キョン「あばよ。」 1 名前:ライジングムーン[] 投稿日:2011/01/18(火) 19:16:38 ID:xp5xLhsUO 俺は今喫茶店にいる。 そう、不思議探索の時によく立ち寄る喫茶店に今俺はいる。 だが長門、古泉、朝比奈さん、ハルヒの姿はない。俺一人だ。あの頃よく注文していたコーヒーを飲んでいる。 あいつらはもういない。『SOS団』という名の下に集められ、共に不思議な体験をして、共に同じ青春を歩んだあいつらはもういない。今俺がいるこの喫茶店にあの『SOS団』5 人が集まることはもう二度とない。俺がこれから先歩む人生の中にあいつらはいないだろう。 12月の夕闇の空に光る金星をガラス越しに眺めながらそう思った。 宇宙人である長門は親玉の元に、 未来人である朝比奈さんは未来にそれぞれ帰って行った。 超能力者である古泉は超能力を失い普通の人間になった。 『自律進化の可能性』であり『時空の歪み』であり『神』であるハルヒはその能力を失い普通の人間になった。 そして一年半前の6月に古泉と結婚した。 どうやら俺は彦星になれなかったようだ。 いや、これでよかったんだ。 あの二人から式への招待状を貰ったが「仕事が忙しい」と言い訳をして出席しなかった。実際仕事の山に追われていたが。招待状に書かれていたがあの二人は東京に新居を構えているらしい。 もうこの街には俺しかいない。古くから親しかった奴はいない。 もう想い出しかない。 会計を済ませようと財布を取り出すと不意にあの頃使っていた財布は黒だった事を思い出した。今使っている財布は焦げ茶色だが。 会計を済ませ外に出て煙草に火を着ける。最近急に寒くなったように感じる。12月の寒い空気の中で吸う煙草はうまいがいつも吸っている煙草ではなく昨日興味本位で買ってしまった煙草を吸う。 やはりメンソールは俺の口に合わないな。煙草なんで興味本位で変えるものじゃないな。まあ、煙草だけに限った話じゃない。 一服し終えて俺は初めて不思議探索に駆り出された時に自転車を置き悲惨な目に遭ったあの場所に早歩きで足を運んだ。 良かった。俺のGSX1100S KATANAは市の役員に持って行かれることも駐車違反のキップを貼られる事無くちゃんとあった。ヘルメットもある。 これはあいつらに会わなくなってから始めた趣味だ。グローブとヘルメットを着け車体に跨りキーを差し込みセルを回すと一発でエンジンがかかった。 この間着けたチタンマフラーのこの音は正直気に入ってる。 重いクラッチを握りギアーを入れて発進。 あばよ。喧嘩するなよ? 5 名前:ライジングムーン[] 投稿日:2011/01/20(木) 22:35:44 ID:SkKzju4oO ハルヒ編(内容に少し矛盾があるかもしれません。) リビングのステレオから最愛の人との別れを決意した歌が聞こえる。 時が経つのは早くてあたしと古泉君が結婚してもう一年半が経つ。 あの高校生活は本当に楽しかった。宇宙人、未来人、異世界人、超能力者、そしてジョンスミスには会えなかったけどそれでも楽しかったのは事実。唯一不満が有るとすればあたしが自分自身と向き合えなかった事。 あたしが三年生に進級すると同時にキョンが佐々木さんと付き合い始めた。そしてあたしの今での生活が変わり始めた。 佐々木さんと付き合い始めてキョンは髪型を変えて左手首に銀のブレスレットを着けるようになった。そんなキョンを始めて見た時キョンがキョンじゃなくなった様に感じた。 それがきっかけであたしはキョンと会話をすることが徐々になくなった。話すとしても会話の内容も何だかぎこちないものになっていた。SOS団にも参加しなくなっていった。 高校を卒業してあたしは東京の大学に進学した。 キョンは佐々木さんと一緒に地元の大学に進学したみたい。 一足早く卒業したみくるちゃんは海外に留学したけど連絡がつかなくなっていて会えなくなった。 有希は実家の跡継ぎをすると言っていたけどそれ以上は言ってはくれなかった為に連絡先も居場所も分からずみくるちゃんと同様に会わなくなった。 古泉君はあたしと同じ東京の大学に進学した。 上京してからもキョンの事は忘れられなかったものの、あんなに変わってしまったあいつを思い出すのは何だか辛かった。もう会いたくないとその時は思っていた。その為にあたしは成人式も出なかった。 その頃あたしは古泉君に告白された。 キョンを忘れられるなら、あたしも変われるなら、そう思ってあたしは古泉君と付き合いだした。街でデートしたり、キスをしたり、ベットで抱き合ったりもしてキョンを忘れようとした。あたしも変わろうとした。 大学を卒業して就職してもあたしと古泉君との関係は続いていた。 そして四年後、あたしは古泉君にプロポーズされた。あたしは以前と同様に承諾した。 式を挙げる事が来月に決まり古泉君は式への招待状をキョンにも送ったらしいけど「仕事が忙しい」と断られたみたい。少しホッとした。 けど、凄く寂しく感じた。何でだろう? 確かに今まではキョンに会いたくないと自分から避けていたけどこの結婚という一線を越えれば会いたくても二度とキョンに会えなくなるような気がした。 いくら変わってもあいつの事を本気で好きだった。今更になって気付いた。 今まで自分がその事に逃げていた事に。 でももう遅い。 その日の夜、あたしは誰にも気付かれないように声を殺して泣いた。 それから一年半が経って今ではこの新居での生活にも慣れた。古泉君との仲もすこぶる健全。夕飯の支度を終えて新居である高層マンションのベランダの窓から外を見ると12月のクリスマスムード一色の東京の夜景と夕闇の空が見える。 何であの頃もっと早く自分の素直な気持ちに気付けなかったんだろう。 そのせいであの頃は簡単に手が届いたキョンの背中はもう手が届かなくなった。たまに見せるキョンの笑顔はもう見れなくなった。今ではあたしの知らない誰かにその笑顔を見せているかもしれない。 あの頃に戻りたい。 でもそんな事は出来ない。分かってる。 あたしには何も出来ない。あたしは単なるちっぽけな人間。 リビングのステレオから聞こえていた歌が終わるとあたしは12月の夕闇の空に光る金星に向かって呟いた。 さよなら。 お腹の中にいる子供を手で優しく擦りながら。 8 名前:にょろーん名無しさん[] 投稿日:2011/01/23(日) 01:13:16 ID:Y5yuzRBoO 古泉編、できれば読みたいです 考えがあるなら、是非読ましてください 9 名前:ライジングムーン[] 投稿日:2011/01/24(月) 17:27:38 ID:LmPuStl2O >>8 ごめんなさい。古泉編はなかなか考えてがまとまりません。自分勝手で申し訳ないのですが長門編で許して下さい。 長門編 (卒業式が終わったその日の夜、誰もいない文芸部室のパソコンが起動した。) YUKI.N>>I MUST BE GETTING HOME TODAY. YUKI.N>>I CAN'T SEE YOU ETERNALLY. YUKI.N>>BUT,MY MEMORIES ARE EXISTING ETERNALLY. YUKI.N>>I WAS VERY GLAD TO SEE YOU, YUKI.N>>AND,I FEEL IT VERY SAD THAT I SAY GOODBYE. YUKI.N>>IF I CAN BAKC THIS WORLD AGAIN, I WILL SEE YOU. YUKI.N>>GOODBYE-FOREVER. (数秒後、パソコンの電源が落ちた。) 長門編 終わり (上の文章が間違っている可能性大なので和訳を書きます。) 『私は今日、帰らなければいけない。 私はもう二度と貴方達に合うことはない。 でも、思い出までは消えない。 貴方達に会えて本当に嬉しかった。 そしてそんな貴方達に「さよなら」を言うのがとても辛い。 もしこの世界にもう一度来ることが出来るのなら、私は貴方達に会いたい。 さよなら。』 だいたいこんな感じです。間違っていたら指摘して下さい。 10 名前:58X[] 投稿日:2011/01/24(月) 23:29:01 ID:4snc5rJQ0 みくる編読みたいです。 11 名前:ライジングムーン[] 投稿日:2011/01/25(火) 11:39:52 ID:n32Wg7wkO >>10 何とか頑張って書いてみます。キョン編やハルヒ編と矛盾してるところがあるかもしれませんが… みくる編 桜が本当に綺麗ですね。 今日、私は皆さんより一足早く卒業します。 涼宮さんには海外に留学すると言ったのですが本当は未来に帰らなくてはなりません。 色々あったなぁ。 メイド服を着せられたり、夏休みを何度も繰り返したり、恥ずかしながらも映画を作ったり本当に色々あったなぁ。 実を言うと私にはこれから先、SOS団の皆さんに何が待ち受けているのか分かっているんです。 この一ヶ月後、涼宮さんの笑顔が、元気溢れる姿がなくなるなんて。 その時が来たらキョン君、お願いがあります。 涼宮さんの気持ち、解ってあげて下さい。 例え佐々木さんの力が強くても涼宮さんの気持ちに気付いて。 お願い。 皆さんより一足早い卒業式を終えて私は未来から指定された帰還場所であるあの場所に着きました。 そうです。 私が初めてキョン君に未来人であることを告げたあの場所に。 ベンチに座り、空を見上げると夕闇の空と桜が本当に幻想的でした。 初めて未来人であると告げた時もこんな感じに桜が咲いて居ましたね。 これから先、皆さんは本当に辛い思いをする事になります。これはほぼ決定しています。 でも私は祈っています。 涼宮さんがまた元気に笑う事を、 キョン君が涼宮さんの気持ちに気付いてくれる事を、いつしかSOS団の皆さんが分かち合える事を。 夕闇の空の中に輝く金星が本当に綺麗…。 あの金星が私の願いを叶えてくれますように。 分かち合える時が来るその日まで ごきげんよう。 終わり 12 名前:ライジングムーン[] 投稿日:2011/01/27(木) 18:53:52 ID:tzUDFrMAO 古泉編(何とか書いてみました。矛盾や不満とか内容めちゃくちゃだなって感じるかもしれませんがそれでも宜しくお願いします。) 「彼の元に戻りたいと思っているんだろう?」 「…えっ?」 仕事から帰って来て早々僕は彼女に告げた。 僕の憶測を。馬鹿げていながらも的を射ているであろう僕の憶測を。そして僕の本音を。 「何言っているの?それって『離婚しよう』って事?」 「…単刀直入に言うとそうなるね。」 「ちょっと待って…。あたしもう一樹の赤ちゃんがお腹にいるのよ?何変な事言って……」 「それでも、戻りたいんでしょう?…見てしまったんだ。ハルヒ。一年半前、君が声を殺して泣いていたのを。」 「…!」 彼女の言葉を遮って僕は淡々と力強く言う。 「今まで忘れようとしてたんだろう?彼の事。でも君はどうしても彼を忘れられなかった。それが原因であの時、君は泣いていたんじゃないのかい?」 「…。」 「その日から何だか君は上の空になっている事が多いよ。彼の事を考えているんだろう?」 「…それは…でも、……それ…でも………。」 あの頃とは比べ物にならない程彼女はあたふたして口籠もっている。どうやら僕の馬鹿げた憶測は的を射ているようだ。 「もう、やめにしよう…。彼を忘れようとして僕と結婚するのは欺瞞だよ。そんなのは何の解決にもならなし幸せなんて言えないよ。ただ膿が大きくなるだけ。そんな事で産まれてくる子供は本当に不幸になると思う。だからと言って子供を堕ろせなんて言わない。せっかく生を受けたものだから。子供の事は僕に任せてほしい。僕が責任を持って男手一つで育てる。必ず幸せにしてみせる。だから君は君の幸せを掴んでほしい。欺瞞じゃなくて本当の幸せを…。そして、彼の事を想っている君の気持ちも知らないでアプローチをかけて君を孕ませた僕にも非がある。本当にごめん…。ごめんね…。」 「………。」 言い切った。 俯いて表情が見えない彼女に僕は全て言い切った。 すると、体を小刻みに震わした。 おそらく泣いているのだろう。 「い……一樹は、古泉君は…悪っ…くないよ……。自分の……ほっ…本当の……気持ちっ……気付かな…かった…あっ…あたしが…悪いだけ……。だから……謝ら…ないで……。」 泣きながらも彼女は必死に言葉を伝えた。 もう一度訊こう。 「彼の元に戻りたいですか?涼宮さん?」 「……戻りたい…。あたし…キョンの傍にいたいよ……。」 ――――――――――― ――――――――― ―――――――― ――――――― ―――――― ――――― ―――― 風が気持ちいい。 三月ともなると寒さは和らぎ暖かみを増す。でも夕方になるとやはり少し寒さを感じる。 僕の腕の中で眠っているこの子は本当に彼女に似ている。 僕とこの子だけになったこのマンションの部屋のバルコニーから見る夕闇の空は綺麗だ。あの頃、コンピ研に勝負を挑まれた日の帰り道、みんなで下校したあの時の夕暮れを連想させる。 手が届きそうな金星が目に入る。でも手を伸ばしても届くわけがない。 まるで彼女のようだ。 もう彼女は僕の元には居ない。 織姫は本当の彦星の元へと戻って行った。 彼女そっくりのあの金星に言おう。 お元気で。ハルヒ。 15 名前:ライジングムーン[] 投稿日:2011/01/31(月) 08:54:03 ID:khQoAAtcO 佐々木編 地元から遠く離れたこの街の生活にはもう慣れた。今では道に迷うこともなくなった。 今日は仕事が早く終わった。僕はいつも通り一人で家路を歩く。 今日は久しぶりの快晴で日が沈みかけるこの時間は夕闇の空が曇一つなく綺麗に見える。 最近不意に空を見つめていることが何だか多い。 そんな上の空になっている僕の傍を高校生二人の男女が楽しそうな雰囲気を醸し出しながら幸せそうに通り過ぎて行った。 あの頃…。 僕が高校生だった頃…。 16 名前:ライジングムーン[] 投稿日:2011/02/01(火) 11:46:16 ID:ws4eoaDEO 佐々木編2 ―――――――――― ――――――――― 「なあ、今日学校終わったらカラオケ行かねえか?」 「そうだね。今日でテスト終わるからパーっと行きたいね!」 「よし!じゃあ俺奢るよ!」 「嘘?いいの?」 「気にするなよ!俺はお前の彼氏なんだからそれ位のエスコートはしてやるよ!」 「ありがと!嬉しいよ!」 ………。 ―――――――――― ――――――――― 「ねえ。この雑誌に載ってるこの服可愛いと思わない?」 「本当だ!なんだか赤が新鮮で可愛いね!」 「でしょ?あっそうだ。今度の日曜日さあ、一緒に服見に行かない?」 「いいね!行こう!行こう!」 ………。 ―――――――――― ――――――――― 「一体どうしたんだ佐々木?最近成績が下がりぱなしじゃないか。一年生の頃はこんなはずじゃなかっただろう?」 「遊びたい気持ちはあるかもしれないが、今は将来を見据えて学力をつけろ。佐々木にはこの学校の生徒として恥じない学力を身につけてほしい。先生からの頼みだ。おい、聞いてるのか?」 ………。 ―――――――――― ――――――――― 「佐々木さん。涼宮ハルヒの持っている能力は佐々木さんが持つべきです!佐々木さんが能力を持てばこの世界は安定しますよ!」 「僕は佐々木が能力を持つことを既定事項だと信じている。そのためにこうして僕は未来から来ている。だから能力を持つことを承諾してくれないか?」 「私も――協力―――する。」 ………。 ―――――――――― ――――――――― つまらない。 この上無い程の退屈と苦痛。 誰も僕を見ようとしない。 誰も僕を知ろうとしない。 昔、キョンが居た頃は本当に楽しかった。僕の事を知ろうとして接してくれたから。 でも、学校が別々になってから毎日が本当に苦痛でしかない。高校生活がこんなにもつまらなく苦痛でしかないなんて思わなかった。二年生になった時点でそれを自覚するのも遅い気がしたけど、 こんな生活が『青春』だなんて思わない。思いたくもなかった。 こんな僕にも『青春』を謳歌しても良いはず。 こんな僕を理解してくれる人がいても良いはず。 もう一度、キョンの傍にいたい…。 『自立進化の可能性』であり、『時空の歪み』であり、『神の力』である能力を使ってでも。 もう一度…。 17 名前:ライジングムーン[] 投稿日:2011/02/02(水) 21:54:21 ID:BXWE.RYkO 佐々木編3 …………… ………… 「今日で高校生活が終わるなんて何だかあまり実感が湧かないね。」 「そうだな。それにあっという間だったな。この間入学してもう卒業みたいな感じだったな。」 「くくっ。そうだね。」 「なあ、佐々木…あっ。」 「何?キョン…あっ。」 「雪…。」 「本当だ。雪降ってきたね。」 「どうりで寒いと思ったわけだ。」 「高校卒業の夜に降る雪なんてなんだかロマンチックだとは思わないかい?」 「……。」 「どうしたんだいキョン?そんな浮かばない顔して?」 「……いや、何でもない。それよりもう帰ろう佐々木。もうこんな時間だ。」 「そうだね。結構遅くまで遊んでしまったね。」 「ああ。じゃあ、またな。」 「うん。今度会う時はこれからの大学生活の事についてでも話そう。」 「そうだな。じゃあな。」 「じゃあね。キョン。」 ―――――――――― ――――――――― 二年生も終盤に差し掛かろうとした頃、僕は橘さん、藤原君、周防さんの協力を得て涼宮さんから能力を全て奪う事が出来た。 そして三年生に進級した頃、その能力を使い僕はキョンと付き合うことができた。 もう一度キョンの傍にいたいという願いを叶えた。 幸せだった。 正に自分が望む青春を謳歌することが出来た。 涼宮さん達SOS団の友情関係や幸せを壊したという悪事の自覚はあっても僕は幸せだった。 ずっとキョンと一緒にいられる。これから始まる大学生活やそれ以降の生活もずっとキョンと歩んで行けると思っていた。 でも、それは叶わぬ夢だった。 18 名前:ライジングムーン[] 投稿日:2011/02/10(木) 06:43:50 ID:G7R1B9acO 佐々木編4 「もう別れよう。佐々木。」 大学を卒業し、それぞれ違う職場に就職してから四年後、キョンに話があると言われ川沿いの公園に呼び出された。 そして公園のベンチに座っていた彼がいきなり冒頭の台詞を発した。 「……キョン?どうして……?僕が何かしたのなら謝るから…」 「そうじゃない。」 狼狽える僕の言葉を遮ってキョンは静かに力強く否定した。 「実を言うとこの川沿いの公園は俺が高校一年生の頃、SOS団の朝比奈さんって言う人から初めて自分は未来人であると告白された場所なんだ。」 「……高校を卒業してからここに来る度に俺は思うんだ。」 「……本当にこれで良かったのかってな。」 隣に座っている僕の方を向かずにキョンは淡々と話を続ける。 「俺が高校生だった頃、SOS団は何となく嫌だった。ハルヒの事も。何の能力も無いのにいつも俺は不思議で厄介な事に巻き込まれていた。時には命を落としかけてた事もあった。そんなドタバタしている状況が嫌だった。」 「それから逃げるようにお前と付き合って、そんな事はなくなった。最初はこれで良かったんだって本気で思っていた。本当の青春だと思っていた。」 「でも…、高校の卒業式の夜、あの時雪が降っただろう?」 「それを見て…俺はもう二度とあの不思議な体験が出来ないんだなって思った。大切な何かを失った気持に駆られた。」 「それからこの場所に来ると…本当にこれで良かったのかって思うんだ。……それでな…、」 そこまで言うとキョンは更に顔を俯せた。肩を小刻みに震わせながら 「…それでな…気付いたんだ。俺は……俺は、本当は…大好きだったんだ…あの不思議な…出来事が…、そして……ハルヒの事も。」 「嫌だと言いながら……俺は…心のどこかで……ヒーローになれるんじゃないかって……期待してたんだ……世界を…、ハルヒを救えるヒーローになれるんじゃないかって……それを失った今、本当に……今更、俺は…俺はそれに…気付いた。」 泣いていた。 あまり表情を出さないキョンが泣いていた。 俯きながら歯を食い縛り、頬に涙が伝っているのが見えた。 「もう一度…俺は、ヒーローになりたい…。分かってる……。もう、後戻り出来ない事は……。でも…、俺は…会いたい…。何の取り柄もない…この俺に……ヒーローになれるチャンスをくれた…サンタクロースのような存在の…SOS団に、ハルヒに……もう一度……、会いたい。」 …… ………… 暫くしてキョンはベンチから立ち上がり、僕と付き合い始めた記念として左腕に着けていたペアルックのブレスレットを外しベンチの上に置いた。 「キョン、君に本当の事を暴露するよ。そして謝りたいことがある。」 「…。」 「…僕が君と付き合えたのは、涼宮さんの能力を奪ったからなんだ。君が僕に好意を抱くようにと…願ったからなんだ。」 「…そうか。薄々気付いてはいた…。」 「僕は本当に高校生活が嫌でつまらなかった。そんな生活を変えたかった。本当に好きな君が傍にいて欲しいと思っていた。でもそんな一時の気の迷いで君の青春を壊しまった。本当に済まなかった……。」 「……いいさ。何はともあれ俺も興味本位でお前を選んじまったんだ。この俺にも非はある。俺がお前を責めるのはお門違いだ。」 「……キョン。」 「また、親友として合おうぜ。佐々木。」 ――― ―――― ――――― ―――――― ―――――――― それから二年後の三月現在、 キョンは僕を許してくれたが、僕はキョンに合わせる顔がないと思って遠いこの街に一人住むことにした。 さっき僕の横を通り過ぎて行ったあの高校生二人の姿はもう見えない。 キョン。 僕はあの能力を持ってしてでも君と涼宮さんの関係は完全に断ち切れなかった。それ程強く繋がっていたんだね。 サンタクロースはもう見つけたかい? 君がサンタクロースと出会えることを、そしてヒーローになれることを僕が誰よりも強く祈ってもいいかい? あの夕闇の空に輝く金星にこの祈りを込めるよ。 そして、 こんな僕に君と一緒にいる資格はないね。君の青春を、いや、全てを壊してしまったんだ。 決別を決めないといけないね。 さよなら。 でもね……、キョン。 僕は…、私は…、あなたを………。 終わり 19 名前:ライジングムーン[] 投稿日:2011/02/10(木) 07:14:59 ID:G7R1B9acO 以上で自分の初投稿作品『キョン「あばよ。」』は終わります。 初投稿作品なので内容に自信がなく矛盾があったり、誤字・脱字などもありましたがそれでも良い感想を下さった方々やリクエストをしてくれた方々には本当に感謝しています。 ありがとうございました。嬉しいです。 又、矛盾が多い内容かも知れないので読んでいて「何だこのSS?」と不憫な思いをさせてしまった方々には謝ります。 ついでに『佐々木編4』の投稿が遅れしまい、楽しみにしていた方々に不憫な思いをさせてしまった事も謝ります。 本当に申し訳ございませんでした。 また機会があれば何か投稿しようと思います。 その時が来たら「またこいつか。」と思って見守って下されば幸いです。 20 名前:ライジングムーン[] 投稿日:2011/02/18(金) 19:04:08 ID:5bnq7D7w0 エピローグ 「なあ、知ってるか?15年くらい前、この北高にSOS団って言う部活があったらしい。」 「何それ?ボランティア活動の部活?」 「いや、ボランティア活動の部活じゃなかったらしい。噂だと芸部室っていう部活が当時あって、その文芸部室を乗っ取って凄い事してたらしいぜ。」 「そう言えば文芸部って随分昔に廃部になって、今じゃあ部室は倉庫になっちまったんだよな。それで、その凄い事って具体的には何をしてたのさ?」 「噂だからはっきりとは分からねえけど、派手な映画作ったり、街で不思議探索って言う良く分からねえ事したり、野球大会に出たり、七夕にパーティやったりしたみたい 。」 「何その不思議探索って?馬鹿じゃねえの?」 「俺も良く分かんねえ。あ、あとそのSOS団の部長が本当に変な奴だったらしい。何でも部活勧誘の時にバニーガールの格好をして勧誘してたらしい。」 「学校で?て言うかその部長って女なの?」 「女。それもとびっきりの美女だったらしいぜ。でな、それだけじゃねえんだよ。パソコンが欲しいからって言ってコンピ研にセクハラ紛いの事したり、七夕の日に学校の近所にある笹を盗んだりと色々したらしい。」 「何その女?マジで頭おかしいんじゃねえの?」 「まあな。でもそのSOS団を立ち上げたのはその女だけじゃなくてもう一人の男がいたらしいんだ。」 「そんなトチ狂った奴に付き合った男がいたのかよ?」 「いたらしいぜ。噂だとその男はその女と同じクラスメイトだったらしい。で、その後部員集めて最終的にSOS団は5人いたらしい。」 「そんな部活が15年前この学校にあったのかよ。て言うかその男ってその部長だった女の事好きだったんじゃねえの?好きじゃなかったらそんな奴とは関わらねえよ。」 「それがそうじゃなかったらしいんだ。SOS団を立ち上げて2年後にその男は光陽院学園の女子生徒と付き合い始めたらしい。」 「マジかよ。その男って結構女たらしだったんだな。」 「かもな。それかその部長だった女に嫌気が差したかだな。」 「ああ、それもあり得るな。」 「でな、その男が光陽院学園の女子生徒と付き合い始めてから、そのSOS団の部長だった女は人が変わったように大人しくなっちまったらしいんだ。セクハラ紛いの事も物を盗む事もしなくなったらしい。SOS団の活動もそれに合わせて何だか目立たなくなったらしい。まるでSOS団が終わったみたいに。」 「・・・それってさあ、その部長だった女ってその男の事好きだったんじゃねえの?」 「多分な。好きだったとは思う。」 「その後はどうなった?」 「その後は分からねえ。そのSOS団の奴らは卒業してバラバラになっちまったらしいから、その後そいつらがどうなったのかは分からねえ。」 「何か・・・やりきれねえ話だな。そのSOS団の噂って。」 「まあな・・・。て言うか今日って七夕じゃねえか。」 「そう言えばそうだな。・・・じゃあ俺達2人もSOS団にあやかって笹でも取って来て七夕パーティーでもするか?」 「そうだな。天の川でも見ながら酒飲むのも悪くねえな。」 「じゃあ今日学校終わったら、夜中またおち会おうぜ。」 「おう、了解。」 おわり