「────」 提督「────」 ……………………。 瑞鶴「…………」 瑞鶴(……仕事をしてるけど、楽しそう。いいなぁ……) 瑞鶴(秘書、か……。お茶の練習、しよう) …………………… ………… …… 153 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 15:28:41.08 ID:VCXgUKuM0 提督「ふう……。今日の仕事、終わったな」 金剛「うー……疲れまシタァ……」 提督「秘書の仕事、だいぶ慣れてきたようだな」 金剛「いっぱいいっぱいデース……。まだまだ速くなれるはずデース……」 提督「向上心があって良い事だ」 金剛「…………テートク、マルヒトマルマルデース」 提督「もうそんな時間か」 金剛「そうデス。この時間が悪いのデス」 提督「うん?」 金剛「提督。提督はどうしてそんな目をするのですか?」 金剛「希望を失って、絶望しか見えていないかのような目をしています」 提督「…………」 金剛「私、知りたいです。提督の過去を」 提督「……ストレートだな、金剛」 金剛「それが私の良い所で悪い所です」 157 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/19(土) 15:59:21.12 ID:VCXgUKuM0 提督「よく分かっているようだ」 金剛「踏み込まれたくないのだったら、そう言ってください。私は強要したくないです」 提督「……少し、時間をくれるか?」 金剛「はい、待ちます。いつまでも」 提督「………………金剛」 提督「答える代わりに、髪、梳かさせてくれ」 ……………………。 金剛「ンー♪ 幸せデス♪」 提督「それは良かった」 金剛「こうしていると、眠くなるのが玉に瑕デス……。もっとこの幸せを感じていたいの二ー……」 提督「眠くなったら寝ても良いんだぞ。無理はするもんじゃない」 金剛「勿体無いデース……。折角テートクがーブラッシングしてくれているのニー……」 提督「…………」 金剛「…………」 提督「……綺麗な髪だな」 金剛「自慢のー……髪デース……」 提督(ホント、綺麗だな……) 提督(艶もあるし、細く柔らかい。自然な栗色の毛で、風に靡けば一層美しさが増すだろうな) 提督「……………………」 158 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 16:10:47.41 ID:VCXgUKuM0 提督「沈ませはせんよ。必ず」 金剛「…………」 提督「む」 提督(寝たか……。自室へ運んで──いや、勝手に部屋に入るのはマズイか) 提督(なら私のベッドへ運ぶか。嫌がる事はないだろう)ソッ 提督(……こうして見ると、本当にただの女の子なんだがな) 金剛「てーとく……」 提督「ん、すまん。起こしたか」 金剛「私が……護ります……」 提督「……寝言か」 提督(護る、ね……) 提督(…………悲しい事だ) …………………… ………… …… 162 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 16:39:12.15 ID:VCXgUKuM0 金剛「で、言い訳はありますか、テートク」 提督「……無い」 金剛「私、前に言いましたよね? 風邪を引くって」 提督「……言った」 金剛「じゃあ──どうして風邪を引いてるんですか!!」 提督「面目ない……」 雷(あの司令官が言い負かされてる……) 電(金剛さん、ある意味凄いのです……) 響(私には真似できない……) 瑞鶴(私もよ……。恐ろしくてできないわ……) 金剛「ええ。確かに私が提督の部屋で眠ってしまったのが悪いですよ?」 金剛「でも、起こすなり一緒の毛布に入るなりと方法はいくらでもあったんじゃないですか?」 雷(さり気なくとんでもない発言してるのに気付いてるのかしら……) 163 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 17:02:42.60 ID:VCXgUKuM0 金剛「前に毛布が無い時、一緒に寝ましたよね?」 瑞鶴(なんですって!?) 金剛「前例はあったのに、どうして今回はやらなかったのですか?」 提督「…………あの時は、金剛の同意を貰っていただろ」 金剛「では、私が嫌がるとでも思ったのですか?」 提督「…………嫌がらないと思う」 金剛「分かっているじゃないですか!! そういう時は一緒に寝てください!」 電(はわわ……! 聞いてるこっちが恥ずかしいのです……) 提督「だが……論理的に──」 金剛「てーいーとーくー!?」 提督「……………………」 金剛「ちゃんと反省して下さい。提督が不調だったら、公私共に困るんですよ?」 提督「…………分かった。以後無いようにする」 金剛「──はい。ちゃんと反省して、分かってくれたら良いんです」 金剛「ふう……。デハ、今日のミッションは瑞鶴と私を除く七隻で演習をすれば良いんデスね?」 雷(あ、真剣の時──じゃないわね。私事の時は日本語が流暢になるのね) 提督「ああ……頼んだ」 …………………… ………… …… 165 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 17:12:45.06 ID:VCXgUKuM0 金剛「──と、いう訳で! 今日は私が提督の代わりに演習総指揮を執りマース!」 金剛「ちなみに命令に背いた者、昼に夜戦を試みようとする者、支障をきたす私語をする者は吊るして良しと許可を貰っていマス」 川内・那珂「ひぃ!?」ビクゥ 響「ああ……君達は早々に吊るされてたね、同胞よ」 金剛「弾は開発妖精さん特製のペイント弾を使いマス。水で簡単に落ちるので、気にせず当ててくださいネー」 金剛「当たった箇所で瑞鶴と私が轟沈判定を出しマス。砲塔に当たったらその砲塔は使えなくなると思ってくださいネー」 金剛「質問はありマスか?」 響「はい。中破、大破の判定はどんな基準なんだい?」 金剛「基本的にありまセン。けど、重要箇所に被弾したら使わないように意識して下サイ。当たると冷たいからすぐに分かると思うネ」 雷「はーい! 被弾箇所を意識しながら戦闘するのって、物凄く難しくない?」 金剛「それは実戦でも同じ事ヨー? 至近弾でもない限り、被弾すると基本的に使えなくなるデショ?」 金剛「むしろ、被弾箇所を意識せず戦闘を続行すると、思わぬ被害が生まれマス。なので、実戦でも被弾箇所は意識して下さいネ」 電「あの……。弾は二十発だけなのですか?」 金剛「これからはもっと遠くの海域に足を運ぶ事になりマス。つまり、戦闘回数が多くなるわネ。確実に当てるのは難しいケド、浪費しないよう出来るだけ当てる訓練も兼ねていマス」 166 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 17:25:01.24 ID:VCXgUKuM0 暁「はい。魚雷は?」 金剛「今回は無しデス。開発妖精さんに期待してくださいネ」 川内「はい!! 夜戦の演習はやって──」 金剛「吊るしますヨ」 川内「い、いえ!! なんでもな──あ、違った、えと……あっ! や、夜戦の演習って今後やるの!?」 響(上手くかわしたね) 金剛「今の所その話は無いデスが、提督に聞いてみますネ。他にありマスか?」 金剛「………………無いみたいネ。それじゃあ、演習開始デス!!」 …………………… ………… …… 167 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 17:34:15.53 ID:VCXgUKuM0 提督「ケホッ。まだ少し甘い気もするが、さすが艦娘。よくやっている」 コンコン──。 提督「──誰だ?」 任務嬢『任務嬢です。元帥がお見えになりました』 提督「!? ……お通ししろ」 ガチャ── 元帥「やあ、数日ぶりだね」 提督「ハッ」ピシッ 元帥「いやいや、畏まらなくて良い。楽にしたまえ」 提督「いえ! 元帥殿に対し、そのような行為は出来かねます」 元帥「私が良いと言っている。……そうだな、座って話そうか」 ……………………。 169 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 17:44:59.66 ID:VCXgUKuM0 提督「どうぞ。元帥殿がいらっしゃるのでしたら、もっと上等な茶葉を用意したのですが……」 元帥「構わん構わん。濃は程々の茶が一番だよ。礼儀作法は苦手なのでな」 元帥「──いきなり本題に入るが、君は非常に興味深い戦果を挙げているね」 元帥「着任初日で高速戦艦を保有。二日目で空母。三日目では総司令部の指定した神通、川内、那珂の進水」 元帥「このような大戦果を挙げる者はそうそう居らぬよ」 提督「恐縮です」 元帥「だが、一つ気になるものがある。二日目に建造した瑞鶴」 元帥「アレは、港に沈んでいた艦を材料に造ったとあるが、間違いないね?」 提督「ええ。建造妖精達が総出で拾い上げてくれました」 元帥「ハッハッハッ。実に面白く、無駄の無い行為だ。だが──」 元帥「単刀直入に言おう。瑞鶴を総司令部へ引き渡しなさい」 提督「…………理由をお聞きしても宜しいですか?」 171 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 18:01:47.58 ID:VCXgUKuM0 元帥「ふむ、理由とな?」 提督「はい。上官の命令は絶対です──が、我が鎮守府は残念ながら小さい。小さい故に戦力が乏しい。そんな小さい鎮守府で、最大戦力の一隻です」 提督「今、彼女を手放してしまうと、戦力の降下だけではなく深海棲艦から母港襲撃を受けた際──」 元帥「それは無い」 提督「……無い? なぜですか」 元帥「そういう風に出来ておるのだよ、深海棲艦というモノは」 提督「…………すみません、話が逸れてしまいました」 元帥「よい。私が逸らした」 提督「──艦娘は一人の提督にしか命令を聞かないと耳にします。まるで、初めに見た者を親と思う雛鳥のように」 提督「それなのに、どうして総司令部へ? こう言うのは少々気が引けますが、他人では完全に役立たずですよ」 元帥「……………………」 提督「……元帥殿?」 172 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 18:07:20.86 ID:VCXgUKuM0 今更だけど、多少グロっぽい表現が出てきます。 注意サレタシ ついでにいずれエロも書く予定。 厳重注意サレヨ 175 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 18:22:38.40 ID:VCXgUKuM0 元帥「……いやなに。君への処遇を考えている所だ」 提督(は? 処遇?) 元帥「そうだな。うむ。素質は充分にある」 元帥「少将よ、君は深海棲艦に興味はあるか?」 提督「……はい。大変興味深くはあります」 提督(なんだ……? どういう意図の質問だ……?) 元帥「では、深海棲艦をどう思っている?」 提督「どう……とは?」 元帥「そのままの意味だ。何でも良い。率直に答えてくれ」 提督「……………………」 提督(まさか、調べていたのに感付かれたか……?) 提督(いや、その可能性は低い……。倒した敵艦から出てきたデータを回収しているようにしか見えていないはずだ) 176 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 18:39:29.88 ID:VCXgUKuM0 提督「そうですね……なんと言えば良いのやら……」 提督(どう答えるのがベストだ……。くっそ……頭が上手く回らん……!) 提督(仕方が無い……冗談を言って有耶無耶にするか) 提督「性能の驚きを隠せません。アレらを素材とした艦娘を建造すれば、我が鎮守府もすぐさま強くなるでしょう」 元帥「宜しい。二階級特進だ。少将、君は今から大将だ」 提督「なーんて──ハァ!?」 提督「な!? ど、どういう事ですか元帥!!」 元帥「どうもこうも、そういう事だ。おめでとう」 提督「……私は死ぬのですか」 元帥「何か勘違いしているようだが、殉職による二階級特進ではない」 提督「ではなぜ……」 177 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 18:51:54.18 ID:VCXgUKuM0 元帥「なぁに。我々の計画を話すに値すると判断したからだ。大将以上の方が何かと融通が利くからのう」 元帥「深海棲艦を素材にして艦娘を造ったという実績もある」 元帥「何より今は駒が圧倒的に足りない。多少強引でも引き入れている」 元帥「そして──」 元帥「もう逃げる事は叶わんよ、大将殿?」ニィ 提督(おい……オイオイオイオイオイオイオイオイ!!!!! 地雷を踏み抜いたどころの話じゃねーぞ!!?) 提督(帝國海軍はどこかおかしいと思っていたが、真っ黒なんじゃねーのかこれ!?) 元帥「何もかもという訳にはいかんが、話そうじゃないか」 元帥「我々の計画を────」 …………………… ………… …… 178 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 19:16:03.59 ID:VCXgUKuM0 元帥「始まりは、艦娘建造計画から始まった」 元帥「我々の今の敵は深海棲艦。将校でもそう教えられただろう」 元帥「そして、その深海棲艦を倒す為に艦娘を使っている」 元帥「今でこそ当たり前の存在だが、当時の艦娘はとても不安定でな」 提督「……………………」 元帥「いやあ、それはもう阿鼻叫喚、地獄絵図だったよ」 元帥「失敗作は様々な死に方を迎えた。全身の皮膚が剥がれ落ちる者。溶けるように血の塊へと変わる者」 元帥「身体中から鉄の柱が突き出る者。突如骨が砕ける者。人の形を保てなくなった者……」 元帥「どんな形であれ、その成れの果てが深海棲艦だ」 提督「!!」 提督(やっぱりか……。倒した深海棲艦から艦娘のデータが出てくるなんておかしいと思った) 元帥「その顔を見るに、既に予測はしていたようだな」 提督「……ええ。敵艦から艦娘のデータが出る事に疑問を抱いていましたから」 提督「それに、ところどころ艦娘と似ていますしね」 180 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 19:32:40.97 ID:VCXgUKuM0 元帥「結構。話を続けよう」 元帥「その深海棲艦だが、最初は艦娘と大して変わらん装備だった」 元帥「だが、彼女らは次第に我々の想像を上回る兵器を扱ってきだした」 元帥「なぜだと思う?」 提督「……彼女らも、艦娘と同じように成長している……?」 元帥「半分正解だ」 元帥「もう半分は、大陸の技術だ」 提督「大陸……? 将校で言っていた深海棲艦の大陸ですか?」 元帥「うむ」 元帥「更に、深海棲艦は燃料も弾薬も必要無い」 提督「……どういう事ですか。どうやって動いているんですか、それは」 元帥「これについてはまだ解明されていない。が、一説によると負のエネルギーが原動力では、と言われている」 182 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 19:52:36.94 ID:VCXgUKuM0 提督「負のエネルギー?」 元帥「そう。恨みや怨念。現に彼女らが率先して狙うのは人間ではなく艦娘。それはよく実感しているんじゃないかね?」 提督(────そうか。最初の出撃の挟撃してきた駆逐艦。確かに俺じゃなくて金剛を狙っていた) 元帥「思い当たる節があるようだね」 元帥「その負のエネルギーだが、戦争をしている内はまず無くならないだろう」 元帥「殺し、殺され、沈んでいくのだ。無くなる訳がない」 元帥「深海棲艦を解体して調べてみたが、動力となりそうな部分は一切発見されなかったらしい」 元帥「その深海棲艦を素材にして、艦娘を造ろうと試みた。が、今まで一回たりとも成功しなかった」 元帥「君を除いて」 元帥「君の瑞鶴、通常の艦娘よりも性能が高いのでは?」 提督「……いえ、この鎮守府に空母は瑞鶴一隻しか居ないので分かりかねます」 元帥「そうか……残念だ。補給はしたのかね?」 提督「いえ。資材が枯渇寸前の為、金剛、瑞鶴に回す資材がありません」 元帥「そうか……色々と足りないのだな」 186 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/19(土) 20:16:23.06 ID:VCXgUKuM0 元帥「よし。資材については特別配給をしよう」 元帥「これから色々と結果報告をして貰わねばならんからなぁ」 元帥「さて、前置きはそろそろ終わりにしよう。本題だ」 元帥「我々は今、戦争で劣勢状態にあるのは分かっているね?」 提督「……はい」 元帥「深海棲艦を基とした艦娘を大量に造り、そして戦争を勝ち抜け」 元帥「勝たなければいけないのだよ。でなければ我々の未来は無い」 提督「……未来、ですか」 提督(何言ってるんだこのクソジジイ。さっき深海棲艦は艦娘しか狙わないって言ったじゃねーか) 提督「ですが、深海棲艦は艦娘しか狙わないと──」 元帥「そんな事は言っておらん。率先して狙うのは艦娘だが、人間を狙わない訳ではない」 提督「……失礼しました」 元帥「よい。大将、ランチェスター第二法則は知っているか?」 187 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 20:25:33.54 ID:VCXgUKuM0 提督「戦闘力=質×量×量……ですよね?」 元帥「うむ。現在の深海棲艦の数は、艦娘の数千倍は下らないと言われている」 提督「数千……」 元帥「総合的な質で言うと我々の方が遥かに上だ。だが、圧倒的な数の暴力には勝てん」 元帥「その内、艦娘は全滅して深海棲艦が人類を滅ぼしにくるだろう。そうなると、人類は滅亡する」 元帥「現に、いくつかの基地は艦娘が全滅したという報告もある」 提督「……その基地はどうなりましたか」 元帥「放棄した後、乗っ取られたよ。現在は深海棲艦が拠点にしている」 元帥「彼女らも母港というものが恋しいのだろう……。母港に対して一切の砲撃はしてこなかったよ」 元帥「だが、それを逆手に戦力が揃うまで一切出撃をしなかった基地もあるが、流石に手を出された」 元帥「なるべく母港を傷つけず、艦娘は例外なく沈められた」 188 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 20:50:03.71 ID:VCXgUKuM0 元帥「──量で勝てないのなら、質で勝つしかあるまい」 元帥「それも、圧倒的な質で」 提督「……そうですね」 元帥「だからこそ、深海棲艦を基とした艦娘を建造して欲しい」 提督「……ただの偶然かもしれませんよ」 元帥「ただの偶然ではないかもしれんだろう?」 元帥「我々に残された選択肢は数少ない。君が協力してくれそうでなかったら、瑞鶴を強奪して研究の為に華々しく散っていっただろう」 提督「それは──!」 元帥「倫理的に問題がある。それは分かっている。だが、そうせざるを得ないほど切羽詰っているのだ」 元帥「例え元艦娘を材料に──いや、回りくどく言うのは止めよう」 元帥「艦娘の死体を利用してでも、やらなければならない」 提督「……………………」 元帥「やってくれるのであれば、定期配給される資源を上乗せしよう。……明らかに必要ないであろう程になればストップはするが」 元帥「勿論、通常の任務報酬も今まで通りだ」 192 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 21:41:22.51 ID:VCXgUKuM0 提督「…………仮に拒否した場合はどうなりますか?」 元帥「不穏分子と判断し、艦娘諸共殺害する。この情報を漏らす訳にはいかぬから、君に関わった者も全員行方不明となるだろう」 提督「ッ!!」 元帥「既に言ったではないか。逃げる事は叶わぬと」 元帥「特に、君は艦娘達に好かれているようだね。目の前で見せてあげようか、彼女らの生身が解体されるのを」 提督「……分かりました」 提督「協力……します……」 元帥「うむ。頼んだぞ」スクッ 提督「……お帰りですか」 元帥「濃も忙しい身でな。──ああそうそう」 元帥「大将のバッヂだ。付けておきなさい。それと──」 元帥「くれぐれも、この話は漏らさないように。濃らと深海棲艦を基とした艦娘以外には、な」 提督(漏らしたらどうなるか分かっているな、とでも言いたそうだな) 提督「勿論です。ご安心を」 元帥「……では、失礼する。君の目に光が宿ったのを初めて見たよ」 提督「!」 ガチャ──パタン 提督「私の目に光、ねぇ……」 …………………… ………… …… 193 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 22:03:22.21 ID:VCXgUKuM0 コンコン──。 提督「入れ」 ガチャ── 金剛「テートクー! 演習終わったヨー!!」 提督「ああ、見ていた」 瑞鶴「え、起きていたの?」 金剛「……提督?」 提督(──ヤベッ!) 金剛「やぁあっぱり提督は私の話を聞いてくれなかったのですねぇ……?」 提督「いや……そういう訳じゃない……」 金剛「じゃあどうして身体を休めず演習を見ていたのですかッ!?」 金剛「──って、あれ? これ……大将バッヂ……? どうしたんですかこれ?」 提督「……さっき元帥殿がやってきて、なぜか二階級特進になった」 金剛・瑞鶴「はぁ!?」 196 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/19(土) 22:24:42.00 ID:VCXgUKuM0 提督「なんでも、初日に戦艦、二日目に空母、三日目に総司令部が指定した川内型の保有。異例な速度での近海の敵艦排除。沈んだ船を引き上げて資源の有効活用。その他諸々」 提督「尋常じゃない戦果と新たな資源の活用法を編み出したという理由で二階級特進……だそうだ」 瑞鶴「へぇ……そんな事もあるんだ……」 金剛「…………」 提督「元帥殿の前で寝ている訳にはいかなく、かといって風邪を引いたと言えば体調管理すら出来ていないのかと思われそうで言えなく……」 提督「バッヂを貰ったあと元帥殿に演習する姿が目に入ったらしく、演習が終わるまでずっとご見学されていたんだ」 瑞鶴「ええ!? こ、金剛さん……私達、大丈夫だったかな……?」 金剛「──え、ああウン。大丈夫だと思うヨ?」 提督「……その演習についてなんだが、瑞鶴、この書類の山を片付けたら話があるから、ちゃんと起きているように」 瑞鶴「ッピィ!?」 提督「以上だ。金剛、秘書の仕事は大丈夫か?」 金剛「……ハイ! まだまだいけますヨー!」 瑞鶴「そ、それじゃあ私はこれで……」ガクガク ……………………。 199 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/19(土) 22:53:17.18 ID:VCXgUKuM0 金剛「……さて、提督」 提督「…………」 金剛「私が言いたい事、提督なら分かってますよね?」 提督「……ああ」 金剛「本当は何があったんですか?」 提督「……すまん。これは誰にも言えない」 金剛「……秘書の私でも、ですか?」 提督「ああ」 金剛「……そうですか」 金剛「──では! 書類を分けますネー!」 提督「…………」 金剛「? どうしましたテートク。鳩がアトミックバズーカに被弾したような顔をして」 提督「……私の顔は爆発四散した肉みたいに酷いか?」 金剛「まっさか〜」 205 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 23:21:57.03 ID:VCXgUKuM0 金剛「……いつか、話せるようになったら話してください。約束ですよ?」 提督「……ああ、約束だ」 金剛「ふふっ。じゃあテートク、ゆっくり休んで──」 提督「そうか。金剛が一人でこの書類の山を片付けてくれるのか」 金剛「…………」 金剛「頑張りマス!!!」 提督「冗談だ……。早く終わらせて寝ようか」 …………………… ………… …… 208 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 23:34:36.80 ID:VCXgUKuM0 提督「んー……! 終わった……」 金剛「現在マルマルサンマルですネ。昨日より早いデース」 提督「ご苦労だった金剛」 金剛「ありがとうございマース! ご褒美はキスが良いデース」 提督「調子に乗るな」コツン 金剛「アウッ。むー……残念デース……」 提督「明日も早い。自室に戻って寝なさい」 金剛「……看病してはイケマセンか?」 提督「風邪が移ったら困る」 金剛「テートクが看病してくれるのなら風邪になるのも──ァウッ」コツン 提督「バカを言うな。皆も心配するだろう」 金剛「……テートクも?」 提督「当たり前だ」 金剛「……ハイ! 風邪を引かないように努めマス!」 提督「良い返事だ」 金剛「それじゃあ、グッナイテートク!」 提督「ああ、おやすみ」 提督(…………さて、瑞鶴と話さなければな) ……………………。 211 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/19(土) 23:52:08.16 ID:VCXgUKuM0 提督「……瑞鶴、話をしようか」 瑞鶴「はい……」ビクビク 提督「……今日、この提督室にて非常に問題のある発言があった」 瑞鶴「…………ッ」ビクッ 提督「瑞鶴、お前は上に目を付けられた」 提督「深海棲艦を材料としたお前が──」 瑞鶴「────え?」 ……………………。 瑞鶴「……嘘、よね?」 提督「本当だ」 瑞鶴「ま、またまた提督さんたら! 私をからかってるんでしょ?」 提督「……残念だが、本当だ。できれば私も信じたくない」 提督「だが、この大将を示すバッヂは紛れもなく本物……。あの話は嘘偽りが無い事を証明している」 213 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 00:10:22.98 ID:1K4VV5nm0 瑞鶴「で、でも! 私は補給が必要よ! さっきの話が本当なら、深海棲艦は──」 提督「通常の空母に補給に必要な燃料と弾薬、調べさせてもらった」 提督「結論を言うと、瑞鶴……お前の補給に必要資材は圧倒的に少ない。駆逐艦並みだ」 瑞鶴「……数字で言うと、どのぐらい差があるの?」 提督「通常空母と比べ、4〜5倍の差がある。空母でこの数字は絶対にありえない」 提督「あと、いくら駆逐艦相手でも、経験の全く無いお前が撃沈させるのは無理がある話らしい」 提督「……どういう事か、もう説明しなくても分かるな」 瑞鶴「……………………」 提督「…………」 瑞鶴「ねえ、提督さん……私、居ちゃいけないのかな……」 提督「…………」 瑞鶴「私ね、役に立てて嬉しかった。皆からお礼を言ってもらって、提督さんに頭を撫でてもらって、すっごく幸せだった」 瑞鶴「ダメなの……? 他の皆が当たり前のように感じる幸せを、私は感じちゃいけないの……?」 提督「…………」 214 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 00:29:31.55 ID:1K4VV5nm0 瑞鶴「私……提督さんの会えて良かったなって思ってた……。でも、今は違う。会わない方が──造られない方が良かったって──」 提督「それは私が困る」 瑞鶴「…………」 提督「瑞鶴が居なかったら、今の鎮守府は無い。下手したら無くなっていた可能性だってある」 瑞鶴「……でも、私の身体は──」 ──同族の死体── 瑞鶴「──それで出来てる……。やだよ……こんなの……」 提督「…………」 瑞鶴「だって……気持ち悪いじゃない……」 提督「……スゥ…………瑞鶴!!」 瑞鶴「ぴゃい!?」ビクゥ 提督「…………」ジッ 瑞鶴「あ、ああぁあの……? わ、私、なに、か粗相を……?」ビクビク 215 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 00:49:19.41 ID:1K4VV5nm0 提督「お前は誰に仕える艦だ」 瑞鶴「て、提督さんに、です」ビクビクビク 提督「私はお前が居なかったら困ると言った。お前は私に必要だ」 提督「それすら信じれないか?」 瑞鶴「それとは……また、ちょっと別というか……」オドオド 提督「瑞鶴」 瑞鶴「はいッ!!」ビクッ 提督「私の前に立ちなさい」 瑞鶴「え……?」 提督「ほう、指示を聞き逃したか。それは吊るさな──」 瑞鶴「はいぃ!!!」シュタッ 提督「うむ。よろしい」 218 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 01:11:30.36 ID:1K4VV5nm0 瑞鶴「…………」ビクビクビク 提督「…………」スッ 瑞鶴「ッ!!」ビクッ 提督「ほれ、こうして触れる」ナデナデ 瑞鶴「…………?」ビクビク 提督「む……触っていて心地良い髪だな。ちょっとブラッシングさせてくれ」 瑞鶴「え、え? 良いけど……え?」 提督「椅子に座れ。──よし。そしてリボンを外してっと……梳くぞー」 瑞鶴「あ……」 瑞鶴(優しくて丁寧だ……気持ち良い……) 提督「ん? 痛いか?」 瑞鶴「……全然」 提督「なら良かった」 瑞鶴「……提督さん、嫌じゃないの?」 219 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 01:37:00.30 ID:1K4VV5nm0 提督「むしろもっと触らせてくれ」 瑞鶴「……変なの」 提督「よく言われる」 瑞鶴(ああ……これ、すっごく良い……。なんでだろう……さっきまでの辛い気持ちが嘘みたい……) 提督「落ち着いたか?」 瑞鶴「うん……」 提督「……まだ続けたいんだが、良いか?」 瑞鶴「ぜひお願い!」 提督「うむ」 瑞鶴(……自分の身体が死んだ艦娘を使っているっていうのは凄く嫌だって思った。けど……) 瑞鶴(こうして提督さんが髪を梳いてくれるなら、別にどうでも良いかなぁ……) 瑞鶴「ねー、提督さんー」 提督「んー?」 瑞鶴「私を正面から抱き締めれるなら私もこの身体の事を気にしない──って言ったら、どうする?」 瑞鶴(ちょっとだけ、イタズラ) 瑞鶴「なーんて──!?」 提督「こうする」ギゥ 223 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 02:00:53.04 ID:1K4VV5nm0 瑞鶴「え、ええっ!?! ちょ、て、提督さん!?」 提督「どうした、私は抱き締めれるぞ。何も変わらない、普通の女の子じゃないか」 瑞鶴「い、いいいやそういう事じゃなくて!?」 提督「ああもう、うるさい。大人しくしろ」ナデナデ 瑞鶴「ぁ………………はぃ……」 提督「…………」ナデナデ 瑞鶴(何これ……今まで感じた事がないくらい幸せ……) 瑞鶴(なんで……? なんでこんなに幸せなの……?) 提督「瑞鶴」 瑞鶴「……はひ?」 提督「勝手に死んだり、自分を蔑ろにするなよ」 瑞鶴「…………うん」 瑞鶴「絶対、そんな事しない……」 瑞鶴「約束する……」 …………………… ………… …… 230 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 02:26:40.29 ID:1K4VV5nm0 提督「落ち着いたか?」スッ 瑞鶴「────あ」 提督「うん?」 瑞鶴「……ううん、名残惜しかっただけ」 瑞鶴「ありがとう、提督さん」 提督「うむ。よろしい」 瑞鶴「それに、ポジティブに考えたら私ってすっごくコストパフォーマンスが良い空母なのよね」 提督「そうなるな」 瑞鶴「それって、他の誰よりも提督さんの力になれるって事じゃない!」 提督「それは実力次第だな」 瑞鶴「むぅ……そこは嘘でも良いから『そうだよ』って答える所じゃない?」 提督「ほう。ではまず秘書の仕事と出撃を両立してもらおうか?」 瑞鶴「う……」 瑞鶴「──や、やる!!」 提督「お?」 瑞鶴「金剛さんに負けてられないもの!」 瑞鶴「提督さん、明日から私が秘書になって良い?」 提督「…………」 提督(変に対抗意識を燃やさせるんじゃなかった……) …………………… ………… …… 247 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 13:23:06.45 ID:ngVu1Op90 〜翌日〜 瑞鶴「負けました……」ズゥゥゥン… 金剛「秘書で私に勝とうなんて、百年早いネー」 響「特にお茶淹れは段違いだったね。月とすっぽんと言っても過言じゃなかった」 瑞鶴「うっ」グサッ 暁「レディとしての振る舞いも金剛さんの方が上ね。さすが英国からの帰国子女といった所かしら」 瑞鶴「うぅ……」ドスッ 神通「提督の細かい動きを見れていたのも金剛さんでしたね……」 瑞鶴「あぐ……」グシャァ 提督「金剛、今後も秘書をよろしく」 金剛「ハイ♪ 私に任せてくだサーイ♪」 瑞鶴「あああぁ……」トドメ 提督「──話は変わって、遠征について言っておくことがある。が、その前に……」 雷「どうしたの、司令官?」 提督「整列」 全員「!!!」ビクッ ザッ──!! 249 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 13:34:48.33 ID:ngVu1Op90 提督「点呼」 金剛「1!」 川内「2!」 神通「3!」 那珂「4!」 暁「5!」 響「6!」 雷「7!」 電「8!」 瑞鶴「9!」 提督「よろしい。では今後の遠征についての計画を発表する」 提督「総司令部の意向で、この鎮守府への定期資材配給に上乗せが約束された。──だが、私はこれに頼りきろうと思っていない」 提督「確保できる資源があるのなら自分達で調達するべきだ」 提督「現在、予定しているのは警備任務と海上護衛任務の二つ」 提督「だが、海上護衛任務に就くには旗艦を軽巡にしなければならないという決まりがある」 提督「そこで、次の出撃で一番適切だと思える軽巡の者を海上護衛任務の旗艦となってもらう」 提督「だが、それではモチベーションが上がらないと思い……こんな物を用意した」スッ 252 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/20(日) 13:48:25.98 ID:ngVu1Op90 金剛「……はい、テートク」 提督「なんだ?」 金剛「それはなんデスか?」 提督「間宮アイスクリーム券だ」 全員「!!?」 提督「人数分頂いたのだが、生憎と私は甘い物が苦手でね。一枚余ってしまう」 提督「そこで今回、全員が一回出撃して、特に頑張った者に+一枚の景品として渡そう」 提督「質問はあるかな」 響「はい! 駆逐艦と戦艦など、戦力に差がありすぎるのは不公平だと思うのだけど、そこはどうするんだい司令官!」 提督「私は一番戦果を挙げた者とは言っていない。特に頑張った者と言った。故に、戦果が全てではないから安心したまえ」 提督「……無いとは思うが、目の前の欲に駆られていると判断した場合、その者へのアイスクリーム券は 一枚も与えないから注意するように」 全員「はいっ!!!!」 提督「他に質問はあるか? ……………………無いようだな。では、第一艦隊、第二艦隊の編成を発表する──」 …………………… ………… …… 254 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 14:01:52.20 ID:ngVu1Op90 ぜーはーぜーはー……。 提督「皆よく頑張った。全員が全員を助け合い、目立った失敗も無かった」 電(もうヘトヘトなのです……) 川内(夜戦で、気付いたら後ろから敵駆逐艦が主砲を向けていたくらい神経磨り減った……) 金剛(ノー……睡眠不足はダメね……これから気を付けないといけまセン……) 瑞鶴(疲れた……これが私の全力よ……! でも、ダメだったらどうしよう……) 提督「それでは、提督室にて旗艦になる軽巡と特に頑張った者を発表する。総員、補給と入渠を済ませたら随時提督室に来るように」 …………………… ………… …… 提督「さて、と準備しなければな」 金剛「何の準備デスか?」 提督「……うん? なぜここに──ああ、金剛は今回被弾していなかったな」 提督「間宮アイスクリーム券を封筒に入れて準備をする。ついでに時間が余るはずだから少しでも書類を片付けようとね」 金剛「ナルホド。では、私は書類を整理しマスね?」 提督「ああ、頼む」 …………………… ………… …… 257 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 14:16:24.92 ID:ngVu1Op90 雷「遅くなってごめんなさい。雷、出頭したわ」 提督「ん、これで全員揃ったな」 金剛「ハイ、雷。ココアデース」 雷「え!? 良いの、司令官!?」 提督「うむ。構わん」 雷「わぁー! ありがとう司令官、金剛さん!」 提督「……」 金剛(あ……また一瞬、悲しそうな表情を浮かべました……) 金剛(どうしてですか、提督……) 提督「飲みながらで良い。今から順不同で発表し、封筒を渡す。呼ばれたら私の前に来てくれ。封筒は各自室で開けるように」 提督「まずは暁」 暁「はい!」 提督「休み無く動き回り、砲雷撃戦、また戦闘後の索敵も申し分なかった。今回の戦闘で一番経験を積んだだろう。良い実戦だったな」 暁「ありがとうございます、司令官」 259 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 14:31:52.25 ID:ngVu1Op90 提督「川内」 川内「はい!」 提督「少し危なっかしい所もあったと思うが、その猛攻は素晴らしいものであった。敵の動きに対して反応が速かったようにも見えるから、その分野を伸ばすと夜戦にも役立つだろう」 川内「褒めてくれるの……? ありがとう!」 提督「神通」 神通「──はい」 提督「……運が悪かったのか、敵に狙い撃ちされていたな。だが、それらのほとんどを避け、その中でも砲雷撃を止めなかったのは驚嘆に値する」 神通「あの……提督……ありがとうございます」 提督「電」 電「は、はい!」 提督「慣れているのもあるかもしれんが、どの動きも機敏で質が良く、まさに電の本気を垣間見た。常日頃から努力しているのが窺える。良くやった」 電「あ、あの……! ありがとう……」 提督「瑞鶴」 瑞鶴「はいっ!」 提督「前回よりも艦上機の精度が増していたな。特に爆撃機の精度が素晴らしい。その機体で敵重巡を一撃大破させた功績は非常に大きかった。これからも頑張りなさい」 瑞鶴「ふふっ、ありがとねっ」 262 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 14:45:05.65 ID:ngVu1Op90 提督「響」 響「はい」 提督「敵空母から直撃弾を受けたのには肝を冷やされたが、その際のダメージコントロールは目を見張るものがあり、勉強にさせてもらったよ。不死鳥の名は伊達じゃないな」 響「これは照れるな……スパスィーバ」 提督「那珂」 那珂「はーい!」 提督「言葉は普段と変わらないが、その行動は戦域全体を見据えたもので、何より真剣に戦闘へ取り組んでいた。特にあの真剣さはこの鎮守府で右に出るものは居ないだろう」 那珂「提督ー! ありがとーーーーー!!」 提督「…………」 那珂「……ごめんなさい」 提督「……次、雷」 雷「はーい、司令官」 提督「戦果は乏しかったものの、最後の戦闘で直撃弾を受けそうになった金剛を庇って彼女に攻撃を託し、敵空母二隻を撃沈させたのは非常に大きい功績だ。被弾後のダメージコントロールも素早く、よく耐えてくれた」 雷「ありがとう司令官! 私、もっと頑張るからね!」 263 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 14:57:26.49 ID:ngVu1Op90 提督「最後に、金剛」 金剛「ハイ」 提督「出来る事は非常に多くなっており、勉強しているのが分かる。が、いつもよりキレが悪かった。一つ一つ習得していくようにしなさい」 金剛「あぅ……やっぱりデース……」 提督「次に海上護衛任務の旗艦を任せる者を言い渡す」 提督「総合的に見た所、神通、お前が適任だと判断した。頼んだぞ」 神通「え──は、はいっ。頑張ります」 提督「以上だ。ココアが飲み終わった者から自由行動を許可する」 …………………… ………… …… 264 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 15:08:18.78 ID:ngVu1Op90 雷「ごちそうさま司令官! ココア、とっても美味しかったわ」 提督「うむ。これからも良い働きをしてくれ」 雷「はいっ! 雷、司令官の為だったらいくらでも頑張るわね! おやすみなさい!」 提督「おやすみ」 金剛「グッナイ、雷」 ガチャ──パタン 提督「そういえば金剛、自室へ戻らないのか?」 金剛「秘書の仕事がまだ残っていマース。封筒の中身なんていつでも確認できるネー」 提督「……ふむ」 金剛「テートクの仕事のスピードが速くなっていってるから今日も早く終わりそうデス。さっすがねテートクー!」 提督「それもあるが、一番は効率良く仕事を進めれるように金剛が色々としてくれているからだよ」 金剛「そんなことありまセーン。テートク、謙遜しすぎですヨー?」 提督「鏡を向けてやろう」 金剛「むー……私はサポート役なのニ……。メインはテートクですヨ?」 266 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 15:29:19.55 ID:ngVu1Op90 提督「私を剣とするならば金剛は技術だ。いかに優れた剣でも技術がなければ鉄屑に等しい鈍ら剣にすら負けるものだ」 提督「それとも、私に褒められるのは嫌いかね?」 金剛「そ、そんなことありまセン!!」ブンブン 金剛「本当はスキップしたいくらいに嬉しいデス。でも、恥ずかしいというかなんというカー……」 提督「はっはっはっ。そういう所は日本人だな、金剛」 金剛「ぅー……テートクは私をからかってるのデスか……?」 提督「半分からかってるが、もう半分は金剛を困らせたいからだ」 金剛「なんデスかそれー!!」 提督「さて……話は変わるが金剛」 金剛「ハイ、なんですか?」 提督「昨日は何時間ほど寝ている?」 金剛「え。エート……何時間でしょうか、ネ……」 提督「ほう? 自分の睡眠時間すら把握できていないのか、金剛?」 金剛「……二時間デス」 267 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 15:39:49.76 ID:ngVu1Op90 提督「最低でも四時間は寝れるようにしているつもりだったが、余りの二時間はどこへいった?」 金剛「…………自分の部屋で戦術指南書を読んでまシタ」 提督「やはりか」 金剛「……少しだけ、私の心の内を見せても良いですか?」 提督「うむ」 金剛「ありがとうございます提督」 金剛「…………私、もっと提督の役に立ちたいです。そして、提督を護りたいです」 金剛「提督は一緒に海へ出ていますけど、本当は凄く凄く怖い。なぜか敵は提督を狙わないけど、これからはどうなるか分かりません」 金剛「それに、例え狙わないといっても流れ弾はあります。それで提督が…………しまったら、私……その場で提督を追いかけてしまいます」 提督「……金剛」 金剛「は、はい」ビクッ 提督「すまないが、椅子に座るのが疲れた。ベッドへ腰掛けよう。隣に座りなさい」ギシッ 金剛「え……? は、はい……」チョコン 提督「そのまま私へ倒れなさい」 金剛「こ、こう、ですか?」 提督「肩へではない。足の上にだ」 金剛「えーと……はい」ヒザマクラ 268 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/20(日) 15:55:33.81 ID:ngVu1Op90 提督「話を途中で止めてすまなかった。続けてくれ」ナデナデ 金剛「あ…………」 金剛(これ、とっても幸せです……) 提督「どうした、金剛?」 金剛「──あ、ご、ごめんなさい。つい気持ち良くて……」 提督「そうか。それは良かった」 金剛「……えっと……それでですね」 金剛「提督を死なせる訳にはいけません。皆の為にも、なにより私の為にも」 金剛「だから、私は強くなりたいんです」 提督「………………それで?」 金剛「え?」 提督「それだけじゃないんだろう? もっと汚い部分もあるはずだ」 金剛「…………提督はなんでもお見通しですね」 提督「分かる所しか分からんよ」 金剛「提督らしい切りかえしです」 金剛「……でも、ここから先は私自身が嫌う汚い部分ですよ? 良いんですか?」 269 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/20(日) 16:36:24.34 ID:ngVu1Op90 提督「……うん? なにか独り言が聞こえてきたような気がするが、気のせいか。私はこのまま金剛を撫で続けるとしよう」 金剛「くす……。優しいですね、提督」 提督「……………………」 金剛「……私は、怖いんです、瑞鶴が……。いつか、今私が立っている提督の隣を取っていくんじゃないかって」 金剛「今日、秘書としての勝負を持ち込まれた時は心の底から怖かったです。勝てたから良かったですけど、今でも思い出すと背筋が凍りそうです」 金剛「そして、戦力では圧倒的です。あれは私がいくら努力しても勝てそうにないです。スペックが違うというのでしょうか……」 金剛「そのスペックの差を埋めるには、技術しかないと思います。提督を護る為に読んでいた戦術指南書で、どうにかしようと思いました」 金剛「でも、今思うとそれは汚い感情です。提督の為に読み始めたはずなのに、いつのまにか瑞鶴と対抗する為に読むようになってしまいました」 金剛「私は、提督よりも自分の心を優先させてしまったのです。それが醜くて、汚くて、そして悔しい……」 金剛「私は提督が大好きです。提督が傷付きそうになるなら、私は身を挺して庇います。万が一、提督が居なくなってしまったら、私は後を追います。それくらい好きです」 金剛「なのに……いえ、だから、自分の為に本を読むようになっていったのが、物凄く悔しいです」 金剛「提督……ごめんなさい……」 金剛「……………………」 金剛「──提督、ありがとうございます。スッキリしました。これが私の汚くて、嫌いな部分です」 270 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 16:47:32.08 ID:ngVu1Op90 提督「なんの話だろうな」 金剛「ふふっ、独り言です」 提督「そうか、独り言か。それならば仕方が無い」 金剛「……そろそろお仕事に戻らないといけませんね」 提督「何を言ってるんだ金剛。今日のお前の仕事は終わってるぞ」 金剛「え、でも提督の机の上の──」 提督「私には何も見えないな。私に見えるのは、上官の膝に倒れこむほど寝不足の秘書だ」 金剛「……ズルいですよ、提督」 提督「上の者は基本的にズルいんだよ、憶えておくと良い」 金剛「もっと、好きになっちゃったじゃないですか」 提督「そろそろ溺れそうだな」 金剛「とっくに沈んでますよ。水面に届かないくらいに」 提督「困った秘書だ」 金剛「あはっ」 …………………… ………… …… 271 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 17:01:02.25 ID:ngVu1Op90 金剛「ん……今何時──はっ!!」ガバッ 提督「起きたか」 金剛「……私、何時間寝てまシタか?」 提督「三時間にギリギリ届かないくらいだな」 金剛(という事は、今フタサンサンマルくらいデスか) 金剛「……テートク、机のスタンドライトだけでは目を悪くしマスよ」 提督「継続しなければ問題ないだろう」 金剛「私の為に気を遣って……」 提督「今日はこうして仕事をしたい気分だったんだ」 提督「だが、秘書の言う事は最もだろう。電気を付けるぞ?」 金剛「ノープロブレム。大丈夫ですヨ。──ワオッ眩しい」 金剛「さて、私もお仕事を──アレ? もう書類が無いデス……」 提督「言っただろう、今日のお前の仕事は終わったと」 金剛「あれだけあった書類を、たった一人──しかも三時間で終わらせるのは無理があると思います。どこに隠しましたか。終わらせた書類の下ですか?」 提督「……まったく、本当に勘が良いな」 272 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 17:22:45.23 ID:ngVu1Op90 金剛「ほらほら出してください。早く終わらせまショー?」 提督「いや、残りの九割は機密書類なんだ。私以外が見る訳にはいかない。金剛は自室にもどって寝るように。これは上官命令だ」 金剛「……理由を聞いても良いですか? 一割は残ってますよね」 提督「寝不足が原因で艦全体の動きに支障が出るのは困る。何度でも言うが、轟沈なんてされたら後悔してもしきれん」 金剛「……提督が寝不足になっても同じ事じゃないですか? それも、私よりも遥かに影響が大きいです」 提督「私が訓練した艦が早々轟沈する訳がないだろう。演習を見ていて分かったが、そろそろ私が一緒に出撃しなくても良いくらいだ。それでも私は行くがな」 提督「それに、私は轟沈などしない。死ぬ事は無いんだ」 金剛「それはどうなるか──」 提督「ならない」 金剛「────え?」 提督「そうならないように出来てるんだよ」 273 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 17:32:30.16 ID:ngVu1Op90 金剛「……………………」 金剛「それは、前に言っていた秘密ですか?」 提督「…………」 金剛「──分かりまシタ! 今日、私はぐっすりとスリープしマス!」 提督「うむ。おやすみ金剛」 金剛「グッナイ、テートク! ……ありがとう」 ガチャ──パタン 提督「…………さて、瑞鶴が来るのにあと三十分か。ギリギリだったな」 …………………… ………… …… 275 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 17:57:51.60 ID:ngVu1Op90 コンコン──コン──。 提督「入れ」 ガチャ── 瑞鶴「……瑞鶴、出頭しました」 パタン 瑞鶴「あの、提督さん。お話って何……?」ビクビク 提督「昨日話したように、私と私に直属する艦娘の命は握られている。下手をすれば明日の命が無いのは知っているな?」 瑞鶴「う、うん……」 提督「本当は全くの進展無しではぐらかすつもりだったんだが、そうもいかなくなった。これを見てくれ」ガサッ 瑞鶴「……何これ?」 提督「簡単に言うなら、実験結果報告書だ」 提督「知っての通り、艦娘は一人の提督にしか言う事を聞かない。だから、私達の二人でそこの書類にある項目をクリアしていき、報告書を作成しろ、との事だ」 提督「まあ、私が何もしないで放置すると思ったのだろう。だからこんな物を送りつけてきた」 279 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 18:14:06.22 ID:ngVu1Op90 瑞鶴「……それって効率悪くない? この鎮守府にその手の施設とか職員を置くのが普通だと思うんだけど」 提督「この事はAAAクラスの機密事項。詳しくは知らんが微塵にも怪しまれる訳にはいかないのだろう」 提督「それに、駒も足りないと言っていた。何よりも人が居ないのだろうな」 瑞鶴「ふぅん……。げっ、薬物投与の項目もあるじゃない」 提督「それらの項目に従うつもりは一切無い。貴重なサンプルを薬で壊す可能性がある上、当鎮守府の戦力を大幅に削ぐため論外とでも適当な事を書くさ」 瑞鶴「……ありがとう、提督さん。……それにしても滅茶苦茶多いわね、この書類。どれだけあるのよ」 提督「まったくだ。通常の機密書類と一緒に送りつけてくるものだから、金剛を追い払うのに少し頭を悩まされた」 瑞鶴「…………あの、提督、さん。これ、全部、見た?」 提督「いや、全部は見ていないが、どうした」 瑞鶴「…………」スッ 提督「うん? ……『性行為による通常艦娘との違いの報告』?」 瑞鶴「……………………」 280 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/20(日) 18:30:18.74 ID:ngVu1Op90 提督「…………………………………………」グッ 瑞鶴「だめえええ!!! 機密書類を破っちゃだめえええええ!!」ガシッ 提督「ええい放せ瑞鶴! あんのクソジジイ共こんなもん送ってきやがって!! 破り捨てて焚き火の燃料にでもしてくれるわ!!!!」 瑞鶴「それでもダメだってばあああ!!!」 提督「問題ない!! 紛失したと言えば良い!!!」 瑞鶴「それ言ったら隠蔽の為に私たち殺されちゃう!!」 提督「ならば誤って燃やしてしまったと!!」 瑞鶴「提督さん落ち着いてえええええええ!!!」 ……………………。 提督「…………」 瑞鶴「…………」 提督「……よし、何も変わらなかったと書こう」 瑞鶴「検査されたら一発じゃない……」 提督「…………これで三十回のダメだし。もう他に思い付かんぞ」 瑞鶴「……………………」 瑞鶴「まだあるじゃない、一つ……」 提督「何、本当か!?」 瑞鶴「う、うん……」 提督「一体なんだ。むしろよく思い付いたな」 瑞鶴「……………………本当にやっちゃえば良いじゃないの」 281 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 18:39:50.46 ID:ngVu1Op90 提督「…………」 提督「そうだ。まだ瑞鶴の心の準備が出来ていない為、延期を希望と書こう」 瑞鶴「……私、提督さんなら良いよ?」 提督「…………」ビキィ 瑞鶴「万年筆にヒビが!? どういう力してるのよ!?」 提督「……瑞鶴、お前も冗談が言えるようになったじゃないか」ミシミシ 瑞鶴「万年筆が可哀想だから離してあげて!!」 瑞鶴「……本心よ。私、提督さんになら身体を預けて良い」 瑞鶴「それに、艦娘は生殖能力が無いから戦闘に影響は無いじゃない」 瑞鶴「……やらないと、私達はどうなるか分からない。それだったら、私は──」 提督「時間が必要と書く。本人が望まず強引に行為を運ぶと戦闘に甚大な影響が出る可能性が極めて高い」 瑞鶴「──え、提督さん?」 提督「ご苦労だった瑞鶴。今日はもう休みなさい」 瑞鶴「ま、まだ話は途中でしょ!? 性こ……さっきの話が最後なんだし、最後まで話しましょうよ!」 284 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 18:50:07.48 ID:ngVu1Op90 提督「いや、終わったよ。心の底で瑞鶴がどう思ってるのかを聞けた」 瑞鶴「え…………え……?」 提督「私の言っている意味が分からないのなら、じっくり考えると良い。安心しろ。上に急かされるまで命は大丈夫のはずだ」 瑞鶴「て、提督さん……? 私、何か癇に障る事──」 提督「瑞鶴」 瑞鶴「ぴゃい!?」ピシッ 提督「これ以上は明日の行動に支障をきたす。寝なさい」 瑞鶴「…………はい」 ガチャ── 瑞鶴「………………おやすみなさい、提督さん」 提督「ああ、おやすみ」 パタン 提督「…………はぁ」 提督「本当、やり辛くなってきた……」 285 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 19:04:11.34 ID:ngVu1Op90 提督「──それにしても、実験か。本当に効率が悪いな。なぜわざわざ瑞鶴を使う。敵艦を捕獲でもなんでもして──」 提督「──……そうだ、なぜだ? なぜ敵艦で実験しないんだ?」 提督「確かに瑞鶴は深海棲艦から造られた、たった一隻のサンプルだが、それにしては明らかに不必要だと思える内容もあった」 提督「何かがおかしい……。いや、おかしい事はいくらでもあるが……なんだ、この妙な違和感は……」 …………………… ………… …… 287 名前:うおお、ミスった!![sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 19:06:30.63 ID:ngVu1Op90 〜翌朝〜 提督「ふぅん……沖ノ島海域でねぇ……」ズズッ 金剛「どうしましたテートク? 軍諜報新聞を睨み付けて」コクコク 提督「ん、沖ノ島海域で過去最大級の大規模戦闘があったらしい。敵味方共に被害は甚大だそうだ」 金剛「怖いですネー……」 提督「あそこは敵が蛆のように沸く海域らしいからな。大規模戦闘自体は珍しくもない。まあ、私達の管轄じゃないから大丈夫だ」 提督「……ところで、当たり前過ぎたから流してしまっていたが、どうして金剛がここに居る? 今日は休みにしたはずだろう」 金剛「私は提督の秘書デスから」 提督「本音は?」 金剛「提督と一秒でも長く一緒に居たいからデス」 提督「金剛は素直だな」 金剛「ふふーん。秘書の特権デス!」 290 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 19:22:42.78 ID:ngVu1Op90 提督「……こうして薄い紅茶を嗜みながら海を眺めていると、平和そのものなんだがな」ズズッ 金剛「ですネー……。戦争しているなんて嘘みたいデス」コクコク 金剛「それにしても、どうして今日は休みにしたのデスか?」 提督「なんとなくだ」 金剛「……………………」 金剛(何かありましたね、これは) コンコン──。 提督「入れ」 ガチャ──パタン 電「あの、い、電です」 提督「どうした?」 電「あのですね……えっと……なんて言えば良いのでしょうか……」オロオロ 提督「……ほら、飲んで落ち着きなさい」スッ 電「え、あ──はい」コクコク 金剛(む。間接キス……) 291 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 19:29:57.54 ID:ngVu1Op90 提督「落ち着いたか?」 電「──はい。ありがとうございます」 電「それで、ご報告なのですが……敵です」 提督「な──!?」 金剛「どこデスか電! 急行しマス!!」 電「あ、あの!! 落ち着いてください! その敵がおかしいのです!!」 金剛「おかしいって何がデスか!!! 早く行かないと──」 提督「金剛」 金剛「──ひゃいっ!」ピシッ 提督「電、おかしいというのはどういう意味だ。それは、お前が慌てていないのと関係があるのか?」 電「は、はい……それが……」 ……………………。 298 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 19:48:58.49 ID:ngVu1Op90 空母ヲ級「…………」ボー 提督「……なんだあれは。なんで母港の端っこで黄昏てるんだ……」 雷「おまけに、なんだか砲身も折れ曲がってるわよ」 電「使い物になりそうにないです……」 暁「服もボロボロね」 響「まるで必死に逃げてきたみたいだよ」 ヲ級「……………………」ハァ 金剛「……物凄く落ち込んでるみたいネ」 川内「…………良く見たら艦載機積んでないよね、アレ」 神通「どういう事なのでしょうか……」 那珂「話しかけてみる?」 瑞鶴「誰がやるのよ……」 提督「…………私が行く」 金剛「何を言ってるんですか提督!?」 響「正気かい? ……いや、司令官ならそんな無謀もやりかねないか」 提督「響、あとで吊るすからな」 響「なっ!?」 暁「……同情するわ」 302 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 20:08:55.68 ID:ngVu1Op90 提督「皆はここで待っててくれ」 金剛「私も行くわ。提督は私の一歩後ろを進んできてください」 電「……本当に行くのですか?」 提督「ああ。これは今までに前例が無いからな」 雷「いってらっしゃい司令官!」 暁「雷、いってらっしゃいって……」 雷「だって司令官と金剛さんよ? 大丈夫に決まってるじゃない!」 瑞鶴「…………」 提督「それじゃあ行って来る。瑞鶴、川内、神通、電は周辺の索敵。何かあったら瑞鶴を司令に動いてくれ」 提督「行くか、金剛」 金剛「ハイ! 皆さん、頼みましたヨー?」 瑞鶴(…………あの敵空母、危険じゃないような気がする……) 瑞鶴(やっぱり、深海棲艦がベースだからかな、私……) ……………………。 303 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 20:17:32.24 ID:ngVu1Op90 ヲ級「?」チラッ 金剛「動かないデ! 動いたら撃ちマス!!」 ヲ級「ッ!?」ビクッ 提督「……今までの敵と様子が違うな」 ヲ級「…………」ビクビク ヲ級「……?」 提督「うん?」 ヲ級「…………」ジー 提督「……なんだ?」 ヲ級「…………?」ジー 提督「……………………」 ヲ級「……」チラ 金剛「……なんデスか?」ジャキッ ヲ級「!」ビクッ ヲ級「…………」ビクビク 304 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/20(日) 20:35:38.04 ID:ngVu1Op90 提督「…………」 提督「金剛、砲を下ろしてやれ」 金剛「できまセン」 提督「私からのお願いだ」 金剛「う……。何か変な行動をしたと思ったら発砲して良いですか」 提督「許可する」 提督「……さあ、教えてもらおう。どうしてここに居るんだ?」 ヲ級「……………………!!!!」ビクゥッ ヲ級「!」ピシッ 提督「…………なぜ敬礼をした」 金剛「テートク……このエネミー、意味不明ネ……」 提督「ここまでくるともはや敵かどうかさえ疑いたくなる……」 ヲ級「…………?」 提督「…………」 ヲ級「…………」ソロソロ 金剛(テートクに近付いて何をする気……? 敵意は感じないケド……) 305 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 20:45:39.25 ID:ngVu1Op90 提督「……なんだ?」 ヲ級「…………」ソロー…ギゥ 金剛「なぁッ!?」 提督「……は?」 ヲ級「♪」ホッコリ 金剛(なんってハッピーな顔をしてるんデスか、このエネミー……) ヲ級「♪」スッ ヲ級「♪」ニコニコ 提督「……一体お前はなんなんだ?」 ヲ級「…………」ピョン…パシャ ヲ級「♪」ペコッ 提督「…………」 ヲ級「♪」スーッ 金剛「……なんだったんデスかね、アレ」 提督「分からん……」 …………………… ………… …… 319 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/20(日) 21:26:31.55 ID:ngVu1Op90 金剛「結局あの敵空母、分からずじまいでしたネー」 提督「当たり前のように提督室でお前の髪を梳いている私の方が分からんがな」 金剛「折角の休みなんですカラ甘えさせてくださいヨー」 金剛「それにしても、なぜ提督に敬礼したんデスかね?」 提督「あれは本当に謎だった」 金剛「もしかしてエネミーの司令官も同じ服を着ていたりシテ。ほら、それだったら提督に攻撃しないのも頷けるでショ?」 提督「それだとあのヲ級がすぐさま敬礼しなかった事に説明がつかん」 金剛「アー……たしかニ……」 金剛「まったく訳が分かりまセーン……」 金剛「……テートク」 提督「うん?」 金剛「昨日のよ──」 コンコン──。 提督「む、すまん金剛。……入れ」 320 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 21:39:47.80 ID:ngVu1Op90 瑞鶴「失礼します──って、金剛さん?」 提督「瑞鶴、どうした?」 瑞鶴「あ、えっと……その……提督さんとお話がしてくて……」 提督「私と? なんの話だ」 瑞鶴「…………」ジッ 金剛「? なんデスか?」 瑞鶴「やっぱり話は後で良いです! 提督さん、私の髪も梳いてください!」シュル 提督「…………」 金剛「オー。ロングヘアーだとは思っていまシタが、下ろすと思っていたよりも長いですネー」 瑞鶴「……それ、金剛さんが言う?金剛さんの方が圧倒的に長いじゃない」 金剛「自慢の髪デース♪」 瑞鶴「手入れ、大変じゃない?」 金剛「テートクにブラッシングしてもらってるおかげで、この通りデース」 提督「私は梳いてるだけで、他は全部、金剛自身がやってるだろう」 324 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 22:02:40.06 ID:ngVu1Op90 金剛「テートクー、ブラッシングは大事なんですヨー?」 瑞鶴「うんうん。そうなのよ、提督さん?」 提督「……どうして私なんだ?」 金剛「だって、テートクのブラッシングはとっても気持ち良いデス」 瑞鶴「それに、優しくて丁寧よね」 提督「……………………」 金剛「テートク、あと少しで瑞鶴にもブラッシングしてあげてくだサイ」 瑞鶴「え、良いの?」 金剛「こんなに気持ちの良いブラッシングを独り占めなんて、できまセーン」 瑞鶴「……ありがとう、金剛さん」 金剛「ノンノン。お礼はテートクにデース」 瑞鶴「…………うん。ありがとう、提督さん」 提督(やるとは言っていないんだが……まあ、良いか) ……………………。 325 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 22:10:28.16 ID:ngVu1Op90 瑞鶴「はー……幸せー……」 提督「そんなに良いものかね……」 瑞鶴「すっごく良い」 金剛「まさに至福の時デース」 提督「……どうして金剛は私のベッドの上に転がってるんだ」 金剛「普段はできないデスから、甘えさせてくださいヨー」 提督「まったく……」 瑞鶴「あ、それ私もしたい」 提督「……あー、分かった分かった。今日はハメを外して良いぞ」 金剛「ヤッター!!」ダキッ 提督「こら飛び付くな」 金剛「抱き付いているんでーすよー♪」ギュー 瑞鶴「……ハートが飛び交ってるのが見える気がするわ」 326 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 22:21:39.01 ID:ngVu1Op90 金剛「瑞鶴もやると良いでーす」 瑞鶴「え……でも私は……」チラ 提督「…………」 瑞鶴「ぅ…………」オズ 提督「……はぁ…………分かった。お前もハメを外せ。戦場ではハメを外す機会を設けるが良いしな」 瑞鶴「えっと……それじゃあ……えいっ」ピト 金剛「両手に花ですね、提督♪」 提督「どうしてこうなったのやら」 金剛「提督が私達のハートを撃ち抜いたからです」 瑞鶴「…………」 金剛「あれ、瑞鶴は同意できないですか?」 瑞鶴「分からない……うーん…………うーん……?」 金剛「じゃあ、私が提督に貰われますね」 瑞鶴「それはヤダ」 金剛「我儘でーす」 提督「……私の意志は関係無しか」 328 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 22:31:26.78 ID:ngVu1Op90 金剛「私は既に提督のモノですよ?」 提督「こら。自分を物扱いするんじゃない」 金剛「抽象的な意味の『モノ』でーす」 提督「まったく……」 金剛「ねー、提督。一つ、我儘を言って良いですか?」 提督「内容による。まずは言ってみなさい」 金剛「今夜は一緒に寝たいです」 瑞鶴「んなっ」 提督「……相変わらずオープンだな、お前」 金剛「だって、一緒の布団を被って寝るなんて幸せじゃないですか」 瑞鶴「あ、それ分かるわ。提督さん、私も一緒に……良い?」 提督「瑞鶴、お前まで……。どうしようかなぁ…………」 金剛「悩むという事は、可能性があるって事です! 瑞鶴、押していきましょう!」 瑞鶴「え? う、うん」 提督(まったく……本当にどうしてここまで懐かれてしまったのか……) …………………… ………… …… 329 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 22:42:07.32 ID:ngVu1Op90 響「さて、散々気になっている事を話そう」 電「どきどき」 雷「わくわく」 暁「…………」 響「おや、暁は司令官たち三人が気にならないのかい?」 暁「あんまり」 暁(本当は物凄く気になるけど、大人のレディはパパラッチみたいにならないわ) 響「そうか。少し残念だね」 響「じゃあ、私たち三人で──」 暁「ちょっと待ちなさい。あんまり気にならないだけで、会話に入らないとは言ってないわ」 響「そうかい? なら、私たち四人で司令官たち三人がどこまでいっているのか妄想しよう」 電「はわわわわ! 響ちゃん、ハッキリ言い過ぎだよぉ」 雷「私はBくらいならいってると思うわ!」 電「い、雷ちゃんも……」 暁「雷、はしたないわよ」 330 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 22:52:27.70 ID:ngVu1Op90 響「そうかい? 私はAもいってないと思うよ。電はどう思う?」 電「え、えっと……私も響ちゃんと同意見なのです……」 暁(私は最後までやってると思うなぁ) 雷「そう? 金剛さんは皆の見えない所でアタックをしてそうじゃない?」 響「あの司令官の事だ。きっとのらりくらりとかわしているさ」 暁「どうかしら? 普段はああでも、夜になるとケダモノかもしれないわよ?」 電「け、けだもの……!!」 雷「おおー、言うわね、暁!」 響「一番はしたない言葉を口にしているのは暁だね」 暁「あっ──」 響「もう遅いよ。大人しく素直になろうじゃないか」 暁「〜〜〜〜〜〜っ!!」 暁「はぁ……分かったわ。素直になる」 響「それでは、話の続きといこう。どうして雷はBまでだと思ったんだい?」 331 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 23:02:58.99 ID:ngVu1Op90 雷「なんとなくかしら。金剛さんにはBで瑞鶴さんにはAもいってないってイメージよ」 雷「だって瑞鶴さん、奥手そうじゃない?」 響「なるほど。確かに瑞鶴さんは奥手そうだ」 暁「ああいうのに限って積極的だったりもするわよ」 電「瑞鶴さんが積極的に、司令官さんに……!! はわわわ!!」 響「そう言われるとそんなイメージがあるね。恥ずかしいけれど司令官と……ってな具合に、自分の感情を抑え切れなくなってしまってそうだ」 電「わ、私はそんな感じがしない、かなぁ。いざって時にお二人とも動けなくなってそう、です……」 雷「特に瑞鶴さんはチャンスを逃しそうよね」 響「激しく同意するよ」 暁「そうかしらね? 金剛さんは大胆に誘って、瑞鶴さんは布団の上で待っていそうだわ」 響「しっくりくるね」 暁「そして行為に移ると、司令官への愛が大きくて二人とも貪るように腰を振りそう」 333 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 23:12:06.25 ID:ngVu1Op90 電「あうぅ……恥ずかしいよ……」 雷「意外とストレートね、暁」 響「これは流石に……恥ずかしいな」 暁「う……」 響「どこからそういう知識を手に入れているんだい、暁。ちょっと私にも情報源を教えてくれないか?」 雷「わ、私も気になるわ!」 電「あ、あの……私もです……」 暁(やっぱり参加するんじゃなかったぁー!!) …………………… ………… …… 334 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/20(日) 23:48:06.96 ID:ngVu1Op90 川内「夜戦……やーせーんー……ぐぅ」 那珂「那珂ちゃん……パワー……アー……くー……」 神通「すぅ……すぅ……」 川内「──隣に駆逐艦がぁ!?」ガバッ 神通・那珂「ッ!?」ビクゥッ 川内「んが……ぐぅー……」 神通・那珂「…………」 川内「イタタタタタタタタ!?」ツネー …………………… ………… …… 336 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 00:09:41.94 ID:QabpkdOQ0 金剛「三人一緒に布団の中でーす♪」 瑞鶴(やだ……自分でもびっくりするくらい落ち着くわ……) 提督「……………………」 金剛「ありがとうございます、提督♪」 提督「いつも私の為に一生懸命になってくれているんだ。このくらいはな」 瑞鶴「三十分は説得したと思うけど……」 提督「瑞鶴、自分の部屋に戻るか?」 瑞鶴「ごめんなさい!」 金剛「あははっ。提督と瑞鶴も仲良しでーす♪」 金剛「えいっ」ピト 提督「む」 瑞鶴「? 何したの?」 金剛「嫉妬したのでピッタリとくっつきましたっ」 瑞鶴「ず、ずるい! 私も!」ソッ 提督「……甘えん坊だな、二人共」ナデナデ 337 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 00:27:23.55 ID:QabpkdOQ0 金剛「嫌いですか?」 提督「頭を撫でているこの手は何かな」 金剛「えへっ♪」 金剛「……提督、私の心臓の音、分かりますか?」 提督「…………速いな」 金剛「すごく幸せで、すごく嬉しくて、すごくドキドキしています」 金剛「瑞鶴はどうですか?」 瑞鶴「……え、私?」 金剛「はい! 私と同じですか?」 瑞鶴「私は……逆ね。ものすごく落ち着いてる。眠いくらい、安心してる」 金剛「おー……瑞鶴は肝が座ってマース……」 提督「人それぞれという事だろう」 金剛「そうですねー。不思議なものです」 金剛「提督はどうですか?」 提督「……色々な感情が巡りに巡って訳が分からない事になっている」 338 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 00:37:40.59 ID:QabpkdOQ0 金剛「どんな感情なんでしょうかね〜?」 提督「部屋に戻るか?」 金剛「冗談ですよー!」 提督「ああこら、大きな声を出すな」 金剛「?」 提督「瑞鶴、寝てしまったんだ」 瑞鶴「……くぅ……くぅ」 金剛「…………え? あの短時間で?」 提督「らしい」 金剛「……ある意味すごいわね」 提督「そういう事で、私達も眠りに就こうか。今日ほど寝れる日はそうそう無いぞ」 金剛「そうですねっ。提督、良い夢を」 提督「ああ、おやすみ」 …………………… ………… …… 339 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/21(月) 00:57:03.79 ID:QabpkdOQ0 〜翌日〜 提督「──諸君、昨日は充分に休息が取れたか?」 全員「はいっ!」 提督「良い返事だ。今回は少し特殊な事情になるので、充分に注意されたし」 提督「第一艦隊は新しく出撃認可が下りたカムラン半島へ出撃」 提督「第二艦隊は旗艦を神通。続いて暁、響、雷、電の五名でマルハチマルマルより海上護衛任務」 提督「尚、今回は建造を行い、新たに仲間を加える予定となっている。その艦によって第一艦隊の編成が変わる為、まだ第一艦隊の編成は発表できない」 提督「以上。何か質問はあるか?」 提督「…………無いようだな。では、第二艦隊は遠征準備を始め、四十分後のマルロクヨンマルまでに第二船着場に集合するように」 神通・暁・響・雷・電「はい!!」 提督「瑞鶴を除く三名は母港にて警戒しつつ待機。瑞鶴は私と一緒に工廠へついてきなさい」 金剛・瑞鶴・川内・那珂「はい!」 …………………… ………… …… 341 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/21(月) 01:10:23.89 ID:QabpkdOQ0 〜工廠〜 提督「さて、建造妖精」 建造妖精「ん? やーやー提督さん。建造かい?」 提督「うむ。総司令部からの指示で一隻分の特別資材を送られてきていると思う」 建造妖精「あー、うん来てるねー。にしても、何アレ? 本当にあんなので建造できるの?」 瑞鶴「…………」 提督「総司令部の考える事はよく分からん。私も出来るとは思っていない」 提督「なのでそれとは別にもう一隻、造ってもらおうと思っている」 建造妖精「なるほどねー。資材はどれくらい使うんだい?」 提督「総司令部が指示した各資材投入量はこうなっている。二つとも同じで頼む」 建造妖精「はいよー」 提督「ああ、総司令部からの指示で送られてきた資材と、普通の資材は混合して建造しないようにしてくれ」 建造「総司令部用と普通のとで分けたら良いんだね? りょーかいー」テッテッテッ 瑞鶴「……提督さん」 提督「諦めろ、瑞鶴。ここを指示通りに動かなかったら流石に上も黙っちゃいないだろう」 瑞鶴「うん……そうだけど、一つ言いたい事があるの」 瑞鶴「あれ、絶対に造れないと思うよ」 …………………… ………… …… 342 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/21(月) 01:23:30.34 ID:QabpkdOQ0 建造妖精「提督さん、できたよー」 提督「ご苦労。どうだった?」 建造妖精「普通の資材の方はきちんと出来たよ。でも、総司令部からの特別資材は無理だったよ」 建造妖精「いやぁ、びっくりしたね。だって、艦娘の魂が入ってこないんだもん。あれじゃただの船だよ」 提督「やはりか」 建造妖精「あれ、どうする?」 提督「総司令部からの指示によると、建造できなかった場合は解体して送り返せとの事だ」 建造妖精「えー……造りたてなのに解体しなきゃいけないのー……?」 提督「そのようだ。面倒を掛けてしまうな」 建造妖精「提督さんが悪いんじゃないさ。総司令部が残念なんだよ」 提督「お詫びといってはなんだが、間宮アイスクリーム券だ」 建造妖精「なんだって!? ひゃっほぉぉぉおおおおお!!!」 建造妖精「本当に提督さんは優しいなぁ」 提督「ありがとう。そして、建造できた艦娘はどこかな?」 ヒュ──ガシッ! 島風「お゙ぅ!?」 344 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 01:33:33.86 ID:QabpkdOQ0 提督「ん? ああすまん。つい捕まえてしまった」 島風「こ、この私が捕まるなんてー……」 瑞鶴(何この子……速過ぎでしょ……) 提督「…………」スッ 島風「あなた何者? 今の結構全力だったんだよ?」 提督「…………」 島風「…………? ねえ、何か喋ってくれませんか?」 瑞鶴(あ、あぁぁ……これはマズい……) 提督「どうやら教育が成っていないらしい」 島風「──え? な、なんかやばい……?」 提督「吊るしてやるから覚悟しろ」 島風「て、撤退ッ!!」ビュン 瑞鶴「うわっ! 速っ!!」 提督「瑞鶴、この帽子を持っててくれ」ポスッ 瑞鶴「──わっ。え? はい……」 瑞鶴(あ……提督さんの帽子が私の頭に……) 345 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 01:47:53.42 ID:QabpkdOQ0 提督「身体を激しく動かすのは久し振りだ。衰えていなかったら良いのだが」グッグッ 提督「ん、調子は良いみたいだな」 提督「──さて」ダンッ 瑞鶴「高ッ!?」 瑞鶴(ええええ……あの窓って10mはあるわよね……? 提督さん何者……?) 瑞鶴「……ん?」 島風「へ、へへーん! 島風には、誰にも追いつけないんだから!」ヒョコッ 提督「…………」スッ 瑞鶴(え!? あの高さから降りて音が無い……!? あの島風って子も、後ろに降りたのに気付いてないし……) 瑞鶴(……提督さんの帽子)ホッコリ 提督「そうかそうか」 島風「ひゃんっ!? …………っ」ソー 提督「…………」ジッ 島風「────ッ!!」ビクッシュバッ 提督「…………」タン──スッ 島風「ひゃあッ!!? 上から!? 目の前に!?」 347 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 02:05:18.09 ID:QabpkdOQ0 提督「…………」ジッ 島風「あ、ああ……あぁああ、の……」ビクビクビク 島風「ひぃっ!!」ダッシュ 提督「…………」タッ ──ガシッ! 島風「お゙ぅっ!!?」 提督「…………」ジッ 島風「に、逃げる事すら……できない、なんて……」ガタガタ 提督「────吊るす」 島風「ひっ──!」 きゃあああああああああああああああああ────ッッッ!!!!!!! 355 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 02:48:21.53 ID:QabpkdOQ0 金剛「なっ、なんの声デスか今のは!?」タタタ 川内・那珂「…………あー」タタ… 島風「やーめーてー!! やーめーてーよー!!!」ブラーン 提督「反省が足らんようだな」 島風「人!! 人が集まってきてるってば!!」 提督「ああそうだな」 島風「スカートの中が見えちゃう! 恥ずかしいってーっ!!!」 提督「…………」ジッ 島風「ひぃッ!?」ビクッ 那珂「……君、何をしたの?」 島風「なーにーもーしーてーまーせーんー!!」 金剛「……何もしなかった?」 瑞鶴「そう。何もしなかったの……」 金剛「ああー……何もしなかったのネ……」 川内「なるほどねー……」 那珂「那珂ちゃん納得……」 島風「どうして納得してるのーッ!?」 356 名前:遅くなったお詫びにもう一個投下[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 02:49:34.01 ID:QabpkdOQ0 提督「島風」 島風「ひゃぅッ!? な、なんですか……?」ビクビク 提督「私がどんな立場の人間か答えろ」 島風「て、提督……です……」ビクビク 提督「自分の立場をなんだ」ジッ 島風「くち、く……駆逐艦、です」ビクビク 提督「上官に対しての第一声、貴様はなんと言った」 島風「あ……あぁぁあぁぁぁ…………」ビクビク 提督「答えよ」 島風「あ、あなた……何者……と、言いまし……た…………」ビクビクビク 金剛・瑞鶴・川内・那珂(こうなって当たり前よね……) 提督「何か言う事は」 島風「──ごめんなさい!! 提督に不敬を働いてごめんなさいっ!!」 提督「よろしい」クルクルホドキホドキ 島風「う、ぅぅ……」 357 名前:上げる為にもう一個[saga] 投稿日:2013/10/21(月) 02:50:34.20 ID:QabpkdOQ0 提督「…………」ジッ 島風「ヒッ──!」ビクッ 島風「あ、あの……何か、罰が与えられるのですか……?」ビクビクビク 提督「うん? 既に罰は与えただろう」 島風「え……?」 提督「お前は私に不敬を働いた」 島風「はい……」ビクッ 提督「私は捕まえて吊るした」 島風「…………」ビクビク 提督「お前は自分の過ちを認め、そして謝っただろう」 島風「…………?」 提督「罰はそれで終わりだ」 島風「……え!? か、軽すぎじゃないですか!?」 金剛(やっぱり最初はそう思いますよネー) 提督「知らん。この鎮守府は私の城だ。私のやりたいようにやらせてもらう」 島風「……なんだか凄い人ですね」 提督「…………」 島風「──申し遅れました! 私、駆逐艦の島風です! スピードなら誰にも……提督以外に負けません! 速きこと、島風の如し、です!」ピシッ 提督「うむ。よろしく」 …………………… ………… …… 358 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 03:07:01.09 ID:QabpkdOQ0 提督「──さて、第二艦隊も見送ったところで第一艦隊の編成を発表する」 提督「カムラン半島へ出撃する第一艦隊の旗艦を金剛。続いて瑞鶴、島風。以上だ」 金剛「提督。一つよろしいデスか」 提督「なんだね?」 金剛「建造直後の島風をいきなり出撃に出すのは少々、酷じゃないデスか?」 提督「私が留守の間、この母港を守ってもらわないといけない。そこに島風を置く方が酷だろう」 提督「そして、私のやり方を覚えて貰い、尚且つ経験を積ませたいから連れて行く。金剛と瑞鶴が一緒ならば大丈夫であろう」 金剛「ナルホド……」 提督「他に質問のあるものは居ないか? …………居ないようだな。では、第一艦隊、出撃」 提督「川内、那珂。 私が居ない間、母港を守ってくれ」 川内・那珂「はい!」 …………………… ………… …… 360 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 03:34:12.46 ID:QabpkdOQ0 島風「提督もついてくるんですね」 提督「そうだ」 島風「…………なんか納得しました」 金剛「あんまり驚かないのデスね?」 島風「提督の凄さはもう身に染みてますから……」ブルブル 瑞鶴(そりゃあ、あんな事されたらねー……) 提督「──敵も近くに居ないようだ。今の内に島風に海の上での決まりを教えておこう」 〜提督説明中〜 提督「守らなかったら吊るす」 島風「はいっ!!」ピシッ 提督「…………瑞鶴」 瑞鶴「うん。偵察機を飛ばすわね」 島風「え?」 金剛「敵よ、島風」 島風「え、ど、どこ?」 362 名前:投下が遅かったからもう一個[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 03:38:05.59 ID:QabpkdOQ0 瑞鶴「──提督さん、二時の方向に重巡リ級一隻、軽巡へ級二隻、駆逐イ級一隻、ロ級二隻。陣形は単縦陣みたい」 提督「…………重巡に艦攻、軽巡一隻に艦爆で先制攻撃。その間に金剛と島風は戦闘準備をしなさい」 瑞鶴「了解!」 金剛「──準備オッケーネー!」 島風「は、はやっ! 連装砲ちゃん、お願い!」 提督「…………準備ができたようだな」 ──ッドォォォン!! 瑞鶴「提督さん、艦攻の攻撃を駆逐イ級が庇ったみたい。軽巡、駆逐、共に一隻撃沈よ!」 提督「よし、総員戦闘開始。金剛、敵重巡へ斉射。瑞鶴、第二次攻撃隊発艦。島風、蛇行を繰り返して最後尾の駆逐艦へ付かず離れずの距離を維持できるか?」 島風「……ちょっと怖いけど、行きます!」 提督「良い返事だ。瑞鶴の攻撃で一隻だけ切り離す。切り離せたら主砲で斉射しろ」 金剛・瑞鶴・島風「はい!」 リ級・前方ロ級・後方ロ級「!!」ドンドンッ! 島風「へへーん! そんな攻撃、当たらないんだから!!」ヒョイヒョイ 363 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 03:43:24.70 ID:QabpkdOQ0 提督「金剛、今だ。放て」 金剛「バーニング・ラァァアアブ!!」 リ級「!?」 撃沈 提督「瑞鶴、敵進行方向の逆側から前方駆逐ロ級を攻撃。後方の駆逐ロ級を引き剥がせ」 瑞鶴「はい!!」 提督「そして──」 島風「どこ狙ってるのー!? 遅いおそーい!!」 島風「!! 前方の駆逐艦が大破炎上して、後ろの駆逐艦が回避行動を取った! ここね!! 逃がさないんだから!!!」 後方駆逐ロ級「ピ、ギ──!!」 中破 島風「あっ! 倒せなかった……! 砲身がこっちに──か、回避!!」 後方駆逐ロ級「ガ──ッ!?」ドゴドゴッ 撃沈 島風「──え?」 島風「今の……艦載機の攻撃? ……護ってくれたんだ。ありがとう……」 島風「よーし! 島風、もっと頑張ります!!」 …………………… ………… …… 375 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/21(月) 14:02:29.63 ID:krTs1wnk0 提督「戦闘終了、ご苦労」 金剛・瑞鶴・島風「周囲に敵は居ません!」 提督「よろしい」 島風「あの、瑞鶴さん」 瑞鶴「ん、なにかしら?」 島風「さっきは護ってくれて、ありがとう。おかげで助かっちゃった」 瑞鶴「それなら提督さんに言ってあげて? 島風の護衛に艦載機を割くよう指示をしたのは提督さんなの」 島風「提督さんが……?」チラ 提督「…………」 島風「──助けてくれてありがとう! 嬉しかったよ!」 提督「艦を護るのは私の務めだ」 島風「むー。素直じゃないんだから」 提督「時に島風。お前はヒットアンドアウェイを知っているか?」 島風「え? んー……攻撃してすぐに離れるって戦法ですか?」 376 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 14:24:36.14 ID:krTs1wnk0 提督「そうだ。島風は他のどの艦よりも速い。その長所を生かしてヒットアンドアウェイで戦ってみると良いだろう」 提督「攻撃を避けつつ射程に入り、攻撃をしてすぐに回避しつつ離れる。そうやって敵を撹乱できるのは恐らく、お前だけだ」 島風「私だけ……?」 提督「そうだ。島風が一番速いからだ。もしお前を追ってきたとしても、誰も追いつく事すらできんだろう」 島風「私が、一番……」 島風「────はい!! やっぱりそうよね! だって速いもん!」 提督「だが、調子に乗ったら……」 島風「しません! 吊るさないで!」ビクッ 提督「うむ。心得ておけ。慢心は敵だ。僅かな慢心が艦隊の全滅を引き起こす事さえあるだろう」 島風「はい!!」ピシッ …………………… ………… …… 377 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 14:36:43.19 ID:krTs1wnk0 提督「今帰った」 川内・那珂「おかえりなさいー」 川内「提督、あの島風って子、どうだった?」 提督「役に立ってくれたよ。そして、あの通りだ」 島風「ハー……ハー……もう、走れない……疲れた……」グッタリ 那珂「何があったのー?」 提督「敵に空母が三隻居てな。輪形陣を組んでいて中々倒せそうになかったから制空権争いをしている時、島風に全力で避けてもらいつつ一番近くの空母に肉薄して、攻撃してもらった」 川内「そんなに近く!? それって危なくない!?」 提督「肉薄さえ出来れば逆に敵が盾となるからな。見事に指揮が崩れ、その間に制空権を取って空母の護衛艦を沈め、金剛と島風の砲雷撃で空母を撃沈してくれたよ」 川内「島風が可哀想じゃないかな……」 島風「無理矢理じゃないもん……はぁ……私が、希望したんだもん……へぅぅ……」 那珂「え、自分から?」 提督「ほら、水だ」 島風「ありがと……。ん……」コクコク 島風「ふー……。そうだよ、私から希望したんだよ」 378 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 14:46:48.45 ID:krTs1wnk0 那珂「そんな危ない役、どうして買って出たの? 近付く時に沈んじゃうかもしれないのにー……」 島風「だって、島風にしか出来ない事だって、提督が、認めてくれたんだもん!」 島風「それに、提督だったら絶対、ぜーったいに島風を沈ませないから!」 川内(……ね、どうしてあんなに提督を信用してるの? 島風ってついさっき来た子のはずよね?) 金剛(沈まないようにテートクが密かにサポート指示していたのデス。それを瑞鶴がバラしたのヨ) 金剛(下手したら轟沈する状況だったのデスが、間一髪で助かりまシタ) 川内(なるほどねぇ……。吊り橋効果ってヤツだっけ?) 金剛(結果的にそうなりましたケド、絶対に考えてなかったでしょうネ。テートクですから)クス 川内(提督だしねー)クス 提督「ん、呼んだか?」 金剛「イイエー?」ニコニコ 川内「微笑ましい会話をしていただけですよー」ニコニコ 提督「……そうか」 …………………… ………… …… 380 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 15:02:27.59 ID:krTs1wnk0 提督「──よし、今日の書類の片付けは終わりだ」 金剛「現在フタサンマルマル。凄いデス! 今まででベストタイムです!!」 提督「秘書が有能で助かるよ」 金剛「まだまだデース。いつか提督のスピードに追いつけるようになりマース!」 提督「楽しみにしておこう」 金剛「──あと、ここにも早くキスが欲しいですね。その先も勿論」 提督「唇に指を当ててまあ積極的なことで」 金剛「だってー。瑞鶴に負けてしまいますもんー」 提督「なんの話だ」 金剛「『提督になら身体を預けて良い』とか『艦娘は生殖能力が無いから戦闘に影響は無い』って聴こえましたよー?」 提督「……どこまで聴いた」 金剛「今言った所だけです。前後の話は聴いてませんけど、明らかにそういう話じゃないですか」 金剛「髪を梳いたりするのは良いですけど、流石にそれだけは誰にも譲りたくないです」 金剛「──提督、瑞鶴の誘い……受け取ったのですか?」 381 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 15:31:03.85 ID:krTs1wnk0 提督「勿論、拒否した」 提督「それより、金剛が盗み聞きをするとはな。お前はそんな奴だったか?」 金剛「言い出せなくてごめんなさい。シャワーを浴びようと通りかかった時、とても瑞鶴の大きな声が聴こえました」 金剛「なんて言ったのかは分かりませんでしたが、何があったんだろうと思ってドアに手を掛けた時、さっき言った言葉が聴こえてきたのです」 金剛「これは邪魔をしてはいけないなーと思ってその場をすぐに去りました」 提督「成程。たしかに金剛らしいな」 金剛「ぅー……信じてくれないですか……?」 提督「言い方が悪かった。信用するよ、金剛」 提督「だから昨日、急に甘えてきたのか」 金剛「そうです……。私へ振り向いてもらおうと、少しだけ自分に素直になりました……」 提督「うん?」 金剛「あっ……」 提督「聞かせてもらおうか」 金剛「あう……ここ最近で一番の失敗でーす……」 382 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 15:41:12.80 ID:krTs1wnk0 提督「…………」 金剛「…………」 提督「……喉が渇きそうだな。金剛、新しく紅茶を淹れてくれ。新しい茶葉でな」 金剛「えと……それは、私のも、ですか……?」 提督「無論だ」 金剛「くす……はい、少々お待ちくださいね」 ……………………。 提督「うむ。やはり茶葉が新しいと舌触りが良い。これは口が滑りそうだ」ズズッ 金剛「…………」コクコク 金剛「…………」フゥ 金剛「……私ですね、本当は甘えん坊なのです」 383 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 16:04:27.97 ID:krTs1wnk0 金剛「できるなら、提督と四六時中くっついていたい、もっと提督に触れたい、髪を梳いてもらいたい──それくらい提督が大好きで、それくらい甘えん坊なのです」 金剛「提督なら知っていると思いますが、私は金剛型戦艦の長女です。それ故、私には甘えれる相手が居ませんでした」 金剛「榛名からは慕われ、比叡からは甘えられ、霧島からは頼りにされました。だから私は、妹達の望む姉になる為、頑張りました」 金剛「強く、凛々しく、頼れる──そんな姉に、です」 金剛「でも、私だって弱い心はあります。強い優しい人に憧れて、弱い自分を曝け出し、人に甘えたい気持ちなんていくらでもあります」 金剛「だから、私は提督に心を惹かれました。提督は強く優しく、甘えさせてくれました。今も、弱い私を目の前にして真剣に話を聞いてくれています」 金剛「……正直、怖いです、どんどん提督にのめり込んでいく自分が。いつか本当の私を曝け出した時、拒絶されるかもしれないんじゃ……と思っています」 金剛「──あはっ、これが私の本性です」 提督「…………」 金剛「……ごめんなさい。普段、気丈に振舞っている私は、本当の私であって本当の私ではないのです……」 384 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 16:21:19.41 ID:krTs1wnk0 提督「……たしかに、普段の金剛からは予測が付かないな。だが、人などというものはそういうモノだろう?」 提督「強い面と弱い面がある。矛盾した、本音と建前がある」 提督「そう、私もだ」 金剛「──え?」 提督「先程、金剛は私を強い人と言った。だが、それは間違っている」 提督「弱いなんてものではない。私は既に負けているのだ」 金剛「…………ごめんなさい。私の頭では分からないようです……」 提督「よい」 金剛「……いつか、提督が良かったら教えてくれますか?」 提督「……そうだな。約束しよう」 金剛「…………」 提督「…………」 金剛「……………………提督、弱い私からのお願いです。その腕の中に、私を収めてもらって良いですか?」 提督「……構わんよ」スッ 金剛「ぁ──。…………ありがとう、優しい提督……」ソッ 提督「紅茶が悪い」 金剛「?」 提督「紅茶が悪いんだ」 金剛「くす──。そうですね、紅茶が悪いです────」 …………………… ………… …… 385 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 16:42:14.37 ID:krTs1wnk0 〜翌日〜 提督「さて……昨日忘れていた、新しい艦娘の実体化をしようか」 金剛「誰が来るんでしょうかネー?」 瑞鶴「空母系列と戦艦以外だったらなんでも良さそうよね」 川内「できれば駆逐艦とか軽巡とかが良いのかな? 資材的にも」 金剛「そうなんですよネー……もう少し良い遠征にも出ないと資材がカツカツなのデース……。かといって戦艦や空母を遠征に出すわけにはいきまセンし……」 ……………………。 天龍「俺の名は天龍。フフフ……提督、怖いか?」フンス 龍田「…………」 提督「…………」 天龍「……あれ、どうした二人共?」 瑞鶴(ちょっとちょっとちょっと!? あそこ物凄く怖いんだけど!?) 響(背筋が凍りそうだ……ここはいつから北国より冷たくなったんだい……) 電(な、何か龍と虎が見える気がするのです!!) 金剛(あの天龍って子、そこが一番危険な場所と気付いていないのデスか……?) 386 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 16:56:15.50 ID:krTs1wnk0 龍田「…………」 提督「…………」 龍田「…………」タジ… 提督「…………」 龍田「…………!」ピシッ 龍田「天龍型二番艦、軽巡洋艦の龍田です。提督さん、よろしくお願いします」 提督「うむ。二人共よろしく」 全員(何かの決着がついた──!!) 天龍「ど、どうしたんだよ龍田? いつもと口調が違うぞ?」 龍田「提督さん、天龍ちゃんのご無礼、私がお詫び申します。許してください」 天龍「龍田!? こ、こんの野郎!! 龍田に何しやがった!!?」ジャキッ 瑞鶴(あ) 提督「…………」ジッ 天龍「ひっ──! お、おおお俺は、負けないぞ!?」ビクッ 提督「…………」 天龍「…………っ」ガタガタガタガタ 387 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 17:18:40.57 ID:krTs1wnk0 龍田「あ、あの〜……」ビクビク 提督「龍田」 龍田「──はい!」ピシッ 提督「良い姉妹を持ったな」 龍田「え? はい……?」 提督「大切にするように」 龍田「────勿論ですよ〜」 提督「さて……どうしてくれようか、天龍?」ジッ 天龍「ひぃっ!? ご、ごめんなさい!!」ビクン 提督「…………」 天龍「〜〜〜〜!」ビクビク 提督「龍田を護ろうとするその意思に免じて罰は無しだ」 天龍・龍田「…………」 天龍・龍田(良かったぁ〜!) 389 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 17:30:14.46 ID:krTs1wnk0 提督「だが、次はない」 天龍・龍田「はいっ!」 提督「ああそれと、天龍、龍田。礼儀さえ弁えておれば口調などは素で構わん」 天龍「おう!」 龍田「は〜い」 島風「……順応が早いわね」 瑞鶴「ある意味島風と同じね」 島風「私が速さで負けるなんてー……」 金剛「いや……漢字が違いますからネ?」 提督「では天龍と龍田はこれから出撃してもらおう。編成は──」 …………………… ………… …… 392 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 17:53:24.63 ID:krTs1wnk0 〜艦隊気投後〜 川内「提督ー、おかえりーっ!」ブンブン 提督「うむ。今帰った」 天龍・龍田「…………!」ガタガタガタ 那珂「ど、どうしたの一体……?」 金剛「それがー……」 天龍『なんでだよ提督!! あとちょっとでアイツを落とせるんだ!! 死ぬまで戦わせろよぉ!!』 中破 龍田『肉を切らせて骨を断つ……ふふっ……ふふふふっ…………え、提督さん……?』 中破 金剛「という事がありましてー……」 川内「ああ……提督なら絶対に認めないね、それ……」 提督「吊るしてくる」 天龍「あう……あぁぁ……」ビクビクビク 龍田「だ、大丈夫よ、天龍ちゃん……私も一緒……一緒だから……」ビクビク …………………… ………… …… 393 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/21(月) 18:07:50.12 ID:krTs1wnk0 〜翌日〜 提督「まーた沖ノ島海域で大規模な戦闘か……」ズズッ 金剛「またデスか?」 提督「どうやら遠方偵察機が大量の敵艦を発見し、それの殲滅の為に元帥殿の艦隊が出撃したらしい」 提督「戦術的には勝利したらしいが、元帥殿の艦隊も相当な痛手を負ったようだ」 金剛「本当に、私達の管轄じゃなくて良かったデスね……」 提督「まったくだ。まあ、今のところ私達の管轄になる事はないよ。なにせ戦力が足りないからな」 金剛「あー……そういうのを考えたら戦力が小さいのも良いものですネー」 提督「そうも言ってられないのが懐事情だがな」 提督「それよりも気になるのがこっちだ」ガサッ 金剛「? 南方海域にて非常に強力な敵艦が現る?」 提督「航空戦、砲撃戦、雷撃戦、夜戦など、全ての攻撃を兼ね揃え、火力、装甲共に最高水準クラスのバケモノという話だ」 金剛「なんデスかそれ……どうやって勝つんデスか……」 394 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 18:24:07.21 ID:krTs1wnk0 提督「出撃、撤退を繰り返して削りきるしかないだろうな。まったく、厄介なものだ」 提督「どうやらこのバケモノ。この鎮守府の方面へ微速移動をしているらしい」 金剛「ハァ!?」 提督「あくまで作戦部の進路予測だが、この鎮守府が危ないと判断するのに充分だ」 提督「できれば早く地盤と戦力を固めたいよ」 コンコン──。 提督「入れ」 ガチャ── 任務嬢「提督さん、元帥がお見えになりました」 金剛「!」 提督「お通ししろ」 金剛「……………………」 金剛(なんだか嫌な予感がするネ……) 395 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 18:35:19.74 ID:krTs1wnk0 元帥「やあ、大将。久し振りだね」 提督「はっ」ピシッ 金剛「……」ピシッ 提督「数日前にお会いしたばかりですよ、元帥殿」 元帥「そうだったかな? ハッハッハッ。この歳になると流れる時間が速くて敵わんよ」 元帥「……うん? この艦娘は君の秘書かね?」 金剛「ハッ! 英国ヴィッカース社より建造された高速戦艦金剛型一番艦、金剛デス!」ピシッ 元帥「ふむ……。秘書としての板がしっかりと付いているみたいだね」 金剛「ありがとうございマス。お茶をお出ししマスので、こちらに掛けてお待ちくだサイ」 元帥「うむ。──ところで大将よ」 提督「はっ。なんでしょうか」 元帥「──なぜ瑞鶴が秘書でない?」 金剛「────────!!」 396 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 18:46:43.14 ID:krTs1wnk0 元帥「君の報告書を見る限り、瑞鶴がこの鎮守府での最大戦力であろう?」 金剛(…………ッ)ギリ 提督「元帥殿、それは彼女の淹れたお茶を口にしつつ話をしましょう」 提督「きっと納得されると思います」 ……………………。 元帥「ほう、これは美味い! こんなに美味い紅茶を飲んだのはいつ振りだろうか」 金剛「光栄デス」 提督「この通り、彼女はお茶を淹れるのがこの鎮守府で群を抜いています。仕事中での気力維持に欠かせません」 提督「そして何よりも、瑞鶴と比べて仕事の出来が違います。艦娘全員を集え、二人を秘書としての評価を競った事がありますが、満場一致で彼女──金剛へ軍配が上がりました」 元帥「なるほどなるほど。戦果を上回る功績がこの艦娘にあるのか」 提督「はい。戦果についても目を通して頂いている通り、瑞鶴には及ばないものの非常に素晴らしいと言えます」 元帥「なるほど、良く分かった」 399 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 19:02:35.29 ID:krTs1wnk0 提督「話は変わりますが、元帥殿がどうしてこの小さな鎮守府へ? 今はお忙しいと伺っておりますが」 元帥「儂が忙しいと知っておるのならば、どうしてここへ来たのかも分かっておろう」 提督「…………南方の強力な敵艦ですか」 元帥「うむ。アレは非常に厄介だ。現存するどの艦娘よりも秀でた戦闘能力を持っておる」 提督「仰るとおりです。倒すには複数の大規模艦隊を用いて出撃、撤退をし、敵に休む間を与えず繰り返すしかないかと」 元帥「なるほど。敵を疲弊させて確実に討ち取る、か」 提督「はい。複数に分ける事で待機中の艦娘は休みを取る事ができ、損傷した場合でも修復する時間が得られます」 元帥「──だが、それをより確実に打開する方法を大将は知っておろう」 金剛(え?) 提督「……はい」 元帥「建造の方はどうなっている?」 提督「残念ながら、上手くいっていないです」 金剛(……建造が上手くいっていない? それって本当なのデスか? あんなに速い艦娘が進水しましたよネ……?) 400 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 19:16:21.05 ID:krTs1wnk0 元帥「ふむ……」 提督「…………」 元帥「…………」 元帥「儂の方も同じだ。良い艦船は出来上がるが、どれも問題のある物ばかりでな」 元帥「南方の敵艦がこっちへ向かっている状況で、儂の艦隊も強化せねばならない。それゆえ、役目を果たせそうにない艦娘は──」 元帥「──解体を繰り返すという事も辞さない程だよ」 金剛(…………) 提督「……心中、お察しします」 元帥「ああ……儂も心が苦しい。大量の艦娘が解体され、普通の女子として暮らしているのだが……」 元帥「不思議な事に、解体された艦娘はある日、忽然と姿を消す」 提督「…………」 元帥「それが艦娘というものなのだろう。特に手塩に掛けていた艦娘が消えるのは、とてもとても悲しいものだ」 提督「はい。その気持ちはよく分かります。失うというのは、取り戻せないという事ですから」 金剛(…………) 401 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 19:29:24.72 ID:krTs1wnk0 元帥「金剛、と言ったな?」 金剛「! はっ!」ピシッ 元帥「ああ良い。楽にしたまえ」 元帥「大将は、艦娘をどう扱っておる」 金剛「……とても大切にしていマス。轟沈する可能性があるのならば、その可能性を徹底的に取り除き、私達が沈まない事を第一に作戦を立ててくれていマス。テートクへの信頼はとても厚いと言えマス」 金剛「これは私だけではなく、この鎮守府の艦娘全員の総意でショウ」 元帥「ふむ、なるほど。良い提督として働いてくれているようだな」 元帥「それだけ大切に思っているのであれば、絶対に沈ませれないな」 提督「……はい。私の大事な者達です」 元帥「良い返事だ」 元帥「ああそうそう。君に贈り物を届けに来た」 提督「元帥自らがですか? 郵送で宜しかったのでは……」 元帥「なに。あの厄介な敵を倒す方法と君の姿を見るついでだ。顔色を見るに、少々疲れているようじゃないか」 提督「管理が行き届いていない証拠です。申し訳ありません」 元帥「いや、君はむしろ働きすぎなぐらいだろう。もう少し休息を増やしてみたらどうかね」 元帥「いやはや、やはり持ってきて良かった」コト 404 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/21(月) 19:42:05.83 ID:krTs1wnk0 提督「……これは? 見た所、ただの水の入った小瓶ですが……」 元帥「見た目はそうだが、実際は全く別の代物だ」 元帥「滋養強壮の漢方を使った薬だ。長く眠る前に飲むと良いだろう。……非常に苦いのが欠点だがのう」 元帥「漢方薬は現在、非常に入手しにくくなっておる。よって二つしか渡せん。決して無駄遣いをするんじゃないぞ?」 元帥「身体が弱ると指揮も鈍る。そうなる前にしっかりと休みを取りなさい」 元帥「取り扱い説明はこの紙に書いてある。注意を払って読みなさい」 提督「……はっ。お心遣い、感謝します」 元帥「では、儂はこれで失礼するよ。金剛、美味な茶であった」 金剛「光栄です」ピシッ 提督「お気を付けて」ピシッ 406 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 19:58:11.09 ID:krTs1wnk0 ガチャ── 金剛「どうぞ」 元帥「うむ」 元帥「…………」チラ 提督「…………」 元帥「…………」 ──パタン 提督「…………」 金剛「…………」 提督「…………ふぅ」 金剛「はぁー…………」 金剛「物凄く神経を使いまシタ……」グッタリ 提督「まったくだ」 金剛「テートクー……私、あの元帥が苦手デス……」 提督「私もだ。出来れば関わりたくない。……だが、立場上どうしても関わらないといけない」 金剛「テートクが可哀想デース……」 407 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 20:17:55.81 ID:krTs1wnk0 金剛「その漢方薬を今すぐ飲み干したい気分ネー……」 提督「やめておけ。相当貴重な物らしいからな」 金剛「はーい……」 金剛「そういえば、建造が上手くいっていないってどういう事デスか? 島風って駆逐艦ではかなり良い艦娘デスよね?」 提督「強大な敵と戦う時、金剛なら駆逐艦と戦艦、どっちで戦う」 金剛「ああー……そういう事デスか……」 提督「まったく……元帥も人が悪い」 提督「──本当、色々と困るよ」 …………………… ………… …… 408 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 20:29:39.44 ID:krTs1wnk0 コンコン──コン──。 提督「入れ」 ガチャ──パタン 瑞鶴「…………提督さん、どうしたの? ドアの隙間から手紙を入れて呼び出すなんて」 提督「非常に残念な知らせがある」 瑞鶴「……総司令部関連?」 提督「ああ。とうとう急かされた」 瑞鶴「────ッ! ……思ったよりも早かったわね」 提督「予想以上に早い。脅しながらこんな物を寄越してきたよ」コト 瑞鶴「……水?」 提督「見た目はな。中身は完全に別の物だ。大きな声を出すなよ」ピラ 瑞鶴「……………………!? ……催淫剤?」 提督「実際に滋養強壮の効果があるらしいが、その本質はそういう事のようだ」 410 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 20:57:14.69 ID:krTs1wnk0 提督「まったく……注意を払ってその紙を読めと言ったからまともな物じゃないとは思ったが、まさかこんな物だったとは……」 瑞鶴「……つまり、これを飲んでさっさとヤれと」 提督「端的に言えばそうなるな。本当に何を考えているんだかあのクソジジイは……。深海棲艦とは全く関係ないだろうに……」 瑞鶴「関係が無いようで、何かが関係しているのかしら……」 提督「それなら理由を言えば良い。なのにそれをしないという事は、何か隠したい事でもあるのだろうよ」 提督「それに書いてあるように、期限は一週間。一口飲めば効果があるとあるが……こんなもの、どこで手に入れたのやら……」 瑞鶴「…………」 提督「瑞鶴、その小瓶は二本ともお前に預けておく。お前の判断に任せる」 瑞鶴「…………え? わ、私?」 提督「ああ。心の準備が出来たらそれを持って私の所へ来てくれ」 提督「……私も、色々と腹を括るよ」 瑞鶴「…………ねえ。これ、今飲んでも良いの?」 412 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 21:18:20.85 ID:krTs1wnk0 提督「……ああ、構わない。が──」 提督「──震えているぞ、瑞鶴」 瑞鶴「…………!」 瑞鶴「あ、あれ……? なんでだろ……」 提督「さあな。それは私には分からない」 提督「だが、心の奥底ではダメだと言っているんじゃないのか?」 提督「あと一週間しかないが、逆に言えば一週間ある。焦らなくて良い。しっかりと心の整理をしてくるんだ」 瑞鶴「……うん。ごめんね、提督さん」 提督「なぜ謝る」 瑞鶴「だって、私のせいで不本意に……」 提督「誰のせいでもない。強いて言うならこの世界が悪い。大きな流れに逆らえば、身を滅ぼす結果しかないんだ……」 瑞鶴「……うん」 瑞鶴「提督さん、一つ約束して欲しいの」 提督「なんだ」 瑞鶴「……その、する……時さ、嘘でも良いから……私を恋人のように、優しくして……?」 416 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 21:31:31.60 ID:krTs1wnk0 提督「…………」 瑞鶴「…………」 提督「……分かった」 瑞鶴「…………!」 提督「約束だ」 …………………… ………… …… 提督「……色々と、予定が狂ったな」 提督「そうだな……もう、無理だろう……」 提督「──護ろう。それが、私の────」 …………………… ………… …… 419 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 22:40:37.42 ID:krTs1wnk0 雷「あら?」 提督「今戻った」 雷「おかえりなさい司令官! 皆! どうしたの? 帰ってくるのがすっごい早いじゃない」 天龍「俺のせいだよ」中破 龍田「も〜……お洋服が〜…………今度見つけたら切り刻まないと……」大破 島風「うー……」大破 金剛「いたたたた……」中破 瑞鶴「この飛行甲板、もう使い物にならないわね……」大破 提督「誰がお前のせいだと言った」 天龍「……俺がいきなり直撃弾を受けたからこうなっちまったのは、紛れもない事実だ」 龍田「そこに追撃してきた砲撃を、私が独断で庇ったの〜。おかげでこの有様。我ながら無様よね〜……」 提督「旗艦以外を庇うなと言った憶えはない。下手をしていたら天龍は轟沈していた。庇い方に問題はあれど、良くやってくれたと私は判断している」 提督「そこから島風が囮役になってくれなければ、恐らくどっちかが轟沈していただろう」 420 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 22:53:43.78 ID:krTs1wnk0 島風「……提督、ごめんなさい」 提督「なぜ謝る」 島風「だって……私、提督の命令を無視したんだよ?」 提督「しっかりと私の命令をこなしたではないか」 島風「必要以上に敵に近付いたんだよ!?」 提督「私は、沈まないよう回避できる距離で敵の注意を引き付けてくれ、と命令したはずだが?」 島風「普通に考えてよ!! あの距離、普通じゃ回避できないくらいの距離だったでしょ!?」 提督「だが、お前は沈んでいない。あの距離、あの砲弾の雨の中、ギリギリまで回避し続けてくれたじゃないか」 提督「どこが命令違反している?」 島風「でも……でもぉ!!」 提督「お前は、他の誰にも出来ない事を成し遂げたんだ。もっと誇って良い」ポンポン 島風「ぅ……ぅー…………」 龍田「あらあら〜。提督さんに褒めてもらえてお顔が真っ赤〜」 423 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 23:10:02.41 ID:krTs1wnk0 提督「そうだな、龍田にも褒めないといけない」 龍田「あらあら、何かしら〜?」 提督「天龍が被弾した時、私は追撃が見えなかった。もし見えていたら、恐らく龍田の行動を指示していただろう」 提督「そして、庇ったのは天龍だけではないのだろう?」 龍田「…………どうしてそこまで分かるのでしょうかね〜?」 提督「やはりか。どうりで変な庇い方をする」 金剛「やっぱり、あれってテートクを庇ったのデスか」 龍田「そうよ〜。だって、提督さんと提督さんを庇った天龍ちゃんの直線上の敵が攻撃したのですもの。下手をしたら、天龍ちゃんの装甲を貫通して、提督さんに当たったかもしれないでしょ〜?」 天龍「……なんで俺が提督を庇ったって分かってるんだよ」 龍田「だって〜。本当だったら避けれる弾のはずですもの〜。天龍ちゃんは優しいからね〜」 龍田「きっとだけど、あの弾は提督さんに当たらなかった。でも、万が一の事を考えて庇ったのでしょ〜?」 天龍「ちぇっ……バレてるなんて、カッコ悪いな、俺」 427 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/21(月) 23:29:59.69 ID:krTs1wnk0 提督「いいや、あの時の姿は格好良かったぞ、天龍」 天龍「な!? 何を言ってるんだよ提督!?」 提督「世界水準を軽く超えた庇い方だった」 天龍「う、うぐぐぐぐぐ……!」 島風「やーい、天龍の顔真っ赤ー」 天龍「────ッ!! 沈めてやろうか島風ぇえ!!!」 島風「キャーこわーい!」 天龍「おりゃおりゃおりゃぁあ!!」ポンポン 島風「ひゃんっ! きゃははっ! くすぐったいってばー!」 龍田「…………」 龍田(頭をポンポン。自分でやるのは寂しいものね〜)ポムポム 提督「…………」チラ 龍田「!」サッ 提督「…………」ポンポン 龍田「あ、あら? あらあらあらあら?」 提督「…………」スッ 龍田(あらあら……思ったよりも嬉しいものね〜……)ホッコリ 金剛・瑞鶴(むー……) …………………… ………… …… 430 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/21(月) 23:47:53.42 ID:krTs1wnk0 コンコン──。 提督「入れ」 ガチャ──パタン 川内「提督ー」 神通「失礼します……」 那珂「こんにちはー!」 提督「どうした、三人共。珍しい」 川内「いやー、ちょっと気になる事があってねー」 提督「話してみよ」 神通「あの……私達って基本的に遠征と母港を守る事しかしてませんよね?」 提督「ああ、そうだな」 那珂「いやー……私達、本当に役に立ってるのかなーって……」 提督「なるほど。役に立っている気がしていないから私に聞きに来た、と」 431 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 00:00:02.90 ID:wDg9yZLd0 神通「はい……それで、もしよろしかったら何か新しくお仕事をくださらないかと思いまして……」 提督「ハッキリ言っておこう。私はお前たち三人が居なかったら非常に困っている」 那珂「……そうなのー? だって、私達ほとんど出撃してないよ?」 提督「出撃だけが仕事ではない。遠征で資源を拾ってくるのも仕事だ。母港を守るなんて最重要任務に等しい」 川内「遠征は分かるんだけど、母港を守るとかそんな感覚が無いんだけどなぁ……」 提督「では川内。明らかに使用されている敵母港を発見したが、艦船が一隻も居なかったらどうする」 川内「そりゃ勿論使えないように破壊するよ」 提督「では、同じように敵母港を発見したが、敵が船着場をウロウロして索敵していたらどうする」 川内「あー、確かに警戒するね。なるほど、私達がしているのって、ちゃんと母港を守ってるんだね」 提督「ああ。そして、それは信頼しているから任せれるんだぞ」 神通「信頼……ですか?」 434 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 00:12:31.75 ID:wDg9yZLd0 提督「そうだ。実際に母港を襲われた際、しっかりと守れないと意味が無いだろう」 川内「でも、基本的に二隻しか居ないよ?」 提督「たかが二隻。されど二隻。居るのと居ないのとでは雲泥の差がある」 提督「それに、お前達なら一人でも敵艦が二〜三隻居ようと倒せるだろう?」 那珂「確かにそれくらいなら倒せるねー。二人だったら倍かー!」 提督「そういう事だ。これからも母港を守ってくれ」 川内「私達のやってる事、すっごく大切だったんだね!」 那珂「なんだか、安心しちゃったー!」 神通「私達も、提督をお慕いしていますよ」 提督「うむ」 …………………… ………… …… 437 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/22(火) 00:25:29.23 ID:wDg9yZLd0 響「あ、司令官。丁度良かった」 提督「うん? 響……だけではないな。暁に雷、電、どうした? もう夜中だぞ」 雷「あのね! 司令官に渡したい物があるの!」 提督「渡したい物?」 電「はい。いつもお世話になってる司令官さんに、プレゼントなのです」 暁「この掛け軸よ!」バッ 提督「第六駆逐隊……すぱしーば?」 響「スパスィーバ。日本語の発音だとなんて書けば良いのか分からなかったから、なるべく近い言葉で書かせてもらったよ」 提督「ふむ……。すまないが、なんという意味なんだ?」 電「せーのっ──」 暁・響・雷・電「──ありがとう!」 438 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 00:43:36.04 ID:wDg9yZLd0 暁「そういう意味よ、司令官」 提督「────」 響「……あ…………お気に召さなかったかい、司令官……」 提督「いや、面食らってしまって声が出なかった」 提督「ありがとう。いつも私の為に動いてくれて、本当にありがとう」 暁「ひゃっ」ナデナデ 響「ん……」ナデナデ 雷「あ……」ナデナデ 電「はわわ……」ナデナデ 提督「この掛け軸は部屋に飾っておこう。皆が書いたのかね?」 響「絵と文字と書いたのは私だよ」 暁「私はこの花飾りを作ったの」 雷「私は材料を集めたわ!」 電「仕上げは私がしました」 提督「そうか。皆が協力して作ったのだな」 439 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 00:56:07.55 ID:wDg9yZLd0 暁「大切にしてよね?」 提督「勿論だとも」 響「特に暁が喜ぶよ」 暁「ちょ、ちょっと響!」 雷「なんせ、考案と指揮をしたのって暁だもんね」 電「暁ちゃん、すごく一生懸命だったのです」 暁「あ、あああ……バラしちゃって……もー!!」 提督「こらこら、夜中だから静かにしなさい」 ……………………。 金剛「──あら? この掛け軸、どうしたのデスか?」 提督「電たちが作ってくれた。とても素晴らしい品だと思うよ」 金剛「……本当。とても優しい気持ちになりマス。これは愛が詰まってマスね」 提督「ああ。慕われているようで嬉しいよ」 …………………… ………… …… 442 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 01:15:42.28 ID:wDg9yZLd0 神通「あの、提督さん……」 提督「うん? どうした神通」 神通「ここ四日ほど、遠征は警備任務だけですけど、大丈夫なのですか……?」 提督「その事か。安心しろ。ただの保険だ」 神通「保険、ですか?」 提督「南方の強力な敵艦がこっちへ進行している、というのは五日前から知っているだろう」 神通「だから、戦力の増強へ?」 提督「そうだ。金剛、瑞鶴を中心に艦隊の錬度を高め、ついでに艦娘のデータも手に入ると思っていたのだが……まさか一隻も手に入らないとはな……」 神通「運が悪かったのでしょうか……」 提督「さてな……ん?」 電報妖精「提督さーん、緊急電報だよー」 447 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 01:25:32.69 ID:wDg9yZLd0 提督「緊急電報? ……暗号で送ってきたのか。一体どこの誰だ」 電報妖精「なんかやたら急いでたよ」 提督「ふむ……」サラサラ 神通「え。復号キーを憶えているんですか……?」 提督「一応な」 神通(それって本当はいけない事なんじゃ……) 提督「……………………」 提督「神通、全員を提督室へ呼べ。演習も全て中断。緊急招集だ」 ……………………。 提督「緊急事態だ」 金剛「何があったのデスか?」 提督「……………………」 提督「鎮守府が一つ、襲撃された」 449 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/22(火) 01:37:01.65 ID:wDg9yZLd0 天龍「なっ──!?」 川内「襲撃されたって……」 瑞鶴「どういう事なの!?」 提督「どうしたもこうしたも、そういう事だ。更に、悪い知らせはこれだけではない」 提督「一つ──この襲撃に迎撃をした総司令部長の元帥が行方不明となった」 金剛・瑞鶴「────────!!」 暁「総司令部長……?」 提督「天皇陛下の次に偉い人だと思ってくれて良い。私たち海軍のナンバー2」 提督「そして、海軍で一番実力を持っているお方だ」 響「……そんな人が負けてしまったのかい?」 提督「ああ。完全に敗北だそうだ。艦娘は全て轟沈。敵の46cm級砲撃が元帥の居た部屋に直撃。その建物は勿論、砲弾を雨の如く撃ち込まれ母港全体が崩壊したらしい」 提督「まず生きていないだろう。死体が上がるかどうかさえ怪しい」 451 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 01:54:59.16 ID:wDg9yZLd0 島風「うわー……悲惨でしょ……」 瑞鶴「……………………」 金剛「……提督、次の悪い知らせはなんデスか」 川内「ま、まだあるの!?」 提督「……ある」 提督「二つ目は、その敵がこの鎮守府へまっすぐ向かっているという事だ」 天龍「……マジかよ」 提督「本当だ。そして、私達に命令が下った」 提督「『南方棲戦姫を沈めろ』と」 那珂「なんぽーせいせんき……?」 提督「航空戦、砲撃戦、雷撃戦、そして夜戦──全ての戦闘をこなし、最高水準の火力と装甲を誇るバケモノだ」 提督「護衛艦として数十隻の敵も確認されている」 提督「その敵の全てが、黄のオーラを纏っているようだ」 神通「そんな艦隊がこの鎮守府に……。それを迎撃しろと……?」 提督「……そうだ」 455 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 02:04:40.51 ID:wDg9yZLd0 龍田「滅茶苦茶ね〜……。まるで死ねと言ってるみたい……」 雷「……提督、勝ち目はあるの?」 提督「ハッキリ言って、無い。数が違いすぎる」 暁「……どうするの?」 提督「…………このような事は言いたくないのだが」 提督「神に祈る他ないだろう…………────」 提督「……一つ、言っておく事がある」 提督「今回の出撃は任意だ。強制は勿論、私が決めもしない」 金剛「────え?」 電「どういう意味なのですか……?」 提督「艦娘は海から離れると死んでしまう。だが、解体をすると普通の女子になると聞く」 提督「今回の戦いは、間違いなく死ぬ。死にたくない者は解体を施すから逃げろ」 456 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 02:25:32.15 ID:wDg9yZLd0 提督「海軍刑法によると敵前逃亡は罪に問われる。だがここは私の城だ。そんなモノは最初から存在しない」 提督「全員、目を瞑れ。私が許可するまで開いてはならん」 提督「……………………全員閉じたな。では、十秒与える。解体を希望する者は静かに手を上げろ」 提督「十……九……八……七……六……」 提督「…………」 提督「五……四……三……ニ……一……」 提督「そこまで──。手を下ろしてよい」 金剛(手を下ろしてよい……? 誰かが手を上げたのデスか……?) 提督「…………目を開け」 提督「……………………」 457 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 02:45:01.58 ID:wDg9yZLd0 提督「…………死にたがりの大馬鹿者共め。馬鹿だよ、お前ら全員」 暁「当たり前でしょ、司令官」 響「……不死鳥も、ここでその名を終えるね」 電「そうです! 私達は皆、馬鹿なのです!」 雷「私達、誰も逃げることなんてしないわ!」 天龍「なんだ、みんな根性あるじゃねーか」 龍田「天龍ちゃんや提督さんと死ぬのなら本望ですよ〜」 川内「よーっし! 私達の鎮守府を守るぞー!!」 神通「こんな私でも、やる時はやります」 那珂「那珂ちゃん、本気でいっきまーす!」 瑞鶴「…………?」 金剛「ふふっ……ホント、皆馬鹿デース」 提督「旗艦は金剛に任命する。──金剛、最後の出撃の掛け声を頼んだ」 金剛「ハイ!!」 金剛「私達の最後の出番ネ!! 皆さん! ついてきてくださいネー!!」 瑞鶴「……………………」 …………………… ………… …… 458 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 02:59:46.08 ID:wDg9yZLd0 ガチャ── 瑞鶴「……提督さん」 パタン 提督「うん? どうした瑞鶴。もう間宮アイスクリームは良いのか?」 瑞鶴「そんな事はどうでも良いの。ねえ、おかしいと思わない?」 提督「…………」 瑞鶴「どうして、総司令部は私を放棄する事にしたのかしら。貴重なサンプルだって言ってたのに……」 提督「瑞鶴」 瑞鶴「ぴゃいっ!」ピシッ 提督「私は一つ、嘘を吐いた」 瑞鶴「……嘘?」 提督「あの電報、胸糞が悪かったからな」 瑞鶴「…………何?」 459 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 03:15:08.27 ID:wDg9yZLd0 提督「私と瑞鶴を除く全員で南方棲戦姫に全力突撃をしろ」 提督「それが本当の命令だ」 瑞鶴「……やっぱり」 提督「だが、私はこの命令に従うつもりはない」 提督「私の大事な艦娘達を犠牲にして、サンプルである瑞鶴とその提督である私だけ逃げろなんて命令、誰が聞いてやるものか」 瑞鶴「…………」 提督「すまんな、瑞鶴。本当は生き残れたのだが……」 瑞鶴「ううん! 私は嬉しいわ」 瑞鶴「だって、それって皆を見捨てろって事でしょ? 私はそんなの、絶対に出来ない! そんな事をするくらいなら死んだ方がマシよ!!」 提督「────うむ。良い意思だ」 提督「さて、逝こうか──」 瑞鶴「はい──」 …………………… ………… …… 461 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 03:35:21.86 ID:wDg9yZLd0 提督「総員、心の準備は出来たか」 全員「はいっ!」 金剛「──あ、ごめんなさい。私、一つだけ心残りがあります」 提督「調子を狂わせるんじゃない。…………まあ良い。なんだ」 金剛「提督、キスしてください」 龍田「あらあらあら〜」 暁「お、大人……!」 提督「……金剛、時間と場所を弁えろ」 金剛「──時間と場所なら弁えてますよ」 金剛「残り少ない僅かな時間。二度と戻る事のないこの鎮守府の母港──」 金剛「死に行く私の、ささやかな最後のお願いです」 提督「…………」 金剛「…………」 462 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 03:50:41.95 ID:wDg9yZLd0 提督「皆が見ているぞ」 金剛「私には提督しか見えないです」 提督「死にたくなくなるぞ」 金剛「良いことじゃないですか」 提督「何も残らないぞ」 金剛「私の魂に刻まれます」 提督「…………」 金剛「…………」 提督「負けたよ、お手上げだ」 金剛「それではご褒美を」 提督「後悔は?」 金剛「私の辞書には載ってませんね」 463 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 04:01:56.90 ID:wDg9yZLd0  ──そっと、提督が私の背に手を回しました。 「ぁ──」  服越しに伝わる提督の温もりが、私の心臓を跳ねさせる。  死んだ目をしている提督の目は私の瞳の奥を見据え、私だけを見てくれている。  暴れる心臓を押さえる為、閉じた右手を胸の前へ持っていくと、その手は提督の左手に阻まれた。  優しく、けれど強く──大切な物をその手に収めるかのよう握られた。  だから私は、余っている左手をさっきの右手と同じように胸の前へ持っていく。  ──バクバクと飛び出しそうな程の鼓動が、ハッキリと伝わってきた。 「提督……」  そう呟くと、私の愛しい人は右手に力を込めた。  ゆっくり、ゆっくりと提督が近くなるにつれ、私は今更緊張してきた。  身体は強張り、手を固く結び、視線も提督の光の無い目に釘付け──。  そういえば、私はいつからこの不思議な目を追い続けたのだろう。  一緒の毛布に包まった時?  提督の秘書になった時?  ──初めて会った時?  いつだったか、もう分からない。  ただ一つ、分かる事は── 「……金剛」  ──ほんの一瞬。愛しい人が目を閉じる瞬間、光が宿ったという事。 464 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 04:17:13.61 ID:wDg9yZLd0 「ん……」  不意打ちだった。  その瞳の美しさに見惚れているというのに、愛しい人は唇を重ねてきた。  触れ合うだけの、フレンチキス──。  それだけだと思った私だけれど、提督はそのつもりではなかったらしい。  舌で唇をつつかれる。  すぐに私は、閉ざしていた唇を小さく開けた。  そろりと、窺うように舌が入ってくる。  それに対して、控えめに舌で触れ、提督に合図をした。  小さく、腫れ物に触るかのように優しく触れ合っていた愛しい人の舌は、甘い、甘い味がした。 「あ……」  その甘美な即効性の毒は、私の身体から力を抜くのに一秒と掛からなかった。  いや、本当に抜いたのは骨かもしれない。  そんな言葉遊びを痺れる頭に思い浮かべ、私は目を瞑って提督の舌を堪能した。  絡み、絡まれ、唾液を交換する──。  もう、どれが提督の唾液か私の唾液か分からない。  そこで、私の右手の指が提督の左手の指と絡まっているのに気付いた。  互いを貪るように動く舌と同じように、私達の指は絡み合った。  絡まった唾液を呑みこむ度に頭がボーっとする。まるで麻薬だ。  頭が痺れ、脳が蕩け、どこからが私でどこからが提督なのか、もう分からない。  いや、実際に麻薬なのだろう。こんなに気持ちの良くて、もっと欲しくなっているのだから──。 468 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 04:25:22.00 ID:wDg9yZLd0 「は、ぁ…………」  どちらからともなく、舌が、唇が離れる。  提督と私の間に出来た銀のアーチ。それは数瞬だけ形を保って、プッツリと切れてしまった。 「……提督」  ──もっと、あの甘く蕩ける麻薬が欲しい──  けれど、それは言えなかった。  私の愛しい人が、悲しそうな顔をしていたから──。  だから私は、笑顔でこう言った。 「────ありがとう」  ──I don't mind that everyting is a lie. (たとえ全てが嘘でも構いません)  ──As long as I love you forever. (私が貴方を愛している限り、永遠に) …………………… ………… …… 472 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 04:38:23.35 ID:wDg9yZLd0 金剛「──私は、最後まで沈みません」 金剛「提督が沈むのを見るまで、私は沈みません」 提督「……そうか」 金剛「…………」 提督「約束だ」 金剛「────はいっ!!」 瑞鶴「……あのー、良い所で悪いけど」 瑞鶴「…………見てるこっちが恥ずかしいんだけど……」 暁「お、大人……! 大人のキス……!!」 響「そうだね暁。とても深いキスだったね」 雷「エロいわね」 電「はわわわ……!」 天龍「おぉ……ぉぉぉ……」 龍田「天龍ちゃん、大丈夫〜?」 川内「本当だったらこのあと夜戦になるんだろうなぁ」 神通「……夜戦…………や、やせん……」 那珂「神通って初心だねー」 提督「…………」 提督「整列」 全員「ッ!?」ビクゥ …………………… ………… …… 489 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 15:22:09.49 ID:UsEqFvbR0 島風「…………」 提督「島風」 島風「ひゃいっ!?」ピシッ 提督「不自然な程えらく静かだが、どうした」 金剛「確かに、提督の言うようにサイレント過ぎデス。ちょっと心配になるくらいですヨ?」 瑞鶴「うん、それ私も気になってた。だって提督室での島風、普段からは想像もつかないくらいだったもん」 島風「あ……それは……」 提督「後悔してるのか、出撃した事に」 島風「後悔じゃないよ。色々と考えてるの」 提督「考え事?」 島風「うん。あのね、私、死んでも死ななくても良いの。皆の側に──特に提督の側に居られたら、それさえあれば、他に何も要らないの」 島風「だけど、私の中では絶対に死にたくないって思ってる自分も居る。それなのに、提督と一緒に海の底に沈みたいって思ってたり、どうにかして皆と逃げたいって思ってる自分も居るの」 提督「…………」 490 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 15:42:47.96 ID:UsEqFvbR0 島風「この状況下で何を言ってるんだって話だけど、私にも良く分からない……。自分の気持ちすら良く分からない」 島風「……極めつけは提督と金剛さんのキスだけどね」 金剛「ホワイ? どういう事ですか?」 瑞鶴「あー……なんとなく分かる」 島風「嫌だーとか、私もしてほしいーとか、色々思ったんだけど、一番強く思ったのが……」 島風「提督がお父さんで金剛さんがお母さん、って気持ちなの」 瑞鶴「お父さんとお母さん……?」 提督「ふむ……」 島風「提督、この気持ちってなんですか? 私、こんなの初めてで分かんないよ」 提督「私にも分からん。だが、予測はできる」 提督「上手くは言えないが、今の島風は童女と少女の中間なんじゃないかと思う」 提督「電達ほど幼くはないが──」 暁「お子様言うなぁー!!」 雷「静かにしましょうね、暁」 響「電、一緒に抑えて」 電「はいなのです」 暁「もがー!」 491 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 16:05:30.14 ID:UsEqFvbR0 提督「…………かといって、川内達ほど成長している訳でもない」 提督「大人の異性に対して、親のように思う気持ちと一人の異性として思う気持ちが一緒にあるのだろう」 島風「はー……なるほどねー……」 瑞鶴(親のように……) 金剛(私は一人の男としてテートクが好きネー) 島風「──うん! ありがとう提督! すっきりした!」 提督「うむ。良い目になった」 島風「提督の目は死んでるけどね」 提督「解体して一人母港に残してやろうか」 島風「泳いででも提督達と一緒に行くよ」 提督「……そうか。嬉しいよ」 …………………… ………… …… 492 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 16:50:19.74 ID:UsEqFvbR0 提督「──見えた。瑞鶴、偵察機は?」 瑞鶴「もうちょっと待って。もうそろそろ──お待たせ。情報が入ってきたわ」 瑞鶴「確認できた敵艦は五隻、単縦陣。南方棲戦姫と思われる艦が一隻、戦艦ル級が二隻、空母ヲ級が一隻、駆逐ロ級一隻! いずれも黄色のオーラを纏っています!!」 提督「五隻……? 数十居た艦は一体どこへ……」 提督「しかし、それでもふざけているな。黄のオーラを纏った艦は尋常じゃない強さと聞く。それが五隻。おまけに戦姫も居る」 提督「……恐らく勝てないだろうが、撤退させるのは可能かもしれん。……全員、沈むなよ!」 提督「複縦陣を敷け! 戦闘準備!! 奴らを私達の家に近付けさせるな!!」 全員「はい!」 提督「瑞鶴、第一次攻撃隊は空母のみ集中砲火を浴びさせろ。まずは敵航空戦力を出来る限り落とす」 提督「金剛、射程に入り次第、まずは敵後方戦艦を狙え。奴らの攻撃の精度を少しでも落とせ」 提督「水雷戦隊は艦載機からの回避に専念しろ。射程に入る前から攻撃を受けては勝てんぞ」 提督「いいか! まだいけると思ったら素直に下がれ! もう危ないと思ったら全力で引き撃ちを──!?」 提督「総員散開!! 回避行動を取れ!!」 瑞鶴「そん、な……制空権が……」 ドォンドォンドォンドォンドォンドォン──! 496 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 17:19:18.01 ID:UsEqFvbR0 提督「ちぃっ……! なんとか全員回避したものの、制空権は劣勢か……。こっちの先制攻撃は期待できそうにないな……」 瑞鶴「……その通りよ、提督さん。敵も全部避けたみたい」 提督「…………仕方が無い。総員! 頭上には充分に注意しろよ! そろそろ射程──」 ドォン! 提督「──なに?」 金剛「なんデスかあれ!? まだ私のテリトリーじゃないのに届いてマス!!」 提督「バケモノどもめ……! 全員回避に専念しろ!! 砲撃距離になるまで耐えるんだ!!」 提督「…………なんだこの砲撃は。明確に当てる意思が感じられん……」 金剛「テートク!! 駆逐ロ級が突っ込んできます!!」 提督「何をするつもりだ一体……! 総員、回避のついでで構わん! 駆逐ロ級へ撃て!」 提督「────────全弾回避、するか。この砲撃の中を」 金剛「こ、こっちに……ぶつかる!?」 提督「回避だ!!」 提督「……一発も攻撃せず抜けて──まさか、直接母港を!」 金剛「────反転? 挟撃!?」 提督「くそっ! やられた!! 当てれなくて良い!! とにかく被弾するな!!」 497 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 17:35:48.88 ID:UsEqFvbR0 提督「……味方がどんどん孤立させられていってる。なんてやり方だ……」 提督「敵一隻を相手にこちらは二隻、三隻で戦っている……それなのに一発も当てれないとは……!!」ギリ 提督(私の指導が甘かったという事か……!) 提督「南方棲戦姫がこっちへ近付いている……。ちっ……! 前門はバケモノの戦姫、後ろはバケモノ染みた駆逐ロ級……。逃げ場はないな」 金剛「テートク……アイツ、私の砲撃が効かないヨ!!」ドンドン 提督「……金剛、一点集中だ。まったく攻撃が効いていないという事もあるまい。同じ箇所を撃ち続けていたらいつか耐え切れなくなるはずだ」 金剛「──ハイ!」 ドン! ドン! ドン──! ドン──! ドン────! 提督「……ついに目の前に、か」 金剛「…………誰ですか、同じ箇所を撃ち続けたらいつか耐え切れなくなるなんて言ったのは。弾が尽きるまで撃ちましたけど傷一つ付いてませんよ」 提督「私だ。いやはや、まったくもって完敗だ。飛車角金銀桂馬香車を取られて王手を掛けられた気分だ」 金剛「それでも、歩が一個だけ残ってますよ?」 提督「そうだな。王を護る、武器を失った歩が一人だけ残っている」 498 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 17:57:48.14 ID:UsEqFvbR0 南方棲戦姫「…………」ジャキッ 金剛「……その歩も、ここで取られそうですね」 提督「…………」 提督「知ってるか、金剛」 提督「──王も敵の駒を取れるんだぞ」バッ 金剛「な──」 南方棲戦姫「!!」 提督「いかに深海棲艦といえど、生身の部分は艦娘と同じ!! 装甲が硬いなら装甲が無い部分を攻撃すれば良い!!!」ガキッ 提督「王の目の前に玉を置いたのが間違いだったな南方棲戦姫! この首、へし折らせて貰う!!」グッ 金剛「ダメ!! 提と──」 ガンッ!! 501 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 18:09:23.01 ID:UsEqFvbR0  嫌な音がした。 「────────」  大質量の金属が、硬い何かを叩いた時の音。 「──そんな、鉄の塊で……」  重々しく黒光りする金属の腕を持った敵は、己の首を──命を護った。 「人の頭、殴ったら……」  護る為に、人体を司る脳が入っている箇所へ、その腕で払った。 「────────」  殴られた人は、苦痛の声すらあげなかった。 「死んじゃ、う……」  敵の首を捉えていた白い制服の人の両手に、力が入っていないのが見える。  あと一瞬でも時間があれば、敵の首をへし折ったであろうその手は、弛緩してしまっている。 「やだ……」  手だけではない。  腕も、脚も、首も、何もかも──。何もかも、力が入っていなかった。  重力に従い、私の愛しい人は、崩れるように落ちていった。 507 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 18:21:47.43 ID:UsEqFvbR0  ──その中で、左手だけ、重力に逆らっていた。 508 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 18:22:33.45 ID:UsEqFvbR0 「…………!」 「──それでは人を殺せん!」  再度、その手は敵の首に食らいついた。 「人間を甘く見るからこうなる!!」  間髪入れず、肋骨の直下へ内臓を抉るような角度で拳が敵を襲う。  そう──『慢心は最大の敵』  提督が何度も言っていた事だ。 「ッぁ゙──!?」  咳に近い、吐き出すような悲鳴。  今まで無表情だった敵が、初めて苦悶の表情を浮かべた。  明らかに拳一つ分はめり込んでいたのだ。耐えれるはずがない。  敵の視点はブレて、一瞬だけ無防備となった。  その一瞬で、提督は敵の背後を取る。右腕の根元付近で首を捉え、逃げれないように左腕でロック。更に、左手は後頭部をの右側面を掴んでいた。  絞めるのではなく、折る為の組み方。  ──首があらぬ方向にへし曲がり、身体は先程の提督と同じように崩れるのだろう。  その生々しい姿を見たくなくて、私は目を堅く結んだ。 509 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 18:34:30.98 ID:UsEqFvbR0  ………………………………。  ……おかしい。骨の折れる音がしない。  首の骨だ。とてつもなく嫌な音がするはずなのに、なぜ聴こえないのか。  恐る恐る、現実を見る為に瞳を開いた。 「────え?」  敵は変わらず立っていた。その代わり──。 「……提督?」  なぜか、提督がぐったりと敵の背に乗せられていた。 「どうして……?」 「キヲ ウシナッタヨウダ」 「────っ!?」  恨みや怨念を帯びたドス黒い声で、敵はそう言った。 「サスガダナ……。ニドメノシヲ、カクゴシタ」  二度目の死? どういう事……?  この敵が何を言っているのか、私には分からなかった。  武器を失った私を前に、敵は背を向けた。  ──私の愛しい人を乗せたまま。 511 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 18:49:39.06 ID:UsEqFvbR0 「待ちなさい!!」  どうして防衛手段を持っていない私を見逃すのか──。そんな疑問が頭に巡っていたが、私が声を掛けた理由は一つだけだ。 「その人を連れて行かせない」  愛しい人が攫われそうになっているのだ。敵は私を見逃しても、私はそれを見逃せない。 「…………」  敵は振り向くだけで、何も答えなかった。 「……ブキガ ナイヨウダガ?」 「腕があります」 「ウデヲ チギロウ」 「まだ歯があります」 「アタマヲ ツブソウ」 「怨念になってでも、戦います」 「……………………」 512 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 18:59:15.89 ID:UsEqFvbR0  ジャキッ──と、弾を装填する聞き慣れた音がした。  本能で何がくるのか理解し、回避行動を取った──けど。 「がっ──ッ!!」  轟音と共に、私の身体は吹き飛ばされた。  視界が目まぐるしく流れ、そして、身体に衝撃が走った。 「か、はッ……!」  ……まだなんとか浮いている。完全には沈んでいない。 「待、ちなさ……い……!」  けれど、腕を伸ばすも、身体が動かない。 「待ちな……さい、よ……!!」  敵は今度こそ背を向け、その姿が小さくなっていった。 「待って……! 待っ、て……よ……!!」  意識が遠くなる──。  身体が言う事を聞いてくれない──。  やめて……その人を連れて行かないで──。  お願いだから動いてよ、私の身体──。 「て、いと……く…………」  その言葉を最後に、私の意識は闇に落ちた────。 …………………… ………… …… 513 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/22(火) 19:09:06.53 ID:UsEqFvbR0 〜母港〜 金剛「…………」 瑞鶴「……惨敗だったわね」 金剛「…………皆は?」 瑞鶴「無事よ。小破が二隻であとは皆、掠り傷程度。修理と補給をして、自分の部屋に戻るように指示しておいたわ」 金剛「………………大破したのは、私だけですね」 瑞鶴「……金剛さんは、あの戦姫と戦ったのでしょう? 沈まなかっただけでも凄いわよ」 金剛「あんなの、戦いなんかじゃありません。本当の意味で、私の攻撃は意味がありませんでした」 瑞鶴「…………提督さんは?」 金剛「たぶん、生きています。気を失い、連れて行かれました……」 金剛「提督は、とても勇敢に戦いました……。私の攻撃が一切効かない戦姫を相手に、あと一歩で殺せる状況まで持っていきました……」 516 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 19:25:09.50 ID:UsEqFvbR0 瑞鶴「……すごいよね、提督さんって」 金剛「……はい。私よりも、ずっとずっと強くて、勇ましくて、最後まで諦めませんでした……」 瑞鶴「…………これからどうしよう……」 金剛「総司令部の人が来て、私達を解体するはずです。そういう書類を見た事があります……」 金剛「その人達が来るのは、恐らく三日後です。提督がそんな電報を打っていました……」 瑞鶴「三日……。あと三日で、私達は……私は……」 金剛「…………」 金剛「瑞鶴、一つ、聞いても良いですか?」 瑞鶴「……何?」 金剛「私や他の艦娘には話せない、提督と瑞鶴の秘密って、なんですか?」 517 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 19:37:46.71 ID:UsEqFvbR0 瑞鶴「…………」 金剛「…………」 瑞鶴「……解体されて普通の女の子になっても、殺されるわよ」 金剛「……構いません。どうせ、艦娘は解体された後、いきなり消えるんです」 瑞鶴「──え?」 金剛「元帥という人が言っていました。解体された艦娘は、ある日突然に姿を消すらしいです」 瑞鶴「…………」 金剛「だから、言ってください。今回、何か裏があるのでしょう?」 瑞鶴「…………分かったわ」 …………………… ………… …… 519 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 19:47:11.19 ID:UsEqFvbR0 金剛「そうですか……瑞鶴は深海棲艦から……。それに、総司令部からそんな命令が……」 瑞鶴「…………」 金剛「……どうしてですか」 瑞鶴「え……?」 金剛「どうして、無理矢理にでも提督を連れて逃げなかったのですか」 瑞鶴「何を言ってるのよ金剛さん……そんな事──」 金剛「そうしていたら、提督は連れ去られなかったじゃないですか!!!」 金剛「どうしてですか!? どうして貴女は提督と一緒に逃げなかったのですか!?」 金剛「どうして……どうして…………?」 瑞鶴「…………」 金剛「ごめんなさい……八つ当たりをしてしまいました……」 瑞鶴「ううん……私も金剛さんの立場なら、同じ事を言ったと思う」 金剛「ごめんなさい……」 瑞鶴「…………」 金剛「……あと、三日ですか」 …………………… ………… …… 520 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 19:59:36.48 ID:UsEqFvbR0 川内「う〜〜〜〜〜〜ん…………」 神通「どうしたの、川内?」 川内「いや、あの敵なんだけど、なーんか違和感っていうか引っ掛かるっていうかなんというか、そういうのがあったんだよねー……」 那珂「なんかって、何ー?」 川内「それが分かんないんだよなぁ……なんなんだろ…………」 川内「む〜〜〜〜〜〜〜〜…………」 神通「思い出したら、教えて? もし提督が帰ってこなかった場合、提督を見つける手掛かりになるかもしれないから」 那珂「那珂ちゃんも何かおかしい所があったか思い出してみる!」 神通「うん。私も頑張って探してみるね」 神通「……提督、帰ってきてくれますよね?」 …………………… ………… …… 521 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 20:12:34.91 ID:UsEqFvbR0 暁「…………」 響「…………」 雷「…………」 電「…………」 島風「…………」 雷「司令官、大丈夫かしら……」 響「……帰ってきた時、唯一行方を知っている金剛さんが塞ぎ込んでしまっていたからね」 暁「…………もしかして、死んじゃったんじゃ……」 島風「そんな事ない!! 提督は簡単に死ぬような人じゃないよ!」 電「そ、そうです! きっと道に迷ってるだけなのです!」 響「私も死んでないと思うよ」 暁「気休めはやめてよ……余計に辛いわ……」 響「気休めなんかじゃないよ。確証とまではいかないけれど、信用できる事がある」 522 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 20:22:42.83 ID:UsEqFvbR0 暁「────っ! な、なに!?」 響「金剛さんさ」 島風「金剛さん?」 響「そう。金剛さんがこの鎮守府に居る事が、司令官が生きているという証だと私は思っているよ」 電「あの……どうしてですか?」 雷「あ、なんとなく分かったかも」 響「雷は察しが良いね。──金剛さんが、そんなに簡単に提督の側を離れると思う?」 暁「……ないわね、それは」 響「もし司令官が死んでしまってるのなら、金剛さんは後を追うと思うよ、ほぼ間違いなく」 雷「そうよね。普段の金剛さんを見ていたらそう思うわ」 響「だから、金剛さんが生きているという事は司令官が生きている──私はそう思ってる」 暁「で、でも……もしかしたら死ぬのが怖くなったって可能性もあるでしょ?」 響「勿論そうかもしれない。あの塞ぎ込みっぷりならそれも納得できる」 響「でも、私は前向きに考えるよ」 響「────そう、簡単に死ぬわけないじゃないか」 …………………… ………… …… 523 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 20:35:37.95 ID:UsEqFvbR0 提督「…………っ」 戦姫「……起きたか」 提督「…………」ジッ 提督(ここはどこだ……? 暗くて良く分からん……。腕は……ちっ、何かに縛り付けられているな) 提督(深海棲艦がこんなに……。というか、こいつらもあの武装を取れるのか) 提督(……ん?) ザッ────ピシッ! 提督「……なぜ敬礼をした。しかも全員」 524 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 20:45:16.71 ID:UsEqFvbR0 戦姫「単刀直入ですが、貴方に我々の上官になって頂きたい」 提督「断る」 戦姫「そうですか……。理由をお聞きしても?」 提督「何の目的か言ってくれるのなら考えもするが、いきなり上官になれと言われても納得する馬鹿は居るまい」 戦姫「なるほど。ごもっともです」 戦姫「私達は沈んだ──いや、死んだ艦娘です」 提督「知っている」 戦姫「ご存知でしたか。話が早くて助かります」 戦姫「……貴方は、似ているのです」 提督「似ている?」 戦姫「はい。私達の──」 ヲ級「…………」テテテ 戦姫「あっこら!」 ヲ級「♪」ギュー 528 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 21:01:16.76 ID:UsEqFvbR0 提督「……このヲ級。もしかして」 戦姫「はい。貴方の鎮守府へ偵察に行った者です」 戦姫「この通りかなり自由奔放者で、甘えたがりなのです」ハァ ヲ級「♪」 提督「……なぜこんなに懐くんだ」 戦姫「すみません。言うのが遅くなりましたが、貴方は私達の提督に似ているのです」 提督「……ただ似ているだけではここまで懐くとは思えん。しかも敵だろう」 戦姫「────という名前をご存知ですか?」 提督「私の父親だ」 戦姫「なるほど。だから……」 戦姫「あ……すみません。勝手に納得してしまいました」 提督「良い。話せ」 戦姫「ここに居る者達は全員、貴方の父親が保有していた──いたっ」 ヲ級「…………」ペシッペシッ 戦姫「あ、ああ分かった言い直す。言い直すから叩かないでくれ。……こほん。失礼しました」 531 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 21:11:58.12 ID:UsEqFvbR0 戦姫「……全員、貴方の父親を慕っていた者達なのです」 提督「…………」 戦姫「特にその──貴方がヲ級と言った者は、私達の提督に懐いていました」 戦姫「本当はもう一隻、妹の空母が居るはずなのですが、どこに居るのか……」 提督「……非常に理解できない所がある」 戦姫「なんでしょうか」 提督「私の父親は誰もが厳しすぎるのでは、と思われる厳格な人だった。実際に父が指揮をしている所を見た事があるが、懐くとは到底思えない」 提督「それなのに、なぜこんなに懐いている」 戦姫「ああ……とても厳しかったです……それはもう、タービンが爆発しそうなくらい……」ドヨーン 提督「…………」 戦姫「────はっ! し、失礼しました!」ピシッ 提督(よっぽど厳しく仕込まれたんだろうなこれ……) 戦姫「……ですが、それは人前と仕事だけです。それ以外ではとてもとても、お優しいお方でした……」 戦姫「ああ〜……美味しかったなぁ、あの間宮アイスクリーム……」 提督「……………………」 戦姫「!!!! しっ失礼しました!!」ピシッ 549 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/22(火) 22:21:52.41 ID:UsEqFvbR0 提督「……お前、よく父から罰を受けていただろ」 戦姫「…………はい。よく吊るされていました……」 提督(私は今、血は逆らえないという言葉を心の底から実感した) 戦姫「それで、深海棲艦となった艦娘は普通、記憶を無くすらしいのですが……どういう訳か私達はあまり記憶が消える事なくこうしているのです」 戦姫「提督への信頼や想いが魂に刻み込まれたのでは、という事で納得していますが、実際の所は分かりません……」 戦姫「そして……私達は提督の事を忘れる事ができません。確かに厳しかったですが、それも優しさだったのです」 戦姫「その優しさを……私は、私達は忘れられませんでした……」 提督「……だから、父と似ている私に提督になれと」 戦姫「勝手な言い分だとは分かっています。でも、万が一……いえ、億や兆、那由多の果ての一つしか可能性がなくても、私達はそれに縋りたかったのです」 提督「…………」 戦姫「…………」 555 名前:>>554はミス。[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 22:36:30.56 ID:UsEqFvbR0 提督「……なるほど、理由は分かった。私を縛っているのは、話を聞いてもらう為か?」 戦姫「はい。提督と同じく深海棲艦を相手にしても殺そうとされましたから、申し訳ありませんが縛ら……せ、て…………」 提督「…………」 戦姫「…………」タジ 提督「…………」ジッ 戦姫「…………っ!!」ビクゥ 戦姫「だ、誰かハサミを持ってきて!! 早く!!!」 提督「……縛ったのは誰だ」 戦姫「え……わ、私……です……」ビクビク 提督「そうか。それなのに切る道具を持ってくるのは別人なのか」 戦姫「行ってきます!!!」ダッシュ 提督(ああ……私の鎮守府と同じ感覚……) ……………………。 558 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 22:52:22.82 ID:UsEqFvbR0 提督「ふー……」 戦姫「あ、あぁぁあの……痛くないようには縛ったつもりですが……だ、大丈夫ですか……?」 提督「うむ。問題ない」 戦姫「良かったぁ……」 提督「…………」 戦姫「? どうかなされましたか?」 提督「いや……敵だというのにこの接され方は少し戸惑いをな」 戦姫「…………」 提督「…………」 戦姫「ああっ!!」 提督(これがアホの子というやつか) 戦姫「深海棲艦になってからどうも色々なモノが抜け出ていったようで……すみません……」 提督「色々なものが抜け出ていった?」 戦姫「はい……。大まかに言うと感情や、言語、記憶などです。細かく言うと、私みたいにあまり深く物事を考えれなくなるなんて事もあります」 561 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 23:06:12.53 ID:UsEqFvbR0 提督「……お前から感情や言語が抜けているようには思えないんだが」 戦姫「え? あぅ……説明が悪かったです……。深海棲艦になると大まかに感情や〜と言いたかったんです……」 提督「…………」 戦姫「呆れないでください……アホの子になったっていうのは自覚しているんです……」 ヲ級「♪」スリスリ 提督「っと。本当に懐いてるなこいつは……」 戦姫「この子は主に言語と感情だと思います。感情はまだマシなのですが、特に言語が酷くて……」 ヲ級「?」 提督「なるほど、喋れないと」 戦姫「はい……」 提督「……少し、質問しても良いか」 戦姫「はい。なんでしょうか」 提督「私は、そんなに父に似ているのか」 戦姫「はい! それはもう!」 562 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 23:22:45.81 ID:UsEqFvbR0 提督「私は父ではないぞ。私に提督になってくれと言ったが、できるのか?」 戦姫「どうやら艦娘特有の『刷り込み』は無くなってしまうようです。貴方に提督となってくださいと言えるので、これは間違いないですね」 提督「私が父の代わりになれるとも思っていないのだが」 戦姫「私達は代わりだなんて思っていません。後継者だと私達は思っています」 提督「そうか。それでは、艦娘をどう思っている」 戦姫「……正直に言って、憎いです。過去の自分達を見るのが嫌なのか、それとも仲間に引き込もうと思っているのか分かりません。ほとんど根拠のない憎しみなんです」 提督「ふむ……。深海棲艦はそういうものなのだろうな」 提督「では、私がお前達の提督になったとして、上官命令で艦娘と仲良くしろと言っても無理か?」 戦姫「それは…………無理そうですね。『刷り込み』があれば出来たかもしれませんが、提督の命令が私達の絶対命令でなくなってしまっています」 提督「そうか……和解の道は無いか……」 564 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 23:43:10.08 ID:UsEqFvbR0 提督「ふと思ったのだが、他の深海棲艦も同じように集まって軍隊を成しているのか?」 戦姫「それはないでしょうね。私達が特別だと思います。他の深海棲艦が同じ編隊で居るのは、恐らく艦娘時代の仲間だからじゃないでしょうか」 戦姫「私達のように規律のようなものがあるのは、他に見た事がありませんね」 提督「ふむ。しかし、どうしてお前達は沈んだんだ? 戦艦の主砲を受けて無傷ならば沈みようがないと思うのだが」 戦姫「艦娘の頃はこんなに高性能ではありませんでした。少なくとも、戦艦の主砲を耐える事は出来ても無傷なんてありえませんでしたね」 提督「沈んだら逆に強化されているのか……不思議なものだ」 戦姫「本当、不思議ですよね……」 提督「では次の質問。私に提督になってくれと言ったが、私の艦娘はどうなる」 戦姫「…………」 戦姫「あー……考えた事がありませんでした……」 提督「……本当に深く考える事ができなくなってるのだな」 戦姫「返す言葉もありません……」 566 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/22(火) 23:55:41.74 ID:UsEqFvbR0 戦姫「そうですよね……私達が提督を失ったように、艦娘達も悲しみますよね……『刷り込み』がある分、私達よりも辛いでしょう……」 提督「……少し前にお前が言った勝手な言い分というのは『今の艦娘を捨てて私達の提督になってくれ』ではなくて『見ず知らずの私達の提督になってくれ』という意味だったのか」 戦姫「はい……その通りです……」 提督(もうこれは深海棲艦になったからじゃなくて元からなんじゃ……?) 提督「……次に、これは純粋な疑問だが、お前は私に手を上げたな?」 戦姫「ひっ! ご、ごめんなさい!!」ビクッ 提督「いや、責めている訳ではない。純粋な疑問だと言っただろう」 戦姫「あの……えと…………殺されそうだったのでつい……」ビクビク 提督「反射的に手が出たと」 戦姫「はい……」ビクビク 提督「その件については私にも非がある。すまない」 提督「鳩尾は大丈夫だったか?」 戦姫「失神しそうでしたけどなんとか……。痛いのは戦闘で慣れてますから……」 提督「そうか……」 568 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 00:09:48.39 ID:MQYn1eZW0 戦姫「……優しいですね」 提督「優しかったら殺そうとするのはおろか、殴る事もない」 戦姫「貴方は私を敵だと言っているのに、心配してくれている。それは、優しいじゃないですか」 提督「…………」 提督「……では、最後の質問だ」 提督「私がお前達の提督にならない、と言ったらどうする」 戦姫「…………」 提督「ほとんど拉致に近い。何もしないという事はないだろう」 戦姫「…………」 提督「…………」 戦姫「私は──私達は、貴方を殺したくない。提督のご子息とあらば、尚更……」 提督「そうか」 戦姫「──翔鶴、その人を抱き締めて」 ヲ級「♪」ギュー 提督「なっ──!」 戦姫「……貴方を骨抜きにしてでも、私達の提督になってもらいます」ニコ 提督(……寂しそうに笑いおって。本当は嫌なんだろうな……) 提督(それでも、提督を欲する……か……) …………………… ………… …… 577 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 00:35:54.36 ID:MQYn1eZW0 〜提督室〜 バアアアアンッッ!!! 川内「思い出したぁぁああああああああ!!!!!」 瑞鶴「ど、どうしたの川内?」ビクッ 金剛「…………?」 川内「あれだよ!! あの敵空母!!」 瑞鶴「お、落ち着いて! 敵の空母がどうしたの?」 川内「さっき戦った敵空母、この前この鎮守府に来ていた変な敵の空母だって!!」 金剛「……それが、どうかしたのですか?」 瑞鶴「それより、なんでそんなのが分かるのよ」 川内「おお、金剛さんが喋るようになった! ──えっと、あの空母の折れ曲がった砲身、まったく同じだったよ!」 川内「あの空母が帰っていった方向に行けば、提督が居るんじゃないかなって思ったの!」 金剛「…………」 瑞鶴「そ、そうは言っても……本当にそうとは限らないじゃない。それに、中途半端にしか憶えてないわよ?」 金剛「…………」 金剛(……あの空母が帰っていったのはあの方向) 583 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 00:57:31.43 ID:MQYn1eZW0 川内「でも、試してみる価値あるでしょ!」 金剛(南方棲戦姫が向かったのがあの方向……) 瑞鶴「……そうよね。皆を集めて、記憶を頼りに──」 金剛「──あった」 瑞鶴「え、え? どうしたの、金剛さん?」 金剛「あの二隻……方向……交点、放棄された泊地……」ブツブツ 川内「えーっと……どういう事?」 金剛「恐らく、あの敵の根城──!」 金剛「二人共、皆をここに集めて! 作戦会議をするわよ!」 ……………………。 586 名前:>>585 ちょっとミスってたから修正。ごめんよミスが多くて。[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 01:15:03.52 ID:MQYn1eZW0 瑞鶴「全員集めたわよ」 暁「何? こんな夜中に呼び出して……。ちょっと眠いんだけど……」 響「何があったんだい? 提督の行方についてかい?」 金剛「そうデス。提督の行方です」 全員「!!」 島風「それ本当!?」 瑞鶴「ど、どこなの!?」 金剛「落ち着いて。今地図に描きマス」ペラッ 金剛「以前見かけた意味不明の空母が帰っていったのがこの方向デス」キューッ 響「……やけに精確だね?」 金剛「私はあの空母のすぐ近くに居ましたからネ」 響「なるほど……」 金剛「そして、私達がさっき戦った場所がココ。遠くに見えた島と鎮守府の場所から考えるとココで間違いないネ」キュキュ 金剛「そして、南方棲戦姫はこの方向へ向かいまシタ」キューッ 金剛「その交点が──」キュッ 瑞鶴「……ここは?」 587 名前:>>585 ちょっとミスってたから修正。ごめんよミスが多くて。[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 01:34:56.29 ID:MQYn1eZW0 島風「何かの島?」 金剛「敵に奪われたと言われている泊地デス。きっと、テートクはここに居ます」 響「……偶然という可能性は?」 金剛「それもありマス。なので、憶えている人だけで構いまセン。敵が退いていった方向を描いてみてくだサイ」 金剛「敵にかなり離されてしまっていたのでほとんど目測ですが、それぞれここら辺に居たはずデス」キュッキュッ 響「……たしか、こっちの方向だったと思う」キューッ 龍田「私が戦った敵はこの方向だったかしら〜」キューッ 電「……こっちだったのです」キューッ 瑞鶴「…………これは」キューッ 金剛「……ほとんど確定ですネ。多少のバラつきはあれど、この交点に重なりマス」 金剛「ここまでくると、もう偶然じゃありまセン! 明日、この放棄された泊地に行きまショウ!!」 金剛「あ……」 雷「? どうしたの?」 金剛「違いマスね。皆、目を瞑ってください」 島風「何が始まるの?」 金剛「いいカラいいカラー。……………………準備は良いみたいですね」 金剛(……たしか、こうだったはずデス) 588 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 01:54:23.08 ID:MQYn1eZW0 金剛「……死にたくない者は解体を施すから逃げろ」 瑞鶴「!!」 金剛「海軍刑法によると敵前逃亡は罪に問われる。だが、ここは提督の城だ。そんなモノは最初から存在しない」 金剛「十秒与える。解体を希望する者は静かに手を上げろ」 金剛「十」 島風(提督の真似ね。なんだか嬉しいかも) 天龍(ちょっとだけ怖いんだよなぁこれ……) 金剛「九」 龍田(天龍ちゃんは提督さんを思い出して怖がってるんでしょうね〜) 暁(ああ……司令官はこう言っていたのよね……) 金剛「八」 響(なんだか懐かしいな……今日あった事のはずなのに……) 金剛「七」 雷(金剛さん、よっぽど司令官が好きなのね) 金剛「六」 電(司令官さんは、みんな馬鹿だって言っていましたね) 589 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 02:12:21.39 ID:MQYn1eZW0 金剛「五」 川内(提督の真似かー。結構似てるなぁ) 金剛「四」 神通(そうですよね。提督なら、こうしていましたね) 金剛「三」 那珂(はっやくーはっやくー♪) 金剛「ニ」 瑞鶴(あの日、提督さんは私達を見捨てないって言った。だから、私も見捨てない) 金剛「一」 金剛(──提督、待っていて下さい) 金剛「そこまで──。手を下ろしてよい。……………………目を開け」 金剛「……………………」 金剛「……私達は死にたがりの大馬鹿者です。馬鹿ですね、私たち全員」 金剛(提督……ここに居る皆は、提督が大好きですよ) …………………… ………… …… 590 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 02:26:39.89 ID:MQYn1eZW0 提督「それで、また縛り付ける訳か」 戦姫「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」ビクビク 提督「私でも捕虜にはこうするから気にするな。……まさか両手足にこんな鉄球を付けられるとは思わなかったが」 提督「しかし……思ったより綺麗だな、この拠点」 戦姫「……できるだけ、提督の鎮守府に近付けたかったんです」 提督「……なるほど。では、ここが提督室か」 戦姫「はい。……こんな感じの部屋で、こんな感じのベッドの上で、提督に一杯愛してもらいました」 提督「…………ちょっと待て。今なんと言った?」 戦姫「? 一杯愛してもらいました」 提督「……あの父が? まさか。暇があれば亡き母をずっと想っていた人だぞ?」 戦姫「ええ……その事はよく憶えています。例え出撃していようと、奥様の写真を片時も離しませんでした」 戦姫「ですから不思議に想いましたけど……寂しかったのでしょうね。よく、私を痛いくらいに抱き締めては泣いておられました」 提督「……想像できん」 591 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 02:45:32.03 ID:MQYn1eZW0 戦姫「きっと、私が奥様と似ていたからでしょう」 提督「まったく似ていないんだが」 戦姫「深海棲艦となって姿が変わっていますから……」 提督「……すまん」 戦姫「いえ、気になさらないで下さい。この姿についてはもう諦めました」 戦姫「……こんな姿で申し訳ありませんが、お相手させて頂きます」 提督「待て」 戦姫「はいっ!」ピシッ 戦姫「あ……」 提督「…………」 提督「そんなに急がなくても良いだろう」 戦姫「そうでしょうか? 貴方の気骨は相当強いと思います。だから、早めに行動しようとしているだけですよ」 提督「本丸を攻め落とすにはまず外堀から、という言葉を知らんか?」 戦姫「いえ……聞いた事はありますが……」 提督「目的を達成する為には、まず周辺から片付けていけって事だ。人を手篭めにするのなら、まずは心を開かせれば話が早い」 戦姫「なるほど!」 提督(こんな事を言う時点で不可能だというものだが、それに気付く事もあるまい) 592 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 03:00:21.02 ID:MQYn1eZW0 戦姫「それでは、失礼します」モゾモゾ 提督「……呆れた」 戦姫「え……え?」 提督「私とお前はどういう関係だ」 戦姫「……提督のご子息様と、提督の元艦娘ですか?」 提督「違う。立場で言え」 戦姫「…………あ、敵同士」 提督「そうだ。私は海の上でお前の首の骨を折ろうとしただろう。それを忘れたのか」 戦姫「憶えてますよ? それが何か……」 提督「……今度こそ折られるとは思わないのか」 戦姫「特には……。だって、折るだけなら今までいくらでも機会がありましたよね?」 提督「より確実な機会を待っている可能性があろう。虎視眈々とな」 戦姫「私にはそう見えません。目を見れば分かります」 593 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 03:26:17.43 ID:MQYn1eZW0 提督「どうだかね」 戦姫「本当です。初めて会った時の貴方の目ではありませんもの」 提督「……どんな目だった」 戦姫「正直、怖かったですね。今と違って目に光が宿っていましたが、その目に明確な殺意が込められていました」 戦姫「……あの目は、知っていますから」 提督「知っている?」 戦姫「はい。私の提督も、最後にあの目をしていました」 提督「……父は、どんな最期だった」 戦姫「私を護ろうとする為、戦艦ル級に掴み掛かりました。貴方と同じように、相手の首を折ろうとしましたが、相手の砲撃の方が一瞬だけ速く、提督と私は一緒に……」 提督「……敵がそんなに接近し、尚且つ父とお前が気付かないとは、どう言う事だ」 戦姫「海の底から浮かんできたんです。恐らく、深海棲艦になったばかりだったのでしょう」 戦姫「提督も私も、満身創痍でしたから満足に動けず……」 提督「……沖ノ島海域最大規模戦闘だったか。味方二百隻弱、敵五百隻強の被害が出た戦闘だったと聞く」 戦姫「正確には味方が六十隻で、敵が六百隻とちょっとです。もうちょっとあるかもしれませんね」 提督「………………なんだと? 味方が六十? そんな馬鹿な」 戦姫「本当です。だって、支援艦隊が来なかったんですから」 594 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 03:38:44.78 ID:MQYn1eZW0 提督「支援艦隊が来なかった……?」 戦姫「はい。いきなり通信が受信できなくなって、そのまま囲まれました」 提督「……どうなっている。こちらの資料では向かった支援艦隊もほぼ全て沈んだとあったぞ。来ていたのに気付かなかったんじゃないのか?」 戦姫「それはありません。航空戦隊が最後まで『支援艦隊はまだか』と叫んでいましたから」 提督「……キナ臭いな」 戦姫「し、信じてくれないのですか?」 提督「いや、キナ臭いのは総司令部の事だ」 提督「……戦姫。お前は知りたくないか?」 戦姫「えっと……何をですか?」 提督「支援艦隊が来なかった理由──いや、お前達が殺された理由だ」 戦姫「……殺された?」 595 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 03:52:07.49 ID:MQYn1eZW0 提督「支援艦隊が本当に出撃していたのなら、お前の記憶と食い違うはずがない。ならば、意図的に出撃しなかった。そうとしか考えれな────」 戦姫「? どうしました?」 提督「………………戦姫……そのときの支援艦隊、指揮はなんて名前の奴が取っていた?」 戦姫「えっと……──少将と──中将と──中将と……」 戦姫「総指揮に──大将」 提督「────ビンゴだ」 戦姫「え? びんご……? え……?」 提督「そいつらは全員、大将になっている」 提督「総指揮の大将なんて元帥だよ。つい先日死んだがな」 戦姫「……どういう事ですか、それ」 提督「海軍の大将以上は全員黒だと言って良い」 596 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 04:03:01.10 ID:MQYn1eZW0 提督「深海棲艦に対抗する為と謳った艦娘建造計画。深海棲艦を基盤とした艦娘の建造計画。解体した艦娘の行方不明」 提督「黒だ黒だと思っていたが、白い所なんて微塵も存在していない……!」 提督「そもそも始まりはどこだ。艦娘が先か? それとも深海棲艦か? 深海棲艦が先ならばどこから生まれた? 艦娘が先ならば本当の目的はなんだ?」 提督「深海棲艦を基盤とした建造計画も良く考えればおかしいじゃないか。一日に深海棲艦は何隻沈んでいる? 艦娘は何隻沈んでいる? 間違いなく深海棲艦の方が沈んでいるはずだ」 提督「解体した艦娘はどこへ行く。人間と変わらなくなるんだ。いきなり消える訳がない。売り飛ばされるのか、それとも何かの実験に使われているのか」 提督「一体どういう事だ、総司令部……!!」 戦姫「……………………」 戦姫(この人が何を言ってるのか良く分かんない……)クスン …………………… ………… …… 612 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/23(水) 15:41:58.95 ID:VBpl/FyI0 瑞鶴「────については、さっきの議論結果で問題ないわね。次の問題だけど、あの敵に対抗するにはどうしたら良いかしら」 金剛「それが一番の問題デス……特にあの南方棲戦姫はモンスターね。私の砲撃が全く効きませんでシタ」 響「……戦艦の砲撃が効かないならば、魚雷しかないのかな」 暁「でも、雷撃距離になる前に砲撃でやられちゃうわよ?」 金剛「本当に困りまシタ……」 瑞鶴「潜水艦があれば、まだ話は別なんでしょうね……」 金剛「無いものねだりは良くないのデース……」 ガチャ── 全員「!!?」 金剛「誰!?」ジャキッ 提督「お前ら……何をしている……」 瑞鶴「提督さん!? ど、どうし──!?」ハッ ヲ級「?」ヒョコ バッ──! ジャキジャキジャガジャコンガチャッ──!! ヲ級「!?」ビクゥ 613 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 16:01:02.59 ID:VBpl/FyI0 金剛「提督!! 離れて!!!」 提督「お前ら……」 島風「早く提督こっちに──!!」 提督「セイレツ……」 全員「────ッッッ!!!!!!」ビックゥ 全員「!!!」ピシッ 提督「…………」ツカツカツカ シャッ──! 提督「砲撃の恐れがあるので、夜、見張りが居ない時に電気を付けるならばカーテンを必ず閉めるようにと言っ たはず……」 全員「────ッ」ガタガタガタガタ 提督「シニタイノカ?」 全員「ご……ごめんなさい……!」ガタガタガタガタガタガタ ヲ級「…………!」ガタガタガタ …………………… ………… …… 614 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 16:17:06.52 ID:VBpl/FyI0 瑞鶴「あ、あの……」ビクビク 提督「…………」ジッ 瑞鶴「ぴぃっ!?」ビクゥ 提督「……なにかね」 瑞鶴「あ、ぁあの……ど、どどどうして敵艦が……提督さんと……」ビクビクビクビク ヲ級「!」テテテ 瑞鶴「……はぇ?」 ヲ級「♪」ギュー 全員「…………」 瑞鶴「え、え? どういう事?」アワアワ ヲ級「♪」スリスリ 金剛(………………瑞鶴は深海棲艦から生まれたからですかネ……?) 提督「……色々と話さなければならない事がある」 ……………………。 615 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 16:42:19.09 ID:VBpl/FyI0 金剛「はー……深海棲艦にも色々と居るんですネー……」 島風「ホントホント。破壊と殺戮しかしないのかと思ってたけど、そうじゃないのも居るのね」 提督(とりあえず、あの深海棲艦達は提督を欲しがっていた事と、本当に相容れれないか確かめてみるという名目で連れてきたと誤魔化したが、案外上手くいくものだな。これが人徳というものか) 提督「さて、特殊な深海棲艦も居ると分かってもらった所で、もう一人紹介しよう」 響「もう一人連れてきているのかい?」 提督「ああ。ちょっとした事情でドアの向こうで待機してもらっている」ツカツカ ガチャ── 提督「……………………」 パタン── 金剛「!!!!」 響「ほう」 龍田「あらあら〜……」 瑞鶴「…………」 戦姫「……………………」 提督「本日、諸君等と戦った深海棲艦のトップだ」 616 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 17:03:32.97 ID:VBpl/FyI0 金剛「っ!」ジャキッ 戦姫「……ナンダ キサマカ」 金剛「よくのうのうとここに来れたものですね」 戦姫「ヨクアレデ イキテイタモノダ」 暁(ちょっとちょっと!? 物凄く怖いんだけどアレ!?)フルフル 電(だ、大丈夫です!! き、き、きっと大丈夫なのです!!)フルフル 金剛「その件についてはどうも。今度は逆の立場ですね」 戦姫「フン ヘイキサエアレバ キサマナド────」 提督「お前ら」 金剛・戦姫「ひっ──!!」ビクゥ 提督「私の城で、私の前で何をするつもりだ」 金剛・戦姫「ご、ごめんなさい……!」ビクビク 川内(あれ……第一印象と全然違う……) 617 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 17:17:30.63 ID:VBpl/FyI0 提督「この通り、艦娘に対して根拠の無い恨みを持っているのが深海棲艦らしい。瑞鶴にしがみついている空母は相当な特殊だ」 ヲ級「♪」ギュー 提督「諸君ら艦娘にとって通常の深海棲艦は大変危険という事だけは忘れないように」 戦姫「…………」キッ 金剛「…………」キッ 提督「…………」ジッ 金剛・戦姫「!!!」ビクッ 提督(武装解除させてきて本当に正解だった) 提督「少しの間だが、戦姫と空母をこの鎮守府に置いておく。仲良くは……戦姫にはできないだろうが、そっちの空母にはできるかもしれないだろう。夜も深くなってくる頃だ。接するのは明日からにしてくれ」 提督「では、解散」 …………………… ………… …… 618 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 17:33:11.91 ID:VBpl/FyI0 雷「──司令官、金剛さん、瑞鶴さん、戦姫さん、空母さん、おやすみなさーい」 ──パタン 金剛「……それで、本当はどういう事なんデスか?」 瑞鶴「さっきの説明、隠してる事があるわよね?」 提督「ああ。だが……」チラ 金剛「…………? ああ、大丈夫です。総司令部から殺される覚悟はもうしまシタから」 提督「……瑞鶴」 瑞鶴「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」ガタガタ 提督「次はない」 瑞鶴「ぴゃいっ!」ピシッ 金剛「……それよりも、物凄く羨ましい人が一人いるのですけど」ジッ ヲ級「すー……すー……」 金剛「どうして提督の膝に座って寝ているんですか」 提督「……懐かれた」 瑞鶴「私はともかく、懐きっぷりが半端じゃないと思うんだけど……」 619 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 17:57:48.21 ID:VBpl/FyI0 提督「どうやらこの子達の提督と私が非常に似ているらしい」 金剛「それでもここまで懐きますかね……?」 戦姫「……私とこの子は提督から特に可愛がられていたからだろうな」 瑞鶴「あ、普通に喋れるのね」 戦姫「さっきは艦娘が何人も居たからな。二人……いや一人ならばこの憎しみも抑えれよう」 金剛「やっぱり瑞鶴は私達と違うって分かるのデスか」 戦姫「ただ違うという訳ではなさそうだ。特別な何かを感じる」 瑞鶴「うん、私もよ。他の深海棲艦とは全然違う、落ち着くっていうか安心できるっていうか……そういうのがあるわね」 戦姫「私もだ。……お前があの瑞鶴だったら良いのだがな」 金剛「あの瑞鶴?」 戦姫「さっきも言ったが、私とこの子は特に可愛がられていたが、もう一人居る。この子、翔鶴の妹がな」 提督「それに、瑞鶴を一目見てすぐに懐いた。ここまでくるとそうとしか思えんよ」 瑞鶴「翔鶴姉が、この子……」 戦姫「いや、それでも違うだろう。お前はこの人の瑞鶴なのだろう?」 620 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 18:09:32.15 ID:VBpl/FyI0 瑞鶴「そうだけど……私、深海棲艦から建造されてるわよ?」 戦姫「なんだと……?」 金剛「テートク、話していなかったのですか?」 提督「変に先入観を持たせたくなかったからな。もしやと思い、敢えて隠しておいた」 瑞鶴「そっか……なんだか納得したかも」 戦姫「納得?」 瑞鶴「私ね、提督さんに初めて会った時から特別な感情があったの。自分でも不思議に思っていたけど、沈む前の提督が提督さんに似ているなら納得よ」 戦姫「……それでも、やはりおかしいな。私達が沈んだ戦闘に瑞鶴は参加していなかった」 戦姫「極度の体調不良で、一人母港に残っていた。沈むのはありえん。解体されているはずだ」 提督「いや、しっかりと沈んでいるぞ。あの戦闘の話が大きすぎてあまり知られていないようだが、空母一隻が勝手に出撃をし、母港を出た直後に敵に沈められたという記事があった」 提督「その母港がここだ」 金剛「……本当にピタリと一致しますネ」 621 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 18:24:10.09 ID:VBpl/FyI0 戦姫「という事は、ここは提督の鎮守府だったのか……」 提督「そうだ。気付くと思っていたのだが、気付かなかったのか」 戦姫「……鎮守府の名前と場所を憶えていないんです。どこの鎮守府も似たような造りですし、私達が居た頃と少し違うので気付きませんでした」 戦姫「そっか……ここが……」 戦姫「しかし……瑞鶴、提督の事や翔鶴の事など、本当に憶えていないのか?」 瑞鶴「うん……。翔鶴姉の事なら少し思い出せるけど、提督の事についてはさっぱり……」 提督「深海棲艦になると記憶などが抜け落ちるように、恐らく深海棲艦から艦娘に戻る時も記憶が抜けてしまうのだろう」 提督「さて、そろそろ本題に入ろう。私が戦姫と話していて新たに分かった事とかな──」 ……………………。 622 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 18:36:14.69 ID:VBpl/FyI0 金剛「──真っ黒じゃないですか!!」 提督「ああ、真っ黒だ。キャンパスの白地が見えないくらいにな」 瑞鶴「…………」 提督「どうした、瑞鶴」 瑞鶴「あ……ちょっと話題から逸れちゃうんだけど、どうしてあの鎮守府を襲撃したのかなって思って……」 戦姫「襲撃?」 提督「大方、先に手を出したのはクソジジイからだろう。迎撃をするも攻撃し続けてきたので鎮守府を攻撃。といった所ではないか?」 戦姫「そうです。さすがですね」 戦姫「あまり戦力を削ぎたくなかったので相手にしなかったのですが、調子に乗ったのかしつこく攻撃してきたので返り討ちにしました。艦娘を物のように扱うやり方にも腹が立ち、仲間を呼んでその鎮守府も一緒に落としました」 提督「……そういえば、どうして南方からこの鎮守府へ向かってきたんだ? 戦姫が拠点にしている場所は東南東方面だったと思うが」 戦姫「…………羅針盤が壊れていたんです」 提督「…………」 金剛「…………」 瑞鶴「…………」 戦姫「どれだけ進んでもそれらしい場所に辿り着かなかったので羅針盤を調べてみたら……くるくる回りました……」 625 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 18:47:29.15 ID:VBpl/FyI0 提督「……………………」 戦姫「あぅ!! そんな哀れみの目で見ないで下さい!!」アウアウ 瑞鶴(この人アホ……?) 金剛(こんなアホに私は……)ズーン… ……………………。 瑞鶴「その黒い総司令部を調べる為にここへ来たのね?」 戦姫「ああ。総司令部を叩き潰す手伝いをすれば私達の提督になるのも考えると言ってくださったのでな」 金剛(考える、ね。考えるだけで、なるとは言っていないのに気付いているのでショウか……。それとも、テートクは艦娘と深海棲艦、両方の提督にでも?) 提督「そういう事だ。勝手に決めてすまない」 金剛「ノー、謝らないでくだサーイ! 私はテートクについていきますネー」 瑞鶴「私もよ。提督さんについていくわ。……それに、総司令部の事も気になるしね」 提督「話は纏まったな。もうこんな時間だ。寝るとしよう」 金剛・瑞鶴・戦姫「はいっ」 戦姫「貴方のベッドはあちらで宜しいのですよね?」 金剛「待ちなさい。何をする気ですか」 627 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 19:08:21.91 ID:VBpl/FyI0 戦姫「一緒に寝るだけだが、何か?」 瑞鶴「!?」 金剛「提督は渡しません。空き部屋がありますのでそっちを使って下さい」 戦姫「私の提督になってもらう為にも、私はこの人を篭絡しないといけない」 金剛「か、身体で奪う気ですか!? だからそんな格好で提督を誘惑しているのですか!!」 戦姫「いや……これは、服がもう無くてな…………。それに、なぜか服を着るとその瞬間、服が消えてしまうんだ……」 瑞鶴「うわぁ……なんだか一気に不憫になったわ……」 戦姫「いつもこうしていたら流石に慣れたさ」 提督「……それはそれで問題がないか?」 戦姫「気持ちの切り替えです。性行為をする時に裸を見られるのは流石に恥ずかしいですよ?」 金剛「やっぱりヤる気じゃないですか!!!」 戦姫「せんよ。本丸を落とすなら外堀からだ」 提督(しっかりとは憶えれてないんだな) 629 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 19:26:55.08 ID:VBpl/FyI0 金剛「……信用できません。提督!! 私も一緒に寝ます!」 戦姫「寝惚けてお前を殺すかもしれんぞ」 提督「そんな事をしたらどうなるか分かっているだろうな」 戦姫「ぴぃっ!!! ごめんなさい!!」ビクゥ 提督「それに、風紀的に問題があるだろう。許可などできん」 金剛「既に私、提督と二回寝ているんですけど?」 瑞鶴「私も一回──って、二回ですって!?」 金剛「はい♪ 一回分、私の勝ちネ!」 瑞鶴「提督さん……ズルいよぉ……!」 ヲ級「〜〜〜……」 提督「静かにしろ。起きる──ん?」 金剛・瑞鶴・戦姫「…………」ジー 提督「…………」 金剛・瑞鶴・戦姫「…………」ジー 提督「…………分かった、一緒に寝よう。狭いのは文句言うなよ」 ……………………。 633 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/23(水) 19:41:23.75 ID:VBpl/FyI0 瑞鶴「提督さんを真ん中にして、私達の寝る場所は左右とあとは……」 戦姫「……上?」 金剛「譲りません」 瑞鶴「私もよ」 提督「却下だ馬鹿者。左右二人ずつだ」 瑞鶴「金剛さんと戦姫さんは一緒じゃない方が良いわよね。なんだか色々と危なそうだし」 金剛「そうね」 戦姫「私も、下手したら殺しかねないからそれでお願いしたい」 提督「さらっと物騒な事を言うな」 瑞鶴「あと……私、提督さんと戦姫さんの間が良いなぁ……」 戦姫「間? どうしてだ?」 瑞鶴「なんだか、お父さんとお母さんみたいで……。お父さんとはなんだかまた違うと思うんだけど……」 戦姫「それは良いな。私も賛成だ」 634 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/23(水) 20:03:07.03 ID:VBpl/FyI0 提督「あとは金剛とヲ級だな」 ヲ級「すー……」 金剛「私は端っこが良いです」 瑞鶴「あら、意外ね?」 提督(嫌な予感しかしないな) 金剛「だってー、提督との子供みたいじゃないですかー」 提督「…………」 瑞鶴「くっ……!!」 金剛「ふふーん♪」 提督「仲良くしなかったら全員追い出す」 金剛・瑞鶴「仲良くしますっ」 金剛「それでは、私は備蓄倉庫から毛布を取ってきますね」 提督(予備の毛布を少し多めに申請しておいて良かったよ) ……………………。 635 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 20:18:45.51 ID:VBpl/FyI0 金剛「それでは、電気を消しますねー。………………よいしょ」モゾモゾ 提督「ギリギリだが、思ったよりは大丈夫みたいだな」 金剛「ですねー。私も落ちる心配はしなくて良いみたいね」 金剛「……それにしても、こうしてみると家族みたいです」 提督(また嫌な予感が) 瑞鶴「本当ね。……でも、この場合誰が提督さんの奥さんになるの?」 提督「……………………」 戦姫「まず、内側の人は子供だな」 瑞鶴「……悔しいけどその通りだと思うわ」 金剛「それじゃあ、私と戦姫、どっちがお嫁さんなのですか?」 提督「…………まさかとは思うが、それは私に聞いているのか」 金剛「はい。提督じゃないと決着が付きそうにないでーす」 提督「……面倒だ。両方で良いじゃないか」 637 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 20:29:36.23 ID:VBpl/FyI0 金剛「ここは日本でーす。一夫多妻制は認められていませんよー?」 提督「ここは私の城だ。そんなもの知らん」 瑞鶴「大胆ね……提督さん」 戦姫「どっちが第一夫人なのですか?」 金剛「どっちですか提督?」 瑞鶴「私……第三夫人でも良いわよ?」 提督「よっぽど外で寝たいらしい」 金剛・瑞鶴・戦姫「おやすみなさい」 提督「よろしい。おやすみ」 ──モゾ。 瑞鶴「…………」 提督「?」 瑞鶴「────」チュ 提督「……………………」 瑞鶴(おやすみのキス……。今度こそおやすみ、提督さん)コソッ 提督「…………」 提督(……本当、金剛と瑞鶴をどうしたら良いのか…………) …………………… ………… …… 638 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 20:47:28.67 ID:VBpl/FyI0 提督「総司令部の大将宛に電報を送った。明日には全員この鎮守府へ来るだろう」 金剛「全員を集めてどうするのデスか?」 提督「奴等の目論見を全て聞き出す為に信用を得る」 金剛「だから戦姫とヲ級を連れて来たのデスね」 提督「ああ」 戦姫(どういう事だろう……) 瑞鶴「えっと……いまいち分からないんだけど、どういう事なの?」 提督「深海棲艦とは会話どころか意思疎通もできていない、というのが現状だ」 提督「だが、私は既に瑞鶴という深海棲艦を基盤に造られた艦娘を所有している。そこに深海棲艦を従えている所を見せたらどうなる」 瑞鶴「えっと……自分達の知らない、深海棲艦の秘密を知っていると思われる?」 639 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 20:58:19.45 ID:VBpl/FyI0 提督「そう。奴等の本当の目的は何かは知らないが、瑞鶴のような強力な艦娘を造ろうとしているのは事実。それを餌にする」 瑞鶴「でも、戦姫さんと翔鶴姉を連れて行っても、信用させるのには弱いんじゃない? 深海棲艦が提督さんに従うハッキリとした理由がないと……」 提督「深海棲艦も艦娘に戻りたがってるとでも言おう。戦姫はこの通り会話ができる。深海棲艦側の圧倒的勝利を目前に瑞鶴を見た戦姫が対話を希望し、そこで協力関係となったとしておこう」 提督「本当は金剛が戦ったが、そこは瑞鶴が戦ったという事にする。三人共、良いな?」 金剛・瑞鶴・戦姫「はいっ」 提督「念の為に、口裏合わせで他の艦娘達にも『戦姫と戦ったのは瑞鶴だった』と言うようにしておく。これでまずバレないだろう」 提督「作戦は以上。各自自由にして良い」 …………………… ………… …… 640 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 21:11:02.02 ID:VBpl/FyI0 提督「戦姫、聞きたい事がある」 戦姫「はい、なんでしょうか?」 提督「私達と戦った時、こちらの戦艦よりも長い射程で撃ってきたよな。あれはどういう事だ?」 戦姫「私の装備は46センチ砲です。見た所、あの艦娘の主砲は35.6センチ砲。私の射程より短くて当たり前でしょうね」 提督「46センチ……なんだその馬鹿げた数字は。16インチ砲と呼ばれているものでも40センチ程度だぞ」 戦姫「極秘……とまでは言いませんが、ほとんど知られていないでしょうね。この砲のおかげで戦艦のアウトレンジから砲撃が可能です」 提督「ふむ……開発妖精に頼んでみるか」 戦姫「……それよりも、どうしてあなたの艦娘達は装備が充実していないのですか? どれも良い装備とは言えなかったのですけれど……」 提督「天が私に微笑んでくれていないだけだ。あと、各資材の適切な投入量も分からないので試行錯誤というのもある。ついでに資材が乏しくて回数を重ねる事もできないのが現状だ」 戦姫「あ、それでしたら──」 ……………………。 642 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 21:23:38.35 ID:VBpl/FyI0 開発妖精「ヒャッホォーウ!! また良いのが出来たよー! 今度は46センチ三連装砲だ!!」 金剛「……凄いデスねこのレシピメモ」 提督「ああ。今までの失敗が嘘のようだ」 戦姫「全ての配分を憶えている訳ではないのですが、お役に立てたようで何よりですっ」 提督「うむ。感謝する」ナデナデ 戦姫「あ……」 金剛「!」 提督「む。嫌だったか」スッ 戦姫「いえ! もっとお願いします!!」 提督「ふむ」ナデナデ 戦姫「はにゃー……提督みたい……」 646 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 21:34:58.73 ID:VBpl/FyI0 提督「父も同じように?」ナデナデ 戦姫「はいー……。こうされるのがとても好きでしたー……」 提督(……蛙の子は蛙というものか。本当に似ているのだな、父と私は) 開発妖精「おぉっほぉー!! 32号対水上電探がきたああああ!!!!」 提督「…………素晴らしい」ナデナデ 戦姫「はぅー……」ホッコリ 金剛(ぅー……羨ましいです……──っと、そろそろ資材が危ないですね) …………………… ………… …… 653 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 22:45:09.14 ID:VBpl/FyI0 天龍「〜〜〜〜」フルフル 龍田「もー、天龍ちゃんったら〜。まだ嬉し泣きしているのかしら〜?」 天龍「う、うっせぇ……ずびっ…………本気で心配しらんだからな……」 龍田「はい、天龍ちゃん、ちーん」 川内「私も嬉し泣きとかしそうだったけど、天龍の姿を見たら涙が引っ込んだよ」 神通「くすくす。代わりに泣いてくれているみたいですね」 那珂「那珂ちゃんも、提督が帰ってきてくれて嬉しいよーっ」 龍田「そうよね〜。私も提督さんが帰ってきてくれて嬉しいわ〜」 龍田「私を屈服させる人なんて、居なかったもの〜」 川内「……龍田って人を尻に敷くタイプだよね」 龍田「提督さん以外の男性は肌に触れる事すらできないわよ〜。触れる前に落ちちゃうもの」 川内「……何が落ちるのかは聞かない事にしておくよ」 那珂「たった一人の男の人にだけ肌を許すって、なんだか純愛だねー」 龍田「提督さんが望むなら、私はなんでもしちゃうかも。それが秘密の夜伽でも」 那珂「わお、爆弾発言! 那珂ちゃんだったらスキャンダルだー!」 龍田「身の程を弁えなさい?」 那珂「……はい」ビクッ …………………… ………… …… 656 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/23(水) 23:01:57.36 ID:VBpl/FyI0 島風「うー……」ゴロゴロ 暁「どうしたのよ。服が乱れるからやめなさい、はしたない」 島風「だってー……。なんだか提督と一緒に居られないんだもん……」 響「行ったら良いじゃないか。側に居たいんだろう?」 島風「いーきーにーくーいー。金剛さんと瑞鶴さんに加えて、あの戦姫とヲ級ちゃんが居るんだよ? ヲ級ちゃんも提督と瑞鶴以外は苦手みたいだし……。戦姫は論外。怖い」 電「私も、戦姫さんは苦手です……。必死に抑えてくれているのは分かるのですが、迷惑を掛けてしまってるような気がするのです……」 雷「私は『エロいわね』って言ったら追いかけられちゃった。ちょっと楽しかったわ」 島風「私だったら口が裂けても言えないよ……」 響「それだったら我慢をするしかないだろう? 想いが強ければ割と耐えられるものさ」 島風「なんだかそれ、響が提督に恋をしてるみたい」 響「恋ではない。親に対する好きと同じさ。差し詰め、お父さんといった所か」 雷「だから最近の響は提督の口調とちょっとだけ似てるのね! 納得したわ!」 響「ん……元から近かったというのもあるけれど、違和感があったのなら戻すよ」 658 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 23:18:12.38 ID:VBpl/FyI0 電「どっちも響ちゃんに似合ってるのです。響ちゃんが可愛いのには変わらないのです」 暁「……司令官の口調を真似してたから、最近の響はちょっとだけ大人に見えたのかしら」 島風「暁が真似しても似合わないと思うなー」 暁「なっ!」 雷「私も似合わないと思うわ」 響「私もだよ」 暁「う、ぅ……」チラッ 電「え、えっと……ごめんなさい……暁ちゃんは今のままの方が可愛いかなぁ……」 暁「うわぁああん!!」 …………………… ………… …… 661 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 23:31:23.90 ID:VBpl/FyI0 コンコン──コン──。 提督「入れ」 ガチャ──パタン 瑞鶴「……提督さん」 提督「何があった。総司令部がなにかしらの方法で接触してきたのか?」 瑞鶴「え? ううん。違うわよ?」 提督「……なら、なぜノックを二回と一回に分けた」 瑞鶴「あっ! ご、ごめんなさい……。最近、このノックばかりだったから……」 提督「……まあ良い。何か話したい事があるのだろう。言ってみろ」 瑞鶴「ん、とね……。これ……」スッ 提督「……その小瓶」 瑞鶴「うん……提督さんから貰ったヤツ」 提督「その事についてだが、明日、訪問する大将共に交渉する。功績をあげているんだ。このくらい許可してくれるだろう」 瑞鶴「それなんだけどね……。ちょっと、思う事があったの」 662 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 23:44:07.07 ID:VBpl/FyI0 提督「思うところ?」 瑞鶴「……私が前の艦娘の時、提督さんのお父さんが提督で、私はその人に似ている提督さんに惹かれて好きになった……。そう思っちゃったの」 提督「…………」 瑞鶴「でも、私はそうじゃないと思う。……そう思いたいの。だから、それを振り払う為にこれを持ってきたの」 瑞鶴「私は……私は、前の提督がどうこうじゃなくて、私個人が提督さんが好きなんだって思わせてほしい」 瑞鶴「だから……お願い。不安で潰れちゃいそうだから……」 提督「……………………」 瑞鶴「あっ、も、勿論……提督さんの意思に任せるわ。提督さんが言ってくれたように、私も無理矢理は嫌だから」 提督「……分かった。分かったからそう思い詰めた顔をするな。悪い事をした気分になる」 瑞鶴「──ありがとう! それじゃあ、ちょっと待っててね」 ガチャ── 提督(……待ってて?) 663 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 23:55:16.01 ID:VBpl/FyI0 ──パタン 金剛「は、はぁい提督……」 提督「……そうか。二人を相手にしろという事か」 瑞鶴「ご、ごめんなさい。無理だったらそう言って良いから……」 提督「まったく……瑞鶴だけでなく金剛、お前もか」 金剛「だって……提督の愛が欲しいですもん……」 金剛「キスをしてくれてから、私はおかしいんです……。側に居てくれるだけで良い、側に置いてくれているだけで良い──。そう思っていたはずなのに、あのキスから私は狂いました」 金剛「提督の側に居るだけじゃ満足できなくなりました……。一緒のベッドで眠ってもまだ足りませんでした……。もっと、もっともっと提督に近付きたくなりました……」 金剛「提督……私、どうにかなってしまいそうです……だから、助けてください……」 提督「そんな消えそうな声で言ってくれるな。不安に思わなくて良い」 金剛「────! あはっ。ありがとう、提督──」 提督「それにしても、どうして二人は一緒になってきたんだ? 出し抜けばそれだけリードできていただろう」 瑞鶴「私が話を持ち掛けたの。確かにそれも思ったんだけど……提督さんが好きな気持ちは同じで、金剛さんなんて私よりもずっと頑張ってるって思ったの。だったら一緒に──って」 金剛「…………」コクン 提督「……なるほど、分かった」 提督「──二人一緒に愛するから、電気を消してきなさい」 金剛・瑞鶴「はいっ──!」 …………………… ………… …… 667 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/23(水) 23:59:33.69 ID:VBpl/FyI0 はい。ここからエロになります。苦手な人は注意してね。 そして、エロシーンは一気に投下する予定です。エロを書き切るまでちょっと待ってて下さい。 何? 焦らすなだって? 聴こえんなぁ。 エロシーンは常にsage続け、エロが終わったら10レスくらい連続でageます。エロが苦手な人は参考にして下さい。 では、書き溜めて参ります。 698 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/24(木) 05:02:19.25 ID:FjeZmfl00  パチン──、という音と共に、部屋が真っ暗になった。  いや、完全な闇というわけではない。ベッドの脇に置いてある燭台に火が灯った。真っ暗ではいけないと思っ て提督が点けたのだろう。  金属テールの上に乗った皿に、短い蝋燭の火が曖昧にゆらゆらと揺れている。その火を見ると、私の心も、身 体も、なんだか曖昧になった気分がした。  隣に立っている瑞鶴と目が合う。彼女が小さく顎を引いたのを見て、私も意を決して足を進めた。  提督はベッドに座っていて、私と瑞鶴を静かに待っている。その表情は、仕事で見せる厳しい顔付きでもなく 、時折見せる優しい表情よりも、柔らかく温かみのある顔をしていた。  私は提督の左に、瑞鶴は右に座った。  瑞鶴は身体を提督に寄せたが、私は恥ずかしくて拳一つ分の隙間を空けて座っていた。 (あ……瑞鶴、頭を撫でてもらってる……)  私よりも一歩先に進んでいる瑞鶴は、提督に頭を優しく撫でられていた。  その彼女の顔はとても幸せそうで、そんな彼女を撫でる提督もまた、幸せそうに見えた。  私もしてもらいたい……。けど、勇気が出ない。  こういう時に限って、本当の私が前に出てくる。とても弱く、そして臆病な私が。  普段は気丈に振舞っているくせに、どうしてこの時に弱くなってしまうのか、自分で自分が情けなくなった。 「ひゃ……」  そう思っていると、急に提督は私の肩を抱いて引き寄せた。  ……この察しの良い提督の事だ。きっと私が何を考えていたのか想像できたのだろう。  触れている身体が、優しく撫でてくれる手が、私のさっきの気持ちを溶かしていく。  それでも私は弱いままだ。いや、この弱い私こそが本当の私だ。  そんな私を、提督は真っ直ぐ見てくれた。真っ直ぐ向かい合ってくれた。  だから私は素を出せる。甘えれる。そして、求めてしまう。 「提督さん……」  か細い声で、瑞鶴は提督の名を口にした。  少し下から覗き込むようにして、提督の目と唇を交互に見ている。  私から見ても分かるほど明確なおねだりだった。  するり、と提督の手が私から離れ、瑞鶴の顔へと触れる。 「ん……」  少しくぐもった声。閉じた二人の瞼。触れ合っている唇──。二人のキスを見て、少しだけ嫉妬した。  寂しいけれど、ここは我慢をするべきだろう。瑞鶴が先に行動を起こしたのだ。先にしてもらう権利は瑞鶴に ある。 「ぁ……は、あ」  瑞鶴の艶めかしい声が、室内に広がる。  この薄暗い中でも分かるくらいに彼女は紅潮させていた。 「ん、ふ……ぁ…………んん……」  ジクジクと胸が痛み、脈拍が速くなる。  私がキスをしてもらった時、瑞鶴は今の私と同じ気持ちだったのだろうか。嫉妬と羨望と羞恥と期待が混ざり 合い、ぐちゃぐちゃになって訳が分からない、この気持ちと……。  そう思ったら、少しだけ罪悪感が胸に刺さった。 「ん…………」  二人の唇が離れる。  その離れた唇の間には、私の時と同じように銀の橋が出来上がっていた。  なるほど。雷が言っていた意味が良く分かる。これはエロい。  提督が先に目を開いた。その数瞬後、瑞鶴も同じように開く。  その瑞鶴の瞳は潤っており、今にも溶け出しそうな程トロけ、息は荒くなっていた。  そんな状態の瑞鶴の頬を一撫ですると、提督はこっちへ振り向いた。 「金剛」  いつもとは違う、とてもとても優しく甘い声。  その声に、胸を絞られたかのように息苦しくなった。  ドキドキする。上手く息ができない。  私の肺は酸素を求め、少しだけ速く、浅く呼吸を繰り返した。 「大人しく待っていたから、ご褒美」 「え──きゃっ」  そう言うが早いか、私の手首を掴み、背中に腕を回すと、そのまま押し倒してきた。 700 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/24(木) 05:03:00.99 ID:FjeZmfl00 「んっ──んんっ」  片腕は軽く押さえつけられ、背が少しだけ反るように持ち上げられ、そして口を塞がれた。  これはダメッ──前の比じゃない──!  無理矢理だけど、無理矢理でない、荒々しい甘いキス。 「んっ! んぅっ! ぁ──っは!」  口の中を蹂躙するように提督の舌は私の舌を貪り、口内を犯す。  強引なのに、とても優しく、愛がある。  まるで飴を与えられながら鞭で叩かれているような感覚。その感覚に、私の頭は一瞬でトロけてしまった。 「あ……ぁ…………ふ、ぁ……っ」  だらしなく口を開け、提督が蹂躙してくれるのを受け入れ続ける。それが、堪らなく気持ちが良い──。  不意に、口を離された。何の前触れもなく、パッタリと。  一気に訪れる虚無感。胸がキリキリと痛んだ。 「ん……ダメ、もっと……もっとぉ……」  だから、ねだった。だらしなく口を開けたまま、提督に唇を、歯を、舌を、口内の全てが犯されるのを待った 。  それに応えてくれたのか、提督は優しく微笑んで柔らかく口を付けてきた。  今度のキスは、さっきよりも優しかった。  手の拘束は解かれ、その手は私の頬へ添え、浮かせられていた身体はふかふかのベッドへ下ろされた。  胸が温かい気持ちで一杯になるキス。  舌でお互いの口内を撫で、愛を分かち合っているようだった。 「ん……」  だんだんと触れ合う回数も減り、最後は唇で触れ合うだけになった所で、また口が離れていった。  けれど、さっきとは違って満足な終わり方だ。幸せな気持ちが溢れている。  ふと、瑞鶴の方へ顔を向けてみると、彼女は俯き、手の中の小瓶を弄んでいた。  その姿は、無視をされた子犬のようにも見える。 「大人しく……待ってたんだからね……?」  弱々しくそう言うと、小瓶を開けて口に含んだ。 「…………っ」  苦かったのだろう。少し顔を引き攣らせると、チラリと私へ目配せしてきた。  中身は何か知っている。これと同じものを彼女から貰い、そして説明をしてもらった。  それを飲み込む様子を見せず、瑞鶴は提督へ無理矢理キスをした。  提督は少し驚いた顔をしたが、すぐに受け入れ、ほとんど舌を絡ませるだけの口付けを続けた。  その意図に、すぐに気付く。  彼女はこの媚薬を、口移しで提督に分けているのだ。 「んく……っ」  ほんの数秒の口移しの後、彼女は口の中の液体を飲み込んだようだ。  提督が私の方へ向き、顔を近付けてくる。  提督の意図を理解し、私は舌を少し出した。  ──我慢はできない程ではないが、確かにそれは苦かった。  まるで粘膜に刷り込むよう、念入りに舌を絡ませてきた。  媚薬と、提督と私の混ざった液体が口の中に溜まった頃、私はその液体を飲み込んだ。  効果はすぐに現れた。  身体が熱いほど火照り、下半身──特に子宮辺りにドス黒い何かが溜まっていくのが分かった。  性欲で身体が震え、息が荒くなる。  それは瑞鶴も一緒のようで、必死に堪えるように身体を強張らせていた。  あまり感情を出さない提督も、今回ばかりはそうもいかなかったようだ。  少しばかり顔を引き攣らせ、私や瑞鶴と同じように息が荒くなっていた。 「ん……」  提督を欲しがる身体をなんとか抑え付け、瑞鶴の隣に座り、一緒に仰向けで倒れた。 「てぇとくぅ……」  自分でもびっくりするくらいの甘い声──。  その声に反応したのか、提督は私たちに覆い被さってきた。 「────ぁっ」 「んっ!」  最初はお腹だった。気を遣っているのか、服の上から臍の辺りを優しく撫で回している。  けれど、それも長くは続かなかった。  手はだんだんと上に登っていき、胸へと辿り着く。 「ぁ、ぅ……!」 「ひっ、ん──っ」  私は脇の隙間から、瑞鶴はY字となった服の隙間から手を入れられ、ゆっくりと胸を愛撫してくれた。 「んっ……ぁ、っ──んん……」  サラシは巻いてきていないので、提督の手が直接触れる。  触られた箇所がビリビリする。円を描いて胸全体に指を這わされ、ゾクゾクした。 701 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/24(木) 05:03:53.71 ID:FjeZmfl00 「ぁ……ひゃんっ! アッ!」  瑞鶴は敏感なのか、既に大きく喘ぎ始めていた。 「は、ァ──ッ! ひんっ、あぁっ! や、やぁぁ……ひっ、乳首……やぁ──あっ!」 「ん……ぅ! ず、るいです……はぁ──、わた、しも……あぅ!?」  瑞鶴がさっきから攻められているように、私も乳首を攻められた。  コリコリに硬くなっているのが自分でも分かる。  触れられると身体が震え、なぞられると声が我慢できなくなって、摘ままれると大きく喘いだ。  その間もお腹の奥にあるドス黒い何かは大きくなっていき、アソコに力を加えたり緩めたりしていた。  ──たっぷりと胸を愛撫され、私達は息も絶え絶えとなっていた。 「瑞鶴、涎」 「や、やぁあ……止めないでぇ……言わないでぇ……」 「金剛、涙」 「てぇとく……もっとぉ……もっと、くださいぃ……」  気持ちが良くて、頭の中はトロトロになっている。  まともな思考など既になく、ただ快楽が欲しいとばかり思っていた。  ──ちゅくっ……。 「ん……っ」 「ぁ…………」  重く、粘度の高い音が頭に響いた。  鳴った場所は二箇所。私と、瑞鶴の股からだ。 「ぐしょぐしょだな。触るだけでべっとりだ」  そう言って、手を私達に見せてきた。  提督の手は私達の愛液で塗れ、蝋燭の光でぬらぬらと光っていた。  それを、私はボーっと眺めていた。  ……あそこまで濡れているのなら、もう準備は出来ているだろう。 「てぇとく……ほしい、です……」  なんとか声を振り絞る。 「わたしに、てぇとくを……てぇとくの、ください……」  我慢なんて、できなかった。 「……ほぐしていないぞ」 「いいからぁ……いいですからぁ……!」  欲しくて欲しくて、堪らない。  異物が身体に侵入してくる怖さはある。けれど、それ以上に提督の肉棒が欲しかった。 「…………分かった」 「あんっ」  抱き起こされ、提督は仰向けになり、腰の上に座らされた。 「自分で挿れるんだ」 「そ、そんなぁ……」  トロけた頭でも、物凄く恥ずかしかった。  それでも──。 「ゆっくり……ゆっくり挿れなさい」 「はぁ、い……」  私は欲しかった。  提督のズボンを下ろし、男根を取り出す。 「あ……」  硬く、そして強い弾力を持った、大きく太い肉の棒──。  軽く匂いを嗅いでみると、男の人の匂いが強くした。  初めて、男の人の性器を見た。  初めて、男の人の性器を嗅いだ。  ──それが、提督で本当に良かった。 「やだぁ……ていとくさん……わたしもぉ…………」  提督に跨る形となった時、瑞鶴も私と同じようにおねだりをした。 「指で我慢できるよな?」 「できるっ……できるから、あとでちょうだい……っ!」  そのやりとりを無視し、私は目を瞑って、膣口へ提督の肉棒を添えた。 「んっ……」  熱い。  提督の大事な熱いモノが、私の大事な部分に触れている。  これから私の純潔を提督に捧げる──。そう思うと、とても嬉しく思った。 「ん、ん……っ」  身体に力は入れていない。いや、入らない。  だから精一杯、自分の腰をなんとか浮かせていた。  ハジメテは痛いと聞いたので、ゆっくり、ゆっくりと、提督の肉棒を私の膣内へ沈みこませる。  入り口はすんなりと通ったが、すぐに何かに阻まれてしまった。 「ていとく……分かりますか……? はぁ……。これが、わたしの…………処女膜、です……んっ」 702 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/24(木) 05:04:41.48 ID:FjeZmfl00  これを破ると、痛く、そして血が出ると聞いている。  でも、それでも、それは私にとって、嬉しいと思えた。 「ぁ……あ、ぁぁ…………」  ゆっくりと、じっくりと、提督の肉棒の形を覚えながら腰を下ろしていった。 「あ、ぐ……ひ、ぁ……ぁっ、ん……!」  少しだけ、痛みが走る。  それに驚いて、少しだけ腰を引かせてしまった。 「は、ぁ……はぁ……ん、んんっ……!」  痛いけれど、肉欲と純潔を捧げたい気持ちには敵わない。  私は、再び体重を掛けた。 「ぅ──く……んっ、ぁ……!!」  ズルリと、いきなりスムーズに膣の奥へと肉棒が滑り込んだ。 「ぁ……あぁ…………あー……っぁ」  そこからは速かった。  背筋がゾクゾクしながら、私は腰を提督の腰へ下ろしていった。 「ん……ぁ、ゃんっ!」  完全に腰を落とした時、トン、と何かが奥の壁に当たった気がした。 「はぁー……は、ぁ……全部、入り、ました……んっ……」  嬉しい。心の底から嬉しい。  提督の熱さがお腹の底で感じる。  子宮辺りに溜まっていたドス黒い何かが、満足したかのようにスゥーっと消えていった。 「痛く、なかったです……けど…………んっ」  自然と、腰が動いた。 「あ……は、んんっ──きもち、はぁ……っ……いいで、す……っ!」  少しだけ腰を浮かせ、ゆっくりと下ろす──。  提督の肉棒の形を、身体で、頭で覚えながら、ゆっくりと動かした。 「あぁ……ぁ…………ん、ふ、ぅ──っあ……」  傘の部分が、私の膣壁を抉っていく。  ズルズルと引き抜き、呑み込むように奥へ誘うと、甘い電気が全身を駆け巡った。  にちゃり、にちゃりと粘っこい水の音が部屋に響く。 「っ──あ、はぁ……! ひ、っぁあ、あっ!」  その水音の鳴る間隔は、だんだん速く、大きくなっていった。  ギリギリまで引き抜く時、背骨から頭の芯へ電気が走っていく。  子宮口と亀頭がキスする時、お腹の底にズンと深い快楽が溜まっていく。 「あっ、はぁ、んっく──ゃあ、あっ! はぁ、ぁあぁぁ!」  単調に、ただ単調に腰を振る。  膣壁のいたる所が抉られ、穿たれ、擦られる──。  それが、堪らなく気持ち良い。 「あ、ぅ……!」  初めての深い気持ち良さに疲れ、身体が倒れこんでしまった。  それでも、ゆっくりと腰が動き続ける。 「あぁ……あっ、はぁ……っ!」  さっきまでとは違った場所が刺激され、身体が震えた。 「──あくっ!?」  突如、深く強く、肉棒が私の奥を襲った。 「すまん、金剛……もう、我慢できない」 「あっ、はぁ! やぁ、あっ! ──ひ、ぐ、ぅぁっ!」  提督が、腰を激しく動かし始めた。  ゾリゾリと膣壁が削られる。  電気が身体中を駆け巡る。  子宮が壊れてしまうんじゃないかってくらい、提督の肉棒は激しく暴れまわった。 「ま……って! あぁ! やっ! はっ──あん! こ、怖い! なにか、くるよぉ!」  頭の奥で、何かが膨らんでいく気がした。  どこからともなく来るそれが、とても怖かった。  その怖いのから逃げる為、私は提督にしがみ付いた。 「て、とく──あぐっ! てっ! と……っい──くっ! ていと、くッ!」  頭の奥で膨らんでいる何かは、もう限界ではち切れそうだった。  提督の肉棒もまた、ビクビクと脈動して膨らんでいく。  全身に力を入れ、必死に提督を呼び続け、私は提督に助けを求め──。 「くっ……!」 「ア──────ッッ!! ひ、ぁあああぁぁあッッッッ!!!!」  膣の奥で、熱い液体が撒き散らされると同時にソレは、パチンと弾け飛んだ。 「あ、アアっ! ひ、あぁあ! あ、はぁああっっ!!」  中身が津波のように私に襲い掛かり、その間はずっと、全身に電気が流れ続けていた。 703 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/24(木) 05:05:14.97 ID:FjeZmfl00  目の前がパシパシする──。  瞑っているはずなのに白くフラッシュする。  ──やがて波はゆっくりと引いていき、小さな波が私の身体を痙攣させていた。  頭の中が真っ白だ──。何も考えれない──。  自分は荒々しい息をしていると気付いたのは、それからどれくらい経った後なのか分からない。  けれど、ハッキリと分かった事が一つ。 「ていとく……すごく……きもちよかった、です……」  あれが、イったというものなのだろう。 「ん…………っ」  膣からズルリと肉棒が引き抜かれる。 「あ……や、やだ! 何か垂れてきてます……!」  股間から何かが垂れてきそうな感覚に慌て、お漏らしをしてしまったのかと思った。  けど──。 「あ……これって……」  それは、白くドロドロとした液体──提督の、子種だった。 「あはっ……。嬉しい……」  目を瞑り、お腹をさする。  ──熱い、提督の子種を感じた気がした。 「金剛、さん……」  隣で、切ない声が聴こえてきた。 「はやく……はぁ……わたし、にもぉ……」  瑞鶴が、甘ったるい声で身体を震わせていた。  きっと、ずっと我慢していたのだろう。 「──はい。次は瑞鶴の番です」  まだこの余韻を楽しんでいたかったけど、仕方が無い。  私は満足したのだ。次は瑞鶴が満足をする番だろう。  ……………………────────。 「ぁっ──はぁ……! ひ、っかは、あっ!」 「わぁ……」  瑞鶴は、物凄かった。  腰を上下前後に激しく振り、喘ぎ声も悲鳴に近いものだ。  私よりも身体が少しだけ小さいのに肉棒は根元まで咥え込み、それを悦んでいる。  見ているこっちが恥ずかしい。  けれど……自分も同じだったのだろうかと思うと、嬉しくなった。  あれだけ周りが気にならなくなるほど、気持ち良かったのだろう。  それだけ、提督と一つになれたのだろう。 「ん──っ!! い、あッ──、あぁああっっっ!!! ────────ッッ!!!」 「すごい……」  声になっていない声をあげ、瑞鶴はイった。  痛いんじゃないかってくらいに背を反らせ、提督の子種が入っている袋に瑞鶴の大事な部分が触れるほど深く挿し込まれている。  ビクビクと二人が痙攣する度に、提督の子種が瑞鶴の奥深くに放たれているのが良く分かる。 「わ、私もこうだったのでしょうか……」  恥ずかしいけれど、凝視してしまう。  やがて二人の痙攣が終わると、瑞鶴は提督へ倒れた。  二人共、肩で息をしている。それだけ疲れても気持ちが良いから止められない。  それは、私も良く分かっていた。  行為を終えた二人へ四つん這いのまま這い寄って、そして、提督の隣で寝転がった。 「提督……とても気持ち良かったです……」  瑞鶴の頭を撫でつつ、提督はこっちへ微笑んでくれた。  ……私もああやって撫でてもらえたのだろうか。  イった直後は何もかも分からなくなっていたので、実感が沸かない。  …………明日、瑞鶴に聞いてみよう。恥ずかしいけど。  そして──私達は裸のまま、提督を抱き合って眠りに就いた。  とても幸せな気持ちをそのままに、幸せのまま、私達は意識を落とした──。 …………………… ………… …… 729 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/24(木) 17:17:40.85 ID:cMTc2tom0 金剛「えへへー」ナデナデ 瑞鶴「……金剛さん、ちょっと良いかしら」 金剛「なんですかー?」ナデナデ 瑞鶴「どうしてお腹を撫でてるの?」 金剛「だってー、提督の精子がまだ残ってる感じがしてー」ナデナデ 瑞鶴「ぶっ! ちょ、ちょっと金剛さん! はしたないって! いくら私達の部屋でも、そういうのは……その……」 金剛「はしたない事をしたのは事実じゃないですかー」ナデナデ 瑞鶴「……そうだけど…………」 金剛「あっ、と……流石にトロけるのも止めないといけませんネ。──ところで、私も聞いて良いですか?」ナデナデ 瑞鶴「うん? 良いわよ。何?」 金剛「私と提督が果てた後、提督は私に何かしてまシタか?」ナデナデ 瑞鶴「え? うん。頭を撫でていたわよ。…………うろ覚えだけど」 金剛「そうですか……良かった……」ナデナデ 731 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/24(木) 17:34:38.30 ID:cMTc2tom0 瑞鶴「……あの、それって私もなの?」 金剛「そうデスよ。瑞鶴も気にする余裕がなかったようデスね」ナデナデ 瑞鶴「う、うん。頭の中がフラッシュっていうか白くなったっていうか……何も考えれなかった」 金剛「ワオ! 私もデース! ネ、ネ。テートクのアレはどんな感じでした?」 瑞鶴「う……そ、そんなの、金剛さんも分かってるじゃない……」 金剛「人によって感じ方が違うみたいデース。どこかでそんなデータを目にしまシタ」 瑞鶴「朝からなんて話をしてるのよ……もう……」 金剛「だって今、テートクはお偉い様とブラックなお話していますし……。今日はお休みになりましたし、暇デース……」 瑞鶴「うー……」 瑞鶴「……………………分かった。言うから、金剛さんから言って」 金剛「ヤッタ!」 瑞鶴(西洋の人って、皆こんな風にオープンなのかな……) 734 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/24(木) 17:53:46.97 ID:cMTc2tom0 金剛「一言で言うと、大きかったデス。子宮に当たった気がしましたネー」 瑞鶴「あ、子宮って痛覚が鈍いみたいよ。だから、当たった気がするって事は、結構押し上げられてると思う」 金剛「そ、そうなのデスか?」 瑞鶴「うん。人によっては敏感みたいで、少し押し上げられるだけで痛いって人も居るみたい」 金剛「……テートクのアレ、たぶん18センチはありましたよね? 一体どれだけ押し上げられてるんですか。おヘソの下に届きそうデスけど……」 瑞鶴「詳しくは知らないんだけど、膣って結構伸びるみたい。15センチくらいまでは普通に伸びるみたいよ。ちなみに、通常の状態の膣の長さは6センチ程度みたい」 金剛「三分の一しか入らないじゃないデスか!? と、という事は……その数字ですと、私達は12センチも押し上げられているのデスか……?」 瑞鶴「私は金剛さんより身長が結構低いから、もっと押し上げられたかも……」 金剛「だからあんなに凄い声が出ていたのですネ……」チラ 瑞鶴「うぇえ!? わ、私そんなに凄い声だった……?」 金剛「……悲鳴とちょっと間違えそうでシタ。痛くなかったのデスか……?」 瑞鶴「全然……。むしろ、頭がバカになったみたいに気持ち良かった……」 735 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/24(木) 18:09:03.93 ID:cMTc2tom0 金剛「私もデス。特に亀頭の雁首みたいな部分で削られてる感覚は感電したみたいでしたネ……」 瑞鶴「金剛さんはそうなんだ? 私はお腹の奥に杭を打たれてるみたいだったわ」 金剛「……それ、痛くないデスか? というか、そこまでいくと子宮に入ってるんじゃないデスか……?」 瑞鶴「さっきも言ったけど、痛みは全然……。…………むしろ、掻き回されてるみたいで凄く良かった。子宮には……入らないはずだけど……どうなんだろう」 金剛「で、でも……赤ちゃんは子宮から出てきマスよね……」 瑞鶴「十ヶ月は出てこないから、出産の時だけ開くんじゃないのかしら……」 金剛「…………」 瑞鶴「…………」 金剛「……テートクなら、知ってるでショウか」 瑞鶴「やめなさい……吊るされるわよ……」 …………………… ………… …… 737 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/24(木) 18:21:21.07 ID:cMTc2tom0 提督「──皆さん、急な呼び掛けなのにも関わらずお集まり頂きましてありがとうございます」 大将A「なぁに。深海棲艦の事で分かった事があると報せがきたのだ。仕事など放っておいて飛んでくるさ」 大将B「うむ」 大将C「だが、君には追求せねばならん事があるのも事実。私はそれも聞きにきた」 提督「重ねてお礼を申し上げます」 提督「では、なぜ私が命令を無視してまで戦ったのか、という所からお話します」 提督「それは、報告で聞いた敵艦と数が違い過ぎるという事から始まりました」 大将C「違い過ぎる?」 提督「はい。報告によると、敵艦は数十隻は確認されていたはず。それなのにも関わらず、彼女らは五隻という少ない数でこの鎮守府へ向かってきていました」 大将A「五隻……そんな馬鹿な」 提督「事実です。私は最初、報告ミスかと考えました。ですが、一刻と争う状況でしたので考えない事にしました」 提督「旗艦を瑞鶴にする事で私と常に同伴する事にし、私は戦闘の流れで彼女と逃げるつもりでした……が、敵の戦闘能力は高く、そして非常に錬度の高いものでした。これは私のミスです」 提督「彼女らの砲撃は凄まじく、私の艦隊は避ける事で精一杯でした。避けるにつれ艦娘は散り散りになり、とうとう私の近くには瑞鶴のみとなった所、南方棲戦姫が私達のすぐ近くまで近寄ってきたのです」 大将B「……俄かに信じがたい。なぜ敵が砲撃をせず近寄ってきたのか」 738 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/24(木) 18:38:05.21 ID:cMTc2tom0 提督「それは今から説明致します」 提督「深海棲艦は元々、艦娘だというのは皆さんご存知でしょう。そして、瑞鶴は唯一その深海棲艦から艦娘に戻った例外です。深海棲艦は、その事を一目で見抜き、私に尋ねてきました」 提督「なぜ、その者は艦娘の姿をしているのか、と」 大将B「…………」 提督「私は瑞鶴の真実を話しました。すると、南方棲戦姫は協力関係になると言ってくれたのです」 大将A「まさか」 大将B「…………」 大将C「出鱈目を言っているのではなかろうな?」 提督「確実なる証拠がございます。──二人共、出てきてくれ」 戦姫「はい」 ヲ級「?」 大将A・B・C「!!」 提督「……大将殿達が不安に思う。後ろではなく私の隣に来てくれ」 戦姫「す、すみません!」スタスタ ヲ級「♪」テテテ 大将C「これは……なんという事だ」 大将A「まさか深海棲艦が……しかも、元帥を殺した南方棲戦姫が、こやつの言う事を聞いているだと……」 大将B「……………………」 739 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/24(木) 18:56:47.43 ID:cMTc2tom0 提督「この通り、南方棲戦姫──戦姫は私と協力関係となっています。瑞鶴以外の艦娘と顔を合わせるのは非常にまずいのが扱いの難しい所ですが……」 戦姫「すみません……どうしても艦娘への憎しみが抑えきれな──」 提督「む……」 ヲ級「♪」ギュー 大将A「…………」 大将B「…………」 大将C「…………」 戦姫「…………」 大将A「……やけに懐かれているようだな?」 提督「どうやら私は二人が艦娘の時の提督と似ているらしく、彼女達の当初の目的は私の拉致だったようです」 大将A「ほう」 提督「特に彼女達は当時の提督に厳しく躾けられていたようで、記憶などは抜け落ちているものの、他の深海棲艦とは違い、提督を求めています」 大将C「そうなのか、貴様」 戦姫「…………」ピク 戦姫「誰が貴様だ、薄汚い人間」 740 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/24(木) 19:09:52.80 ID:cMTc2tom0 大将C「なんだと……?」 戦姫「私達の上官となって頂きたい人間はこのお方のみだ。その他の人間は知らん」 大将C「貴様! それでも本当に元海軍か!!」 戦姫「そう。お前が言うように『元』だ。今は貴様らと敵対している深海棲艦という立場なのを忘れるな」 戦姫「このお方に感謝するんだな。今の私は兵装を取り上げられている。本来だったら貴様みたいな下衆の臭いがする粗大ゴミなど塵も残さず殺している所だ」 戦姫「それとも……兵装を返してもらった時に貴様の臭いを辿り、貴様諸共母港を破壊されたいか?」 大将C「馬鹿な……!! 深海棲艦は母港を襲わないはずだろう!! それに、なぜ元帥の居た母港を襲った!!!」 戦姫「艦娘を物のように扱うその姿に腹が立った……。ただそれだけだ。確かに遠き過去の家である母港は傷つけたくない……だが、下衆が手にしている母港など特別に想う必要も無い」 大将C「ならなぜ……なぜこやつには従う!! こやつも私達と同じ──!」ガッ 戦姫「ふざけた事を抜かすな下衆」ググ 提督「戦姫、やめろ」 戦姫「はい」スッ 大将C「カハッ──! ハッ……!」 戦姫「ふん……」 741 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/24(木) 19:21:24.02 ID:cMTc2tom0 戦姫「このお方は貴様らとは違って艦娘を思いやっている。一人の人として扱っている。それが貴様らと同じなどとは、片腹が痛いわ」 大将B「……あくまで協力関係、という訳か」 戦姫「察しが良いな。そこで転がっている間抜けとは違う」 大将C「ぐ……っ!!」 戦姫「間抜けの貴様でも分かるように言ってやろう。私達は貴様ら海軍に従っているのではない。このお方個人に従っているだけだ」 戦姫「貴様らが何を企み、望んでいるのかは知らないが、私達が戻ったら何か貴様らに有益なモノがあるのだろう」 戦姫「利害が一致しているだけだ。私達は艦娘に戻りたい。貴様らは戻った私達を何かに使う。それさえ無ければ殺し合う関係だというのを忘れるな」 大将C「ちぃ……!」 提督「……話は終わりましたか」 大将C「──なぜだ!!? なぜコイツを好き放題に言わせた!! ああ!? 新参者!!!」 提督「…………」 大将C「何か言ったらどうだ!!?」 742 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/24(木) 19:37:16.74 ID:cMTc2tom0 提督「……大将A殿、大将B殿。私は、冷静な判断を下す事すら出来ない者は我々の計画に支障をきたすので要らないと思いますが──」コツコツ 大将C「ッッ!!!」 提督「──どうお考えですか?」コツ… 大将A「そうだな」 大将B「うむ。不要だ」 提督「このままでは間違った判断を下し、声を荒げ、我々の計画を明るみに出す可能性があります」スッ 大将C「な……あ……銃…………!!」 提督「如何致しましょう」ガチリ 大将C「…………ッ!!」 提督「例えば──」グッ 大将C「や、やめろぉぉお!!!」 ガキンッッ──!! 743 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/24(木) 19:51:46.00 ID:cMTc2tom0 提督「…………」 大将C「あ……あ…………」 提督「──このようにしてしまう、とか」 大将C「ひっ──!」 大将B「それはならん。そんな奴でも数少ない駒だ」 大将A「うむ。使える駒は使わなければ。────次は、その引き金を引いても良いがな?」 大将C「!!」 提督「畏まりました」スッ 大将C「…………っ!」 提督「ああ、安心してください大将C殿。今のは不発ではなく、弾を入れていませんでしたので」 大将C「!!! ぐ……!! 少将風情が……!」 大将B「……無能め」 大将A「やはり我々の計画に加担させるのは間違いだったか?」 提督「……大将C殿。お忘れなく」 提督「私も貴方と同じく、大将ですので」 大将C「な……!!」 提督「おや、申し訳ありません。大将以上にのみ与えられる暗号で報せを送りましたので気付いているかと」 大将C「ぐ……! ぐ、ぅ……!!」ギリィ 745 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/24(木) 20:04:12.08 ID:cMTc2tom0 提督「私から伝える事は以上です。今後の方針は皆さんで決めて頂いても宜しいでしょうか。私はこの鎮守府を護らなければなりませんので」 大将B「……一つ、問いたい」 提督「なんでしょうか」 大将B「今回の会合、どうも腑に落ちん。本当の目的はなんだったのだ」 提督「深海棲艦と協力関係になった……と、文章だけでは信憑性が薄い、と思いましたので」 大将B「筋の通った言い訳だな」 提督「…………」 提督(ち……。思ったよりも勘が良いな) 大将B「何を隠しておる」 提督「…………」 提督「ふぅ……負けました。お話します」 提督「そこで無様に腰を抜かしている豚が原因です」 大将B「……ふむ」 大将C「な、何を──!!」 提督「黙れ」ジャキッ 746 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/24(木) 20:15:14.46 ID:cMTc2tom0 提督「貴重な戦力である艦娘をゴミのように沈没させ、我々の敵である深海棲艦をいたずらに増やしているのはどこのどいつだ」 提督「年間千隻沈んでいる艦娘の四割を貴様が占め、それに対する戦果も上々とは言えない。どんな人物かと思い会合を果たしてみれば、状況を分析、判断する能力が無く、計画に支障をきたしかねないこの体たらく」 提督「お二人が貴様を庇わなければ、二度目の引き金を引いている」 大将C「何を……! 弾が入っていない銃など──」 提督「まだ気付いていないのか愚図。どこの世界に弾を全部抜いている指揮官が居る」ガチリ 提督「やはり、お前は戦姫の言うようにゴミだな。──いや、ゴミにもならない癌といった所か」 提督「図に乗るなよ大将C。貴様は実力でソコに座っているのではなく、数合わせで座らせてもらっていると知れ!!」 ガァンッ──!! 大将C「────あ……ぁ……」 提督「これで分かったか大将C。次は当てるぞ?」 提督「──大将B殿。これが今回、無理をしてまで集まって頂いた理由です」 大将B「…………なるほど、良く分かった。今後、こやつに重要な仕事は回さないようにする」 提督「ありがとうございます」 747 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/24(木) 20:30:56.92 ID:cMTc2tom0 大将A「ふむ……このソファ、傷が付いてしまったな。新品と取り替えよう」 提督「いえ、これは私が撃ったがゆえ付いた傷です」 大将A「それをこやつの提督室に置いておけば、嫌でも今日の出来事を思い出すであろう。戒めだ」 提督「なるほど。理解しました」 大将B「後で資料と計画書を送っておくよ。元帥は居なくなったが、君ならそれを埋めてくれそうだ」 提督「勿体無いお言葉です」 大将C「くそ……! くそっ……!!」 提督「…………」 提督(悪いな、大将C。利用させてもらった) ──バアアンッッ!! 金剛「今のは何デスか!!!」 瑞鶴「提督さん! 大丈夫!?」 戦姫「…………!」グッ 提督「金剛、瑞鶴……」 金剛「提督……ご無事なようで。……銃声が聴こえたので駆けつけてきたのデスが、何があったのデスか?」 748 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/24(木) 20:43:18.94 ID:cMTc2tom0 提督「銃が暴発しただけだ。怪我はない」 金剛「良かった……。提督に何かあったらどうしようかと……」 提督「それよりも、大将殿達がお帰りになられる。道を通してやってくれ」 金剛・瑞鶴「あ──。ハイ! 失礼しました!!」ピシッ 大将B「よい。提督思いの良い艦娘だ。どれだけ信頼されているのかよく分かるよ」 大将B「今後とも、頑張りたまえ」 金剛・瑞鶴「はっ! ありがとうございます!」ピシッ 大将A「では、今度こそ帰らせてもらうよ」 提督「はっ! お気を付けて」ピシッ …………………… ………… …… 749 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/24(木) 20:52:37.73 ID:cMTc2tom0 金剛「それで結局、何があったんですか?」コクコク 提督「奴ら二人から信用を得る為に一人を利用して撃った。一人、勘の良い奴が居たのでな」ズズ 瑞鶴「ふぅん……? 大丈夫なの?」チビチビ 戦姫「恨みが飛んできそうだな」コク ヲ級「♪」コクコク 提督「そんな事をしたらどうなるか、流石に分かるだろう」 金剛「……それより、ちょっと二人に聞きたいんですけど良いですか?」 提督「なにかね」 金剛「……男性器って、子宮に入るんですか?」 瑞鶴「ぶっ!?」 戦姫「…………」 ヲ級「?」 提督「……………………いきなり何を言い出す。いや、なぜ私にも聞いた。私は男だぞ」 金剛「だって……他の人になんて聞けませんし…………頼れる人が提督しか居なかったのです……」 761 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/24(木) 22:28:25.91 ID:cMTc2tom0 提督「……はぁ」 瑞鶴「…………」ビクビク 提督「戦姫、パスだ」 戦姫「ごめんなさい……分かりません……」 提督「…………そもそも、どうしてそんな事を聞いてきた」 金剛「あ……あの……耳を貸してください……」 提督「…………」スッ 金剛(……もし入るのでしたら、入った状態で射精して欲しいなぁ……と……。もっと奥なら、もっと幸せになれるのかな……と思いまして……)ゴニョゴニョ 提督「……………………」 金剛「…………」ドキドキ 提督「……結論から言うと、入らん」 金剛「!」ガーン 瑞鶴(やっぱり入らないんだ……残念……)シュン 764 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/24(木) 22:54:45.48 ID:cMTc2tom0 提督「子宮は膣と大体直角になっているのが基本だ。そう言えば無理だと分かるだろう」 金剛「直角……」 瑞鶴(ふぅん……直角なんだ……だったら無理よねぇ……) 戦姫(そもそも、なぜそんな事を知ってるんですか……?) 金剛「!」ピーン 金剛「だったら、直角じゃなかったら良いんですよね?」 提督「……何を思い付いた」 金剛「ほら、膀胱が膨らめば少しは真っ直ぐになりますよね?」 提督「…………本当に勘が良いな」 瑞鶴(あー、なるほど。膨らんだ分、垂直になるよう押されるもんね。……漏らしそうで怖いけど、やってみる価値はあるかも?) 戦姫(え、膀胱が膨らんだらって……え……なんで?) 提督「それでも無理だ。子宮口は出産する時にしか開かない。無理に抉じ開けようものなら出産以上の痛みを伴うだろう」 金剛「そんなぁ……」 瑞鶴(……諦めよう) 戦姫(もう話に付いていけない……) …………………… ………… …… 772 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/24(木) 23:20:21.02 ID:cMTc2tom0 コンコン──。 提督「入れ」 ガチャ──パタン 島風「提督。ちょっと相談があるの」 提督「相談? 珍しいな。なんだ?」 島風「前にさ、私は提督をお父さんと異性と二つの意味で見ているって言ってたでしょ?」 提督「ああ。そんな事を言ったな」 島風「私、どっちの目で見たら良いのか分かんないの」 提督「どっちでも良いだろう。必ずどっちかに分かれねばならないという訳でもない」 島風「それはそうなんだけどさ……」 提督「なんでも言ってみるが良い。誰かに話すだけでも楽になる事もある」 島風「……うん!」 島風「あのね、ちょっと大人向けの本を読んでみたの」 提督「島風。私は非常に嫌な予感がするのだが」 島風「うん。提督が思ってる通りだよ」 778 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/24(木) 23:40:57.14 ID:cMTc2tom0 島風「それでね、私は思ったの。『裸で抱き締められたりするのは恥ずかしいけど嬉しい』それは分かるんだけど、エッチっていうのにはいまいち実感が沸かないっていうか、そもそも理解しても良く分からないっていうか……とにかく分かんないの」 提督「…………」 提督(これが思春期入り始めか……) 島風「でも、そういうのって男の人は喜ぶみたいだから、提督に喜んでもらえるならやってみたいなーって思ったの」 提督「ふむ……」 島風「ね、どうかな?」 提督「初めに言っておくと、軽い気持ちでそういう事をするものではない。と言っておく」 島風「え、そうなの?」 提督「うむ。相手に喜んでもらいたいから性行為をする。その気持ちは良いものだ。だが、実際に性行為をすると何があるのか、という事を理解しなければならない」 提督「島風。性行為はどんなものだと思っている?」 島風「え? えーっと……愛を確かめ合うとか、気持ちの良いもの?」 提督「概ね当たっている。だが、性行為というものにはリスクがある」 島風「リスク?」 781 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/24(木) 23:55:56.76 ID:cMTc2tom0 提督「まず、身体面で言うならば病気──性病と呼ばれるものがある。相手がもし性病を患っていたら、それが自分にも感染する」 島風「ふんふん……」 提督「この病気はすぐに現れるものもあれば──」 提督「不特定多数の人と──」 提督「自分の身を晒すという事は──」 島風「なるほどー……提督」 提督「なんだ?」 島風「早い話、島風にはまだ早いって事よね?」 提督「うむ。心が大人に成り切っていない島風にはまだ早い。焦らなくても良い事だ」 島風「そっかぁ……。なんだかちょっとだけ残念」 提督「島風はもしかしたら、そろそろ性欲というものが分かるようになるかもしれない。その時はどうしたら良いのか周りの大人に聞きなさい」 島風「はーい! その時は提督に聞くね!」 提督「…………」 785 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/25(金) 00:16:18.36 ID:nh49VNPI0 提督「それまでの間は私を父親として甘えるのも良いだろう」 島風「だったら、今甘えても良い?」 提督「構わんぞ。なんだ?」 島風「一緒にお昼寝したい!」 提督「ふむ……。残っている仕事は……そうだな、大丈夫そうだ。構わないぞ」 島風「やったー!」ピョンピョン 提督(やはりまだまだ子供だな) 島風「ねーねー! 皆も呼んできて良いかな?」 提督「構わんが……何人呼ぶつもりだ?」 島風「駆逐艦の皆! 前に提督と一緒にお昼寝したいねーって言ってたから」 提督「駆逐艦の子達なら大丈夫だな。分かった。呼んで来い。その間に準備をしておく」 島風「はーい!」 提督(なんだろうな。どことなく瑞鶴と似ている気がする) 提督(っと、備蓄倉庫から毛布。後はドアノブに『睡眠中』とでも引っ掛けておくか) ……………………。 788 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/25(金) 00:27:27.81 ID:nh49VNPI0 提督(……皆は眠ったか。流石は子供。眠りに付くのが早い。……腕が痺れるのは確定だろうな、これは) 提督(しかし……なんだって響は私の上で寝たいと言ってきたんだ。確かに片腕に三人は無理だが……) 響「…………」ソッ 提督「む」 提督(起きていたのか) 響「…………」チラ…チラ… 提督(……皆が寝ているか確認している? なぜ……) 響「…………」シー… 提督(静かにしろ、と……。何をする気だ……) 響「…………」スス 提督「…………」スッ 響「…………」スス 提督「…………」スッ 響「…………」ムー 提督(ふむ。響は怒ると目を細めるタイプか。心なしか眉もきつくなっている気もする) 790 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/25(金) 00:42:27.75 ID:nh49VNPI0 響「…………」モゾモゾ 提督(む……顔の横に……これは逃げれん) 響「…………」ハム 提督「…………」 響「…………」チロチロ 提督「……………………」 響「…………」スッ 響「…………」ジー 提督「…………」 響「…………」シュン… 提督(思っていたよりも感情表現が豊かだな) 響「…………」ムクリ…ソソソ 提督「……………………」 提督(脚は……うむ、使っても問題なさそうだ) 791 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/25(金) 00:58:10.16 ID:nh49VNPI0 響「…………」ドキドキ 提督「…………」ヒュッ─ガシッ 響「!?」ビクッ 提督「…………」ソー… 響「…………っ! っ!」グググ 提督「…………」ポスッ 響「〜〜〜〜〜〜〜〜……」ググ… 提督「……まだ早い」ボソリ 響「…………」シュン… 提督(……抵抗が無くなったな。放してやるか)スッ 響「!」 響「…………」モゾモゾ…ピトッ 響「……ごめんなさい。おやすみ…………」ボソッ 提督(……島風よりも響の方が問題のようだな。さて、どうしてやるべきか……) …………………… ………… …… 793 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/25(金) 01:07:01.87 ID:nh49VNPI0 コンコン──。 提督「入れ」 響「司令官、いいかな」 提督「響か。丁度良い。私も響に聞こうと思っていた事がある。恐らく同じ内容だろう」 響「うん。司令官が想像している内容だよ。でも、私の相談はそれの一歩先の事なんだ」 提督「……ふむ」 響「単刀直入に聞くよ。性欲というものはどうやったら解消できるんだい?」 提督(本当に島風より先に響が問題になったな……) 提督「その性欲が、今日の昼でキスをしようとしたり、私の下半身へ手を伸ばした原因か?」 響「……ごめんよ、司令官。どうしても抑えれなくなったんだ……」 提督「それは構わない。確かに早いが、響の年齢で性欲を覚える子も居なくはない」 響「ありがとう」 提督「しかし、いくらなんでも早過ぎる。何かで知識でも得たのか?」 響「うん。暁が持っていた本なんだけど……」 提督(原因は暁か。島風の言っていた大人の本とやらも暁の持ち物といった所か) 794 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/25(金) 01:17:52.78 ID:nh49VNPI0 響「それに書いていた方法を試してみてもくすぐったかったり痛かっただけだったんだ」 提督「……精神は成長していても、身体がまだその段階ではないのだろうな」 響「私もそう思うよ。だから、自分ではどうしようもなくて提督を頼りに来たんだよ」 提督「…………答えたくなかったら答えなくても良い。どういう事をしてみたんだ?」 響「流石に恥ずかしいな……。えっと、指を挿れてみたり、胸を触ってみたり…………その……アソコを撫でてみたり……したよ」 提督「ふむ……。それでダメなのか……」 響「どうしたら良いのかな……このムラムラとした感覚、色々なものに支障が出そうだから早くなんとかしたいんだ……」 提督「………………ふむ。今ので解決方法がなんとなくだが分かった気がする」 響「本当かい? 流石だね司令官」 提督「だが、少し恥ずかしいと思う。それは大丈夫か?」 響「多少なら……大丈夫だよ。皆が眠りに就いた時に布団の中でやった事もある」 提督「……それはそれでチャレンジだな」 799 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/25(金) 01:27:31.57 ID:nh49VNPI0 提督「それでは、まず準備を説明する」 響「うん」 提督「まずは手を洗ってきなさい。そして響は私のベッドの上で寝転がり、ベッドのカーテンを閉める」 響「…………? うん。それでどうするんだい?」 提督「そうしたら私は窓のカーテンを閉めて電気を消す。ほぼ暗闇になるが、目を瞑り、響が今までやっていた事をすれば良い。私はその間、耳栓をしておく」 響「……確かに少し恥ずかしいけど、今までと変わらないと思うよ?」 提督「自分を慰める時に、響の手を私の手だと思い込みながらやってみなさい」 響「司令官の……────っ!! か、かなり恥ずかしいよそれは!?」 提督(やはりか。やり方を知っているだけで、本質は全く分かっていないようだったな) 響「う、うぅぅぅ……! で、でも……うん……分かった。やってみるよ」 提督「それでは、準備が出来たら声を掛けてくれ」 響「…………うん」 提督(さて……まだ夕方なのに二回目の『睡眠中』の札を引っ掛ける事になるとはな……) ……………………。 801 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/25(金) 01:38:17.85 ID:nh49VNPI0 提督(ふむ。耳栓は耳栓で良いものだな。いつも以上に集中できる。……だが、時間の感覚が完全に無くなるのが) つんつん──。 提督(ん、響か。終わったのか)スッ 提督「終わったか、響」 響「う、うん……。終わった事には終わったんだけど……」 提督「ふむ……。どうやら成功したみたいだな」 響「な、なんで分かるんだい?」 提督「頬が赤い」 響「う……。司令官……イジワルだ……笑ってる……」 提督「意地悪をしているつもりはない。お前が少し、心配だったんだ。だが、上手くいったみたいで良かったよ」ポンポン 響「あ……」 響「し……シーツを取り替えてくる!」タタタ 提督(これで響の性欲は問題解決だな。…………ああ、空き部屋の鍵を渡しておくか。今度からは流石に共同部屋ではできないだろう) …………………… ………… …… 821 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/25(金) 16:02:22.33 ID:HCnL4K5l0 コンコン──。 提督「入れ」 ガチャ──パタン 金剛「テートク、お仕事はどうなっていマスか?」 提督「あと少しといった所だな。しかし、どうしてこんな夜にそれを聞きに……──ああ、すまなかった」 金剛「いえ、お休みになるのは良い事デス。テートクは普段から働き過ぎなのですヨ」 提督「……訳があってあまり休んだ気がしない」 金剛「えっ? でも睡眠中って……」 提督「昼も夕方も個人的な相談事や希望を持ち掛けられて対処していた。だが、それも提督の仕事の一つだ」 金剛「……本当に働き者ですね、提督」 提督「自分でも正直、バカ真面目な部分であると思っているよ」 金剛「本当です。もうちょっと息を抜いて下さい。……心配してしまいます」 提督「だが、もはやこれは性分だな」 金剛「もう……」 822 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/25(金) 16:17:05.07 ID:HCnL4K5l0 提督「──ん、仕事は終わりだ」 金剛「え、終わっちゃったんですか?」 提督「ああ。──だが、喉が渇いたな。金剛、紅茶を淹れてくれ。紅茶が空っぽだ」 金剛「え? でもそのティーカップにまだ残って──」 提督「…………」チラ 金剛(食器棚に目を……? あ──) 金剛「あ、いえ! 空っぽですね。淹れてきます♪」 提督「察しが良くて助かる」 金剛「えへー。提督の秘書ですから」 提督「うむ。今後とも頼む。──さて、今日は特別に茶菓子を出そうか」 金剛「本当ですか!?」 提督「うむ。だから、今日はとびきり美味しい紅茶を頼む」 金剛「はいっ♪」 ……………………。 823 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/25(金) 16:37:30.08 ID:HCnL4K5l0 金剛「スコーンがあるとは思いませんでしたっ! ん〜! おいしいっ! クリームティーなんて久し振りですっ!」 提督「クリームとジャムは間宮に頼んで作ってもらった。英国産でなくてすまんな」 金剛「いえ! このクロデッドクリームなんて濃厚で最高です! 間宮さんは本当に料理がお得意ですよね」サクサク 提督「……食べれなくて残念だ。甘いものは苦手だ」サクサク 金剛「提督は本当に甘い物が苦手ですよね。私は逆にプレーンで食べる事ができません」 提督「昔は私も甘党だったのだがな」 金剛「そうなのですか? 想像できません……」 提督「いつからかは分からないが、甘い物が全くダメになってな。それ以来、甘い物を食べる事は滅多にない」サクサク 金剛「そうなのですか……。なんだか悲しいですね……」サクサク 提督「実際に辛いな。正直に言うと大変だ」 金剛「ほぇ?」サク? 提督「ここ数年ずっと頭を使う事ばかりなのと小食が災いし、血糖値が低くなり過ぎてたまに倒れる」 金剛「た、倒れる!?」 831 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/25(金) 17:46:03.56 ID:HCnL4K5l0 提督「ああ。低血糖だ。私の場合は無自覚低血糖というものらしい。いきなり目の前が緑色の世界になって倒れる」 金剛「そ、そうなる前に糖分を摂取すれば良いのでは……いくら苦手でも、食べれない事はないですよね?」 提督「それなんだが、甘い物を口にすると吐く」 金剛「そこまで嫌いですか……」 提督「オブラートに包んで呑み込むという手段が一番良いとは思ったのだが、あれでもよく吐く。砂糖は私に何か恨みでもあるのかと思うよ」 金剛「じゃあどうやって糖分を取ってるのですか……?」 提督「倒れた時に、さっき言ったオブラートで包んだ砂糖を呑む。倒れる程になると流石に呑み込めるらしい。ただの一時的な認知障害かもしれないが」 金剛「……あの、その低血糖の対処法について色々と教えてもらって良いですか? もし提督が低血糖で意識不明になったら大変です」 提督「……そうだな。その時は助けてくれるか?」 金剛「勿論ですよ! 私は提督の秘書です!」 提督「感謝する。私が倒れた時、私に意識があればオブラートで包んだ砂糖と水が必要だ。最悪、水は無くても構わないが砂糖は二十グラムくらい欲しい。」 金剛「二十グラムってどれくらいなのですか?」 提督「この角砂糖が六個分だな。ポケットに常備している」 832 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/25(金) 17:57:43.20 ID:HCnL4K5l0 金剛「ふむふむ……。意識が無かった場合はどうするのですか?」 提督「唇と歯茎の間に砂糖を塗り込んでくれ。くれぐれも水に溶かした物を入れるんじゃないぞ?」 金剛「あれ、どうしてですか? 根拠は無いのですが、水に溶かした方が良いと思ってしまいました」 提督「意識の無い人間に液体を飲ませると、気管に水が入る可能性がある。とても危険だ」 金剛「なるほど……。でも、唾液で溶けた場合も危なくないですか?」 提督「勿論危ない。だから、飲み込めないように頭が少しだけ垂れるようにしてくれ。特に私の場合、意識が戻った瞬間に吐く可能性もある」 金剛「はい! 他に何か注意事項とかありますか?」 提督「……そうだな。意識が無く、砂糖を塗り込んで十分経っても回復しない場合はもう一回塗り込んでくれ」 金剛「ふむふむ……」 金剛「そういえば、どうして口に入れておくだけで良いんですか?」 提督「粘膜があるからだ。口、胃、腸の粘膜は基本的に同じ物だ」 金剛「同じ……初めて知りました」 提督「一般生活では必要の無い知識だからな。知らなくて当然だろう。──これだけ憶えていれば特に問題ないはずだ」 833 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/25(金) 18:08:25.93 ID:HCnL4K5l0 金剛「ありがとうございます提督!」 提督「いや、私こそ礼を言う。ありがとう。そして、頼む」 金剛「はいっ!」 金剛「……ところで、この鎮守府に来てから倒れた事は……」 提督「…………」 金剛「……あるんですね」 提督「……島風が来た日に倒れている」 金剛「提督」 提督「すまん」 金剛「もう……。それって定期的にくるものなのですか?」 提督「基本的には大体の目安がある。島風がここに来た日を考えると、二週間から三週間の間に倒れるだろうな」 金剛「ニ週間からですね。憶えておきます」 提督「迷惑を掛ける」 金剛「もっと綺麗な言葉で言って欲しいです」 提督「……頼りにしているぞ」 金剛「はいっ♪」 …………………… ………… …… 835 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/25(金) 18:21:25.74 ID:HCnL4K5l0 コンコン──。 金剛「……………………」 金剛「……おかしいですネー」 瑞鶴「おはよう金剛さん──って、どうしたの?」 金剛「ん、おはようございマス瑞鶴。テートクが返事をしないので、どうしたのかなと思いまして……」 瑞鶴「提督さんが? 珍しいわね」 金剛「勝手に入る訳にもいきまセンし……どうしまショウか」 瑞鶴「たぶん寝てるのよ。提督さん、働き者だし」 金剛「だと良いのですケド……」 龍田「おはよ〜」 天龍「ん? どうした、二人共?」 瑞鶴「おはよう」 金剛「龍田、天龍。おはようございマス。……ノックをしても提督が返事をしないのデス」 龍田「あら……何があったのかしら……」 837 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/25(金) 18:45:49.16 ID:HCnL4K5l0 天龍「寝てるんじゃないのか?」 瑞鶴「私もそうだとは思うんだけど」 金剛「ムー……」 瑞鶴「この通り、ね?」 龍田「金剛ちゃんは提督さんが大好きだものね〜」 金剛「ハイ! 勿論です!」 龍田「良い笑顔だわ〜。ちょっとだけ嫉妬しちゃう」 瑞鶴「え、提督さんに?」 龍田「金剛ちゃんによ〜? それだけ大事に扱われてるって事だもの」 天龍「大事になら俺達もそうされてないか?」 龍田「なんとなくだけど、金剛ちゃんと瑞鶴ちゃんは特に大事にされてると思うのよね〜」 龍田「なんとなく、なんだけどねぇ?」ニッコリ 金剛・瑞鶴「…………っ!」ゾクッ 838 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/25(金) 19:14:48.25 ID:HCnL4K5l0 雷「あら、どうしたの?」 電「おはようございます、なのです」 響「おはよう、皆」 暁「おはよう。入らないの?」 島風「おはよー」 金剛「ノックをしても提督が返事をしないのデス」コンコン 電「まだ眠っているのでしょうか……」 雷「寝てるんじゃない?」 島風「私も寝てると思うなー」 響「司令官は頑張り過ぎなぐらいだからね」 暁「そうよね。たまにはゆっくり休まないといけないわ」 川内「あれー? どうしたの?」 神通「何かあったのですか?」 那珂「みんなー! おっはよー!!」 龍田「少しは声量を考えなさい?」ニッコリ 那珂「ご、ごめんなさい……」 839 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/25(金) 19:31:13.57 ID:HCnL4K5l0 金剛「こういう訳なのデス……」コンコン 神通「…………? 返事が無いですね……」 川内「疲れて深く眠っちゃってるんじゃないの?」 那珂「これは……事件の臭いがするね。ズバリ、提督は死んで──」 ジャキンッ──!! 那珂「……え? た、龍田さん……? この槍は……?」ビクッ 龍田「あら〜? 煩い蝿が居ると思ったんだけどなぁ〜。……次は手元が狂っちゃうかも」 那珂「もう言いません……調子に乗ってごめんなさい……」ビクビクビク 金剛「…………」 提督『二週間から三週間の間に倒れるだろうな』 金剛「…………」 提督『ここ数年ずっと頭を使う事ばかりなのと小食が──』 金剛「……まさか」 瑞鶴「え?」 840 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/25(金) 19:46:56.49 ID:HCnL4K5l0 金剛「────ッ!」ガチャッ 金剛「提督!! 大丈夫ですか!?」 提督「…………」 金剛「────────うそ?」 金剛「提督!! 提督!!!」ユサユサ 瑞鶴「え、ちょ……ちょっと……? 何があったの?」 金剛「────ッ」 金剛「…………よかった」ホッ 島風「ど、どうしたの?」 金剛「息はしてるみたい……」 響「良かった……生きてるんだね」 瑞鶴「でも、だったらなんで起きないのかしら……」 金剛「それは分かりません……救護妖精を呼んできましょう。島風、お願いできますか?」 島風「うん! 全力で行ってくるね!!」 金剛「熱は……ないみたいですね……。脈は……ダメです、分かりません……。でも呼吸は安定していますね……普通の寝息です」 龍田「本当に何があったのかしら……」 ……………………。 841 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/25(金) 20:07:01.91 ID:HCnL4K5l0 救護妖精「過労だろうね、たぶん」 金剛「たぶん……ですか?」 救護妖精「脈はちょっと弱いけど呼吸は安定してるし、熱も無い。普段の働きを見るに精神に問題は無かったと思うけど、働き過ぎだとは思ってたわ」 救護妖精「ハッキリ言うと、現状では分かんないね。だから普段の姿での判断しかできない。精密検査とかすれば話は別だろうけど、勝手に採血するのはまずいしねー。一日待って意識が戻らなかったら無理矢理でも血を採って検査するよ。意識が戻ったら問答無用で診察するから、秘書の貴女も協力してね?」 金剛「はい。お願いします」 救護妖精「それじゃあ、静かにしてあげてやりな〜」 金剛「…………はぁ〜〜〜〜……………………」ペタン 暁「こ、金剛さん。気持ちは分かるけど、汚れちゃうわよ?」 金剛「ごめんなさい……腰が抜けて…………もう少しこのままでいさせて……」 瑞鶴「提督さん……」 ……………………。 842 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/25(金) 20:28:44.75 ID:HCnL4K5l0 金剛「…………」ヂー 瑞鶴「…………」チラ…ボー 暁(あの二人、大丈夫かしら……) 川内(かなり参っちゃってるね……金剛さんは結局あの体勢のまま提督をずっと見てるし、瑞鶴さんはボーっとしては一目見るのを繰り返してる……) 神通(私達は邪魔になりそうですね……。部屋に戻りましょう?) 響「……………………」 電(響ちゃん?) 響(────え、ああうん。私も行くよ) 響「…………」 響(司令官……) …………………… ………… …… 843 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/25(金) 20:51:15.86 ID:HCnL4K5l0 提督「ん……」 提督(いかん……つい熟睡してしまったか……。────金剛、瑞鶴?) 提督「金剛、起きているか?」 金剛「ん……ぅ?」 瑞鶴「んん……──提督さん!?」 金剛「!!!」ガバッ 金剛「提督!!」 提督「すまんな、二人共。……もう十時か。いかん、寝すぎた。すぐに仕事に──」 金剛「提督……身体がおかしい所はありますか?」 提督「いや、ない。すぐに職務へ──」 パァン──! 提督「────」 金剛「…………」 瑞鶴「ちょっ……! こ、金剛さん!?」 844 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/25(金) 21:10:29.37 ID:HCnL4K5l0 金剛「バカ……」 提督「…………」 金剛「何……一人で背負っているんですか……」 提督「…………」 金剛「なんで……私達に頼ってくれないんですか……」 金剛「私達は、そんなに役立たずですか。信用に置けませんか」 金剛「どうしてですか……。どうしてなのですか……提督……」 提督「…………」 瑞鶴「…………」オロオロ 金剛「答えて……答えてください…………」 提督「…………」 提督「……金剛」スッ 金剛「ッ!!」ビクン 金剛「…………っ!」フルフルフル 提督「──すまなかった」ナデナデ 金剛「────────え?」キョトン 845 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/25(金) 21:14:03.19 ID:HCnL4K5l0 提督「お前達に苦労を掛けさせないようにしていたつもりだったが、心配させてしまった」 金剛「……………………」ジワ 金剛「────ッ!」ガバッギュゥゥ 提督「…………」ナデナデ 金剛「どうし、てですか……怒ってくれるなら……気が、楽になったのに……ひっく」 金剛「優し……されたら……ぐすっ……泣い…………ちゃ、うぁ…ぅあぁああぁぁぁぁ……!」 提督「……約束する。今後、無茶はしない」ナデナデ 金剛「ぅ、ひっく……っぅぅ…………」コクコク 提督「ちゃんと、頼りにする」ナデナデ 金剛「ぅぁ、あぁ…………ひくっ……ぐす……」コクコク 提督「嬉し泣きだけにできなくて、すまない」ナデナデ 瑞鶴「……………………」 瑞鶴(……羨ましいって思った自分が情けない)ギリ …………………… ………… …… 859 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/26(土) 00:08:30.91 ID:JNSoHKIN0 提督「落ち着いたか、金剛」 金剛「…………」コク 提督「そろそろ離れようか」 金剛「…………」フルフル 提督「まいったな……」 金剛「…………」ギュー 提督「分かった分かった。仕事はしないから離してくれ」 金剛「…………」 提督「約束だ。だが、しっかりと休んだら働かせてくれ」 金剛「……………………」 金剛「ん……」スッ 提督「良い子だ」ナデナデ 瑞鶴「…………」ソー 提督「どこへ行く、瑞鶴」 瑞鶴「はぃえ!?」ビクッ 瑞鶴「え、えーと……あ、あははは……」 862 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/26(土) 00:18:47.31 ID:JNSoHKIN0 提督「こっちへきなさい」 瑞鶴「え!? え、えー……と……」 提督「…………」 瑞鶴「……はい」トコトコ 提督「…………」スッ 瑞鶴「う……」 提督「…………」 瑞鶴「……………………」スッ 提督「ん。心配してくれてありがとう、瑞鶴」ナデナデ 瑞鶴「…………ごめんなさい、金剛さん」ナデナデ 金剛「? 何がですか、瑞鶴?」 瑞鶴「だ、だって……せっかく良い空気だったのに……」ナデナデ 金剛「提督が呼んだのですから、素直になっても良いんですよ?」 提督「それとも、撫でられるのは嫌だったか?」スッ 瑞鶴「あ……」 863 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/26(土) 00:28:51.37 ID:JNSoHKIN0 提督「…………」 瑞鶴「う……ぅ…………。ッ!!」バッ 金剛「……瑞鶴?」 瑞鶴「あ、あははは……。ごめんね、ちょっと読みたい本があるの。提督さん、お大事に」 提督「…………瑞鶴?」 瑞鶴「金剛さん、提督さんをお願いね?」 金剛「え……ず、瑞鶴?」 瑞鶴「…………ッ」 ガチャ──パタン 提督「……失敗した」 金剛「え?」 提督「瑞鶴が寂しそうな顔をしていたから、元気付けようと思って頭を撫でたのがミスだった」 金剛「え、で……でも──」 提督「金剛。それ以上言うと瑞鶴を貶める事になる」 金剛「う…………はい……」 提督「はぁ……上手くいかないものだ」 金剛「瑞鶴……」 提督(これからどう接してやったら良いのか……) …………………… ………… …… 865 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/26(土) 00:39:02.16 ID:JNSoHKIN0 瑞鶴「…………」ボー 瑞鶴「逃げてきちゃった……」 瑞鶴「はぁ…………」 瑞鶴「……二人共、困ってるだろうなぁ……。無理にでも笑っていたら良か──ううん。あの二人にバレない訳がないわよね……」 瑞鶴「…………どうしよう。これから、どうやってあの二人に接したら良いのかな……」 瑞鶴「……………………」 瑞鶴「私って、嫌な女だなぁ……」 瑞鶴「気が利かなくて、些細な事に気付けなくて、頭も良い訳じゃないし、秘書としての仕事も金剛さんの足元にも及ばないし……」 瑞鶴「……身体も、どっちかと言えば子供だし。きっと、提督さんも金剛さんのような……」 瑞鶴「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」バタバタ 瑞鶴「夜這い、かぁ……」 瑞鶴「…………でも、それって身体を使わないと勝てないって認めてるようなものなのよね」 866 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/26(土) 00:48:38.42 ID:JNSoHKIN0 瑞鶴「勝てない……どうやっても勝てない……。そもそも、私が勝ってる所って、なんだろう……」 瑞鶴「……戦闘? …………………………………………他に思い付かないや……」 瑞鶴「そっか……私、金剛さんが持っていない魅力って、無いのよね……」 瑞鶴「そっかぁ……」 瑞鶴「…………」 瑞鶴「頭も、スタイルも、性格も、全部勝てない……か……」 瑞鶴「……戦争が終わったら、私って本当に何も勝てなくなっちゃう…………」 瑞鶴「…………諦めた方が良いのかな」 瑞鶴「…………」ポロ 瑞鶴「え、な、なんで? なんで涙が出てくるの?」ポロポロ 瑞鶴「だって、勝てないじゃない……全然勝てないんだもの……」ポロポロ 瑞鶴「最初から、勝てない勝負だったのよ……」ポロポロ 瑞鶴「だから、悲しむ必要なんてない。潔く負けを認めなさいよ」ポロポロ 867 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/26(土) 00:58:46.00 ID:JNSoHKIN0 瑞鶴「…………ッ」ボフッ 瑞鶴(悲しむ事、ないでしょう? マッチを海に投げ入れても火が消えるのと同じ……) 瑞鶴(最初から勝てなかったんだって……) 瑞鶴(なのに……なんでこんなに悲しいんだろう……なんでこんなに辛いんだろう……) 瑞鶴「提督さん……」 瑞鶴(あの時、私は提督さんに何をして欲しかったんだろう……) 瑞鶴(呼び止めて欲しかった? 追いかけて欲しかった? いつも健気にしている金剛さんを放っておいて?) 瑞鶴「私……何やってるんだろう……」 瑞鶴(死にたい……けど、死んだら提督さんが物凄く困っちゃう……。ううん。貴重な戦力が削れちゃうんだもの……皆が困る……) 瑞鶴(勝ちたいのに、勝てない……。逃げたいのに、逃げれない……) 瑞鶴「こんなのってないよ……神様……」 瑞鶴「…………普段通りにしていたら、二人共、今日の事は忘れてくれるかな……」 瑞鶴「普段通りに……でも、一歩後ろに下がって……」 瑞鶴「……そうしよう。それが、二人の為だもん」 瑞鶴「…………今日は、泥のように寝よう……」 …………………… ………… …… 868 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/26(土) 01:09:01.08 ID:JNSoHKIN0 瑞鶴「すぅ……」 金剛「…………」 金剛(どうしよう……瑞鶴、結局お昼も夜もずっと寝たままでした……。どう接したら良いのでしょうか……) 瑞鶴「…………」パチ 金剛「!」ビクッ 瑞鶴「んー……! ふぁ……金剛さん……おはよー……」グシグシ 金剛「え、あ……お、おはようございます……」 瑞鶴「あれぇ……? 珍しいわね……さっき起きたの?」 金剛「い、いえ……ちょっと忘れ物を取りに……」 瑞鶴「そうなんだー……。んんー……ブラシブラシ……」ゴソゴソ 金剛(気にしていない……? でも、そんな事って……) 瑞鶴「んー……金剛さん」 金剛「は、はいっ!」ビクッ 瑞鶴「どうしたのよ、変に力なんて入れちゃって? 早くしないと提督さんに叱られちゃうわよー?」 金剛「え、えっと……あの、大丈夫……なのですか……?」 869 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/26(土) 01:17:07.95 ID:JNSoHKIN0 瑞鶴「なにがー? んー、あれ……髪留めのリボンどこだろ……」 金剛「あっ……枕……の横にありますよ……」 瑞鶴「あれ、本当だ。ありがとー」 金剛(な、なんでこんなに普通にしていられるんですか……?) 瑞鶴「むー……目覚めが悪い……。じゃあ、私は顔を洗ってくるわねー」ウツラウツラ 金剛「は、はい……」 金剛(どういう事なのですか……?) …………………… ………… …… 871 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/26(土) 01:31:44.59 ID:JNSoHKIN0 提督「今日も一日休みとする。すまない……医者からまだドクターストップを掛けられているんだ」 提督「それでは各自、自由行動してよし」 川内「はーい提督、質問」 提督「なにかね」 川内「今日さ、遠征に行っても良い? いつもの警備任務とか海上護衛任務とか」 提督「いきなりどうした。まずは理由を言ってみろ」 川内「いやー。ここ何日か海に出てないからさ、ちょっと動きたくなったのよ。軽巡の皆は賛成なんだけど」 響「それは良い考えだね。私も参加して良いかな」 雷「あ、私も。身体が鈍っちゃうもの」 電「私も海に出たいです」 暁「私もそろそろ出たいかも」 島風「私もー!」 提督「構わないが、警備任務は軽巡一隻、駆逐艦二隻。海上護衛任務は軽巡が一隻、駆逐艦が三隻で向かう事だ」 龍田「それだと軽巡が三隻余っちゃうわよ〜?」 提督「ふむ……まだ第三艦隊の許可が降りていないからな……。演習はどうだ? 身体もほぐれると思うぞ」 瑞鶴「あ、演習をするのなら私も参加したい」 872 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/26(土) 01:38:11.49 ID:JNSoHKIN0 天龍「うげっ!? 瑞鶴も演習に……? 勝てるのか、俺達……?」 瑞鶴「何よ。対空射撃が苦手でしょ、貴女達。これも訓練よ、訓練」 神通「そうですね。これから敵に空母も増えてくるでしょうし、私は是非ともお願いしたいです」 瑞鶴「提督さん、構わない? たしか、演習用の艦載機ってもう出来てたわよね?」 提督「…………ああ、出来ている。構わないぞ」 瑞鶴「やった!」 金剛「あ……えっと、私も──」 瑞鶴「金剛さんはダメよ? 誰が提督さんの面倒を見るのよ」 金剛「え、でも……」 瑞鶴「どうせ提督さんの事だから、一人でまた無理をしそうだもの。ちゃんとブレーキ役になってくれなきゃ。……それとも、私が提督さんのお世話をしようかしら?」 金剛「う……」 瑞鶴「決まりね?」 金剛「うう……はい……」 瑞鶴「ふふふ……ここ二日間、出撃も何も無かったから今日は暴れるわよー?」 天龍「マジかよ!? こりゃ本気でヤバイぜ……」 873 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/26(土) 01:47:22.10 ID:JNSoHKIN0 龍田「あらあら、だったら天龍ちゃんは遠征に逃げる〜?」 天龍「誰が逃げるか!! いいぜ、瑞鶴! 俺が全部撃ち落してやる!!!」 瑞鶴「言ったわね? 艦爆と艦攻、面と点の二重で狙ってあげるわ」 天龍「卑怯だぞぉ!?」 ガチャ──パタン 金剛「……行っちゃいました」 提督「金剛、さっきの瑞鶴をどう思う」 金剛「……良く分からないです。正直、いつも通り過ぎて逆に困りました」 提督「金剛にはそう見えたか……」 金剛「提督にはどう見えたのですか?」 提督「私は……あれは非常に良くないものだと思っている」 金剛「え──?」 ……………………。 874 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/26(土) 01:57:39.22 ID:JNSoHKIN0 コンコン──。 提督「入れ」 ガチャ──パタン 瑞鶴「失礼します。演習が終わりましたので出頭しました。……あの、話ってなんでしょうか?」 提督「瑞鶴、お前について話したい事がある」 瑞鶴「私に……ですか? あの……演習で何かとんでもないミスとかしてました……?」 提督「艦爆で全員を面で狙いつつ艦攻でピンポイントに狙っていたのは良かった。だが、演習の事ではない」 瑞鶴「えっと……?」 提督「瑞鶴、何を無理させている?」 瑞鶴「え? 私、無理なんてしてないわよ……?」 提督「いつものお前は無理をしていないだろう。だが、個人的な部分──自分の我儘な部分はどうだ?」 瑞鶴「……え、な、何を──」 提督「私が気付かないと思っていたのか」 瑞鶴「…………」 提督「答えなさい」 瑞鶴「……酷いよ、提督さん」 876 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/26(土) 02:08:43.50 ID:JNSoHKIN0 提督「ああ。今、瑞鶴の目の前に居る人間は人の心を弄ぶ罪人だ。どんな事を言われても罪人には反論をさせない」 瑞鶴「私が……どんな思いで……どんな、痛みで………………」 提督「…………」 瑞鶴「折角…………諦めようって、忘れようって心に決めたのに……」 瑞鶴「どうして……? どうして提督さんはこんなに私の心に入ってくるの……?」 提督「……私は罪人だ。家主の承諾無しに勝手に家に上がり込む」 瑞鶴「なら……罪人さん……」 提督「なんだ?」 瑞鶴「少し……その頼りになる胸を……貸して……」 提督「…………」スッ 瑞鶴「────ッ!! うわぁあああぁあああ……っ! ────────っ!!!」 提督「…………」ナデリナデリ ……………………。 875 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2013/10/26(土) 02:06:03.70 ID:a19ynRhFo ヲ級達は何してるんだ? 877 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/26(土) 02:17:12.58 ID:JNSoHKIN0 >>875 ヲ級「♪」 戦姫「ああこら……あちこち歩き回って……」 ヲ級「!」ビシッ 戦姫「ん、これは……。ほう、この傷まだ残っていたのか。懐かしいな。初めて私が訓練に参加した時の傷じゃないか……」 ヲ級「♪」 戦姫「……これを見せてくれる為に私を連れてきてくれたのか。ありがとう、翔鶴」 戦姫「よーし! 翔鶴、次の場所へ連れて行ってくれ!」 ヲ級「〜♪ 〜〜♪」テテテ ──戦姫と翔鶴は、今日もほのぼのと鎮守府を駆け巡っているようです。 879 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/26(土) 02:19:02.24 ID:JNSoHKIN0 瑞鶴「……………………」 提督「──落ち着いたか?」 瑞鶴「………………うん……」 提督「そうか」 瑞鶴「……提督さん、私……諦めたくない……」 提督「…………」ナデナデ 瑞鶴「絶対……ぜーったいに金剛さんよりも魅力的になって、提督さんのハートを奪ってやるんだから」 提督「……瑞鶴も金剛も、よく茨の道を好き好んで進む事だ」 瑞鶴「だって、好きなんだもん」 提督「一体どこにそこまで惹かれるものがあるというのか」 瑞鶴「好きだからよ。何かあるからとかじゃないの。好きだから好きになったのよ」 提督「……そうか」ナデナデ 瑞鶴「ん……もっと撫でて……」 提督「…………」ナデナデ 瑞鶴「落ち着く……すっごく気持ち良い……」 提督「……なんだか、今夜は喉が渇くな」 瑞鶴「…………?」 提督「瑞鶴、すまんがお茶を淹れてくれないか?」 瑞鶴「え……? でも、私は金剛さんに全然…………」 提督「…………」 瑞鶴「……分かったわよ。でも、不味くても文句を言わないでよ?」 提督「さてね。私は正直にしか言わないよ」 瑞鶴「くす……提督さんらしいわね。ちょっと待っててね?」 ……………………。 880 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/26(土) 02:20:32.14 ID:JNSoHKIN0 瑞鶴「はい。どうぞ」 提督「うむ。頂こう」ズズ 瑞鶴「私も……」チビチビ 瑞鶴「────!? な、何これ!? ほとんどお湯じゃない……」 提督「いや、美味いぞ」ズズ 瑞鶴「……提督さん。流石にこれはお世辞でも不味いとしか言えないわよ……。紅茶風白湯だもん……これ……。ティーパックの方がずっとずっと美味しいわ」 提督「しっかりと入っていて美味いよ」 瑞鶴「…………?」 提督「ティーパックでは入る事のない、極上の愛情が入っている」 瑞鶴「…………」 提督「一生懸命、紅茶の淹れ方を勉強しているというのが分かるよ、瑞鶴」 瑞鶴「バカ……提督さんのバカ……。恥ずかしいじゃない……。でも──」 瑞鶴「──ありがとう」 …………………… ………… …… 907 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/26(土) 23:03:14.78 ID:GPvER2220 提督(──む、私宛への機密文書が束で……とうとうきたか……。さて、何が書かれているのか……) 提督(金剛が起きてくる前に、二人で分担する書類を分けてしまうか。ついでに、機密文書も見ておこう) ……………………。 提督(通常の書類はこれで良し……。残るは機密文書……)ジッ 提督(まずは…………46センチ三連装砲……? 今頃になってこんな情報を送られてきてもな……) 提督(次は──深海棲艦に関する項目、か。ここから読んでいこう) ……………………。 提督(────ふん。なるほど。筋の通った言い訳がましい資料だな、大将共め) 提督(……あの四人を集めて話しておくか) …………………… ………… …… 908 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/26(土) 23:16:25.97 ID:GPvER2220 救護妖精「提督、あんたバカか?」 提督「……………………」 提督(朝礼が終わったら、救護妖精が般若の顔をしてやってきた……) 電「え……え?」 龍田「…………」ニコォ 救護妖精「一つ言っておくぞ。あんた働き過ぎだと思っていたが、ここに来る前から無茶をやっていただろ」 金剛「む……提督?」ジッ 提督「……根拠は?」 救護妖精「血液検査と診察で分かるわ! なんだあれ!? 本当だったらでかい病院送りで全項目精密検査だぞコラァ!」 瑞鶴「あ、あのー……。一体何があったの……?」 救護妖精「一番呆れたのが提督の血糖値。普通の半分くらいしかない。精確には半分よりちっと高いが、それでも普通に生活しているのがおかしい。血糖の閾値が低過ぎ」 神通「あの……もう少し分かりやすくお願いしても良いですか……?」 909 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/26(土) 23:26:52.40 ID:GPvER2220 救護妖精「脳ってのは殆どブドウ糖がエネルギー源なんだよ。で、提督の血糖値は常人だったら自律神経と脳に障害が出てる数字だ。その数字があと5〜10も下がると意識消失する」 救護妖精「薬剤とか点滴とかしようと思って、アレルギーがないかの血液検査とかもしてみたら異常が無いくせに、過去の診察データを見てみたらまったく同じもんで嘔吐、痙攣、意識消失してるみたいだし、昏睡も一回なってるよね。もう訳が分かんないよ」 島風「……つまり?」 救護妖精「あたしじゃどうしようも出来ない。お手上げ。匙を投げるしかない。安静にしてろとしか言いようがない。むしろ神を呪えと言いたい」 救護妖精「他にも色々な問題を抱えてるみたいだしさ。色々と数字がおかしい。提督、正直に答えてほしいんだけど、あんた本当に人間?」 提督「人間以外なんでもないが……何に見えるというのか」 救護妖精「本当だったら死に掛けてると思うんだけど!! 本・当・だっ・た・ら!」バンバン! 瑞鶴「それじゃあ、ここの設備じゃ……」 救護妖精「ここまでくると現代医学の敗北じゃないの? でっかい病院に行ったらまだ分かるものがあるかもしれいないけどさー。そういう訳にもいかないでしょ、現状」 救護妖精「とにかく!! 疲労が取れるまでは出撃とかするな!! 寿命縮める所か二重の意味で自殺しにいってるようなもんだぞ!!!」 911 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/26(土) 23:37:20.46 ID:GPvER2220 提督「…………」 救護妖精「返事!!」 提督「……分かった」 救護妖精「これから毎日診察するから、あたしが良しと言うまで出撃するんじゃないよ! 無論、運動なんてしたら死体になりかねないからするな! 数字は意味不明だが疲労だけは取れると思うからね!」 救護妖精「これでも譲歩しているんだから、とにかく寝てろ!! じゃあね!!」バタン! 金剛「…………あの……あれって相当キレてましたよ、提督……」 提督「…………」 瑞鶴「ど、どうするの提督さん……」 提督「……とりあえず、今日は遠征と建造、開発だけしよう。遠征は錬度の低いものを優先して行う。残りの者は母港で待機。警戒をしてくれ。編成は後で通達する。」 提督「今回の開発で、瑞鶴の装備を整えるから瑞鶴は残っておく事。金剛は書類を片付けるのを手伝ってくれ」 提督「皆にはすまないが、私のせいで出撃が出来そうにない。救護妖精の言うように少し休む」 提督「以上。何か質問はあるか? …………無いようだな。では、通達があるまで金剛と瑞鶴以外は部屋で待機」 全員「はい!」ピシッ 914 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/26(土) 23:45:54.41 ID:GPvER2220 電「……あ、あの……司令官さん」 提督「なにかね」 電「…………私達、頑張りますから、早く良くなってくださいね!」 提督「ああ。善処するよ」 響「約束だよ、司令官」 島風「また提督が倒れちゃったら、私の寿命も縮むんだからね? 提督と一緒に過ごせる時間が短くなるから、命だけは早くなりたくないよ」 龍田「必要になったら私も呼んでね〜? 提督さんの為だったら何でもするわ〜」 那珂(……スキャンダル? いや、愛人……?) 龍田「那珂ちゃん?」ニコォ 那珂「何も言ってないよー!?」 龍田「とっても不愉快な考えをしていなかったかしら〜?」 那珂「ひぃっ!」 提督「……………………」 …………………… ………… …… 943 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/27(日) 23:32:12.82 ID:tUm5Ex7I0 提督「さて、都合良くお前達以外を動かす事が出来た。これから大事な話をしよう」 金剛「総司令部から何かあったのですネ?」 提督「ああ。だから戦姫とヲ級にも来てもらった」 戦姫「あいつらの考える事だ。どうせ碌でもない事なのだろうな」 ヲ級「…………」ボー 瑞鶴「それで、一体何があったの?」 提督「機密情報として資料を送られてきた。それの中身をある程度噛み砕いて話す」 提督「まず、深海棲艦とは何か、だ。世間的にはどこからともなく湧き出てくる敵……という事になっており、私達が今知っている情報では艦娘が沈んだのが深海棲艦だ。だが、これにはおかしい点がある」 金剛「艦娘が先か、それとも深海棲艦が先か、ですね?」 提督「理解が早いな。だが、三人……いや、二人が理解していないみたいだから説明させてもらう」 金剛「二人? ──ああ……」 ヲ級「♪」テテテ 提督「まず、深海棲艦を倒す為に生み出されたのが艦娘……これは良いな? そして、深海棲艦は沈んだ艦娘の末路だが、それではどっちが先か、となるだろう?」 瑞鶴「え……それって艦娘が先じゃないの? いや、でもそれだったら艦娘は何の為に生み出されたの……?」 戦姫「ああ、そういう事か」 提督「分かったのか?」 戦姫「はい! おかしいという事が分かりました!」 提督「…………」 948 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/28(月) 00:07:34.90 ID:snrq/tqU0 提督「……そして、瑞鶴が言ったように、どうして艦娘は生み出されたのか、という事だが、こう書かれていた」 提督「艦娘は元々、人間と戦う為の道具。人造人間──ホムンクルスだったとな」 金剛「……ホムンクルス? あの錬金術で作られた……?」 提督「似ているが、根本的に違うようだ。金剛の知っているホムンクルスは、あらゆる知識を身に付けたフラスコでしか生きれない者だろう。だが、艦娘は元々、人間がベースのようだ」 瑞鶴「ちょっと待って。私達は建造されて生まれてきてるのよ? 人間からじゃないわ」 提督「それは現在での話だそうだ。人間ベースは数十年も前の話だそうだ。現在は効率化されて建造からいくらでも造れるようになったらしい」 提督「当時の資料は残っていないそうで、関係者も全員死亡している事から確実なる証拠は残っていないものの、人と戦う為の道具だった事は間違いないらしい」 提督「だが、間抜けな事にその艦娘の製造方法が一つの大国に盗まれたらしい。そして、その大国で実験の失敗が続いた」 瑞鶴「……それって、全員深海棲艦に?」 提督「そう書いてあったな。そして深海棲艦は戦力が揃うまで潜み、全世界に牙を剥いた。現在はその深海棲艦の影響で島国は実質国交が不可能。だが、一隻のボロボロとなった敵の船が我が国へ到着し、こう言ったそうだ」 提督「停戦しよう。あの化け物を全て駆逐するその日まで」 956 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/28(月) 19:19:47.88 ID:snrq/tqU0 金剛「そんな一方的な……。それは受け入れられたのですか?」 提督「受け入れた……が、『受け入れた』と返す事は叶ったかどうかは不明だそうだ」 瑞鶴「どうして?」 提督「文字通り、命を賭けてその言葉だけ伝えられた。そして、こちらも返事を送ったが、その船は帰ってきていない。故に不明だ」 瑞鶴「飛行機は無理だったの?」 戦姫「そんな物が飛んでいたら高角砲や戦闘機など駆使して落とすぞ」 瑞鶴「ああ……なるほどね……」 提督「よって、今は深海棲艦を共通の敵として戦っている。国民に過度な心配を与えぬよう報道規制と情報を隠しておいて」 提督「──と、もっともらしい理由を並べた資料などを送ってきていたよ」 金剛「え?」 瑞鶴「えっと……どういう事?」 戦姫「……む?」 提督「私は最初からこんな物を信用していない。伝えず、隠し、偽っている事があるはずだ。それがどれなのかは分からないが、私はこの文書を信用したという事にして奴らを出し抜く準備をする」 提督「……ついでに、戦姫とヲ級に対して実験をしろという指示も来ている」 ヲ級「?」コテン 957 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/28(月) 19:40:47.65 ID:snrq/tqU0 瑞鶴「それって……私の時と同じの?」 提督「そうだ」 戦姫「い、痛い実験は止めてくださいよ?」ビクビク 提督「せんよ。瑞鶴の時と同じく、薬剤系や個人的にダメだと思ったものは論外とする。襲われそうになったとでもでっち上げれば奴らも納得せざるを得ないだろう」 金剛「……大丈夫なんでしょうかね」 提督「なんとかするしかない」 瑞鶴「そういえば提督さん。私が最後まで渋ってたアレ……なんて報告したの?」 金剛・戦姫(『アレ』?) 提督「『私達の距離が短くなっただけで他は何も変わらず』と書いておいた」 金剛(ああ……えっちの事ですかね) 瑞鶴「……私はそれだけじゃないんだけどなぁ」 提督「下手な事を書いて刺激する方が厄介だと判断した。他の艦娘と比べて、戦闘能力が高いだけという結論を出したよ」 金剛「それが無難ですものねー」 戦姫(何の話なのか分からない……)クスン ヲ級「…………」ナデナデ 戦姫(翔鶴……お前は優しい奴だ!!)ギュー ヲ級「♪」 958 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/28(月) 20:13:31.12 ID:snrq/tqU0 提督「次に海軍の考えている計画についてだが」 瑞鶴「あれ、資料ってそれだけだったの?」 提督「頭に入れておいても仕方が無いものばかりだったから省かせてもらう。46センチ三連装砲だの最高軍事機密戦艦の情報だのと、意味を成さない物だ」 瑞鶴「今の資源じゃ、戦艦は運用できないもんねー……」 提督「そういう事だ。46センチ三連装砲なんかに到っては既に所持している」 提督「話を戻そう。計画についてだが、その戦争をしていた大国への安定した航路を得る為に、試行錯誤で手当たり次第に航路を開拓していく方式が挙げられている」 金剛「ええ……どういう事なのデスかそれ……」 提督「我が国は特殊な環境に置かれているようで、陸付近の深海棲艦が他と比べて弱いらしい。だが、我々海軍が現状把握している地域を除いて、深海棲艦の強さは非常に強いものだという。出会う敵が悉く黄のオーラを放っているようだ」 瑞鶴「……つまり、それって戦姫さんの艦隊と似たような敵がウヨウヨしてるって事?」 提督「そういう事だな」 金剛「そうそう勝てまセンね……」 戦姫(褒められてるのかな……。でも、二人は落ち込んだ顔をしてるし……なんだか素直に喜んじゃいけない気がする……) 959 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/28(月) 20:40:45.05 ID:snrq/tqU0 提督「巨大な迷路に迷い込んだようなものだ。手当たり次第に出撃を繰り返すしかないだろう」 提督「そして……その大国だが、深海棲艦の大陸と呼ばれている国だ」 戦姫「深海棲艦の大陸? そんなものがあるのですか?」 提督「いや、実際には無い。そんな大陸があると嘘の情報を流しているようだ。深海棲艦が生み出され続けている新大陸という事にして、その大国のイメージを守っているとの事だ」 瑞鶴「でも……それでしたら尚更、報道規制をする理由が分からないわ。敵対していた国と協力を結んで現状の敵を倒そうって、凄く良いことじゃないの?」 金剛「聞こえは良いですケド、敵の国に殺された人がたくさん居マス。例えば、瑞鶴の親と姉妹全員を殺した敵が居て、共通の敵が出てキタから仲良くしろと言われて納得できマスか?」 瑞鶴「…………ちょっと嫌だなって思っちゃう」 提督「当事者でもなく、温厚な瑞鶴でもそれだ。実際に殺された人の家族が集まって暴動でも起こされたらそれこそ大変な事になる」 瑞鶴「なるほどねー……」 提督「この計画もどこまでが本当なのかは分からないが、とにかくその大国に辿り着くのを目的としているのは本当だろう」 提督「とにかく、色々と隠している事が多いと私は睨んでいる。それを暴き、真実をこの目にする。すまないが、協力してくれ」 964 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/28(月) 21:02:47.41 ID:snrq/tqU0 金剛「勿論ですよ!」 瑞鶴「私もよ。提督さんにならいくらでも協力するわ」 戦姫「私もです」 ヲ級「♪」ギュー 提督「ありがとう、四人共」 戦姫(あれ……何かを忘れているような……) 金剛「それにしても、なんだか不思議デスね」 提督「何がだ?」 金剛「だって、テートクにとって真実を目にする理由もメリットも無いじゃないデスか」 瑞鶴「そういえば……」 提督「…………そうだな。なぜだろうかな」 瑞鶴「知的欲求……とか?」 提督「恐らくそれが近いと思う。私もこんな気持ちは初めてだ」 提督「──なぜか、私は知らないといけない。そう思うんだ」 …………………… ………… …… 966 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/28(月) 21:25:21.86 ID:snrq/tqU0 提督「──さて、建造と開発も終わらせた事だ。これ以上動いたら救護妖精の目がどんどん釣り上がるから休むとしよう」 金剛「では、私は秘書の仕事をしますネ」 瑞鶴「あ、私も手伝って良い?」 金剛「ハイ! ──っとと……テートク、良いデスよね?」 提督「ああ、構わない」 瑞鶴「やったっ!」 金剛「テートク、なるべく静かにしマスけど、少しの音は許してくだサイ」 提督「耳栓をするから安心しておくと良い」 金剛・瑞鶴「はーい」 提督(……本当に、どうしてここまでやってくれるのかね。一人の人間として大事にしているとはいえ、私はお前達を戦争の道具として使っている事には変わらないというのに……) …………………… ………… …… 968 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/28(月) 21:46:46.86 ID:snrq/tqU0 瑞鶴「んー……っ! 三分の一が終わったー」 金剛「少しティータイムにしマスか? 甘いお茶請けがありますヨー?」 瑞鶴「あ、お願いしても良いかしら。……本当だったら作業の遅い私がやるべきなんだろうけど、私がお茶を淹れたらほとんど白湯になっちゃって……」 金剛「それでしたら一緒に淹れまショウ? 紅茶仲間が増えるのは私もハッピーデース!」 瑞鶴「え……良いの?」 金剛「もっちろんデス!」 瑞鶴「……ありがとう。すっごく嬉しいわ」 金剛「? そんなに深く感謝される程のモノではないですヨー?」 瑞鶴「ふふっ、良いの。私がそう思ったんだもの」 金剛「瑞鶴は不思議ネー。それでは、お茶を淹れまショウ!」 瑞鶴(不思議なのは金剛さんなんだけどね。私が恋敵だって微塵にも思ってないみたい。…………私が考えすぎなのかしら?) ……………………。 972 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/28(月) 23:03:57.75 ID:snrq/tqU0 金剛「ん〜♪ たまに砂糖菓子を食べるのもグッドデース! スコーンとはまた違った楽しみがありマース♪」カリカリ 瑞鶴「うん。さすが金剛さんね。私が一人で淹れたのとは全然違うわ」チビチビ 金剛「これも練習あるのみデース」 瑞鶴「ん、頑張るわね。……それより、提督さん大丈夫かしら」 金剛「こればっかりは私達ではやれる事が少ないデス……。でも、お互いにテートクを見ていて、無理をさせないようにしまショウ?」 瑞鶴「うん、勿論よ」 金剛「それに、瑞鶴ならテートクに選ばれても良いかなと思います」 瑞鶴「ッ!? な、なな何を言ってるの!?」 金剛「だって、瑞鶴はとっても健気じゃないですか」 瑞鶴「それ、金剛さんが言う?」 金剛「私なんて瑞鶴の半分すら満たしてませんよー」 瑞鶴「私はそうは見えないけどなぁ……」 金剛「そうなのですか? 私は提督の為に自分の身を引くなんて事、思い切ったとしても出来ません。その場を誤魔化して、しばらくズルズル引きずってから後悔すると思います」 973 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/28(月) 23:27:25.00 ID:snrq/tqU0 瑞鶴「私、金剛さんなら諦めずにアタックし続けると思ってたわ」 金剛「本当の私は臆病です。アタックする前に枕を濡らす毎日でしょうねー」 瑞鶴「……なんか意外。金剛さんが臆病だなんて」 金剛「本当です。私は弱いので強くなろうとしているだけなんですよ」 瑞鶴「強く、か……」 金剛「その点、瑞鶴はとっても強いです。好きな人の為に諦めるなんて事、よっぽど強くないとできない事です」 瑞鶴「ただ単に諦めが早いだけかもしれないわよ?」 金剛「諦めれず、磁石に付いた砂鉄みたいにいつまでもしつこくしていたら、相手に嫌われちゃうと思います。私はそのタイプですよ」 金剛「逆に、好きな人が困る前に離れれる強さは一つの魅力です。その魅力に惹かれて追いかけてくれる事もあると思いますよ?」 瑞鶴「そうなのかなぁ……。実際に提督さんは追いかけてこなかったし……」 金剛「それは提督が私達のどちらも女の子ではなく、部下と見てるからですよ」 瑞鶴「あー……確かに提督さんならそう見てるわよねー……」 974 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/28(月) 23:43:52.90 ID:snrq/tqU0 金剛「そうなのです……。だから、私が瑞鶴と同じ事をしても提督は追いかけてきませんでしたよ」 瑞鶴「うーん……」 金剛「『隣の芝は青い』という言葉もあります。瑞鶴から見て私が良いように見えるのはそういう事ですよ」 瑞鶴「その言葉、そっくりそのまま返してあげるね」 金剛「……………………」 瑞鶴「どうしたの? そんなに驚いて」 金剛「いえ……瑞鶴から見て私が良いように見えているのに驚きまして……」 瑞鶴「えっと……違うと思うけど、嫌味?」 金剛「ち、違います違います! 私はさっきも言ったように弱いです。だから、強い瑞鶴にはあまり良いようには見えていないだろうと思っていまして……」 瑞鶴「随分と謙虚ねぇ……」 金剛「そうなのでしょうか……」 瑞鶴「金剛さん、一つ良い事を教えてあげる」 瑞鶴「人よりも良いものを持っている人が度を越えて謙虚だと、それを持っていない人に疎まれちゃうわよ?」 金剛「う……」 瑞鶴「だから、振りかざさない程度に自信を持ちましょう?」 金剛「はい……」 瑞鶴「うん、良い返事」 金剛「ありがとうございます、瑞鶴。私は、貴女と仲良くなれて本当に良かったと思います」 瑞鶴「私もよ。ありがとう、金剛さん」 …………………… ………… …… 975 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/29(火) 00:00:48.06 ID:xBU8Dc6k0 提督「ん……」 金剛「あ、起きまシタか?」 瑞鶴「思ったよりも早いのね、大丈夫なの?」 提督「ああ。まだ少し疲れているようだが大丈夫だ」スポ 金剛「…………耳栓をしているのを忘れていましたケド、普通に会話できてましたよネ……?」 瑞鶴「あ……た、たしかに」 提督「口の動きを見れば大体分かる」 金剛「……本当になんでも出来マスね、テートク」 提督「出来る事しか出来んよ。例えば、私は料理が出来ない」 金剛「そうなのデスか?」 提督「レシピ通りに作っても、なぜか見た目、味共にゲテモノしか出来ん」 瑞鶴「……ちょっと気になっちゃう」 提督「止めておけ。野良犬に食わせた事があるが泡を吹いて痙攣していた」 金剛「……何を食べさせたんデスか」 提督「自称、玉子焼き。多少の塩と卵だけのレシピで作ったはずだったが、なぜかドス黒い虹色をしていたな」 金剛・瑞鶴「…………」 977 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/29(火) 00:16:03.29 ID:xBU8Dc6k0 提督「味は最初しなかった。だが、手が震えていたのは分かった。なぜ味がしないのかと不思議に思って食べていたが徐々に舌が痺れ始め、なんとも表現し難い……いや、表現できない味が襲ってきた。気付いたら時間が一時間も過ぎていて、流石に食べるのを止めたよ」 金剛(それって本当に食べ物なのでしょうか……?) 瑞鶴(劇物……?) 提督「二人が心の中で何を思っているのかは分かる。それを口にしないのは嬉しいよ」 金剛「あ、あはは……」 瑞鶴「とっ、ところでさ! もっと寝ていたらどう? まだ疲れが取れていないんでしょう?」 提督「そうしていた方が良いのだろうが、少し歩かせてくれ。間接が痛い」グッグッ 金剛「私達もついて行きマス」 瑞鶴「途中で倒れちゃったら怖いもんね」 提督「ありがとう。頼むよ」 …………………… ………… …… 979 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/29(火) 00:38:24.83 ID:xBU8Dc6k0 川内「おっ、提督じゃん。起きてて大丈夫なの?」 神通「しっかりと休みは取って下さいね」 提督「警戒ご苦労。寝てばかりだと間接が痛んでな。こうやって少し解しているんだ」 川内「そんなに時間が経ってないような気がするんだけど……」 提督「こればかりは体質としか言いようがないな」 神通「解し終わったらちゃんと休んでくださいね?」 金剛「ノープロブレム! 私達が無理矢理にでも休ませマース!」 瑞鶴「提督さんにはこういう面で監視役が必要よね」 提督「……という訳だ。安心してくれ」 川内「あっはっは! 提督、尻に敷かれてるねー」 金剛「違いマスよ。心配なだけデス」 瑞鶴「提督さんを尻に敷ける人って居るのかな……」 神通「私は想像できませんね……」 川内「右に同じ。大事にしてくれるけど、どっちかと言えば亭主関白っぽい」 神通「私は頼りになる旦那様というイメージがあります」 金剛「私も神通と同じデース」 瑞鶴「……なんだか、お父さんって感覚が強いかなぁ」 川内「なるほど、確かにお父さんって雰囲気もあるよね」 980 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/29(火) 00:50:50.19 ID:xBU8Dc6k0 提督「亭主関白やら旦那様やらお父さんやら……。私も随分と面白いように扱われて──」 提督「────…………」 金剛「…………」 瑞鶴「…………」 神通「あの……どうかしましたか?」 川内「ん? ……なんだろう、あれ」 瑞鶴「提督さん、偵察機飛ばすね」 提督「頼んだ。敵の場合は爆撃して構わない」 瑞鶴「了解」 神通「……皆さん、よくあれに気付きましたね」 提督「川内はともかく、二人は一番経験が多いからな」 瑞鶴「その艦娘と同じくらい索敵ができる提督さんも充分、人間離れしてるわよね」 提督「お前達と同じく海に出ているからな。嫌でも目と勘が良くなる」 金剛(少なくとも毎回、私より先に敵を見つけてマスけどね) 999 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/29(火) 03:14:37.81 ID:xBU8Dc6k0 戦姫「私達の日常をご覧頂こう」 ヲ級「いただこー」 戦姫「……喋れたのか、翔鶴」 ヲ級「残ったレスを埋める為に作者が許可してくれたのー」 戦姫「メタだな。だが、たった2レスしかないが大丈夫なのか?」 ヲ級「大丈夫なんじゃないのかなー。だって叩かれるのは作者だもん」 戦姫「それもそうだな」 ヲ級「という訳で、私達の日常を紹介するねー」 1000 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/29(火) 03:27:34.55 ID:xBU8Dc6k0 戦姫「ここは私と翔鶴の部屋だ。彼のご好意で貸し与えてくれた」 戦姫「主に私はここで、本を読みながら彼の指示を待っている」 戦姫「……それだけだ。寂しいって言うんじゃない!!」 ヲ級「私はこの部屋に留まらず、色々な場所を歩いてるよー」 ヲ級「この前は電ちゃんって子が一生懸命話し掛けてきてくれたねー」 戦姫「……そういえば、翔鶴は艦娘を相手にして憎くなったりしないのか?」 ヲ級「するよ? だから逃げてるの」 戦姫「……優しいな」 ヲ級「だって楽しい事の方が良いでしょー?」 ヲ級「それで、私はこの鎮守府の事をあまり憶えてないから色々な場所に踏み込んで遊んでるのー」 ヲ級「最近だと、ボイラー室は熱かったなー」 戦姫「……どこまで深く入ったんだお前は」 ヲ級「最深部まで」 戦姫「阿呆かお前は!!」 ヲ級「えー……」 戦姫「……なんだ、その『お前に言われたら終わりだ』とでも言いたそうな目は」 ヲ級「バレた?」 戦姫「ちょっとはオブラートにでも包んでくれない!? 結構傷付くのよ!?」 ヲ級「オブラートに包むのは砂糖だけで良いってあの人が言ってたよー」 戦姫「それとこれとは話が違う!!」 ヲ級「まあ、そんなこんなでこの鎮守府で行ってない場所はほとんど無いよー」 ヲ級「あ、でも一つだけ行ってない場所があるかなー」 戦姫「ほう? どこだ?」 ヲ級「蜜事を交わしている提督と艦娘の──」 戦姫「行くな!! 頼むから行ってやるな!!!」 ヲ級「でも、楽しそうだよー?」 戦姫「そんなはしたない事をしちゃいけません!! メッ!」 ヲ級「いつかアプローチを掛けても良いかもねー?」 戦姫「……どうやって?」 ヲ級「え?」 戦姫「翔鶴、お前本編では喋れないだろう」 ヲ級「…………」 ヲ級「裸になって押し付けるとか?」 戦姫「痴女かお前は」 ヲ級「えー…………」 戦姫「……ああ分かっているさ!! 言いたい事は分かる!! だが、仕方が無いだろう!? なぜか服が消えるんだから!!」 ヲ級「本当になんでだろうね?」 戦姫「もう、そういうものなんじゃないかな……諦めたよ……」 ヲ級「じゃあ、もう改行できなくなるからおしまいねー。ばいびー」 戦姫「まともに紹介できてないじゃないか……。それでは皆さん、また本編で」 3 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/29(火) 03:31:49.99 ID:xBU8Dc6k0 瑞鶴「……あの、提督さん」 提督「どうした」 瑞鶴「信じがたいんだけどさ……あれ、艦娘と人みたい。艦娘に背負ってもらって……」 金剛「ホワッツ!?」 川内「な、なんでそんな事になってるの?」 神通「普通じゃないですよね……」 提督「救助しに行くぞ。全員、私に続け」 金剛「行かせませんよ?」 瑞鶴「提督さんはここで待機してて。海に出たらそれこそ救護妖精さんに睨まれるわよ?」 提督「……分かった。川内、神通はあの二人を救助。金剛と瑞鶴は護衛をしてくれ」 全員「はい!」 ……………………。 4 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/29(火) 03:53:07.34 ID:xBU8Dc6k0 川内「大丈夫ですか!?」 神通「もう安心して下さい。すぐ近くの母港まで私達が運びます」 瑞鶴「二人共ボロボロ……。特に艦娘の子なんて半分沈んでるじゃないの……」 金剛(……見間違えかと思いましたが、当たったみたいですね) 榛名「あり、がとうございます……。私よりも……この方を……」 元帥「いやはや……助かったよ……」 金剛「……ご無事で何よりデス。元帥殿」ピシッ 川内「え!?」 神通「げ、元帥!?」 瑞鶴「!!」 瑞鶴(この人が……提督さんの言っていた元帥……) 元帥「挨拶は構わない……早く、早く陸へ上がらせてくれ……」 ……………………。 5 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/29(火) 03:57:29.74 ID:xBU8Dc6k0 元帥「ああ……ここは君の鎮守府だったかね……」 提督「……元帥殿、よくご無事で」ピシッ 金剛・瑞鶴・川内・神通「…………」ピシッ 提督「まさか、あの日からずっと海へ?」 元帥「ああ……そうだよ……。もうダメかと思ったよ……」 提督「瑞鶴、急遽水分を用意してくれ。川内は担架を二つ持ってきてくれ。神通は救護妖精へすぐに検査ができるように手配してくれ。金剛はここで敵が来ないか警戒だ」 全員「はいっ!」 元帥「ははは……。手際が、良いな」 提督「喋らないで下さい。お身体に障ります」 元帥「くく……。面白い奴め……こんな儂を形式上でも労われるとは……」 提督「…………」 元帥「まあ良い……。一休みをしたら、礼に良い事を話してやろう……」 …………………… ………… …… 14 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/29(火) 12:54:57.53 ID:4VdnLa6t0 救護妖精「──ん。元帥さんは危なかったね。あと数時間も水分が取れなかったら死んでたと思う。あと、意地でも海水に浸かっていなかったのが不幸中の幸いだね。長時間浸かっていたら今頃、その部分を切り落としていたよ。他にも色々と身体に気を遣ってたみたいで、流石は海の軍人さんといった所かね」 救護妖精「それにしても、艦娘は驚きだね。戦闘もこなして三日三晩、ほとんど休まずに動いていたんだろ? それで衰弱程度で収まるなんて、人間じゃ到底無理だよ」 救護妖精「元帥さんは点滴による栄養補給と絶対安静。艦娘は食欲があるなら、消化の良い食べ物を食べてゆっくり休んだら問題ないと思うよ」 提督「そうか。助けてくれて感謝する」 救護妖精「感謝ならあの二人にされたいなぁ。それに、医者が人を助けるのは当たり前でしょ?」 提督「感謝の言葉は素直に受け取っておくものだ」 救護妖精「へいへい」 榛名「あの……助けて頂きまして、ありがとうございます……」モゾ 救護妖精「あれ、もう起きたの?」 榛名「はい……榛名は大丈夫ですから、どうか提督を……」 救護妖精「あっちも大丈夫。今はぐっすり眠ってるよ。充分に身体を回復させたら問題なく動けるようになるんじゃないかな」 榛名「そうですか……良かった……」ホッ 15 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/29(火) 13:19:24.19 ID:4VdnLa6t0 榛名「貴方が……ここの提督さんですか?」 提督「そうだ」 榛名「重ねて、お礼を申し上げます。貴方が助けて下さらなければ……提督は……」 提督「礼は構わん。当然の事をしたまでだ」 榛名「ですが……」 提督「もし本当に感謝しているのなら、早く元気になって、その姿を元帥殿に見せてやるんだな」 榛名「…………」 榛名「……はい。そうさせて頂きます」ニコッ 提督(……ほう) 提督「では、私は提督室へ戻る。何かあったら救護妖精を通じて私に連絡をしてくれ」 救護妖精「えー……面倒臭いなぁ……。まあ、なんでも言ってよ。私は伝えるだけしか出来ないけど」 榛名「はい、ありがとうございます」ニコリ コンコン──ガチャ── 瑞鶴「提督さん、そろそろ休まないと身体に障るわよ?」 提督「ふむ、そうだな。ではそろそろ戻るとしよう」 金剛「出来ればここは私達に任せて休んで欲しかったくらいですけどね」 提督「そうもいかん。この鎮守府での責任者は私だ。元帥殿とその艦娘のご様子を把握しておかなければな」 金剛「それは……そうですけど……」 16 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/29(火) 13:58:27.68 ID:4VdnLa6t0 提督「お前達が心配してくれているのは良く分かっている。今後も私の監視を頼むよ」ポンポン 金剛「あ……はい!」ニコニコ 瑞鶴「…………」 提督「瑞鶴も、頼んだぞ」ポンポン 瑞鶴「──うん!」ニコニコ 榛名「…………」 金剛「えーっと、榛名」 榛名「──あっ……は、はい! お姉様、どうかなされましたか?」 金剛「……違う鎮守府とはいえ、貴女は私の妹です。仕事の合間に顔を覗きに来ますね?」 榛名「で、でも……それは、お姉様の提督さんに許可を貰わないといけないのでは……」チラ 金剛「え? テートク、そうなのデスか?」 提督「そんな制限を設けたつもりはない。仕事以外は基本的に自由だ」 金剛「ですよね? では、これで正式に榛名と面会できますね!」 榛名「…………」 金剛「……榛名?」 榛名「あ……ごめんなさい。ちょっとボーっとしてしまって……」 17 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/29(火) 14:24:42.40 ID:4VdnLa6t0 救護妖精「まあ無理もないよ。ゆっくり休みな」 榛名「はい。そうさせて頂きます……」 金剛「それでは、また来ますね!」 榛名「はい。お姉様、お姉様の提督さん、そして……えっと、瑞鶴さん、救護妖精さん、今回は本当にありがとうございます」 榛名「榛名は、とても幸福です」 提督「…………」 提督「また来た時に、何があったのか話してくれ」 榛名「はいっ」 …………………… ………… …… 18 名前:短かったのでもう一個[sage saga] 投稿日:2013/10/29(火) 14:25:14.09 ID:4VdnLa6t0 〜提督室〜 提督「…………」 金剛「…………」 瑞鶴「あ、あれ……どうしたの二人共。なんだか暗いけど……」 金剛「……榛名、何をされてるのでしょうか」 提督「分からんが、普段は良くない扱いなのだろうな」 瑞鶴「え……元気が無いのはそっちが理由なの?」 提督「そうと見てまず間違いないだろう。あの寂しそうな目がそう語っていた」 金剛「…………提督。カウンセリングという名目で、榛名から何をされているのか聞いた方が良いのでしょうか」 提督「それはしない方が良い。彼女は元帥側の艦娘だ。下手に聞き回ると元帥にも話が渡ってしまう」 金剛「そう、ですよね……」 瑞鶴「困ったわね……」 提督「方法が無い訳ではない」 瑞鶴「そうなの?」 金剛「……榛名と元帥はここに来ていない、という事にする訳ですね?」 19 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/29(火) 14:43:15.88 ID:4VdnLa6t0 提督「そうだ」 瑞鶴「え……それって……」 提督「監禁、または必要な情報を手に入れてからの殺害だ」 金剛「…………やりますか?」 瑞鶴「ちょ、ちょっと金剛さん!? 何を言ってるのよ! そんな酷い事……いくら相手があの元帥だからって……」 提督「考慮はしておく」 瑞鶴「提督さん!?」 提督「あの二人を殺しておく方が何かと都合が良いのは事実だ」 瑞鶴「でも……でも、それは……」 提督「それに、例え放っておいても──」 コンコン── 提督「入れ」 ガチャ──パタン 救護妖精「やあ」 提督「そろそろ来る頃だと思っていたよ」 金剛・瑞鶴「え?」 救護妖精「ああ、じゃあ提督は私の素性を知ってるんだ?」 21 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/29(火) 15:09:46.75 ID:4VdnLa6t0 提督「素性も何も、この鎮守府の妖精達の経歴を見れば分かる事だ」 救護妖精「それもそうだよねー」 金剛「……どういう事ですか?」 救護妖精「んー? あたしは元々、あの元帥の鎮守府に勤めていたのさ」 瑞鶴「え……だったら、どうしてここに……?」 救護妖精「嫌気が差したから異動させてもらっただけだよ。あんな所でずっと働くなんて無理だよ無理」 金剛「……何があったのですか」 救護妖精「あの元帥さ、艦娘を道具としてしか見てないんだよね。だから救護室はいつも満員。おまけにその状態でも構わず、何をやってるのか知らないけど死に掛けにさせている。そのまま解体させるなんて事も日常茶飯事だったよ」 瑞鶴「……死に掛けてる時に解体したら、どうなるの」 救護妖精「死ぬ。例外なく」 金剛「…………」 救護妖精「艦娘は普通の人間よりも強いんだよ。だから、普通の人間なら即死でも大抵の事なら耐えれる。流石に神経系統をやられたら人間と同じだけど、大体は人間より丈夫だよ。でも、その艦娘が死に掛ける程なのに普通の子に戻したらそりゃ死ぬよね」 救護妖精「で、提督さん。アレどうするの? 私としては麻酔を過剰投与したいくらいなんだけど」 29 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/29(火) 17:28:03.95 ID:4VdnLa6t0 提督「どうするかはまだ考えている途中だ」 救護妖精「ふぅん。まあ、私にとって良い返事であれば良いんだけどね」 提督「医者が人を助けるのは当たり前と言っていたのはどこの誰だったか」 救護妖精「あたしは助けられない命まで助けようとは思ってないんでね」 提督「……そうか」 瑞鶴「……助けれない命? さっき身体を回復させたらって……」 救護妖精「アレはもう助からないよ。内臓が死んでる。悪党は長く生きるとは聞いたが、本当にしぶといねぇ」 金剛「では、大丈夫と言ったのは榛名を安心させる為ですか?」 救護妖精「そうだよ。起きているのは分かってたし、艦娘の方はまず助かるからね。変に精神を弱らせて死なせるのは嫌だよ」 救護妖精「それに……いくら悪党でも苦しんで死んでいく姿は見たくないからねぇ……」 提督「だから麻酔で、か」 救護妖精「そうだよ。眠るように死んでいく。一番苦しくない殺し方さ」 30 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga] 投稿日:2013/10/29(火) 18:01:37.69 ID:4VdnLa6t0 救護妖精「どれくらい生き延びるのかは知らないけど、必要な事を聞き出す時間くらいは待ってやるよ」 提督「感謝するよ」 救護妖精「あたしはやりたい事をやる主義なんでね。……どっかの提督さんはそれに優しさが混じってるみたいだけど」 提督「では似た者同士というわけか」 救護妖精「やめとくれ。あたしはこれから人を殺すんだ。提督は人を生かしてやってくんないかい」 提督「私もこれから艦娘を殺すんだ。似た者同士だよ」 金剛「っ……」 瑞鶴「こ、殺すの……?」 提督「精神的に死ぬ。あれだけ主人想いの子だ。事実を話せばいずれ衰弱して死ぬだろう」 救護妖精「榛名って艦娘は皆そうだよねぇ。主人想いって言うか依存しているって言うか」 金剛「榛名……」 提督「現実だ。辛いだろうが、受け入れてくれ」 金剛「…………もし、榛名が亡くなったら……その時は……提督、私を助けて下さい」 31 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/29(火) 18:27:13.51 ID:4VdnLa6t0 提督「約束しよう」 提督「しかし……元帥が死ぬ、か。必要な情報が手に入る前に死なれたら困るな」 救護妖精「そこはアレに任せるしかないね」 瑞鶴「…………」 救護妖精「さてと、それじゃあ私は帰るよ。──ああ、艦娘の子から総司令部へ、アレが生きているって伝えてくれと頼まれたけど、どうするよ」 提督「伝える準備をしている最中だと言ってやってくれ」 救護妖精「……本当に、優しい悪党だね提督」 提督「お互い様だ」 救護妖精「んじゃ、アレが起きたらまた来るさ。またねー」 ガチャ──パタン── 提督「方針は決まったな。元帥から情報を聞いた後、安楽死させる。元帥の艦娘は……そうだな、二つの方法がある」 提督「私はあの子も助かるとは思っていない。だが、万に一つというものもある。時間を掛け、ゆっくりと事実を知らせるか、ハッキリと伝えてしまうか」 金剛「…………」 提督「お前の前でこんな話をするのは酷だと思うが、現実だ。すまない」 金剛「いえ……戦争をしているのですから……当たり前です……。榛名があの人の下へ来てしまったのが最大の不幸だったのです……」 32 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/29(火) 18:45:02.28 ID:4VdnLa6t0 提督「おまけに艦娘は一人の提督にしか主人と認めない。生かしてやれるかは分からないが、やるしかない」 瑞鶴「……どうにもならないの?」 提督「自白剤でも打って、無理矢理にでも私が提督だと刷り込めばなんとかなるかもしれないが、前例が無いから可能性は限りなく低い」 瑞鶴「なんで自白剤?」 提督「自白剤は脳の働きを鈍くする薬だ。朦朧としている中で何度も何度も『榛名の提督は私だ』と語れば、いずれそれが真実だと思い込む可能性もある」 金剛「でも、自白剤って効くのでしょうか……。提督への刷り込みがとても強い艦娘が刷り直しが出来るとは思いにくいのですが……」 提督「私も同意見だ。だが、可能性がゼロという訳でもない。短時間に何度も語られると、その言葉が本当に聞こえてくるようになるものだ」 提督「やらずに死なせてしまうのなら、やって死なせてしまう方が精神的に楽だろう」 金剛「……そうですよね。でも、それって物凄く悲しい事です……」 提督「殺すか洗脳か……どちらか一つなら、私は洗脳を選ぶよ」 33 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/29(火) 18:59:16.52 ID:4VdnLa6t0 瑞鶴「洗脳……」 提督「あの手のタイプはいくら説得をしても無駄だろう」 金剛「私もそう思います……。あの子、依存しちゃう子ですから……」 瑞鶴「どうしようもないのかなぁ……」 提督「すまない。私には刷り込ませる以外、思い付かない」 金剛「……もし、刷り込むとして、それをより確実に近付ける方法はないのでしょうか」 瑞鶴「うーん……」 提督「……ふむ」 金剛「あるのですね、提督」 瑞鶴「え?」 提督「……本当にお前には隠し事がしにくいな」 金剛「教えて下さい。その方法を」 提督「…………」 金剛「提督……」 提督「……より正常な判断が下せず、より強い朦朧状態で刷り込む。それぐらいだろう」 51 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/29(火) 21:57:25.71 ID:1xfb9nzb0 瑞鶴「より強い朦朧状態……? 薬を増やすの?」 提督「それが一番手っ取り早いが、自白剤も大量に与えれば死んでしまう。艦娘だから人間の致死量程度では死なないだろうが、それでも危険なのは変わりない」 瑞鶴「じゃあ、どうするの?」 提督「……理性をほぼ壊れた状態にし、尚且つその理性の部分も私を対象とさせての刷り込み」 金剛「ごめんなさい提督……。私達にも分かるように説明して下さい……」 提督「…………自白剤と瑞鶴の持っている催淫剤を使って彼女の理性を崩壊させた上での刷り込み」 瑞鶴「ぁー……」 金剛「…………」 提督「できればやりたくない」 瑞鶴「……でも、確かにあの状態で何かを言われたら、それをそのまま受け入れちゃうかも」 金剛「そうなのですよね……。でも、榛名とえっちは……その……」 瑞鶴「ねー……」 提督「何もすると決まった訳ではない。現に、私はするつもりがない」 金剛「……その時が来るまでに、覚悟をさせて下さい」 瑞鶴「私も……。金剛さんなら良いけど、他の人だと……」 提督「二人の意思に任せよう。それでは、職務に──」 金剛「私達がやるので寝ていて下さい」 瑞鶴「私達がやるんだから寝ててよね」 提督「……分かった。大人しく寝ておくよ」 …………………… ………… …… 53 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/29(火) 22:28:26.62 ID:1xfb9nzb0 金剛「テートク、テートク」ユサユサ 提督「む……」 瑞鶴「提督さん、起きた?」 提督「ああ。何かあったか?」スポ 救護妖精「アレの目が覚めたよ」 提督「分かった。すぐに行く」 救護妖精「まったくあのジジイめ……提督が休めやしないじゃないか……」 ……………………。 提督「二人で話とは、何があったのでしょうか?」 元帥「死に行く儂から、最後に君への礼をしようと思ってな……」 提督「ご冗談を。回復すればいつものように──」 元帥「既に儂は目が見えていない。自分の身体だ。何が起こっているのか分かっておる」 提督「……左様ですか」 元帥「だから、今の海軍では二人しか知っていない情報を君に言おうじゃないか」 提督「良いのですか、そのような機密情報を……」 元帥「君にだから言う必要がある」 提督「…………」 54 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/29(火) 23:07:23.15 ID:1xfb9nzb0 元帥「くく……。少しは礼をせねば人として終わってるというものだ」 元帥「時間が無いので簡潔に言おう。まず、ドクターという名前を覚えておけ」 提督「ドクター?」 元帥「彼が、君に関する最大の、秘密を知っている……。まず……君の所有している瑞鶴、恐らくだが……あれは、君の──か……」 提督「……元帥殿?」 元帥「ぉ…………く……だ…………」 提督「元帥殿、お気を確かに」 元帥「…………」 提督「……………………」スッ 提督「……脈が止まったか」 提督(なんと言おうとしたんだ……。私と瑞鶴の最大の秘密……?) ……………………。 61 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/29(火) 23:32:22.82 ID:1xfb9nzb0 救護妖精「……うん。完全に死んでるね」 提督「…………」 救護妖精「話は出来たかい?」 提督「重要な事を言う時に逝かれたよ。手掛かりが一つ手に入っただけだ」 救護妖精「……そうかい。呆気ないもんだね、死は……」 提督「…………」 救護妖精「幾度となく人の死は見てきたけど、中々慣れないもんだよ……」 救護妖精「せめて、私がこの手で殺したのなら、慣れたのかもしれないというのに……」 提督「殺さなくて良い。その手は命を救う手だ。殺す為の手ではない」 救護妖精「……そうなんだけどねぇ。救える命も限りがあるんだよ……」 提督「…………」 救護妖精「──さ、早く行きな。ここからは専門家の仕事だよ。提督もこうならないようにしっかり休みを取りな」 提督「……ああ。──そうだ。『ドクター』という名前に聞き覚えはあるか?」 救護妖精「うん? 私と一緒にコレの下で働いていた医者だよ」 提督「他に何か知っているか?」 救護妖精「いいや。特に接点が無かったから他に何も知らないよ」 提督「そうか……。ありがとう」 救護妖精「何か分かった事があったら教えてやるさ」 提督「期待しないで待っているよ」 救護妖精「ああ、あの子にはなんて言えば良い?」 提督「危険な状態だったが一命を取り留めたと言ってくれるか」 救護妖精「あいよ。……まったく、私達は悪党だね」 提督「ああ……」 ……………………。 62 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/30(水) 00:04:33.72 ID:/W1Sw00T0 ガチャ──パタン 榛名「あのっ! 提督は大丈夫なのですか!?」 提督「少し危ない状態らしい。私も途中から追い出された」 榛名「入る訳には……いきませんよね……」 提督「救護妖精が出てくるまで待っていた方が良い。邪魔をして大変な事になったら取り返しが付かなくなる」 榛名「はい……」 提督「私もここで待つとしよう」 金剛「……提督?」 瑞鶴「ちゃんと寝てないとダメよ」 提督「上官が命の危機だと言うのにのんびり眠っている者は居ないだろう」 瑞鶴「だけど……」 提督「…………」チラ 金剛「!」 金剛「瑞鶴、私達はここを離れまショウ」 瑞鶴「金剛さん……?」 金剛「私達はまだ仕事が残っていマス」 瑞鶴「え、ちょ……え?」 金剛「ほらほら、行きますヨー」 63 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/30(水) 00:12:59.92 ID:/W1Sw00T0 提督「……すまないな。煩くしてしまった」 榛名「いえ……大丈夫です……」 提督「…………」 榛名「…………」 提督「………………ふぅむ……」 榛名「あの……何か悩んでるようですが、どうかなさいましたか?」 提督「ん……ああ……すまない。気を遣わせてしまったな」 榛名「いえ……」 提督「……さっきの元帥との会話で気になる事があってな」 榛名「気になる、こと……? あの……お二人で話されていた……?」 提督「そうだ。私にだから話す必要があると仰っていた」 提督「…………」チラ 榛名「え……私……に何か関係が……?」 提督「ああ……」 榛名「え、あ、あの! 提督はなんて!?」 提督(──食いついた) 提督「洗脳の技術、というのを聞いた事はあるか?」 榛名「洗脳……? いえ……」 提督「そうか……」 榛名「…………」 提督「…………」 榛名「あの──」 提督「聞かない方が良い」 64 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/30(水) 00:31:11.91 ID:/W1Sw00T0 榛名「え……?」 提督「世の中には、知らない方が良い事もある」 榛名「え……? え…………?」 榛名「洗脳……? え…………わた、し……?」 榛名「あの……ど、どういう……」 提督「…………」 榛名「お、お願いします!! 話して下さい!」 提督「だが……」 榛名「覚悟はします……だから……だか、ら…………」 提督「…………」 提督「……時が来たら、話そう」 榛名「今、では……ダメですか……?」 提督「……ダメだ。今のお前は精神が不安定だ」 榛名「不安定、だと……ダメなのですか……?」 提督「…………」 榛名「あの……」 提督「この話はここで終わりだ」 65 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/30(水) 00:41:55.66 ID:/W1Sw00T0 榛名「あ、あの……!」 提督「…………」 榛名「い、嫌な、考えが……だか、ら……おねが……しま、す……」 提督「………………いずれ、必ず話す」 榛名「でも……で、も……!」 提督「……寝よう。今の状態は良くない。それでは元帥殿が元気になられた時に困られる」 榛名「そ……ですけ、ど…………」 提督「こういう時は、一度頭を冷やしなさい」 榛名「は、い……」 提督「良い子だ」ナデナデ 榛名「ッ!!」ビクッ 提督「……すまない」 榛名「ぁ…………!」ビクビク 提督「……部屋に案内する。立てるか?」スッ 榛名「ひっ……!」ビクッ 提督「…………仕方が無い。抱き上げるが、少し我慢してくれ」ヒョイッ 榛名「────っ!!」カタカタ 提督「…………」 榛名「ッ…………!」カタカタ 提督「…………」ナデナデ 榛名「あ、あぁ……!」ビクビク ……………………。 67 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/30(水) 00:54:34.09 ID:/W1Sw00T0 提督「ここが君の貸し部屋だ。自由に使って良い。この部屋の鍵とこの鎮守府の地図はこれだ」スッ 榛名「…………」 提督「ゆっくり寝なさい。そうすれば、少しは落ち着くはずだ」 榛名「あ、の……」 提督「なんだ」 榛名「ひっ……!」ビクッ 提督「……すまない。この口調は怖がらせてしまうようだな」 榛名「ごめん、なさい……! ごめんなさい……ごめんなさい……!」ビクビク 提督「また、明日にでも話そう」スッ 榛名「…………!」カタカタ 提督「では、失礼する。鍵はちゃんと閉めておくように」 ガチャ──パタン 榛名「!」タタタ─カチャッ 榛名「……はっ……はっ…………!」 榛名「たたか、れなかった……? どうして……?」 榛名「あの人、は……叩かない人……?」 …………………… ………… …… 104 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/30(水) 17:56:07.73 ID:/W1Sw00T0 ガチャ──パタン 救護妖精「今入ってくるんじゃないよ。帰りな」 提督「私だ。相談があって来た」 救護妖精「ん? ああ、提督。なんだい?」ヒョコ 提督「その死体と、あとは榛名についてだ」 救護妖精「ふぅん。この死体はどこに捨てる気なんだい?」 提督「海にでも流すさ。魚の餌くらいにはなるだろう」 救護妖精「自然葬ってやつかい。珍しいね。だけど、それって大丈夫なの?」 提督「死体の捜索なんてされていない。もし見つかっても、海へ逃げ出したが途中で力尽きたと判断されるだろ う」 救護妖精「あたしが言ってるのはそうじゃないよ。誰がどうやって海へ流すかだよ」 提督「私が担いで流す。幸い、沖へ流れている海流が近くにある」 救護妖精「……呆れた。安静にしてろって私は言わなかったっけ?」 提督「危険な橋を渡るんだ。これくらいの危険は冒さなければな」 救護妖精「まったく……この自殺志願者が」 提督「死ねない理由があるんだ。死なんよ」 救護妖精「……何を言っても無駄みたいだね。だけど、あの子にはどう説明するのよ」 提督「海へ流してくれという遺言があったと言い包めておく」 救護妖精「そんなので納得するのかねぇ……」 提督「するかどうかではない。させるんだ」 救護妖精「……提督、何をする気?」 105 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage saga] 投稿日:2013/10/30(水) 18:13:28.50 ID:/W1Sw00T0 提督「勘が良いようだな。私は、一度あの子を壊す」 救護妖精「…………」 提督「壊れた心を騙し、私が本当の提督だと刷り込む」 救護妖精「一筋縄じゃいかないよ」 提督「百も承知。助けれる可能性があるならば、私はそれに賭けるだけだ」 救護妖精「……残酷だね」 提督「なんとでも言うが良いさ」 救護妖精「解体して普通の女の子にする気は?」 提督「解体報告をしなければならない。特にあの元帥の艦娘だ。解体した艦娘を無断で所持しているとバレた時 はどうなる事か」 救護妖精「匿っても同じじゃないか」 提督「新たに仲間に加わったと報告すれば良い事だ」 救護妖精「バレる可能性もあるよ」 提督「問題ないように刷り込ませる」 救護妖精「……そこまでして死なせたくないか」 提督「ああ」 救護妖精「……分かったよ。私も腹を括る」 提督「すまない」 救護妖精「そこはありがとうと言って欲しいね」 提督「……ありがとう」 救護妖精「似合わないねぇ」 提督「自覚している」 106 名前:余ってたのでもう一個[sage saga] 投稿日:2013/10/30(水) 18:14:20.71 ID:/W1Sw00T0 救護妖精「それじゃあ、そういう風に動くさ。ヘマするんじゃないよ」 提督「お前もな」 救護妖精「職業柄、人を騙すのは得意なんでね」 提督「それは怖いな。いつか色々と教えて欲しいものだ」 救護妖精「時が来たらね」 提督「楽しみにしているよ」 …………………… ………… …… 107 名前:ちょっと実験[sage saga] 投稿日:2013/10/30(水) 18:26:57.36 ID:/W1Sw00To 提督「──説明は以上だ。巻き込んでばかりですまないが、協力してくれ」 金剛「本当にやるのですね……」 提督「依存先を失った者を救うなら、新たに依存先を作ってやるのが一番だ」 瑞鶴「平たく言うと、死なせたくないから自分がその依存先に買って出るって事よね、提督さん」 提督「そう言うと聞こえは良いが、やってる事は心を壊して都合の良いように作り直すだけだ。悪党のやる手段だよ」 瑞鶴「でも……私は、提督さんのやる事は悪だと思わない」 提督「そう思ってくれる人が居るだけで、私の心も少しは楽になる」 金剛「…………」 瑞鶴「金剛さん」 金剛「──あ……なんでしょうか」 瑞鶴「私は、覚悟を決めたわ」 金剛「…………」 瑞鶴「後は金剛さんの同意で、この小瓶を提督さんに渡す──けど、金剛さんが望まないのなら、これは私が預かったままにする。勿論、まだその段階じゃないから考える時間はあるわ」 金剛「……………………」 108 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/10/30(水) 18:41:58.12 ID:/W1Sw00To 提督「……一先ず、この話はここで終わろう」ツカツカ 瑞鶴「そうしましょ。──って、ほらほら、提督さんは寝てなさい」グイグイ 提督「む……。当然のように机へ足を運べばバレないと思ったのだが……」 瑞鶴「そんな事はお見通しですよーだ」 提督「有能過ぎる部下も考え物か」 瑞鶴「もう慣れましたっ。提督さんはすぐに働こうとしちゃうんだもの」 金剛「…………」 金剛(私は……どうすれば良いのでしょうか……) …………………… ………… …… 109 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/10/30(水) 18:57:59.36 ID:/W1Sw00To 提督(……夜も深くなったな。行くか) ……………………。 コンコン──ガチャ 救護妖精「ん? ああ提督、流すのかい?」 提督「ああ。遺体はどこに?」 救護妖精「奥の部屋に置いてるよ」 提督「そうか。そこの窓から外に出るが構わないか?」 救護妖精「提督が良いのならあたしは構わないよ」 提督「助かる。……迷惑を掛けるな」 救護妖精「だったら今度、奢ってくれるかい?」 提督「良いだろう。アイスクリームでも牛肉でも、好きな物を奢ってやる」 救護妖精「太っ腹だねぇ」 提督「私が完全に巻き込んだ形だ。このくらいしてやらないとな」 救護妖精「くっくっ。巻き込んだ、か」 提督「おかしいだろう?」 救護妖精「ああ、おかしいねぇ」 111 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/10/30(水) 19:10:38.84 ID:/W1Sw00To 提督「いずれ、話してくれるのを期待しているよ」 救護妖精「おや、期待していなかったんじゃ?」 提督「確信を持ったからな」 救護妖精「人を騙すのは得意なんだけどねぇ」 提督「充分だろう」 救護妖精「まあ、あたしの事は置いておいて、さっさと行ってきな」 提督「そうだな。見つかったら大変だ──っと」 救護妖精「いってらっしゃい。死ぬんじゃないよ」 提督「私が死ぬように見えるか?」 救護妖精「見えるね」 提督「そうか」 救護妖精「……私には、そう見える」 提督「一人称」 救護妖精「おっと。危ない危ない」 提督「何回目だろうな。気を付けた方が良いんじゃないかね?」 救護妖精「仰るとおりで」 提督「では、一時間もしない内に戻ってくる」 救護妖精「あいよ」 救護妖精(……無理して『あたし』って言ってるのも分かってた? まさかね……) ……………………。 112 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/10/30(水) 19:24:13.30 ID:/W1Sw00To 提督「……ここら辺りだったな」ソッ ぱしゃっ── 提督「……哀れだな、元帥。だが、これもお前が進んだ道の末路だ。そのまま海を漂って還れ」 戦艦ル級「…………」チャポン 提督「!! こんな時に沸いて出て──!?」 深海棲艦群「…………」ザバァァァ 提督「ちっ………………私もここで海に還る末路か」 戦艦ル級「…………」ジッ 提督「…………?」 戦艦ル級「…………」フイッ 提督「襲ってこない……?」 ジャキン──ドッ──パァアアンッッ!! 提督「……おいおい。そんな物で人を撃ったら粉になるぞ」 戦艦ル級「…………」チラ 提督(来るか……?) 戦艦ル級「…………」フイッ 提督「……行ってしまった。どういう事だ……? 深海棲艦は人も襲うと聞いたが……」 ……………………。 113 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/10/30(水) 19:39:28.64 ID:/W1Sw00To 提督「よっ──と。今帰った」 救護妖精「ん、おかえりー」 提督「冷や汗を掻いたよ。まさか深海棲艦の群れが沸いて出てくる所に出くわすとは思わなかった」 救護妖精「…………へぇ。よく生きて帰って来れたね」 提督「なぜか襲われなくてな」 救護妖精「運が良いね。いや、正しい判断だったというべきかな?」 提督「その先は秘密、か?」 救護妖精「まだその時じゃないと思ってるからね」 提督「ふむ。いつになったらその時が来るのやら」 救護妖精「たぶん、すぐじゃないかね」 提督「ほう。楽しみだ」 救護妖精「あたしは怖いね。──ところで、アレ、ちゃんと流れていったのを確認したんだろうね?」 提督「流れる前に粉になったよ」 救護妖精「粉……? 砲撃でも撃たれたの?」 提督「先程言った、深海棲艦によってな」 救護妖精「ふぅん……」 救護妖精「まあいいや。それよりも早く寝な。病人がいつまでも起きてるんじゃないよ」 提督「厳しいな。また来るよ」 救護妖精「またねー」 …………………… ………… …… 115 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/10/30(水) 19:54:35.43 ID:/W1Sw00To 提督「ん?」 榛名「あ……」 提督「どうした、こんな時間に」 榛名「あの……一度眠ったのですが、起きてしまいまして……」 提督「それで私の部屋へ?」 榛名「はい……。心も落ち着いてきたので、夕方のお話を聞きたいと思って……」 提督「なるほど。……確かに落ち着いてきているようだ。入りなさい」 榛名「は……はい……」 ガチャ──パタン──パチッ 榛名「…………」ビクビク 提督「さて、そこのソファに腰掛けなさい」 榛名「え……?」 提督「うん? どうした?」 榛名「あ、いえ……よろしいのですか……?」 提督「何を遠慮しているのか分からないが、私は私だ。元帥殿とは違う」 榛名「…………はい……」 提督「そうだな、喉が渇いた。紅茶を淹れよう」 榛名「は、はい!!」ビクッ 提督「いや、君は座っているように。客人にお茶を淹れさせる訳にはいかない」 榛名「そう、なのですか……?」 提督「うむ」 榛名「…………」ホッ 提督(まったく……普段はどんな扱いをされていたというんだ……) 提督(……人の事を言えないな。これから、この子を壊すのだから) ……………………。 131 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/10/30(水) 21:03:29.83 ID:/W1Sw00To 榛名「美味しい……!」 提督「そうか。喜んでもらえたようで嬉しいよ。スコーンもある。早めに食べておかないといけないから、好きなだけ食べてくれ」 榛名「あ……えと……」 提督「うん?」 榛名「……………………」コクン 榛名「こ、これって……どのように食べるのでしょうか?」ビクビク 提督(ああ、本当は『食べても良いのか』と聞こうとしたのか) 提督「これはクリームとジャムを付けて食べるものだ。イギリスでは紅茶に欠かせない茶菓子らしい」 榛名「イギリス……金剛お姉様の?」 提督「うむ。金剛も顔を綻ばせて口に運んでいたよ」 榛名「お姉様も……」 提督「特にクリームが濃厚らしく、たっぷりと乗せていたな」 榛名「…………」オソルオソル 提督「…………」ズズッ 榛名「…………こ、このくらいですか……?」チラ 提督「さて……実は、私は適量を知らないんだ」 榛名「そう、なのですか?」キョトン 133 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/10/30(水) 21:23:34.24 ID:/W1Sw00To 提督「私は甘い物が苦手でね。金剛はそれよりも多く付けていたと記憶しているよ。自分が丁度良いと思える量で食べると良い」 榛名「は、はい……」サクッ 榛名「────!! こ、これ! 凄く美味しいです! 甘くて、なめらかで、とても濃厚で、スコーンもサクサクしていて!!」 提督「ははは。はしゃいでしまうくらいに美味しかったようだ」 榛名「あ……ご、ごめんなさい!」ビクッ 提督「いや、喜んでいる姿を見るのはとても気分が良い。嬉しい時は嬉しいと言っても良いんだよ」 榛名「……はい」ニコッ 提督「私はこういうお菓子が作れないから、作れる人は凄いと思うよ」 榛名「お菓子は作るのが難しいと聞きます。分量や工程を少し間違っただけで、すぐにダメになってしまうようです」 提督「少し間違うだけで、か」 榛名「はい。私は一度シュークリームを作った事があったのですが、うまく膨らまなくて、とてもシュークリームとは言えない物が出来てしまいました……」 提督「ふむ……。料理よりも難しいのか?」 榛名「そうですね……。一概には言えませんが、私はお菓子の方が難しかったです」 提督「……私は永久に作れそうにないな」 榛名「そんな事はありません! きっと、作れるようになります!」 134 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2013/10/30(水) 21:41:03.31 ID:/W1Sw00To 提督「私は卵と塩で、ドス黒い虹色をした玉子焼きを作ってしまう」 榛名「え?」 提督「勿体無いので食べてみたが、表現できない味がし、気付いたら一時間も時が進んでいたよ。野良犬に食わせてみたら泡を吹いて痙攣していたな」 榛名「え、えーっと……」 提督「なに、気にする事はない。それ以降、劇物は作らないようにしている」 榛名「げ、劇物ですか……」 提督「それ以外に当て嵌まる言葉は無かったな。実際に食べていたら、間違いなく私と同じ事を言う」 提督「ん。手を止めずに話を聞きながら食べても良いぞ?」 榛名「えっ──あ、良いの、ですか……?」 提督「ここまで幸せそうに食べる子も珍しくてね。見ていてこっちも幸せになった。もっとあの笑顔を見せてくれ」ニコ 榛名「──ありがとうございます!」 榛名「〜〜〜〜♪」サクサク 提督「美味しいかい?」 榛名「はい♪ とっても!」ニコニコ 提督(なんだ。ちゃんと明るい子じゃないか) 提督(これからこの子を壊す……か。心が痛むな……) ……………………。 136 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/10/30(水) 21:58:46.69 ID:/W1Sw00To 榛名「ご馳走様でした。ありがとうございます」ペコ 提督「良い顔だった。私も楽しめたよ」 榛名「……本当、ですか?」 提督「うむ」 榛名「良かった♪」ニコニコ 提督「……すっかりと落ち着いた所で悪いが、本題に入ろう」 榛名「あ…………はい……」 提督「その前に、燭台に火を付けよう」ヒョイ 榛名「燭台に……?」 提督「蝋燭程度の光なら、もし泣いてしまっても分かりにくいだろう?」シュッ 榛名「あ……」 提督「さて、電気を消すよ」 パチッ── 榛名「……暗いですね」 提督「だが、光はある」 榛名「はい。優しい光だと、思います……。不思議と落ち着きます……」ボー 提督(蝋燭の揺らめきは心を開かせやすい状況を作る。……本当に悪党だな、私は) 提督(それにしても、既に薬の効果が出ているな……が、もう少し待つとしよう) 提督「では、話そう」 榛名「……はい」 138 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/10/30(水) 22:21:12.80 ID:/W1Sw00To 提督「……聞く覚悟はあるか?」 榛名「……はい」 提督「艦娘の洗脳……いや、刷り直しと言おう。洗脳という言葉は生々しい」 榛名「…………」 提督「君は、鳥の雛の刷り込みを知っているか?」 榛名「いえ……」 提督「一部の鳥の雛は、初めて目に映った動く物を親だと思い込む習性があるらしい。艦娘が、初めに提督と認めた者を絶対の主人として見るように」 榛名「…………」 提督「…………」 榛名「…………」 提督「蝋燭の火を見詰めろ」 榛名「…………」ボー ゆらゆら……。 提督「君の提督を答えてくれ」 榛名「元帥様……です……」 提督「間違いないか?」 榛名「はい……」 提督「…………」 提督「元帥は、君の本当の提督ではないと仰っていた」 榛名「…………」 提督「言っている意味が分かるか?」 榛名「はい……」 139 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/10/30(水) 22:34:42.17 ID:/W1Sw00To 提督「まず、元帥殿は洗脳について語られた。詳しくは仰られていないから推測になってしまう箇所もある」 榛名「…………」 提督「榛名の提督は元帥ではない」 榛名「…………」 提督「榛名の提督は元帥ではない」 榛名「ちが……います……」 提督「繰り返せ。榛名の提督は元帥ではない」 榛名「ち、がいま……す……」 提督「繰り返せ。榛名の提督は元帥ではない」 榛名「ち、が……い──」 提督「繰り返せ。榛名の提督は元帥ではない」 榛名「ち…………が……」 ……………………。 提督「繰り返せ。榛名の提督は元帥ではない」 榛名「は、るなの……提督は……………………」 提督「榛名の提督は元帥ではない」 榛名「はる…………なの……提督、は…………………………」 ……………………。 提督「榛名の提督は元帥ではない」 榛名「榛名……の、ていと、くは……元帥……では、な、い……」 提督「榛名の提督は元帥ではない」 榛名「はる、なの提督は……元帥、では……ない……」 ……………………。 提督「榛名の提督は元帥ではない」 榛名「榛名の、提督は……元帥では、ない……」 提督「榛名の提督は私だ」 榛名「榛名の……提督は……貴方…………?」 提督「榛名の提督は元帥ではない」 榛名「榛名の提督は……元帥で、はない……」 提督「榛名の提督は私だ」 榛名「はる、なの提督は……貴方……」 ……………………。 144 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/10/30(水) 22:48:24.34 ID:/W1Sw00To 榛名「榛名の提督、は……貴方…………」 提督(そろそろ薬の効果が薄まる頃か) 提督「目を閉じろ」 榛名「…………」スッ 提督「身体を楽にするんだ」 榛名「…………」クタッ 提督「そのまま、意識が遠くなる」 榛名「…………」 提督「寝よう。おやすみ、榛名」 榛名「おや……すみ…………」 ……………………。 145 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/10/30(水) 23:01:31.85 ID:/W1Sw00To 榛名「う……」 榛名(なんだろう……頭がボーっとする……) 提督「ん……起きたか」モゾ 榛名「え……? あれ……ここは……」 提督「なんだ、寝惚けているのか? 私とお菓子の話をしている途中で眠ってしまっただろう」 榛名「え……でも………………あれ……毛布…………?」 提督「風邪を引きそうだったから掛けておいた」 榛名「あ……ありがとうございます……」 榛名「…………」 榛名「あの……」 提督「うん?」 榛名「怖い、夢を見ました……」 提督「夢?」 榛名「身体が揺ら揺らしていて、頭の中で、ずっと呟いているんです……」 榛名「榛名の提督は、元帥ではない……と……」フルフル 提督「…………」 榛名「あの……これってどういう事なのでしょうか……?」 提督「……まだ寝惚けているようだな。寝た方が良い」 榛名「え、でも……」 提督「ほら、目が半開きだ」ヒョイ 榛名「あ…………」 146 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2013/10/30(水) 23:13:14.21 ID:/W1Sw00To 提督「部屋まで送ろう。このまま歩かせると転びそうだ」スタスタ 榛名「あ、あの……」フルフル 提督「うん?」 榛名「……一緒に、眠っても……良いですか?」フルフル 提督「……どうした?」 榛名「とても……とても、不安なんです……。心が……壊れてしまいそうなくらいに……」フルフル 提督「…………」 榛名「お願い……します……」フルフル 提督「……分かった」スタスタ 提督「──よいしょ」ソッ 榛名「あ…………」 提督「うん?」 榛名「い、いえ……なんでもありません……」 提督「そうか。じゃあ、私はこっちのソファで寝る」 榛名「え……? 一緒に、ではないのですか?」 提督「……榛名がそうしたいのなら、構わないが」 榛名「……………………お願い、しても良いですか……?」フルフル 147 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/10/30(水) 23:22:50.20 ID:/W1Sw00To 提督「分かった」 榛名「ありがとうございます……」ホッ 榛名(あれ……なぜでしょうか…………凄く安心します……) 提督「では、失礼する」モゾモゾ 榛名「…………あれ?」 提督「どうした」 榛名「あ……い、いえ……なんでもありません」 榛名(後ろを向いてるのは、私を気遣ってくれてるのでしょうか……?) 榛名「…………」ソソッ 榛名(大きな背中……それに、温かい……) 提督「…………」 榛名「……ありがとうございます。おやすみなさい……」 提督「おやすみ」 榛名(なぜでしょうか……なぜ、こんなに落ち着くのでしょうか……) 榛名(な、ぜ……)スゥ 提督(…………痛いな、心が) …………………… ………… …… 158 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] 投稿日:2013/10/31(木) 00:52:43.33 ID:aXgtiOSGo コツッコツッ── 提督「入れ」 カチャ──ソッ 金剛「おはようございマス、テートク」コソッ 提督「おはよう、金剛」 金剛「あの……ノックや扉の開閉、会話は静かにと書いていましたケド、どうしたのデスか?」 提督「ああ、榛名がまだ寝ているからな」 金剛「榛名が?」チラ 榛名「…………」スゥ 金剛「……あの、もしかして──」 提督「ヤっていないから安心してくれ。ゲシュタルト崩壊と暗示のようなものを掛けただけだ」 金剛「げしゅたると……?」 提督「そうだな……例えば、この漢字を見てくれ」 金剛「粉、ですか? これが何か……」 提督「凝視するようにずっと見ていろ」 金剛「…………」 金剛「……………………」 金剛「…………?」 金剛「………………………………?」 提督「どうだ」 金剛「あの……えっと…………これ……『こな』って読むんですよね……?」 提督「そうだ。『こな』で合っている」 金剛「あれ……『こな』ってこんな漢字でしたっけ……」 提督「これがゲシュタルト崩壊だ」 金剛「認識が弱くなる、というものですか?」 提督「正確には認識できなくなるというものだ。他にも、淡々と同じ言葉をずっと聴かされていたら、その言葉の意味が分からなくなるという事もある」 159 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/10/31(木) 01:11:09.21 ID:aXgtiOSGo 金剛「それを榛名に?」 提督「ああ。昨日、私を訪ねてきたので薬で朦朧状態にして、ニ、三時間ほどずっと同じ言葉を掛け続けた」 金剛「それって……効果はあるのでしょうか?」 提督「あまり無いかもしれん。一種の暗示が掛かる状態で語り続けたが、どうなるかは賭けだ」 金剛「…………」 提督「これで生きる意味を持ってくれたら良いのだが……」 金剛「……ホント、提督が生きる意味となってくれたら良いです。そうすれば、榛名の笑顔が見れます」 提督「ああ……。私も頑張るよ」 榛名「ん……」 提督「起きたかもしれない。この話は終わりだ」 金剛「…………」コクン 榛名「ふぁ……あれ…………ここは?」 金剛「起きましたか?」 榛名「あ、れ……? 金剛お姉様……?」 金剛「ほら、寝惚けていてはいけませんヨー? ほら、顔を洗ってきなサイ」 榛名「──あ、そうでした。私、提督さんと……」 金剛「────」ピクッ 金剛「提督と?」 160 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/10/31(木) 01:32:32.91 ID:aXgtiOSGo 榛名「紅茶とお茶菓子を頂いてる時に、眠ってしまったようで……」 金剛「紅茶とお茶菓子?」 提督「クリームティーだ」 金剛「なるほど。あれデスか!」 榛名「お姉様もお喜びになられたのですよね?」 金剛「ハイ! 私の大好物デース!」 榛名「私も、あのお茶とお菓子は好きになりました」ニコ 金剛「ワオ! 本当デスか!? ネ、ネ、どうでした?」 榛名「甘くて、なめらかで、クリームなんて凄く濃厚で、スコーンはサクサクしていました!」 金剛「うんうん! 榛名は分かってくれるのですネー!」ギュー 榛名「あっ、お、お姉様」 金剛「これからは一緒にティータイムを楽しめそうデース!」 榛名「……はい」ニコッ 金剛「それより、提督」 提督「どうした?」 金剛「なぜお仕事をしているのですか?」 提督「…………」 金剛「まだ、救護妖精から許可を貰っていないはずですよね?」 提督「……ダメか?」 金剛「ダメです! ほら、早く横になって下さい!!」 提督「自然と仕事をしていればバレないと思ったのだが……」 金剛「最初に違和感が無かった私を叱りたいです。まったく……油断も隙もありませんね!」グイグイ 161 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/10/31(木) 01:46:56.25 ID:aXgtiOSGo 提督「む……」 金剛「はい! 病人はしっかりと休んでください!」グイグイ 提督「分かった分かった……」スッ 金剛「〜♪」ナデナデ 榛名「なんだか凄いですね、お姉様……」 金剛「体調が良くないというのに、ちょっと目を離した隙にお仕事をしようとする困った提督です」 金剛「イジケますよ、提督」ヂー 提督「さすがにこうも身体を動かしていなかったら動きたくなる……」 金剛「それは分かりますけど、身体は大事なのですよ?」 提督「せめて朝だけでも仕事をさせてくれ。何もかもお前達に押し付けたままでは私の心も痛む」 金剛「むー……では、ちょっとだけですよ?」 提督「うむ」 榛名「仲がよろしいのですね」 金剛「この鎮守府で提督がライクでない人は居まセーン! 何人かは提督ラブですヨー」 榛名「わぁ……」 提督「なぜここまで好かれているのか」 金剛「好きだからですよー♪」ギュッ 提督「こら、妹の前だろう」 金剛「むー……」 榛名(お二人共、幸せそうです……) …………………… ………… …… 162 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/10/31(木) 01:58:23.27 ID:aXgtiOSGo 提督「身体を動かしたい」 金剛「ダメです」 瑞鶴「ダメよ」 榛名「…………」 提督「ちょっとだけ仕事を──」 金剛「頭を使うのもダメです。糖分を使います」 瑞鶴「書類は私達が片付けるから休んでてよね」 榛名「…………あの……」 提督「なにかね……」 榛名「どうして動いたり仕事をしてはいけないのでしょうか?」 提督「私が低血糖だというのが二人に知られてしまってな……。訳あって糖分摂取がほとんど出来ないので運動や仕事を取り上げられてしまった……」 金剛「それだけではありません。今朝、慢性的な疲労と診断されましたよね」 提督「どうやっても原因が掴めないからそう診断されただけだろう」 瑞鶴「提督さんはすぐに無理をしているじゃないの。出撃も一緒にするし」 榛名「出撃を!? え……海の上をどうやって……? 船などでは置いていかれますよね……?」 金剛「提督は信じがたい事に海の上を滑るのです。まるで凍った水の上を滑るように」 瑞鶴「それどころか、島風よりも速く動いたり十メートルくらいは上に跳んだりするわね」 金剛「十メートルって何ですかそれ……。初耳ですよ……」 瑞鶴「島風が建造された日、あの子を追い詰める為に窓に跳び移ったのよ……」 金剛「…………もしかして、あの工廠の高い位置に付いている窓ですか?」 瑞鶴「うん……」 榛名「……あの、提督さん。失礼ですけれど、お聞きします。…………本当に人間なのですか?」 169 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2013/10/31(木) 02:15:31.12 ID:aXgtiOSGo 提督「間違いなく人間だ」 提督「この話は以後禁止……とまでは言わないが、なるべく控えてくれ。思ったよりも精神的疲労が溜まる」 金剛・瑞鶴「はーい」 榛名「…………」 提督「榛名も、しないでくれよ?」 榛名「え……は、はい」 榛名(……そういえば私、ここでのんびりしていて良いのでしょうか。元帥様が危ない状態なのに……) 榛名(…………あれ……『元帥様』? あれ……?) 榛名「──あ、あの! 私、提督のご様子を窺ってきます!!」 金剛・瑞鶴「!」 提督「そうか。ならば私も一緒に行こう」 瑞鶴「えっ……ちょ、ちょっと……」 金剛「…………」 金剛「提督ー、ダメですよー? ちゃんと安静にしていて下さい」 提督「寝ていてばかりでは治るものも治らなくなる。適度な運動が大事だ」 金剛「むぅ……仕方が無いですね……。救護室までの往復だけですよ?」 瑞鶴(ああ、なるほど……) 瑞鶴「無理はしないでよね、提督さん」 提督「分かっているよ」 榛名「…………」 提督「大丈夫。あの元帥殿だ。そう簡単にお亡くなりになられる訳ないだろう?」 榛名「はい……」 ……………………。 173 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/10/31(木) 02:36:43.40 ID:aXgtiOSGo 救護妖精「ダメ」 榛名「ダメですか……」 救護妖精「今は無菌室で絶対安静の状態。そう簡単に入れさせる訳にはいかないよ」 提督「……そんなに悪いのか」 救護妖精「普通だったら死んでてもおかしくないんだよ。むしろ、ここに運び込まれた時に喋ったりしていたのが異常なんだって。そんな事があったから回復するだろうけどさ、刺激を与えずに絶対安静させておくべきなのには変わりないんだよ」 榛名「という事は……もしかしたら…………」 救護妖精「勿論、貴女が考えてる事態もあるよ。というか、人は風邪でも死ぬ時は死ぬんだ。可能性だけで語るなら私が今ここで死ぬ可能性だってある。そこまで考えてたらキリがないよ」 救護妖精「そんなにネガティブに考えるくらいなら、前向きに色々と考えた方が良いと思うよ?」 榛名「前向きに、ですか」 救護妖精「そう。前向きに。病は気からっても言うしね。健康な人が酷く落ち込むだけで免疫力が下がって病気になる事だってある。逆に、どう考えても死に掛けなはずなのに医学をフルシカトの良い意味の化け物だって居る」 提督「そんな人は居るのか……?」 救護妖精「あたしの目の前に居るね。今」 榛名「え?」 救護妖精「本当に提督は何者なの? 気合どうこうでどうにかなるとは思い難いんだけど」 提督「ただの負けず嫌いだ」 救護妖精「はぁ……。提督の人体に関する論文を書くだけで、学会が血眼になって提督へ実験の協力をお願いするだろうね……」 榛名「……そんなに凄いのですか?」 救護妖精「凄いなんてものじゃないよ。現代医学の敗北。人体の知られざる神秘を体現しているって言っても良いくらいだ」 175 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/10/31(木) 03:06:56.84 ID:aXgtiOSGo 榛名「そうなのですか……」チラ 提督「…………」 救護妖精「こんな人外染みた人だって居る。あたしも最善を尽くすんだ。昏睡状態くらい元帥さんならなんとかするだろうさ」 榛名「──そうですよね。ありがとうございます」ペコ 救護妖精「あたしは医者として当然の事を言ってるだけだよ」 提督「医者なら人を化け物呼ばわりしないと思うが」 救護妖精「なんだい、医学フルシカト提督」 提督「…………」 榛名「♪」クス 榛名「あ、それと……救護妖精さんにお聞きしたい事があります」 救護妖精「なんだい?」 榛名「えっと……」チラ 提督「私は外に出ておくよ」 榛名「ごめんなさい……」 提督「そこは『ありがとう』と言ってくれ」 榛名「? あ、ありがとう、ございます……?」 提督「どういたしまして」 榛名(──あ…………暗い気持ちが少しだけ無くなりました……。そういう意味なのですね) 176 名前:ついでにもう一個[sage saga] 投稿日:2013/10/31(木) 03:08:06.13 ID:aXgtiOSGo 提督「それでは、私はこれで失礼する」 救護妖精「早く元気になりなよー」 提督「私も早くなりたいものだ」 榛名「…………」ペコ ガチャ──パタン 救護妖精「──さて、提督に聞かれたくない話ってなんだい? 子供なら出来ないから諦めな」 榛名「ちっ違います! そういうのではありません!!」 救護妖精「分かってる分かってる。冗談だよ」 榛名「うぅ……」 救護妖精「……で、本当はなんなんだい?」 榛名「……刷り込みの事についてです」 救護妖精「うん? それは艦娘の?」 榛名「はい……。お医者様である救護妖精さんなら何か知ってるかと思いまして……」 救護妖精「まあ、普通の人よりかは知ってるよ。これでも艦娘相手に処置とかしてたしね」 救護妖精「それで、刷り込みがどうしたの?」 榛名「あの……艦娘の刷り込みを上書きする事って出来るのでしょうか……?」 救護妖精「上書き?」 榛名「はい……。ちょっと、心配になる事がありまして……」 救護妖精「なんだってそんな。自分の提督を提督だって思えなくなったの?」 榛名「う……。まだ……ですけど、今日……提督を提督と考えず『元帥様』と思ってしまいました……」 救護妖精「んー、ちょっと分かりにくかったけど、仕える者じゃなくて一人の人として見ちゃったって事?」 榛名「はい……。こんな事、あってはいけない事ですのに……」 救護妖精(ふぅん。刷り込まし易くする為に、まずこの子の『提督』とは何かをあやふやにさせたか。やる事が外道だねぇ) 177 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/10/31(木) 03:19:26.67 ID:aXgtiOSGo 榛名「何かご存知ではないですか?」 救護妖精「うーん……」 榛名「…………」 救護妖精「……あるには、あるんだよねぇ」 榛名「! そ、それは……どういうものなのですか……?」 救護妖精「んっとねー。とある科学者が、問題を起こしたんだよね」 榛名「問題……?」 救護妖精「そ。艦娘の認識している提督を刷り直すって問題」 榛名「そ、そんな事、できるのですか……?」 救護妖精「これは機密事項。貴女みたいな状態になった子にしか話してない事だよ。それは頭に置いておいて。あと、絶対に人に言っちゃダメ。それが例え提督相手でも。良い?」 榛名「…………」コク 救護妖精「じゃあ話すよ」 救護妖精「……その科学者は、提督が死んだ後の艦娘の再利用を考えたんだ」 榛名「再利用……ですか?」 救護妖精「そう。艦娘は一人の提督にしか言う事を聞かない。だから提督が死んだ場合、その艦娘は全員解体される。でも、この資源の少ない国じゃそんな贅沢なんて出来ないよね。だから、艦娘の再利用を考えたんだ」 榛名「…………」 救護妖精「簡単に言うと、洗脳。前の提督の事を忘れさせて、新しい提督へ刷り直す。こうする事で、少ない資源でも解体をさせずに再利用させれるようになったんだ」 178 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/10/31(木) 03:27:13.16 ID:aXgtiOSGo 救護妖精「だけど、それにも問題があった」 榛名「問題……ですか?」 救護妖精「なかなか洗脳できないんだよねこれが。まだ実験段階だったらしいしさ。だから、洗脳できた艦娘は一部の提督にしか渡されてないよ──」 救護妖精「──当時の大将とか、元帥とかにしか」 榛名「!!」 救護妖精「で、その洗脳された艦娘だけど、洗脳が完全って訳でもないんだよね。急に洗脳が解けたり、違和感が生まれて本当の提督を思い出す艦娘とか居るみたい」 榛名「違和感が生まれて……」 救護妖精「そう。貴女みたいにね」 榛名「…………では、私は……」 救護妖精「まだそうとは決まった訳じゃないよ。ただ単に疲れてる可能性もあるんだし」 榛名「…………」 救護妖精「まあ、本調子に……は、もうなってるか。何日かしたらすぐにその疑問も分かるでしょうよ」 榛名「……はい」 救護妖精「それだけ? だったら早く帰って休みな」 榛名「あ、それともう一つ。提督さんが海の上を滑るそうなのですが、人間ってそんな芸当できましたっけ……?」 救護妖精「はぁ? 何言ってるの一体」 榛名「ご、ごめんなさい……変な質問してしまって……」 救護妖精「──ねえ、今滑ってるって言ったよね」 榛名「え? は、はい……。私は直接見た訳ではありませんが……」 救護妖精「じゃあこれだね」ヒョイ 榛名「……靴?」 救護妖精「そう。建造妖精と開発妖精の共同制作した一品。艦娘を参考にした水の上に浮けちゃう靴」 榛名「…………」 救護妖精「あ、信用してないなその顔。だったら試してみなよ。洗面器に水を張るからさ」ジャー 救護妖精「艦娘は海には浮けるけど水には浮けなかったよね。ほれ、海の上に立つように乗ってみ」プカー 榛名「…………」オソルオソル 榛名「!!! ほ、本当に立てました!!」プカプカ 救護妖精「でしょ?」 榛名「こんな凄い物があるなんて……」プカプカ 救護妖精「使ってる人はほとんど居ないから知らないのも無理はないねー。だって、普通の提督は一緒に出撃なんてしないもん。自殺行為だし」 179 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/10/31(木) 03:28:08.33 ID:aXgtiOSGo 榛名「……技術って凄いですね」 救護妖精「それを言ったら艦娘なんてどうなのさ。そのコンパクトな身体で弾さえあれば鉄の塊の戦艦を落とせるんだよ? おまけに海の上を高速で移動できるし。人間や妖精じゃ到底真似できないよ」 榛名「それはそうですけれど……」 救護妖精「まあ、提督が海の上を滑れるのはそれを使ってるからだよ。じゃないと今頃、人体実験する為に捕まってありとあらゆる実験をされてるよ」 榛名「……怖いですね」 救護妖精「それが人間ってものさ。全員が全員そうじゃないけどね」 榛名「謎が解けました! ありがとうございます」ペコ 救護妖精「良いって良いって。じゃあ、私も仕事に戻るよ」 榛名「はい! ありがとうございました!」 ガチャ──パタン 救護妖精「…………」 救護妖精「危なかったぁ……もう綱渡りはしたくないよ……」 ……………………。 提督「ん、話は終わったか」 榛名「あれ? 提督さん、待っていらしたのですか?」 提督「ああ。一人で帰っても寂しい」 榛名「なるほど……確かにそうですよね」 提督「それじゃあ、一緒に帰ろうか」スッ 榛名「!」 榛名「……はい!」ギュ 榛名(そういえば、こうして誰かと手を繋ぐのは初めてですね) 榛名「──温かい」 提督「うん?」 榛名「いいえ、なんでもありませんよ♪」 ……………………。 180 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/10/31(木) 03:28:35.97 ID:aXgtiOSGo コンコン──ガチャ──パタン 提督「今帰った」 榛名「ただいま戻りました」 金剛「おかえりなさ──むっ」 瑞鶴「二人共おかえ──む……」 提督「どうした金剛、瑞鶴」 金剛・瑞鶴「手」 榛名「──あっ!」パッ 金剛「むー……」ジー 瑞鶴「…………」ジー 提督「……二人共、こっちへ来なさい」 金剛・瑞鶴「…………」トコトコ 提督「留守番ご苦労だった」ナデナデ 金剛・瑞鶴「!!」ナデナデ 瑞鶴「ん〜〜……♪」トロン 金剛「あはっ……♪」トロン 榛名「…………」 榛名(……なでなで…………) 金剛「……榛名も欲しいですか?」 榛名「えっ! あ、あの……その…………」 金剛「私は構いませんよ」 瑞鶴「うん、私も。すっごく気持ち良いものねー」 榛名「え、ええと……そのぉ……」チラ 提督「うん?」 榛名「……………………お願いします」 提督「うむ」スッ 榛名「っ!」ビクッ 榛名「…………?」ナデナデ 榛名「あ……」ナデナデ 榛名(これ……凄く、幸せです……)ナデナデ 榛名「…………癖になってしまいそうです」トロン 瑞鶴「うんうん」 金剛「この気持ち良さには逆らえないねー」 榛名(……幸せって、とっても気持ちの良い事なのですね)ナデナデ 提督「…………」 …………………… ………… …… 200 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/10/31(木) 17:42:47.49 ID:aXgtiOSGo 榛名「救護妖精さんが言うには、これが提督の秘密らしいです」 瑞鶴「……何これ? 靴? なんで水の上に浮かせてるの?」 榛名「お姉様、ちょっとこの靴の上に立ってもらってよろしいですか?」 金剛「……え? 床が水浸しになるじゃないデスか……。それに、私たち艦娘は海の上でしか浮けませんヨ……?」 榛名「海の上に立つ感覚で乗ってもらえれば分かります」 金剛「むぅー……分かりました。可愛い妹の頼み事デス!」 金剛「よっ──ホワット!?」プカプカ 瑞鶴「え、えええええええ!? う、浮いてる!?」 金剛「……なるほど。テートクはこうして私達と同じように海の上を滑っているのデスね」 榛名「そうみたいです」 瑞鶴「へぇ……こんなカラクリがあったなんて……」 金剛「確かに、普通の人が海の上を平然とスケートしていたら大問題ですよネ」 瑞鶴「でも、どうして提督さんはこれを持ってるのかしら」 金剛「将校で習うのではないデスか?」 瑞鶴「ああー、なるほど」 金剛「……でも、テートクだったら」 瑞鶴「うん……これ無しで滑っててもおかしいって思えないわね」 榛名「お二人は提督さんにどういうイメージを持っていらしてるのでしょうか……」 203 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/10/31(木) 18:02:15.08 ID:aXgtiOSGo 金剛「まず、お仕事には厳しいデスね」 瑞鶴「叱る時も怖いわよねー……」 金剛「吊るされますものネ……」 榛名「つ、吊るされる!?」 瑞鶴「吊るされると言っても、痛くないわよ。ただ恥ずかしいだけ」 榛名「…………?」 金剛「毛布で包んだ状態で吊るされるのデス。傍目から見ても痛そうに見えませんヨ」 瑞鶴「だけどその代わり、皆が見てる前でも平然と吊るすし、何よりもスカートの中が見えそうになるし……私なんて皆に見られたし……」ズーン 榛名「と、とても怖いのですけれど……」カタカタ 瑞鶴「でも、ちゃんと謝ったら下ろしてくれるくれるわよ。謝らなかったらいつまでも続いたけど……」 榛名(瑞鶴さんはいつまでも吊るされたのですね……) 金剛「ですが、優しさが溢れ出ていマス! さっきも言いましたケド、お仕置きも痛くありまセンし、本気で嫌がっているのを見たらすぐに止めマス」 瑞鶴「思いやってくれるし、頼りになるし、親身になって悩みを聞いてくれるし……本当に優しいわよね。色々な意味で逆らえないわ」 金剛「うんうん……。本当に色々な意味で逆らえまセーン」 榛名「色々……」 榛名「…………────────ッッ!!?」ビクン 榛名「あ、ああああの、あのあの……そ、そそそれってもしかして……?」アワアワ 206 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/10/31(木) 18:19:45.58 ID:aXgtiOSGo 瑞鶴「あっ……え、えーと…………」 金剛「榛名の考えている通りデース」 榛名「はぅ!?」 金剛「あははっ。二人共、顔が真っ赤ですヨ〜?」 瑞鶴「こ、金剛さんには羞恥心が無いの?」 金剛「ありますヨ?」 榛名「お姉様……全然説得力がありません……」 金剛「──だって、提督に抱かれるのは幸せです。掛け替えのない、とても大切な人ですから」 金剛「なので私の心は、恥ずかしいよりも、温かい気持ちで一杯なのです」 榛名「わぁ……」 瑞鶴「私は恥ずかしい気持ちが先に出ちゃうなぁ……」 榛名「え? ……と、ということは……瑞鶴さんも?」 瑞鶴「……………………」コクン 榛名「ま、まさかこの鎮守府の皆さん全員という事も……?」 金剛「それはノーだと思いマス。……たぶん」 瑞鶴「なんだかんだで提督さんを異性として好きになってそうな子、居るものねー……」 207 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/10/31(木) 18:29:28.14 ID:aXgtiOSGo 金剛「島風とかー」 瑞鶴「響ちゃんもねー」 金剛「あと、龍田もそんな感じがしマス」 瑞鶴「電ちゃんや雷ちゃんもなんだか隠れて好きそうな気がするわ」 金剛「暁は……ちょっと分かりにくいですけど、なんだか本人が認めていないだけで好きそうなイメージがありマス」 瑞鶴「龍田さんを除いた軽巡組は提督として好きって感じよねー」 金剛「という事は、可能性だけで考えたら……私達を入れて七人ですか……」 瑞鶴「うわー……競争率すっごい高い……。というか、そんな人数にエッチな事をしてるのかと思うと……」 金剛「そうデスかね? そこは違うと思いマス」 瑞鶴「え、なんで?」 金剛「テートクの事デスから、まず駆逐艦の子達には『まだ早い』とか言っていそうデス」 瑞鶴「……たしかにそう言いそう。性病とかエッチとは何かとか、そういう事を教えてそう」 金剛「龍田も自ら迫るというより、テートクから来るのを待っていそうデスよね」 瑞鶴「そう? 私の中じゃ自分から取りに行くイメージなんだけど」 金剛「ほら、龍田はテートクに絶対服従していそうじゃないですか」 瑞鶴「……言われてみれば」 金剛「だから、自分から求めるのではなく、相手が求めてきたら応えるというスタンスではないでショウか?」 瑞鶴「……否定できないわね」 208 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/10/31(木) 18:30:48.71 ID:aXgtiOSGo あかん。間違った。 金剛「という事は、可能性だけで考えたら……私達を入れて七人ですか……」 ↓ 金剛「という事は、可能性だけで考えたら……私達を入れて八人ですか……」 に脳内修正お願いします。 210 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/10/31(木) 18:42:27.64 ID:aXgtiOSGo 榛名「…………凄く好かれているのですね、提督さんは」 金剛・瑞鶴「勿論!」 榛名「提督さん、ですかぁー……」 金剛(……提督に良いイメージを持たせる為とはいえ、かなり心が痛みますね) 瑞鶴(私達も立派に共犯よね……。印象操作して、提督さんを求めるように仕向けてるんだもの……) 金剛「──さて、そろそろティータイムは終了しまショウ。瑞鶴、お仕事に戻りますヨー?」 瑞鶴「じゃあ、私は食器を片付けるわね」 …………………… ………… …… 提督「急に集まってもらって悪い。だが、皆に伝えておかなければならない事がある。緊急電報がやってきて、私は今晩からこの鎮守府を空けなければならなくなった」 提督「帰りは明後日の朝の予定だ。それまでの間、この鎮守府を守ってもらいたい。頼めるか?」 全員「はいっ!!」 提督「良い返事だ。私が留守の間、金剛と瑞鶴が私の代行としようと思うが、異論がある者は手を上げて発言してくれ」 提督「……………………無いようだな。では、残り数時間で私はこの鎮守府から離れる。頼んだぞ」 ……………………。 219 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/10/31(木) 20:24:56.20 ID:aXgtiOSGo 金剛「随分と急ですネ……」 提督「上はいつも急に面倒事を言い渡してくる。困るよ」 瑞鶴「本当よね……。計画性が無いっていうか……」 提督(急なのはこの状況もそうだと言って良いのだろうか?) 雷「司令官、あーん」 提督「すまない。私は甘い物が苦手なんだ」 雷「あれ、そうなの? ごめんね?」 提督「言っていないから知らなくて当然だろう。気にしなくて良い」 響「じゃあ、プレーンだったら良いのかな?」スッ 提督「それならば問題ない」 響「あーん」 提督「…………」サクッ 響「…………」ニコッ 島風「いいなー響! 提督、私もやって良い?」 提督「あまり食べれないんだ。夕食後というのもある。そろそろ勘弁してくれるかな」 島風「小食だよね、提督って。ざんねーん……」 提督「……あと一口だけだぞ」 島風「やったー!」 響「…………」サクサク 響(……司令官と間接キス)テレ 227 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/10/31(木) 22:53:18.97 ID:aXgtiOSGo 暁「ひ、響ったら大人じゃないの……!」 電「なんだか、かっこいいのと可愛いのと二つが混ざっていたようなのです」 龍田「じゃあ提督さん、紅茶を飲みますか?」 提督「流石にそれは危ないから止めておこう」 龍田「は〜い」 天龍「あーあ。フラれてやんの」 龍田「天龍ちゃん?」ニコォ 天龍「な、なんでもねーよ!!?」ビックゥ 那珂「余計な事を言っちゃうからよーだ」 龍田「少し黙りましょうか」 那珂「なんで私もー!?」 川内「はいはい。落ち着こうか」 神通「川内も、夜中は静かにね?」 川内「ま、まだうるさいかな?」 龍田「結構起きちゃうわね〜」 川内「ごめん……」 龍田「良いのよ〜。わざとじゃないのでしょう?」 川内「うん……」 神通「寝言が酷いだけだもの……。そのうち治ると思うわ」 那珂(あれ……何この扱いの違い……) 龍田「普段の行動の違いね〜」 那珂「なんだか心を読まれてる!?」 229 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/10/31(木) 23:15:34.64 ID:aXgtiOSGo 響「ところで司令官。そちらの方は?」 提督「榛名という名前の戦艦だ。詳しい事は言えないが、この鎮守府で預かる事となった」 榛名「金剛型戦艦三番艦、榛名と申します」ペコ 雷「金剛さんには皆がお世話になってるわ! 良いお姉さんよね!」 響「なるほど。どことなく同じ雰囲気がすると思った」 島風「戦艦なのに速いよね! 私びっくりしたもん!」 榛名(お姉様は、この鎮守府でとても愛されているのですね……) 榛名「それより……私はあちらのお二人が気になるのですけれど……」 戦姫「…………」ピキピキ ヲ級「♪」パクパク 榛名「あの……どう見ても深海棲艦ですよね……? それに、どうして少し離れているのでしょうか……」 提督「彼女達は私に協力してくれる関係だ。今回の、総司令部へ赴く時に一緒に来てもらう事になっている」 提督「少し離れているのは、艦娘と一緒に居ると憎しみが抑えきれなくなると言っていたからだ」 榛名「……色々と例外な事情がこの鎮守府にやってきているのですね」 提督「そういう訳だ」スッ 瑞鶴「提督さん?」 戦姫「む?」 230 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/10/31(木) 23:29:48.39 ID:aXgtiOSGo 提督「無理をして来てもらってすまない。ありがとう」ナデナデ 全員「!!!!」 戦姫「はにゃぁ……はっ!」 全員「…………」ジッ 戦姫「な、何を見て──はぁぅ……」ナデナデ 戦姫「く、くぅ……!」ナデナデ 電(なんだか物凄く可愛いのです……) 雷(それに、どことなくエロいわね) 龍田(良いなぁ……) 金剛(やっぱり気持ち良さそうですね〜) 瑞鶴(むぅ……) 戦姫「や、やめろぉ……見るなぁ! こ、この──はにゃ……」ナデナデ 戦姫「はっ! う、うぅ……」ナデナデ ヲ級「♪」ニコニコ …………………… ………… …… 235 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/10/31(木) 23:50:30.73 ID:aXgtiOSGo コンコン──。 ……………………。 コンコン──。 ──ガチャ 金剛「失礼します」 ──パタン 金剛「…………」 金剛「行ってしまわれたのですよね……」 金剛「なぜでしょうか。昨日はあんなにも騒がしかったこの場所が、とても寂しく見えます」 金剛「……榛名の事を言えませんね。私、すっかり提督に依存しちゃってます」 コンコン──。 金剛「! ……どうぞ」 ガチャ──パタン 瑞鶴「おはよう、金剛さん」 金剛「おはようございマス、瑞鶴」 瑞鶴「今来たところ?」 金剛「ハイ」 瑞鶴「……気持ちは分かるけれど、元気が無いわね」 238 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/01(金) 00:11:54.32 ID:PHrDHr2qo 金剛「なんだか、静かデスよね。ここ」 瑞鶴「……うん。捨てられた廃墟の一室って雰囲気」 金剛「テートクが居ないだけで、ここまで変わるとは思ってもみませんでシタ」 瑞鶴「うん……」 金剛「…………帰って、きますよね」 瑞鶴「……………………」 金剛「瑞鶴……?」 瑞鶴「嫌な予感、するのよね……」 金剛「……瑞鶴もですか」 瑞鶴「うん……。ねえ、私達ってさ」 瑞鶴「──提督さんを送り出して良かったのかな」 …………………… ………… …… 241 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/01(金) 00:38:52.70 ID:PHrDHr2qo 提督「ここが総司令部だ。降りよう」スッ 戦姫「やっとこの真っ黒な窓から解放されるのですね……」スッ ヲ級「…………」スッ 提督「仕方があるまい。深海棲艦を連れていると目撃されたら大問題だ。裏から入るのもそれが目的だ」 戦姫「面倒ですね……」 提督「しかし、まさか車を用意するとは……こんな高級な物、よく使わせてくれたよ」 戦姫(なぜこの方は運転できたのでしょうかね……?) 大将C「……待っていたよ」 提督「おはようございます大将C殿」 大将C「まさかまた顔を合わせる事になるとはな」 戦姫「余計な事は言わなくて良い。今の貴様の役目は案内役だろう」 大将C「ふん。その案内役のヘソを曲げさせて構わないのかな? 困るだろう」 提督「私はそれでも構わない」 大将C「何?」 提督「お役目ご苦労、大将C殿。私はこれから自力で大将A殿と大将B殿がいらっしゃる部屋を探す。お前が自らの役目を放棄した事はしっかりと伝えておくよ」 大将C「ぐっ……! こっちだ。ついて来い!」 戦姫「阿呆め」 ……………………。 242 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/01(金) 01:02:12.48 ID:PHrDHr2qo 提督「大将C殿はいつもこちらへ?」 大将C「それをお前が聞いてどうする」 提督「ただの雑談ですよ。こう歩いているだけだと暇で暇で」 大将C「ふん。変わったやつめ」 提督「よく言われます」 大将C「……普段はここに居らん。大将以上の極秘会議の時のみここに来ている」 提督「そうですか。私も道を憶えないといけませんね」 大将C「一度で憶えろよ!!」 提督「大将C殿の教え方が上手かったら一度で憶えれますよ」 大将C「…………ちっ」 提督「それにしても、こんな道を通って大丈夫なんでしょうか? 外の様子が見えますけれど」 大将C「ここを外から見るには裏へ来なければならん。裏は閉鎖してあるからまず見つからんわ」 提督「そうですか」 提督(……屋外消火栓? あんな場所にも……表にも三箇所あるのは知っているが、やけに厳重だな。まあ、それはこの施設の重要性を考えたら当然か) 提督(! ほう……なるほどな) ……………………。 249 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/01(金) 01:23:38.80 ID:PHrDHr2qo 大将C「ここだ」 提督「ありがとうございます」 大将C「入る時はノックを一回と三回に分けるんだ。そうすれば中に居る者が鍵を開けてくれる」 提督「ふむ」 コン──コンコンコン──。 大将C「……本当に肝が座っているな、お前」 提督「そうですか?」 戦姫(やはりよく似ていらっしゃる) ガチャ──パタン 提督「おはようございます、大将A殿、大将B殿」ピシッ 大将A「うむ。遠い所をご苦労」 大将B「いきなりの呼び出しで悪いな。色々と問題点が出てきたので緊急的に会合する事となったのだ」 大将A「あの場所から一晩で来てくれるとは思わなかった。いやはや、自動車というものは便利だな」 提督「私達の為にあのような高級の物を使わせて頂き、感謝しています」 大将B「なに。君にはそれだけの価値がある。──掛けたまえ」 提督「初めての会合ゆえ至らない点があると思いますので、お手数ですが色々と教えて頂いても宜しいでしょうか」 大将B「うむ。だが、何もそんなに固くなる必要はない。海軍の道筋を我々で立てるのが目的だ。何か提案があるのならばどんどん言ってくれるか」 提督「畏まりました」 大将A「大将Cは何か粗相をしなかったかね?」 大将C「!!」 提督「いいえ。あのような出来事があったにも関わらず、実に親切に案内してくれました」 大将B「ほう?」 提督「また、窓の付近を通った際も『危険性があるのでは』という質問に、実に納得のいく回答を示してくれて安心しました」 大将C「…………」 大将A「ふむ。どうやら身を弁えているようだ」 大将B「うむ。では、会議を始めよう──」 ……………………。 251 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/01(金) 01:38:14.50 ID:PHrDHr2qo 提督「──ですので、大鑑巨砲主義を貫くのではなく、周辺機器にも目を向けるべきだと思います。特に我々の軍は潜水艦を相手にするのが弱い。ソナーの開発にもう少し重視するのも良いかもしれません」 大将A「ふむ。確かに。次の開発は威力ではなく補助的な分野を開拓するとしよう」 大将B「この案も固まったな。では次で最後だな」 提督(やっと終わりか。国へどれだけの情報を流していいかだの新しい建造だの開発だのと下らん事を……。私が居なくても良かっただろう。いや、対潜水艦への危機感などを再認識されたのは私にも得があるか) 戦姫(内容も良く分からんし退屈だ) ヲ級「…………」スヤスヤ 大将B「深海棲艦を艦娘に戻す方法だ」 提督・戦姫「!!」 提督「何か進展があったのでしょうか」 大将B「明確な進展ではないが、君のおかげで可能性の一つが出てきた」 提督(余計な事をされたら面倒なんだが、なんだ? 何が分かった?) 大将B「研究者によると、特定の深海棲艦と縁の深い者が、その深海棲艦の亡骸を使って建造すると艦娘へ戻せるのではないだろうか、という説が浮かんできた」 大将B「現に、君のあの瑞鶴。……君の母港だが、記録によると海底から浮かび上がってきた所の深海棲艦をすぐに沈めたようだ」 大将B「──そして、あの場所で沈んだ艦娘は君のお父上の瑞鶴だけだ」 提督「…………」 254 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/11/01(金) 02:05:20.86 ID:PHrDHr2qo 戦姫「言っておくが、私や私達の仲間を沈めたらこの総司令部へ一斉射撃する。この場所なら海からでも充分に届くからな」 大将A「ほう。海が近くにあると分かるのかね」 戦姫「元は艦娘だ。それくらい分かる」 大将B「なに。安心したまえ。私達も命は惜しい。その手段を取って殺されるのはゴメンだ」 提督「では、どのように?」 大将B「そこで、そこの戦姫に聞きたい事がある」 戦姫「なんだ?」 大将B「君の仲間で、沈んだ深海棲艦は居るかね?」 戦姫「それがどうした」 大将B「彼は君の提督だった者と似ているのだろう? 縁があるのかもしれん。君の沈んだ仲間で彼が建造に関われば、もしかしたら艦娘に戻れるかもしれない」 戦姫「……なるほど」 大将A「ではその場所を──」 戦姫「残念だが、私の仲間は深海棲艦になってから誰一人として沈んでいない」 大将A「……そうか。それは残念だ」 戦姫「また、生きたまま建造の材料にするなどと言った場合も……」ジャキッ 大将B「分かっておる。我々もそこまで考えれないほどではない。……一人を除いてな」 大将C「ぐ…………」 戦姫「また貴様か。懲りないな」 255 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/01(金) 02:17:26.87 ID:PHrDHr2qo 大将A「しかし、進展がないとなると、どうしましょうかね?」 大将B「うむ……これには困ったな。何か提案などはあるかね?」 提督「…………。いえ……残念ながら。何か思い付きましたらご連絡致します」 大将B「うむ。ではこれにて会議は終わりとしよう」 大将A「くれぐれも情報を漏らすのではないぞ」 大将C「はっ!」 提督「ご安心を」 提督「ところで、私は夜深くにここを出発しようと思っています。どこか部屋をお貸しして頂けませんか?」 大将B「む? どうしてかね」 提督「いくら黒い窓といっても、日中に車を走らせるのには不安が残ります。もし止められて事情聴取を受ける可能性を考えると、人の少ない時間、闇夜に紛れて動くのが吉でしょう」 提督「それと、お恥ずかしながら睡眠を取っておりませんので、事故を防ぐ為にも一度、疲れと睡眠を取ろうと思っています」 大将A「なるほど。分かった。部屋を一室用意しよう」 提督「感謝します。では、マルヒトマルマルに出発します」 大将B「うむ。裏口の者には伝えておくので好きな時間に帰るが良い」 ……………………。 280 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/01(金) 18:27:34.71 ID:PHrDHr2qo ガチャ──パタン 提督「…………」チラ 戦姫「広いお部屋ですね。これなら快適に眠れそうです」 ヲ級「♪」 提督「…………」チラ 戦姫「どうかなされましたか?」 提督「なに。部屋を見渡していただけだ」シッ 戦姫(…………? 内緒話ですか……?) 提督(盗聴されている可能性が無いとは限らない。少し協力してくれ) 戦姫(! はい) ヲ級(…………)コクコク 提督(まずは……) 提督「──ところで戦姫。この建物ならばどのくらいで破壊し尽くせる?」 戦姫「そうですね。大体……三十分といった所でしょうか」 提督「三十分か……。少し時間が掛かるな」 戦姫「申し訳ありません……」 提督「いや、折角ここまで侵入できたのだ。今すぐ準備に取り掛かれ」 戦姫「はい」 提督「お前も、逃げる準備をするんだぞ?」 ヲ級「!」コクコク 戦姫「しかし……宿はどうするのですか?」 提督「この総司令部の裏は山だ。野宿になってしまうが、一夜を過ごすくらいならばなんともないだろう」 戦姫「逃走ルートはどうなさいますか?」 提督「私達ならばこの高さから飛び降りても平気だろう」 戦姫「そうですね。では、準備に取り掛かります」 提督「うむ」 戦姫「…………」 ヲ級「…………」 提督「……………………どうやら盗聴されている心配はしなくて良いようだな」 戦姫「本当だったら大慌てでこの部屋に飛び込んでくるでしょうね」 戦姫「しかし、なぜこのような事を?」 提督「調べたい事がある。……暗くなるのは三時間後のヒトキュウマルマルだったな。その頃に起きて調べる物 があるから起こすぞ」 戦姫「はい!」ピシッ ヲ級「!」ピシッ ……………………。 281 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/01(金) 18:43:08.86 ID:PHrDHr2qo 提督「…………」スッ 戦姫「ん……」スッ ヲ級「…………」スヤスヤ 提督「…………」ソッ ヲ級「!」ピクン 提督「起きたか?」 ヲ級「♪」 提督「よし。では行こう。くれぐれも大きな声を出すんじゃないぞ」 戦姫「!」ピシッ 提督(今からでなくても構わなかったのだが……まあいいか) ……………………。 提督(あった。あの屋外消火栓だ。……下も電気は付いていないな) 提督「…………」チラ 戦姫「?」 提督(ここから飛び降りるぞ)ヒソ 戦姫(何を言っているんですか!? ここ五階ですよ!?) 提督(無理か……) 戦姫(当たり前です!) 提督(では、静かにしていろよ) 戦姫(え、ちょ、ちょっと──ひゃん!)ヒョイ 提督(絶対に声を出すな)タンッ 戦姫(〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!?)ビクン 284 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/01(金) 19:04:35.13 ID:PHrDHr2qo スッ──。 戦姫(あ、あれ……降りた音がしなかった……?) 提督(念の為に、建物から見えないように窓の下で隠れていろ)タンッ 戦姫(……本当に人間ですか、あの方。なんで跳んで届くのですか……?) 提督(待たせた。行くぞ) ヲ級「♪」ギュ 提督(良い子だ)タンッ スッ──。 戦姫(……ところで、どうして外へ?) 提督(目の前にある消火栓だが、おかしいと思わないか?) 戦姫(…………いえ、特に……) 提督(昼間だから分かりやすかったが、こうも暗いと建物からでは非常に見えにくい。それと、明らかに奥行きがありすぎるんだ。人間一人くらいなら余裕で入れるくらいの奥行きがな) 戦姫(と、いう事は……地下ですか?) 提督(その可能性がある。調べてくるから少し待っててくれ)スッ カパッ──スルスル──。 戦姫(……なんとも思わなかったけど、私は言われてから消火栓に気付いたのに、どうしてあの方は見えたのでしょうか) 提督「…………」クイクイ 戦姫(ん……あれは、来いという意味でしょうかね……?)スッ 提督(当たりのようだ。この壁を下ろす、っと)ガリガリ 戦姫(梯子……) 提督(降りるぞ。すまないが戦姫、降りる時に扉は閉めてくれ) 戦姫(はい!)ピシッ ……………………。 289 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/01(金) 19:22:05.42 ID:PHrDHr2qo 提督(思ったよりも深いな。──む、地面か) 戦姫(普通の扉、ですね……) 提督(開けてみよう) スッ──ソーッ…………。 提督(……気配がない。誰も居ないようだな──ッ!?) 提督「なんだ、これは……」 戦姫「ど、どうかなさいまし──なっ!?」 ヲ級「!!」 戦姫「これは……人間……ですよね……? なんですか、この奇妙なカプセルの群れは……緑色に光ってて気味が悪いです……」 ヲ級「…………」 提督「……二人共、私はこのカプセルの中に入っている人を見知っているんだが」 戦姫「…………奇遇ですね。私も見た事があります」 ヲ級「…………」コクン 提督「やはりか……私の見間違えではないようだな……この子はどう見ても──」 提督「──金剛、だよな」 293 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/01(金) 19:41:07.97 ID:PHrDHr2qo 戦姫「ええ……。間違いありません。──こっちは電と言っていた子のようです」 ヲ級「!!」ビシッ 提督「こっちは瑞鶴か……」 戦姫「これは……」 提督「ああ、間違いない。艦娘の本体は、ここからやってきているようだな」 提督「詳しい事は調べてみないと分からない。何か資料がないか探してみよう」 パッ──! 提督「!」バッ 研究員「な、なんだお前達──ぐっ!?」ガシッ 提督「抵抗しなければ殺さない。分かったなら両手を上に上げろ。変な動きを見せたら殺す」ギリッ 研究員「!!」バッ 提督「そのまま私の質問に答えろ。嘘を付いていたら目を見れば分かる。その時は腕を一本貰う」 研究員「わ、分かった!」 提督「お前はここの関係者か?」 研究員「そうだ!」 提督「証拠を見せろ」 研究員「右ポケットだ! 私の白衣の右ポケットに証明書がある!!」 提督「…………」ゴソ 提督(……艦娘建造開発総責任者。ほう、良い情報源だな) 295 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2013/11/01(金) 19:55:49.93 ID:PHrDHr2qo 提督「手荒な真似をしてすまなかった。私はつい最近、大将になった者だ」 研究員「はっ……! はっ……! あ、ああ……貴方があの……?」 提督「その証拠に深海棲艦も連れてきているだろう」 戦姫「…………」 ヲ級「?」 研究員「それは分かりましたが……どうしてここへ?」 提督「少々暇になったので、話に聞いていたこの場所へ足を運んでみたのだ。彼女達も一緒に連れてきたら何か新しく分かるかもしれなかったのでな」 研究員「ああ……」 提督「くれぐれも内密にしてくれ。実は許可を取っていないんだ」 研究員「そ、それは困りますよ! 勝手に入ってきては!」 提督「貴方は総責任者ですからね。この事がバレてはお互い困る。秘密としましょう」 研究員「む、むう……。分かった……」 提督「それにしても、素晴らしい施設ですね」 研究員「は?」 提督「見た所、これが艦娘の元ですか」 研究員「あ、ああ……そうです」 提督「宜しければ、色々と教えて頂けませんか? 深海棲艦を艦娘に戻す参考にしますので」 研究員「そ、それは……」 提督「なんだったら今ここで死体を一つ作っても宜しいのですが」 研究員「ほ、本当に貴方は海軍なのですか!?」 提督「勿論。特に今は亡き元帥殿には良くして頂いていました」 研究員「ぐ……! そういう事か……」 提督「理解が早いようで助かります」 研究員「……ここで話すのも疲れる。奥の部屋へ行こう」 ……………………。 298 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/01(金) 20:13:32.27 ID:PHrDHr2qo 研究員「……何が聞きたいんだね」 提督「とりあえずは、艦娘の詳細を。特に、表に出ていない情報が欲しいですね」 研究員「…………」 提督「…………」 研究員「……これから話す事は、私が漏らしたとは言わないでくれ」 提督「勿論です。ご安心ください」 研究員「…………艦娘とは、ここに置いてある少女達を原典に存在している……らしい」 提督「らしい?」 研究員「何せ当時の人や資料がほとんどが無くなっているんだ! 私達も試行錯誤なんですよ!」 提督「ふむ。それはどうしてですか?」 研究員「詳しくは分かりません……。今でも真実は闇に葬られたままです。突如、当時の研究員全員が殺され、重要な資料がなくなったと聞いています」 提督「ふむ。では、あのカプセルは何ですか?」 研究員「人体の老化、腐敗を止める装置だと思います……。どうやらあのカプセルに、適合した少女を入れると艦娘の原典として機能するようです……」 提督「それ以上の詳しい事は」 研究員「まだ分かっていません……。ただ、ここの少女達の魂を引用する事で、艦娘が建造で生れ落ちるという事は分かっています」 提督「なぜ少女なのですかね」 研究員「それもまだ詳しくは分かっていません……。ただ、男性の肉体ですと処置をする際に拒絶反応が起きるようで、女性しか使えないんです。少女だけという訳でもなく、大人の女性もあります」 提督「処置?」 研究員「所謂、人体改造です……。男性にやると悉く死んでしまうので、女性だけにしかしていません……」 提督「…………」 299 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/01(金) 20:22:51.96 ID:PHrDHr2qo 提督「ふむ。では、深海棲艦については何か分かった事はありますか?」 研究員「いえ……残念ながら深海棲艦はほとんど何も分かっていないんです……。貴方が知っている事以上の情報は無いと思います……」 提督「そうですか」 研究員「日々、研究に研究を重ねているのですが、どうにも難解で……。処置の方法についても、本棚の下にあったメモ書きを参考にしてなんとか出来たのです……」 提督「ふむ……その資料を拝見させて頂いても良いですか?」 研究員「そ、それは……」 提督「ふむ……」ジッ 研究員「な、なんですか……?」 提督「いえ、どこから斬れば止血するだけで命だけは取り留めれるか──」 研究員「み、見せます!! 渡します!! だから、止めてくれぇ!」 提督「はい。よろしくお願いします」ニコ 戦姫(こいつらも外道だが、この方もとことん悪魔ですね……) 研究員「これです……」 提督「ふむふむ……」 提督(意味は良く分からんが、全体的な肉体の強化と痛覚の鈍化、後は特定の記憶を植え付ける……か……) 提督「この資料は複写ですか?」 研究員「え? あ、ああ……そうですけど……」 300 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/01(金) 20:23:17.65 ID:PHrDHr2qo 提督「頂いてもよろしいでしょうか」 研究員「こ、困ります!! この情報が外に出回ったら大変な事になります!」 提督「これが有れば私の実験も捗ると思ったのですが……仕方がありませんね」チラ 研究員「!!」ビクッ 提督「右と左……あと上と下、選ばせてあげます」 研究員「ひっ!! わ、分かりました!! 差し上げます!!!」 提督「お優しいですね。感謝します」ニコ 戦姫(さすがに同情する……) 研究員「ほ、他に何を聞きたいんだ! もう艦娘に関する事は何も知らないぞ!」 提督「……おや、本当のようですね。では、私はこれにて失礼します」 研究員「…………」ホッ 提督「ああそうそう。ここで私と会った、話した、知ったという事は全て忘れてください。もし、この事を誰かに伝えた時は……」 研究員「つ、伝えた時は……」 提督「有刺鉄線を血管に通して引き抜きます」ニコ 研究員「あ、悪魔め……!」 提督「お互い様です。では、また機会がありましたらお会いしましょう。見知らぬお方」 ……………………。 321 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/02(土) 00:14:12.56 ID:qCrR2zLOo ガチャ──パタン 提督「さて……やっとここまで戻ってきたな」 戦姫「はぁー……車の中も盗聴を考えないといけないのは疲れましたぁ……」 ヲ級「…………」グッタリ 提督「よくやってくれた二人共。ありがとう」ナデナデ 戦姫「はにゃ……」トロン ヲ級「♪」ギュー 提督「色々とあって疲れただろう。ゆっくり休んでくれ」 戦姫「はい!」ピシッ ヲ級「!」ピシッ ガチャ──パタン 提督(……私も少し疲れた。あと一時間もすれば金剛が来るだろうが、それまでの間は寝ておくとしよう) ……………………。 324 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/02(土) 00:30:54.35 ID:qCrR2zLOo 金剛「提督……?」 提督「ん……」 金剛「良かった……起きてくれました……」ペタン 提督「いかん……寝過ぎてしまったようだ」スッ 金剛「!」バフッ 提督「おぉ……?」 金剛「ダメです。寝ていて下さい」 提督「何も上に乗ってまで押さえつけなくても良いだろう……」 金剛「……寂しかった」スリ 提督「…………」 金剛「寂しかったです……」ギュ 提督「……そうか」ナデナデ 金剛「ん……」スリスリ 提督「やけに甘えるな」 金剛「一日以上、提督と離れ離れでした。だから提督分を充電しています」 提督(いつから私は成分と同じ括りに……) 金剛「ちゃんと提督が居ない間の報告をするので、その前に充電させて下さい……」 325 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/02(土) 00:43:44.61 ID:qCrR2zLOo 提督「……分かった」ギュ 金剛「んっ」 提督「…………」 金剛「わ、わざとではありません……。本当に出ちゃった声です……」 提督「なら仕方がないか……」 金剛「あと……キスが欲しいです……」 提督「……本当に甘えているな」 金剛「キスをして下さったら、充電が終わります……」 提督「…………仕方がないな」 金剛「あはっ♪」スッ 金剛「ん……」 ちゅ……ちゅぴ…………ちゅぅ、ちゅく………………。 金剛「んっ……はぁ……」 金剛「は、ぁ……痺れるように、幸せです……」 提督「…………そうか」ナデナデ 金剛「本当に、幸せ……」スリスリ ……………………。 326 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/02(土) 00:53:25.61 ID:qCrR2zLOo 金剛「──で以上です」 提督「ふむ。問題なくこなしてくれたようだな」 提督「……さて、そろそろ皆が来る頃だろうか」 金剛「そうですね……名残惜しいです……」スッ 提督「まったく……キスだけでは充電が終わらなかったな」 金剛「提督と肩を寄せ合うの、凄く心が温まりました」 コンコン──。 提督「ほら、離れて」 金剛「はーい」スッ 提督「入れ」 ガチャ──パタン 救護妖精「やあ提督。生きてるかい?」 提督「幽霊に見えるか」 救護妖精「ゾンビに片足突っ込んでるだろうに」 提督「検査か?」 救護妖精「そだよ。朝礼が終わったらするから、今日も提督は一日安静」 提督「……いつになったら働けるようになるのか」 金剛「元気になったらです」 救護妖精「元気になったらね」 提督「…………」 ……………………。 327 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/02(土) 01:09:04.11 ID:qCrR2zLOo 救護妖精「さあ、検査を始めるよー」 提督「…………」 救護妖精「いやー、凄かったねぇ。あんなに艦娘に囲まれる人は初めて見たよ。まず脈から計るねー」 提督「今日ばかりは言う事を聞いてくれなったな……」 救護妖精「整列の一言でビシッとしていたじゃないか」 提督「あそこまで言わなければならなかったのが問題だ」 救護妖精「良い事じゃないか。それだけ心配していたという証さ。んー、やっぱり脈が弱いね」 提督「…………」 救護妖精「それで、提督の事だ。何か話したい事があるんじゃないかい? はい、ちょっと眩しいよー」 提督「そうだな。聞きたい事がある」 救護妖精「なんだい? うーん。ちょっと疲れ気味っぽいねぇ」 提督「原典」 救護妖精「…………次は血液を抜くよ」 提督「カプセル」 救護妖精「……………………」 提督「無くなった資料と人」 救護妖精「………………………………」 提督「さて、そろそろ教えてくれても良いんじゃないか、ドクター」 救護妖精「……もう隠し事はできないようだね」 提督「やっと話してくれるようになったか」 救護妖精「できれば、ひっそりと暮らしたかったからねぇ。手詰まりになるまで話す気はなかったよ。はい、ガーゼ押さえてて」 328 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/02(土) 01:20:12.29 ID:qCrR2zLOo 提督「という事は、これ以上はドクターでなければ分からないと?」 救護妖精「止めとくれ。私はドクターじゃないよ。……当時の研究者は私を除いてもう居ないし、資料も根こそぎ私がかっぱらった。死んだと錯覚させる量の血もばら撒いたし、他にも行方不明者も出しておいたが……まさか元帥は勘付いてたとはね。正直驚いたよ」 提督「一人称」 救護妖精「今は良いだろう? 『あたし』って言い難いよ」 提督「それにしても、よくバレなかったな」 救護妖精「一人称は違うし髪型も違う。当時は声がもっと暗かったし、喋り方もこんなにぶっきらぼうじゃなかったよ。気付かれなくて当たり前じゃないかいね。人間にとって妖精なんざ誰も似たようなもんだろ?」 提督「なるほどな。では、なぜ施設の人間を皆殺しにして資料を全部奪ったんだ?」 救護妖精「あれ以上、犠牲者を出したくなかったのさ。どうせ知ってるんだろう? 艦娘の素体は人間だっていうのを」 提督「ああ。素体にする為の資料も手に入れてきた」ガサ 救護妖精「……まだ残っていたのかい、その資料」 提督「本棚の下にあったメモを元に作られたそうだ」 救護妖精「ああ……無くしたと思ったメモ、そんな所にあったのかい……失敗したなぁ……」 救護妖精「ちょっと見せとくれ。…………ダメだね。完全に復元されてる。これじゃあ私のやってた研究も、全部元通りにされるのは時間の問題か……まいったなぁ……」 提督「今の所、その資料の内容くらいしか進んでいないそうだ」 救護妖精「ふぅん……案外遅いもんだね」 329 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/02(土) 01:34:23.92 ID:qCrR2zLOo 提督「あと、なぜ施設自体は破壊しなかった?」 救護妖精「……可哀想だったからだよ」 提督「可哀想?」 救護妖精「まだ生きてるんだよ、あのカプセルの中に入ってる子達は」 提督「…………」 救護妖精「今更何を言ってるんだって話だけど、あの子達はなんの罪も無い普通の子達なんだ。カプセルから出すには意識が戻るまでに時間が掛かる。だけど殺したくない。……こんな中途半端な気持ちだからあのままにしちまったのさ」 提督「…………」 救護妖精「調整や精神面の管理は私がしていたから、全員、私が診ているんだよね。その時に色々と話したりもした」 救護妖精「そんなある日さ、いつものようにあの培養液へ入れようとしたんだよ。普通の子は嫌がったり怖がったりするんだよ。本能で分かるんだろうね。でも、その子だけは別でさぁ……なぜか、にっこり笑ってきたんだよ。まるで疑う事もなく、私を信用してるかのように……」 提督「…………」 救護妖精「初めてだったよ。自ら進んであの培養液に入る子なんてさ。私はそれで壊れちまったんだろうね……。その出来事で、私はあの施設を事実上のブラックボックスにすると決めた」 提督「職員全員を殺したのはなぜだ?」 救護妖精「全員、その出来事をなんとも思わなかったそうだ。手間が省けた程度の認識だったそうだよ」 提督「そうか……」 救護妖精「……私には、あの子達を生かすにはあれしかないと思った。現状、艦娘は必須だからね。殺される事はないから出来た」 330 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/11/02(土) 01:46:21.53 ID:qCrR2zLOo 救護妖精「そっかぁ……ここまで解明されちゃってるのかぁ……」 救護妖精「……という事は、もう既に新しい犠牲者が?」 提督「……ああ」 救護妖精「はぁ……。何の為に私は逃げたんだか……」 提督「確かに犠牲者は出てきているが、それが最小限に抑えられているのもまた事実だ」 救護妖精「気休めは結構さ……」 提督「そして、これからその被害を無くす事もできる」 救護妖精「……何を言ってるんだい提督」 提督「あの研究者と資料、そして海軍の黒い部分を根絶やしにすれば、艦娘の技術は永遠に闇へ葬られるだろう」 救護妖精「何を馬鹿な事を……。どうやってそんな事をするんだい」 提督「あの大将共を殺すのは容易い。昨日でそれは充分に分かった。研究者共も全員集めてしまえばこっちのものだ」 救護要請「……正気かい」 提督「勿論」 救護妖精「……………………」 提督「…………」 救護妖精「はぁ……ダメだねこりゃ。本気の目だ」 救護妖精「──さすがだね、ホムンクルス」 335 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/02(土) 02:08:38.87 ID:qCrR2zLOo 提督「……やはりか」 救護妖精「おや、気付いていたのかい」 提督「その資料を見ればなんとなく、な」 救護妖精「それもそうか。それじゃあ提督──」 救護妖精「真実を話そうじゃないか」 提督「頼む」 救護妖精「ホムンクルス計画……。艦娘を造る前に、私達は人造人間と強化人間の両方を研究していたのさ。常人よりも優れた肉体を持ち、主人に逆らわない……そんな人間をね」 救護妖精「想像がつくだろうけど、人造人間は全くと言って良いほど進展がなかった。そりゃそうだよね。なんせ魂が無いんだ。どれだけ頑張ってもあれじゃあ肉の塊だよ」 救護妖精「そして、私が所属していた強化人間は、少しずつだけど確実に進んでいた。強靭な身体を持つ所までは大体順調に進んでいったよ。そこから海の上を滑れるような副産物も手に入った」 救護妖精「でも、大きな問題が残っていた。強化された人間はすぐに死んでしまうんだよ」 救護妖精「例え戦艦を沈めるとしても、一日やそこらで死んでしまうようじゃあ使い物にしにくい。だから、強化の度合いを下げていった。勿論、それに比例するように寿命は伸びた。けど、結局は数日で死んでしまう。試行錯誤を繰り返した結果。問題はあるけれど死なない素体が一人、出来上がった」 救護妖精「提督、貴方だよ」 提督「…………」 338 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/02(土) 02:18:30.28 ID:qCrR2zLOo 救護妖精「身体能力は今までと比べて充分に良い結果が出た。けど、死に掛けの状態でないと糖分が摂取できない、身体が不安定といった問題を抱えていた。そこら辺りだったかな、人造人間側と一緒に研究を進めるようになったのは」 救護妖精「提督が見た培養液に提督を入れて、未完成ながらの成功例として様々なデータを取った。結果、私達のやり方は女性になら安定するという事が分かった」 救護妖精「確かに程々に安定して強化人間が作れるようになったけど、問題は強靭さだった」 救護妖精「人類としてはかなり上の方に位置するけど、提督には足元にも及ばない。どう調整してもそこから先に進まなくなった。けど、そこで人造人間側が面白い事をしていたんだ」 救護妖精「機械を人間の身体に取り付けて動かせるようにしていた。もうね、最悪な事にピンと来たよ。これらを組み合わせれば、兵器を身に付けた人間を作り出せるって」 救護妖精「本当にあいつらはやってくれたよ。失敗は結構したけど、兵器を扱える人間が誕生した。原理も仕組みも良く分からなかったけど、とにかく海の上で戦える人間が出来たんだ」 救護妖精「確かに不安定だったけど、成果は上々だったね。船としての駆逐艦を、人間サイズの女の子が撃沈したんだ。充分だったよ」 救護妖精「まさに生きた兵器。動かすのにロスが生まれる軍艦と、自分からノータイムで動かす軍艦、どっちが強いかなんてすぐに分かるもんさ。おまけに、兵器も実物と同じ性能だった」 救護妖精「だけど、そこにも問題は生まれる。素体が人間ベースだからね。身体をやられたら死んじまう。そこで、どうしようかと頭を捻った結果、ベースとなる人間は隔離して、その魂を原典に無機物を動かすのはどうかってね」 救護妖精「ここも私はあまり関われなかったけど、あのカプセルにベースの子を入れて、その子の魂を人工的に複製して、最終的には今と同じ造り方で生きた兵器が造れるようになった」 救護妖精「そこで、提督は要らなくなったんだよね。だって、艦娘は完成しちゃったんだもん」 340 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/02(土) 02:31:32.02 ID:qCrR2zLOo 提督「だが、私はここで生きている」 救護妖精「そう。間抜けな話、ちょっとだけ情が沸いちゃって、それで逃がしちゃった」 提督「逃がした?」 救護妖精「今思えば、提督を逃がした時には壊れるちょっと前だったのかもしれない。だから逃がしたんだと思う」 提督「……元帥は気付いていたんだな」 救護妖精「気付いてたんだろうねぇ。あの人だけ施設に入り浸ってたから、顔を憶えてたんだと思う」 提督「ちっ。どうりでスムーズに士官学校を卒業できて早々と提督になり、今の地位にもなれた訳だ」 救護妖精「たぶん、使えると思ったんだろうね」 提督「……あの元帥のおかげでここまで来れたのも事実だから腹が立つ」 救護妖精「ああそうそう。艦娘に怪しまれてたよ。海の上を滑れる事について」 提督「…………どう誤魔化したんだ?」 救護妖精「あの靴を履いたら水に浮かべるよって実践させたら納得したよ。ただ浮かべるだけで、滑る事なんて出来ない靴で」 提督「感謝する」 救護妖精「良いさ。罪滅ぼしにもなりやしないんだ」 救護妖精「……あと、言わないといけない事がある」 提督「なんとなくは想像がついている。話してくれ」 救護妖精「…………提督さ、家族がどうだったか憶えてるかな」 341 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/02(土) 02:49:39.30 ID:qCrR2zLOo 提督「いや、過去の事についてはほとんど思い出せない。父が私の父というのもいまいち実感できないくらいだ」 救護妖精「そっか……ごめんよ」 提督「構わない。そう思ってくれるだけで充分だ」 救護妖精「……じゃあ言うよ。提督の家族構成は、両親と提督、そして妹が二人だったんだ」 提督「…………」 救護妖精「ん、もう分かったようだね。……そう。あの瑞鶴って子、提督の妹だよ」 救護妖精「本当にさ、びっくりしたよ。深海棲艦を材料に艦娘が造れたっていうんだから。今でも信じられないくらいさ」 提督「なぜ造れたのか、分かるのか?」 救護妖精「さあね。そこら辺の詳しい事情は人造人間側の分野だ。私には良く分からないよ」 救護妖精「だけど……チラッと聞いた話によると、艦娘を造るには強い絆が必要だって言ってたね姉妹が多いのはそういう事なんだよね。例外はちらほらあるけど」 救護妖精「そして、提督の肉親に当たる艦娘は三人。大和、翔鶴、瑞鶴。この三人だよ」 救護妖精「だから、提督に魂が惹かれて深海棲艦から造れたんじゃないかな。記録によると、あの沈んだ深海棲艦からは艦娘の人工魂が出てこなかったみたいだし、深海棲艦に人工魂が残ってたのは確かだと思うよ」 提督「その人工魂が出てこなかった場合は、いずれまた深海棲艦として現れる可能性があるのか」 救護妖精「そうだと思うよ。じゃないと、今頃この海から深海棲艦なんて居なくなってるはずだし。あの国ももう滅亡寸前って話だし」 提督「あの国とは、大国の?」 343 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/02(土) 03:08:18.73 ID:qCrR2zLOo 救護妖精「うん。何をやったんだろうか、艦娘の建造方法をうっかり外に持ち出した馬鹿が情報を盗まれたみたいだよ」 提督「そこの話は本当だったのか……」 救護妖精「どうやらちょっと知ってるみたいだね。じゃあ簡単に言うけど、大国だけじゃなく、この国以外はほとんど滅んでるよ」 提督「……どういう事だ」 救護妖精「どうやらさ、失敗続きの末、大事故が起きたみたい。敵の通信を傍受していた無線に、いきなり暗号も何も無しにメッセージが届いたのさ」 救護妖精「『これ以上この実験に手を出すな。これは我々を殺す──』ここでメッセージが途切れた。ほとんど直訳だけどね。物凄い速度で打ったモールス信号だったらしいよ」 救護妖精「その後、各国の通信が途絶えた。電波が悪いとかそんな話じゃないよ。まったく無くなったのさ」 救護妖精「まだ深海棲艦が少なかった頃さ、周辺の国を調査したみたいなんだけど、どこの国も人が消えてたみたい」 提督「…………」 救護妖精「神様なんて信じないけど、これは天罰だろうね。命を弄んだんだ。命を失って当然さ。この国も実は、結構な人が居なくなってるんだよね。神隠しって事で迷宮入りした大規模行方不明事件があっただろう?」 提督「あれか……」 救護妖精「それで、大混乱が収まってきた頃、深海棲艦がありえないくらい出現した。これは私の予測だけど、消えちゃった人みーんな深海棲艦になったんじゃないかな」 344 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/02(土) 03:28:00.90 ID:qCrR2zLOo 提督「待て。それだとさっき言っていた人工魂の出てこない深海棲艦は全員それなのではないか?」 救護妖精「それは違うと思うよ。ありえないくらい出現した深海棲艦から結構な数の人工魂が出たみたいだから」 救護妖精「みんな、みーんな深海棲艦になっちゃった。そう考えても良いと思う」 提督「では……私たち海軍が戦ってる理由は三つになるのか」 救護妖精「かな? 一つは国民の不安をこれ以上大きくしない為。一つは深海棲艦を駆逐する為。もう一つは……」 提督「広大な土地と資源を手に入れる為……だろうな」 救護妖精「人類がほとんど居なくなった今なら、文字通り世界征服も実現可能だろうしね」 提督「おまけに、残っていれば技術も手に入る」 救護妖精「やる事がえげつないねぇ」 救護妖精「おっと、話が逸れちゃったね。提督の親父さんさ、なんで殺されたと思う?」 提督「やはり殺されたと見て良いのか……。なぜだ?」 救護妖精「提督の親父さんってさ、ものすっごい正義感の強い人だったんだよね。で、そんなだから艦娘の詳細を一切教えなかったんだ」 救護妖精「でも、そんなのいつかバレちゃうよね。しかも、よりにもよって自分の家族が艦娘にされたって知っちゃったんだ」 提督(ああ……だから戦姫は抱き付いて泣いていたと言っていたのか……。戦姫の事だ。愛していたという表現もどうせ家族のように愛してもらっていたという事だろう。翔鶴や瑞鶴も特に懐いていたという理由も分かる。母の写真だけだと思っていたが、本当はあの二人も映っていたのだろうな……) 345 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/02(土) 03:40:18.81 ID:qCrR2zLOo 救護妖精「で、当たり前だけど直訴したみたい。だけど、脅された。なんだったらカプセルごと素体を破壊してやろうかって。そんなこんなで親父さんは言う事を聞いてたみたい。……けど、沖ノ島海域の大規模戦闘の時、交換条件を出された」 提督「この海戦に勝てば三人は生きて返してやろう。といった所か」 救護妖精「正解。それで親父さんは艦娘全員を連れて……や、一隻だけ残ってたんだっけ──まあ、戦闘にいったんだよね。支援艦隊を結成し、向かわせて援護をしてやるからって言って」 提督「やる事がとことん下衆だな」 救護妖精「本当にね……。可哀想だよ……提督の親父さんは家族を取り戻したかっただけなのに……」 提督「戦艦一隻と空母二隻だ。もし成功させられたら損失は大きい上に、父がどう出てくるかも分からない」 救護妖精「理由はそんな所だったよ……。あの元帥から話を聞いていて、当時の私は大して興味を持っていなかったのが恥ずかしい……」 提督「それに関してはなんとも言えない。だが、今は違うだろう」 救護妖精「そりゃね……」 提督「だったら、協力してくれ」 救護妖精「……何にだい」 提督「さっきも言ったとおり、海軍の黒い部分──現在の大将共と研究員を皆殺しにする。そして、艦娘のベースとなっている人々を助ける」 救護妖精「……なに言ってるのさ。何を言ってるのさ!? 艦娘のベースとなった人を助ける!? それ、どうなるのか分からないんだよ!?」 救護妖精「まず間違いなく現存する艦娘は全員消える!! もしかしたら深海棲艦も消えるかもしれないけど、それは保障できない! もし深海棲艦が消えなかったら誰も深海棲艦に勝てない! この世は終わっちゃうのよ!?」 347 名前:>>346はミス。saga入れ忘れてた。[sage saga] 投稿日:2013/11/02(土) 03:42:34.73 ID:qCrR2zLOo 提督「その可能性も考えてある。まず重巡を全員解放する。もしそれで深海棲艦から重巡が消えれば全員を解放すれば良い。もし重巡が一隻でも出てきたら、深海棲艦を全員駆逐してから解放すれば良い」 救護妖精「……なんで重巡なのさ」 提督「一番は私に付き従ってくれる艦娘に重巡が居ないという事。次に、空母や戦艦ほど火力は無いが、駆逐艦や軽巡のように小回りが利く訳でもないから、解放するのであればまだ重巡が一番マシという事だ」 救護妖精「…………もし深海棲艦が消えなかった場合、大将達はどうするの」 提督「アレらはどっちにしろ殺す。どう転んでも邪魔だ」 救護妖精「どうやって殺すのさ。バレるでしょ」 提督「バレない方法がある」 救護妖精「…………」 提督「…………」 救護妖精「……なんとなくやる事が分かったよ、悪党」 提督「ああ。私は悪党だよ」 救護妖精「まったく……反逆罪だよ?」 提督「バレなければ罪に問われんよ」 救護妖精「……それもそうだねぇ」 救護妖精「そっちは分かったけど、研究員はどうするのさ」 提督「アレらが死ねば、あの研究員達を動かせるのは私だけになる。地下にでも集めて皆殺しにすれば良いだろう」 救護妖精「……言う事が恐ろしいねぇ」 提督「悪党だからな」 救護妖精「オッケー。私はその案に乗る。もう既に何人も殺してるんだ。今更、殺しの片棒を担いでもなんともないさ」 提督「では、早速計画を開始しよう──」 …………………… ………… …… 371 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/02(土) 17:48:09.02 ID:qCrR2zLOo 開発妖精「おお? 提督さん、金剛さん、また何か作ってくれるの!?」ワクワク 金剛「ソーリー……今日は違うのデース」 提督「すまないが、今回は頼みがあって来た」 開発妖精「え、頼み? 珍しいね」 提督「物を造る事には変わりないが、少々特殊でね」 開発妖精「ふーん? でも物を造れるんでしょ!? いいよいいよ〜何でも言って〜!」 提督「電波を妨害する機械を造って欲しいのだが、できるか?」 開発妖精「へ? 電波を妨害する機械? たぶん造れるだろうけど、どうしたの一体」 提督「必要になってな」 開発妖精「ふーん……。使う場所と効果範囲とかはどのくらいが良いの?」 提督「使うのは何も無い海の上だ。効果範囲は……そうだな……できれば広い方が良いんだが、どのくらいなら造れる」 開発妖精「半径100メートルくらいなら」 提督「最低でも500は欲しい」 開発妖精「な、何気に難しい事を言ってくれるね……500かぁ……うーん……造れない事はないと思うけど……。でも、そんな物を使い続けてたら身体にどんな影響が出るか分かんないよ?」 提督「使用時間は三十分も無く、使うのは一度切りだが、ダメか?」 開発妖精「うーん……それだったらなんとか……」 提督「無理を言ってすまない」 開発妖精「良いって良いって。ただ、造った事が無い分野だからちょっと時間が掛かると思うよ?」 提督「三日以内に造ってくれるとありがたいのだが」 開発妖精「あ、そなんだ? それくらいなら余裕だねー」 金剛「装備でしたら一瞬で造っちゃいますものネ」 開発妖精「ふふん。そこは自慢なのだ!」 提督「では、良い品を期待しているよ」 開発妖精「はいよー!」 …………………… ………… …… 374 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/02(土) 18:00:13.97 ID:qCrR2zLOo 〜提督室〜 金剛「テートク」 提督「なにかね」 金剛「どうして電波妨害装置が必要なのですか?」 瑞鶴「電波妨害装置?」 提督「ああ、瑞鶴はその場に居なかったな。どうしても必要になってな」 瑞鶴「でも、そんなもの何に使うの? 使い道が全然思い浮かばないんだけど……」 提督「…………」 金剛「……テートク?」 瑞鶴「?」 提督「……今はまだ話せない」 金剛「いずれ、話してくれるのデスか?」 提督「ああ」 瑞鶴「もー……私達にまで秘密って何なのよ……」 金剛「今回ばかりは私も予想すらできまセン……」 提督「時が来たら、必ず話す」 金剛「……もう、仕方がないですね」 瑞鶴「ちゃんと話してよ?」 提督「ああ。ちゃんと話すよ」 提督(……その時は、お別れの時かもしれないがな) 提督「……ところで、今やっている仕事を半分だけ──」 金剛・瑞鶴「ダメ」 提督「……本当に、私はいつになったら仕事が出来るんだ」 …………………… ………… …… 380 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/02(土) 18:08:34.66 ID:qCrR2zLOo コンコン──。 提督「入れ」 ガチャ──パタン 響「…………」 提督「どうした、響」 響「………………っ」 提督「響」 響「!!」ビクン 響「っ」ピシッ 提督「話しなさい」 響「ぅ……はい……」 響「その前に司令官……聞いても引かないでもらえると……嬉しい……」 提督「…………分かった。言ってみろ」 響「……独りは、終わると寂しかった」 提督「……………………」 響「な、何か言ってくれるかな司令官……」 提督「いや……どうしてやったら良いものかと思ってな……」 響「……できれば、なんだけど」 提督(嫌な予感しかしない) 響「司令官……お願いして、良いかな……」 提督「……………………」 響「指で……指で良いから……」 提督「……本当は、良くないと知っていて言ってるのか?」 響「分かってるさ……でも、司令官が鎮守府から離れて寂しかったんだ……。だから、その寂しさを埋めようとしたのに……胸が痛くなるくらいに寂しくなって…………」 提督「…………」 響「我侭を言ってるのは分かってるよ……でも……抑えきれないんだ……」 提督「……仕方がない、な」 響「────! ありがとう、司令官……」 ……………………。 381 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/02(土) 18:14:29.30 ID:qCrR2zLOo お察しの通り、ここからエロしーんに入るので以前のようにまた書き溜めます。 前スレの注意書きを忘れてる人も居るでしょうから、もう一度注意書きを。 エロシーンは常にsage続け、エロが終わったら10レスくらい連続でageます。エロが苦手な人は参考にして下さい。 今回はあまり長く書くつもりがないけど、金剛さんで悲しみを背負っているので以前と同じくらい時間が掛かるかもしれません。 5割 7割 完成ちょっと前の三段階でちまちま報告しますので、エロを見たい人は一時間に一回くらいの頻度で確認する程度で良いかと。 では、書き溜めてきm……金剛おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ…………。 放置ボイスが可愛いのが悔しい。 410 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/02(土) 22:44:57.22 ID:qCrR2zLOo ベッドに腰掛けた私の膝上に、響が座る。 蝋燭の淡い光に照らされた、長い髪からチラリと見えるうなじ──それが、他の駆逐艦の子達には無い大人っぽさをどことなく醸し出している。 「……し、司令官」 顔の半分だけをこちらに向け、怯えが混じった蒼い瞳で私を捉えた。 「……………………」 いくら待っても、少女の口から続きが紡がれる事は無かった。 彼女が何を言おうとしているのかは分かっている。分かっているからこそ、こうして少しだけ不安になるような態度を取っているのだ。 単なるイタズラ心。普段では絶対に見せない、私の秘密。 響はそれに気付くだろうか。小さい子の中でも頭の回転が速い彼女ならば、私が本当はイタズラ好きだというのを見抜けるだろうか。 「司令官……」 響は、捨てられた子犬のようなか細い声で呟いた。普段の彼女では全く思いつかない、寂しさで一杯の声だった。 そろそろイジワルをするのも止めておこう。流石に可哀想に思えてきた。 そっと、抵抗すれば簡単に逃げれる程度の力で抱き締める。 彼女の不安を溶かすように、柔らかく、優しく、出来る限り身体を近付けて抱き締めた。 ビクリと身体を震えさせるも、響は一切の抵抗をしてこない。 むしろ、私に全てを任せるとでも言うかのように、身体を預けてきた。 それの返答に、強く身体を抱き締める事で示す。 『覚悟は出来ているのか?』 そういう意味を込めて、少し痛いであろう力で、この細い肢体を締め付けた。 「んっ……!」 当然、悲鳴が上がる。けれど、その悲鳴には甘く、熱っぽい色が混ざっていた。 「ひゃっ……ん」 大人の反応を示す少女。その少女の耳たぶを、いつぞやのお返しとばかりに唇で挟んだ。 「し、しれい……かん……」 舌先で突くたびに、少女の吐息は少しずつ荒くなっていく。 突くだけではつまらないと思い、時には舐めたり、吸ったりもした。 響は身体を震えさせるも、抵抗する素振りを一切示さず身体を私に預けたままだった。 あまりに無抵抗だったので、彼女を驚かせる事にする。 ガッチリと締め付けていた腕を解き、その代わりに服の下へ手を滑り込ませた。 「っ!」 予想外だったのかどうなのかは分からないが、響は息を呑み、一瞬だけ身体を強張らせた。 けれど、それも本当に一瞬の事。すぐに先程と同じように身体から力を抜き、されるがままの状態となった。 それにしても彼女の身体が熱い。風邪を引いているのでは、と思うくらいに熱く火照っており、少しだけ肌もしっとりと汗ばんでいるようだ。 ふと、一つの可能性が頭に過ぎった。 「さっきまで、自分で慰めていたな」 その囁きに、響はヒッと小さく悲鳴を漏らした。 「ああ、やはりか。通りで身体が熱いし、汗を掻いているんだな」 わざと言葉にして、辱める。 恐らく、彼女の顔は今まで見た事がないくらいに真っ赤になっているだろう。 そして、乱された心を立ち直らせる間を置かず、彼女の小さな丘と秘部へ手を伸ばした。 「あっ……!」 丘の頂点にはぷっくりと自己主張をした乳首が、布でガードしていない秘部は触れるだけでぬるりとした液体が手に付いた。 411 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/02(土) 22:45:29.23 ID:qCrR2zLOo 「ほら、こんなになっている」 「っ……! ぃ……ぁッ!」 さするように胸の外周を撫で、触るだけでスジだと分かるソコは優しく撫で上げる。 響にとってはこれだけでも刺激が強いのだろう。身体をビクつかせながら声を殺している。 「それにしても、凄い濡れようじゃないか。たった数回だけ指で撫でただけなのに、もう手がびしょびしょだ」 「…………ッぁ! は、っん……!」 「なるほどな。下着を穿いていないのも頷ける。これでは下着の意味が無い」 「っィ!! ひ、は……ぁっ!」 「まあ……このままの状態でよくここまで来れたと思うよ。変態ではあるがな」 「〜〜〜〜〜〜っっ!」 軽く辱めるよう言葉を選ぶ。案の定、彼女は声になっていない声で啼く事となった。 「響はどこが好きなのだろうな?」 そこに追撃を掛けるべく、響の身体を確かめるようにまさぐった。 ここか──と問い掛けながら、一つ一つ確認していく。 まずは胸の外周を一本の指で円を描くようになぞった。 次に、その円の大きさを小さくしていき、固くなった頂点へ大きく迂回しながら近付ける。 指が乳首に触れそうになると円を大きくして、離していく。 「ぁ……あぁ…………」 残念そうな声が聴こえてきた。 しかしその声を無視して、今度はスジの通った秘部に添えた手を動かす。 盛り上がった部分を、胸と同じように外周をなぞって焦らした。 決して直接の性感帯に触れず、とことんズラシ続けてなぞった。 「はー……っ! は、ぁー……っ!」 そんな事を十分も続けていると、響の呼吸は深く、大きくなっていた。 心臓がバクバクと早鐘を打っているのも分かる。 しかし、彼女は手を出さない──いや、出させなくした。 途中で何度か手を押さえつけようとしてきたので、その度に触れる事すらせず放置。そんな事を何回も繰り返したので、彼女は手を出そうにも出せなくなった。 手を出したくなるほど焦らされ続けているが、手を出すと触ってもらう事すらなくなる。 物理的に拘束するよりも、こういった精神的な拘束の方が遥かにもどかしい。 その証拠に響の膣口からは愛液が溢れ出ており、一撫ででもすれば手の平全体がびしょびしょになるであろう量の汁だ。 そんな、健気に焦らされ続けた彼女に、耳元で囁いた。 「よく頑張った。ご褒美だ」 そう言ってスジに指一本、割れ目全体に沈み込ませるように押し付けた。 「────ゃぅっ!!」 甲高い嬌声で一啼き。 焦らしに焦らされた幼い恥丘には、触れるだけでも充分な刺激だったようだ。 指全体をゆっくりと動かし、固くなったクリトリスを痛くしないように撫で、指先で膣口をくすぐった。 同時に、ピンと張った乳首も捏ねるように弄んだ。 「〜〜〜〜ッ! っぃ……ひ、ぅ──!」 直接触りだしてから、押し殺した甘い悲鳴をずっと漏らしている。 そんな姿が可愛くて、もう少しイヂメようとした。その時に、 コンコン──。 と、ノックが部屋に響き渡った。 「────!!!」 響がビクリと身体を跳ねさせた。 私も一瞬驚いた──が、すぐに良い事を思いついた。 燭台の火を吹き消し、カーテンを閉めて準備を整える。 コンコン──。 「入れ」 「────ッ!?」 二度目のノックに対して、私は返事をして招き入れる事にした。 「提督、起きてる? って、寝てたのね……ごめん……」 扉が開くと、島風の声が薄いカーテンの向こう側から聴こえてきた。 「いや、構わない。すまないが、電気は付けないでくれ。寝起きは少し眩しい」 「はーい」 「ところで、こんな時間にどうした?」 そう言いつつ、止めていた手を動かし始めた。 「──────!!!」 蚊が囁いたのかと思える程の小さい悲鳴。その声の主は、今私に弄ばれている響だ。 412 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/02(土) 22:46:56.85 ID:qCrR2zLOo 「んっとね。響がどこに行ったか知らない?」 「ッ!!」 「いや、知らない。どうかしたか?」 くすぐっている膣口に第一関節分だけ挿れて、ゆっくりと円を描く。 「こんな時間なのに響が居なくて、他の皆が不思議がってるの」 真っ暗だが、響が口を押さえたというのが分かった。 それに対して、膣の入り口をほぐしていた指を引き抜き、押さえている腕に手を乗せた。 「だから、提督なら知ってるかなーって」 フルフルと首を振る少女。その顔は、恐らく酷く困った表情を浮かべているのだろう。 「……響」 一言、島風にもハッキリと聴こえるように、膝の上の少女の名を呼んだ。 彼女は本日何度目かのビクつきで身体を跳ねさせた。 私の言っている意味が分かっているのだろう。首を先程と同じく横に振らせている。 「そうだな……思い当たる節はある」 そう言ってから、例えば私の膝の上とか──と、響にしか聴こえない小さな声で囁いた。 「〜〜〜〜〜〜…………」 それで諦めたのか、響が腕を下ろした。 下ろしたのを確認すると、私はまた指の先を膣へ挿れてほぐし始めた。 「食堂の方はどうだった? 喉が渇いて向かったのかもしれないぞ」 「────っ……っ!」 手で押さえるという保険が無くなった途端、響は身体に力を入れた。 必死になって声を出さないようにしているのが分かる。 事実、少しだけ潜り込ませている指先が締め付けられている。 「ううん。居なかったよ」 「そうか。食堂の方には居なかったか」 その締め付けに逆らい、指をほんの少しずつ沈み込ませる。 「────!!」 まだ少し固い、処女膜付近の肉壁をゆっくり少しずつ、痛くしないように掻き回す。 「なら、シャワー室はどうだった?」 「〜〜〜〜ッッ」 ビクビクと、身体を震えさせながら響は声を押し殺していた。 「そこにも居なかったよー」 「そうか。そこにも居なかったか」 膣が半ば痙攣しているように蠢いている。 バレるかもしれないというこの状況が、より性感を高めているのだろう。 私は、お腹側の膣壁を押さえながら指を根元付近まで挿し込んだ。 「────────っ!!!」 「化粧室にも居なかったのか?」 一気に膣が狭まった。指を痛いくらいにキュウキュウと締め付けてきて、少女はビクビクと痙攣させている。 それでもおかまいなしに、水音が鳴らないようほぐし続ける。 「うん。居なかった」 痙攣が止まるなく、響は声を殺し続けた。 「そうだな、私も少し探してみよう。島風は戻っておけ。入れ違いになっても困るだろう」 「────っ!! ッ! 〜〜〜〜!!!」 うねる肉ヒダを掻き分け、擦り続ける。 必死になって声を抑えて、その声を島風に届かせずにしている少女。 その幼気な姿が、とても可愛らしく見えた。 「はーい」 膝の上の少女とはまた違った幼気な声で返事をして、島風は帰っていった。 扉が閉まる音と共に、部屋に静寂が訪れる。 いや、正確には静かではない。甘ったるい熱を帯びた吐息が木霊していた。 「……っはぁ! は、ぁあぁぁ!」 それも長くは続かなかった。 一層強く膣が狭くなったと思うと、震えた声で、彼女は初めて艶かしい声を上げた。 身体は大きく痙攣しており、ほとんどの抵抗を示さなかった彼女の手は、私の腕を痛く握って快感に耐えているようだ。 それが十数秒続いた後、彼女は今まで通り身体を預けてきた。 ぐったりと、体力を使い果たしたように。 413 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2013/11/02(土) 22:47:39.10 ID:qCrR2zLOo 「は……っ! はぁ……ぁ、っぅ……あぁ…………」 そんな表情を浮かべているのだろうと思い、マッチを手に取る。 しかし、片手は響の両手と膣で固定されていて動かせない。 悩んだ末、中指と小指で箱を挟み、人差し指と親指でマッチを摘んで火を点けた。 ──む、箱が落ちた。まあ良いか……。 燭台に火を灯すと、響の顔がよく見れた。 顔は紅潮し、虚ろな目は空中を捉え、半開きになった口からはぬらりと光る唾液が光っている。 「響、大丈夫か?」 呼びかけてみるが、反応が無かった。……もう少しこのままにしていよう。 「……люблю…………я」 ロシア語だったのか、なんて言っていたのか分からなかった。 「うん? リュブリー、ビャ?」 聴き取れた部分だけを繰り返すと、その言葉に反応したのか、響はこっちへ──やはり半分だけ──顔を向けた。 虚ろな目はそのまま、ニコリと微笑み、 「Я……люблю те……бя…………」 ヤ・リュブリュー・ティビャ? と言った。 残念ながらロシア語は分からないが、何が言いたいのかはなんとなく分かった。 「──ありがとう、響」 自由に動かせる左腕で響を抱き、頬にキスをした。 それに満足したのか、彼女は目を閉じ、小さな寝息を立て始めた。 よほど疲れたのだろうな……。 「スパコイナイ・ノーチ」 彼女からすれば苦笑いをされるであろう幼稚なロシア語。 だが、腕の中の少女は、柔らかく笑ってくれた気がした──。 …………………… ………… …… 442 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/11/03(日) 21:27:36.22 ID:Ah3KN2S/o 響「ただいま」 雷「あ、おかえりなさい!」 暁「もう、どこに行ってたのよ」 電「心配したのです……」 島風「おかえりー。どこに行ってたの?」 響「外だよ。夜の海を見たくなって、あちこち動き回ってた。何も言わずに行ってしまってごめんよ」 島風「あれ? 外なら私も行ったよ?」 響「ん、そうなのかい? じゃあ行き違いになってたのかな……」 島風「そっかぁ」 響「司令官にはこってり叱られてしまったよ。同じ部屋の人に何か言ってから出掛けるようにってね」 暁「とにかく、無事で良かったわ」 電「ふぁ……安心したら眠くなってきちゃったのです……」 島風「それじゃあ、もう寝よっか」 電「はいなのです」 雷「…………んー」 響「ん、どうしたんだい雷」 雷「…………」ジー 響「?」 雷「大人になったわね、響」ヒソ 響「ッ!?」ビクン 雷「大丈夫よ、誰にも言わないから!」ヒソ 響「…………」コクン 響(雷……。初めて雷が怖いって思ったよ……) …………………… ………… …… 444 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/11/03(日) 21:38:08.72 ID:Ah3KN2S/o コツッコツッ── 提督(ん、こんな時間に誰だ? 響か島風……もしくは金剛か瑞鶴か?) 提督「入れ」 ガチャ──パタン 榛名「夜分遅く、失礼します」ペコ 提督「榛名か。どうした」 榛名「あの……眠れないので散歩をしようと思ったのですが、いつのまにかここへ……」 提督「ふむ……」 提督(暗示を掛けるのには丁度良いか) 提督「分かった。明かりを点けてくれ」 榛名「はい」 パチッ── 提督「ありがとう。──眠くなるまで雑談をしよう。私も寝付きが悪かった所なんだ」 榛名「提督さん、ありがとうございます!」 ……………………。 445 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/11/03(日) 21:54:50.14 ID:Ah3KN2S/o 提督「待たせた」カチャ 榛名「いえ、本当ならば私が淹れるべきですのに……」 提督「せめてこのくらいはさせてくれ。何もしてはいけないというのは苦痛だ」 榛名「はい……」 提督「今日はいつもと違う茶葉を使ってみたが、どうかね」ズズッ 提督「……………………」 榛名「そうなのですか? では、いただきますね」コクコク 榛名「──あっ、なんだかほんのりと柔らかい甘みがあります! 色はほとんど変わらないのに、茶葉でこんなに 変わるなんて──って、提督さん?」 提督「……………………」 榛名「え、え? ど、どうかしたのですか? そんなにうな垂れて……」 提督「甘かった……」 榛名「え……? 甘い……あっ!」 提督「甘いのは苦手なんだ……」 榛名「そういえば、提督さんは甘い物がダメでしたね……大丈夫ですか?」サスサス 提督「甘みも少なく……糖分は入っていないようだからなんとか……背中、さすってくれてありがとう……」 榛名「え、えっと……何か袋をお持ちしましょうか……」サスサス 提督「いや、だいぶ楽にはなってきた……。だが、水を持ってきてもらって良いかな……」 榛名「は、はい!」 ……………………。 446 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/11/03(日) 22:06:30.42 ID:Ah3KN2S/o 提督「……うむ。もう大丈夫だ」 榛名「良かった……。でも、あんなに仄かな甘みでもダメなのですね……」 提督「二度とこの紅茶は口にしないようにしよう」 榛名「その方が宜しいですね……こんなになるのですから……」 提督「手を貸してくれてありがとう」スッ 榛名「っ…………」ピクン 提督「…………」ナデナデ 榛名「はぅ……」ホッコリ 提督「最初と比べて、だいぶ怖がらなくなってきたようだな」ナデナデ 榛名「あ…………そういえば……」 榛名「あ、その……ごめんなさい……ほとんど反射的なもので……」 提督「いや、構わない。それだけ怖くなくなっているという事ではないか」ナデナデ 榛名「────ありがとうございます」ニコ 提督「……ここに居る限りは、もう怖がる事はない」ナデナデ 榛名「…………本当に、そうなのでしょうか」 提督「勿論だ」ナデナデ 榛名「ですが……提督が……いらっしゃい、ます……」 提督「榛名?」ナデ 榛名「あれ……頭が……ボーっと……」 榛名「して…………………………?」 榛名「……………………」 提督(薬が効き始めたか。では、始めるか──) ……………………。 447 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/11/03(日) 22:17:11.11 ID:Ah3KN2S/o 提督(そろそろ薬が切れてくる頃だな) 提督「目を閉じろ。──おやすみ、榛名」 榛名「おやす、み…………」スッ 提督(さて……この子はベッドに寝かせて、私はソファで寝るとしよう)ヒョイ 榛名「…………」 提督(よいしょ……っと)ソッ 提督(さて……寝るか)スッ 榛名「──やだ」ガシッ 提督「む」 榛名「やだぁ……」 提督「……榛名?」 榛名「独りは……やだ……」 提督(……起きている、という事はなさそうだな。では、夢か何かか?) 提督(…………離してくれそうにないな……仕方がない……) 提督「…………」モゾモゾ 榛名「…………」ギュ 提督(……完全に逃げれなくなったな。もう諦めるか……) 提督「……おやすみ、榛名」 榛名「…………」スゥ …………………… ………… …… 448 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/11/03(日) 22:29:49.54 ID:Ah3KN2S/o 榛名「ん…………」スッ 榛名(あれ……真っ暗……? ここ、どこ……?)モゾ 榛名「…………?」 榛名(私、何かを抱き締めてる……? なんだろう、これ……温かいけど、なんだかゴツゴツしてる) 提督「む……起きたか」 榛名「──え!? え、ええ!? ど、どういう事ですかこれ!? なんで、私……え……?」 提督「何も憶えていないのか?」 榛名「えっと…………。なんだか、寝惚けて抱き締めた記憶が……」 提督「それが私だ」 榛名「……えっと、つまり……眠ってしまった私を運んで、こうなったのでしょうか……?」 提督「正解だ」 榛名「ご、ごめんなさい!」バッ 提督「いや、構わんよ。カーテンを開けてくる」スッ 榛名「は、はい……」 シャッ──! 榛名「ん、眩しい……」 提督「簡単に説明すると、前と同じように眠ってしまった榛名をベッドへ寝かせたら抱き付いてきて離してくれな かった。……不本意かもしれないが、一緒に眠らせてもらった」 榛名「ごめんなさい! 迷惑を掛けてしまって!」ペコ 提督「いや、構わんよ」 榛名「ですが……」 449 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/03(日) 22:38:35.01 ID:Ah3KN2S/o 提督「……このまま…………」 榛名「え?」 提督「いや、なんでもない」 榛名(提督さんは、何を隠しているのでしょうか……) コンコン──。 提督「入れ」 ガチャ──パタン 金剛「グッモーニング! テートクー!」 提督「おはよう金剛」 金剛「あれ、榛名も早いデスね。グッモーニング!」 榛名「おはようございますお姉様」 提督「機嫌が良いようだが、何かあったのか?」 金剛「ふふーん。とっても良いドリームを見たのデス!」 提督「ほう」 金剛「テートクと結婚して、子供を授かって、幸せな家庭を築いている夢でシタ!」 提督「…………」 榛名「…………」 450 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/03(日) 22:48:55.94 ID:Ah3KN2S/o 金剛「なーんで黙っちゃうのデスか二人共!!」 提督「いや……驚いて何も言葉が出てこなかった」 榛名「私もです……。艦娘は子供を宿しませんよね……?」 金剛「ぶー。夢の中くらい良いじゃないデスか」 金剛「まあ、私としては子供が出来なくても、それはそれで色々と楽しめそうデスけどネ?」チラ 提督「朝から何を言っているんだ……」 榛名「お姉様……」 金剛「ふふっ。私はいつでもウェルカムですヨ?」 提督「いい加減に夢から覚めろ」コツッ 金剛「アウッ! ぅー……ごめんなさい……」 提督「分かれば宜しい」 榛名「…………?」 金剛「? どうしました榛名?」 榛名「いえ……。あ、あの……提督さん、変なお願いをしても良いでしょうか……」 提督「内容によるが、まずは言ってみろ」 榛名「先程お姉様を叩きましたけど、私にも同じように叩いてください」 金剛「…………?」 提督「何か悪い事でもしたのか?」 榛名「いえ……ちょっと気になってしまって……」 提督「…………不思議な子だ。──いくぞ」コツッ 榛名「…………? ……………………?」 451 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/03(日) 22:59:50.29 ID:Ah3KN2S/o 提督「どうした」 榛名「いえ……まったく痛くなかったので……」 提督「当たり前だ」 金剛「提督は痛い事を絶対にしないデスよ?」 榛名「…………?」 提督「何やら大きく誤解されているようだ」 榛名「怒っているのに、痛く……しないのですか?」 提督「私は怒っていない。叱っている。感情的に人を傷付けるなんて事はせんよ」 榛名「……………………」 提督「本当だ。信用できないか?」 榛名「いえ……こんな世界もあるのですね、と思いまして……」 提督「ここは私の城だからな。私のやりたいようにやらせてもらっている」 金剛「そんなテートクが大好きデス!」ギュー 提督「……とうとう金剛も吊るされる事となるか」 金剛「えー……愛の表現もダメなのデスかー……?」 提督「時間と場所を弁えろと言っている」 金剛「はーい……」 提督「金剛」 金剛「はいっ!」ピシッ 提督「返事は延ばすな」 金剛「ごめんなさい……」 452 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/03(日) 23:08:36.36 ID:Ah3KN2S/o 提督「まったく……良い夢を見て気分が良いのは分かるが、そろそろ皆も来る。いつものようにしていなさい」 金剛「はいっ」 榛名「……………………」 榛名(優しいのですね、提督……。────!)ハッ 榛名(あれ……今……?) 提督「ところで金剛、手に持っている書類を見せてくれ」 金剛「仕事をしてはいけませんヨ?」 救護妖精『洗脳が完全って訳でもないんだよね。急に洗脳が解けたり、違和感が生まれて本当の提督を思い出す艦娘とか居るみたい』 榛名(……もしかして) 提督「私宛の機密書類があるかどうかの確認だ」 金剛「それなら……。はい、どうぞ」 救護妖精『洗脳できた艦娘は一部の提督にしか渡されてないよ──当時の大将とか、元帥とかにしか』 榛名(私の、本当の提督は……) 提督「……ふむ。特に無いようだな。残念だ」 金剛「もう……提督はしっかりと身体を治してくだサイ」 提督『世の中には、知らない方が良い事もある』 榛名(このお方……?) …………………… ………… …… 453 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/03(日) 23:09:17.66 ID:Ah3KN2S/o 提督「──との事で本日は進める。異論がある者は手を上げてくれ…………居ないようだな。それでは、か……くじ……────」 ガクン── 金剛「提督!?」 瑞鶴「提督さん!?」 金剛「──島風! 救護妖精を呼んできて!!」 島風「はい!!」 金剛「瑞鶴は砂糖を!!」 瑞鶴「分かったわ!」 金剛「他の人は救護妖精が来た時に邪魔にならない場所へ移動!!」 全員「はい!」 金剛(後はベッドへ運んで、いつでも寝かせれるようにしておけば……!!) ……………………。 救護妖精「……うん。低血糖だろうね、これ」 金剛「やっぱりですか……」 救護妖精「んー、これ以上できる処置が無いね。やったの誰?」 金剛「私ですが……」 救護妖精「適切な処置だと思うよ。提督は良い秘書を持ったねー」 金剛「ありがとうございます。それより……提督は大丈夫なのでしょうか」 救護妖精「本当に良い秘書だねぇ……。問題ないよ。このまま起きなかったら同じように口に砂糖を突っ込んだら良いさ」 救護妖精「まあ、起きるまで私が側に居るから安心していな」 金剛「はい。お願いします」ペコ 全員「…………」ペコ 救護妖精(本当に好かれてるねぇ。どっかのしぶとかった誰かとは大違いだ) ……………………。 454 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/03(日) 23:09:50.15 ID:Ah3KN2S/o 提督「ん……」 金剛「!! 提督、起きたのですね!」 提督「…………どうやら皆に迷惑を掛けてしまったようだな。すまない。そしてありがとう」 金剛「良かった……目を覚ましてくれて……」 提督「そう簡単に死なんさ。だから泣くな」 金剛「はい……はい……っ!」 救護妖精「んー……良い雰囲気のところ悪いんだけどさ、提督、一つ良いかな」 提督「なにかね」 救護妖精「寝不足と疲労と糖分不足が原因っぽいんだけどさぁ……なんでなのかな?」ニコ 提督「…………」 救護妖精「疲労はまだ分かるんだけどさぁ……? どうして寝不足っぽい症状も出てるのかなぁ……?」 提督「……なぜだろうな」 救護妖精「ちゃんと休めやこらぁぁあ!!! どーせまたなんか個人的な理由で寝不足になったんでしょうが!!」 響(わ、私のせいなのかな……)ビクビク 榛名(私が昨日、遅くに押しかけたから……)ビクビク 提督「……すまん」 救護妖精「こんなんじゃいつまで経っても治りやしないよ!!」 提督「善処する……」 救護妖精「信用できないね! 監視役が必要なんじゃないかな!?」 金剛(秘書として監視役を……) 瑞鶴(監視役になったら私もずっと一緒に……) 響(監視役になれたら、司令官ともっと長く……) 榛名(その役に私がなると、あの疑問も解けるのでしょうか……) 提督「冗談はやめてくれ。それこそ心労が溜まる」 救護妖精「それもそうだよね」 四人「!!」ガーン 救護妖精「まあとにかく、一日中寝るくらい休みなよ」 提督「なんとかしてみるよ。ありがとう」 救護妖精「はいよ。じゃあまたね〜」 …………………… ………… …… 442 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/11/03(日) 21:27:36.22 ID:Ah3KN2S/o 響「ただいま」 雷「あ、おかえりなさい!」 暁「もう、どこに行ってたのよ」 電「心配したのです……」 島風「おかえりー。どこに行ってたの?」 響「外だよ。夜の海を見たくなって、あちこち動き回ってた。何も言わずに行ってしまってごめんよ」 島風「あれ? 外なら私も行ったよ?」 響「ん、そうなのかい? じゃあ行き違いになってたのかな……」 島風「そっかぁ」 響「司令官にはこってり叱られてしまったよ。同じ部屋の人に何か言ってから出掛けるようにってね」 暁「とにかく、無事で良かったわ」 電「ふぁ……安心したら眠くなってきちゃったのです……」 島風「それじゃあ、もう寝よっか」 電「はいなのです」 雷「…………んー」 響「ん、どうしたんだい雷」 雷「…………」ジー 響「?」 雷「大人になったわね、響」ヒソ 響「ッ!?」ビクン 雷「大丈夫よ、誰にも言わないから!」ヒソ 響「…………」コクン 響(雷……。初めて雷が怖いって思ったよ……) …………………… ………… …… 444 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/11/03(日) 21:38:08.72 ID:Ah3KN2S/o コツッコツッ── 提督(ん、こんな時間に誰だ? 響か島風……もしくは金剛か瑞鶴か?) 提督「入れ」 ガチャ──パタン 榛名「夜分遅く、失礼します」ペコ 提督「榛名か。どうした」 榛名「あの……眠れないので散歩をしようと思ったのですが、いつのまにかここへ……」 提督「ふむ……」 提督(暗示を掛けるのには丁度良いか) 提督「分かった。明かりを点けてくれ」 榛名「はい」 パチッ── 提督「ありがとう。──眠くなるまで雑談をしよう。私も寝付きが悪かった所なんだ」 榛名「提督さん、ありがとうございます!」 ……………………。 445 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/11/03(日) 21:54:50.14 ID:Ah3KN2S/o 提督「待たせた」カチャ 榛名「いえ、本当ならば私が淹れるべきですのに……」 提督「せめてこのくらいはさせてくれ。何もしてはいけないというのは苦痛だ」 榛名「はい……」 提督「今日はいつもと違う茶葉を使ってみたが、どうかね」ズズッ 提督「……………………」 榛名「そうなのですか? では、いただきますね」コクコク 榛名「──あっ、なんだかほんのりと柔らかい甘みがあります! 色はほとんど変わらないのに、茶葉でこんなに 変わるなんて──って、提督さん?」 提督「……………………」 榛名「え、え? ど、どうかしたのですか? そんなにうな垂れて……」 提督「甘かった……」 榛名「え……? 甘い……あっ!」 提督「甘いのは苦手なんだ……」 榛名「そういえば、提督さんは甘い物がダメでしたね……大丈夫ですか?」サスサス 提督「甘みも少なく……糖分は入っていないようだからなんとか……背中、さすってくれてありがとう……」 榛名「え、えっと……何か袋をお持ちしましょうか……」サスサス 提督「いや、だいぶ楽にはなってきた……。だが、水を持ってきてもらって良いかな……」 榛名「は、はい!」 ……………………。 446 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/11/03(日) 22:06:30.42 ID:Ah3KN2S/o 提督「……うむ。もう大丈夫だ」 榛名「良かった……。でも、あんなに仄かな甘みでもダメなのですね……」 提督「二度とこの紅茶は口にしないようにしよう」 榛名「その方が宜しいですね……こんなになるのですから……」 提督「手を貸してくれてありがとう」スッ 榛名「っ…………」ピクン 提督「…………」ナデナデ 榛名「はぅ……」ホッコリ 提督「最初と比べて、だいぶ怖がらなくなってきたようだな」ナデナデ 榛名「あ…………そういえば……」 榛名「あ、その……ごめんなさい……ほとんど反射的なもので……」 提督「いや、構わない。それだけ怖くなくなっているという事ではないか」ナデナデ 榛名「────ありがとうございます」ニコ 提督「……ここに居る限りは、もう怖がる事はない」ナデナデ 榛名「…………本当に、そうなのでしょうか」 提督「勿論だ」ナデナデ 榛名「ですが……提督が……いらっしゃい、ます……」 提督「榛名?」ナデ 榛名「あれ……頭が……ボーっと……」 榛名「して…………………………?」 榛名「……………………」 提督(薬が効き始めたか。では、始めるか──) ……………………。 447 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/11/03(日) 22:17:11.11 ID:Ah3KN2S/o 提督(そろそろ薬が切れてくる頃だな) 提督「目を閉じろ。──おやすみ、榛名」 榛名「おやす、み…………」スッ 提督(さて……この子はベッドに寝かせて、私はソファで寝るとしよう)ヒョイ 榛名「…………」 提督(よいしょ……っと)ソッ 提督(さて……寝るか)スッ 榛名「──やだ」ガシッ 提督「む」 榛名「やだぁ……」 提督「……榛名?」 榛名「独りは……やだ……」 提督(……起きている、という事はなさそうだな。では、夢か何かか?) 提督(…………離してくれそうにないな……仕方がない……) 提督「…………」モゾモゾ 榛名「…………」ギュ 提督(……完全に逃げれなくなったな。もう諦めるか……) 提督「……おやすみ、榛名」 榛名「…………」スゥ …………………… ………… …… 448 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/11/03(日) 22:29:49.54 ID:Ah3KN2S/o 榛名「ん…………」スッ 榛名(あれ……真っ暗……? ここ、どこ……?)モゾ 榛名「…………?」 榛名(私、何かを抱き締めてる……? なんだろう、これ……温かいけど、なんだかゴツゴツしてる) 提督「む……起きたか」 榛名「──え!? え、ええ!? ど、どういう事ですかこれ!? なんで、私……え……?」 提督「何も憶えていないのか?」 榛名「えっと…………。なんだか、寝惚けて抱き締めた記憶が……」 提督「それが私だ」 榛名「……えっと、つまり……眠ってしまった私を運んで、こうなったのでしょうか……?」 提督「正解だ」 榛名「ご、ごめんなさい!」バッ 提督「いや、構わんよ。カーテンを開けてくる」スッ 榛名「は、はい……」 シャッ──! 榛名「ん、眩しい……」 提督「簡単に説明すると、前と同じように眠ってしまった榛名をベッドへ寝かせたら抱き付いてきて離してくれな かった。……不本意かもしれないが、一緒に眠らせてもらった」 榛名「ごめんなさい! 迷惑を掛けてしまって!」ペコ 提督「いや、構わんよ」 榛名「ですが……」 449 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/03(日) 22:38:35.01 ID:Ah3KN2S/o 提督「……このまま…………」 榛名「え?」 提督「いや、なんでもない」 榛名(提督さんは、何を隠しているのでしょうか……) コンコン──。 提督「入れ」 ガチャ──パタン 金剛「グッモーニング! テートクー!」 提督「おはよう金剛」 金剛「あれ、榛名も早いデスね。グッモーニング!」 榛名「おはようございますお姉様」 提督「機嫌が良いようだが、何かあったのか?」 金剛「ふふーん。とっても良いドリームを見たのデス!」 提督「ほう」 金剛「テートクと結婚して、子供を授かって、幸せな家庭を築いている夢でシタ!」 提督「…………」 榛名「…………」 450 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/03(日) 22:48:55.94 ID:Ah3KN2S/o 金剛「なーんで黙っちゃうのデスか二人共!!」 提督「いや……驚いて何も言葉が出てこなかった」 榛名「私もです……。艦娘は子供を宿しませんよね……?」 金剛「ぶー。夢の中くらい良いじゃないデスか」 金剛「まあ、私としては子供が出来なくても、それはそれで色々と楽しめそうデスけどネ?」チラ 提督「朝から何を言っているんだ……」 榛名「お姉様……」 金剛「ふふっ。私はいつでもウェルカムですヨ?」 提督「いい加減に夢から覚めろ」コツッ 金剛「アウッ! ぅー……ごめんなさい……」 提督「分かれば宜しい」 榛名「…………?」 金剛「? どうしました榛名?」 榛名「いえ……。あ、あの……提督さん、変なお願いをしても良いでしょうか……」 提督「内容によるが、まずは言ってみろ」 榛名「先程お姉様を叩きましたけど、私にも同じように叩いてください」 金剛「…………?」 提督「何か悪い事でもしたのか?」 榛名「いえ……ちょっと気になってしまって……」 提督「…………不思議な子だ。──いくぞ」コツッ 榛名「…………? ……………………?」 451 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/03(日) 22:59:50.29 ID:Ah3KN2S/o 提督「どうした」 榛名「いえ……まったく痛くなかったので……」 提督「当たり前だ」 金剛「提督は痛い事を絶対にしないデスよ?」 榛名「…………?」 提督「何やら大きく誤解されているようだ」 榛名「怒っているのに、痛く……しないのですか?」 提督「私は怒っていない。叱っている。感情的に人を傷付けるなんて事はせんよ」 榛名「……………………」 提督「本当だ。信用できないか?」 榛名「いえ……こんな世界もあるのですね、と思いまして……」 提督「ここは私の城だからな。私のやりたいようにやらせてもらっている」 金剛「そんなテートクが大好きデス!」ギュー 提督「……とうとう金剛も吊るされる事となるか」 金剛「えー……愛の表現もダメなのデスかー……?」 提督「時間と場所を弁えろと言っている」 金剛「はーい……」 提督「金剛」 金剛「はいっ!」ピシッ 提督「返事は延ばすな」 金剛「ごめんなさい……」 452 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/03(日) 23:08:36.36 ID:Ah3KN2S/o 提督「まったく……良い夢を見て気分が良いのは分かるが、そろそろ皆も来る。いつものようにしていなさい」 金剛「はいっ」 榛名「……………………」 榛名(優しいのですね、提督……。────!)ハッ 榛名(あれ……今……?) 提督「ところで金剛、手に持っている書類を見せてくれ」 金剛「仕事をしてはいけませんヨ?」 救護妖精『洗脳が完全って訳でもないんだよね。急に洗脳が解けたり、違和感が生まれて本当の提督を思い出す艦娘とか居るみたい』 榛名(……もしかして) 提督「私宛の機密書類があるかどうかの確認だ」 金剛「それなら……。はい、どうぞ」 救護妖精『洗脳できた艦娘は一部の提督にしか渡されてないよ──当時の大将とか、元帥とかにしか』 榛名(私の、本当の提督は……) 提督「……ふむ。特に無いようだな。残念だ」 金剛「もう……提督はしっかりと身体を治してくだサイ」 提督『世の中には、知らない方が良い事もある』 榛名(このお方……?) …………………… ………… …… 453 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/03(日) 23:09:17.66 ID:Ah3KN2S/o 提督「──との事で本日は進める。異論がある者は手を上げてくれ…………居ないようだな。それでは、か……くじ……────」 ガクン── 金剛「提督!?」 瑞鶴「提督さん!?」 金剛「──島風! 救護妖精を呼んできて!!」 島風「はい!!」 金剛「瑞鶴は砂糖を!!」 瑞鶴「分かったわ!」 金剛「他の人は救護妖精が来た時に邪魔にならない場所へ移動!!」 全員「はい!」 金剛(後はベッドへ運んで、いつでも寝かせれるようにしておけば……!!) ……………………。 救護妖精「……うん。低血糖だろうね、これ」 金剛「やっぱりですか……」 救護妖精「んー、これ以上できる処置が無いね。やったの誰?」 金剛「私ですが……」 救護妖精「適切な処置だと思うよ。提督は良い秘書を持ったねー」 金剛「ありがとうございます。それより……提督は大丈夫なのでしょうか」 救護妖精「本当に良い秘書だねぇ……。問題ないよ。このまま起きなかったら同じように口に砂糖を突っ込んだら良いさ」 救護妖精「まあ、起きるまで私が側に居るから安心していな」 金剛「はい。お願いします」ペコ 全員「…………」ペコ 救護妖精(本当に好かれてるねぇ。どっかのしぶとかった誰かとは大違いだ) ……………………。 454 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/03(日) 23:09:50.15 ID:Ah3KN2S/o 提督「ん……」 金剛「!! 提督、起きたのですね!」 提督「…………どうやら皆に迷惑を掛けてしまったようだな。すまない。そしてありがとう」 金剛「良かった……目を覚ましてくれて……」 提督「そう簡単に死なんさ。だから泣くな」 金剛「はい……はい……っ!」 救護妖精「んー……良い雰囲気のところ悪いんだけどさ、提督、一つ良いかな」 提督「なにかね」 救護妖精「寝不足と疲労と糖分不足が原因っぽいんだけどさぁ……なんでなのかな?」ニコ 提督「…………」 救護妖精「疲労はまだ分かるんだけどさぁ……? どうして寝不足っぽい症状も出てるのかなぁ……?」 提督「……なぜだろうな」 救護妖精「ちゃんと休めやこらぁぁあ!!! どーせまたなんか個人的な理由で寝不足になったんでしょうが!!」 響(わ、私のせいなのかな……)ビクビク 榛名(私が昨日、遅くに押しかけたから……)ビクビク 提督「……すまん」 救護妖精「こんなんじゃいつまで経っても治りやしないよ!!」 提督「善処する……」 救護妖精「信用できないね! 監視役が必要なんじゃないかな!?」 金剛(秘書として監視役を……) 瑞鶴(監視役になったら私もずっと一緒に……) 響(監視役になれたら、司令官ともっと長く……) 榛名(その役に私がなると、あの疑問も解けるのでしょうか……) 提督「冗談はやめてくれ。それこそ心労が溜まる」 救護妖精「それもそうだよね」 四人「!!」ガーン 救護妖精「まあとにかく、一日中寝るくらい休みなよ」 提督「なんとかしてみるよ。ありがとう」 救護妖精「はいよ。じゃあまたね〜」 …………………… ………… …… 487 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/11/04(月) 22:22:12.55 ID:LxWjxs4Oo 提督「そして私は正直、混乱した。士官学校では不真面目にしていたが、駆逐艦だと聞いていたのに戦艦が来ている事。少ない資材でどうやって戦艦を運用するのか、と悩んだ。それとも、不真面目にしていた私に対する罰なのかと思うくらいにな」 提督「何かの手違いかと思って総司令部に問い合わせてみると、その通りだったよ。初期に戦艦を動かすのは難しいだろうという事でお前は総司令部に引き取られる事となった。……その時の榛名は嫌々だったな。その後、何があったのかは分からないが……元帥殿の手に渡っていたようだな」 榛名「……救護妖精さんが仰っていました。艦娘の刷り込みを、洗脳によって刷り直す技術があると……」 提督「なるほど。総司令部で記憶を消され、そして元帥殿に送られた、か」 榛名「確かに、元帥様にお会いした時の事がほとんど思い出せません……。きっと、その洗脳によるものなのでしょうね……」 提督「……元帥殿から、お前が私の初めての艦娘だと聞かされた時は驚いたよ。まさかこんな偶然があるのか、と」 榛名「本当に、凄い偶然です」 提督「これも運命なのだろう」 榛名「運命……」 提督「提督と艦娘は何かしらの絆があると聞いた事もある。もしかしたら、今回はその絆によって再び巡り会えたのかもしれないな」 榛名「絆……」 提督「私から話せる事はこれだけだ。後は、榛名の思ったように行動すると良い。──もし、私の艦娘として一緒に戦ってくれるというのであれば、手厚く歓迎する」 榛名「お願いしても、よろしいでしょうか」 提督「……私が言うのもおかしい話だが、即答か」 榛名「いけませんでしたでしょうか……」 提督「いや、嬉しいよ。戻ってきて欲しいと願っていたからな」 榛名「はい! 私も嬉しいです!」 榛名「──その言葉だけでも、私は救われた気持ちになります!」 提督「……………………」 …………………… ………… …… 494 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/05(火) 01:23:34.97 ID:ZOhB3/SKo 提督「ダメか?」 救護妖精「良いよ」 金剛・瑞鶴「!!」 提督「やっと出撃の許可が下りたか……」 救護妖精「糖分もこの間ので摂取してたし、疲労も結構取れてるみたいだしね。そろそろ動かないと、上にどやされるでし ょ?」 提督「分かってくれているようで助かるよ。昨日、催促の書類も来ていた」 救護妖精「出撃するのは良いけど、病み上がりなんだから無茶しちゃダメだかんね」 提督「善処する」 救護妖精「本当に善処してくれたら良いんだけどねぇ」 救護妖精「まあ、ほどほどにねー。あたしも効率良く糖分が摂取できる方法を探してみるよ」 提督「ありがとう。頼んだ」 救護妖精「これがあたしの仕事だからねー」 金剛「お願いします」ペコ 瑞鶴「お、お願いします」ペコ 救護妖精「あいあい。じゃあ、お大事にねー」 ガチャ──パタン 救護妖精「……そろそろ、か。私も何か出来たら良かったんだけどね……」 495 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/05(火) 01:35:26.10 ID:ZOhB3/SKo コンコン── 救護妖精「うん? はいはいどなた?」 ガチャ──パタン 榛名「こんにちは」 救護妖精「やあ。どうしたんだい」 榛名「刷り込みの事でお世話になりましたので、お礼を言いに来ました」 救護妖精「んー? ああ、あの事ね。そんなに気にしなくて良いのに」 榛名「いえ、本当にありがとうございました」ペコ 救護妖精「まあ……あの時の貴女って死にそうな顔してたしね。助けれたのならあたしもやった甲斐があるってもんさ」 榛名「死にそうな……。そんな顔でしたか?」 救護妖精「うん。もうね、世界の終わりだー死んでやるーって顔だった」 榛名「……確かにそうだったかもしれません」 救護妖精「と、まあ、もう大丈夫みたいだね。目が全然違うよ」 榛名「はい!」 救護妖精「それじゃあ、貴女もお大事にね」 榛名「ありがとうございました」ペコ 救護妖精「あいあい」 ガチャ──パタン 救護妖精「……これで、本当に良かったんだよね」 …………………… ………… …… 496 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/05(火) 01:45:43.51 ID:ZOhB3/SKo 戦姫「──珍しいですね。提督が私達を呼ぶなんて」 ヲ級「♪」ギュー 提督「ああ。準備が整ってきたからな。そして、お前達に汚い仕事を頼みに来た」 戦姫「なんでしょうか?」 提督「以前会った、あの大将共を残らず駆逐してほしい」 戦姫「……それは、文字通りの意味でしょうか」 提督「ああ。言い換えると殺してほしい」 戦姫「理由をお聞きしても宜しいでしょうか」 提督「艦娘を──いや、艦娘のベースとなった者を救う為だ」 戦姫「……あの地下で見つけた子達ですね」 提督「ああ。そして、二度とこのような事が起こらないように、関係者と施設を全て消す」 戦姫「しかし、どうやって助けるのですか?」 提督「あのカプセルから解放してやれば助かるらしい。そして、それと同時のその艦娘は消えるそうだ」 戦姫「! それは、深海棲艦もでしょうか」 提督「そこは分からない。消えるか留まるか、運試しに近い。だが、もし留まるというのであれば、私が海軍の指揮を執っ て駆逐する」 戦姫「……私達も、駆逐されるのでしょうか」 提督「そこはお前達次第だ。もし私達に牙を向けるのであれば、人々は排除する為に動くだろう。だが、共存してくれるの であれば危害を加える事もない」 戦姫「…………」 497 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/05(火) 02:00:10.77 ID:ZOhB3/SKo 提督「甘いというのは分かっている。だが、解体するという手もある」 戦姫「解体……?」 提督「あくまで憶測だが、深海棲艦は艦娘と比べて性能の優劣程度しか違いがない。という事は、解体を施す事で普通の人 間になる可能性だってある訳だ」 戦姫「……盲点でした。確かに、解体する事でどうなるかは分かりませんね」 戦姫「ですが、もし解体できない場合は……」 提督「その時はその時だ。残った者で静かに暮らすという選択肢もあるだろう」 戦姫「貴方も一緒、ですよね?」 提督「……恐らくそうなる」 提督「私は、これが終われば独りになる。それは間違いないだろうからな」 戦姫「それはありません。世界が貴方を独りにするというのなら、私達は貴方の傍に居ます」 ヲ級「!」コクコク 提督「……ありがとう」 戦姫・ヲ級「!」ピシッ 戦姫「貴方の目的に、私達は力を貸します。存分にお使い下さい」 ヲ級「!」 提督「本当に、ありがとう……」 提督「──早速で悪いが、出掛けよう。お前達の母港へ行って、作戦指示を与える」 …………………… ………… …… 498 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/05(火) 02:14:57.32 ID:ZOhB3/SKo 大将A「沖ノ鳥島海域……一体どれほどの艦娘が沈んだというのか」 大将B「うむ。まったくもって静まる気配もない」 大将C「しかし、あの新参には困ったものだ。こんな時に体調不良で倒れているなどと……」 大将A「だからお前を呼んだのだ。あの数を相手にするのには数か質が必要だ。その条件を満たしているのはお前しか居ない」 大将B「私が総司令官を務める。大まかな指示は出してやるから、それでなんとかしてくれるか」 大将C「……畏まりました」 加賀「全艦隊の配備が終了しました」 大将B「宜しい。では、出撃だ」 ……………………。 羽黒「た、大破しました……も、もう……耐えれません……!」 加賀「……撤退命令が出されなかったわ。ごめんなさい」 羽黒「そんな……そんなぁ……!」 ドッ──! 羽黒「加賀さん!! 危ない!」 ボゴンッ! 羽黒「っぁ……ぁあ…………し、ずむ……」 加賀「────」 羽黒「加賀さん……大丈夫だったかしら……? ああ……もう何も……何も見えない…………」 チャプン…………。 加賀「……十五隻目」ギリ ……………………。 499 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/05(火) 02:28:39.14 ID:ZOhB3/SKo 雷「……ここまでのようね。周囲に味方はゼロ。敵は五隻……。あーあ……」 ドォン! 雷「あ──ガァ……ッッ!!! どこ……? 司令官……どこ…………? もう、声が聴こえないわ……」 ……………………。 ガァンッ──ゴドンッ! 天龍「クッソ! 龍田! 大丈夫か!?」 龍田「あはは……目をやられちゃったみたい……」 天龍「──ちっくしょう!! 敵は……まだウジャウジャと……」 龍田「天龍ちゃん……? どこに居るの……? 声が聴こえないよぉ……」 天龍「龍田!! おいたつ──」 ガドンッッ!! 天龍「イ、ぎぃぁ!! ……………………ちっ……これじゃ前にも後ろにも進めねーな……。龍田、わりぃ……先に逝くぜ…………」 龍田「天龍ちゃん……? 天龍ちゃん…………? ………………あれ……? 天龍ちゃんの戦う姿が見える…………よかったぁ……」 チャプン……チャプン……。 ……………………。 響「ぅあ゙っ!! っく……大破、だね……」 電「響ちゃん、後ろに下がって下さい!! ここは私が前に出るのです!」 響「電も中破しているじゃないか……何を──!!」 バァンッ──!! 電「────あ」 響「電……? そん、な…………」 電「ぁ…………次に生まれてくる時は……平和な世界だと、良いなぁ…………」 ちゃぷん…………。 響「あぁ……ああぁぁアあぁァアああぁァあァああ────ッッッッッ!!!!!!」 ……………………。 500 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/05(火) 02:45:17.17 ID:ZOhB3/SKo 加賀「……戦闘、終了しました」 大将B「結果を報告せよ」 加賀「観測されていた深海棲艦472隻の内、469隻の撃沈を確認。残り3隻は逃げられてしまいました。こちらの被害は小破134隻、中破72隻、大破51隻、轟沈32隻です。…………充分な戦果と言えるでしょう」 大将B「ふむ。大金星といった所か」 大将A「さて、帰りますかな。いつまでもこんな小島の上に居ては心が落ち着かん」 大将C「そうですな」 加賀「──いえ、まだ帰れそうにないようです」 大将B「なに?」 加賀「敵、十時の方向から多数。……全員、黄色のオーラ──フラグシップです」 大将C「なんだと!?」 大将B「……数は」 加賀「詳細はまだ確認できてませんが、ざっと50隻は居ます」 大将A「……迎撃ですな」 大将B「うむ。全艦隊、迎撃体制を取れ」 加賀「全艦隊……大破している子もでしょうか」 大将B「当たり前だ。浮き砲台でも構わん。とにかく撃て」 加賀「分かりました」 加賀「弾薬が無いものはどうしましょうか」 大将B「盾となれる。最前線へ立たせろ」 加賀「…………分かりました」 大将A「私は本土へ連絡を入れよう」 ……………………。 501 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/05(火) 03:09:19.33 ID:ZOhB3/SKo 戦姫「敵は弱っている。今が叩き込むチャンスだ! 良いか! あのお方の指示は絶対に守れ!!」 戦姫「まだいけると思ったらもう危ない! もう危ないと思ったらいつ沈んでもおかしくない! 中破した者は最前線には出ず後方から支援せよ!! 大破した敵は後回しにしろ!! 敵を沈めるのではなく、戦力を削る事に重視しろ!」 戦姫「戦艦主砲斉射後、艦載機を飛ばせ!! 撃てぇええ!!」 ドォンドォンドォンドォンッ──!! ……………………。 大将A「クソッ!! なぜだ!! なぜ無線が繋がらない!!!」 大将B「無線が繋がらない……? まさか妨害電波か?」 大将C「あの距離では妨害電波も意味を成さんだろう!! 故障ではないのか!」 潜水ヨ級(…………真後ろとはいえ、結構でかい妨害装置持ってるのに空気だな私)チャプチャプ 加賀「……敵の砲撃を確認。衝撃に備えて下さい」 大将B「馬鹿な……この距離だぞ」 ドガァッ!! ゴゴンッ!! 加賀「…………ピンポイントに、戦艦へ……」 大将B「……艦載機は発進しているな? 空爆で敵を攻撃しろ」 加賀「……ダメです。制空権、完全に取られました」 大将A「では特攻だ。爆弾ごと突っ込んでやれ」 加賀「了解。──ダメです。悉く撃ち落されています」 大将B「戦艦のほとんどが沈み、空母は事実上無力となったか……。空母部隊も壁となれ」 加賀「…………分かりました」 ……………………。 502 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/05(火) 03:14:34.17 ID:ZOhB3/SKo 大将B「……ここまでか」 加賀「残る艦娘は私一人……。敵多数に大破中破を与えましたが、撃沈とまではいきませんでした。指揮をされているかのような動きでしたね」 大将A「…………」 大将C「い、いやだ……死にたくない!! 死にたくないんだぁ!!!」 戦姫「──またお前達の顔を見る事になるとはな」スッ 大将B「また……? ほう、あの若造がこれを……」 戦姫「悪く思うな。これもあのお方と我々……そして艦娘の犠牲となっている者達の為なのだ」 大将A「……ふん。だが、私達を殺して良いのかな? 私達を殺せば、艦娘に戻る方法が永遠に分からなくなるぞ?」 戦姫「…………」 大将A「戻りたいのであれば私達を殺さずにおかなければならんだろう。それでも──」 戦姫「やかましい」 ダァン──ッ!! 大将A「ぃ────」 どちゃっ……。 大将C「ひぃっ!」 戦姫「今現在で戻る方法など無いというのは分かっている。そんな言葉で懐柔できると思ったのが間違いだったな。まあ、もう聴こえていないだろうが」 大将C「な、なななんでお前が私達を殺しにきたんだ!! 目的はなんだぁ!!」 戦姫「喋る必要などない」ダァン 大将C「ぎ────」ドチャ… 503 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/05(火) 03:16:55.13 ID:ZOhB3/SKo 戦姫「残るは貴様だけだ」 大将B「……殺すのは構わん。だが、一つ教えてくれ。お前の艦隊に指示を出していたのは、あの若造か?」 戦姫「そうだ。敵を倒す事よりも自分が沈まない事を優先しろという指示だ。私達はそれに従ったに過ぎない」 大将B「そうか……。懐かしいのう……私も艦長を務めていた頃はそうであったな……」 戦姫「…………」 大将B「いつから使い捨てるようになってしまったのか……。それでは疲弊する一方だというのに……。扱うものが艦娘になっても、それは変わらなかった……」 加賀「…………」スッ 戦姫「邪魔だ」 加賀「ここは通しません」 戦姫「貴様には艦載機も砲も無いように見えるが」 加賀「通しません」 大将B「よい、加賀。私達の負けだ」 加賀「…………通させません」 戦姫「…………」 大将B「もうよい。お前はよく頑張ってくれた、加賀」ナデナデ 加賀「…………っ!」 戦姫「……………………」 大将B「今まで道具のように扱ってきた私を慕ってくれて、ありがとう」ナデナデ 加賀「……っぁ…………あぁぁ……」ポロポロ 大将B「……若造に伝えてくれ。艦娘達を頼んだ、と」 戦姫「……必ず伝えよう」チャキッ 大将B「……ありがとう、加賀」 加賀「いえ……私は……充分に救われました…………」ポロポロ 戦姫「…………」 ダァンッ──! 戦姫「…………」 どちゃっ…………。 戦姫「……想像以上に、堪えるものがあったな」 戦姫「──総員、帰るぞ!」 …………………… ………… …… 524 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/05(火) 21:49:30.38 ID:ZOhB3/SKo 金剛「テートクー」 提督「どうした」 金剛「瑞鶴、今は居ませんよネ」 提督「化粧直しに行ったからな」 金剛「今、二人っきりデスよね?」 提督「そうだな」 金剛「……ちょっとだけ、甘えさせてもらっても良いですか?」 提督「まだ明るいぞ」 金剛「だってー……最近、夜に足を運んだら誰かが居るみたいじゃないですかー……」 金剛「朝は演習。お昼は出撃。夕方は三人で書類の処理。夜は誰かと一緒に。これではいつまで経っても二人きりになれません」 提督「…………」 金剛「だから、こういう時でないと何も出来ないです……。これではお仕事に身が入りません……」 提督「……それもそうだな」 提督「分かった。今だけ甘えて良いぞ」 金剛「やったっ!」 金剛「ふふ……♪」ススッ 提督「よしよし」ナデナデ 金剛「んぅー♪」ニコニコ 526 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/05(火) 21:59:09.34 ID:ZOhB3/SKo 金剛「提督っ」ギュ 提督「おっと」ソッ 金剛「あぁー……久し振りに抱き付けた気分です……」ホッコリ 提督「そうだったかな」 金剛「以前は隙があればすぐに抱き付きましたからねー」スリスリ 提督「どこまで私を好いているんだ……」 金剛「どこまでも、です。それよりも提督……口が寂しくなりました。失礼しますね……?」スッ 提督「…………」スッ 金剛「ん……」チュ 提督「……いつか、辛い目に遭うぞ」 金剛「提督になら、何をされても構いません」スリスリ 提督「盲目だな」 金剛「その上、聞く耳も持っていません」スリスリ 提督「さらに病気だ」ナデナデ 金剛「それは恋の病ですね」スリスリ 金剛「──さて! 充分に堪能しました! そろそろ瑞鶴も帰ってくる頃でしょうねー」 コンコン──。 提督「噂をすればなんとやら。──入れ」 528 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/05(火) 22:10:13.07 ID:ZOhB3/SKo ガチャ──パタン 瑞鶴「ただいまー」 金剛「おかえりなサーイ瑞鶴。──では、私もお化粧を治してきますネー。十分もすれば戻ってきマース」スッ 提督「うむ」 瑞鶴(なんで時間を……?) 金剛「瑞鶴ー」 瑞鶴「ん、なに?」 金剛「…………」チラ…スッ 瑞鶴(? ……提督さんを見て…………指を口に……) 瑞鶴「────!!」ハッ 金剛「それでは! いってきマース!」 ガチャ──パタン 瑞鶴「…………」モジ 瑞鶴「あの……提督さん……」 提督「……分かった。おいで」 瑞鶴「──うん!」ギュッ 提督「それと、今日は大事な話がある」ナデナデ 瑞鶴「大事な話?」 提督「そう。だから、今夜ここに来なさい──」 …………………… ………… …… 529 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/05(火) 22:19:32.12 ID:ZOhB3/SKo コンコン──。 提督「入れ」 ガチャ──パタン 戦姫「──む」 金剛「あら、珍しいですネ?」 瑞鶴「本当。どうしたの?」 戦姫「彼と話したい事があったのだが……また夜に来ます」ピシッ 提督「いや、こっちから呼びに行こう。それまで待機していてくれ」 戦姫「はい。畏まりました。それでは」 ガチャ──パタン 瑞鶴「……いつも以上に真剣な顔だったわね。提督さん、本当に良かったの?」 提督「構わん。大方の予想はつく」 瑞鶴「ふぅん?」 金剛「……………………」 提督「どうした、金剛」 金剛「あっ……いえ、なんでもありません」 提督(……ふむ) 530 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/05(火) 22:30:25.51 ID:ZOhB3/SKo 提督「──よし、今日の書類はこれで終わりだな」 瑞鶴「えっ。もう? 私も終わっちゃったんだけど」 金剛「三人でやっていますからネー。私はあと一枚デス」 提督「いつもありがとう二人共。そんな二人にご褒美がある」ツカツカ 金剛・瑞鶴「ご褒美?」 提督「外に置いている……」ガラッ 提督「これだ」スッ 瑞鶴「……箱?」 提督「中身は…………」カパッ 金剛・瑞鶴「!!」 金剛「ア、アイスクリーム!」キラキラ 瑞鶴「本当に良いの!?」キラキラ 提督「うむ。ここ数日、二人は私の代わりに頑張ってくれていたからな」コトッコトッ 瑞鶴「わぁー……! わぁー……!!」キラキラ 金剛「全然溶けていないという事は……わざわざドライアイスを!?」キラキラ 提督「ああ。凍傷を起こさないように木製の容器を使っているが、充分に注意しなさい。ほら、スプーンだ」 金剛・瑞鶴「いただきます!」パクッ 金剛「〜〜〜〜〜〜っ!」 瑞鶴「やっぱりアイスクリームって美味しいー……!」 金剛「冷たくて甘いだなんて……もう最高です!」 瑞鶴「どうしてこんなに美味しいのかしら……!」 提督「喜んでもらえたようで何よりだ」 提督(少しでも楽しんでくれ……もう少しで、お前達とは離れ離れになってしまうだろうからな) …………………… ………… …… 532 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/05(火) 22:42:28.21 ID:ZOhB3/SKo コンコン──。 提督「入れ」 ガチャ──パタン 瑞鶴「瑞鶴、出頭しました」 瑞鶴「あの……話って何?」 提督「瑞鶴の秘密についてだ」 瑞鶴「私の?」 提督「先日、私は総司令部に行っただろう。そこで、見てはいけないものを見た」 瑞鶴「見てはいけないもの?」 提督「艦娘のベースとなった子達が、培養液入りのカプセルに浮かんでいた」 瑞鶴「……え? ど、どういう事?」 提督「全ての艦娘はベースとなる人間が居て、その人間の魂をコピーしたものが艦娘の魂だと思ってくれ」 提督「そして瑞鶴。それに関わっていた人物に聞くと、お前と私は兄妹だったようだ」 瑞鶴「────え」 提督「訳があって私は昔の記憶がほとんど無い。だからお前の姿を見ても気付かなかった」 提督「全てを話す事はまだ出来んが、今話せるのはこれだけだ」 533 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/05(火) 22:56:41.64 ID:ZOhB3/SKo 瑞鶴「…………ご、ごめんなさい……ちょっと頭が混乱しちゃって……」 提督「気持ちは分かる」 瑞鶴「えっと……艦娘の基となっているのが普通の人で……私の基となっている人が、提督さんの妹……?」 瑞鶴「な、なんなの……それって……何の冗談……?」 提督「……事実だ」 瑞鶴「じゃ、じゃあ……私って……偽者なの……?」 提督「どうして偽者と思ったのかは分からないが、偽者とは言えないだろう。本人の魂を基にして艦娘という情報を上乗せしているだけだ」 瑞鶴「そう、よね……。私の、提督さんへの想いが、偽者だなんて事、ないわよね……?」 提督「それもまた、本物だろう」 瑞鶴「──うん。そう……そうよね……。────すぅ……はぁー……」 瑞鶴「……………………うん。ちょっと落ち着いた」 提督「大丈夫か」 瑞鶴「うん。大丈夫よ」 瑞鶴「でも……そっかぁ……だからかぁ」 提督「うん?」 瑞鶴「んっとね。私、提督さんがお父さんとかそんな感じがするなーって思ってた事があったの。それって、提督さんが私のお兄さんだからなのかって思ったら、なんだか納得しちゃって」 534 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/05(火) 23:11:25.45 ID:ZOhB3/SKo 提督「…………」 瑞鶴「うん。無理矢理納得していたけれど、これでスッキリしたわ! ありがとう、話してくれて」 提督「……思ったよりもすぐに立ち直ったな」 瑞鶴「深海棲艦から艦娘に戻ったり、海軍の黒い部分とかを聞いたからかしら……。なんだかそういうのに耐性が付いちゃったみたい」 提督「ふむ……」 瑞鶴「あ、でも、私は提督さんの事をお兄さんなんて言わないからね? だって、この好きって気持ちは本当なんだもん。……でも、提督さんがして欲しいって言うのなら、お兄さんって呼んでも──」 提督「……今からではとてつもない違和感がある。それと、皆の前でそう呼んだら大変な事になりそうだから止めておこう」 瑞鶴「はーい。──でも、兄妹かぁ……禁断の愛ね」 提督「艦娘は子供を成さないんだから禁断でもなんでもないのではないか?」 瑞鶴「あ、それもそうね……。ふふっ。良い事聞いちゃった!」 提督「良い事?」 瑞鶴「だって、これからは甘えるのに我慢しなくても良いじゃない! お兄さんなんだから、ね!」ギュッ 提督「おっと」ソッ 瑞鶴「ふふっ……だーいすき……」スリ 提督「……よしよし」ナデナデ ……………………。 535 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/05(火) 23:33:12.61 ID:ZOhB3/SKo 提督「──満足したか?」 瑞鶴「もうバッチリ! ありがとね!」 提督「それでは寝ようか」 瑞鶴「はーい。おやすみっ」チュ 提督「む」 瑞鶴「えへへー」 ガチャ──パタン 提督「……やはり、心が痛いな」 ……………………。 提督「──さて、報告をしてもらおう」 戦姫「はい。指示通り、一人も沈む事なく全て殲滅しました。戦果をご確認されますか?」 提督「いや、お前も心が痛む所があったのだろう。言わなくても良い」 戦姫「……見抜いておられましたか」 提督「どことなく哀愁が漂っていたのでな」 提督「よくやってくれた。お前達の働きのおかげで助かったよ」 戦姫「ありがとうございます。──それと、大将Bという男から伝言を預かっています」 提督「伝言? なんだ」 戦姫「艦娘達を頼む、と一言」 提督「……殺すのは間違いだったのかもしれないな」 537 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/05(火) 23:44:53.74 ID:ZOhB3/SKo 戦姫「…………」 提督「だが、情報が漏れる可能性も無きにあらず。徹底的に情報を葬るのであれば、いずれ消さなければならなかったか」 戦姫「……………………」 提督「どうにも……上手くいかないな」 戦姫「上手くいっていない……のですか?」 提督「人を殺さなければならないという手段に出ている。……お前達は勿論、沈んだ艦娘達も痛い思いをした。それに、この事があの子達に知られれば、私から離れていくだろう」 戦姫「…………それは、仕方がない事です。何かを成す為には何かを犠牲にしなければなりません」 提督「そうだな……。何かの犠牲の上に、何かが成立している。苦手だよ、私は」 戦姫「優しいのですね……」 提督「甘いだけだ。──いや、偽善もあるな。上に立つという事は、そういう事なのだからな」 提督「ところで、傷付いた深海棲艦達はどうしている。修理する技術はあるのか?」 戦姫「時間が経てば回復します。今頃、母港でゆっくりと休んでいる事でしょう」 提督「そうか……良かった」 戦姫「……ありがとうございます」 提督「うん? 私は感謝されるような事をした憶えはないが」 戦姫「仮にも私達に指示を与えてくださった事。そして、私達を気に掛けてくださった事は、とても嬉しいですよ」 提督「……そうか」 戦姫「はい」 提督「……ご苦労だった。皆にも労いの言葉を掛けていたと伝えてくれ」 戦姫「……はい!」 …………………… ………… …… 555 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/06(水) 01:34:33.93 ID:wN4i1E+jo 提督(書類はこれで全部、か。やはり出撃や演習等をすると増えるな──ん、機密書類……という事は……) ……………………。 提督「──今日の方針は以上だ。質問のある者は手挙げて発言しろ。……………………居ないようだな。では、最後に重要な情報を言う」 提督「…………私を除く大将全員の消息が不明らしい」 全員「……………………」 提督「よって、総司令部を指揮出来る者は私を除いて居なくなった……との事だ」 金剛「え……それでは……」 提督「事実上、私が海軍を動かす事となった。面倒な話だ。十数年前までは海軍大臣や軍令部長など、様々な役職が在ったというのに……」 響「……司令官。それはもしかして、最高司令官になったという事かな」 提督「事実上は、な。最高司令官は今でも天皇陛下だ。だが、天皇陛下自らが海軍を動かす事は無い」 提督「よって、これからは総司令部にも足を運ぶ事が多くなるだろう。そして、先程も言ったようにこれから数日の間、総司令部へ篭らなければならないだろう。私が居ない間、この鎮守府を護ってくれ」 全員「はい!」 提督「だが、勘違いはするな。私は現状、海軍の頭となっているが、こんなものに興味は無い。むしろ迷惑だ。適任者が居ればそいつに押し付けて、私はこの鎮守府を護る事に専念する」 提督「以上。各自、持ち場へ行け」 全員「はい!」 ……………………。 556 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/06(水) 01:52:11.88 ID:wN4i1E+jo 金剛「──提督、いってらっしゃい」 瑞鶴「気を付けてね」 救護妖精「あたしが居るから安心しなー」 金剛「ハイ! 提督の事、よろしくお願いしますネ!」 瑞鶴「すぐに無茶をしちゃうもんね」 救護妖精「あっはっはっ。確かにねぇ」 提督「……やはり信用されてないな」 金剛「こういう所だけは信用しまセン」 瑞鶴「油断も隙もないじゃないの」 救護妖精「一回、ベッドに縛り付けようか?」 提督「…………行こうか」 救護妖精「あいあい」 金剛・瑞鶴「行ってらっしゃいませ!」ピシッ ブロロロロロロ…………。 金剛「……なぜでしょうか。物凄く胸騒ぎがします……」 瑞鶴「うん……。前もこんな気持ちだったわよね……」 金剛「本当に、心配です……」 瑞鶴「……行きましょ。提督さんが帰ってくるまで、この鎮守府を護らないと……」 金剛(……提督) …………………… ………… …… 570 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/06(水) 13:52:41.78 ID:wN4i1E+jo 提督「他の大将殿はまだ奮戦している可能性がある。──無線が繋がらない? 故障の可能性もある。彩雲を沖ノ鳥島へ飛ばせ。総司令部を若輩である私一人で動かすのはとても無理だ。各中将少将のリストアップを頼む。過去の総司令部の働きも確認したい。データを用意しろ。──予算案や軍政? 用意してもらったデータを参照して作り上げるから待て。──各提督の報告書が来ている? 後回しだ。まずは上に立てる人間を選出する。私一人ではとても無理だ。──各部署からの報告書……それは会議室へ部署別に置いていけ」 救護妖精「忙しいねぇ……」 提督「ついこの間まで士官学校に居た人間にやらせる事ではないな。だから人の上に立つのは嫌いなんだ」 救護妖精「こんな所に居たら過労で倒れちゃうよ……あたしが付いて来て正解だったね」 提督「ああ。もし私の身体に異変が起きたら頼む」 救護妖精「あいよ」 提督「あと、あの事もな」 救護妖精「────あいよ」 救護妖精「でも、嫌がってる割に板に付いてるね?」 提督「知らん」 ……………………。 571 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/06(水) 14:10:12.53 ID:wN4i1E+jo 救護妖精「さて提督、ここは誰も来ないよ」 提督「来るとしても時間が掛かるだろうな」 救護妖精「じゃあ、話してもらっても良いよね? ただの看護として連れてきた訳じゃないんでしょ?」 提督「ああ。私は施設について何も知らない。カプセルから艦娘のベースとなった子を助ける為に連れてきた」 救護妖精「なーるほどねぇ。それにしても酷いもんだね、何も言わずに連れてくるなんてさ」 提督「できるだけ自然について来て欲しかった。万に一つでもバレられたくないからな」 救護妖精「まあ、それなら仕方がないっか。──で、いつ潜り込むの?」 提督「明日だな。準備もしなければならない」 救護妖精「あいよ」 コンコン──。 救護妖精「さて、仕事の時間みたいだよ」 提督「そうだな。しばらくの間、拘束されるとしよう」 ……………………。 572 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/06(水) 14:23:20.00 ID:wN4i1E+jo 提督「……やっと一段落ついたな」 救護妖精「私も手伝う事になるなんてねぇ……あー疲れたわー……」 救護妖精「にしても、やけにゴマをすってくるのが多かったねー」 提督「やるのも頷ける。良い印象を与えておけば昇格しやすいからな」 救護妖精「じゃあ、提督には逆効果?」 提督「当然だ。私にとっては悪い印象しか与えんよ。そんな事をするくらいなら仕事でしっかりと結果を残して欲しいものだ」 救護妖精「くっくっ。本当だねぇ」 提督「さて、ちょっと責任者さんに会ってこよう」 救護妖精「へぇ。知ってるんだ?」 提督「ああ。以前来た時にバッタリと」 救護妖精「あーあ。可哀想に」 提督「本当にな」 ……………………。 573 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/06(水) 14:43:00.47 ID:wN4i1E+jo 提督(ここが奴の自室か) コンコン──。 研究員「どうぞ」 ガチャ──パタン 提督「やあ、はじめまして」 研究員「!!!」ガタッ 提督「現在、臨時で私がこの総司令部を指揮しています。以後、お見知りおきを」スッ 研究員「…………っ! ……はじめまして。私は艦娘建造開発総責任者を務めている」 提督「そうですか。では、貴方に折り入って頼み語とが御座います」 研究員「……なんでしょうか」 提督「明日の夜、あの場所へ全研究員を集めてほしいのです」 研究員「全員……? どうしてまた……」 提督「全員に知ってもらいたい事がありましてね。……ここでは詳しくは言えませんが、艦娘と深海棲艦について非常に良い情報が得られました」 研究員「──ほ、本当ですか!!」 提督「静かに。誰かに聞かれたらマズイ」 研究員「す、すみません……」 提督「そういう訳でして……明日、あの場所で全員を集めて欲しいのです。皆さんの意見も聞きたいですしね」 研究員「は、はいっ」 提督「では、また明日に──」 ……………………。 574 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/06(水) 15:06:27.42 ID:wN4i1E+jo 提督「──七人。これで全員ですか?」 研究員「はい。間違いありません!」 提督「ふむ。では話しましょう。皆さん、席に着いて下さい」 提督「これは私の鎮守府で分かった事なのですが、深海棲艦を艦娘に戻せる可能性が高い方法を発見しました。その方法なのですが、その前に深海棲艦は艦娘を憎む理由から話しましょう」 提督「なぜ彼女達は艦娘達を憎むのか。私は最初、それは羨望や過去の自分の姿に嫉妬しているからと思っていました。皆さんも同じだったと思います。ですが、それは違うという事が先日、判明したのです」 提督「憎しみ自体は本能的なものでしたが、それにも理由がありました。それは、深海棲艦が艦娘に戻る為の魂を収集しているという事です」 提督「そして、その魂を一定数以上集めた深海棲艦をベースに建築を行うと、艦娘に戻るという結果が三回、立て続けに発生しました」 提督「その資料をお渡しします。それでは皆さん──」ガサッ 提督「──さようなら」ガチリ ドンドンドンッ──! 研究員「────え?」 ドンドンドンッ──! 研究員「な……? なんだ……これは……?」 提督「ご覧の通りですよ」バラッ…ジャキッ 提督「残念ですが、本当の目的はこっちです」 研究員「ひ、人殺し……!」ガタガタ 提督「ああ。私は人殺しだ。それがどうした。──そして、なぜお前を残したか分かるか?」 研究員「…………っ!」ガタガタ 575 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/06(水) 15:29:36.02 ID:wN4i1E+jo 提督「それはだね、お前の命と引き換えに情報を聞き出す為だ。私はここにある資料を独り占めしたい……。だから、ここ以外に資料やそれに関する物があるかどうかを聞きたい……。どうなんだ?」 研究員「は、話せば命は……命は……!!」 提督「ああ、そこら辺に転がった肉塊のようにはしないと約束しよう。だが……嘘や喋らなかった場合は……」ガチリ 研究員「だ、出していない!! 必ず出さないようにと徹底されている!!」 提督「ほう。やはりか」 提督「あと……お前、今まで艦娘のベースにしてきた人間の数はいくつだ?」 研究員「へ……? た、たしか……十三……いや、十五……あ、ああ……十五だ──」 提督「そうか」 ドンドンドンドンドンドンッ──!! 研究員「ぎ、ぁ──!?」 提督「では」バラッ…ジャキッ ドンドンドンドンドンドンッ──!! 研究員「がぁッ! ぎ、が──ぁが……!!」 提督「十五だ」バラッ…ジャキッ ドンドンドンッ──!! 研究員「──ぁ、ぎ…………」 提督「約束通り、他の奴らと同じにはしなかった。そのまま苦しんで死ぬが良い」 576 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/06(水) 15:49:11.90 ID:wN4i1E+jo ガチャ──パタン 提督「──さて、それではカプセルを解放しよう、救護妖精」 救護妖精「…………本当に殺しちゃったんだね」 提督「ああ。これで私も、立派な人殺しだ」 救護妖精「……………………」 提督「もう後には戻れない。……進もう」 救護妖精「……そうしよう。もう、私達は後戻りできないよね……」 提督「では、まずはこのカプセルに閉じ込められている子達を解放しよう」 救護妖精「ん……。確か、重巡の子だけだったよね」 提督「ああ。頼む」 救護妖精「……よっと。この子とこの子と………………よし、これで全員だね。…………やるよ」 提督「…………」 ガチン──…………。 救護妖精「──提督、培養液を吐かせて」 提督「分かった」 ……………………。 577 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/06(水) 16:11:09.44 ID:wN4i1E+jo 提督「これで全員か……」 救護妖精「そういえば、この子達はどうするの? 勢いで助けちゃった感があるんだけど」 提督「鎮守府に帰るまではここで安静にさせた方が良い。一度でこんな人数も運べん上に、安易に表へ出してしまうと危険だ」 救護妖精「ん、了解。食料とかはどうする? 絶対に胃が衰弱してるよ」 提督「ここに居る間は非常食のスープ類だな。数字を誤魔化した上でかっぱらってくる」 救護妖精「……なんか慣れてない?」 提督「昔からある手口だろう。現場さえ押さえられなかったら分からんよ。幸い、過去のデータを見る限りではたまに数が合っていない事もあるから、管理もずさんだ」 救護妖精「……よく調べてるねぇ」 提督「大量の報告書やデータを用意させたのもそれが理由だよ。……心底しんどかったがな」 救護妖精「無茶するね本当に……」 提督「無茶をしなければならないほど危険なものに首を突っ込んでいるんだ。仕方がない事だ」 救護妖精「まったく……損な役だねぇ…………」 提督「ありがとう」 救護妖精「褒めたんじゃないよ」 提督「労いの言葉だろう?」 救護妖精「……やれやれ」 …………………… ………… …… 602 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/11/07(木) 01:01:54.39 ID:Tv7gdA8Qo トントン──トン──。 救護妖精「──おかえり」ガチャ パタン── 提督「…………」ドサッ 救護妖精「結構持ってきたねー……これ大丈夫なの?」 提督「……問題が無かったから頭が痛い」 救護妖精「へ?」 提督「あのジジイ共……大切な非常食を個人の理由で使っていたようだ」 救護妖精「……どゆこと?」 提督「詳しくは私も分からん。……調べれば足が付くだろうが、どうやら何日かに一度、非常食を十人分ほど持ち出し ていたようだ」 救護妖精「…………」 提督「備蓄倉庫の警備連中は賄賂を貰って見逃していたようだったから、私も同じ事をしてきた。元帥や大将でしか分 からない事もありますでしょう、などとほざいていたな。危うく蹴り倒す所だった」 救護妖精「ま、まあ……これで食料の問題はなんとかなるんだよね?」 提督「なんとか……な」 提督「しかし、そんなに長くは持たないだろう。できればさっさと私の鎮守府へ送ってやりたい」 救護妖精「そうだねー」 救護妖精「……それとさ、本当に全員、殺しちゃったの?」 提督「ああ。特に最後の一人には苦しんで死んでもらった」 救護妖精「何やったのさ……」 提督「聞かない方が良い」 救護妖精「手足を切断する手術もしている私にそれを言う?」 603 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/07(木) 01:16:23.49 ID:Tv7gdA8Qo 提督「釈迦に説法だったか。──肩、肘、手首、太腿、膝、足首に計十五発の弾丸を撃ち込んだ。動く事は叶わん。血 が流れ切って死ぬまで傍観してやった」 救護妖精「また惨たらしい事を……。呪われるよ?」 提督「構わん。返り討ちにしてくれる」 救護妖精「……冗談に聞こえないよ」 提督「そうか。──あの部屋は燃やすのが一番だな」 救護妖精「人を燃やしたら臭うよ。──埋め立てたらどう?」 提督「ダメだ。資材を運んで行く時にバレる。──では溶かすか」 救護妖精「そんな危険な劇薬を大量に手に入れたらバレるって。──穴掘って埋めるのは?」 提督「時間と労力が掛かり過ぎる」 提督「……面倒だな、死体の処理は。──資料だけ全部燃やして封鎖するか」 救護妖精「それしかないよねぇ……」 提督「準備をしておく」 救護妖精「……それにしても、随分と平然としているね。普通なら吐いたり震えてたりするもんだよ?」 提督「自分がホムンクルスだと知ってから、色々と吹っ切れてな。今なら大抵の事をやれそうだよ」 救護妖精「…………」 提督「……さあ、この話は終わりだ。私はこれを持っていくから、外の様子を見てきてくれ。あと、地下にガスバーナ ーと水はあったよな──」 ……………………。 604 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/07(木) 01:29:23.06 ID:Tv7gdA8Qo 救護妖精「──提督、配分し終わったよー」 提督「全員に行き渡ったか。……案外大変だな、こういうのも」 救護妖精「本当だねぇ……。けど、やりがいがあるよ。あの時は助けれなかったからさ」 提督「……そうか。お前は二回目なのか」 救護妖精「……今度こそ、助けれるんだよね?」 提督「上手くやれば、な」 救護妖精「頼んだよ、提督」 提督「私こそ頼む」 古鷹「あの……」 提督「どうした、おかわりか?」 古鷹「いえ、そうではなくて。……えっと、現状が理解できないのですけど、教えてもらっても良いです?」 那智「特に、どうして私達が布切れに包まれているのかとかな」 救護妖精「……説明が面倒そうだね。頼んで良い?」 提督「男の私が説明しても納得しにくい所があるだろう。任せた」 救護妖精「なっ! わ、私は騙すのは得意だけど、説明自体はそこまで得意じゃないんだよ! それに、この子達を助けようって言い出したのは提督じゃないか!」 那智「どっちでも構わん。さっさと言え」 提督「……なら、私が説明しよう」 ……………………。 605 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/07(木) 01:43:21.69 ID:Tv7gdA8Qo 最上「ふぅん……ボク達が艦娘に、ねえ」 摩耶「なーんかよくワカンネーけどよー、助けてくれたって考えて良いのか、これ?」 足柄「良いんじゃないかしら? 本当だったらこの変な機械の中で、意識も無いまま一生を過ごす事になったのかもしれないでしょう?」 加古「じゃあ、あたし達の恩人って事かー!」 青葉「ではでは! 取材をしても宜しいですか!」 衣笠「どこにそんなものがあるのよ……」 提督「──それと、お前達を匿う為に私の鎮守府へ来てほしい。だが、一度に運べる人数は限られている。詰めれば十人くらいはいけるだろうが、相当長い時間、窮屈な思いをする。六人くらいが限界だと思ってくれ。そして、一日に何回も運べるわけではない。六人ずつ、話し合って決めてくれ」 羽黒「あの……その前に一つ、よろしいでしょうか……」 提督「なにかね」 羽黒「私達は……本当にあなた方を信用しても良いのですか……?」 提督「どう答えても不信感が残るだろう。何をすれば信用してくれるか言ってくれ」 三隈「……いくらなんでも、投げやりではありません?」 提督「それが一番手っ取り早い方法だ。私自身、この場でお前達を信用させる術は無い」 利根「ならば、我輩が先行しようではないか。そして見定め、帰ってくる。その内容を皆に伝えれば良いだろう?」 提督「構わんが、危ういと考えないのか」 利根「ふふふ。我輩は人を見る目はある……と、勝手に自負しておる。お主は信用に値する者と見た」 提督「そうか。では頼む」 利根「うむ! 任されよ!」 606 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/07(木) 01:43:55.13 ID:Tv7gdA8Qo 筑摩「──利根姉さんが行くのなら、私も行きましょう。利根姉さんを一人にする訳にはいきません」 提督「そうか。では二人だな」 愛宕「ちょっとちょっとぉー! トントンと話が進んでるけれど、本当に大丈夫なの? もしかしたらって事もあるじゃないのよ」 高雄「私も愛宕に同意します。どう動くにも危険過ぎます」 利根「ふむ? だからこそ我輩達が行くのであろう?」 愛宕「それが危険って言ってるのよぉ……」 利根「なに。案ずるでない。我輩はこの者を信用しておる!」ポン 提督「不思議な奴だ」 利根「それはお主もだろう。ここまですんなりと信用できる人間はそう居らぬぞ?」 提督「…………」 羽黒「わ、私は……少し怖いです……」 鳥海「私も少し……」 鈴谷「そう? 良い人そうじゃーん?」 熊野「……なんだか、危険を感じますの」 提督「と言っているが?」 利根「お前達もすぐに我輩の言っている意味が分かるだろう」 提督「……頑固だな」 利根「うぬ。そうだぞ」 提督「まったく……。──では、最初に利根と筑摩の二人が私の鎮守府へ行く。それで良いな? それから、勝手に外へ出るのを禁ずる。各自、外へ出る時は必ず私に一言声を掛けなさい」 鈴谷「はーい! もし勝手に外に出たらどうすんのー?」 提督「吊るす。恥ずかしいと思えるくらいの高さでな」 全員「!?」 提督「まあ……お前達はそんな事をしないだろうが、一応な」 摩耶「ほ、本気か……?」 提督「うむ」 那智「……ふん。脅しだろう。誰がそんなものに屈するか。出口はこっちだな。勝手に出させてもらう」スタスタ 607 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/07(木) 01:44:23.74 ID:Tv7gdA8Qo 提督「────」タンッ 提督「誰が許可した」スッ 那智「なっ!? う、上から!?」 青葉「い、今、人間ではありえない跳び方をしましたよね……?」 鈴谷「何今の!? すっげーかっこいい!!」キラキラ 救護妖精「あーあ……」 那智「ちぃっ!」ブンッ 提督「…………」ペシッ 那智「!!」ヒュヒュッ 提督「…………」ペシペシッ 那智「…………っ!!」ヒュッバヒュッ 提督「…………」ペシン 青葉「おおー……マンガみたいですねー……。くぅ〜! カメラが無いのが悔しいです!! というより速くて良く分かりませんでしたけど何が起きたんですか!!」 利根「まず右ストレートを軽くあしらわれ、ニ連続ジャブをするも弾かれたのう。フェイントの膝蹴りには反応せず、そこからの蹴りを叩き落としおった。うむ、見事じゃ」 羽黒「あの……右手しか動いていないように見えましたけれど……」 利根「無論、右手だけでやってのけていたからのう」 摩耶「本当に何者だ、あいつ……」 熊野「そんな事よりも、あんな布キレを纏っているだけですのに、蹴りなんて……破廉恥よ!」 那智「く……っ!」ブンッ 提督「…………」ガシッ 那智「!! ────くぅ……!!」ググ 提督「……どうやらよほど吊るされたいらしい」ジッ 那智「ヒッ──」 608 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/07(木) 01:44:52.00 ID:Tv7gdA8Qo バサッ──ヒュルッ──ギュッ 利根「おお、上着で目隠しをして、その上着ごと縛り上げたか。天晴れ天晴れ」 那智「は、離せっ!!」バタバタ 提督「離せと言われて素直に離す阿呆がどこに居る」ヒュッ─ビィン 利根「おお、あんな場所に縄を引っ掛けるフックがあったのか! 気付かなんだぞ!」 提督「…………」グイグイ 那智「あ……ぁぁあ!! や、止めろ!! みひぇ、見えてしまうだろ!!!」ブラーン 救護妖精「噛んだね」 青葉「噛みましたね。おおー、これはスキャンダルですよー! いくら低くてもこのアングルからだとバッチリです!」 那智「!!!! み、見るな……見るなぁ!!!」バタバタ 提督「…………」 那智「こ、この……! 私は辱めなどには屈しないぞ!!」 提督「そうか。もっと高くしなければならないか」グイグイ 那智「ひぃっ!? やだ、やだぁぁ!!!」 提督「…………」ジッ 那智「っっ!!」ビクン 提督「…………」 那智「う……うぁ……!」ビクビク 提督「……お望みとあらばまだ高くするが」 那智「わ、分かった!! 勝手に外に出ない! 出ないからぁ!!!」 提督「うむ」スルスル 那智「あ………………う、うぅ……」ペタン 青葉「えー……もう終わっちゃうんですかー……?」 救護妖精「珍しいね。いつもはちゃんと謝るまで吊るしてるのに」 青葉「今回もそれで良かったと思いますのに……」 提督「この子は私の部下ではない。そこまで酷な事はせんよ。本当はこんな事をしたくなかったが、やらなかった場合は本当に外に出られかねないからな」ホドキホドキ 利根「今のはコヤツが悪かろう。勝手に出れば吊るすと言うておったし、手を出したのもコヤツじゃ。……まあ、お主は自身に見えぬよう計らっておったから、実際に花園が見えたのはオナゴだけじゃろう」 609 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/07(木) 01:45:20.68 ID:Tv7gdA8Qo 提督「……よく見ているな」 利根「我輩は周りを見るのは得意じゃからのう」 那智「ほ、本当に見てないんだな……?」 提督「うむ」 那智「……はぁ〜〜〜〜…………」 青葉「心底、安心したって感じの安堵ですね」 救護妖精「まあ、そりゃあ見られたくないでしょうよ」 青葉「それにしても、こんなに面白いイベントがありましたのに、どうして皆は静かなんでしょうかね?」 提督「ただ単に怯えているか引いているかなだけだろう」 提督「それよりも、時間があまり無い。出来ればすぐに出発したい。利根、筑摩、ついて来てくれ」 利根「うむ! ワクワクするのう!」 筑摩「は、はい……」 提督「そう怯えないでくれ。よほどの事をしない限りあんな事はせんよ」 筑摩「……外に出るのは、よっぽどですか?」 提督「下手したら大混乱と共にお前達全員が実験体にされる可能性もある」 救護妖精「ああー……そうなったらどうするの?」 提督「……言わせないでくれ」 救護妖精「……ごめんよ」 提督「では行こう。────ああ、言い忘れていた。そこの板を張り付けてある部屋には入らない方が良い。入ったらトラウマを抱えるだろう。そして、機械には触らないでくれ。その子達も助ける為には準備が必要だ。良いな?」 全員「はいっ!!」ピシッ 提督「…………」 救護妖精「くっくっくっ。どこに行ってもこうなるんだねぇ提督」 提督「なぜだ……」 ……………………。 610 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/07(木) 01:45:52.32 ID:Tv7gdA8Qo 監守「──お? やあ新元帥。車なんか乗っちゃって。お出掛けかい?」 提督「一度、鎮守府に帰ろうと思ってな。あと、元帥になるつもりはない」 監守「おいおい……まだ総司令部は混乱してるんだぜ? あまり居なくならないでくれよ」 提督「色々な仕事を放り出してまで来たんだ。あと、艦娘達に電報の送り方を教えておかなければな。他にもやらなければならない事が山ほどある。あっちもこっちも大忙しだ」 監守「身体が一つじゃ足りそうにないなぁ」 提督「出来れば、あと五つは欲しいよ」 監守「ははは! それは贅沢ってもんだ。──おっと、急いでるんだったな。今開けるぜ」 監守「にしても、なんだその箱? やたら大きいな」 提督「必要な書類のコピーだ。早くこの総司令部を動かせる人物を選定せねばならん。そしてその仕事の割り振りも考えなければならないからな。向こうに着いてもこれと睨めっこだよ」 監守「ご苦労なこって。俺にはそんな事は出来そうにねぇや」 提督「一度経験してみるのも良いかもしれないぞ?」 監守「冗談は止してくれ。──んじゃま、いってらっさーい」 ……………………。 提督「……顔を出して良いぞ」 モゾモゾ……。 利根「──ふぅ。動かぬようにするのは存外に辛いものじゃ」 筑摩「はい……動きたくてウズウズしました……」 利根「それにしても、先程の監守はやけにフレンドリーであったが、友人か何かなのか?」 提督「いや、誰に対してもあんな感じだ。仕事を娯楽と間違えていそうな節もあって頭が痛くなるよ」 利根「……苦労していそうじゃのう」 提督「苦労をするのはこれからだ。──まあ、お前達は向こうに着いたらのんびりすると良い。少し飛ばすぞ」 ……………………。 630 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/11/07(木) 20:19:05.81 ID:Tv7gdA8Qo 提督「──着いた。ここが我々の鎮守府だ」 利根「ほー。ここがそうであるか。……意外と普通じゃのう」キョロキョロ 提督「何を想像していたのかね」 利根「対艦砲や対空砲がびっしりと並べられ、地面には地雷、海中には機雷を。しかしひっそりと可愛らしい花を育てているという意外な一面でもあるのかと思うておったのじゃが」 提督「残念だが一つも当て嵌まっていない」 利根「残念じゃのう……」 筑摩(普通で良かった)ホッ ……………………。 金剛「…………」 利根「うん?」 筑摩「…………」 瑞鶴(また自分の艦娘以外の女の子を連れてきてる……) 金剛「提督。帰ってきたから抱き付こうと思いましたが、どういう状況ですか、これ」 提督「そう睨むな。私の部屋で説明する」 金剛「むー…………」 ……………………。 金剛「艦娘のベースとなった子……ですか。私達はそういう風に成り立っていたのデスね」 瑞鶴「…………それで、どうしてここに連れてきたの?」 提督「今の所ここが一番管理しやすく安全だからだ。……すぐにとは言わないが、新しい住居も与えて自由に暮らせるようにもしていくつもりだ」 金剛「それって大丈夫なのデスか? 消えた艦娘と同じ顔をした人が街中を歩いていたら騒ぎになると思うのデスが」 提督「人というものはその人のイメージというもので人を認識している。艦娘特有の艤装も無く、雰囲気も多少ながら違い、カプセルに入っていたせいで髪も全員長い。海から遠く離れた場所で服装も変えれば他人の空似としか思われんよ」 瑞鶴「そんなものなのかしら……」 提督「そんなものだ。有名人が私服と帽子を被るだけで気付かれないのと変わらん」 瑞鶴「あー、なるほどね」 金剛「イエス! 納得しまシタ!」 提督「すまないが、明日は二人に鎮守府を案内してやってくれないか? その間に私は総司令部の面倒事を考えておきたい」 瑞鶴「面倒事?」 提督「ああ。総司令部を動かす人間の選出や予算や軍政、他にも色々とな」 金剛「…………あの……」 提督「なにかね」 金剛「ヘルプしても……良いデスか? お役に立ちたいデス……」オズオズ 提督「ふむ……」 金剛「…………」ドキドキ 提督「……………………よし、頼む」 金剛「──ヤッタァ!」 筑摩「そんなに喜ばしい事なのですか?」 金剛「一日もテートクと離れ離れだったのデス! 一緒に居られるのはハッピーな事デース!」ダキッ 瑞鶴(あ……良いなぁ……) 631 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/07(木) 20:19:33.08 ID:Tv7gdA8Qo 提督「金剛」 金剛「!!」ピシッ 提督「客人の前で抱き付かないように」 金剛「はい……」 利根「ふむふむ。よく躾けられておるようじゃ」 瑞鶴「金剛さんが提督さんの手伝いをするのなら、私が二人を案内するわね」 利根「うん? お主は一緒に居らんでも良いのか?」 瑞鶴「だって私はそういうの考えるのが苦手だもん。適材適所、よ」 利根「なるほどのう」 提督「では、今日は寝るとしよう。部屋を案内する」 ……………………。 提督「鍵はこれだ。あと、夜は明かりを点けた状態ではカーテンを開けないでくれ。敵に砲撃されかねないからな」 利根「うむ。心得た!」 提督「では、私はこれで失礼する。何かあればさっきの部屋へ来てノックをしてくれ。──おやすみ」 利根「よい夢を」 筑摩「おやすみなさい」 ガチャ──パタン 筑摩「…………」キョロキョロ 利根「うん? どうした筑摩?」 筑摩「いえ……初めて入った部屋って見渡したくなりませんか?」 利根「うむ。その気持ちはよーく分かるぞ! 私も入った瞬間に見渡してしまった」 筑摩「相変わらず利根姉さんは見る事が得意ですね。気付きませんでした」クス 利根「なに。我輩はいつ筑摩に抜かれてしまうかヒヤヒヤしておる」 筑摩「もうっ、利根姉さんったら」 利根「それにしても、ここは心地の良い場所じゃな」 筑摩「この部屋ですか? 確かに落ち着きますけれど……」 利根「いや、この鎮守府じゃ。明るく温かい気持ちで溢れておる」 筑摩「そう、なのですか? 私には良く分かりませんでした……」 利根「ハッハッハッ! 筑摩もこのような雰囲気を感じ取れるようにならねばな」 利根「──ここは、大切にされておる人達で一杯なのじゃろう。実際に会わずともそれが分かる」 筑摩「利根姉さんがそう言うのであれば、そうなのでしょうね」 利根「何を言っておる。筑摩は筑摩で判断をせぬか。我輩の言葉を鵜呑みにするでない」 筑摩「はーい」 利根「うむ! それでは寝ようかのう。明日が楽しみじゃ!」 筑摩「はい。なんだか私も楽しみになってきました」 ???『隣に駆逐艦がぁ!!? ──ぁいだァ!!? ご、ごめんってばー!!』 利根「……なにやら騒がしい奴が居るようじゃな」 筑摩「なんなのでしょうか……」 …………………… ………… …… 660 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/08(金) 17:46:14.90 ID:Rz6xto7Lo コンコン──。 提督「入れ」 ガチャ──パタン 瑞鶴「提督さん、今良い?」 提督「どうした、こんな夜中に」 瑞鶴「一緒に寝たいんだけど……ダメ?」 提督「構わん。私も丁度寝る所だ」 瑞鶴「ホント!? やったぁー!」 提督「本当に嬉しそうにするな。お前達は」 瑞鶴「むー……」 提督「……なぜ不貞腐れる」 瑞鶴「二人っきりの時はあんまり……他の子の話はして欲しくない」 提督「…………」 瑞鶴「ヤダもん……」 提督「……悪かった。今度から言わないようにする」 瑞鶴「ありがとね♪」ギュー 提督「よしよし」ナデナデ 瑞鶴「んー♪」ギュー 662 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/08(金) 18:06:22.96 ID:Rz6xto7Lo 提督「ほら、寝るぞ」 瑞鶴「はーいっ」 瑞鶴「今日は寒いわねー」モゾモゾ 提督「……寒いか」モゾモゾ 瑞鶴「うん、寒い」 提督「…………なら、温めないとな」ギュ 瑞鶴「──うん!」ギュ 瑞鶴「…………」ドキドキ 提督「…………」 瑞鶴「…………」ドキドキ 提督「…………」 瑞鶴「…………?」 提督「…………」 瑞鶴「……あれ?」 提督「ん?」 瑞鶴「…………」 提督「…………」 瑞鶴「……もういい」ムスッ 665 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/08(金) 18:28:12.18 ID:Rz6xto7Lo 提督(ああ……そっちの意味で温めて欲しかったのか……。失敗したな) 提督「……今日はこれで許してくれ」チュ 瑞鶴「ん、ちゅ……。…………もう……しょうがないわね」 提督「気難しい妹を持ったものだ」 瑞鶴「……嫌?」 提督「嫌ならこうして抱き締めていない」 瑞鶴「でも、一人の女の子として愛してはいないわよね?」 提督「それは……」 瑞鶴「ん、ごめん。ちょっと意地悪しちゃった。──でも、いつかぜーったいに振り向かせるんだから。覚 悟していなさいよ」 提督「覚悟しておこう」 瑞鶴「よろしいっ」 瑞鶴「──それじゃ、おやすみなさい」 提督「おやすみ──」 提督(今度……それと、いつか、か……) …………………… ………… …… 666 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/08(金) 18:51:47.77 ID:Rz6xto7Lo コンコン──。 提督「入れ」 ガチャ──パタン 利根「やあ提督! 我輩だ!」 筑摩「お邪魔します」 瑞鶴「提督さん。全部回ってきたわよ」 提督「ふむ。案内が終わったか」 利根「うむ! 案内は瑞鶴が丁寧にしてくれた! 良い場所ではないかここは! のう、筑摩!」 筑摩「はい。艦娘の皆さんも私達を歓迎してくれて、沢山お話もしました。貴方は皆さんを愛し、愛されているのですね」 金剛「もっちろんデース! この鎮守府で、テートクがライク オア ラブでない艦娘は一人も居まセーン!」 利根「艦娘の者達からその思いは充分に伝わってきた! 素晴らしい場所じゃなここは!」 提督「気に入ってもらえたようで何よりだ」 利根「これならば皆に良い言葉を伝えれよう!」 金剛「皆……というと、また総司令部へ行くのデスか?」 利根「うむ。我輩と筑摩は言わば偵察じゃ。我輩は一目で信用できたが、他の者はそうでなかったからのう。だが、提督と付き従う者達の姿を我輩達が伝えれば多少は信用するじゃろうて」 提督「そういう訳だ。すまないが、また向こうへ行く事となる」 金剛「ぅー……また寂しい思いをする事になるのデスね……」 提督「これも必要な事だ。なに。すぐになんとかしよう」 金剛「……約束デスよ?」 提督「また約束か。お前と果たせていない約束はこれで六個目だな」 金剛「あ、ちゃんと憶えてくれていたのデスね!」 提督「お前こそ、忘れていないだろうな」 金剛「一言一句憶えていマース!」 瑞鶴(…………ものすっごく気になる……) 提督「では、そろそろ行こう」 …………………… ………… …… 667 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/08(金) 19:14:05.70 ID:Rz6xto7Lo 提督「…………なんだ、この書類の山は」 職員「あ、あの……昨日より全ての鎮守府から艦娘が消えたとの報告がありまして……」 提督「なに? 消えただと?」 職員「はい……。緊急事態という事で大将をお呼びしようかと思いましたが、監守の話を聞いて、お戻りになるまでお待ちしようと判断しました」 提督(ふむ。詳しくは書類を見てからの判断になるが、解放した艦娘は消えたようだな) 提督「……これは緊急事態など生温いものではない。国の命運を左右する問題だ。以後、このような大きな問題はすぐに連絡をするように」 職員「は、はい! 申し訳ございません!」 提督「下がって良い」 職員「本当……申し訳ございませんでした……。失礼しました……」 ガチャ──パタン 救護妖精「──ちゃんと艦娘は消えたみたいだね」 提督「ああ。あとは、この書類のどこかに深海棲艦からも重巡が消えたという報告がないかを探さなければな」パラパラパラパラ─スッ 救護妖精「この書類の山から……? 骨が折れるとかそういう問題じゃないよ?」 提督「読むだけだ。そう時間も掛からん。どうせ中身はほとんど同じだ」パラパラパラパラ─スッ 救護妖精「いや……捲るんじゃなくてちゃんと見ようよ……」 提督「うん? ちゃんと見ているが」パラパラパラパラ─スッ 救護妖精「え?」 提督「──む。この報告書が深海棲艦について記述している」スッ 救護妖精「は?」 672 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/08(金) 19:39:18.05 ID:Rz6xto7Lo 提督「……ふむ。敵の重巡も見掛けなくなったという報告だな。──救護妖精、どうやら良い方向へ転がっているらしい」 救護妖精「…………」 提督「どうした」パラパラパラパラ─スッ 救護妖精「いや……確かに私が強化とか担当したけどさ……ここまで人間離れするもんかねぇと思って……」 提督「だからこそこのデメリットだ。糖分は死に掛けなければ摂取できない上、幼き頃のほとんどの過去を忘れている」パラパラパラパラ─スッ 提督「私が憶えている過去は、甘味が好きだったという事と、誰か大切な人を守れなかったという二つだけだ」パラパラパラパラ─スッ 救護妖精「……ごめんよ」 提督「謝ってくれるな。私は現状でも満足している。むしろ、そのデメリットだけでこれだけの事ができるようになったんだ。ありがたい事だ」パラパラパラパラ─スッ 救護妖精「ポジティブだねぇ……」 提督「素直な感想だ」パラパラパラパラ─スッ 救護妖精「……言っとくけど、提督っていつ死んでもおかしくないんだからね? 糖分ってそれだけ大事なんだよ? それも、歳を取れば歳を取るほどその確率が高くなるんだからね」 提督「分かっているよ」パラパラパラパラ─スッ 救護妖精「だけど……」 提督「普通の人間となんら変わらん。普通の者こそいつ死ぬか分からない。確かに私は確率的には高いだろうが、そんなものに怯えていたらまともに生きる事さえ出来んよ」パラパラパラパラ─スッ 救護妖精「……強いねぇ」 提督「強くはない。自分の死に無関心なだけだ。憶えている過去で、大切な人を守れなかったという想いがやたら強くてな。その時点で私は負けているんだ」パラパラパラパラ─スッ 救護妖精「よくは分からないけど……私の目から見ると提督は強いよ」 提督「……そうか」パラパラパラパラ─スッ 提督「──よし。他にも深海棲艦の重巡が消えたという報告は三件あった。これからもそのような報告が増えていくだろう。これは決まりと言って良いな」 救護妖精「はやっ!」 提督「こっちの書類の山には用は無い。後はそっちの書類を見ながら軍政や予算などを考えるか。その後で地下へ行くぞ」 救護妖精(……本当は提督一人で総司令部はなんとかなるんじゃないのかな) ……………………。 673 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/08(金) 19:53:19.41 ID:Rz6xto7Lo 利根「──というのはどうじゃろうか」 ガチャ──パタン 提督「全員居るか?」 利根「おお提督! 全員居るが、その前にちと話を聞いてもらえぬだろうか!」 提督「どうした」 那智「話に聞くと、あの出入り口では見つかる可能性もあり、何かと不便らしいじゃないか。だったら、別の通路を作ってみるのはどうだろう、という話になってな」 筑摩「あの建物の近くは山がありますよね? 利根姉さんによると人の手が加わっていないみたいですので、そこならば一目に触れずここから出られるのでは、と」 提督「なるほど。だが、まずこのコンクリートを破壊しなければならない。そこから延々と穴掘り作業だぞ。面倒な事だが、大丈夫なのか?」 鈴谷「何も無いこの場所でダラダラするよりは遥かに有意義じゃん? むしろやらせてくれないかなー」 救護妖精「汚れてもシャワーはあるしねー。提督が鎮守府に戻ってる間に色々とここを調べたけど、穴を掘るくらいならなんとかなると思うよ。資材もあの昇降機から持ってこれるしね」 提督「……なら、頼んでも良いか?」 加古「まっかせてー! くぅ〜! 身体を動かすのは好きなんだよねー!」 古鷹「加古は本当に身体を動かすのが好きよね。ここでも青葉と一緒にあちこち歩き回ってたし」 青葉「色々と救護妖精さんに止められてしまいましたけどね……」 救護妖精「これでも極力自由にさせたつもりだよ」 提督「では、その方針でやろう。後で資材を持ってくるが……その前に、コンクリートの壁はどうにかせねばな」ツカツカ 救護妖精「ハンマーで壊せば良いんじゃない?」 674 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/08(金) 19:53:48.87 ID:Rz6xto7Lo 提督「何回も叩いてはバレる可能性がある。やるなら一撃でだ。──ふむ。たしか、こっちの方角が山だったな」スッ 救護妖精「えっちょ……まさ──」 提督「シッ────!!」ヒュッ ビキャアァッ──!!! ────パラパラ……。 提督「…………よし」 救護妖精「『よし』じゃないわこの馬鹿がぁ!!!!」スパァンッ! 提督「……痛いじゃないか」 救護妖精「ぅうるっさい!! 本当ならハリセンで済ませんわぁ!! 提督、アンタ自分の身体の事分かってんの!? 糖分を滅茶苦茶使うような真似してんじゃないよ!!!」 提督「バレるよりかは良い」 救護妖精「寿命を縮めるよりかは遥かにマシだわ!!!」 那智「……今、掌底突きでコンクリートを破壊したよな?」 利根「本当に規格外じゃのう……」 青葉「那智さん、今のご感想を一言」 那智「……あの方に手を出した自分を殴りたい」 青葉「反撃されたら確実に一撃必殺でしたね」 ……………………。 提督「では、全員来るのだな?」 救護妖精「みたいだね。利根と筑摩の言葉を信じてくれたみたい」 提督「そうか。ありがとう利根、筑摩」 利根「なに。我輩は思った事をそのまま言っただけじゃ」 筑摩「私もです。貴方やあの場所を悪く言うのは少し難しいくらいですよ」 青葉「私はもう今からワクワクしているくらいです!」 提督「今日はこっちに泊まる事となる。出発は明日の夜だ。それまでに誰が行くのかを決めてくれ」 全員「はい!」 提督「では、私は戻る。救護妖精、すまないが──」 救護妖精「分かってるって。この子達の体調管理は任せておきなー」 提督「頼んだ。また明日来る」 …………………… ………… …… 687 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/11/09(土) 00:24:19.35 ID:xDlbTjNyo 職員「──はい。確かにお預かりしました」 提督「リストに載せた提督達によろしく頼む」 職員「はい。……それにしてもお仕事が速いですね。たった三日、それもお一人で予算や軍政、それに総司令部の新しい大将の候補を見定めるなんて……」 提督「おかげで睡眠不足だよ。元帥殿はあの場所で死体すら上がってこず、他の大将殿は死亡が確認され、右も左も分からない私が総司令部を動かす事になるとは……。他に誰か適任者が居ないとは頭が痛くなる」 職員「でも、助かりました。大将が居なければこの国はどうなっていた事か……」 提督「何も変わらんよ。私以外の誰かが同じ事をしていただろう」 職員「そんな事はありませんよ。大将だからこそ出来た事です」 提督「言葉だけ頂いておこう。──私は少し休むよ」 職員「畏まりました」 提督「それと私は今夜、鎮守府に戻る。何かあったらそっちへ電報を送ってくれ」 職員「え……は、はい……」 提督「理由が必要なら話す」 職員「えっと……その…………お、お願いしてもよろしいでしょうか……?」 提督「──あの鎮守府でやらなければならない事がまだまだ沢山ある。総司令部も大事だが、あの近海や私の艦娘を護るのも私の仕事だ。片方にだけ力を注ぐ事は私には出来ん」 職員「なるほど。……しかし、今の間だけは他の者にあの近海を護らせる方が良いのでは……」 提督「そこは私の我侭だ。その問題は目を瞑ってくれると嬉しい」 職員「……はい。今の考えは無かった事にしておきますね」 提督「うむ。では下がって良い」 職員「はい。失礼しました」 ガチャ──パタン 提督(これが権力者に許された『無理を通す』というものか……) …………………… ………… …… 688 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/09(土) 00:32:41.51 ID:xDlbTjNyo 少将「──失礼しました」 ガチャ──パタン 提督「……ふぅ」 救護妖精「お疲れ様、提督。さっきの人で最後だったよね」 提督「ああ。面倒だった」 救護妖精「お茶飲む?」スッ 提督「頂こう」ズズッ 救護妖精「それで、役に立ちそうなのは居たの?」 提督「なんとか三人ほど、な」 救護妖精「三人かー……大丈夫そう?」 提督「動かすだけならば問題ないだろう。慣れてくれたら私はひっそりとするよ」 救護妖精「本当にそんな事できるの?」 提督「この身体は便利だな」 救護妖精「ああ……そういう事ね……」 提督「私は気に入った場所に居たいからな。ここは私の場所ではない」 救護妖精「普通なら元帥になれるのに、それをわざわざ蹴るなんてねぇ……。とことん分からない人だよ」 提督「自分でも良く分かっていないからな」 救護妖精「まったく……」 …………………… ………… …… 690 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/09(土) 00:42:46.48 ID:xDlbTjNyo 提督「……本当にたった二日で開通させるとは」 利根「暇であったからな。ついついやってしもうた」 那智「一応、出入り口は隠せるように草などでカモフラージュしておいた。簡単には見つからないだろう」 救護妖精「いやー……本当に凄いよね。普通なら筋力とか衰えてるはずなのにさ。我ながらとんでもない強化を施しちゃったって思ってるよ……。この分ならもう食べ物は固形物でも大丈夫なんじゃないかなぁ」 青葉「ちなみに、利根さんだけずーっと笑いながら掘っていましたね」 利根「だって楽しかったであろう?」 熊野「楽しいものですか。開通するまでずっと土で汚れていましたわ」 青葉「と、二番目に頑張っていた子が申しております」 熊野「ばっ──! こ、こら!! 言わないで下さる!?」 提督「皆、良くやってくれた。というわけで、こんな物を持ってきた」スッ 利根「箱? なんじゃ? 甘味か?」 提督「良く分かったな」 全員「!!」 提督「中身はアイスクリームだ」 全員「!!!!」 利根「な、なんと!! それは真か!?」 提督「ああ。私はこういう事しか出来ないからな」 羽黒「い、良いのですか?」 提督「一人につき一つだけだがな」 愛宕「充分よー! はぁ〜……頑張ったかいがあったわぁ……」 救護妖精「……こんな場所なのに、皆喜んでるね」 提督「どこにでも希望はあるというものだ」 救護妖精「提督も、希望は持っても良いんじゃない?」 提督「……私の場合は楽観になるだけだ。いつも通りで居るのが一番良い」 救護妖精「はぁ……艦娘の問題よりもこっちの方が苦労しそうだよ……」 提督「…………」 …………………… ………… …… 691 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/09(土) 01:05:11.50 ID:xDlbTjNyo 提督「──以上が今月の軍方針という事になる。異論がある者は手を挙げて発言せよ。……………………居ないようだな。では、今回の会議はこれで終了とする」 ……………………。 救護妖精「会議は終わったみたいだね。お疲れ」 提督「まったく……発言をしない奴らばかりで困る」 救護妖精「それだけ提督のやり方で文句も何も無いって事じゃないかな」 提督「さあな。自分で考えを述べれなかったらいつまで経っても私は離れる事が出来ないのだが」 救護妖精「やっぱ提督は人の上に立つのが似合ってるって」 提督「断る。私は自分の場所に居るのが良い」 救護妖精「勿体無いなぁ……」 コンコン──。 提督「入れ」 ガチャ──パタン 職員「失礼します。大将、本日のお仕事は終わりましたか?」 提督「先程の会議の内容を書き留めれば終わりだが、どうした」 職員「あの……大将が元帥になるつもりはないと耳に入っていますが、どうも大将が元帥になるかどうかの賭けが流行っているようでして……」 提督「下らんな……」 職員「ですが、私としてもなぜ元帥になられないのかと不思議に思っています。その理由をお聞きしても宜しいでしょうか」 提督「それはこの救護妖精がよく分かっている事だ。私は身体が弱い。いつ死んでもおかしくない。そんな人間が元帥となっていきなり死んだら困るだろう。それが理由だ」 職員「お身体が優れないのですか?」 提督「ああ。こればかりはもう受け入れるしかないようでな。いつ死ぬかも分からない程だそうだ」 職員「そんな事情がありましたか……。すみません、なんだか言わせてしまったみたいで……」 提督「元より隠す気は無い。聞かれたら答えていたよ」 提督「それよりも、今日も鎮守府へ戻る予定だ。他に用事が無いのならばその準備をするが、良いか?」 職員「し、失礼しました!」ピシッ 提督「うむ」 ガチャ──パタン 提督「……立場上、一番偉いとはいえ、どうしてこう怖がられるかね」 救護妖精「もう運命だと思いなよ」 …………………… ………… …… 705 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/09(土) 23:17:53.43 ID:AVwO1VgIo 提督「さて……明後日で重巡の最後の六人を連れて帰る訳だが、その前にやっておきたい事がある」 利根「ふむ? なんじゃ?」 提督「先に六人、解放しておきたい」 那智「世話や説明をしろという事か」 提督「そういう事だ。私がやるよりも怖がらせなくて済む」 羽黒「でも……貴方を信用するかどうかの問題ですから……その、そこは貴方がなされた方が……」 提督「ふむ……。羽黒はその方が信用しやすいか」 羽黒「は、はい……。やっぱり、見ず知らずの人に連れて行かれるのは怖いですから……。それでしたら、どんな人なのか を見定めれる期間は欲しい……と思います……」 提督「なるほど。確かにその通りだな。助言感謝する、羽黒」ナデナデ 羽黒「ひゃんっ!」ビクッ 提督「む、すまん」スッ 羽黒「──あ、い、いえ……その……ちょっと驚いただけでして…………あの……」 提督「うん?」 羽黒「…………撫でてもらって、良いですか……?」 提督「うむ」ナデナデ 羽黒「はぅ……」ホッコリ 707 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/09(土) 23:35:42.22 ID:AVwO1VgIo 妙高(あら……なんだか羨ましい……) 足柄(あらあら。あんなに気持ち良さそうにしちゃって) 筑摩(結構意外かしら。もっと怖がると思っていましたけれど) 利根「提督よ、我輩も何か良い事をしたら撫でてくれるかのう?」 救護妖精「ストレートだねぇ」 利根「これが我輩の性分よ」 提督「状況にも因るが、撫でてくれと言われれば私は撫でる」 利根「ふむ。では、少しばかりお願いしてもよいか?」ススッ 提督「ほれ」ナデナデ 利根「ぉ…………」 提督「…………」ナデナデ 利根「……………………」 提督「…………」ナデナデ 利根「ぉぉ…………」ホッコリ 利根「こ、これは……なんとも珍妙な……。ここまで抗い難いとは……」 提督「満足か?」スッ 利根「うむ! 大変良いものであった!」 那智「……………………」ジー 提督「那智、お前もしようか」 那智「な、なぜ私に言う」 提督「さてな。なんとなくだ」 那智「…………ふん」 提督「そうか。──それでは、今回は水上母艦と一部の戦艦を解放しよう」 那智(む…………) 救護妖精「なんで戦艦?」 提督「深海棲艦の戦力を削る為だ。出来れば一気に戦力を減らしたい所だが、食料の調達と車に乗せれる人数、そして私が 往復できる回数の都合もある」 救護妖精「なるほどねー」 提督「そうだな……。戦艦はこの四人で頼む」 救護妖精「あいよー」 那智「……………………」 ……………………。 711 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/09(土) 23:53:31.22 ID:AVwO1VgIo 比叡「う……こ、ここは?」 霧島「どこ、でしょうか……予測すら付きません」 長門「む……」 陸奥「あら……?」 千代田「千歳お姉……無事?」 千歳「うん、大丈夫だけど、どこかしら……ここ……」 救護妖精「はい、説明お願いね提督」 提督「これを何回も言わなければならないのは少しばかり辛いな」 羽黒(あの……あまりに当たり前のように身体を拭いていってましたけど……もしかして私達も……?) 妙高(…………たぶん) 足柄(でも、男というよりも医者みたいな感じだったわよね。なんかこう、やらしさがないっていうか) 筑摩(で、でも……少し恥ずかしいですね……) 羽黒(確かにそうですけど……どうして拭き始めてから今まで誰も何も思わなかったのでしょうか……) 足柄(だって……あんなに自然と普通に触られても……ねぇ?) 那智「……ふん」 利根「何を拗ねておる那智よ」 那智「何がだ」 利根「ほれ、機嫌も悪くしておる」 那智「私は元からこうだ」 利根「ほう」ニヤ 那智「……何を考えている貴様」 利根「なに。我輩だけの秘密だ」ニヤニヤ 那智「ちっ……」 ……………………。 712 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/10(日) 00:13:21.69 ID:4ya6TxlLo 長門「納得がいかん」 提督「ほう。何に納得がいかないのかね」 長門「お前が私達を助けるメリットが無い」 提督「メリットがなければいけないのか」 長門「いけないという訳ではないが、それは共に長き時間を過ごした者にのみ与えれるものだ。見ず知らずのお前では信用に足りん」 提督「尤もな意見だ。私も今ここで信用してもらおうとは思っていない」 長門「ほう。ならばどうするというのか」 提督「どうもしない……と言っては嘘になる。だが、私から何かをしようとは思っていない。私はそこに居る六人にしてやった事と同じ事をするだけだ」 長門「ほう。お前達もここから助けられた……と言われたくちか」 利根「うむ。実際に目の当たりにするまではどう助けるのか知らなんだが、助けるの意味も今回で分かった」 比叡「あのー……どういう意味でしょうか」 利根「そこのカプセルに入っている者を取り出し、飲んでしまっている液体を吐かせ、そして身体が冷えぬよう暖を取らせておった。まさしく救助と言えるじゃろう」 千歳「…………あの、それってもしかして……私達の身体を触ったって事?」 提督「ああ、そうだ」 千代田「な、なんですって!? この変態……!! 千歳お姉の身体に触るなんて!!!」 霧島「ど、どうして貴女達はそれを黙って見ていたのですか!?」 羽黒「その……あまりに自然というか普通といえば良いのか……。手際が良かったのでむしろ関心してしまったと言いますか……」 利根「先程も言うたが、まさしく救助と言えるものじゃった。医者に裸体を見せるのと変わらぬ」 陸奥「それは貴女達の言い分じゃないの。私はちょっと嫌よ」 713 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/10(日) 00:29:30.39 ID:4ya6TxlLo 利根「そうは言うてものう……。そこに浮かんでおるオナゴよりは遥かに良いと思うが」 長門「それはそうだが、その救助はお前達がやっても良かったんじゃないのか?」 足柄「水を吐かせる所からもう無理って思っちゃったわねぇ……。あの二人のようにスムーズには出来ないと思うわ。で、その手際の良さに見惚れている内にもう終わっちゃってたわ」 救護妖精「そういや提督もかなり簡単に吐かせてたね。そんな知識、どこで手に入れたのさ」 提督「海で溺れた人間を救助した際、水を吐かせる必要がある。士官学校で教えられた事を憶えていただけだ」 救護妖精「へぇ。士官学校ってそんな事も教えるんだ」 長門「……その理由は分かった。話を戻すが、私はまだ納得していない。お前に何のメリットがある」 提督「こじ付けで良いのなら一つだけメリットがある」 長門「ふん。やはりあるのではないか」 提督「私の中の『助けたいという欲』が満たされる。それがメリットでどうだ?」 長門「……ふざけているのか?」 提督「大真面目だ。これ以外にメリットと呼べるものは無い」 長門「…………。そうか、どうしても言わないか。ならば──」スッ 長門「少し痛めつけさせてもらう。殴り合いなら負ける気はしないぞ」 提督「断る。デメリットしかない。それに、救護妖精が許可してくれんだろう」 長門「ふん。逃げるのか」 提督「好きに考えたまえ」 715 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/10(日) 00:50:09.46 ID:4ya6TxlLo 長門「──なら、好きにさせてもらう」ダッ 長門「ふん──!」ビッ 提督「…………」ペシッ 長門「!」バッ 提督「…………」 長門「……まさかこうも簡単にいなされるとは思わなかった」ジリ 提督「そうか」 那智「あれでは無理だな」 救護妖精「経験者は語るねぇ」 利根「しかし、良いのか? 激しい運動は禁じておるのじゃろう?」 救護妖精「あのくらいの動きならまあ。それに、どうせすぐに決着が付くしね。ちょっとスープを用意してくるから、誰か手伝ってくんない?」 羽黒「は、はい。私が行きます」 救護妖精「ありがと。──ああそうそう長門さんとやら」 長門「今は話し掛けるな」 救護妖精「アンタはあのカプセルの中に一番長く入ってたんだから、無茶したら身体に響くよ。適度な所で諦めな」 長門「ふん。この長門が諦めるだと? 馬鹿馬鹿しいな。確かに身体は本調子ではないが、これはハンデだ」 救護妖精「まあ、私達はスープを作ってくるから、それまでの間に終わらせてねー」 長門「…………」 長門(……たしかに隙が無い。腕を後ろに自然体で立っているが、あの状態から私の拳を払える技量を持った相手……。よほど無理な体勢でもない限り攻撃は効かないか……。だが、相手は反撃をする様子が無い) 719 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/10(日) 01:03:23.35 ID:4ya6TxlLo 長門(なら──)ダッ 長門「ハッ!」ビュッ 提督「…………」タンッ 長門「そこだ!!」グルン─ブンッ 提督「…………」グッ─ストッ 長門「!!!」バッ 提督「…………」スッ 長門「……なんだ今のは」 提督「ただ乗っただけだ」 利根「ほほう。足払いで空中に逃げた相手に、そのまま後ろ蹴りとは見事。あれならば普通は避けれまい」 那智「だが、ニ撃目の足へ乗られたな。まさに屈辱の回避だ」 長門「……なら、どうして反撃をしなかった。絶好の機会だっただろう」 提督「闘う意思など毛頭無い。お前の我侭に付き合っているだけだ」 長門「なんだと……?」 提督「反撃を望むのなら一度だけしてやろう」 長門「馬鹿にするか貴様……」ギリ 長門「良いだろう。その一撃で私を負かせるのならば、お前の言っている事を信用しても良い」 那智「プライドの高い女だ……。私とよく似ている」 利根「そのプライドをバキバキに折られるのも似ておるのう」 那智「全くだ。どんなに足掻こうと、私はあの方に勝てないだろう」 724 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/10(日) 01:21:01.09 ID:4ya6TxlLo 長門「…………」ジリ 提督「…………」 長門(コイツが何をしようが与えれる攻撃をせねばならない……。いや、当たらざるを得ない状況に持ち込めばどうにでも出来るはずだ。相手の反撃は一度……ならば、掴んでからの殴り合い。仮にどんな場所へ攻撃されようと、私は怯まん!) 長門「…………!」バッ 利根「掴みに掛かったか!」 長門「もらった!」グッ 長門「────なっ」スカッ 利根「おお。これはなんと……」 長門(ど、どこだ? 右……左……後ろ……居ない……?)キョロキョロ 提督「…………」スッ 陸奥「長門さん! 後ろ!!」 長門「な──」バッ 提督「…………」ポン 長門「に…………?」ナデナデ 提督「…………」ナデナデ 長門「…………ふ」ナデナデ 長門「──ざけるなぁ!!!」ブン 提督「…………」ペシッ 長門「らあぁッ!!」ビッブンッヒュッ 提督「…………」ペシペシペシッ 長門「ちゃんと闘え!!」ブンッ 提督「しっかりと反撃したではないか」ペシッ 長門「なんだと!?」ヒュッ 提督「頭を撫でただろう」ペシッ 長門「それのどこが反撃だ!!」バッ 提督「お前が一番分かっていると思うが」ヒョイ 長門「…………ッ!!」ギリ 726 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/10(日) 01:41:18.89 ID:4ya6TxlLo 提督「…………」ジッ 長門「…………」 提督「…………」ジッ 長門「ぅ……ぐ…………」 提督「…………」ジッ 長門「……どうやって後ろに回り込んだ。どこにもお前は居なかったぞ」 提督「上だ」 長門「あの体勢で跳んだのか!?」 提督「正確には横に跳んでからお前の背後に向かって跳んだ」 長門「……お前、本当に人間か?」 提督「よく言われる」 長門「………………何回だ」 長門「何回、私を倒せた」 提督「お前が行動する度に倒せただろう」 長門「…………」 提督「…………」 長門「……負けだ。お前の言った事は信用する。そして、私を好きにするが良い」 那智(本当に訳の分からない方向にプライドの高い奴だ) 提督「じゃあ好きにしろ」 729 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/10(日) 01:55:41.27 ID:4ya6TxlLo 長門「なんだそれは……」 提督「そのままの意味だ。好きにしろ。制限は付けるが、その中であれば自由にしていれば良い」 長門「……その制限はなんだ」 提督「お前達が外に出ると大混乱が起きるから勝手に出るな。それだけだ」 比叡「あ、あのー……」スッ 提督「なにかね」 比叡「勝手に、という事は……貴方に申し出れば良いのでしょうか」 提督「うむ。姉と似て察しが良いな」 比叡・霧島「!!!」 比叡「お姉様を知っているのですか!?」 霧島「でも……金剛お姉様はそのカプセルの中に……」 提督「艦娘としての金剛が私の秘書として鎮守府を護ってくれている。いつも良くしてくれている」 比叡「貴方の鎮守府に……」 霧島「金剛お姉様が……」 比叡・霧島「私、行きます!!」 提督「榛名も居る。きっと二人も喜ぶだろう」 比叡「榛名も……!」 霧島「榛名お姉様も……」 救護妖精「おーい。スープ出来たよー」 提督「その前に……スープが出来たみたいだ。先に食事を済ませておけ」 比叡・霧島「はいっ!」ピシッ 提督「…………」 731 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/10(日) 02:08:40.44 ID:4ya6TxlLo 長門「む……」フラッ 提督「おっと」ヒョイ 長門「なっ!? 何をする!」ジタバタ 提督「暴れるな。落ちる」 長門「離せば暴れる事もない!!」バタバタ 提督「……大人しくしろ」ジッ 長門「ぅ…………わ、分かった……」 提督「あれだけ派手に動いたんだ。そうなって当然だろう。これはその結果だと思え」 長門「……恥ずかしい」 提督「それもお前が暴れた結果だ」 長門「…………受け入れる……」 提督「素直でよろしい」 那智「……………………」ジー 利根「ほう」ニヤ 那智「……なんだ」 利根「いやいや、なんでもない」 那智「…………ちっ」 ……………………。 733 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/10(日) 02:17:50.67 ID:4ya6TxlLo 陸奥「あの……長門さん……」コクコク 長門「ん? どうした」 陸奥「ごめんなさいね……。勝負に水を差しちゃって……」コクコク 提督「…………」スッ 長門「んくっ。……いや、構わない。あれはどうであれ私が負けていた」 陸奥「でも……」 長門「構わないと言っている」 提督「…………」スッ 長門「んぐっ……」 長門「それよりも……なぜお前が私の世話をしているんだ」 提督「なんとなくな」スッ 救護妖精「身体が弱ってるのにあんなに動くからだよ。他の子も皆飲んでるし、自業自得。諦めな」 長門「あむ……。だが、これは……その……」 救護妖精「恥ずかしいとか言っても説得力無いよ。あんた蹴り放ったじゃん。あれと比べたら背中を預けて口にスプーンを運ばれるなんて可愛いものだろう?」 長門「あれは闘いだったからだ。闘いの中ならば特に気にする事はない」 那智「必要だからか」ズズッ 提督「…………」スッ 長門「んっ……。そうだ」 那智「お前とは気が合いそうだ」 提督「那智と通ずる何かがありそうだな。勝気なのも似ている」スッ 那智「私はあそこまで諦め悪くない」ズズッ 長門「んむ……。お前もこいつと一戦交えたのか」 那智「ああ。お前と全く同じ結果だった」 長門「……ここまで完敗なのも初めてだ」 提督「ほら、これで最後だ」スッ 長門「あむ……。…………すまない。ごちそうさま」 提督「これに懲りたらもう無茶をするな」ナデナデ 長門「むぅ……」 734 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/10(日) 02:35:25.62 ID:4ya6TxlLo 救護妖精「随分と大人しくなったねぇ」 陸奥「うん。私もそれは思ったわ」 長門「……逆らってはいけないという感情が占めていてな」 那智「非常に良く分かる。私も始めはそうであった」 長門「ほう? では今のお前はどうなんだ?」 那智「畏怖は勿論だが、それ以上に尊敬もある」 利根「あと、それともう一つ大きな感情があるようじゃがな」 那智「喧嘩を売っているのか?」 利根「何も隠さんでも良かろう」 那智「……ふん」 長門「…………?」 提督「深くは考えなくて良い」ナデナデ 長門「う、うむ……」 提督「──では、仮眠室のベッドに運んでくる」ヒョイ 長門「わっ……」 那智「…………」 陸奥「……今更だけど、長門さんがお姫様抱っこされるのって初めてじゃない?」 長門「…………うむ」 陸奥「どんな感じがするの?」ワクワク 長門「その………………恥ずかしいと同時に、何かこう……胸にモヤモヤとした感覚が……」 陸奥「……よく分からないわ」 長門「私だって分からないんだ……。今日は初めてが多すぎて少し戸惑っている……」 提督「行くぞ」スタスタ 長門「わっ! い、いきなり歩き出すな」 提督「知らん。お前は早く横になって休め」スタスタ 長門「う……分かった……」 那智「……………………」 陸奥「……本当、長門さんがあんなに言う事を聞くなんて初めてね」 救護妖精「…………」 救護妖精(艦娘のベースとなった子……全員が偽者の記憶だから辛いなぁ……) …………………… ………… …… 754 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/11/10(日) 22:44:29.94 ID:4ya6TxlLo 提督「艦娘、深海棲艦が急速に消えているという異例の事態が発生しているのは知っているな」 少将「はい。私の鎮守府でも同じ現象が発生しています」 中将A「私もだ。一体何があったのでしょうかね……」 中将B「右に同じく。……おかげで戦力はガタ落ちですよ」 提督「知っての通り、私は艦娘の数が絶対的に少ない。そのせいか私自身の目で確かめれない状況だが、ここまで多くの報告が集まっているのも事実。実際に、消えた艦娘は皆同じのようだ」 提督「重巡、水上母艦、軽空母、潜水艦は全滅。戦艦は金剛、榛名を除く八隻。軽巡、駆逐艦は半数。空母は加賀と飛龍の二隻。これが現在確認されている被害だ」 提督「今の所消えている艦娘は私が所持している艦娘以外という関連性以外、見つけられない。他に何か気付いた者は居ないか」 中将B「もしかすると、ですが……特に戦力の高い艦娘が優先的に消えていないでしょうか」 提督「私もそれを思った。だが、いまいち納得が出来ない。戦力の高い艦娘が優先的に消えるのであれば、戦艦や空母は全て居なくなっているはずだ。そして、駆逐艦でも特に戦力の高い島風や雪風、夕立……軽巡では球磨と名取は消えたが長良は消えていない。安易に戦力の高い艦娘だけとは思い難い」 少将「では艦娘ではなくて深海棲艦側に何かがあるのでしょうか? 報告によると、深海棲艦も艦娘と同じように消えているようですし」 提督「残念だが私ではその関連性が見つけれない。何か分かったら私に報告をしろ」 中将A「……ここまでくると、もはや世界が艦娘や深海棲艦を消しに掛かっているように思ってしまいますね」 提督「それはそれで結構だが、そうなると他国の事で心配になる」 中将A「他国……ですか?」 755 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/10(日) 23:10:19.69 ID:4ya6TxlLo 提督「現状、深海棲艦が海に蔓延っているおかげで我々の国は侵略されていない。だが、艦娘や深海棲艦が居なくなる事でこの国は他国に怯える事は無い。……どちらに転んでも痛いのだよ」 少将「ですが、我が国は負けません! 大和魂は必ずや勝利を導くでしょう!」 提督「そのような根拠の無い理論は嫌いだ」 少将「大将! その言葉は──!」 提督「では少将。艦娘六隻で百隻の深海棲艦を沈めれるか」 少将「それは…………」 提督「大国を相手にするという事はそういう事だ。士気を高めるのは素晴らしい事だ。だが、勝てない戦を勝てない戦法で挑むのは愚の骨頂と知れ」 提督「そして、その戦法によって生み出される被害と未来も考えろ。──例えば中将A、お前は錬度の低い駆逐艦を犠牲に戦っているな?」 中将A「はっ。効率良く敵を落とせる戦術だと思っております」 提督「確かに戦術面では良い。だが、戦略面ではどうだ」 中将A「…………と、言いますと」 提督「深海棲艦は無限と思わせる程に多い。いつまで続くのか分からない非常に長期的な戦いだが、果たしてその戦術でいつまで戦える」 中将A「…………申し訳ありません。私では答えれません」 提督「良い。戦術面ではお前のやり方は非常に良い。だが、戦略的な面で見るとやってはいけないやり方だ。そのようなやり方では必ず疲弊してくる。その内、艦娘が足りなくなって戦えなくなる」 提督「中将A、戦いとは勝つ事だけではない。退却も重要だ。戦線が保てれるのならば無理に押し進めなくても良い。無理に推し進めた分、必ずツケが返ってくる。疲弊した戦力では敵の精鋭を倒す事などできないだろう」 中将A「……はい。そのよな経験を一度しております」 759 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/10(日) 23:35:46.25 ID:4ya6TxlLo 提督「ふむ。では今の話はよく分かってくれると思う。我々の国はただでさえ小さい。そんな国が、使い捨てなどしていれば必ず足りなくなる。視野を広く持て中将A。先の事を見据えて行動せよ」 中将A「はっ! 有り難いお言葉、感謝します!」ピシッ 少将「…………」 提督「少将はまだ納得できないかもしれない。だが……そのような考え方もあると思ってくれたまえ。我々だけが特別ではないのだ」 少将「……納得は出来ませんが、憶えておきます」 中将B「少将! 貴様そのような事が言える立場か!!」 提督「よい中将B。私はこのように情熱的で怖いもの知らずの彼を気に入って招き入れた。──だが、このままお咎め無しでは他の者に示しがつかない」 少将「いかなる罰も受け入れます」 提督「良い言葉だ。──では少将、お前には三日間、私とチェスをしてもらう」 少将「……は? どうしてでしょうか」 提督「お前は戦いの腕は良いが、大事な部分を分かっていない。その三日間でその大事な部分に気付けなかった場合、この場へ呼ぶ事は無くなる」 少将「……了解しました」 提督「ただ呼ぶ事が無くなるだけではない。永遠に呼ぶ事が出来なくなるという意味でもある事を心得よ」 少将「な……!」 中将B「大将……それはいくらなんでも……」 提督「このくらい、こなしてもらわねばここへは留まれぬよ。それと、私の見込み違いでなければ少将はこの課題をクリア出来ると思っている。失望させるなよ、少将」 少将「──受けて立ちます!!」 提督「良い返事だ」 中将B「…………」 提督「正義というものは、人によって変わってくるものだ中将B。そこは憶えていて欲しい」 中将B「……深く考えてみます」 提督「うむ」 提督「こんな若造だが、三人共、私を──そしてこの総司令部を支えてくれ。上からの目線ですまないが、少しばかりこの若造に付き合ってくれないか」 …………………… ………… …… 764 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/11(月) 00:01:07.35 ID:MD8A4934o 救護妖精「残った艦娘は軽巡と駆逐艦が半分。そして戦艦二隻と空母の大半、か……だいぶ少なくなってきたねぇ」 戦姫「あと、もう少しなのですね」 ヲ級「♪」スリスリ 提督「ああ。……すまない。お前達の提督にはなれなかったよ」 戦姫「いえ、それはもう叶っています」 ヲ級「!」コクコク 提督「む?」 戦姫「沖ノ鳥島海域にて一度、貴方は私達に指示を与えて下さいました。あれは、何よりも喜ばしい事でした」 戦姫「あの時、分かったのです。私達は『もう一度、艦娘の時と同じように提督と共に戦いたかった』と。貴方は、しっかりと提督として私達を扱って下さったじゃないですか」 提督「だが、私は海へ出ていない」 戦姫「それが普通です。普通、提督が指示を与えて艦娘がそれを遂行する。艦娘は、それに喜びと幸福を感じる。──それは、提督を失い、深海棲艦となった私達では得られる事の出来ない喜びです。艦娘の当たり前──その当たり前だからこそ、その時が来るまで気付きませんでした」 救護妖精「…………」 戦姫「きっと貴方の艦娘も、指示を与えたら喜びませんか?」 提督「…………なるほど。確かに心当たりがある」 提督「だが、お前達は本当にあの一度きりで満足したのか?」 戦姫「満足とは言えませんが、充分です。艦娘を解放するという話と、あの作戦指示を聞いた時には受け入れていました。例え私達が消える事になろうと、私達を艦娘のように扱って下さるこの方について行こう、と」 提督「……消えてしまった仲間は、どうだった」 戦姫「夏に降った雪のように消えていきましたが、その子達の最後は笑顔でしたよ。普段から笑わない子も、笑顔で消えていきました」 765 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/11(月) 00:15:35.22 ID:MD8A4934o 提督「寂しくはないのか」 戦姫「勿論、寂しさもあります。けれど、羨ましい気持ちもあるのです。あの子達は苦しまず、笑顔で深海棲艦という枷から解き放たれたのですから」 提督「……そうか」 戦姫「……これから、どうするおつもりで?」 提督「艦娘に真実を話す」 救護妖精「……まだちょっと早くない?」 戦姫「私もそう思います。どうして解放が先ではないのでしょうか」 提督「……私の我侭だ。最後は、艦娘達に嫌われて終わりたい」 救護妖精「嫌われてってそんな……」 提督「私は彼女達をも利用して人を殺している。解放する直前で話しても、ただの逃げだ。彼女達には、考える時間も与えてやりたい」 戦姫「……最後まで話さないという選択肢は無いのでしょうか」 提督「それは出来ない。それこそ彼女達の心を蔑ろにしている。……私を信じてくれているのだからな」 救護妖精「…………」 戦姫「…………」 提督「では……話しに行こう────」 ……………………。 766 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/11(月) 00:33:53.51 ID:MD8A4934o 提督「……今から、お前達に言わなければならない事がある」 全員「…………」 提督「薄々気付いている者も居るかもしれないが、なぜ私が艦娘と同じ顔をした少女を匿っているか、についてだ」 金剛「…………」 提督「ハッキリと言おう。この世界に残された人類は、もはやこの国だけと言っても良いだろう」 瑞鶴「へ……? ど、どういう事?」 提督「艦娘というものは、元は人間だ。詳しい事は省くが、元となった人間の魂を複製して艦船に宿らせる。それが艦娘だ」 響「……それは、私達はその人達の偽者って事なのかな」 提督「偽者ではあるが、お前達の心は本物だ。そこは勘違いするな。──そして、その艦娘を製造する方法が一つの大国に渡り、そして大国の実験は失敗した。そのせいか、この世界の人間はこの国以外で確認されていないそうだ。そして、艦娘の沈んだ姿である深海棲艦が蔓延した」 天龍「ちょ、ちょっと待ってくれ! いきなり色んな事を言われても訳がわかんねーって! 俺達が倒してきた深海棲艦は、本当は艦娘とか人間だって言うのか!?」 提督「そうだ。だが、失敗によって人間が深海棲艦になったかどうかは分からない。艦娘が深海棲艦になるのは事実だ。実際にこの鎮守府に居る戦姫と空母ヲ級は、実際に艦娘の時の記憶を持っている」 榛名「私達は今まで……同族を殺してきたのですか……」 提督「それに関しては否定しておく。人に危害を加える悪霊を祓うのと変わらん。深海棲艦になった時点で、艦娘とは似て非なる存在だ」 提督「──前置きはここまでにしておこう。私は、そうして生まれてきた艦娘や深海棲艦を放っておく事が出来ない。だから艦娘の基となった子を助け、ここへ匿った。……それによって、それに対応した艦娘や深海棲艦は消えていったそうだ」 提督「そして、全ての艦娘を解放する為に、私は今までお前達を利用し、真実を隠し、そして人をこの手で殺した」 全員「…………っ」 金剛(提、督……?) 瑞鶴(人を……殺した……) 767 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/11(月) 00:46:05.03 ID:MD8A4934o 提督「お前達も、いずれ消えてしまうだろう。だから、これからは各自好きなように行動してくれ」 提督「端的に言うならば、深海棲艦は元々艦娘であると知っていながら、私はお前達に深海棲艦を沈めさせ続けてきた。そして、艦娘解放の障害になる者は全て殺してきた」 提督「私をどう思っても構わない。殺しても構わん。私はお前達にそれだけの事をしてきた。だが、殺すに当たって条件がある。私を殺した際は、解放した子の全てに普通の暮らしが出来るようにしてくれ」 提督「──以上だ。色々な情報を叩き付けられて混乱している者も居るだろう。その者は自分の部屋へ戻ってゆっくり考えてくれ」 全員「…………」 提督「…………」 神通「……すみません、提督」スッ 提督「なにかね」 神通「少し……部屋へ行って考えてきます……。よろしいですか……?」 提督「うむ。他の者も神通と同じであれば部屋へ戻れ。私に断りを入れる必要は無い」 全員「…………」 ガチャ──ゾロゾロ……──パタン 金剛「…………」 提督「金剛は戻らなくて良いのか? それとも、私に話でも?」 金剛「……提督に、聞きたい事があります」 提督「なにかね」 金剛「提督は、必要だから人を殺したのですよね」 提督「ああ。艦娘が二度と造られる事のないように、な」 768 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/11(月) 00:59:14.02 ID:MD8A4934o 金剛「やっぱり……。──では、私達に話さなかったのも、私達を気遣ってですよね」 提督「…………」 金剛「沈黙は肯定と取りますよ」 提督「……そうだ」 金剛「最後に一つ。──提督は、約束は破りませんよね?」 提督「死なない限りは、約束は守る」 金剛「でしたら、私のやる事は一つです。提督、銃を貸して下さい」 提督「分かった」スッ 金剛「……あと、目を瞑って下さい」チャキ 提督「…………」スッ 金剛「……提督…………」 769 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/11(月) 01:16:30.40 ID:MD8A4934o ──ちゅっ 提督(──は?) 金剛「…………」スッ 提督「……どういう事だ?」 金剛「I don't mind that everthing is a lie. As long as I love you forever. ──たとえ全てが嘘でも構いません。私が貴方を愛している限り、永遠に──私はこう言いました」 提督「…………」 金剛「ですので、私は何もかもが嘘でも構わないんです。私が貴方を愛している──それだけで、私は貴方について行きます」 提督「…………」 金剛「…………」 提督「馬鹿だな」 金剛「死んでも治りません」 提督「私はこれから死ぬかもしれないぞ」 金剛「地獄の底でもお供します」 提督「何も残らないぞ」 金剛「私の魂に刻まれます」 提督「それすらも消えるぞ」 金剛「提督を愛した事実は残ります」 提督「…………」 金剛「…………」 提督「……また負けたな」 金剛「また私の勝ちです」 提督「なぜ拳銃を借りた?」 金剛「ささやかな仕返しです。お返しします」スッ 提督「……そうか。殺されるかと思ったよ」スッ 金剛「大成功ですね」ニコ 提督「やられたよ」 金剛「……では提督、ご褒美が欲しいです」 提督「何が良いのかね」 金剛「耳、お借りしますね」スッ 金剛「────────」ヒソ 提督「……分かった。あいつには内緒にしてくれよ?」 金剛「はい。分かってますよ」ニコ 提督「……あとは、皆の意見を聞くだけだな」 金剛「……大丈夫ですよ」ギュ 提督「……そうか」ナデナデ 金剛「大丈夫……大丈夫です────」ギュゥ …………………… ………… …… 770 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/11(月) 01:38:07.78 ID:MD8A4934o 瑞鶴「一日考えたけど、私達が言える事は少ないわ。だから、提督さんに聞きたいの」 提督「なんでも言ってくれ」 瑞鶴「……提督さんは、どうしても人を殺さないといけなかったのよね?」 提督「そうだ。二度と艦娘が造られないようにな」 瑞鶴「次に、私達に黙っていたのも、私達を思っての事よね?」 提督「そうだ」 瑞鶴「だったら、私達が言える事は一つね」 瑞鶴「──ついて行くわよ。私達は皆、提督さんについて行く」 提督「…………そうか。金剛と同じだな」 雷「当たり前よ司令官! 私達は司令官に骨抜きにされちゃってるんだもの!」 龍田「雷ちゃんの言う通りよ〜。良い意味でも悪い意味でも、ね?」 提督「まったく……お前達は馬鹿だな」 島風「そんなの、あの時から分かってる事でしょ!」 川内「提督が攫われた時かぁ。なんでだろうね。懐かしい感じがするよ」 榛名「……提督は攫われたのですか? 想像付きませんね……」 電「あの時は本当にビックリしたのです」 響「金剛さんが一番大変だったね。焦燥していたし」 金剛「ぅー……それだけショックだったのデース……」 榛名「くす……金剛お姉様らしいですね」 金剛「笑わないでくだサイ!」 提督「……何はともあれ、私は命拾いした。ありがとう、皆」 提督「──今日はもう遅い。各自部屋に戻って休んでくれ。後の事は明日話そう」 …………………… ………… …… 788 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/11/11(月) 23:40:09.42 ID:MD8A4934o そろそろ良い時間だよね。 これから眠る人も、そうじゃない人も、エロがお好きなお方はどうぞ読んで下さい。読んで下さると勝手に超喜びます。 また、エロを投下したら一旦休憩に入らせてください。 某ネトゲの大規模アップデートチェック(非プレイ)やら、なんやかんやしていましたが、今回のエロにはそれなりに神経を使いましたので疲れています……。 エロが苦手なお方はすみませんが、休憩し終わったら書き溜めつつ投下しますので深夜〜朝方近くまでお待ち下さるか、そのままおやすみして下さい。 いつものように、エロが終わった後は連続でageます。 では、投下します。 789 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/11(月) 23:40:53.95 ID:MD8A4934o コンコン──。 提督「入れ」 ガチャ──パタン 金剛「提督、お休みの途中にすみません。今、宜しいですか?」 提督「構わん」 金剛「良かった。──昨日のご褒美を受け取りに来ました」 提督「そうだな。……本当に良いのか?」 金剛「勿論です」 提督「今度こそ、消えたくなくなるぞ」 金剛「大丈夫です。私の魂に刻まれますから」 提督「……本当に好きだな、その言葉」 金剛「提督への愛ほどではありません」 提督「まったく……本当に、お前は私が好きだな」 金剛「はい! それはもう!」 提督「……火を点けよう」 金剛「はい──」 ……………………。 790 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2013/11/11(月) 23:43:10.98 ID:MD8A4934o 「あ、ん……んちゅ、はぁ……んっ」  以前と同じく薄闇の世界──。  その中で、彼女と私は淫らな水音を出していた。  お互いの口内を犯し、舌を絡み合わせる──。時にはその舌や唇を甘噛みしてイタズラもした。 「はぁ……ぁ、はぁ…………」  前と同じく唾液を交換し合った私達の口は、初めてキスをした時と同じく銀の橋が出来上がっていた。 「ふふ……今日は、こんな物を持ってきました」  その銀糸を満足気に眺めつつ、金剛は自分の胸の間に手を入れた。  そこから取り出された物は、華奢な少女の小さな手にも収まる一つの小瓶──。それはどう見ても、瑞鶴に渡したあの小瓶と同じ物だ。一つ違う点を述べるなら、中身が一切減っていない、新品の状態だという点だろう。  しかし、なんて場所に挟んでいるんだ。 「もう一つはお前が持っていたのか」  胸の間に差し込んでいた事も踏まえ呆れたように言うと、彼女はにんまりと悪戯っ子の笑みを浮かべてきた。  嫌な予感しかしない。 「最後は、提督と激しく愛し合いたいです」  最後──。その言葉は非常に重々しい。  なにせ間違っていない。私達がこうして肌を重ねるのも、きっとこれで最後になるだろう。  最後だから、最高に激しくまぐわいたいという事か。  コルクで栓をされた小瓶。そのコルクを引き抜くと、彼女は小瓶の口を唇へ当てた。  が──何を思ったのか、中身を全て飲み干してしまった。 「……金剛?」  苦味を堪えているのだろう。ギュッと瞼と手と唇を固く結び、震えている。 「あは……全部、飲んじゃいました……」  目の端に涙を蓄えた少女。その表情は、どことなく不安に思っているようにも見える。  いや、不安でない訳がない。一口──しかも三人で分けた量であれほどの効果だ。一瓶全て飲み干せばどうなるかなんて想像すら出来ない。 「何をやっているんだ……。ほら、口を開けろ。舐め取ってやる」 『私も以前と同じようになるから寄越せ』  そういう意味だというのは、金剛ならば容易に想像が付くだろう。なにせ、今更舐め取っても何も意味が無いのだから。  彼女は柔らかい笑みを浮かべ、目を瞑った。  無防備で華奢な身体を抱き寄せ、今日で何回目かになるキスをする。  舌を絡ませ、口内の粘膜を舐め上げ、歯の裏側さえもなぞる、窺う事のない、お互いを求め合うようなねっとりとしたキス──。  今回の味は苦いが、私が唯一味わう事のできる甘いモノだ。充分に堪能させて貰わなければ。  だんだんと身体が火照り、頭がくらくらしてくる。  金剛に至ってはキスだけでは我慢ができないようで、身体を擦り付けてきている。  水音が鳴る度に、同じ場所からくぐもった甘い吐息も聞こえる。  背中を撫でるだけで、彼女の身体はビクリと跳ねた。同時に、とんがった甲高い声も出していた。  どちらからともなく、口を離す。その頃には金剛の口内からはとっくに苦味が無くなっており、お互いの息は荒くなっていた。  潤んだ瞳、紅く火照った頬、軽く汗ばんだ肌──。  性に対してあまり関心の無い私でも、その姿は扇情的に思えた。 「──だめ、です……。提督、ごめんなさい……!」  先に謝られてから押し倒された。  私が仰向けで彼女が私の腰に座る形。以前繋がった時と同じく、女性上位の体勢だ。 「はぁ……! は、ぁぁあ……っあ、んぁ…………」  我慢する事が出来ないのか、はたまた別の意味があるのか──金剛は熱くなっている股間を私の股間へ擦り付けている。  艶めかしく動く腰はゆっくりと大きく、私の性器に血を溜めさせているようにも思えた。 「ていと、く……もう、良いですよね? ね?」  金剛のその質問は、質問として意味を成していなかった。  私の返答を聞くまでもなくズボンを下ろされ、男性の象徴が空気に曝け出された。  その私のソレを、愛おしそうに撫でる少女。  腫れ物を扱うかのように触れるその細い指が、少しばかり気持ち良い。 「元気が一杯です……んっ」  息が掛かるくらいに顔を近づけ、チロリと一舐めしてきた。 「こら、汚い」 「提督のです。汚くありません」  舌先で確かめるようにしていた動きが、その言葉と共に変化した。  キャンディを舐めるように竿全体を舐め上げ、唾液でぬらぬらと光りだした。  今度は亀頭部分をチラチラと舐めている。特に感覚の鋭いそこは、ザラザラとした舌の感触で、ビリッと電気のようなものが走った。 「あはっ……固いのに弾力があって、とてもビクビクしています……。こんな暴れん坊さんは、押さえ込まなければなりませんね……? ──あむ」  遠慮がちに口を開いた少女は、一瞬の躊躇も無く先端を咥えた。 「ん……んん、ん…………」  止めようかと思った時には既に、半分ほど呑み込まれていた。  膣とはまた違った、生温かく柔らかい感触が襲ってくる。不意に彼女の頭を掴みたくなる衝動に駆られたが、それをなんとか抑えている内に、彼女は全てのモノを口の中に収めていた。  喉奥に当たっているのか、先端が何かに当たっている。その状態で舐められ、裏筋に強烈な快感が走った。  口の中の空気を抜いているのが良く分かる。私のモノ全体が柔らかい肉に包まれ、舌で攻められているからだ。 「んっぐ……」 「ぐっ──!?」  突如、その攻め方が変わった。柔らかくねっとりとしていた口内が急に狭くなったのだ。  口内の形どころか、舌のざらつきの一つ一つまでも分かるんじゃないかってくらいに、強く吸われている。  そのせいで、今度は我慢が利かなかった。上半身を起こし、彼女の頭を両腕で包んで抱き締めた。 791 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/11(月) 23:44:15.99 ID:MD8A4934o 「んぅ……! ん、んふ……ん…………」  それに一瞬だけ驚いたようだが、金剛はそれを皮切りに舌の動きを激しくした。  裏筋だけでなく、亀頭、根元、カリ──全てを余すところ無く擦り上げ、押し付け、甘噛みも駆使して私を攻め上げる。  声を抑えてはいるが、歯がギシギシと鳴りそうなほど食い縛っても声が漏れる。  その声に喜びを感じているのか、特に声が大きく漏れたカリの部分への攻撃が中心となった。  あまりの快感に身体全身が強張る。腕も抱き締めているというよりは締め付けているのではないかというくらいに力が入ってしまった。  極力、痛くならないように抑え付けているが、その抵抗はどれ程のものなのだろうか。少なくとも、頭を全く動かせていない様子から相当な力が入ってしまっているのは分かる。  それが流石に痛かったのだろうか、金剛の攻めが緩くなった。  口の中は元の柔らかい状態となっており、舌も優しく触れるような動きになっている。  余裕が生まれたので私の力も少し抜けたが、柔らかくも大きな快楽が襲う事となる。  苦にならない、真綿で首を絞められているような、純粋に気持ちの良い快楽──。  少しばかり呆けてしまう程に、それは心地の良いものだった。 「ん、ふ……まらでふよ……ひゃんと、出ひてくだはいね……?」  半分、何を言っているのか分からない言葉で語り掛けた後、もう一度あの強烈な快楽が襲ってきた。  いや、さっきのよりも強く荒々しい、強制的に絶頂へ導かそうとしているものだった。  気の抜けていた私はモロにその攻めを受けてしまい、軽く悲鳴を上げた程だ。  キュウキュウと痛いくらいに締め付けられ、背骨に氷の柱でも突き刺されたかのような耐え難い感覚に、またもや金剛の頭を締め付けてしまった。  口の中の空気がほとんど無くなっているのだろう、先程から空気が細く狭い道を通る──膨らませた風船を指でなぞるような──音が聴こえる。 「あ、が……! ぐ、ぅ──!!」  そんな強烈な快感に、免疫の少ない私が抗う術は無かった。  グツグツと湧き上がる射精感を察知して必死に抑え込もうとしたが、それは彼女の舌技でいとも簡単にこじ開けられてしまった。 「────────ッッぁ!!!」  尿道から彼女の喉へ快楽の塊が迸っていくのが分かる──。  その快楽の塊を受けた金剛は、あろう事か受け止めるだけに留まらず、むしろ吸い出そうとしてきた。  性器をストローか何かのようにして、中に入っている精液を吸い出している──。その追い討ちは、絶頂を迎えた私をもう一度果てさせる事となった。  身体が痙攣したかのように震える。  こんなに私を愛してくれている少女の口に欲望の塊を吐き出している背徳感が、それを増長させた。  この前とは比にならないくらいの量が出た、と確信出来るほど精液を吐き出した。  彼女の口一杯に広がった白濁としている液体は私の性器全体に広がっているのだ。確実に大量と言えるものだろう。 「ん、ちゅ……ちゅぅ……ちゅう…………ちゅぅっ……」  勿体無い──そう言いたいのか、少女は尿道に残った精液を吸い出している。  果てたばかりで敏感のそこは、それだけで淡い快楽が滲み出てきた。 「んふ……は、ぁ…………ごちそうさま、です……」  結構長い時間を掛けて吸っていた金剛。  肉棒から口を離し、見上げてきたその顔は、とても幸福に包まれた顔をしている。 「……無理をして飲まなくても、良かったんだぞ」  ──書物でしか知らないが、精液は苦く、青臭く、とても飲み込めるようなものではないらしい。  なのに、どうしてこの少女はソレを一滴残さず飲み込めたのだろうか。 「欲しかったから、です……はぁっ……」  トロンと蕩けた笑顔で、金剛は答えた。 「愛しい提督の、精液が……子供の元が、お腹一杯になるくらい、欲しかった、です……。大好きな提督、ですから……。全然、嫌じゃないですよ……?」  真っ直ぐ私を見つめる目──欠片も嘘偽りのない本心の言葉──。  その言葉で、私の中で何かが動いた。 「……では、私もお前を満足させなければな」 「え……? ──きゃっ!」  先程とは逆に、今度は私が金剛を押し倒した。 「私をあれだけ攻めたんだ。勿論、覚悟は出来ているよな?」  自分でも口角が上がっているのが分かる。  金剛ならば私がイタズラ好きだというのを前で分かっているだろう。だから、一切隠さずにいぢめる事にした。 「うつ伏せになって、お尻を上げるんだ」 「ん…………はい」  素直に言う事を聞く少女。  丸見えになった鮮やかなピンクの肉壷からは蜜が溢れ出しており、今にも私を欲しがっているように見える。 「どうやら金剛のココは、私を欲しがっていて仕方がないようだな」 「はい……。前みたいに、いっぱい──いっぱい突いて欲しいです……」  辱めるつもりだったのだが、どうやら逆効果のようだ。  少女はトロトロになっている淫靡な秘所を恥ずかしげもなく私に見せつけ、誘惑している。  蝋燭の光でテラテラと輝くソコを自分の指で広げ、トロンとしている灰色の瞳で私を見詰めているのだ。  愛おしい気持ちで一杯になり、私は少女に覆い被さった。  期待したような顔をしていたので、頬を撫でて軽く焦らす。  それも失敗に終わり、とても心地良さそうな笑みを浮かべている。  しかし、その笑みも良く見ると艶かしい雰囲気がある。触れた頬は汗でしっとりとしていて熱く、息も荒く熱っぽい。 「挿れるよ──」  添えるように、花園の入り口へ肉棒を当てる。  触れた瞬間、金剛の身体がビクリと震えた。期待をしているのか恐れなのかは分からないが、表情を見る限りでは期待が大体を占めているようだ。 「ん──くぅんっ!」  挿れた瞬間、以前とまったく違うと分かった。  前は少し固かった肉壁が柔らかくねっとりと締め付け、前よりも熱くなっている。  それに、前よりもなぜか気持ち良さが強い。キュウキュウに締まっているのは確かだが、それ以上に何か心が満たされている気がする。  けれど、その考えもすぐに吹き飛び、金剛の秘所に集中する。膣の肉が、私のソレを呑み込まんと吸い付き、蠢いていて、ゆっくりと押し進んでいくと、簡単に沈んでいく。 「ぁー……っあ……あぁぁ……っ」  奥へ入っていく感覚が良いのか、金剛は小さく痙攣しながらも私を受け入れていった。 792 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/11(月) 23:44:58.16 ID:MD8A4934o  たっぷりと時間を掛けて、金剛のお尻と私の腰をくっつけた。  奥の奥まで届いているのが自分でも分かる。突き挿れられている少女は分かっているのかいないのか、シーツをギュッと握り締めて、荒く深い呼吸を繰り返している。  挿れた時と同じくゆっくりと引き抜こうとするが、咥え込んで放さないとでも言うかのように放してくれない。それでも無理に腰を引くと、肉棒から背骨を通って脳に直接快楽が送られてきた。  電気のようにビリビリと痺れそうな快感──。それだけで、果ててしまいそうだった。  少しだけ昂ぶった情欲を治めてから、再度金剛の中へと侵入する。 「……っぁ! ──ぁあ……ぅんっ!」  再び電気が走り快楽の虜にされそうだったが、その金剛の嬌声に少しだけ引っ掛かった。  確認する為に、また引く。 「ぁぁ……はぅ……んっ! は、ぁ……」  ギリギリまで引き抜いた所で、ぐちょぐちょの奥へまた沈み込ませる。 「んん……っぅ! ひ……ぁぁ……ぁあっ──は、あぁぁ……」  ……なるほど、金剛の弱い所が分かった。  トロトロの肉壷から程々に引き抜き、声になっていない声を上げた所で止める。  そして、その部分を突き刺すように、鋭角で肉棒を押し付けた。 「きゃぅッ!? ひ、やぁあ!! あ、あぁぁっ──か、ひ、ぁ……っ!!」  反応は一気に変わった。  締め付けている程度だった膣は痛いくらいに締め上げ、その部分を突く毎に少女は甲高い悲鳴で啼き続けている。  砂糖や蜂蜜よりも格段に甘い嬌声が、止め処なく溢れ出る愛液の音が、この部屋に響き渡る。  瞼をギュッと閉じ、身体は痙攣させ、握っている拳も固く閉じられているのが分かる。  前はこんなにも乱れなかった。媚薬で欲情し切った身体と、弱い所を攻められ続けてこうなっているのだろう。  何度も何度も注挿を繰り返す。  私自身も気を抜けば果ててしまうくらいになっており、もはや意地で堪えているだけだ。  だが、その意地もそろそろ限界が近付いてきた。  ドロドロと熱く爆発しそうな欲望が、もう既に根元までせり上がってきているのだ。  さっきから絶え間なく啼き続けている金剛。もう少しその姿を見ていたかったが、そろそろ終わりにさせた方が良いだろう……。  そう思い、少しばかり小振りなお尻を掴み、今まで攻めていた部分とはまた違った甘い声を出していた場所──蜜壷の最奥へと一気に貫いた。 「──ひゃぅっ!? ぁ、あああぁ……ぁあー……! は、ぁあー……っあぁー……!」  グリグリと押し付けるように、一番奥を突いたまま腰を動かす。  痙攣しながらも絡み付いてくる肉壁が、とても気持ち良い。いつまでもこうしていたいと思える程だ。  けれど、それは長く続かなかった。根元まで来ていた欲望は、もうカリ付近まで来ている。  限界だ──。そう思って、金剛の華奢な身体にピッタリとくっつき、強く抱き締めた。  抱き締めた影響なのか、膣がまた痛いくらいに締め上げてきて、私は我慢するのを止めた。 「あぁぁ──ッッ! ────っぁ、ぁぁぁあああッッッ!!!」  今までで一番大きな甘い悲鳴を上げて、金剛も果てた。  ドクンドクンと、まるで血液を送り出す心臓みたいに精液を吐き出す。  自分でも、こんなに出るものなのかと思うくらいの量が出ている。射精が止まらない。  絶頂が長い──。頭の中に直接麻薬を突っ込まれたかのような感覚だ──。  ────長い長い射精が終わり、やっとまともな思考が出来るようになった頃には、とんでもない疲れが身体に圧し掛かってきた。  金剛はまだこっちへは戻ってきていないようで、虚ろな目でぐったりとしている。  私は、彼女が落ち着くまでこのまま抱き締めておく事にした──。 「──てぇ……とく?」 「目が覚めたか」  金剛が起きたのは、半刻ほど経ってからの事だった。  あのままの体勢では辛いだろうと思って横になったのは良いが、それでも一切反応を示さなかったので少し不安になっていた。だが、それも杞憂で終わったようだ。 「私……? ──あ、私……提督と…………」  最後の方は小さくて何を言っているのか分からなかったが、大体の予想はついた。 「──えへへ」  子供のように、無邪気な声で笑ってくれた。  その笑い方が妙に愛おしくて、ついつい腕に力を入れてしまった。 「ん……ずっと、抱き締めてくれていたのですね。嬉しい……」  そっ、と手を重ねてくれる金剛。  優しく、柔らかく、私の凍り付いてしまった心を溶かすかのような、慈愛に満ちた温かみ──。  その手は、体温だけではない、そんな温かみが確かにあった。 「──ありがとう」 793 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/11(月) 23:45:30.51 ID:MD8A4934o 「え?」  本当にポロリと、零れ落ちた言葉。当然、金剛は戸惑った。 「あの、提督?」  少女が説明を求めてきている。けれど、私はそれに答えなかった。少しだけ困らせたかったからだ。  その代わり、少しだけ腕に力を込める。  言葉の無い返事──。勘の良い彼女はこの意味に気付くだろうか? 「あのぅ……?」  今まで聴いた事のない、困った声。どうやらこの子は気付かなかったようだ。  それでも良い──いや、それが良い。わざわざ消えたくなくなるような事をする必要はない。  彼女は消えても良いように、覚悟を決めて今夜この部屋を訪れたのだ。それを踏み躙るのは良くない事だ。  だが、ヒントがコレだけでは些か酷いというものだろう。 「秘密だ」  耳元で、もう一つのヒントを与えた。これで気付いてくれないのであれば諦めよう。 「…………?」  いつもの勘の良い少女はどこへ行ったのやら、今日はとことん気付いてくれない。  きっと疲れていて頭が回らないのだろう。いや、もしかしたらまだ頭の中が空中を散歩している気分なのかもしれない。  私は諦めて、これ以上ヒントも答えも出す事なく終わらせる事にした。 「んぅ……? ──あっ」  金剛が身じろぎをした事で、繋がっていた金剛と私の部分がズルリと抜けてしまった。 「あ、あぁぁ……こ、これは……」  さっきの困った声に焦りを加えたような声を、抱き締めている少女が零した。  一体、何があったのだろうか? 「せ、折角の提督の子種が……溢れちゃってます……。うぅ……止まらないです……。お腹一杯だったのに、どれだけ出ていっちゃうですかぁ……」  ……どうやら零れたのは声だけではないようだ。  腕の中の少女は悲しそうな声をあげている。  まったく……本当にお前は私の事が好きなのだな……。 「ぅー……」 「ほら、代わりにキスをしてやるから」 「ほ、本当ですか!?」  金剛はすぐに機嫌を直して身体ごと振り向いてきた。  本当は金剛が落ち着いたらキスをしようとしていたので、代わりでもなんでもなかったりする。 「ほら」 「ん──ちゅっ」  軽い、触れるだけのキス。たったそれだけだが、薄闇に浮かぶ愛おしい少女は満足気に顔を綻ばせてた。  ……三つ目のヒントになってしまったが、気付く様子がない。本当に今の金剛は頭が回らないようだ。 「今日は毛布を掛けて、このまま寝てしまおう。こんなにクタクタになったのは久し振りだ」  本音はこのまま放したくないからなのだが、それも言わないでおこう。 「はい……。私も、ずっとイキっぱなしでクタクタです」 「む? いつからイッていたんだ?」  少し気になったので聞いてみた。金剛が果てたのは最後の一度ではなかったのか。  金剛は頬を軽く引っ掻きながら眉をハの字にして、口元だけ笑いながらこう言った。 「口で奉仕している時に軽く三回程……。あと、先っぽだけ挿れられてから終わるまでずっとです。気を失うかと思いました」  ……あの長い間ずっとか。道理で愛液が止まらない訳だ。  快楽も延々と続けば地獄と聞いた事があるが、まさにそれだったのではないだろうか。 「でも、凄く幸せです。あんなに激しくしてくれて、あんなに愛してくれて。そして今、こうして抱き合っています。もう、幸せで死んじゃうかもしれないくらいです」  さっきのハの字と違って、今度はとても落ち着いた、穏やかな表情でそう言った。  心配しなくても良さそうだ。彼女が満足してくれているのなら、それで私も幸せな気持ちになる。 「──それでは、そろそろ寝ようか」  でも、もう少しだけ強く抱き締めておいた。もっと、彼女を感じていたかったから。 「────はいっ」  春の太陽を思わせる明るい笑顔で、金剛も抱き締めてきてくれた。  ああ……心が満たされる……。こんなにも幸せな気持ちになったのは初めてではないだろうか……。  そっと目を閉じると、一気に睡魔が襲ってきた。  こんなにも早く意識が落ちるのも、初めてだな──。  腕の中の愛おしい少女の優しさを、温もりを感じながら、私の意識は夢の世界へと旅立っていった────。 …………………… ………… …… 797 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/11/12(火) 03:26:11.83 ID:oeEYDgjwo 提督「……さて、これで詰みだ」コト 少将「…………」 提督「戦力が強いからと言って、簡単に重要な駒を進め過ぎだ」 少将「……助言、でしょうか? 最終日だからといって……」 提督「独り言だ。気にするな。そら、再戦だ」 少将「…………」 提督「時に少将。素手同士の人間が百人居たとしよう。その中から五十人ずつの二勢力に分かれて戦ったとする。どっちが勝つと思う」 少将「……この会話になんの意味があるのでしょうか」 提督「意味など無い。ただの雑談だ。さあ、答えてみろ」 少将「…………強い者が多い方が勝ちます」 提督「うむ。正解だ。ならば、負けた側の視点で語れ。お前ならば次に戦う時、どうする」 少将「武器を手にして戦います」 提督「うむ。ならば、その戦いで負けた側に立つと、お前ならばどうする」 少将「……相手よりも強い武器を揃えます」 提督「そうきたか。ならば、武器は相手と同じ物しか揃えれなかったらどうする」 少将「錬度を高めます」 提督「ふむ。では、相手も同じ錬度で戦いの準備をしてきた。どうする」 少将「それは……決着が付かないのではないでしょうか」 提督「いや、しっかりと付く」 少将「……………………」 提督「…………」 少将「戦い方……いえ、戦術や戦略を駆使すれば勝てる、でしょうか」 提督「その通りだ。──さて、雑談はここまでにしておこう。続きをするぞ」 少将(戦術や戦略……) ……………………。 798 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/11/12(火) 03:38:00.06 ID:oeEYDgjwo 少将(ちっ……! またナイトがビショップに倒された…………ええい、そんなもの気合で迎撃すれば良かろう……!)コト 少将(それに対してこっちのビショップはあまり役に立っていない……いや、役に立てないよう牽制されている……) 少将(確かに私は戦術や戦略が苦手だが……どうしてここまで違いが出る? 一度くらい勝ててもおかしくないだろう……)コト 少将(まったく同じ駒だというのに、どうして……。────!!)ハッ 少将(まったく同じ……?) 少将(…………さっき、この人が言ったな。人数も武器も錬度も同じ勢力が戦っても、しっかり決着が付く、と……) 少将(戦術や戦略によって結果は変わってくる。勿論、それは戦い方も含めてだ) 少将(先日、この人と中将Aが話していたな……。中将Aが戦術的に戦っていて、戦略的に考えているのがこの人……じゃあ、私はなんだ……? 戦略……いや、そんな高尚なものじゃない。戦術……いや、それも違う気がする。戦術とは戦闘の手段を考えるものだ。なら……私は、戦法か?) 少将(私は艦娘の士気を高めて突撃させ、そうして敵を倒してきてここまでやってきた……。それに間違いはないはずだ。だが、戦術的にはどうか……戦略的にはどうか……) 少将(戦術的……そう。今この人にチェスで負けているのが戦術的に負けているという証拠。では戦略的にはどうだ? もっと広く戦を見れば……) 提督『──では少将、お前には三日間、私とチェスをしてもらう』 少将(そうだ……そもそもなぜ、この人は私にチェスを……) 少将(…………!! この戦いは、盤上だけのものではない? ではもっと広く……もっと広い視野で……) 少将(────そうか。そういう事か。そういう意味だったのか) 提督「……どうした、少将。手が止まっているぞ」 少将「…………大将殿。今、大将殿の問いに答えても良いでしょうか」 提督「ほう。なんと答える」 799 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/11/12(火) 03:48:26.98 ID:oeEYDgjwo 少将「大将殿が私に期待した答えは『艦娘と深海棲艦、味方も敵も戦力が同じ』という事ですね?」 提督「その通りだ」 少将「そして、このチェスと同じように、戦い抜けば艦娘は強くなり、そして倒されれば戦力から消えてしまう。けれど、ただ倒すだけでは強くなれない。例え強くても活かせなければ勝つ事が出来ない」 提督「ほう」 少将「大将殿が期待していた答えは『敵味方はどちらも特別でない、一つの戦力』という事。そして、気付いて欲しかったものは、このチェスの駒と同じく『いくら強い駒を持っていようと、それが活かせなければ勝つ事が出来ない』という事ですね」 提督「──おめでとう。概ね正解だ」パチパチ 少将「概ね、ですか?」 提督「答えはそれで構わない。だが、気付いて欲しかったものは『どんな戦力・戦況でも、詰みでなければやり方次第で勝ちを見出せる』という事だ。本当はチェスでも囲碁でも将棋でもなんでも良かった」 少将「……何度チェックを掛けられても、チェックメイトを取れば勝てる、という事ですか」 提督「大まかに言えばそうなる。そこに加えて味方を大事にしてくれれば、お前はこの軍で最も爆発力のある将となるだろう」 少将「────はい! 大将殿! 大変有り難いご指導、感謝します!!」ピシッ 提督「うむ。お前の首を刎ねずに終わって良かった」 少将「ほ、本気だったのですか?」 提督「残していれば我が国にとって癌となるからな。だが、初めにも言ったように、少将はこの課題をクリア出来ると思っていた。刎ねる事はまず無いと思っていたよ」 少将「はは……大将殿には敵いませんね……」 提督「私は、私の秘書に負ける事があるがな」 少将「……なんと」 提督「まったく。提督思いの子を貰ったよ」 提督「そんな子達が消えていくのが、私は悲しい……」 …………………… ………… …… 800 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/11/12(火) 03:58:40.43 ID:oeEYDgjwo 提督「さて、お前達も知っての通り、既にほとんどの艦娘を解放した。残っているのはほぼお前達だけだ」 金剛「という事は……」 提督「そうだ……」 提督「──今度は、お前達の原典が解放される番となってしまった」 全員「…………」 提督「お前達は皆、非常に提督思いの良い子ばかりだ。私の自惚れだが、二度と会えなくなってしまうのは心苦しいと思ってくれている者も居るだろう。だが、このまま放置する事はできない。賽は投げられている。この中の誰かが、解放──いや、消えなければならない」 瑞鶴「消えちゃう……」 提督「よって、まずは志願制にしようと思っている。……酷なやり方ですまない」 全員「……………………」 提督「今回の人数は二人だ。……誰か、居るか」 全員「…………」 提督「…………」 全員「……………………」 提督「…………」 全員「………………………………」 提督「…………居ないようだな。では、仕方がな──」 龍田「……はい」スッ 提督「龍田……」 龍田「いえ〜……。だって、誰かが申し出ないと……提督さんは困っちゃうでしょ〜……?」 龍田「でしたら……私は志願しちゃいます。なるべく提督さんを困らせたく、ないもの……」 801 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/11/12(火) 04:07:28.92 ID:oeEYDgjwo 天龍「だ、だったら!! 俺も志願する!」 提督「天龍も……良いのか?」 天龍「へっ! 俺だって龍田と同じだ。提督が困るってんなら、俺が立候補してやるよ」 天龍「……普段、他の奴らと比べてあまり役に立てなかったんだ。これくらい、役に立ちたいんだよ……」 天龍「──あと、龍田一人だけじゃあ心配だからな! 俺が付いていてやらないと!」 提督「……ありがとう、天龍。龍田、良い姉妹を持ったな」 龍田「私の自慢の天龍ちゃんですもの。ありがとうね、天龍ちゃん」 天龍「ふふん。俺と龍田はいつも一緒だ!」 提督「本当、ありがとう……」 龍田「あ〜、でも、一つだけ我侭を言って良いかしら」 提督「なんだ?」 龍田「提督さんの〜、キスが欲しいな〜」 全員「!!」 金剛(な……) 瑞鶴(なんですって!?) 響(…………) 提督「……分かった。最後だからな」 天龍「あ、ちょっ……! ズリィぞ龍田だけ!! 俺にもしてくれよ!?」 金剛・瑞鶴・響「!!!」 提督「天龍もか。意外だな」 天龍「ふん! 俺だって空気くらいは読めるんだぜ? ……でも、最後くらいは……な?」 提督「そうだな……分かった」 金剛・瑞鶴・響「…………!!」 龍田「うふふ……天龍ちゃんと一緒〜」スッ 天龍「う……は、恥ずかしいな……」スッ 802 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/11/12(火) 04:31:23.21 ID:oeEYDgjwo 提督「……準備は良いか?」 龍田「は〜い。いつでもどうぞ」スッ 天龍「お、俺もだ……! 来るなら、来い!」スッ 提督「今までありがとう、龍田、天龍」チュ─チュ 龍田「……へ?」 天龍「お、おでこ?」 龍田「唇じゃないの〜……?」 提督「……残念ながら、唇は特別な相手にだけする事にしたんだ」 金剛・瑞鶴・響(…………誰?) 龍田「あら……あらぁ……」 天龍「…………ちっ。それなら仕方ねーな」 提督「すまない」 龍田「良いのよ〜。なんとなく分かってたもの〜。──あー、すっきりしたぁ〜」 天龍「俺はスッキリとはしていないけどな。教えてくれよ。誰なんだ?」 提督「それは解放する当日になったら教えよう。私にも羞恥心くらいはある」 天龍・龍田「はーい……」 提督「解放は明日だ。それまでの間、ゆっくりと休んでいてくれ──」 …………………… ………… …… 820 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/12(火) 23:46:50.25 ID:oeEYDgjwo 金剛(特別な相手……一体誰なのでしょうか……)スッ 金剛「…………」 金剛(いえ、訊くのは野暮というものですね……。それに、明日は天龍や龍田が居なくなってしまいます。今夜提督を訪ね る権利は、あの二人にあるです。シャワーを浴びて寝てしまいましょう)スタスタ ……………………。 瑞鶴(提督さんの特別な人……気になる。相手は誰? 金剛さん? 響ちゃん? それとも別の誰か? …………私だった ら……嬉しいなぁ)スッ 瑞鶴「…………」 瑞鶴(でも……誰なのかを聞いた所で、私はどうするつもりなんだろう……。すっきりしたいだけ? ……ううん。私を選 んでくれていないって分かっちゃったら、私、どうなるか分かんないわね……。でも、もし私だとしたら……?) 瑞鶴「……………………」 瑞鶴(……ダメダメ。さっきから同じ考えがループしてる。シャワーでも浴びて寝よう。それに、天龍や龍田が提督と一緒 に居たいって思ってるかもしれないんだし……。──うん、そうしよう!)スタスタ ……………………。 響「…………」スッ 響(……金剛さんか瑞鶴さん、どっちかなんだろうね。大穴に大穴で私……という可能性もあるかもしれないけど、それは 夢の中の話だね) 響(それに、天龍さんや龍田さんが来るかもしれない。私がその時間を奪っては……。──うん、シャワーでも浴びよう) トテトテ ……………………。 821 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/13(水) 00:02:48.74 ID:3/RfeVNEo ガラッ──。 シャー……。 響(あれ? こんな時間に誰か来てるのかな) 金剛(あら、また誰か来ましたネ) 瑞鶴(こんな時間に……普段からこんなにシャワー室って使われてるのかしら?) 響「……隣、失礼するね」 金剛「その声は響ですか。こんな時間にどうしたデスか?」 響「ん、ちょっと眠れなくてね。シャワーで身体を温めようと思ったんだ」 瑞鶴「ふぅん。私達と同じね」 響「二人もなのかい?」 金剛「そうデス。私と瑞鶴も眠れなくてシャワーを浴びてマース」 瑞鶴「うんうん」 響「不思議な事もあるものだね。三人一緒なんて」 金剛「理由なんて色々とありマース」 金剛「──特に、私達三人はそうですよネ?」 瑞鶴「……そうね。私達三人は、ね」 響「なるべくバレないようにしていたのだけど……まさかバレていたとはね」 瑞鶴「いやぁ……バレバレだと思うわよ?」 響「……え?」 金剛「何日か前を境に、響の様子が変わりましたものネー」 瑞鶴「うんうん。急に雰囲気がちょっと大人っぽくなったっていうか、なんというか」 響(絶対にあの日の事だ……。そうか……だから雷はあの夜に……) 822 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/13(水) 00:18:38.11 ID:3/RfeVNEo 瑞鶴「変わったといえば、金剛さんもなんだか変わったわよね。幸せそうにしてるっていうか……」 金剛「んー……私も変わったと分かりましたカー……。確かに、とっても幸せな事があったデス」 響「……差支えがなければ、聞いても良いかな」 金剛「んー……。……………………シークレット デース! こればかりは言う訳にはいきまセーン!」 響(司令官絡みだね、絶対) 瑞鶴(絶対に提督さんと何かあったわね) 金剛「ただ、一つだけ言うのなら……私は、提督と離れ離れになる覚悟が出来ました」 瑞鶴・響(え?) 金剛「──さて! 私のシャワータイムはここまでデース。お先に失礼しマース」 響(別れる覚悟が出来た……? それってつまり、司令官は金剛さんを選ばなかったという事……なのかな?) 瑞鶴(……どうなんだろう、今の言葉。金剛さんの考えてる事っていまいち分からないのよね……) 響(でも……) 瑞鶴(もしかしたら……) 瑞鶴・響(私達にもチャンスはある……のかな) …………………… ………… …… 823 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/13(水) 00:33:57.60 ID:3/RfeVNEo 天龍「おお、すっげぇ……なんだこれ……」 提督「機械には触らないでくれよ? 何が起きるか分からないからな」 龍田「は〜い。天龍ちゃんの事、見張っておくわね〜」 天龍「うぐっ……触りたくなったから何も言えねぇ……」 利根「やあ提督! そちらの二人はどうしたんじゃ?」 提督「二人は天龍と龍田。私の鎮守府で頑張っていた良い子だ」 利根「ほほう。提督が褒めるという事は、それだけの事をしてきたのかのう」 天龍「別に……俺達は基本的に遠征をしていただけで、出撃はあまりしてないぜ?」 龍田「あとは哨戒くらいかしら〜」 提督「遠征や哨戒も立派な仕事だ。出撃ほど目立ちはしないが、同等の仕事でもある」 利根「ほう。そうなのか」 提督「遠征は鎮守府を運用する資材を集める仕事だ。これが何と何も始まらない。そして哨戒は、出撃している時に母港を護る役割だ。空き巣を狙われて帰る母港が無くなったらどうしようも出来ない」 利根「なるほどのう。うむ! お主達は立派な仕事をしておるではないか! もっと胸を張ったらどうじゃ?」 龍田「本当はもっともーっと役に立ちたかったって言えばいいのにねー、天龍ちゃん?」 天龍「うっせえ!」 龍田「ふふっ。怒っちゃやーよ」 提督「では三人共、夜になったらまた来る。それまでの間はここの事を頼んだ」 …………………… ………… …… 825 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/13(水) 01:18:41.23 ID:J+Lumwglo 提督「──いまや艦娘の数は三十にも満たさない。これは深刻な問題だ。よって、私は旧式の軍艦を使おうと思っている」 中将A「それしかないでしょうな」 少将「私も異論はありません」 中将B「私もです」 提督「よし。では試験的にお前達三人に旧式の軍艦を持ってもらいたい。構わないか?」 少将「私達三人ですか? 大将殿はどうなさるおつもりで?」 提督「噂でも知っていると思うが、私は身体が弱い。それ故に、私がいつまでも海軍の指揮をしていては、元帥三名の事故と同じ轍を踏む事となる。これから先はお前達三人が主役となって海軍を動かす事となるだろう。今回はその為だと思ってくれ」 全員「はい!」 提督「では、その内容について話し合おう。まず軍艦の種類などだが────」 ……………………。 提督「──さて、今回の解放する子はこの四人だな」 救護妖精「天龍、龍田。今までありがとね」 天龍「……ああ。俺はいつでも良いぜ」 龍田「私もよー。覚悟は出来てます」 提督「────天龍」 天龍「はいっ!」ピシッ 提督「お前は最初、死ぬまで戦わせろと言っていたな」 天龍「え? あ、ああ……」 提督「あの時は叱ったが、お前のその勇気と気力は見事だった。あれは正直、羨ましくも思ったよ。そして、主に駆逐艦の皆を引率して遠征に出掛けていたな。あの時の駆逐艦の子達は、皆笑顔でお前について行っていた。戦闘では敵わない部分を遠征で補おうとしてくれていたのは良く分かっていたよ」 天龍「…………」 提督「龍田」 龍田「はいっ」ピシッ 提督「お前も天龍と同じく、危なっかしい戦い方をしていたが、自分よりも能力面で格上の敵を倒す事についてはお前の右に出る者は居なかった。それを止めさせたのは、お前の身体を思っての事だと──まあ、これはお前ならば気付いていただろうな。……傷付けば痛い。そして、私もお前達が傷付く姿は見たくなかった。今まで、我侭に付き合わせてすまなかった。そんな私を慕ってくれて、私は幸福者だ」 龍田「…………」 827 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/13(水) 01:30:37.46 ID:J+Lumwglo 提督「……天龍、龍田、両名を現刻をもって鎮守府から除籍とする」 提督「二人共、今まで私の為に必死になってくれて、ありがとう──」 天龍「──ああ! 俺達はここで消えちまうけど、提督も頑張れよな!!」 龍田「私達はお先に地獄で待ってますね。──大好きですよ、提督さん」 天龍「俺も大好きだぜ提督!」 提督「ああ。ありがとう、二人共……」 救護妖精「…………」カチッ 天龍「お、おお……足が……。本当に消えてってらぁ……」 龍田「随分とゆっくりなのねぇ」 提督「…………」ポン 天龍「……提督」ナデナデ 龍田「提督さん……」ナデナデ 提督「…………」 天龍・龍田「────今まで、ありがとう」 スゥッ──。 提督「…………」 提督「…………」スッ 那智「……逝ってしまったか」 提督「ああ…………」 那智「貴方も、悲しい顔をするのですね」 提督「……生憎と、鉄仮面ではないのでな」 救護妖精「…………私はこの二人を介抱するから、提督は……」 提督「……ああ。天龍と龍田を介抱する」 ……………………。 828 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/13(水) 01:48:54.43 ID:J+Lumwglo 提督「…………」 天龍・龍田「…………」タジ 天龍(お、おいなんだこいつ!? 逆らったら大変な事になるって頭ん中で警報が鳴り響いてんだけど!?)ヒソ 龍田(奇遇ね、天龍ちゃん……。私、この人には絶対に頭が上がらないと思うわ〜……)ヒソ 提督「……天龍と龍田だな」 天龍「そ、そうだ……けど……」 龍田「な……何かし──何でしょうか……?」 提督「…………」 提督「いや、確認しただけだ。……直にスープが出来る。それが飲み終わったら状況を説明しよう」 天龍(なんだ……? 一体こいつは何なんだ……?) 提督「ああ、それと」 龍田「は、はいっ!」 提督「…………無理をして敬語を使わなくて良い。話しやすい口調で話してくれ」 天龍「お、おう……?」 龍田「…………?」 提督「…………」 提督(……初めて出会った時と少し違うが、ほとんど変わらない……か) 提督「……………………」 ……………………。 829 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/13(水) 02:02:53.49 ID:J+Lumwglo 天龍「へぇー……俺達が艦娘のベース、ねぇ」 龍田「現実味の無い話ね〜……」 北上「そう? あたしは結構信じちゃうかもね」 五十鈴「私は信用できないわね。ていうか、何? こんな布切れを女の子に着させるとか、変態か何かなのアンタ?」 救護妖精「人によって体型が全然違うから、こういうものしか用意できなかったんだよ」 五十鈴「貴女に言ってないわ。私はコイツに言ってるの。見た所、ここで一番偉いんじゃないかしら?」 提督「そこの救護妖精が言ったように、そういう物しか用意出来なかったんだ。鎮守府に来ればまともな服を用意する」 五十鈴「ふん。どうだか。そうやって言い包めて好き放題しそうなんだけど」 提督「…………」ジッ 救護妖精(あーあ……大丈夫かなこの子……) 五十鈴「どうなのよ。言ってみなさいよこの変態」 天龍「おい……止めておいた方が良いと思うぞ……」 那智「私からも警告しておく。それ以上暴言を吐かない方が良い」 五十鈴「はぁ? なんでよ。こんな変態の言う事を聞くくらいならここにずっと居た方がマシだと思うけど?」 龍田「私も止めておくけど、後の事は知らないわよ〜?」 五十鈴「ふん。別に良いわよ」 提督「そうか。ではそのようにしよう。全ての子を助けた後にこの施設を完全に破壊し、簡単には見つからないよう出口を全て埋めるのだが、残念だ」 五十鈴「……へ? ちょ、ちょっと! どういう事!?」 那智「どうもこうも、先程から説明を受けていただろう。話を聞かなかったのか?」 五十鈴「あんなもの信用出来る訳ないでしょ!!」 北上「はーい。あたしは信じる派でーす」 天龍「俺もだな。この人はなんだか信用できる」 龍田「私も〜。これでも結構疑り深い性格だと思ってたんだけどな〜。この人の言ってる事は簡単に信用しちゃった」 五十鈴「う、嘘でしょ……?」 提督「どう思うかはお前の自由だ。推奨はするが、来る来ないも自由だ。お前がこの地下で一生を過ごしたいと思うのならそうすれば良いだろう」 五十鈴「……勝手に出てやる」 831 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/13(水) 02:13:43.56 ID:J+Lumwglo 那智「私ともう一人の見張り件監視役が見逃さんぞ。その場合は縛ってでも外に出さない」 提督「それでも無理矢理外に出た場合は……説明したように大混乱などが起きる前にお前を処分する事となるだろう」 五十鈴「ふ、ふん! そんな事、出来る訳が──」 提督「…………」 五十鈴「な、い………………?」 提督「…………」ジッ 五十鈴「──ひっ!?」ビクッ 那智(やっと気付いたか) 提督「もう一度だけ言おう。どうするかは、全てお前の自由だ」 五十鈴「…………ご、ごめんなさい……」ガタガタ 提督「何に対して謝っている」 五十鈴「暴言を吐いて……信用しなくてごめんなさい!!」 提督「そんな事はどうでも良い。信用出来ないのは当然だ。それと、こんな状況なら暴言の一つでも吐きたくなるだろう」 五十鈴「え……? え…………?」ビクビク 提督「……すまない。少し気が立っていた」スッ 五十鈴「っ! …………?」ナデナデ 提督「…………」ナデナデ 五十鈴「…………」ナデナデ 提督「……さて、前回助けた子達を鎮守府に案内しよう」スッ 那智「…………すまん、私には掛ける言葉が見つからん」 提督「……その言葉だけで充分だ。ありがとう」 …………………… ………… …… 845 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/11/15(金) 22:09:55.86 ID:RTIXBGNGo 提督「……また、嫌な日が来てしまった」 全員「…………」 提督「その言葉だけでもう分かってくれていると思う。……今回も、志願制だ。だが、人数は特に定めない。志願する 者だけにしよう」 神通「あ、あの……提督」スッ 提督「なにかね」 神通「今の今まで聞けませんでしたけど……天龍さんと龍田さんは…………最後、どうでしたか?」 提督「…………」 神通「ごめんなさい……でも、どうしても気になりました……。二人は、私達のルームメイトでもありましたから…… 」 提督「……『今まで、ありがとう』と、一言。最後まで私に気を遣って、笑顔で去って逝ったよ」 神通「そう、ですか……。笑顔で……」 提督「…………」 神通「──では、私が志願します。龍田さんが仰っていたように、誰かが志願しなければなりませんから……」 提督「……分かった」 那珂「……だったら、私も志願するよ」 川内「それだったら私もだね」 提督「お前達もか……」 那珂「だって、私達はいつも一緒だったもんね」 川内「うんうん。時々離れて任務をしていた事もあったけど、大体は一緒だったしね。誰か一人が行くのなら、私達も 行くよ」 提督「…………分かった。──今回は、川内、神通、那珂の三人だ」 ……………………。 846 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2013/11/15(金) 22:11:02.06 ID:RTIXBGNGo 電「……またお仲間さんが消えてしまうのですね」 暁「仕方が無いわ……。これ以上、艦娘が苦しまないようにするにはこうするしかないんだもの……」 島風「辛いなぁ……。もう、あの天龍さんも龍田さんも居ないんだよね……」 響「そして、今度は残った軽巡の皆が……その後は、私達も……」 雷「……響、このままで良いの?」 響「……なにがだい?」 雷「もうこの際だから言っちゃうけど、司令官の事が好きよね、響」 暁「何を言ってるのよ雷。そんなの皆でしょ?」 雷「恋してるって意味よ、暁」 暁「え!? ちょ、ちょっと本当なの響!?」 響「……そうさ。私は司令官に恋している。紛れも無い事実だよ」 電「やっぱりでしたか」 島風「私にはまだ恋っていうのが分かんないのに……響、早いね」 暁「ど、どういう所が好きになったの?」ドキドキ 電「優しいから、ですか?」 島風「それとも、お父さんみたいに頼れるから?」 響「ん……それがね……」 響「──分からないんだ」 雷「へ?」 響「気付いたら、好きになっていた。最初は変な人って思っていたんだけど、気付いたら目で追いかけていて、気付いたら司令官の事ばかり考えていて、気付いたら……司令官を好きになっていたんだ。どうしても理由を付けるなら、好きになったから好き……なのかな」 電「じゅ、純粋です! 純粋な愛の気持ちなのです!」キラキラ 島風「好きだから好き、かぁ……。私もそうなのかなぁ……?」 雷「人の言葉に振り回されるのは良くないと思うわ! 自分の気持ちは自分で確かめるものよ!」 島風「むー……」 響「雷の言う通りだよ島風。自分の気持ちは自分でハッキリさせなきゃね」 暁「……それ、響にも言えないかしら?」 響「私はこの好きって気持ちさえあればそれで良いよ。好きだから好き……私はこれを気に入ってる。特別理由をつける必要もないと思うよ」 響「それよりも雷、これで良いのかって、どういう事だい?」 雷「最後に司令官と色々としたいんじゃないかって事よ」 847 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/15(金) 22:11:39.24 ID:RTIXBGNGo 響「…………」 暁(色々……? 一緒に食事とかかしら?) 響「ん……それは勿論そうなんだけどね。ちょっと思う所があるから考えてる所なんだ」 雷「思う所?」 響「こればかりは言えないから秘密だよ」 雷(なるほど。そういう事ね) 電(あー……なんとなく分かっちゃったのです。でも……私達の身体って、まだまだ子供……ですよね?)ペタペタ 島風(響は本当に早いなぁ……。嫉妬しちゃう) 暁(言えない事……? ──はっ! もしかして、一緒にお風呂……とか……!?)アワアワ 響「だから、何か行動を起こすにしても、もうちょっと考えてからにするよ」 雷「……要らないお節介だったわね。ごめんね?」 響「ううん。雷は私を思ってくれて言ってくれたんだから、むしろ嬉しいよ」 響「──話は変わるけど、今日は皆で一緒の布団に入って寝ないかい?」 電「あっ、それ凄く良いと思うのです!」 雷「私も賛成よ!」 島風「うんうん! 早速床に布団を敷くね!」 暁「あ、こら! ……もう、仕方がないわね……」 響(……司令官と、どうしたいか……か) 響(…………どうしたいんだろうね、私は……) …………………… ………… …… 848 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/15(金) 22:12:13.24 ID:RTIXBGNGo 救護妖精「……準備完了。いつでもいけるよ」 川内「……いよいよだね」 神通「はい……。ここで提督や、皆ともお別れですね……」 那珂「短かったねー……」 提督「お前達とも、ここでお別れだな……」 川内「……提督、最後に私達からお願いがあるんだけど、良いかな」 提督「なにかね」 神通「提督はお優しいですから、私達に最後の言葉を贈ろうと思っていませんか? ……もしそうであれば、その言葉は仕舞っていて欲しいんです」 那珂「提督が余計に辛いもんね……」 川内「別れは綺麗にサッパリと! 私達は、いつも通りにして別れようと思うんだ」 提督「……いつも通り?」 那珂「そう。いつも通り、提督の艦娘としてね! ──これが、私達の最後のお仕事ですから!」 提督「……………………分かった。いつも通りにしよう」 提督「──川内、神通、那珂。三人に仕事を与える。……消え逝く自分達の魂を、導いてやってくれ。これは最重要任務である」 川内・神通・那珂「はいっ!!」ピシッ 救護妖精「…………」カチン 川内「おお……消えていってる……」 神通「でも、なぜでしょうか……。まったく怖くないです」 那珂「むしろなんだか安心出来るよねー。ふっしぎー」 提督「……川内、神通、那珂」 那珂「なーにー? 提督ー?」 提督「──今まで、ありがとう」 川内「──うん! 私こそありがとね! 楽しかったよ!!」ピシッ 神通「はい……。とても、とても嬉しかったです」ピシッ 那珂「さよーならっ!」ピシッ スゥッ──。 救護妖精「……逝っちゃったね」 提督「ああ……」 那智「……逆に堪えそうだが、良かったのか?」 提督「頼み事をした事が無かった三人の頼み事だ。……出来るのなら、叶えてやるべきだ」 那智「……不器用だな」 提督「まったくな……」 那智「貴方もだ」 提督「……ああ」 …………………… ………… …… 849 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/15(金) 22:13:15.28 ID:RTIXBGNGo 提督「…………」 川内「…………」 神通「…………」 那珂「何ここー? 何これー? 怪しい実験場みたいだよー!」 川内「……那珂、静かにした方が身の為だと思うよ」 那珂「えー、どうしてー?」 神通「この方が、ただならぬ雰囲気を持っているからですよ」 那珂「ふーん? はっじめましてー! 自称だけど、アイドルの那珂ちゃんだよー! よっろしくぅー!」 提督「……ああ、はじめまして」 那珂「ところでー、ここはどこですかー? あと、なんでスラム街の子が着てそうな服を私達は着てるのー?」 提督「それらについては追々説明しよう。腹も空いているだろうから、今スープを用意している。それからで良いか」 那珂「はーい! わっかりましたー!」 神通「あの……うるさくしてしまってごめんなさい……」 提督「構わんよ。あまりにも耳障りと感じたら吊るす」 川内・那珂「吊るす!?」ビクゥ 提督「ああ吊るす。ここに居る者達の目の前で晒し者になるように吊るす」 川内・那珂「し、静かにします!!」ピシッ 提督「…………」 神通「川内……なぜ貴女も?」 川内「や、怖いから……。私もなんだかんだで寝言とかうるさいしね……」ビクビク 神通(怖い……? むしろ優しそうに見えるけど……) 那智「寝言がうるさいのは困る。その時は私も制裁しよう」 川内「ひぃっ!?」 提督「さすがにそこまでやると可哀想だ」 那智「……すまない」 川内(こ、この人も怖い……!!)ビクビク ……………………。 850 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/15(金) 22:13:43.71 ID:RTIXBGNGo 川内「ふぅん? じゃあ、私達がその艦娘の素なんだ?」 提督「信じなくても構わない。私は信じさせる何かを持っている訳ではないからな」 那珂「私は信じるよー」 神通「はい。私もです」 川内「私も私もー!」 提督「…………」 那智「随分と鵜呑みにするな。どういう心境だ?」 川内「えー、だってこの人すっごい真面目に話してるし。胡散臭くもないしね」 神通「はい。目を見れば分かります。何を考えているのかは良く分かりませんが、嘘を吐いていないというのだけは分かります」 那珂「私は楽しそうだから!」 那智「お前の理由は凄まじく不純だな」 那珂「えー? 人生は楽しんでなんぼだよー?」 提督「……そうだな。人生は、楽しんでこそ意味がある。私もそう思うよ」 那珂「ほらー」 那智「……ちっ」 川内「その話は良いんだけどさ、私達ってそんなに外に出ちゃ危ないの?」 提督「ここでは、な。遠く離れた場所ならば問題無いだろう」 神通「それが、私達を貴方の鎮守府へ連れて行く理由ですか?」 提督「厳密には違うが、そう考えてもらって良い」 那珂「じゃあそういう事で決まりだねっ! 那珂ちゃん、今からでも楽しみだよー!」 提督「期待する程ではないだろうが、楽しんでくれると私も嬉しい」 川内「私達が楽しむと貴方が喜ぶの? なんだか不思議な話だねー」 神通「でも、その心配はしなくても大丈夫だと思います。私も楽しみにしていますから」 川内「へぇ。神通がそう言うのって珍しいね」 神通「はい。自分でも少しびっくりしています」 那珂「那珂ちゃんねー、ちょっと眠たくなってきたんだけど、どこで寝たら良いのー?」 救護妖精「マイペースだねぇ那珂は。そっちに仮眠室があるから、そこで寝なー」 提督「…………」 …………………… ………… …… 863 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/11/16(土) 23:35:48.94 ID:5fZulIWjo 中将B「大将殿。少し宜しいでしょうか」 提督「なにかね」 中将B「先日、大将殿が仰られていた正義についてなのですが……私だけでは大将殿のお言葉を理解する事が出来ません。どうか、私を導いてもらえませんか」 提督「ふむ……」 中将B「お願いします」 提督「中将、お前にとって正義とは何だ」 中将B「世の悪を許さないモノと思っております」 提督「では、侵略は悪か?」 中将B「勿論です。侵略・犯罪・殺生は悪です」 提督「そうか……では、一つの物語を語ろう」 中将B「物語、ですか?」 提督「少しばかり空想の世界になってしまうが聞いてくれ。中将、世界樹という言葉を聞いた事があるか?」 中将B「いえ、申し訳ながらありません」 提督「世界に命を与えている大樹と考えてくれ。その世界樹は星を護り、大地命を与え、人々にとって掛け替えのない存在だ」 提督「だが、その世界樹が枯れかかっているという状況になったとしよう。そうすれば大地は死に、星も死ぬ。つまり、人々も死んでしまうという事だ」 中将B「大層な樹ですなそれは……」 提督「なに。前に読んだ書物に書いてあったものだ。実際には無い」 提督「そして、その樹をどうしても復活させなければならないのだが、そこで派閥が二つに分かれてしまった」 中将B「派閥が、ですか?」 提督「うむ。その死にゆく世界を蘇らせる為に世界樹に頼らない新しい世界の在り方を創ろうとする者と、死にゆく世界を蘇らせる為に世界樹を転生させ、芽から育て直すという二つの派閥だ」 中将B「なぜその二つの派閥に分かれたのでしょうか」 提督「両者共にデメリットが有るという事と、もう一つはお互いが相手のやり方では世界を救えないと知っているからだ」 中将B「ふむ……」 864 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/16(土) 23:58:50.53 ID:5fZulIWjo 提督「世界樹に頼らない世界の在り方を創ろうとする改革派は、世界樹が再び枯れる事となっても影響の出ない世界を目指している。世界樹が必要なくなれば世界が死ぬ事もないからだ。そして、その為には世界中を死なせてから利用しないといけない。その為に世界樹を滅ぼそうとしている」 提督「そして、芽から育て直そうとしている保守派は、世界を安定させ、恵みをもたらし、命を与える世界樹が必要不可欠ゆえに、新しく芽から育て直す。その為には世界中をなんとしてでも死守しなければならない」 提督「改革派は今後の為に世界樹を死なせようとする。保守派は世界樹を芽から育て直す為に世界樹を護る。中将B、これはどちらが正しい?」 中将B「……………………申し訳ありません。私はどう考えて良いのか分かりません」 提督「そうか。では、改革派の立場で考えてみてくれ。今後、二度と世界を危機へ陥らせないようにする為に動く者として、未練がましく死にゆく樹にしがみ付く相手をどう思う」 中将B「ふむ……人類を滅ぼそうとしている悪に思えます」 提督「ならば、逆ではどうだ。世界の要である世界樹を殺そうとしている相手をどう思う」 中将B「……世界を滅ぼそうとしている悪に見えます」 提督「では中将B。どちらが悪でどちらが正義だ?」 中将B「……分かりません。どちらが悪でどちらが正義なのですか?」 提督「どちらも正義だ」 中将B「そんな馬鹿な! どちらかが正しくないはずです!」 提督「いいや。間違いない中将B。どちらも自分達が正義なんだ」 中将B「……どういう事でしょうか」 提督「改革派も保守派も『自分達が正しい』と思っているからこそ争っている。正義を掲げ、相手を悪と見なし、各々の正しい考えを相手にぶつけている」 中将B「…………」 提督「中将B、正義は悪と戦っているのではない。正義はまた別の正義と戦っているのだ」 中将B「また別の正義……ですか」 提督「人、立場、事情、時間……様々な要因はあるが、正義というものは変わっていくモノ。今でこそ戦争は正義だが、平和な世界となった時では、戦争は人と殺し合う悪と言われるだろう」 中将B「……そうなりますな」 提督「理解は出来たか?」 中将B「はっ! 私のような凡愚でも非常に分かりやすいご説明でした! ありがとうございます!」ピシッ 提督「お前は凡愚ではない。頑固なだけで正しき事を愛する良き人だ」 中将B「勿体無いお言葉です。──時に大将殿。先程の話はどちらが勝ち、どちらが間違っていたのでしょうか」 提督「改革派と保守派がそれぞれ勝った二つの物語だった。が、どちらも間違っていた故に人類は滅んでしまったよ」 中将B「…………なんと悲しい事でしょうか……」 提督「そういうものだ、中将B。『勝った方が正しい』というのは如何なる時でも当て嵌まるモノではないのだよ」 中将B「……心得ておきます」ピシッ 提督「うむ」 …………………… ………… …… 873 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/17(日) 19:00:11.74 ID:4rCuyNc/o 戦姫「……朝礼に私達も呼ぶとは何かあったのですか?」ピキピキ ヲ級「…………」ウトウト 提督「ああ。すまない」 戦姫「いえ……まだ、なんとか、抑えれています」ピキピキ 電(怖いのです……。戦姫さんが凄い殺気を放っているのです……)ビクビク 提督「……この鎮守府に居る艦娘も、少なくなったな。戦姫とヲ級を含めても九人か……三分の一以上も居なくなっているのだから当然だが……広くなったな、この鎮守府は」 全員「…………」 提督「そこで私は一つ我侭を言いたい。今回は金剛を除く全員を連れて行こうと思っている」 全員「!」 提督「これ以上、仲間が減っていくのが耐えれない者も居るだろう。そして私も、何回も皆を連れて行くのは心が痛む……。だが、金剛にはまだやってもらわなければならない事がある為、残ってもらう」 提督「これはほぼ私の勝手な我侭だ。異論を唱える者は遠慮をせず言ってくれ」 全員「……………………」 提督「……居ないのか?」 全員「…………」 提督「そうか……。お前達はどこまでも私に尽くしてくれるな。ありがたい事だ」 提督「出発は三日後とする。それまでの間、やり残した事がある者は悔いの無いよう終わらせよ。以上だ。各自、自由に行動して良し」 ……………………。 876 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/17(日) 19:24:41.33 ID:4rCuyNc/o ──パタン 提督「お前達は戻らないのか?」 戦姫「お話がありますので残りました」 ヲ級「!」コクコク 金剛「私もお話したい事がありマス」 提督「……そうか。ならば、まず戦姫から言ってくれ」 戦姫「はい。──最後の時まで、私達をこの鎮守府に置いてもらえないでしょうか」 提督「どういった理由だ」 戦姫「私達はこの鎮守府で生まれ育ちました。なので、この鎮守府で最後を迎えたいのです」 提督「……悪い事をしてしまったな」 戦姫「なにがでしょうか?」 提督「お前達の仲間もここで最後を迎えさせるべきだった」 戦姫「それは仕方が無い事です。そうすると、ここに居る艦娘達がどうなっていた事か……」 提督「……そうか。そう言ってくれるとありがたい」 提督「良いだろう。許可する」 戦姫「ありがとうございます」ニコ ヲ級「♪」ギュー 提督「──次に金剛、話したい事とはなんだ」 金剛「えっと……」チラ 戦姫「……なんだ?」 提督「ふむ……。戦姫、ヲ級、すまないが二人きりにしてくれるか」 戦姫「了解しました」ピシッ ヲ級「!」ピシッ ガチャ──パタン 877 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/17(日) 20:18:48.47 ID:4rCuyNc/o 提督「……さて、どういった話だ?」 金剛「私にやってもらいたい事、が気になりまシタ。もし準備が必要でしたら準備したいデス」 提督「あれか。あれは体の良い言い訳だ」 金剛「……へ?」 提督「お前と最後まで一緒に居たい。ただそれだけの為に言った」 金剛「え……? ぇえ? そ、それってどういう事なのですか……?」 提督「どうもこうも、そのままの意味で受け取ってくれ」 金剛「…………」 提督「どうした。今日はやけに勘が鈍いじゃないか」 金剛「こ、これは夢……ですか……?」 提督「頬を抓ってやろうか。いや、それよりもなぜそんなに信じれない」 金剛「だ、だって……私のこの想いが叶うなんて……」 提督「なら、どうすれば信用できる。愛を囁けば良いか?」 金剛「あ、愛……を……!」クラッ 提督「……本当にどうした金剛。大丈夫か」 金剛「大丈夫じゃありませんけど、大丈夫です……」クラクラ 提督「……おかしな日本語になっているぞ」 金剛「あう……あうあぅ……」 提督「……どうやらあまり頭が働いていないみたいだな。自室で落ち着いてこい」 金剛「そ、そうさせていただきます……」フラフラ 提督「……危なっかしいな。送っていこうか」 金剛「い、いえ!! 大丈夫です……!」ピシッ 金剛「それでは私はこれで……」ソソッ ガチャ──パタン 881 名前:うっわぁ。変なところで区切ってた。[sage saga] 投稿日:2013/11/17(日) 20:42:34.02 ID:4rCuyNc/o 提督「……大丈夫か、本当に」 …………………… ………… …… 金剛「…………」ボー 瑞鶴・榛名「…………」 榛名(あの、瑞鶴さん……お姉様は時々ああなるのでしょうか……)ヒソ 瑞鶴(ううん……あんな金剛さん初めて見たわよ……)ヒソ 榛名(何があったのでしょうか……) 瑞鶴(さあ……。でも、何か悩んでいるのは間違いないわよね……。じゃないと朝からあんな風にベッドに寝転んだりしないわよ) 榛名(心配です……) 瑞鶴(どうしたら良いのかしらね……) 榛名(どうしましょう……) 金剛「ぅーん……」パタパタ 瑞鶴(あ……足をバタバタって……なんだかちょっと可愛いかも) 榛名(……なんだかお姉様のイメージがちょっとだけ壊れたかもしれません) 瑞鶴(良い意味で?) 榛名(はい。良い意味で) 金剛「…………ぅー」ギュッ 瑞鶴(今度は枕を抱き締めたわね) 榛名(おまけに猫のように丸くなってます) 瑞鶴(これは相当深刻ね……) 榛名(でも、声を掛けにくいです……) ……………………。 882 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/17(日) 21:24:09.46 ID:4rCuyNc/o 響「あと三日、か……」 雷「それで、皆ともお別れなのね……」 暁「…………」 電「でも、仕方のない事なのです……」 島風「そうだよね……私達がいつまでも居ると、その艦娘のベースとなった子が……」 雷「……一応聞くけど、皆はやり残した事あるの?」 響「私は……うん。心残りがあるから行動に移すつもりだよ」 電「私も……実はあります」 島風「私はどっちかって言うとあるけど、どうしてもって程じゃないなぁ」 暁「……やりたかった事は一杯あるけど、それは今出来る事じゃないから私は良いわ」 雷「じゃあ二人だけね。私は響と電に協力するわ!」 雷「でも、響は分かるんだけど、電は何が心残りなの?」 電「司令官さんがここに着任してからずっと居ますので、やっぱり何かとお話したいのです」 雷「なるほどね! でも、お話だけで良いの?」 電「はい。二人きりでのんびりとお話したいのです。今夜、行こうかなと思っていました」 雷「今夜ね! 邪魔しないようにするわ! ──あとは響だけど、私達に出来る事はある?」 響「ん、実はもうやる事は決まってるんだ。大丈夫だよ」 雷「あら、そうなの?」 響「うん。だから、言葉だけ貰っておくよ。ありがとう」 暁「な、何をするつもりなの?」ドキドキ 883 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/17(日) 21:36:28.58 ID:4rCuyNc/o 響「秘密」 暁「ケチー!」 島風「暁、そんなんじゃレディになれないわよ?」 暁「もう諦めてるから良いもん!」 電「開き直っちゃってるのです……」 雷「響が何をするのか分からないけど、私達は応援してるからね!」 電「はいなのです。響ちゃん、頑張って下さいね?」 島風「でも、最後には教えて欲しいなぁ」 暁「島風、良い事を言ったわ。私にも最後には響が何をしたのか教えてよね!」 響「まったく……。これは困ったな」 雷「あ、今のなんだか司令官っぽい」 響「うん。やぱり影響されてるみたいだね」 電「その口調も響ちゃんになら似合っているのです」 暁「ふん。どうせ私には似合わないわよ」 電「はわわわわ! そ、そういう意味じゃないのです!」 暁「分かってるわよ。ちょっとイヂワルしたくなっただけよ」 電「あう……」 島風「この中で一番お子様なのは暁かもね」 暁「ふーんだ」 …………………… ………… …… 900 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/11/18(月) 00:45:49.81 ID:cSiiceQ6o コンコン──。 提督「入れ」 ガチャ──パタン 電「電です。お時間、よろしいでしょうか?」 提督「構わん。それにしても、珍しいな。電がこんな時間に訪ねてくるとは」 電「金剛さんと一緒に秘書をしようとした時以来ですね」 提督「そうだな……。最近の事なのに、昔の事のように感じるよ」 電「本当です。本当に、あっという間だったのです」 提督「ああ……」 電「…………」 提督「…………」 電「…………」 提督「……話があるのではなかったのか」 電「えっ、あ、あの……そのぅ……」 提督「どうした。なんでも言ってみなさい」 電「えっと……本当に、なんでも良いのでお話がしたいだけなのです」 提督「……うん?」 電「私は最初から司令官さんと一緒だったじゃないですか。だから、なんて言えば良いのか分かりませんが……何か話したくなったのです」 提督「なるほどな。そう言われたら私も何かを話したくなってきた」 電「本当ですか! 良かったぁ」 提督「飲み物を用意しよう。長く話しても良いように、な」 電「ありがとうございます! あ、お手伝いしますね」 提督「ふむ。ではお湯を沸かしてくれ。沸騰しきるまで頼む」 電「はいなのです!」 ……………………。 901 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/18(月) 01:10:53.71 ID:cSiiceQ6o 提督「金剛には及ばないが、どうだ?」 電「とっても美味しいのです! このクッキーと一緒に食べると、苦いのと甘いのが混ざって不思議な美味しさになるのです!」 提督「それは良かった。遠慮はせず好きなだけ食べると良い」 電「あ、それでしたら包み紙で貰ってよろしいですか? これで皆と一緒にお茶をしたいのです」 提督「電は仲間想いだな」 電「ありがとうございます、なのです!」 提督「さて、何でも話してくれとは言ったが、いざとなると話すネタに困るな」 電「そうですね……。話したいのに何も思い付かないのです……」 提督「まあ、自然と話す事になるだろう。今はティータイムを楽しもうか」 電「はいなのです」 電「そういえば、司令官さんはどうして甘い物がダメなのですか?」 提督「建前では『喉を焼くような感覚が苦手』という事にしている」 電「建前……ですか?」 提督「人には言えない秘密があってな」 電「言えない秘密、ですか」 提督「ああ」 電「あの……お聞きしてもよろしいですか?」 提督「……最後だしな。絶対に誰にも言わないと約束出来るのなら話そう」 電「約束します」 提督「うむ。良い目だ」 提督「ならば話そう。一番最初から話せるが……────私は普通の人間ではないのだよ」 電「ほえ?」 提督「正確には色々と身体を弄られた人間だな。普通の人間よりも色々と強化されているが、デメリットとして特定状況下でしか糖分を補給出来なくなっている。今の私に糖分は劇薬にも等しい」 電「そうだったのですか……」 提督「……信じるのか?」 電「え? 司令官さんの言う事を信じるのはおかしいのですか?」 提督「いや……普通では信じられない内容だからな」 電「でも、本当なのですよね?」 提督「うむ」 電「でしたら本当の事なのです」ニコ 903 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/18(月) 01:37:40.92 ID:cSiiceQ6o 提督「……お前も、私の事を深く信じてくれているのだな」 電「はい! でも、それはお仲間さんなら皆同じだと思いますよ?」 提督「そうか。……本当に私は、良い艦娘を持ったな」ナデナデ 電「えへへ」 提督「そうだな。そういえば私はお前達の事を何も知らなかったな。少しお前達の事を教えてくれないか?」 電「はいなのです! 何が知りたいのですか?」 提督「お前たち第六駆逐隊の事について──」 ……………………。 電「──はっ! もうこんな時間なのです!!」 提督「ふむ。思ったよりも時間の流れが速いな。今日はもう寝なさい」 電「はいなのです」 電「──あ、お願い事があるのですが、良いでしょうか……?」 提督「なにかね」 電「一緒におやすみしたいのです」 提督「甘えん坊だな。良いぞ」 電「えへへ。では、この食器を片付けますね」 提督「私もやろう。二人でやれば早いだろう?」 電「はいっ!」 ……………………。 提督「これで良いか?」 電「はい。温かくて、とっても安心出来るのです」 提督「そうか」 電「なんだか司令官さん、お父さんみたいなのです」 提督「随分と若い父親だな私は」 電「そうですね。でも、似合ってますよ?」 提督「……褒め言葉として受け取っておこう」 電「えへへ……お父さん」 提督「なにかね」 電「呼んでみただけなのです。──おやすみなさい、司令官さん」 提督「ああ、おやすみ──」 …………………… ………… …… 904 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/18(月) 02:03:01.99 ID:cSiiceQ6o 提督「──本日の朝礼は以上だ。各自、自由に行動して良し」 ……………………。 響「…………」 提督「今日は響か。どうした」 響「ん、少し話したいな、と思って」 提督「ふむ。紅茶を淹れようか」 響「ううん。それには及ばないよ。一つだけ確認したいだけなんだ」 提督「なにかね」 響「司令官は、金剛さんを選んだんだね?」 提督「さて。それは車の中で話している事だ」 響「ふぅん……やっぱりそうなんだね」 提督「何か確信でもあるのか」 響「金剛さんがいつもと違うからね。廊下を歩いてる姿がなんだか雲の上を歩いてる様子だったよ」 提督「…………」 響「それで、私が聞きたいのは金剛さんを選んだ理由なんだ。確かに金剛さんは秘書だから接する時間が多かったし、他にも色々と勝つ要素はあったと思う」 提督「ふむ……。それを聞いてどうする」 響「どうもしないよ。ただ知りたいだけ。好きな人の好みを知りたいのはある意味当然だよ」 提督「…………」 響「ダメかな」 提督「……分かった、言おう。だが、誰にも言うんじゃないぞ。流石にこれは恥ずかしい」 響「勿論さ」 905 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/18(月) 02:26:51.24 ID:cSiiceQ6o 提督「そうだな……」 響「…………」 提督「…………」 響「…………」 提督「好き、だからかな」 響「────!」 提督「金剛には悪いんだが、理由が無い。好きになったから好き。それだけだ」 提督「あまり納得できないかもしれないが、本当に理由が無い。好き──ただそれだけで好きになったんだ」 響「…………」 提督「これが金剛を選んだ理由だ」 響「………………そっか」 提督「どうした。そんなに驚いて」 響「ん……。司令官と同じ事を言う人が居てね」 提督「ほう」 響「その人も、好きになった理由が好きだから、と言っていたよ。気付いたら目で追いかけていて、その人の事ばかり考えていて、好きになったらしい」 提督「不思議な事もあるものだな。まさか私と同じような者が居るとは」 響「本当だね。びっくりしたよ」 提督「じゃあ、その人に伝えてくれ」 響「うん?」 提督「ありがとう、とな」 響「────」 906 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/18(月) 02:54:07.37 ID:cSiiceQ6o 提督「頼めるか?」 響「……うん。必ず伝えるよ」 響「ありがとう司令官。スッキリしたよ」 提督「すまんな」 響「ううん。理由を聞けて良かったと思うよ。──それじゃあ司令官、私はこれで失礼するね」 ガチャ──パタン 提督「……まさか響と同じ理由とはな」 提督「…………辛いだろうな、響」 ……………………。 響「ただいま」 雷「おかえりなさい響」 暁「どうしたの? 残るなんて珍しいじゃないの」 響「昨日言っていた事を実行したんだよ」 電「ほ、本当ですか!?」 島風「どうだったの?」 響「うん、吹っ切れたよ。訊いて良かったと今は思ってる」 暁「な、何を聞いたの?」 響「司令官の好みさ。それだけだよ」 電「なんて答えてくれたのですか?」 響「ん、それは言えない。司令官との約束だからね」 雷「それなら仕方がないわね」 暁「…………」 島風「あれ、今回は文句を言わないの?」 暁「司令官がそう言ったのでしょ? それなら仕方がないわ」 島風「素直なのか素直じゃないのか分からないね、暁」 暁「うっさい」 …………………… ………… …… 907 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/18(月) 03:08:45.07 ID:cSiiceQ6o コンコン──。 提督「入れ」 ガチャ──パタン 榛名「こんばんは」 提督「……どうやら、何か真剣に話したい事があるみたいだな」 榛名「はい。元帥様──いえ、提督の事についてです」 提督「なんでも話そう」 榛名「ありがとうございます。──では、提督は今どちらにいらしてますか?」 提督「……遺体すら残っていない。深海棲艦の攻撃で文字通り消滅してしまった」 榛名「……そう、ですか…………」 提督「沖へ出て海へ還した時、深海棲艦の群れが後ろから現れてな。私を攻撃せず、元帥の遺体に戦艦が主砲を撃った。あれでは遺体は欠片も残っていないだろう」 榛名「深海棲艦の群れ、ですか」 提督「ああ。結構な数だった。だが、あんなにも同時に沸くものなのだな。正直驚いた」 榛名「……その深海棲艦の数、憶えていますか?」 提督「いや、暗くて分からなかったが、どうした」 榛名「もしかしたら、ですけれど……その深海棲艦達は、提督の艦娘だったのではないかと思いまして……」 提督「ふむ……」 榛名「でないと、生きている貴方ではなくて死体である提督を撃つ理由が分かりません」 提督「……なるほど。それなら分かる──が、それを証明する事は出来ない」 榛名「はい……ですが、そう思わせて下さい」 提督「どうしてだ。お前は元帥を慕っていただろう」 榛名「……原因は、提督さんです」 提督「…………」 榛名「提督さんは私を本当の艦娘のように扱ってくれました。それも提督のようにではなく、優しく、私達の安全を第一に……。それは、提督とは真逆でした」 榛名「姉妹艦を失った子達は、泣いていました……。誰も提督を恨むような言葉は言いませんでしたが、やっぱり良くない感情は持っていたと思います……。現に私も、大破した霧島を無理して進軍させて沈んでいった時は、提督に僅かながら不信感を抱いてしまいました……」 榛名「でも……それが当たり前になってくると、慣れてしまったのかその不信感も抱かなくなってしまったのも事実です……。もし私が深海棲艦になって刷り込みが無くなったら、真っ先に提督を討ったと思います……」 908 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/18(月) 03:20:30.06 ID:cSiiceQ6o 提督「……そうか」 榛名「ですが、やっぱり私は提督の艦娘です。最後は、提督と一緒に居たかったです……」 提督「……すまない」 榛名「いえ。死に目にも遺体にも会えなかったのは確かに辛いですが、私はこれで良かったと思います。でなければ今頃、私はこうして元気にしていなかったでしょうね」 提督「…………」 榛名「提督さん、お願いがあります。明日、提督を海へ還した場所へ私を連れて行ってくれませんか? 私は、最後をその場所で過ごしたいです」 提督「……分かった」 榛名「ありがとうございます」ニコ 提督「……やはり、刷り直しだと分かっていたんだな」 榛名「いえ、本当に騙されかけました。提督さんが私の提督かもしれない、と思ったのは事実です。でも、どんなにそう思っても、やっぱり私の心の奥に居たのは提督──元帥様でした。そして、私を助けようとしたというのも提督さんと救護妖精さんを見ていて分かりました。ですから、私はその優しさに縋ってしまったのです」 提督「気を遣わせてしまった。すまない」 榛名「謝らないで下さい。むしろ私は嬉しいんです。短かったですが、本当に提督さんの艦娘になれた気がして……とても充実した生活でした」 提督「……そうか」 榛名「私のお話は以上です」 提督「私も、何も言う事は無いよ」 榛名「分かりました。──では提督さん、失礼しました」ペコ ガチャ──パタン 提督「……本当、上手くいかないものだな…………」 …………………… ………… …… 提督「……この辺りがそうだ」 榛名「…………ここで、提督が……」 提督「ああ……」 榛名「……………………」 提督「…………」 榛名「……はい、憶えました」 提督「……もう少し居るか?」 榛名「はい……。もう少し……もう少しだけ…………」 提督「……分かった」 …………………… ………… …… 918 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/11/18(月) 23:33:42.37 ID:cSiiceQ6o コンコン──。 提督(最後の夜……さて、今日は誰が来たのだろうな……) 提督「入れ」 ガチャ──パタン 瑞鶴「…………」 提督「瑞鶴……」 瑞鶴「…………」 提督「……座って話そう。ソファとベッド、どっちが良い」 瑞鶴「………………ベッド」 提督「分かった」 ギシッ──。 瑞鶴「…………」 提督「…………」 瑞鶴「……もう、会えなくなるのよね」 提督「ああ……」 瑞鶴「どうしても、なのかな」 提督「どうしても、だ」 瑞鶴「そっか……」 提督「…………」 瑞鶴「やだなぁ……」 提督「私も……出来ればしたくない」 瑞鶴「…………」 瑞鶴「提督さん……我侭言っても良い?」 919 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/19(火) 00:02:24.17 ID:Yk7ZF34oo 提督「なんだ?」 瑞鶴「……最後に、エッチな事とかしたい」 提督「…………それまた、どうしてだ」 瑞鶴「覚悟……したいから……」 提督「すまないが、それは出来ない」 瑞鶴「……やっぱり?」 提督「予想、していたのか」 瑞鶴「…………ん、金剛さんの様子を見ていたらね」 提督(これで二人目……よっぽどなのか……) 瑞鶴「絶対に提督さんと何かあったなーって思ったの。それで、自分の我侭を言うついでにって……。自分でも嫌な性格をしてると思うわ」 瑞鶴「そっかぁ……金剛さんかぁ……」 提督「……すまん」 瑞鶴「謝らないでよ……惨めになっちゃう……」 提督「…………」 瑞鶴「……私ね、金剛さんになら負けても良いかなって思ってるの。だって、金剛さんの提督さんへの想いは誰にも──ううん、想いだけじゃない。他にもいっぱい負けてない部分があるわ。だから、金剛さんになら負けても納得できるの」 提督「そうか……」 瑞鶴「だけどね、まだ時間があるじゃない。今晩で、提督さんの気が変わるかもしれない。私は、それに賭けようと思う」 提督「…………」 瑞鶴「だから……せめて一緒に寝たい、かな……」 提督「……言ってる事が滅茶苦茶だぞ」 瑞鶴「うん、分かってる。私って提督さんや金剛さんみたいに頭が良くないからさ、自分の今の気持ちをぶつけるしかないのよね」 瑞鶴「──最後まで諦めたくない。ただそれだけよ、私は」 提督「……そうか」 瑞鶴「あ、勿論提督さんは拒否しても良いのよ? 無理矢理って私、嫌いだから」 926 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/19(火) 00:30:54.80 ID:Yk7ZF34oo 提督「…………」 瑞鶴「…………」 提督「……すまん。それは出来ない。私を好いている子と眠るのは、金剛に対する裏切りにしか思えない」 瑞鶴「……妹としても?」 提督「妹としてもだ」 瑞鶴「………………そっか」 瑞鶴「──うん、分かった! ありがとね!」 提督「…………」 瑞鶴「まあそうよねー。知らなかったとはいえ妹と寝ちゃったのも本当はおかしいし、逆にお兄ちゃんと恋人になりたいって思う妹も充分おかしいわよねー」 提督「……瑞鶴」 瑞鶴「まあ、そういう事で。金剛さんを大事にしてあげなよ? おやすみー!」 提督「…………」 ガチャ──パタン 瑞鶴「────はぁ……」ソッ 瑞鶴「……フラれちゃった」ズルズル…ストン 瑞鶴「仕方がないわよね……そうよ、仕方がないのよ……。私が勝てる要素なんて、無かったんだから……」 瑞鶴「提督さんの為に全身全霊を掛けれているのは金剛さんだし……私が勝ってたのは戦闘能力って点だけ……。身も心も負けてる私じゃ……到底無理だった話なのよね……。提督さんも、金剛さんに一番の信頼と特別な感情を置いてる……」 瑞鶴「これじゃ勝てないわよね……。一ミリも入り込む隙が無いや……」 瑞鶴「お茶の淹れ方とか、戦術の本とか……金剛さんに借りて一杯読んだのになぁ……一杯、一杯勉強したのに……」 瑞鶴「少しでも振り向いてくれるように……今よりも気を向けてくれるように……勉強したのに……。大好きな提督さんと会う時間を減らしてまで……頑張ったのに……」 瑞鶴「──あれ? 提督さんと会う時間を減らしてまで……?」 瑞鶴「────────ああ、そっか。私が勉強してる間、ずーっと金剛さんが提督さんの側に居たのよね……」 瑞鶴「自分を磨く事に集中しすぎて……提督さんの事、蔑ろにしちゃってた……」 瑞鶴「ダメだなぁ私……。今頃になってこんな事に気付くなんて……」 瑞鶴「未練たらたらだなぁ……私のバーカ……」 …………………… ………… …… 930 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/19(火) 00:56:30.13 ID:Yk7ZF34oo 提督「全員揃ったな。それでは出発しよう」 電「え? あ、あの司令官さん、榛名さんと戦姫さんとヲ級ちゃんがまだですよ?」 提督「三人共、別の場所で最後を迎えたいそうだ」 響「そっか……残念だね……」 提督「世の中、上手くはいかないように出来ているものだ。──さて、行くぞ」 雷「…………」ジー 提督「雷、どうした。鎮守府をそんなに見て」 雷「……もう少しだけ見ていたいの」 提督「暗くて分からないんじゃないのか?」 雷「…………よし! 見納めできたわ! 行きましょう司令官!」 提督「……ああ」 ……………………。 暁「ねえ司令官。結局、司令官は金剛さんを選んだの?」 提督「……そうだが、なぜか皆分かっているようだな」 島風「まー……昨日一昨日の様子を見てればなんとなくねー。廊下ですれ違う度にいつもと違うんだもん」 電「ふわふわしているというかなんというか……そんな感じでしたね」 瑞鶴「部屋だともっと酷かったわよ。ずーっと布団で考え事しながらゴロゴロしてたり枕とか掛け布団をぎゅーって抱き締めたり、なんか唸ったりしてたもの。まるで、周りの事が見えてないようだったわね」 響「……何を言ったんだい司令官」 提督「一緒に居たいと言った。夢か何かだと疑っていたから愛を囁こうかとも言ったな」 電「ふ、ふわぁ……」 暁「普段の司令官からは想像もつかない台詞ね……」 島風「提督が愛を囁こうかって……本当に意外だよね」 響「もし私がそんな事を言われたら、金剛さんと同じになる自信があるよ」 瑞鶴(良いなぁ……) 931 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/19(火) 01:11:11.24 ID:Yk7ZF34oo 暁「ね、ねえ。金剛さんとはどこまでやったの?」ドキドキ 提督「……本当に、お前達は私と金剛の事についてしか聞かないな。全員同じか」 島風「あ、やっぱり軽巡の皆もだったんだね」 提督「どうしてそんなに知りたいかね……」 瑞鶴「……私も気になるなぁ」 響「私も」 提督「……分かった。全部話す。だが、運転している間だけだぞ」 ……………………。 利根「おお提督殿」 提督「ご苦労、利根。変わりはないか」 利根「うむ! 何一つおかしな事はないぞ! ──ふむ、今回はこの六人か」 提督「ああ。すまないが、また夜まで頼む。那智にもそう言ってくれ」 利根「心得た!」 響「……カプセルの中に私達が居るね」 電「は、裸なのです……」 雷「エロいわね! でも、このカプセルが緑色に光ってるからエロく見えないわね!」 瑞鶴「こら、そういう事を言わないの」 雷「はーい」 島風「触っちゃダメ?」 提督「ダメだ。何が起きるか分からん」 島風「はーい」 提督「では、私は総司令部へ行く。また夜に会おう」 瑞鶴「提督さん」 提督「なにかね」 瑞鶴「──いってらっしゃい」ニコ 提督「…………ああ、いってくる」 …………………… ………… …… 932 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/19(火) 01:12:29.27 ID:Yk7ZF34oo 提督「旧式の軍艦はどうだ」 中将A「やはり艦娘と違って図体が大きいので母港を拡張しなければなりませんな。たった五隻で場所の確保に一苦労しました」 中将B「私の鎮守府も同じです。艦娘を二十人抱えていたのでその感覚でいましたが、想像以上に場所を取ります」 少将「おまけに大きいので動きが鈍く見えて仕方がないですね。あれでは深海棲艦相手に一撃で屠られてしまうでしょう」 中将B「動かすのにも人員が沢山必要です。艦娘の偉大さが本当に良く分かりますな」 提督「だが、海で戦う術はあれしか残されていない。深海棲艦は艦娘と同様急速に減り続けているが、それは外国と国交回復の兆しとなっている。その時に軍事力が無ければ、たかが一個大隊で我が国の制海権は奪取されてしまうだろう」 中将A「救いなのは過去の資料が残されているという事ですな。あれが無ければ今以上に試行錯誤で海に浮かんでいた事でしょう」 提督「うむ。比較的平和な今の内に錬度を上げておけ。いつ動かす事になるか分からんぞ」 中将A・中将B・少将「はっ!」ピシッ 提督「このままでは艦娘が全員消えるのも時間の問題だ。もし次の会議までに全ての艦娘が消えてしまったら、即時私に連絡、そして哨戒、索敵をせよ。どこから敵が来るか分からんぞ」 提督「中将Aは母港改装を各鎮守府に連絡し、改装させろ。この原案を基に中将Aが指示を与えてくれ。中将Bは士官学校に連絡し、教育方針を変えてくれ。鎮守府に務める人間を育てるのではなく、旧式軍艦に乗れる教育をさせろ。少将は旧式軍艦での戦略、戦術、戦法を探せ。それを纏めて私に提出しろ。添削した後、各鎮守府へ送る」 提督「以上。今回の会議は終了だ」 …………………… ………… …… 946 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/11/19(火) 23:29:10.38 ID:Yk7ZF34oo 提督「……今日で、金剛を除く全ての艦娘が解放されるのだな」 救護妖精「そうだねぇ……なんでまだ金剛だけ解放しないのかは聞かないでおくよ」 提督「ありがたい」 救護妖精「それにしても、やっぱり艦娘の時の記憶は無いみたいだね」 提督「当たり前だろう。引用元に記憶が戻ると大変な事になる」 救護妖精「そうだけどさ……。やっぱり夢は見たいでしょ?」 提督「……そうだな。世の中、上手くいかないように上手く出来ている」 救護妖精「本当にねぇ……」 救護妖精「あたしも、どうしよっかねぇ」 提督「どうした。何か困った事でもあるのか」 救護妖精「んー? だってあたしって本当は艦娘専攻の医者だからさ、艦娘が居なくなったらちょっとだけ困るんだよね」 提督「人間相手は出来ないのか?」 救護妖精「出来ない事はないけどさ、憶え直さないといけないから時間も掛かるだろうねぇ」 提督「私相手に診察をしていたように思うが」 救護妖精「提督はホムンクルスじゃん。既に構造が人間と違うよ」 提督「どれだけ違うのやら……」 救護妖精「内臓とか結構違うねー。神経系も弄られてて筋繊維もちょっとだけ違うよ」 提督「……私の身体の秘密を知っているのは救護妖精だけだったな?」 救護妖精「そだね」 提督「そうか。──実は、専属の医師を探しているんだ」 救護妖精「へぇ。やっと自分の身体を大切にしようと思ってきたの?」 提督「そんな所だ。だが、一つ問題があってな。私の身体は特殊だから普通の医師では対処出来ないだろう」 救護妖精「うん。そだね」 提督「その専属医師の枠が一つだけ空いているんだが、そこに座ってみる気はないか?」 救護妖精「その言葉を待ってたよ」スッ 提督「うむ。これからもよろしく頼む」スッ 救護妖精「あいよ。私からもよろしくね」ニギッ 提督「さて……地下へ行こう。皆が待っている」 救護妖精「……あいよ」 ……………………。 947 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/19(火) 23:40:59.43 ID:Yk7ZF34oo 救護妖精「…………準備、出来たよ」 提督「……皆、今までご苦労だった」 全員「…………」 提督「現時刻をもって、瑞鶴・島風・暁・響・雷・電の六名を除籍とする。今まで、ありがとう」 瑞鶴「……これで、お別れなのよね」 提督「……そうだ」 響「もう、会えないのかな」 提督「出来ない……」 電「長いようで、短かったのです……」 提督「私もそう思う……」 雷「明るく見送ってよね! 司令官!」 提督「お前はいつも元気だな、雷」 暁「最後まで一人前のレディとして扱ってくれなかったわね」 提督「今回だけはレディとして扱おう」 島風「もう頭を撫でてくれないの?」 提督「最後に、全員の頭を撫でようと思う」 那智「……………………」 提督「そうだったなぁ。お前達は皆、これが好きだったな」スッ 提督「一番の最初から今まで、ずっと世話になってきたよ、電。お前が私の初めての艦娘で良かったと思っている」 電「わふっ……。私も、司令官の艦娘になれて良かったのです」ナデナデ 提督「持ち前の明るさで、駆逐艦の皆をいつも元気付けていたのは知っている。影ながら支えてくれて、それに頼っていた。助かったよ」 雷「良いのよ司令官。私に頼ってって言ったじゃない」ナデナデ 提督「あまりお前の速さを活かせなかったな。それでも、不満一つ言わず付いて来てくれた優しさと健気さには感謝している」 島風「初めて提督と会った時のかけっこ、怖かったけど楽しかったもん。あれだけでも私は貴重な体験が出来たと思うしねっ。出来ればもう一回したかったなぁ。またかけっこしようね?」ナデナデ 提督「うむ。──暁はいつも空回りしていたな。一人前のレディなんだからもう少し落ち着いたらどうだ?」 暁「一人前のレディ……。──ありがと! 気を付けるわね」ナデナデ 提督「駆逐艦の中で一番問題があったが、一番可愛がったのは響だったな。どうだった、私は」 響「…………うん。好きな気持ちで一杯なのは今でも変わらないよ。この気持ちのまま最後を迎えるのは、ある意味嬉しいね」ナデナデ 提督「私の艦娘の中で一番努力していたのは瑞鶴だったな。視力を落としてまで夜遅く本を読んでいたんだろう?」 瑞鶴「…………なんで気付いてるのよ。視力もちょっとしか落ちてないのに」ナデナデ 提督「戦術は良くなっていたが索敵範囲が多少落ちていて、遠くの物を見る時に少し目を細めていたからな。天龍達と演習した時から気付いていたよ」 瑞鶴「──あはっ。ズルいなぁ……。そんな事を言われたら、もっと好きになっちゃうじゃない」ポロッ 瑞鶴「でも……気付いてくれてたのね。ありがとう、提督さん……」ポロポロ 提督「……皆、今までありがとう────」 カチン──。 ……………………。 948 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/20(水) 00:02:27.11 ID:zMreAUVgo ヲ級「!」 戦姫「む……。消え始めたか……」 金剛「……お別れですネ」 戦姫「そうだな。最後にこんな美味しいお茶をご馳走してくれて感謝している。艦娘といえど感情を抑えれたのも、最初に出会った時の印象が良かったからかもな」 金剛「最初?」 戦姫「本気であの方を助ける目をしていた。だから私は、歯向かってくるお前を殺さないように撃ったのだ」 金剛「……やっぱり、あれは手加減していたのですね」 戦姫「お前は私と似ている。──もし生まれ変わるのだとしたら、親しい仲になりたいものだ」 金剛「私もです」 ヲ級「♪」コクコク 戦姫「この部屋で最後を迎えれた事を、あの方に礼を言っておいてくれ。──さらばだ」ピシッ ヲ級「!」ピシッ 金剛「ご苦労様でした」ピシッ スゥッ──。 金剛「……きっと、また会えますよね?」 ……………………。 榛名「──あ、身体が……」 榛名「……もう、お別れですね。もう少し、この場に居たかった気もします」 榛名「提督、いらっしゃいますか? 私も、もうすぐ消えてしまうようです。最後に提督のお側に居られなくて、申し訳ありませんでした」 榛名「黄泉の国でお会いする事がありましたら、提督が良ければまたお側に置いてください」 榛名「榛名は、いつまでも待っていますから……」 榛名「そして……提督さん、ありがとうございました。私はきっと、提督と会ってみせます」 榛名「提督……今、逝きますね────」 スゥッ──。 ……………………。 952 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/20(水) 00:25:02.69 ID:zMreAUVgo 響「! 消えてきたね」 電「な、なんだか不思議な感覚なのです」 暁「そうね……全然怖くないわね。鎮守府に居る時みたい」 雷「笑顔で司令官とお別れできるわ! 素敵な最後じゃない!」 島風「…………」 瑞鶴「? 島風?」 島風「っ!!」ダッ 提督「!」トンッ ガシッ──。 島風「ぉゔッ! ……えへへ。また負けちゃった」 提督「私の勝ちだな」 島風「提督には一生掛かっても勝てそうにないなぁ」ニコニコ 提督「満足したか?」 島風「うんっ!」 暁「まったく島風ったら……」 電「島風ちゃんらしいのです」 雷「いいなーいいなー!」 響「私も走り出せば良かったかな」 瑞鶴「くすっ……。──提督♪」ギュッ 全員「!!」 提督「む」 瑞鶴「腕なら良いでしょ?」ギュー 提督「……困った妹だ」 全員「!?」 瑞鶴「ふふっ。提督、だーいすきっ!」 スゥッ──。 提督「……逝ってしまったか」 救護妖精「……逝っちゃったね」 那智「い、妹……?」 提督「そうだ。私の妹らしい。──さあ、介抱するぞ」 救護妖精「あいよー」 那智「……………………」 ……………………。 955 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/20(水) 00:54:06.46 ID:zMreAUVgo 雷「なにかしらここ? まるでマンガの危ない実験室みたいね!」 電「はわわわっ。難しそうな機械があるのです!」 暁「本当にどこかしら、ここ」 響「この服、裸の上から着てるみたいだね」ジー 暁「!?」 島風「うーん……ちょっと走り難いかも」タッタッ 暁「は、破廉恥だから走るのを止めなさい!!」 島風「えー……」タッタッ 榛名「え、えーっと……?」 大和「……広い場所ですね」キョロキョロ 提督「…………」 提督(……なるほど。動くと尚更、写真と同じ顔をしている) 翔鶴「走ってる子、こけて怪我をしなければ良いのだけど……」 瑞鶴「…………」 提督「…………」 瑞鶴「……ここどこ? それと、貴方は誰よ」ジッ 提督「……………………」 翔鶴「ず、瑞鶴。あまり刺激しない方が良さそうよ……?」 瑞鶴「まさかとは思うけど、この服を着せたのは貴方?」 提督「……そうだ」 翔鶴「…………」ビクビク 瑞鶴「ふーん……? まあいっか。状況とか色々説明はしてくれるのよね?」 提督「ああ。だがその前にスープを飲んでおくように。身体が弱ってるだろうからな──」 ……………………。 957 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/20(水) 01:14:02.02 ID:zMreAUVgo 瑞鶴「私達が艦娘の、ねぇ」 翔鶴「本当なのでしょうか……?」 大和「どうでしょうかね。判断できる材料が少ないからどうとも……」 榛名「迷ってしまいます……。けど、なんだか優しそうなので信じれそうですね……」 電「わ、私は信じますよ?」 雷「私もよ!」 響「私も。この人の目は嘘を言っていない」 暁「信用するの早くないかしら!?」 島風「かけっこして私に勝てるのなら信じても良いよ!」 暁「それはどうなのよ……」 提督「……お前は本当にかけっこが好きだな」 島風「あれ? 私の事を知ってるの?」 提督「…………ああ、知っている。かけっこ──いや、ほとんど鬼ごっこだったが二回したな」 島風「おおっ! だったらかけっこしよ! 今すぐ!!」ワクワク 提督「…………」チラ 救護妖精「…………一回だけだよ」ハァ 提督「一回だけな」 島風「じゃあここからあの壁まで競争ね! 皆はどっちが勝つと思う?」 瑞鶴「この人」 響「同じく」 那智「間違いなくこの方だ」 救護妖精「うん。競わなくても分かるねぇ」 島風「即答!?」ガーン 大和「元気ね。……こっちの男性の方かしら。男性の方は皆、走るのが速いですし」 榛名「え、えっと……私も同じ意見です」 雷「じゃあ私もこっちの人!」 電「私もなのです。なんだか走るのがとっても速そうなのです」 暁「え? えっと……じゃあ私も……」 翔鶴「私もです……。なんだか、ただならぬ実力を持っていそうです……」 島風「全員なのぉ!? ……よーしっ!! 絶対に勝ってやるんだから!!」 瑞鶴「じゃあ私が合図するわね」 提督「頼んだ」 瑞鶴「よーい、どん」ポン 958 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/20(水) 01:14:31.24 ID:zMreAUVgo 島風「っ!!!」ダッ 暁「はやっ!!」 提督「…………」タンッ 榛名「跳んだ!?」 瑞鶴「────」 島風「──ぉゔっ!?」 提督「……到着」ペタッ 島風「え……ええぇぇぇええぇぇええぇえぇ…………」 提督「私の勝ちだ」 島風「参りました……」ガクッ 雷「諦めたわね」 電「あ、あんなに実力の差を見せ付けられたら諦めるのも当たり前なのです……」 島風「……あなた何者? この私がまったく歯が立たないなんて……」 提督「ある鎮守府の提督だ」 大和「司令官という立ち位置は運動が出来ないというイメージがありましたけど、素晴らしいですね」 提督「何分、普通より頑丈な身体を持っているのでな」 翔鶴「す、凄いですね……」 瑞鶴「……人間の限界とか超えてそうね」 提督「島風、私は身体が弱いから何度も付き合えないが、また許可が下りたら挑戦するか?」 島風「する!! あんな負け方は悔しいもん!!」 提督「良い返事だ。──さて、私は鎮守府へ戻る」 那智「提督、今日も連れて帰るのか?」 提督「うむ」 那智「なら起こしてこよう。少し待っていてくれ」 提督「頼んだ」 瑞鶴「……どっか行くの?」 提督「さっき説明したように、解放した子は皆、私の鎮守府へ匿っている。その為の移動だ」 瑞鶴「ふーん。じゃあ、私もついて行って良い?」 翔鶴「瑞鶴!?」 959 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/20(水) 01:14:58.67 ID:zMreAUVgo 提督「……普通は疑わないか?」 瑞鶴「なんか信用出来るんだもの。良いじゃないの」 提督「姉が困っているように見えるな」 瑞鶴「あっ……。翔鶴姉はどうする? 私と一緒について行く?」 翔鶴「え、えっと……その……」チラ 提督「無理は言わない。二人で決めると良い」 翔鶴「じゃ、じゃあ……瑞鶴、どうして行こうと思ったの?」 瑞鶴「さっきも言ったけど、信用してるからよ。この人は私達を大切にしてくれるって分かるもの」 響「それには私も同意だね」 雷「目を見れば分かるのかしら?」 響「それもあるけど、後はさり気ない気配りとかかな。さっきから私達の事を観察しているように見えるけど、どこかしら温かみのある目線だと思う。特にあの島風って子を気に掛けてるけど、それはさっき走ったからじゃないかな。私達の身体は弱ってるって最初に言ったしね」 提督「……相変わらず勘が良いな」 響「ふぅん……。私は前に貴方と会った事があるんだね」 提督「ああ。少しは知っているつもりだ」 翔鶴「……………………」 瑞鶴「翔鶴姉が嫌だって言うのなら、私は行かないわよ」 翔鶴「……本当に、ただ単に信用できるから、なの?」 瑞鶴「うん。雰囲気というかなんというか……よく分かんないんだけどね」 翔鶴「…………じゃあ、私も行くわね。瑞鶴を一人で放っておけないもの」 大和「私も行って良いかしら」 提督「……構わないが、どうしてだ」 大和「なんだかこの二人を放っておけなくて……。ただそれだけなんですけどね」 提督「…………分かった。前回の三人と一緒に連れて行こう」 ……………………。 972 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/11/20(水) 03:42:51.55 ID:zMreAUVgo 金剛「提督……」パタパタ コンコン──。 金剛「!!」ガバッ 金剛「──どうぞ」 ガチャ──パタン 比叡「金剛お姉様! 遊びに来ました!!」 霧島「お元気ですか?」 金剛「────あ、ぅ、イエース! 元気デース!」 霧島「それは良かったです。今、お時間よろしいでしょうか?」 金剛「ハイ! オッケー デース」 比叡「間宮さんにお願いしてオーブンを貸して頂きました! 甘い紅茶と一緒に食べると美味しいらしいクッキーです!」 金剛「ワオ! ビタークッキーですか! 久々ネ!」 霧島「そのままでもいけますが、飽きたらこちらのバタークリームを付けて召し上がって下さい」 金剛「サンキュー マイ シスターズ! すぐにアッサムを淹れてきますネー!」 ……………………。 金剛「うーん! ベリーベリー グッド ネ! ミルクティーととても合いマース!」サクサク 比叡「本当ですか!? よかったぁ……私達、クッキーを作るの初めてだったんですよ」 金剛「バッチリ デース!」 霧島「あ、本当です。凄く合います」サクサク 比叡「紅茶のおかげで引き立っていますね!」サクサク 金剛「ノー! どっちかが抜けてしまうとこの味は楽しめまセン! 両方あってこそのこの味デース!」 比叡「金剛お姉様……。ありがとうございます!」 金剛(このクッキー、全く砂糖を使っていないようデス! これならきっとテートクも食べられますネ!)サクサク 金剛(────あ……提督……。もう何日かすれば、私は……) 霧島「? どうかなされましたか、金剛お姉様?」 金剛「──いえ! なんでもありませんネ! 前にケーキを作った時の失敗を思い出しただけデース!」 比叡「へぇ……お姉様も失敗ってあるんですね」 金剛「勿論ありますヨー? ケーキはとってもシビアな料理なのデース! 少し工程を間違えるだけですぐにダメになりマース」 霧島「そうなのですか? 次はケーキに挑戦しようと思いましたけど、もっと勉強してからにしますね」 金剛「ハイ! 頑張って下さいね!」 金剛(ビタークッキーですか……提督が帰ってくるまでに焼いておきましょう!) 金剛「ありがとう、比叡、霧島」 比叡「いえ! お姉様が喜んでくれたようで何よりです!」 霧島「はい! 私達も嬉しいですよ!」 金剛(──そして、ごめんなさい…………) …………………… ………… …… 986 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/21(木) 23:31:14.30 ID:fwAWgJHNo 金剛(今から焼けば、提督が帰ってくる少し前にクッキーが焼けマスね。そろそろ準備をしまショウ) コンコン──。 金剛(あら、また比叡と霧島でショウか?) 金剛「どうぞー」 ガチャ──パタン 瑞鶴「お邪魔するわね」 金剛「!!」 瑞鶴「あら、どうしたの?」 金剛「──いえ、なんでもありませんよ」 瑞鶴「ふぅん……?」 金剛「それよりも、どうしたのですか? こっち側は艦娘の寮ですヨ?」 瑞鶴「知ってるわよ。私はこの部屋を見てみたかったの」 金剛「ホワィ? なぜこの部屋のなのデスか?」 瑞鶴「ここ、前の私も使ってた部屋なんでしょ?」 金剛「────」 瑞鶴「ああ、そんな顔しないで? 別にどうこうするつもりは無いわ。……ちょっと、気になったのよ」 金剛「気になった……のですか?」 瑞鶴「うん。どんな感じだったのかなーってね。ついでに、面白い事とかないかなーって」 金剛「……面白い事?」 瑞鶴「そう邪険に扱わないで。あの人の顔を見たら、前の私がどれだけ大切にされてたのか分かるわよ」 金剛「…………」 瑞鶴「で、その子は私と同一人物でありながら別人だったんでしょ? 私の魂をなんとかかんとかって聞いたわ。だから、この部屋とかに来たら何か思い出すのかなって思ったの」 金剛「…………」スッ 瑞鶴「? そのベッドがどうしたの?」 金剛「瑞鶴──艦娘の貴女が使っていたベッドがそれデス」 瑞鶴「これが……ね」ソッ 988 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/21(木) 23:41:57.32 ID:fwAWgJHNo 瑞鶴「…………」ポフッ 金剛「…………」 瑞鶴「……………………」 金剛「……何か、思い出しましたか?」 瑞鶴「…………ううん、何も。ただ単に寝心地の良いベッドって感想しかないわ」 金剛「……そう、ですか…………」 瑞鶴「やっぱりダメかぁ……」 金剛「……やっぱり?」 瑞鶴「うん。結構悲しそうな顔してたからさ、記憶が私に戻ったりしたら、あの人は喜ぶのかなーって思って」 金剛「…………」 瑞鶴「まあ、そんなに都合の良い話なんてないわよね。ごめんね、お邪魔しちゃって」スッ 金剛「……どこかに行くのですか?」 瑞鶴「行くって言うより戻る、ね。翔鶴姉と大和さんが部屋で待ってるから」 金剛「…………」 瑞鶴「それじゃ、バイバイ」 ガチャ── 金剛「──また!」 瑞鶴「?」 金剛「……また、来ても良いですから」 瑞鶴「…………」 瑞鶴「うん。また来るわね」ニコ ──パタン 金剛「…………」 金剛「……………………」ポフッ 金剛「……心、痛いです」ギュ 金剛「…………」 金剛「クッキー、作りに行きましょう……」スッ ガチャ──パタン………… ……………………。 989 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/21(木) 23:54:40.80 ID:fwAWgJHNo 金剛(もう少しで焼き上がるネ! 後は冷ませば完成デス!) 金剛「〜♪ 〜〜♪」 提督「ん、ここに居たのか」 金剛「ふえぁ!? て、てて提督!? もうお帰りになられてたのですか!?」 提督「ついさっきな。どこに居るのか少し探した程度だ」 金剛「……お出迎え出来なくてごめんなさい」 提督「それは義務ではない。お前が鎮守府で待ってくれている事が私の幸せだ」 金剛「う……て、提督……そんな恥ずかしい事を真顔で……」 提督「嫌だったか?」 金剛「──私も幸せですっ!」ギュッ 金剛「てーとくぅー♪」スリスリ 提督「甘えるのは結構だが……時間と場所を弁えた方が良いんじゃないか?」 金剛「え?」 間宮「あ、あはは……」 金剛「────ご、ごめんなさい!!」バッ 間宮「えーっと…………お邪魔しちゃいました?」 金剛「そんな事ありません! ──あ、ク、クッキーが焼けましたので、もう出て行きますから!!」 間宮「ふふっ。冗談ですよ。仲睦まじくて、見ていて心が温かくなりました」 金剛「あう……あうぁうあぅぁぅぁぅ……」 ……………………。 990 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/22(金) 00:07:19.49 ID:umsHAw1bo 金剛「とても恥ずかしかったです……」 提督「そういう事もあるだろう。私はあんなに狼狽える金剛を見て満足した」 金剛「ぅー……イヂワルですよ提督……」 提督「うむ。私はいぢわるが大好きだ」 金剛「それが提督の本性なのですね……」 提督「嫌いになったか?」 金剛「……その言葉もイヂワルです。分かってて言ってますよね?」ギュッ 提督「勿論」ナデナデ 金剛「もう……」スリスリ 提督「ところでクッキーを作っていたようだが、妹達への物か?」 金剛「提督への物ですよ?」 提督「私に?」 金剛「はい。砂糖を使っていないクッキーです。比叡と霧島からヒントを貰いました! これなら提督も食べられると思 ったです!」 提督「……わざわざ私の為に?」 金剛「提督と一緒に楽しみたかったからです。提督の為だけではなく、私の為でもあるのです」 提督「…………」ナデナデ 金剛「〜♪」スリスリ 金剛「てぇーとくっ」ニパッ 提督「…………」ピタッ 金剛「?」 提督「…………」ギューッ 金剛「わっ──。んー♪」スリスリ 金剛「提督……私、今幸せです」 提督「私もだ」 金剛「あと何日ですか?」 提督「……明日にしようと思っている。いつまでもお前を残していると、間違いなく疑われる事となる。そうなると、総司令部地下の存在も危うくなるだろう。そして、別の鎮守府でも無理に出撃させる者が現れるかもしれない……」 金剛「……そう、ですか」 提督「だから、今日は一日中一緒にいよう」 金剛「やった!」 金剛「──あ、でもそれでしたら今から寝ないといけませんよね? 夜に運転する訳ですから」 提督「そうだな。一緒に寝てくれるか」 金剛「勿論です!」 991 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/22(金) 00:19:30.35 ID:umsHAw1bo 提督「火を灯していてくれ。私は部屋を暗くする」ツカツカ 金剛「はーい」 シャッ──パチン……。 金剛「提督ー、こっちでーす」 提督「ああ、お前の姿が見えるよ」ツカツカ 金剛「えへへー……」 提督「…………」モゾモゾ 金剛「火、消しますね」 フッ……。 提督「……真っ暗だな」 金剛「まるで、私達の未来みたいですね」 提督「まったくだ。一筋の光すら見えん」 金剛「……どうして、こうなったのでしょうかね」 提督「神が居たとしたら、随分と性格の悪い奴だな」 金剛「提督は神を信じないのですか?」 提督「生憎とな。事実、私は艦娘と深海棲艦の命を大量に屠っている。概念だけで言うならば私は歴史上最悪の殺戮者だろう。こんな者を、神が放っておく訳がないだろう?」 金剛「……確かにそうですね。平和の神がダーインスレイヴを片手に提督へ襲い掛かってもおかしくありません」 提督「間違いなく、ヴァルハラへは逝けないな」 金剛「う……。それでしたら私もヴァルハラ逝きを蹴って提督について行きます」 提督「ほう。どこまでも付いて来てくれるのか」 金剛「例え神に縛られようと、必ず抜け出してついて行きますよ」 提督「嬉しい限りだ」 金剛「……待ってますからね?」 提督「いつまでだ?」 金剛「いつまでも」 提督「案外すぐに逝ってしまうかもな」 金剛「それはダメです。ちゃんと天寿を全うして下さい」 提督「仮に私が別の女性を愛したらどうする」 金剛「……遠くで見守ります。危ない時だけ、助けに現れますね」 提督「重病だな」ナデナデ 金剛「不治の病ですものね」スリスリ 提督「…………」 金剛「…………」 提督「──離れてくれるなよ?」ギュ 金剛「──勿論です」ギュ …………………… ………… …… 992 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/22(金) 00:32:46.15 ID:umsHAw1bo 利根「おお提督殿! 今回は早いのう」 提督「ご苦労、利根。……色々と事情があってな」 金剛「…………」 利根「ふむ。事情があるのならば仕方がなかろう」 利根「ああ、そうそう。あの島風という子が提督殿とかけっこしたがっておったぞ」 提督「ふむ……。許可が下りた時に勝負するとしよう」 提督「さて……私はそろそろ行く」 金剛「……テートク」 提督「金剛はここで待っててくれ。また夜になったら来る」 金剛「…………はい」 利根(ふむ) ……………………。 利根「金剛、といったかの?」 金剛「え? ハイ。私は金剛ですケド、貴女は利根さんでよろしかったでショウか」 利根「うむ! ちと聞きたい事があったので話し掛けた。隣、良いかのう?」 金剛「ハイ……」 利根「失礼する。──我輩は人を探るのが苦手なので単刀直入に聞くが、お主は提督殿と何かしら特別な関係なのかのう?」 金剛「……凄い観察眼デスね。その通りデス」 利根「我輩はそれしか能がない。まあそれはさておき、後悔はしておらんのか?」 金剛「……していマス。ケド、覚悟も出来ていマス」 利根「ほう?」 金剛「私が我侭を言えば、沢山の艦娘や深海棲艦が苦しい思いをしマス。私はそんなの、嫌デス。それに……テートクの望む事は私のやりたい事でもありマス」 金剛「私は戦う為に生まれてきたのに、テートクは私を──私達を道具として扱わず、一人の人間として扱ってくれまシタ。これだけでも幸せな事なのに、もっと大きな幸せも貰っていマス。これ以上の幸せを望むのはバチが当たるというものデス」 利根「ふむ。立派な考えじゃな」 金剛「全然立派ではありまセン。今でも、どうにかしてテートクと離れ離れにならずに済む方法を探していマス」 利根「お主はよっぽど提督殿が好きみたいだのう。我輩も気に入っている故、少しばかり嫉妬してしまうぞ」 金剛「ふふっ。テートクの良さがどんどん広まっていマース! 嬉しい限りデス!」 利根「その考え方もかなり珍しい。お主の事も気に入った!」 金剛「今から私達はフレンド ネー!」 利根「うむうむ! 良い友を持てたわ!」 金剛(──提督……あと、もう少しなのですね…………) …………………… ………… …… 993 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/22(金) 00:44:38.67 ID:umsHAw1bo 提督「引継ぎの内容は以上だが、意見のある者は居るか。……………………居ないようだな。各々の役割をしっかりと確認しておく事。解散」 少将「……大将殿、お一つ宜しいでしょうか」 提督「なにかね。何か意見があったのか」 少将「いえ、先程の議論ではなく、大将殿のご退任についてです」 中将A・中将B「!」 少将「大将殿の手腕はとても素晴らしいものと思えます。我が国としても失うのには非常に惜しいはずです。どうしてもご退任なされるのでしょうか」 提督「この考えは変わらん。今の私は病を患った老人のようにいつ死んでしまうか分からない。少将の言うようにどれだけ役立てたとしても、死んでしまうと今以上に大変な事になる。死に損ないはとっとと身を引くべきだ」 少将「……しかし」 提督「感情論も大事だが、それに振り回されるのも良くないぞ少将」 少将「…………はい」 提督「これからの未来を切り開いていくのはお前達だ。私ではない」 提督「恐らく、私が退任してからお前達は苦労し、お互いの意見をぶつけ合うだろう。だが、そのぶつけ合いが争いではない事を祈る。お互いの意見を第三者の視点で考え、そして判断してくれ」 中将A「……それでも決着が付かなかった場合はどうするのでしょうか」 提督「どうしても決着が付かないのならば、この国が滅ぶだけだ。以前話した、世界樹の物語のようにな。お前達ならきっと上手くやってくれるだろう」 中将B「確証があるのでしょうか?」 提督「いいや全く無い。私の勘だ。私は未来など分からんからな」 中将A「……まったくもって不思議なお方ですな」 提督「よく言われるよ。──では、最終確認として最低でもあと一回はここへ来る。その時までに各担当する引継ぎをしっかりと進めておけ」 …………………… ………… …… 8 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/22(金) 01:26:12.66 ID:umsHAw1bo 金剛「……とうとう、この時が来てしまいましたね」 提督「ああ……」 金剛「提督、胸が張り裂けそうです」 提督「私もだが……覚悟は出来たのではないのか?」 金剛「出来てますよ。でも……痛いものは痛いです」 提督「そうか……少しでも楽にさせれたら良いのだが」 金剛「……こればかりは難しいですね」 救護妖精「……準備、出来たよ」 提督「分かった。私が合図をしたら……最後の一仕事を頼む」 救護妖精「……あいよ」 金剛「……もう、ほとんど時間は残されていませんね」 提督「そうだな……。何もかも、消えてしまうのだな」 金剛「そうです……。あんなに提督の事を想っていた瑞鶴と同じように、私も提督の事を忘れてしまいます……。しかも、その『私』は私ではなく、私に似ている『誰か』です……」 提督「…………」 金剛「……提督。約束を憶えていますか?」 提督「ああ、憶えているよ。最初はしっかりと寝る約束だったな」 金剛「あの後、しっかりと寝ましたか?」 提督「結局、三時まで仕事をしていたな」 金剛「やっぱり……。早速約束を破ってたのですね」 提督「だが、途中で仕事を辞めて寝たぞ。最低でも三時間は寝るべきだと判断した」 金剛「もう……。始めっから無茶をしていたのですね。……約束は守ったと見做します」 提督「ありがたい。──次に約束したのは、金剛の姉妹艦を見つけるというものだったな」 10 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/22(金) 01:39:37.89 ID:umsHAw1bo 金剛「提督はしっかりと、比叡、榛名、霧島と逢わせてくれました」 提督「艦娘として逢わせてやりたかったのが心残りだ」 金剛「いいえ。榛名は悲しい結果になりましたが……比叡と霧島は争いに身を置く必要のない状態で逢わせてくれました。二人でも妹達が苦しい思いも悲しい思いもしなくて良かったのは、とても嬉しかったです」 提督「そう言ってくれるとありがたいよ」 提督「次の約束は、瑞鶴によって破る形となってしまったな」 金剛「でも、その後はずっと話してくれました」 提督「最後を除いて、な」 金剛「その最後もちゃんと話してくれたではありませんか。約束はしっかりと守ってくれました」 金剛「その次の約束は、まだ言ってもらってませんでしたね?」 提督「ああ。強い面はもう知っているだろうから省く」 提督「私の弱い面は、自分勝手で、尚且つ自分の命を軽視している点だ。こう見えても、私は死にたがりなのだよ」 金剛「……まったくそうは見えませんね」 提督「一緒に出撃していたのがその証拠だ。砲雷撃戦に巻き込まれて死なないだろうか、と心の底ではいつも思っていた。最初に資源を最大量で建造したのも、さっさと死にたかったからだ。戦力乏しく艦娘共々海の藻屑となったら、誰も自殺とは思わんだろう?」 金剛「まったく何を考えていたんですか……。…………でも、そのおかげで私達は出会えました」 提督「ああ。あの感情も一概に悪いと言えないと思っている」 金剛「ぅー……。それはなんだか納得出来ません……」 金剛「──あ……次の約束は、守れませんね……」 提督「お前は沈んでいないじゃないか」 金剛「でも……沈むのと変わらないじゃないですか……」 提督「戦姫を相手にしても沈まなかったのは、評価出来るんじゃないのか?」 金剛「あれはわざと沈めなかったらしいです……」 提督「……そうか。だが、結果的にお前はここまで来て沈まなかった。約束は守られているよ」 金剛「……はい!」 11 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/22(金) 01:51:58.50 ID:umsHAw1bo 提督「次の約束だが……アレはどう判断するべきだろうな」 金剛「ちゃんと守ってくれたと私は思っています」 提督「そうなのか?」 金剛「しっかりと私達を頼ってくれましたし、出来る限り無茶はしなくなってくれました。私、あの時は本当に怒っていたのですよ?」 提督「鬼気迫る中、優しさがあったな。あのビンタは二重の意味で痛かった」 金剛「心にも、ですか?」 提督「心にも、だ。あの時から私の心は動かされ始めたのかもしれないな」 金剛「ふふっ。ビンタをした甲斐がありました」 提督「その後の約束はしっかりとこなしたよな?」 金剛「寝ていたと思ったらいきなり目が覚めるのですから、ビックリしましたよ?」 提督「疲れが取れたという証拠だ」 金剛「もう……」 提督「榛名に関したあの約束は、無効という事で良いのかな?」 金剛「はい。榛名は消えてしまうまで生きました。──提督のおかげです」 提督「いや、あれはバレていたようだ。本人の意思の強さのおかげだ」 金剛「……まったく気付きませんでした」 提督「妹に一枚やられたな」 金剛「……この問題をすぐになんとかするという約束は、しなかった方が良かったかもしれません。早過ぎます……」 提督「……仕方がない事だ。成るように成ってしまった」 金剛「そう、ですよね……」 提督「…………」 金剛「…………」 金剛「約束、全部守って下さいましたね」 提督「金剛も、な」 12 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/22(金) 02:04:17.91 ID:umsHAw1bo 金剛「私のはたった一つじゃないですか」 提督「たかが一つ。されど一つ。約束を守った事には変わりない」 金剛「……沢山、約束していましたね」 提督「そうだな……」 金剛「……もう、約束が出来ないのですよね」 提督「ああ……もう、出来ないな……」 金剛「……提督、それでも一つだけ、約束してください」 提督「……なんだ?」 金剛「消えるまで、私の手を握って下さい」 提督「そんな事で良いのか?」 金剛「そんな事、ですか……?」 提督「──ほら」ヒョイッ 金剛「わ、わっ!」 那智「!!!」 金剛「て、提督……?」ドキドキ 提督「こちらの方がよろしいのでは? お姫様」 金剛「──はい!」ギュッ 提督「…………」ジッ 金剛「…………」ジッ 那智「……………………」フイッ スッ──ちゅ……。 提督「…………」スッ 金剛「……逝きましょう」 提督「……………………ああ」 13 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/11/22(金) 02:33:19.01 ID:umsHAw1bo  カチン──。  硬いボタンを押す音が聴こえた。それは、腕の中で微笑んでいる少女の終わりを告げる音──。 「……消え始めましたね」  チラリと自分の足を見ながら、寂しそうに彼女はそう言った。  白く細く長い綺麗な足は、既に足首から先が消えてしまい、膝小僧は薄っすらと半透明になっている。  その進行は止まる事をしらないように、ゆっくりと蝕んでいた。 「提督」  呼ばれたので金剛の顔へ向くと、彼女は笑顔を作っていた。  痛々しかった。彼女を解放を止めたい衝動にも駆られた。  だが、それは許されない。ここまで来て、最後の最後で足を止めるのは許されない。 「どうした?」  だから、私も無理矢理に微笑んで彼女の透き通った灰色の瞳を見詰めた。  その瞬間、悲しそうな顔をされる。どうやら彼女にはお見通しらしい。  けれど、すぐにその表情を痛々しい笑顔に変え、彼女は言った。 「ありがとうございました」  ズキン、と胸に痛みが走る。  言って欲しくなかった言葉。お別れを告げる、胸に刺さる言葉だった。  それは少女も同じなのだろう。目の端に、宝石のように光る粒が姿を現した。 「私、最高に幸せです」  また、胸に痛みが走った。今度はさっきの比ではない。  彼女が楽しかったであろう出来事──。  彼女が嬉しかったであろう出来事──。  彼女が幸せであったろう出来事──。  思い当たる節が、いくらでも思い浮かんだ。  そのどれも、もう与える事は出来ない。貰う事すら出来ない。  彼女の身体は、もう腰の辺りまで消えてしまっている。残された時間は、あと僅かしかない。 「……………………」  何か言わないと──。  そう思えば思う程、頭が働いてくれない。  飴玉が詰まったビンを逆さにしても出ないように、言いたい事や伝えたい事が、ここぞという時に出てきてくれない。 「…………」  ほら、彼女は待ってくれている。私の言葉を待っている。何をボーっとしているんだ早くしろ。  気持ちは焦るばかりで、逆に言葉は全く出てきてくれない。  いつも偉そうにしている癖に、自分がこういう状況に陥ったら何も出来ないのか。 「……金剛」  やっと出てきた言葉は、彼女の名前だった。  陳腐なんてものですらない。まだ三流芝居の言葉の方が遥かに気の利いた言葉を紡げている。  なのに、もう胸の辺りまで消えてしまっている少女は、笑顔になってくれた。溜まっていた涙は、決壊したかのように溢れている。  ……なぜだ。なぜこんな一言でそんなに喜んでくれるんだ。 「最後が、提督の腕の中で良かった」  もう、首も半分以上透けてしまっている。何をすれば良いのか分からない。何と声を掛けてやれば良いのか分からない。  そんなどうしようもない馬鹿な私──。そんな馬鹿な私にも、一つだけ思い浮かんだ事があった。 「────っ!」  許可も、前触れも、何もしなかった。そのせいか、金剛はとても驚いた顔をしている。  奪うような、触れるだけの軽いキス──。  私の知っている中で、彼女が一番幸せそうにしていたのがキスだった。そんな安直な考えで、私は唇で唇に触れた。 「──あはっ」  さっきよりも輝かしい笑顔で、彼女は笑ってくれた。 14 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/22(金) 02:33:46.69 ID:umsHAw1bo 「ありがとうございます、提督──」  その笑顔も、もうほとんど見えやしない。ハッキリと見える部分は、もう……無い。  だが、私の愛した少女が心の底から喜んでくれているのだけは分かった。  そして──  ──さよなら。  その言葉を最後に、腕の重みが無くなった。  手を握っても、腕を動かしても、何も抵抗が無い。 「……金剛」  …………………………………………。  愛した少女は、何も答えない。答える事すらも、出来ない。 「────っ!!」  胸が痛む。  耐えれない程、痛い。  その場で膝を突く。固く握った拳を振り上げ、そのままコンクリートの床を殴った。  殴った拳が痛い。だが、胸の痛みと比べるとなんでもない。  目の前が滲む。視界がぼやける。  守れなかった悔しさが、心を占めていた。 「……提督」  救護妖精が話し掛けてきた。 「金剛、助けてあげな」  ぼやけて良く分からないが、どうやら『金剛』の方へ指を差しているらしい。  フラフラと、その言葉に従って『金剛』の入っているカプセルの前に立った。  培養液は排出され、カプセルは既に開いている。中で倒れている『金剛』を、少しだけ見詰めた。  けれど、培養液を吐かす為にすぐ処置に入る。  吐かすのはもう慣れた。半ば作業的にその処置をし始めた──のだが。 「ァハッ! ケホッ──!!」  少し吐かせた所で、彼女は培養液を自ら吐き出した。  それに少しだけ驚いたが、すぐに背中を擦った。 「ぁ……う…………」  粗方吐き終わったのか、弱々しい呼吸と共に『金剛』は目を薄っすらと開いた。  金剛よりも長い髪を掻き分け、目に髪が入らないようにした。  まったく同じ顔で、まったく同じ色の髪で、まったく同じ灰色の瞳の少女が、私を捉える。  虚ろな目をしているのに、私をしっかりと捉えていた。  何かを伝えようとしているようにも見える。  なので、少しだけ耳を近付けてみた。 「…………………………て、いと……く…………」  その半開きの口から、信じられない言葉が出てきた。 「────金剛?」  少女の名で呼び掛ける。  けれど、さっきの一言で力尽きたか、少女は瞼を落とした。  細く、小さな呼吸で、彼女の身体は上下している。 「提督? どうしたのさ」  救護妖精が聞いてきたが、彼はそれに反応出来なかった。 「金剛……」  呼び掛けても、彼女は反応しない。  しかし、彼の中で一つの光が見え始めた。  ──希望という名の、一筋の光が。 …………………… ………… …… 44 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/22(金) 22:15:40.69 ID:umsHAw1bo 金剛「…………」 提督「…………」 金剛「……あの」 提督「なんだ?」 金剛「…………ここ、どこデスか。それに、なぜ私はこんな格好なのデスか」 金剛「──貴方は、誰デスか」 提督「────」 金剛「な、なんですか?」 提督「……いや、なんでもない。救護妖精、説明を頼んだ」 救護妖精「え? ちょ、ちょっと提督!」 提督「私は、この間の子達を連れて帰る」 救護妖精「待ってってば! どうしたのさいきなり!!」 提督「…………察してくれ」 救護妖精「だから、分かんないんだってば!」 提督「頼む……」 救護妖精「…………。ああもう……分かったよ」 提督「……すまない」ツカツカ ガチャ──パタン 金剛「……どうしたのですか、あの人」 救護妖精「まあ、なんとなくは分かるんだけど、予想とは違ってたというかなんというか」 那智「同感だ。私も手厚く介護すると思っていたのだが……」 救護妖精「どうしたんだろうね……一体……」 金剛「…………?」 ……………………。 45 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/22(金) 22:16:54.59 ID:umsHAw1bo 金剛「……………………」 救護妖精「まあ、信用できないよね」 金剛「……可能性はある、という程度で留めていても良いデスか?」 那智「構わん。私も最初は信じていなかった」 金剛「貴女はどうして信じたのデスか?」 那智「最初は……まあ、負けたからというのがあったが、あの方の行動を見ていれば信用に足る人物だと思えた。それだけだ」 金剛「負けたって何をしたのですか……」 那智「勝手に外に出るなと言われたので反抗した。それを実力で捻じ伏せられただけだ」 金剛「捻じ伏せ……」 那智「攻撃を全て受け流され、頭を撫でられた」 金剛「……ホワッツ?」 那智「そのままの意味だ。その後、もう一悶着あったが……あれは屈辱だった」 救護妖精「それから急に大人しくなったよねぇ。借りてきた猫みたいにさー。最初から解放された内の一人だし、提督の事が気に入ったんだねぇ」 那智「……八つ裂きにされたいか?」 救護妖精「おーこわ」 ガチャ── 提督「では、私はこの子達を連れて行く」 雷「鎮守府、楽しみね!」 島風「ここよりももっと広い場所でかけっこ出来るなんて嬉しいよ!」 暁「貴女、本当にそればっかりね……」 電「元気の証拠なのです」 響「私も楽しみにしているよ」 ──パタン 提督「那智。利根と一緒に…………その子を頼む」 那智「了解しました」ピシッ 提督「敬礼は必要無いといつも言っているだろう」 那智「……すみません」 提督「癖なのは分かるが、私はお前の上司でもなければお前は私の部下でもない。あまり人に敬礼はしない方が良い」 那智「はい……」 46 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/22(金) 22:17:45.76 ID:umsHAw1bo 提督「……では、車を取りに行く。お前達はここで少しだけ待っててくれ」 雷「はーい! 待ってるわね、提督!」 電「いってらっしゃいなのです、提督さん」 ツカツカツカ──…………。 那智「利根はどうしている?」 島風「爆睡してるわよ。提督はいち……いちべき? …………チラッて見るだけだったね」 那智「またか……。まったく警戒心の無い……。それと、それは一瞥というんだ」 島風「いちべつ、ね! ありがとう!」 響「つまり、利根さんはそれだけ那智さんの事を信頼してるって事じゃないのかな」 那智「私には怠けているようにしか見えないな」 雷「そう? 結構途中で起きてるわよ、利根さんって」 那智「ほう?」 雷「私達が音を立てたら一瞬だけ起きて、すぐに寝てるわ!」 那智「……ふん。そういう事か。サボるのが上手い奴め」 暁「それって褒めてるの?」 那智「半分だけな」 暁「ふーん……?」 救護妖精(さて、そろそろスープが出来る頃かな) ……………………。 47 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2013/11/22(金) 22:19:17.76 ID:umsHAw1bo 救護妖精「いやぁ、それにしても短かったようで長い生活だったねぇ」 那智「まったくな。だが、次でもうここでの生活はしなくて良くなる」 金剛「……あの」 那智「なんだ」 金剛「訊きそびれていたのデスガ、あの人が私を避けるようにした理由って何なのでショウか」 那智「……………………」 救護妖精「あー、うん……まあ、ねえ?」 那智「私に振るな」 救護妖精「えー……私が言わないといけないのー……?」 那智「私はほとんど知らない。後はお前しか居ないだろう」 救護妖精「でもねぇ……」 金剛「無理にとは言いまセン。どうしてもダメでしたら諦めマス」 救護妖精「うーん……まあ、説明は私に一任されてるし、いっかなぁ」 那智「正直に言うと、私も気になってる。ある程度の予測は付くが……」 救護妖精「んー……なら、提督には言わないでよ? きっと気にしちゃうから」 金剛「分かりまシタ」 救護妖精「んっとね。まずなんだけど、さっき言った艦娘っていうの憶えてるよね?」 金剛「はい」 救護妖精「で、各提督は艦娘を一人だけ秘書に就けるんだけどさ。提督の秘書が、艦娘の金剛だったんだよね」 金剛「私……ですか」 救護妖精「違うよ。貴女とは似て非なる存在。……まあ、色々あって、その秘書が提督に恋しちゃってねぇ」 金剛「え」 那智「…………」 48 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2013/11/22(金) 22:19:45.92 ID:umsHAw1bo 救護妖精「そのアタックの末、提督と晴れて赤い糸で結ばれました。──でも、現実は残酷でねぇ。秘書の艦娘は貴女を解放する時に消えたのさ」 金剛「私を……解放したカラ?」 救護妖精「それが二人の望みでもあったみたいだしね」 金剛「望み……? どうしてデスか。せっかく結ばれたのに、どうして離れ離れになる事を望んだのデスか?」 救護妖精「それは私には分からないね。そこまで詳しい事は知らない。……ただ、やらないといけない事だったのは確かだよ」 金剛「…………」 救護妖精「貴女を解放しないと、沢山の艦娘の金剛が苦しい思いをする。だからじゃないかな」 金剛「……………………」 金剛「……他に、方法は無かったのデスか?」 救護妖精「無いね。あったらそれをやってるよ」 金剛「そう、ですか……」 救護妖精「あ、自分のせいだーとか思っちゃダメだかんね。これは仕方の無い事だったんだからさ」 金剛「…………」 救護妖精「……まあ、それだけは頭に置いといてよ。あたしも眠いから寝るねー。あそこにベッドがあるから、好きに使っちゃってー」テテテ ガチャ──パタン 金剛「…………」 那智「…………」 金剛「…………」 那智「……どうした。ベッドで寝ないのか?」 金剛「いえ……。すみません、寝ますネ……」トコトコ 那智「……………………」 …………………… ………… …… 61 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/24(日) 22:09:07.04 ID:w8HpxKyWo 金剛「…………」ボー 利根「うん? そんなに出口を見てどうした。出たいのならばもう少し我慢せい」 金剛「あ……いえ、あの人が中々来ないなぁと思いまシテ」 利根「今日は恐らく来ぬぞ?」 金剛「え? どうしてデスか」 利根「毎日来るという訳ではないからのう。この総司令部に用事がある時だけ来ているようじゃ」 金剛「そうデスか……」 利根「どうした? 気になるのか?」 金剛「……少し。私はまったく身に覚えのない事ですケド、あの人はそうではありませんよネ?」 利根「我輩も話を聞いただけでよくは知らん。じゃが、那智の奴が言うには恋仲らしいのう」 金剛「…………」 利根「金剛。お主、なぜ気になっておる?」 金剛「そりゃ……元は恋人でシタ、と言われて何も思わないなんて事はないデス」 利根「ふむ。好奇心か」 金剛「それとはまた違いマス。……でも、なんて言えば良いのか分かりまセン。寂しいような、悲しいような……とにかく、良く分からないデス」 利根(ふぅむ……。流石にまったく検討が付かん。どういうモノなのじゃ?) 金剛「あと……なんだか可哀想と思いまシタ」 利根「可哀想?」 金剛「ハイ。相思相愛のまま離れ離れになってしまうナンテ、可哀想デス……」 利根「…………」 金剛「それでしたら私は──」 利根「それはやってはイカン」 金剛「…………」 利根「お互い傷付くだけで誰のためにもならん。お主がどうしてそう思ったのかは知らんが、それだけは止めておいた方が良い」 金剛「……………………」 利根「…………」 金剛「ハイ……」 利根「まったく……」 ……………………。 63 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/24(日) 22:26:30.26 ID:w8HpxKyWo 金剛「…………」ジー 那智「……飽きないのか?」 金剛「一応は……」 那智「ふむ……」 金剛「…………」 那智「…………」 金剛「…………」 那智「……少し訊いても良いか」 金剛「? なんでショウか」 那智「お前は、なぜそんなにあの人が気になっているんだ。ただ単に恋人だったからと聞いただけの反応だとは思えないが」 金剛「…………」 那智「それとも、恋人になりたいと思っているのか?」 金剛「………………いえ……」 那智「ハッキリしないな。もっと自分の考えを持っている奴だと思っていたのだが」 金剛「……私も、こんな気持ちは初めてデス。自分の事なのに自分の事が分からないナンテ……」 那智「……人は自分の事は良く分かっていない、という言葉もある。それでえはないのか?」 金剛「…………分からないデス」 那智「……そうか」 金剛「──え?」 那智「ん、どうした」 金剛「…………」ジッ 那智「……なんだ?」 金剛「……………………いえ。ごめんなサイ……なんでもありまセン……」 金剛「…………」ジー 那智(また出口を……。本当によく待てるな) 那智(……ずっとここで見張りと世話をしている私や利根も似たようなものか?) 金剛「…………」 金剛(あの人の事を考えると、とても不思議な気持ちになります。可哀想で、怖くて、優しそうで、悲しそうで──。沢山の感情がグルグル掻き混ざってます……) 金剛(私はあの人の事を知らない。なのに、なぜこんな気持ちになるのでしょうか……) 金剛(…………やっぱり分かりません。私はあの人の事を何も知らないのですから当たり前ですけど……) 金剛「はぁ……」 那智「…………」ジッ 金剛(恋人、ですか……) 那智「……………………」 …………………… ………… …… 64 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/24(日) 22:34:36.33 ID:w8HpxKyWo 金剛「!」 利根「おお、提督殿。──なんじゃ、その空箱は?」 救護妖精「提督、終わったの?」 提督「ご苦労、二人共。──この空箱は後で説明する。そして、残念だがまだ終わっていない。海軍から身を引けるのはもう少し先になりそうだ」 救護妖精「そっか。頑張ってね」 利根「我輩達にも手伝える事があったらなんでも言ってくれ。出来る限り協力しようぞ」 提督「ありがたい。頼らせてもらうよ」 金剛「あ、あの!」 提督「──なにかね」 金剛「私も、手伝いマス!」 提督「そうか。その時は頼む」 金剛「────ぁ」 提督「なにかね」 金剛「い、いえ……何も、ありまセン……」 提督「……そうか」 金剛「ハイ……」 提督「さて、この施設の破壊の話を──」 ガチャ──パタン 那智「提督殿、来られたのですね」 提督「目を覚ませてしまったか。すまない、那智」 那智「いえ、大丈夫です。──それよりも、この施設を破壊すると仰っていましたが、どのように?」 提督「焼ける物を全て焼く。機械は文字通り破壊してしまえば良いだろう」 救護妖精「うげ……。ホルマリン漬けにしてるアレも焼くの……?」 提督「勿論だ。下手な処分をして再開されると困る」 救護妖精「まあ、そうだよねぇ……」 提督「今回は書類を運ぼう。この空き箱に詰めてくれ」 ……………………。 65 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/24(日) 22:35:08.07 ID:w8HpxKyWo 那智「……む」 那智(……困った。重くて不安定になりそうだな……) 利根「どうした那智。重くて持てぬと申すか?」 那智「馬鹿にするな。この程度、何も問題など、無い」フラッ 利根「……無理はせん方がよいぞ?」 那智「無理などしていない」フラッ 提督「那智、その箱を下ろせ」 那智「…………」 提督「…………」ジッ 那智「……分かった」ドサッ 提督「よろしい。代わりにこっちの箱を持ってくれ。──運ぶぞ」ヒョイ 那智「……………………むぅ」ヒョイ 利根「うむうむ。素直が一番じゃ」 那智「うるさい」 利根「那智は損をする性格じゃのう」 那智「余計なお世話だ」 利根「もっと素直になれば、提督殿も応えてくれよう」 那智「…………………………………………」 那智「……考えておく」 利根(お、少し素直になりおった) 提督「さあ、運ぶぞ」スタスタ 金剛「…………」トコトコ 金剛(一緒に作業をしているのに……物凄く疎外感がします……) 金剛(私……本当にここに居て良いのでしょうか……?) ……………………。 72 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/11/26(火) 04:51:28.42 ID:xHsj0Pkso 提督(満月の明るさに加えて無風か。これは綺麗に燃えてくれそうだ) 金剛「…………」ソッ 金剛「あの──」 提督「なにかね」 金剛「ひゃぅ!? きき、気付いていたのデスか!?」 提督「ああ。──それよりも、何か用か」 金剛「あ、えっと……何かお手伝い出来ないかな、と思いマシて……」 提督「特に無い。今日は燃やして消えるのを待つだけだ」 金剛「…………あの、見ていても……良いデスか?」 提督「寝なさい。朝に起きれなくなるだろう」 金剛「が、頑張って起きますカラ!」 提督「寝不足の状態で妹達の前に出るつもりか?」 金剛「う……」 提督「心配させたいというのならば話は別だが、その場合は無理矢理にでも寝付かせる」 金剛「ど、どうやってデスか?」 提督「…………」ジッ 金剛「──っ」ビクッ 提督「言わなければ分からないのならば、言うが」 金剛「…………」ビクビク 提督「……………………」 金剛「ぅ……」ビクビク 提督「…………」 73 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/26(火) 04:55:32.40 ID:xHsj0Pkso 提督「……すまない。怖がらせてしまった」フイッ 金剛「…………?」 金剛(今……後悔したような顔をしてました……?) 提督「寝なさい」 金剛「……あの」 提督「…………」 金剛「…………」 提督「……寝なさい」 金剛「…………はい」 提督「…………」 金剛「…………」 金剛「……ごめんなさい」 トボトボ……。 金剛「……あの」 提督「なにかね」 金剛「…………おやすみなさい」 提督「……ああ、おやすみ」 提督「……………………」 シュッ──ボッ── 提督「…………」 ……チリッ 提督「…………」 チリチリッ── 提督(さすが古びかけた本。すぐに燃えてくれる) 金剛「…………」ソッ 提督(……それにしても、物陰に隠れているようだが、どうして金剛は帰らない。大方、救護妖精に私と『金剛』の事情を聞いたのが原因だろうが……) 提督(……一度、言うべきか。お前の気にする事ではない、と……) 提督(…………そうしよう。その方が良い) …………………… ………… …… 74 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/26(火) 05:00:05.12 ID:xHsj0Pkso カリカリ──。 提督「…………」 提督(……朝礼の時間になっても誰一人来ないのは、寂しいものだな。……いずれ慣れる、か) コンコン──。 提督「…………」 提督「入れ」 ガチャ──パタン 金剛「お、おはようございます」 提督「金剛か。なにかね」 金剛「えっと……秘書のお手伝い、したいなぁと思いまシテ……」 提督「問題無い。私一人で片付けれる」 金剛「で、でも大変ですよネ?」 提督「以前と違って前線に出る訳ではない。このくらいで丁度良い」 金剛「う……。ほ、ほら! 二人でやれば貴方もやりたい事が──」 提督「今の私にとっては、これがやりたい事だ。それに金剛、お前もやりたい事が出来なくなるのではないのか」 金剛「……これが、私のやりたい事デス」 提督「妹達を放っておいてまでか」 金剛「う……」 提督「家族は大事にしろ。良いな」 金剛「……はい」 ガチャ──パタン 提督「…………はぁ」 ……………………。 76 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/26(火) 05:06:18.08 ID:xHsj0Pkso コンコン──。 提督(また金剛か?) 提督「入れ」 ガチャ──パタン 瑞鶴「やっほー。遊びに来たわよ」 提督「私は忙しいのだが」 瑞鶴「なら手伝うわ。良いでしょ?」 提督「翔鶴や大和はどうした。仲が良いと思っていたのだが」 瑞鶴「二人は寝てるわね。私達、夜遅くまでお話してたもん」 提督「お前は寝なくて良いのか?」 瑞鶴「なんか目が覚めちゃってね。だからここに来たの」 提督「……何も手伝える事がない、と言ったらどうする」 瑞鶴「じゃあここに居させて? 仕事を見てる姿が見たいから」 提督「面白いか?」 瑞鶴「全然。──だけど、そうしたいと思ったの」 提督「……好きにするが良い」 瑞鶴「はーい。ソファ借りるわね」ポスッ 提督「…………」カリカリ 瑞鶴「ねー、何してるの?」 提督「仕事だ」 瑞鶴「そんなの見たら分かるわよ。どんなお仕事って事よ」 提督「旧帝国海軍が使っていた艦船に関する報告書の確認と、追加の指示の確認だ」 瑞鶴「良く分かんない」 提督「……そうか」 瑞鶴「あ、今の言葉もう一回言って?」 提督「…………そうか」 瑞鶴「なんだろ。それ懐かしい気持ちがする」 提督「……瑞鶴」 瑞鶴「なに?」 提督「紅茶を淹れてみないか?」 瑞鶴「紅茶? 淹れた事なんて無いわよ?」 提督「ダメか」 瑞鶴「うーん……まあ良いけど……」 ……………………。 78 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/26(火) 05:11:03.96 ID:xHsj0Pkso 提督「…………」 瑞鶴「何これ美味しくない……。だから言ったでしょ? 淹れた事が無いって」 提督「すまなかった」 瑞鶴「なんでいきなり紅茶を淹れろって言ったのよ。いつも紅茶でも飲んでたの?」 提督「そんな所だ」 瑞鶴「ふぅん……」 提督「…………」ズズッ 瑞鶴「……でも、飲んでくれるんだ」 提督「紅茶を飲みながらの方が捗るからな」 瑞鶴「こんなに不味くても?」 提督「たまには良いだろう」 瑞鶴「……ふーん」 提督「どうした」 瑞鶴「なんでもないわ。じゃあ、ちょっと寝るわねー」 提督「……そこで寝るのか」 瑞鶴「そうだけど……。ベッドでも貸してくれるの?」 提督「そのつもりだ。ソファは寝心地が良くないだろう」 瑞鶴「……ちょっとだけ驚いた。優しいのね」 提督「優しくはないが、冷たい血を流しているとは思っていない」 瑞鶴「私が優しいって思ってるだけよ。勝手にそう思うくらいは良いでしょ?」 提督「……そうだな」 瑞鶴「──それじゃ、ベッドありがとね。眠たくなったら隣に入ってきても良いからねー」モゾモゾ 提督「…………」 瑞鶴「……少しくらい反応しても良いんじゃないかしら。女としての自信が無くなっちゃう」 提督「そんな事にはならないから安心して寝ると良い」 瑞鶴「つまんない返答……」 提督「…………」 瑞鶴「おやすみなさーい」 提督「おやすみ」 提督(……そんな都合の良い展開なんて無い。諦めるのが一番だ……) ……………………。 79 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/26(火) 05:17:40.48 ID:xHsj0Pkso 瑞鶴「ん……」 提督「…………」カリカリ 瑞鶴「くぁ……。おはよー……」クシクシ 提督「起きたか」 瑞鶴「今何時ー……?」 提督「十二時だ」 瑞鶴「そろそろお昼ねー。一緒に食べる?」 提督「キリが良い所までやってから行く。先に行っておくが良い」 瑞鶴「もー……仕事熱心ね」 提督「悪いか」 瑞鶴「ううん。良い事だと思うわよ。じゃあ、私待ってるわね」 提督「…………」 瑞鶴「悪い?」 提督「……いや、翔鶴や大和を放っておくのかと思ってな」 瑞鶴「あー……。ちょっと様子見てくるわね」 提督「ああ」 ……………………。 80 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/26(火) 05:28:49.22 ID:xHsj0Pkso コンコン──。 提督「入れ」 ガチャ──パタン 瑞鶴「ただいまー」 金剛「ハ、ハーイ……」 提督「……………………」 瑞鶴「あ、何よその顔。帰ってきたのがそんなにおかしい?」 提督「それもあるが、一人増えているように見えるのだが」 瑞鶴「うん。ここのドアの前で何か物凄く悩んでたの」 提督「……そうか。そして、何か用かね」 金剛「え、えっと……」 提督「…………」 金剛「い、一緒にご飯なんてどうでショウか」 提督「……キリの良い所になったら食堂へ行くつもりだ。どれくらい掛かるか分からん」 金剛「そう、デスか……」 瑞鶴「もう。それくらい良いじゃないの。ほらほら、行くわよ」グイッ 提督「あ、こら!」 瑞鶴「ちゃんと栄養を取らないと仕事も出来ないわよ。ほら立った立った」グイグイ 提督「…………」 金剛「ぁ……」 瑞鶴「ん、どうしたの二人共?」 81 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/26(火) 05:38:43.99 ID:xHsj0Pkso 提督「……いや、なんでもない…………」 金剛「わ、私もデス」 瑞鶴「どうもないって顔じゃないじゃない。ほら、言いたい事があるのなら言う。それで少しはスッキリするでしょ?」 提督「…………」 金剛「…………」 瑞鶴「ほら、まずは貴方から」 提督「……………………懐かしくてな」 瑞鶴「明らかに懐かしいじゃなくて悲しそうな顔だったじゃないの……。本当にそうなの?」 提督「ああ……」 瑞鶴「ふーん……? 金剛さんは?」 金剛「私もデス……。それと、なぜかは分からないのデスが、何か取られたような気がしまシタ……」 瑞鶴「取られた……? 金剛さんも良く分からない事を言うのねぇ……」 瑞鶴「で、さ。ちょっと訊きたい事が出来たんだけど良いかしら」 提督「内容による。まずは言ってみてくれ」 瑞鶴「さっきさ、悲しい顔をする一瞬だけ目に光が宿ってたけど、それも懐かしくてなの?」 提督「自覚していないから何とも言えん」 瑞鶴「そっか。何があったのか分からないけど、何かあったら言ってね? 力になるから」 提督「……憶えておく」 瑞鶴「うんうん。──それじゃあ、食堂に行きましょ!」 ……………………。 82 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/26(火) 05:47:11.03 ID:xHsj0Pkso コンコン──。 提督「入れ」 ガチャ──パタン 雷「提督さん! 遊びに来たわよ!」 電「あの、もしかしてお忙しいですか?」 島風「私、かけっこしたいな!」 暁「提督さん一位、島風二位の独占順位になるのが目に見えてるわよ」 響「提督、良いかな」 提督「かけっこは出来ないが、雑談には付き合える。それで良いか?」 雷「勿論よ!」 島風「私も異議なーし!」 提督「なら、紅茶を淹れてくる。少し待っていなさい」 ……………………。 電「美味しいのです。苦味と甘みが一緒になって、チョコレートみたいなのです」コクコク 響「うん。甘いお菓子と一緒だと、紅茶に砂糖は入れないくらいが丁度良いね」カリカリ 暁「そう? どっちも甘い方が美味しいわよ」コクコク 島風「私も紅茶に砂糖を入れない方が良いかなー」カリッ 雷「暁だけお子様ね!」コクコク 暁「お子様言うなぁ!」 提督「楽しみ方は人それぞれだろう。気にする事はない」ズズッ 暁「ほら! 提督さんもこう言ってるじゃない!」 響「ん、ごめんよ。──ところで、提督はどうしてお菓子に手を付けないんだい?」 提督「私は甘い物が苦手だからな」 雷「好き嫌いは良くないわよ?」 提督「いや、私の身体は糖分を受け付けないらしい。一種のアレルギーだと思ってくれ」 電「大変なのです……」 提督「もう慣れたよ。だから、私はあまり運動してはいけないんだ」 響「だから最初に会った時、許可が必要って言ってたんだね」 提督「そういう事だ」 83 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/26(火) 05:58:03.20 ID:xHsj0Pkso 島風「んー……じゃあかけっこはいいや」 提督「許可が下りたら構わん」 島風「よく分かんないけど、提督にとって運動するのって危ないんでしょ? だったら私はかけっこしたくないな」 提督「……優しいな、島風」 島風「そんな事ないよー。私は人を危ない目に合わせたくないだけだもん」 提督「そう言えるのは立派だ」 島風「んー…………ありがと?」 提督「うむ」 雷「でも、不思議ね? お砂糖を摂っちゃダメだなんて」 提督「世の中には水がアレルギーの人間も居るらしい。そう考えたら糖分が受け付けられないというのも不思議ではなかろう」 電「お水がダメな人が居るのですか!?」 響「それは……すぐに死んでしまうんじゃないのかな」 提督「あくまで聞いた話だ。真実かどうかは知らない。だが、その人は果汁百パーセントのジュースか牛乳を一日でコップ三杯までしか飲んではいけないらしい」 暁「たったの三杯だなんて……」 島風「私は絶対に耐えれない自信がある」 雷「大抵の人はそうだと思うわよ?」 提督「世の中には色々な人が居るという事だ」 電「私も茄子が苦手なのはアレルギーだったりは……」 提督「ないな」 響「ないね」 雷「ないわね!」 暁「好き嫌いよね」 島風「好き嫌いね」 電「はわわわわ……。皆イジワルなのです……」 提督「茄子が苦手な子でも美味しく食べられるように間宮に伝えておく。好き嫌いは克服しような、電」 電「うぅ……はいなのです……」 雷「──あら。紅茶が切れちゃったわ」 提督「新しく淹れてこよう。……まだ飲みたい子は居るか?」 全員「はーい!」 提督「全員だな。では今度は少し多めに作ってこよう」 ……………………。 108 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/26(火) 23:49:43.69 ID:xHsj0Pkso コンコン──。 提督「入れ」 ガチャ──パタン 金剛「お邪魔しマス……」 提督「金剛か。なにかね」 金剛「あの、やっぱりお手伝いをしようと思って来まシタ」 提督「妹達はどうした」 金剛「事情を話したら三人共納得してくれまシタ。今度は大丈夫デス」 提督「……そうか」 金剛「あの……ダメ、デスか?」 提督「…………」 金剛「…………」 提督「……なら、少し話し相手になってくれ。休憩をしようと思っていた所だ」 金剛「──はいっ!」 提督「金剛、紅茶は淹れられるか?」 金剛「得意デス! 提督さんは紅茶がお好きなのデスか?」 提督「ああ。執務中には紅茶を欠かさない程にな」 金剛「ワオ……相当ですネ……。──すぐに淹れてきマス! 少し待ってて下サイ!」 提督「期待しているよ」 ……………………。 109 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/11/27(水) 00:14:09.76 ID:VC3RhkFKo 金剛「! この茶葉、質の良い茶葉デスね」コクコク 提督「ああ。紅茶に少し縁があってな。茶葉は出来るだけ良い物を使うようにしている」ズズッ 金剛「このクッキーも美味しいデス。甘みが無いのに、なぜかとっても優しい味がします」サクサク 提督「……まあ、な」 金剛「どうかなさいまシタか?」 提督「いや、なんでもない」 金剛「…………?」 提督「ところで、どうしてそんなにも私を気に掛ける」 金剛「…………」 金剛「それは……その……」 提督「理由にも因るが、基本的には怒らないから安心したまえ」 金剛「ハイ……。えっと、その……ですね? なぜか気になるというか……放っておけないというか……。そんな感覚がするのデス」 提督「……ふむ」 金剛「救護妖精からも少しお話を聞きまシタ。ケド、それだけが理由ではありまセン。もっと別の、良く分からない何かが私を動かしていマス」 提督「良く分からない何か、か」 金剛「ハイ……。残念ながら、私にはそれが何なのか分かりまセン……。漠然としていて、自分でも不思議なのデス」 提督「……そうか」 金剛「予想は……付きますケド……」チラ 111 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/27(水) 00:36:48.49 ID:VC3RhkFKo 提督「それは本当の気持ちではない。人は異常な状況下では相手の言葉を信用しやすい。それ以外、情報が無いからな。お前も恐らくそれが原因だろう」 金剛「そう、なのでしょうかネ……」 提督「そういうものだ。だから、艦娘の金剛が私と特別な関係であった事は気にしない方が良い」 金剛「……貴方は、それで良いのデスか?」 提督「覚悟の上で解放した。受け入れている」 金剛「…………」 提督「だから、私の事を気に掛ける必要はない。お前はお前で好きなように生きろ」 金剛「私の好きなように……」 提督「そうだ。お前と私の関係は、少しの間だけ一緒の鎮守府に居た……それだけだ」 金剛「それは違います!」 金剛「私は貴方が居なければ、ずっとあの場所であのままの状態でした。貴方は、私にとって恩人です」 提督「だが、新しい生活を始めれば、自然と離れていく。私も少しばかり疲れたからな。ひっそりと暮らしたいのだよ」 金剛「……そこに、私が居てはいけませんか?」 提督「お前が妹達を放っておけるとは思えんな」 金剛「ぅ……」 提督「そこの所はどうする気だ」 金剛「……説得しようと思っていました」 提督「ほう。説得か。残された者は悲しむぞ」 金剛「…………」 112 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/27(水) 00:58:14.25 ID:VC3RhkFKo 提督「そもそも、なぜ私に拘る? お前にとっての私は変態提督程度のものだと思っていたのだが」 金剛「だって……気になるのです……」 提督「気になる?」 金剛「なぜかは分かりません……。でも、私は誰かに言われたからではなく、私自身が貴方を気にしています」 金剛「根拠なんて、無くても良いじゃないですか……。私だってこんな気持ちになるのは初めてです……。そう思うのは、ダメですか……?」 提督「…………ダメではない。が、振り回されるなよ」 金剛「……はい!」 金剛「────あ……」 提督「なんだ?」 金剛「いえ……私は、自分の好きなようにすれば良いのですよね?」 提督「そうだ。自分の好きな事をして良い」 金剛「なら、今の私のやりたい事を手伝って貰って良いでしょうか」 提督「内容に因る。まずは言ってみなさい」 金剛「私は、貴方の秘書と同じ事をしたいです」 提督「…………なぜだ?」 金剛「この気持ちを確かめる為です。本物なのか、それとも人の言葉に惑わされたものなのか──」 金剛「──愛情に似ている、この気持ちを」 提督「……好きにすれば良い」 金剛「では──!」 提督「だが、私は非協力的に接する。何かをするのは自由だ。それにも付き合おう。だが、私から何か助言をする事はないと思え」 113 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/27(水) 01:19:38.13 ID:VC3RhkFKo 金剛「充分です!! ありがとうございます!」 提督「……礼を言われるような事をしたつもりはないのだがな」 金剛「私にとっては、それだけでも有り難い事なのです」ニコニコ 提督「…………そうか」 金剛「お仕事はまだ残っていますよね? 新しく紅茶を淹れてきます!」スッ 提督「……………………」 金剛「あ……ダメでしたか?」 提督「……いや、構わない」 金剛「やった! では、少々お待ち下さいね!」タタッ 提督(……金剛は金剛、という事か。あの明るさにはどうしても押されてしまうな……) ……………………。 金剛「♪」ニコニコ 提督「…………」ズズッ 提督「……………………」ジッ 金剛「あ、あれ……? お口に合いませんでシタか?」 提督「金剛、そっちの紅茶を飲ませてみろ」 金剛「え……」 提督「……やっぱりな。お前、自分のは出涸らしを使っているだろう」 金剛「な、なぜ分かったのですか……?」 提督「なんとなく、な」 金剛「うぅ……」 提督「これからは使えなくなるまで出涸らしを使え。無論、私のもだ」 金剛「ハイ……」 提督「分かれば宜しい」カリカリ 金剛「…………」 提督「…………」カリカリ 金剛「…………」ウズウズ 115 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/27(水) 01:39:08.02 ID:VC3RhkFKo 提督「……なにかね」 金剛「私も何か手伝いたいデス」 提督「そうか。何が出来る」 金剛「え!? え、えーっと……………………書類整理、デスかね……?」 提督「…………」 金剛「ほ、他に何か出来そうな事があったら仰って下サイ!」 提督「……いや、それで構わない。やりたいのならば頼もう」 金剛「────! はいっ! 喜んでやらせて頂きマス!」 提督「…………」 金剛「あ、そういえば……貴方の事はなんてお呼びすれば良いでしょうか」 提督「好きにしてくれ。私は特に拘っていない」 金剛「では、テートクとお呼びしますね」 提督「……………………ああ」 金剛「やった! ──テートク、この書類ってどのように分ければ良いのデスか?」 提督「左上に担当部署の名前が書いてある。それの通りに分けてくれ」 金剛「ハイ!」 提督「…………」カリカリ 金剛「〜♪」テキパキ ……………………。 提督「ふむ。終わったか」 金剛「……あれ?」 提督「なにかね」 金剛「いえ……もっと時間が掛かるものだと思っていましたノデ……」 提督「拍子抜けした、と」 金剛「ハイ」 提督「こういう日もある。次もこうなる訳ではない」 金剛「──はいっ! 今後も頑張りマス!」 提督「……ああ、頼む」 …………………… ………… …… 144 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/11/27(水) 23:18:55.15 ID:VC3RhkFKo コンコン──。 提督「入れ」 ガチャ──パタン 瑞鶴「こんばんは、提督さん」 提督「瑞鶴か。どうした、こんな時間に」 瑞鶴「提督さんに会いに来たのよ」 提督「……そうか」 瑞鶴「迷惑だったら言ってよ? 私、バカだからそういうのよく分かんないのよ」 提督「迷惑ではないから安心しておけ」 瑞鶴「……艦娘の私も同じ事してた、とか?」 提督「…………ああ」 瑞鶴「正直なのね」 提督「故に馬鹿を見るがな」 瑞鶴「良い事じゃないの。私、そういうバカは好きよ」 提督「……そうか」 瑞鶴「あ、異性として好きって意味じゃないからね? 勘違いしちゃダメよ?」 提督「そうか」 瑞鶴「……なんで少しホッとした感じになってるのよ」 146 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/27(水) 23:39:37.61 ID:VC3RhkFKo 提督「救護妖精にお前と私の関係を訊けば分かる」 瑞鶴「救護妖精さん?」 提督「私以上にお前と私の関係を知っている。私が知らない真実も知っているだろう」 瑞鶴「ふーん……? いまいち納得できないけど、明日になったら聞いてみるわね」 瑞鶴「ところで、一緒に寝て良い?」 提督「……会いに来た理由はそれか」 瑞鶴「そうよ。ねぇねぇ、一緒に寝ましょ?」 提督「断る」 瑞鶴「女の子の誘いを断るの?」 提督「私は心に決めている者が居る。だから無理だ」 瑞鶴「へぇ……結構意外ね」 提督「私とて人だ。恋くらいする」 瑞鶴「ふぅん」ニヤニヤ 提督「……なんだ、その反応は」 瑞鶴「なんだか嬉しくなったの。なんでかは分からないんだけどね」 提督「……そうか」 瑞鶴「まあ、そういう事なら仕方がないわね。また今度の機会にするわ」 提督「機会は無いと思うがな」 瑞鶴「あら、いつ提督さんの気が変わるか分かんないじゃないの。その時が来るまでゆっくり気長に待つわ」 提督「…………」 瑞鶴「じゃあおやすみ、提督さん」 提督「……ああ、おやすみ」 ガチャ──パタン 提督「色々と、心が痛むな……」 …………………… ………… …… 147 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/27(水) 23:57:39.09 ID:VC3RhkFKo 救護妖精『ん? 艦娘の金剛の部屋?』 救護妖精『んー……まあ、なんとなく理由は分かるけど、無理はしないようにね。紙に書くよ。……ほい、これだよ』 金剛(ここが『金剛』のお部屋デスか……)スッ 金剛(──っと、今は誰も使っていないのでシタね) ガチャ──パタン 瑞鶴「──え?」 金剛「え?」 瑞鶴「どうしたのよ、こんな所に来ちゃって」 金剛「あ、あれ……?」 瑞鶴「ああ、もしかして金剛さんもこの部屋で手掛かりが見つかると思って来たの?」 金剛「そうですけど、瑞鶴もデスか?」 瑞鶴「うん。私はダメだったけどね」 金剛「そう、デスか……」 瑞鶴「そっちが金剛さんの──違った。艦娘の金剛さんが使ってたベッドよ」スッ 金剛「ありがとうございマス。──って、なぜ知っているのですか?」 瑞鶴「私、艦娘の金剛さんに会ってるのよ」 金剛「!」 瑞鶴「と言っても、私は邪魔だったみたいだけどね」 金剛「邪魔?」 148 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/28(木) 00:19:12.19 ID:ko+4+1lBo 瑞鶴「んーとね、艦娘の金剛さんは艦娘の私を大切な人のように扱ってたみたいなの。私がここに来た時、物凄く悲しそうな顔をしていたわ」 瑞鶴「そんな大切にしていた人と見た目や声がまったく同じ別人が来たら、そりゃあ悲しむわよね」 金剛「……あの」 瑞鶴「なーに?」 金剛「その人の知っている事を、教えてもらって良いでしょうか」 瑞鶴「私よりも提督さんに聞いた方が良いと思うわよ?」 金剛「テートクは教えてくれませんでした。そして、救護妖精も……。だから、今この鎮守府で頼れるのは瑞鶴しか居ないのです。お願いします」ペコッ 瑞鶴「……頭、下げないでもらって良いかしら」 金剛「ですが……」 瑞鶴「良いから」 金剛「……はい」スッ 瑞鶴「私ね、金剛さんに頭を下げられるのが嫌なの」 金剛「そうなのですか?」 瑞鶴「まあ、実は良く分かってないんだけどね。なんか嫌なの」 金剛「は、はあ……」 瑞鶴「あと……悪いんだけど私も何も知らないの。せいぜい、人が良いってくらいしか分かんなかった」 金剛「人が良い……ですか」 瑞鶴「うん。本当にそれくらい……。ごめんね、役に立てなくて」 150 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/28(木) 00:45:00.18 ID:ko+4+1lBo 金剛「いえ、何も知らなかったので嬉しいです。ありがとうございます」 瑞鶴「それより、いつまでそこで立ってるの? ベッドにでも座ったら良いじゃないの」 金剛「……いえ、私はこのベッドを使う資格はありません」 瑞鶴「?」 金剛「このベッドは……艦娘の金剛が使う為のベッドです。テートクも、私が使うのを良くは思わないでしょう」 瑞鶴「…………」 金剛「だから、私はこの部屋を見て回るだけで充分です」 瑞鶴「……ほーんと、貴女には敵わないわ」 金剛「え?」 瑞鶴「ううん。独り言よ。気にしないで」 金剛「はぁ……」 瑞鶴(敵わない、か……。なんでだろ。そう思った事も、少しだけ悲しい気持ちになったのも、どうしてかしらね) 金剛「……この本は、瑞鶴の物デスか?」 瑞鶴「ん? 違うわよ。たぶんこの部屋を使ってた人のだと思う」 金剛「そうですか。……随分と偏った種類の本ですネ?」 瑞鶴「そうなの? ──うわ。海上戦術と気遣い心配りって本ばっかり」 金剛「おまけに物凄い栞の数デス……」 瑞鶴「すっごい読み返したのね……」 151 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/28(木) 01:05:49.38 ID:ko+4+1lBo 金剛「なぜこんなに偏ってるのでショウか……」 瑞鶴「さあ……」 金剛「海上戦術は分からなくもないデスガ……」 瑞鶴「それ以外の本は本当にどうしてあるのか分からないわね……。──あ、紅茶の本がある」 金剛「あ、本当デス」 瑞鶴「……これも随分と栞が多いわね」 金剛「よっぽど勉強していたのでショウね」 瑞鶴「頑張るわねぇ……」 金剛「関心しマス」 瑞鶴「でも……」 金剛「どうしまシタ?」 瑞鶴「この本見てると……なんだか辛い」 金剛「…………?」 瑞鶴「私、この本と何か縁でもあるのかしら」 金剛「……読んでみると、何か分かる事があるかもしれまセンよ?」 瑞鶴「そうね。今度読んでみる」 金剛「私も、この海上戦術という本が気になりマス」 瑞鶴「……よくそんなものに興味が沸くわね」 金剛「自分でも不思議デス……」 …………………… ………… …… 177 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/29(金) 18:56:06.98 ID:lJQ8B2bOo 金剛「〜♪」 響「ん、金剛さん?」 金剛「ハイ、響! 今日も良い天気ネー!」 響「随分と機嫌が良いみたいだけど、何か良い事でもあったのかな」 金剛「クッキーが上手く焼けたデース! 今日のクッキーは会心の出来ネー!」 響「へぇ。金剛さんってお菓子を作れるんだね」 金剛「イエス! 紅茶のお茶請けに甘い物は欠かせまセーン」 響「あっちに向かっているという事は、提督と一緒に食べるのかな?」 金剛「そうですヨー。頭を使うお仕事をしていますから、糖分の補給は大事デース」 響「……残念なお知らせがあるんだけど、提督は甘い物が食べられない体質だよ」 金剛「──え?」 響「部屋の皆と一緒に遊びに行った時、本人から直接聞いたんだ。アレルギーみたいなものだと思ってくれって言ってたよ」 金剛「…………ありがとうございます、響! お礼にこのクッキーを差し上げます!」スッ 響「え? でもこれは……」 金剛「ノープロブレム! とても良い情報を下さいました! これはそのお礼デース!」 響「……良いのかな?」 金剛「ハイ! ──味は保障しマース。お茶請けにいつも作っていますからネー。何かクッキングしてほしいお菓子があれば何でも言って下サーイ! 私が作れる物なら何でも作るヨー!」 響「う、うん」 金剛「それでは! グッバイ響!」タタタ 響「…………」 響(無理をしてるって分かるよ、金剛さん……) ……………………。 178 名前:余ってたのに気付かなかった。ちくせう。[sage saga] 投稿日:2013/11/29(金) 18:57:02.52 ID:lJQ8B2bOo 提督「それでビタークッキーを作ってきた、と」サクッ 金剛「ハイ! 作るのは初めてですケド……どうでしょうか。お口に合いますか?」 提督「……ああ、美味いよ」 金剛「やった!」 提督(──まったく同じ味だよ、金剛…………) 金剛(あまり美味しくなかったようですね……。もっと頑張らないと……) …………………… ………… …… 182 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/29(金) 19:26:52.00 ID:lJQ8B2bOo 金剛「テートク、そろそろ二時になりますケド、お身体は大丈夫デスか?」 提督「……ふむ、もうそんな時間か。金剛、今日はもう寝なさい」 金剛「テートクが眠るのならば私も寝マス」 提督「キリの良い所まで終わらせてから寝る」 金剛「では、私も付き合いますネ」 提督「比叡や榛名、霧島が寝ずに待っているかも知れんぞ」 金剛「あの三人には事情を話していますから大丈夫デス」 提督「そうか。では命令だ。寝なさい」 金剛「な、なぜデスか!?」 提督「健康に関わる。お前が体調を崩しでもすれば、皆が心配するだろう」 金剛「う……」 提督「分かったか」 金剛「…………」 提督「…………」 金剛「……それでも、起きていマス」 提督「どうしてだ」 金剛「テートクがちゃんと寝るかの確認デス。体調管理も仕事の内デスよ」 提督「……………………」ジッ 金剛「っ」ビクッ 提督「もう一度言う。寝ろ」 金剛「あ、あの……」 提督「なんだ」 金剛「ごめんなさい……」ビクビク 184 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/29(金) 19:59:40.73 ID:lJQ8B2bOo 提督「…………」 提督「……すまない」ポン 金剛「っ!」ビクン 提督「怖がらせてしまった」ナデナデ 金剛「…………」ビクビク 金剛「…………?」 提督「良いから、今日は寝なさい。……少し、一人で考え事もしたい」スッ 金剛「……はい…………ごめんなさい……」 提督「お前は何も謝らなくて良い。私が悪い」 金剛「…………」 提督「おやすみ、金剛」 金剛「………………はい。おやすみなさい……テートク……」 ガチャ──パタン 提督「……さっさと気持ちを落ち着けたらどうなんだ、私よ。あの子には何の罪も無いだろう……」 ……………………。 金剛「…………」 カチャ──ソッ 榛名「あ、おかえりなさいませ金剛お姉様」 金剛「──え?」 霧島「待ちくたびれましたよ。さあ、一緒に寝ましょう」 比叡「私、お姉様の隣が良い!」 霧島「また一緒に寝るつもりですか? 本当に金剛お姉様が好きですよね」 185 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/29(金) 20:22:03.72 ID:lJQ8B2bOo 金剛「……なぜ三人共起きているのデスか?」 榛名「金剛お姉様を放っておいて寝るなんて出来ません」 比叡「気合入れて起きていました!」 霧島「そういう事です」 金剛「三人共……」 比叡「一番必死に眠気を抑えていたのは霧島だったよね」 霧島「ちょっ! 恥ずかしいですから言わないで下さい!」 榛名「ふふっ。顔が真っ赤」 霧島「は、榛名まで……!」 金剛「──あはっ。待たせちゃってごめんネ? 今日は四人で寝まショウ!」 比叡「本当ですか!?」 榛名「比叡お姉様、声が大きいです」 比叡「っとと……」 霧島「それよりも、順調に進んでおられますか?」 金剛「へ? 何の話デスか?」 霧島「お昼に言っていた、記憶を取り戻すという話です」 金剛「ぁー……。いまいち成果が現れないデス」 榛名「そうですか……。」 金剛(姉思いの妹を持てて、私は幸せデス) 金剛(……そうデスね。今度、テートクと一緒に寝てみまショウ。それで何か思い出せるのなら──) 金剛「…………?」 金剛(私、なぜこんなにも焦っているのでしょうか……?) …………………… ………… …… 186 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/29(金) 21:20:21.89 ID:lJQ8B2bOo コンコン──。 提督「入れ」 ガチャ──パタン 金剛「テートクー!」 提督「……どうした。やけに機嫌が良いようだが」 金剛「間宮さんがスコーンを作ってくれたのデース!」 提督「……ほう」 金剛「お仕事の手を一旦止めて、ティータイムしまショウ! ね? ね?」 提督「…………」 金剛「──あ、ダメ……でしたか?」 提督「……いや、丁度休憩に入ろうと思っていた所だ」 金剛「ナイスタイミング! 早速紅茶を淹れてきマスね!」 提督「ああ……」 ……………………。 金剛「ん〜! おいしいっ! やっぱりクリームティーは一番ネー!」 提督「本当に好きだな」 金剛「ハイ! 特にこのクロデッドクリームなんて濃厚で最高デス!」サクサク 提督「……プレーンも美味いぞ」サクサク 金剛「そうなのデスか? では……」サクサク 金剛「……………………」 提督「どうした」 金剛「い、いえ……えっと……その…………」 提督「甘みが無くて食べられない、か」 金剛「うぅ……ハイ……。まったく砂糖が入っていないスコーンをプレーンでは……」 187 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/11/29(金) 21:29:05.81 ID:lJQ8B2bOo 提督「……悪かった」 金剛「私は素直にジャムとクリームを付けて食べマス……」 金剛「……ところで、テートクは本当に砂糖がダメなのデスか?」 提督「ああ。アレルギーみたいなものと思ってくれ」 金剛「それって……身体は大丈夫なのデスか?」 提督「無事ではない。私は常に低血糖という症状と隣り合わせだ」 金剛「あ、聞いた事がありマス。目の前が緑色の世界になって倒れるのデスよね?」 提督「…………」 金剛「あれ……違いまシタか?」 提督「……いや、私の場合はそれで合っている」 金剛「?」 提督「詳しい事は救護妖精に聞くと良いだろう。病気の専門家だからな」 金剛「は、はい……」 金剛「……あの、もしテートクが低血糖で倒れたら、私がしっかりと介抱します。だから、安心していて下さい」 提督「…………」 金剛「…………?」 提督「……ああ、その時は頼むよ」 ……………………。 188 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2013/11/29(金) 21:29:34.53 ID:lJQ8B2bOo 救護妖精「低血糖時の応急手当?」 金剛「ハイ。知っているつもりデスガ、間違っていたら危ないので確認しにきまシタ」 救護妖精「ああ、提督が低血糖だからだね?」 金剛「ハイ」 救護妖精「じゃあ教えておくね。無いだろうけど、あたしが居ない時はお願いするよ」 救護妖精「意識があったらブドウ糖……はそんな簡単に手に入らないだろうから、角砂糖六個くらいを飲み込んでもら ったらそれで良いよ。でも、意識が無い場合はその角砂糖を磨り潰して、水に溶かさず歯茎と唇の相手に塗りこんでお く。十分から十五分くらい経っても回復しないようだったらもう一回同じ事をしたら良いよ」 金剛「その際は頭を少し垂れさせるべきでシタっけ」 救護妖精「一応はね。だけど、提督に対しては絶対にだよ。提督は意識が戻った時に吐く可能性があるから、喉に吐瀉 物が詰まったら危ないからね」 救護妖精「あと、なんで飲み込ませなくても良いかは知ってる?」 金剛「口の粘膜で糖分が吸収できるカラ、ですよネ?」 救護妖精「うん正解。大丈夫みたいだね」 金剛「合っていてホッとしまシタ……」 救護妖精「うろ覚えの知識で対処するのが一番危険だからね。確認するのは良い事だよ」 金剛「ありがとうございました」ペコ 金剛「──ところで、低血糖の時って緑色の世界になって倒れるのはなぜデスか?」 救護妖精「んー? 必ず緑色って訳じゃないよ」 金剛「そうなのデスか?」 救護妖精「ブドウ糖の不足によって脳に障害が出るから、その時によって変わったりもするし、個人差もあるよ。人に よっては紫っていう人も居るし何も変わらないっていう人も居るしね」 金剛「…………」 救護妖精「どしたの? なんか難しい顔しちゃって」 金剛「い、いえ。なんでもありません」 救護妖精「ふーん? ま、応急手当が終わったら必ず私を呼ぶんだよ。応急手当はあくまで緊急手段なんだからさ」 金剛「ハイ。その時はお願いしマス」 救護妖精「あいよ。他に聞きたい事はあるかい?」 金剛「今の所はありまセン。また知りたい事が出来たらお訪ねして良いデスか?」 救護妖精「良いよー」 金剛「ありがとうございます! ──では、失礼しマス」 救護妖精「またねー」 ガチャ──パタン 金剛(……緑色の世界になるって、どこで知ったのでしょうか? …………思い出せません) …………………… ………… …… 220 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/01(日) 14:59:26.21 ID:X0BSBW2Po 瑞鶴(昨日、救護妖精さんに私と提督さんの事を聞くの忘れてた……。ダメだなぁ私……なんでこんなに忘れっぽいのかしら……) コンコン──。 救護妖精「はいよー」 ガチャ──パタン 瑞鶴「失礼します」 救護妖精(んー……なんだか嫌な予感がするねぇ……) 瑞鶴「私と提督さんの事について、聞きたい事があるの」 救護妖精(予感的中。どうして嫌な予感って当たるんだろうねぇ……) 救護妖精「貴女と提督がどうしたっていうのさ」 瑞鶴「提督さんが、救護妖精さんなら知ってるって言ってたの」 救護妖精「ああ……これは言い逃れ出来ないってやつだね……。しょうがない……話すよ」 救護妖精「単刀直入に言うと、貴女と提督は兄妹なのさ」 瑞鶴「……はぁ!?」 救護妖精「ついでに言うと、大和が貴女達の母親」 瑞鶴「え、っちょ……えぇええ!?」 瑞鶴「いやいやいやいや! それっておかしいじゃないの!」 救護妖精「うん? 何がおかしいの?」 瑞鶴「だって、私はお兄ちゃんやお母さんが居るだなんて知らないわよ!? 生き別れか何かなの!?」 救護妖精「そう思って良いよ。詳しい事は言えないけど、ちゃんと血は繋がってる。それはあたしが保証する」 瑞鶴「えええぇ…………」 瑞鶴(────って、ああ……だから『異性としての好きじゃない』って言った時にホッとしてたのね) 221 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/01(日) 15:00:02.88 ID:X0BSBW2Po 救護妖精「貴女達は複雑な事情を抱えてるからねぇ……。本当はもっと複雑な関係だよ」 瑞鶴「……どんなの?」 救護妖精「艦娘の瑞鶴と提督は兄妹と知らずに片方が恋をしたり、深海棲艦となった後でも艦娘として復活したり、敵である深海棲艦と仲良くなったり、深海棲艦となった母親を殺しかけたり──」 瑞鶴「ごめん。話についていけないからもう良いわ……」 救護妖精「だと思った」 瑞鶴「……とりあえず、提督さんと私は兄妹っていうのは間違いないのよね?」 救護妖精「うん。そだよ」 瑞鶴「……翔鶴姉は?」 救護妖精「貴女のちゃんとした姉だよ」 瑞鶴「そう……良かったぁ……」 救護妖精「今までずっと姉と思っていた相手が姉じゃなかったらちょっと心にくるものがあるもんね」 瑞鶴「そうならなくて良かったわ……」 救護妖精「とりあえず話せる事はそれくらいだけど、何か質問とかある?」 瑞鶴「……今の所は無いわね。何かまた疑問に思ったら聞いて良い?」 救護妖精「良いよ。話せる事ならね」 瑞鶴「ありがと」 救護妖精「で、身体の調子とか大丈夫?」 瑞鶴「うん。それは大丈夫なんだけど、所々、なんだか頭に引っ掛かる事とかあるのよね」 救護妖精「引っ掛かる?」 瑞鶴「うん。提督さんが懐かしいような、知らないはずなのに知ってるような、そんな不思議な感覚」 救護妖精「…………」 瑞鶴「これって何かの病気なの?」 救護妖精「……いや、病気じゃないよ。それはデジャヴって言ってね、人ならば誰でも起きる事だよ」 救護妖精「大体は知っているのに忘れているとか、似たような体験と重ねちゃってるとか、ただ単なる勘違いとかだね」 222 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/01(日) 15:00:42.60 ID:X0BSBW2Po 瑞鶴「ふぅん?」 救護妖精「まあ、そういう事もあるって程度に思っていたら良いよ」 瑞鶴「はーい」 救護妖精「他には何かある?」 瑞鶴「ううん。ありがとね」 救護妖精「はいよ。何か異常があったらすぐに言いに来るんだよ」 瑞鶴「うん。分かったわ。──それじゃあ、失礼するわね」 救護妖精「あいよー」 ガチャ──パタン 救護妖精「……原典の少女に記憶が移ってる? まさか。そんな事をしたら、記憶がゴチャゴチャになってるよ」 救護妖精「でも……本当にそうだとしたら……? …………これは、ちょっと詳しく調べないといけないね──って」 救護妖精「ああぁぁぁ……。そうだった……。資料は全部燃やしちゃったんだ……。一回は目を通すべきだったなぁ……」 …………………… ………… …… 230 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/12/02(月) 02:32:26.37 ID:oizVNKlto 金剛「テートク、そろそろ二時デス」 提督「ふむ。今日はここまでにしておこう」 金剛「はい。お疲れ様デス」 提督「ああ、お疲れ様」 金剛(……今日も何も変化がありませんでした…………。何かが出掛かっている感じがするのに、出てきません……。 どうすれば良いのでしょうか……) 金剛(早く……早くしなければならない気がします。何か嫌な感じが、全身を襲ってきて……怖いです…………) 提督「…………」 金剛「……あ、あの……テートク。一つ我侭を言わせて下さい」 提督「…………」 金剛「今日……今日だけ、今日だけで良いですから、一緒に寝させて下さい……」 提督「…………」 金剛「不安に押し潰されそうです……。何か……とても怖い何かが、私に纏わり付いてきているのです……だから…… ……」 提督「…………」 金剛「……テートク?」チラ 提督「…………」ズル 金剛「────────え?」 ドサッ──……。 金剛「……テートク?」 金剛「────テートク!! テートク!? どうしたのですか!?」ユサユサ 提督「…………」 金剛「まさか……低血糖……? 砂糖──! 確か提督の懐に──あった!」ゴソゴソ 金剛(砂糖を塗り込んだら救護妖精を呼んでこないと──!) ……………………。 231 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/02(月) 02:33:18.26 ID:oizVNKlto 救護妖精「……ねえ、砂糖は塗りこんだんだよね?」 金剛「はい……。そろそろ十分経ちます……」 救護妖精「……一応確認しておくけど、提督はお酒飲まないよね?」 金剛「え? はい……そうですけど……」 救護妖精「なら、これが使えるね」スッ 金剛「注射……ですか?」 救護妖精「そ。グルカゴン注射。砂糖を塗りこむよりもこっちの方が確実なんだよ」ソッ 救護妖精「昔は結構手に入ってたんだけど、最近はちょっと入手が難しくてね。これが搬入されたのは最近なんだよ」 スーッ 金剛「……大丈夫、ですよね?」 救護妖精「前よりも症状がちょっと深刻だからなんとも言えない。今回は血糖値が低過ぎる」 金剛「そん、な……」 救護妖精「どうしてこんなに血糖値が低くなっても動けてたのかが分からないくらいだよ。……もし回復しても、後遺 症は覚悟しなよ」 金剛「────────」 232 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/02(月) 02:34:09.87 ID:oizVNKlto  前に本で、血糖値が低くなり過ぎた時の後遺症を読んだ事がある。  低血糖での昏睡で数時間が経過すると、脳に浮腫が出来たり、その他の後遺症、植物状態、最悪死ぬ事もあると──。  以前は軽口を叩いていた救護妖精も、今回は真剣な表情で提督を診察している。  それは、事の重大さを物語っていた。 『悪い夢であれば良いのに』  ──今回も、そう思った。  現実の私はベッドの上でうなされていて、傍では提督が優しく頭を撫でてくれているはずだ。  そして、起きると提督がほんの少しだけ柔らかく笑ってくれて、おはようの挨拶を交わす──。そんな、なんの変哲もない日常が始まるはずだ。  早く起きなきゃ……。この悪い夢から、早く醒めなきゃ……。  だけど、どんなに強く思っても、夢からは解放されなかった。  現実──。その言葉が、とても重い。  彼が死んでしまうかもしれないという現実は、私にとって支え切れないほど重い。 「ぃ……ぁ…………っ!」  胸が鋭利な刃物で刺されたかのように痛い。頭もガンガンと鐘を鳴らされているようだ。  目の前が霞み、重力を失い、耳鳴りで何も聴こえず、自分がどこで何をしているのかが分からない。  不安と恐怖が、私を押し潰そうとしている。  ヤダ……怖い……助けて…………! 提督……! 助けて……!!  世界が回る。  身体に衝撃が走る。  意識が遠ざかる。  何もかもが分からない。私は今、どうなっているのだろうか。  助けて……。助けて下さい…………提督……。  助けて…………助けて……………………。  ──真っ暗な闇の中、自分の姿が見えた気がした────。 …………………… ………… …… 233 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/02(月) 02:34:37.30 ID:oizVNKlto 提督「…………む」 救護妖精「起きたみたいだね、提督」 提督「……また倒れてしまったのか、私は」 救護妖精「そう。ついでに、隣の子もね」 提督「…………」チラ 金剛「…………」 救護妖精「救護室まで運べないから、隣に寝かせたよ。悪く思わないでよね」 提督「それは構わない。が、金剛はどうして倒れた」 救護妖精「それが……完全に原因不明なんだよね。いきなり倒れた。検査しても何も異常なんて無いし……」 提督「……そうか」 救護妖精「とりあえず一日様子見てみようと思ってる。後で救護室に運んでくれても良いかな」 提督「…………」 提督「いや、今から運ぼうか」 救護妖精「バカ言ってるんじゃないよ。提督だってさっきまで倒れてたじゃないか。とにかく安静にしな」 提督「だが──」 救護妖精「ドクターストップ。今回は血糖値が下がり過ぎてるんだから、検査でオッケー出せるくらいまで回復してからにする事だね。それに、口の中もまだ甘いんじゃないの? 気分悪そうじゃん」 救護妖精「嫌かもしれないけど、命に代えなんてないんだから二人でベッドを使いなよ? こんな深夜に人を起こすなんて出来ないんだから」 提督「……分かった」 救護妖精「あと、丁度良いから瑞鶴についても言っておくね」 提督「瑞鶴? 何かあったのか」 救護妖精「どうせ提督なら気付いてるんだろうけどさ、瑞鶴はどうやら艦娘の時の記憶が少しあるみたいだよ」 提督「……やはりか」 救護妖精「もしかして、金剛もそうなの?」 提督「恐らくな」 救護妖精「……そっか。ねえ、もしかしてあの二人は艦娘の魂が──」 提督「いや、それはないだろう」 救護妖精「なんでさ?」 提督「整合性が無い。もし本当にあの『金剛』や『瑞鶴』だとすれば、どうして私の事やこの鎮守府の事を忘れている」 提督「全ての魂の中から艦娘にとって必要な知識や経験だけを蓄える、という方がまだ納得出来る」 234 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/02(月) 02:35:28.45 ID:oizVNKlto 救護妖精「そうだよね……そんな都合の良い事、起きる訳ないよね……」 提督「期待をすれば、いつか絶望する。それならば、最初から諦めていた方が随分と精神衛生が良い」 救護妖精「…………」 提督「私なりの処世術だ。悪く思わないでくれ」 救護妖精「……納得はしないよ」 提督「ああ……」 金剛「ぅ……」 救護妖精「!」 提督「どうやら、金剛の心配は要らないよう──だ……?」 金剛「…………」ギュ 救護妖精「…………」 提督「……金剛、起きているのなら放せ」 金剛「提督……ていと、く……」ギュゥ 提督「…………」 救護妖精「……うなされてるみたいだね」 金剛「ヤダ……嫌です…………私は────です……」カタカタ 提督「……………………」 救護妖精「提督、抱き締めてやりなよ」 提督「…………」 救護妖精「人助けだと思ってさ。このままは可哀想だよ」 提督「………………………………」 金剛「っぅ……! ゃ、だ……!」カタカタ 提督「………………仕方が無い……な」ソッ 金剛「…………っ!」ビクッ 金剛「……っぁ…………あぁ……」 金剛「……………………」スゥ 235 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/02(月) 02:35:56.25 ID:oizVNKlto 救護妖精「……ん。落ち着いたみたいだね」 提督「そうみたいだな」 救護妖精「心労、なんだろうねぇ……。お互いさ」チラ 提督「…………」 救護妖精「提督、辛いのならちゃんと周りに頼るんだよ?」 提督「……ああ」 救護妖精「あと、開発が全然進まなくてごめんよ……」 提督「気にするな。そう簡単に作れる物ではない」 救護妖精「……ありがと」 提督「話は変わるが、私はこのまま寝ても問題無いのだな」 救護妖精「ん。むしろそのまま寝るのをお勧めするね。ゆっくり休みなよ」 提督「……ああ」 救護妖精「それじゃあ、私は戻るね。ごゆっくりー」 提督「…………」 ガチャ──パタン 提督「……本当、近頃のお前は金剛に似ているな」ナデナデ 金剛「んぅ……」 提督「…………はぁ。私も寝るとしよう……」 …………………… ………… …… 243 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/02(月) 23:39:53.62 ID:oizVNKlto 金剛「……ん」スッ 金剛(…………あれ? どこデスかここ……)モゾ 金剛「…………?」 金剛(誰かに抱き締められているみたいデスね。……落ち着くという事は、抱き締めている人はテートクでショウか) 金剛「……提督?」 金剛(え……? なぜ私がここに。私は、あの時──) 提督「む……」 金剛(──ああ……きっと、そういう事なのですね。では、少しだけ我慢しましょう) 提督「……起きたか、金剛」 金剛「おはようございます、テートク」 提督「おはよう」スッ 金剛「あ……」 提督「どうした」 金剛「あ、いえ……」 金剛(もう少し、抱き締めて欲しかったですケド、いつまでもこうしている訳にはいきませんからネ) 金剛「明かりを付けてきマス。少々お待ち下さサイ」モゾモゾ パチン──。 金剛「…………時間は、マルゴマルマルですネ」 提督「────」 金剛「? どうしまシタ、テートク? なぜそんなに驚いているのデスか?」 提督「……………………」 金剛「…………」 244 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/02(月) 23:59:14.86 ID:oizVNKlto 提督「……金剛、いつも私達は何の仕事をしていたか言ってみろ」 金剛「最近は書類整理だけでしたね。──少し前は、この鎮守府の運営をしていました」 提督「お前がこの鎮守府に来たのは何番目だ」 金剛「最後ですね。──それとも、二番目……電の次と言った方が良いでしょうか」 提督「…………」 金剛「…………」 提督「……夢、か?」 金剛「現実ですよ、提督」 提督「だが……」 金剛「提督。私、言いましたよね」 ──私の魂に刻まれます。 金剛「ってね」 提督「…………金剛、こっちに来い」 金剛「はい」ソッ 提督「っ!」ギュッ 金剛「──っつ! あはっ。痛いですけど……嬉しいです……」 提督「……金剛」 金剛「……提督」 245 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/02(月) 23:59:43.31 ID:oizVNKlto おかえり──。 ──ただいま。 249 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/03(火) 00:13:15.50 ID:6x68i+t2o ……………………。 提督「すまない。みっともない姿を見せてしまった」 金剛「貴重な姿を見れて嬉しいです」 提督「しかし……一体どういう事なんだ? もう、帰ってこないと諦めていたのだが」 金剛「……私もよく分かりません。ただ分かっている事は、私は提督の知っている『金剛』ではない、という事です」 提督「……どういう事だ?」 金剛「確かに、提督に仕えた時の記憶はあります。けど、それも完全という訳ではないようで、思い出そうとしても思い出せない部分が沢山あります」 金剛「提督と約束した事、私を愛してくれた事、提督の胸の中で最後を迎えられた事──。特に大事な部分は憶えていますけど……それ以外はあまり……」 提督「…………」 金剛「言ってしまえば、提督と一緒の日々を過ごした記憶のある別人……そう言ってしまう方が合っていると思います。現に、ここ数日の記憶もしっかりと有ります」 金剛「記憶は本物でも、身体は別人です……。提督が私をどう扱うか……それで変わってくると思います」 提督「……………………」 金剛「……提督。提督は、私をどう扱ってくれますか……?」 提督「考える必要もない」 金剛「…………」ビクッ 提督「さっき言っただろう。おかえり、と」 金剛「────提督ーっ!!」ギュッ 提督「…………」ナデナデ 金剛「〜♪」スリスリ 金剛「──あっ。でも……本当に良いのですか? 私、身体は完全に別人で、中身も半分は別人なのですよ……?」 提督「I don't mind that everyting is a lie. As long as love me forever.」 金剛「────!」 提督「例え全てが嘘でも構わない。お前が私を愛している限り、永遠に。……金剛の言ったものを捩っただけだが、これでどうだ?」 金剛「……惚れ直しましたっ」ギュゥ 提督「嵌って抜け出せそうにないな」 金剛「とっくの昔からそうなってますっ」 提督「くくっ。そうだったな」 ……………………。 252 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/03(火) 00:32:08.93 ID:6x68i+t2o 救護妖精「……マジで?」 金剛「リアリー。全部ではありませんが、思い出しましたヨー」 救護妖精「はー……。そんな事ってあるんだねぇ……。本当に驚いたよ……」 提督「私もだ。本当に夢かと思った。だが、一応念の為に検査をしてくれないか」 救護妖精「おやおや。過保護だねぇ?」ニヤニヤ 提督「愛する女性を守るのは当然だろう」 救護妖精「……真顔で言われると返し辛いね。……まあ、なんともないだろうけどやっておくね。お昼前には終わると思うから、その時まで借りておくよ」 提督「頼んだ」 金剛「テートク、私が居ない間に無理はノーなんだからネー!」 提督「うむ。お前もしっかりと検査されてこい」 金剛「はいっ!」ピシッ 救護妖精(……ま、一番心配だった提督が治ったみたいだし、いっか) 救護妖精(──生きる目的、見つけたんだね) …………………… ………… …… 253 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/03(火) 00:49:18.33 ID:6x68i+t2o 提督「……うむ。素晴らしい」 少将「ほ、本当ですか!」 提督「ああ。これならば私がもう居なくても問題無いだろう」 少将「……とうとう、この日が来てしまいましたね」 中将A「寂しいものがありますな……」 中将B「本当に退役なされるのですか?」 提督「ああ。私のような死に損ないはとっとと消えるべきだ」 中将B「そうでございますか……」 提督「中将A、中将B、少将。これからのこの国を頼んだぞ」 中将A「何を仰っていますか。我々は海を護るだけですよ」 提督「くくっ。そうだったな」 中将B「これからの海軍も、大将殿の意思を潰えないようにしていきます」 提督「思想は時代と共に変わる。私に囚われ過ぎて大事なモノを見失うのではないぞ」 中将A・中将B・少将「はっ!」ピシッ 提督「では、これから頼むぞ、新大将の三人よ。──会議はこれで終わりだ。以後、新大将の三人に任せる」 少将「──大将殿。最後にお一つ宜しいですか?」 提督「なにかね」 少将「軍縮についてですが、多数の鎮守府が廃棄される事となります」 提督「それがどうした」 少将「その内の一つを、貰って頂けませんか?」 254 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/03(火) 01:05:43.17 ID:6x68i+t2o 提督「……どういう事だ」 中将A「私達のささやかなプレゼントだと思って下さい」 中将B「大将殿が居なければ、私達は大事なものに気付く事もありませんでした。そのお礼です」 少将「これがあの鎮守府の土地の権利書です。既に手続きは済ませておきました」 提督「……あのような広い土地をどうしろというのかね」 少将「それは大将殿がお決め下さい。……あの鎮守府に、何か思い入れがあるのですよね?」 提督「……隠していたつもりだったが、どうして分かった?」 中将A「勿論、私達も同じだからです」 中将B「特に大将殿は艦娘を大事にしておられたと耳にしています。そこまで知れば、想像するのは容易です」 提督「……やられた。私もまだまだ若いという事だな」 提督「ありがたく頂こう。鎮守府内の物資はどこへ運べば良い」 中将B「下の書類に記載してあります」 提督「分かった。……そうだな。残りの余生は海を眺めて暮らすとしよう」 中将A「まだまだお若いのですから旅をしてみるのも良いでしょう」 提督「そうだな。考えておく」 提督「……三人共、ありがとう」 …………………… ………… …… 256 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/12/03(火) 01:27:41.25 ID:6x68i+t2o 利根「燃やすのはこれで最後かのう?」 提督「ああ」 那智「……本当にグロテスクだな、これは」 救護妖精「無理しないでね。気持ち悪くなったらすぐに言いなよー」 金剛「だ、大丈夫デス……」 提督「……一緒に付いているから、絶対に無理をするんじゃないぞ」 金剛「──はいっ!」 那智「…………」 利根(まだ諦め切れないのか、那智よ)ヒソ 那智「……煩い」ボソッ 提督「──これを燃やせば、この世に残っている艦娘の製造資料は無くなるな」 救護妖精「え? 大国には残ってるんじゃないの?」 提督「大将権限で密かに大国の様子を探らせてみた。その結果、大国の一部にクレーターのような爆発した跡があると判明した。その場所は海に面しており、近くには飛行場や造船設備もあったとの事だ」 救護妖精「……それって」 提督「奪われた艦娘製造を行った基地と考えて良いだろう。……もうこの世に残っている製造資料は、目の前にある物だけだ」 救護妖精「じゃあ……私の悲願は……」 提督「達成されるという訳だ」 救護妖精「…………ありがとう、提督」 提督「皆のおかげだ。私一人の功績ではない。──さて、最後の一仕事をしよう」 救護妖精「──うん」 ……………………。 257 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/03(火) 01:50:08.72 ID:6x68i+t2o 金剛「うぅ……」ヨロヨロ 那智「ふん。軟弱者め」 金剛「あんなモノ……見ていて平然と出来るくらいなら軟弱なままで良いデス……」 提督「紅茶でも飲むか?」スッ 金剛「イタダキマス……」コクコク 提督「…………」ナデナデ 金剛「ん……少し、楽になりました……」 提督「うむ」ナデナデ 那智「……………………」 救護妖精「あー……やーっと終わったよ……」グッタリ 提督「ああ、終わったな。艦娘の存在自体はこれからも語られるだろうが、その内、曖昧になって伝えられる事となるだろう。もう、憂う必要はない」 救護妖精「後は、この鎮守府に残ってる子達の新しい住居を与えるって仕事くらいかねぇ」 提督「そうだな。……だが、それも中々に難しいものだ」 利根「うむ。何しろ、ごねている者とその姉妹しか残っておらぬのう」 提督「その中の一人が何を言う」 利根「じゃから言っておるじゃろう。提督殿の近所に住まわせてくれるだけで良いと」 提督「……そうだな。いっその事、ごねている全員をここに住まわせるのも良いかもしれないな」 全員「!!」 那智「それは本当か!?」 利根「えらい食いつきようじゃな……」 提督「この鎮守府の土地の権利書を退役祝いとして頂いた。……が、ここで住むには些か広すぎる。どうだ?」 那智「住まわせてくれ。しっかりと働く」 救護妖精「私も専属医師として住み込みで良いかな?」 利根「住み込み……。うむ。我輩も家政婦として住み込みで働きたい」 金剛「わ、私もです!」 提督「金剛はダメだ」 金剛「──え?」 258 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/03(火) 01:50:35.81 ID:6x68i+t2o 提督「お前は住み込みではなく、ここで私と一緒に住んでくれると嬉しい」 金剛「そ、それって……」 提督「……私の籍に入ってくれないか?」 金剛「────」 提督「…………」 金剛「……は………………」 提督「…………」 金剛「────はいっ! 喜んで!!」ギュウ 提督「幸せにし続けるよ」 金剛「はいっ! はいっ!!」 那智「…………」ズーン 利根「……まあ那智よ。今夜は朝まで酒に付き合ってやるから、の?」 救護妖精「まったく……場所を弁えなよ提督」 …………………… ………… …… 259 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/03(火) 01:51:04.47 ID:6x68i+t2o 提督「──という訳で、これ以上ごねるのならばこの鎮守府で私と一緒に暮らしてもらう」 響「じゃあ、ごね続けるね」 雷「私もごねるわ!」 電「はいなのです」 暁「それで手を打つわ」 島風「やったー!」 川内「いいねそれ!」 神通「川内、嬉しそうね」 那珂「神通もねー」 天龍「ふふ……ふふふふふ……!」 龍田「あらぁ。あらあらぁ。とーっても良い案ねぇ」 瑞鶴「良い感じじゃない。私もごねるわね」 翔鶴「瑞鶴が良いのでしたら私もそれで構いません」 大和「そうですね。私もごねましょう」 利根「我輩は昨日、言ったのう」 筑摩「利根姉さんから聞きました。姉さんの珍しい我侭ですので、賛成します」 那智「利根と同じだ」 妙高「那智ったら我侭なんだから」 足柄「まあ、ここなら良いんじゃないかしら」 羽黒「わ、私もです」 霧島「私もそれが良いと思います」 比叡「お姉様が居る所に比叡在り! 私もここで気合、入れて、住みます!」 榛名「私も構いません。けど、気合を入れて住むってどういう事なのですか比叡お姉様……」 提督「……ごねていた者どころか、その姉妹も全員納得してしまったな」 金剛「この鎮守府は広いデスから、大丈夫ネ」 提督「何が大丈夫なのやら」 金剛「えへへー」 金剛「……賑やかになりますね」 提督「ああ。あの時のように、な」 …………………… ………… …… 260 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/03(火) 01:51:34.54 ID:6x68i+t2o コンコン──。 提督「入れ」 ガチャ──パタン 瑞鶴「やっほー。遊びに来たわよー。──って、ここは全然変わらないのね」 金剛「やっぱり、あのままの方が落ち着きますからネ」 提督「何より、思い入れがあるからな」 瑞鶴「ふーん……」 提督「それより、こんな時間にどうした」 瑞鶴「夜・這・い」 金剛「なぁっ!?」 瑞鶴「冗談よ。単純に妹として遊びに来ただけよ」 金剛「っ!」ギュゥ 瑞鶴「……どうしたのよ、提督さんを抱き締めちゃって」 金剛「い、妹だからといっても、提督は渡しまセン! というか、提督の妹だったのデスか瑞鶴は!」ギュウゥ 提督「……金剛、少し痛い」 瑞鶴「……前々から思ってたんだけどさ、金剛さんって提督さんとすっごく仲が良いわよね。あげないわよ?」 金剛「────!!」 261 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/12/03(火) 01:52:24.80 ID:6x68i+t2o 金剛「テートクのハートを掴むのは、私デース!」ギュゥ 瑞鶴「!?」 金剛「絶対に渡しまセーン!!」 瑞鶴「えっ……ちょ、ええぇえ!!? ほ、本気で!? 提督さんも良いの!?」 提督「掴む所か、既にガッチリと掴まれている」 瑞鶴「はぁっ!? いつの間に!?」 提督「……艦娘の時から、だな」 瑞鶴「ちょっ……」 金剛「私は食いついたら放さないんだからネ!」ギュゥゥ 瑞鶴「…………ええええぇぇぇぇぇぇ……」 金剛「ぅー……」ジッ 瑞鶴「…………」ニヤ 瑞鶴「まあ、妹って立場を利用すればいくらでも──」 金剛「提督は絶対に譲りませんからネ!! 胃と心と身体で繋ぎ止めマス!!」 瑞鶴「…………」ニヤニヤ 提督「金剛、冷静になれ。完全にからかわれているぞ」 金剛「──ハッ!」 瑞鶴「いやぁ、良いもの見れたわ。爆弾発言も頂いちゃったし。胃と心と『身体』で繋ぎ止める、ねえ?」ニヤニヤ 金剛「う、ぅぅ……」 提督「離れないから安心しろ」ナデナデ 金剛「ぁ……ハイ!」 瑞鶴「ふふっ……」 瑞鶴(なんだろ……心のどこかで、こうなるのを望んでいた自分が居る……) 提督「ずっと一緒だ」ギュ 金剛「約束ですよ」ギュ 瑞鶴(二人共、幸せそう……) 提督「ああ、約束だ」 金剛「提督の約束なら安心です!」 瑞鶴(──ああ。一つ思い出した事があるわ) 提督「約束は、これからも破らないよ……」 金剛「私も、絶対に破りません……」 瑞鶴(私、二人のこの笑顔が見たかったのね) 瑞鶴「────幸せにね、二人共」 ──── 金剛「テートクのハートを掴むのは、私デース!」瑞鶴「!?」 ──── 了 273 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/12/03(火) 02:03:05.89 ID:6x68i+t2o 終わりました。ここまで読んで下さった方々、お疲れ様です。 ■あとがき的な何か 本来書く予定の無かったグッドエンドです。故に、色々とご都合主義な面々が……。 この物語は初めからルートは金剛のみで考えていました。瑞鶴へのルートもちょっとだけ考えましたけど、どうしても金剛で進めたかったので金剛ルートでやりました。 響はまだ子供なので論外として、 響「逆さ吊り」 ……響はまだ子供なので道徳的に宜しくなかったので、提督に恋をして行動も起こした女の子の一人として扱いました。 瑞鶴ではない理由は、金剛が艦娘として普通だからです。 普通に提督を愛し、普通に提督の為に動き、普通に提督に身と心を捧げた少女なので、金剛のルートにしました。 妹心から来る恋愛とか大好物ですけど、普通の少女が頑張って非日常で動いていくのを書きたかったので……。 本来のエンディングも書いていきますが、何かご質問などがありましたら遠慮なくどうぞ。 だが、本来のエンディングは今日投下するかは未定ですのでご了承下さいませ。 286 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/12/03(火) 06:05:31.67 ID:6x68i+t2o 今更感が半端無いけど、まだ完結ではないのです。勘違いさせたのならばゴメンよ。 トゥルーエンドは書きますし、その後日談も書く……かもしれない。 323 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/12/04(水) 21:21:01.45 ID:2XI1T3vDo ちょびっとだけ投下します。 ちなみに、>>72よりルートが変わります。結構サクサク進むと思いますので、ボリュームは無いかも。 324 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/04(水) 21:21:30.70 ID:2XI1T3vDo 提督(満月の明るさに加えて無風か。これは綺麗に燃えてくれそうだ) 金剛「…………」ソッ 金剛「あの──」 提督「なにかね」 金剛「ひゃぅ!? きき、気付いていたのデスか!?」 提督「ああ。──それよりも、何か用か」 金剛「あ、えっと……何かお手伝い出来ないかな、と思いマシて……」 提督「特に無い。今日は燃やして消えるのを待つだけだ」 金剛「…………あの、見ていても……良いデスか?」 提督「……………………」 金剛「お傍に居たいのデス……」 提督「……寝なさい。朝に起きれなくなるだろう」 金剛「が、頑張って起きますカラ!」 提督「…………」 金剛「…………」 提督「……少しの間だけだぞ」 金剛「──ハイッ!」 提督「あと、眠たくなったら正直に言う事。良いな」 金剛「はいっ」 325 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/04(水) 21:23:12.76 ID:2XI1T3vDo シュッ──ボッ── 提督「…………」 ……チリッ 金剛「…………」 チリチリッ── 金剛「……すっごく簡単に燃えていきますネ」 提督「何せ古びた本だからな。脆くなっているのだろう」 金剛「……近くに寄って良いデスか?」 提督「救護妖精から私と『金剛』の事を聞いたからか」 金剛「…………ハイ」 提督「それは気にするな。お前はお前だろう」 金剛「でも、私も気になるのデス。貴方を放っておけない、そんな気持ちがありマス」 提督「…………」 金剛「…………」 提督「……好きにすると良い」 金剛「──ハイッ!」 …………………… ………… …… 326 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/04(水) 21:23:47.19 ID:2XI1T3vDo カリカリ──。 提督「…………」 提督(……朝礼の時間になっても誰一人来ないのは、寂しいものだな。……いずれ慣れる、か) コンコン──。 提督「…………」 提督「入れ」 ガチャ──パタン 金剛「おはようございます!」 提督「金剛か。なにかね」 金剛「秘書のお手伝いをしに来まシタ!」 提督「……妹達はどうした」 金剛「まだ寝ていマス。ここに行くと書き置きもしてきたデス」 提督「……そうか」 金剛「──あの後ですね、考えたのです」 提督「何をだ」 金剛「私のこの奥底に眠っている何かを、です」 提督「…………」 金剛「考えれば考えるほど、貴方が浮かんできました。顔、行動、感情……全てが貴方に関するものでした。その中に、おかしなモノもあったのです」 提督「おかしいもの?」 金剛「えっと、その……貴方と口付けを交わしている姿、です」 提督「…………」 327 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/04(水) 21:24:35.18 ID:2XI1T3vDo 金剛「詳しい事は憚りますけど、実際に体験したかのような記憶でした。でも、それっておかしいですよね」 提督「ああ。私は勿論、お前も私へ接吻した事など無いはずだ」 金剛「だから、私はこう思ったのです。──これは、前の『私』が経験した記憶なのではないか、と」 提督「……可能性はある」 金剛「ですよね!」ズイッ 提督「…………」 金剛「私は、前の『私』の記憶を取り戻したいです。このまま放っておくのは私も気分が悪いですし、何よりも貴方が救われません。なので、協力して頂けませんか?」 提督「……何をさせる気だ」 金剛「憶えている限りで良いです。貴方の知っている『金剛』と同じ事を、私にして下さい。思い出せるかもしれません」 提督「思い出さないかもしれないだろう」 金剛「その時はその時です。思い出すかもしれないのですから、やってみるべきだと思います」 提督「…………」 金剛「ダメ、ですか……?」 提督「……試してみる価値はあるだろう」 金剛「────!! ハイッ! まずは何からすれば良いでしょうか!」 提督「書類整理からお願いする。左上に担当部署が書いてあるから、それの通り分けてくれ」 金剛「ハイ! ──あ」 提督「どうした」 金剛「何か飲み物を用意しまショウか。その方が集中出来ると思いマスよ」 提督「……なら、紅茶を淹れてくれるか。いつもそうして貰っていた」 金剛「ハイッ! 少し待ってて下サイ!」 金剛「──あ、そういえば、なんてお呼びしまショウか?」 提督「……お前ならば私をどう呼ぶ」 金剛「え? ええと……テートク……ですかネ?」 提督「…………ならばそれで良い。そう呼んでくれ」 金剛「は、はい……」 ……………………。 336 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/05(木) 03:39:09.49 ID:hMIrHRjro 金剛「どうぞ、テートク。おかわりデス」スッ 提督「うむ」ズズッ 金剛「♪」コクコク 提督「……………………」ジッ 金剛「あ、あれ……? お口に合いませんでシタか?」 提督「金剛、そっちの紅茶を飲ませてみろ」 金剛「え……えっとぉ……その…………」 提督「お前、自分のは出涸らしを使っているだろう」 金剛「な、なぜ分かったのですか……?」 提督「なんとなく、な」 金剛「うぅ……まさかバレるとは思いませんでシタ……」 提督「……健気だな」 金剛「いえ、私がテートクと同じ紅茶を飲んでいるのがおかしいのデス。本来ならば私はこんなに良い紅茶を飲める立場ではないと思いマス」 提督「秘書の特権だ。ここではそうなっている。これからは使えなくなるまで出涸らしを使え。無論、私のもだ」 金剛「ハイ……」 提督「……気を遣ってくれるのは嬉しいが、私はお前と同じモノを飲みたい。それが一番の理由だ」 金剛「──ハイッ!」 提督「素直で良い子だ」 金剛「ありがとうございますっ。──あ、もしかして艦娘の私もそうだったのデスか?」 提督「ああ。似たような会話をしたよ」 金剛「この調子デスね! もっともっと同じになれるよう頑張りマス!」 提督「記憶を取り戻すのが本来の目的だろう」 金剛「あ。そうでシタ。でも、薄っすらとこのようなやりとりをしたような気はしマス」 提督「そうか。このまま、戻ってくれるとありがたいな」 金剛「きっと戻りますよ。きっと──」 ……………………。 337 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/05(木) 03:39:38.29 ID:hMIrHRjro コンコン──。 提督「入れ」 ガチャ──パタン 瑞鶴「やっほー。遊びに来たわよ──って、金剛さん?」 金剛「おはようございマス瑞鶴」 提督「私は忙しいのだが」 瑞鶴「何よ、金剛さんは居るじゃないの」 提督「金剛は私の仕事を手伝ってくれている。断じて遊んでいるのではない」 瑞鶴「むー……。じゃあ、仕事をしている姿が見たい」 金剛「……それって面白いのデスか?」 瑞鶴「あら、面白いわよ。金剛さんが私の立場だったらどう思う?」 金剛「……………………納得しました」 提督「…………」 瑞鶴「でしょ?」 提督「……好きにするが良い」 瑞鶴「はーい。ソファ借りるわね」ポスッ 金剛「瑞鶴の紅茶を用意しますので、少しお待ち下サイ」スッ 瑞鶴「ん、ありがとね」 提督「…………」ズズッ 瑞鶴「……ねえ、提督さんって紅茶が好きなの?」 提督「執務をしている時は必ずと言っても良いほど口にしている」 瑞鶴「相当ねそれ……。うーん……紅茶かぁ」 提督「どうした。興味でもあるのか」 瑞鶴「今興味が沸いたわ」 提督「……そうか」 瑞鶴「あ、今の言葉もう一回言って?」 提督「…………そうか」 瑞鶴「なんだろ。それ懐かしい気持ちがする」 提督「…………」 瑞鶴「んー……紅茶の淹れ方、金剛さんに教えてもらおうっと」スッ 提督「…………」 提督(……僅かながら記憶がある、か) ……………………。 338 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/05(木) 03:40:21.96 ID:hMIrHRjro 瑞鶴「ん……?」 提督「起きたか」 瑞鶴「あれ……私、いつのまに寝ちゃってたの?」クシクシ 金剛「一時間くらい前デス。なんだか幸せそうな顔をしていましたケド、何か良い夢を見ていたのデスか?」 瑞鶴「んー……よく分かんない。ただ、あったかい夢だった気がするわ」 金剛「炬燵の中で丸くなっていたトカ」 瑞鶴「もう。私は猫じゃないわよ。──そうねぇ。心があったかくなる夢だったと思う」 金剛「良い夢だったようですネ」ニコ 瑞鶴「うん。──って、もう十二時じゃないの。二人共、そろそろお昼にしたらどう?」 提督「構わないが、お前達の妹や大和を放っておくのか」 金剛・瑞鶴「あ」 金剛「すみません。少しマイシスターズの所へ行ってきマス」 瑞鶴「私もちょっと様子を見てくるわね」 提督「ああ」 ……………………。 339 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/05(木) 03:40:51.69 ID:hMIrHRjro コンコン──。 提督「入れ」 ガチャ── 瑞鶴「ただいまー」 金剛「ただいま戻りまシタ」 榛名「お邪魔します」 霧島「お邪魔しますね、提督」 比叡「提督、ご飯ですよー!」 翔鶴「失礼します」 大和「お仕事の調子はどうですか、提督?」 ──パタン 提督「……………………」 瑞鶴「どうしたのよ? なんだか物凄く不思議そうな顔してるけど」 提督「いや、予想外だった」 比叡「それよりも早く食堂に行きませんか提督! 私、もうお腹がペコペコですよ!」 提督「もう少し待ってくれ。あと少しでキリの良い所になる」 榛名「はい。お待ちしますね」 提督「しかし、お前達が来るのは意外だな」 霧島「そうでしょうか? ……確かに、どこか近寄り難い雰囲気ではありましたけど、そこまで意外だったのでしょうか」 提督「自分で言うのもおかしいとは思うが、あまり好ましくは思われていないと思っていたからな」 翔鶴「少し怖いイメージがありますけど、タイミングが掴み辛かったのは確かです」 提督「気軽に来てもらって構わない。そこの瑞鶴のようにな」 瑞鶴「……なんだか私、邪魔者扱いされてる?」 提督「仕事をしている時に『遊びに来た』などと言うのは瑞鶴しか居ないだろう」 瑞鶴「だって、他に良い言葉が無かったんだもん……」 大和「瑞鶴、あまり提督を困らせてはいけませんよ」 瑞鶴「はーい……」 提督「…………特に困っているという訳ではないから安心しろ」 瑞鶴「──うん! ありがとね!」 提督(……親子、か。私も昔はこうであったのだろうか……) ……………………。 340 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/05(木) 03:41:22.65 ID:hMIrHRjro コンコン──。 提督「入れ」 雷「提督さん! 遊びに来たわよ!」 電「あの、もしかしてお忙しいですか?」 島風「私、かけっこしたいな!」 暁「提督さん一位、島風二位の独占順位になるのが目に見えてるわよ」 響「ん、金剛さんも居るね。もしかして忙しかったかな」 金剛「えっと……」チラ 提督「……丁度休憩を挟もうとしていた所だ。かけっこは出来ないが、雑談には付き合える。それで良いか?」 雷「勿論よ!」 島風「私も異議なーし!」 金剛「ハイ。それでは紅茶を淹れてきマスので、少し待っていて下さいネ」 電「はいなのです」 暁「手伝っても良いかしら」 金剛「あら、暁はお利口デスね」 暁「お子様扱いしないでー!」 響「そう言うと益々お子様に見えるよ、暁」 暁「う、うー……!」 提督「……ほら、大人しく待っていたら砂糖菓子を出してやるから静かにしていなさい」 ……………………。 341 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/05(木) 03:42:00.01 ID:hMIrHRjro 電「美味しいのです! 苦味と甘みが一緒になって、とっても美味しいチョコレートみたいなのです!」コクコク 響「うん、凄く良い組み合わせだね。甘いお菓子と一緒だと、紅茶に砂糖は入れないくらいが丁度良いね」カリカリ 暁「そう? どっちも甘い方が美味しいわよ」コクコク 島風「私も紅茶に砂糖を入れない方が良いかなー」カリッ 雷「暁だけお子様ね!」コクコク 暁「お子様言うなぁ!」 提督「楽しみ方は人それぞれだろう。気にする事はない」ズズッ 金剛「そうデース。好みは人によって違いますネー」コクコク 暁「ほら! 提督さんも金剛さんもこう言ってるじゃない!」 響「ん、ごめんよ。──ところで、提督はどうしてお菓子に手を付けないんだい?」 提督「私は甘い物が苦手だからな」 金剛「そうなのデスか?」 雷「好き嫌いは良くないわよ?」 提督「いや、私の身体は糖分を受け付けないらしい。一種のアレルギーだと思ってくれ」 金剛(一応、甘い紅茶も控えておきまショウ) 電「大変なのです……」 提督「もう慣れた。だから、私はあまり運動をしてはいけないんだ」 響「だから最初に会った時、許可が必要って言ってたんだね」 提督「ああ。そういう事だ」 島風「んー……じゃあかけっこはいいや」 提督「許可が下りたら構わん」 金剛「え……? い、良いのですか……?」 島風「んー……よく分かんないけど、提督にとって運動するのって危ないんでしょ? だったら私はかけっこしたくないな」 提督「……優しいな、島風」 島風「そんな事ないよー。私は人を危ない目に合わせたくないだけだもん」 提督「そう言えるのは立派だ」 金剛「島風は人を思いやれる優しい子デス」 342 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/05(木) 03:42:27.31 ID:hMIrHRjro 島風「……ありがと?」 金剛「ハイ。褒めていマスよ」 提督「うむ」 島風「えっへへー」 雷「でも、不思議ね? お砂糖を摂っちゃダメだなんて」 提督「世の中には水がアレルギーの人間も居るらしい。そう考えたら糖分が受け付けられないというのも不思議ではなかろう」 電「お水がダメな人が居るのですか!?」 金剛「それって生きていけるのデスか……?」 提督「あくまで聞いた話だ。真実かどうかは知らない。だが、その人は果汁百パーセントのジュースか牛乳を一日でコップ三杯までしか飲んではいけないらしい」 暁「たったの三杯だなんて……」 島風「私には絶対に耐えれないね」 雷「大抵の人はそうだと思うわよ?」 響「運動が好きな人は、特に辛そうだね」 提督「世の中には色々な人が居るという事だ」 電「私も茄子が苦手なのはアレルギーだったりは……」 提督「ないな」 響「ないね」 雷「ないわね!」 暁「好き嫌いよね」 島風「好き嫌いね」 金剛「ダメですよ電」 電「はわわわわ……。皆イジワルなのです……」 提督「茄子が苦手な子でも美味しく食べられるように間宮に伝えておく。好き嫌いは克服しような、電」 電「うぅ……はいなのです……」 雷「──あら。紅茶が切れちゃったわ」 金剛「次のを用意してありマス。少し待っていて下さいネ」 提督「準備が良いな、金剛」 金剛「これだけの人数が居れば、すぐに無くなるのは目に見えていまシタ。今度は今飲んでいる紅茶と違いますカラ、また違った楽しみがありマスよ」 島風「本当!? 金剛さんって凄いのね!」 響「紅茶のスペシャリストだね」 金剛「サンキュー。褒められるのはくすぐったいネー」 提督「今後も紅茶を頼むよ」 金剛「ハイ! 任せて下サーイ!」 ……………………。 350 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/12/05(木) 23:13:20.30 ID:hMIrHRjro 雷「──とっても美味しかったわ!」 暁「ありがとう。お礼はちゃんと言えるし」 電「幸せな気分になれたのです」 島風「ありがとねー!」 響「ダスビダーニャ」 提督「ああ、またな」 金剛「グッバイ」フリフリ ──パタン 金剛「……テートク、一つよろしいでしょうか」 提督「何かね」 金剛「さっきのお話の件についてです。砂糖がダメという事は、テートクは低血糖なのですか?」 提督「ああ。そうだ」 金剛「これからは懐に砂糖を常備しておきます」 提督「ほう。応急手当を知っているのか」 金剛「唇と歯茎の間に塗り込むのですよね?」 提督「知っているようだな。ならば安心だ。……だが、低血糖の応急手当を知っているとは思わなかった。どこでそんなものを知ったんだ」 金剛「えっと……テートクに教えて貰った記憶があります」 提督「私に、か」 金剛「よく憶えていないのですが、何かを食べている時に教えて貰ったような……」 提督「……そうだな。今度、間宮にスコーンを作って貰おう」 金剛「ほ、本当ですか!?」 提督「ああ。濃厚なクロデッドクリームとジャムも付けてな」 金剛「私スコーン大好きです! ありがとうございます!」ギュッ 提督「こらこら。はしゃぐ気持ちは分かるが、少しは抑えてはどうだ」 金剛「テートク、大好きです」スリスリ 提督(……出来れば、その言葉は記憶が戻ってから言って欲しかったな) ……………………。 351 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/05(木) 23:13:50.24 ID:hMIrHRjro コンコン──。 提督「入れ」 ガチャ──パタン 瑞鶴「こんばんは提督さん、金剛さん」 金剛「こんばんは瑞鶴」 提督「瑞鶴か。どうした、こんな時間に」 瑞鶴「二人に会いに来たのよ」 提督「……そうか」 金剛「私達に、デスか?」 瑞鶴「うん。少し暇だったのよね」 瑞鶴「あ、迷惑だったら言ってよ? 私、バカだからそういうのよく分かんないのよ」 提督「迷惑ではないから安心しておけ」 瑞鶴「……艦娘の私も同じ事してた、とか?」 提督「…………ああ」 金剛「…………」 瑞鶴「正直なのね」 提督「故に馬鹿を見るがな」 瑞鶴「良い事じゃないの。私、そういうバカは好きよ」 金剛「!!」 提督「……そうか」 瑞鶴「あ、異性として好きって意味じゃないからね? 勘違いしちゃダメよ?」 提督「そうか」 金剛「…………」ホッ 352 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/05(木) 23:14:32.75 ID:hMIrHRjro 瑞鶴「……金剛さんは分かるんだけど、なんで提督さんも少しホッとした感じになってるのよ」 提督「救護妖精にお前と私の関係を訊けば分かる」 瑞鶴「救護妖精さん?」 提督「ああ。だが簡潔に言うと、お前と私は兄妹だ」 瑞鶴「……は?」 金剛「……え?」 提督「後の事は救護妖精に聞いてくれ。私の知らない真実も知っているだろう」 瑞鶴「いやいやいやいや……。どういう事なの?」 金剛「私も全く分かりません……」 提督「お前達と同じように、私もあの実験の被験者だ。私に昔の記憶がほとんど無いように、お前達も同じようなものなのだろう」 金剛・瑞鶴「…………」 提督「今はそういうものだと納得してくれ」 瑞鶴「……うん、分かった」 金剛「はい……」 瑞鶴「で、話は変わるんだけどさ、妹だったら一緒に寝ても良いのかしら?」 金剛「!?」 提督「断る。私には金剛が居る」 金剛「提督!? ス、ストレート過ぎませんか!?」 瑞鶴「あー、やっぱり?」 金剛「やっぱりって気付いていたのですか!?」 瑞鶴「うん。なんとなくね」 金剛「……いつからですか?」 瑞鶴「最初から。気のせいだと思ってたんだけどね」 金剛「…………」 瑞鶴「まあ、そういう事なら邪魔は出来ないわね。じゃあおやすみ提督さん、金剛さん」 提督「……ああ、おやすみ」 金剛「お、おやすみなさい……」 ガチャ──パタン 提督(色々と、心が痛むな……) 金剛(……瑞鶴はライバルですかね? テートクの妹がライバルとは……むむむ……) …………………… ………… …… 373 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/07(土) 22:55:49.35 ID:kAOR1dc1o 瑞鶴「…………」コロコロ 瑞鶴「……金剛さんが艦娘の時、提督さんと恋人だった、かぁ。あ、いや、艦娘の金剛さんが、か」 瑞鶴「でも……絶対に艦娘の『私』も気が有ったわよねぇ……。私だって気になってるんだもの」 瑞鶴「むー…………どうだったのか気になるー……」コロコロ 瑞鶴「……まあ、私が気にしても仕方がないのは分かってるんだけどね──って、あら、この部屋に本ってあったのね。気付かなかったわ」 瑞鶴「……何かすっごい栞が挟まってるわね。どれだけ読み返したのよ……」ソッ 瑞鶴(……ちょっと読んでみましょうかね) 瑞鶴「…………なんで海上戦術と気遣い心配りって本ばっかりなの? ──あ、紅茶の本もあるわね」 瑞鶴「紅茶……」 瑞鶴(そういえば、提督さんって紅茶が好きだったわよね。何か役に立ちそうなのとか載ってるかしら)ペラ 瑞鶴「……………………」ペラ 瑞鶴(……あれ? この部分知ってる。おかしいわね……紅茶なんて淹れた事ないわよ……?) 瑞鶴「……ふむふむ。なるほどね。こういう淹れ方をすれば、より美味しくなるのね……」 瑞鶴(でも、なんでかしら……。この本、読んでいくとどんどん辛くなってく……) 瑞鶴「紅茶、ね……今度淹れてみようかしら……。いやでも、絶対に美味しくないんだろうなぁ……むー……」 …………………… ………… …… 374 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/07(土) 22:56:29.75 ID:kAOR1dc1o 瑞鶴「えーっと……次はこうしてっと……」ジー 響「ん、瑞鶴さん?」 瑞鶴「──あら、響じゃないの。どうしたの? お菓子でも取りに来たのかしら」 響「そんな所だよ。間宮さんに何かお茶請けみたいな物を分けて貰いに来てみたんだ」 瑞鶴「お茶会でも開くの?」 響「うん。紅茶と一緒にお話をするよ」 瑞鶴「へぇ。響って紅茶が淹れれるのね」 響「ただのティーバッグだよ。誰でも出来るものさ。金剛さんや瑞鶴さんみたいにそうやって茶葉からやるものじゃないさ。瑞鶴さんは紅茶の勉強かな?」 瑞鶴「うん。ちょっと作りたくなってね。飲んでみる?」ソッ 響「ん、スパスィーバ。いただきます」コクコク 瑞鶴「…………」ドキドキ 響「──うん。美味しいよ。ティーバッグとは比べ物にもならない」 瑞鶴「金剛さんの紅茶とどっちが美味しい?」 響「それは金剛さんかな。経験の差だと思うよ」 瑞鶴「やっぱりかぁ……」 響「瑞鶴さんは紅茶を淹れ始めてどれくらいなんだい?」 瑞鶴「これが初めてだけど、どうしたの?」 響「初めて……」 瑞鶴「?」 響「いや、ただ単に私も本格的に淹れた事があるんだけど、雲泥の差があるから……ちょっとね」 瑞鶴「あら、響も淹れた事があるの?」 響「うん。だけど、ティーバッグの方がずっと美味しかった。だから、初めてでここまで美味しく出来るのなら充分凄いと思うよ」 瑞鶴「なんだか照れるわね。ありがとっ」 響「正直な感想だよ」 瑞鶴「でも、私は本を読みながらやっただけよ。響もこれを読みながらやれば同じように出来ると思うわ。丁寧に分かりやすく書いてくれてるわよ、これ」 響「へぇ……。今度、借りても良いかな。また挑戦したくなったよ」 瑞鶴「良いわよ! お互い頑張りましょ」 響「スパスィーバ。じゃあ、私は間宮さんに会ってくるね」 瑞鶴「ええ。またねー」 …………………… ………… …… 375 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/07(土) 22:56:59.51 ID:kAOR1dc1o 金剛「テートク、そろそろ二時になりますケド、お身体は大丈夫デスか?」 提督「……ふむ、もうそんな時間か。金剛、今日はもう寝なさい」 金剛「テートクはどうするのデスか?」 提督「キリの良い所まで終わらせてから寝る」 金剛「では、私も付き合いますネ」 提督「比叡や榛名、霧島が寝ずに待っているかも知れんぞ」 金剛「あの三人には、今夜テートクの部屋にお泊りするかもしれませんと伝えてマース」 提督「……そうか。どんな反応をしていた」 金剛「比叡は複雑そうな顔をしてたネ。榛名と霧島は応援してくれまシタ」 提督「応援はまだ分からないでもないが、比叡に何があったんだろうな」 金剛「比叡もテートクの事を少し気に入っているみたいデスので、きっとそれが原因だと思いマス」 提督「……意外だな。そんなに接していないのだが」 金剛「何を言っているのデスか。この鎮守府にテートクの事が気になっていない人なんて居ませんヨ?」 提督「……………………」 金剛「嘘だと思うのでしたら聞いてみても良いのではないでショウか」 提督「……なんとなく想像が付いたから止めておくとしよう。だが、金剛の口からその言葉が出てくるとは思わなかったな」 金剛「テートクの良さが広まってくれるのは私にとってもハッピーな事デース! こんなに素敵な人を放っておける方が分からないデス!」 提督「…………」 提督「言葉だけ受け取っておこう。──さて、さっさとキリの良い所まで進めるとしようか」 金剛「ハイ! 体調管理も仕事の内デスからネー。テートクは放っておくといつまでもお仕事をしていそうで不安デス」 提督「…………」 金剛「……テートク?」 提督「──いや、言葉に詰まっただけだ。何も反論出来なかったからな」 提督(憶えていないようだが、考える事は『金剛』と同じ、か……) …………………… ………… …… 376 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/07(土) 22:57:26.19 ID:kAOR1dc1o コンコン──。 提督「入れ」 ガチャ──パタン 金剛「テートクー! ただいまー!」 提督「おかえり金剛」 金剛「ありがとうございますテートクー! スコーン大好きです!」ギューッ 提督「お気に召したかな」 金剛「勿論です! 間宮さんの所におつかいなんて何かと思ったら、とっても嬉しいサプライズなのです! お仕事の手を一旦止めて、ティータイムしましょう! ね? ね?」 提督「…………」 金剛「──あ、ダメ……でしたか?」 提督「……いや、余りのはしゃぎっぷりに驚いていただけだ」 金剛「あ……あうぅ…………」 提督「まあ、そこまで強請られたら断る訳にもいくまい。紅茶の用意をしてもらって良いか?」 金剛「テートクのいぢわる……」 提督「ああ、私はイタズラ好きだぞ」 金剛「もー……。私は紅茶を淹れてきます!」フイッ 提督「ああ、頼んだ」クス ……………………。 377 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/07(土) 22:57:59.30 ID:kAOR1dc1o 金剛「ん〜! おいしいっ! やっぱりクリームティーは一番ネー!」 提督「本当に好きだな」 金剛「ハイ! 特にこのクロデッドクリームなんて濃厚で最高デス!」サクサク 提督「……プレーンも美味いぞ」サクサク 金剛「そうなのデスか? では……」サクサク 金剛「……………………」 提督「どうした」 金剛「い、いえ……えっと……その…………」 提督「甘みが無くて食べられない、か」 金剛「うぅ……ハイ……。まったく砂糖が入っていないスコーンをプレーンでは……」 提督「……悪かった」 金剛「私は素直にジャムとクリームを付けて食べマス……」 提督(好みも同じ、か……) …………………… ………… …… 401 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/10(火) 19:06:12.65 ID:qKILR08vo 金剛「テートク、そろそろ二時デス」 提督「そうか。今日はここまでにしておこう」 金剛「はい。お疲れ様デス」 提督「ああ、お疲れ様」 金剛「…………うーん……」 提督「どうした」 金剛「いえ……テートクとの記憶なのデスが、最近新しい事が全然思い出せなくテ……。他にやっていない事はないデスか?」 提督「あるにはある。が、それは既に出来ない事が多い」 金剛「艦娘にしか出来ない事、とかデスか?」 提督「そういう事だ」 金剛「では……他には何も無いのデスか……?」 提督「ある」 金剛「ではそれを──」 提督「ダメだ」 金剛「──え?」 提督「こればかりは出来ない。お前も快く思わないものだ」 金剛「……どんなものなのでしょうか」 提督「聞かない方が良い」 金剛「どうしても、ですか?」 提督「…………」 金剛「…………」 402 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/10(火) 19:32:12.22 ID:qKILR08vo 提督「……良い気分にはならないぞ」 金剛「覚悟の上です」 提督「……そうか。なら言おう。肌を重ねる事だけはやっていない」 金剛「…………え?」 提督「二度は言わん。そういう事だ」 金剛「…………」 金剛「……………………」 金剛「…………………………………………」 提督「だから聞かない方が良いと言っただろう……」 金剛「あ、あのー……」 提督「なんだ」 金剛「……良いですよ? その、えっちな事……」 提督「…………」 金剛「ほ、ほら! もしかしたらそれで思い出すかもしれないじゃないですか!」 提督「…………」 金剛「それにほら、私の嫌という訳ではありませんし……テートクも気持ち良くなれますよ?」 提督「…………」 金剛「……ダメですか?」 提督「…………」ズル 金剛「──え?」 ──ドサッ ……………………。 403 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/10(火) 19:51:53.72 ID:qKILR08vo 提督「……すまん。迷惑を掛けた」 救護妖精「……意識が戻るの早いね。あたし来たばっかりなんだけど」 提督「……どのくらい時間が経っている」 金剛「えっと、五分も経っていないと思いマス」 提督「……そうか。ありがとう、金剛…………」 金剛「あ、あの……顔色が悪いようですけど大丈夫なのですか……?」 救護妖精「ほい提督、バケツ」スッ 提督「…………」スッ 金剛(ぁー……まだ口の中に砂糖が残っているのですね……) 〜提督がバケツに嘔吐しました。これより、吐瀉物の処理に入ります〜 救護妖精「よくあれだけ我慢出来たね」 提督「汚すと後が大変だからな……」 金剛「テートク、紅茶を飲みマスか?」 提督「頂こう……」チビチビ 金剛(ああ……相当辛いようですね……) 提督「……うむ。少し楽になった。ありがとう金剛」 金剛「お役に立てたのなら嬉しいデス」 救護妖精「まあ、症状が軽いみたいで良かったよ。特に問題もなさそうだしね」 金剛「良かったぁ……」ホッ 救護妖精「んじゃあ、後は若い者に任せるとしようかね。あんまり激しく動くんじゃないよ。お大事にねー」 ガチャ──パタン 404 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/10(火) 20:17:58.23 ID:qKILR08vo 提督「……事の経緯でも話したのか?」 金剛「いえ、特には……。どうして気付いたのでしょうか……」 提督「ただ単なる冗談だと思いたいが、真実は彼女のみぞ知る、か……」 金剛「流石に訊くなんて事は出来ません……」 提督「時々、救護妖精の考えている事が全く掴めない事があるよ」 金剛「私はほとんど分からないです……」 提督・金剛「…………」 提督「……深くは考えないようにしておこう」 金剛「それが良いですね……」 金剛「えっと、それと……えっちな事はどうしますか……?」 提督「…………」 金剛「…………」ドキドキ 提督「……お前の記憶が戻ったら、な」 金剛「──はい。きっと戻してみせます」 提督(…………) …………………… ………… …… 405 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/10(火) 20:42:45.27 ID:qKILR08vo 提督「……うむ。素晴らしい」 少将「ほ、本当ですか!」 提督「ああ。これならば私がもう居なくても問題無いだろう」 少将「……とうとう、この日が来てしまいましたね」 中将A「寂しいものがありますな……」 中将B「本当に退役なされるのですか?」 提督「ああ。私のような死に損ないはとっとと消えるべきだ」 中将B「そうでございますか……」 提督「中将A、中将B、少将。これからのこの国を頼んだぞ」 中将A「何を仰っていますか。我々は海を護るだけですよ」 提督「……そうだったな」 中将B「これからの海軍も、大将殿の意思を潰えないようにしていきます」 提督「思想は時代と共に変わる。私に囚われ過ぎて大事なモノを見失うなよ」 中将A・中将B・少将「はっ!」ピシッ 提督「では、これから頼むぞ、新大将の三人。──会議はこれで終わりだ。以後、新大将の三人に任せる」 少将「──大将殿。最後にお一つ宜しいですか?」 提督「なにかね」 少将「軍縮についてですが、多数の鎮守府が廃棄される事となります」 提督「それがどうした」 406 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/10(火) 21:24:45.29 ID:qKILR08vo 少将「その内の一つを、貰って頂けませんか?」 提督「……どういう事だ」 中将A「私達のささやかなプレゼントだと思って下さい」 中将B「大将殿が居なければ、私達は大事なものに気付く事もありませんでした。そのお礼です」 少将「これがあの鎮守府の土地の権利書です。既に手続きは済ませておきました」 提督「……あのような広い土地をどうしろというのかね」 少将「それは大将殿がお決め下さい。……あの鎮守府に、何か思い入れがあるのですよね?」 提督「……隠していたつもりだったが、どうして分かった?」 中将A「勿論、私達も同じだからです」 中将B「特に大将殿は艦娘を大事にしておられたと耳にしています。そこまで知れば、想像するのは容易です」 提督「……やられた。私もまだまだ若いという事だな」 提督「ありがたく頂こう。鎮守府内の物資はどこへ運べば良い」 中将B「下の書類に記載してあります」 提督「分かった。……そうだな。残りの余生は海を眺めて暮らすとしよう」 中将A「まだまだお若いのですから旅をしてみるのも良いでしょう」 提督「そうだな。考えておく」 提督「……三人共、ありがとう」 提督(…………もう誰も戻って来ない鎮守府を、か……。戻ってきたように見える分、余計に心が痛むな……) …………………… ………… …… 407 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/10(火) 21:26:08.63 ID:qKILR08vo 提督「…………」 金剛「テートク、何か悩んでいるようですケド、どうしまシタ?」 提督「……ごねている者達をどう説得しようかと悩んでいてな」 金剛「ぁー……アハハハ…………」 提督「まったく。どうして私に拘るのか……」 提督(この鎮守府で暮らしていた者と大和、翔鶴は分かるが……利根と那智が離れるのを嫌がる理由がいまいち分からん。……大体の予想は付いているが) 提督「いっその事、ごねている全員をここに住まわせるのも手か」 金剛「──え!? そんな事出来るのですか!?」 提督「退役祝いとしてこの鎮守府の土地を頂いてな。出来ない事もない」 金剛「とても良い事じゃないですか! それでいきましょう!」 提督「だが、それは私が艦娘に関する情報を持っていると公言するようなものだ。艦娘と同じ姿、声をしている者が元鎮守府に一箇所で固まっていれば不審に思われるだろう」 金剛「ああ……確かに……。むー……身寄りの無い人を引き取ったとすればどうでショウか?」 提督「それでもあまり変わらないだろう」 金剛「デスよねー……」 提督「──うん?」 金剛「どうしまシタ?」 提督「この鎮守府の周辺の空き家を見ているのだが、昨日と比べて数が増えている事に気付いてな」スッ 金剛「えっと……あれ、本当デス。昨日まで一件でシタのに」 提督「移住をする季節ではあるから、いずれ空くとは思っていたが……いきなり十件近く空くとはな」 金剛「まあ、ここはどっちかと言えば田舎デスからね。深海棲艦が居なくなった今では戦争も無くなりまシタし、もっと都会の方へ移るのは当たり前なのでショウ」 提督「ふむ……皆を集めてくれるか?」 金剛「ハイ」 ……………………。 408 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/10(火) 21:26:36.42 ID:qKILR08vo 提督「──さて、これでどうだろうか」 川内「うーん……」 龍田「…………」 利根「確かに近いが……」 那智(これが妥協点か……?) 響「ヤダ」 提督「響達はまだ幼いからこの鎮守府で住んでもらう。その年で自立させるのはマズイと気付いた。すまない」 雷「あ、そうなのね」 電「良かったのです!」 島風「やったー!」 暁(お子様なのも案外バカに出来ないわね……) 天龍「おいズルい! 俺達もここで暮らしたいんだぞ!」 提督「遊びに来るのは構わん」 天龍「む……それならまあ……」 提督「これで納得してくれないと、どうしようも出来ない」 神通「……仕方がないようですね」 利根「むう。提督殿の事は気に入っておったのじゃがのう」 提督「私もこれ以上は譲歩出来ん」 龍田「それなら仕方が無いわね〜。ここに遊びに来ても良いのなら私は良いわよ〜」 那珂「私もそれなら良いかなぁ」 大和「……まあ、それなら」 瑞鶴「仕方ないわねぇ。それで妥協するわ」 提督「話は纏まったな。では各自、引越しの準備をしておきなさい」 瑞鶴「……ところで、金剛さんはどうなるの?」 提督「まだやって貰わなければならない事がある。しばらくは住み込みで働いてもらう事になるだろう」 瑞鶴「良いなぁ……」 龍田「…………」 川内「むー……」 榛名「じゃあ、私達もですか?」 提督「お前達は金剛の姉妹だからな。希望を出すのならば終わるまでここで住むのも構わん」 比叡(良し!)グッ 川内「ずーるーいー!」 龍田「流石に私もそれは寛容できそうにないわ〜」 瑞鶴「私も抗議に出るわよ」 那智「私も納得できない」 利根「うむ」 提督(……振り出しに戻った) …………………… ………… …… 414 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/12(木) 17:52:25.58 ID:eEap9igho 提督「……ふう」 金剛「なんとか納得してくれましたネ……」 提督「ああ……。疲れた」 金剛「お疲れ様デス」ソッ 提督「……抱き締めてきてどうした」 金剛「なんだか、急に愛おしくなっちゃいまシテ」スリスリ 提督「……そうか」ナデナデ 金剛「ん……落ち着きます」スリスリ 提督「……金剛」 金剛「はい。何でしょうか?」 提督「一つ、変な質問をするが良いか?」 金剛「? はい」 提督「金剛、お前は金剛だよな」 金剛「は、はい……?」 提督「…………」 金剛(テートクが何を言いたいのか分からないです……。私は私以外なんでもないですし……もしかして、艦娘の『金剛』かどうかという意味なのでしょうか……?) 金剛「えっと……」 提督「…………」 金剛(いえ、テートクがそんな事を訊くはずがないです。テートクなら自分の目で確かめて自分で判断します) 金剛「その……」 提督「…………」 金剛(……ダメ。どういう意図があるのか分からないです……) 金剛「……ごめんなさい。テートクが何を言おうとしているのか分からないです……」 提督「…………そうか」 金剛「でも! ……もし、私が艦娘の『金剛』という意味で言ったのでしたら、私は分からないです」 金剛「最近、本当に新しい事は何も思い出せないのです……。だんだんと、本当に私はテートクの知っている『金剛』なのかどう分からなくなってきました……」 金剛「こんな私は……テートクにとっては、別人なのかも、しれません…………」 提督「……………………」 金剛「…………」 415 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/12(木) 17:53:14.79 ID:eEap9igho 提督「……お前は、私の事をどう思っている」 金剛「それは……愛しています。ご迷惑かもしれませんが……」 提督「好きな理由は、どうしてだ」 金剛「…………」 提督「…………」 金剛「……………………」 提督「……………………」 金剛「……分かりません。テートクの事を思い出している内に、いつの間にか好きになっていました」 提督「いつの間にか、か」 金剛「ごめんなさい……」 提督「謝らなくて良い。なんとなく、そんな気がしていた」 金剛「…………」 提督「一つ、確認しておきたい事がある。──金剛、お前は私を愛しているんだな?」 金剛「はい。絶対です」 提督「…………」 金剛「っあ……ごめんなさい……。そんな事を言っても信用出来ませんし、テートクが傷付いて──」 提督「いや、充分だ」 金剛「テートク……」 提督「……そういえば、お前と交わした特別な言葉で、まだ言っていないモノがあったな」 金剛「…………?」 提督「I don't mind that everything is a lie. As long as love me forever.」 金剛「──え? テ、テートク……それって……意味、分かっているです、よね?」 提督「ああ、勿論だ。……まあ、お前が言った言葉を少し捩ったものだがな」 金剛「でも……なぜ……なぜですか? 私は貴方の求めている金剛ではありません……記憶をちょっと貰った、姿形がそっくりの別人です……」 提督「確かに別人だろう。だが、それは身体面での話だ。精神面は、私の知っている金剛だと思っている」 金剛「…………」 提督「私が愛したのは『金剛』そのものだ。容れ物である身体は、さほど問題視していない。言い換えるならば、姿が変わってしまっても愛せなくなる事はない」 金剛「テートク……」 提督「私が認める。お前は、私の知っている金剛だ。何もかもが嘘でも構わない。お前が私を愛していると言ってくれるのなら、私はそれで良い」 金剛「……それ以外、全て嘘でも……ですか?」 提督「ああ。私はそれだけで充分だ」 金剛「…………」 提督「…………」 416 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/12(木) 17:54:24.82 ID:eEap9igho 金剛「身体が偽物です」 提督「些細な事だな」 金剛「心もほとんど偽物です」 提督「それがどうした」 金剛「これ以上、思い出さないかもしれませんよ」 提督「今のお前で充分だ」 金剛「……貴方を、私の魂に刻んでも良いですか?」 提督「とっくに刻まれているんじゃないか?」 金剛「…………」 提督「…………」 金剛「……負けました」 提督「このやりとりで勝ったのは初めてだ」 金剛「嬉しいですか?」 提督「お前をお前と見れて嬉しいよ」 金剛「……テートク」 提督「どうした」 金剛「──大好きです」 提督「──私もだ」 コンコン──。 提督「……入れ」 金剛「え、あ、ちょっと──」 ガチャ──パタン 瑞鶴「やっほー。遊びに来たわよー。あら、金剛さんが先客のようね」 金剛「…………」 金剛(もうちょっと、テートクと甘い会話をしたかったです……) 瑞鶴「……なんだか落ち込んでるけど、私お邪魔だったかしら」 金剛「い、いえ! 大丈夫デス!」 瑞鶴(ああ、やっぱり邪魔しちゃったみたいね) 417 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/12(木) 17:54:51.37 ID:eEap9igho 提督「それより、こんな時間にどうした」 瑞鶴「夜這いって言ったらどうする?」 金剛「全力で阻止しマス」 瑞鶴「金剛さん怖いってば……」 金剛「瑞鶴には言わないといけないデスね。宣言しておきマス」ギュ 提督「…………」 瑞鶴「何を?」 金剛「テートクのハートを掴むのは、私デース!」 瑞鶴「!?」 金剛「瑞鶴には絶対に譲りませんからネー!」 瑞鶴「…………」ニヤ 瑞鶴「……宣戦布告っていう事で良いのかしら?」 提督「お前、前に邪魔は出来ないとか言っていなかったか」 瑞鶴「あの場の邪魔は出来ないって言っただけよ。諦めるなんて一言も言ってないわ」 金剛「やっぱり貴女はライバルですネ……」 瑞鶴「ふふん。今は提督さんの心は金剛さんに向いている見たいだけど、隙を見せたら攫っちゃうからね」ニヤニヤ 金剛「何があっても繋ぎ止めてみせマス!」ギュゥ 瑞鶴「まあ私は、第二夫人でも全然良いんだけどね?」ニヤニヤ 金剛「テートク! この国はそんな制度を認められていないネ!!」 提督「一夫多妻をするつもりはない。そもそも瑞鶴は私の妹だろう」 瑞鶴「ちぇー」 提督「あと金剛。お前、からかわれているだけだぞ」 金剛「……なぁッ!?」 瑞鶴「ふふっ。必死になってる金剛さん、可愛かったわよ」 金剛「ずーいーかーくー!」 瑞鶴「まあまあ。提督さんを取るっていうのは冗談だから、ね?」 金剛「それとこれとは話が別デス!」 瑞鶴「あらあら」 瑞鶴(……なんだか違うような気もするけど、二人が幸せそうならそれで良いわね) 金剛「大体、瑞鶴は──」 瑞鶴(艦娘の私の望んでた事、ちゃんと叶ったみたい) 金剛「そもそも──」 瑞鶴(幸せにね、二人共──) 金剛「ちゃんと聞いていマスか瑞鶴ー!」 ──── 金剛「テートクのハートを掴むのは、私デース!」瑞鶴「!?」 ──── 了 418 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/12/12(木) 17:56:54.87 ID:eEap9igho これにてトゥルーエンドは終わりとなります。 ここまで読んで下さった方々、私のオナニーに付き合ってくれてありがとうございます。 ここからは質問やら何やらに答えていこうと思いますので、どうぞお気軽に書き込んでいって下さい。 425 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2013/12/12(木) 18:36:35.76 ID:PB0b7C+H0 6でも出てたけど救護妖精に影響与えた艦娘って誰? 子供たちと一緒にいるために犠牲になろうとした母親の大和じゃないかと思っているんだけど 出てきた後は皆記憶が消えちゃっているってことでいいのかな?自分の本当の名前とか出身地とか家のことぐらいは覚えているのかね? 427 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/12/12(木) 19:18:53.67 ID:eEap9igho >>425 裏設定も含んでいるのでわざと出しませんでした。 Q: 救護妖精に影響を与えた艦娘は誰? A: 自分なりに考えている設定はありますけど、ここは各個人で妄想してもらいたい部分でもあります。 なので、考えられるであろう一部憶測の中に一つだけ正解を入れてお答えします。 1:救護妖精に影響を与えた艦娘の原典は培養液に適応できず死んでいる。救護妖精が職員を全員殺してまでやり遂げようと思ったのはこの為。 2:幼いながらも妙に頭の回る雷。それ故、救護妖精は本当は良い人だと気付いていて信じていた。 3:海軍の最終兵器である大和。最終兵器故に最後に造られているので、時系列的に可能性が高い。 4:提督の艦娘にならなかった誰か。 Q: (カプセルから)出てきた後は皆記憶が消えているのか? A: 正確には、記憶が定着していないだけです。ただし、時間と共に艦娘の記憶は一部を除いて消えていきます。 裏の設定として、一部の艦娘として必要な記憶や経験は原典に蓄積されます。特に練習もせず砲撃や雷撃をガンガン当てられるのはその為です。 また、そのタイミングとは艦娘の魂が原典に還った時で、この時点では記憶や経験を選別します。 何も考える事を許されていないカプセルの中とは違い、カプセル解放後の原典の少女達は物事を考えられます。なので、記憶の定着には時間が掛かり、この時の彼女達の行動次第で定着出来る記憶が決まります。 思い切り考えたり悩んだり、精神が不安定な状態であればある程、記憶の選別には時間が掛かります。 グッドエンドの金剛は、提督が全く振り向いてくれないので、焦り、悩み、何とかしようと躍起になっていたので大体の『提督の金剛』の記憶が定着しました。 一方、トゥルーエンドの金剛は、落ち着いて提督と共に記憶探しをして安定してしまっていたので、あまり『提督の金剛』の記憶が定着しませんでした。 また、原典となる前の記憶はほぼ完全に消えています。艦娘にとっては邪魔以外何物でも無いので研究者達が消しました。 ただ、姉妹や親子などの感情は完全に消えさせずにしています。なので、金剛型などの姉妹はいつも一緒にくっついています。 430 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2013/12/12(木) 21:31:03.38 ID:jCKO8NyOo 救護妖精はどの妖精をモデルとしてるのかが気になる 431 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/12/12(木) 22:58:14.12 ID:eEap9igho >>430 見た目はチュートリアルの三つ編み妖精さんがベースです。ただし、性格の方は羅針盤の眠そうな妖精さんを参考にしています。 435 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2013/12/13(金) 00:18:01.79 ID:LJgR2Z/Y0 トータル150人近くいた訳だが、みんなどこへ行ったの? 第六駆逐隊は残るとして、年齢の近そうな睦月型とか吹雪型はどこへ? 記憶が無いと、帰る場所もわからないんじゃない? 436 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2013/12/13(金) 01:06:09.58 ID:Pri3UIKNo >>435 自活できる年の子達は新しい入居先とお金を渡して自活させています。 自活できそうにない他の駆逐艦達は、基本的に養子として貰われたりしています。ごねた駆逐艦は第六駆逐隊と島風のみで、この五人だけ鎮守府でお勉強する事になりました。 人数が多かったという事と金剛の事について悩んでいたので>>408になるまで提督は気付かなかったのです。 また、グッドエンドでも>>259の後で提督が気付いて養子に出す事になりましたが省略しました。 で、結局トゥルーエンドで書こうと思っていたのにその件を書くのを忘れていました……。 437 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] 投稿日:2013/12/13(金) 15:33:09.20 ID:7k99GD7cO 提督は退役軍人なのに事務作業とはこれいかに 443 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/12/13(金) 18:51:12.74 ID:BX5PLSiEo >>437 解放した原典の少女は現在の海軍と関係ないので、提督が勝手に入居先やらなんやらを探しています。 事務作業はこれですね。 あと、メール欄にはsageを入れておくのを推奨します。割とガチで。 更に今更なんだけど、コテとか付けなかったけど大丈夫だったのかな。 474 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/12/19(木) 16:45:01.17 ID:jJdWouZko 軽く書いたので投下します。真面目に蛇足程度なのであまり期待しない方が良いかもね。 475 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/19(木) 16:45:55.40 ID:jJdWouZko 瑞鶴「…………」チビチビ 翔鶴「…………」コクコク 大和「…………」コクコク 提督「…………」ズズッ 金剛(何を話せば良いのか分からないというのは理解できマスが、とても家族の団欒とは思えまセン……。本当に紅茶を飲んでいるだけデス……) 提督「……ここに住みだしてからそろそろ半月は経つが、この元鎮守府には慣れたか?」 翔鶴「は、はい……」 大和「……と、とても良い場所だと思います」 瑞鶴「ここって良いわよねー。鎮守府自体もこの部屋も。まさに我が家って感じ」 提督「……ふむ。金剛はどうだ?」 金剛「……私も瑞鶴と同じ意見デス。初めて来た時から知らない場所とは思えませんでシタ」 瑞鶴「あ、やっぱり金剛さんも?」 金剛「ハイ。空気と言いマスか雰囲気と言いマスか……よくは分からないですケド、ここはとても大事な場所だと思っていマス」 提督「……そうか。そう言ってくれるとありがたい」 瑞鶴「…………」 翔鶴「…………」 大和「…………」 金剛「…………」 提督「…………」 金剛(か、会話が続きまセン……) 476 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/19(木) 16:46:28.02 ID:jJdWouZko コンコン──。 提督「入れ」 金剛(誰でも良いデス! この気まずい空気を何とかして下サイ!) ガチャ──パタン 響「あれ、お邪魔だったかな」 金剛(……こう言うのもアレですケド……響は大人しいデスから期待は出来ないネ……) 提督「いや、構わない。どうした」 響「単純に遊びに来ただけだよ。一家の団欒中かな? それにしては空気が重いようだけど」 提督「何を話せば良いのか分からなくてな。さっきからこんな感じだ」 響「勿体無いね」トコトコ 響「よいしょ」ポフッ 金剛・瑞鶴「え」 翔鶴・大和「!」 提督「……なぜ私の膝の上に座った」 響「座りたかったからだよ。あと甘えたいから。ほら、抱き締めて」 提督「……何を言っているんだ。ほら、降りなさい」 響「ヤダ。しっかり愛でてくれないと降りない」 瑞鶴「ちょっとちょっと! 何それ! ずるいわよ! 私だってまだ身を寄せた事すらないのよ!?」 翔鶴「確かに、私も甘えた事がありません」 金剛「テートクの正妻は私デス!」 大和「どうして論点がそこになるのかしら……?」 477 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/19(木) 16:46:54.87 ID:jJdWouZko 瑞鶴「私だって甘えたいけど我慢してるっていうのに、他の子が甘えてるのなんて見逃せないわよ」 翔鶴「瑞鶴と同じです。私達はお兄さんの膝に乗った事すらないのに」 金剛「私は単純に嫉妬していマス」ヂー 大和(金剛さんは置いておいて、二人はまるで子供ね……) 提督「そういう事だ響。降りなさい」 響「むう……仕方が無いね」スッ 金剛「…………」ギュ 響「なんだい、金剛さん?」 金剛「変な事をしないようにする為デス」ギュー 響「賢明な判断だね」ソッ 金剛「…………? 手を握ってどうしまシタ?」 響「あったかいね」 金剛「……ええ」 瑞鶴「……なんか、提督さんと金剛さんの子供みたいで微妙な気分」 金剛「こ、子供……?」 翔鶴「まだ姉妹の方が近くない……?」 大和「流石にこれくらいの子供を持つには若過ぎると思いますよ」 響「おかーさん」 金剛「!」 響「おとーさん」 提督「…………」ピクッ 金剛「……ダメです。なんか母性本能が」ギュー 提督「…………」ナデナデ 478 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/12/19(木) 16:47:55.84 ID:jJdWouZko 瑞鶴「何あれ……凄い羨ましい……」 翔鶴「私達も言ってもらうとなると、おねーちゃんになるのかしら?」 大和「そうなると私は、おばーちゃんですね……」ズーン 翔鶴「そ、そういう意味ではなくて!」 提督「父の話によると大和の年齢は四十八になるはずだが、半分の数字でも通用するな」 瑞鶴「うんうん。私達の姉って言われても違和感無いわよね」 翔鶴「む、むしろ、そっちの方がしっくりしますよ!」 金剛「そもそもグランドマザーと呼ぶのには無理がありマス」 大和「貴女達が良い子で嬉しいわ……」ナデナデ 瑞鶴(あー……こういうのされると、やっぱりお母さんなんだなぁって思うわね) 金剛「っと、響の紅茶も用意しますネ。ちょっとだけ待っていて下サイ」スッ 響「あれ、私を放して良いのかい」 金剛「その時は響だけお茶菓子抜きデス」ニコ 響「紅茶の淹れ方を教えてもらっても良いかな」 金剛「ハイ。勿論デス!」 瑞鶴「お茶菓子の魅力には勝てなかったのね」 大和「女の子は甘い物が大好きですものね」 翔鶴「はい。甘い物が嫌いな女の子は居ませんよね」 大和「そういえば、甘い物といったら──」 提督(……ふむ。あの重々しい空気が消えたな。後で響にお礼を言うとするか) 提督「…………」チラ 提督(青いな……空。どこまでもどこまでも青くて、少し前まで戦争をしていたとは思えない青さだ) 提督(電、金剛、雷、響、瑞鶴、神通、川内、那珂、暁、天龍、龍田……皆、良くやってくれた) 提督(暁、響、雷、電……もう憶えていないのだろうが、この掛け軸はずっと飾っておくぞ)チラ 響「…………」ニヤ 金剛「どうしました、響?」 響「ううん。なんでもないよ」 瑞鶴「? 外なんて眺めてどうしたの、お兄ちゃん?」 提督「いや……ただ単に思っていただけだ──」 提督「──平和だな、とな」 479 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/12/19(木) 16:58:37.14 ID:jJdWouZko 以上で蛇足終了です。 加賀さんと大将Bの話も書いてみたいと思ったけど、流石にあれこれと書き出すといつまで経っても終わらない気がしたので止めました。 これが本だったら全部書いてたかもね。 三日後にはHTML依頼を出します。 現行で読めず、レスしたかったのにレス出来なかった人の為にこのSS専用のアドレスを晒しておきますので、何か感想やその他を書き残したい方が居ましたら下のアドレスにどうぞ。返せるだけ返します。 kongou_zuikaku_hibiki@yahoo.co.jp それでは、ここまで読んで下さってありがとうございました。 また会う事がありましたら読んで下さいな。 493 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2013/12/20(金) 02:17:09.53 ID:6E7PaJa20 バッドエンドなかったじゃん 494 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2013/12/20(金) 03:08:58.20 ID:r7VXwwXso >>493 そういえば書いてなかった。 軽く紹介すると、元帥を海へ流した時に提督が低血糖で意識を失って溺死します。 そして、鎮守府では皆が提督の帰りを待ち、鎮守府周辺と海を探します。 鎮守府は金剛を主として提督の代わりに仕事をこなし、金剛が提督の帰りを窓から眺めながら 「提督……。提督が行方不明になってからもう半年です……。私、まだ待っていますから……。だから……約束、守って下さいね……?」 と言って終わり。というものです。