キョン「何書いてんだ長門」 1 名前: 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 [] 投稿日:2012/03/28(水) 01:53:02.37 ID:/eVwxgJ50 長門「SS」 カタカタ キョン「エスエス? 聞きなれない言葉だが」 長門「ネット上で書かれる小説のようなもの。 ショート小説」 キョン「小説ねえ………」 それは、文芸部の活動か? 長門「私の個人的な趣味。 部の活動とは違う」 趣味。 長門が趣味と言ったか。 4 名前: 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 [] 投稿日:2012/03/28(水) 01:59:50.81 ID:/eVwxgJ50 いつだったか、コンピ研の奴らとのこともあったし、 以前から長門にも趣味は存在した。 もはや驚くことでもないのか。 キョン「………見ていいかな」 長門「拒否はしない」 キョン「ふむ。」 どれどれ。 「んっ……」 次第に痛みも失せ、快感が身体を支配する。 言葉など交わさなかったが 彼と私の腰の動きが完全に一つになり、さらなる快楽を求める。 具体的な意味も持たない、日本語の役割を果たしていない呻き声のような声が コミュニケーションとしての役割を果たしている不思議な時間だった。 彼は私の体の向きを変え キョン「えっと………長門、これって」 6 名前: 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 [] 投稿日:2012/03/28(水) 02:05:26.27 ID:/eVwxgJ50 長門「濡れ場。」 キョン「………。」 長門「………芝居や演劇において、情事のしぐさを キョン「大丈夫だ知ってるから!」 まあ、そういうシーンもあるのだろう。 普通の小説でも、かなり官能的なシーンがあったりするのは事実だ。 俺も知っていることだ。 問題はない。 小説を書くというのは、つまりそういうことだ。 7 名前: 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 [] 投稿日:2012/03/28(水) 02:12:25.24 ID:/eVwxgJ50 長門「私の小説では、興味をそそられない?」 キョン「いや、そんなことは………」 長門がこんな文章を書けることに驚きはしたが。 まだちょっとしか読んでないし。 まだまだこれからだし、な。 彼は私の上に乗って言った。 「長門………俺、もう………」 「あなたはもう限界に近い。 射精を許可する」 キョン「ちょっ……! ちょっと待て、ちょっと待ってくれ長門」 長門「待つ。」 9 名前: 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 [] 投稿日:2012/03/28(水) 02:15:43.20 ID:/eVwxgJ50 長門「待つ。」 キョン「あ、ああ………。」 長門「『宇宙人の並べた文章なんて気持ち悪いったらないぜ』」 キョン「お、思ってないぞそんなこと」 長門「あなたの心拍数に異常がみられる」 11 名前: 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 [] 投稿日:2012/03/28(水) 02:22:48.86 ID:/eVwxgJ50 長門「『宇宙人が日本語を使っている時点で滑稽だ。 インコに人語で罵られる方がまだ好感が持てる』」 キョン「日本語はいいんだよ! そうじゃなくて、ちょっとびっくりしちまっただけだ」 長門「何か、問題点があるなら指摘するといい。」 キョン「あ、ああ………。 これはその、実在する人物がモデルなのか?」 長門「………想像に任せる」 12 名前: 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 [] 投稿日:2012/03/28(水) 02:30:04.00 ID:/eVwxgJ50 キョン「想像に任せる、ね………」 お前らしくない感じがするんだが。 長門「以前の私らしくは、ない」 ………いや、しかし長門が少しずつ変わってきているのは 俺も嬉しく思っていたことである。 長門「ヒューマノイドインターフェースは定期的にアップデートがなされている」 マジか。 13 名前: 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 [] 投稿日:2012/03/28(水) 02:37:01.10 ID:/eVwxgJ50 長門「地球での活動のため、より人間に近い存在なる」 キョン「………まあ、そう言われると確かに自然の成り行きなのかもしれないが」 長門「あなたにも、もっと近づける」 キョン「………?」 長門「………これ。」 コピー用紙の束。 ひもで綴じられている。 長門「SS、印刷した。 帰ったら、読んで」 俺の人生の中でも一番ぶっ飛んだ宿題が配られた。 目の前がくらくらする。 15 名前: 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 [] 投稿日:2012/03/28(水) 02:53:42.65 ID:/eVwxgJ50 キョン「あー、悪いが長門、これは受け取らないといけないものなのか」 長門「家でゆっくり読むといい」 俺は爆弾を持って帰らなければならないらしい。 いや、正直に言うと、読みたいという気持ちが一ミリもないわけではないのだ。 長門が書いた文章、饒舌な長門を知りたいという気持ちはある。 しかし、嫌な予感しかしない。 このまま静かに終わって欲しい。 だがそうはならないんだろうなという、確信にも似た何か。 『やっほー! 有希! ………と、あれ。 あんたにしては早いわね』 ばーん、と、ドアが打楽器のような音を響かせながら開いた。 18 名前: 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 [] 投稿日:2012/03/28(水) 03:07:34.21 ID:/eVwxgJ50 俺は長門から受け取ったコピー用紙を全力で制服の内側に押し込み、 自分の腹のあたりに固定した。 手で押さえればずり落ちない。 このまましばらく押さえて………、さて、やり過ごせるか。 ハルヒ「何やってんの?」 キョン「何もやっていないぞ」 棒読みである。 心臓がバクバクしているが、落ち着いて対応しろ、俺。 面倒なことは、勘弁だろ。 19 名前: 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 [] 投稿日:2012/03/28(水) 03:19:55.09 ID:/eVwxgJ50 ハルヒ「ふーん。」 ハルヒはすぐに俺から目を離して、長門の方に目をやる。 俺の不自然さには気づかなかったようだ。 ハルヒ「有希、何の話してたの?」 俺では埒が明かないから長門から攻める気か。 ハルヒ「いや、言い方が悪かったわね。 ええと………有希」 長門「なに」 ハルヒ「こいつに何か変なことされなかった?」 それで言い方を良くしたつもりなのかお前は。 24 名前: 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 [] 投稿日:2012/03/28(水) 03:32:21.52 ID:/eVwxgJ50 長門「変なこと、とは」 ハルヒ「………ん。 まあ、大丈夫みたいね。 でも気をつけなさいよ?」 俺は無害だよ。 お前よりはな。 それくらい自覚している。 「おや、どうかされたのですか?」 ドアの方から声がした。 SOS団の部室に集まったのはこれで4人目か。 25 名前: 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 [] 投稿日:2012/03/28(水) 03:43:32.83 ID:/eVwxgJ50 キョン「遅かったな古泉」 古泉「クラスでちょっとやることがありましてね」 ここで上手く話を古泉側に振って俺と長門から意識を逸らせれば理想的なのだが―― とか何とか考えていたら、古泉の方から振ってきた。 古泉「おや、お体が悪いのですか?」 キョン「ん?」 古泉「いえ、その手………意味がないのなら、いいのですが」 俺の下腹部。 ああ、なるほど。 俺が、腹が痛くて押さえてるように見えたのか。 27 名前: 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 [] 投稿日:2012/03/28(水) 03:52:34.88 ID:/eVwxgJ50 キョン「ああ、ちょっと………そ、そうなんだ。 腹が痛くてな、情けない話だが」 チャンスだ。 この言い訳で自然にこの部屋から失礼するとしよう。 ナイスだぜ古泉。 今度コーヒーくらいならおごってやるぞ。 ハルヒ「有希、パソコンで何か?」 有希「少し、書いていた」 28 名前: 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 [] 投稿日:2012/03/28(水) 03:58:38.46 ID:/eVwxgJ50 ハルヒ「ふうん………、団のホームページとかいじってたの?」 長門「あのサイトのソースは書き変えていない。 書いたのは個人的な、趣味の文章」 ハルヒ「へえ………! それって、完成したの?」 長門「作業はまだ、途中」 ハルヒ「………ちょっとだけ読んでいい?」 長門「拒否はしない」 ハルヒ「本当?」 長門「本当」 30 名前: 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 [] 投稿日:2012/03/28(水) 04:27:35.25 ID:/eVwxgJ50 ハルヒ「有希の書いた小説を見るのも久しぶりね」 好きなお菓子を買ってあげるよと親に言われた幼稚園児みたいな笑顔で 画面をのぞきこもうとしているそいつの肩を、 俺は掴んだ。 止めた。 固定した。 ハルヒはゆっくりと振り向く。 何が起きたかわからないようだ。 あからさまに迷惑そうである。 ハルヒ「な、何よ………」 キョン「あー………アレだ。 ほら、いい天気だよなぁ、今日って」 ハルヒ「は、はあ?」 34 名前: 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 [] 投稿日:2012/03/28(水) 05:44:19.59 ID:/eVwxgJ50 キョン「いやあ、いい天気だ。 こんな日は部屋の中でパソコンなんて見てたら、やってたら バチが当たる。 俺はそう思うんだよ」 ハルヒ「………」 キョン「こういう日には外で何か大きいことをやるべきなんじゃないか? 確実にそうだと思うぞ。 だって、俺たちSOS団はそういう存在だろ。」 ハルヒ「………」 キョン「そ、そうだ! 野球。 野球しようぜ! 去年使ったグローブがそこの段ボールの中に あるからさ」 ハルヒ「………」 37 名前: 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 [] 投稿日:2012/03/28(水) 06:14:42.95 ID:/eVwxgJ50 俺は喋る。 一生分喋ったような、しかしその実、何も喋っていないような、スッカスカな感覚だった。 俺が喋っている気がしなかった。 ハルヒは見慣れない生物を観察するような目で俺を見ていた。 俺の話を静かに、落ち着いて聞いていた。 本来は………本当なら。 こいつは人の話を聞くようなタイプではない。 つまり、いつもと違うのだ。 部室の空気が明らかにおかしい。 39 名前: 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 [] 投稿日:2012/03/28(水) 06:27:34.14 ID:/eVwxgJ50 そして、原因は俺である。 俺が絶対に言わないようなことをまくしたてたのは俺である。 ………いや、でも、だって、しょうがないだろ。 じゃあどうすればよかったんだよ! あの小説見られたらやばいだろうが! ハルヒ「ねえ、キョン」 キョン「はい」 ハルヒ「だいたいわかったわ」 なんだと。