キョン「ここにアンパンが一つある」 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 20:29:52.74 ID:UWIaRn8e0 キョン「ハルヒの命令で適当な茶菓子を買ってきた」 キョン「お代はすべて俺持ち。SOS団全員で食べるにも関わらずだ」 キョン「しかしだな、皆でつまんでいるうちにアンパンだけが残ってしまった」 キョン「ここは金を出した俺に食う権利があるってもんだろう」 ハルヒ「雑用が出しゃばるんじゃないわよ。団長であるあたしに権利があるに決まってるでしょ」 長門「ここは私に譲るべき」 キョン「なぜだ、長門よ」 長門「アンパンを最も欲しているのは私」 ハルヒ「だから?」 長門「食べたい人に食べてられてこそアンパンは本懐を遂げられる」 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 20:33:33.75 ID:UWIaRn8e0 ハルヒ「有希にアンパンの何が解るのよ」 長門「解る。私にはアンパンの気持ちが」 ハルヒ「そうだとしても、今この場でアンパンを一番食べたいのはあたしよ!」 古泉「まあ、涼宮さん。ここは全員で分ければよろしいではありませんか」 ハルヒ「いやよ! 私はまるまる一個食べたいの!」 キョン「俺もそうしたいのは山々だが、このままでは収拾がつかん。ここは妥協すべきだろう、ハルヒ」 ハルヒ「いやと言ったら、いやなの!」 キョン「じゃあ長門、お前はどうだ。妥協すべきだと思わないか」 長門「……致し方ない」 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 20:35:59.32 ID:art0NBhkP キョン「長門もこう言ってる。団員の意見も聞きいれてこその団長だと思うがな」 ハルヒ「……もう、分かったわよ! 好きにしなさい」 古泉「では、僕が分けましょう」 ハルヒ「寸分の狂いも許さないからね。きっちり分けるのよ」 古泉「ふむ、定規はありませんか」 みくる「あっ、定規なら持ってます」 ハルヒ「あら、みくるちゃんいたの」 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 20:39:13.59 ID:art0NBhkP 古泉「この辺ですかね。定規で切り分けて……っと」 ハルヒ「ちょっと! なんで半分に切ってるのよ!」 古泉「はい? 四等分にするには、まず半分にしなければ……」 長門「私と彼と涼宮ハルヒ、三等分で十分なはず」 古泉「いや、僕の分を忘れないでくださいよ」 キョン「お前も食いてえのかよ!」 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 20:42:24.79 ID:art0NBhkP 古泉「だってアンパンですよ? 食べたくないわけがないでしょう」 長門「それなら筋を通すべき」 キョン「そうだ! 今のお前はハルヒよりたちが悪いぞ」 ハルヒ「キョン、それどういう意味よ!」 キョン「ハルヒ、今は言い争っている場合じゃない。このニヤケ野郎に処罰を下すときだ!」 ハルヒ「だからって、あたしに暴言を吐いた罪は消えないのよ!!」 キョン「悪かったよ! アンパンさえ食えれば後で殺されたって構わん! 今は冷静になれ!」 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 20:45:17.96 ID:art0NBhkP みくる「パクパク」 長門「朝比奈みくる、あなたが食べているそれは……」 みくる「アンパンですよ」 キョン「って、うおおおおおおおおおおおおい!! 何勝手に食ってんだ、あんた!」 ハルヒ「吐き出せっ!!! 百烈脚!!」 みくる「グボァ!!」 古泉「追撃ふんもっふ!」 みくる「ゲボァ!!」 長門「とどめ」 ガシャアアアアアアン!!! キョン「長門に投げられ、窓をぶち破って落ちていったぞ。朝比奈さん」 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 20:48:23.52 ID:art0NBhkP 古泉「当然の報いでしょう。無断でアンパンに手を付けるなんて言語道断です」 キョン「お前が言えた台詞じゃないだろ」 長門「あのような不届き者がまた現れる前に、アンパンの処置を決めなければならない。早急に決断を」 キョン「もう半分に切ってしまったものは仕方ない。不本意だが、四等分で譲歩してやる」 古泉「んっふ、感謝します」 キョン「やれやれ」 長門「しかし古泉一樹に前科があることは事実。切り分けは私が引き継ぐ」 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 20:51:15.27 ID:art0NBhkP 長門「…………」 キョン「どうした長門、早くアンパンを……」 長門「ない」 古泉「まさか……」 長門「アンパンがない」 キョン「そういえば、ハルヒがいないぞ!」 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 20:54:11.87 ID:art0NBhkP キョン「長門、ハルヒの居場所は分かるか」 長門「分からない。涼宮ハルヒの力が働いている模様」 古泉「……?」 キョン「古泉、どうかしたか」 古泉「いえ……涼宮さんの行き先を推測していただけです」 長門「朝比奈みくるの落下から、まだ3分と経っていない」 古泉「さすがの涼宮さんもそう遠くへ行ってはないでしょうね」 キョン「くそ、手分けして探すぞ!」 長門「抜け駆けは許さない」 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 20:57:31.93 ID:art0NBhkP キョン「さて、ハルヒの行き先だが……」 キョン「十中八九、人目に付かない場所だろうな」 キョン「アンパンを食べているところを見られたら、分けてほしいと懇願するやつが間違いなく現れる」 キョン「そうなりゃ落ち着いて食べていられない」 キョン「外に逃げた可能性もあるが、そうなると広くて探せたもんじゃない」 キョン「とりあえずは校内で、人気のない場所を探すしかないな」 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 21:00:18.06 ID:art0NBhkP キョン「屋上と特別教室も粗方探したが見つからんな……」 キョン「大分時間をくったし、もう食べ終わっているかもな」 キョン「諦めるしかないのか……」 キョン「いや、もしかしたら長門か古泉が見つけているかもしれん」 キョン「いったん部室に戻るか」 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 21:03:17.30 ID:art0NBhkP ガチャ キョン「長門、古泉いるか?」 キョン「誰もいないな……あいつら、まだ探してるのか」 キョン「ん、今なにか足に当たったような……」 ハルヒ「…………」 キョン「ハルヒ!? なんで部室で倒れてるんだ! その大きなタンコブはなんだ!!」 ハルヒ「……キョ、キョン?」 キョン「ハルヒ! なにがあった!? そのタンコブは!!」 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 21:06:22.80 ID:art0NBhkP ハルヒ「有希が…………アンパンを……」 キョン「長門……長門がどうしたんだ!? 長門がタンコブなのか!!」 ハルヒ「…………」 キョン「くそ、いったい誰が顔一つ分の大きさはあろうタンコブを……」 prrr......prrr...... キョン「携帯……古泉からだ!」 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 21:09:15.76 ID:art0NBhkP キョン「古泉、ハルヒのタンコブは誰がやったんだ!!」 古泉「挨拶もなしにそれですか。……まあ、あのタンコブでは無理もありませんね」 キョン「何か知ってるんだな。ハルヒのタンコブについて」 古泉「ええ、しかしその説明は後です。校門に機関の車を待たせてあるのですぐに来てください」 キョン「お前もそこにいるのか。タンコブ」 古泉「はい」 キョン「分かった、すぐに行くタンコブ」 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 21:12:26.03 ID:art0NBhkP キョン「待たせたな。って、お前ボロボロじゃないか!」 古泉「事情は移動しながら説明します。乗ってください」 キョン「あ、ああ……」 古泉「まず涼宮さんのタンコブについてですが、端的に言えば長門さんの裏切りです」 キョン「長門がやったのか……。あのタンコブを」 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 21:15:13.94 ID:art0NBhkP 古泉「我々が涼宮さんを探しに別れる前、僕と長門さんは涼宮さんの居場所に気づいていました」 キョン「な! なら、なんで教えてくれなかったんだ」 古泉「気づいていることを涼宮さんに感づかれると上手くありません。僕たちより涼宮さんのほうが部室の出口に近かったので、強行的に逃げられる可能性があります」 キョン「部室の中にハルヒはいたってのか」 古泉「用具入れの中に隠れていたんです。扉にスカートの裾が挟まって見えていましたよ。彼女も慌てていたのでしょう」 キョン「灯台下暗しか……してやられたな」 古泉「僕たちの退室を見計らい、部室で一人、アンパンを食べるつもりだったのでしょう」 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 21:18:14.10 ID:art0NBhkP 古泉「我々が部室を出た後、すぐに戻って涼宮さんを確保しようとしたのですが、長門さんがすでに来ていて……」 キョン「その時、ハルヒにタンコブを……」 古泉「ええ。僕はてっきり長門さんが涼宮さんに制裁を加え、アンパンを取り返したものだと思いました」 古泉「しかし長門さんに近づこうとすると、彼女は割れていた窓から飛び出し逃げて行きました」 古泉「僕は咄嗟に後を追って飛び出し、追跡しながら機関へ協力を要請しました」 キョン「よく飛び降りて無事だったな」 古泉「巨大な二つの山がクッションになりましてね。大したケガはありませんでした」 キョン「そいつは運が良かったな」 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 21:21:20.03 ID:art0NBhkP 古泉「それでも援軍の到着まで長門さんと競り合いながら追跡していたので、ボロボロになってしまいましたよ」 キョン「腕がボッキボキに曲がっているもんな」 古泉「\/\(^o^)/\/」 キョン「まあ、ハルヒのタンコブに比べれば蚊に刺されたようなもんだな」 古泉「そうですね。腕の骨折とタンコブでは比べものになりませんよ」 キョン「天秤にかけていいようなものではないな。タンコブは」 古泉「死よりも辛いですからね。タンコブは」 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 21:24:21.09 ID:art0NBhkP 古泉「そういうわけであなたへの連絡が遅れてしまいましたが、先ほど援軍が到着したので迎えにあがりました」 キョン「そうか……しかし、俺なんかが役に立つのか?」 古泉「長門さんを最も理解しているのはあなたではないですか」 キョン「……ま、やるだけやってみるさ。アンパンがかかっているんだからな」 古泉「期待してますよ。……いました! 長門さんです」 キョン「よし、車を降りるぞ!」 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 21:27:22.49 ID:art0NBhkP 長門「古泉一樹と……彼も……」 キョン「えげつねえ、何十もの人がタンコブ腫らして倒れてやがる」 古泉「機関の人間……全滅ですか」 長門「私は降りかかる火の粉を払ったに過ぎない」 キョン「長門、アンパンはみんなで分け合うって約束したじゃねえか……」 長門「『食べたい人に食べてられてこそアンパンは本懐を遂げられる』と言ったはず」 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 21:30:18.92 ID:art0NBhkP 古泉「僕たちのアンパンに対する想いは、長門さん以下だと言うのですか」 長門「朝比奈みくるへの報復の際、古泉一樹も涼宮ハルヒも……手を抜いていた」 古泉「ですが結果的には朝比奈さんは死んだ。そしてそれは当然の報いだと思っています」 長門「殺るなら一発でできたはず。だが、涼宮ハルヒはただの連続キック、古泉一樹に至っては手刀を入れただけ」 キョン「長門の言い分は分かる。だが一つ言わせてくれ」 長門「手を出す素振りさえ見せなかったあなたに発言の権利などない」 キョン「確かにあの時、俺は叫んでいただけだった。だが、俺たちは根本的に勘違いをしていたんじゃないか?」 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 21:33:15.47 ID:art0NBhkP キョン「俺たちは本当にアンパンを心の底から欲していたのか、まずそれすら怪しい」 長門「理解不能。アンパンへの欲があったがゆえに、このような論争が起こっている」 キョン「その欲ってのは、本当に精一杯アンパンに向けられていたか?」 長門「当然」 キョン「あの時は朝比奈さんへの憎悪に囚われ、返報のことばかり考えていただろ。誰一人として、アンパンに目を向けちゃいなかった」 古泉「……だからこそ、涼宮さんにもアンパンを奪われてしまった」 長門「……」 キョン「アンパンへ気を配ることができていたなら、朝比奈さんに食われることも未然に防げたはずだ」 キョン「俺たちは失念していたのさ。アンパンへの愛ってやつを……!」 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 21:36:11.56 ID:art0NBhkP 長門「私の…………愛が足りなかった……?」 キョン「なあ長門、アンパンを分けるところからやり直そう。しっかり愛を持ってアンパンを食べるために」 古泉「長門さん、彼の言う通りです」 長門「…………」 キョン「長門、頼む」 長門「……部室へ戻る」 キョン「長門?」 長門「また始めからやり直す」 キョン「……よし、帰ろう! 俺たちの部室へ」 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 21:39:13.72 ID:art0NBhkP キョン「さて、部室に帰ってきたわけだが……」 古泉「やけに懐かしく感じます。数時間前にもここにいたはずですが」 長門「心機一転」 キョン「さて、改めてアンパンを分けたいところだが……誰が切る?」 古泉「僕はあいにく腕が折れているので無理です」 キョン「じゃ、長門が切ってくれ」 長門「私……?」 キョン「さっきは偉そうなこと言ったが、朝比奈さんの抜け駆けに初めに気付いたのは長門だしな」 古泉「なんだかんだ、長門さんのアンパンへの想いは我々より上だったんですよ」 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 21:42:25.13 ID:art0NBhkP 古泉「長門さん、僕の胸ポケットに定規が入っているので使ってください」 長門「拝借する」 キョン「長門、任せたぞ」 長門「入刀」 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 21:45:16.99 ID:art0NBhkP 長門「……切れた」 キョン「さすが長門。完璧な四等分だ」 長門「朝比奈みくるに食べられた部分は若干小さくなってしまった」 キョン「なに、その部分はハルヒに食わせりゃいいさ」 古泉「後で涼宮さんの天罰が下るかもしれませんよ?」 キョン「その時は俺が一挙に引き受けてやるよ」 古泉「それは頼もしいことです」 キョン「んじゃ、いただくとするか」 みくる「させませんっ!!」 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 21:48:15.15 ID:art0NBhkP 長門「朝比奈みくる……」 古泉「生きていたのか……!」 みくる「古泉くんのクッションにされた時はもうダメかと思いましたけど……」 キョン「出血もすごいが……胸が腫れて偉い大きさになってるな」 長門「奇乳」 古泉「まるでバランスボールのようです。エクササイズができそうですね」 みくる「腫れてくる前に立ち上がらなかったら、押し潰されるところでした。自分の胸に」 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 21:51:16.88 ID:art0NBhkP みくる「胸はこの際どうでもいいんです。あなたたちが持っているそれを渡してください」 キョン「狙いはやはりアンパンか」 長門「三対一ではあなたに勝ち目はない」 みくる「ふふ、この用具入れの中を見てもそう言えますか」ガチャ ハルヒ「……」 キョン「ハルヒ!!」 古泉「しまった! 涼宮さんは部室に倒れていたはずなのに、その消失を見落としていたなんて……」 長門「迂闊」 みくる「アンパンを手に入れるためなら、世界も、未来も、どうなったって……。手段はいといません」 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 21:54:22.89 ID:art0NBhkP 古泉「そんな強迫には屈しませんよ。こちらも相応の覚悟はありますから」 長門「死守する」 キョン「朝比奈さん……これを受け取ってください。あなたが口を付けた部分のアンパンです」 みくる「え」 長門「ゑ」 古泉「血迷ったか、お主!」 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 21:57:15.62 ID:art0NBhkP キョン「正直、他人の分とかどうでもいい」 古泉「思わず素が出てしまいました」 長門「思わずエラーを起こした」 みくる「びっくりしたけど、アンパンが手に入ったので良しとします」 キョン「今まで自分の取り分がかかっていたから頑張ってただけだし……」 長門「……」 古泉「ともあれ眼前の問題は解決できたので、改めていただきましょうか」 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 22:00:04.41 ID:art0NBhkP 古泉「……! アンパンが掴めない」 キョン「そういや腕折れてたっけな」 ハルヒ「あたしが食べさせてあげましょうか」 古泉「いえいえ。ありがたいですが、口で直接食べられます」 ハルヒ「いいから遠慮しないで」 古泉「そうですか? では、お言葉に甘えて」 ハルヒ「はい、アーン」 古泉「アーン」 ハルヒ「なーんちゃって、パク」 古泉「え、あああ……うあああああああああああああああああああああああああああああああ」 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 22:03:34.36 ID:art0NBhkP 長門「涼宮ハルヒ……」 みくる「い、いつの間に!?」 キョン「ナチュラルに紛れ込んで、ナチュラルにアンパンを奪いやがった!」 ハルヒ「とっっっっっても美味しかったわぁ」 古泉「わ、っわわ、わわわ吾輩の餡麺麭ががががっががががががっががががが」 キョン「古泉、気をしかと持て!」 長門「目の前でアンパンを奪われたショックは計り知れない」 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 22:06:15.89 ID:art0NBhkP ハルヒ「どんどんいくわよ! てやっ!!」 みくる「ぎゃあああああああああああああああああああ!! 圧死するうううううううううううううううううううううううう!」 キョン「朝比奈さんが転ばされ自分の胸の下敷きに!!」 ハルヒ「みくるちゃんのアンパンもゲーット!」 みくる「い…………や……アンパン……だけは………………」 ハルヒ「パク」 みくる「あ、あ……ああああああああんぱあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 22:09:24.28 ID:art0NBhkP キョン「外道か、こいつ!」 ハルヒ「あ〜ら、あたしの分を無断で引き渡したあんたがそれを言うの?」 キョン「それはお前にも前科があったからだ!」 ハルヒ「ふん、そもそも私は当初からまるまる一個食べたかったんだもの。原点回帰したまでよ」 キョン「意地でも奪おうってか。だが、俺はすでにアンパンを手にしている。お前が動いた瞬間、このアンパンを一飲みにするぞ」 ハルヒ「笑わせないで。あんたが口に入れるより早くアンパンを奪うことくらいわけないわ」 キョン(普通なら『ハッタリだ』と文句を入れるところだが……ハルヒならやりかねん) 長門「涼宮ハルヒ……これ以上あなたがアンパンを奪うことは不可能」 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 22:12:25.76 ID:art0NBhkP ハルヒ「なによ、有希は最後にじっくり料理してあげるから黙ってなさい。あたしにタンコブを作った罪は死刑程度じゃ済まないわよ」 長門「彼は正義のヒーローになった」 キョン「俺!?」 ハルヒ「意味不明なこと言って、時間を稼ぐつもり?」 キョン「おい、どういうことだ! 正義のヒーロー!?」 長門「……拳を握って」 キョン「こ、こうか? ……はっ! なんかこうパワーがいい具合に溢れる気がする」 ハルヒ「やろうっての? なら、こっちから行くわよ」 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 22:15:08.16 ID:art0NBhkP キョン「しゃあああああああああああ、かかってこいやあああああああああああああああ」 ハルヒ「歯ぁ食いしばりなさいっ! 鳳扇華!」 キョン「 ア     ン     パ     ン     チ 」 ハルヒ「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA」 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 22:18:19.99 ID:art0NBhkP ハルヒ「ハルハルヒーン」キラーン 長門「あなたに異次元からアンパンのヒーローの身体能力をコピーした」 キョン「ああ、元気100倍だったぜ」 長門「正義のヒーローは、ストリートで股を開くような中国人に負けたりしない」 キョン「これでついに……アンパンを食えるんだな」 長門「そう」 キョン「よし、それでは早速…………あ」 長門「……」 キョン「拳握ったせいでアンパンが潰れてるうううううううううううううううううう」 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 22:21:18.32 ID:art0NBhkP 長門「……」スッ キョン「長門、これは……」 長門「半分、お裾分け」 キョン「長門、お前ってやつは……俺は今ほど感動した覚えがない。もうタンコブができようと悔いはないぞ」 長門「涼宮ハルヒを撃退したのはあなた」 キョン「その力をくれたのは長門だろ」 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 22:24:01.65 ID:art0NBhkP キョン「じゃあ、今度こそ……いただきます。パク」 長門「……パク」 キョン「……なんだこれ」 長門「……パサパサ」 キョン「バカな……ハルヒは平然と食ってたじゃねえか」 長門「恐らく彼女は唾液の量が異常であるため気にならない」 キョン「んな味覚オンチ野郎がアンパン食いたがんじゃねえよ!! ちっくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」 おわり 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/05/08(土) 22:29:53.69 ID:art0NBhkP 私はある2つのことを伝えたくて、この物語を書きました 1つ目に、タンコブはとてもとても辛いものだということ 2つ目に、目の前に欲しいものがあれば代わりなんて他にないということ そして2つ目に、私はアンコ嫌いなのにパン好きなので、それらを合わせたアンパンにはひどくジレンマを感じ、そんなアンパンを蔑んでいるということ そして2つ目に、アンパンマンは無敵で、アンパンのくせに格好よくて、私も大好きであるということ この想いが皆さんに、少しでも伝わればいいと思います