涼宮ハルヒの思い出 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 18:48:36.05 ID:P8uJL7Dx0 「あ、いたいたあれだな。間違いない。今よりちょっと髪が長いな」 「あ、そうです。あれが涼宮さんです。」 突然だが俺は今、過去に来ている。まあ突然なのは今に始まった事じゃないがな。 勿論、遊びに来ているわけではない。 今─というか今現在俺がいるこの時空は、七月三十一日のことであり、 俺、つまりジョン・スミスがハルヒ(小)と会ってちょっとたったころである。 「相変わらずぶすっとした顔してんなあ……。」 北高に入学した当時のハルヒの顔を思い出す。 正に、あの時の顔だ。 「今、思えばハルヒも丸くなったなあ……。」 「ふふ、キョン君のおかげですよ。」 「違いますよ。ハルヒが自分で変わっただけです。」 自惚れる訳ではないがハルヒが変わったのは、 少なからず俺のおかげということも含まれているであろう。 つまり今のは謙遜であり、本心ではない。 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 18:52:20.87 ID:P8uJL7Dx0 「見つけたのはいいんですが、長門さんの所へ向かわないと。」 「あ、そうですね。」 そう言われて長門を思い出す。 まったく、いつも長門のお世話になってんな。 とりあえず、長門にお礼言っとこう。 せっかく見つけたハルヒを逃がすのはおしいが、 まず、長門に相談しないとな。 次、次こそは長門に頼られるような場面が欲しいものだ。 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 18:55:42.99 ID:P8uJL7Dx0 『今日、団活が終わっても部室に残ってて欲しいです。』 朝比奈さんは俺のお茶とともに、走り書きしたようなメモを渡してきた。 これもまた既定事項を満たすようなことをするのだろう。 『了解しました。』 俺はそのメモの下に一文を加えた。 もちろん、走り書きだ。団長さんに気づかれたら困るからな。 ニコッと笑う朝比奈さん。 マイエンジェルの微笑みによって俺の体力は上限を飛び越えた。 にやけた顔を見たのだろう、ハルヒがぶすっとした顔で言ってくる、 「あんた、顔が気持ち悪くなっているわよ。」 どう答えようか迷っていたが、 ハルヒは俺に返答を求めてないらしく、すぐにパソコンのモニタに視線を戻す。 その後はいつもどり、ボードゲームで古泉をボコボコにし、 長門の本を閉じる音によって終わった。 「じゃあ、あたし帰るから、最後の人戸締りよろしくね。」 「それじゃあ、僕も帰らさせていただきますね。」 「……」 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 18:57:34.76 ID:P8uJL7Dx0 「よかった。自然と二人になれましたね。じゃあ時間もないので、早くやっちゃいますね。」 自然と意識が遠のいていく。 ─またTPDDを使って眠らされたのだろう。 朝比奈さんの膝枕で起きられるといいな…… ―――――― 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:00:51.53 ID:P8uJL7Dx0 「えーあ、俺だ。キョンって言えばわかるか?」 「……入って」 そう言われて相変わらず何もない部屋へ通される。 まあ過去だから当然といえば、当然か…。  ちなみにこの長門は未来の長門と同期してるため、 今の長門となんら変わらないと言っていいだろう。 長門が俺と朝比奈さんにお茶を出す。 入学当初、長門の部屋へ入った時に出されたお茶と同じだ。 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:05:13.95 ID:P8uJL7Dx0 誰も口を開かないので、俺から聞きたいことを聞くとするか、 「とりあえず、俺はここに連れてこられた理由を知りたいんですが……」 「あ、私から説明します。えーと、涼宮さんの精神状態が中学生の頃不安定だったってのは聞いてますよね?」 「そういえば、古泉が大変だったって言ってましたね……。」 「それです!!なにから、説明していいのかわかんないんですけど。ジョン・スミス─つまりキョン君ですね。 実は涼宮さん七夕の翌日にもジョンに会えるかも─と思って東中のグラウンドに行ったんですが、 だけど、東中にジョンは現れなかった。それですごくがっかりしたんですよ。 って言うところですかね。」 「なにもわかんないですけど……」 「えっ?」 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:09:05.39 ID:P8uJL7Dx0 「要するに、古泉一樹の負担を減らすため、涼宮ハルヒのイライラを解消しなければならない…」 「なるほどそういうことか、でも古泉なら何もしなくても大丈夫じゃないのか?」 「それも、また既定事項……古泉一樹に負傷されては困る。」 なるほどな。最初から長門に聞けばよかったな…… 要するにあれだろ、ハルヒのご機嫌をとれっていうことだろ。 すっかり、ご機嫌取りとしてつかわれてんな。俺、しつこいようだがやれやれだ。 「だいたいのことはわかりましたが、具体的になにをすればいいんですか?」 「そこです!!キョン君には、涼宮さんの夏休みを楽しくしてあげればいいんです。 端的にいえば涼宮さんと遊んであげてくださいっていうことです。」 「長門、それでいいのか?」 「いい」 ……俺は過去に戻ってまで、ハルヒのイライラを解消しなければいけないようだ。 「でも俺、たぶんジョン・スミスって一発でばれますよ。」 「問題ない。最後に私の情報操作で彼女の記憶を一部消す。」 長門のご都合主義パワーが炸裂ってとこか…… 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:14:13.04 ID:P8uJL7Dx0 ――――― 「お嬢ちゃん、たこ焼き一個くれないか?」 不機嫌そうな顔で振り返る女の子 「―――あれ、あんたあたしと会ったことあるかしら?正確に言うと七夕の日」 「…いや知らないな。そんなことよりたこ焼きくれるのか?くれないのか?」 ちょっとがっかりした顔をする女の子─―言うまでもなくハルヒだ。 「あげないわよ!その辺の砂利でも食ってなさい!」 そう言い残して去っていった。 おっと、ハルヒを見失ったらまずい。 だがその心配は杞憂に終わった。 すぐにハルヒを見つけることができた。ハルヒは射的の屋台でおっちゃんと口論している。 「おっちゃん、これ本当に落ちるの?さっきからビクともしないんだけど。」 「落ちるさ、落ちるとも。だけど、お嬢ちゃんちょっと下手糞だね。」 ハルヒは怒っている。取りたいのは大人の足ぐらいの大きさのクマの人形のようだ。 もっとも、欲しいのではなく、落としたいだけだろう。 何回も当ててるようでパッケージに凹みができている。 この辺が今のハルヒと似ているな。 ―いや本人だから似てるも何もないのか。 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:18:33.40 ID:P8uJL7Dx0 ハルヒとコンタクトは失敗したが、まだチャンスはある。 「甘いな、お嬢ちゃん。見てな」 そういいながら俺はおっちゃんに金を渡す。 銃を受け取り照準をつける。 撃つ。クマは簡単に倒れる。 おっちゃんもハルヒも驚いてる。 おっちゃんの驚きからして、重りでも突っ込んでやがったな。 説明をしておくと、長門の宇宙人的援助を受けているからだ。 ハルヒの顔の前に指を持っていき、ちっちっちと舌を鳴らす。 安い挑発だったが、これだけでハルヒは乗ってきた。 「ほ、他にも勝負よ!金魚すくいで勝負よ!」 「望む所だ。」 その後、他にも勝負はたくさんしたが、 ストラックアウト以外は全勝した。 長門の援助を受けているがそれは、最低限の物だからな… …野球苦手なんだよ 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:24:02.10 ID:P8uJL7Dx0 ――― 「お嬢ちゃん、花火やらないか?」 「待って、あたしの名前は涼宮ハルヒよ。」 「そうか。ハルヒ、いい名前だな。」 「あんたの名前は?」 「桃太郎だ。」 「……ふざけないで」 「そうだな、匿名希望という事にしといてくれ。」 「あんた、やっぱりあたしの知ってる人に似てるわね。」 そう言われて、ドキリとする。別にばれても構わないが、 なんか嫌じゃん。 ――俺はひねくれ者だしな。 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:27:04.74 ID:P8uJL7Dx0 「ハルヒ、明日セミとり行くぞ。」 「……突然ね」 その言葉、未来のお前に聞かせたいな。 「どうせ暇だろう。多くとったほうがうーん一個命令できる。それでいいだろ。」 「あたしに勝負を挑もうなんて命知らずね。」 ハルヒは100Wの笑顔をしながらそう言った。 「じゃあ明日九時駅前な、遅れたら ─罰金だからな。 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:32:13.27 ID:P8uJL7Dx0 そうして俺は、長門の家に一回帰った。 どうやら、宇宙的かつ未来的監視うけていたようだ。 「相変わらず、涼宮さんと仲いいですねえ。」 「相変わらずの意味はわかりませんが、子供ハルヒの方が扱いやすいですよ。」 なんたってかわいいし、 というと朝比奈さんの笑顔が消えた。 「キョン君年下が好きなんですね...ひょっとしてロリコンとか…」 落ち着け俺、 こういうときは確か素数数えるんだよな。 ――― おし落ち着いた。 どうやら俺は憧れの先輩にロリコン疑惑をかけられている。 誤解だ、断じて違う。 これを説明するのに一時間かかったとだけ言っとこう。 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:36:23.40 ID:P8uJL7Dx0 次の日駅前へ行くと、ハルヒが立っていた、 惜しみなく笑顔を見せつけてきた ―この辺ハルヒ(大)とは違うな。 「遅い、罰金!」 中学生におごらさせるわけいかないだろ、そういうことだ。 うだるような暑さなのにハルヒとセミが鳴く 暑いのにご苦労なこった。 とりあえず、いつもの喫茶店へ入った。 無論俺にとってだが… ひととおり すずんでから店を出た。 財布が軽くなったのは言うまでもない。 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:38:17.92 ID:P8uJL7Dx0 ―――― 結局、一匹の差で俺の勝ちとなった。 年の違いと言ったところか、 「やっぱり、キャッチアンドリリースの精神は必要だよな。」 そう言って虫かごを開ける。 「あ、捕まえたのに…」 「もしかしたら、セミが恩返しに来るかもしれないだろ。」 「一方的に捕まえて逃がして恩返しにきたらそれこそ虫並の知能ね。」 昔のほうが大人だよなハルヒ ちょっとつめの垢ほじってくれ、飲ませるから。 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:43:35.64 ID:P8uJL7Dx0 「明日はバッティングセンターへ行こうぜ」 「いいわよ。」 ハルヒも文句を言わなくなった。 今日も長門の家に泊まった。 この時期は俺と俺の家族も帰省中だから、家にはいないんだろうけど 万が一ってあるだろ。ほら 「やっぱりキョン君と涼宮さんには時間を越えた絆があるんですねぇ」 恥ずかしいことを平然と言う朝比奈さん、 俺はあなたと絆を結びたいですね。 明日も罰金払ってやろうと考えながら眠りについた。 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:47:25.53 ID:P8uJL7Dx0 やはりハルヒが先に来ていた。 バッティングセンターは以外と近場にあるので、 そんなに移動費はかからなかった。 ――― カーン、カーンといい音、 相変わらずいいバッティングだ。 「やるな。」 「当然でしょ。」 そのかわり、俺のバッティングはひどかった。 スカッ、スカッ、かすりもしない… 別に勝負ではないので、長門の力は使うつもりはない。ない… 「もっと腰入れて打つのよ。」 スカッ、スカッ、かすりもしない…… 「おいハルヒ、そっちのバット貸してくれ。」 「うわ男らしくない…」 スカッ、スカッ、かすりもしない……… だからいったろう野球苦手なんだよ、野球 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:52:31.69 ID:P8uJL7Dx0 もう十分打ったので帰ることにした。 俺?俺が十分打ったわけないだろう。ハルヒだよ。 「おいハルヒもう帰るぞ。」 「そうね、結構打ったし、」 「それで、明日はどこ行くのかしら?」 「バイトだバイト金稼ぐぞ。」 バイトの説明をしたあと ある計画を思いついた。 「そんじゃな、また明日、」 長門の家に帰る。 ―――     ――        ― 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:55:24.53 ID:P8uJL7Dx0 今日はちょっと遅刻してしまった。 ハルヒはちょっとだけ怒ってた。 「遅いわよ、昨日楽しみすぎて眠れなかったんだからね。」 「お前…かわいいな。」 「な、何バカなこと言ってんのよ。」 当然でしょと言うハルヒの顔は赤かった気がする。 「じゃあ行くぞ」 駅前のスーパー すぐにつく、ハルヒにはがんばってもらうか。 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:57:14.87 ID:P8uJL7Dx0 「暑いわ〜あんたに騙された。」 「カエル着ぐるみ中々にかわいかったぞ」 「あんたロリコンなのね…怒る気にもなれないわ」 いっておくが俺にロリコンの気はない。 素数数えたほうがいいかな。 ハルヒはアイスを食べ終え、手を差し出してくる。 「何だ?」 「バイト代よ バ イ ト 代」 「ああそれなら、アイスあげたろ。」 「は?」 仕返しだこの野朗 この計画は大成功に終わった。 25 名前:>>22結構変えたんだよリメイクってやつさ[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:01:04.08 ID:P8uJL7Dx0 その後もいろんなとこへ行った。 ハゼ釣り大会、映画館、天体観測、野鳥観察。 どれも楽しかった。ハルヒもきっと楽しかったことだろう。 ―――――――――― そしてあっという間に時間はすぎ、八月三十日となった。 いつもの喫茶店に入る。 今日ハルヒの記憶は消される。 ちょっとだけ、夏休みをループさせたハルヒの気持ちがわかった。 「ハルヒ話しがある。」 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:04:20.02 ID:P8uJL7Dx0 「…何よ?」 「お別れだ。」 「……」 こいつはずいぶん前から知っているような気がした。 「別れが来ることぐらいわかってるわよ。」 「お前と過ごした三十日間楽しかったぞ。」 「わかってるわよ……。」 「実は俺ジョン・スミスなんだ。」 「……気づいてたわ。」 「……いつから気づいてた?」 ―最初からよ、と微笑むハルヒ 今になってコイツの記憶を消したくなくなった。 勿論そんなことしちゃまずいし、俺はしないだろう。 ただ―そう思った。それだけだ。 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:06:11.28 ID:P8uJL7Dx0 「最後になったが、ハルヒ高校生になったら、―友達の宿題ぐらい手伝ってやれよ。」 「じゃあなハルヒ、セミとりの時命令だ、ここの勘定は任せた。」 ――いつか返すからな じゃあなハルヒ そんでありがとう ―――長門あとは頼んだ。 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:07:41.25 ID:P8uJL7Dx0 後日談 俺はいつものように、妹に叩き起こされ、 いつものように朝食を食べて、 いつものように、坂道を駆け上って いつものように、ハルヒと会った。 「ほらよ、いつかの千円だ。お釣りはいらないぜ」 「はあ?何言ってんの?」 「…あと夏休みの課題手伝ってくれてありがとな。」 「………」 「……それと、たこ焼きくれてありがとな」 fin 26 名前: ◆8/Q4k6Af/I [] 投稿日:2010/09/29(水) 20:50:42.31 ID:UapqOW8F0 ノドアメの影響うけて書いたSSでした。 ノドアメ更新がんばってー 読んでくださった方ありがとうございました。