キョン「また落ちたか…」 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 05:38:40.99 ID:sUqG8IfbO キョン「これで五件目だな…」 ハルヒ「あんた顔に覇気が無さ過ぎなのよ。あんな無気力な表情じゃ、あたしが社長でも採用は見送るわ」 キョン「あのな…」 ハルヒ「もしくは髪型ね。長過ぎず短過ぎず、平均なのはいいけど、あんたの髪型って没個性的なのよね」 キョン「おい、ハルヒ」 ハルヒ「学生が面接といえば坊主頭!とかって凝り固まった考えが抜けきらない世代が多そうよね、面接官任せられそうな中間管理職には」 キョン「ハルヒ、ちょっと聞け」 ハルヒ「何よ」 キョン「いいか。今俺が言った、“話を聞け”っていうのは、少しは大人しく俺の意見に耳を傾けろって意味もあるんだがな、それ以上に言葉の意味を汲んでくれってことだからな」 ハルヒ「だから何よ」 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 05:40:41.81 ID:sUqG8IfbO キョン「ふぅ。あのな、今さっきのコンビニの面接で、通算五件目の不採用だ」 ハルヒ「知ってるわよ。あたしも一緒に受けてんだから。てゆーか落ちた所の数を数えるなんて非生産的もいいところよ?」 キョン「いいから、まだ少し話を聞けって。いいかハルヒ。この一週間で回った面接五つ。 スーパーが二件に短期の引っ越し業者が二件、それとさっきのコンビニだ。 どれも条件が厳しいモノでも良すぎて引く手数多ってモノでも無かったはずだ。そういうとこを優先して選んだからな」 ハルヒ「…で?何よ」 キョン「俺の面接の態度も悪くなかったと思う。俺の、な」 ハルヒ「甘いわねー。決めるのは向こうなのよ?」 キョン「…五件とも落ちるなんて想定外だった。お前は本当に、落ちた理由が俺の冴えない髪型のせいだと思うのか?」 ハルヒ「何よ…。気にしてんの?そりゃパッとする髪型じゃないかもしれないけど、自分に似合ってればイイじゃない」 やはりストレートに切り出さねば、意思は汲んでくれんのか……やれやれ。 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 05:44:30.02 ID:sUqG8IfbO キョン「別に髪型は気にしてない。学生カット二千円の床屋通いだし、伸びたら切る、切ったら伸ばす、を繰り返すだけの色気のない頭髪だからな。」 ハルヒ「二千円って安いわね。」 キョン「週末の度にお茶代をたかられてる貧乏学生だからな。もとはと言えばこのバイト探しもだな……あー。うー」 ハルヒ「?」 キョン「何でもない。話を戻すぞ。とにかく。俺の質疑応答や、学生としての来歴が記載された履歴書、地味な髪型に問題があったとは思わん。 よしんば、それら全てが不正に映ったとしても、五件全滅は、ない」 ハルヒ「何よ。じゃああたしの髪型が不正だって言うの?」 キョン「そこじゃない!何故そこまで髪型にこだわるんだ!じゃなくて、あの面接での不遜な態度はなんなんだ!何故お前は事あるごとに脚を組み、あまつさえ腕組みまでして面接に臨むんだ!」 ハルヒ「別に、オッサンにパンツちょっと見られるくらい気にしないわよ」 キョン「……そうじゃないだろ。あんな高圧的な態度で受かる訳ないだろうが。オマケに面接中にも関わらず俺に話かけてはくるし……」 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 05:47:38.38 ID:sUqG8IfbO スーパー回想↓ 面接官「えーそれでは志望動機を簡単n」 ハルヒ「ちょっとキョン。今隅っこ何か走ったわよ!ネズミかしら。捕まえる?」 キョン「…ぐっ(何考えてんだ)」 ハルヒ「スーパーって下水道が多いからネズミがいるのかしら?鮮魚コーナーとかあるし」 面接官「……あのね、君(何考えてんだ)」 ハルヒ「なってないわねー衛生管理が」 面接官「ぐっ(鼠マジでいたのか?保健所駆け込まれたら死ぬ)」 ハルヒ「キョン!あんた鮮魚コーナー受かったら寿司握れるようになりなさいよ!」 キョン「…」 面接官「……えーでは右の方から順に志望動機と希望の部署を」 ハルヒ「ねえ!鮮魚コーナーって女の子でも入れるんですかっ?」 面接官「……(テメーは右じゃねーだろうがよ!)えーと、女性の方はレジ打ちのみの募集となります。男性の方は鮮魚、または倉庫での仕分けのみになります」 ハルヒ「……そうっ。どうも」 キョン「……(何ムスッとしてんだよ。つーか脚組むな…パンツ見えるぞ)」 ハルヒ「キョン!あたしトイレ行ってくるから、適当にやっといて!」 キョン「はぁっ?お前何言って…」バタンッ 面接官「…チッ」 キョン「……」 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 05:51:21.33 ID:sUqG8IfbO 回想終わり↓ キョン「さっきのコンビニでも聞かれてもないことをズバズバ訪ねるだけ訪ねて、後は腕組んでアヒル口を作って…。受かろうという建設的思考が全く見えん」 ハルヒ「あれぐらいで駄目だったら、縁が無かったってことでしょ? コンビニなんて普段から偉そうな客とか相手してんだから、あたしの腕組みぐらい流してしかるべきよね」 キョン「偉そうな態度は団活内だけで充分だよ。お前が持ってる対人接客の理論を重ね合わせて文句言うのは構わんが、俺を巻き込むな」 ハルヒ「キョンあんたまだ分かってないわね。あたしは“偉そう”じゃなくて“偉い”の!何の為に団長の腕章付けてると思ってんのよ」 キョン「何の為だかね。大体ハルヒは何だってバイト探してるんだよ。何の為だよ?」 ハルヒ「…質問に質問で返すな馬鹿!うっとーしいわね…」 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 05:58:24.73 ID:sUqG8IfbO キョン「へいへい。怒んなよ。で?」 ハルヒ「何よ」 キョン「欲しいモノでもあるのかよ?じゃなきゃバイトするほど、小遣いに困っちゃないだろ」 ハルヒ「…別にないわよ」 キョン「……そうか。ないのか」 キョン「……」 ハルヒ「……あんたが、バイトにかこつけて団活動をサボったり、疎かにしたりしないかの監視を兼ねての小遣い稼ぎよ」 キョン「団長直々にご苦労さんだな。でも、お前までバイトしたらそれこそ団活が意味を成さないんじゃないか?」 ハルヒ「いいわよ別に。全員揃ってこそ有意義な活動が生じるんだから。平団員一人でも居なきゃ意味ないのよ」 キョン「そうかい」 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 06:07:36.07 ID:sUqG8IfbO 何かにつけて大層な理由を並べ立てるモンだ。 キョン「はぁ。また求人情報誌漁らないとな」 ハルヒ「次はマシな所見つけなさいよ。大体あんたが選ぶ所は、どこもかしこも普通過ぎなのよ。不思議が潜んでそうな怪しげな陰のある所をピックアップしなさい! それに、どの仕事場も前時代的にもほどがあるわ。一つの範囲内で男女の職種を分け隔てするから衰退していくのよ」 キョン「お前はそんなに俺と一緒の肉体労働や寿司作りをやりたかったのか」 ハルヒ「……違うわよ馬鹿っ。団員ならあたしが言いたい崇高な意思を掬いあげなさいよ!」 キョン「あー、分かったよ。つーかそれはさっきの俺の台詞だ。ほら、バス来たぞ」 ふう。やれやれだが、またバイト先を探し直さないとな。不思議やらバイト先やら、俺の日常は探索だらけだな。明日、古泉にも聞いてみるか。 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 06:18:20.20 ID:sUqG8IfbO 翌日 キョン「ちぃーっす」 古泉「どうも。どうです?よろしければ一勝負お付き合い願えますか?」 キョン「なんだ?それバーコードバトラーかよ…。よくそんな懐かしいモノ見つけてきたな」 古泉「いえ、バーコードウォーリアーの方です。家の物置から出てきたので、つい持ってきてしまいましてね」 キョン「お前はネタじゃなくて、ごく普通の気分でそんなモノ持ってくるんだから、相当ゲーム好きなんだな」 古泉「昔から、です。一種留のゲームに絞ってしまうと、対戦成績がすぐに芳しくなくなるのでね」 キョン「まぁ懐かしいし付き合ってやるよ。お前と二人だとすることもないしな」 古泉「ではカードをどうぞ」 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 06:21:47.00 ID:sUqG8IfbO ピロリロピロリロ キョン「これカード通す時に技あったよな」 古泉「ええ。ところで、昨日の面接は如何でしたか」ピロリロピロリロ キョン「アイツと一緒で受かると思うか?」 古泉「それは残念です。五件連続、おめでとう御座います」 キョン「こういう時はご臨終です、だろ」 古泉「何でしたら、僕のバイトを手伝ってもらえませんか?時給も、あなたなら色を付けるように上に掛け合いましょう」 キョン「笑えないな。俺みたいな一般人があのバイトをやれるとするなら、真正のマゾヒストを超能力として宿さなきゃならん」 古泉「ふふ、機関のメンバーは別にマゾヒストではありませんよ……ふ ん も っ ふ!!!」ガタガタン キョン「なっ…!いきなり何て声出しやがる!ビックリするだろうが!」 古泉「んふふ。これがウォーリアーカードライナー四十八手の一つ、流星L字通し、です」ピロリロ 古泉「さぁ、あなたのターンです。燕返しで来ても、雷電ギザギザで来ても構いませんよ」キリッ キョン「あんまり覚えてねーよ。それより、バイトの話だけどな」 古泉「ええ」 キョン「求人誌はあらかた見尽くしたがパッとするのがなくてな、俺がじゃなくてハルヒが、だけどな。どこかイイ所を調べてくれないか? 別に大げさに機関に頼まなくても、古泉個人で探せる範囲でな」 古泉「ふむ。了解しました。涼宮さんが気に入りそうなバイト先、という条件で色々当たってみましょう。ふふ、しかし…」 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 06:27:18.18 ID:sUqG8IfbO キョン「何だ?」 古泉「涼宮さんなら、あなたと一緒に働けるなら選り好みせずに、すんなりと決定しそうなものですがね」 キョン「……元々は俺が探してるバイトだぞ。さもハルヒメインで喋るな」 古泉「ふふ、失礼。」 ピロリロピロリロ キョン「ハルヒ、最近落ち着いてきたと思ってたんだけどな」ピロリロピロリロ 古泉「僕もそう思いますよ。閉鎖空間もないし、能力も、最近は弱体化していると思います。……‘けどな’とは?」 キョン「いや、そりゃ超状的な部分ではな、最近は突飛な出来事もないし、それはそれでいい傾向さ。 ただ、勝手に面接付いて来て傍若無人な振る舞いは、お前がよく言う‘至極常識的な女性’の定義からは外れてるだろ?」 古泉「まあ、それは昨日までの五件が気に入らなかった、それなりの理由があったのでしょう。何か心当たりはありませんか? あなたが目を奪われてやまないような美女がすでに働いていたとか」 キョン「人を女好きみたいに言うな。心当たりねぇ…。不平不満の列挙は嵐のようだったからな。職場での男女の分け隔てがナンタラカンタラとか」 古泉「ふっ。なるほど。」 キョン「なんだ、その含み笑いは」ピロリロリーン 古泉「あなたのその鈍感さも含めての、‘なるほど’ですよ。あ、僕の勝ちですね」 キョン「あっ、くそ」 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 06:36:20.97 ID:sUqG8IfbO そんな調子で、商品管理用の大小さまざまな符合が作り出す架空の戦士を戦わせていた俺達。 その弛緩しきった空気をわざと狙って間隙を入れるかのように、部室の扉は強烈な音を出し開かれた。バンっ!と。 ハルヒ「キョンっ!イイこと思いついたわっ!遊園地よっ!遊園地!遊園地でバイトするわよっ!」 キョン「……おい。いい加減に、静かに入ってこれないのか。あと何回遊園地と連呼するんだ。大体な…」 ハルヒ「っというわけで、古泉君っ!悪いんだけど早急にチケットのモギリが慢性的人手不足な遊園地探してちょうだい!」 キョン「なんだその限定的な条件は!大体おま」 古泉「かしこまりました。すぐに知り合いに当たってみましょう」 キョン「かしこまるな!話を聞けっ!大体俺は」 ハルヒ「んー!我ながらナイスなアイデアだわ!ただバイトするなら、その場所が、より人の出入りが多くて広い方がいいに決まってるわよね。 あたし達は基本的に不思議探索と隣り合わせな団体なんだから」 古泉「では早速、電話で聞いてみます。勝負は一旦お預けで」 ハルヒ「頼んだわよっ!」 キョン「……やれやれ」 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 06:39:18.68 ID:sUqG8IfbO で。次の日。 放課後。 午後五時。 俺は地元から数駅離れた所にある遊園地のスタッフルームで立ち尽くしていた。 暑い。暑すぎるぞ。 十一月も終わりに差し迫ったこの時期に汗だくだ。 なぜかって?俺の首から下は、毛むくじゃらで茶色の着ぐるみで覆われているからさ。クマか?これは。 しかし、この矢継ぎ早で身も蓋もない展開、毎度のことではあるが…… キョン「それにしても昨日の今日で、遊園地の面接手配できました明日の夕方四時に現地へ行って下さい、って……早過ぎだろ」 ハルヒ「迅速な展開は願ってもないことじゃないの。二人共バッチリ受かったし。あれだけやりたがってた念願のバイトでしょ?感謝しなさいよ」 キョン「古泉にな」 ハルヒ「思いついたのはあたしよ」 キョン「まぁ大人しく面接を受けてくれたのには、拍手しておいてやるよ。途中まではな」 古泉の顔を潰さずにすんだからな。 ハルヒ「……あっそ」 ……それにしても。 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 06:51:53.36 ID:sUqG8IfbO キョン「何で怒ってんだよ…。昨日の小憎たらしい笑顔はどこいったんだ」 ハルヒ「…」 小憎たらしい、といえば、何故に目の前で顰めっ面をしているハルヒは着ぐるみを着ていないのか。実に小憎たらしい。 そのうえ腹立たしい。 何がってポイントは三つ。 キョン「俺だってムスッとしてーよ。何だってこんなモン着て園内をぶらつかねばならんのだ。去年の夏のスーパーで充分堪能したぜ」 これポイント1な。 ハルヒ「あんたが勝手なこと言うから悪いんでしょ…」 そういうとハルヒは、ふんっと鼻を鳴らしソッポを向く。それだ。その不機嫌がポイントその2。 キョン「仕方ないだろうが。どちらか一方がチケットのモギリ。もう片方は着ぐるみだって言われたんだ。 俺が着ぐるみを引き受けなきゃ、お前は面接のおっさんにあれ以上に噛み付いてただろ?」 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 07:01:30.89 ID:sUqG8IfbO 回想↓ ハルヒ『はぁ!?着ぐるみですって!?そんなのよりあたし達はね…』 キョン『はいはい。いきり立つな馬鹿。すいませんコイツ癇癪持ちで…』 ハルヒ『誰が癇癪持ちよっ!それに馬鹿はあんたでしょうが!馬鹿キョン!あたしはね…』 キョン『わかった!わかったからネクタイを掴むなっ。折角やっと受かったんだぞ!大人しくしろっ!』 面接管『……あはは(何イチャついてんだよ)』 キョン『すいませんっ!僕が着ぐるみやります!コイツにモギリやらせますっ!それでお願いします』 ハルヒ『ちょっ!何勝手に決めてんのよぉっ!』 面接管『あ、ああ、それでお願いします。ハイハイ。じゃあ、あちらのスタッフルームに』 キョン『はいっ。騒がしくしてすいませんでした。ほらハルヒ行くぞっ』 ハルヒ『……むぅぅぅぅ!』 キョン『いっでぇ!背中抓るな!』 ハルヒ『……』イライラ 面接管『……』イライラ 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 07:10:25.54 ID:sUqG8IfbO 回想終わり↓ やりたがってたモギリをハルヒに譲ってやったんだ。誉められこそすれ、怒られるなんて理不尽だぜ、まったく。 ハルヒ「……脱水症状で死ねっ」 キョン「恐ろしいことを口にするなよ」 ハルヒ「……ふん」ムスッ やれやれ。それにしても……。 ポイント3だが、これは口には出せないな。俺の間抜けな着ぐるみに比べて、ハルヒの格好だが……。 似合ってるな。けしからんことに。 この遊園地のユニフォームらしいのだが、全面ピンク色したデニムのツナギ。 頭の天辺には、これぞリボンの中のリボン、キングオブリボン、といった感じの大きな赤いリボンを乗せている。 いつもの黄色のカチューシャが外れたハルヒは思いの外、俺には新鮮に映り、なんだか目を合わせづらい。まぁ当の本人は視線どころか顔ごと明後日の方向を睨み据えているんだが。 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 07:15:00.46 ID:sUqG8IfbO キョン「いつまでアヒル口作ってんだ。いいじゃないか、念願のモギリが出来るんだしよ。わざわざ俺が着ぐるみを引き受けてやったんだ。少しは楽しめって」 ハルヒ「……あたしはっ」 ハルヒが口を開いた瞬間ドアも開き、若い女性が入って来た。 バイト女「準備できましたか?じゃあ着ぐるみの人、私に着いてきて下さいねー」 そう言うと女性は足早に、外に出る。 キョン「じゃあハルヒ、行って来るぞ」 ハルヒ「……」 キョン「ふぅ。ハルヒ、しっかりやれよ?チケットバラバラに千切ったりすんなよ?」 ハルヒ「……」 キョン「……無視っすか。……あー、ハルヒ終わったら、さっき見たホットドッグ屋行ってみようぜ?奢ってやるよ」 ハルヒ「……むっ」スッ やっとこっち向いたな。やれやれ。犬か猫と相対してるみたいだ。 キョン「気をつけろよ」 ハルヒ「何がよ」 キョン「……あー。何がって。それはだ……」 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 07:29:48.02 ID:sUqG8IfbO 最近。どうしたことなのか、ハルヒと喋っている途中に口ごもることが多い。まぁそれだけならいいんだ。幾らでも理由付けて自分で自分を納得させてやるさ。 “大して話す内容がない”だとか“あの神通力を飛ばす練習に見えなくもない眉間のシワと視線につい絶句しちまうんだ”とかな。 問題は別にあって。 “その服、似合ってるからな…ナンパされんなよ” これだ。 こんな感じの、今までの俺なら脳みそをどんな絞り方をしても滲み出てはこなさそうなクサい言葉が、ともすれば口から零れそうになるんだ。 無論、口には出さない。だから口ごもるわけなんだがな。 だが…。本当に。本当にどうしたことなのか。 キョン「その服、可愛いから、な。もしナンパされても殴ったりするなよ」 あぁ。言ったな。今。脳発、声帯経由、しっかりと検閲と編集はされた模様で、そこだけは助かったかな。 今のなら、ハルヒが可愛いのか服が可愛いのかを判じかねる台詞だし 、“殴ったりするなよ”ってところが、いかにも、騒動はゴメンなだけだ、ってな風に聞こえる……よな? 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 07:33:11.01 ID:sUqG8IfbO ハルヒが神通力を飛ばしてくる。 キョン「そんな睨むなよ。変なこと言って悪かった」 しばし視線がぶつかる。 ……耐え難い空気だ。 俺はつい着ぐるみの頭の部分を被った。 キョン「行ってくるぞ」 ハルヒ「…あたしはっ」 キョン「なんだ?」 聞こえづらい。何より暑い。それに視界が狭い。こんなので園内を散策せねばならないのか…。ため息を抑えながら、僅かな覗き穴からハルヒを見る。 ……何、口をパクパクさせてんだ。俺の失語症が伝染したのか?何だか顔も赤く見えるし、暑さまでも伝染してるのか? ハルヒ「……あたしは、あんたと一緒にモギリしたかったのよっ。二人でっ!馬鹿キョン!」バッシーン! キョン「痛っ!今、なっ」ハルヒ「うっさい!早く行け!」ドカッ キョン「痛いって!」 勢い良く背中を蹴られた俺は、勢いそのままにドアの外に出た。 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 07:41:58.37 ID:sUqG8IfbO バイト女「あはは、仲良いですねー」 キョン「そう見えます?…遅れてすいません」 バイト女「いえいえ。じゃあコースを案内しますね」 キョン「お願いします。ふぅ」 バイト「暑いでしょうけど頑張って下さいねー」 まぁこの暑さは胸の熱さから来ているのは分かってるんだが。ハルヒのヤツめ……只でさえ汗だくなのに、余計に発汗作用を刺激しやがって。 「終わったらホットドッグ五本は奢りだからね!」 そんな大声を背中に受けながら、俺は片手を挙げ、園内へと歩いていった。 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 07:45:36.05 ID:sUqG8IfbO 数日後 部室 キョン「おいっす」 古泉「こんにちは。どうです?一勝負」 キョン「バトルドームか…またネタ的なモンをチョイスしたな」 古泉「ふふふ。バーコードでも勝てなくなってきましたからね。あなたに勝てる新ジャンルのゲームを探すのも中々骨がおれますよ」 キョン「そりゃ大変だな」 古泉「どうぞそちらの椅子に」 キョン「はいはいっと。他のメンツは?」 古泉「朝比奈さんは進路指導、長門さんはお隣です」 キョン「ハルヒは掃除当番だったな」 古泉「涼宮さんといえば、バイトの方はどうです?順調ですか?」カチャカチャ キョン「何をもって順調と言えばいいのかはイマイチ判らんが、まぁそれなりにやってるさ。週に三回だし、そんなにキツくもないな。よし始めるか」 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 07:50:17.89 ID:sUqG8IfbO 古泉「ふふ。着ぐるみも板に付いてきましたか?フンッ」カチャカチャ キョン「まぁ、な。このっ」カチャカチャ 古泉「シフトも涼宮さんと同じで、帰りも送って差し上げてるそうで。ハッ!フンッ」カチャカチャ キョン「あれでも一応、よっ!女だからな…ソリャ!」カチャカチャ 古泉「優しい…ツァッ!ですねぇ…セイッ!涼宮さんも…クッ!さぞかし…ボールを…相手の…ゴールに…」カチャカチャ キョン「さぞかし…なんだ?オラッ!」カチャカチャ 古泉「相手の…ゴールにっ!ボールよっ!マッ ガー レッ!!!」ガシャーン キョン「うわっ!なっ、何やってんだよ馬鹿!なんつー声だ!」 古泉「はぁはぁ」 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 08:08:57.83 ID:sUqG8IfbO キョン「力入れ過ぎだろうが…(今なんつったんだ?マッ、カレー?)」 古泉「す、すいません。力み過ぎました…」ハァハァ キョン「やれやれ。最近お前変わってきたな。まぁ面白いから構わんが」 古泉「ふふふ。申し訳ありません。最近は切迫感が少ない日常故に気が緩んできたのでしょう」 キョン「謝らなくてもいい。いいことだよ、そりゃ。いつまでも灰色の世界で赤玉になって命がけのバトルドームはやってられんだろ」 古泉「んふ。うまいこと言いますね。それよりも、話を戻しますが、バイトも一緒で帰りも一緒。最近の彼女の精神の安定は、ひとえにあなたのお陰ですよ。機関を代表して謝辞を述べさせて戴きますよ」 キョン「大袈裟だな」 古泉「ですが、これは事実でしょう。閉鎖空間の減少がモノを言っています。それに……」 キョン「それに…?」 バンッ! 口を閉じた古泉の代わりにとでもいうように扉が開く。相変わらずの轟音を伴って。 ハルヒ「やっほー!遅れてゴメーン!さぁっ、団活はじめましょー!」 古泉「ね?この笑顔。一番物語っていますね」 キョン「……はいはい」 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 08:20:23.81 ID:sUqG8IfbO それからも数日、学校に週三回のバイト、日曜はお決まりの探索。 なんでもないようだが、これ以上を探せと言われれば難しいかもしれない、それなりに笑えてそれなりに輝かしいのかもしれない日々が過ぎていった。 特筆すべきことでもないが、印象に残ってるのは、俺が遊園地でバイトしているのを知った妹が案の定駄々をこねて、案の定園内で迷子になったりだとか、 一度だけハルヒと二人で土産物屋の商品陳列を任せられて案の定突飛な商品の並べ替えをするハルヒの後始末を、案の定俺がさせられたりだとか、 一度だけハルヒと二人でモギリを任せられて案の定似合い過ぎなユニフォーム姿のハルヒが「やっと二人で出来たわねっ」と微笑みやがって、案の定俺は 『そりゃどう捉えりゃいいんだよ』と思いながらドギマギしながらモギったら、チケットビリビリにしちまったりしたことくらいか。 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 08:23:56.10 ID:sUqG8IfbO バイト女「キョン君可愛い彼女と一緒にバイトできて、いいよねぇ」 キョン「…いや。彼女じゃないんですけど」 バイトオッサン「えっ!嘘でしょ?あんな仲良いのに」 キョン「はぁ」 バイト女「それは意外だねー。いつも一緒に帰ってるのに。じゃあ今狙ってるんだ」 キョン「いや…えーっと」 バイトオッサン「いいねぇ。友達以上なんだけど恋人未満の期間って、やってても見てても、一番楽しいよねぇ。ずっと浸かっていたい適温だよねぇ。そういう関係何て言うんだっけ?」 キョン「友達以上恋人未満、じゃないんですか?」 バイト女「あはは。オッサン、そのまんまー。でも、あんまりダラダラしてたらダメだよー。誰かに取られちゃうかもしれないし」 バイトオッサン「そうだよ。あんな可愛い子。引く手数多でしょ」 ご覧の通り、休憩中のスタッフルームで、談笑している最中だ。ハルヒは休憩時間がズレていて、まだチケット千切りの最中だろう。 バイトオッサン「ねぇ、心配にならないかい?他に男が付かないか」 キョン「まぁ…そんなには」 ハルヒの場合は寄ってくる男が引く手数多だろうが、違う意味で千切っては投げ千切っては投げ、だからな。だからモギリがやりたかったのか? バイト女「信用してるんだねぇ。いいなぁ。ま、でもあの子は大丈夫そうよね。キョン君のこと凄く好きみたいだしー。両思いも近いねー」 キョン「ははは…」 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 08:34:23.19 ID:sUqG8IfbO いかんな、照れる。これでは会話をスムーズにこなす為の軽口一つ叩けないな。 ……まぁ確かに、最近ハルヒと仲が良いとは思う。 恥ずかしいのは承知で回想するなら、バイト終わりの帰りに、 ハルヒ『寒いー!寒すぎて凍傷になっちゃうわよ、もう!』 キョン『我慢しろ。叫んでも夏はまだやって来ない』 ハルヒ『あんたさぁ、暖かい缶コーヒー買って、これカイロ替わりに持ってろよ、とか言えないの?』 キョン『生憎だが、今日は小銭が無いんだ。我慢しろ』 ハルヒ『むーっ。……あっ!そうだ!キョン、背中に手突っ込ませてよ』 キョン『断る!ひゃっ、てなるだろうが……って、馬鹿!やめろ!あっ!冷たっ!馬鹿!くすぐってぇ!ふひっ!ふひひ!せめてポケットにしろっ!』 ハルヒ『ん。そうするっ』 キョン『ったく…ほら』 ハルヒ『♪』 みたいなシチュエーションになったり。(………『♪』←はまぁ、俺の妄想かも知れんが…) 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 08:40:21.24 ID:sUqG8IfbO ハルヒのバイト終わりが俺より早かった時には、 キョン『おっメール来てるな…ハルヒか…何々…』 メール『お腹空いた!から園内でホットドッグ食べてるんだけど、財布忘れたみたいだから、バイト終わりに払いに来ること!』 キョン『なんだそりゃ。素直に一緒に帰ろうって言えよな』 というシチュエーションだったり。(これもまぁ、本当に腹が減ってただけという可能性は否定できんのだが) 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 08:42:55.27 ID:sUqG8IfbO 何より、俺が一番驚いているのは、俺自身の変化だろう。(変化……というほど大仰なモンではないかもしれないが) ハルヒと一緒に過ごす、この年末の時間が、とても気持ちが良い。楽しい。 そんな、思わず両手を背中に廻して身悶えしてしまいそうな、こっぱずかしい思考を、心の裏側に押し戻すことなく素直に咀嚼できている。 日々、あいつに……涼宮ハルヒに惹かれている自分を、それでいい、と認めるようになってきているんだ。 だから、古泉やバイト仲間が宣う、『ハルヒも俺のことを好きかもしれない』と思わせる、優しい冷やかしにも、否定する言葉は返さないようになった。 そんな思考の渦にだらだらと飲まれていると、スタッフルームのドアが勢い良く開かれた。バンっ! ハルヒ「あー!寒かった!キョン!終わったわよ!」 キョン「……部室じゃないんだから、もっと丁寧に入って来い馬鹿。皆びっくりするだろうが」 ハルヒ「じゃあ部室ではいいってことね?まぁ細かいことは構わないじゃない!ほらっ!行くわよっ!お疲れ様でしたー!」 キョン「まったく……すいません。お先に失礼します」 バイト女「うふふ。気をつけてねー」 バイトオッサン「お疲れさん。仲良くねー」 二人が、孫を愛おしむような笑顔で手をふってくれた。俺の手は、振り返す間もなくハルヒに引っ張られていく。 ハルヒも笑顔だ。それも満面の、百ワットの、星の煌めきの、可愛いらしい笑顔。 ドキッとした。俺はどんな顔してたかな? まったく。何度も何度もしつこいようだが……。 本当に、本当の本当に……どうしたこと、なのやら。 俺はハルヒを好きになっちまったらしい。 いいよ。認めてやるよ。 これで満足かい?どっかの誰かさん。 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 08:53:25.68 ID:sUqG8IfbO 数日後 遊園地 古泉「ふふっ。これはこれは」 朝比奈「わぁ。部室のカエルさんより可愛いですね」 長門「……」 ハルヒ「みんなっ!この中にキョンが入ってるのよっ!一人一発までなら蹴りを入れてもいいわよっ!」 キョン「いいことあるか馬鹿」 十二月中旬のとある平日。俺達のバイト先の遊園地にSOS団御一行が、遊びに……まぁ冷やかしに……だな、来ていた。 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 09:00:13.30 ID:sUqG8IfbO ハルヒ「いいに決まってるじゃない。こういう行楽地の着ぐるみキャラクターは子供達に蹴りの一発でも貰うのが定番でしょ」 キョン「嫌な定番を作るな。大体そんなことして、このクマさんの中身が俺じゃなかったらどうするんだ」 ハルヒ「ふっふん。この遊園地の着ぐるみはあんたの茶色クマと、女の子が入ってるピンクウサギしか居ないのは、とっくに知ってんのよ!」 古泉「では遠慮なく一発よろしいですかね」ブンブン キョン「蹴りの素振りをするな。これ着てても痛いんだぞ」 朝比奈「でも、大変ですねぇ。園内をグルッと一周しないと駄目って聞きましたよ」 キョン「慣れましたよ。幸い蹴りを入れにくるガキんちょにも未だに遭遇してませんしね」 朝比奈「うふふっ。なんだかクマさんと喋ってるみたいで可笑しいです」 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 09:04:48.50 ID:sUqG8IfbO 長門「……」 キョン「そうだ。長門はこんなとこに居るよりホットドッグ食べに行った方がいいんじゃないか?結構美味いぞ」 長門「……」コク ハルヒ「そうねっ!じゃああたしが案内するわねっ!じゃあキョン!しっかり蹴られなさいよっ!」 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 09:07:19.65 ID:sUqG8IfbO そう快活に言うとハルヒは、長門と朝比奈さんの手を引っ張って走り出した。古泉が俺に一礼し、その後に続く。 ハルヒのヤツどうせあの調子なら仕事中なのも気にせずに、みんなと肩を並べてホットドッグに舌鼓を打つんだろうな。 腹減ったな……。 後もうちょい頑張るか。 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 09:10:55.55 ID:sUqG8IfbO 数時間後 スタッフルーム キョン「ふぃー。疲れたー」 ハルヒ「遅いわよっ!みんな待ってるから、さっさと着替える!」 キョン「ご苦労様くらい言えんのかね」ヌギヌギ ハルヒ「……ご苦労っ」 キョン「お前は俺の上司か」 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 09:13:09.57 ID:sUqG8IfbO ハルヒ「いいから速くしなさいよ」 キョン「へいへい。って、ちょっと待っててくれ。主任さんのとこに行かなきゃいけないんだった」 ハルヒ「は?何で?あんた何かしたの?」 キョン「いや、明日の時間を聞きにだな…」 ハルヒ「……明日?」 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 09:17:46.13 ID:sUqG8IfbO 拙かった。 鈍感な俺にも判るくらいに、ハルヒの機嫌が悪くなっていく。 辞書を引いたなら‘みるみるうちに’とはこういう時の使い方です、と記載されてるのではないだろうか。そう思う程に徐々に周囲の空気はハルヒの怒りに伴って、重くなっていく。 ハルヒ「……あんた明日バイト入れてるの」 キョン「あー、その、なんだ、伝えるのを忘れてた。最近バタバタしてたから」 ハルヒ「……いくら名前の先に‘馬鹿’が付くのが似合う男でも、明日何の日かは知ってるわよね」 キョン「……ああ。」 明日は十二月二十四日。 クリスマスイブだ。 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 09:21:12.02 ID:sUqG8IfbO ハルヒ「帰る」 キョン「おいハルヒ!ちょっと待て」 ハルヒ「うっさい!馬鹿キョン付いてくんなっ!一生バイトしてなさいよ馬鹿!」バシーン キョン「痛っ!ハルヒ!こらっ!話聞けって!」 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 09:23:09.80 ID:sUqG8IfbO ハルヒ「……っ」ダーッ キョン「くそっ!何であんなに足が速いんだあいつはっ!あぁ!くそっ、脱がなきゃ追いつかねー!けど中々脱げねえ!」モタモタ バイト主任「ちょっとちょっと!君何してんの!そんな顔だけ出して着ぐるみ付けて外出ないでよ!」 キョン「うっ…。すいません…」 バイト主任「ったく」 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 09:30:01.25 ID:sUqG8IfbO 主任「そうそう明日は朝の十時からね!」 キョン「えっ!そんなに早いんですかっ」 主任「文句あんの?忙しいだろうイブにシフト入れるから、代わりに給料前渡しして欲しいって言ったの君でしょ!」 キョン「……はい。すいません」 主任「休憩は間で一時間入れるから、ラストの九時までね!」 キョン「えっ!?マジですか?」 主任「たかだか十時間でしょうが。イブはただでさえ忙しい上に、人手も少ないから当たり前でしょ。じゃあ遅れないようにね!」 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 09:36:33.49 ID:sUqG8IfbO 参ったな……怒り心頭のハルヒの顔が焼き付いて頭から離れず、俺はクマ型のフルフェイスを持って立ち尽くした。明日に予想されるハードワークも相まって頭の中がぐちゃぐちゃになりそうだ。 何だって俺はこんなに要領が悪いんだ。 単にタイミングが悪かったといえば、それまでだが、もう少しハルヒへの言い方も考えるべきだったな。 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 09:39:49.40 ID:sUqG8IfbO オマケに明日は、ほぼ一日中クマさんサウナスーツ内に拘束されるなんて……冗談じゃない。これじゃあわざわざ給料を前倒ししてもらった意味もなくなってしまう。 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 09:41:51.34 ID:sUqG8IfbO クリスマスが近づくにつれ、俺とハルヒの間にも御多分に漏れずというか何というか、街に充満するような、期待感を孕んだ焦燥感のようなモノが、あった。 数日前の帰り道回想↓ キョン「今年ももうすぐだな」 ハルヒ「ヤツの降誕祭ね」 キョン「目に見えざる敵のような言い方だな。ヤツとは何だ、ヤツとは」 ハルヒ「いいじゃない。惑星規模で祝ってやってんだから、それくらいで文句言わないでしょ」 キョン「まぁ、祝う、というよりはみんなして勝手にはしゃいでるだけだがな」 ハルヒ「惑星規模のカップル達がね」 キョン「まぁ、そんなもんだよなクリスマスってのは……今年は、何鍋なんだ?」 ハルヒ「ちゃんこ!と、しゃぶしゃぶ!」 キョン「マトモな鍋で結構なことだ」 ハルヒ「鶴ちゃんがイイお肉持って来てくれるからね」 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 09:45:06.62 ID:sUqG8IfbO まだ二年目とはいえ、早くも恒例行事になりつつある、鍋パーティーは今年もつつがなく行われそうである………クリスマスに。 ハルヒ「鍋の後は今年も有希の家ね!Wiiやるわよ!ウィー!」 キョン「あいつのマンションは毎回、重宝されてるなぁ」 ハルヒ「そうねぇ。有希もその功績を労って、昇進させてあげようかしら。それをクリスマスプレゼントに」 キョン「もっと、まとなモノにしてやれよ」 ハルヒ「充分過ぎるほどまとなじゃないの!クリスマスの朝、寝ぼけ眼を擦りながら、枕元の靴下を見ると、ソコには新しい腕章が!顔を綻ばせる有希!」 キョン「想像できん」 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 09:49:34.77 ID:sUqG8IfbO ハルヒ「プレゼントかぁ……」 キョン「……何を思わせぶりに呟いてんだよ」 ハルヒ「へっ?あっ、うっうるさいわね!盗み聞きすんじゃないわよ!」 キョン「痛い痛い!腕を捻るなっ!盗み聞きも何もこんなに引っ付いてりゃ嫌でも聞こえるだろうが」 ハルヒ「ふんっ!あんたとはおちおち手も繋いでらんないわねっ」 キョン「悪かったよ……で?」 ハルヒ「?」 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 09:52:10.08 ID:sUqG8IfbO キョン「プレゼント……何か欲しいモノでもあるのかよ」 ハルヒ「んー。そうねぇ、うちゅ」 キョン「先に言っとくが、宇宙生命体がどうとか古代文明の兵器がどうとかそういう超常識的なモノはナシな」 ハルヒ「むぅー……会話を遮るなっ馬鹿!」メキャ キョン「痛っ!」 キョン「ったく。すぐに手を出しやがって……お前には普通の女子高生が欲しがるようなモノは思い浮かばんのか」 ハルヒ「普通って嫌い」ギュー キョン「いででで!悪かった……」 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 09:55:15.89 ID:sUqG8IfbO ハルヒ「……ま、これといってないわね」 キョン「……そうかい」 ハルヒ「……」 キョン「……」 ハルヒ「……ねぇ」キョン「なぁ」 ハルヒ「何よ……先言いなさいよ」 キョン「いや……大したことじゃないんだがな……」 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 10:00:19.64 ID:sUqG8IfbO ハルヒ「何よ」 そう見つめられると言いづらいんだよ…… なんとなく、本当になんとなくだが、ハルヒも俺と同じことを言おうとしてくれてたんじゃないか?と思い、それなら余計にハルヒが先に言葉を発するのを期待したいのだが…… まぁ、こういうのはやはり男が役目をはって切り出すもんだよな。 キョン「イブは…何してんだ?」 ハルヒ「……別に」 キョン「……そうかい」 ハルヒ「……あんたは?」 キョン「……特に何もないな」 ハルヒ「……あっそ」 キョン「暇なら……」 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 10:03:13.75 ID:sUqG8IfbO ハルヒ「えっ」 キョン「暇なら……電話してやるよ。暇潰しのおしゃべりに付き合ってやるよ」 ハルヒ「ふんっ。何よそれ。あたしが年中暇持て余してるみたいに聞こえるじゃない」 キョン「違うのか?その割には最近よく電話かけてくるじゃないか」 ハルヒ「……うっさい」 キョン「……まぁ、お前も家でケーキ囲んだりくらいするんだろうし、お互い暇なら、な」 ハルヒ「……うんっ」 キョン「……で、ハルヒ。お前は何言おうとしたんだ?」 ハルヒ「ふふっ。もういいわ。必要なくなったから」 キョン「そうかい」 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 10:09:16.97 ID:sUqG8IfbO 回想終わり↓ あの帰りのやり取りだけでは、はっきりと約束を交わしたわけじゃないから、イブにバイト入れたからって、怒られる云われはないんだがな…… なんて心中での言い訳が出てくるのは、しばらく前の俺だったろうな。 鈍感で平凡な男子高校生ならではの一歩引いた考えが楽なのは百も承知なのだが…… ……今は無理だ。もう飲み込んじまったんだよ!ハルヒのことが好きだっていう気持ちを、胸の奥までな! 67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 10:17:47.67 ID:sUqG8IfbO くそっ。どうする? バイトは今さらキャンセルするわけにはイカン。 なら明日シフト入れた理由を全部説明して許してもらうか? イヤ待て、それはさすがに格好悪い。何よりも、わざわざ給料の前渡しを頼んでまで立てた俺のちょっとした計画が駄目になっちまう。 とりあえず、ハルヒに電話入れるか。今からじゃ追い付きそうにないしな。 そう思いたち、携帯を握った時に呼び出し音が鳴った。 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 10:24:43.52 ID:sUqG8IfbO キョン「着信、古泉からか。もしもし?」 古泉「お疲れ様です。バイトは終わりましたか?」 キョン「ああ。お前達、まだ遊園地のすぐ外か?バイトは今終わったとこだ」 古泉「入れ代わりで僕のバイトが入りました。実に数ヶ月ぶりの閉鎖空間です」 キョン「ああ……。すまん古泉。俺のせいだ。」 古泉「いえ、お気になさらず。最近なまっていたので丁度いい運動になりますよ」 キョン「そう言ってもらうと気が楽だ。悪い、聖夜も近いってのに。ハルヒは?」 古泉「こちらには来ていません。長門さん曰わく恐らく裏口から出て、今はもう帰りの電車の中だそうです」 キョン「そうか……」 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 10:28:17.12 ID:sUqG8IfbO 携帯を握ったまま、俺は考えを巡らせていた。端から見たら弛緩しきった棒立ちに見えるだろうが、頭の中では猛烈な勢いで思考が自転よろしく廻っていた。 キョン「……古泉、頼みがあるんだ」 古泉「……ええ。なんなりと 87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 15:43:03.47 ID:sUqG8IfbO クリスマスイブ当日 午後1時 涼宮ハルヒ宅 ハルヒ「ん……今、何時」 ハルヒ「わっ!もう1時じゃない!寝過ぎた……」 ハルヒ「そっか…昨日イライラしたから携帯の電源落としたんだった……目覚まし鳴らないわけよね……」 ハルヒ「……メール入ってるかな。電源入れてみよ」 88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 15:48:00.13 ID:sUqG8IfbO 新着メール・2件 from・キョン AM 9:30 本文『ハルヒ、昨日は悪かった。電源落ちてるみたいだからメールにしとく。今日は十時からラストまでのシフトだから。また休憩中に電話する』 ハルヒ「……ラストって夜9時か10時までじゃない。馬鹿キョンっ」イライラ 90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 15:49:54.71 ID:sUqG8IfbO ハルヒ「ならせめて行く前の時間に会いにぐらいっ……あの鈍感馬鹿じゃ無理か。まぁ電源切ってたしね…もう一件は?」 from・キョン PM 12:10 本文 『休憩入った。電源入ってねーぞ。まだ怒ってんのか?また連絡する』 ハルヒ「もー!タイミング悪いっ!後少し早く起きてたらっ……」イライラ ハルヒ「電話してみよ……休憩終わったかな?」 電話『お掛けになった電話は電源が入っていないため……』 ハルヒ「なんであんたまで電源切れてんのよっ!もうっ!」プチッ 91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 15:54:13.31 ID:sUqG8IfbO ハルヒ「……もう知らない。電源切っとこ……」プツッ ハルヒ「はぁ……明日、部室で熱々の豆腐食べさせてやるんだから」 ハルヒ「馬鹿キョンっ」 ハルヒぁ……顔洗お」 ピリリリリ ピリリリリ 93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 16:01:59.72 ID:sUqG8IfbO ピリリリリ ピリリリリ ハルヒ「あれ?電源……切らなかったっけ…」 【着信・有希】 ハルヒ「もしもし?どうしたの?」 長門「……外に」 ハルヒ「何?珍しいわね有希から電話なんて。てゆーかあたしの携帯、電源切れてなかった?」 長門「操作した……外に」 ハルヒ「は?ソーサ?外って?」 長門「今、あなたの家の外に居る。出てきて」 ハルヒ「えっ?何で?外に?ホントに?」 長門「ホント」 ハルヒ「……ちょっと待ってて」プツッ ハルヒ「何だろ?珍しいわね……まさか有希、腕章欲しいのかな……」 95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 16:24:07.15 ID:sUqG8IfbO 玄関 ガチャ ハルヒ「わっ。ホントに居た」 長門「……」 ハルヒ「どうしたの?……有希ってホントいつも制服よね」 長門「一緒に来て」スッ ハルヒ「どこに……何あれ」 長門「車」 ハルヒ「……そんなの見たら分かるわよ……何よあの高そうな黒塗りのベンツは。あれ有希の?」 長門「違う。古泉一樹が手配した。私の役目はあなたに連絡を取り、連れて行くこと」 97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 16:31:13.13 ID:sUqG8IfbO ハルヒ「連れて行くってどこに……って!ちょっ!待って!引っ張らないでよっ!」 長門「……」グィグイ ハルヒ「待ってってば!ちょっ、なんつー力よっ!有希っ!まっ!せめて着替えさせなさいっ!」 99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 16:42:59.59 ID:sUqG8IfbO 二時間後 ハルヒ「有希っお待たせ!」 長門「……」コクッ ハルヒ「じゃあ行ってきます!」 ハルヒ母「行ってらっしゃい……あの子ハルヒ待ってる間ココア12杯は飲んだわね……」 101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 17:06:21.76 ID:sUqG8IfbO 車内 ハルヒ「ごめんね時間かかって。起きたばかりだったから。有希もいきなり来るから悪いのよ」 長門「ごめんなさい」 ハルヒ「で?こんな凄い車チャーターしちゃって、どこ連れてってくれるの?ねぇ運転手さんっ!あなた古泉君お抱えのドライバーなのっ?」 運転手「ええ。そんなところです」 102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 17:10:35.88 ID:sUqG8IfbO ハルヒ「ふーん。古泉君もいまいち何者かわかんないわよねっ。まぁいいけどね。 ねぇ有希、どこ向かってるのか教えてちょうだい!今日はイブだから、団員二人からのサプライズなわけ?みくるちゃんは?」 長門「朝比奈みくるも、目的地に居る」 ハルヒ「そうっ……キョンは……関係ないの?」 長門「彼も居る」 ハルヒ「まぁ、イブに団長放っといてバイトするようなけしからん雑用だからあんなヤツは味噌っカスよね……って、えっ!?」 長門「……」 ハルヒ「有希……この車、どこに……」 長門「遊園地」 103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 17:50:05.09 ID:sUqG8IfbO さらに二時間後 運転手「到着致しました」 ハルヒ「……どうもっ」 朝比奈「あっ!涼宮さぁ〜ん!」 ハルヒ「みくるちゃんっ……震えてるじゃない、寒そうねぇ。ここでかなり待ったの?」 朝比奈「あっいえっあのっ、一人で園内に入ると、迷子になっちゃいそうだったので」 105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 17:54:28.90 ID:sUqG8IfbO ハルヒ「みくるちゃんらしいわねぇ。まぁ確かに人多いわね……」 朝比奈「クリスマスイブですからね。もう暗くなってきましたし、6時を過ぎたらイルミネーションが綺麗らしいです」 ハルヒ「ふーん。古泉君はまだ居ないの?」 古泉「お待たせしました」 ハルヒ「あれっ。居たの?」 106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 18:03:44.41 ID:sUqG8IfbO 古泉「今到着しました。少し用事があったもので。涼宮さんは?」 ハルヒ「あたし達も今来たとこ」 運転手「申し訳御座いません、道がかなりこんでいたもので…」 古泉「いえ、今日はイブです。仕方ないでしょう。ご苦労様です」 ハルヒ「で……?古泉君、こんな所に引っ張り出して、どういう趣向なの?何か不思議が見つかったの?」 107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 18:10:02.92 ID:sUqG8IfbO 古泉「残念ながら、不可思議な現象や、まことしやかに語られる都市伝説などは、今日のこの園には御用意できてないのです。 本日は、日々我々SOS団団員に、高邁で崇高なる理念と、実直さと聡明さで満たされた活動で、充実した学生生活提供してくれている、 涼宮ハルヒ団長を労い喜ばせようと企画したクリスマスイブのサプライズイベントです」 ハルヒ「……馬鹿キョンに何か聞いたの?」 古泉「いえ?このサプライズは我々三人から涼宮さんへの余興です」 ハルヒ「……そう」 古泉「では、入園しましょう。フリーパスチケットも手配済みです。普段は仕事でしか訪れることのないこのアミューズメントパークを本日はたっぷりご堪能下さい」 ハルヒ「……」 古泉「そうそう。後、これとは別にとても素敵なプレゼントも用意されていますので、それも御期待していて下さい。では中へ」 109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 18:47:39.82 ID:sUqG8IfbO 園内 ザワザワ ハルヒ「わーっ、凄い人の数ね」 長門「……」タッタッタッ ハルヒ「あっ、有希?」 古泉「恐らくホットドッグを食べに行ったのでしょう」 ハルヒ「……随分お腹空いてたのね。一人で行かなくてもいいんじゃないの?」 朝比奈「人混みの除けかたが凄かったです…」 110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 18:57:38.08 ID:sUqG8IfbO ハルヒ「あれっ?古泉君は?」 朝比奈「へっ?あっ、えっとトイレかなぁ」 ハルヒ「人がゴミゴミし過ぎてて、すぐに見失っちゃうわね……もう二人共せっかちよねっ!ホントにあたしを楽しませる気があんのかしらっ」イライーラ 朝比奈「ふぇぇっ(頑張って間を保たせなきゃ)」 朝比奈「すっ、涼宮さんっ!あれっ、乗りましょう!」 ハルヒ「乗りましょう……って、あたしはイイけどみくるちゃん大丈夫なの?あのジェットコースター、結構怖いらしいわよ?」 朝比奈「ひぇぇっ!?(な、な、何指さしてるのぉ!私の馬鹿ぁ!)」 ハルヒ「まっ、みくるちゃんと二人で絶叫って言うのもイイわねっ!さぁっ、行くわよっ!」 朝比奈「ふぇぇぇん」ズルズル 111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 19:13:59.96 ID:sUqG8IfbO その頃、イルミネーション前 古泉「ふぅ……合流地点はここですね」 キョン「……」チョンチョン 古泉「彼はまだでしょうか」 キョン「……おい」 古泉「ふぅ……しかし人が多い」 キョン「おいこら」ドスッ 古泉「ひっ…!あっ……あなたでしたか。そんな格好なので判りませんでしたよ」 キョン「暑くてたまらん」 112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 19:18:22.93 ID:sUqG8IfbO 古泉「この人混みです。普段よりも熱気があるでしょうね。おや?それは…」 キョン「ああ……イブだからな。風船を配ってるんだ。ノルマは三百個」 古泉「それは大変。では忘れない内にこれを。言付かっていた例の品です。持てますか?」 キョン「ああ。ありがとう。何から何まで助かった代金はバイト終わりでいいか?」 古泉「ええ。大丈夫です。ツケておきましょう。しかし、あなたも律儀なことです。これ位の金額なら機関を通せば賄えましたよ」 113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 19:37:28.76 ID:sUqG8IfbO キョン「それじゃあ意味がないだろ。味気ないしな。それに、いくら俺が面倒くさがりでも、そんなことまでお前に頼だら、それこそお前に嫌われそうだ」 古泉「いえ……。とんでもない……ふふ、すいません僕が野暮でしたね。贈り物は額に汗し、頑張って稼いだお金で入手した品がイイに決まってます」 キョン「丁寧に説明するな。恥ずかしいから……ハルヒは?」 114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 19:49:34.51 ID:sUqG8IfbO 古泉「つつがなく、ご招待しました。携帯に連絡がとれなかった為、長門さんの助力を得て…ね」 キョン「相当ご機嫌斜めだったんじゃないか?」 古泉「さあ?そう怒っているようにも見えませんでしたが?」 115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 19:50:13.98 ID:sUqG8IfbO 誰か……有志の方々9時くらいまで、保守願います… 123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 21:24:13.06 ID:sUqG8IfbO 古泉「恐らくは近くに、あなたが居るんだ、と意識したからでしょうね。今頃は朝比奈さんと乗り物を楽しんでいますよ」 キョン「そうかい……ふぅっ。じゃあ仕事に戻る。頼んだぞ」 古泉「分かりました。頑張って下さい。……期待してますよ」 キョン「……やれやれ」 124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 21:33:25.46 ID:sUqG8IfbO その頃、ジェットコースター シュゴー ハルヒ「きゃあああああっっほー!!」 朝比奈「あっあっあっあっあっあふっ」ジワー 同時刻 ホットドッグ屋 長門「……」モグモグ バイト「店長……もうウインナーが切れましたよ…」 店長「一体何個食べる気だ……あの、すいませんお客様、ウインナーが切れてしまいまして…」 長門「心配ない」 長門「あなたたちのが、ある」 125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 21:38:02.86 ID:sUqG8IfbO ハルヒ「ふぅっ!中々迫力あったわね!」 朝比奈「あぅあぅ…」ヒョコヒョコ ハルヒ「何て歩き方してんのみくるちゃんっ!ほらっ!次はバンジーやるわよ!バンジー!」 朝比奈「ひぃーん。トッ、トイレに行かせて下さぁい」 ハルヒ「もう!だらしないわねぇ………あっ」 朝比奈「えっ?」 128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 21:44:04.29 ID:sUqG8IfbO ハルヒside 朝比奈「あっ……茶色いクマさん。あれって」 ハルヒ「……」ムスッ 朝比奈「あれ、キョン君が入ってた着ぐるみさんですよね?」 ハルヒ「……」 朝比奈「ここからじゃ人込みで分からないけど何か配ってますね。あっ子供達にキャンデー配ってます。」 ハルヒ「……みくるちゃん、バンジー行きましょ」 朝比奈「えっ?声かけないんですか?キャンデー貰いましょうよ」 129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 21:51:10.78 ID:sUqG8IfbO ハルヒside ハルヒ「別にいらないわ。あんなバイト人間、放っといて行くわよっ」 朝比奈「ええっ。でもぉ」 ハルヒ「さっさとするっ!」 朝比奈「はっ、はぃぃ!」ジュンワー 茶色クマ「……」フリフリ ハルヒ「っ……」 朝比奈「あっ、クマさん来ちゃいました」 ハルヒ「……何よ」 茶色クマ「……」フリフリ ハルヒ「何ご機嫌で手ぇ振ってんのよ……そんなにバイトが面白いってワケ?」 130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 21:55:41.29 ID:sUqG8IfbO キョン着ぐるみ(くそーっ暑いっ…暑すぎる) キョン着ぐるみ(どいつもこいつも、楽しそうにしやがって) キョン着ぐるみ(こっちは何時間こんなことしてると思ってんだ) キョン着ぐるみ(しかも仕事上喋れないのがキツい……) キョン着ぐるみ(黙々と同じ作業繰り返してんのは精神的にキツいぜ……) 131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 21:59:18.55 ID:sUqG8IfbO ハルヒside ハルヒ「……」イライラ 朝比奈「ふぇぇ」キョロキョロ ハルヒ「何とか言いなさいよっ!このっ……」 ハルヒ「馬鹿キョンっっ!!」バッシーン 朝比奈「ひぃぃっ!涼宮さっ、そんな思いっ切り蹴ったらキョン君が……」 茶色クマ「………っっっ!!」ビクーンッ 132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 22:03:44.77 ID:sUqG8IfbO その頃 ホットドッグ店長「………っっっ!!」ビクビクーン バイト「てんちょーぅ!てんちょーぅ!」 133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 22:08:28.49 ID:sUqG8IfbO バッシーン! キョン「ぐっっっ!!」 キョン(痛ぇっ!くそっ!蹴りやがった!!) バッシーン キョン(いでで!同じところをっ……) キョン(くっ……一時非難だっ)ダーッ 134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 22:11:45.90 ID:sUqG8IfbO ハルヒside 茶色クマ「……っ」ダーッ ハルヒ「あっ!逃げんな馬鹿キョン!!」ダーッ 朝比奈「あっ!涼宮さーん!置いてかないでぇ」 朝比奈「早い……」 135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 22:15:08.72 ID:sUqG8IfbO キョン(ふぅ……ここまで来れば大丈夫だな) キョン(おっ。必死で走ったから気付かなかったが、ちょうど目標地点の近くまで来たみたいだな) キョン(……後は) 136 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 22:22:05.12 ID:sUqG8IfbO ハルヒside ハルヒ「もうっ!どこ行ったのよあの馬鹿。着ぐるみのくせに逃げ足は早いんだから」 古泉「涼宮さん。ここに居ましたか」 ハルヒ「古泉君。トイレ長かったわね」 古泉「ふふふ。探しましたよ。ですが丁度良かった」 ハルヒ「何?」 古泉「しばらくここで待っていて頂けますか?」 ハルヒ「待つって何を……っあー!古泉君!後ろ後ろ!馬鹿キョンのクマがっ!捕まえて蹴り入れなきゃ!」 古泉「おや?……あぁ、あれは放っておきましょう。ふむ、現在57分。時間もバッチリですね」 ハルヒ「あー!逃げてくー!キィー!」 137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 22:26:45.63 ID:sUqG8IfbO ハルヒside ハルヒ「もうっ……何なの古泉君。馬鹿に逃げられちゃったじゃない」 古泉「まぁまぁ。では涼宮さん。お願いがあります。今から三分間、この場所を離れないで下さい。本日ラストのスペシャルプレゼントを御用意しております」 ハルヒ「何?ひょっとしてイルミネーションのこと」 古泉「んふ。秘密です。では僕はしばし失礼します」 138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 22:32:13.46 ID:sUqG8IfbO ハルヒ「あっ、ちょっと古泉君!」 ハルヒ「もう……」 園内放送『間もなくイブのイルミネーションが点灯致します。皆様、ぜひセンター広場に……』 ハルヒ「広場って……ここよね……」 ハルヒ「古泉君、どこ行ったのかしら……あっ……クマ」 ハルヒ「あんな離れたとこに居たんじゃ、人混みで辿り着けないわね……馬鹿キョン……一生クマやってなさいよ……」 139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 22:40:26.55 ID:sUqG8IfbO ザワザワ ザワザワ ハルヒ「……ふんっ。ノンキに飴なんか配って……」 ピンクうさぎの着ぐるみ「……」スタスタ ハルヒ「……あっ。ピンクうさぎ……そういや着ぐるみってもう一体居たわね」 ピンクうさぎ「……」スッ ハルヒ「……何よ……風船なんか要らないわよ」 ピンクうさぎ「……」スッ ハルヒ「……そんなに貰って欲しいの?ノルマでもあんのかしらね?三百個くらい」 140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 22:45:34.64 ID:sUqG8IfbO ハルヒ「ハイハイ。貰ってあげるわよ」スッ ザワザワザワザワ ハルヒ「あれっ?何?暗っ」 141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 22:55:43.31 ID:sUqG8IfbO キョンside やにわに園内の照明が全て消され、その光量が観客達に分け与えられたかのように、園全体がざわついた。 放送『それではイルミネーション点灯です!』 ワーッ ザワザワ パチパチ 園内の中央に設置された巨大なオブジェの数々が一斉に輝いた。 ……七色の光に照らされたハルヒがうっすらと口元だけで微笑みながら呟いた。 ハルヒ「ふんっ。まぁまぁじゃないっ」 ……やれやれ。ひねくれたヤツだぜ。だがまぁ……そうだな。あんなオブジェよりも、少し綻んだお前の顔の方が……眩しいよ。 今がチャンス。 俺は風船と共に、小さな箱をハルヒに持たせ…… ピンクのウサギの頭を外した。 142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 23:04:15.59 ID:sUqG8IfbO ハルヒ「あれっ……風船……と、何これ?」 キョン「……ふぅっ。暑い暑い」 ハルヒ「なっ!キョンっ!?えっ?えっ?何でっ?」 キョン「何を慌ててんだ」 ハルヒ「だって、クマは……」 キョン「あぁ……今日は着ぐるみを交換したんだ。怒ったままのお前が来たら、近寄ってこないかもしれんと思ってな」 ハルヒ「なっ、何よそれ……」 キョン「仮に近寄って来たとしても、蹴り入れられたら、かなわんからな。二重の保険だよ」 ハルヒ「……」 キョン「まぁ、結局そこらのガキんちょに二発ばかり蹴られたがな。お前の言う『定番』もあながち間違っちゃいなかったな」 143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 23:15:47.72 ID:sUqG8IfbO キョン「悪かったよ。黙って入れ替わってて。後、昨日の事も謝る」 ハルヒ「……これ、何よ」 キョン「ああ……クリスマスプレゼントだ。生憎、地下深くから出土されたモノでも、隕石の欠片でもナイがな……開けろよ」 ハルヒ「……っ…これ……」 キョン「ふた月前くらいに、みんなで買い物行った時、欲しそうにしてたヤツだ。覚えてるか」 ハルヒ「……覚えてる」 キョン「買ってやろうと思ったんだが、貧乏学生には少し値が張ったんでな……今になった」 ハルヒ「あんた……だからバイトしたの……?」 キョン「そんなとこだ。しかし、バイト探し始めたのはいいが、どこかの女団長は邪魔しやがるし、かと思ったらソイツは欲しいモノは特にナイなんて二度も言いやがる。柄じゃないことすると報われないもんだ」 145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 23:24:44.14 ID:sUqG8IfbO ハルヒ「……馬鹿キョン」 キョン「……誰が馬鹿だ」 ハルヒ「……馬鹿キョン」 キョン「……ま。折角だからイブに渡したかったんだが、ここの給料が入るのが予想以上に遅かったんでな。今日シフト入れるのを条件に前借りさせてもらったんだ。言い訳みたいになっちまったが、まぁこれで怒りを収めろよ」 ハルヒ「……」 キョン「……何か喋れ。まだ怒ってんのか?」 ハルヒ「……怒ってない」 キョン「……そうかい」 149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 23:41:35.57 ID:sUqG8IfbO そうは言ったものの、ハルヒは俯いたままで、こちらに顔を向けようとしない。どうしたもんかと思っていたら不意にハルヒが口を開いた ハルヒ「……他には?」 キョン「………バイトを抜けられんから、古泉に変わりにプレゼントを買いに行ってもらった」 ハルヒ「……他は?」 キョン「……お前の電話が繋がらんから、長門に協力してもらって、迎えにも行ってもらった」 ハルヒ「……他は?」 キョン「……お前がここに来た後の遊び相手約を朝比奈さんに頼んだ」 ハルヒ「……他」 キョン「……それぐらいだ。もう言ってないことは……」 ああ……あったな。 ハルヒ「……他ぁ」 キョン「……ハルヒ。好きだ」 151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/24(木) 23:53:43.04 ID:sUqG8IfbO ハルヒ「……」 キョン「……何か喋れ」 言っちまった。それも首から下はピンクのウサギのまんまだ。 周りのざわめきが、俺達をはやしたてている風に聞こえた。 ……そんな辺りの雰囲気に一人立ち向かうかのようにハルヒは黙ったままだ。 キョン「……ハルヒ、悪かっ」 ハルヒ「謝んな……馬鹿キョンっ」 キョン「……お前が黙ったまんまだからだ」 ハルヒ「……っ馬鹿っ!このあほっ!喋ったらっ……涙っ出そうだったのよっ!馬鹿キョン!こんな人前で泣かせんなっ!」バシバシ キョン「……わりぃ。痛っ。ほら、涙拭け」バシバシ ハルヒ「……っ……ぐすっ」バシバシ キョン「……落ち着いたか?」 ハルヒ「……最初から落ち着いてるわよ馬鹿っ!」 155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/25(金) 00:10:31.98 ID:iDsrAt3QO キョン「……ハルヒ。」 ハルヒ「……何よ」 キョン「返事くれ」 ハルヒ「……」 コイツと出会ってから、平凡だらけだったハズの日々は、日常と非日常のシーソーゲームになっちまった。 そんな毎日はやがてそれさえも当たり前になり、俺の中での『普通』の定義はぼやけて、滲んで、よく判らないモノになっていくのかもしれない。 でも、本当に『不思議』ってのはあらゆる形をしてそこら辺に散らばってるもんだ。 ハルヒは常々、『不思議』に触れて日常に変化をきたさんとしている。 俺の日常も、この日を……このハルヒの言葉を境にまた変化していくだろうか? ハルヒ「……あたしも好き」 おしまい 159 名前:冬のあるバイト[] 投稿日:2009/12/25(金) 00:15:37.35 ID:iDsrAt3QO ふいー。ID変わっちゃったけど。なんとか終わらせれました。 けっこう前から粘着質に書き続けてたんだけど、今日やっと仕上げれました。支援と保守してくれた方のお陰です。本当にありがとうございます。 164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/25(金) 00:25:20.19 ID:iDsrAt3QO 後、このスレには『支援・保守・乙・ぷん太に載る』を書いてくれた人達に、『明日、街角で残ったケーキ売ってるサンタ服のおにゃのことクリスマスギリギリに恋に落ちる』魔術を心から掛けてます。 皆さん、よいクリスマスを