佐々木「メリークリスマス、キョン」 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 18:38:58.55 ID:vDCUKH0c0 佐々木関係ないけど… ハルヒ「クーリスッマッスが今年もやってくるー♪」 キョン「…ごきげんだな」 古泉「いいことではないですか。12月に入ってから閉鎖空間は    一度も発生していません」 ハルヒ「ほらキョン!手を休めないでちゃんと飾り付けをしなさい」 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 18:50:21.51 ID:vDCUKH0c0 ハルヒ「かじかんだー指をーママが暖めるねー♪」 キョン「その歌誰が歌ってるんだっけ?」 ハルヒ「竹内まりやよ。昔は何よこんな浮かれた歌って思ってたけど、     やっぱりいい歌だわ」 キョン「竹内まりやの旦那って、山下達郎だっけか?     夫婦そろってクリスマスシーズンは印税がっぽりか」 ハルヒ「こらキョン!聖なる夜にそんなお金の話しをするんじゃない」 キョン「はいはい」 sos団の部室では、もうすぐ去年と同じようにパーティが開かれようとしている。 ハルヒ消失事件から、もう一年が経ったんだと思うと、少し感慨深い。 思わず長門の方を見ると、何故か目が合った。 キョン(今年も一年ありがとな、長門) そんな俺の目の合図が伝わったのか、長門が小さく頷いた…ような気がする。 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 19:00:07.00 ID:vDCUKH0c0 鶴屋「やっほー、鳥が羽をむしられて、内臓を取り出したのを    丸焼きにしたやつを一匹まるごと持ってきたよー」 ハルヒ「鶴ちゃんナイス!やっぱりクリスマスと言えばローストチキンね」 聖なる夜になんちゅー会話をしとるんだ。というよりもチキンでかいな。 鶴屋さん、豚の丸焼きと間違えたんじゃないのだろうか。 みくる「いい匂いですねぇー」 俺の後ろから覗きこむようにサンタコスの朝比奈さんが、鶴屋さんの持ってきた 鳥を珍しそうに見ている。未来にはローストチキンはないのだろうか? 俺はローストチキンよりも、朝比奈さんの髪の匂いを秘かに嗅いでいた。 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 19:22:46.21 ID:vDCUKH0c0 ハルヒ「さーて、鶴屋さんも来たことだし、パーティを始めるわよ。     キョンと古泉君は、一回部屋から出なさい」 キョン「何故そうなる?今からパーティを始め…」 ハルヒ「いいから出た出た!アタシが入っていいって言うまで待ってなさい」 古泉「おやおや、何か楽しみですねぇ。では行きましょうか」 キョン「ったく、廊下はクソ寒いってのに」 古泉「まあいいじゃないですか」           〜廊下〜 キョン「はぁー、なんか来年のクリスマスはどうなってるのかねぇ」 古泉「受験もありますしね。頭の良い涼宮さんには楽なものかも知れませんが、    あなたは」 キョン「それ以上いうな」 古泉「んっふ」 なーんて寒い廊下で五分程、古泉と会話をしていると、 ドアの向こうから元気な声が聞こえてきた。 ハルヒ「キョーン!開けていいわよ」 67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 19:35:12.27 ID:vDCUKH0c0 キョン「はぁー、じゃあ行くか」 古泉「先に言っときますけど、ちゃんとリアクションしてくださいね」 そう言われると、警戒してドアノブをゆっくりと回してしまう。             ガチャ キョン「あれ、真っ暗…」 ハルヒ「有希、スイッチオン!」 ハルヒのその言葉とほぼ同時に、部屋が明るくなる。 ハルヒ・長門・みくる・鶴屋「メリークリスマス!」 クラッカー4発、パンパンと乾いた音を鳴らし、 俺と古泉の頭には紙テープがまとわりついた。 そして、目の前には4人の女の子がサンタコスをして、笑顔を全開にしている。 朝比奈さんはもとからその恰好をしていたので、綿のヒゲをつけいている。 古泉が俺のケツをつつく。ああ分かってるよ。 キョン「…ビックリしたぜ、それに、みんな似合ってるよ」 ハルヒ「ふっふーん、当然よ!」 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 19:46:15.01 ID:vDCUKH0c0 そんなこんなで楽しくクリスマスパーティの時間は過ぎていき、 そろそろお開きの時間となった。 鶴屋「いやー、楽しかったよ。片付け手伝うっさー」 ハルヒ「いいわよ鶴ちゃん。片付けはキョンがやるから」 鶴屋「でもそれは悪い…あっ!そうだね。じゃあみくるに長門っちに古泉君、帰ろうか」 みくる「えっ?でも…」 鶴屋「いいからいいから、ハルにゃんも一緒に帰るかい?」 ハルヒ「あっあたしは鍵の管理があるから、先に帰ってて」 古泉(そういうことですか)「ではお先に失礼しましょう」 ハルヒ「はいはい、じゃあみんな大晦日の予定は空けとくように」 72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 19:59:19.76 ID:vDCUKH0c0 俺とハルヒ以外の人間が帰ってしまった部屋は、 さっきまでの騒がしさが嘘みたいに静かになってしまった。 それにしてもハルヒの奴、何でさっきから無口なんだ? 俺のさっきのリアクションがまずかったのか? キョン「おいハルヒ、片付けは大体終わったぞ。ツリーとかは新学期にでも     片付けりゃいいだろ」 ハルヒ「…そうね」 キョン「なんだよ急に静かになりやがって。それに顔が真っ赤だぞ、     まさかお前、校内で酒を…!」 ハルヒ「違うわよバカキョン!」 ハルヒが回していた後ろ手を前に出す。そして、その手には綺麗にラッピング された何かがある。ハルヒは力を入れ過ぎているのか、ラッピングがシワになっている。 ハルヒ「…ほら、これ。この前約束してた」 キョン「…へっ?」 ハルヒ「いいから受け取りなさいよ!」 キョン「あ、ありがとう」 74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 20:06:38.05 ID:vDCUKH0c0 キョン「開けてみていいか?」 ハルヒ「別に…開ければ」 キョン「おい、これ手作りか?」 綺麗なラッピングに包まれていたのは、青と白と黒がバランスよく彩っている 少し、というかかなり長めのマフラーだった。 キョン「ありがとう。大事に使わせてもらうよ」 ハルヒ「それで?」 キョン「それでってなんだ?」 ハルヒ「だーかーらー!アンタからのプレゼントは?」 キョン「…あっ!」 75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 20:13:19.27 ID:vDCUKH0c0          〜一か月前〜 ハルヒ「キョーン、アンタ今年のクリスマスも暇よねぇ?」 キョン「うるさい、まだまだ俺だってなにか予定が入るかもしれん」 ハルヒ「アンタ、クリスマスに女の子からプレゼント貰ったことないの?」 キョン「…」(佐々木の話題は避けてくれって古泉から言われてるしな) ハルヒ「やっぱりないのね!しょうがないわ、今年は団長様がプレゼントを     用意してあげる。そのかわり、アンタもあたしにピッタリのプレゼントを     持ってくること」 キョン「おい、お前にピッタリって」 ハルヒ「〜♪」 キョン「行っちまいやがった」 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 20:41:21.95 ID:vDCUKH0c0 しまった。すっかり忘れていた。 そもそもハルヒが気まぐれで思いついただけで、 どうせ忘れているだろうと思っていた キョン「ハルヒ…すまん。プレゼント持ってくること忘れてた」 ハルヒ「…え?」 ハルヒよ、そんな見たこともないような複雑な顔をしないでくれよ。 キョン「ほんっとうにスマン。この埋め合わせはいつか」 ハルヒ「…いいわよ別に。このバカキョン」 キョン「…すまん」 ハルヒ「さっ、帰りましょう」 キョン「あ、ああ」      「浮かれてたあたし馬鹿みたい」 部屋のドアを開ける時、ハルヒが何か呟いたような気がした。 部屋のドアを開ける時 78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 20:55:20.21 ID:vDCUKH0c0 ハルヒとの帰り道は、お互いに無言だった。 非常に気まずくて、時折冗談を言おうとしたのだが、 ハルヒのしかめ面を見ると、さらにしらけそうなのでやめた。 ハルヒ「じゃあね、キョン。年末年始の予定は空けときなさいよ」 キョン「…ハルヒ、本当にごめんな」 ハルヒ「いいわよ、もう。それよりもマフラー大切に使いなさい」 キョン「埋め合わせは絶対にするから」 ハルヒ「いいわよもう。今年のクリスマスイヴはお終い」 そういうとハルヒは小走りに家の方へと走っていった。 キョン(はぁー、古泉すまん。イヴの日も仕事させてしまうかもしれん) 79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 21:05:17.44 ID:vDCUKH0c0 キョンと別れて家に帰った後、一目散に自分の部屋へ行き、 ベッドに倒れ込んで枕に顔をうずめた。     「バカ…バカキョン」 キョンにプレゼント交換を持ちかけた数日前、あたしは聞いてしまったのだ。 谷口「もう11月の半ばかよ。急いで彼女つくらないとロンリ―クリスマスだぜ」 キョン「お前は何月だろうと彼女つくりたいっていってるけどな」 谷口「そういうお前は、クリスマスに彼女とすごしたことはないのかよ」 キョン「…ない」 谷口「ほれ見ろ、まあお前はあのヘンテコ倶楽部で忙しいんだろ」 国木田「あれ、でもキョンは中3の時、佐々木さんとクリスマスデートしてたじゃないか」 キョン「いや、別にあれはデートなんかじゃない」 谷口「なんだその話!聞いたことねえぞ」 80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 21:18:42.95 ID:vDCUKH0c0 キョン「たまたまその日に佐々木と買い物に行って、     そうしたら同じクラスの奴がそれを見かけて勘違いをしただけだ」 谷口「それを世間一般ではデートというんだよ!こんちくしょう」 国木田「そうだよ、それにキョンが今してるマフラー、その日に佐々木さんから     貰ったんだろう?」 キョン「まあ、そうだが」 キョンと谷口の馬鹿な会話を流し聞きしているつもりが、 あたしはいつのまにか聞き入っていた。 今までのあたしなら、それだけで胸の中がモヤモヤとしていたところだけど、 その時は違った。キョンと一緒に過ごしてもうだいぶ経つ、 佐々木さん以上に気心知れたあたしがマフラーをあげれば、 きっと佐々木さんの時以上にキョンは喜ぶだろう。 根拠のない自信が、あたしの胸の中で満ち溢れていた。 でもそれは違っていた。 キョンはあたしと約束したことすら、忘れていたのだから。 81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 21:27:25.11 ID:vDCUKH0c0 キョン「ただいま」 妹「キョン君おかえりー。ケーキ残ってるよー」 キョン「明日にするよ」 そういって俺は自分の部屋に入ると、ベッドにもたれてぼんやりとした。 今日はマズイことをした、という想いが、ハルヒの寂しそうな顔と一緒に 浮かんでくる。 いつの間にかまだ風呂に入っていないということも忘れて、睡魔が襲ってきた。 起き上る気力も起きず、そのまま俺は眠りについた。 83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 21:49:39.97 ID:vDCUKH0c0    「…ョン。起きなさいよキョン!」 いつもの妹の声とは違う声が、聞こえてくる。 これは…ハルヒの声か?でも何でハルヒがここに? みくる「パパみてー、サンタさんがクマさんの人形くれたの」 有希「あたしは飛び出す絵本」 一樹「ぼくはサッカーゲーム!」 なんだこの子どもたちは?どこかで見覚えあるような… キョン「なあ、ハルヒ。ここはどこだ?」 ハルヒ「なに寝ぼけてるのよ?ここはアンタがローン組んで買った家でしょうが」 どういうことだよおい。いや俺の経験からすればこれは… キョン「なあハルヒ、新聞あるか?」 ハルヒ「あるわよ、それよりも早く顔でも洗いなさい」 そうだよな。顔を洗えばちゃんと目が覚めるかもしれない。 ハルヒ「はい、新聞」 やっぱりかよ。新聞に書かれている日付は2025年12月25日。 俺は32歳になっていた。 85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 22:03:34.71 ID:vDCUKH0c0 ハルヒ「ったく、有希も一樹もみくるも早起きしたっていうのに。     朝ごはん食べたら出かけるわよ。急ぎなさい」 キョン「…ああ、なあハルヒ。俺達って結婚してる…よな?」 ハルヒ「あんた、まだ寝ぼけてるようね。なんなら子供たちの前でいってあげようか?     アンタのくっさいプロポーズの言葉」 キョン「…いや、勘弁してくれ」 ハルヒ「あんた昨日飲みすぎたようね。こりゃ今日はアタシが運転したほうが     よさそうね」 そうしてくれ。俺は免許をとった覚えがない。 ハルヒ「さっ、早く朝ごはん食べちゃって」 勘弁してくれよおい。俺は残りの十代と二十代の若くて楽しい時間を満喫したいんだぜ? こうなりゃヤケだ。 キョン「なあハルヒ、ちょっとこっち向いてくれ」 86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 22:10:53.24 ID:vDCUKH0c0 ハルヒ「なによ?」 ぶちゅぅぅぅぅぅぅぅぅ キョン(これでどうだ?頼むぜおい) ハルヒ「ちょっアンタなにやってんのよ朝っぱらから!しかも酒臭いし」 これじゃ駄目なのかよ。もうお前は眠り姫じゃなくなっちまったのか? ハルヒ「昨日の晩のじゃ足りなかったの?」 キョン「昨日の晩って?」 ハルヒ「ばっ馬鹿。早く顔洗ってきなさい!」 88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 22:23:54.25 ID:vDCUKH0c0 しょうがない、対策は後で考えるとして、ハルヒの作った朝飯でも食おう。 オムレツか、箸をつけなくても焼き具合が絶妙なのがわかる。 みくる「あたしがケチャップかけてあげるねー」 キョン「ああ、ありがとう」 みくる「できたー」 キョン「…おい」 一樹「あはは、うんこってかいてるー」 有希「…」ポッ ハルヒ「こらみくる!食べ物で遊ばないっ」 なんていうほのぼのとした光景なんだ。 だが俺はここにいつまでもいるわけにはいかないんだよ。 みくる「あははーオムレツうんこー」 90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 22:36:50.56 ID:vDCUKH0c0 「うんこ」と書かれたオムレツを食べて、ハルヒの準備した服に着替えると、 ハルヒが元気よく言った。 ハルヒ「さあみんな!出発するわよー」 有希・一樹・みくる「おー!」 キョン「なあハルヒ、どこに行くんだ?」 ハルヒ「忘れたの?水族館よ。赤と白のクリスマスカラーの魚とかエビが     人気だってニュースを、テレビでアンタも見てたでしょう」 キョン「ああ、そうか」 ハルヒ「それと、忘れ物してるわよ」 キョン「えっ?なにをだ?」 ハルヒ「マフラーよ、マフラー!」 ハルヒが俺の首に巻いたのは、昨日貰ったあのマフラーだった。 どうやらこれが鍵になりそうだな。