ゲンドウ「……ネルフをクビになった」 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/21(水) 21:39:41.47 ID:7nv+f0Zr0 シンジ「え……」 ゲンドウ「冬月が司令に成り代わって……何故だ……」 シンジ「父さん上司と折り合い悪いからでしょ」 シンジ「冬月さんが板挟みになって辛い、って何回も愚痴ってたよ」 ゲンドウ「ゼーレと私の人類補完思想は違うんだ」 シンジ「思想とか言ってる場合じゃないよ」 シンジ「早く再就職先見付けてよね」 シンジ「僕はネルフから給料出るからいいけど」 シンジ「中学生の僕に養われるなんて父さんも嫌でしょ」 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/21(水) 21:40:32.04 ID:7nv+f0Zr0 ゲンドウ「……まだ貯金はある」 シンジ「でもいつか無くなるじゃないか……」 シンジ「とりあえず今日のところはいいけど……お風呂先に入る?」 ゲンドウ「いや、私は後でいい」 シンジ「そう、僕が出たら早めに入ってね」 シンジ「お湯が冷めちゃったらもったいないから」 ゲンドウ「ああ、問題ない」 バタン ゲンドウ「……」 ゲンドウ「とは言え普通の仕事なんてしたことがないな……」 ゲンドウ「貯金はあるが……とりあえず手に職を、か」 ゲンドウ「……ハローワーク第三新東京支部に行くか」 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/21(水) 21:42:56.41 ID:7nv+f0Zr0 ……… …… … 面接官「それでは面接を始めます」 ゲンドウ「碇ゲンドウです、よろしくお願いします」 面接官「えーと、お宅は国家公務員を免職になった、と書いてありますが」 ゲンドウ「はい、上司との意見の食い違いにより」 面接官「詳しくはどんな業務内容だったのですか?」 ゲンドウ「国家機密なので答えられません」 面接官(なんだこのヒゲ) 面接官「……では、そちらではどのような役職に?」 ゲンドウ「司令です」 面接官「……司令?」 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/21(水) 21:44:43.77 ID:7nv+f0Zr0 ゲンドウ「……いえ、地位としては取締役クラスと認識しております」 面接官「そんなに偉い方でも免職になってしまう時代ですか……」 ゲンドウ「不景気ですから」 面接官「でもウチは飲食業ですし、そんな偉い方が当社で接客や水仕事ができますか?」 ゲンドウ「頑張ります」 面接官「頑張りますはいいんだけど……」 面接官「おたく、なんでグラサン着けて面接に来てるの?」 ゲンドウ「問題ない」 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/21(水) 21:46:11.57 ID:7nv+f0Zr0 面接官「いや、問題あるでしょ」 面接官「グラサン着けて接客するウェイターなんて聞いたことないでしょ?」 ゲンドウ「……これは私のトレードマークでして」 ゲンドウ「着けてないと息子にヤクザ扱いされて……」 面接官「いや、着けてても人相悪いよおたく」 面接官「ともかく、グラサン着けて面接に来るような方は採用出来ません」 ゲンドウ「……はい」 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/21(水) 21:48:13.49 ID:7nv+f0Zr0 ゲンドウ「……シンジ、三社受けたが駄目だった」 シンジ「そりゃグラサン着けて行ったら落ちるよ」 シンジ「面接は印象で決めるんだから」 シンジ「ヒゲ剃って、普通の眼鏡にして、髪も清潔にして行かなきゃ」 ゲンドウ「それでは私のアイデンティティーが」 シンジ「そんな事言ってたらいつまで経っても再就職出来ないよ!」 ゲンドウ「すまん……」 シンジ「ほら、ご飯だから器運んで」 ゲンドウ「今日はモツ鍋か」カチャカチャ シンジ「僕の給与だって使徒が来なくなったら入らなくなるんだし」 シンジ「いつ危険な目に会うかわからないんだから、早く仕事先決めてよ」トン 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/21(水) 21:49:52.43 ID:7nv+f0Zr0 ゲンドウ「すまんな、シンジ」 シンジ「いいよ、一応家族だし」 ゲンドウ「いただきます」 シンジ「いただきます」 ゲンドウ「……最近、ネルフはどうなっている」カチャ シンジ「使徒も来ないし、平和だよ」モグモグ ゲンドウ「そうか……レイの様子はどうだ」パク シンジ「明るくなったよ。今度食事会がしたいって言ってた」パクパク ゲンドウ「……そうか」ゴク ゲンドウ(私も行きたい) シンジ「ああもう、お酒飲むなら自分で買ってきてよ」 ゲンドウ「ああ」モグモグ 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/21(水) 21:51:48.08 ID:7nv+f0Zr0 チャラーラーチャーラーララー ジャラジャラジャラ ゲンドウ(就職難も重なって、熟年からの再就職がこうも難しいとは) リーチ! ゲンドウ(世界はこんなにも冷えきっていたのか) デーンデンデンデンデンデン シンヤシマサクセンカイシ! ゲンドウ(……使徒がいなくても、エヴァがなくても人類補完出来そうな勢いだな) ゲンドウ「あっ、金枠ラミエルリーチ外しやがった」ドン ゲンドウ「くそっ、やっぱり赤木博士は金枠でも信用ならんな」 ゲンドウ(隣は山ほど出ているし、そろそろやめ時か……)チラ ゲンドウ「……!」 加持「おや、碇司令じゃないですか」 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/21(水) 21:53:53.65 ID:7nv+f0Zr0 ゲンドウ「加持リョウジ……なぜここに」 加持「いや、冬月司令とゼーレからお前はもういらんと言われましてね」 加持「私もフーテンですよ」ハハハ ゲンドウ「今はどうやって暮らしている」 加持「葛城の家に居候させてもらってます」 加持「いわゆるヒモです」ハハハ ゲンドウ(ヒモか……赤木博士に掛け合ってみようか) ゲンドウ「だいぶ出ているな」 加持「二重スパイをやる前はこれで口に糊していましたから」 アヤナミヲ……カエセ! 加持「おっ、全回転」 ゲンドウ「……帰る」 加持「お疲れ様です。また飲みにでも行きましょう」 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/21(水) 21:56:31.79 ID:7nv+f0Zr0 ゲンドウ「FXとやらを始めようと思う」 ゲンドウ「面接は受からんからな」 シンジ「やめときなよ……きっと失敗するよ」 ゲンドウ「失敗するのなら誰もやらんだろう」 ゲンドウ「ネルフ在籍時の貯金はまだ豊富にあるしな」 ゲンドウ「エヴァを管理していた私にとってマネーゲームなど容易い」 シンジ「知らないよどうなっても……」 ……… …… … 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/21(水) 21:58:28.00 ID:7nv+f0Zr0 シンジ「ただいまー」 ゲンドウ「シンジ……」 シンジ「?どうしたの父さん、顔真っ青だよ」 シンジ「やっぱり失敗したんでしょ」ゴソゴソ ゲンドウ「私の貯金が……奪われていた」 シンジ「ええっ!?」 ゲンドウ「赤木博士の仕業だ……定期預金も含め全て……」 シンジ「な、なんで!?」 ゲンドウ「一度酔って暗証番号をポロリとこぼしたことがある……」 ゲンドウ「登録印も預けていたのを忘れていた……」 シンジ「そんなの犯罪じゃないか!ミサトさんに言って……」 ゲンドウ「いや……いい」 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/21(水) 22:00:16.89 ID:7nv+f0Zr0 シンジ「なんで!」 ゲンドウ「とにかく……いいんだ」 ゲンドウ(言ったら……) ポワポワポワーン ゲンドウ『赤木博士……私を縛ってくれないか』 リツコ『え……?』 ゲンドウ『縛って鞭で叩いた上ヒールで踏みながら罵って欲しい』 リツコ『そ、そんな変態みたいなこと出来ません!』 ゲンドウ『本当はレイにやって欲しいんだがな』ボソッ リツコ『やります』キリッ ……… …… … 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/21(水) 22:02:25.64 ID:7nv+f0Zr0 リツコ『ほら、これが欲しかったんでしょ?この薄汚い豚が!』パシーン ゲンドウ『ひぎぃ!』ビターン リツコ『ほらほら、豚なら鳴いて見せなさいよ!』パシーン ゲンドウ『ぶひぃ!』ゾクゾク リツコ『なんて恥ずかしい格好なのかしら!?』 リツコ『記念に写真を撮ってあげるわ』パシャ ゲンドウ『待て赤木博士、写真はまずい』 リツコ『誰が喋っていいって言ったの!?』パシーン ゲンドウ『あふぅ!』ビクンビクン ……… …… … 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/21(水) 22:03:41.12 ID:7nv+f0Zr0 ゲンドウ(言ったら間違いなくあの恥ずかしい写真をバラまかれる……) ゲンドウ(あれが世に出回ったら私の人生は終わりだ……) ゲンドウ「早急に金策については考える、問題ない」 シンジ「頼むよ父さん……僕の給料だって中学生って名目上、あんまり使えないんだから」 ゲンドウ「わかっている」 シンジ「はぁ……お風呂洗ってくるね」 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/21(水) 22:06:55.54 ID:7nv+f0Zr0 ゲンドウ「ああ」プシュ ゲンドウ「ゴクゴクゴクゴク」 ゲンドウ「ふう……」プハー シンジ「……仕事しないのにビールは飲むんだ?」 シンジ「あのだらしないミサトさんだって仕事してから飲んでたのに」 ゲンドウ「……いや」 シンジ「父さんの貯金があてにならなくなったんだから、お酒も控えてよ」スタスタ シンジ「父さんのお小遣いも減らすからね」バタン ゲンドウ「……」 ゲンドウ(楽に金が手に入る方法はないものか) 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/21(水) 22:08:57.86 ID:7nv+f0Zr0 チャラーラーチャーラーララー ヒャクヨンバンダイオオアタリスタートシマシタ! ゲンドウ(千円で10万くらい出ないものか)ジャラジャラジャラ ゲンドウ(月に50万稼ぐとして……1日2万弱勝てばいい計算か) チョーゼツカワイイミーチャン! リーチ! 加持「また会いましたね、碇元司令。出てますか?」 ゲンドウ「今、超絶カットインとゼブラ柄保留でのリーチが掛かったところだ」 加持「それは胸熱ですね。おや、推しメンはみーちゃんですか」 ゲンドウ「ああ、君は誰だ」 加持「私はまりこ様一筋ですので」 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/21(水) 22:10:46.13 ID:7nv+f0Zr0 ゲンドウ「パチンコで勝つ秘訣はなんだ」 加持「おや、何故ですか?」 ゲンドウ「職を失い、貯金も奪われた。パチンコで生活しようかと思ってな」 ゲンドウ「あっ、外しやがった……有り得ん」 加持「うわ、これは痛いですね……」 加持「ああ、秘訣でしたね」 加持「そうですね……データと回転率、でしょうか」 加持「とにかく機械割の高く、よく回る台を打ち続けることです」 ゲンドウ「そんなものか」 加持「ええ、特に多人数だと有効な手段ですが……一人だと厳しいかも知れませんね」 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/21(水) 22:12:42.40 ID:7nv+f0Zr0 ゲンドウ「辛いな、現実は……」 ゲンドウ「……帰る」 加持「お疲れ様です」 加持「あ、そうだ。明日競艇で大きなレースがあるんですが行きませんか?」 ゲンドウ「競艇か……やったことはないな」 加持「競馬や宝くじよりは遥かに当たりますよ」 ゲンドウ「わかった、行こう」 加持「では明日、迎えに行きますよ」 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/21(水) 22:14:38.02 ID:7nv+f0Zr0 ―――翌日 シンジ「ただいま……」 ゲンドウ「シンジ」 シンジ「うわっ!? び、びっくりさせないでよ父さん」 ゲンドウ「小遣いがなくなった……都合してくれ」 シンジ「昨日あげたばかりじゃないか!」 ゲンドウ「……」 シンジ「なんで一日でなくなるの!? 何に使ったの!?」 ゲンドウ「……加持リョウジに誘われて、その、競艇に」 シンジ「で……負けたの?」 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/21(水) 22:16:50.99 ID:7nv+f0Zr0 ゲンドウ「……あそこで六号艇がモンキーターンを決めていれば大勝だったのだ」 シンジ「父さん……」 ゲンドウ「なんだ」 シンジ「うちはそんなにお金持ちじゃないんだよ……」 シンジ「それなのに働かずに毎日パチンコや競艇に……」 ゲンドウ「それは……金を増やそうと」 シンジ「ギャンブルで生活できるわけないでしょ!」 ゲンドウ「……」 シンジ「最低だよ父さん! もう知らないよ!」 バタン ゲンドウ「……」 ゲンドウ「……最低、か」 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/21(水) 22:19:06.68 ID:7nv+f0Zr0 カー カー アスカ「あれ、あそこの川べりで体育座りしてるの、碇元司令じゃない?」 レイ「……そうかも。免職になったって聞いたし」 アスカ「そう言えばシンジがぼやいてたわね」 アスカ「アンタは声かけなくていいの、エコヒイキ? 碇元司令と仲良かったじゃない」 レイ「碇司令はもう司令じゃない」 レイ「まるでグラサンの似合ってないダメなおっさん……略してマダオよ」 アスカ「まぁそうね。それにしても……」 アスカ「あの背中、哀愁漂ってるわね……」 レイ「行きましょう」 ゲンドウ「……」 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/21(水) 22:21:47.76 ID:7nv+f0Zr0 ゲンドウ(職を失い、レイに愛想を尽かされ、愛人に貯金も奪われた……) ゲンドウ(これもまた、人類を補完しようとした報いか) ゲンドウ(私にはもう、シンジしか残っていない……) ゲンドウ(もう矜持や建前などどうでもいい) ゲンドウ(……働こう。身を粉にしてでも) ゲンドウ(例え、私が私でなくなったとしても) ゲンドウ(シンジだけは、失うわけに行かん) スッ ゲンドウ「まずは新しい髭剃りを買って眼鏡屋に行ってから……床屋だな」 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/21(水) 22:23:42.51 ID:7nv+f0Zr0 翌日 面接官「それでは面接を始めますね」 ゲンドウ「碇ゲンドウです! 趣味は草野球です!」 面接官「お歳の割に明るい人だね〜、前はどんなお仕事をしていらっしゃったんですか?」 ゲンドウ「巨大ロボットで人類を守るお仕事をしていました!」 面接官「はっはっは、面白い人だね。採用〜!」 そして私はコンビニ店員として働くことになった。 恥も外聞も知ったことではない。 生きるために働くという、人間としては当たり前の行為に、産まれて初めて傾倒する。 それは、意外にも悪い気はしなかった。 ゲンドウ「いらっしゃいませ!」 ミサト「ビールちょうだい。あとおつまみとおでん」 ゲンドウ「ありがとうございました!」 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/21(水) 22:25:02.48 ID:7nv+f0Zr0 コンビニの店員をしていると、色々な人間に出会える。 閉じた組織の中で決まった人間と接していた私にとって、それは新鮮だった。 ゲンドウ「いらっしゃいませー!」 青葉「ギターマガジンとのり弁」 ゲンドウ「ありがとうございましたー!」 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/21(水) 22:26:34.60 ID:7nv+f0Zr0 何度か昔の同僚に出会ったが、みんな私には気付いていないようだった。 当たり前だ、髭を剃り丸眼鏡をして七三分けにした私は、かつて椅子に座り威張り散らしていたまさにダメなお父さん、略してマダオではない。 ゲンドウ「らっしゃーせー!」 マヤ「アンアンとブブカと……プリンを」 ゲンドウ「あざーっしたー!」 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/21(水) 22:28:44.32 ID:7nv+f0Zr0 一か月、週休二日のアルバイトで働いて給与は前と比べ物にもならない15万円……。 慣れない仕事に身体は悲鳴を上げ、身体中筋肉痛と戦う日々だった。 ゲンドウ「あっしゃーせー!」 トウジ「おっちゃん、コーラとからあげ串! おっきいヤツ頼むわ!」 ヒカリ「もう鈴原、恥ずかしいこと大声で言わないでよ」 ゲンドウ「じゃーっしたー!」 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/21(水) 22:30:30.20 ID:7nv+f0Zr0 だが、皮肉にも心中はどこかで穏やかだった。 きっと、シンジと「普通の親子」として生活できているから、だろうか。 ゲンドウ「しゃーせー!」 レイ「包帯とカップラーメン」 ゲンドウ「あーっしたー!」 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/21(水) 22:31:46.39 ID:7nv+f0Zr0 朝から晩まで働き、家に帰ればシンジと一緒に飯を食い、寝る。 こんな当たり前のことが、今までは出来なかったのだ。 ゲンドウ「っせー!」 冬月「整髪料とブレスケアをもらえるかな」 ゲンドウ「っしたー!」 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/21(水) 22:34:09.90 ID:7nv+f0Zr0 ここにユイが居れば完璧だったのだが……過ぎた事はもう変えられない。 私にはユイの忘れ形見のシンジがいる。 それだけでいいじゃないか。 ゲンドウ「いらっしゃ……」 シンジ「と、父さん!?」 ゲンドウ「学校の帰りか、シンジ」 シンジ「う、うん……父さん、ここで働いてたんだ」 ゲンドウ「ああ。今からあげ串を作ったばかりだが、食うか。今なら105円が84円だぞ」 シンジ「いや、いいよ……帰ったらご飯だし」 ゲンドウ「卵も切れていたな。買って帰ろう」 シンジ「なんだか、不思議だね……父さんがコンビニの店員だなんて」 シンジ「ちょっと前までエヴァに乗れ、乗らなければ帰れ、なんて言ってたのに」 75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/21(水) 22:36:45.78 ID:7nv+f0Zr0 ゲンドウ「まあな。だが、悪くはない」 ゲンドウ「シンジとこうして話すこともできる。家に帰ればシンジと飯が食える」 ゲンドウ「私はそれで満足している」 シンジ「そうだね。僕も父さんと過ごせて嬉しいよ」 ゲンドウ「……そうか」 シンジ「ずっと一緒に暮らせなかったから……かな」 シンジ「母さんがいないのは少し寂しいけど、今は父さんがいるしね」 ゲンドウ「シンジ……今更だが、悪いことをした」 ゲンドウ「私は―――」 87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/21(水) 22:40:43.61 ID:7nv+f0Zr0 ドーン! シンジ「うわっ!?」 ゲンドウ「使徒か……!?」 ピピピピピ シンジ「は、はい」 ミサト『シンジ君、わかってると思うけど、使徒が現れたわ』 シンジ「もう肉眼で確認しましたよ!」 シンジ「なんでこんなに接近するまで気付かなかったんですか!」 ミサト『いきなり上空に現れたのよ! とにかく本部へ急いで!』 シンジ「は、はい!」ピッ ゲンドウ「行くのか」 シンジ「行かなきゃ……街のみんなが危ないよ」 ゲンドウ「シンジ、お前はもうエヴァに乗る必要はない」 シンジ「父さん……?」 92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/21(水) 22:43:13.68 ID:7nv+f0Zr0 ゲンドウ「今だから話そう。あの時お前を呼んだのは他でもない」 ゲンドウ「エヴァ初号機にはユイ……お前の母親の魂が宿っている」 シンジ「……!」 ゲンドウ「だからお前を呼んだ。初号機はお前にしか上手く動かせんからな」 ゲンドウ「だが……人類補完計画も、今となってはもうどうでもいい」 ゲンドウ「私という拘束具がない以上、お前はエヴァを降りてもいい」 ゲンドウ「動かせない初号機は永劫に凍結されるだろう。ユイには悪いが、約束は果たした」 96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/21(水) 22:46:02.98 ID:7nv+f0Zr0 シンジ「約束……?」 ゲンドウ「『シンジが幸せに暮らせるように』」 ゲンドウ「それがユイの言葉だ。私は、それを履き違えていたようだ」 ゲンドウ「私の宿願であった人類補完計画」 ゲンドウ「それは命の器と魂の器をひとつとし、永遠を生きること」 ゲンドウ「だが今の私に永遠に意味があるとは思えん」 ゲンドウ「ヒトは……朽ちるまで必死に戦うから美しいのだ」 シンジ「父……さん」 ゲンドウ「零号機と弐号機だけで第三新東京支部の運用は充分だしな」 ゲンドウ「一人の父親として、お前に無事でいてもらいたい」 シンジ「本当……父さんは勝手だね」 シンジ「いきなり呼んで乗れと言ったり、今度は降りてもいい、なんて……」 ゲンドウ「……言葉もない」 98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/21(水) 22:47:55.29 ID:7nv+f0Zr0 シンジ「でも……ありがとう。やっと父さんの言葉が聞けた気がした」 シンジ「でも、僕は行くよ」 シンジ「僕にしか乗れないなら、僕にしかやれないことがあると思うんだ」 ゲンドウ「そうか。ならば止める理由はない」 シンジ「うん、行ってくる」 ゲンドウ「今日は私が夕食を作ろう」 ゲンドウ「何がいい、言ってみろ」 シンジ「……オムライス」 ゲンドウ「わかった、健闘を祈る」 ゲンドウ「……頑張れ、碇シンジ」 シンジ「……うん!」タッ 99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/21(水) 22:48:39.41 ID:7nv+f0Zr0 店長「ちょ、ちょっと碇君! 外に変なの来てるよ! 早く避難しなきゃ!」 ゲンドウ「大丈夫ですよ、店長」 ゲンドウ「あれは、私の自慢の息子が何とかしますから」 ゲンドウ「私は品出しをしてきます」 ゲンドウ「これで……良かったのだろう? ユイ……」 102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/21(水) 22:49:58.35 ID:7nv+f0Zr0 シンジ「ただいまー」 ゲンドウ「お帰り、シンジ」 シンジ「わ、いい匂い。本当にオムライス作ってくれたの?」 ゲンドウ「約束だからな」 ゲンドウ「ただ……」 シンジ「?」 ゲンドウ「私の技術が足りないせいで……」グチャ シンジ「ぷっ……あはははは! これじゃチキンライスの卵炒めだよ」 ゲンドウ「すまない……」 シンジ「ううん、嬉しいよ。初めて父さんが僕にご飯を作ってくれたんだ」 シンジ「一緒に食べようよ」 ゲンドウ「あぁ、そうだな」 シンジ「いただきます」 ゲンドウ「いただきます」 完 113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/21(水) 22:51:42.94 ID:7nv+f0Zr0 見てくれた人ありがとう!