キョン「すっかり暗くなっちまったな」 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/06/15(水) 03:09:41.66 ID:HRA4seu2O  ただ水が流れるのを眺めているように代わり映えのない毎日に、 突如変化が訪れたのは昨日のことだった。 不思議探索を終え帰路に着いている途中の俺の携帯に、ハルヒからメールが届いたのである。 『明日、9時に集合ね』 この時の俺は、本来休みだったはずの日曜日に急遽不思議探索が入った事実に、 ただ溜め息を漏らすだけだったのだが、 次の日の朝集合場所にきて、俺の気持ちは驚きに変わった。 というのも、そこにはハルヒの姿しかなく、他の団員の所在を尋ねても 『そんなことはどうだっていいじゃない』 の、一点張りだったからである。 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/06/15(水) 03:16:11.21 ID:HRA4seu2O  はてさて、こいつは一体何を企んでやがると どこか疑心暗鬼になりながら過ごしていた俺とは裏腹に、 ハルヒは服を買い楽しそうに映画を観て満足そうに飯を口にした。 そうこうしている内にさすがの俺でも もしかしたらこれはデートというやつではないのか、と 一般的な思考で物事を考え始めていた。 しかし時は既に遅し。あたりはうっすらと暗くなり、俺達の間には なんともいえない帰宅ムードが漂い始めたのである。 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/06/15(水) 03:24:32.13 ID:HRA4seu2O  ゆっくりと水の流れる川を見下ろしながら、俺達は河原に座り込んでいた。 何も言わず空を眺め続けるハルヒの瞳の中に、夜を象徴する星が煌めく。 分かるのだ。帰宅ムードが漂いながらもお互いが口を開こうとしないこの感じ、 ひどく心地がよく、同時に切なさも感じられる。 それは、恐らく俺もハルヒも同じだろうと。 「毎日が蛇口の水を眺めてるみたいに、変わらないわ」 と、どこかで聞いたことのあるセリフを、ハルヒが唐突に吐いた。 その表情は先程と変わらず、ただ空を眺めている。 そして気づいたのだ。 表情が変わらない訳は、さっきからずっと同じことを考えているからだろうと。 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/06/15(水) 03:34:13.45 ID:HRA4seu2O  それならばと俺は頷いた。 粗方、どうすれば蛇口の水の勢いを強くできるのか考えていたのだろう、と。 俺の返答に、ハルヒは小さく首を振った。 そのハルヒの瞳には、サラサラと流れる川が映っている。 動きのない星とは違い、静寂な様子でハルヒの気持ちが動き始めたのだろうか。 「あたしはね、キョン。動き出さないことが大嫌いなの」 はたまた、止まることのない川の流れに、どこか羨む気持ちを抱いたのかもしれない。 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/06/15(水) 03:42:33.60 ID:HRA4seu2O  俺からしたら、ハルヒは常に動き回ってるさ。 と、夜の雰囲気に任せて本音を吐いてみると、 ハルヒの口からふふっと吐息が漏れる音が聞こえた。 言った意味はあったのだと、確かにそう思った。 「キョン、あたしは一方では走り回るくらい動いていたけど、  一方では動くことの恐さに怯えていたのよ」 そうか、と短く答えた。聞きたいことは山ほどあったし、話したいことも山ほどあったのだが、 俺はあえてそれをしなかった。 動き出そうとしているハルヒを、止めかねないと直感的に思ったからである。 して、一方とは一体なんなのだろうか。 それを知る術は、ハルヒに聞く以外ないだろう。 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/06/15(水) 03:49:38.32 ID:HRA4seu2O 「あんたは蛇口の勢いを強くする方法って言ったけど、  あたしがしたかったのは……そうね。  蛇口にホースを繋げて、もっと別の場所に水をやりたかったの」 「もう一方に、か?」 「そうよ。あんたにしては鋭いわね」 「その一方ってのは、なんなんだ?」 「怖くてできなかったことよ」 「ハルヒにもそんなものがあるんだな」 「あるわよ、あんただってそうでしょ?」 「そうだな。勢いのある水よりも、ただ流れる水を見ている方が、心は安らかなんだ。  逃げているのかもしれん」 「責めることはできないわ。あたしもそうだったもの」 「でもね、キョン。あたしは今この瞬間から、動き始めると決めたわ」 「……なんだ? どうやって?」 「…………あんたのことが好きよ、キョン」 終わり 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/06/15(水) 03:52:46.92 ID:HRA4seu2O ただハルヒの告白を書きたいっていうオナニーを形にしたかっただけ 短いな ありがとう 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/06/15(水) 03:57:02.29 ID:HRA4seu2O だからただハルヒの告白が書きたかった その前のデートとかその後のSOS団の反応とかは書くのめんどくさい 俺は想像して一人で楽しんだ