谷口「俺、とべんじゃん!」【ハルヒSS】 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 13:54:01.87 ID:NxFbS8JM0 落ちない程度にageながら投下していきます。さるさん対策で2〜3分間隔になります。 投下レス数は280前後になります。無駄に長編なんで、バイトの時間つぶしにでも。 投下終了時刻は0時を目標としています。 このSSは一度VIP+に投下した物を大幅に加筆修正した物です。 それでは投下します。 ───谷口家 リビング TV「カンッケーないから、関係ないからっ」 谷口「プッ、WAハハハハ」 TV「朝日で構ってもらえないからTBSでやるお!」 谷口「WAハハハハ」 谷口父「……ゴホッゴホッ。おい、お前もう学校の勉強はすんだのか?」 谷口「あとでやるよ」 谷口父「いつも口先ばかりだ。基礎固めをしている今が大切な時期なんだぞ」 谷口「だからわかってるって!この番組終わったら勉強するから!」 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 13:56:41.73 ID:NxFbS8JM0 谷口父「そういいだしてからもう3時間だ。その番組はなんだ?まさか24時間テレビだとかいうんじゃないだろうな」 谷口「ちげーよ!後15分で終ーわーりーまーすー!」 谷口父「どうだか。お前は補欠合格だった自覚があるのか?」 谷口「!!」 谷口父「他の人が遊んでる時にどれだけ頑張れるかがだな……」 谷口「うるせぇ!後で勉強するっつってんだろうが!」 谷口父「なんだその口のきき方は!」 谷口「もういい!興ざめだっての!」 ドタドタドタドタ(2階に上がる音) 谷口父「おい!……まったく。……ゴホッゴホッ」 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 13:58:47.33 ID:NxFbS8JM0 ───谷口の部屋 谷口「毎夜毎夜同じ会話の繰り返し……」 谷口「ったく、TVぐらい気分よくみさせろよ」 谷口「自分が一流大学出だからってよ」 谷口「へん、人は勉強できるかできねえかだけで評価されるもんじゃないぜ」 谷口「親父は確かに頭が良いと思うし、同期でも出世頭だろうさ」 谷口「それはすげえと思うけど、俺とは価値観が全然違うんだよな」 谷口「親父は知らないかもしれねえけど」 谷口「俺にはもっと別の取り柄ってもんがあるんだよ」 谷口「お? 今チャイムが鳴ったな。だれか来たのか? ……どーでもいいな」 谷口「……さっさと寝るか」 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:01:02.29 ID:NxFbS8JM0 ───翌日 昼休み 学食 谷口「おーい!ここだここ!」 キョン「なんだ、ここ人の荷物が置いてあるじゃないか。席取りされてるんじゃないか?」 谷口「俺が前の休み時間からリザーブしといたんだよ。わざわざ体育着袋を教室から持ってきたんだぜ?」 国木田「そんな大事な席に僕も座っていいの?」 谷口「サービスサービスゥ、だ。さあさ、座ってくれ」 キョン「……いるよな、こういうやつ」 谷口「なんだ、文句あるのか? 席とっておいた男にその物言いはないぜ」 キョン「はいはい。と、その体操着袋名前が書いてあるな」 谷口「お、ホントだ。こりゃ有名人になっちまうな、WAハハハハ」 国木田「前の時間から席取りをするような小さい男としてね」 谷口「……食券買いにいってくるわ」 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 14:03:26.63 ID:NxFbS8JM0 sageとか悠長なこと言ってると、この時間帯でも軽く落ちる気がしてきた。 谷口「ズビビビビ。お、あそこの女子いいな。確か1年9組の沢崎! B+だったつもりだが、ありゃA-か。高校入って化粧覚えたみたいだな」 キョン「……モグモグ」 国木田「谷口はホントに女子のことが好きだね。彼女作ったりしないの?」 谷口「馬鹿やろう! 作れるもんならとっくに作ってるっての!」 国木田「ふーん。その割には誰かにモーションかけてるようにも見えないけどね」 谷口「あのなぁ。まるで俺がチキンみたいな物言いじゃねえか! ズビビビビ」 国木田「別にそうはいってないけどさ。お目当ての女子とかいないのかな、って」 谷口「そうだな……。朝倉涼子のことは狙ってたんだけどな。なんですぐに引っ越しちまったんだろうな、おかげさまでクラスのグレードが1ランク下がったぜ」 キョン「……。……モグモグ」 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 14:06:07.38 ID:NxFbS8JM0 谷口「うちのクラスは今、涼宮でもってるようなもんだ」 キョン「なんでそうなる」 谷口「決まってんだろ? ミスコンやる、って話になったときのこと考えてもみろよ。かわいい女子が一人もいないクラスはみじめじゃねーか」 国木田「前提が意味わからないけど、言いたいことはわかるなぁ」 谷口「中身は最悪だけどな。付き合ってるキョンの気がしれないぜ」 キョン「おかしな物言いをするな」 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 14:09:56.80 ID:NxFbS8JM0 谷口「でもうらやましくもあるな」 国木田「どこが?」 谷口「どこもここもないだろ。SOS団だっけか? 女子部員三人、涼宮朝比奈さん長門ってお前、どんだけだよ」 国木田「確かにねー。傍目から見ても可愛い子ばっかりが集まってるもんなぁ」 キョン「……ひとついいか」 谷口「ああん?」 キョン「例えばだ。無理やり付き合わされている部活があったとする。その部員が全員顔や性格がよろしくない連中だったらどうする?」 谷口「なんだそれ? いじめじゃねーか」 キョン「つまりだ。本来いじめ級の問題を、なんとか外見でごまかしてるようなもんなのさ」 国木田「案外面食いなんだね、キョン」 キョン「健全な高校男子だからな」 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:12:05.04 ID:NxFbS8JM0 谷口「ま、涼宮の常軌を逸した行動の数々は知ってるしな、イーブンってとこか」 キョン「三人の眼福で涼宮を相殺したとして、おつりは出るぞ」 谷口「何?」 キョン「朝比奈さんがお茶を出してくれる」 谷口「なんですとっ!?」 キョン「それがまた美味くってな……」 谷口「……なんだか泣けてきたぜ」 国木田「どうして?」 谷口「コイツの高校生活に比べて、おれの高校生活がなんと華のないことか……」 女子「あのさー、隣の荷物どけてもらっていいかな?」 谷口(2年生の紺野先輩か……B+だな) 谷口「うおう、勿論おkっすよ!」 紺野真琴「いやー、わるいねー! 千昭! こっちこっち! 席取れたわよ!」 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:14:21.91 ID:NxFbS8JM0 谷口(これはアタックチャンス!) 千昭「は? なんで俺がこんなむさい男の隣に座んなきゃいけねーんだよ。絶対ごめんだね」 谷口「む、むさ……!?」 千昭「第一、昨日俺との約束ブッチしといて昼飯暇だから呼ぶってどーゆー神経してんだよ」 真琴「いやー、いろいろあってさー! どーしても野球見に行けなくなっちゃったんだってー!」 千昭「俺楽しみにしてわざわざメガホンまで持ってったんだぜ? なのに妹がプリン買って来たぐらいでこねーってどーゆうことだよ。ったく、それにこんなジメジメしたとこで飯食うの俺はごめんだ。じゃあな」 真琴「あ、ちょっと! ……」 谷口(いっちまった……。なんか険悪なムードだったな) 谷口「そ、そんなに落ち込まないでくださいよ、水飲みます?」 ガタッ 紺野「……ホント今日はついてない。なーにがナイスの日よー、もー!」 国木田「いっちゃったね……」 谷口(いつもながら、眼中になし、か) 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 14:16:10.42 ID:NxFbS8JM0 国木田「そういえば来週から期末テストだね。谷口は勉強してる?」 谷口「……してねぇーよ! なんもかんもうまくいかねー! ブルー入りましたー!」 キョン「もう少ししっかりしないとな、お前」 谷口「わーったよ。ったく、どいつもこいつも」 国木田「さて、食器片付けようよ」 谷口(……キョンがうらやましいぜ) 谷口(俺にはなにもない。キョンも似たようなもんなのに、何が違うんだよ?) 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:18:16.70 ID:NxFbS8JM0 ───放課後 生徒A「おい! 理科のノート、先生が持ってこいっていってなかったか? 日直!」 谷口「おいおい、日直誰だよ? ルーズすぎねぇか?」 国木田「今日の日直は谷口だよ」 谷口「……キョン、手伝ってくれねえ?」 キョン「仕方ないやつだな……」 ハルヒ「キョン! 団室行くわよ! さっさと用意するっ!」 キョン「……ということだ。悪いな」 谷口「……」 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:20:39.11 ID:NxFbS8JM0 ───理科室 ドスッ 谷口「ふぃーやっと半分。ったく、一人で運ぶ量じゃねーぞ! なんで何度も一号館と二号館を往復しなきゃいけねえんだ」 谷口「あーだりー。ごみ箱とかにテスト問題のコピーとか入ってねーかなー」 谷口「入ってねーよな。そううまくはいかねぇよな」 谷口「……たばこでも吸うかな。誰もこねーだろ。臭いは……窓の近くで吸えばダイジョブダイジョブーだろ」 カチッカチッ 谷口「……ふぅー。たまんねー。始めて一か月、もう既にやみつきです」 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:22:49.06 ID:NxFbS8JM0 スッ フゥー 谷口「こうでもしなきゃ世の中の不条理なんて無視できねーよ」 谷口「なんでキョンの周りにだけ女子が寄ってくるんだろうな」 谷口「ありゃ一種の超能力だな。涼宮のやつ、超能力者は来なさい! とか言ってたし」 谷口「それで寄ってったんだからキョンは超能力者に違いない」 谷口「じゃああれか? SOS団のやつらみんなおかしな連中なんじゃねーか?」 谷口「涼宮は他に何を呼んでたっけな? コスプレーヤーにホモに綾波レイがいたら来いっつってたっけ?」 谷口「WAハハハハ、ま、いいや。さて、ノート取ってくるか。吸殻は……水道でも流しとくきゃいいべ」 ジャー 谷口「さてと……」 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:24:59.80 ID:NxFbS8JM0 ガタッ 谷口「!!!???」 谷口(誰かいる!?) 谷口(や、やべぇ……) 谷口(音源は準備室か……?) 谷口(吸ってっとこ見られたかな……。顔は? バレたか?) 谷口(いや、音がしただけだし……見られたとは限らねーぞ……) 谷口(確認する必要があるな……) ギィィィ(ドアをあける音) 谷口『……おいーす。だ、誰かいますかぁ?』(小声) …… 谷口(誰もいない?) 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:27:13.02 ID:NxFbS8JM0 谷口「っかしーな、確かに物音したんだけど」 谷口(隠れてるのか? 驚かしてみるか) 谷口「……WAっ!!」 …… 谷口「反応なし、か」 谷口「気のせいだったかな……と、あれ? なんか落ちてるな」 谷口「くるみか……? これがどっかから落っこちたのかな?」 ガタッ 谷口「だ、誰だっ? うおっ!」 谷口(こ、こける!) ブィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン 谷口(な、なんだ!??) 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:29:46.50 ID:NxFbS8JM0 テテーテレテレテレテレテレテレテー 谷口「ウァアハアハッハハハハッヒィイイイイヤアァアアアアアア」 谷口(なんぞなんぞこれなんぞこれええええ!!) 谷口(時計だらけな世界だ! うお、バッファローの群れかあれ? 何ぞこれ?) 谷口(新手のドラッグかぁあああああああ????) 谷口「うああああああああああああ」 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:31:59.67 ID:NxFbS8JM0 ドンッ 谷口「いってぇええええ……」 谷口「ここは?」 谷口「理科準備室か……」 谷口「ただこけただけだったのか? じゃあ今のは一体なんだ?」 ギィィィ 谷口「だ、誰だ!!??」 国木田「ビックリしたー。いきなり大きな声出さないでよ」 谷口「な、なーんだよ、国木田か」 国木田「なんだとは何さ。いつまでたってもノートが置きっぱなしだからわざわざ持ってきてあげたってのに」 谷口「ありがとな……。そうだ、今近くで誰か見なかったか?」 国木田「見てないけど……?」 谷口「そ、そうか……」 谷口(夢だったのか……? いったいなんなんだよったく) 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:34:09.18 ID:NxFbS8JM0 ───その頃、SOS団室 ハルヒ「だーかーら! あんたがやればいいでしょそんなこと! 団長が手をだすまでもないわ!」 キョン「あ、あのなぁ、だからってなんで俺がやらにゃならんのだ! 汚したのはお前だろうが!」 ハルヒ「団長命令よ! さっさとやりなさい!」 キョン「民主党の誰かさんみたいに権力に居座るな!」 ハルヒ「うるさいうるさいうるさーい!あたしは汚職なんてしてないもん!当然の権利を行使してるだけよ!」 キョン「意味のわからんもん作って食器を汚してるじゃねーか!」 ハルヒ「それが?」 キョン「そ、それだけだが……」 ハルヒ「じゃあさっさと洗ってきなさいっ!」 キョン「ちくしょう……」 古泉(汚食器、おしょき、おしょくというわけですか……。さすがに安易すぎますね) 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:36:29.62 ID:NxFbS8JM0 長門「……」 古泉「? どうしたんです?何か気になることでも?」 長門「4分15秒前、想定外の情報爆発を確認した」 古泉「……一体どういうことです? 涼宮さんのケーキを彼が食べたのはたった今のことですよ?」 長門「それより、いくばくか前のこと」 古泉「では涼宮さんとは関係を持たないものであると?」 長門「断定できない。なんらかの干渉は行われた可能性がある」 古泉「なるほど……。その情報爆発について説明願えますか?」 長門「統合思念体が現在データベースから情報を策定中。全体の解析には多くの時間が必要」 古泉「具体的にはどれだけの時間が?」 長門「……解答できない。過去に似た事例が発見できた場合、明日にも解析は完了できる」 古泉「発見できなかった場合は……」 長門「涼宮ハルヒのように観察対象として指定される可能性がある」 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:38:56.62 ID:NxFbS8JM0 古泉「なるほど。なかなかに由々しき事態ですね」 長門「そう」 古泉「しかしながら我々の機関では、現在の涼宮さんに関するチームと同様の人員や資金を用意できません」 長門「……」 古泉「機関の規模には自負がありますが、それでも二兎を追うことには多大なリスクが伴うと、おおよそ考えられるでしょう」 長門「……」 古泉「したがって、涼宮さんとその情報爆発の関連性が希薄な場合、我々は傍観の立場をとることになりそうです」 長門「饒舌」 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 14:41:20.42 ID:NxFbS8JM0 古泉「我々も、少々統合思念体の力を計りかねているのですよ」 長門「……」 古泉「できることならばなるべく統合思念体のことは刺激しないよう、という方針なんです」 長門「……」 古泉「こちらの行動指針を知ってもらい、テリトリーについて一線引きたいとおもいまして」 長門「……」 古泉「あくまで我々は涼宮さんに興味がある訳ですよ。統合思念体の興味と我々の興味の対象は、被ることはあれど完全に一致している訳ではない、ということです」 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:43:29.97 ID:NxFbS8JM0 長門「WINWINゲーム」 古泉「そのとおりです。流石ですね」 長門「今回私は貴方の機関に対し、この一件に手を出さないことを期待している」 古泉「!? 珍しいですね、私的な意見を伺えるとは」 長門「かもしれない」 古泉「それは一体何故ですか?」 長門「涼宮ハルヒと関係性を持たない事柄において、私的感情の行使は規制されていない」 古泉「……なるほど。では手を出してほしくない理由について、伺えますか?」 長門「……」 古泉「わかりました。とりあえず今回の一件は機関にはまわさないことにしましょう」 長門「……感謝する」 古泉(長門さん個人の関心が向くこと、ですか。んふ、興味深いですね) 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:45:41.27 ID:NxFbS8JM0 ───下校中、人のほとんど通らない裏道にて 谷口「ったく一体なんだったんだ? 煙草も見られたかもしんないし、今日はついてねーぜ」 谷口「あーあ。テストやべーよ。出来る気がしねー。高校のテストってどんな感じなんだあ?」 谷口「高校入れたのだって奇跡みたいなもんだし。山張りあたりーのあたりーのだったもんな」 谷口「まったく山本勘助も真っ青だぜ」 谷口「まぁいいや。とっとと帰って勉強でも、っとその前に一服……」 谷口「一服……」 谷口「……ねぇ!!」 谷口「え、まじで? ……マジマジマジ!」 谷口「ねぇよねぇよねぇよ! ど、どっかにおとしたってかぁ!?」 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:47:50.99 ID:NxFbS8JM0 谷口「おいおい勘弁してくれよシャレになんねーって!」 谷口「あ! あの準備室でこけたときに落としたのか!?」 谷口「やべーよそれはやべーよ!」 谷口「日直で理科室入ったたのばれてるし!」 谷口「幸いなことに、まだ学校の近く!大して時間も経ってない!」 谷口「急いで戻れば間に合うかもしれねぇ! ここはダッシュだ!」 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 14:50:01.40 ID:NxFbS8JM0 ダダダダダダ 谷口「うお、こんなとこに自転車が! しゃーない、ぎっちまうか!」 ガチャガチャッ 谷口「ちゃんと返すからよ!ちょっと借りるだけだから!」 キコキコキコキ 谷口「なんでこんなときに赤なんだっつの!」 谷口「こちとら学生生活がかかってるんだ! 喫煙で停学とかださすぎだぜ」 谷口「ここは強行突破だな!信号なんてきにしてられっかよ!」 ププーーーーーー!!! 谷口「えっ?」 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:52:11.78 ID:NxFbS8JM0 谷口(あ、トラックだ。馬鹿なの、死ぬの?) 谷口(くだらなすぎるけど、俺にはふさわしいかもな) 谷口(WAWAWA……) 谷口(……でも死なずにすむなら……) 谷口(親父と……) バーン!! 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:54:21.36 ID:NxFbS8JM0 ───理科室前の廊下 谷口「ノートも置きっぱなしだったし、箱も動いてなかった」 谷口「ふー、とりあえず誰にも見られなかったってことだよな」 谷口「よかったよかった」 谷口「しかしさっきのはなんだったんだぁ?」 谷口「事故ったと思ったら、怪我もなくて自転車をギッた場所に戻ってた」 谷口「……時が、戻ったみたいだったな」 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:56:33.29 ID:NxFbS8JM0 谷口「んなばかなことあるかよな……」 ガチャッ キョン「ふぅー」 谷口「お、よおキョン」 キョン「谷口か」 谷口「家庭科室からなんか出てきて、何やってたんだ?」 キョン「みてのとおり、皿洗いだ」 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 14:58:41.69 ID:NxFbS8JM0 キョン「昨日朝比奈さんがケーキを持ってきてくれたんだが、それがまたうまくてな」 谷口「ふーん」 キョン「それに涼宮が対抗心を燃やして、今日材料買い込んできたんだ」 谷口「ふんふん」 キョン「で、結果出来たのがケーキとは呼べないような見かけでな」 谷口「なるほど」 キョン「それをみんなに食わせたくないもんだから全部自分で食おうとしたんだが、もったいないから俺が一切れ食ってやったんだ」 谷口「ほう……」 キョン「それから、うまいぞ、って言ってやったのさ」 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:00:41.47 ID:NxFbS8JM0 キョン「そしたら顔を真っ赤にして皿洗いをしてこいとか言うもんだから……」 谷口「……」 谷口「なぁキョン……」 キョン「そこで俺は……ん? どうした?」 谷口「時を跳ぶことってできると思うか?」 キョン「!!!!」 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:02:51.76 ID:NxFbS8JM0 キョン「どこでそれを!!??」 谷口「何もそんなに驚かなくてもいいだろ、そんな真剣な話じゃねーよ」 キョン「……なんでそんなこと聞くんだ?」 谷口「べ、べつに? おまえらおかしなことしてるだろ? その一貫でそーゆう実験とかしてねーのかな、と思ってさ」 キョン「……」 谷口「いや、悪かったな。お前は涼宮菌におかされてないんだったっけな。おかしなことを聞いちまった。わすれてくれ」 キョン「……跳べるんじゃないか?」 谷口「……え?」 キョン「跳べると、思うぞ」 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 15:05:02.34 ID:NxFbS8JM0 キョン「年頃の奴にはありえる話だそうだ」 谷口「だ、だけどよ、ど、どうやって跳ぶんだ??」 キョン「方法はわからんが……やっぱりピンチのときとか、勢いじゃないか?」 谷口「……」 キョン「でも、なんでこんなことを聞くんだ?」 谷口「……笑わないか?」 キョン「俺がいつも誰の相手をしてると思ってるんだ……」 谷口「誰にも言うなよ、涼宮二世はいやだからな!」 キョン「わかったわかった。で?」 谷口「かくかくしかじか……」 キョン「……なんだって……」 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:07:32.28 ID:NxFbS8JM0 谷口「な、なぁ、おかしなことになっちまったのか? 俺」 キョン「い、いいじゃないか。手から火の玉を出せる奴よりは随分実用的だ」 谷口「茶化すなよ」 キョン「は、はは。まあ、害のあることじゃないし、そんなに深刻に考えることないんじゃないか?」 谷口「それは、そうだが……」 キョン「そそそ、そうさ。じゃあ俺は団室に戻らないといけないから、もういくよ」 谷口「ああ、悪かったな、おかしな話につきあわせて」 キョン「いいさ。気にするな」 キョン(何か朝比奈さんと関係しているのか? 朝比奈さんに聞いてみるべきだろうか……いや、どうせ禁則事項に決まってるな) キョン「ま、古泉やら長門もいるし、俺の出る幕ではないよな。ささ、早いとこ部室戻らんとまたハルヒが怒りだしそうだ」 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:09:41.39 ID:NxFbS8JM0 そして時をおいて期末テスト明け ───期末テストの上位者発表掲示板 ガヤガヤガヤ キョン「さすが国木田だな、学年3位とはうらやましいぜ」 国木田「ありがとう。でも、キョンも載ってるじゃない」 キョン「まぁな。うちの団長のスパルタ教育があったからな」 国木田「SOS団だっけ? 涼宮さんが2位、古泉君は5位、それに長門さんが22位。加えてキョンが49位とは、すごい集団だね」 キョン「涼宮はあそこで悔しがってるがね」 涼宮「むむぅ……」 谷口「……」 谷口(ブ、ブービー賞……) 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:11:52.08 ID:NxFbS8JM0 ハルヒ「ちょっとキョン! あんた49位ってふざけてんの?」 キョン「ふざけてるとはなんだ! お前が言った”団員は50位以内であるべし”をちゃんと守ったじゃないか!」 ハルヒ「かー、これだから昨今の若者は困るのよ。いーい? 1やれと言われたら2をやってくるぐらいじゃないと、社会じゃ通用しないわよ!」 キョン「でかい口叩いてるがな、お前だって公言してた一位、取れてないじゃないか!」 ハルヒ「うるっさいわね! バカキョンの癖に生意気よ!」 谷口「……49位だってすげえじゃねえか」 涼宮「何? 部外者は黙ってなさい」 谷口「キョンだって頑張ったんだ! みんなお前と同じようにはいかねぇんだよ!」 キョン「谷口……」 ハルヒ「……言うじゃない。で、あんたは何位なのよ?」 谷口「それは……」 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:13:32.50 ID:NxFbS8JM0 ハルヒ「それだけ言うんだから、あたしより上なんでしょうね?」 谷口「なーんでそうなる。そりゃ一位じゃねぇか」 涼宮「ふーん、なのにそんな大口叩いてるわけ」 谷口「ひ、人の取り柄ってのは勉強だけじゃねえんだよ!」 涼宮「それはそれ、これはこれ。さあ、その順位票みせなさいよ!」 ドゥシッバシュッ トリャー キョン「お、おいハルヒ、やめろ」 谷口「ちょ、おまっ」 涼宮「いいじゃないちょっとぐらい! ほいっとー! へへーん!」 谷口「よ、よせよ!」 涼宮「さーて、順位はどーなのかしらねぇ? ……あ」 谷口「……」 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 15:15:44.32 ID:NxFbS8JM0 涼宮「……」 キョン「ハルヒ……?」 谷口「もういいだろ、返せよ」 バシッ 涼宮「えっと、その……」 谷口「お前は勉強もスポーツもできるし、顔もいいだろうさ」 涼宮「……」 谷口「だが、出来ない奴を馬鹿にする権利があるのかよ」 涼宮「……」 谷口「わりいなキョン、先生に呼ばれてっからもういくわ」 キョン「お、おう」 ハルヒ「……」 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:17:52.82 ID:NxFbS8JM0 ───放課後、団室 朝比奈「……うぅー、胃が痛いです〜」 キョン「大丈夫ですよ、何か文句をいってきたら、俺がガツンといってやりますから」 朝比奈「でもキョン君がそんなことしたら……」 キョン「そんなこと気にする必要ありませんよ。なあ、古泉?」 古泉「やれやれ。多少のバイトぐらいは覚悟することとしましょう。仲間のためですからね。とはいえ、涼宮さんも厳しいことは言わないと思っていますが」 朝比奈「だけど今度はどんなかっこをさせられるかと思うと……」 バタンッ 朝比奈「ヒッ」 ハルヒ「……」 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:20:02.07 ID:NxFbS8JM0 ハルヒ「……」 テクテクテク スワッ 朝比奈・キョン・古泉「……」 ハルヒ「……ハァ」 朝比奈・キョン・古泉「!!」 キョン「た、ためいきをついたぞ。これもお前のバイトの前兆じゃないか?」 古泉「いえ、今のところそういった連絡は……。涼宮さんの様子の原因について、何かご存知で?」 キョン「いや、そんなこと……あ」 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 15:22:17.14 ID:NxFbS8JM0 古泉「何か知っているようですね。話していただけますか?」 キョン「さっき期末テストの順位発表があったろ?」 朝比奈「す、涼宮さんに聞こえないようにしてくださぁい……」 キョン「わかってます。そこで、ハルヒは一位を取れなかったことを悔しがってたんだ。あいつは2位だったんだがな」 古泉「ふふ……涼宮さんらしいですね。とはいえ、まさかそれが理由だとは思っていませんよね?」 キョン「だったら今頃どなりちらしてるだろうさ。その後の話だ。あいつは俺の順位にあたってきたんだが……」 かくかくしかじか 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 15:24:24.76 ID:NxFbS8JM0 古泉「なるほど……そんなことが」 キョン「谷口の順位がどれほど悪かったかはしらんが、どうやら谷口の言葉が効いたみたいだな、今の様子からすると」 朝比奈「谷口さんというのは、キョン君の友達なんですか?」 キョン「そうです、クラスメイトなんですよ」 朝比奈「谷口さんはすごいですね、涼宮さんにそんなこと……」 キョン「はは、馬鹿ばかりする奴ですけどね」 ガタッ ハルヒ「ああああ、もう!」 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:26:32.83 ID:NxFbS8JM0 キョン「ど、どうしたんだ」 ハルヒ「あんた、まさか私が勉強なんかで人を評価するちっさいやつだと思ってないでしょうね!?」 キョン「べつにそんなこと思っちゃいないが」 ハルヒ「今回のだってゲームみたいにした方が試験勉強が楽しくなると思っただけなのよ!」 キョン「だ、だからわかってるって、そんなこと」 ハルヒ「さ、さっきあのアレにつっかかっちゃったのだって一位がとれなくて、ちょっと不機嫌になっちゃってただけで……」 キョン(名前ぐらい覚えてやれよ) ハルヒ「……決めた! 私がどれだけ器の大きな人間か、アレに見せ付けてやるわ!」 長門「……」 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:28:42.87 ID:NxFbS8JM0 キョン「ほほう、で、何をする気なんだ?」 ハルヒ「それをこれから考えるのよ。そうねぇ、何かあの男子生徒がビックリするようなのがいいわよねぇ」 キョン「なんだそれ、器を見せ付けてやるんじゃなかったのか?」 ハルヒ「そうよ! だから、勉強のことをちまちまいうしか脳のない人間じゃないっていう風に、あたしのことを見直させるようなことをしてやんのよ!」 キョン「だが、驚かせば人の価値観を変えられるってもんじゃないぞ」 ハルヒ「むむ……。それもそうね……。あんた何かいい考えないの?」 キョン「何で俺なんだ」 ハルヒ「あんたあの男子生徒と良く話してるじゃない」 キョン「そりゃあ、そうだが。んー、そーだなー……」 ハルヒ「やっぱいい! 自分で考えるから! あんたは黙ってなさい!」 キョン「……」 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:30:54.07 ID:NxFbS8JM0 ───下校中 谷口「はぁ……。職員室に呼び出されてこってりしぼられた」 谷口「一番へこんでるのが俺だってことが何故わからない……」 谷口「叱りたがる、それは教師のエゴだぜ……」 谷口「土日もほとんど勉強しなかったからな」 谷口「俺だって良い成績とりてえけど、ついついさぼっちまうんだよなぁ」 谷口「やり直せるならがっつり勉強するんだが……」 谷口「また親父に怒られるぜ……」 谷口「あの目、絶対馬鹿にしてる。なんといってもそれがいやだ……」 谷口「ったく胃がきりきりまいだぜ……」 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:33:04.60 ID:NxFbS8JM0 ───家、リビングへ ガチャッ 谷口「ただいまー、うおっ!」 谷口父「……」 谷口(な、なんで親父がこんな時間に家にいるんだよ) 谷口「お、おかえり。今日は早いんだな」 谷口父「ああ、ただいま」 谷口(なんとなく雰囲気がおかしい、か?) 谷口母「あら、帰ってたの。おかえり」 谷口「た、ただいま」 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 15:35:13.85 ID:NxFbS8JM0 谷口母「そういえば今日期末テストの結果発表だったんじゃないの?」 谷口「な、なぜそれを……」 谷口母「母親はね、子の表情からいろいろ読み取れるものなのよ。とにかく、どうだったの?」 谷口「……」 谷口母「まさか、ブ−ビー賞?」 谷口「なっ……!」 谷口母「ええっ! あんた、そんな成績とっちゃったの!」 谷口父「お前……」 谷口(ちくしょうちくしょうちくしょう……) 谷口「畜生っ!」 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:37:23.15 ID:NxFbS8JM0 ───河川敷 谷口「……」 谷口「誰も俺のことをわかってなんかくれねえんだな……」 谷口「ミスッたことなんて重々承知なのに、傷に塩を塗るようなことをしてくれやがって」 谷口「あー俺がこんなに悩んでるってのに、子供は川で遊んでるぜ……。あの頃は何も考えなくてよかったから楽だったな」 谷口「明日のことなんて気にもとめなかった。怖いものなんてなかったな」 谷口「……俺は何が怖いんだろうな。なんでこんなに毎日苦しいんだ?」 谷口「考えて、なんとかなるもんでもねーんだろうな。おれ、頭悪いし」 子供「この石をこーやって投げると、ワープするんだぜ?」 ポチャッ ポチャッ ポチャッ 子供「な、すごいだろ?」 子供「すげー!」 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:39:33.88 ID:NxFbS8JM0 谷口「ワープなんかしてねーよ、もっと目をこらせっての。必死に跳ねてるんだぜ? それ」 谷口「あー、でも俺さっきワープしたよな。カカカ、必死に自転車こいでよ!」 谷口「……でも……ワープ、か……。」 ───キョン:……跳べるんじゃないか? 跳べると、思うぞ 谷口「やりなおしてえな」 谷口「がっつり勉強して、あの掲示板にのってやりてえ」 ───涼宮:さあ、その順位票みせなさいよ! 谷口「そしたらみんなの俺を見る目が変わるだろうし」 ───谷口父:いつも口先ばかりだ。 谷口「親父だって、俺のことを……」 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:41:43.33 ID:NxFbS8JM0 谷口「……決めた、いっちょやってやろーじゃねぇか!!」 ダダダッ 谷口「うおおおおおおおおおおお」 子供「うわ、男の人が河に飛び込もうとしてる!」 子供「ほ、ほんとだ! すごい顔!」 谷口(がんばるから、帰れたらがんばるから! 俺にチャンスをくれ!) バッ 谷口「いっけぇえええええええええええ!」 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 15:43:54.00 ID:NxFbS8JM0 ブィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン テテーテレテレテレテレテレテー 谷口「ヒーーーーーハーーーーーー!」 …… ガラガラガシャッ 谷口「……っててて……」 谷口「こ、ここは? 家のリビング?」 TV「カンッケーないから、関係ないからっ」 谷口「この番組、見たことあんぞ……」 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:46:13.77 ID:NxFbS8JM0 TV「朝日で構ってもらえないからTBSでやるお!」 谷口「……もしかして……」 谷口父「……ゴホッゴホッ。おい、お前もう学校の勉強はすんだのか?」 谷口「……おおおおおお!」 谷口父「おい?」 谷口「まかせろ!」 谷口父「!?」 ダダダダダダ(階段を登る音) 谷口「俺、跳べんじゃん!!」 谷口「うおおお!やりなおしてやるぜえええ!」 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:48:25.08 ID:NxFbS8JM0 ───期末テストの上位者発表掲示板 ザワザワ キョン「国木田が2位、俺が50位、そして15位が……」 谷口「へっへーん! そう、俺様だぜ!」 キョン「まさか谷口がこんなに勉強できる奴とはな。授業中は先生からおこられてばかりだったのに」 谷口「脳ある鷹は爪を隠すってな!」 国木田「でもほんとに驚きだなぁ。まさか谷口が家で勉強してるなんてね」 谷口「WAハハハハ、まーあんまり褒めるなって!」 谷口(一度また期末を受けて、模範解答もらって、それだけ丸暗記して過去に跳んでやったぜ!) 谷口(労せずこの順位!) 谷口(うは! この力おいしすぎるぜ!) 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:50:34.76 ID:NxFbS8JM0 ハルヒ「……」 キョン「どうしたんだ?」 ハルヒ「……べつに? なんでもないわよ」 谷口「涼宮は7位か。なんで不機嫌なんだ? 十分じゃねーか」 ハルヒ「うるさい!」 ダダダダダダ 谷口「な、なんだ?」 キョン「期末前から、テストのこととなるとずっとあの調子でな。ったく、何が気に食わないんだか」 谷口「ふーん、ま、どうでもいいけどな」 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 15:52:50.14 ID:NxFbS8JM0 ───下校時 谷口「よし、テストも終わったし!カラオケでもいこーぜ!」 国木田「カラオケかぁ。うん、いいよ」 谷口「よし! キョンはどうだ?」 キョン「せっかくの団活オフの日だしな、やぶさかじゃあない」 谷口「よし、じゃあ今日は俺のおごりだぜ!」 国木田「太っ腹だね、何かあったの?」 キョン「なんだなんだ、人が変わったようじゃないか」 谷口「がっはっは! 今日はテストもよかったし機嫌がいいんだよ!」 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:55:15.14 ID:NxFbS8JM0 ───歌広にて 国木田「また後でソレはソレで♪ ちょっとしたネタに変わるって♪」 プルルルルル 谷口「はい」 店員「お時間5分前になりましたが、延長どうなさいますか?」 谷口「延長っすかぁ? それきいちゃう? 俺に?」 店員「はい?」 ブィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン テテーテレテレテレテレテレテー 谷口「ヒーーーーーハーーーーーー!」 …… 国木田「一曲目何にしようかなぁ……とりあえず"友達としてはソレが"あたりかな」 谷口「……あれだ、他人のキャラソン以外を歌ってみるのもいいんじゃねえか?」 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:57:24.80 ID:NxFbS8JM0 ───下校中 谷口「ひー、つかれたぜー!」 国木田「いきなりどーしたの? さっきまで不気味なぐらい元気だったのに」 キョン「ひどいガラガラ声だな」 谷口「WA、わばばば」 谷口(結局10時間歌ってから、金払いたくないからこの時間まで戻っちまった) キョン「テストも終わったし、カラオケでもいかないか?」 国木田「いいね、久々にキョンの美声を聞きたいし」 キョン「ほめてもなんもでないぞ」 谷口「スマン!今日はちょっと用事あってよ、さっさと家かえんねぇといけねえんだわ」 国木田「えー、つれなーい」 キョン「テストであんだけの点とっておいて、また家帰って勉強でもすんのか? お前勉強フェチなのか?」 谷口「だから謝ってんだろ? 今度なんかおごっからよ、じゃあな!」 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 15:59:35.27 ID:NxFbS8JM0 ───家の玄関 谷口(ついにこのときがきた) 谷口(毎度毎度成績の悪かった俺が、高校入っていきなり上位入賞) 谷口(親父も俺のことを見直すに違いないぜ) 谷口(……まぁ今回はちょっとせこい手使っちまったけど) 谷口(次からは自力でやるから、いいよな!) 谷口(よし!) ガチャッ ───リビング 谷口「ただいまー!」 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:01:45.38 ID:NxFbS8JM0 谷口父「……」 谷口母「あら、おかえりなさい」 谷口「今日期末テストの結果発表だったんだが、いやー最高の結果だったね!」 谷口母「あら、そういえばそういう時期ね」 谷口「そうなんだよ!」 谷口母「それにしても珍しいわね、あんたが勉強の話題をふるなんて」 谷口「いいじゃねえか!」 谷口母「ふーん? で、何位だったの?」 谷口「それがなんと……学年で15位だぜ!!」 谷口母「すごいじゃない! 遊んでばっかりだと思ってたけど、あんた頑張ってたのねー」 谷口「まぁな! 頑張らなくても出来る子なんだよ!」 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:04:01.37 ID:NxFbS8JM0 谷口父「……」 谷口(お、親父は……?) 谷口父「期末テストの結果なんてどうでもいい」 谷口「え……?」 谷口母「ちょっとあなた、いくらなんでもそれは……」 谷口父「勉強とは、テストで結果を出すということではない」 谷口「……」 谷口「べつに親父の意見なんてきいてねーよ!」 ガチャッ ダッダッダッダッ 谷口父「……ゴホッゴホッ」 71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:06:12.19 ID:NxFbS8JM0 ───部屋 谷口「……」 谷口「力抜けちまった」 谷口「あー、彼女欲しー」 谷口「勉強にうつつを抜かしてた俺がバカだったぜ」 谷口「ったく……」 谷口「あーあ……」 谷口「良い点とるのもそんなにいいもんじゃねえな」 谷口「……」 谷口「……寝よ」 72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:08:22.07 ID:NxFbS8JM0 ───翌日、朝、教室 キョン「いやー、今日も熱いな。夏真っ盛りだ」 谷口「……」 キョン「? どーしたんだ?」 谷口「え、あ、なんだ? なんか用か?」 キョン「朝っぱらからボーっとしてると昼には熟睡コースだぞ。しこりすぎて寝不足か?」 谷口「……期末の結果さ、俺よかったよな?」 キョン「そうだな。正直びっくりしたぞ。で、しこりすぎて腱鞘炎にでもなったか?」 谷口「だよな。……俺のこと、見直したりとかしちゃったりしたか?」 キョン「どーだろうな」 谷口「それはどーゆう……」 キョン「まぁ、勉強はできるやつなんだな、と思い直したよ。だが……」 谷口「だが?」 キョン「友達が勉強できるかどうかなんて、正直どうでもいいな」 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/03(水) 16:10:32.26 ID:NxFbS8JM0 谷口「……それは、そうだけどよ」 キョン「勉強なんて一つの要素でしかない、人の取り柄ってのはべつにある。そういってたのはお前だろ? 谷口「それは、そうだけどよ」 キョン「ま、世の中は下からでしか支えてやれないような奴が沢山いるのさ」 谷口「??……おいおい、それは俺が底辺の人間だってことか?」 キョン「そうはいってない。だがお前の姿に安心できる奴がいるってことだ」 谷口「つまり?」 キョン「“ああ、谷口みたいな奴もいるんだから、俺も平気だろ”みたいな」 谷口「……もうどっかいってくれ」 キョン「す、すまん」 キョン(はて、そういやいつ谷口からそんなリア充めいた言葉を聞いただろう? ……あいつからまともな言葉なんて聴いた覚えがないが) 74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:12:42.19 ID:NxFbS8JM0 ───昼休み 団室 ハルヒ「草野球大会にでるわよ!」 キョン「なんだよいきなり! 面子全然足りないじゃないか! それにお前ルールしってんのか?」 ハルヒ「るっさいわね! でるったらでるの! いい? これは団長命令なんだからね!」 朝比奈「……」 ハルヒ「7月だからかしら? なーんだか気持ちがそわそわするのよねぇ。大事なことを忘れてるような気がしちゃって、テストも全然手につかなかったのよ」 キョン「そういやお前1位とるとかいってたくせに、全然だめだったじゃないか」 ハルヒ「あー、そんな話もあったわね。でもそんなのもうどーでもいいのよ。テスト勉強を頑張る要素の一部になった、それで十分じゃない。結果なんてどうでもいいの」 キョン「ほう……」 朝比奈「ほっ……」 古泉「ふむ……」 長門「……」 75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:14:59.52 ID:NxFbS8JM0 ハルヒ「そんなこんなでうやむやしてるのを、パーッと吹き飛ばすならやっぱりスポーツよね!」 キョン「お前にしちゃあまともな意見だな」 ハルヒ「まぁね。奇をてらってばかりでは奇じゃなくなっちゃうもの。それじゃ不思議も不思議とわかんなくなっちゃうし」 キョン「なんかの言葉遊びか?」 ハルヒ「いちいちうるさい! とにかく! 草野球大会にでるんだからね!!」 キョン「百歩譲って出るとしよう。面子はどうするんだ?」 ハルヒ「集めればいいじゃない」 キョン「誰が?」 ハルヒ「集めなさい」 キョン「おれかよ! なんでおれだよ!」 ハルヒ「だんちょーめいれい」 キョン「またかよっ! お手軽すぎだろ! マッククーポンじゃないんだぞ!」 76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:17:09.82 ID:NxFbS8JM0 ハルヒ「黙りなさい。じゃあ私は昼休み中にしないといけないことあるから、また教室でね!」 バタンッ キョン「カースト制の一番下の気持ちがわかってきたぜ」 朝比奈「私も友達を誘ってみますね」 古泉「おや、多少乗り気のようですね? 野球はお得意ですか?」 朝比奈「いえ、私の時代ではもう教科書にすら載ってないスポーツですから、やったことはないんです。でも……」 キョン(まぁ、マイナースポーツだし、仕方ないだろうな) 朝比奈「でも勉強のことで、何も言われなかったのでうれしかったんです。そのお礼じゃないですけど、協力したいな、って」 古泉「野球がどんなスポーツか知ってます?」 朝比奈「いえ。でも、子供でもやれるんでしょう? なら私にも……」 古泉「野球というのはですね……かくかくしかじか」 朝比奈「100km近いボールを至近距離で打つんですかぁ?……え、それはないと思います……」 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:19:41.68 ID:NxFbS8JM0 朝比奈「私にできる訳ないですよ〜!」 古泉「まぁまぁ、別に涼宮さんも朝比奈さんがヒットばかり打つことを期待してはいないと思いますよ。ただ、彼女はSOS団で何か大会に出たいのでしょう」 キョン「そーいや6月中に、“台風のやつのせいで草野球大会が延期されちゃったのよ! 腹立つわー!”とか言ってたな。そのしわ寄せか」 朝比奈「……はぁ、意思は固いみたいですねぇ……」 キョン「七月か……もうすぐ夏休みですね。その前の最後の難関だと思って、がんばりましょう」 朝比奈「どーせ夏休みだって涼宮さんに振り回されるに決まってますよ……」 キョン「……ひ、否定はできませんね」 古泉「ふふふ、退屈しないですみそうではありませんか。高校生活の夏休みなんて忙しいぐらいがちょうどいいですよ」 朝比奈「……じゃあ私、教室に戻りますね」 キョン「あ、じゃあまた放課後!」 朝比奈「はい……」 78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:21:49.96 ID:NxFbS8JM0 ───放課後 キョン「まさかの千本ノック。みてるだけで疲れたわ」 キョン「と、面子集めないとな。どーしたものか」 キョン「谷口と国木田はきっとおkしてくれるだろ」 キョン「谷口といえば、朝、なんか様子がおかしかったな」 キョン「スポーツやりゃあ気が晴れるとハルヒですら言ってるんだ、谷口にも悪影響はあるまい」 キョン「早速電話かけるとするか」 ピピピピピッ prrrrr ピッ 谷口「どうした?」 79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:24:01.20 ID:NxFbS8JM0 キョン「よう。いきなりなんだが、土曜暇か?」 谷口「特に用事はねえけど、なんかあんのか?」 キョン「草野球大会に涼宮が出たいっていいだして、その面子を探してるんだ。出てくれないか?」 谷口「なーんで俺がそんなこと」 キョン「何やら落ち込んでるようだったが、いい気分転換になると思うぞ」 谷口「野球なんかやったって面白くもなんともねーよ。授業でしかやったことないぜ」 キョン「……朝比奈さんのコスチューム姿みたくないか?」 谷口「……」 キョン「しかも応援してくれるんだぞ? どうだ?」 谷口「ったくしかたないねーな! そこまでいうならいってやるよ!」 キョン「よし! じゃあまた詳しいことはメールする。土曜日あけといてくれ」 谷口「ラージャ」 キョン(ちょろい。後は国木田と……妹でいいか) 80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:26:20.97 ID:NxFbS8JM0 ───大会当日 谷口「行く、っつったのはいいもののな、ずぶの素人がただ応援してもらうってのも気がひけるぜ」 谷口「こうなりゃ一発、かっこいいところ見せ付けてやんないとな」 谷口「たかが草野球大会、よくボール見て思いっきりバット振りゃなんとでもなるだろ!」 谷口「そんで女子の黄色い声を浴びながらホームベースを踏む俺……」 谷口「……絵になる! こいつは絵になるぜ! 才能だけで打ちました! みたいな!」 谷口「ここはおれの力の出番だな! コースみてから時間まきもどせば……ウヒヒ」 谷口「おれの人生バラ街道が始まりを告げそうだ! 待ってろよギャラリー達!」 谷口「さてさて、そうして俺は大会会場にやってきましたよっと」 81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:28:28.76 ID:NxFbS8JM0 谷口「お、いたいた。おーい、キョン!」 キョン「ああ、谷口か。よくきてくれたな、こっちだ」 谷口「わざわざ土曜だってのに来てやったんだ、感謝しろよ?」 キョン「わかってるわかってる。俺達は第一試合だからもうみんなベンチの方いってるんだ。急いでくれ」 谷口「あいよ」 ───ベンチ付近 ハルヒ「キョン? それで全員?」 キョン「ああ。そうだ」 ハルヒ「……あんた、どっかで……」 谷口「ああ?」 キョン「何言ってんだ? クラスメイトだろうが」 ハルヒ「まぁいいわ、今日はよろしくね」 谷口「お、おう」 82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:30:38.59 ID:NxFbS8JM0 鶴屋「君がキョン君かい? へー、ふーん」 キョン「あ、あの……」 谷口「谷口です! 今日はホントは大事な用があったんですけど、親友の頼みだから断れなくって」 鶴屋「!! 君が谷口君? へぇー、ふーん、あれぇ〜……きいてた話とちょっと違うにょろ……」 谷口「ど、どうかしたんですか?」 鶴屋「え、あはは、こっちの話っさ! よろしく、谷口君っ!」 谷口「こちらこそよろしくおねがいしますっ!」 谷口(なんやしらんけど脈ありげぞこれー!) 83 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 16:40:11.38 ID:7LWv0Tpp0 さるさん規制うけましたので、携帯から投下します。 谷口「よろしければメアドとか交換しま……」 鶴屋「あ、いたいた! おーい、みくるー!」 朝比奈「こんなところでなにしてるの? ……えーと」 鶴屋「谷口君っさー! ほら、みくるの言ってた……」 朝比奈「!!ちょ、いや、それは、そうじゃなくてっ」 谷口「どうも、谷口です!」 朝比奈「あの、別に裏で噂とかしてた訳じゃなくてですねっ」 鶴屋「なーにいってるんだいみるく! とりあえず自己紹介にょろ」 朝比奈「そ、そうですた、朝比奈みくるです、よろしくおねがいしますっ」 84 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 16:41:47.82 ID:7LWv0Tpp0 鶴屋「てんぱってるみくるもかわいーにょろ! あははは」 朝比奈「うー……」 谷口(朝比奈さんか……。キョンはどんだけ恵まれた環境にいるんだ? ってかさっき噂がどうとか……) 谷口「さっき俺の噂がどうのっていってましたけど、それ……」 朝比奈「え、ええとですね」チラッ 谷口「まさかキョンが裏でなんかいってるとか!? ぜ、全部嘘ですからね!? 俺は校則をしっかり守る健康優良不良少年を目指してますから!」 朝比奈「わ、わかりました。えっと、陰口とかじゃなくて、ただいつもキョン君と一緒にいるから、いつも一緒にいるなぁ〜、みたいなことを鶴屋さんと話してたんですよ」 谷口「いや、最近はキョンが涼宮のやつに振り回されてるみたいで全然つるんでないですよ。と、朝比奈さんもそうですよね?」 朝比奈「そうなんです、っていや、えと、振り回されてるというか……好きでここにいるんですよ!」 谷口「またまたー。あいつの奇人ぶりは中学のときから有名でしたから。苦労してんのよくわかりますよ、うん」 朝比奈「いや、えーと、その」 鶴屋「なーにやってんだいっ! みくるは二年生にょろ? 敬語なんてつかってたら谷口君が困っちゃうじゃないか。ねぇ?」 谷口「そーですね!(ちょっと態度でかくなってたか? 鶴屋さんけっこう上下関係に厳しいのかもしれん)」 85 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:44:14.14 ID:7LWv0Tpp0 朝比奈「わ、わかりました。気をつけます」 鶴屋「それから谷口君? ミクルが裏で話してたのはキョン君と一緒にいる子ってだけじゃないっさ!」 谷口「え、ほかになんていってたんですか??」 朝比奈「いや、ちょ、鶴屋さん、それは!!」 鶴屋「へへーん、気になる気になるいってたにょろ!なぜなら……」 朝比奈「やめてくださーい!!」グググッ 鶴屋「ぐ、ぐ、わ、わかったから首締めるのやめ……て……」 朝比奈「……口に気をつけてください」 鶴屋「ゼェ、ゼェ、じょ、冗談が過ぎたっさ……」 86 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:45:52.41 ID:7LWv0Tpp0 谷口「え、ええとー」 涼宮「あんたたちなにやってんの! もう試合開始よ!? さっさときなさい!」 朝比奈「は、はい、今行きますっ」 ───プレイボール前 涼宮「どまんなかストレートを空振りなんかしたら後でどーなるかわかってるわよねぇ? 試合するからには絶対勝つのよ! 使えない奴は即死刑だから!」 キョン「相手はカミガハラパイレーツ、優勝候補筆頭だそうじゃないか」 涼宮「っるっさいわねぇ。優勝のためにはどっちにしろ越えなきゃいけない壁じゃない。つべこべいわずに打つ! いいわね?」 キョン「へいへい。ったく簡単に言ってくれるもんだぜ」 87 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:47:41.51 ID:7LWv0Tpp0 古泉「やれやれ、打順は予想通りといいますか、貴方が4番。これは負けフラグですかね」 キョン「……言い返せないがな、どっちにしろ俺の妹が入ってるんだ。間違っても勝つことはないだろ」 古泉「さて……どうでしょうか。我々は宇宙人超能力者未来人、そして神を揃えてますからね」 キョン「お前の超能力やミクルさんの力が野球に役立つとは思えないが、長門はやっかいだな。釘さしとかねば」 古泉「貴方は負けたい、そうおっしゃるのですか? それはすなわち、僕のバイトが48時間連続シフトになるという意味ですが」 キョン「シフト代わってもらえないお前が悪い。もっとバイト先の仲間と仲良くするんだな」 古泉「無茶をおっしゃいますね。求人を出せないもので万年人手不足なんですよ」 キョン「あっそ。不幸自慢か?」 古泉「困ったものです」 88 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:49:52.52 ID:7LWv0Tpp0 朝比奈「うー、胃がキリキリしてデビル痛いですぅ」 キョン「大丈夫ですよ、朝比奈さんはボールが来たらよければいいだけですから」 朝比奈「そしたら涼宮さんがまた……」 キョン「そんなコトあったら俺がガツンと言ってやりますから、安心して下さい」 朝比奈「この前も同じ様なコト言ってましたけど、結局守ってくれなかったよね……」 キョン「……」 古泉「まぁまぁ、そんなに深刻にことを構える必要はありません。我々には長門さんがいます。いざとなれば彼女の力を借りれば、試合には十分勝てると思いますよ」 朝比奈「なんで私が野球なんか……。でも私には人数合わせぐらいしかできませんから……がんばりますね」 89 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:51:34.98 ID:7LWv0Tpp0 ───プレイボール ハルヒ「いい!? 見てなさいよ? 一発でかいのお見舞いしてくるから!」 キョン「へいへい」 古泉「さっきの朝比奈さんのことですが……」 キョン「顔近いぞ、なんだ」 古泉「軽くメンヘラ入ってきているようですね」 キョン「ひどいこと言うんじゃない。……しかしわからないでもないな。どうやらSOS団は朝比奈さんにとって付き合いで入ってる義務みたいな存在らしい」 古泉「朝比奈さんにとってはまさしくそのままな訳ですが。つまり、SOS団は彼女にとって職場であるわけですから」 キョン「なるほどな。しかしそれは俺にとっちゃ少し嫌な捉え方だがね。朝比奈さんがいやいやコーヒーを入れてくれてると思うと、申し訳なくなる」 90 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:53:58.69 ID:7LWv0Tpp0 古泉「確かに。ですが、やや幼い考え方とはいえ彼女の気持ちもわからないではないんですよ」 キョン「なにがだ」 古泉「SOS団に参加したくない、というその気持ちですよ。もとはといえば、朝比奈さんはどうやら涼宮さんとは接触する予定はなかったようですし、その言動からも未来人の核心からは遠い位置にいることがわかります」 キョン「末端だ、と言っていたような気がするな」 古泉「自分が何をしているかもよくわからない、ただ上の命令にしたがっているだけ」 古泉「そのような状態で、もしかしたら静かなれど一人の女子高生として過ごせたかもしれなかったその日々を、緊張の中でメイド服を着ていなければならなくなった。これは悲劇といっても過言ではないでしょう」 キョン「なるほどな」 古泉「僕も中学時代はずっとそうでしたから、気持ちはよくわかるんです。これでも三年前から比べたらずいぶん昇進したんですよ」 キョン「お前のことはどうでもいい」 古泉「ふふ、若いというのは一つの特権です。それが許されないというのは結構きついものなんですよ」 キョン「時間、とかか?」 キョン「それもあります。ですが他の何よりも……いえ、これ以上は邪推でしょう。本人に確認の取りようもないでしょうから」 91 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 16:56:55.56 ID:7LWv0Tpp0 キョン「??」 カキーン キョン「お、ハルヒのやつホントに打ったぞ」 ハルヒ「ヘヘーン、どう? ってちょっとキョン!! 今のちゃんと見てたでしょうね!?」 キョン「見てた見てた。ナイスバッティーン」 ハルヒ「そういうのは打ってからすぐに言いなさいよ! っていうかベンチの奥に座ってないでちゃんと前に出てきて応援しなさいっ!」 キョン「言われなくてもそうするよ。次は朝比奈さんだしな」 ハルヒ「……!!」 prrrrr 古泉「おっと、携帯が。まったく、時々あなたを後ろから刺したくなりますよ」 キョン「せめてナイフにしとけ。おかしなもんは刺されたくないからな」 92 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 17:01:09.20 ID:ThzEBh7B0 谷口・キョン「朝比奈さーん! がんばってくださーい!!」 谷口・キョン「ピッチャーびびってる、ヘイヘイヘイ!」 朝比奈三振 ハルヒ「タイム。コラー!! 何やってんのみくるちゃん!!」 朝比奈「ひゃぐっ!」 谷口「おいおい、あんな球打てる訳ないだろ! 朝比奈さん責めるのはお角違いってやつだぜ!」 ハルヒ「じゃあピッチャーを責めればいいわけ? おいピッチャーちょっとは空気よみなさいよ!」 谷口「……それもちょっと違うかもしれないけどよ」 93 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 17:04:15.75 ID:ThzEBh7B0 ハルヒ「何あんた、部外者なのに口出ししないでよ。これはSOS団の問題なのっ!」 谷口「あ、あのなぁ。ミニマム級一回戦の選手がヘビー級のチャンピオンと試合させられてるのを見れば観客だってだまっちゃいないぜ。ましてや俺はチームメート! そりゃ文句の一つだってでらーな」 ハルヒ「……だまりなさい」 谷口「ヒッ!」 ハルヒ「数合わせがチームメートとは笑わせるわね」 キョン「ま、まぁまぁ。とにかくまだ回の途中だ、ハルヒはランナーなんだから塁に戻ってくれ。没収試合になるのは嫌だろ」 ハルヒ「フンッ」 谷口「……フゥー、アイツの睨みは凄味があるな・・・・・・思わずちびるところだったぜ」 朝比奈「……」 95 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:06:50.95 ID:ThzEBh7B0 キョン「次、こっちの打席何人目だっけ? 長門「多分三人目。そしてそれは私」 キョン「おう、応援任せとけ」 ───ベンチ 谷口「あんな球誰も打てないですって、気にすることないっすよ」 朝比奈「そ、そうですかぁ?」 キョン「そうですとも。あれはいったい何kmぐらいなんですかね」 鶴屋「いやー、130km近く出てそうにょろー。これは歯ごたえがあるっさ」 デデーン、ナガモン、アウトー 長門「……ぽかぽか」 キョン「エヴァ破ってアスカのインパクト強すぎてレイのことが全然思い出せんな」 96 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:08:33.58 ID:ThzEBh7B0 ハルヒ「ジー……」 キョン、ストラックアウトー キョン「……ハルヒよ、そんな目で見られても打てないものは打てんのだ」 ハルヒ「ホンット使えないわね、あんた。四番の自覚あんの? 今の球ぐらいバックスクリーンに打ち返すぐらいしなさいよ」 キョン「阿弥陀様に選ばれた四番って自覚ならあるがな。っていうか、当てるのも難しいのにお前どんだけ期待してんだよおい」 ハルヒ「まぁいいわ。ほら、守備よ。さっさと守備位置つきなさい」 キョン「へいへい」 谷口(やっぱこの二人できてるんだな。薄々気づいてたけどよ) 谷口(……うらやましいことで) 97 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:10:20.66 ID:ThzEBh7B0 ─── 一回裏 上ヶ原パイレーツの攻撃 ハルヒ「しまっていこー!」 ストラックアウトー 谷口「すげー球投げるな。こりゃ守備も楽できそうだ」 ストラックアウトー ハルヒ「ふん、あたしの力にかかればこんなもんよ! そこのショートとは器が違うんだから」 谷口「いちいちうるせえな! 守備範囲には自信あるっての! 一本よこせよ!」 古泉「彼がいうと年齢層に聞こえますね」 ハルヒ「言うじゃないの。ま、あんたのところにボールはいかないから見せ場なんてないでしょうけど」 98 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:11:27.66 ID:ThzEBh7B0 ハルヒ「そりゃっ」 カキーン ホームラン 谷口「ギャハハハッハハハハハ! 確かにありゃ俺にはとれねーわ! 俺の負けだ!」 ハルヒ「っるっさいわねぇ!! あーホント腹立つ。ちょっとバッター! 打たせてあげるからコイツにライナーぶつけなさいよ!」 谷口「お前じゃ、俺どころかバックスクリーンに直撃させられるだろうぜ」 ハルヒ「言ってくれるじゃないの。じゃあアウト取れたら金属バットであんたのバットへし折ってやるから覚悟しときなさいよ!!」 審判「さっきから口が汚いよ! これ以上そんなんだと没収試合にするからね!!」 ハルヒ「……」 prrrrr 古泉「……そう……斎藤君と鈴木君が……。彼等は勇敢でした。遺族の方にはできる限りのことをしてあげてください」ピッ 古泉「フゥ。……谷口さん……おいたが過ぎますね」 99 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:13:47.41 ID:NxFbS8JM0 ハルヒ「さあ締まっていくわよー!!」 古泉「まだ一点許しただけですし、落ち着いていきましょう。さっきのはラッキーホームランです、次はありませんよ」 ハルヒ「ふふん、ビギナーズラックが二発続いたらたまらないものね」 キョン「ビギナーズラックが続かないと俺らに勝ち目はないけどな」 ハルヒ「あんたはいちいちプロ精神が足りないのよ。ビギナーズラックなんていらないわ! 実力でもぎ取ってやるの! タイトル取れないからって他のチームに移籍したい、とか言いだしたら許さないんだから」 キョン「へいへい」 100 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:15:57.53 ID:3ddahPeo0 一回裏 上ヶ原パイレーツがハルヒのストレートのタイミングがつかみきれず、結局一点に抑えることに成功する。 二回表 妹古泉国木田が簡単に凡退する。 そして二回裏の上ヶ原パイレーツの攻撃を迎える。まともな守備のいない外野狙いのフライで得点を重ねる上ヶ原パイレーツ。 キョン「走れ!……妹!……走れ……そうだ、いいぞ……妹……」 妹「もう飽きたー、キョン君、帰ってもいいー?」」 キョン「しっかりしろ!君は強い女の子じゃないか!」 谷口(ツーアウトとはいえ、外野は長門とキョン妹と……朝比奈さんか。ここまで外野フライで5点とられた、そろそろキョン妹もストレスが限界に達してるようだ……) 101 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:17:19.98 ID:3ddahPeo0 ハルヒ「チッ、外野陣が頼りなすぎ! 防御力が紙すぎるわ。もう少しなんとかならないかしら……いえ、言い直しましょう。なんとかならないなら死ね、と」 キョン「いいすぎだろ」 ハルヒ「みくるちゃん? いまどき草食系女子なんて流行らないの、どんなヒット性のボールでもがっついていきなさい!」 朝比奈「で、でもぉ」 ハルヒ「それで後ろに抜けちゃったなら許してあげるけど、無難なことしようとしてトチったりしたらメイド服で逆立ちしながら町内練り歩く刑だからね!! オーバー?」 朝比奈「……オーバー……」 102 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:19:03.47 ID:3ddahPeo0 実況「フライがまた高々と打ち上がったぁあああ! 朝比奈みくるの頭上からゆっくりとしかしg=GM/R2乗*r^の重力加速度の公式にしたがって間違いなくスピードを増しながら落ちてくる!!」 ハルヒ「さあみくるちゃん! 今こそその真価を見せるときよ! 脱皮しなさい脱皮! なんでもいいから脱いで!」 キョン「なんかナマナマしいからやめてくれ」 朝比奈「よ、よーし……やってみますね」 谷口(あんなフライ……俺も取れないぜ……) 朝比奈「いや、これ、その、あの、あの、えと、あの、その、これ、その、えと、あの、やっぱり、無理じゃ……」(この間3秒) ボカッ…… 朝比奈「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ」ガクッ ブィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン テテーテレテレテレテレテレテー 谷口「グロいよ! グロすぎるよ今の絵づら!!!!」 ……。 103 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:20:41.73 ID:3ddahPeo0 ハルヒ「メイド服で逆立ちしながら町内練り歩く刑だからね!! オーバー?」 谷口「はっ!! え?」 朝比奈「……オーバー……」 谷口(あ、朝比奈さん、無事だったのか……? いや、そうか、あまりにトラウマ的な絵面だったもんでつい時を跳んじまったのか……) 谷口(……ってぼーっとしてる時間はないんじゃまいか!? 助けねぇと!!!) ダダダッ キョン「な、おい、谷口、お前どこいくんだ!」 実況「フライがまた高々と打ち上がったああああ……」 ダダダダ 朝比奈「よ、よーし、やってみますね!」 104 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 17:21:09.25 ID:NxFbS8JM0 谷口(ヤベェ、間に合うか?? 間に合うのか??) 谷口(ボールは朝比奈さんの眉間に直撃した……つまりそこをグローブで守れば!) ダダダダ 朝比奈「……いや、これ、その、あの、あの、えと、あの、その」 谷口「……間に合ってくれ!!!」 ダダダダ 朝比奈「これ、その、えと、あの」 谷口「間に合え!!!」 ダダダダ 朝比奈「やっぱり、無理じゃ……」 谷口「うおぉおおっ!!!」 ダッ   ドシン 「……アウトー!!」 105 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:22:22.29 ID:3ddahPeo0 朝比奈「……あ」 谷口「ふぃー、あぶねー、間に合ってよかったっす」 谷口(やっべ、思いっきり頭打った……。ダイビングキャッチは素人がすると悲惨なことになるな……) 朝比奈「……」キュウ 谷口「……?」 キョン「ナイスキャッチだ! 谷口! ってかよくショートからここまで走ったな!」 谷口「お、おう、それより朝比奈さんが……」 キョン「……え? あ、気絶してらっしゃる。あまりの恐怖に耐えられなかったみたいだな」ヨッコラセックス 谷口(な、朝比奈さんを背負うなんてなんてうらやましい!) 106 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:24:17.28 ID:3ddahPeo0 ハルヒ「ちょっと、キョン!?」 キョン「負傷退場だ」 ハルヒ「見りゃわかるわよ! 大丈夫なの? けがはしてない?」 キョン「ああ。谷口のおかげでな」 ハルヒ「そう、よかった……」 谷口(大事なところでは団員思いなんだな、コイツ) キョン「それより、谷口に何か言うことがあるんじゃないか?」 ハルヒ「え?」 107 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:25:01.16 ID:NxFbS8JM0 キョン「相手が外野狙いになってたのは明らかだった。実際レフトとセンターにぼてぼてのフライでヒットにされてたからな」 ハルヒ「それが何よ。あたしはヒット性のボールは打たせなかったわよ? 記録はエラーじゃない!」 キョン「それでもだ。お前が無理を言って集めたメンバーで、SOS団の団員とは言え朝比奈さんは大変な目に会うところだったんだぞ?」 ハルヒ「そ、それは……」 キョン「まぁ、運良く大惨事は避けられたがな。お前は誰かにお礼を言わないといけないんじゃないか?」 ハルヒ「……」 谷口「キョ、キョンよう、なにも起きずに済んだんだ、ラッキーだったと思ってよ、次気をつければそれでいーんじゃねーか?」 キョン「……ふぅ。じゃあ俺は運営のとこで朝比奈さんを休ませてもらってくるから」 ハルヒ「……」 谷口(に、睨んでらっしゃる!!) 109 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:26:57.14 ID:3ddahPeo0 ハルヒ「……」 谷口「ええとー……」 ハルヒ「……ああ、もう!! とにかく! ありがとね!」 谷口「え、あ、おう」 谷口(何がとにかくなのかわかんないが、涼宮から礼を言われる日が来るとは思いもよらなかったぜ) ハルヒ「なんかアンタ気に食わないのよねぇ。前に何かあたしにつっかかってきたことない?」 谷口「そ、そんなことあったか?? 全然覚えてないが」 谷口(試験の発表の時は時間を跳ぶ前のことだから、こいつには関係ないハズだしな) ハルヒ「ふーん、なら生理的に受け付けないだけかしら?」 谷口(さっきの礼の言葉より心に残る一言だぜ……) 110 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:27:49.73 ID:3ddahPeo0 結局、朝比奈さんは運営につく前に目を覚まし、守備に戻った。 キョンは朝比奈さんを止めたが、閉鎖空間がどーの、とかいう古泉の言葉に渋々頷いて、試合は再開された。 谷口(閉鎖空間? SOS団の合言葉かなんかなのか? なんか疎外感あるぜ) そして3回表の攻撃でファーストバッター鶴屋さんがアウトになり、谷口がバッターボックスに入った時に事は起こった。 朝比奈(リアリーダーver)「が、がんばってくださーい!」 谷口「ま、任せといてください!!!」 111 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:28:10.70 ID:NxFbS8JM0 谷口(うひょー、やべえ、あれはやべええ!! 下手すりゃバッターボックスでテント張るハメになりかねねえぜ!!) 谷口(あんまり見ないようにしねぇと……) ハルヒ「ちょっとあんた! 何もじもじしてんのよ! みくるちゃんのチアリーダー姿おがんでるんだから打たなかったら罰金だからね!」 谷口「おーし、絶対打ってやるぜっ!」 谷口(おれがリアリーダーに応援された試しがあっただろうか? いや、ない! 今俺人生の絶頂期! 打たない手はない嘘ではない!) 112 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:30:24.59 ID:3ddahPeo0 谷口「よっしゃ、こい!」 バンッ   ストラーイク 谷口(は、はええええ。こええええええ!!) ハルヒ「ちょっと、何地面にへたりこんでんのよ!」 谷口「む、無理……」 ハルヒ「あんたホントにヘタれね! みくるちゃんもなんか言ってやんなさいよ!」 朝比奈「え、えーと。や、やーい、へたれー」 キョン「なんとっ!!??」 ハルヒ「アハハハ! やーい、へたれー! これからあんたのことへたれって呼んでやるから!」 キョン(もう応援でもなんでもない、ただの罵詈雑言になってる……。しかし朝比奈さんがへたれなんて言うとはね……) 113 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:31:28.48 ID:NxFbS8JM0 谷口(あの朝比奈さんに……へたれ言われた……) 谷口「み、みてて下さい! 絶対次は打ちますんで!」 ハルヒ「アンタが出塁するにはデッドボールぐらいしかないわ! ほら、もっとベースに覆いかぶりなさいよ!」 谷口「うるせえ! お前になんか言ってねえんだよ!」 ハルヒ「へたれが何言ってもこっちまでは聞こえません。あーあー(耳をふさぐポーズ)」 谷口(こうなりゃ能力使ってでも打ってやる!!) 114 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:32:18.61 ID:3ddahPeo0 谷口(となると、今回は球筋だけを確認するのが必要だ。なるべくベースよらねぇと……) ハルヒ「ちょっと、ホントにデッドボール狙う気じゃないでしょうね?」 谷口「……」 ハルヒ「ねえ!」 谷口「うるせえ、ちょっと黙ってろよ!」 ハルヒ「……チッ」 ピッチャー振りかぶって   投げた! 谷口(ベースのどこを通るか、自分の体のどれぐらいの高さを通るか覚えるんだ!!) 115 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:34:34.82 ID:NxFbS8JM0 バシッ  ストラック ハルヒ「プハハ! また尻もちなんて学習能力まったくないのね! 猿? いいえ、へたれです。せめてバットぐらい振りなさいよ!」 朝比奈「……クスクス」 谷口(ちくしょう、朝比奈さんにまで笑われてる……) キョン「古泉、朝比奈さんのあんな笑顔、見たことあるか?」 古泉「いいえ。言ったでしょう? SOS団は仕事場ですから、僕らがいやされている笑顔は営業スマイルみたいなものです。今のように笑いをこらえきれない、といった表情は僕の記憶にはありませんね」 キョン「それに……」 古泉「ええ。まさかへたれ等という言葉が朝比奈さんの口から伺えるとは思ってもみませんでした」 キョン「……」 116 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:36:15.81 ID:kS6L35lh0 谷口「よっしゃ! コースは覚えた! 絶対打ってやるぜ!」 ブンッ ストラック アウトー ハルヒ「ダッハハハハ、やーい、へたれキングー!」 ブィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン テテーテレテレテレテレテレテー 谷口「つ、次こそは!」 カキン バシッ アウトー ハルヒ「ダッハハハハ、やーい、へたれキングー!」 ブィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン テテーテレテレテレテレテレテー 谷口「次こそはああああ!!!」 ハルヒ「ダッハハハハ、やーい、へたれキングー!」 117 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:36:44.33 ID:NxFbS8JM0 谷口「はあ、はあ」 ハルヒ「あんた、打つ前からなんでそんなに疲れてんの?」 谷口「う、うるせえ。お前こそそんだけ笑っててよくつかれねえな」 ハルヒ「?」 谷口(これで12回目のバッターボックス。今度こそ涼宮を笑わせねえ……) ピッチャー、投げた。 谷口「うおおおおお!!」 カキン ヒュー ポテン セーフ!! 谷口「いいいよっしゃあああ!!」 118 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:37:36.74 ID:kS6L35lh0 ハルヒ「ふーん」 谷口「どーだ! 出塁したやったぜ! この俺の雄姿! さながらジャングルの王者たーちゃんだぜ!」 ハルヒ「しょっぼいポテンヒットだったけどね」 谷口「うるせえ!おまえの評価なんてどうでもいいんだよ! 朝比奈さん、出塁しました!」 朝比奈「わ、わー。すごいなー」 谷口「……」 谷口(からぶった時の方がうれしそうなのって、どーゆうことだよ……) 119 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 17:38:46.11 ID:NxFbS8JM0  ハルヒの三塁打でおれは塁にかえった。しかし結局朝比奈さんがアウトになり、三回を終える。  その裏、ぼこぼこにやられる。  四回表を迎え、1−9。 谷口(こりゃ勝ち目ねえだろ。この回の裏で終わりだな、こりゃ) 谷口(なんか古泉と長門が話してる? 涼宮の機嫌取りの話か? もう爆発しそうだもんな) 谷口(しかし長門かわいいな。かわいい。うん。お人形さんみたいだぜ。しょーじきたまらん) 谷口(はぁはぁ、長門、かわいい、長門……ってホームラン打ちやがった!!!) 120 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:40:48.19 ID:kS6L35lh0 谷口(結局よくわからんけど俺もホームランになった……。訳がわからん……。夢でもみてんのか?) 谷口(でも俺の力もそれを言ったら……案外世界って不思議でいっぱいなのかも……) 谷口(なんかSOS団に……いや、何言ってんだ。正常なライフ、これ大事) アウトー チェンジッ 谷口(12−9……。逆転か。でも試合時間の制限で、この守備が最後か) 谷口(……。) 121 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:41:58.39 ID:NxFbS8JM0 谷口(そして訳のわからない魔球使って、そんでアウトか。なんだそれ) 谷口(結局勝っちまった。一体……どういうことだぜ?) 古泉「そうだ、谷口さん」 谷口「え、あ、おう?」 古泉「これから僕は私用でこの場を離れなければなりません。すると試合の人数が足りなくなるため、つい今二回戦辞退を申し込んできたところなんです」 谷口「つまり、もう帰ってもいいってことか?」 古泉「ええ、一応そういうことになりますね」 谷口(さて、家帰って……っと今日は休日だから親父が家にいるのか……。……漫喫でもいくかな……) 古泉「ですが、よろしければSOS団の打ち上げに参加しませんか?」 124 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:44:41.49 ID:kS6L35lh0 谷口「え?」 朝比奈「……!」 ハルヒ「ちょっと! 古泉君何言ってるのよ! 部外者が参加する打ち上げなんてありえないわ!」 古泉「しかし、女子三人に囲まれて男子が一人では、彼も流石に肩身が狭いのではないでしょうか。ねぇ?」 キョン「別に俺は……っとなんだ、顔近いぞ!」 古泉「ボソリ」 キョン「……なるほどね。ったく、仕方ない」 谷口(何を……) キョン「おいハルヒ、谷口の参加を許可してくれ」 谷口「!!」 125 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:45:34.26 ID:NxFbS8JM0 ハルヒ「キョンまで何言い出すのよ! まさか男がいないと楽しくないなんてことじゃないでしょうね? あんたホモだったの?」 キョン「ちっがーう! 四月の上旬は谷口や国木田と遊ぶ時間があったが、今はSOS団に時間をつぶされておちおちゲーセンに寄ることもできんのだ。せっかくこうして一緒にいるんだし、打ち上げに参加するぐらいいいだろ」 ハルヒ「……ちっ。仕方ないわね。へたれの参加を許可します。あんた、感謝しなさいよ」 谷口「別に頼んでなんか……」 キョン「よかったよかった。数は多い方が楽しいし、朝比奈さんもうれしいですよね?」 朝比奈「え、え、え、ええ」 谷口「行きます! 是非行かせてください!」 ハルヒ「……まぁ、いっか」 126 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:47:31.46 ID:kS6L35lh0 ───カラオケ ハルヒ「タイムウェイツフォーノーワーン♪」 谷口「しかしどーゆー気だ? 俺をSOS団の打ち上げに誘うなんてよ」 キョン「ん? ああ、野球大会に誘ったのは俺だし、何の礼もなしに帰らせるのもなんだろ」 谷口「ってことはおごってくれんのか?」 キョン「おう。ま、どっちにしろ全部俺の払いになるんだ。一人増えようが大した痛手でもないさ」 谷口「そうなのか。お前も苦労してんな」 キョン「まぁな」 谷口「しかしバイトもしてねーのによくもつな」 キョン「お年玉貯金だ。高校入るまで特に金使うこともなかったしな」 谷口「ふぅーん。あーゆーのってゲームボーイとか高いの買うのに使うもんだと思ってたぜ。ま、なんでもいいけどよ。ちょっとトイレ行ってくるわ」 127 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:49:19.36 ID:kS6L35lh0 スッ フゥー 谷口「ふぃー。みんなの前で吸う訳にもいかんしな」 谷口「スポーツの後の一服、これ大事」 スッ フゥー 谷口「……しかもアウェイ感半端じゃないから部屋にはいづらいぜ。サークルって怖いのね、内輪ネタとかで盛り上がりやがるし」 谷口「この前の不思議探索の時のアレやりなさいよっ!キョンッ! いや、やっぱやんなくていいわ。ギャハハハハ」(ハルヒの物まね) 谷口「うんこっ!ちんこっ! でもそんなに意識してやってるようにも見えんし、おそらく素で俺の存在忘れてるんだろうな」 スッ フゥー 谷口「長門は黙ってるだけ、朝比奈さんは振り回されてばかり。キョンは何やらハルヒに飴と鞭。めんどくさそうなサークルだな、俺はゴメンだね」 128 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:50:04.66 ID:NxFbS8JM0 スッ フゥー 谷口「さて、そろそろ行きますかね」 朝比奈「あ、谷口君……」 谷口「え、あ!」 谷口(やべっ!) ケシケシ 朝比奈「……」 タッタッタ 谷口「あーあ、みられちまった」 谷口「……ま、どうせ朝比奈さんもハルヒに引っ張られてるだけだし、俺のことなんてどうでもいいだろうから大丈夫だろ……」 129 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:51:22.01 ID:kS6L35lh0 ガチャッ 長門「かーわらーないーものーさがーしてーいたー」 谷口「へぇー、長門も案外うまいじゃねーか」 キョン「遅かったな。大の方か?」 谷口「イエスイエスイエスイエス」 キョン「長門が歌ってるのは俺も初めてみるんだ。極めて珍しいから、よく聞いておくことだな」 谷口「ふーん」 長門「ぼーくはーいまーすぐー君にーあいーたいー」 パチパチパチパチ 130 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:53:17.68 ID:kS6L35lh0 ハルヒ「うまいじゃないの有希! なんでいつも歌わないのよ」 長門「……」 ハルヒ「ふんふん。気が向いただけなのね、でもなんか得した気分だわ」 長門「……」 ハルヒ「あはは、なるほどねー。そういう見方もあるわよね!」 谷口「長門の無言からどれだけ涼宮は感じ取ってるんだ……」 キョン「まさか。ハルヒもハルヒなりに文学部を乗っ取ったことをまだ悪く思ってるんだろうよ。だから、長門に必死に話しかけてるのさ」 谷口「涼宮がねぇ……」 キョン「長門はハルヒにはうなづくことしかしないがな」 谷口「長門がねぇ……」 131 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 17:54:34.05 ID:NxFbS8JM0 ハルヒ「あ、次の曲入ってないじゃない! じゃあ次は誰に歌ってもらおうかしら……」 朝比奈「……谷口さんどーですかぁ?」 谷口「え? 俺??」 ハルヒ「そーね! あんたまだ歌ってなかったものね」 谷口「よっしゃ、そんじゃ何入れよっかなー。俺様の美声を披露してやんよ、って、え? 曲流れだしたけど入れたの誰だよ??」 朝比奈「私です〜」 谷口「しかもチョコレイトディスコて!! 男が歌ってどーするんすか! 止めて下さいよ!」 朝比奈「えー? 歌わないんですかぁ? そしたらさっき見たことを……」 谷口(まさかの朝比奈さんからの脅迫かよ!!) 谷口「うお、え、あー。歌います! 見せつけてやるぜっ!」 谷口「計算する女子〜 期待してる男子〜」 133 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:56:07.33 ID:kS6L35lh0 谷口「チョコレイト・ディスコ〜」 谷口(ふぃー、やっと歌い終わった) キョン「お、おう、お疲れ」 谷口(もちろん音程取れる訳なし。まともに歌ったつもりだが周りからは失笑が絶えなかったぜ) 谷口(畜生、他人の選曲で事故らされるなんてっ!!) 谷口「いやー、ちょっと勘弁してくださいよホント〜、perfectloveいいっすか?? 十八番なんで」 ハルヒ「……」 朝比奈「へ、へ、下手すぎだよwww」 谷口(なぜか朝比奈さんだけつぼに入りまくってる!!) キョン「朝比奈さん、笑いすぎですよ、そんなに面白かったですか?」 朝比奈「だってみんな上手でwwこんなにヘタな人私以来だったからwww あーあw」 136 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:58:38.60 ID:kS6L35lh0 ハルヒ「じゃー次はさくらんぼ入れるから、またあんた歌いなさいよ」 谷口「おい! 無理言うなって! 長門みてみろ! 冷めまくってるじゃねーか!」 ハルヒ「うるさいわね! 有希もいいわよね?」 長門「ワンスモア」 ハルヒ「ほら!」 谷口「畜生、わかったよ歌うよ! もうどーにでもなれっての!」 谷口「笑顔咲く〜 君〜と〜」 朝比奈「勘弁wwww勘弁wwww」 138 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 17:59:50.65 ID:NxFbS8JM0 ───3時間後、カラオケの外 ハルヒ「あーあ、ホンットあんた歌下手ね! しかもミクルちゃんみたいに愛嬌のある下手さじゃないから聞いててイラっとしたわ」 谷口「あんだけ……歌わせといて……それはねえだろ……喉いてえ……」 朝比奈「はぁーあ……。聞き疲れました……」 キョン「朝比奈さんツボにハマり通してましたもんね」 朝比奈「だって……。谷口さん……ブホッwwww」 キョン「思い出し笑い!?」 谷口「……」 谷口(まぁ、朝比奈さんの笑顔だけは仰山見れたし……。それだけでもいいとしといてやるか) 139 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:01:12.95 ID:kS6L35lh0 ハルヒ「……ジー」 谷口(なんか涼宮が俺と朝比奈さんを見比べてるぜ……。コイツとかかわるとめんどくさいことにまた巻き込まれてそうだ) 谷口「じゃ、じゃあ今日は面白かったぜ、またなんかあったら誘ってくれよ、もう時間もないしそろそろ……」 ハルヒ「よし、決めたわ!」 キョン「何をだ?」 ハルヒ「へたれ、あんたをSOS団の副団員にしてあげる!」 140 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:04:39.45 ID:NxFbS8JM0 キョン「!!!!」 谷口「ッハァ!? 何言い出すんだお前」 ハルヒ「何? いやなの? まあ、どっちにしろあんたに拒否権はないわ。こんだけ下手な歌であたし達の貴重な打ち上げを汚してくれたんだからね」 谷口「歌わせたのてめーだろーが!」 ハルヒ「歌ったのはあんたでしょ。それに感謝されても文句を言われる筋合いはないわ。どーせあんた部活も何もしてないんでしょ?」 谷口「別に部活入ってねぇから、って暇な訳じゃねーよ!」 ハルヒ「へー、じゃああんたいつも学校終わったら何やってるのよ?」 谷口「それは……」 ハルヒ「やーい暇じーん! ぼっちー! 一人飯ー!」 谷口「う、うるせえ!」 141 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:07:49.43 ID:QYy/dJJL0 ハルヒ「そんなあんたのつまんない高校生活に華をあげよう、って言ってるの。ねじまがってるあんたはどーせずっと嫌なフリをするだろうから、もうあんたの言い分なんて聞きません。とにかく明日から放課後は団室に来ること。いいわね!?」 谷口「……ったくなんだよそれ」 長門「……」 キョン「どんまい、谷口。同情するね、だが俺を助けると思ってとりあえず一度団室に顔出してみろよ」 谷口「わーったよ。しかしどういう気だ? 涼宮、お前超能力者とか変人を募集してたじゃねえか。俺は正真正銘の普通にかっこいい日本人だぜ?」 ハルヒ「るっさいわね。どーでもいいでしょそんなこと。団活ってのは複雑なの! 時にはガラクタでも歯車になるときがあんのよ」 谷口「……やっぱりお前俺のこと嫌いだよな」 ハルヒ「好きも嫌いもないわ。名前を知ったのだって今日なんだから」 谷口「そおい! 中学で同じクラスになったことだってあんだぞ」 ハルヒ「え! うそ! マジ?」 谷口「そのまま忘れててくれチクショウ」 142 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:08:05.17 ID:NxFbS8JM0 ハルヒ「そーゆーことだから! いいわよね? みくるちゃん、有希?」 朝比奈「え、あ、はい、いいと思います」 長門「……」 ハルヒ「有希?」 長門「了解した」 ハルヒ「じゃ、古泉君にはあたしからメールしとくから! 今日はここで解散! また月曜日に会いましょ!」 タッタッタッタ... 144 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:09:49.12 ID:QYy/dJJL0 谷口「俺が……SOS団、ねぇ。なあ、なんでだ?」 キョン「ん? んー、団長様がSOS団にお前が必要だと思ったんだろうさ」 谷口「おれが……必要?」 キョン「とりあえず、俺も帰るわ。妹もねぎらってやらんといかんしな」 谷口「お、おう。またな」 谷口(……下手な歌でも好きなのか? 涼宮は。わからんけど……。なんとなくニヤけがとまらね。必要、ね。フヒヒ) 朝比奈「それじゃあ、谷口さん、私も行くね」 谷口「は、はい。おつかれさまーす」 朝比奈「おつかれさまー! 部室で会えるの楽しみにしてますね!」ニコッ 谷口(Oh..... Summer has passed and spring has come....!) ミーンミンミンミンミンミン…… 145 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:11:30.70 ID:QYy/dJJL0 谷口(なんとなく朝比奈さんの口調もくだけてきたな。鶴屋さんが下級生に敬語を使うな、って言ってたからかね) 谷口(そーいや野球大会中はつまらなそーだった朝比奈さんだけど、打ち上げは楽しそうだったな) 谷口(よかったよかった。ってか再確認したけど、朝比奈さんめっちゃくちゃかわいい) 谷口(こんなに笑ってくれる人、始めてだったし……。笑顔もホントやばい……) 谷口(明日から同じ部活の一員か。やべー、おらwktkしてきたぞ) 谷口「さーて、おれも帰るとするか!」 谷口「み、み、みらくるーみっくるーんるーん♪」 長門「……待って」 146 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:12:58.63 ID:NxFbS8JM0 谷口「な、今俺に待ってって言ったのは長門か??」 長門「そう」 谷口(A-の長門が俺に話しかけてくるってことはこれなんかのフラグかああ?? でも俺には朝比奈さんがー!) 谷口「お、俺にいったい、なんのようかな?」 長門「ついてきてほしい」 谷口「お、おお、おおおお、おお。いいぜ! そしてこれは断じて裏切りではないぜ! SOS団の仲間のことを知るためのだな……」 長門「……」 148 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:15:49.55 ID:QYy/dJJL0 ───長門の部屋 谷口(とは言ってもいきなり部屋かい) 長門「とりあえず一杯」プシュッ 谷口(しかもビール缶あけやがった!) 長門「どうぞ」 谷口「お、おう、ありがとよ」 ゴクゴクゴクゴク 149 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:17:01.80 ID:QYy/dJJL0 谷口「かー、うめー。夏の夜とかけまして、スポーツ後の酒と解く! その心は! 旨すぎて死ぬ! 俺酒には自信あるんだよな」 長門「そう。なら、どんどん飲むといい」 谷口(しかし男を家に上げて酒を飲ますとは……。これは無防備なのかそれとも……アーユービィーッチ?) 谷口「で、要件はなんだよ?」 長門「かいつまんで話すから、よく聞いて」 谷口「お、おう!」 長門「かくかくしかじか」 谷口(ハルヒが自立進化の可能性で長門が統合思念体でキョンがハルヒのキーだってぇええ!?) 谷口「え、じゃあ俺は?」 長門「涼宮ハルヒにとってどうということはない存在」 谷口「Oh....彼女は何を言っているのでしょう」 150 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:18:11.77 ID:NxFbS8JM0 長門「涼宮ハルヒにとって、どうということはない存在」 谷口「大切なことだから二回言ったんだよな?」 長門「非常に大切。貴方にとってではなく、私にとっても」 谷口「? ってかお前こんなにおしゃべりだったのか?」 長門「つまり、あなたは涼宮ハルヒの持つ自立進化の可能性とは、何ら関与するものではない」 谷口「無視ね。そんなもんと関与してたって嬉しくも何ともないからいいもんぜー」 長門「それを聞いて安心した」 谷口(?) 長門「これから話すことをよく聞いて」 谷口「お、おう」 151 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:19:05.33 ID:QYy/dJJL0 長門「涼宮ハルヒに極力近づかないようにしてほしい」 谷口「なんだ、そんなことかよ。でもSOS団入らないといけなくなったからどーしても近づくことになるぜ」 長門「何故この様な事態になったのか。不覚。迷いから、私が後手に回ってしまったのが原因。貴方が力を得た地点で、すぐに行動を起こす必要があった」 谷口「は?」 長門「……貴方は時を跳ぶことができる」 谷口「お、え!?」 長門「統合思念体によって、貴方の力による情報爆発がすでに何度も観測されている」 谷口(ホントは宇宙人かどーかとか疑うとこなんだろーが……)ゴクゴクゴク プハー 谷口「もうなんでもいいや! よくわかったな! 俺、跳べまーす! ついでに6本目あけまーす」 長門「統合思念体のおごり。好きにするといい」 152 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:20:53.74 ID:QYy/dJJL0 谷口「で、その情報爆発があったからなんだ?」 長門「その情報爆発はどうでもいい」 谷口「どーでもいいのかよ」 長門「貴方はテストの際に、その力によって不正を行った」 谷口「あー、したねー、そーいや」 長門「先生に言いつけることも考えた」 谷口「……」 長門「だが不正もどうでもいい」 谷口「本日二度目のどーでもいい入りましたー、はーいドドスコスコスコ〜」 153 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:21:38.59 ID:NxFbS8JM0 長門「そのテストの点数が悪かった際、涼宮ハルヒと貴方は言い合いをした」 谷口「……そんなこともあったかもな」 長門「結果、涼宮ハルヒは大きく落ち込んでいた」 谷口「え?」 長門「それを見て、朝比奈ミクルは貴方に興味を持った」 谷口「……でもそれ、時間跳ぶ前の話だぜ?」 長門「そう。だが、SOS団は様々な力に対して強い耐性がついているため、残留思念が残ることを想像するのは容易」 谷口「ふーん」 長門「とにかく、その時から私の中に一つの計画が生まれた」 谷口「ほうほう、その計画とやらをきかせてもらおーじゃねーか」 155 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:24:26.41 ID:NxFbS8JM0 長門「聞いて驚いてほしい。見て驚いてほしい」 谷口「おうおう!!」 長門「目の前でスイーツ漫画みたいな恋愛を見たい! 題して時をかける少年少女!」 谷口「ぱぱぱぱくーった!!!」ガビーン 長門「今更。大概のSSはパロの塊」 谷口「……あっちょんぶりけ」 156 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:27:19.23 ID:x5jVBKlt0 谷口「当事者の俺が言うのもあれだが、もしそれが俺と朝比奈さんの二人を指してるとしたら、SOS団に俺が入るのはそんなに悪い展開じゃないんじゃないのか?」 長門「激しい葛藤がある。貴方が朝比奈ミクルに近づくことは、私の個人的な欲求のためだけではなかった。だから私の計画は十分に正当化されるものであったと考えられる」 谷口「かー、さすがに13本目空けてもーなんかやばくなってきたぜ。え? なんか言った?」 長門「……私は貴方達に手を貸したいと考えている。だが涼宮ハルヒが貴方と強く関わりを持ってしまった場合……」」 谷口「その場合どーなるんだ?」 長門「涼宮ハルヒの力に貴方が関与していると判断された場合、私は私的感情の行使を抑えなければならなくなる」 谷口「そしたら?」 長門「非常に面白くない。観測者とはいったい何なのか。答えは、ファミスタのコンピュータ対戦をずっと見ている存在のようなもの。しーゆーのあらまんちゅと言わざるを得ない」 谷口「チョーどーでもいいな、俺らをおもちゃ扱いしてるよね」 157 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 18:27:43.68 ID:NxFbS8JM0 ───谷口の家の前 谷口「おーおー、ずいぶん飲んじまった。足元がふらつくわ」 ──長門:とにかく、あなたは涼宮ハルヒに近づきすぎてはならない。そうすれば古泉一樹の機関もあなたに手を出さない。それだけは覚えておいてほしい 谷口「そんなこと……俺は朝比奈さんとなかよくなりてーだけだってのー」 ガチャッ 谷口「ただいまー」 谷口母「遅かったわねー。ってあんた、また酒飲んできたの?」 谷口「記憶にございませーん」 160 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:29:45.30 ID:x5jVBKlt0 ───リビング ガチャッ 谷口「ただーいまー」 谷口父「お前、高校生なのに酒なんて飲んでるのか」 谷口「おやじだって酒ぐらい飲んでただろ?」 谷口父「いいや、飲まなかった」 谷口「……」 谷口父「お前、期末テストが終わったからってあまり油断していると……ゴホッゴホッ」 谷口「説教かよ、あーあー、聞きたくない聞きたくないね!」 タッタッタッタッタ 谷口(楽しい気分のまま、なにも考えずに今日は寝たいってんだーい) 162 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:32:08.06 ID:NxFbS8JM0 ───翌日、月曜の朝 谷口「ちくしょー、力使って二度寝したのに、まだ頭いてーぜ」 谷口「お、なぜか知らんけど洗面所にウコンが!」 谷口「これ、あとから飲んでも何気に効くよのな」ゴクッ 谷口「ふー。ラッキーラッキー、ウコンがあってラッキーだったぜ」 谷口「ん? なんだこの手首の数字……」 谷口「3? ま、どーでもいっか!」 谷口「よっしゃ、元気出して学校いかねーとな! なんってったって今日からは毎日放課後に用事がある!」 谷口「わりい、俺これから部活なんだ! また誘ってくれ!」 谷口「うひひ、言い方練習しとかねーとな!」 谷口「いってくっぜ!!」 163 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:36:26.13 ID:NxFbS8JM0 ───団室前 ジージージージー 谷口「セミがうるせえ」 谷口「暑くてシャツが体に張り付く」 谷口「たまに吹く風がここちいいが、それも一瞬のことだ」 谷口「とにかく暑い。夏の日」 谷口「そんな日に、俺の新しい章が幕をあける」 谷口「さあ、その扉をノックしようじゃないか……」 キョン「さっさと開けてくれ。中は冷房きいてんだから」 谷口「ひたらせてくれよ!!」 キョン「それに幕か扉かハッキリしてくれ」 谷口「うるせえしこまけえし!」 164 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:39:44.06 ID:NxFbS8JM0 ───団室 谷口「おー! なんか遊び道具たくさんあんな! しかもPCもあるじゃねーか!」 キョン「まーな。うちの団長はやり手なんだ。極めて悪質だが」 谷口「それに……長門がいるぜ?」 キョン「文学部部長兼SOS団団員だからな。そりゃいるさ」 谷口「そっかそっか。それで、手を振ってる古泉の前に広げられてるボードゲーム、ありゃなんだ?」 キョン「大将棋だ。初めて三日目になるが、未だに終りがみえん」 谷口「……是非羽賀さんにやってもらいたいもんだな」 キョン「羽賀さん相手でも二日ぐらいは粘れる自信がある」 谷口「駒の動き覚えるのにまず一日かかりそうだぜ」 165 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:42:46.72 ID:NxFbS8JM0 谷口「で、で、他にももう一人団員いなかったっけか?」 キョン「朝比奈さんか?」 谷口「そうだ! 朝比奈さんだ! 彼女はまだ来てないのか?」 キョン「そろそろ来るんじゃないか?」 ガチャッ 谷口「!!」 ハルヒ「たのもー!」 谷口「f**k」 ハルヒ「なんかいった?」 谷口「別に……」 166 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 18:45:56.48 ID:NxFbS8JM0 ハルヒ「っていうか、なんであんたいるのよ?」 谷口「お前が放課後部室に来いっつったんだろ!」 ハルヒ「そーだっけ? あー、そーいえばそんなこともあったかもね」 谷口(おいおい追い返されるのか!?) ハルヒ「なんてね、覚えてるにきまってるじゃないの。ふふん」 谷口「な、なんだよきもちわりーな」 ハルヒ「わかった、そわそわしてるのはミクルちゃんがいないからでしょ!?」 谷口「え、あ、うん?」 ハルヒ「そーこなくっちゃぁ! 健全たる男子たるもの、女のケツを追いかけてなんぼ、ってなもんなのよ!」 谷口「珍しいな、それは同意だぜ!」 167 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:49:25.97 ID:NxFbS8JM0 ハルヒ「ってことですが、ミクルちゃんなら今野球場いるわ。ほら、高校横にある公園のトコ」 キョン「そりゃまたなんで?」 ハルヒ「さあ? 野球にハマったんじゃない? でも団員が何かにやる気を出すのはいいことよね! ということで、今日の団活はあの公園で行います。ほら、さっさと準備する!」 キョン「はいはい」 谷口「こんなあっついのによくやるぜ。団室内で涼んでる方がいいんじゃねーのか?」 ハルヒ「ミクルちゃんが動いてんのよ? レアじゃないの! これを協力しない手はないわ! もしかしたら未来人からのメッセージかもしれないし!」 谷口「そーいやそーゆう趣旨のサークルだったっけか」 キョン「ま、どっちにせよ、だ。制服姿の朝比奈さんが野球やるとか、みたいだろう?」 谷口「見たい訳……見たいです!!!!」 キョン「んじゃ、とりあえずそこにあるグローブと金属バット持ってきてくれ」 谷口「お前は何持ってくんだ?」 キョン「カメラだ」 谷口「……」 168 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:51:25.18 ID:TCu8oAIY0 ───野球ができそうな公園 ハルヒ「やっほー! みくるちゃん! 連れてきたわよー!」 朝比奈「あ、涼宮さん。連れてきた、って??」 キョン「こんにちは、暑いのに精が出ますね」 朝比奈「み、みんな! どーしたんです?」 ハルヒ「それはこっちのセリフよ! 突然野球したいから今日は団活休みますー、なんて言われてもOKできるわけないわ! 原稿用紙20枚分の反省文と20文字以内で理由を簡潔に述べなさい、って言いたいところだけどそれは許してあげます」 ハルヒ「代わりにみんなで野球しましょう!」 朝比奈「や、野球、ですかぁ?」 キョン「あれ、野球してたんじゃないんですか?」 朝比奈「いいえ、未来からのあっ……」 ハルヒ「未来からの?」 朝比奈「えと……」 170 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:52:45.90 ID:TCu8oAIY0 キョン「未来からの、いいえあえて言い直しましょう、未来への! ですよね?」 ハルヒ「?」 朝比奈「そうなんですよぅ! 未来へのタイムカプセルを埋めようとしてたんです!」 ハルヒ「で、タイムカプセルからの?」 キョン「いちいち無茶振りすぎるぞお前」 朝比奈「でも、どうして私が野球してたなんて??」 ハルヒ「だって野球場にいくって言ってたじゃない! 火のないところに煙はたたない、野球場にいたら野球してるに決まってるの!」 朝比奈「そ、そーなんですかぁ?」 古泉「まぁまぁ、せっかくグローブとボールを持ってきたので、キャッチボールでもしませんか?」 キョン「そうだな。天気もいいし、不思議探しするよか健全にスポーツする方がよさそうだ」 谷口「クーラー効いた団室でガリガリ君のがよっぽどいーけどな。あーあちー」 171 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:53:40.74 ID:NxFbS8JM0 シュッ パシッ シュッ パシッ ハルヒ「どりゃっ、里中ボール!」シュッ キョン「うおっ! 親指使えないハズなのにシンカーが投げられるだとっ!」パシッ ハルヒ「ふふん、スカイフォークもいけるわよ!」 キョン「大会でなげてりゃ長門の力も借りずに済んだだろうに」 ハルヒ「有希が何かやってたっけ?」 キョン「こっちの話だ」シュッ 谷口「大会ってったら、おれのダイビングキャッチがダイジェストだったよな!」パシッ 古泉「あれは見事でしたね。主に走行距離においてですが」 谷口「へへーん、打者の目線、俺の経験、俺イケメン、気づいたら俺は突っ走ってたんだよ。さすが天才は違うねー」 朝比奈「別に、谷口さんが来なくてもキャッチ出来たもん!」 172 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:57:10.94 ID:dBt05hL+0 キョン「!」 朝比奈「ヘーイ! パスくださーい!」 谷口「パス? え、あ、はい」シュッ 朝比奈「うおう!」ドシッ 谷口(が、顔面直撃! ワンバンボール投げたのに!) 朝比奈「う、うぐぅ」 谷口「す、すみませっ。大丈夫っすか!?」 朝比奈「平気です! それっ」シュッ ドシッ 朝比奈「あだー!」 谷口(すっぽ抜けて真上に投げたー!!) 173 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:57:51.67 ID:dBt05hL+0 谷口(そんなこんなで、日が暮れるまでキャッチボールと簡単なノックが続いた) 谷口(なんだか想像できないぐらい朝比奈さんがやる気で、キョンや古泉も驚いてたからやっぱりいつもどおりではなかったんだろう) 谷口(朝比奈さんは正直運動音痴の典型で、体の動かし方からしてスポーツ向けじゃない) 谷口(それでも彼女が一生懸命にボールを投げる姿を見ていると、不思議な感情が自分の中で芽生えるのをかんじた) 谷口(なぜだろう。朝比奈さんと俺が似てるような気がする) 谷口(茜色に染まる空の下で、汗と一緒に穏やかな時間が流れていった) 朝比奈「えいっ!」シュッ 谷口「うおっ!」バシッ 朝比奈「やった! 届いた! 届きました!」 キョン「やりましたね、朝比奈さん!」 朝比奈「はい!」 谷口「……」 174 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:58:39.43 ID:NxFbS8JM0 ハルヒ「じゃ、野球の練習はここまで! もう日も暮れてきたし、今日はこの場で解散にしましょ!」 キョン「そうだな」 ハルヒ「明日は普段通り団室に集合だから!」 朝比奈「待ってください!」 ハルヒ「え? なあに? ミクルちゃん」 朝比奈「えと、そのー。明日も……野球しませんか?」 キョン「!!」 古泉「これは驚きですね。朝比奈さん、野球が気に入ったんですか?」 朝比奈「……はい」 古泉「どうでしょう、涼宮さん、明日以降もしばらくここで練習するというのは?」 ハルヒ「そうねぇ……」 谷口「俺も野球やりてー! 夏っぽくていいじゃねえか、な、野球しようぜ?」 ハルヒ「ふーん。ま、いいわ。もうすぐ夏休みだし、夏休みまでのしばらくの間、放課後はここで野球をやりましょ」 朝比奈「ありがとうございます!」 176 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 18:59:10.12 ID:dBt05hL+0 ハルヒ「じゃあとりあえず今日は解散! 練習道具は団室に戻しておくこと、谷口は野球やりたいー!って言ったんだからそれぐらいしておいてね。それじゃっ」 古泉「では、僕もバイトがあるので、これで」 キョン「じゃー谷口、片付けは任せたぞ」 谷口「なーんでそうなるんだよ!」 キョン「これまではいつも俺一人がやってたんだ。今日ぐらいは楽させてくれ。それじゃ、また明日な」 谷口「ったく……」 谷口「あー、重い重い重いっぜー」 朝比奈「あの、手伝います」 谷口「え? あ、大丈夫っすよ!」 朝比奈「じゃあ、金属バットだけでも」 谷口「えっと、じゃあ、お願いします」 177 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:00:23.21 ID:dBt05hL+0 ───団室 ドサッ 谷口「ふー」 朝比奈「お疲れ様ー。お茶入れますけど、飲みますか?」 谷口「あ! あざーす! いただきます!」 カチャカチャ チャー チャッチャッ 朝比奈「どうぞ」 谷口「うお、うまそー!」ゴクゴクッ 谷口「うまっ!!! 聞いてた通りっす!!」 朝比奈「聞いてた? 誰から?」 谷口「いや、キョンが朝比奈さんの入れてくれるお茶は最高だっつってたんで。その通りだなって」 朝比奈「ふふ、ありがとう」 178 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:01:27.11 ID:dBt05hL+0 ゴクゴクゴク 谷口「……」 朝比奈「……」 谷口(ふ、二人きり……。しかしほとんど話したことないし、何話せばいいかよくわかんねえ) 谷口「……」 朝比奈「……」 谷口(……沈黙を共有できるのは腹の知れた相手だけだ、ってのはホントだな。とにかく何かしゃべらないと……) 谷口「え、えと」 朝比奈「今日は付き合ってくれてありがとう」 谷口「……え?」 179 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:01:57.89 ID:NxFbS8JM0 朝比奈「野球。みんな、手を抜いてくれてたでしょ?」 谷口「手を抜く?」 朝比奈「ホントは思いっきり速い球投げたり、思いっきりボールを打ったりしたかったハズなのに、私が下手だから、それを気にしてみんな力を抑えてたよね」 谷口「えと……」 朝比奈「実はそれに気づいてたけど……気づいたところで野球がうまくなれる訳じゃなくて……」 谷口「……」 朝比奈「この前の大会は悔しくかった。でも涼宮さんが野球やりたいって言ったらそれをやらないといけないから……。私がイヤって言っても意味ないし、言っちゃいけないから……」 谷口(そういえば、朝比奈さんもSOS団……。涼宮のためにいる人間なんだよな) 朝比奈「……今日は楽しかった?」 180 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:03:23.33 ID:dBt05hL+0 谷口「楽しかったっす」 朝比奈「……」 谷口「……」 朝比奈「……実は私も」 谷口「え?」 朝比奈「思った通りのところにボールは行ってくれないし、ボールが体にぶつかったところも痛いけど……。だけど私も、楽しかった」 谷口「……」 朝比奈「みんなの足を引っ張ってるの感じても、最後にボールが届いたとき、本当にうれしかった」 谷口「……」 朝比奈「こんなに一生懸命になったの久し振り。だから、もっと上手くなりたくなっちゃって……ふふ、私らしくないなぁ、涼宮さんに意見するなんて」 谷口(この人は……やっぱり俺と似てる) 181 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:04:16.17 ID:dBt05hL+0 谷口(人の目が気になるけど、自分でどうこうできる訳じゃなくて) 谷口(自分に自信がなくて、自分の存在意義を他人に預けてしまってる) 谷口(……何もできない、自分がダメな人間だと思ってる) 谷口(でも、そんな自分に満足してる訳じゃなくて……何かしたくて……) 朝比奈「明日からまた野球につき合わせちゃってごめんね?」 谷口「……」 朝比奈「でも、どうしてもやりたいんだ、……野球」 谷口「いいと思います。それで」 182 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:05:18.59 ID:dBt05hL+0 朝比奈「本当に?」 谷口「俺も付き合いで野球やる訳じゃないっす。おれも今日楽しくって、だから野球やりたいんです」 朝比奈「楽しかった?」 谷口「……そうっす。なんていえばいいんだろうな……。あれなんす、朝比奈さんのこと見てると、すごく穏やかな気持ちになるんすよ」 朝比奈「え? え?」 谷口「たぶん、みんなそうだったと思います。朝比奈さんは、全力出せずに不完全燃焼のみんなはつまらなそう、って思ってるかもしれないっすけど」 谷口「……そんなことないんですよ。楽しみ方なんて人それぞれなんです」 朝比奈「……」 183 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:05:23.99 ID:NxFbS8JM0 朝比奈「……ふふ、君、すごくはずかしいこと言ってるよ?」 谷口「え、あ、す、すみませ」 朝比奈「……でも、ありがとう。なんだか、すごく自信がついたよ」 谷口「そうっすか? それは……よかったっす」 朝比奈「じゃあもう時間も遅いし、そろそろかえろっか?」 谷口「そ、そうっすね」 谷口(なんか朝比奈さん、感じ変わったな) 185 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:06:49.80 ID:dBt05hL+0 ───団室前 朝比奈「じゃあまた明日。二年生のげた箱、こっちだから」 谷口「はい。また、明日」 タッタッタ 谷口「ふ、ふぅ」 谷口(朝比奈さんの雰囲気におされっぱなしだぜ) 谷口(でも……。なんか人の力になれた気がする) 谷口(すこぶる気分がいいです……) 谷口(さーて、おれも帰るとするか、な) 長門「ハロー」 谷口「ぬおあっ!」 186 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:07:59.84 ID:dBt05hL+0 長門「長門の恋のアドバイスコーナーへようこそ」 谷口「もうお前なんでもありだな、ってかようこそも何もお前からきたんだろ!」 長門「細かいこと言ってる男はモテない、ここメモするとこ」 谷口「付き合いづらい上司みたいなこと言うんじゃねー。なんでここいるんだよ!」 長門「団室の鍵を締めに来た」 谷口「なるほどな。で、いつからいたんだ?」 長門「ながいこと」 谷口「……(略して長門ってか)」 187 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:08:31.74 ID:NxFbS8JM0 長門「ということで、長門の恋のアドバイスコーナー」 谷口「いえー、ぱちぱちぱちぱち」 長門「女子高生の登下校の夢といったらなんでしょう」 谷口「え? あー、わっかんね」 長門「適当でもいいから要回答」 谷口「えーと、じゃー校門にリムジンで迎えに来てくれるどこぞの御曹司と一緒に帰ること? とか?」 長門「惜しい」 谷口「惜しいのかよ」 長門「すこぶる惜しい。ニュアンス的には正解」 谷口「褒めるねぇ」 長門「頭の良い生徒は嫌いじゃない。涼宮ハルヒにくっついてる彼ときたら、わざとフラグ折ってる疑惑があるぐらい、見ていて腹が立つ」 谷口「?」 188 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:10:05.56 ID:dBt05hL+0 長門「とにかく、正解を発表する」 谷口「おう?」 長門「THE GIRL WHO LEAPT THROUGH TIME」 谷口「ワーッツ?」 長門「自転車で2ケツしての登下校。これ、女子高生の夢」 谷口「そうなのか? 男の夢の間違いじゃないのか?」 長門「ということで、明日から自転車で高校に来るように」 谷口「俺、自転車持ってねーんだ」 長門「そういうこともあるだろうと思って、用意してきた」 谷口「どこに?」 長門「あなたの家の車庫」 谷口「お前、なんか怖いよ」 長門「できる女、と言ってほしい」 189 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:11:18.45 ID:NxFbS8JM0 長門「とにかく、そういうことだから」 谷口「そういうこと? 自転車で登校してこいってか? あの坂道を? 上り続ける?」 長門「心肺機能のトレーニングにもってこい。それに登校時間の短縮。加えて後ろに彼女を乗せて帰ってこれる。お得ってベルじゃない」 谷口「いやいやいやいや。トレーニングってこの夏に汗かき放題で教室にin、しかも登りだから大して時間短縮にもならず、加えて後ろにのってくれる彼女もいねーよ! 虐殺じゃねーか!」 長門「シモ・ヘイヘもトレーニングが狙撃のすべてだと言っていた。貴方もトレーニングこそ心肺機能のすべてだと知るべき」 谷口「趣旨かわってんじゃねーか、そーじゃねーそーじゃねーんだよ! そこはわかっとけ!」 長門「わかった。とりあえず、乗ってみるべき」 谷口「何を言っても無駄か……」 長門「暇を持て余した宇宙人の遊び。そう思って付き合うべき」 谷口「あいあい、わかったよ、ったく」 190 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:11:45.43 ID:dBt05hL+0 ───翌日、朝 キコキコキコイコ 谷口「ゼェ、ゼェ、ゼェ、ゼェ」 キコキコキコキコ 谷口「ハァ、ヒィ、ハァ、ウプ」 タッ 谷口「この坂を行けば……どうなるものか……。こんなフッツーのママチャリなんか車庫に置いときやがって、どーせなら電動やらロードレーサーにしてほしかったぜ」 谷口「ふぅ……。でもま、なんかきもちいいからいいか。あんぱんッ」 ギコギコギコギコ…… 谷口「フゥ、フゥ、フゥ」 谷口(自転車との語り合い、パーフェクトペダリングを目指す……) 谷口(ああ、今日もいい天気だぜ) ギコギコギコギコ 191 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:12:36.29 ID:dBt05hL+0 ───放課後 キョン(そうして、今日も野球に明け暮れた) キョン(ゆっくりとだが、朝比奈さんは上達していた) キョン(同時にその二倍はばんそうこうが増えていったが、朝比奈さんの顔からは苦しそうな表情は見られなかった) キョン(何か吹っ切れたんだろうな) キョン(ああ、おそらく。やっとこの時代に彼女は居場所を見つけることができたのだろう) キョン(それがなぜ野球を練習してる間に見つかったのかわからないが、とにかく喜ばしいことだ) キョン(よかったよかった。さて、彼女の居場所は一体誰によってもたらされた物なのか……) キョン(鈍感の塊であるハルヒでさえ、それに気づいてるみたいだ) ハルヒ「……」 192 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:14:31.83 ID:MFcKA7LX0 古泉「ちょっと、いいですか」 キョン「なんだ」 古泉「なんだか、穏やかな顔をしていますね」 キョン「そーゆうお前もな」 古泉「僕のは地顔ですから。それはともかく、朝比奈さんのことです」 キョン「その話か。見ての通りじゃないか、幸せそうでうれしいよ、おれは」 古泉「そうですね。野球大会の頃からは考えられなかったような状態です。まさか彼女がグローブをはめて、あんなに充実した姿を見せるなんて、ね」 キョン「結構なことじゃないか。一体何の問題があるんだ?」 古泉「はい、SOS団としてはなんの問題もありません。閉鎖空間も最近は落ち着いていますから」 キョン「じゃあ一体何の話がしたいんだ?」 古泉「始めから言ってるじゃありませんか。朝比奈さんのことです。SOS団のことではありません」 193 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:14:53.52 ID:NxFbS8JM0 キョン「つまり機関がらみの話ではないってことだな?」 古泉「そうです。ただし……宇宙人がらみの話ですが」 キョン「!? 長門が何かかかわってるのか?」 古泉「はい。一体どういう思惑かは知りませんが……。彼女は機関や涼宮さんが朝比奈さんと……谷口さんに近づいてほしくない、と思っている」 キョン「何?」 古泉「つまりです、二人の関係を涼宮さんの持つ神の力と係わらせたくない、そう考えている訳です」 キョン「なぜだ?」 古泉「期末テスト前のことになります。長門さんからぼくに、ひとつの打診がありました」 キョン「お前ら、二人で話すことあるのか?」 古泉「……いえ。思い返せば、会話らしい会話をしたのはその時が初めてだったかもしれません」 キョン「そうか。つづけてくれ」 194 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:15:42.83 ID:MFcKA7LX0 古泉「放課後ですね、彼女が一つの情報爆発を観測した、と言い出しました。そしてそれが一体どのような属性のものなのか測りかねているようでした」 キョン「あの、長門がね……」 古泉「思えば本当はもうその場で解析は済んでいたのかもしれませんね。とにかく、それから彼女は僕に打診をしてきた」 キョン「なんて?」 古泉「この情報爆発の一件に関して、我々機関には手出しをしてほしくない、とね」 キョン「あの長門がそんなことを言い出すなんて、珍しいな」 古泉「はい。そして彼女はこう続けました。涼宮ハルヒにかかわらない事柄について、私的感情の行使は規制されていない、と」 キョン「……」 古泉「つまり、早い話がその情報爆発について、彼女は個人的な関心を抱いている。そして何らかの関与を行いたい、と考えているとみえます」 キョン「その情報爆発ってのは、結局なんだったんだ?」 古泉「……それがまことに残念ながら……まだ僕には掴めていないんです」 195 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:17:03.95 ID:MFcKA7LX0 キョン「お前、じゃあなんで俺にそんな不確定な話を振ってきたんだ?」 古泉「この件に関して、僕にはバックが存在しないんです。長門さんに頼まれたとおり、機関にはその情報爆発のことを知らせていませんからね」 キョン「……」 古泉「つまり長門さんと同じように、この件に関しては個人的な関心で動いていることになります。よって僕は機関の一員としてでなく、古泉一樹としてのネットワークから情報を探さなければならない」 キョン「それで俺に声をかけた、ってことか」 古泉「その通りです。いざ機関を抜きにして人間関係を考えなおしてみたところ、貴方しか友人が思いつかなかったもので」 キョン「……なんだろうな、すごくさみしい気持ちになったよ」 古泉「僕もです」 196 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 19:17:13.99 ID:NxFbS8JM0 古泉「とにかく、何か心あたりはありませんか? 時期的に彼ら二人と関わりがあることは間違いないんです」 キョン「心あたり、と言われても困るぞ。そもそも、情報爆発ってどーゆうときに起こるんだ?」 古泉「例えば涼宮さんに神の力が備わった瞬間、またそれを行使した瞬間などですね。流石にそれ程大きな出来事ではなかったようですが」 キョン「ううん……なんかあったかな……」 古泉「この現代にはありえないようなオーパーツの発現等もそれに当たるでしょう」 キョン「んんー」 古泉「ねぇ、お願いしますよ。僕には貴方しか頼りになる人がいないんです」 キョン「んなこと言われても……っとそーいやひとつ、おかしなことがあったな」 古泉「!! なんですか、それは!?」 キョン「谷口が、時を跳ぶことができるか? と聞いてきたことがある」 201 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 19:45:09.22 ID:NxFbS8JM0 保守ありがとうございました!再開します! 古泉「……谷口さんが……そんなことを……」 キョン「ちょうどテスト前ぐらいのことだったとおもうがな」 古泉「……いえ、なるほど、色々なことがそれなら納得できます」 キョン「ほう?」 古泉「まず、谷口さんの野球大会での挙動不審。打席に立った時、何もないのに突然疲れていたのは、おそらく時間を巻き戻して何度もボールを見たからでしょう」 キョン「細かいところ見ていたんだな」 古泉「ヒットを打てたこと自体が驚きでしたから、印象に残っているんです」 キョン「まあ、確かに。まぐれで打てる球じゃなかったしな」 古泉「そして、決定的な物が二つ。彼がSOS団に入ったこと、そして……」 古泉「あそこで自転車に2ケツで朝比奈さんと帰ろうとしていることです!!」 202 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:45:42.10 ID:TQzrSleh0 谷口「えと、じゃあ、しっかり落ちないようにしてくださいっす」 朝比奈「はい。私、自転車に二人で乗るの初めて! 楽しみー」 谷口「よ、よっしゃ! じゃあ行くっすよー!」 キコキコキコキコ キョン「そーいや、今日突然自転車で来たな。自転車持ってないっつってたのに」 古泉「ふむ。朝比奈さんの雰囲気にも驚きですね、あれがオフの時の朝比奈さんなのでしょうか」 キョン「にしても、なんだか波長が合ってきてるな、あの二人」 古泉「ええ、なんだかお似合いに思えてきてしまいました」 203 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:46:47.74 ID:TQzrSleh0 キョン「で、何の話をしていたんだっけ?」 古泉「まとめましょうか。まず、長門さんが情報爆発に対し個人的な関心を抱いており、機関や統合思念体とは関わらせたくないと考えていた」 古泉「そしてその情報爆発とは谷口さんが時を跳ぶ何かを手に入れたことであり、今谷口さんは持っていなかったハズの自転車に朝比奈さんを乗せている」 古泉「……つまり、少し想像しがたいことですが、長門さんは谷口さんと朝比奈さんの関係について何らかの干渉を行っているのではないでしょうか」 キョン「どんな風に?」 古泉「まだハッキリとは言えませんが……。今度長門さんと話してみることにしましょう」 キョン「……あまり下世話なことにならないようにな」 古泉「ははは、ごもっともですね。好奇心の範疇に収められるように気をつけましょう」 キョン「ま、何かわかったら教えてくれよ」 古泉「あなたもやはり、気になりますか?」 キョン「そりゃそうに決まってるだろ。朝比奈さんだぞ?」 古泉「ふふ、そうですね。それでは何かあれば一報しますよ。また、明日逢いましょう」 キョン「ああ。じゃあな」 204 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:48:46.87 ID:NxFbS8JM0 ───そうして、何日か過ぎた・・・・・・ キコキコキコキコ 朝比奈「もっと速くー!」 谷口「もう、これ、限界、っぽ」 タッ 朝比奈「そんなことない! ほら、立ち止まっちゃだめ! 時は待ってくれないんだから」 谷口「いやいや、俺の筋肉議決でもう限界だって結論出ましたから!」 朝比奈「なにそれw 議決で結論とかw 意味軽く重複してるよw」 谷口「ええい、嫌らしいつっこみをっ」 205 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:49:07.11 ID:TQzrSleh0 朝比奈「とにかく、急がないと遅刻しちゃう!」 谷口「坂道2ケツとか・・・・・・不可能・・・・・・」 朝比奈「不可能からのぉ?」 谷口「ちっくしょお、俺の自転車は!!」 朝比奈「坂を登る自転車だ! キコキコキコ タッ 谷口「無理ですね」 朝比奈「わかります」 206 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:49:53.43 ID:TQzrSleh0 ───教室 谷口「ふぃー、あっちーなー」 キョン「今日は1限いなかったな」 谷靴「え、ああ。遅刻だ遅刻。寝坊で」 キョン「隠しても無駄だ。朝比奈さんと自転車で坂登ってくるの丸見えだったぞ」 谷口「げ、マジで!? 岡部なんか言ってたか?」 キョン「嘘に決まってるだろ。その窓から坂が見えるか?」 谷口「ふっ、古典的なマジックだな」 キョン「しかしホントに朝比奈さんを自転車に乗せてきたのか。ずいぶん仲良くなったもんだ」 谷口「ま、まーな。いやいや、ほかのやつにあんまり言うなよ? 言わないでください!」 キョン「おいおい、こんなとこで秘密主義か? 中学生じゃないんだ、カップルなんて珍しくもなんともないじゃないか」 谷口「カカカカップルカカカップルカカカカッカカッカカッカップルだなどと!」 キョン「なんかの裏ワザみたいになってるぞ」 207 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:50:52.85 ID:TQzrSleh0 谷口「別に付き合ってる訳じゃねーよ!マジで」 キョン「別に、そんなに否定することでもないだろうに」 谷口「便所行ってくる!!」 キョン「照れ屋というか子供というか……。ん?」 ハルヒ「……」ジーッ キョン「な、なんだよ。おれの顔になんかくっついてるか?」 ハルヒ「……別に、なんでもないわよ」 キョン「そ、そうか?」 ハルヒ「……」 キョン「おい、やっぱりなんか言いたいことあるんじゃないか?」 ハルヒ「……別に」 ハルヒ「……ただ、夏休みになったら市営プール行かないとなー、って思っただけ」 208 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:51:08.80 ID:NxFbS8JM0 キョン「うん? いいんじゃないか、涼しそうだしな。それもなんかの不思議探索か?」 ハルヒ「夏を夏らしく過ごすためにプールはかかせないって思っただけよ」 キョン「ふぅーん。なんか、珍しいな。目的もなく遊ぶなんてお前らしくもない気がするよ」 ハルヒ「別に遊びにいつも意味を求めてる訳じゃないわよ。そういうつまらない考え方してると、楽しい物も楽しくなくなっちゃうもの」 キョン「……そうだな。楽しけりゃ、それだけでいいこともあるからな」 ハルヒ「じゃあ、市営プール行く時は自転車で来なさいよ?」 キョン「は? 自転車と市営プール行くのに何の関係があるんだ?」 ハルヒ「あたしが後ろに乗せてもらうために決まってるでしょ!」 キョン「いや、決まってない。決まってないぞ。なんでそんなことしなきゃならんのだ」 ハルヒ「だって、その方が面白いじゃない!」 キョン「……やれやれ。ま、プールの前に汗をかくのも悪くないかもな。そう思うことにしよう」 ハルヒ「ちゃんと後ろ乗りやすいようにしときなさいよ! 坂道だって絶対下りて歩いたりしないんだからね!」 キョン「へいへい、せいぜい坂道のないルートを探しとくことにするさ」 キーンコーンカーンコーン... 209 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:51:51.47 ID:TQzrSleh0 ───放課後、野球練習後、団室 谷口「いやー、今日も疲れたぜ」 キョン「もう長いこと日照りだな。いい天気なのはいいことだが、このままだと水不足になりそうだ」 古泉「一応今日の夜から明日の朝にかけて降水確率30%になっていましたが、そんな気配微塵もありませんね」 キョン「どーせなら夜寝てる間に雨が降ってほしいもんだな。最後に雨が降ったのはいつになるんだ?」 古泉「確か……二週間前の火曜日になりますか」 谷口「よく覚えてんな、そんなこと」 古泉「ふふ、毎朝星座占いと一緒に確認していますので。ちなみにその雨が降った日、僕のラッキーアイテムは長靴でした」 キョン「ちょうどいいじゃないか。履いて登校したのか?」 古泉「ええ。それで調子に乗って水たまりで跳ねまわってたら、気づけば靴下がビショビショになっていました」 キョン「……ラッキーアイテムってのも使い用だからな」 211 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:52:58.61 ID:TQzrSleh0 古泉「でもラッキーなこともありましたよ?」 キョン「どうせ大したことじゃないだろうが、一応きいてやる。何があったんだ?」 古泉「傘を忘れてビショビショになってしまいブラが透けている女子高生を見ることができました」 谷口「うっひょう! その女子、わかってるな! うちの学校か??」 古泉「喜ばしいことに、とても身近な人でした」 谷口「知り合いだったのか?」 古泉「ええ、朝比奈さんでした」 ガンッ 古泉「う、ウグ。顔面に……ティーカップとは……初体験です」 朝比奈「お茶、入れます?」 谷口・キョン「お、お願いします」 212 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:53:44.50 ID:TQzrSleh0 ハルヒ「へぇー、ミクルちゃん、素はこんな感じだったのね」 朝比奈「そ、そんなことないです、今も手が滑っただけで」 ハルヒ「いいのよ、別に! どじっこで内気だった少女が成長を遂げていくなんて、宇宙人も大好きそうなシナリオじゃない!」 長門「……!!!!!!!」 朝比奈「べ、別に猫を被ったりしてた訳じゃないんですよ!? ただ……」 ハルヒ「だーかーら! 細かいことはどーだっていいのよ! だって今のミクルちゃん、前よりも楽しそうだもの!」 朝比奈「そうですか? ふふ、そうかもしれませんね」 ハルヒ「……ま、納得できないこともたくさんあるけど、ミクルちゃんがそれでいいならいいわ」 朝比奈「?」 ハルヒ「そーゆーものだもんね」ジーッ キョン「ん? なんだよ」 ハルヒ「別に?」 213 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:54:03.14 ID:NxFbS8JM0 朝比奈「あーっ! お茶っ葉切らしてました!」 ハルヒ「えー? さっきどじっこから成長したって言ったけど、まだ卒業できてる訳じゃなさそーねー」 朝比奈「ご、ごめんなさい」 ハルヒ「ま、いーわ。今日はまだ少し早いし、みんなで駅前の喫茶店でも行かない?」 古泉「いいですねぇ、僕も今日は時間があるんです」 朝比奈「丁度お茶っ葉も買わないといけないですし、行きます」 ハルヒ「良い返事ね! 有希は?」 長門「コクリ」 ハルヒ「よし! じゃあさっさと準備して、行きましょう!」 214 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:54:28.66 ID:TQzrSleh0 キョン「おいおい、おれと谷口には聞かないのか?」 ハルヒ「ふふん、あんたたちの意思はきかなくたってわかってるわ。来たいでしょ??」 谷口「ほほう? でかくでるじゃねーか?」 ハルヒ「何? 来たくないわけ?」 谷口「行きたいですっ!」顔芸 ハルヒ「そう。……キョンは?」 キョン「ったく仕方ないな。付き合ってやるよ」 ハルヒ「うん! 全く素直じゃないんだから! じゃ、みんな行きましょう!」 215 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:57:17.23 ID:TQzrSleh0 ───外 谷口「あ、そうだ」 谷口「朝比奈さん、おれの自転車乗ってきます?」 朝比奈「え?」 ハルヒ「ちょっとあんた! そんな露骨なエコ贔屓は容認できないわよ! その自転車キョンに貸しなさいよ、後ろあたしが乗るから!」 谷口「露骨なのはどっちだよ! そんなでいいのかお前!」 ハルヒ「とにかく! なーんで二人だけ自転車で行こうなんて言い出すわけ? あんた友達集団と下校中に一人だけ先にスタスタいっちゃうタイプなの?」 谷口「ちげーよ! 朝比奈さんお茶っ葉買うっつってたろ? だから、みんなより先に行ってさっさとお茶っ葉買ってきちまえばいいじゃん、って思ったんだっての」 ハルヒ「べーつに、それなら喫茶店寄った後にすりゃいいじゃない?」 谷口「そりゃそーだけどよ。そしたら暗くなっちまうじゃねーか」 キョン「ぷっ、なんだそれ。さすがに心配しすぎなんじゃないのか?」 古泉「ふふ、ですが先に買って来てしまう、というのは別に悪い案でもないように思いますよ。どちらにせよ、谷口さんは自転車を学校に置いて帰る訳にもいかないのですから、それを有効活用するのも一つの手でしょう」 キョン「確かにそうかもな。それに手押しで下り坂は逆につらそうだ」 谷口「だ、だろ?」 216 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:57:33.58 ID:NxFbS8JM0 ハルヒ「むー。みくるちゃんはどーなのよ? あんたやつの後ろに乗って下り坂をサーっと行きたくなんかないわよね?」 朝比奈「涼しそうだし、楽しそう、かな」 ハルヒ「……」 谷口「よっしゃ、じゃあぱぱっと行ってきちゃいましょう!」 朝比奈「じゃあ遠慮なくー」 ハルヒ「……」 古泉「では、またいつもの喫茶店で」 谷口「あいよ。しっかりつかまっててくださいよー!」 朝比奈「言われなくてもそうします。谷口さんの運転、さながらレールのないトロッコみたいな感じですから」 キョン「面白そうなアトラクションですね」 朝比奈「ふふ。じゃあ、行ってきますね」 タッ キコキコキコキコ... 218 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:00:06.35 ID:TQzrSleh0 古泉「行ってしまいましたね」 キョン「……なんかこう目の前でまざまざと見せられると……」 古泉「さびしい、ですか?」 キョン「……そんなところだ」 古泉「それは友人に彼女ができたから? あるいは彼氏が?」 キョン「彼女、ってお前……。でも、そーゆうことなのかもな」 古泉「これから嫌でも何度も経験していくことになりますよ。友人に彼女ができて一緒にいられなくなっていく、なんてことはね」 キョン「おいおい、男友達に対して独占欲なんて抱いちゃいないぞ」 古泉「それはどーでしょう。とにかく、友人との関係は否応なしに変化していきます。自分の意思とは全く無関係にね」 キョン「そんなことぐらい知ってるさ」 219 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:00:25.00 ID:NxFbS8JM0 古泉「それでも、さびしいものですね」 キョン「お前もか?」 古泉「もちろんですよ。ふふ、いずれ貴方にも彼女ができたら、もっとさびしい思いをすることになるんでしょうね」 キョン「気持ち悪いこと言うな」 古泉「おかしな意味などありませんよ」 キョン「……俺に、彼女、ね」 古泉「変わっていくことを批判する立場に立とうなどと思ってはいないのですが……。ただ……」 キョン「ただ?」 古泉「……ずっと今のように楽しければいいのにと、僕はそう願わずにはいられないんです」 キョン「……」 古泉「僕も中学の時は朝比奈さんと同じような立場でした。自由も効かず、自分が何をしているかもわからない。身動きのとれない観測者とはつまらないものです」 キョン「……」 古泉「ですが今は……なんやかんやあって楽しいですからね。SOS団には本当に感謝しているんですよ」 220 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:02:17.74 ID:TQzrSleh0 ハルヒ「なーにしてんの! 走ってきなさい!」 キョン「おう」 古泉「らしくもない話をしてしまいましたね、急ぎましょう、涼宮さんが怒りだす前に」 タタタッ キョン「なあ古泉」タタタ 古泉「なんです?」タタタ キョン「別に彼女ができたって……変わらないもんもあるさ」 古泉「ふふ、貴方に彼女ができたら確認してみるとしましょう」 キョン「そーしてくれ」 古泉「そんなことになれば機関の仕事で大忙しになりますから、確認どころじゃなさそうですけどね」 タタタタッ... 222 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:02:57.14 ID:TQzrSleh0 ───朝比奈と谷口、商店街横の川沿いの道 キコキコキコイコ 朝比奈「ねえ、ちょっとここらへんで休んでいかない?」 谷口「いいっすよー」 キコキコキ....タッ ───川原 トスッ 朝比奈「ふー、後ろ座ってて疲れたー」 谷口「いやいや、何言い出すんすか、漕いでる俺の身にもなってくださいよ」 朝比奈「だからこうして休んでるでしょ。それに君はいつも坂道トレーニングしてるからもう慣れっこでしょ?」 谷口「辛さ、ってのはいつになっても慣れないものなんすよ!」 朝比奈「ごめんね?」 谷口「べ、別に全然だいじょーぶっす!」 223 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:04:31.68 ID:TQzrSleh0 prrrrrr 朝比奈「携帯鳴ってるよ?」 谷口「え、あ、電話だし、どーせ涼宮からさっさとこーい!って催促っすよ。出るだけ無駄」 朝比奈「ひどいw」 谷口「全くあいつの傍若無人っぷりはビックリだ。なんであんなになったんすか?」 朝比奈「さあ、性格の構築の経緯まではわからないの」 谷口「キョンが甘やかすからあんなになるんすよね。あいつがビシっと言ってやらないといけないのに」 朝比奈「ふふ、君が言ってみれば?」 谷口「おれは言ってますけど、全然効果なしっすよ」 朝比奈「なんでだろうね?」 谷口「さあ……と、ちょっと天気悪くなってきましたね」 朝比奈「ホントだ、降ってきちゃうかも。早く喫茶店行った方が良さそうね」 224 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:05:04.83 ID:NxFbS8JM0 キコキコキコ... 谷口「お茶っ葉売ってるお店ってあんな住宅地の中にあるんすね、初めて知りましたよ」 朝比奈「デパートとかにも入ってるんだけど、あのお店の方が種類が豊富だから、あそこで買うようにしてるの」 谷口「へぇー。っていうか、あの店おれの家の近くっすよ」 朝比奈「そーなの? あそこらへんに住んでるんだ。うらやましいなぁ」 谷口「お茶っ葉屋が近くにあるだけじゃないっすか」 朝比奈「あはは」 谷口「そんなにお茶好きですか?」 朝比奈「はじめは嫌だったけどねー、なんだか召使いみたいで」 谷口「あ、やっぱ思ってたんすか」 朝比奈「だってそれまではコーヒーも紅茶もお茶も何も飲んだことなかったから」 225 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:06:04.58 ID:TQzrSleh0 谷口「へー、なんか意外っす」 朝比奈「今ではお茶の楽しみも知れたし、こうして自転車も自分で漕がなくていい。……うん、SOS団入ってよかったかな」 谷口「地味におれの扱い悪くないっすか」 朝比奈「いやいや、頼りにしてるよ、アッシーくん」 谷口「みょーにうれしいのが悲しい」 朝比奈「そんなことないよ」 谷口「おれの感情なのに否定しないでくださいよ」 朝比奈「君はどうだった? SOS団入れて?」 谷口「どうって……。そうっすね……なんとなく、やっぱ良かったかな」 朝比奈「なんで?」 谷口「え?」 朝比奈「なんでSOS団入れてよかったと思うの?」 226 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:07:43.66 ID:TQzrSleh0 谷口「えっと、それは……」 谷口(自転車こぎながらでも、後ろからなんか妙な圧力を感じる……) 谷口(SOS団入れてよかったと思う……理由?) 谷口(そんなん色々あるけど……) 谷口(その中で一番大きいのはなんだろう) 谷口(……いやいや、そんなん分かりきってるさ) 谷口(親父の目ばっかり気にして、嫌ってるふりをしながらも影では褒めてほしがってた俺が……) 谷口(今では別の人の目線ばかり気にしてる) 谷口(その人に、必要とされているように感じられてる……それがうれしいからSOS団にいる) 227 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:08:08.09 ID:NxFbS8JM0 朝比奈「谷口君?」 谷口「それは……」 谷口(でも、本当にこれでいいのか?) 谷口(何か俺は変わったか?) 谷口(周りが変わっただけで、おれは何も変わってないんじゃないか?) 谷口(親父の目が気にならなくなった? それは本当か?) 谷口(ただ、逃げ場所を見つけただけじゃないのか?) 谷口(……俺は……) 朝比奈「じゃあ先に、私の一番楽しい理由を教えてあげるよ」 谷口「え?」 朝比奈「君が……いるから」 228 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:09:12.89 ID:TQzrSleh0 谷口「!!」 朝比奈「……」 谷口「……」 朝比奈「……」 谷口「……」 朝比奈「……ねぇ」 谷口「うあああああああああああああああああああ」 ブィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン テテーテレテレテレテレテレテー 229 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:11:26.32 ID:TQzrSleh0 ……キコキコキコ 朝比奈「ねえ、ちょっとここらへんで休んでいかない?」 谷口「え? あ……」 朝比奈「そろそろ疲れたでしょう?」 谷口「全然よゆーっす。それにほら、雨降りそうだし」 朝比奈「あ、ホントだ。なら急いだ方がいいかぁ」 谷口「……じゃあ急ぎましょう」 朝比奈「ふふ、どんなに急いでも力使わなくていいなんて楽だなー。……うん、SOS団入ってよかったかな」 谷口「!!」 230 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:13:43.97 ID:TQzrSleh0 prrrrr 朝比奈「あれ、携帯鳴ってない?」 谷口「いえ、どーせ涼宮からの催促の電話っすよ。無視して、それよりさっさと喫茶店行きましょう!」 朝比奈「え、あ、ちょっと、飛ばしすぎだよ!」 谷口「いえいえ、雨が降っちゃうかもしれないじゃないですか!」 朝比奈「うわ、うわ、ひゃー」 谷口(朝比奈さんがいつもより強くしがみついてくる。なんか、鼓動が聞こえてくる気がする。これは……) 朝比奈「ねぇ、なんで私がSOS団入ったか教えてあげようか?」 谷口「いや、えと」 朝比奈「君が……」 ブィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン テテーテレテレテレテレテレテー 231 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:14:52.21 ID:NxFbS8JM0 ───朝比奈と谷口、商店街横の川沿いの道 キコキコキコイコ 朝比奈「ねえ、ちょっとここらへんで休んでいかない?」 谷口「……」 朝比奈「ねぇ?」 谷口「……」 朝比奈「あ、ちょっと雨降ってきそうだね。急いだ方がいっか」 谷口「……」 232 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:15:59.17 ID:TQzrSleh0 谷口(どーやってしのげばいい……) 朝比奈「ふふ、どんなに急いでも力使わなくていいなんて楽だなー。……うん、SOS団入ってよかったかな」 谷口「そ、そーいえば昨日のテレビ見ました?」 朝比奈「見てないです」 谷口「そ、そーすか。いやー、うちの妹が馬鹿でですね」 朝比奈「谷口君妹いたっけ?」 谷口「……いないっす」 朝比奈「……ねえ、君はSOS団に入って楽しい?」 谷口(結局この流れか……避けられないのか……) 233 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:17:30.13 ID:TQzrSleh0 谷口(でも、なんて答えればいい? 仮に答えたとして、そのあとどーすればいい?) 谷口(何もうまくいくわけない。おれなんかに。おれみたいなヘタレなんかに一体何ができるってんだよ……) 谷口(親父……朝比奈さん……) 朝比奈「ねぇ?」 谷口「……楽しいっすよ」 朝比奈「なんで?」 谷口「えと……」 谷口(てきとーに嘘ついちまえよ。そんで会話を終わらせれば……) 谷口「いや、キョンと一緒にすごしたり古泉と話しがしたりできるのが……」 朝比奈「……」 234 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:19:05.97 ID:NxFbS8JM0 谷口「ってのもありますけど、本当は……」 谷口(ダメだ……。こんなおれでも、こんな場面で嘘はつきたくないんだ……) 朝比奈「……」 谷口「……」 朝比奈「じゃあ私が先にSOS団が楽しい一番の理由を教えてあげるよ」 谷口「!!」 谷口(もうすぐ喫茶店につくのに!!) 朝比奈「君が……」 prrrrrr 235 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:19:48.99 ID:3n7DlQf50 谷口(しめた!!) 谷口「す、すみません! 電話です!」 朝比奈「そんなの後じゃだめなの?」 谷口「大事な電話なんです! 出ますね!」 朝比奈「……もう」 谷口(ごめんなさい、朝比奈さん……。どーせ涼宮からです……) ピッ 谷口「はい谷口です! え……?」 朝比奈「……?」 236 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:21:06.37 ID:3n7DlQf50 ───そのころ、喫茶店にて ハルヒ「ミクルちゃんおっそいわねー! もうアイスコーヒー飲み終わっちゃうわよ!」 キョン「まだ着いてから10分しか経ってないだろうが」 ハルヒ「経ってる時間なんて関係ないわ。事実として、あたしはコーヒー飲み終えそうなんだから!」 キョン「ったく。アイスコーヒーぐらいおごってやるから落ち着け」 ハルヒ「そんなの当たり前じゃない! 恩着せがましく言わないでよね。はーい注文お願い!」 ウェイター「はい、ご注文をどうぞ」 ハルヒ「アイスコーヒー一つ、ラージで! あと、いちごエクレアも頂戴」 ウェイター「かしこまりました、ご注文は以上でよろしいですか? ……ではできましたらお持ちしますので」 ハルヒ「はーい」 キョン「……ったくこいつは感謝って言葉をしらんのか」 237 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 20:21:37.46 ID:NxFbS8JM0 ハルヒ「それにしてもミクルちゃん、珍しいわよねー、お茶っ葉切らすなんて」 キョン「そうか? そういう少し抜けてる感じ、朝比奈さんらしいと思うが」 ハルヒ「そうかしら? まだメイドが板についてないなんて……これは教育が必要ね」 キョン「やめろ、メイドをおれ好みに教育するなんて、響きがエロすぎるぞ」 ハルヒ「そこまでは言ってないじゃない」 キョン「俺が主でメイドが俺で。うお、マーベラスだ」 ハルヒ「……その組み合わせなら人手がかからなくてよさそうね」 古泉「貴方が主で執事が僕でどうでしょう?」 キョン「断る」 古泉「んふ、でしょうね」 238 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:22:32.83 ID:3n7DlQf50 古泉「話は戻りますが、さっきお茶っ葉が切れていた件ですが」 キョン「なんだ? お前が深夜にでも学校に忍び込んで一人執事でもやってたってのか?」 古泉「ふふ、誰もいない夜中の学校で一人ティータイムをするというのも悪くなさそうですが……残念ですが、それをしたのは僕じゃありません」 ハルヒ「え? じゃあ誰かやったの??」 古泉「実際に学校内で飲んだかはわかりませんが……誰もいない間にお茶っ葉を外に持ち出した人物がいます」 ハルヒ「ふーん、見上げたもんね、このSOS団の団室から備品を持ち去ろうとするなんて」 キョン「誰だ? ハルヒを敵に回すかもしれないリスクを払ってまで団室からお茶っ葉を盗み出した不届きもんは?」 古泉「とても身近な人物ですよ。普段から団室に出入ることに違和感がない人物です」 キョン「……まさか」 古泉「ねぇ? 長門さん?」 長門「……」 239 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:23:53.42 ID:3n7DlQf50 ハルヒ「ちょ、ちょっと! ホントなの?」 長門「……」 古泉「ふふ、実は見てしまったのですよ。僕が団室に忘れ物をしたときのことです。どこにあるのかさっぱりわからず、ついついロッカーの中に僕はとじこまってしまったんです」 キョン「状況がよくわからんな」 古泉「そして僕は3時間ほど、ロッカーの小さな隙間から団室の中をのぞいていました」 キョン「……」 古泉「夏の昼間のことでしたから、ほんとうに死ぬかと思いました。ですがその間に様々なことがあり目の保養となったので、それは良しとしましょう」 キョン「おい、無駄な話はそこらへんにして、本題を進めてくれ」 古泉「とにかく、そうしていると何者かが団室に入ってきて、お茶っ葉をごっそり袋に入れてからすぐに立ち去って行きました」 キョン「それが長門だったのか?」 古泉「はい」 240 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:25:40.63 ID:NxFbS8JM0 ハルヒ「で、有希は犯行を認めるわけ? いいえ、言い直しましょう。有希に判決を言い渡す、有罪!」 キョン「こんなつまらない証人でいいのか?」 ハルヒ「いいわ。どっちにしろもうこの事件は立件の地点で有希の有罪で決まってるのよ」 キョン「なんで?」 ハルヒ「何度も言わせないで! その方が面白いからにきまってるじゃない! 普段無口な有希が窃盗よ? あー、つまらないサスペンスでよく万引きGメンとかやってるけど、実際立ち会ってみると結構面白そうね! Gメンのバイト募集してないかしら?」 古泉「窃盗して捕まった女子高生役のオファーならSOS団に届いてますよ?」 キョン「あってえーな映像じゃないか! そんなの売れなくなったアイドルに回してくれ! こちとらまだまだ現役なんだぞ!」 古泉「売れなくなったアイドルに女子高生役は厳しいと思いますが……」 ハルヒ「ごちゃごちゃうるさい! とにかく、有希はなんでそんなことをしたのか正直に話しなさい! そしたら情状酌量の余地もあるかもしれないわ」 キョン「たった今有罪、って宣告したじゃないか。情状酌量も何もないだろ」 ハルヒ「じゃあ正直に話す刑を言い渡すわ!」 241 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:26:35.20 ID:3n7DlQf50 キョン「お前な……っと、ウェイターさんがコーヒー持って来てくれたみたいだぞ」 ハルヒ「あ、ホントだ……」 ハルヒ「このポーチ、ドルガバなんだけどお気に入りなのよねー。今度御殿場のアウトレット行かない? 夏服欲しいから」 キョン「なんだ突然。というか、御殿場は遠すぎだろ。そしてドルガバ持ってる高一女子ってどうなんだ」 ウェイター「こちらアイスコーヒーといちごエクレアになります」 ハルヒ「ありがとー」 ウェイター「ではごゆっくりどうぞー」 ハルヒ「……ふぅ」 キョン「なんでいきなり服の話を?」 ハルヒ「だ、だって正直に話す刑!とかそういうノリの話を他人に聞かれると恥ずかしいじゃないの」 キョン「その自覚はあったのな」 242 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:28:27.98 ID:NxFbS8JM0 ハルヒ「とにかく! 有希はその理由を話しなさい」 長門「……私は」 キョン・古泉・ハルヒ「!!!」 長門「私はただ、朝比奈みくると谷口の仲の手伝いをしたかっただけ」 ハルヒ「え、それ、どういうこと?」 長門「お茶っ葉を抜いておけば皆で喫茶店に来ることになるだろうと予測していた。加えて、その際に谷口が自転車を学校に置いていく訳にも行かず手持無沙汰になるとも想像できた」 古泉「そうすれば谷口君は自転車に乗りたいという気持ちと朝比奈さんと一緒にいたいという願望が相まって、朝比奈さんと谷口さんが二人で自転車に乗りお茶っ葉を買いに行くだろうと考えた訳ですか?」 長門「そう」 ハルヒ「なんで二人で自転車に乗ってほしかったのよ?」 長門「……」 キョン「……」 長門「私は物語に出てくるような恋愛を見てみたかった」 ハルヒ「え……」 長門「ただそれだけ」 243 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:30:26.12 ID:3n7DlQf50 キョン「……それは、長門、お前自身の願望だったんだよな?」 長門「そう」 キョン「つまり、その……」 古泉「なるほど、文学少女らしい願いですね」 キョン(毎日本を読んでこんなこと思ってたのか……。自分ではなく他人の恋愛である辺り、様々なしがらみが見てとれるな……) ハルヒ「……」 長門「……お茶っ葉を持ちだしたことについて謝罪する」 ハルヒ「いいの、いいのよ。そんなちっさいこと、気にしてなんかいないから」 長門「……そう」 ハルヒ「そんなことより、あたしうれしいのよ。しかもメッチャよ! 少しじゃないわ!」 キョン「それまたなんで?」 ハルヒ「有希もあの二人の関係を応援してるってことがわかったからよ!」 キョン「も? も、ってことは……」 ハルヒ「あたしも応援してるにきまってるじゃない! そうじゃなかったらあんな奴をSOS団に入れたりなんかしないわ!」 245 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:32:07.80 ID:3n7DlQf50 ハルヒ「まあ、そーぞー通りにへたれで中々思ったような展開を見せないからやきもきしてたんだけどね」 キョン「俺には想像以上の発展を見せてるように思うがな」 ハルヒ「何? あんたも実は気になってたんじゃないの?」 キョン「ふん、気にならない訳ないだろう。朝比奈さんだぞ?」 ハルヒ「それ、どーゆう意味よ」 古泉「ふふ、大事なSOS団の仲間だから、という意味でしょう」 キョン「大体そんなもんだ」 ハルヒ「ふーん」 古泉「実は僕も二人の仲が気になっていたんですよ。加えて、できることなら上手くいってほしいと願っていました」 ハルヒ「へえ〜……。……」 キョン「……どうした? 本人らにしてみればはた迷惑かもしれないが、お前のすきそうな話じゃないか。どうしてそんなにしんみりしてるんだ?」 ハルヒ「いえ、なんていえばいいのかしら……」 ハルヒ「うん、なんかメチャクチャ嬉しい……んだと思う」 246 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:33:36.06 ID:NxFbS8JM0 キョン「なぜ?」 ハルヒ「なんかあたし、いつもSOS団の中でも浮いてるような気がしてたから……。ほら、みんな私が突然団室入ったりするとそわそわしてたじゃない? 実はみんなあたしのこと嫌いで、蔭口とか言ってるのかなぁ、って思ってたから」 キョン(態度にでちまってたか) ハルヒ「なんか時々聞いたことないような単語が出てくるし……。みんな本音をいつも隠してるような気がしてたのよ」 古泉「そんなことは……」 ハルヒ「でもさっき、初めて有希ときちんとした会話ができたじゃない? それでみんなあの二人を応援してる、ってわかった。それでね、あたしやっとみんなと一緒になれた気がした」 長門「……」 ハルヒ「ようやくみんなで一丸になることができたな、って。野球の時はそーはいかなかったから……」 キョン「……お前もそういうこと考えてたんだな」 ハルヒ「どーゆう人間に見えてたのよ」 キョン「なんっていうか、能天気な奴っていえばいいのかね。人間らしい悩みのない奴だと思ってたさ」 ハルヒ「……あたしにだって悩みぐらいあるわよ。このSOS団だってそう、楽しいけど、みんなが何考えてるのか時々わからなくってイライラしてたわ」 キョン(お前の考えてることの方がよっぽど突拍子もなくて予測不可能だけどな) 247 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:33:51.29 ID:3n7DlQf50 キョン「なぜ?」 ハルヒ「なんかあたし、いつもSOS団の中でも浮いてるような気がしてたから……。ほら、みんな私が突然団室入ったりするとそわそわしてたじゃない? 実はみんなあたしのこと嫌いで、蔭口とか言ってるのかなぁ、って思ってたから」 キョン(態度にでちまってたか) ハルヒ「なんか時々聞いたことないような単語が出てくるし……。みんな本音をいつも隠してるような気がしてたのよ」 古泉「そんなことは……」 ハルヒ「でもさっき、初めて有希ときちんとした会話ができたじゃない? それでみんなあの二人を応援してる、ってわかった。それでね、あたしやっとみんなと一緒になれた気がした」 長門「……」 ハルヒ「ようやくみんなで一丸になることができたな、って。野球の時はそーはいかなかったから……」 キョン「……お前もそういうこと考えてたんだな」 ハルヒ「どーゆう人間に見えてたのよ」 キョン「なんっていうか、能天気な奴っていえばいいのかね。人間らしい悩みのない奴だと思ってたさ」 ハルヒ「……あたしにだって悩みぐらいあるわよ。このSOS団だってそう、楽しいけど、みんなが何考えてるのか時々わからなくってイライラしてたわ」 キョン(お前の考えてることの方がよっぽど突拍子もなくて予測不可能だけどな) 248 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:34:37.16 ID:3n7DlQf50 ハルヒ「だけど、なんか今はそういうのなくって……グスッ……」 古泉「おや……」 キョン「お前……泣いてるのか?」 ハルヒ「!! そんな訳ないじゃない! ちょっとトイレ行ってくるから! コーヒー飲んじゃだめだからね! エクレアも!」 タタタタタ... キョン「見間違えか?」 古泉「ふふ、そういうことにしておきましょう」 長門「……」 キョン「朝比奈さん遅いな。今頃何やってるんだろうか。谷口のやろう、ええいうらやましい」 古泉「僕にはそんなことより気になっていることがあるんです」 キョン「なんだ?」 古泉「谷口さんの能力ですよ。長門さん、説明していただけますか?」 249 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:35:41.19 ID:3n7DlQf50 キョン「そういや、そんなこともあったっけかな」 古泉「何を言ってるんですか。これは僕に超能力が備わったことや朝比奈さんが未来からやってきたこととほぼ同規模の疑問だと思いますが」 キョン「そーかい。おれにとってはやっかいなことでしかないさ」 古泉「まったく……。とにかく、そろそろ説明していただいても良いのではないですか? どうやら、もう涼宮さんの能力が朝比奈さんたちの関係にかかわる様子はなさそうですから」 長門「それはどうかわからない。統合思念体は違った意見を持っている」 古泉「そうだとしても、僕らの機関はそうは考えていませんよ。谷口さんはSOS団に、ひいては涼宮さんにかかわる存在ではなく、朝比奈さん個人に付随する付着物のような物であると機関は判断しています」 キョン「付着物ねぇ」 古泉「つまり僕に谷口さんの力について話したとしても、機関にその情報は伝わりません。心おきなく説明してください」 251 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:38:34.98 ID:+qys70Gn0 長門「手早く済ませる」 キョン「頼む」 長門「谷口に身に付いた力は“時を巻き戻す力”」 キョン「時を跳ぶんじゃないのか? そう谷口は言っていたが」 長門「跳ぶ、という表現はあまり相応しくない。その表現は、朝比奈みくるが存在する時間軸において作り出されたツールによる時間跳躍を説明するのにふさわしいといえる。だが谷口の持つ力は別」 キョン「つまりどういうことだ? 谷口は朝比奈さんとは違う未来から来たってことか?」 長門「違う。間違いなく、その力が身につくまで谷口は現在の時間軸における凡庸な一高校生にすぎなかった」 古泉「つまり貴方が情報爆発を観測した、と言っていたあの日に彼にその力が身に付いたと?」 長門「そう」 古泉「それは僕の超能力と同じように、ですか?」 長門「それは違う。彼はその力を体内に充填するツールを何らかの形で使用し、その力を得た」 252 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:39:03.46 ID:NxFbS8JM0 キョン「体内に充填するツール? なんだそれ、注射器みたいなものか?」 長門「そのようなもの。恐らくそのツールは朝比奈ミクルとは別の未来からやってきた何者かによって運び込まれ、それを谷口は偶然使用することとなった」 古泉「なるほど……。それで、朝比奈さんの能力とは別物なのですよね? その力の内容を教えていただけますか?」 長門「時を巻き戻す力」 キョン「? 朝比奈さんと一緒じゃないのか?」 長門「朝比奈みくるの持つ時を跳ぶ力は、同一の時間軸に二人の同一人物が存在する可能性を生み出す。しかし谷口の時を戻す力は違う。復元ポイントを定め、その地点まで自分ではなく時を巻き戻す」 キョン「随分と派手な力だな、谷口らしくもない」 長門「そう。巻き戻された分はなかったこととなる。ただし、その瞬間に未来は強い反発性によって再構築される」 キョン「?」 長門「未来はほぼ決まっている。人が何人か時を跳んでやり直したところで、それは湖に石を投げ込んで水際を波立たせるのと変わらず、すぐにまた静けさを取り戻す。巻き戻しによって未来もその力に巻き込まれ一瞬姿を消すが、同時にほぼ同じ姿をまた再構築する」 古泉「つまり結果的にはほぼ時を跳ぶことと変わらないことになる、と」 長門「世界にとってはそう。ただ本人にとっては違う。その未来はなかったことになる。本人にとっては大きな出来事」 253 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:40:37.91 ID:+qys70Gn0 ハルヒ「ふー! 今戻ったわよ! あれ? まだミクルちゃんたち来てないの?」 古泉「確かにそろそろついてもよさそうな頃合いですね」 ハルヒ「そうよね。もしかして事故にでもあったんじゃないかしら?」 古泉「考え方が僕の祖母みたいですね」 ハルヒ「ふぅん」 古泉「夕食に家に帰らないだけで、外まで出てきて待ってくれちゃうような方なんですよ」 ハルヒ「いいおばあちゃんじゃない」 古泉「いやいや、与えることが与えられる側にとっていつだってうれしいとは限りませんから」 ハルヒ「地味にいやなこと言うわね、古泉君って」 古泉「ゆっくりと現実を教えていく、というのが僕のSOS団における方針なんですよ」 ハルヒ「現実、ねぇ」 古泉「はい」 254 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:41:33.02 ID:+qys70Gn0 カランコローン... ハルヒ「あ、ミクルちゃんよ! やっほー、ミクルちゃーん! こっちこっちー!……って、え?」 ミクル「……」 ハルヒ「どうしたの? みくるちゃん?」 朝比奈「……」 ハルヒ「黙っててもわかんないわ。ゆっくりでいいから、あたしに話してみて?」 朝比奈「……」 ハルヒ「おk、むしろゆっくりは勘弁って言うなら、当社比三倍速でも構わないから」 255 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:42:21.11 ID:+qys70Gn0 朝比奈「谷口君……」 キョン「あいつに何かあったのか?」 朝比奈「うぐっえぐっ……谷口君の……おとおさんがぁ」 キョン「? あいつの親父に何かあったのか?」 朝比奈「さっき谷口君の携帯がなって……それで……」 長門「……」 朝比奈「お父さんが、倒れたって……!ふぇええええええん」 256 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:43:24.90 ID:NxFbS8JM0 ───病院 谷口「……」 タッタッタッタッタ キョン「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。た、谷口」 谷口「……」 涼宮「えと」 谷口「……」 朝比奈「……」 キョン「お父さんは、大丈夫なのか?」 谷口「……末期の……肺がんだって」 涼宮「!」 谷口「ずっと前からもうわかってたのに……入院してなかったんだってよ」 キョン「それで、今はどこに?」 谷口「病室で寝てる……。もう転移が進みすぎてて手術とかは無理だって」 257 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 20:44:22.49 ID:+qys70Gn0 長門「……」 谷口「今日明日にすぐ……ってのはないけど、しばらく意識が戻ることはないって」 キョン「それは……なんといえばいいかわからないが……」 谷口「……」 古泉「ご家族の方はどちらに?」 谷口「……お医者さんと何か話をしてる」 古泉「貴方はここで何を?」 谷口「……」 古泉「気をしっかり持ってください。こんな時だからこそ、ね」 谷口「……俺は……」 谷口「おれは、親父に嫌われてたんだ……!! 俺が馬鹿だから……。ちくしょう!」ダダダッ キョン「おい谷口! どこ行くんだ!」 朝比奈「わたし、追いかけます!」 タタッ 259 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:46:23.81 ID:+qys70Gn0 ───どしゃぶり、川原 ザーザー 谷口「……」 谷口(……やっぱり俺は何も変わってない……) 谷口(おれは親父に認められたかったんだ) 谷口(時を跳んでテストでわざわざ良い点とったのだって……) 谷口(だけど親父は俺のことを認めてくれやしなかった……) 谷口(そりゃそうさ……ズルしてんだもんな……) 谷口(結局、俺は親父から嫌われてんだ……) 谷口(だって好かれる要因がないもんな……) 谷口(一体なんで朝比奈さんは俺のことを……) 谷口(きっと朝比奈さんだってズルばっかりのホントの俺を知ったら……) 260 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:46:57.95 ID:NxFbS8JM0 ザーザー 谷口「ウグッ、ヒック」 ザーザー パパパパパタパタパタパタタパタタパ(雨が傘に当たる音) 谷口「え?」 朝比奈「……やっぱりここにいた」 谷口「……」 朝比奈「あらあら、こんなに濡れちゃって。二本持ってきたから、この傘使って?」 谷口「……ありがとうす」 朝比奈「……よいしょ」隣に座る 谷口「……」 朝比奈「……」 谷口「……」 朝比奈「君に……伝えたいことがあるんです」 261 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:49:59.74 ID:NxFbS8JM0 谷口「……」 朝比奈「……」 谷口「……今は何も聞きたくないっす」 朝比奈「いいえ、今聞いて。もうすぐ私は行かなきゃいけないから」 谷口「え?」 朝比奈「私は決まり事を守ることができませんでした。だからもうこの時間軸にとどまることはできないの」 谷口「一体、何を……」 朝比奈「私はきわめて私的な感情によって、でも強い思いによって、その決まりを破りました」 谷口「何を言ってるんすか、朝比奈さん?」 262 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:52:05.40 ID:+qys70Gn0 朝比奈「私は君のお父さんに会ってきました」 谷口「……は?」 朝比奈「会って、少しだけ話をさせていただきました」 谷口「親父、意識を回復させたのか?」 朝比奈「いいえ、そうではないんです。でも私は会って話をしてきました。そのことについて君に伝えたいことがあるんです」 谷口「……」 263 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:52:25.98 ID:NxFbS8JM0 朝比奈「本当はもっといろいろな話を君としたかったし、いろいろなところに行ってみたかった。けどお話ができるのはこれが最後です」 谷口「いったい何の話をしてるんすか、マジで……」 朝比奈「そんな風に言われても仕方ないですね。でも私のことを信頼してください。……そうとしかいえないんです」 谷口「……そりゃ朝比奈さんのことは信頼してますけど……」 朝比奈「ふふ、よかった。じゃあこれからいう言葉を忘れないでね?」 谷口「……はい」 朝比奈「君のお父さんは君のことを愛していました」 ブイイイイイイイイイン 264 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:53:15.14 ID:+qys70Gn0 朝比奈「あ、も、もう本当に時間がないの! 聞いて! 谷口君!」ピカー 谷口「な、どうして!? 朝比奈さんの足元からなんか光が……!」 朝比奈「楽しかった! 君と過ごせた時間が、とても! それだけじゃ足りない?」ピカー 谷口「どうしたんですか、朝比奈さん、体が!」 朝比奈「自分に自信を持って! 勉強なんて出来なくたっていいの! 君には君にしかできないことがあるんだもの!」ピカー 谷口「そんな、どーして、朝比奈さん! 体が、透けてっ」 朝比奈「君のことを私は信頼してるから! それを……忘れないでね」ピカー 朝比奈「さよなら。楽しかった」 ブイイイイイイイイイイイイインン..... 265 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 20:56:55.70 ID:NxFbS8JM0 谷口「??」 谷口「朝比奈さん?」キョロキョロ 谷口「あ、朝比奈さん?」 谷口「え?」 谷口「……いなくなってしまった……」 谷口「どーゆうことだ……」 タッタッタッタッタ キョン「はぁ、はぁ、こんなとこにいたのか……」 谷口「キョン! 朝比奈さんが!」 キョン「? 朝比奈さんに何かあったのか?」 谷口「それが、朝比奈さんの体が光りだしたと思ったらとつぜん姿が見当たらなくなっちまってよ……」 266 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 20:59:50.80 ID:+qys70Gn0 谷口「一体、なんなんだ……?」 キョン「……」 谷口「おい、キョン、お前何か知ってるんじゃないのか?」 キョン「なんで俺が?」 谷口「だってよ、長門がお前は涼宮の力のキーだっつってたぞ」 キョン「長門が……? なんでそんなことお前に教えたんだ?」 谷口「しらねーよそんなこと! そんなことより、何で朝比奈さんがいなくなったのか教えてくれよ!」 キョン「お、おれも知りたいぐらいだ。とにかく、今ここにいても仕方ないだろ。雨も強くなるばかりだ、とりあえずみんなのところに行こう」 谷口「……なんなんだよ……明日になればまた会えるんだよな……?」 キョン「……ああ、きっと会えるさ」 267 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:00:29.27 ID:NxFbS8JM0 ───病院、待合室 谷口「……」 ハルヒ「!! あんたどこ行ってたのよ!」 谷口「……」 キョン「すまんな、混乱してるんだ。今はそっとしておいてやってくれ」 ハルヒ「……それはわかるけど。いきなりどこかに行くからみんな心配したのよ?」 谷口「……」 古泉「まぁまぁ、こうしてびしょぬれになっている人を責めるのはやめましょう。一番つらいのは谷口君でしょうから」 ハルヒ「そうよね……。……あれ、そういえばみくるちゃんは? あんたのこと追いかけて出て行ったんだけど」 谷口「……」 268 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:05:20.59 ID:+qys70Gn0 キョン「す、すれ違いになったんじゃないか?」 ハルヒ「じゃあまだ雨の中外にいるわけ!? あたし探してくる!」 キョン「あ、えーと、あ! さっき俺が探しに行くときに会ったんだ! 朝比奈さんに!」 ハルヒ「え?」 キョン「用事があったことを思い出したらしい。家に帰らないといけないことになったから、病院には戻れない、と言っていたぞ」 ハルヒ「……そう……」 古泉「どちらにせよ、もう面会時間は終わっています。わがままを言ってここに残らせてもらっていましたが、谷口君も戻ってきたことですしそろそろ……」 ハルヒ「……そうね。谷口、お母さんはついさっき家に戻ったわ。貴方も早く家に帰ってお母さんのそばにいてあげなさい。いいわね?」 谷口「……ああ」 270 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:06:19.91 ID:NxFbS8JM0 ───家 谷口「……ただいま」 母「おかえり」 谷口「……」 母「なかなか戻ってこないから先に帰ってたわ。どこ行ってたの?」 谷口「……ちょっと、そこらへん周ってた」 母「そう。びしょぬれじゃない。お風呂沸かしてないけど、シャワーだけでも浴びてきたら?」 谷口「……あ、あのよ」 母「何?」 谷口「えと……その……。」 母「……私は前から知っていたの」 谷口「え?」 母「お父さんが病気だっていうこと」 272 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:07:34.40 ID:+qys70Gn0 谷口「なんで隠してたんだよ」 母「お父さんがそうする、って言ったから」 谷口「……なんで……」 母「わからない?」 谷口「そんなの、わかるわけねーよ」 母「……そう。ならきっと言葉で言ってもわからないでしょうね」 谷口「は? どういう意味……」 母「全く、親の心子知らずとはよく言い得た言葉よね」 谷口「なんだよ、そんなの親だって子の気持ちなんてわかんねーじゃねーか!」 母「ふふ」 谷口「……なんだよ」 母「貴方は親になったことがないでしょうけど……。私達はね、子供だったことがあるのよ?」 273 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:08:57.04 ID:NxFbS8JM0 谷口「……」 母「親っていうのは自然になれるものじゃないわ。それを子供はぜんっぜん分かってないのよね」 谷口「は? 訳がわかんねーよ」 母「良い親になるために、お父さんは頑張った。私も頑張ってる。それはいやいや頑張ってる訳じゃなくて、自分の意思で頑張ってるの」 谷口「……訳わかんねーよ」 母「それでいいのよ。親がどう、とか貴方は気にする必要がないの。だって貴方は私の子供なんだから。そして、いつか誰かの親になって同じ想いを味わうんだから。ギブアンドテイクってやつよね」 谷口「病気でぶったおれる程の頑張りを甘受しろ、って?」 母「そうね。お父さんはちょっと頑張りすぎたのかも。でも、お父さんは必至で父親であろうとしたのよ」 谷口「……」 母「……ふぅ。今日は疲れちゃった。もう寝るわ。貴方も明日学校あるんだから、早く寝るのよ?」 谷口「……」 母「おやすみ」 谷口「……おやすみ」 274 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:11:08.04 ID:+qys70Gn0 ───谷口の部屋 谷口(親父がぶったおれたのに、お母さんはずいぶんと冷静なもんだぜ) 谷口(……前々から覚悟してたってことか) 谷口(たぶん発覚した地点でもう随分進行しちゃってて……) 谷口(その上放って置いてたから、より危険になっちまったんだろう……) 谷口(……一体なんでそんなことを) 谷口(わかんねえ、わかんねぇよ) 谷口(さっさと仕事休んで入院したらよかったのに) 谷口(そしたら親父もぶっ倒れることもなくて、今だってきっともう少しは元気な姿で……) 谷口(……でも、そうしたって、もう……) 谷口(親父は少しでも病院にいる時間を短くしたかったのか) 谷口(少しでも長く、家にいたかったのか? それとも仕事?) 275 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:11:30.07 ID:NxFbS8JM0 谷口(……わっかんねぇ……) 谷口(なんでだよ、あんな俺のことを馬鹿にしてくるような親だったのに) 谷口(テストでいい点取ったって、褒めてくれもしない親だったのに) 谷口(……俺のことを嫌いで、おれも嫌い……だったハズの親なのに) 谷口(涙が……) 谷口「うぐ……ひぐ……」 …… 276 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:12:28.78 ID:+qys70Gn0 ───翌日、学校、団室 古泉「……」 キョン「……」 長門「……」 古泉「……これは由々しき事態ですよ」 キョン「……間違いないな」 長門「……」 ……。 277 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:13:50.10 ID:+qys70Gn0 古泉「機関は既に閉鎖空間において戦力になり得る戦闘員を、末端から幹部クラスまで全て、閉鎖空間発生予想地点に待機させています」 キョン「……それでも足りないかもな」 古泉「……でしょうね。僕も涼宮さんへの説得作業を終えたら直ぐに現場へ直行するように指示が下っています」 キョン「今回ばかりはどうしようもないと思うが……」 古泉「全くもって予想外な出来事でした。まさか谷口さんの加入が、朝比奈さんの離脱につながってしまうとはね」 キョン「……他人からの善意が裏目るあたり、朝比奈さんらしいといえばらしいけどな」 古泉「ドジっ子じゃすみませんよ。確信犯の天然ぶりっ子だって、ここまで世界を危険にさらしたりはしないでしょう」 キョン「朝比奈さんだって好きで未来に帰った訳じゃないだろ」 古泉「好きも嫌いもありませんよ。彼女は、いうなれば責任放棄のドラえもんです」 キョン「おちつけ。代わりに代えの団員を寄こす、って未来から通達があったんだろ?」 古泉「のび太君ならドラミちゃんでも我慢できるかもしれませんが、涼宮さんが代えの劣化品で満足するとは到底思えませんね」 278 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:16:37.89 ID:+qys70Gn0 古泉「そろそろ涼宮さんが来る時間帯ですね……」 キョン「なんか嫌な予感がする! とか言って一人どっかに出てったのが10分前のこと。奴のことだから、もう何か嗅ぎつけて帰ってくるだろうな」 古泉「長門さん、何とかなりませんか?」 長門「……」 古泉「そうですよね。もうこの状況は明らかに涼宮さんの力に関与する状況ですから、統合思念体からしたら観測の一択でしょう」 長門「……」 キョン「別に長門が悪い訳じゃない。とにかく、今はなんてハルヒに説明するかを考えないと」 古泉「最後の晩餐が昨日のスーパーカップだと思うと少々やるせないですよ」 キョン「縁起悪いこと言うな。あとお前夏を満喫しすぎだぞ」 古泉「そういえば谷口さんも遅いですね」 キョン「ん? あー、なんか用があるから遅れてくるってよ」 279 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:17:05.68 ID:NxFbS8JM0 ───理科室、ベランダ スッ フー 谷口「久々に吸う煙草、プライスレス」 谷口「カラオケの時以来か。つってもそんなに前じゃないな」スッハー 谷口「いろいろあったから随分前のことに感じるぜ……」 谷口「野球大会でて、カラオケの後、SOS団入って……」 谷口「朝比奈さんと2ケツでチャリ乗ったりしてたな」 スッ フー 谷口「ああ、そういやどれもこれもココで時を跳ぶ力を手に入れてからだっけ」 谷口「……お、手首の数字が1になってる。この前3だったのに……」 谷口「あ、これ、力を使える回数なのか」 谷口「……あと、一回か……」 280 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:21:03.50 ID:+qys70Gn0 谷口「世話になったな、この力にも」 谷口「……うん、世話になった」 谷口「俺みたいな人間が持っちゃダメだな。やりなおせるならもっと堕落しちまう」 谷口「ふぅ」 谷口「昨日はなんで時を跳んじまったんだろう」 谷口「団室行こう。とにかく、朝比奈さんに会って……話はそれからだぜ」 スッフー ゴシゴシ 谷口「よし、行くぜ!」 281 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 21:22:06.16 ID:NxFbS8JM0 ───団室 ガチャッ 谷口「お、お、お、おいすー」 ハルヒ「!!! あんた、ちょっとどーゆーことなのよ!!」 谷口「ハ?」 涼宮ハルヒはグーパンチを放った! 谷口「ソオイ! いってぇじゃねえか! 何すんだよいきなりよ!」 ハルヒ「問答無用よ! なんでミクルちゃんが転校することになったか教えなさい!」 谷口「……は? すまん、今なんて?」 ハルヒ「しらばっくれてんじゃないわよ! 最後にミクルちゃんとあったのはアンタなんだからね! 一体あんたミクルちゃんに何したのよ!」 キョン「お、落ち着けハルヒ! 別に谷口のせいで転校することになった訳じゃないぞ、親御さんの都合だそうじゃないか」 ハルヒ「そんなの信じられないわよ! 昨日まであんなにピンピンしてたのに!」 282 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:22:36.73 ID:+qys70Gn0 ハルヒ「……ミクルちゃんがいなくなったのは、最近楽しそうだったことと何か関係があるの?」 谷口「え?」 ハルヒ「実は、もうSOS団やめて遠くに引っ越しできるから楽しそうだったんじゃないかしら?」 キョン「お、おい、お前何言ってるんだ。そんな訳ないじゃないか」 ハルヒ「そんなこと分からないじゃない!! いつもお茶くみばかりさせられてた欝憤が溜まってたのかもしれない!」 古泉「別にいやいやお茶を入れていた訳ではないと思います。彼女も楽しんでいたじゃありませんか」 ハルヒ「……」 キョン「なあハルヒ、朝比奈さんはきっとここで幸せだったと思うぞ? あんなに笑ってたんだ、幸せじゃないハズないじゃないか」 ハルヒ「……そんなこと、わからないじゃない」 キョン「そう卑屈になるな。そんなことより、引っ越し先で朝比奈さんが楽しくやれることを願ってやろうじゃないか」 ハルヒ「そりゃ、あたしだってミクルちゃんには幸せになって欲しいわよ。だけど、それとこれとは話が別なの! なんでミクルちゃんがいないのよ! 絶対嫌! そんなの絶対許さないんだから!」 ガチャッ タッタッタッタッタ 283 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:25:22.91 ID:+qys70Gn0 古泉「行ってしまいましたね……」 キョン「ああ。全く、仲間思いなのか自己中なのかハッキリしてほしいもんだな。意見しづらいぞ」 古泉「両方なのでしょう。彼女にはSOS団しかありません。だからそのSOS団の中で幸せでいてくれるのが彼女にとってはベストなのでしょうね」 谷口「……」 古泉「ところで、さっきから僕の携帯がずっと鳴っています。感覚でもわかりますが、過去最大の閉鎖空間が発生しているようですね」 キョン「……そーいやそういう話だったな。説得失敗ってことか」 古泉「ふふ、もとより成功の見込みはありませんでしたかけどね。なのでほとんど試みもしませんでしたが、最後に涼宮さんの笑顔が見られなかったのは残念です」 キョン「……おい、マジで今日が最後の日になるのか?」 古泉「さて……。少なくともわかっていることは、明日からは世界が変わるということです。あるいは“この間”と同じようになるとすれば……生まれると言いなおした方がいいでしょうか」 キョン「……」 古泉「この間と同じ方法で切り抜けられませんかね?」 キョン「今回は無理そうだな」 古泉「……そうですか。残念です。僕ももう少しSOS団にかかわっていたかったのですけどね」 284 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:26:01.33 ID:NxFbS8JM0 谷口「……」 谷口(なんとなく話は読めた) 谷口(涼宮の力で世界崩壊の危機。そのトリガーとなったのは朝比奈さんの消失、か) 谷口(やっぱ昨日光に包まれてたのはそういうことだったのか……) 谷口(もう朝比奈さんに会えないのか?) 谷口(というか、これもしかして俺のせいで世界危機なんじゃねーの?) 谷口(だって朝比奈さんが禁則事項とやらを破ったのも俺が病院を飛び出したから……) 谷口(朝比奈さんは親父に会いに行った、って言ってもんな) 谷口(……世界、終わっちまうのか) 谷口「……」 谷口(あ……そっか、そーすりゃいーんじゃねーか) 谷口「ひとつだけ、世界を救う方法があるぜ」 キョン・古泉「!」 285 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:26:31.79 ID:+qys70Gn0 古泉「い、いったいそれはどーゆう……」 谷口「俺が時を巻き戻せばいいんだ。朝比奈さんが禁則事項を破る前まで、な」 古泉「なるほど! そうすれば朝比奈さんが未来に帰ることもなくなる訳ですね?」 谷口「おうよ、そーゆうことだぜ」 古泉「最高の解決策だと思いますよ。ですが……」 谷口「何か問題があるのか?」 古泉「いえ、別に……。きわめて私的な感情ですので、無視していただいて結構です」 キョン「……」 286 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:28:59.71 ID:NxFbS8JM0 古泉「あたりがだんだん暗くなってきました。谷口さん、急いで準備の方をお願いします」 谷口「おうよ。……あのよ」 キョン「なんだ?」 谷口「いや、なんていうか。……色んな想いを裏切っちまってすまん」 キョン「どうしたんだ、突然」 谷口「お前らに言っても仕方がないのかもしれないけどよ……。時を跳んで、いろんな人の必死な想いを、意味ないもんにしちまったと思うんだ」 古泉「それは……」 谷口「それがよ……申し訳なくって……」 287 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:29:36.09 ID:4Hjdw0XG0 キョン「谷口!」 谷口「なんだ?」 キョン「巻き戻した世界でも、俺はお前とまた同じ関係になっちまうと思うぜ」 谷口「え……?」 キョン「そう、なりたいんだ。多分だが、時間を巻き戻して同じ場面に立ち会ったとしてもよ、人って同じ選択をしちまうもんだと思うんだ」 谷口「……そうかな」 キョン「だって過去に戻ったってその時の俺なんだ、同じもん選ぶにきまってる! だから最大限幸せを目指してやってきた結果だと思うんだ、今の自分が」 長門「……」 キョン「だから時間を巻き戻すことに気負いすることなんてないさ」 谷口「……ありがとな。でも、巻き戻したら絶対こんな事態にならないことだけは約束するぜ」 288 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:31:11.02 ID:4Hjdw0XG0 キョン「ああ、頼んだぞ。もう行ってくれ」 谷口「……んじゃ、ちょっくら走ってくるわ」 キョン「おう、過去で待ってるぜ」 ガチャッ タッタッタッタッタ.... 古泉「行ってしまいましたね」 キョン「ああ。さて、おれたちにできることはなくなっちまったな。ん? どーした長門?」 長門「……外」 キョン「?」 長門「窓の外」 古泉「窓、ですか……って、え?」 ガチャッ バーン! ハルヒ「全部聴かせてもらったわよ!」 キョン「ハ、ハルヒ……」 289 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:32:05.23 ID:NxFbS8JM0 ハルヒ「なるほどねぇー、ミクルちゃんが未来人でルール破ったから未来に帰ってしまったと。そんで、そのルールを破る前まで谷口が時を巻き戻そうとしてる、って訳ね?」 長門「……そう」 ハルヒ「いやー、久々に見る明晰夢だわ、これ。あたしwktkしてきちゃった!」 キョン「は?」 ハルヒ「なーんかおかしいと思ってたのよねー、朝から。だってミクルちゃんがいなくなる訳ないんだもの!」 古泉「……えっと、ですね……」 ハルヒ「それでこの面白設定! ミクルちゃんが持ってるのはドジッ娘巨乳属性だけで、未来人だなんてある訳ないのに! いいわ、これぐらい楽しい夢の方が明晰夢には最適よ!」 キョン(明晰夢ってなんだ)コソコソ 古泉(夢の中で、自分が夢の中にいることを自覚し、思いのまま動くことができるという現象だと聞いています)コソコソ キョン(なるほど、つまり今ハルヒは夢の中にいると勘違いしている訳だな? なんでそんなことに……) 古泉(わかりませんよ、実際世界は涼宮さんの願望と同化し始めている。辺りが少し薄暗いのも、“この間”の時と似ているように思いませんか?) キョン(たしかにな……。とにかく、今はハルヒにあわせるしかないか) 古泉(そうですね。早く谷口君が時を巻き戻してくれることを祈りましょう) 290 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:32:28.92 ID:4Hjdw0XG0 ハルヒ「フンフーン。よし、決めたわ! あたしも時間を跳ぶことにします!」 キョン「は? お前何を……」 ハルヒ「いい? 谷口が時間を巻き戻して、それでミクルちゃんと会うことを避けたら、結局ミクルちゃんは作り笑顔職人のままになっちゃうじゃない! あたしはそんなの嫌なのよ! だから、時を戻してもっと根本的な解決を探ることにするの!」 古泉「えっと、それは良いアイデアですね」 ハルヒ「でしょ? じゃ、有希!」 長門「……」 ハルヒ「貴方を宇宙人に任命します! いい? 貴方は宇宙人なの! それもメッチャ凄いのよ? 未来人なんて目じゃないの!」 長門「……」コクリ ハルヒ「じゃ、そーゆーことだから、あたし達を谷口に合わせて過去に連れて行きなさい!」 長門「……了解した」 キョン「これは……全く流れが読めなくなってきたぜ……」 291 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:33:45.38 ID:4Hjdw0XG0 ───そのころ、谷口。自宅。リビング。 谷口「時間を巻き戻しても、自分のいる場所は変わらないからな」 谷口「戻したい時間の場所で跳ばないと」 谷口「家には、誰もいないみたいだな。親父のところにでも行ってるんだろうな」 谷口「……」 谷口「さっきキョンにはまた同じ関係に戻りたいって言ったけど……」 谷口「朝比奈さんとは、もうその関係を続けてくのは無理だよな……」 谷口「だってそしたらまた、朝比奈さんが禁則事項を破っちまうかもしれないし」 谷口「もう俺が時を跳べるのは一回きりなんだ。ミスはゆるされねーぜ」 谷口「そしたら……戻るのは、この力を手に入れる前の方がいいよな」 292 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 21:34:14.80 ID:NxFbS8JM0 谷口「……」 谷口「もう、朝比奈さんとの思い出にも意味がなくなるんだな」 谷口「片方しか抱えてない二人の思い出って、どんな感じなんだろう」 谷口「どうでもいいか」 谷口「引きずったらつらいぜ。さ、深く考えずに……」 谷口「跳ぶとしましょうや……」 ブィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン テテーテレテレテレテレテレテー …… TV「カンッケーないから、関係ないからっ」 293 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:35:23.08 ID:4Hjdw0XG0 谷口「……」 TV「朝日で構ってもらえないからTBSでやるお!」 谷口「……ただいま」 谷口父「……ゴホッゴホッ。おい、お前もう学校の勉強はすんだのか?」 谷口「親父……」 父「どうなんだ?」 谷口「……ちょっと、出かけてくる」 父「こんな遅くにか?」 谷口「すぐ帰ってくるから」 父「気をつけるんだぞ」 谷口「……ああ。いってきます」 294 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:36:14.88 ID:NxFbS8JM0 ───夜、河川敷 谷口「……」 スーッ フー 谷口「静かだぜ……」 谷口「……こんな時間じゃ、水切りしてる子供もいないわな。そりゃそーだ」 スーッ フー 谷口「……」 谷口「これで良い。やるべきことをやったんだ」 谷口「達成感ぐらいあってもいいもんだと思うがな」 スーッ フー 谷口「……戻ってきたってのに、なぜかやらなきゃいけないことだらけな気がする」 谷口「とりあえず、明日から本気出そう」 谷口「しばらくここでのんびりさせてくれ」 295 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:36:47.72 ID:4Hjdw0XG0 …… 谷口「さて、と」 谷口「そろそろ行くか」 谷口「……」 谷口「ん? 誰か来たぞ? 暗くてよく見えないが、あれは……」 谷口「親父と……」 谷口「……まさか!?」 谷口「こっち来る、とにかく隠れねーと!」 296 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:37:34.46 ID:NxFbS8JM0 ───谷口から少し離れた河川敷上の道 ???「わざわざこんなところまでお連れして申し訳ありません」 父「別に構わないですよ。……それで、お話があるということでしたね」 ???「……はい。貴方の息子さんのことなんです」 父「……あいつのお話ですか。失礼ですが、朝比奈さんは息子とはどのようなご関係で?」 朝比奈「……高校の部活での後輩なんです」 父「なるほど、そうでしたか。一体息子はなんの部活をしているんですか?」 朝比奈「えと……ぶ、文芸部です」 父「あいつにそんな趣味があったんですか……。いや、お恥ずかしいのですが息子のことには疎くて、高校で何をしているか全くわからないんですよ」 朝比奈「そうなんですか……」 父「話の腰を折って申し訳ない。ささ、お話を聞かせて下さい」 朝比奈「……」 父「?」 298 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:39:32.14 ID:4Hjdw0XG0 朝比奈「単刀直入に言います。貴方は、息子さんのことをどのようにおもっているんですか?」 父「どのように、ですか」 朝比奈「彼は、自分自身が父親に嫌われてると思っています」 父「そう息子が言ったのですか?」 朝比奈「……はい」 父「息子は私について、何と?」 朝比奈「自分が勉強が出来ないから、頭が悪いから父親に嫌われていたんだ、って」 父「そんなことを言っていたのですか」 朝比奈「……ええ」 父「そうですか」 299 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:40:27.31 ID:NxFbS8JM0 ───会話の近くの暗がり キョン(なるほど、これが朝比奈さんの禁則事項破りの現場か)コソコソ 古泉(……谷口さんの父親がいなくなって、朝比奈さん一人になりましたね)コソコソ キョン(しかしこれ、巻き戻された世界の出来事だよな? この朝比奈さんはいないハズじゃないのか? これも俺達と同じように長門の力か?) 長門(……そう。谷口の時を巻き戻す力が発現する前に、この事象に関してプロテクトをかけた。私たちも同じ様なもの) 古泉(なるほど……では、彼女はもうすぐ未来に戻って、つまり消えてしまうのですね?) 長門(……)コクリ ハルヒ(さあて……こっからが団長の腕の見せ所よね。どうやってアイツに私のことを見直させてやろうかしら) キョン(なんで見直させる必要があるんだ……? 何かあったか?) ハルヒ(……あれぇ、そーいえばそうね。でもとにかくアイツにガツンと言ってやんなきゃ気がすまないのよ) キョン(勝手な話だなおい……) 300 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:41:02.50 ID:4Hjdw0XG0 朝比奈「勉強ができること、ってそんなに大切でしょうか? 彼には彼にしかできないことがたくさんあります」 父「……」 朝比奈「私だって、彼に救われました。彼は、とても優しい人なんですよ」 朝比奈「彼は勉強できないことに負い目を感じている。でも、勉強して良い大学や良い仕事につくことを親が期待するなんて、そんなこと間違っていると思います」 父「ふふ、貴方はとてもしっかりした人ですね。……そして、貴方こそとても優しい人なのでしょう」 朝比奈「……」 父「貴方は何も間違ったことを言っていない。だけど、一つだけ勘違いしていることがありますよ」 朝比奈「……え?」 父「私は確かに息子のことを何も知りません。そんなこと私自身が一番良く分かっています。ですがわかって欲しいのです。私が息子にどんな想いを抱いているか」 朝比奈「……」 父「期待? そうではないんです。親が子に対して叱るのは、何かを期待しているからじゃないんですよ」 朝比奈「じゃあ、なぜ……」 父「親だからです。愛しているからですよ」 谷口「……!!」 301 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:41:28.48 ID:NxFbS8JM0 父「良い親になろうとするのは、難しいことです。愛するということは、与えるということと同議ではありませんから」 谷口「……」 父「優しくすることは簡単なことです。ですが、叱るということはとても難しい。結果、きっとうまくいかなくなってしまうのでしょう。子に嫌われたい親なんていないんですよ」 谷口「……」 父「それでも私は息子を愛している。それだけはハッキリ言えますよ」 朝比奈「……はい」 谷口(……そんなこと、親父は俺に一度だって言ったことなかったじゃねーか!) 302 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:42:39.67 ID:4Hjdw0XG0 父「ただ……。言葉にしてそれを伝える勇気が私にはなかった」 谷口(……) 父「蔭ながら支えてやることで、勝手に伝えているつもりになっていたんです」 谷口(……あ) 父「相手に理解してもらおうと、私からは伝える努力を怠りました。ですが私は自分がやっていることに満足していたんです」 谷口(……まさか) ───谷口:病気でぶったおれる程の頑張りを甘受しろ、って? ───母:そうね。お父さんはちょっと頑張りすぎたのかも。でも、お父さんは必至で父親であろうとしたのよ 父「必死に働いて、家族を養う。そして時に、二日酔いで帰ってきた息子にウコンを買っておいてやったり……。そんなことでしか愛情表現ができなかった。はは、息子が酒を飲めるような年になって嬉しかったんですよ、本当は。」 父「私は……卑怯者だったのかもしれない……」 谷口(……) 303 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:43:24.62 ID:NxFbS8JM0 父「朝比奈さん。貴方からは非常に大切なことを教わりました」 朝比奈「え?」 父「いつになるかわかりませんが……いつか私も息子と腹を割って話がしたいと思います」 朝比奈「……ありがとうございます」 父「貴方はとても立派な人だ。貴方のような先輩を持てて息子は幸せ者です。これからもぜひ仲良くしてやってください」 朝比奈「こちらこそ、谷口君のような後輩を持てて……嬉しいです」 父「さあ、もう遅い。貴方はどちらにお住いですか? 車で送りましょう」 朝比奈「えっと、すぐ近くなんで大丈夫です」 父「そうですか。息子に送らせたいところなんですが、あいにく留守にしていました」 朝比奈「いえいえ……これで大丈夫です」 304 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:43:52.34 ID:4Hjdw0XG0 ───会話の近くの暗がり 谷口(……) 谷口(違うんだ、親父……) 谷口(親父はひきょう者なんかじゃないんだ……) 谷口(卑怯者は俺だ……ちくしょう……) 谷口(ちくしょう……俺は……) ハルヒ「ちょっと、あんた」 305 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:44:28.50 ID:NxFbS8JM0 谷口「な、どうしてお前がこんなとこにいるんだよ……!?」 ハルヒ「どーでもいいでしょそんなこと」 谷口「でも……俺に何の用だよ?」 ハルヒ「何の用? あんた副団員の癖に、SOS団のこと何にも分かっちゃいないのね」 谷口「副団員? それは跳ぶ前の話じゃ……」 ハルヒ「はぁ。ホント分かってないわ! 有希、言ってやって頂戴!」 長門「……」 谷口「長門……?」 長門「貴方には感謝している」 谷口「え?」 306 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:46:20.02 ID:TJNDc/U30 長門「ヒューマノイドインターフェイスという形で地球に腰をおろしてから3年たつ。その三年間で最も濃く楽しい数週間を体験させてもらった」 谷口「……別に俺は何も」 長門「だが、貴方には悪いことをしたと思っているのも本当」 谷口「……え?」 長門「今回、私が学習したことがある」 谷口「……なんだよ」 長門「……想いを伝える言葉がどれほど人を変えるかということ」 谷口「……」 長門「私はこれまで、強い想いを抱いたということがなかった。だれかに伝えたということも」 谷口「長門……」 長門「そしてそれを初めてしたいと願った。許可して欲しい」 谷口「……ああ、言ってくれ」 長門「貴方のことを信じている。根性を、見せて欲しい」 307 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:47:19.97 ID:NxFbS8JM0 キョン「……な」 古泉「……長門さんが……」 長門「過去、貴方ほど涼宮ハルヒに盾突いた男は一人を除いていない」 キョン「……む」 ハルヒ「そういえばそうね。谷口! 誇っていいわよ!」 谷口「そ、そんなもん」 長門「貴方には十分、想いを伝える強さがある」 谷口「強さ……」 長門「貴方のことを信じた私を……朝比奈ミクルのことを信じてほしい」 谷口「俺を信じた……?」 ───朝比奈:君のことを私は信頼してるから! それを……忘れないでね ───朝比奈:さよなら。楽しかった 308 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:47:47.48 ID:TJNDc/U30 谷口「信頼……されてたのか?」 キョン「じゃなきゃ朝比奈さんと一緒に帰らせたりしたものか」 古泉「やれやれ。野球大会の時からずっと応援していたのに気付かなかったんですか? キョン「いけよ。朝比奈さんがいっちまうぞ?」 ハルヒ「行きなさいよ! ミクルちゃんのことを泣かせたりしたら承知しないんだからね!」 谷口「……お前ら……」 長門「信頼を……彼女にも返してあげて欲しい。彼女の為に」 谷口「うぁ……ひっぐ……」 ハルヒ「泣くには早いわよ! ほら、時間がないんだから!」 谷口「お、おう……」 ダダダダダダ 309 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:48:15.55 ID:NxFbS8JM0 朝比奈「今日はお時間をありがとうございました」 父「こちらこそ。それでは……」 谷口「待て!!!!」 朝比奈「た、谷口君!?」 父「お前……どうしてここに……」 谷口「……」 谷口「ごめんなさい」 310 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:48:55.30 ID:TJNDc/U30 ハルヒ(はぁ、何言ってるのよアイツは!)コソコソ キョン(まぁまぁ……落ち着けよ。信じるんだろ?) ハルヒ(まったく……) 朝比奈「な、何を」 谷口「俺はうそつきです。卑怯者です。なまけもんだし、人の為に自分を投げ出したりすることもできません」 谷口「テストの点だって、ズルしていい点取りました。努力なんて全然してません」 谷口「……ごめんなさい」 311 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 21:49:52.63 ID:NxFbS8JM0 父「……」 谷口「だけど……だけど、これからいう言葉だけは……嘘じゃないです……」 父「……」 谷口「親父……これまでありがとう。頼むから……すぐに入院してくれ」 父「なぜそれを……」 谷口「俺、これから頑張るから。絶対頑張るから。今度は嘘じゃない、約束する。今、この瞬間から頑張るから」 父「……」 谷口「親父、頼むから入院してくれ。俺も、いつか親父と酒が飲みたいんだ」 父「お前……」 谷口「……頼む」 父「……そうか。わかった。そうすることにする」 谷口「親父!」 父「……先に帰る。遅くならずにお前も帰れよ?」 谷口「ああ」 313 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:51:44.47 ID:TJNDc/U30 谷口「……」 朝比奈「……」 谷口「朝比奈さん」 朝比奈「……もう謝らないでください」 谷口「……はい」 朝比奈「もう私は貴方に思いを伝えたことがあるのかな?」 谷口「……はい」 314 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:52:15.57 ID:NxFbS8JM0 朝比奈「良かった、肩の荷が降りたよ」 谷口(謝らないっ!) 谷口(謝っちゃだめだ!) 谷口(だってまだ終わっちゃいないんだ!) 谷口(前へ! 進め俺!) 谷口「朝比奈さん!」 朝比奈「はい」 谷口「明日! 明日食堂に来て下さい!!」 315 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:52:52.07 ID:TJNDc/U30 朝比奈「良かった、肩の荷が降りたよ」 谷口(謝らないっ!) 谷口(謝っちゃだめだ!) 谷口(だってまだ終わっちゃいないんだ!) 谷口(前へ! 進め俺!) 谷口「朝比奈さん!」 朝比奈「はい」 谷口「明日! 明日食堂に来て下さい!!」 316 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:53:29.81 ID:NxFbS8JM0 朝比奈「え?」 谷口「明日! 食堂に来て下さい!」 朝比奈「……」 谷口「ずっと待ってます! ずっと待ってますから! ずっと!」 朝比奈「……」 谷口「席取って、ずっと待ってます! どうしても貴方に伝えたい言葉があるんです!」 朝比奈「……でも」 谷口「絶対来て下さい、ずっと待ってますから!」 朝比奈「……」 谷口「……」 朝比奈「……はい」 谷口「……ありがとうございます」 317 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:54:08.72 ID:TJNDc/U30 朝比奈「え?」 谷口「明日! 食堂に来て下さい!」 朝比奈「……」 谷口「ずっと待ってます! ずっと待ってますから! ずっと!」 朝比奈「……」 谷口「席取って、ずっと待ってます! どうしても貴方に伝えたい言葉があるんです!」 朝比奈「……でも」 谷口「絶対来て下さい、ずっと待ってますから!」 朝比奈「……」 谷口「……」 朝比奈「……はい」 谷口「……ありがとうございます」 318 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:54:42.39 ID:NxFbS8JM0 朝比奈「それじゃあ、また……」 谷口「また、明日」 朝比奈「……はい」 タッタッタッタッタ キョン「谷口、行っちまったな」 古泉「あれでよかったんでしょうか」 キョン「さあ……」 長門「……」 319 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:55:25.26 ID:TJNDc/U30 朝比奈「うぅ……ひぐっ……」 ハルヒ「ミクルちゃんっ!」 朝比奈「ふぇっ? あ、涼宮さん!」 ハルヒ「ミクルちゃん、泣かない!」 朝比奈「え」 ハルヒ「泣かない! こんな時に泣いてどーすんのよ!」 朝比奈「でも……」 ハルヒ「怒りなさい! あんな想いの伝え方をした谷口の野郎、ぶっ殺してやるわって勢いで!」 キョン「いきすぎだろ」 朝比奈「……はい!」 320 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:55:49.17 ID:NxFbS8JM0 長門「もう時間」 ハルヒ「話はすんだわ。離陸準備、緑一色てなもんよ!」 古泉「……いよいよ、消える訳ですね」 キョン「どうした、さっきの元気はどうした?」 古泉「空元気アピールですよ。そうでなきゃあんないらないレス二つも使いません」 ハルヒ「何よ? 古泉君乗り物酔いするタイプ? 修学旅行で吐かないようにね、変なあだ名つけられたらSOS団の名に傷つくから」 古泉「十分に留意しておきますよ」 キョン「それで、本当に一体どうしたんだ?」 古泉「……自分がこれから消える訳ですよね」 キョン「ああ、そうだな」 古泉「そういうシステムであるということを知ってしまった以上、時が巻き戻されるのに身を任せるのは少々怖いではありませんか」 321 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:56:11.56 ID:TJNDc/U30 古泉「確かにこの時間の僕は生きていくのでしょう。でも、皆と同じ関係でいられる保障はどこにもないじゃないですか。楽しかったここ数週間のことを思うと……」 ハルヒ「な、何言ってるのよ! ビビリーキングは関口一人で十分じゃないの!」 古泉「ふ、ふふ。危惧する癖はいつになっても治りませんね……」 長門「大丈夫」 古泉「え?」 長門「強い思いは時を越えても変わらない。時が巻き戻った世界でも、私たちは今の私たちとなんら変わらない関係を築きあげる」 キョン「長門……」 ハルヒ「言うようになったじゃない、有希! そうなの! なんてったって私たちはSOS団なんだからね! 時の逆行? おもしろいじゃない! 時の流れなんかに左右されない本物の絆ってもんを見せつけてあげるんだから! ね? みんなっ!」 キョン「……そうだな!」 古泉「……ですね! ふふ」 朝比奈「わたしもSOS団でいられて良かった!」 ハルヒ「よっしゃあ! そうこなくっちゃあ! じゃあみんな、また明日あいましょ!」 また、明日! 323 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:56:44.60 ID:NxFbS8JM0 ───翌日 昼休み 食堂 谷口「よし、ちゃんと席取れてるよな」 谷口「一応三人分取っておいたけど、思えばキョン達を呼ぶ訳にもいかんな」 谷口「あとは……」 谷口「来てくれるだろうか……」 谷口「あ、あれは」 谷口「おーい、紺野せんぱーい!」 紺野「へ、あたし?」 324 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:57:28.50 ID:TJNDc/U30 谷口「まま、座ってくださいよ、三人分の席取っておいたんで」 紺野「三人分? ってどーして君あたしの名前知ってるわけ? どっかで会ったっけ?」 谷口「まーまー、固いことはどーでもいいじゃないですか。そんなことより、これ!」 紺野「何これ……え、野球のチケット?」 谷口「そーっす!」 紺野「え? え? このチケットくれんの? どーゆーこと?」 谷口「Time waits for no oneっすよ? 自分に正直にならないと、間に合わなくなりますよ? あ、三枚とも差し上げます。それにここの席も全部使っちゃっていいんで。それじゃっ」 紺野「ちょ、ちょっとお!」 谷口(さて、ちょっと離れたとこから様子伺いますかね) 325 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:58:17.88 ID:NxFbS8JM0 紺野「だから謝ってるじゃん! ほ、ほら、チケットあるからさ、今日いこうよ!」 千昭「えー? きょおー? どーすっかなぁ−」 功介「んじゃあ、おれと二人でいくか、マコト!」 紺野「功介! じゃあそうしよっかぁ? 千昭はいきたくないみたいだし……?」 千昭「別に行かねぇなんていってねーだろ! しーかーたーねーなぁ、お前らがそーんなに言うなんだったら、付き合ってやるよ」 功介「来たくなかったら、来なくたっていいんだぜ?」 千昭「んだと? お前こそ図書館で勉強してた方がたのしいんじゃねーの?」 紺野「まぁまぁ、とにかくさ! あたしお腹減ったし、食券買いに行こうよ!」 谷口(……。その時になれば、あいつらも走り出すだろうし。きっと心配いらないよな。そーゆーもんだもんな、こーゆーのって) 谷口(ってかついつい席譲っちまった。まぁーいーか。立って待つか) 326 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:59:02.47 ID:TJNDc/U30 谷口(……) 谷口(……) 生徒A「次移動教室だし、行こうぜー」 生とB「うわ、もうそんな時間かよ」 谷口(……) 谷口(……) 327 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 21:59:10.59 ID:NxFbS8JM0 キーンコーンカーンコーン 谷口「……」 学食のおばさん「ちょっと君、もう授業始まってるけど、いいのかい?」 谷口「……はい」 学食のおばさん「そーかい……。ここ3時までだから、それまでには教室戻りなよ」 谷口「ありがとうございます」 328 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 22:01:37.59 ID:NxFbS8JM0 キーンコーンカーンコーン ガチャッ 学食のおばさん「な、なんでまだこんなとこにいるんだい!? 学食しまってからずっとそこにいたのかい?」 谷口「はい」 学食のおばさん「もう5時回ってるよ? 一体何を待っているんだい? いつ約束したんだい?」 谷口「……昨日、ここで待っていると約束しました」 学食のおばさん「昨日約束して、忘れられてるのかい。ずいぶん薄情な人だね」 谷口「……信じてますから」 学食のおばさん「そうかい。それじゃあ私は帰るけど、遅くなりすぎる前に帰るんだよ??」 谷口「……はい」 329 名前:1 ◆kVDydGKdwc [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 22:02:39.48 ID:NxFbS8JM0 谷口「……7時か……」 谷口「もう見回りが来て、帰らされちまうな……」 谷口「……だめかな」 谷口「いや、信じるさ」 谷口「彼女は来る。だって約束したんだから……」 ───タッタッタッタ 谷口「……!」 バチーーーン! 谷口「あいたーーー!! 突然何するんすか、朝比奈さん!」 朝比奈「馬鹿! へたれ! ……好き?」 谷口「……好きです!!! 大好きです!!」 完 332 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/03/03(水) 22:06:39.44 ID:NxFbS8JM0 最後までお読みいただいた方、ありがとうございました。 ラストとか納得できなかったらごめんなさい>< 何か質問などあればいくらでも受けるので、どうぞー