夜神月「大事な話って?」総一郎「ああ……父さんな……」 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/09(金) 21:34:54.72 ID:NmMZojmR0 総一郎「警察……辞めたんだ」 月・粧裕・幸子『……え?』 総一郎「……すまん……」 月・粧裕・幸子『……』 ある晩の家族会議、 父さんから驚きの告白。 何故かそこには、ギターがあった。 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/09(金) 21:38:38.50 ID:NmMZojmR0 幸子「ちょっとあなた……どういうこと?」 月「そうだよ父さん。冗談はやめ――」 『ガシャリーンッ!!』 総一郎「冗談ではないっっっ!!!!!」 月・粧裕・幸子『……!!』 怒号とともに湯呑みを叩き割る父さん。 確かあれは、僕が小学生のときにあげた―― ……父の日のプレゼントなのに…… 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/09(金) 21:42:32.91 ID:NmMZojmR0 幸子「あ、あなた! その湯呑みは――」 総一郎「お前たち……見ろ」 幸子「!!」 右手を差し出す父さん。 破片で血だらけだった。 総一郎「……その目によく刻んでおけ!!」 総一郎「これが……私の決意だっっっ!!!」 月・粧裕・幸子『……!!』ビクッ 正直、何を言ってるか分からない。 でも父さんは……真剣だった……。 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/09(金) 21:47:29.61 ID:NmMZojmR0 幸子「あ、あなた……本当に何が――」 月「母さん! 今は止血が先だよ!」 月「粧裕、すぐにタオルを取ってくるんだ!」 粧裕「う、うん……わかった……!」 『スッ』 総一郎「立つなああああああっっっ!!!!!」グワッ 月・粧裕・幸子『……!!』ビクッ 総一郎「……」ハァハァ 月「……で、でも父さん……血を止めないと……」 総一郎「話はまだ……終わってないだろう」 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/09(金) 21:52:23.60 ID:NmMZojmR0 粧裕「うっ……ひっく……」グスン あまりの威圧に泣き出す粧裕。 くそっ。何なんだよこの状況は! 月「何で……警察を辞めたんだ?」 総一郎「……」スッ 腕を組み、目を閉じた父さん。 居間には重たい空気がのし掛かる。 総一郎「……これは警視総監直々の命令……」 月「……え?」 『ガンッッッッッ!!!!!』 総一郎「私は……ハメられたんだ!!!!」 月・粧裕・幸子『……!!』 テーブルを叩きつける父さん。その目は血走っている。 ハメられたって……一体どういうことなんだ……!? 総一郎「あれはそう……去年の冬のことだった――」 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/09(金) 21:57:00.76 ID:NmMZojmR0 ◇去年の冬://電車◇ ガタンゴトン……ガタンゴトン…… 『次は 東京 東京 お出口は――』 総一郎(よし、今日も仕事、がんばるz……ん!?)ピクッ 『さわっ、さわっ……』 総一郎(!!!!!) 総一郎(ま、まさかこれって……) ――ち、痴漢!? ガタンゴトン……ガタンゴトン…… 『さわ、さわ……もみ、もみ……』 総一郎「ぁ……///」 総一郎(くっ……どこの誰か知らんが……) 総一郎(私は警視庁刑事部部長……夜神総一郎だぞ!!) 総一郎(そんな私に痴漢して、生きて帰れると思うな!!) 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/09(金) 22:02:20.89 ID:NmMZojmR0 総一郎(見てろ! 今に一生の恥をかかせてやる!!)ガッ!! 痴漢の腕を強く掴んだ私――そして声を荒げる。 総一郎「みなさん! この人痴漢です!!!!」 ……しかし…… 少女「いたっ……おじさん……離してよぉ……」グスン 総一郎「なっ……!!!?」 驚くことに、私が掴んだ腕は、か細いものだった。 総一郎(……ま、まさかこんな少女が私に……!?) 少女「ひっく……離して……痛い……痛いよぉ……」グスン 私は心底驚いた。こんな少女が痴漢だなんて……。 一体どういうことだ? そんなことがあり得るのか!? そんな意外性に、気を動転させていたら―― L「おやおや、これは珍しいことが起こりました」 一人の男が、車内に声を響かせた。 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/09(金) 22:08:52.41 ID:NmMZojmR0 L「紳士は今、“この人痴漢です”、とおっしゃいました」 L「しかし思い出して下さい。“痴漢”とは普通――」 L「女性に性的な嫌がらせを働く、“男性”のことですよね?」 総一郎「……!」 そう言いながら、私に歩み寄る猫背男。 まるで乗客全員に問いかけるような口調だ。 L「そこで紳士に質問ですが――」 L「あなたは本当に、痴漢を“され”たのですか?」 総一郎「くっ……!」 電車内に漂う、不穏な空気。 おかしい。何だかアウェイを感じる。 総一郎「確かに厳密には、痴漢でなく痴女だったが……」 総一郎「私が尻を触られたのは、紛れもない事実だ!」 L「ほう……こんな清純な少女が、あなたのような中老に?」 総一郎「だからそう言ってるだろ! 人を外見で判断するな!」 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/09(金) 22:14:08.15 ID:NmMZojmR0 L「では当の本人に聞いてみましょう」 L「あなたは、彼のお尻を触りましたか?」 少女「≡」ブンブン 首を横に振る少女。 瞳にはまだ、涙が残っている。 L「触ってないそうですよ?」 総一郎「なっ……この女……!!」 L「片方は触ったといい、もう片方は触ってないという」 L「これはどちらかが……嘘をついているようですね」 総一郎「バカを言うな。私が嘘をつくわけないだろ!」 L「そんなこと、誰にも分かりませんよ」 L「むしろこの場所の特性を考えると――」 L「あなたの方が不利だと言えますけどね」 総一郎「私が不利だと……? どういうことだ?」 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/09(金) 22:19:17.61 ID:NmMZojmR0 L「少女さん。この車両は何と呼ばれていますか?」 少女「……女性……専用車両……」グスン 総一郎「それがどうしたというんだ?」 L「気づきませんか? 女性専用車両ということは――」 L「この車両に、男性が乗ることは許されないんですよ?」 総一郎「だから、それがどうしたと聞いているんだッ!!」 L「……!?」 総一郎「この車両が女性専用? そんなことは分かっている」 総一郎「痴漢防止のために設立された? もちろん知っている」 総一郎「だが私が痴漢なんてすると思うか? 無論するわけがない!!」 総一郎「だから私は、女性専用車両に乗ってもいいんだ!!」 L(この男……何を言ってるんだ……?) 95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/09(金) 22:24:30.45 ID:NmMZojmR0 L「……まぁいいでしょう。とりあえずは百歩譲ります」 L「では、この女性専用車両に乗車した理由を教えて下さい」 総一郎「ふん。すいてたからに決まっている」 総一郎「今は通勤ラッシュ中。当然の選択だろう」 L「……なるほど。自分は特別扱い、というワケですね」 総一郎「特別扱い? 断じてそのような意識はない」 総一郎「他の男も、私を真似たきゃ真似ればいいし」 総一郎「現にお前も、この車両に乗っているじゃないか」 L「ほう……私が男だと、どうして決め付けるのですか?」 総一郎「……何?」ピクッ 107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/09(金) 22:29:21.24 ID:NmMZojmR0 L「“人を外見で判断するな”、そう言ったのはあなたですよ?」 総一郎「ふん。その声・容姿から考えると、男が妥当だろう?」 L「これはこれは、立派な先入観をお持ちで」 L「声の低い女性や、ずぼらな格好をした女性がいないとでも?」 総一郎「私は可能性の話をしている。妥当とはそういう意味だ」 L「つまり統計的に私を男だと判断した、ということですか?」 総一郎「ああ。人間は普通そうする。何もおかしいことではない」 L「確かにそうですが、それでは100%とは言えませんよね?」 総一郎「しつこいぞ。性別判断にそこまでの精度は必要ないだろ」 L「しかし私は今、こうして完全性を要求しているんです」 L「私が男かどうか、100%で知りたければ――」 L「私の股間を触ってみるのが一番だと思いますよ」 総一郎「……何? 股間を触るだと?」 L「はい。性別を判断するにあたって――」 L「性器を基準にすることは、言わばスタンダードですから」 128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/09(金) 22:36:27.52 ID:NmMZojmR0 総一郎「ふん……確かに一発で分かる方法だな」 L「ええ。決定的な証拠となるはずです」 総一郎「そこまで言うなら……確かめさせてもらうぞ?」 L「……」ゴクリ 『もみもみ』 総一郎「……ふん。ほら見たことか。やはり付いて――」 『ガシッ』 L「みなさん! この人痴漢です!!!!」 総一郎「なっ……なにぃっ……!!!?」 L「そう。本来“痴漢”というのは、このような“男”のことを指します」 L「つまりあなたは、女性を男性呼ばわりした、ということです」 L「それは故意・過失を問わず、許されることではありません」 L「紳士であるなら、今すぐ彼女に謝っていただけませんか?」 少女「……ぐすん……ひっく……」 総一郎「!!!!!」 143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/09(金) 22:41:52.95 ID:NmMZojmR0 総一郎「何で謝罪なんか……たかが言葉を間違えただけだろ!」 L「いいえ謝ってください。さもないと――」 L「私に働いた痴漢行為に、責任を取ってもらいますよ?」 総一郎「!!!!!」 総一郎「ふざけるな! お前が触れといったんだろう!」 L「いえ。私は“触っていい”なんて一言も言ってませんよ」 L「“触ったら男かどうか分かる”、と言っただけです」 総一郎「くっ……そんなのは屁理屈だっ!!」 L「ところで少女さん、彼が私の股間に触るのを見ましたか?」 少女「……」コクリ 首を縦に振る少女。それを見て猫背男はニヤリ。 L「おほっ、これはこれは。どうします? 目撃者がいますよ?」 L「あれほど痴漢をしないと豪語していた人が痴漢ですか?」 総一郎「くっ……この下衆野郎っ……!!」 総一郎「……謝ればいいんだろ……謝ればっ……!!!」 151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/09(金) 22:46:46.95 ID:NmMZojmR0 『カチッ』 L「では、少女に謝ってください」 L「“痴漢呼ばわりしてすみませんでした”、と」 少女「……ぐすん……ひっく……」 総一郎「……痴漢呼ばわりして……すまなかった……」 『カチッ』 L「はい、結構です。少女さん、これでいいですか?」 少女「……ぐすん……」コクリ L「良かったですね。許してもらえたようですよ?」 総一郎「……ふん。じゃあこの件はもういいだろう……」 総一郎「次は本題――この女が私の尻を触ったかどうかだ」 L「ほう……あくまでこの少女が、あなたに痴漢行為をしたと?」 総一郎「ああ。そればっかりは譲れない――」 総一郎「――痴漢は列記とした犯罪だからな!!」 少女「……ッ!」ビクッ 155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/09(金) 22:50:27.88 ID:NmMZojmR0 総一郎「皆さんの中に目撃者はいらっしゃいませんか!!」 総一郎「この少女が、私の尻に触る瞬間を見たという方は!!」 『……』 『……』 『……』 静まり返る車内。ただ虚しく、私の声が響くだけだった。 総一郎(くっ……目撃者はいないのか!!) L「ところで紳士。あなたはこの少女を疑ってるようですが」 L「もし彼女が痴漢行為をしてない場合――」 L「あなたは、“痴漢冤罪”の罪を背負うことになりますよ?」 総一郎「ふん。そんなものは怖くも何ともない」 総一郎「現実として、痴漢行為はあったのだからな!」 L「ほう……それは残念ですね……」 総一郎「……何? 残念だと?」 L「ええ。もしあなたが少女を痴漢として追い込み――」 L「結果として少女が何らかの罰を被ることになれば――」 L「それはすなわち、あなたが罰を受けることになりますから」 157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/09(金) 22:52:17.14 ID:NmMZojmR0 総一郎「ふん。意味が分からんな。私が罰を受けるだと?」 L「はい。もしあなたが少女を痴漢にしたてあげた場合――」 L「私は公の場で、このテープを再生しようと思っています」カチッ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 L「では、少女に謝ってください」 L「“痴漢呼ばわりしてすみませんでした”、と」 少女「……ぐすん……ひっく……」 総一郎「……痴漢呼ばわりして……すまなかった……」 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 総一郎「!!!?」 L「この録音、改めて聞くとどうですか?」 L「あなたが“痴漢冤罪”を認める内容になってませんか?」 総一郎「くっ……いつの間にっ……!!!」 L「今時、男だろうが女だろうが、痴漢は痴漢なんですよ?」 総一郎「きさま騙したなああああああああああ!!!!」 166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/09(金) 22:56:23.15 ID:NmMZojmR0 L「さて紳士。どうしますか?」 女性専用車両で、 少女がオヤジに痴漢をした。 L「これだけでも信じ難い話だというのに――」 仮に認められたとしても、 あなたは冤罪行為で裁きを受ける。 L「こんな状況、私なら素直に諦めますよ?」 総一郎「くっ……!!!」 L「無駄な足掻きはやめたらどうでしょう?」 総一郎「……お前は一体、私に何の恨みがあるんだ?」 L「恨み? そんなものはありませんよ」 L「強いて言うなら……“依頼”でしょうか」 L「女性専用車両に毎日乗り続ける男を懲らしめて欲しいと」 L「――この少女に頼まれましたから」 少女「……てへ♪ おじさんが悪いんだよ?」 総一郎「!!!!?」 182 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/09(金) 23:02:12.35 ID:NmMZojmR0 総一郎「じゃ、じゃあやはり……私の尻を触ったのは……」 少女「うん私だよ♪ でも録音があるから訴えられないね」 総一郎「……フフ……フハハハハハハハッ!!!!」 総一郎「バカめ! そんなもの乗客が証人になってくれる!」 総一郎「お前の自白が聞けた、その時点で私の勝ちだッ!!!」 少女「何言ってるの? そんなのいるわけないでしょ――」 少女「毎日女性専用車両に乗ってくる、おじさんの味方なんて」 総一郎「……!!」 L「依頼主としては、この話は穏便に済ませて欲しいようです」 L「警視庁刑事部部長がこんな様では、世間に示しがつきませんからね」 総一郎「くっ……そこまで大事になってるのか……?」 少女「感謝してよおじさん♪ 危うくクビだったんだよ?」 総一郎「……クビ? この正義感溢れる私がか?」 196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/09(金) 23:14:50.14 ID:NmMZojmR0 少女「うん♪ 実は私、おじさんの写真をパパに見せたの」 少女「パパ警察官だから、何とかしてくれると思ってね」 少女「そしたらパパ――」 “この写真の男が、何度も女性専用車両に乗ってくるのか?” “クッ、なんて野郎だ。安心しろ、今すぐやめさせ――ん?” “よく見ればコイツ……刑事部の夜神じゃないか!!” “何という警察官の恥! これは明日、緊急会議を開かねば!” 少女「――ってな感じに、何だかすごく怒っちゃってさ」 少女「可哀想だから私が探偵さんと隠密に解決するってことで」 少女「怒り狂うパパを説得したんだよ♪」 総一郎「……そうなのか……ちなみに君のお父さんの役職は……?」 少女「んーとねぇ……警視総監……だったかな?」 総一郎「!!!!!」 少女「おじさん、感謝してよね。パパすっごく怖かったんだから」 総一郎「ああ……ありがとう……私を救ってくれて……」 総一郎「私の正義を……認めてくれて……」 203 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/09(金) 23:22:49.78 ID:NmMZojmR0 ◆現在://夜神家/リビング◆ 総一郎「――というような流れで」 総一郎「警視総監の娘が私を救ってくれたのだ」 総一郎「まさにそれは、正義を貫く私へのご褒美……」 総一郎「彼女は本当に……良い子だった……」 月・粧裕・幸子『……』 ……父さん……? 総一郎「だから私は、彼女のことが好きになった」 総一郎「すまないが幸子……お前よりもずっとな……」 総一郎「しかし私の正義は、不倫という行為を許さない」 総一郎「だから私は、援助交際という形を取ることで」 総一郎「自らの正義を保つことに成功したのだ」 月・粧裕・幸子『……』 ……何を……言ってるの……? 213 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/09(金) 23:26:55.33 ID:NmMZojmR0 ◇回想続き://都内某所◇ 総一郎「これで頼む!」 私は1万円札を10枚束ね、 彼女に向かって頭を下げる。 少女「えぇ……困るよぉ……」 総一郎「頼む! おじさん本当に――」 総一郎「君のこと、好きになっちゃったんだ!」 少女「……でもおじさん……結婚してるんじゃないの?」 総一郎「ああ、してる……だから“援助”交際なんだ」 総一郎「断じて真剣な交際じゃない! 不倫ではないんだ!」 少女(……この人……本当に何言ってるの……?) 総一郎「くそっ……じゃあこれならどうだ!?」 私は精一杯の気持ちを込めて逆立ちをした。 路上の小石が掌に食い込んで痛い……だが乗り越えろっ! 総一郎「これが今の……私の気持ちだっっっっ!!!!」プルプル 少女(……も、もういやぁ……)グスン 221 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/09(金) 23:32:12.65 ID:NmMZojmR0 少女「……ぐすん……ひっく……」 総一郎「ん? 何を泣いて――はっ!?」プルプル 私の告白に……心打たれたというのか……。 なんて……なんて可愛いんだっ……! 総一郎「好きだ少女!! 大好きだぞぉ!!!!」プルプル 少女(いやああああああああああ!)グスン 少女(帰りたい……帰りたいよぉ……!)グスン 少女(でも帰ったら……きっとこの人悲しんじゃう……)グスン 少女(そう考えると……何だか胸が痛くて……)グスン 胸を押さえる少女。こういう人間はたまにいる。 相手の気持ちを汲みすぎるというか、同情しすぎというか。 病的なまでに自分の気持ちを押し殺してしまう人種。 総一郎(胸を押さえるくらい私を……愛おしすぎる)プルプル 総一郎「……じゃあ、私と援助交際、してくれるんだな?」 少女(……もうこの人……わけ分かんないよ……) 少女「……おじさん……警察官じゃないの……?」グスン 総一郎「ん? 警察官だが、それがどうしたんだ?」 230 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/09(金) 23:37:38.93 ID:NmMZojmR0 少女「私と援助交際したら、犯罪になっちゃうよ?」 少女「だって私まだ……中学生……未成年だもん」 少女「おじさん……警察官なのに罪を犯すの?」 総一郎「馬鹿者。正義が罪を犯すわけないだろう」 総一郎「それに君の言う“罪”というのは国が定めたもの――」 総一郎「そんなものは、論理が破綻しているっっ!!!!」 総一郎「援助交際は、私の正義では罪にならないっ!!!」 総一郎「少し考えれば自明だ。両者合意の下なんだぞ?」 総一郎「そこに犯罪性なんか、あるわけがないだろ!!!」 総一郎「児童の保護のため? あまり正義をなめるなっっ!」 総一郎「私は君を傷つけない。傷つけないがゴムはつける!」 総一郎「脅したり、ネットに晒したり? するわけがない!」 総一郎「だから私は、援助交際をしてもいいんだ!!」 少女「……!?」 ……もしかしてこの人……相当危ないんじゃ…… 244 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/09(金) 23:42:45.04 ID:NmMZojmR0 ◆現在://夜神家/リビング◆ 総一郎「――その後、私は彼女とラブホテルに行った」 総一郎「……何だその目は? もちろん合意の上だぞ?」 総一郎「彼女は嬉し涙を流しながら、快諾してくれたよ……」 月・粧裕・幸子『……』 総一郎「そしてその晩のことだ。異常事態が起こったのは……」 総一郎「……私の元に、警視総監から電話が掛かってきたんだ」 “夜神、話がある。今すぐ私の家まで来い” 総一郎「――ってな」 月・粧裕・幸子『……』 総一郎「……殴られたよ……12発……」 総一郎「そして自主退職を命じられ、私は職を失った……」 総一郎「そう……私は彼女に――」 『バンッッッッッッッッッッ!!!!!!!』 総一郎「――ハメられたんだっっっっ!!!!!」クワッ 268 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/09(金) 23:49:12.52 ID:NmMZojmR0 月・粧裕・幸子『……』 ……ふぅ……。 月「うあああああああああああっっっっっ!!!」 尊敬する父親がクズだった衝撃。 僕は全力で叫び、全てを吐き出そうとする。 粧裕・幸子『……』 言葉を失っている、母さんと粧裕。 僕の叫びすら、その耳には届いていない。 『バンッッッッッッッッッッ!!!!』 総一郎「静かにしろライト!!!」 総一郎「話はまだ終わってないだろ!!」 月「……黙れ……黙れ!!!!!」 総一郎「なっ!? 黙れだと!?」 総一郎「親に向かってその口の聞き方は何だ!!!!」 月「うるさい!! 全部お前が悪いんじゃないかっっっ!!!」 総一郎「何ッ!?」 278 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/09(金) 23:55:02.74 ID:NmMZojmR0 月「女性専用車両への乗車、援助交際が許される?」 月「冗談はたいがいにしろっ!! 特に援助交際ッッッ!!」 月「少女を傷つけた上に、母さんまで悲しませやがって!!」 総一郎「幸子が悲しむ? ふん! 知ったことか!!」 総一郎「私は本能で、幸子ではなく少女を選んだ!!」 総一郎「仕方のないことに一々文句をつけるんじゃない!!!!」 月「仕方がないだと!? お前は母さんと結婚してるんだぞ!?」 月「自分の誓いに責任を持て! 何のための理性だよっっ!!」 総一郎「だからある程度譲歩してやったんだろうが!!!」 総一郎「私が不倫ではなく援助交際を選んだ理由を忘れたか!!」 月「だからどっちも一緒だろッ! そのラインが意味不明なんだよ!!」 総一郎「意味不明!? 援助交際なんて風俗と同じだろうがっ!!」 総一郎「既婚者が風俗に行って何が悪い!? 説明してみろ!!!」 月「ふざけるなっ!! お前の場合、相手に惚れてんだろうが!!」 293 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/10(土) 00:01:23.56 ID:t9hoFfWD0 総一郎「それは本能だから仕方ないとさっき言っただろ!!!」 総一郎「お前は好きになるかどうかを理性で決めるのか!!?」 月「だから結婚ってのは……ああくそっ!! 話がループしている!!」 総一郎「だったら静かにしていろ! まだ続きがあるんだ!!」 月「続きだと? どうせろくな事でもないんだろ!!」 総一郎「黙れ!! 私がどれだけ傷ついたと思っている!?」 総一郎「私はずっと自分の正義に従って生きてきたんだぞ!?」 総一郎「なのにその結果がこの有様!! 理不尽すぎるだろ!!」 総一郎「悪が生き延び、正義が淘汰される? ふざけるなっ!!」 総一郎「そんな間違った社会……この私が許さないっっ!!!!」 総一郎「だから私は、小さな金融会社から金を借り――」 総一郎「このギターとアンプ、そしてマイクを購入し――」 総一郎「パンク・ロックの道を歩もうと決意したっ!!!」 月「……!」 ……なっ……ここでギターが出てくるのか……! 310 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/10(土) 00:07:15.66 ID:t9hoFfWD0 総一郎「自分の正義が認められる、そのときまで――」 総一郎「自分の心の叫びを、社会にぶつけ続けたい……」 総一郎「私はそれだけを胸に、ひたすらコイツを鳴らしてきた……」 月・粧裕・幸子『……』 総一郎「……すまない。お前達に黙ってたことは謝る」 総一郎「だが、成功するまで、言いたくなかったのだ」 総一郎「お前達を……不安にさせたくなかったから……」 月・粧裕・幸子『……』 ……何だろう……この気持ち…… 総一郎「ははは。そんな顔をするな……」 総一郎「まぁ実際、私の人生というのは、苦労の連続だった……」 総一郎「最後に、“私が何に苦悩していたか”赤裸々に綴ったナンバー……」 総一郎「“Little Dream”――聞いてくれ」 『ギュィィン……♪』 総一郎「ズンズンチャッチャ♪ ズンズズンチャッチャ――」 338 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/10(土) 00:21:34.35 ID:t9hoFfWD0 こwwwなゆきwwww舞う季節はwwww いつwwwもww3センチwwwww ひとwwwはだwwwでwww4センチwwww カイwwwロでwww5センチwwww 風に吹かれてwwww2センチと22ミリwwww ぼwwwくはww君の全てなどwww 知ってwwwはいwwwないだろうwwww それwwwでもwww6センチでwww 君を逝wwwかせたよwwww 根拠はないけどwwwwwwww本気で思ってるんだwwwwwww 「細い」や「短い」なんてもうwwwやめろwwwやめろwwww 硬けりゃいいだろwwwwww黙ってしゃぶってろよwwww えんwwwぎでwww喘ぐのならwwww 喜びも悲しみもwwww虚しいwwwwwwwwだwwwwけwwwww 「ちいwwwwwさいwwwwwねぇwwww」 心まで抉るwwww否定の言葉wwwwアッアッアアンwwww 6wwwwwセンwwwチのwwww 惨め消えるまでwwwwあと7センチwwwwwwwwwwww 353 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/10(土) 00:32:24.59 ID:t9hoFfWD0 『ギュィィン……♪』 総一郎「……以上だ……」ハァハァ 月・粧裕・幸子『……』 月「……」 粧裕「……」 幸子「……」 総一郎「……」 総一郎「……話は……終わりだ」 〜完〜