キョン「土曜日か……不思議探索も中止で、暇な一日がやってきた」 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 19:31:38.07 ID:Sj+A98jV0  ザーザーと降る雨を眺めながらベッドの中に潜り込む。 窓を打つような風は吹いていないが、雨はそれなりに激しい。 今日はSOS団の不思議探索も休みになっちまった。 毎週のように執り行われる活動が、いざなくなるとどうにも暇で仕方がない。 両親は二人で仲睦まじく買い物へ出掛け、妹はこの雨だというのに友達の家へ遊びに行っ てしまった。 つまり、今この家には俺一人である。 基本的に雨は嫌いではない。しかし、それは家の中にいる時の話であって、外出中に降る 雨はこの限りでない。 特に何をする訳でもなく、雨の音を聞きながらベッドの中でゴロゴロする。 最高の過ごし方じゃないか。まさに俺が求めていた平々凡々ってやつだ。 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 19:34:44.80 ID:Sj+A98jV0 なんとなく身を起こし、MDコンポのスイッチを入れる。この曲ももう聞き飽きたな。 スイッチを入れたばかりのそれを、俺の意思一つで機能停止させてやる。 機械ってのは楽なもんだ。必要な時にだけ必要とされ、不必要な時には徹底的に無視される。 今の俺は不必要なのだろうか。ああ、神様。どうか今日一日だけ俺の電源を切ってくれ。 なんてことをハルヒにお願いしたら、俺の存在が永久にこの世から消えちまいそうだから この願いは胸の内にしまっておくことにする。 それにしても暇である。何もしないをするとはこういうことなのだろう。 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 19:39:55.43 ID:Sj+A98jV0 こんなに暇なら、ハルヒの家へアポ無し訪問してみるのもいいかもしれん。 普段見ることのできない顔が見れそうだ。 あいつも俺と同じように、ベッドの中でなんとなくぼーっとしているのだろうか。 それとも、街で不思議探索ができなくなってしまった分、自分の家で補っているのだろうか。 もしかしたらSOS団以外のメンバーと遊んでいたりするのかもしれん。 いや、それはないか。あいつが不思議探索を中止してまで遊ぶやつなど、見当もつかん。 そんなやつ、恋仲にあるかそれ以上かだろう。 ハルヒに彼氏がいるとも思えん。いや、いるのか? いるとしたら……って、何を考えているんだ俺は。 というか何故ハルヒのことばかり考えてるんだ?さっぱり訳が分からん。 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 19:45:37.31 ID:Sj+A98jV0 俺は小腹が空いてきたので、リビングにあったポテトチップスを持ち、また自分の部屋へ戻ってきた。 まあ、たまにはこういう日もいいかもしれん。ゆっくり体を休めて、月曜日から始まる学校に備えよう。 なんて考えていると、俺の携帯が突然鳴り響いた。 慌ててポテトチップスを大量に床にこぼしたことは、ここだけの話だ。 『キョン、あんた今何してんの?』 電話の主は、黄色いカチューシャがトレードマークの涼宮ハルヒだ。 「そうだな。あえて言うなら何もしていないをしているってとこだ。どうにも暇でな。  お前は何してたんだ?」 『あたし?あたしもあんたと似たようなものよ。  暇で暇でどうしようもなくてなんとなくあんたに電話したのよ  どうせ暇だろうと思って。少しはありがたく思いなさいよね?』 どこまで上目線なんだこいつは。 まあでも実際暇で暇で仕方がなかったからありがたいのは確かだがな。 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 19:49:57.39 ID:Sj+A98jV0 「へいへい。ところで団長さんよ」 『ん?何?』 「今日はどうして不思議探索を中止にしたんだ?」 『なんでって、雨だからよ  他に理由がある?』 「いや、それならいいんだがな」 『なによ、なんか変よ』 「いいんだ、気にしないでくれ」 なにを聞いてんだ俺は。 ハルヒも暇で仕方がないと言っていたじゃねぇか。 他の誰かと遊ぶ?そんなのはありえないと分かりきっているはずだ。 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 19:55:34.99 ID:Sj+A98jV0 「暇だからハルヒの家にでも訪問しようかと悩んでいるところだ」 『ダ、ダメよ!絶対!』 「何故そう嫌がる」 『ダメったらダメよ!散らかってるし、とてもあんたには見せらんn  ってそうじゃなくて!  女の子の部屋に入ってなにをするつもり!?』 「なにをって、ただ行くだけだが」 『とにかくダメ!あんたが来るくらいならあたしが行くわよ!』 「おお、そうか。じゃあ来いよ。暇なんだ」 『なっ、じょ、冗談よ冗談!行く訳ないでしょうが!』 「俺は別に構わねぇぞ」 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 20:02:47.72 ID:Sj+A98jV0 『あたしが構うのよ!』 「何故だ?」 『何故も何もないわよ!』 「そうか、残念だ」 何故かはわからない。俺はハルヒと遊びたかった。 そして、ハルヒも俺と遊びたがっているような、どこかそんな感じがした。 「暇なんだ」それは単なる口実に過ぎない。 「それならやっぱり俺がハルヒの家へ行くとしよう」 『ちょ!なんでそうなるのよ!?訳がわからないわ!』 「いいじゃねぇか。一人で暇してるより二人で暇する方がマシだろ?」 『た、確かにそうだけど』 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 20:05:51.20 ID:Sj+A98jV0 「とにかく、俺の脚はもう言うことを聞かないらしい。  何故だかわからないが、既に準備はできている。今から向かうことにする。」 『ま、待ちなさいキョン!お願いもう少s』 そこで俺は電話を切った。 最後の方、ハルヒが何かを言っていた気がするが、よく聞き取れなかった。 準備の方は電話をしながら済ませたので、早速向かわせていただく。  玄関に置いてあるビニール傘を一本手に取り、外へ出る。 いまだ降り頻る雨の中、少し小さめの傘をさして歩きだす。ハルヒの家はなんとなく把握しているので、なんとか辿り着けるだろう。 荷物は携帯と財布のみだ。むしろどちらも必要ないのだが、何故かないと落ち着かない。 これが現代病ってやつなのだろうか。 なんの意味も持たない、ただ過ぎていくだけのはずだった一日が、たった一本の電話で有意義な一日へと変貌した。 これもハルヒパワーってやつなのか。 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 20:09:00.14 ID:Sj+A98jV0  地面で跳ね返った雨の雫のせいで、ズボンの裾がびちゃびちゃになっちまった。 ふと、自動販売機が目に入った。なんとなく、俺はココアを2本買い、差し入れとして持っていくことにした  そうこうしている内に、俺は涼宮家へと到着した。 途中、何度か道に迷ったが偶然歩いていたご老人に方向を教えてもらい、なんとか辿り着くことができた。 濡れた指でチャイムを押す。数秒後、家の中からドタバタと騒がしい足音が聞こえてきた。 もう少し落ち着いて歩けないのだろうか。 「キョ、キョン!あんた本当に来たの!?」 「ああ。行くと言っただろう」 「そ、そうだけど」 「駄目か?」 「今更帰れなんて言えないわよ」 「そうか、それじゃ失礼する」 そうして涼宮家へと足を踏み入れた。 ハルヒの家は想像していたより広く、綺麗だった。 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 20:12:12.51 ID:Sj+A98jV0 「親御さんはいないのか?」 「ええ、今日は出掛けてるわ」 「なんだ。ってことはマジで2人きりなのか」 「ちょ、ちょっと!何言い出すのよバカキョン!変なことしたら絶対許さないわよ!!」 「する訳ないだろう。朝比奈さんだったらどうなるか分からんが」 「最低だわ、みくるちゃんに言っといてあげる」 「ま、待てハルヒ!落ち着け!」 「慌ててるのはあんただけよ。いいから早く部屋に入ってよね」 「へ?」 「へ?じゃないわよ。あたしの部屋よ」 「いいのか?」 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 20:37:29.94 ID:Sj+A98jV0 「いいのよ。他の部屋にあんたが来た証拠を残しといたら後々面倒だし」 「そうか、なんだかすまんな」 「本当よ。女の子の家に突然訪問するなんて、もっと謝るべきだわ」 「いや、この通り。すまんかった」 ハルヒの部屋は、意外にもごくごく一般的な部屋だった。 淡いピンク色のベッドや透き通るようなカーテン、小さな観葉植物など、なんだかおしゃれな部屋だ。 ハルヒらしいものと言えば「宇宙の不思議」という類の本のみで、他に目立っておかしいものは何もなかった。 「いいから適当な場所に座っててちょうだい!今お茶淹れてくるから」 「あ、ハルヒ」 「何よ」 「ここに来る途中ココア買っておいたんだ。やるよ」 そして俺は2本ある内の1本をハルヒに手渡した。 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 20:39:10.46 ID:Sj+A98jV0 「冷めてなきゃいいんだがな。  ま、ずっと手で温めておいたから大丈夫だとは思うが」 「何よ、キョンにしては気がきくじゃない」 「ありがとよ」 「じゃあお茶は必要ないわね。あ、何か食べる?」 「いや、家でお菓子を食べてきちまったから今は食べられそうにない」 「そう、なら何もすることがないわね」 「だな」 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 20:41:46.06 ID:Sj+A98jV0 途端に訪れる静寂。 この部屋に響く音といえば、雨音くらいだ。 「ちょ、ちょっとキョン!何かしゃべりなさいよ!」 「そういうお前も何かしゃべってくれ。息苦しくてかなわん」 「あんたが来たんでしょうが!」 「確かにその通りだが、生憎話すネタは俺についてきてはくれなかったらしい」 「何よそれ」 そして再び訪れる静寂。 しかし、今度は何故か息苦しさを感じなかった。この空気になれてしまったのだろう。 それもそうか。ハルヒとは毎日のように顔を合わせているんだ。今更気まずさなんてものはこれっぽっちも感じない。 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 20:44:04.22 ID:Sj+A98jV0 話すこともなく、お互いがただただぼーっとしていた。 なんとなく雨音の数を数えてみる。 これも雨の日の室内での楽しみ方の一つだ。 「なんだかゆったりしすぎじゃないか?」 そう言いながら俺はクローゼットにもたれかかった。 「あ、ちょ!キョン!」 「ん?なんd」 その瞬間、クローゼットの中からあふれんばかりの衣類が放り出された。 「もう!バカキョン!!」 「なんだこれは!どうなってやがる!前が見えんぞハルヒ!!ふがっ!なんか口n」 「うげっ!ちょっと待ってなさい!今助けるから!!」 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 20:45:05.81 ID:Sj+A98jV0 「早くしてくれ!!」 「待ってってば!!」 暗くて何も見えんが、おそらくハルヒが服を搔き分けているのだろう。 ガサゴソという音が聞こえてくる。 「っぷはぁ!おいハルヒ、なんだこれは!」 ようやく光と新鮮な空気を取り戻し、ハルヒに問いかける。 「う、うっさいわね!あんたが急に来るってんだから慌てて片付けたのよ!!」 果たしてこれが片付けたと言えるのか、甚だ疑問である。 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 20:46:10.08 ID:Sj+A98jV0 「あーもう最っ低だわ!また片付けなきゃいけなくなったじゃないの!」 「急に訪問した俺にも責任はあるが、お前の片付け方もいいとは言えない。  ここは俺も手伝うからさっさとしまうぞ!」 そうして俺とハルヒは大量の衣類を片付ける作業に取り掛かった。 しかし、女ってのは大変だな。一体なにをするのにこんなにも服が必要なんだ? 散々床に散りばめられたそれらを、一つ一つ丁寧にたたんでいく。 どれもハルヒらしい服ばかりだ。こいつのことだ。全部似合うんだろうな。 ハルヒが衣服を拾い上げ、俺が洗濯物をたたむ。 当然のことながら作業効率が釣り合うはずもなく、ハルヒは全てを拾い終えたにも関わらず、俺の横には衣服の山が出来上がっていた。 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 20:47:17.05 ID:Sj+A98jV0 すると、作業を終え暇そうにしていたハルヒがゆっくりと俺に話しかけてきた。 「ねえ、キョン」 「どうした?」 「なんかあんたといると落ち着くのよね。その、変に気を遣わないでいいっていうか。  なんでだと思う?」 「んなもん俺が知るかよ。毎日顔を合わせてるからじゃないか?  というかお前に気を使うなんて概念があったことに俺は驚いてるよ」 「うっさいわね。あるに決まってるじゃない」 「SOS団の皆にもか?」 「ううん、SOS団は違うわ。なんというか、特別だもの」 「ああ、そうだな」 特別 ハルヒの使う特別と、俺の考えている特別の意味が全く同じとは限らないが、なんだか俺は無性に嬉しくなった。 まさかハルヒの口からそんな言葉が聞けるとは思ってもみなかったからな。 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 20:48:15.28 ID:Sj+A98jV0 「キョン、あんたはどう?」 「ん?何がだ?」 「SOS団の皆や……あたしといると、落ち着く?」 「ああ、落ち着くな。このまま眠っちまいそうなほどだ」 「何よキョン、あんた眠いの?」 「例えだ例え」 「なんなら寝る?  あ、もちろんあたしのベッドは使わせないわよ。あんたなんて床で十分だわ」 「安心しろ。端からお前のベッドを使う気なんてない。というか寝る気もさらさらない」 「何よそれ、つまんないわね」 「つまんないとはなんだ」 「なーんでも」 「おかしなやつだな」 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 20:49:49.15 ID:Sj+A98jV0  ようやくたたみ終えた衣服をクローゼットにしまうと、俺はゴロンと床に寝転んだ。 別に眠る気はなかったのだが、リラックスモードというやつだ。 そんな俺の姿を見たハルヒは、まるで真似をするかのように俺の隣にゴロンと寝転んだ。 大きなあくびをして、体を精一杯伸ばしている。本当にリラックスしてやがるな、こいつ。 またもや静寂が訪れる。 とても居心地のいい静寂。ハルヒといるときにしか訪れないだろう。 目を閉じて、スースーと気持ちよさそうに息をするハルヒを眺めていた。 やわらかそうな唇にサラサラな髪。透きとおるような肌に、ほんのり赤い頬。 それらが俺からほんの数十センチ先にある。 全てが輝いて見えた。こいつって、こんなにかわいかったんだな。 書いてる時は割と楽しかったんだけどつまんないのかなこれ 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 20:51:10.08 ID:Sj+A98jV0 そんなことを考えていると、途端に心臓が激しく働きだした。 自分でも、体が熱くなっているのが分かる。なにを意識してんだ、俺は。相手はあのハルヒだぞ? 「何よ、人のことジロジロ見て。あたしの顔になんかついてる?」 いつの間にかばっちりと目を開けていたハルヒと目が合った。 「あ、い、いいや!な、なんdめおない」 「慌て過ぎよ。なに?どうしたの?」 「な、なんでもないんだ!気にしなくていい」 「そう?」 「あ、ああ!寝てて大丈夫だ」 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 20:52:37.66 ID:Sj+A98jV0 「何よそれ。ま、いいわ。なんだか眠たくなってきちゃったから、堂々と寝させてもらうわ」 「そうだな。俺も寝るか  ハルヒ、ベッドで寝なくていいのか?」 返答なし。 「ハ、ハルヒ?」 またもや返答なし。代わりに、スースーと寝息が聞こえてくる。 まさか、もう眠ってやがる。そんなに落ち着くのだろうか。 「ん……むにゃ……キョン……」 「ん?なんだ?どうした」 「……」 寝ている。なんだ、ただの寝言か。それにしてもまた暇になっちまったな。 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 20:53:29.02 ID:Sj+A98jV0 さっきは「俺も寝るか」なんて言ってみたが、こんな状況で寝られる訳がない。 どうしても、横が気になっちまう。くそ、なんでこんなにいい匂いがするんだ? 「ふうー」 と、自分の気持ちを落ち着かせるために息を吐いた。 途端、ハルヒが俺の方へ寝がえりを打った。 なんてこった。今やその距離数センチである。激しく打つ鼓動。もうどうすればいいのかわからない。 「お、おいハルヒ!起きろ!」 と、必死に呼びかけてみたのだが一向に起きる気配はない。 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 20:54:56.55 ID:Sj+A98jV0 どうすれば、どうすれば……そんなことばかり考えていて、俺は簡単なことに気がつかなかった。 俺が起きあがればいいんじゃないか。そうだ。そうしたらこんな状況すぐに終わらせることができる。 そして俺はむくりと体を起こした。実にあっけなく。 なんだか惜しい気もしたが、このまま俺の顔から僅か数センチの場所にハルヒがいる状況が続くと、俺は理性を保ってられなかったろう。 だからこれが正解なんだ。 ふと、寝ているハルヒの顔を見下ろす。 とても綺麗な顔だ。整っている。俺もこんな顔で生まれてくりゃ、世間を見る目が変わっていたのかもしれない。 自分の顔は別に嫌いではないが、好きでもない。これ以上贅沢を言うのもバチあたりか。 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 20:56:15.00 ID:Sj+A98jV0 しかし、いくら眺めていても飽きないな。何故だろう。 随分と見慣れている顔なのに、このまま永遠に見続けていてもいいくらいだ。 この透きとおる肌に触れることができたらどんなにいいだろう。 ハルヒの紅潮した唇が目に入る。やばい。吸い込まれちまいそうだ。 いかんいかん、と思いなおして頭を振る。 しかし…… 無意識のうちに引き寄せられて、引き寄せられて、引き寄せられて…… 頭がぼーっとする。視界が霞む。でも、その中心に存在する、一人の女の子だけはハッキリと映る。 今俺がなにをしているのかも分からなかった。 ハルヒに俺の名前を呼ばれるまでは。 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 20:57:10.19 ID:Sj+A98jV0 「キョン?」 ハッとした。俺の目の前にハルヒの顔がある。俺は、何をしようとしてたんだ? 「……」 俺をジッと見つめるハルヒ。なにを考えているのか、俺には分からない。 「何、してたの?」 なんと答えるべきだろう。俺にも分からない。いや、わかるんだが…… 「キョン?」 「あー、なんでもない。すまなんだ。今日は帰らせてもらう。邪魔したな。」 「え?ちょ、ちょっと!」 あろうことか俺はその場を逃げだしてしまった。 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 20:58:28.26 ID:Sj+A98jV0 ハルヒは、俺が何をしようとしていたのかわかっているのだろうか。 それだけが気になった。知られていて欲しいという気持ちもあれば、その逆もある。 俺の心は葛藤を繰り返し、収集がつかなくなっていた。 考えながら歩いていたため、帰り道はあっという間に過ぎ、俺は自分の部屋へ辿り着いた。 その後、ハルヒからは連絡もなくただただ何の意味も持たない休日が過ぎていった。 雨は、一向に止まず、降り続いていた。 ちょうどさるさんがリセットされる時間で区切りが良いし飯食ってくる 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 21:15:02.11 ID:Sj+A98jV0 月曜日、俺は少々ブルーな気持ちを抱えたままいつもの坂を上り、靴を履き替え教室へやってきた。 教室に着いた途端、まず俺が目をやった場所はハルヒの席だ。 ハルヒはもう既に到着していた。頬をつき、ただ外を眺めている。 「今日も雨か。嫌な季節だな」 黄色い少女にそう問いかけてみたのだが、応えがない。 「ハルヒ?」 俺がそういうと、ハルヒは少しだけ俺の方を見て、またすぐに視線をそらした。 どことなく、ハルヒの顔が赤いのは気のせいだろうか。 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 21:18:10.69 ID:Sj+A98jV0 結局その後、放課後まで俺とハルヒはろくに会話をしなかった。 それより、今日一日を過ごしていく上で、俺はついに自分の気持ちにハッキリと気がついてしまった。 だってそうだろう? 気がつくとハルヒの姿を探し、見つけると視線を離すことができない。 そして四六時中ハルヒが頭に浮かんでくるのだ。 これを好きと言わず、他になんと言えばいいのか俺には分からない。 あれ以来だ。以前からそういう気持ちがあったのかもしれないが、あのハルヒの唇に吸い寄せられそうになって以来。 俺はハルヒを意識し続けていた。 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 21:19:24.09 ID:Sj+A98jV0  今はいつも通りSOS団による活動を行うため、文芸部室へやってきている。 ハルヒはHRが終了すると同時に岡部に呼び出しを食らっていたので、まだここにいない。 長門に挨拶をし、朝比奈さんに最高級のお茶を受け取り、古泉とオセロをする。 10分ほど経った頃だろうか。俺はとんでもない質問を古泉に投げかけていた。 「なあ、古泉。お前、好きな人っているか?」 その瞬間、朝比奈さんの手から落ちた湯飲みが割れる音が響き、古泉は驚いた目で俺を見つめる。 あの長門でさえ、無表情のままであるが視線を本から逸らし俺に向けていた。 「す、すいません!今片付けます!」 朝比奈さんの慌てた声がした後、古泉が口を開いた。 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 21:20:58.77 ID:Sj+A98jV0 「一体なにがあったのでしょう。まさかあなたの口からそのような質問が投げかけられるとは考えてもみませんでした。」 「いや、なんでもない。今のはなかったことにしてくれ」 「そうですか、あなたがそうおっしゃるのであれば……ご希望に添いますが。  これだけは言わせて下さい」 「ん?なんだ?」 「何か思い悩んでいられるようなので、相談事があれば何でもおっしゃって下さい。  涼宮さんに相談するのもありでしょう」 「涼宮さん」そのワードを聞いた途端俺の脈が激しくなる。 明らかに体がビクッっと反応しちまった。自分でもわかる。 そんな俺の姿を見て、何やら朝比奈さんが「地球が救われた時」のような輝かしい笑顔を俺に向けた。 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 21:22:04.19 ID:Sj+A98jV0 「キョンくん!もしかして好きになっちゃったんですか!?」 「あ、いえ、その、なんといいますか」 「うわぁ〜!すごいです!すっごく嬉しいです!涼宮さんもきっとキョンくんのこと悪く思っていないはずですからがんばってくださいねっ!   素敵だな〜!」 「あの〜、朝比奈さん?少し喜びすぎなんじゃ……」 「あ、ご、ごめんなさい!でも自分のことのように嬉しくって、つい」 「ありがとうございます、嬉しいですよ」 「ふふっ」 朝比奈さんが、俺に天使のような微笑みを向ける。 俺のことでここまで喜んで下さるなんて、本当に素敵な人だ。 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 21:23:10.28 ID:Sj+A98jV0 「応援している」 唐突に長門が口を開く。 「お、おお。ありがとな、長門」 そういうと長門はコクリと小さく頷き、またいつも通り視線を本に戻した。 それとほぼ同時に、文芸部室の扉が勢いよく開け放たれる。 「お待たせっ!!」 その姿を見て驚いた。ハルヒはその短い髪を後ろで結っていた。所謂ポニーテールってやつだ。 「いやー湿気は女の敵よねみくるちゃん!このところ雨続きじゃない?  その所為で髪がボサボサになっちゃうからいっそのこと纏めてみたわ!どう?」 「すっごく似合ってます!」 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 21:24:13.65 ID:Sj+A98jV0 「ふふ、ありがとね  あ、みくるちゃんも後でやってあげるわ!」 「ふえぇ〜、いいんですか?」 なんだと?朝比奈さんのポニーテール姿を拝める……じゃなくてだな。 まずい、今このタイミングでポニーテールにしてくるとはなんてやつだ。 ろくに顔を見ることができない。 「キョン!」 っと、そしてここで俺に声をかけるのか。今日はロクに話をしていなかったのだが。 しどろもどろになる俺を、朝比奈さんがまるで我が子をあやしている時のような顔で見つめてくる。 「キョン!聞いてるの?」 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 21:25:19.49 ID:Sj+A98jV0 「あ、ああ!聞いてるぞ!どうした?」 「なんで顔が赤いのよ。あんた熱でもあんの?」 「なんでもねぇ!」 思わず顔を背ける。何やってんだ俺は。顔が熱い。それに、怪しすぎる。 「変なキョンね」 「ふふっ」 朝比奈さん、笑わないでください。 「涼宮さん、何を言いかけたのです?」 よーしナイスだ古泉。さすがSOS団副団長、雑用係の俺をカバーしてくれるとはな。 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 21:26:13.38 ID:Sj+A98jV0 「ん〜、いえ、なんでもないわ。聞き流してちょうだい」 「そうですか、わかりました」 ニコりと微笑む古泉。ハルヒのやつは俺に何を言おうとしていたのだろうか。 ようやく文芸部室内の空気も落ち着いたのだが、俺はまだ自分の顔が赤い気がしていたので、机に突っ伏していた。 そんな俺に、古泉が小声で話しかける。 ハルヒは朝比奈さんと一緒にパソコンで何か音楽を聴いているので、聞こえないと判断したのだろう。 「あなたが希望するのであれば、団活が終了した後涼宮さんの気持ちを探ることくらいはできますが?」 なんとなく気が引ける話ではあるが、実際今の俺には一番気になることだ。 到底俺の力だけではハルヒの気持ちを聞き出すなんてことは出来やしない。 ここはいっそ、SOS団副団長に頼ってみるのもいいかもしれん。 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 21:27:26.81 ID:Sj+A98jV0 「大丈夫です。あなたの存在はなるべく匂わさない様に努力いたしますので」 「すまんが、頼んだ。俺じゃできそうにないからな」 「ええ、任せてください。  それではあなたは適当に理由をつけて少し早めに帰路についてください」 「悪いな。というより、大丈夫なのか?機関の仕事とかあるんじゃないのか?」 「大丈夫です。このような言い方はあまりしたくありませんが、涼宮さんとあなたが結ばれることは、機関の望みでもあります。  鍵であるあなたと結ばれることによって、涼宮さんの精神は非常に安定するだろうという見方ですから」 「そういえばそうだったな」 「それに、これは機関に属する古泉一樹としてというより  あなたのご友人として協力させてほしいという思いの方が強かったりもします」 「そうか、ありがとよ、古泉」 「いえいえ」 そういうと古泉は爽やかに微笑んだ。 どこまでいい男なんだこいつは。今回は完全に俺の負けだ。 こいつにだったらハルヒを任せられるな。いや、任せるつもりはないが。 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 21:28:27.55 ID:Sj+A98jV0 その後、一時間ほどしてから俺はハルヒに歯医者があるという本当に適当な理由を告げ、帰路についた。 ハルヒは何故かすんなりとそれを受け入れてくれた。 団活を丸々休んだ訳ではないので、許してくれたのだろうか。 とにかく、早く結果を聞きたい。 ここから少しの間だけハルヒ視点になります。なんだか長くグダグダと続けて申し訳ない。 見ている人がいるかはわからないけど、書き溜めした以上がんばって最後まで投下していきます。 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 21:29:32.95 ID:Sj+A98jV0 「っふうー……」 やっと心が落ち着いた。今日のあたしは何かが変だ。 「おや、涼宮さん。大きなため息をついて、どうされたのですか?」 「ううん、なんでもないのよ」 「彼が帰宅してしまうと、やはり何か空気が違いますね」 そう、キョンが帰った。歯医者だって。本当なのかしら。 まさか団長に黙ってそこいらの女とほいほい遊んでんじゃないでしょうね?なんて、そんなことばかり気にしてしまう。 あの時からだった。以前からこういう気持ちはあったのかもしれないけど、あの時、目が覚めたらキョンがあたしのすぐ近くにいて……。 あの時以来、どうにもあたしはキョンが気になって仕方がなかった。 あいつは一体何をしようとしていたのかしら。 あたしの頭の中に、ハッキリとした答えはあるんだけど、それが正解なのか分からない。 というか、これはもしかしたらあたしの願望なのかもしれない。 「そうであってほしい」という。キョンは、あたしにキスをしようとしていたのかしら。 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 21:30:29.24 ID:Sj+A98jV0 「す、すす涼宮さん!キョ、キョンくんのことどう思ってますか!?」 「な、なんで急にそんなこと聞くのよみくるちゃん!」 「あ!い、いやそそその!なんでもなくて!あの、え〜っと!」 「落ち着きなさいよ!」 「ふえぇ〜!ご、ごめんなさい……」 なんだか古泉くんまで呆れた顔をしているのは気のせい? それにしても急にそんなことを聞かれるからびっくりしちゃった。みくるちゃん、あたしの心の中が見えてるのかしら。 「わたしも興味がある」 「有希!?な、何よみんなして……」 「はあ……もう仕方がないでしょう。  涼宮さん、実は僕も気になっています」 「古泉くんも!?」 「ええ」 「彼のことを、どう思っているのでしょうか」 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 21:31:48.70 ID:Sj+A98jV0 キョンをどう思っている……か。 正直な話、今日はなんだかキョンのことが頭から離れなかった。 朝、あいつが学校に来るまでの時間が永遠のように感じられたし やっと来たら来たで、なんだか恥ずかしくて顔も見られなかった。 その後も何度かキョンの視線を感じてはいたんだけど、どうにも話すことができなくて あーもう!いつからあたしはこんなに面倒くさいやつになったのかしら! というか恋愛なんて精神病の一種じゃない! そうよ、恋愛なんて単なる精神病の一種。 の、はずなんだけど、キョンのことが気になるのは確か。 それに、あいつとならいっそのこと病気にかかってみてもいいかも、なんて思ってしまっているのも確か。 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 21:33:22.37 ID:Sj+A98jV0 キョンはあたしのことをどう思っているのかしら。 あいつの気を引こうと、髪型を後ろで結ってみたけど、とくに触れてこなかった。 でも、少し慌てていたような気もする。わからないわ。 放課後になったら団活モードに気持ちを切り替えるために、キョンのことをなるべく意識しない様にしてたけど、そんなの無理に決まってる。 あたしがパソコンで音楽を聴いている時、古泉くんと何を話していたのかしら。 ずっと見てたんだけど、何も聞き取れなかったし、見てることに気づいてもくれなかった。 まあ気づいたら気づいたで、あたしはすぐに目を逸らしていたと思うけど。 「キョ、キョンくんは素敵な男性だと思います!」 唐突にみくるちゃんが叫ぶ。そんなに必死に言わなくてもわかってるわよ、それくらい。 あんなに優しい奴はそうそういないわ。あたしの言うことになんだかんだ付き合ってくれるしね。 今まではそんなやつ、一人もいなかった。 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 21:34:51.52 ID:Sj+A98jV0 「そうね、キョンは、いいやつよ。それは間違いない」 「そ、そうですよ!」 「でも、あいつはあたしのことをどう思っているのか分からないわ」 「それは……」 古泉くんが勘づいたような視線を向けてきた。 きっとあたしの本心が見えたんだろう。 「え、ええ、そうよ……  そうよね。黙ってちゃ申し訳ないわよね。  SOS団の団長ともあろうものが団員に隠し事をしているなんて示しがつかないわ!」 「ど、どういうことですかぁ?」 「あーちょっと黙っててみくるちゃん!!今覚悟を決めてるんだから!」 「ふえぇ〜!怒られちゃいました……」 「いい?言うわよ?」 有希がコクリと頷いて、古泉くんは優しく見守ってくれて、みくるちゃんはオロオロとこちらを見ている。 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 21:35:57.33 ID:Sj+A98jV0 スー、ハーと、大きく深呼吸をして、気持ちを落ち着かせる。 こんなこと言ったことないから、なんて言えばいいのかわからない。 でも、もう言うしかないわ。うん。覚悟は決まった。 「あたし……」 全員が頷く。 あたしのことを本当に気にしてくれているのが伝わってくる。それだけで、なんだか心があったまってくる。 今まで欲しくて欲しくてどうしようもなかった暖かさが、流れ込んでくる。 「あたし……キョンが、好き」 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 21:36:51.91 ID:Sj+A98jV0 ここでキョン視点へ戻ります。そろそろ終わります。  あれから約1週間。今日は市内の不思議探索の日である。 先週とは違って、頭上には雲ひとつない綺麗な青空が広がっている。 燦々と輝く太陽の下、爽やかな風を受けながら俺は自転車をこいでいた。 あの日、歯医者と言って家に帰ってしばらくした後、古泉から電話がかかってきた。 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 21:38:22.02 ID:Sj+A98jV0 古泉曰く、 『涼宮さんの気持ちは分かりましたが、ここで僕があなたに伝えるにはあまりに直接的なものでして……。  伝えたいのは山々なのですが、やはり僕の口から言うことではないと判断してしまいます。  何やら卑怯な気もしますが、こればかりはどうにも……すいません。  代わりといってはなんですが、来週の不思議探索は「偶然にも」僕達3人は予定が入ってしまいまして。  どうか涼宮さんとお2人で楽しんできて下さい。  そこで想いを伝えるのもありかもしれません。  僕が言えるのはここまでです。それでは  あ、一つ言い忘れましたが、あなたの気持ちも涼宮さんにバレている可能性が非常に高いです。  怒らないでください。それにこれで対等じゃないですか。  では、今度こそ。』 ということらしい。 こんなことを言われれば、さすがの俺でもどういうことなのかくらいは分かる。 なので古泉を責めるなんてことはなく、意気揚々と集合場所へと向かっている訳である。 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 21:39:43.09 ID:Sj+A98jV0 ようやっと集合場所に辿り着き、慌ててハルヒの元へ走る。 「すまん、待ったか?」 「遅いわよバカキョン!!あたしを待たせるなんていい度胸してるわ!!死刑よ死刑!」 「集合時間には間に合わせたつもりなんだが。  というかまだ予定の時間の30分前なんだが、お前は一体いつからそこにいたんだ?」 「う、うっさいわね!ほっときなさい!」 若干頬を赤らめながら照れるハルヒは、この世のものとは思えないほどかわいかった。 思わず頬が緩む。 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 21:41:03.86 ID:Sj+A98jV0 「何ニヤニヤしてんのよ気持ち悪いわね。いいからさっさと行くわよ!!」 「ああ、そうするか」 「キョン、どこか行きたいところはある?」 「そうだな、文芸部室なんてどうだ?」 「何よそれ、いつもいるじゃない」 「案外不思議ってのはそういうところに転がってるもんだ」 「そうかしら?」 「そうだ」 「そこまで言いきるのなら何か準備してるんでしょうね?いいわ!行きましょう!」 「ああ」 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 21:42:06.42 ID:Sj+A98jV0 いつもの場所へ自転車をとりに行き、ハルヒを後ろにのせる。 本当に乗ってるのか?と疑うほど、ハルヒは軽かった。 俺の腹の部分にまでまわされた腕の所為で、妙に照れてしまう。 俺はそれを悟られない様に必死に前を見続けた。 今ハルヒが俺の後ろで何を考えているのかは分からない。 でも、これから向かう文芸部室では、とびきりの「不思議」を見せてやるつもりだ。 〜終わり〜 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/15(土) 21:43:41.93 ID:Sj+A98jV0 これで終わりです 幼稚な文に付き合っていただき&支援ありがとうございました