キョン「彼女、ねぇ。」 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 19:48:57.75 ID:AkeW6zUx0 キョン「んなもんできるわけねえだろ……ああさむっ」 終業式を午前中に終え、 いつもなら谷口・国木田と歩いて帰るこの長ったらしい坂を今日は俺一人で歩く。 谷口、国木田は二人とも光陽園学院在学の彼女を運良くゲットしたらしい。 今日はそれぞれのパートナーと共にキャウフフな夜を過ごすんだろうな。 ああ、夕暮れ時はまだなのに心なしか視界が暗い。 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 19:51:57.18 ID:AkeW6zUx0 キョン「ただいまーっと。」 んっ、なんだこれ。 キョン「ええっと、今日はみよちゃんのおうちに泊まりに行くから―……ああっなんだよもう」 こういう時に限って妹のタックルが恋しくなるのは何故だろう? ……何故だろう。 鞄を廊下に放り投げ、足を振って靴を脱ぐ。 雨戸が閉まった暗いリビングから察するに、親は二人で食事なんだろうな。 明かりをつけると、机の上には七面鳥が置いてあるのを発見した。 夜になったら温めて食べてね、という手紙までついてやがる。 俺にはシャミセンで十分だってか…… キョン「……寝よう」 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 19:57:09.10 ID:AkeW6zUx0 キョン「……」 高二にもなれば彼女の一人くらいできるだろう、と思っていたがどうやら甘かったみたいだな。 受身なのがまずかったか。……いや、攻めていてもどうにもならなかったんじゃないか? これと言った魅力もない草食系男子の俺に彼女ができるなんて思うな、と考えるべきか。 心の中で湧き出る負け惜しみを冷たい布団にくるまって抑え付け十数分。 やっと温もった布団の中で俺は一人意識を薄める。 ――――― 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 20:01:47.62 ID:AkeW6zUx0 俺は一人、夜道をとぼとぼと歩いている。 どこかで見たことがあるようなないような、そんな場所だ。 んっ……なんだこいつ? 中学校の前を通りかかったところで俺は校門をよじ登る人影を見つけた。 キョン「お、おい」 俺は声を掛ける。 いや、こんな夜中に学校に侵入するというくらいだ。きっとなにか悪さをするに違いない。 「なによっ」 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 20:05:13.17 ID:AkeW6zUx0 キョン「……あ?」 予想は大きく外れ、思わず変な声をあげる。 門にしがみついたそいつはどうやら少女らしかった。 こういうのはどちらかと言えば男がしそうなことだがな。 「なによあんた。変態?誘拐犯?怪しいわね」 キョン「いや、お前こそ何やってんだ」 「決まってるでしょ、不法侵入よ」 いや、そんな堂々と言うことじゃねえだろ…… 「ちょうどいいわ。誰だかしらないけど暇なら手伝いなさい?じゃないと通報するわよ」 生意気な奴だが、確かに暇だ。……あれ、そういえば俺何でここにいるんだ? 「……ふん、入りなさい」 キョン「あ、ああ……」 何かもやもやしたものを抱えながら、俺は校門をくぐる。 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 20:08:58.65 ID:AkeW6zUx0 キョン「それでお前、これで何しようってんだ?」 「あんた馬鹿?石灰と言えば線引くに決まってるじゃない」 キョン「いや、なんで線なんか引くんだよ……明日試合でもあるのか?」 「違うわよ。さ、アンタこれ持って」 そう言って少女は俺にラインカーを押し付けてきた。 「あっ、そこ歪んでるわよ!何やってんのよ!!」 キョン「ああもう……」ザッザッ なんだってコイツはこんな変な模様を書こうと思ったのか。不思議でたまらん。 「違うわよ!もっと右!」 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 20:15:32.22 ID:AkeW6zUx0 「まぁ、こんなもんじゃない。上出来ね」 キョン「そいつはどうも。」 運がいいのか悪いのか、結局誰にも見つからずに無事線引きを終えた。 「ねぇ、アンタ宇宙人っていると思う?」 キョン「な、何だよ突然?」 「いいから答えなさい!」 キョン「あ、ああ……そうだな、居て欲しいよな」 「じゃあ未来人とか超能力者とかは?」 キョン「うーん、一人くらい混じっててもいいんじゃないか」 「異世界人」 キョン「どんなやつか想像つかないな」 「ふーん……そう」 何を納得しているんだ。 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 20:21:07.20 ID:AkeW6zUx0 キョン「それで、これは何の模様なんだ?」 「メッセージよ」 キョン「メッセージ?まさか宇宙人か?」 「違うわよ。アンタ今日何の日かわかってんの?」 キョン「えっ、何の日って……クリスマスだろ?」 「は?ばかじゃないの。今日は七夕ですよー!」 は、七夕? 「何マジで間違えちゃってんのよ。……でもアンタ面白いわね。」 キョン「いや、クリスマスだろ……まぁいいか。それで、……ああそうか、織姫と彦星か」 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 20:26:37.79 ID:AkeW6zUx0 「おっ、やるわね。ねぇそれって北高の制服でしょ?」 キョン「まぁな」 「ふーん、北高ね……あんた名前は?」 キョン「……ジョン・スミスだ」 「は?バッカじゃないの」クスクス キョン「匿名希望ってこった。それで、織姫と彦星宛になんて書いたんだ?」 「『わたしはここにいる』って書いたつもりね。」 キョン「というと……願いを叶えて欲しいがためにこんなことやったのか?」 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 20:33:02.24 ID:AkeW6zUx0 「そうよ。あんた結構頭いいじゃない」 キョン「どうも。それで、どういう願いなんだ?」 「宇宙人、未来人、異世界人、超能力者が私の前に現れますように、ってね」 キョン「するとなんだ、そんな願い事のために俺をわざわざこき使ったのか」 「何よそんなことって!私は大マジメなんだからね!」 キョン「悪い悪い……でも」 「ん、なによ」 キョン「いいな、そうなったら。」 「……そうね」 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 20:39:47.46 ID:AkeW6zUx0 「じゃ、私はもう帰るから。危ない人には気をつけるのよ!」 キョン「それを言うならお前だろうが……じゃあな!」 そう言って、不思議な少女は校門へと駆け出していった。 キョン「……叶うといいな。」 あっ、そう言えばここどこだよ。早く家に帰らないと…… 校門を出てありの巣を探検するように歩き回り、数時間後ようやく家にたどり着くことができた。 キョン「ただいまー……」 ん、まだ誰も帰って来てないのか。ってあれ、何かもやもやする。 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 20:45:32.53 ID:AkeW6zUx0 ……まぁいいか。とりあえず飯食おう。 靴を脱ぎ、リビングへと向かったのだが…… キョン「あれっ、なんで七面鳥が無いんだ?」 机には皿も、温めて食べてね、と書いてある紙も何もなかった。 キョン「おかしいな、妹はミヨキチの家に……」 といいかけて俺はようやく気づいた。そうか、これは夢だ。ということは…… 俺は一直線にベッドへと向かった。 ―――――― 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 20:51:46.17 ID:AkeW6zUx0 「キョンくん、朝だよー!!」ズブッ キョン「フゴッ!!」 キョン「うぅ……妹か」 妹「早く起きて!今日学校だってば!」 キョン「は、学校?だって今日は冬休みだろ」 妹「ははっ、キョンくん寝ぼけてるよー。おかーさーんキョンくんねー……」 んっ、どうなってんだ? 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 20:57:27.48 ID:AkeW6zUx0 キョン「だってお母さん、今日は冬休みじゃん」モグモグ 母「なにいってんの?あんたまた中3に戻って受験勉強したいわけ?」 キョン「……は?」 母「今日はあんたが北高に入学する日でしょ。母さんも行くからね」 みんなして何を言っているんだろう。それにしても既視感がすごいな…… とりあえず俺はいつも通り北高の制服を着て学校へと向かった。 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 21:05:42.66 ID:AkeW6zUx0 校長「ええ、新入生のみなさん、入学おめでとうございます。本日はまことにー……」 ……マジで入学式だった。 どうなってんだよ全く……ほっぺをつねっても目が覚めない。 マジで頭おかしくなっちゃったんじゃないか? クリスマスイブからいきなり入学式に遡りってどういうこったよ…… 校長「君たちが未来の日本を担う人材になるべk―……」 ね、眠い…… ………… …… 「起立」 キョン「うおっ!!」 「……礼」 一応無事に入学式を終えた俺たちは岡部に連れられて教室へと向かった。 まぁ、俺にとっちゃそれどころじゃないんだが…… 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 21:08:28.26 ID:AkeW6zUx0 岡部「それじゃあ自己紹介をしてくれ。まず出席番号一番からだな。ほれ、朝倉起立」 朝倉「朝倉涼子です。趣味は……そうだな、料理です。みんなよろしくね?」 ええっ、マジで始まってるよ……みんな誰だか大体わかるけど…… 岡部「おいっ、次お前だぞ」 キョン「あっ、え、あ、はい!○○です、趣味は―……」ガタッ 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 21:15:15.31 ID:AkeW6zUx0 ふぅ。なんとか噛まずに自己紹介を終えた…… 岡部「じゃあ次、涼宮起立」 「東中出身、涼宮ハルヒ。ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら私のところに来なさい!以上!」 キョン「……は?」 思わず後ろを振り向く。偉い美少女がそこにいた。 この上なく整った目鼻立ち、意志の強そうな大きくて黒い目を長い睫毛が縁取り、薄桃色の唇を固く引き結んだ女。 しかし…… ハルヒ「………」 ハルヒと名乗るそいつは教室を一通り睨んだ後、黙って席についた。 岡部「あ、ははは……じゃあ次……」 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 21:18:09.96 ID:AkeW6zUx0 一通り自己紹介が終わった後。 何もすることがなくなったのか岡部は 「じゃあ、大分時間余ったから休んでいいぞ。40分には席についとけよ」 といつもの調子で適当な事を言って教室を抜け出していったのを機に、俺は涼宮に話しかけてみることにした。 キョン「おい、涼宮、」 ハルヒ「えっ、なによ」 キョン「さっきの自己紹介のアレ、本気か?」 ハルヒ「大マジメよ。何、あんた宇宙人?」 キョン「いや、違うが」 ハルヒ「じゃあ話しかけないで。時間の無駄だから。」 キョン「す、すまん……」 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 21:20:40.13 ID:AkeW6zUx0 谷口「おいやめとけって。あいつが変人だってのは十分解っただろ?」 キョン「あ、そうかな……ははっ」 ハルヒ「あっちょっと待ちなさい!」グイッ キョン「うおっ!」 ハルヒ「……」キッ 谷口「す、すまん……」 キョン「おい、なんだよこんなところに連れ出したりして……」 ハルヒ「……ねぇあんた」 キョン「ん、なんだよ」 ハルヒ「私、ひょっとしてあんたとどこかであったことある?」 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 21:23:04.41 ID:AkeW6zUx0 12月24日 ハルヒ「なによキョン、大事な話って」 キョン「あのなハルヒ。今から言うことは全部本当だ」 ハルヒ「もったいぶらずに早く言いなさい!」 キョン「実はな、長門は宇宙人なんだ。朝比奈さんは未来人で、古泉は超能力者だったんだよ」 ハルヒ「……はぁ?あんたはなんなのよ」 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 21:24:32.27 ID:AkeW6zUx0 キョン「………」 ハルヒ「バッカじゃないの。あたし帰るから」ズッ キョン「おいハルヒ、覚えているか」 ハルヒ「えっ、何よ。またくだらないホラ話し始めたらゲンコツ食らわすわよ!」 キョン「ジョン・スミスって知ってるか?」 ハルヒ「えっ、うそ、あんた……」 キョン「織姫と彦星はどうやら願いを叶えてくれたらしいな。ははっ」 ハルヒ「……キョン!!あんたこれから私に付き合いなさい!」 キョン「うおっ!引っ張るな服が伸びるって!おい!!」 おわり