みくる「……有希」 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/30(水) 21:28:19.15 ID:iz5lWJVq0 放課後の部室に私は長門有希と二人きりでいた。 涼宮ハルヒが私に望んだ通り私はメイド服を着用しお茶の準備をする。いつもならもうとっくに来ているはずの涼宮ハルヒも古泉一樹も彼も来ていない。 二人だというのにまるで一人でいるように静かな部室。私と長門有希の間に会話など無い。彼女と二人きりになって会話が出来るのは涼宮ハルヒか彼ぐらいだろう。 「どうぞ」 笑顔とともにお茶を渡す。 彼なら「ありがとうございます、朝比奈さん」とデレデレした表情を見せてくれるだろうに彼女は一瞬チラリとこちらを見て小さく頷くだけ。 そんな彼女の反応に私は意地悪をしてみたくなった。 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/30(水) 21:34:49.53 ID:iz5lWJVq0 涼宮ハルヒが私に望んでいるキャラと私の本来の性格は違う。涼宮ハルヒの望みと一致しているには外見だけに過ぎない。涼宮ハルヒの望む私は長門有希に意地悪をしたいなどと思わないだろう。 でも今は二人きり。私の行動を咎める者はいない。 ソッと彼女がお茶に手を伸ばす。私はその手が湯飲みに届くよりも早く掴んだ。 感情のない目でこちらを見ている。でもなんとなく…なんとなくだけど表情に困惑が見える。彼女の表情を読み取れるのは彼だけだと思っていただけに私はその表情に少し喜びを覚えた。 「お茶、飲みたいですか?」 問いかける。 しかし返事は返ってこない。ただじっとこちらを見ているだけ。 「答えなきゃあげませんよ」 私は表情から笑顔を消して言った。 「……………ほしい」 10秒ほどの沈黙のあとにぼそっと彼女が言う。 彼女と会話のキャッチボールが出来たのは恐らくこれが初めてだろう。 私は何故かゾクッとした。恐怖から感じるものではなく、背中を這うような感覚。 普段は私なんかいないように振舞う彼女。彼女には私が見えてないんじゃないかと感じることさえある。そんな彼女が私の行動に反応を示した。 なんとも言えない感情が私の体の中で蠢いている。 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/30(水) 21:39:33.19 ID:iz5lWJVq0 ゴクリ、と私は唾を飲み込む。 もっと反応が見たいと思った。 私は更に彼女を困らせようと口を…開きかけたところでガチャ、とドアが開く。 急いで彼女の腕を放すと現れたのは涼宮ハルヒと彼だった。 「あー…疲れた!」 そう言って涼宮ハルヒがドカっと団長席に座る。 明らかに機嫌が悪い。 「あの…どうかしたんですか?」 少しおどおどしながら彼にそっと聞く。 「あぁ…授業中に突然騒ぎ出して…担任に叱られてたんですよ」 「そうなんですかぁ」 恐らく彼も巻き込まれてこの時間になったんだろう。 「みくるちゃん!お茶っ!!」 「ひゃっひゃい!」 担任に叱られた八つ当たりなのか、それとも彼と話していたのが気に入らないのか、涼宮ハルヒは私を睨みつけた。 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/30(水) 21:45:02.71 ID:iz5lWJVq0 「おい…」 「いっいいんです…」 これ以上機嫌が悪くなる前に急いでお茶を淹れる。 どうぞ、とおどおどしながらお茶を渡すとふんっとでも言いたげに湯飲みをぶん取って飲み干した。 ポットのお湯は百度近くあるというのに熱くないんだろうか。そんなことを思いながら言われる前におかわりを用意する。 少し落ち着いたのか今度はズズ…とゆっくり飲んでいた。 「あっ…キョンくんごめんなさい…今淹れますね」 涼宮ハルヒに気を取られすっかり忘れていた。 「はい、お願いします」といつものようにデレっとした表情で彼が答えた。 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/30(水) 21:50:29.29 ID:iz5lWJVq0 彼の分のお茶を用意していると後ろから「ん?長門、飲まないのか?」という声が聞こえてきた。 振り返ってみると彼女が本も読まずにじっと湯飲みを見つめている。 ……まさか私の許可がないから飲めないでいるのだろうか? 私の視線に気づいた彼女が今度は私をじっと見つめる。 「なに有希。みくるちゃんがどうかしたの?」 まずい。 さっきのことを言われたら涼宮ハルヒが望む私ではなくなってしまう。 「あっ…もしかしてぬるいですか?今温かいのと交換しますからそっち飲んでください」 急いで湯飲みを回収しお茶を淹れなおす。 どうぞ、とお茶を渡すとズズ…と静かに飲み始めた。 もしかして本当に彼女は私の許可を待っていたのだろうか。 またゾクッとした感覚が背中を這う。 そこで「遅くなってすみません」と古泉一樹が部室に入ってきていつもの部活が始まる。 涼宮ハルヒはネットサーフィン。彼と古泉一樹はボードゲーム。そして彼女もいつものように本を読み始めた。 私だけがいつもと違い、ただ本を読む彼女をぼうっと眺めていた。 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/30(水) 21:57:21.20 ID:iz5lWJVq0 あれから三日後。再び部室には長門有希と私の二人きり。 先ほど古泉一樹が来て“バイト≠ェあるので休む、と報告をしていった。涼宮ハルヒと彼も来ていないところを見ると彼も巻き込まれているか、彼が原因で二人とも来れないのだろう。 それも“バイト≠ェ入るほどの原因。おそらく二人ともまだまだ来れない。本来よくないことだが今の私にとっては幸運だった。 「長門さん」 私の呼びかけにチラリ、とこちらを向く彼女。 あれから私は考えていた。彼女の感情をむき出しにするにはどうしたらいいのか…。 それを試すために私は彼女のそばに寄り、彼女の持っている本を取り上げる。 この前と同様、無表情に見えて小さな困惑を浮かべていた。 「……返して」 私は答えない。ただじっと彼女を見つめる。 「…………………」 無言のままスッと立ち上がると本棚から別の本を取り出し、私を無視して読み始めた。 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/30(水) 22:01:20.96 ID:iz5lWJVq0 その態度にイラつきを覚えた私はさっきよりも少し乱暴に本を取り上げる。 再びの、困惑。 その表情がとても愛らしい。 「……あなたは何故こんなことをするの」 少し怒ったかのように彼女が言う。 私は取り上げた本を机に置くと彼女の白い首筋をぺろっと一舐めした。 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/30(水) 22:07:14.73 ID:iz5lWJVq0 彼女の顔を見る。本を取り上げた時よりも解りやすい困惑。 再び白い首筋に舌を這わせる。先ほどの子猫が舐めるような舌使いではなく、いやらしく。 ピクン、とわずかに震える彼女。その反応に再びあの感覚が背中を這う。もっと反応が見たくて今度はちゅっと吸ってみる。 彼女に聞かせるようにわざといやらしい音を立てる。ぴちゃぴちゃと部室内に広がる水音が我ながらすごく卑猥な音だと思う。 そっと彼女の顔を盗み見る。無表情に見えて何かに耐える顔。彼女のこんな顔は彼でさえ見たことがないだろう。 今度は甘噛みも加えて彼女の首筋を愛撫する。 耐えている顔もいいが嫌がる反応も見たい。 首筋を愛撫しながらセーラーの中に手を入れブラのホックを外す。 「……やめて」 小さな声が聞こえた。 しかしそんな声なんかいつも彼女が私にしているみたいに無視して私はセーラーとブラをめくりあげ、ピンク色の小さな突起を外気に触れさす。 躊躇無く私がそれを口にすると 「ぁっ…」 とさっきよりも小さな声が聞こえてきて、私はその声に酷く興奮した。普段私には声も聞かせてくれない彼女の喘ぎ声。同性の甘い喘ぎ声。 長門有希の、喘ぎ声。 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/30(水) 22:12:39.16 ID:iz5lWJVq0 ゾクゾクと背中を這うあの感覚。 首筋と同じように舐めたり、吸ったり、甘噛みしたりする。もちろんわざと音を立てるのも忘れてない。 ピクピクと先ほどより強い反応。 普段話もしない同性にこんなことされて彼女はどう思っているんだろう。彼女の頭の中は何を考えているんだろう。今、この瞬間だけは私のことだけを考えてくれているだろうか。 ピンクの突起から口を放し彼女の顔を見る。赤く染まった頬に、少し弾んだ息、いつもよりも濡れている瞳。 ───なんて、綺麗なんだろう。 自分の頬も赤くなっていくのが分かる。胸を掻きむりたくなるような甘い感覚。私は何故か彼女の名前を無性に呼びたくなった。 長門有希。有希。 有希、と呼び捨てにしているのは涼宮ハルヒだけ。長門さん、と呼んでいるのは私を含めその他大勢。 その事実が今の私には苦しい。 呼びたい。 彼女の名前を。 長門有希の名前を。 有希、と。 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/30(水) 22:16:54.81 ID:iz5lWJVq0 「…………有希」 彼女のいつもより濡れた瞳を見つめながら私は彼女の名前を口にした。 口に出した途端恥ずかしさやら嬉しさやら甘ったるい感情が表れ、私の胸を支配していく。 「有希」 もう一度口にする。 「……有希」 三度目に彼女の名前を口に出したと同時に私は彼女にキスをした。 私の舌が彼女の口内に侵入していく。そこは生温かく、現実味のないこの状況と違い、リアルな感覚がした。 彼女の舌に私の舌を絡める。ぬるっとした感触が気持ちよくて、より強く彼女の舌を求める。 部室内に私と彼女の唾液の音が響く。 先ほどの私だけの一方的な音とは違う、二人の音。 音に差は無いはずなのにさっきよりもいやらしく聞こえた。 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/30(水) 22:21:29.23 ID:iz5lWJVq0 彼女の唇から離れたくなくて私はしばらく彼女の唇を貪った。 彼女の小さな舌を口に含んで吸ったり、軽く噛んだり。私の口内にわざと溜めた唾液を彼女に飲ませたりもした。 コクン、と喉を鳴らす音に背徳間を感じた。 段々息が苦しくなってきたのか彼女の小さな鼻息が私の肌に触れる。くすぐったくて、可愛くて、愛おしくて私は離してあげることができない。 唇を少しずらし息が出来るようにしてあげる。そこからはぁ…と漏れる息にもいやらしさを感じた。 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/30(水) 22:27:12.34 ID:iz5lWJVq0 彼女の唇を貪り続けてどれくらいがたっただろうか。 「うっさい!!バカキョン!!!」と廊下から大きな声がして、反射的に唇を離してしまった。 この声…涼宮ハルヒだ。 彼女の唇を名残惜しんでる暇もなく、おそらく彼だと思われる男の人の声も聞こえてくる。何を言ってるのかは分からないので少し部室から離れたところにいてもうすぐこちらに着くのだろう。 同性ならではの速さで彼女のブラをつけて乱れた服もきちんと直す。 彼であろう男の人の声もはっきり聞こえてきて、もうすぐ到着する様子だった。 彼女を見ておかしなところはないか確認する。すると不自然に濡れた唇が目立った。私と彼女の唾液でそうなったのだろう。私はハンカチを出す間も惜しんでメイド服の袖で彼女の口を拭う。 キスのせいなのか拭い方が乱暴だったのか少し赤くなってしまった。私は自分の口もメイド服の袖で拭うと彼女の唇を労わるようにそっと唇を触れさせた。 彼女から一歩離れた瞬間に部室のドアが乱暴に開かれる。 危なかった。あと一秒でも早く開かれていたら見られていただろう。そこまで危険を冒して何故キスなどしたのか。答えが出ているようで出ていなかった。 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/30(水) 22:32:24.92 ID:iz5lWJVq0 「今日は休み!!!」 涼宮ハルヒはそう怒鳴ったあとに扉を力任せに閉めた。廊下から「おい!ハルヒ!」という声がしたが返事がなかったのでおそらく帰ってしまったんだろう。 そのあと静かに扉が開き彼が現れた。 「あ、あの…どうしたんですか…?」 おろおろした様子で話しかける。彼はなんだか疲れたような顔をしていた。 「いや…また授業中にも関わらず騒ぎ出したから少し説教したんですよ。そしたらあんたは何も分かってない!とか言い出して…」 「ふぇ…ケンカしちゃったんですか?」 「まぁ…そんなとこです」 二人が来れなかったのはどうやら彼が原因らしい。 「……古泉は?」 部室を見渡しそう尋ねてきた。 「えっと…“バイト=cだそうです…」 やっぱりな…という顔をしてため息をつき、あとで電話してみるか…と誰に言うでもなくぼそっと呟いた。 こっちとしては古泉一樹よりも涼宮ハルヒに電話してほしい。 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/30(水) 22:37:10.28 ID:iz5lWJVq0 「あのぉ…涼宮さんにも電話した方が…」 「え?無理ですよ。さっきの様子みたでしょう?何言ってもきっと無駄ですよ」 鈍いのか何も考えてないのか彼が間抜けな顔であっけらかんと答えた。 「ふぇぇぇ〜…」 「大丈夫ですよ、朝比奈さん。あいつが朝比奈さんに八つ当たりしたら俺がちゃんと文句言ってやりますから」 得意げに言ったがそんなことをしたら余計こじれるだけだ。やめてほしい。 「じゃあ解散しますか」 「あっはい」 涼宮ハルヒが休みだと言った今、彼が部室にいる理由はないだろう。 「着替えますよね?俺お先に失礼してもいいですか?」 「はい、どうぞ」 そう言って笑顔で彼を見送ろうとしたら突然振り向いて余計なことを言い出した。 「長門は帰らないのか?」 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/30(水) 22:40:41.64 ID:iz5lWJVq0 いつの間にか本を読んでいた彼女がチラリと私と彼の方を見る。 「うん?」 黙っているのに反応を求める彼。……おそらく彼女はこのまま彼と帰ってしまうのだろう。 今度はいつ二人きりになれるだろうか、などと考えていると 「……まだ、本を読んでいる」 と、予想外の答えが帰ってきた。 驚いてる私を尻目に 「そうか、じゃあ戸締りとか頼むぞ。またな」と彼が答え、コクンと彼女が頷いた。 「じゃあ朝比奈さん、お先に」 「あっはい!」 焦って返事をする私に一瞬不思議そうな顔をしたが笑顔を見せると満足そうに帰っていった。 パタン、とドアが閉まるのを確認すると彼女の方へ目を向ける。少し赤くなっている唇以外はいつもと変らない様子で本を読んでいた。本当に彼女は本を読むために残ったのだろうか。 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/30(水) 22:47:42.92 ID:iz5lWJVq0 「……なんで残ったんですか?」 問いかけるといつもの無表情でこちらをじっと見つめる。 何を考えているんだろう。もし私が彼女の立場だったら早くこの場から去りたい。わざわざ彼が声をかけてくれたのに逆らってまで彼女がここに残る理由が分からない。 「長門さん、なんで残ったんですか?」 もう一度訊ねる。彼女に直接聞かないと私は彼女がここに残った理由が理解できない。 「………………」 彼女は先ほどと変らずに私を見つめ続けるだけで答えようとしない。 見つめあいながらどうしたものかと考えていると彼女の少し赤くなった唇が目に付いた。 私はそのまま黙って彼女のそばまで行き少し赤くなった唇を指で優しくなぞる。 ピクッと彼女が反応した。 その姿に再びあの感覚。私はそのまま彼女の背中に手を伸ばしキスをしようとする…が、鎖骨と胸の間ら辺に当てられた彼女の両手によって遮られてしまった。 「今更拒否?」 そう言ってググ…と彼女に近づこうとする。しかし手が邪魔でうまく近づけない。 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/30(水) 22:51:58.95 ID:iz5lWJVq0 「なんで…」 「なんで拒否するの…」 当たり前だ。いきなり普段話もしないような同性の女がキスしようとしたら誰だって拒否する。 解ってる。当たり前だって。私を拒否する彼女が正しいって。 ただ…ただ彼女に拒否されたことがどうしようもなく悲しくて、泣きそうになる。 私はひょっとして彼女が好きなのだろうか。ここまでしといて今更だがそんな意識なかった。……いや、私自身自分の気持ちに気づいてなかっただけで好きだったのかもしれない。 私は、私なんかいない風に装う彼女が許せなかった。 私は、私に反応してくれない彼女が嫌だった。 私は、私はただ彼女に反応してほしかった。 そうだ やっぱり 私は彼女が好きなんだ。 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/30(水) 22:56:44.88 ID:iz5lWJVq0 「……有希」 「…え?」 今名前を呼んだのは私ではない。 俯いてた私が顔をあげると彼女はもう一度「有希」と自分の名を口にした。 「有希…?」 どういう意味だろうと思いながらたった今気づいた好きな人の名前を呼ぶ。 するとパッと彼女の手が私への拒絶をやめた。 いきなり拒絶を解かれた私は少し前のめりになってしまう。 …………顔が近い。 自分からキスしようとしていたくせに好きだと認識した途端に恥ずかしくなり、頬と耳が熱くなっていく感覚が広がる。 私は恥ずかしさで前に進めず、愛しさで後ろにも下がれなかった。 石のように固まっていると彼女がわずかに不思議そうな顔をした。私はその意味が解らずに困惑していると 「……しないの?」 と彼女に問いかけられた。 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/30(水) 23:00:58.15 ID:iz5lWJVq0 ……………しないの、と言うのはどういう意味だろうか。 彼女はなにをしないの?と聞いたのだろうか。 私が思ったとおりの意味でいいなら、彼女は私に許しを与えていてくれているのだろうか。 その唇に。 その体に。 長門有希に。 触れることを許してくれているのだろうか。 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/30(水) 23:06:11.44 ID:iz5lWJVq0 「……なにを、ですか?」 問いかける。 喉が渇いてしょうがない。 私の問いかけにいつもと同じように答えようとはせず、私の目を見つけたまま動こうとしない。 いいんだろうか。 しても、いいんだろうか。 「……有希」 囁くように私の口から放たれた愛しい人の名前は彼女の口内へと入り込んで消える。 「……っふ」 「っ……んん…」 舌を絡め、喉の渇きを潤すように彼女の唾液をこくこくと喉を鳴らしながら自分の体へ流し込んでいく。 本来味などないモノだが彼女の唾液は何故だか甘い気がして、まるで母から母乳をもらう赤ん坊のようにもっと、もっと、と彼女の唾液を求め続けた。 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/30(水) 23:10:38.48 ID:iz5lWJVq0 「…っ…っ」 そうしているうちにあの可愛らしい鼻息が再び私の肌を刺激する。 どうやら夢中になりすぎていたようだ。先ほどと同じように少し唇をずらし息がしやすいようにしてあげる。はぁっ…と漏れた息が私の頬をくすぐった。 唇をぺろんっと一舐めしたあと、唇全体を口に含むようにしてついばみ、ちゅっと音を鳴らす。ぷるんとした感触がとても気に入りちゅっ、ちゅっ、と数回繰り返す。 二人の唾液で濡れたお互いの唇をゆっくりと擦り合わせる。にゅるにゅるとした感触と唇同士でしか味わえないぷるんとした感触も私を魅了した。 そしてまた彼女の口の中に舌を忍び込ませる。 舌を絡め、吸い、甘噛みする。 頬の裏も、歯も、歯茎も、舐め尽す。 どこまでもどこまでも彼女とのキスは気持ちよくて溺れるように彼女の唇を求め続けた。 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/30(水) 23:16:30.30 ID:iz5lWJVq0 彼女の唇を貪り続けてどれくらいがたっただろうか。気がつくと外は真っ暗だった。 真っ暗になるまで気がつかないなんて……私はどれほど彼女の唇に夢中になっていたのだろう。 時計を見ると針は九時を示していた。 ふと、違和感を覚える。九時…この学校は七時には生徒を完全下校させる。教師がわざわざ各教室に見回りをしてまでもそれは徹底している。 それなのに何故、私と彼女は九時までこの教室に居残れたのだろう。 ちらり、と彼女を見る。ほんのり赤らめた頬といつもより潤んだ瞳。唇は先刻までの出来事を示すかのようにいやらしく濡れていた。 「っ……」 その姿にまたスイッチが入ってしまいそうになった自分の気持ちをぐっと抑える。おそらくスイッチが入ってしまったら私は明日、誰かが登校してくるまで彼女を求め続けてしまう気がする。 そこでふと、思いつく。もしかして誰も入ってこなかったんじゃなくて、彼女が誰も入ってこれないようにしたのではないのか。 自惚れすぎだろうか。しかし、だったら何故彼女はこの部室に残ったのだろう。それもおそらく彼女が一番心を許しているであろう彼の、だ。 それに最初こそ拒否したものの彼女は私を拒まなかった。 私は彼女に拒まれなかったんだ。 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/30(水) 23:21:51.58 ID:iz5lWJVq0 「あの…」 ドクドクと脈を打つ音が耳に響く。 先ほどの名残を示す潤んだ瞳で私をじっと見つめる。 「…………有希って」 「これからも有希って呼んでいい…?」 私の問いかけに彼女はコクン、と小さく頷いた。 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/30(水) 23:25:35.19 ID:iz5lWJVq0 好きだとか愛してるだとか、色々伝えることはあったのかもしれない。 でも…でも有希、と呼ぶことを許可してもらっただけで全てが伝わってる気がする。 言葉にするのはまだ、これから。 これからゆっくり育んでいけばいいと思う。 「……有希」 私の呼びかけに彼女が少し微笑んでくれたような気がした。 END 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/30(水) 23:31:51.29 ID:iz5lWJVq0 長みくカップルが好きなんだ それだけなんだ 読んでくれてありがとう