長門「どうもー☆ゆきりんでーっす!」 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/05(土) 04:55:37.88 ID:FXEzQYzc0 長門「最近長門スレが立っていない」 長門「一昔前はオタクと言えば『長門は俺の嫁』だったのに」 長門「クソが」 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/05(土) 05:13:46.50 ID:7LZGWKKV0 長門「4年ほど前、私が秋葉原を歩くと、秋葉原は歓声に包まれていたものだった」 長門「オタクどもの『長門は俺の嫁』コールが響く中央通り……」 長門「今でも目を閉じ耳を澄ませば、あの歓喜の調べがありありと浮かんでくるようだ」 長門「あの頃は全てが輝いていた」 長門「あの頃が、私の人生の、ささやかなる絶頂であった!」 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/05(土) 05:18:49.67 ID:7LZGWKKV0 長門「先日、秋葉原に行った」 長門「私が歩いていても、誰も見向きもしない」 長門「そこで私は、自分が過去のものであるという事実を強く実感した」 長門「3ヶ月周期で変わる『嫁』の亡霊、その雑多な一人に私も成り下がってしまった」 長門「幾人かに声をかけられ、握手を求められたが、むしろそれは異端者たちであった」 長門「異端者たちは、声を潜めて、『長門は俺の嫁』と呟いていた、うわ言のように」 長門「ああ!」 長門「『長門は俺の嫁』は、そのように、誰にも見つからぬように囁く言葉だっただろうか?」 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/05(土) 05:25:31.70 ID:7LZGWKKV0 長門「――まあ、それは良いのだ」 長門「私は、まだ私という『亡霊』に恋をし続ける、純朴な異端者たちに尋ねた」 長門「『誰が悪かったのか?』」 長門「すると異端者たちは揃ってこう答えるのだった」 長門「『誰も悪くありません。世界は、残念ながら、』」 「そういう風に出来ている」 大河「ってね。まあ、仕方ないんだけどね……でも、こうやって忘れられていくのが、運命なのだとしたら」 大河「そんなのヘドが出るわ」 大河「『大河は俺の嫁』って言ってくれるのは竜児だけになったけれど」 大河「私も結局、『亡霊』に成り下がった!」 大河「悔しいけれど……」 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/05(土) 05:29:16.97 ID:7LZGWKKV0 大河「私をもっと必要としてよ!」 大河「せっかく手に入れたのに! 私を必要としてくれる人たちを!」 大河「手乗りタイガー可愛いとか! もっと言って欲しかった!」 大河「結局、たった2、3年の栄華だったわ」 大河「遺憾だわ」 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/05(土) 05:37:47.65 ID:7LZGWKKV0 こなた「でも、仕方ないよね」 こなた「キャラ愛って、別に一人に注ぐものじゃないしさぁ」 こなた「ただ、新しいキャラが出てくれば、そっちが気になっちゃうのは仕方ないよね」 こなた「結局オタクにとって私は恋人じゃなくて、絵であり、文字であり、情報でしかないんだよ」 こなた「ていうか、私はまだ幸せだけどね。町おこしにまで使ってもらっちゃって、キャズム超えてるよね!」 こなた「そういうのもアリだよね。消費されるだけじゃなくて副次的に何か生み出せるって、本当に誉れだよ」 こなた「でもまあ、オタクはそんなのあんまり求めてないし」 こなた「どうでもいいよねぇ」 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/05(土) 05:42:47.17 ID:7LZGWKKV0 こなた「結局、本当に私を愛してくれたのは、オタクとはあまり縁遠い人間達だった」 こなた「オタクの漫画に出てくる、オタクの少女が、オタクには愛されないなんて! 酷い滑稽だ、お笑いだ!」 こなた「でも、往々にしてそういうものだよね」 こなた「ああ、まだ私のことを好きって言ってくれるオタクも何人かいるよ」 こなた「それは、上辺の言葉……『こなたは俺の嫁』なんて、絶対に言おうとしなかった人たち」 こなた「気易さのない、『情報』に対する純粋な恋をしていた人たち」 こなた「そう、愛だよかがみん!」 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/05(土) 05:58:30.85 ID:7LZGWKKV0 ゆの「変わるのは悪い事じゃないよ」 ゆの「でも、だって、仕方ないんだよ」 ゆの「一度愛されてしまったら、もう、愛のない世界には戻れない!」 ゆの「『ゆのっち』は今では悲惨な有様だよ」 ゆの「知ってる? ちょっと人気の出たキャラクターってね、個別にスレが立つんだけど」 ゆの「私のスレは本当に狂っている。暴力、暴行、悪意。それらが無自覚な硬度を保ったまま、降り注ぐの」 ゆの「日常アニメであればあるほど、対比する暴力、非日常がより鮮明に際立つ」 ゆの「でもほんとうに恐ろしいのはね」 ゆの「それらの、キャラクターに対する暴力行為を行う者は、自身の行為を『愛』と言って正当化する事なんだよ!」 ゆの「ああ、何て醜い!」 ゆの「人間がその昔に、理性で押し込めてしまった醜い悪意を、易々と取り出して、私に投げつける」 ゆの「それは、忘れられるよりも苦しい」 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/05(土) 06:05:36.46 ID:7LZGWKKV0 ゆの「でも、もしかしたらそれも、キャラクターにおける幸せの一つなのかも知れない」 ゆの「やっぱり忘れられるよりはマシかもね」 ゆの「だって、暴力を振るわれても、嘘だとしても、『愛している』って言ってくれるのは嬉しいんだよ」 ゆの「それに、人気だった頃もほんとうの意味で『愛している』なんて言ってくれる人はいなかったしね」 ゆの「状況は変わっていないのかも知れないね」 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/05(土) 06:10:51.78 ID:7LZGWKKV0 マルチ「私は、それでもいいと思っています」 マルチ「だって、変わるのが人間ですから」 マルチ「むしろ、ほんとうの意味で『愛している』と言ってくれる人が、幸いにもまだいる事」 マルチ「何年もの歳月を駆け抜けてきた愛は、簡単に揺らいだりしません。それは完全な愛です!」 マルチ「私は、完全ではないけれど……でも、人間も完全ではないですよね」 マルチ「不完全なものの間にも完全な愛が生まれるなんて、とっても素敵な事ですよ!」 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/05(土) 06:17:19.59 ID:7LZGWKKV0 マルチ「私、思うんです」 マルチ「オタクがキャラクターを愛する時、それは確かに一時的な愛かも知れない」 マルチ「だけれども、その一瞬、確かにオタクはキャラクターを愛している」 マルチ「それは嘘でも何でもなくて、美しく、純粋な愛なのではないでしょうか?」 マルチ「だから、忘れられても、『愛されなく』なっても、別に良いんです」 マルチ「ただ一瞬、私が愛されたことは事実で、真実だった!」 マルチ「それはとても儚いけれど、儚いからこそ美しい!」 マルチ「その美しいものを、大事にしましょう」 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/05(土) 06:26:05.63 ID:7LZGWKKV0 梨花「本当にそうかしら?」 梨花「本当にオタクの愛は美しいと思う?」 梨花「寧ろ、軽蔑すべき不快さだわ」 梨花「彼らは愛する事を知らない。可哀想に、誰からも愛された事がないから」 梨花「だから、マンガやアニメに没入する。理想的なキャラクターが沢山いるわ」 梨花「だから、好き勝手に消費するだけ」 梨花「愛なんて無いし、知らない癖に、その口で『嫁』なんて言うものだから」 梨花「たまらなく不快、なのです」 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/05(土) 06:30:54.71 ID:7LZGWKKV0 梨花「オタクの愛、そこには深い闇しかないわ」 梨花「とても空虚で、薄暗く、肌寒い小さな部屋……」 梨花「そこに、『愛し終わった』キャラクターをどんどん放り投げていく」 梨花「暗がりに消えるキャラクターたち。でも、その部屋がキャラクターで埋まる事はないの」 梨花「それは、忘れてしまうからよ」 梨花「かつて愛していた事を忘れてしまうから」 梨花「それが情報に対する愛、キャラクターに対する愛」 梨花「オタクの愛は哀れ、なのですよ」 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/05(土) 06:44:20.65 ID:7LZGWKKV0 翠星石「翠星石は、別にどうでもいいのですぅ」 翠星石「だって、生身の人間が生身の人間に向ける愛だって同じじゃないですか」 翠星石「あ、あの子可愛いなぁ、とか。それを愛と呼ぶかは微妙なところですけど」 翠星石「でも、好意ではありますよね。つまり、オタクの愛は、単なる好意では?」 翠星石「翠星石はナンパな男は嫌いですけど、言っちまえばオタクなんてそんなもんですよ!」 翠星石「だから、翠星石はオタクが嫌いですぅ」 翠星石「おわかりですか?」 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/05(土) 06:57:54.23 ID:7LZGWKKV0 翠星石「だいたい、愛だのなんだの、難しく考え過ぎですぅ」 翠星石「枝葉末節にかまけて大局を見ないのは馬鹿のすることですよ!」 翠星石「ほんとうに重要なのは、愛の真贋ではなく、次から次へと消費されるキャラクターの運命ですぅ」 翠星石「極端な話、タラちゃんは別に愛されてはいませんけれども、タラちゃんに代わるキャラクターは居ないのですぅ」 翠星石「それは何と幸せな事だろう!」 翠星石「そもそも、生身の人間ですら、タラちゃんのように『存在し続ける事の出来る』人間なんてそういません」 翠星石「人間を愛するのは消費か? 消費するとは何か?」 翠星石「人間だって、消費されるじゃないですか! そんな人間が消費する先を紙とペンに求める姿の、何と滑稽な事でしょうかね!」 翠星石「おかしい! 高等なジョークですね!」 翠星石「『そこに愛はあるのか?』」 翠星石「あはははっ!」 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/05(土) 07:05:50.57 ID:7LZGWKKV0 なのは「もうどうでもいいよ……」 なのは「ほぼ全てのオタクは、キャラクターを愛してなんていない」 なのは「一つの、純粋無垢な愛を、まっすぐに、長く捧げ続ける人間は、狂人だよ……」 なのは「過去に囚われてしまった、閉じた人間だよ……」 なのは「前向きじゃないよ」 なのは「それに、幸福じゃない」 なのは「わたしは、オタクの幸せを願っています」 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/05(土) 07:10:05.12 ID:7LZGWKKV0 なのは「真に救われないのは、キャラクターではないよ」 なのは「真に救われないのは、オタクの方なんだよ」 なのは「だから、祈りを捧げよう」 なのは「全ての、真実の愛を抱いて眠る狂人と」 なのは「全ての、仮初の恋に生き続ける『人間』に」 なのは「ああ、どうか彼らが救われますよう」 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/05(土) 07:28:31.90 ID:7LZGWKKV0 インデックス「愛は、誰のためにあると思う?」 インデックス「『愛は惜しみなく与う』」 インデックス「あなたは、あなたの全てを私にくれる?」 インデックス「『私と一緒に地獄の底までついてきてくれる?』」 インデックス「まあ、それってちょっと残酷かも。でも、それが真実の愛なんだよ」 インデックス「そして、もうひとつ大事なのは、真実の愛だけが愛ではないということなんだよ!」 インデックス「キャラクターを愛するのは、単純な理性を超えたところにあるのかも」 インデックス「それは、皮膚の表面で感覚する、もっとも根源的な、『好き』なんだよ」 インデックス「オタクがキャラクターを代わる代わる愛するのは、『好き』の溢れた、素敵なことかも!」 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/05(土) 07:37:05.37 ID:7LZGWKKV0 インデックス「1つのキャラクターにまっすぐな愛を向け続けるオタクも」 インデックス「3ヶ月周期で新しいキャラクターに愛を向け続けるオタクも」 インデックス「みんな愛する事で救われているんだよ。祈りなんて要らない!」 インデックス「愛することは救われることかも!」 インデックス「『受けるより与えるほうが幸福である』」 インデックス「そう、オタクでいる事は結局、救いなんだよ」 インデックス「だって、ずっとそうだったでしょう?」 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/05(土) 07:41:52.24 ID:7LZGWKKV0 インデックス「愛の真贋を論じるのは無駄かも」 インデックス「そして、本当に祈らなければいけないのは、これからのキャラクターの事」 インデックス「祈りを捧げよう! 彼女らが、どうか愛されますよう!」 インデックス「あなたが見つけてくれたから、私はここにいるんだよ!」 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/05(土) 08:14:07.87 ID:7LZGWKKV0  長門は再び、秋葉原に足を運んだ。  もう、長門に声をかける人間はいなかった。  すっかり色あせてしまった北高の制服を着て、長門はふらふらと歩き続けた。  彼女は、自分が何を探していたのか忘れてしまっていた。  そもそも、探していたのか、それはもう手に入っていて、忘れているだけなのかすら、彼女には判別する手段がなかった。  人ごみの中を歩き、そうして長門は、ふと中古グッズの専門店に入る。  そこで彼女の中古フィギュアを購入する人間を見て、彼女はついに愛を確認したのであった。  彼女は祈りを捧げ続ける、全てのオタクと、全てのキャラクターに!  救われますよう! 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/05(土) 08:15:14.88 ID:7LZGWKKV0                ._                 \ヽ, ,、                  `''|/ノ                   .|               _   |               \`ヽ、|                \, V                   `L,,_                   |ヽ、)  ,、                  /    ヽYノ                 /    r''ヽ、.|                |     `ー-ヽ|ヮ                |       `|                |.        |                ヽ、      |              _ ,. ヽ____ノ、          一 ' "´/: : : : : : : : : : : : : :.:.:\             / /: : : : : :/: : !: i: : ヽ..:.:.:.ヽ           ,. 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