波平「母さーん!飯はまだかー?」フネ「さっき食べたでしょ」 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 13:17:26.76 ID:iKKfsr9PO フネ「いやですわ、おとうさんったら」 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 13:21:58.85 ID:iKKfsr9PO 波平「かあさんは忘れとるのかもしれん、サザエー」 サザエ「はーい、なぁにとうさん」 波平「飯はまだか?」 サザエ「やぁねぇ、食べたじゃない!」 波平「お!?そうか…」 サザエ「もーとうさんったらぼけてきちゃったんじゃない?」 波平「ばっかもん!そういう事を簡単に言うな!ワシはぼけとらん!」 サザエ「いっけない、てへへ」 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 13:25:28.65 ID:iKKfsr9PO 波平「おかしいな…ワシが忘れとるのか?タラちゃーん」 タラ「はーい、おじいちゃん、なんですかぁ?」 波平「その…タラちゃんはお腹すいてないか?」 タラ「お腹ですかぁ?」 波平「ごはん、食べたくないか?」 タラ「いらないですー、さっき食べたです」 波平「そうか…だよなぁ」 タラ「おじいちゃんおかしいですー」 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 13:31:09.58 ID:iKKfsr9PO 波平「…おかしい、ワシが忘れとるようだ…」 カツオ「とうさん、かあさんが食後のお茶はいかが?って」 波平「うむ…いただこうか」 カツオ「わかった、言ってくるね」 スー パタン サザエ「どうだった?」 カツオ「とうさんすっかり信じてるよ姉さん」 タラ「おじいちゃん信じてるですかー」 カツオ「タラちゃんの名演技もあったからね」 サザエ「サプライズパーティーは成功しそうね」 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 13:35:15.02 ID:iKKfsr9PO タラ「おじいちゃんびっくりするですー」 サザエ「とうさん自分の誕生日も忘れてるんだから」 カツオ「ふふふ、とうさんはうっかり屋だなぁ」 ワカメ「お姉ちゃん、ケーキ受け取ってきたよ」 カツオ「ワカメ、勝手口から入ってくるとは気が利くじゃないか」 ワカメ「だってサプライズだもん、おかあさんは?」 サザエ「洗濯物干してるわ、まあーおいしそうなケーキ」 カツオ「姉さんのじゃないよ」 サザエ「わかってるわよ!」 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 13:38:36.67 ID:iKKfsr9PO タマ「にゃーん」 サザエ「あらタマ、そのお花…」 タラ「おじいちゃんへのプレゼントですかー」 タマ「にゃーん」 ワカメ「えらいわタマ」 タラ「いいこですー」 カツオ「姉さんよりえらいや」 サザエ「カツオ!」 カツオ「えへへ」 フネ「どうしたんです、騒々しい」 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 13:42:42.50 ID:iKKfsr9PO サザエ「あ、かあさん、見て、ワカメがケーキ受け取ってきてくれたの」 タラ「タマもお花持ってきたですー」 カツオ「とうさんすっかり信じてるよ、かあさん」 ワカメ「サプライズパーティーきっと大成功よ」 フネ「ケーキ?お花?パーティー?なんですか?」 サザエ「もー、かあさんまで知らない振りしなくていいのよ」 フネ「わたし知りませんよ、なんですか、今日に限って」 カツオ「とうさんの誕生日だからでしょ」 フネ「おとうさんの…?」 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 13:45:53.29 ID:iKKfsr9PO ワカメ「おかあさん?どうしたの?」 フネ「なにがです?」 サザエ「…今日とうさんのサプライズパーティーしようって言ってたじゃない」 フネ「…?」 カツオ「かあさん…」 タラ「おばあちゃん忘れちゃったですかー」 カツオ「タラちゃん!」 サザエ「しっかりしてよかあさん!」 フネ「えぇ…サプライズ…パーティーですか…」 タラ「おばあちゃんうっかりしてますー」 カツオ「タラちゃん!」 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 13:49:37.32 ID:iKKfsr9PO 波平「なんだ騒がしい」 サザエ「とうさん…」 タラ「おばあちゃんがぼけちゃったですー」 カツオ「タラちゃん!いい加減にしなよ!」 タラ「カツオお兄ちゃんこわいですー」 波平「なんじゃと?かあさん、大丈夫か?」 フネ「…えぇ…」 ワカメ「今日とうさんのサプライズパーティーするつもりだったの」 サザエ「でもかあさんすっかり忘れてて…」 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 13:54:45.53 ID:iKKfsr9PO 波平「なんじゃ、それくらい」 サザエ「えっ?」 波平「それくらい誰にでもある、かあさんも疲れとるんじゃろう」 フネ「えぇ…そうですよね、おとうさん…」ホッ 波平「疲れとる時は寝るのが一番じゃ、ワカメ、かあさんを寝かしてあげなさい」 ワカメ「はぁい、おかあさん行こう、お布団ひいてあげる」 フネ「いえ、でも…」 波平「ゆっくり休みなさいかあさん、心配しなくていい」 フネ「…では、お言葉に甘えて…」 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 13:58:23.87 ID:iKKfsr9PO 波平「うむ、カツオはタラちゃんと向こうでケーキでも食べなさい」 サザエ「これはとうさんのよ」 波平「どっちみちパーティーはできんじゃろう、また買い直せばいい」 カツオ「でも…」 タラ「わーい、ケーキ食べるですー」 波平「カツオ、行きなさい」 タラ「カツオお兄ちゃん、早く食べるですー」 カツオ「タラちゃん先に食べといで」 タラ「はーいですー」 サザエ「いいの?とうさん」 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 14:02:13.63 ID:iKKfsr9PO 波平「いいんじゃ」 タラ「うわーい、食べてくるですー」 カツオ「さすがとうさんだね、安心したよ」 サザエ「そうよ、私びっくりしちゃって、余計かあさんを不安にさせちゃったわ」 波平「サザエ」 カツオ「かあさん、そんなに疲れてるなんてなぁ」 サザエ「あんたがイタズラばかりするからよ!」 波平「サザエ、明日かあさんを病院に連れていけ」 サザエ「…え?」 カツオ「…え?」 波平「こういうのは早い方がいい」 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 14:09:25.34 ID:iKKfsr9PO カツオ「かあさんは疲れてるんじゃないの、とうさん」 波平「その可能性もある、かあさんを不安にさせる訳にはいかんじゃろう」 サザエ「そんな…でも大丈夫よね?とうさん」 波平「わからん、はっきりさせるために明日病院へ連れていけ」 サザエ「…わかったわ」 カツオ「でも、とうさんの誕生日忘れたからって、すぐには…」 波平「ばかもん、かあさんが…ワシの誕生日を簡単に忘れる訳なかろう」 サザエ「とうさん…」 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 14:14:27.78 ID:iKKfsr9PO 波平「よっぽどのことでもない限り、そうそう忘れんわい、かあさんはそういう人だ」 カツオ「とうさん」 波平「ん、こほん、まぁそういうことだ、サザエ明日頼むぞ」 サザエ「わかったわとうさん」 カツオ「なんだ、とうさんののろけじゃないか」 波平「!ばっかもーん!!」 サザエ「いいじゃないのとうさん、そんな照れなくても」 カツオ「いやぁ、両親がラブラブで嬉しいような照れるような」 波平「こら!!サザエ!カツオ!」 サザエ&カツオ「ウッフフフ、ごめんなさーいw」 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 15:14:57.47 ID:iKKfsr9PO フネ「大げさなんですよ、おとうさんは」 サザエ「かあさんを心配してるのよ」 フネ「なにもこんな病院まで…」 サザエ「検査したらすっきりするじゃない、大丈夫よ」 フネ「そうかねぇ…」 サザエ「大丈夫だから、ほら、かあさん行ってらっしゃい」 フネ「じゃあ…行ってきます」 サザエ「待合室で待ってるからー」 フネ「はいはい」 サザエ「かあさん…大丈夫よね、きっとなんでもないわ…」 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 15:19:53.95 ID:iKKfsr9PO フネ「…ふぅ」 サザエ「かあさん、お疲れ」 フネ「えぇ、サザエ、なんだか疲れたわ」 サザエ「検査なんてなれてないものね」 フネ「そうですよ、サザエお医者さまに聞いといてちょうだい、私休んでますから」 サザエ「わかったわかあさん」 看護婦「磯野さーん」 サザエ「はーい、じゃあかあさん、ちょっと言ってくるわね」 フネ「えぇ、頼みましたよ」 パタパタ サザエ「…かあさんには聞かれずにすみそうね」 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 15:25:43.48 ID:iKKfsr9PO 医者「…少し脳が萎縮してますね…」 サザエ「えっ…」 医者「うーん、年のせいもありますが…」 サザエ「先生、あの、母は…」 医者「認知症、ですね、今はまだ軽いですが…」 サザエ「そんな…」 医者「できる限りのことをしていきましょう、認知症はご家族の協力が一番大事です」 サザエ「…はい」 医者「そう気を落とさないで」 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 15:30:19.81 ID:iKKfsr9PO サザエ「…はい」 医者「認知症になる方は、今はけっこういらっしゃいますから」 サザエ「…けっこういる…」 医者「昔に比べて、サポートの施設も団体も多いですよ」 サザエ「…でも、認知症の人がいっぱいいても…かあさんは1人だけよ…」 医者「…」 サザエ「私たちのかあさん…」 医者「…そうですよね、失礼いたしました」 サザエ「先生、かあさんはいつか全部忘れちゃうんですよね?」 医者「今はなんとも言えませんが…おそらく」 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 15:36:10.45 ID:iKKfsr9PO サザエ「…とうさんに相談しなくちゃ…先生、ありがとうございました」 医者「はい、また…」 サザエ「…かあさん…」 パタパタ フネ「サザエ、お医者さまはなんて?」 サザエ「…たぶん、疲れだろうって」 フネ「そう、やっぱり、おとうさんが大げさだったわねぇ」 サザエ「かあさんが大事なのよ、とうさんは」 フネ「まぁサザエ、からかうんじゃありません」 サザエ「ウフフw(…かあさん…)」 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 15:40:59.31 ID:iKKfsr9PO ガラッ 波平「ただいまー」 フネ「おかえりなさい、おとうさん」 波平「かあさん、今日はどうだったんじゃ?」 フネ「疲れですよ、疲れ」 波平「なぁんじゃ、そうだったのか」 サザエ「とうさん、お風呂わいてるわよ」 カツオ「とうさんおかえり!」 ワカメ「おとうさん、おかあさん大丈夫ってお姉ちゃんが」 フネ「みんなに心配かけたわねぇ」 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 15:46:29.38 ID:iKKfsr9PO マスオ「おかえりなさいおとうさん」 タラ「おばあちゃんぼけてなかったですー」 カツオ「タラちゃん!」 タラ「冗談でーす」 波平「みんなかあさんを心配しとったしなぁ」 フネ「えぇ、なんでもなくて良かったですわ」 サザエ「とうさん!お風呂わいてるわよってば」 波平「なんじゃサザエ、わかっとるわ」 サザエ「早く来てよ」 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 15:52:37.67 ID:iKKfsr9PO 波平「サザエ、せかすんじゃない」 サザエ「とうさん…」 波平「サザエ…もしかして、かあさんは…」 サザエ「うん、認知症って…今はまだ軽いみたいだけど…先生が…」 波平「…なんじゃと…かあさんが…ばかな」 サザエ「とうさん、私たちどうしたらいいの?かあさんはいつか…」 波平「…今々、どうこう言えんな…かあさんを1人にせんことだ…」 サザエ「でも、それだけじゃ」 波平「また病院にも行って、先生に指導してもらわんことには…ワシにはわからん」 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 16:00:57.33 ID:iKKfsr9PO サザエ「…かあさん…」 波平「サザエ、泣くんじゃない」 サザエ「でも…」 波平「かあさんはまだ元気だ、しっかりしてる、これからを大事にしてやらにゃいかん」 サザエ「とうさん」 波平「かあさんは大丈夫だ、今までかあさんはずっと穏やかじゃったろう」 サザエ「うん」 波平「かあさんは変わらん、かあさんはかあさんのままだ、お前のかあさんであり、ワシの妻だ」 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 16:03:45.98 ID:iKKfsr9PO サザエ「とうさん…」 波平「心配するな、かあさんはワシが守る」 サザエ「…とうさん、かっこいい」 波平「んん?親をからかうんじゃない…」 サザエ「はい…ふふふ」 フネ「サザエ、おとうさん、ご飯ですよ」 波平「ほれ、行くぞ」 サザエ「うん、はーいかあさん、今手伝うわ」 パタパタ 波平「…さて、どうしたものか…」 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 16:09:28.42 ID:iKKfsr9PO タラ「すぅーすぅーですー」 マスオ「タラちゃんぐっすり寝てるね」 サザエ「マスオさん」 マスオ「ん?どうしたんだい?サザエ」 サザエ「あの、かあさんのことなんだけど…実は先生に、認知症、って…」 マスオ「えぇーっ!?ほんとかい!?」 サザエ「えぇ、まだ、軽いみたいだけど…」 マスオ「おかあさんが…認知症…そんな…」 サザエ「ねぇ、マスオさん、私、どうしたらいいの?」 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 16:15:29.78 ID:iKKfsr9PO マスオ「サザエ…」 サザエ「私、いやよ、ちょっと想像しただけで、耐えられない…」 サザエ「かあさんがいつか…全部忘れちゃうなんて…私のことも、ワカメもカツオも」 マスオ「…」 サザエ「いやよ、どうしたらいいの?とうさんは守るって言うけど、どう守るの…」 マスオ「…おとうさんが言ったことは信じようよ、サザエ」 マスオ「おとうさんはおとうさんにしかできないことをするんだ、」 マスオ「だから僕たちも、僕たちにしかできないことを…」 サザエ「だって…記憶は守れないでしょう!?何かに残しておいても…」 サザエ「かあさんがそれを思い出せなかったら、なにもなかったのと同じよ…」 72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 16:20:50.65 ID:iKKfsr9PO タラ「むにゃむにゃ…」 サザエ「タラちゃん、起きちゃったのね」 タラ「ママー、なんで泣いてるですかー?」 サザエ「泣いてないわよ、あくびよタラちゃん」 タラ「パパが泣かしたですかー?」 マスオ「ちがうよタラちゃん」 タラ「パパ許さないですー」 サザエ「大丈夫よタラちゃん、寝なさい」 タラ「パパもぼけちゃったですかー?」 サザエ「タラちゃん!」 タラ「おやすみなさいですー」 75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 16:25:02.64 ID:iKKfsr9PO 波平「…かあさんや、起きてるか?」 フネ「ふふ、はい、起きてますよ、どうしたんですか?」 波平「いや…検査のことじゃが…」 フネ「あぁ、疲れでしたよ、おとうさん」 波平「そうか…」 フネ「おとうさんが私を心配してるって、みんなが言うんですよ、からかって」 波平「まったく、しょうがない奴らじゃ」 フネ「うふふ、でも私は嬉しかったですよ、おとうさん」 波平「んん?なんじゃ、かあさんまで…」 フネ「うふふ、はいはい」 80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 16:29:20.01 ID:iKKfsr9PO 波平「…もう寝ようかあさん」 フネ「うふふ、はい」 波平「明日からは、ちょっと、ゆっくりしときなさい」 フネ「はい」 波平「おやすみ、かあさん」 フネ「おやすみなさい、おとうさん」 波平「…」 フネ「すー…すー…」 波平「かあさん…ワシは…」 波平「かあさんになにを、してあげられとったかなぁ…」 波平「なぁ、かあさん…」 83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 16:35:15.03 ID:iKKfsr9PO ○月×日 とうさんに日記をつけるように言われた。日記ってどうやって書くんだったかしら…。 かあさんは、相変わらず。と言いたいけど、ちょっとずつ、変わってきてる。 いつもの料理の味付けがわからない。材料を忘れる。作り方を忘れる。 人の名前が出てこない。電話番号を忘れる。洗濯物を干すのを忘れる。 時々、本当に時々だけど、こういうことが起こるようになった。 今までのかあさんからは、想像つかないわ…。うっかり者は私だったのに。 でも、「サザエ」と呼ぶ声は、いつものかあさんのまま。かわらない。 85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 16:40:17.29 ID:iKKfsr9PO ○月△日 だんだん、かあさんも不安になってきてるみたい…。 「最近、どうしちゃったのかしらねぇ」ってよく言うようになった。 着物着て、縫い物してるかあさんの姿は、ずっとみてきたかあさんの姿なのに。 かあさんの中だけにある記憶は、まだちゃんとあるのかな…。 私のことも、カツオもワカメもタラちゃんも、今はちゃんと覚えてる。 もちろんとうさんのことも。とうさんは、いいなぁ。毎晩一緒に寝てて。 毎晩、どんな話をしてるのかしら。今度、かあさんと一緒に寝させてもらおう。 88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 16:46:41.43 ID:iKKfsr9PO □月◇日 とうさんが、そろそろ、カツオたちに話そうって言ってきた。 そろそろ…っていうのが、悲しくて、こわい。覚悟を決めさせるってこと…? カツオたちに、なんて伝えたらいいのかしら。カツオたちは疑ってもない。 「かあさん」「おかあさん」「おばあちゃん」って、今まで通りなのに。 カツオなんてまだまだイタズラをして、かあさんに怒られてる。 カツオがイタズラしても、かあさんが怒らない日が、いつかやってくる。 かあさん、まだ叱っててよ。私やとうさんじゃ足りないのよ。 かあさんが、優しく強く叱ってくれてたから…かあさん。かあさん。 92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 16:52:55.79 ID:iKKfsr9PO □月×日 今日、とうさんが、仕事帰りにかあさんへ花束を買って帰ってきた。 かあさんは「まぁおとうさん、ありがとうございます」って、 にこにこ、ずーっとお花を見てにこにこしてて、嬉しそうだった。 「おとうさん、どうしたんですか突然」なんて言ってても、にこにこ。 かあさん照れて、顔赤くなっちゃって。私も嬉しかったわよ、かあさん。 かあさん、良かったね。とうさんからの、本当に気持ちのこもった花束よ。 みんな、知らないから、みんなにこにこ。みんな、かあさんの分まで覚えてようね。 明日、カツオたちに話すことに決まった。 100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 17:09:05.74 ID:iKKfsr9PO カツオ「…え?」 ワカメ「どういうこと…なの?おとうさん…」 サザエ「…」 カツオ「とうさん」 波平「かあさんは…認知症、というやつになったんじゃ」 カツオ「かあさんが…」 タラ「おばあちゃんぼけちゃうです…」 ワカメ「本当なの?お姉ちゃん」 サザエ「…本当よ」 カツオ「やだよ…とうさん、治らないの?ねぇ」 104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 17:14:13.52 ID:iKKfsr9PO 波平「治ることは…ない、ただ、進行をゆっくりとすることはできるらしい」 カツオ「ゆっくりじゃだめだよ、治らなきゃ!」 サザエ「カツオ…」 カツオ「姉さんもとうさんも、かあさんのこと諦めてるの!?」 波平「そうではない」 カツオ「じゃあとうさん、なんとかしてよ!なんとかしてよ!」 サザエ「カツオ…」 ワカメ「おとうさんおかあさんを助けて、お願いおとうさん」 タラ「おばあちゃん僕たちを忘れちゃうですー」 カツオ「とうさん!」 106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 17:23:12.99 ID:iKKfsr9PO 波平「諦めてなどおらん…当然じゃ、大事なかあさんじゃないか」 カツオ「だったら…」 波平「でもな、カツオ、止められないんじゃ」 カツオ「とうさん」 波平「かあさんを、いっぱい、笑顔にしよう、カツオ」 ワカメ「…おかあさんー」 波平「ワカメ、かあさんに、料理のことでもなんでも聞きなさい」 カツオ「…かあさん…」 波平「サザエ、カツオ、ワカメ」 波平「かあさんに、いっぱい、いっぱい、甘えなさい」 109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 17:30:06.69 ID:iKKfsr9PO カツオ「とうさん…僕、やっぱりいやだよ…」 ワカメ「私も…悲しいわ、やだ、おかあさん…」 波平「左様、お前たちに納得してほしいなど思っとらん」 サザエ「とうさん」 波平「ワシは、お前たちに、かあさんと思い出をもっと作って欲しいんじゃ」 カツオ「でも、かあさんは忘れちゃう…そんなの、覚えてる僕たちが悲しいだけじゃないか」 波平「ばかもん!かあさんの分までお前たちが覚えておくんじゃ!」 ワカメ「私たちが?」 波平「なんでもないことでも、思い出そのものがかあさんなんじゃ、わかるか?」 111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 17:34:32.77 ID:iKKfsr9PO 波平「かあさんは…お前たちのことが本当に大切で大好きなのじゃ」 ワカメ「ひっく…」 波平「それはわかるじゃろう?」 カツオ「わかるよ…それくらい僕にだって」 波平「じゃから、かあさんとの思い出をいつまでも覚えておくということは」 波平「いつまでももかあさんの愛を覚えておける、思い出せるということなんじゃ」 サザエ「とうさん…」 波平「いいか、磯野家団結の時じゃ」 波平「かあさんを目一杯笑顔にするんじゃ、みんなでな」 117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 17:40:57.85 ID:iKKfsr9PO ×月○日 今日、とうさんがみんなに話した。ワカメもカツオも、泣いていた。 あの子たち、まだ幼いのに、それでも、一生懸命受け止めようとしていた。 もっと、もっと、かあさんに甘えて過ごしたらいいわ。 カツオもワカメもまだ小学生。中学高校って、かあさんに見せたかった。 かあさん、かあさん。お袋の味教えてね、かあさん。 かあさん。もっと「サザエ」って呼んでね、かあさん。 私の声、私のこと、いつまでも忘れないで欲しいよ、かあさん 119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 17:46:32.55 ID:iKKfsr9PO ×月○日 今日とうさんから、かあさんの病気のことを聞いた。 最近のかあさんはおっちょこちょいだなぁ、なんて思ってたけど…。 こんなことになるなら、イタズラなんてしなければ良かった。 僕は、今まで、かあさんをいっぱい困らせてた。ごめんなさい、かあさん。 今からじゃもう、遅いのかな。かあさん、僕いい子になるから、お願い。 かあさん僕のこと忘れないでよ。僕いい子になるから。お願いだよかあさん。 かあさん、僕、自慢の息子になるから。お願い。 122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 17:54:06.24 ID:iKKfsr9PO ×月○日 おとうさんから、おかあさんの病気のことを聞いた。なんでもっと早く教えてくれなかったのかしら ゆっくり、いろんなこと忘れていく病気だなんて、ひどい病気だわ。 おかあさん、私、縫い物もご飯も、まだまだ全然できないのよ。 もっと、いろんなこと教えて欲しいよ、おかあさん。ねぇ、おかあさん。 私がお嫁にいくときも、相談乗って欲しいよおかあさん。 私の花嫁姿も、知らない人に見えちゃうの?ほんとに忘れちゃうの? おかあさん、おかあさん、ずっと私のおかあさんでいてよ。 忘れないでよ、おかあさん、お願い、おかあさん 125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 17:58:46.21 ID:iKKfsr9PO フネ「今日はみんな、静かですねぇ、おとうさん」 波平「宿題でもしとるのだろう、いいことだ」 フネ「あら、カツオもですかねぇ、ふふ」 波平「…なぁ、かあさんや」 フネ「はい?なんです、おとうさん」 波平「ワシは、かあさんに、いろいろ苦労をかけてきた」 フネ「なんですか、いきなり」 波平「かあさん、かあさんはワシと結婚して、一番嬉しかったことはなんだ?」 フネ「どうしたんですか、おとうさんったら、ふふ」 127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 18:03:04.56 ID:iKKfsr9PO 波平「…そうだな、すまん、聞くようなことじゃないな、こりゃ」 フネ「うふふ、おとうさん」 波平「ん?なんだ」 フネ「わたしは全部、嬉しかったですよ」 波平「かあさん…」 フネ「一番なんてありません、全部ですよ、おとうさん」 波平「そうか…かあさん、そうか…」 フネ「いやですよおとうさん、改まって聞くんですから」 波平「いや…かあさん、ありがとう…ありがとう」 波平「ワシと結婚してくれて…本当にありがとう」 フネ「わたしこそですよ、おとうさん、もらってくれてありがとうございます、うふふ」 138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 18:22:28.93 ID:iKKfsr9PO フネ「サザエ、サザエ」 サザエ「はーい、どうしたの?かあさん」 フネ「このお料理は…どうやって作るんだったけねぇ…」 サザエ「かあさん…」 フネ「いやね、忘れちゃって、恥ずかしい」 サザエ「かあさん、うっかりくらい誰でもするわよ、一緒に作りましょう」 フネ「悪いわねぇ、サザエ」 サザエ「そんなのいいのよかあさん、気にしないで」 フネ「ありがとうね、サザエ」 140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 18:26:59.25 ID:iKKfsr9PO フネ「ワカメ」 ワカメ「なぁにおかあさん」 フネ「…あら、なんだったかしら」 ワカメ「おかあさん忘れちゃったの?」 フネ「そうみたい、ふふ、恥ずかしいわ」 ワカメ「おかあさんったら、ふふ」 フネ「思い出したら言いますからね」 ワカメ「はぁい、おかあさん」 フネ「ん?」 ワカメ「おかあさん…おみそ汁、今日一緒に作りたい」 フネ「あら、まぁ、じゃあ一緒に作りましょう、ワカメ」 142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 18:31:06.79 ID:iKKfsr9PO フネ「カツオー、カツオ」 カツオ「はぁい、呼んだ?かあさん」 フネ「中嶋くんが来てますよ」 カツオ「あ、いっけね」 フネ「野球に行くの?気をつけて行ってらっしゃい」 カツオ「はい、かあさん」 フネ「ふふふ」 カツオ「かあさん、帰ったら宿題ちゃんとするからね」 フネ「はいはい、わかりました」 カツオ「えへへ」 フネ「じゃあ、サッカー楽しんでいらっしゃいな、カツオ」 カツオ「…うん、行ってきます、かあさん」 156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 18:57:31.26 ID:iKKfsr9PO ワカメ「おかあさーん」 フネ「あぁ、サザエ」 ワカメ「えっ…とあの…」 フネ「?サザエ?」 ワカメ「わたし…ワカメよ…」 フネ「あら、ワカメごめんね、名前間違えちゃうなんてね」 ワカメ「ううん、いいの」 フネ「やだわ、ほんと…ごめんね、サザエ」 ワカメ「えと、おかあさん、電話よ」 フネ「あぁ、はいはい」 ワカメ「おかあさん…」 サザエ「ワカメ、大丈夫?」 ワカメ「お姉ちゃん…ぐす…」 166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 19:14:14.63 ID:iKKfsr9PO ガラッ マスオ「ただいまー」 サザエ「おかえりなさい、マスオさん」 マスオ「かあさんの様子は…?」 サザエ「うん…あんまり…」 フネ「サザエ…?」 サザエ「あ、かあさん」 フネ「…?」 サザエ「えっ…」 マスオ「ただいまです、おかあさん」 フネ「あっ、おかえりなさい、マスオさん」 サザエ「…かあさん」 168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 19:23:32.38 ID:iKKfsr9PO フネ「おとうさん、お茶はいかがですか」 波平「うむ、もらおうか」 フネ「はい」 波平「ありがとう、かあさん」 フネ「ふふふ」 波平「ん?なんだかあさん」 フネ「サザエにもワカメにもいい人が見つかるといいですねぇ」 波平「…そうだな」 フネ「ふふふ」 波平「かあさん、お茶、うまいな」 フネ「ふふ、ありがとうございます」 174 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 19:45:33.18 ID:iKKfsr9PO フネ「カツオーカツオー」 波平「かあさん!」 フネ「カツオーー」 サザエ「どうしたのかあさん!」 フネ「カツオーカツオーー」 カツオ「かあさん、僕ここにいるよ!かあさん!」 フネ「カツオー」 カツオ「かあさん!僕だよ!かあさん!かあさん!」 フネ「カツオ…」 カツオ「僕だよ、かあさんの息子、カツオだよ、ねぇかあさん…」 フネ「カツオ…ごめんね…かあさん、どうしちゃったのかしらねぇ…」 178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 19:56:29.06 ID:iKKfsr9PO フネ「サザエ…」 サザエ「かあさん」 フネ「最近…わたし…変じゃないかねぇ…」 サザエ「えっ…」 フネ「もう、年だからねぇ…仕方ないのかね…」 サザエ「そんな…かあさん…」 フネ「ごめんねぇサザエ…」 サザエ「かあさん…」 フネ「サザエやみんなに苦労かけて…」 フネ「わたし、なにやってるのかしらね…」 フネ「ごめんねぇサザエ…ごめんね…」 サザエ「かあさん、苦労なんて…したことないわよ、かあさん…」 191 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 20:15:09.44 ID:iKKfsr9PO トントン 波平「ん、誰だ」 カツオ「とうさん…」 波平「カツオ…どうした」 カツオ「あのさ、とうさん、かあさんは…だんだん忘れてきてるよね」 波平「…だんだんとな」 カツオ「いつか、僕たちのこと、全部忘れちゃうんだよね」 波平「うむ…」 カツオ「ねぇとうさん、記憶って、なくなったらそれっきりなの?」 カツオ「もう思い出せないの?消えちゃうってこと?」 199 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 20:22:39.51 ID:iKKfsr9PO 波平「ワシにもわからん…忘れていくということだけだ」 カツオ「…とうさん、人は死ぬとき、走馬灯を見るんでしょ」 波平「まぁ…事故の時などみると言うな」 カツオ「それってその人の人生の走馬灯なんでしょ?じゃあ、かあさんは?」 波平「…かあさん?」 カツオ「かあさんは、何を思い出して死んでいくの?」 波平「カツオ…」 カツオ「記憶がなくなるってことは、死ぬとき走馬灯もみれないの?」 カツオ「かあさんは死ぬとき、自分の人生をなにも思い出せないの?」 204 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 20:39:35.78 ID:iKKfsr9PO 波平「カツオ…」 カツオ「かあさんはかあさんじゃなくなっちゃうの…?」 波平「…いや、かあさんはかあさんのままだ…」 カツオ「僕たちを忘れちゃっても?」 波平「左様、かあさんはかあさんだ」 カツオ「…じゃあ、かあさんは何か考えてるの?」 波平「どうだろうな…」 カツオ「忘れていくって、なんなんだろうね、とうさん」 波平「記憶をなくしても、かあさんの愛や優しさはかわらんよカツオ」 カツオ「…僕が知らない男の子になっても?」 208 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 20:56:19.08 ID:iKKfsr9PO ワカメ「…お兄ちゃん起きてる?」 カツオ「…起きてるよ」 ワカメ「お兄ちゃん、おかあさん、もうすぐなのかな」 カツオ「…なにが」 ワカメ「おかあさん…もうすぐ…いろんなこと…ぐす…」 カツオ「ワカメ…」 ワカメ「おかあさん、本当に私たちのこと忘れちゃうのかな…本当に?」 カツオ「僕も、忘れてほしくないよ…」 ワカメ「本当になの?私、まだ信じられないよ…おかあさん…」 カツオ「うん、かあさんまだ、覚えてくれてるしね…」 210 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 21:01:02.57 ID:iKKfsr9PO ワカメ「なんかね、お兄ちゃん、私、いろいろと不思議」 カツオ「不思議って?」 ワカメ「私にとってお兄ちゃんはお兄ちゃん、おかあさんはおかあさん」 ワカメ「それを思い出せなくなるなんて、想像できなくて…不思議」 カツオ「そうだね」 ワカメ「おかあさん…おとうさんのことも忘れていって…さみしくないしら…」 カツオ「僕たちが一緒にいるから、きっと大丈夫だよ」 ワカメ「でも、おかあさんの中では、誰もわからないんだよ?おにいちゃん」 ワカメ「誰もわからないなら、自分のこともわからないんじゃないかしら…」 214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 21:13:51.55 ID:iKKfsr9PO カツオ「そうかもしれないけど、だから、僕らが一緒にいるんだよ」 ワカメ「…おかあさんはおかあさんじゃなくなって、誰になるのかしら」 カツオ「かあさんはかあさんだよ、とうさんも言ってたろ」 ワカメ「でも…かあさん…私をサザエって呼んだりしたわ…」 ワカメ「そのうち…私をワカメともサザエとも呼ばなくなって」 カツオ「ワカメ…」 ワカメ「おかあさん、私に買ってくれた洋服とかも、全部忘れちゃうのね」 カツオ「でも、忘れても、たぶんかあさんはまた買うよ、かあさんの優しさだから」 217 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 21:20:38.16 ID:iKKfsr9PO カツオ「僕のことがわからなくなっても、僕がケガしたら介抱してくれるし」 カツオ「僕が泣いてたら慰めてくれるし、お腹すいたら食べさせてくれる」 カツオ「そういうのは変わらないんだよ、ワカメ」 ワカメ「でも…さびしい…」 カツオ「さびしくてもだよ、ワカメ、僕たちが覚えているんだよ」 カツオ「記憶と絆はイコールじゃないだろ、絆はそのまんまだ、家族なんだから」 カツオ「ただちょっと…忘れちゃっただけなんだよ…かあさんは…」 ワカメ「おかあさん…」 カツオ「ちょっと…忘れちゃうから…僕たちがかあさんの頭のかわりなんだ…」 カツオ「それだけだよ、ワカメ、な?」 222 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 21:27:14.33 ID:iKKfsr9PO ワカメ「…うん、お兄ちゃん、ありがとう…」 カツオ「もう寝ようワカメ」 ワカメ「うん…おやすみ、お兄ちゃん」 カツオ「おやすみ」 カツオ「(かあさん…)」 カツオ「(かあさん、僕も本当は…さみしいよ、かあさん…)」 カツオ「かあさん…」 ワカメ「…?おにいちゃん…?」 カツオ「かあさん…う…かあ、さん…」 ワカメ「お、おにいちゃん…う…ひっく…」 カツオ「かあさん、かあさぁん…うあ…かあさぁあん」 ワカメ「お、おかあさぁん…おかあさぁあん…ひっく…」 226 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 21:36:03.00 ID:iKKfsr9PO フネ「サザエーカツオーワカメー」 サザエ「かあさん、どうしたの、夜中よ…」 フネ「…サザエー」 波平「何事だ…!?」 サザエ「とうさん、かあさんが…」 波平「どうしたかあさん、ワシじゃよ」 フネ「…?」 サザエ「かあさん…」 フネ「…カツオー」 波平「かあさん…かあさん…!」 フネ「…?…」 サザエ「かあさんっ…ひっく…」 230 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 21:49:27.05 ID:iKKfsr9PO ワカメ「…おかあさん…」 フネ「あらあら、こんにちわ」 ワカメ「…こんにちわ」 フネ「どうかしたの?」 ワカメ「あの、ね、テストで100点とれたの…」 フネ「まぁ、すごいわねぇ」 ワカメ「うん…あの、頭なでなでして?」 フネ「あら、うふふ、こんなおばあちゃんでいいの?」 ワカメ「うん…お願い」 フネ「はいはい」 ワカメ「…ありがとう…(おかあさん…)」 240 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 21:56:44.19 ID:iKKfsr9PO サザエ「入るわよー」 フネ「あら…」 サザエ「うふふ、ご飯よ」 フネ「まぁ…すみませんねぇ、ありがとうございます」 サザエ「まぁいいのいいの、さ、どうぞ」 フネ「本当においしそうだこと」 サザエ「…かあさんの好きなものよ…」 フネ「なにかおっしゃった?」 サザエ「いいえ…さぁ、たーんと食べて」 フネ「いただきます…まぁ、おいしいわ、ふふ」 サザエ「良かった…」 243 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 22:01:31.48 ID:iKKfsr9PO フネ「うふふ…」 サザエ「…かあさん…」 フネ「いつも悪いねぇ、サザエ」 サザエ「!…かあさん…?」 フネ「…?」 サザエ「かあさん…かあさん!」 フネ「あら…どうかしたの…?」 サザエ「かあさんっ…かえってきて…かえってきてよ、かあさん!」 フネ「かあさん…わたし…?」 サザエ「かあさん!サザエよ、かあさん!」 フネ「…まぁ…」 サザエ「かあさぁん…かあさん…私のかあさんよ…ひっく…」 フネ「あらあら…」 なでなで 252 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 22:19:01.46 ID:iKKfsr9PO カツオ「かあさん…」 フネ「すー…すー…」 カツオ「…かあさん、寝てる」 フネ「すー…すー…」 カツオ「…かあさんの手…柔らかいなぁ、しわしわだけど…」 カツオ「…かあさん…」 フネ「…ん…」 カツオ「あ、かあさん…」 フネ「あら…?僕、どこの子…?」 カツオ「えと…あ、遊びに来たんだ」 フネ「そう、ふふふ、ここにはおばあちゃんしかいないわよ」 カツオ「えへへ…あ、あのさ、僕とお話をしようよ」 フネ「えぇ」 258 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 22:26:13.21 ID:iKKfsr9PO カツオ「あ、あのね…僕くらいの年でおかあさん大好きって…変かなぁ」 フネ「いえいえ、まさか、ちっとも変じゃないですよ」 カツオ「そ、そうだよね!」 フネ「えぇ、もちろん、僕のおかあさんも嬉しいはずよ」 カツオ「…うん、あの、僕カツオって言うんです」 フネ「そう、カツオくんていうの、いい息子さんね」 カツオ「僕…もっといい子になりたいんだ、もっと、もっと」 フネ「もうカツオくんは十分いい子ですよ、まっすぐにおかあさん大好きって言うんですから」 カツオ「…ありがとう(…かあさん)」 265 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 22:33:08.05 ID:iKKfsr9PO マスオ「タラちゃん」 タラ「なんですかパパー」 マスオ「タラちゃんは…おばあちゃんと…その…さみしくないかい?」 タラ「さみしくないかいでーす」 マスオ「た、タラちゃん!?」 タラ「おじいちゃん言ってたですー、僕たちが覚えてたら大丈夫って」 タラ「僕たちが覚えてたら、いつでもおばあちゃんに会えるですー」 タラ「だから、おばあちゃんと僕はずーっと一緒ですー」 マスオ「タラちゃん…」 タラ「どうしてパパが泣くですかー?」 マスオ「いやタラちゃん…、その通りだね、ずっとおばあちゃんとみんなは一緒だね…」 タラ「当然でーす」 269 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 22:40:19.44 ID:iKKfsr9PO 波平「よっこいしょ…」 フネ「あら…」 波平「…かあさんや…」 フネ「…?」 波平「…いや、なんでもないですよ」 フネ「そうですか、ふふ」 波平「綺麗な月ですなぁ」 フネ「ほんと、綺麗ですねぇ」 波平「あなたと見るからでしょうなぁ」 フネ「いやですわ、そんな…」 波平「いやいや、本当です」 フネ「まぁ、もう…ふふ」 279 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 22:48:15.66 ID:iKKfsr9PO 波平「昔の話なんですがね、気立てのいい女性がいて、すぐ好きになりましてね」 フネ「まぁ、そうなんですか」 波平「その女性とも、よく、こうして月を見とったんですわ」 フネ「あらあら、ふふ」 波平「贅沢させてもやれんのに、飽きることなく月をにこにこ眺めてってですな」 フネ「うふふ」 波平「その横顔が綺麗でなぁ、私は飽きることなくその横顔を眺めとったのです」 フネ「まぁ、ロマンチックですね、ふふ」 波平「お恥ずかしい」 フネ「素敵なお二人ですね」 285 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 22:53:28.13 ID:iKKfsr9PO 波平「ワシはどうだったか知りませんが、あれは素敵な女性だったんですわ」 フネ「あなたも素敵ですよ、そんなロマンチックなお話を聞かせてくれたんですもの」 波平「…かあさん…」 フネ「はい?なにか?」 波平「いえ…それにしても綺麗ですなぁ」 フネ「そうですねぇ」 波平「あなたと見るから綺麗なんですな」 フネ「あら、またおっしゃって…ふふ」 波平「ワシも、全部全部嬉しかったんですわ」 波平「一番なんてない、全部嬉しかったんです」 波平「一番があるとしたら、かあさんだけじゃった」 フネ「ふふ、そうなんですねぇ、うふふ」 290 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 23:04:16.25 ID:iKKfsr9PO サザエ「もしもーし」 フネ「あら…」 サザエ「お外で写真とりましょう」 フネ「写真…?」 ワカメ「うん、写真!お願い、一緒にとりたいの」 フネ「まぁ、わたしと?」 カツオ「かあさ…うん、是非一緒にとりたいんだ」 波平「ワシからもお願いします」 フネ「えぇ…こんなおばあちゃんとでいいなら…ふふ」 ワカメ「やったぁ!」 カツオ「やったね!一緒に外に行こうよ」 ワカメ「あ、ずるいおにいちゃん、私も手つなぐ!」 292 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 23:07:55.73 ID:iKKfsr9PO フネ「はいはい…うふふ」 サザエ「…とうさん」 波平「ん?なんだサザエ」 サザエ「…ここ最近、かあさんはもう、チラッとも私たちを思い出さないわ」 波平「そうか…」 サザエ「今までの、時々戻る瞬間が奇跡だったのね」 波平「左様…変わらんのになぁ」 サザエ「なにが?」 波平「かあさんだよ、ほら、見なさい」 波平「笑う顔も声も、やっぱりかあさんだなぁ」 295 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 23:12:53.00 ID:iKKfsr9PO カツオ「姉さん早くー」 ワカメ「そうよ、早くー」 サザエ「わかったわよー」 波平「まったく…」 サザエ「はーい、みんな寄ってー」 フネ「ふふふ」 サザエ「あと、みんな笑うのよ〜、いい笑顔でね!」 カツオ「…えへへ」 ワカメ「…えへ」 波平「うむ…」 サザエ「とうさんちゃんと笑って」 297 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 23:17:50.26 ID:iKKfsr9PO 波平「そうは言ってもだな…慣れてないものは…」 フネ「うふふ」 サザエ「あ、そうよー、かあさん良い笑顔よー」 サザエ「(あっ)」 カツオ「(かあさん…)ぐす」 ワカメ「(おかあさん…)ひく…」 波平「(カツオ…ワカメ…)」 サザエ「ちょっとー何て顔してるのよ、ワカメとカツオ」 サザエ「もっと…ちゃんと笑いなさいよ…ひく」 波平「ばかもん、泣く奴があるか、ちゃんと…」 フネ「そうですよ、サザエ」 309 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 23:25:11.69 ID:iKKfsr9PO サザエ「!!!!!かあさん!!?」 フネ「しっかりしなさい、サザエ、あなたが家を守るんですよ」 カツオ「かあさん!!!??」 ワカメ「おかあさん!!!??」 フネ「カツオ、のびのびと生きなさい、ワカメもやりたいことをしなさい」 波平「か…かあさん…!!!??」 フネ「おとうさん…幸せを教えてくれてありがとうございます」 波平「かあさん…!!!」 フネ「みんなの気持ちは届いてますよ、本当にありがとうね」 サザエ「かあさぁあん!」 カツオ「かぁさん!」 ワカメ「おかあさぁん!」 318 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 23:30:50.43 ID:iKKfsr9PO フネ「あらあら…ふふ…」ぎゅっ… 波平「かあさん…ワシは…ワシは…」 フネ「…」 フネ「あら、どうかされたんですか?」 波平「…かあさん…」 サザエ「え…かあさん?」 フネ「まぁ、みんな泣いて…どうしたんです?」 カツオ「…もう、終わり…?」 フネ「…?」 ワカメ「ひっく…おかあさん…」 波平「かあさん…」ぎゅっ フネ「えっ、あ、あの…」オロオロ 325 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 23:37:05.32 ID:iKKfsr9PO カツオ「あっとうさん…だめだ」 サザエ「しっ、いいのよ」 フネ「あ、あの…」 波平「かあさん、届いとるぞ!ワシらにもちゃんと!」 波平「かあさんの気持ち、ちゃんと届いとるぞ!だから安心しなさい!」 フネ「…」 波平「だから…だから…」 フネ「あら…まぁ、どうしましょう、皆さんのがうつってしまったみたい」 フネ「ふふ、なんでかしらね、こんなおばあちゃんが泣くなんて、変よね、ふふ」 カツオ「…全然変じゃないよ…かあさん…」 フネ「うふふ…おかしいわねぇ」 338 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 23:45:21.40 ID:iKKfsr9PO …ふわふわする。どうしてかしら。 いつもにこにこしてくれて、一緒にいてくれる人達がいて… とっても優しくしてくれて、うふふ、とってもふわふわする。 あったかいわ、なんだかとっても、あったかい気持ち。 そう、お月さまを見てるみたいな。 誰かしら。優しい人達。教えてもらった気がする。 あぁ、そう、愛と幸せと…家族…… かぞく……… フネ「うふふ」 終わり 348 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 23:48:52.38 ID:iKKfsr9PO 長くて拙かったですが、支援本当にありがとうございました 359 名前:9 ◆xsCyTk4wbg [] 投稿日:2011/10/23(日) 23:52:35.39 ID:iKKfsr9PO そうなんです…>>1さんじゃないんです。 本物の>>1さんごめんなさい 362 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/10/23(日) 23:53:55.00 ID:kw5AxokK0 >>359 今更鳥つけんでもwww 日付変わる前に終わってよかったww 375 名前:9 ◆xsCyTk4wbg [] 投稿日:2011/10/24(月) 00:05:52.51 ID:tatmVkvnO >>362 日付変わる前に終わらすのが目標だったんですが、念の為考えてたんで記念に… 携帯でこんなに打ったのはじめてでしたが、頑張って良かったです… こんなに乙もらえて嬉しい、スッキリして寝れます。 本当にありがとうございました