魅音「罰ゲームは一週間いじめられるに決定!」 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/01/23(土) 22:24:12.10 ID:+yfpyVVX0  いつものように軽い気持ちで言った。普段よりちょっときつめの罰ゲームだけどね。  痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い。 「痛い、痛いよ圭ちゃん! 本当に本当に痛い! 痛い! ああああああああああああ」 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/01/23(土) 22:25:12.34 ID:+yfpyVVX0  今日も教室で集まり部活。ポーカーでいざ勝負!  トランプのカードはポーカー用に新品を用意したので、傷がついている物は使用していない。  勝負はもう架橋。 「圭ちゃん、今なら降りられるよ。これ以上行けば、おじさんか圭ちゃんが罰ゲームってことになる」  私の手札は4カード、ほぼ負けることはない。だからこそ圭ちゃんが乗るように挑発する。  机を挟んで対峙した圭ちゃんは、何かを考えているようだ。 「へっいい挑発だぜ! ここで降りたら男が廃るってもんだ! 勝負!」  圭ちゃんが挑発に乗った。 「圭一くん大丈夫かな……かな」 「見え見えの挑発に乗るなんて、圭一さんも大人気ないですわね」 「圭一、負けたらかわいそかわいそしてあげるのです」  レナ、沙都子、梨花ちゃんが三者三様に勝負を見届けている。 「いいねぇ、おじさん、圭ちゃんのそういうとこ好きだよ。 勝負!」  私は手札を公開した。 「4カード!」 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/01/23(土) 22:26:54.30 ID:+yfpyVVX0 「ここで4カードとは魅音さんも鬼ですわねぇ」  沙都子が微妙な皮肉を口にする。 「みぃ、圭一がピンチなのです」  梨花ちゃんが心配そうにつぶやく。 「はう」  レナはオロオロしながら、圭ちゃんを見つめている。 「さあ、圭ちゃん手札を公開して」  不思議と4カードを見ても驚かない圭ちゃんに、手札の公開を促す。 「魅音、お前はすげえよ、この大一番でそんな好カードを引き当てるなんてな」  圭ちゃんが自信ありげにつぶやく。 「け、圭ちゃん……まさか!」 「刮目して見やがれ! これが前原圭一様の手札だあああああ!」  言葉と同じように、勢いよく手札が机に叩きつけられた。 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/01/23(土) 22:28:58.16 ID:+yfpyVVX0 「ロイヤルストレートフラッシュ……」  私は敗北を悟った。  10、ジャック、クイーン、キング、エースの組み合わせで、なおかつ全て同じマーク。ポーカーで1番強い手札。 「魅音、俺の勝ちだ!」  圭ちゃんが勝ち誇るように叫んだ。 「圭一くんすごいよ!」 「まさか圭一さんが、ここまですごい手だったとは」 「にぱぁ〜☆ 圭一すごいのです」  圭ちゃんに賛辞を贈る3人。 「今回はおじさんやられちゃったねぇ、素直に負けを認めるよ」  すがすがしいほど負けた、でもなんだか気持ちのいい。今回の勝負を讃え合おうと握手を求める。 「…………」 「あれ? 圭ちゃん」  圭ちゃんは黙り込んで、握手をしてくれない。  私の手は空をさまよい、すごくむなしい。 「あ、あの?」 「罰ゲームだろ? 今から魅音は、いじめられっ子だ。いじめられっ子と握手するいじめっ子はいねえよ」  圭ちゃんは少し怒った表情で言った。 「あぁ、もう始まっちゃたの? 圭ちゃんも律儀だなぁ。ははは」  私は少しおどけてみせた。少し怖い。 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/01/23(土) 22:31:13.22 ID:+yfpyVVX0 「レナ、沙都子、梨花ちゃん、そろそろ帰ろうぜ」  圭ちゃんはレナたちに帰りを促す。 「う、うん」 「はいなのです」 「そうですわね」  3人は次々に鞄を持って、教室を出て行く。 「ちょ、ちょっと待って」  私は部活の片付けをしていたので、少し遅れた。  いそいで鞄を持って廊下に出ると、誰もいなかった。 「あれ?」  下駄箱に行ってみる。誰もいない。  外に出てみる。誰もいない。  ミーン、ミーン、ミーン。  私は一人学校の外で立ち尽くした。セミの鳴き声を聞きながら。  次の日の登校途中。いつものように圭ちゃんとレナが来るのを待つ。  来ない。あれ? おかしいなぁ。時間を間違えたかな?  来ない。もう遅刻だ。しぶしぶ私は学校へ向う。 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/01/23(土) 22:33:37.40 ID:+yfpyVVX0  教室のドアを開けて中に入る。 「園崎さん、遅刻ですよ」 「遅れました。すいません」  先生の注意を聞いて素直に謝り、席へ向かう。目線の先には圭ちゃんとレナがいた。 「圭ちゃん、レナ、先に行くなら行くって連絡しておいてよね! おかげで遅刻しちゃったじゃん」  私は軽口を言いながら椅子に手を掛ける。 「…………」 「…………」 「あれ?」  二人は何も言わず勉強をしている。 「圭ちゃん、レナ、聞こえてないの? おぉい」 「…………」 「…………」  おかしい? やっぱり返事をしてくれない。  私は疑問に思いながらも、教科書を開いて勉強を始める。  しかし、途中で挫折して、いつものように圭ちゃんに解らない所を聞きに行く。 「あのぉ圭ちゃん、またおじさん解らないところがあって、教えてくれるとありがたいなぁ? なんて」  少し下手に出つつお願いをする。 「…………」 「圭ちゃん?」  圭ちゃんは席を立つと、足早にレナの方へ向かって行った。 「な、なんで?」  私の問い掛けに見向きもせず、圭ちゃんはレナの前へ。  二人で何かを話しているようだが、何を話しているのかは聴こえない。 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/01/23(土) 22:35:24.13 ID:+yfpyVVX0  休み時間。事情を聞こうとレナに話しかける。 「レナ、圭ちゃんが無視するんだけど何か知らない? おじさん何かやっちゃたかなぁ?」 「…………」  レナは俯いたまま何も言わない。 「レナ?」  レナは席を立つと足早に圭ちゃんの方へ向かって行く。  また二人で何かを話している、私を無視して。当然二人が何を話しているのかは聴こえない。  お昼休み。みんなでお弁当を食べるために机を寄せる。  私の右にレナ、左に圭ちゃん、前に沙都子、右斜め前に梨花ちゃん。 「おっ沙都子、今日は玉子焼きか美味しそうだね」 「…………」  沙都子は私を無視して黙々と食事する。 「ねぇ梨花ちゃん、今日はどっちが作ったの?」 「…………」  梨花ちゃんも沙都子と同じく、答えてくれない。 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/01/23(土) 22:37:01.60 ID:+yfpyVVX0 「なあ……」  圭ちゃんの声だ! 私は期待しながら圭ちゃんの方を向いた。 「俺のコロッケとレナのからあげ、交換しないか?」  楽し気な声、私に言ってくれたわけなじゃないけど、少しほっとする。 「うん、いいよ」 「レナさんのからあげ美味しそうですわね、わたくしの玉子焼きと交換しませんこと?」 「みぃ、ボクのとも交換して欲しいのです」 「もう、そんなに交換したらレナのぶんなくなちゃうよ」  わははははは。  今までの雰囲気が嘘だったかのように、明るい雰囲気になる。 「じゃあ、おじさんのハンバーグとも交換しようか?」  この雰囲気に乗って私は冗談を言った。 「…………」 「…………」 「…………」 「…………」  空気が変わった。 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/01/23(土) 22:38:23.66 ID:+yfpyVVX0  次の日。登校途中。いつものように圭ちゃんとレナが来るのを待つ、いつもの通りの日常を期待して。  やっぱり来ない。私はあきらめて学校に行く。  昨日無視されたのは、どうやら罰ゲームが原因のようだ。  教室に入ると、圭ちゃんとレナがいた。やっぱり先に行ってたんだ……。  椅子に座り、教科書を開いて勉強を始める。 「ひっ!」  教科書を開けた瞬間に私はそれを急いで閉じた。死ね、クズ、カス、あらゆる中傷がそこに書かれていた。  圭ちゃんの方を向く。 「…………」  レナの方を向く。 「…………」  二人とも黙っているだけ。涙が出そうだ。 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/01/23(土) 22:40:54.76 ID:+yfpyVVX0  私は仕方ないので、無事だったノートだけを出して、勉強をしているふりをする。  頬杖をついていると、何かが頭に当たる。 「ん?」  何だろう?  また何かが当たる、また当たる、また当たる。  床を見ると、消しゴムのカスが落ちていた。 「くっ」  何だよこれ、うざいなぁ。私はだんだん腹がたってきた。  すると、こんどは少し大きめのものが頭に当たる。  床を見てみると、割れた少し大きいガラスが落ちていた。 「ひいっ!」  消しゴムのカスならケガをすることはない、でもガラスなんて少し間違えば傷がつくかもしれない。  悪質。これはなんでも悪質だ。もうやめさせよう。  そう思い、私はレナの方に詰め寄る。 「ちょっとレナ! これはなんでもおかしいでしょう!」  怒りながら私は言った。 「…………」  レナは何も言わない。 「何とか言いなよ!」  私がさらに問いただそうとすると、誰かが私の体を押した。 「きゃっ!」  体勢が崩れよろめく、何とか転ばずにすんだので、押した犯人の方を睨みつける。圭ちゃんだった。 「会則第七条、罰ゲームの内容に逆らわない」  圭ちゃんが私を睨めつけながら言う。 「会則第七条、罰ゲームの内容に逆らわない」  続いてレナもその言葉を口にする。 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/01/23(土) 22:43:16.46 ID:+yfpyVVX0 「そうだけどさ、いくらなんでもこれは……」 「…………」 「…………」  圭ちゃんとレナはそれから何も言わず、その場から離れて行った。  お昼休み。また昨日のような思いをするのが嫌なので、お弁当を持ってトイレの個室に篭る。 「なんで私がこんな思いをしなきゃいけないの!」  口を尖らせながら悪態をつく。 トイレの嫌な匂いがするけど、そんなことを気にしちゃダメだ。あの空気に比べたら些細なこと、はやく罰ゲーム終わらないかなぁ。 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/01/23(土) 22:46:42.90 ID:+yfpyVVX0  そう思いながらお弁当を食べていると、誰かがトイレに入ってきた。数人いるような気配と足音がする。  その足音が私がいる個室の前で止まる。何だろう?  唐突に上から音がする! 見てみると。水のかたまりが見えた!  避けようとすることもできず、そのまま顔から水をかぶってしまう。 「きゃああああ!」  そう叫んでみたものの、何もかもが遅い。私は水浸しになり、下着までぬれているのが分かる。  唖然としていると、逃げる足音がする。 「ヒック……ヒック……どうして? どうして?」  ポロポロと出る涙を止められず、私は後悔しながら泣いた。 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/01/23(土) 22:49:23.40 ID:+yfpyVVX0  次の日。昨日は部活に出なかった。水を掛けられたあと体操服に着替えると、そのまま家に帰ったのだ。  学校に行くの嫌だなぁ、でも行かなきゃダメだ!  いつもは圭ちゃんとレナを待つのだが、今日はやめる。来ないことは分かっているからだ。 「魅音、待てよ、一緒に行こうぜ」  自分の耳を疑った。圭ちゃんの声だ。声のほうを見てみると圭ちゃんとレナが並んで歩いていた。 「圭ちゃん? レナ?」  恐る恐る話しかける。 「魅ぃちゃん、おはよう」 「お、おはよう」  いつも通りの圭ちゃんとレナがそこにいた。  雑談をしながら登校、まだ何か引っ掛かりがあるけど気にしない。気にしたくなかった。もうあんな体験をするのは嫌だったから。「それで昨日、レナがいつものゴミ山でさぁ」 「はう〜、あそこはゴミ山なんかじゃないんだよ…だよ」  圭ちゃんとレナが話しているのを聞いていると安心した。大丈夫のようだ。 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/01/23(土) 22:53:25.65 ID:+yfpyVVX0  学校に着き、教室に向かう。圭ちゃんはトイレに行くということで別れる。  教室のドアを開き、中には入ろうとした瞬間、何かが足に引っかかる。 「えっ!?」  縄跳び! 2台の机の足に縄跳を結び、扉の横に置いていたようだ。  着地点にはバケツがある。その中に汚物! 前に圭ちゃんが引っかかったトラップの時は、すずりの中に墨汁があるという、まだかわいげのある物だったはず!  しかし、今回は違う! 見るからに汚い! 見るだけで吐き気がする! 「うあぁあああああああ!」  少しでも警戒していれば、避けられたかもしれない。それが安心しきった警戒だとしても。  でも、今回はまったくの不意打ち! 回避できるはずもない!  私は汚物に頭から突っ込む! 「ぎゃぁああああああああああああああああ!」  臭い、臭い、臭い、臭い、臭い、臭い、臭い、臭い、臭い、臭い、臭い、臭い、臭い、臭い、臭い、臭い。  誰かのゲロなのか!? 解らない、とにかく汚い! 頭と服が汚物まみれになった。 「をっほっほっほ、おはようございますわ」  着替えなきゃ、と思っていると、かん高い声が聴こえてくる。 「あらあら魅音さん、どうしましたの? すごく匂いますわよ」 「沙都子ぉおおおおおお!」  その声に耐えきれなくなり、沙都子の胸ぐらを掴む。  しかし、誰かに体を押されて転倒してしまう! 「会則第七条、罰ゲームの内容に逆らわない」  圭ちゃん声。膝をつきながら押した人物を見ると、やっぱり圭ちゃんだった。 「会則第七条、罰ゲームの内容に逆らわない」 「会則第七条、罰ゲームの内容に逆らわない」  沙都子とレナも圭ちゃんに続いて、同じ言葉を言う。  終わってなかったんだ……何も! 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/01/23(土) 22:57:57.63 ID:+yfpyVVX0  汚物まみれ、臭い、体操服を持って更衣室に行く。 「早く着替えたい、着替えたい、着替えたい、きゃあっ!」  扉を開けた瞬間! スプレーのようなものを顔に吹きかけられる。 「あ、あっ、だ……れ?」  目が覚める。どうやら先程のスプレーで、気を失ったようだ。  しかし、そんなに時間が起ってないように感じる。場所も更衣室だ。 「いったい何?」  目は覚めたものの、体が動かない。しかし誰かが近くにいるのは分かる。 「お目覚めですの? 魅音さん」 「沙都子……!」 「そういえば昔、魅音さんに突然殴られて、教科書を何度も投げつけられてことがありましたわね」 「そ、それは……」 「それは何ですの! たあ!」  私に向かって教書を投げつけられる! 「魅音さんは言いましたわ! あんたなんかいなくなれって!」  何度も何度も教科書を投げつけられる! 痛くはない。でも、心が痛い!  涙が出てきた。 「ヒック……ヒック……」 「何で泣きますの? 泣けば誰かが助けてくれるから!? これ、魅音さんの言葉ですわよ!」 「ヒック……ヒック……」  もう嫌だ! 汚物まみれの体! 沙都子のかん高い声! 涙が止まらない! 「他人は駄目で自分はいいなんて、ホント情けないですわね」  そう言うと沙都子は教科書を投げるのをやめ、更衣室から出て行った。 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/01/23(土) 23:03:06.02 ID:+yfpyVVX0  放課後。あれから体を洗い、体操服に着替えて授業を受けた。惨めだ。  家に帰る途中、そこには鉈を持ったレナがいた。  木が生い茂る中に立ち、太陽の光がレナの持つ鉈に反射する。 「魅ぃちゃん、見ぃつけた」  なっ何で、そんな大きい鉈を……。 「レ、レナ! 何の用!」 「レナは宝探しなの」  笑顔、笑顔なのに怖い! 「ダム現場でね、またかぁいいのを見つけたの。それを発掘するために必要なの」 「し……信じないよ! そんなこと!」 「あはは……うん、信じないよね」  レナの表情が、笑顔から醜い顔に変わっていく! 「信じないよね? あはははははははははははは」  やっぱり、おかしい! 今日はさらに! 「うあぁあ」  振り返って、今まで歩いてきた道を走り出す! レナから逃げるために! 「魅ぃちゃん、待ってよ。あはははははは」 「いやぁ! 来ないで!」 「それはできない相談だよ。会則第七条、罰ゲームの内容に逆らわない」 「くッ」  レナが追ってくる、鉈を持って! 逃げても逃げても追ってくる! 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/01/23(土) 23:07:45.80 ID:+yfpyVVX0  ついに学校まで引き返してしまった。  校庭には誰もいない。 「あはははははは、待ってよ……待ってよぉ」 「はぁ、はぁ」  走る、走る! なんとかレナを撒くために、校舎の裏へ行く。するとそこには梨花ちゃんがいた。 「梨花ちゃま!」 「魅ぃ! こっちに来るです!」  梨花ちゃんは私の手を掴むと、近くにあった倉庫に入る。  倉庫の中でうずくまり、そこに隠れた。 「あれぇ? 魅ぃちゃん、どこに行ったのかなぁ……かなぁ」  外からレナの私を捜す声が聴こえる。 「魅ぃ、大丈夫ですか?」 「私は大丈夫だけど、どうして梨花ちゃんが?」  レナに聴こえないように、ボソボソと小声で話す。 「みんな……おかしいのです。こんなの楽しい部活じゃないのです」 「梨花ちゃん……」  久しぶりに聞いた優しい声。 「だから、魅ぃはボクがたすけるのです」 「うっヒック……ヒック……梨花ちゃんありがとうぅ」  たった一言、たった一言だけど、今の私にはその一言だけで十分だった。もう涙が止まらない。悲しい涙じゃなく、うれしい涙だ。 泣いている最中、梨花ちゃんが頭も撫でてくれる。どっちが年上か分かんないや。 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/01/23(土) 23:11:42.64 ID:+yfpyVVX0  泣きじゃくっていると、次第にレナの声が聴こえなくなる。 「ちょっと、外のようすをみてきますです」 「えっ、あぶないよ」 「大丈夫ですよ、にぱぁ〜☆」  そう言うと梨花ちゃんは、外に出て行った。  その瞬間に倉庫の鍵が閉まる! 「あれ? り、梨花ちゃん?」 「魅ぃ、ごめんなのです」 「えっどういう意味?」 「会則第七条、罰ゲームの内容に逆らわない」  また、この言葉だ! 私を苦しめ続けるこの言葉!  いったい、誰が……誰が考えた! 「魅ぃには、このままここにいてもらうのですよ」 「そんな! 最初からレナとグルだったの?」 「言わなきゃ分からないの? そうよ」  いきなり声の質が変わった! 大人っぽくて、鋭く怖い声に。 「あんたは反省すべきなのよ。まあ、たまにはこういう世界があってもいいわよね」 「えっ? どういう意味?」 「意味なんて分からなくてもいいわ。じゃあね」  そう言われると、声がしなくなり、ここから遠ざかる足音が聴こえた。 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/01/23(土) 23:15:53.65 ID:+yfpyVVX0 「開けて! 誰か開けてよ!」  誰かに気付いてもらおうと、ドアを叩く! 「誰か! 誰か!」  しかし、開かない! このドアは開かない! 「お腹すいたよぉ」  何時間起ったのか、分からない。外からの光はなくなり、完全に闇!  ドアを叩くのに力尽き、座り込んでいた。 「何……これ?」  壁一面に何かの虫が張り付いていた!  地獄絵図というのは、こういう物を言うのだろうか!? 「動いてる。いや、いやぁあああ!」  何とか逃げ場を探していると、奥に今まで無かったはずの、入り口とは違うドアがあった。  不思議に思ったが、ここから早く逃げたい一心でドアに向かう。  恐る恐る開けてみると、ドアに鍵は掛かってない! 「やった!」  しかし、ドアの開扉は途中で止まる。チェーンが掛かっていたのだ!  そのチェーンを引きちぎるために、おもいっきりドア引っ張る!  今にも虫が自分を襲いそうな悪寒と、ここから逃げたいという気持ちが相成って、パニックになりながら、何度も何度も引っ張る。 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/01/23(土) 23:19:22.18 ID:+yfpyVVX0  だが、切れない! 何回ドアを引っ張ても切れない! 「誰かっ! 誰か、このチェーンを切って!」  そうドアの外に向かって叫ぶと、そこには圭ちゃんがいた……。 「圭……ちゃん?」  私がそう言うと、圭ちゃんは驚いて仰け反った。 「圭ちゃん、ここを開けて……。この邪魔なチェーンを外して!」  藁をも掴む思いで、チェーンを掴みながらお願いをする。 「お願い、お願い、お願い、ここを開けて? 圭ちゃん中に入れて!」 「か、帰れ…‥」 「え?」 「か、帰れって、言ってるだろ!」 「キャッ!」  痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い。  ドアを思いっきり閉められ、私の指がドアに挟まる! 「痛い、痛い。このドアを開けて……。開けて、開けてよ圭ちゃん」 「帰れ! 帰れよおおおおおおおおおお!」 「きゃッ!」  またドアを思いっきり閉められ、指がドアに挟まる! 「痛い、痛いよ圭ちゃん! 本当に本当に痛い! 痛い! ああああああああああああ」 「帰れええええええええええええぇ!」  指がドアから抜ける! その瞬間ドアから締め出され、勢い余って尻餅をついてしまう。  ドアから、鍵が閉まる音が聴こえた……。  その音が合図だったかのように、目が覚めた。 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/01/23(土) 23:25:44.95 ID:+yfpyVVX0  壁に虫なんていない。入り口とは違うドアなんてない。指に傷がついていない。  どうやら、梨花ちゃんに閉じ込められたあと、ドアを叩き疲れて寝てしまったようだ。悪夢を抱いて。  早く罰ゲームを終わってほしい、あの悪夢が本当に起こるかもしれない。  しかし、今回の罰ゲームは終わりだろう、朝になれば誰かが気づくはず。  そう思っていると、外から足音が聴こえてくる。 「開けて! ここを開けて!」  叫ぶ! ここから早く出たい一心で!  慌ただしく掛けてくる足音。そしてドアの鍵が開く音が聴こえた。 「良かった……」 「おい君! 何故ここに!」  開けてくれたのは見たことがない、ガスマスクをした男。自衛隊のような迷彩服を着ていた。  男は、トランシーバーで連絡を取り始める。 「……本部応答願います。201生存者発見。繰り返す、201生存者発見」  その男が何を言っているのか、解らない。  私はそいつを無視して校庭の方へ向う。 「なに、これ?」  そこには悪夢以上の現実が広がっていた。  袋、袋、袋、袋、袋、袋、袋、袋、袋、袋、袋、袋、袋、袋、袋、袋、袋、袋。  校庭一面に袋が置かれていた! 私には分かる、それが何を意味するのか! 「君、勝手に動かれては困る!」 「何が起きたの!?」 「君は雛見沢の住人か? 名前は言えるか?」 「園崎……み、詩音です」 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/01/23(土) 23:32:30.31 ID:+yfpyVVX0  富竹ジロウ(本名不明) 喉を掻き毟り自殺? S58_6_19  鷹野三四 絞殺され、焼死体で発見される S58_6_19  園崎お魎 園崎詩音に殺害される。スタンガンによるショック死 S58_6_20  公由喜一郎 園崎詩音に殺害される。拘束具による絞殺 S58_6_21  古手梨花 腹を裂かれ拷問死 S58_6_23  北条沙都子 雛見沢大災害にて死亡 S58_6_24  竜宮礼奈 雛見沢大災害にて死亡 S58_6_24  前原圭一 雛見沢大災害にて死亡 S58_6_24  園崎詩音 収容先の病院で自殺 S58_8_27  園崎魅音 地下祭具殿に閉じ込められていた所を救出される  その他住民 雛見沢大災害にて死亡 S58_6_24  完 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/01/23(土) 23:49:47.81 ID:+yfpyVVX0 あとがき 最初はただ魅音をいじめたくて作りましたが、書いてる途中に詩音オチを思いついてそちらに変更しました。 解としては、ポーカーをしていたのは魅音。次の日からは詩音です。幻覚もまじってます。 ばっちゃを殺して、魅音を閉じ込めたあと、詩音は魅音と入れ替わって学校にいくと、不運にも罰ゲームに遭遇してしまうと言う話しです。 ところどころ、詩音を匂わせるところがあります。 ポーカーの次の日は、罰ゲームのことをわかっていなかったところ。 その次の日の「昨日無視されたのは、どうやら罰ゲームが原因のようだ」という曖昧なところ。 例えば沙都子が教科書を投げつけるところ。 レナに追いかけられて梨花ちゃんを見つけたときに「梨花ちゃま」と言っているところなど。 駄文をお読みいただき、ありがとうございました。