ハルヒ「わたしとみくるちゃんのどっちが大事なのよ!」 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/25(金) 22:32:26.76 ID:V/mgA7DfO いつも部活のいつもの風景、…のはずだったのだが。本日はアイツの機嫌が悪かったその他諸々の原因を含めて地雷が爆発してしまったようだ。 キョン「なに言い出すんだよ、たまたま目の前に湯飲みがあったから飲んじまっただけで…」 ハルヒ「白々しい嘘付かないで頂戴!明らかに狙ってたじゃないの!」 みくる「あのぉ…別にわたしは構わないんで……」 ハルヒ「みくるちゃんは黙ってて!!」 火に油を注ぐような発言に、ハルヒはますます息を荒げる。 ハルヒ「さぁ、答えなさい!どっちが大事なの!?」 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/12/25(金) 22:56:08.90 ID:V/mgA7DfO いきなり俺にそんな事を言われても困る。 古泉のやつなら上手く話を沈静化させるのだろうが… ハルヒ「なによ、黙って、男らしくない! どうせ、みくるちゃんなんでしょ」 一途の望みを掛けて古泉の横顔を眺めてみると、うっすらと冷や汗のようなものが。 長門「これは非常に危険な状態…またいつぞやの状況に陥る可能性もある」 長門が俺の耳元で囁くように呟く。 どうやらこのまま黙っていては、また世界が崩壊してしまうらしいな…まったく。 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/12/25(金) 23:11:14.90 ID:V/mgA7DfO キョン「だ…だったら、お前こそ、俺と古泉のどっちが大事なんだよっ!?」 ハルヒ「……………え?」 一瞬にして部室の時間が止まったかのように静寂が訪れた…。ハルヒは次第に困惑した表情になっていった。 古泉「い、いったい何を?」 聞くな、俺だって何をいってるのか分からん。 だがこの場をうやむやにする為俺はまくし上げる。 キョン「いつも俺ばっかりに雑用させてるんだからな、そりゃ古泉だろうよ」 ハルヒ「そ…そんなこと……」 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/12/25(金) 23:25:00.28 ID:V/mgA7DfO ハルヒの表情から怒りの様がゆっくりと消えていく様が伺えた。 キョン「ま、いいんじゃないか、お前も黙ってれば美人なんだ。美男美女お似合いだぜ」 ハルヒ「あ…あんた、それ本気で言ってんの…!」 キョン「あぁ、本気だとも」 みくる「キ、キョンくん、だめです!」 朝比奈さんの呼び掛けで我に帰った俺はある事に気付いた。ハルヒの怒りを沈静化させるのには成功したようだが、徐々にアイツの顔が曇って… ハルヒ「キョンの……キョンの…」 キョン「…ん?」 なんだってんだ、あいつの目尻になにか涙のようなものが…。 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/12/25(金) 23:43:27.57 ID:V/mgA7DfO そして、ハルヒの叫び声が耳に届いた瞬間、俺の顔面に鈍い痛みが走った。 ハルヒ「あんたなんか、二度とあたしの前に現れんな!」 捨てセリフと共に廊下をけたたましく掛けて行く足音が聞こえる。 古泉「ふぅ……大丈夫ですか?」 安堵の溜め息をついた古泉が俺に手を差し延べる。 キョン「なんだってんだ、おもいっきり顔面殴りがって…」 古泉「しかし、やってくれましたね…あなたも」 長門「世界崩壊の危機…」 キョン「………はい?」 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/12/25(金) 23:54:55.48 ID:V/mgA7DfO キョン「なんだよお前ら、あの場をなんとか、はぐらかしたのに何がいけなかったんだよ…」 みくる「それは…、わたし達が言っても意味がないと思います…。キョンくんが自分で気付いて」 朝比奈さんまで神妙な顔で俺にそう告げた。 古泉「彼女は荷物も持って行ってしまいましたし、もう戻ってこないでしょう。我々も帰りましょうか」 古泉の一言がすぐに部活は解散となった。 帰り道の間、俺は朝比奈さんの言葉の意味を考えてみるのだか皆目見当もつかない…。 キョン「そうだ、ハルヒは俺を殴った瞬間なんてったんだ?」 古泉「『キョンなんかだいっ嫌い』っと……それでは』」 俺は踵を返し、去って行く古泉の背中をしばらく眺めていた。 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/12/26(土) 00:25:55.76 ID:iSmzRBrFO 家に帰り、ベッドに横になった俺は枕元に置いてあった携帯に手を伸す。 またいつぞやの監禁状態にされちゃかなわんからな…、そう思った俺はとりあえずハルヒ電話を掛ける。 数回コールが鳴ったのち音が止む。 キョン「すまんハルヒ、まだ起きてたか?」 数秒、いや数分経てども返事は返ってこない。 キョン「おい、聞こえてるんだろ?俺が悪かったってば、謝る」 ハルヒ「……どう悪かったのか分かってる?」 やっと返事をしたと思ったらこれか…。 キョン「いや…とにかく俺が悪かったって言ってるだろ。そういや朝比奈さんも同じような事言ってたな、一体どういう……」 そこまで言った時点で電話は切れてしまった。 もうどうにでもなれだ…、俺は思考を停止しゆっくり目を閉じた。 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/12/26(土) 00:42:21.37 ID:iSmzRBrFO 翌日、俺はいつもの坂道をゆっくり歩いている。普段ならば憂鬱なところだが、無事に朝を迎えられた俺にとっては心なしか足取りも軽い気がする。 教室に入った、机に俯いたままのハルヒを横目に席に着く。 ハルヒ「……あたしの前に現れんなって言ったでしょ」 俯いたままでハルヒが呟く。 キョン「無茶を言うな。俺だって好きでここに座ってるんじゃねぇよ」 ハルヒ「………早く席替えにならないかしら」 なるだろうとも、お前がそう望めばな。 朝のHRが始まったが、席替えの話題が出る事は無かった。 キョン「さすがにそこまで即効性はないか、あいつの能力は…」 ハルヒ「……なにブツブツ言ってんの」 俺は、一瞬ドキリとしたが適当にごまかす。どうやら口にでてしまっていたようだ 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/12/26(土) 01:10:07.86 ID:iSmzRBrFO 谷口「私と仕事どっちが大事なのよ!」 昼休み、いつものように机を囲って昼食を取っていた俺の耳にいきなりその台詞が入ってきた。 キョン「な…なんだよ急に」 思わず少し咳込んでしまう。 国木田「どうせ、その雑誌に書いてあることだよ」 と食べながら雑誌を読む谷口に注意しつつ国木田が俺に言った。 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/12/26(土) 01:21:08.16 ID:iSmzRBrFO 谷口「でも一度は言われてみたいじゃねぇか、こんな台詞」 キョン「そうか?俺なら対応に困るし面倒なだけだと思うがな」 同じ様に目にあったばかりだしな…と心の中で呟く。 国木田「キョンは相変わらずだねぇ。それだけ自分の事を好いてくれてるって事なんだよ」 キョン「そういうもんかねぇ…」 となると国木田の言う事を鵜呑みにするならば、ハルヒが俺の事を……? いやありえん。第一、大嫌いと渾身のストレート付きで頂いてるんだしな…、なに考えてるんだかバカだな俺は。 谷口「まぁ、亭主関白な俺なら、即ジャーマンスープレックスだかな」 国木田「ジャンピング土下座の間違いじゃないの?」 71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/12/26(土) 12:29:29.23 ID:iSmzRBrFO すいません、お待たせしました。まさか保守して頂いているとは、感謝です。 俺以外にもバカがいることに少しの安堵を感じ、一気に昼飯をかきこんだ。 その後、ハルヒと目を合わせことなく授業が終わり部活まで足を運んでいる。 正直、億劫だがサボれば古泉の仕事を増やしてまうだろう。いや今の状態なら逆効果か…? そんなことを考えながら部活に入った。 キョン「うーっす」 俺の掛け声に反応したのは、古泉と朝比奈さん。 つまりハルヒを除いてはいつも通りの光景だ。 ハルヒ「………………」 向いの指定席でパソコンのディスプレイを眺めたままのハルヒ。 機嫌がどうかは伺うまでも無いな。 72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/12/26(土) 12:46:13.09 ID:iSmzRBrFO 仕方なく俺は古泉の向かいの席に腰を掛ける。 古泉「どうですか、答えの方は見つかりましたか?」 キョン「聞かんでも、この様子をみれば分かるだろうが。悪かったな」 苦笑いで問い掛ける古泉に素っ気なく答える。 嫌味のつもりなのだろうか。 古泉「来て頂いただけでも、助かります。今の所最悪の事態は避けられていますからね」 キョン「そりゃ良かったな。今は顔を出さない方が良いと思ったんだが…」 古泉「少なくとも、そう思っているのは、この場においては、あなただけですよ」 キョン「なんだそりゃ。ハルヒを抜き忘れてないか」 古泉「ふぅ…どうも、元の鞘に戻るのは困難そうですね」 と、溜め息まじりで呟く古泉。 76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/12/26(土) 12:59:23.28 ID:iSmzRBrFO しかし、この状況じゃ俺も居心地が悪い…。認めたくはないが、どうやらハルヒがいつもの様に、馬鹿騒ぎしている方が落ち着くらしいな…俺は みくる「キョンくん、どうぞ」 朝比奈さんが、少し強張った表情で湯飲みを運んで来る。 礼を言い受け取ると、しばらく湯飲みを眺める。 みくる「どうしたんですか、キョンくん?」 不思議そうな顔で佇む朝比奈さんを余所に、俺は湯飲みを掴み立ち上がる 古泉「一体何をするつもりですか?」 目には目を湯飲みには湯飲みだ。 俺は湯飲みをハルヒの机の上に置く。 ハルヒ「……なんのつもりよ?」 78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/12/26(土) 13:13:53.39 ID:iSmzRBrFO キョン「いいから一口飲め」 ハルヒ「別にいいわよ、喉渇いてないし…、それにそれあんたの湯飲みでしょ?」 キョン「お前が何を怒っているのか、正直わからん。だかきっかけは、俺が他人の湯飲みを飲んだからだ」 ハルヒ「……それで?」 キョン「だからお前も俺の湯飲みを飲めば同罪だ、これでお互い水に流…」 ハルヒ「正直わかんないのは、あんたの頭よっ!」 又しても俺の言葉が終わらぬ内に、以前と同様の痛みが体を走った。 ハルヒ「ち、ちょっと外出てくる!」 顔を押さえる俺の横目に、部活から出て行くハルヒの姿が見えた。 何故だか少し顔が赤かった気がする。 79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/12/26(土) 13:26:56.96 ID:iSmzRBrFO 長門「だから止めるべきだと言った」 古泉「いえ…まさかここまでとは思っていなかったので」 なにやら騒がしい外野を眺めながら俺は自分の席に着く。 キョン「なぁ、俺なにか間違ったことしたか?」 みくる「正解には程遠いですけど…一歩前進はしたかな」 朝比奈さんが喜ぶとも悲しむともない微妙な表情で答える。 古泉「このままいけば、なんとかなるんでしょうかね」 キョン「俺に聞くな。第一殴れただけで前進というのも意味がわかりませんよ、朝比奈さん」 長門「下手に理解しようとすると余計に危険性が増す。気にしない方が良い」 81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/12/26(土) 13:42:19.20 ID:iSmzRBrFO 古泉「それ以前に彼が理解できるかどうか…」 みくる「第一、それを理解するとキョンくんがキョンくんで無くなるんじゃ…」 長門「余計な付け焼き刃はかえって世界の崩壊を招くだけ」 俺を余所に忙しく打開策を練っている三人。 一人異国の地に放り投げられたかの様に感覚に陥った俺はひとまず部室を出た。 キョン「屋上にでも行くか…」 殴れた箇所を冷やす為屋上の扉を開ける。 俺の目に映ったのは、快晴の青空と…よく見慣れた黄色いカチューシャだった。 82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/12/26(土) 13:47:20.43 ID:iSmzRBrFO キョン「よぅ、…隣りいいか?」 遠くを見つめたままのアイツの返事を待たず、俺は移動する。 ハルヒ「………なんだかもう疲れちゃったわよ」 キョン「奇遇だな、俺もだ…。なにがなにやら」 そう言うと俺達は黙ってグラウンドを見下ろす。 先程までの喧騒が、まるで嘘かのような穏やかな時間が流れる。 86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/12/26(土) 14:00:39.15 ID:iSmzRBrFO ふとハルヒの手元を見ると、どこかで見た覚えのある雑誌が目についた。 キョン「……その雑誌、たしか谷口が」 ハルヒ「ばっ、ちょっと何見てるのよ!」 慌てて自分の後ろに隠すハルヒ。そこで俺はふと気が付いた。 キョン「もしかして、お前、その雑誌に書いてた事が言ってみたかったから、俺につっ掛かってきたのか?」 ハルヒ「ち、違うわよっ………って別に違わなくも……」 急に落ち着きなく視線を移動させるハルヒ。 キョン「なんだよ?柄にもなくハッキリしない奴だな」 ハルヒ「そ、そうよ!一回言ってみたかっただけよ、ただそれだけなんだからね!」 耳元まで真っ赤にしてハルヒは言った。 キョン「そんなデカい声でいわんでも聞こえる。相変わらず予想のつかない行動をするやつだ…」 89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/12/26(土) 14:08:38.50 ID:iSmzRBrFO あくまでアイツは雑誌に載っていた事を言いたかっただけで、本心じゃなかった…ってことか。 キョン「なら古泉のバイトが増えないのも理解できるな…」 ハルヒ「古泉くん?バイト?…あんたも充分、予想できないわよ」 キョン「こっちの話だ、気にするな。お前も、冗談だったら早く言えよな」 ハルヒ「な、なんか引っ込みがつかなくなったの!悪い?」 別に悪くないさ、さっきまでの部活の空気とは大違いだ…。 93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/12/26(土) 14:17:39.83 ID:iSmzRBrFO ハルヒ「……で、もし本当に雑誌に書かれてるような事聞かれたら、キョンはどうするつもり?」 キョン「それなら昼飯中、散々考えたさ。面倒なだけで答えなんかでなかった」 ハルヒ「そっか……あんたらしいわね」 キョン「だが、お前と朝比奈さんなら…今はお前かもな」 ハルヒ「えっ!?…そ、それって?」 キョン「忌々しいが、やっぱり俺はお前と憎まれ口を叩きあっているのが性にあうらしい」 それがここ数日で気付いた暫定的な答えだ。 ハルヒは、先程の朝比奈さんのような喜怒哀楽どれともつかない表情で、 ハルヒ「ほんと……あんたらしわ」 と一言呟いた。 96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/12/26(土) 14:29:22.23 ID:iSmzRBrFO キョン「さて、そろそろ戻るか、皆も心配するだろ」 ハルヒ「そうね……あ、あんた喉渇いてない?」 キョン「そうだな、誰かさんのお陰で無駄に頭を働かしたから少し渇いたような」 ハルヒ「悪かったわね…、ほらこれあげれわよ!」 98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/12/26(土) 14:35:36.52 ID:iSmzRBrFO ハルヒが勢いよく取り出したのは飲みかけの缶ジュースだった。 迷わず俺はそれを一気に飲み干した、ふと空を見上げると雲一つ無い青空がただ一面に広がって…… ハルヒ「って誰が全部飲んで良いって言ったのよっ!」 締めのモノローグを呟く暇もなく三度目のストレートが俺の顔面に鮮やかに吸い込まれていった。 みくる「なんだか仲直りできちゃったみたいですよ…」 古泉「折角カンペを用意したのですが、彼らにはそんなもの必要なかったようですね」 長門「三度とも全く同じ位置に打ち込まれている…恐ろしい程の正確さ」 =終わり= 99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/12/26(土) 14:40:47.34 ID:iSmzRBrFO なんだか投げっ放しな気もしますが、とりあえず終わらせることが出来ました。 保守、支援感謝です!