長門「…だいしゅきホールド?」 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 11:52:58.74 ID:uD1JvjH7O キョン「……」 古泉「おや、あそこに見えるは……彼ですか。部室に向かう途中のよう……ですが?」 キョン「…………はっ!」 古泉「……なんだか、いやにビクビクしてらっしゃいますね」 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 12:04:55.30 ID:uD1JvjH7O キョン「……ひぃ!?」 古泉「しかも物音など、しきりに背後に敏感のようで……?」 キョン「…………ふぅ」 古泉「三歩歩くごとに振り返っては溜め息をつき……」 キョン「へっ……」 古泉「時にフェイントを交えて壁に張り付いて左右を確認し、自嘲気味に笑ってみたり……」 キョン「……ほっ!」 古泉「急に走り出して、前転してみたり……ひょっとして、チープトリックでしょうか?」 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 12:17:44.11 ID:uD1JvjH7O 古泉「まぁ、理由が何であれ、人通りがほとんど見られないとは言え、万が一、友人が奇異の目で見られるのは避けたいところですしそろそろ……」 古泉「もし。一体、さっきから何を――」 キョン「わーーーーっ!?」 古泉「してらっじゅ!?」 67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 12:26:16.26 ID:uD1JvjH7O ― ― ― ― キョン「スマン」 古泉「……振り向きざまにダイレクトに人中とは中々で」 キョン「悪かった」 古泉「時折ですが、組織内であなたの身の回りの警護について持ち上がるのですが、今後は説得力のある返答ができそうです」 キョン「本当にスマン」 古泉「……まぁ、あれほど背後を気にしてらっしゃったあなたに、いきなり声をかけた僕も僕ですが」 キョン「それでこそ古泉。ティッシュ詰めてても、流石の男前だな」 古泉「……」 キョン「本当に、悪かった。このとおりだ」 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 12:34:46.47 ID:uD1JvjH7O 古泉「……さて、痛みは幾分か残ってるものの、出血は止まりましたし」 キョン「本当に悪かったよ、古泉。やっぱりそっちのが男前だ」 古泉「やけに口が回りますね。何かに怯えてらしたようですが、何か関わりが?」 キョン「いや、流石にグーを入れた位置が位置だし、お前に根に持たれると後が怖そうだし」 古泉「……別に根に持ったりはしませんよ」 キョン「……ほんとか?」 古泉「えぇ。僕の方にも非があったわけですし、そんなに気を使っていただかなくても結構ですよ」 キョン「そうか。いや、悪かったな、古泉」 古泉「ただ、一つ貸しときますよ」 キョン「やっぱり、怒ってんじゃねぇか……」 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 12:44:09.90 ID:uD1JvjH7O 古泉「ま。それはそれとしまして」 キョン「冗談として、ではないのか」 古泉「事故に近いとはいえ急所突きですからね。流石にそう易々とは」 古泉「それより本題は、あなたが何をあんなに警戒してらっしゃったか、です。振り向きざまに顔面、は相当ですよ?」 キョン「その前も見られてたのか。参ったな」 古泉「まぁ、お互い様ですよ。で、何があったか、お聞かせ願えますか?」 キョン「あぁ。それは寧ろ、こっちから頼みたいくらいなんだが……」 古泉「……どうかされましたか?」 72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 12:53:04.94 ID:uD1JvjH7O キョン「……いや。話したいのは山々なんだが、ともかく文芸部室に行ってからで構わないか? 今、あまり背後に余裕のある場所にいたくないんだ」 古泉「……わかりました。割りと深刻な問題のようですね。では参りましょうか」 キョン「あぁ。……それと古泉。一つ、頼みたいんだが」 古泉「なんでしょう?」 キョン「部室に行くまで、俺の二歩後ろから来てくれないか? 目を離さないでいてもらいたいんだ」 古泉「……少なくとも、チープトリックではない、と」 キョン「ん? 何か言ったか?」 古泉「いえ、何も。承りました。さ、早く参りましょう」 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 13:02:16.61 ID:uD1JvjH7O ― ― ― ― 古泉「さて。何事もなく、着きましたね」 キョン「ああ。……全く、生きた心地がしなかったぜ。助かったよ、古泉」 古泉「そんな。後ろから着いていっただけなのに、少々、大袈裟ではありませんか?」 キョン「……だといいんだがな」 古泉「?」 75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 13:09:05.86 ID:uD1JvjH7O キョン「ともあれ、長門も来てないのか。いると思ったのに、参ったな」 古泉「ええ。珍しく、僕達が一番早いようですね。僕も長門さんに伺いたいことがあったのですが」 キョン「そうなのか」 古泉「ええ。まぁ、大したことではないのですが……朝比奈さんには及ばずながら、お茶でも入れましょうか」 キョン「お。悪いな、頼む」 古泉「いえいえ」 76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 13:17:35.69 ID:uD1JvjH7O 古泉「……さ、どうぞ」 キョン「すまん。……ああ、ようやく人心地ついた感じだ」 古泉「それは何より。味の方はいかがですか?」 キョン「ああ、悪くないな。やるじゃないか。……さて」 古泉「光栄ですね。……ええ、お聞かせ願います。僕の人中を射抜いた元凶を」 キョン「……根に持つな」 古泉「そうでもないですよ」 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 13:22:28.33 ID:uD1JvjH7O 古泉「さて、それでは本題のほうに」 キョン「釈然としないが、まぁ、そんな場合でもないしな。……実は、だな」 古泉「ええ」 キョン「……ヤツが、来るんだ」 古泉「ヤツ? 涼宮さんですか? そういえば以前、授業中に真後ろの席からシャーペンで、など仰ってましたね」 キョン「いや、ハルヒじゃないんだ。アイツだったなら、どんなに良かった事か。今思えば、シャーペンなんて可愛いもんじゃないか」 古泉「はい? ……では、誰だと?」 キョン「……朝倉だ」 78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 13:29:10.56 ID:uD1JvjH7O 古泉「朝倉さん? 長門さんのご同僚でいらっしゃる?」 キョン「そうだ、その朝倉だ。朝倉が、ヤツが来るんだ……!」 古泉「まぁ、あなたの朝倉さんに対するトラウマ具合は存じているつもりですが」 古泉「それにしても最近では、天蓋領域の襲撃からあなたを守ったり、それなりにおとなしいらしいと聞き及んでいますが?」 キョン「ああ。あれとか、それとかがあったから、俺も安心しきってたのかもしれん。それが、アイツ……」 79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 13:30:51.36 ID:uD1JvjH7O 古泉「……そういえば確かに、何となくですが、近頃あなたが浮き足だっていらしたような気もします。具体的には?」 キョン「ああ。古泉がそう言うなら、そうなんだろう。表面に出さないように気を付けてはいたんだが」 キョン「ともかく、だ。一気に何かしてきた訳じゃないんだ。古泉の言う通り、最近になって、だな」 80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 13:39:39.27 ID:uD1JvjH7O キョン「まずだな、アイツと俺の間には、なんていうか、互いに不干渉領域みたいなラインがあったんだがな」 古泉「不干渉領域……ですか。事情が事情ですしか、。まあ、わからなくもないですね」 キョン「だろう? 色々あったし、悪いが俺はなるべくアイツに近付きたくない。朝倉も朝倉の側で、それを汲んでくれてる。……と思ってた」 古泉「過去形ですね」 キョン「ああ。そんな平衡状態が続いてたから、俺もある程度、気を許してたのかもな」 キョン「……そして、数日前の事だ。それが侵された」 82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 13:47:42.86 ID:uD1JvjH7O 古泉「ちなみにその領域ですが、いかほどで?」 キョン「三歩から二歩半の間ってとこだ」 古泉「しかし、それでは」 キョン「ああ。曖昧な基準だったし、何より俺が一方的に成り立っている、と勘違いしていただけかもしれん」 キョン「だから、おかしいと思いつつも、先送りにしてたんだが。……それから二日ほど経った頃だったか、心なしか、朝倉から声をかけられる回数が増えたんだ」 83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 13:54:24.56 ID:uD1JvjH7O 古泉「しかし、聞くにあなたが朝倉さんの一挙手一投足に敏感になっているだけ、との可能性も」 キョン「ああ。俺も自意識過剰だと思ったさ。だがな、回数が増えただけならまだしも、声も、なんとなくな、こう……」 古泉「柔らかく?」 キョン「いや、元々柔らかい声質はしてるんだ。だからなんと言うか……甘ったるいと言うか、弾んでると言うか」 84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 14:01:54.19 ID:uD1JvjH7O 古泉「しなだれかかってくるような?」 キョン「ニュアンスとしては近いかな。やり方が上手いのか、朝倉の元々の性格なのか、いやらしい感じはしなかったが」 古泉「……しかし、聞き違いでは?」 キョン「いや、時々言うだろう。偶然も三つ続けば、とか何とか」 古泉「まあ」 キョン「ともかく、警戒しておくに越したことはないと思ったんだ。コイツ、間合いを詰めようとしてるんじゃないか、ってな」 85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 14:06:18.04 ID:uD1JvjH7O 古泉「しかし……」 キョン「ああ。古泉の言いたいことは何となくわかる。もっともだ」 キョン「しかしだな、最近、アイツが決定的なステージに移ったんだ」 古泉「決定的、ですか」 キョン「ああ。……キョン、とな、呼んできやがったんだ」 86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 14:09:34.16 ID:uD1JvjH7O 古泉「……なるほど。それは大した変化ですね」 キョン「警戒に値するだろ。ある意味、朝倉がそう呼ばない最後の牙城だったんだ」 古泉「しかし、まだ釈然としないのですが」 キョン「いや、その時点で確信を得たね。それにまだ続きがあるんだ」 古泉「まぁ、確かにそれだけじゃ、僕の鼻面は痛みませんからね」 キョン「悪かったって。まだ言うか」 古泉「すみません。つい」 90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 14:13:11.55 ID:uD1JvjH7O キョン「まぁ、とにかくだ。それからも朝倉と話す機会は増える一方。確実にアイツは俺との間合いを縮め続け……」 古泉「はあ」 キョン「……そして、今日だ」 91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 14:19:50.79 ID:uD1JvjH7O キョン「確かに俺も油断してた。放課後の教室で、朝倉と二人きりだったってのにな」 古泉「では、時間からするとついさっきのことですか」 キョン「ああ。今となってはそれすら怪しいが、偶々、朝倉と掃除当番でな」 キョン「かといって、警戒を解いていた訳じゃないと思う。一応、互いの位置は見てた、はずだったんだが――」 94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 14:27:39.51 ID:uD1JvjH7O 古泉「……いつの間にか、後ろから?」 キョン「……ああ。まず、片腕を首にだ。はっと思う間もなかったよ」 古泉「しかし、女性が男性の顎の下に腕を差し込む、と言うのは、それでなかなか難しいものですよ?」 キョン「アイツ、かなり背が高い方だからな。スルッと来られたよ。次にもう片腕で肩を後ろから。これまたスムーズにがっちりとな」 古泉「念のため伺いますが、抵抗のほどは?」 キョン「最終的には振りほどけたが、その時点では半ばパニックでな。で、最後に足だ」 古泉「……足?」 95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 14:31:32.43 ID:uD1JvjH7O キョン「ああ。顔が固定されてたから見れはしなかったんだが、逃走防止なのか、片足を絡められた」 古泉「……完全に密着された形ですね」 キョン「ああ、ぴったりとな。かなり焦った。しかも朝倉の顔は見れないしで、更にな」 キョン「で、何とか抜け出したんだが、何のつもりだと問いただす前にもう一度。それからも、更にその後に逃げ出した俺にどうやってか追い付いて、二度ほどな」 キョン「その度に何とか抜け出して、さっき古泉と、ってわけだ」 古泉「なるほど」 96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 14:33:14.38 ID:uD1JvjH7O 古泉「一つ、よろしいですか?」 キョン「ああ。なんだ?」 古泉「……考えようによっては、かなり積極的な、抱擁のようにも思えますが」 キョン「それはない」 古泉「やけに自信がおありで」 キョン「お前、誰かを抱き締めるのに、突入部隊並みのステルスエントリー技術を駆使するか?」 古泉「そんなに、ですか」 97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 14:36:56.25 ID:uD1JvjH7O キョン「ああ。阿修羅閃空並みのフットワークだった。足音なんぞも、そもそもあったのか、後ろに立たれても気づかなかったぜ」 キョン「更には、セガール顔負けな滑らかさで頸動脈と延髄を正確に狙ってきやがった」 キョン「思い出してもゾッとすると同時に、惚れ惚れするね」 古泉「しかし、人一人を絞め落とそうとするに、そこまで密着する意味合いもないような……」 キョン「なに言ってんだ。言ったろ、逃走防止か何かだって」 99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 14:46:24.94 ID:uD1JvjH7O 古泉「それにしても、何度か朝倉さんを遠くから拝見した事がありますが、相当なスタイルの持ち主でいらっしゃいましたが」 キョン「あのな、古泉。この際、朝倉がどんな外見を持ってようと、どれだけ凹凸がはっきりしてようと、気付けばやたら背中にふわふわしたモンがあったり巻き付いた足がむちむちして健康的に肉が詰まってる感じだったり、     密着されてるからってさんざ朝倉の香りを吸い込む羽目になろうと、ああ、正直、あのまま絞められていたとして、あれらのお陰で意識消失が六割がた早まった自信があるねっ!」 古泉「落ち着いて下さい。とりあえず、お座りになって、お茶の二杯目を」 100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 14:49:38.95 ID:uD1JvjH7O キョン「……ああ、すまない。取り乱した」 古泉「いえ、僕の方もおかしな事を聞きました」 キョン「……まぁ、確かにいくら朝倉の背が高いっても、女性のそれだ。何とは言わんが、……言えんが、丁度、俺の体と朝倉の凸が……こうなって、俺の凹の部分にもなんかこう……な」 古泉「…………聞けば聞くほど、という感じはしますが?」 キョン「まぁ、確かに今、いささか冷静さを取り戻して、しかもお前と話しながら状況を振り返ってはみてるから、何となくそんな感じがするかもしれないが」 101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 14:50:57.91 ID:uD1JvjH7O キョン「……いや、やっぱり百歩譲って朝倉が俺に抱擁を仕掛けたとしよう。それでも、軟体動物の滑らかさと万力の強固さの両方を注ぎ込んでホールドする理由はないと思うんだが」 古泉「……ん?」 キョン「……どうした?」 古泉「……いえ。今、何やら記憶が刺激される感覚が?」 102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 14:52:29.28 ID:uD1JvjH7O キョン「何!? それは事態の解決に繋がるような何かか!?」 古泉「実は、お話の始めの方から感じてはいたのですが」 キョン「頼む古泉、思い出してくれ! なんだったら、もう一回始めからいくか!?」 古泉「事態を収束できるかはわかりませんが、ともかく思い出せるだけはやってみましょう」 古泉「そうですね。……もう一度、今日の朝倉さんの行動をなぞれば、或いは」 キョン「そうか、頼むぞ。古泉!」 103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 14:54:08.47 ID:uD1JvjH7O キョン「よし、それじゃあだな。……まず、掃除当番が一緒になって――」 古泉「ええ」 キョン「一瞬、意識を逸らした隙に、アイツが背後に肉薄してて――」 古泉「ええ」   「……」 キョン「で、キョン君、って俺の首に腕を――」 古泉「えぇ。…………あ」 キョン「それで………………ん?」 朝倉「キョン君♪」 キョン「」 104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 14:56:33.72 ID:uD1JvjH7O ― ― ― ― 古泉「……早っ」 朝倉「あー、やっぱり扉は閉めとくべきだったかしら」 古泉「……」 朝倉「……あ。どうも、初めまして。朝倉涼子です」 古泉「これはご丁寧に。古泉一樹と申します」 105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 14:59:37.24 ID:uD1JvjH7O 朝倉「……えっと。彼、どこに行ったか、わかるかしら?」 古泉「……いえ、流石に存じ上げませんね」 朝倉「そう、残念。……ん、お騒がせしました」 古泉「いえいえ、こちらこそ、お構いもできませんで」 朝倉「いえいえ、お構い無く。それでは、失礼しま――」 長門「どうしたの?」 朝倉「あ、長門さん。……丁度いいわ。彼とすれ違わなかった? どこに行ったか、知りたいんだけど」 長門「階段の途中で。校舎の方に走っていった」 朝倉「ありがとっ。じゃあね」 106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 15:02:15.71 ID:uD1JvjH7O ― ― ― ― 長門「……?」 古泉「あー、いえ。僕の方も状況を把握しかねておりまして」 長門「そう」 古泉「……あぁ、そうだ、長門さん。一つ、お聞きしたいことがあったんですよ」 長門「何?」 古泉「先日の事です。長門さんが僕にお尋ねになった――」 長門「――だいしゅきホールド?」 古泉「そう、それです。あれを何故、僕にお尋ねになったかを伺っても」 長門「……朝倉涼子」 古泉「――はい?」 107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 15:03:16.88 ID:uD1JvjH7O 長門「朝倉涼子が、彼との距離を気にしていた」 長門「知っての通り、朝倉涼子は、彼に何度か危害を加えようとしている。自身で決めた方針であったけれど、改めて彼との距離を意識すると後悔も生まれてきたそう」 古泉「はぁ」 長門「……朝倉涼子も、彼も私にとって大切な存在。朝倉涼子と彼の間に確執があるのを、あまり見ていたくはない」 長門「そこで有機生命体の男女間で、最も友好関係が深まった際に為される行動を幾つか調べ、そしてその内の一つが、だいしゅきホールドである、という結論に至った」 109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 15:04:34.64 ID:uD1JvjH7O 古泉「……」 長門「しかし、それに至ったものの、私だけでは調査に行き詰まってしまった。けれど、幸いにも古泉一樹の協力によって、件の行為を無事、調べ上げられることができた」 長門「古泉一樹。改めて、感謝の意を述べたい。あなたのお陰で私という個体は、改めて有機生命体における『仲間』と言う概念を、宇宙空間においての観察だけでは決して得られないものの素晴らしさを――」 古泉「――あー、長門さん、長門さん」 110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 15:05:28.53 ID:uD1JvjH7O 長門「――なに?」 古泉「長門さんからの、感謝の意、慎んでお受けしますが――恐らくそれですよ」 長門「……どれ?」 古泉「確信があるわけではありませんが、さっきの一幕の原因です。引いては、僕の鼻が赤みを帯びている理由、と言い換えてもいいかもしれません」 長門「……鼻?」 古泉「失礼、それはいいんです。個人的な事ですので」 111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 15:06:31.30 ID:uD1JvjH7O 古泉「さて、まず幾つか、伺いたいことが」 長門「何でも」 古泉「では……長門さんは、僕がご報告を差し上げた後、朝倉さんにそれをお伝えになった。そうですね?」 長門「そう」 古泉「僕の推測が正しければ、その際にあの時の画像一式はお使いになっていないと思うのですが……どうでしょう?」 長門「……何故」 古泉「やはり……」 112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 15:07:58.08 ID:uD1JvjH7O 長門「間違いない。私はあれを使わなかった。古泉一樹、それを何故?」 古泉「まあ、種明かしは後にとっておきましょう。では、次に長門さんが朝倉さんに、どのようにだいしゅきホールドの概要をお伝えになったか……よろしいですか?」 長門「わかった。――そう、私はあの後、あなたと共に調べた、だいしゅきホールドの概要を朝倉涼子に口頭で伝えた」 113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 15:09:52.54 ID:uD1JvjH7O 古泉「どのように?」 長門「男女、特に女性が男性に対して、全身、手足を含めた四肢の全てを絡め、体を限りなく密着させる行為、と」 古泉「……特定の行為下でとは?」 長門「……」 古泉「……」 長門「…………あ」 古泉「……愛情を限りなく積極的かつ一方的に享受しようという行為も、伝え方と解釈によっては、効果的に相手の意識を刈りとる術に化けうるんですねぇ」 114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 15:11:01.01 ID:uD1JvjH7O 古泉「何故、参考画像はお伏せに?」 長門「私の判断。彼女の情操教育に悪影響、と判断したため」 古泉「そうですか。さて、実は先程まで彼から話を伺っていたのですが、朝倉さんは彼にだいしゅきホールドを仕掛けていると思われます」 長門「では」 古泉「ええ。――ただし、彼女が解釈したなりのだいしゅきホールドをね」 長門「……!」 115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 15:13:14.76 ID:uD1JvjH7O 古泉「僕の見た限りでは朝倉さん、だいしゅきホールドをCQCにおける技術の一つに近いと勘違いしていらっしゃるようですね」 古泉「まぁただし、それに際して、彼女なりの愛情をもって行っているようですが」 長門「……迂闊」 古泉「まぁ、暫くはいいのではないですか? 一応、何故彼が逃げ続けられるのか、見当もつきましたし」 長門「どういうこと?」 117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 15:15:56.38 ID:uD1JvjH7O 古泉「彼、また朝倉さんに襲われてると思っていたようです」 長門「そんなことは」 古泉「ええ。だからこそ、彼は逃げ続けていられるのでしょう。……それに彼としても役得があるような事を言っていました」 古泉「おまけに現在、お二人の居場所もわかりませんしね。もう暫くは平気でしょう」 118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 15:17:05.81 ID:uD1JvjH7O 長門「しかし」 古泉「後で僕が責任をもって説明しますよ。……それに彼も僕に借りを作ったままなのは面白くないでしょう。これでチャラといたしましょうか」 長門「……?」 古泉「まぁ、彼がさんざん懸念していた妥協なく使われ続けていた技術というのも、半分は技術を使わずにはいられない宇宙人の本能として、もう半分は照れ隠しや彼への対抗意識、といったところでしょうか? ……ふふ、いじらしいではありませんか」 127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 16:40:37.88 ID:uD1JvjH7O 往生際が悪くてごめんなさい。ラストをちょっとだけ誤字修正。 ― ― ― ―  そんな具合で、文芸部室で密かに事態が解決しているなんてつゆしらず、俺は倒けつ転びつ、宇宙人スキルを存分に駆使した朝倉から逃げ惑っていた。  そうして密着(結局、しがみついていただけらしいが)される度に背中やら腰やら大腿部やら、その他の様々な箇所に見舞われた朝倉攻撃は、 その時の俺にはそれが更に恐怖心を煽る燃料となり、後日には、消えにくく残った首筋の赤みをどう隠すか思案にくれさせる羽目になるなどと、事の前後で大変な心労を強いてくれた。  なお、古泉に対する借りは、更に缶ジュース一本を奢らせる事でチャラ。  しかしその際に古泉が堪えきれないといった風に浮かべた、あいつらしからぬ、しかし年相応の男子高校生じみたニヤリとした笑いはしばらく忘れないだろう。  ちなみにこの後、誰が吹き込んだか知らないが、『指を絡ませる手の繋ぎ方』について、再び俺が朝倉に追い回される羽目になるのは、また別の話。 120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 15:26:54.10 ID:uD1JvjH7O 終わり。すいません、こんなんですいません。 まぁ、ジーク朝キョン。ハイル朝キョン。 そんなわけで、後は他の方々、頑張って下さい。 128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 16:44:24.21 ID:uD1JvjH7O で、多分、本当に終わり。 スレタイがスレタイだからエロい方向に行くだろう、と期待して付き合ってくれた方、こんなんになってごめんなさい。 長門スレ期待して開いた方、こんなん書いててごめんなさい。 それでも最後まで読んでくれた方、ありがとう。 朝キョンが最高。至高。 では。