キョン「で、何で俺は狼男になってんだ?忍野さん?」 1 名前:  [] 投稿日:2009/12/10(木) 00:18:05.28 ID:xyIP7tWH0 狼男、さしてオカルト好きでなくともこいつの名前を聞いたことの無い奴は恐らくいないだろう。 狼男ってのは獣人の一種で、狼または半人半狼の姿に変身できる奴のことや、 狼に憑かれた男のことを言うらしい。 また、男女を特定せず狼人間、人狼と呼ぶこともあるらしい。 さて、何で普通の高校生であるはずのこの俺が唐突に狼男の話を始めたか。 理由は聞くより、まずは話を聞いた方が早いだろうな。 そんな訳で話は、三日前に遡る。 6 名前:  [] 投稿日:2009/12/10(木) 00:32:08.86 ID:xyIP7tWH0 ハルヒ「というわけで今日はこの鶴屋さんの山で不思議を探すわよ!一時解散!」 太陽みたいな笑顔でそう宣言したのは言わずと知れたSOS団団長、涼宮ハルヒである。 俺らは今、有難き先輩、鶴屋さんの家の私有地の山に特別に入らせてもらっている。 メンバーはいつもどおり、俺、古泉、長門、朝比奈さん、ハルヒである。 ここで俺らが何をしようとしているかは説明するまでもないと思うが、不思議探しである。 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 00:35:25.82 ID:xyIP7tWH0 ハルヒ「いい!?みんな、一つは不思議を探してくるのよ!」 キョン「そうはいっても不思議なんて道に転がってるもんでもないだろ。」 ハルヒ「何言ってんのよキョン!そんなんじゃ不思議は見つからないわ!不思議は待ってちゃくれないのよ! だめよ!諦めたら!必要なのはバイタリティよ!あたしを見習いなさい!」 俺としては少年より好奇心が何十倍も旺盛なお前のバイタリティなんぞ、疲れるからいらんな。 こっちから言わせれば、ちっとは俺ののんびりな所を見習ってほしい所だ。 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 00:39:57.62 ID:xyIP7tWH0 とりあえず「頑張りなさ!」というハルヒの声援を受け、俺は山の奥に行ってみる事にした。 この山は鶴屋家が調査していない場所も多々あるらしいが、だからといってUMAがその辺できのこ刈りを しているはずもないし、宇宙人がキャトルミューティレイションの真っ最中、そんな光景が見れるはずもなく、 俺はぶらぶらと鶴屋山を徘徊する。 ハルヒの不思議探索は面倒くさいが、秋の山をぶらぶらと徘徊するのなら悪くない。 俺はこの際だからどんどん奥に進んでみることにした、 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 00:45:16.26 ID:xyIP7tWH0 「ん・・・・・?」 ぶらぶらと十分ほど道を歩いていると、急に足元の感触が変わったので見てみると、道になってる所のようだ。 ここだけ周りと土が違う。 ふとその道の奥を見ると、小さい鳥居に・・・・ああ、ここは神社みたいだ。大分古いみたいだが。 随分深いところにあるもんだ、こんな奥の所まで参拝客が来るのかね。 まあ、今ここにいるがな。 俺は、せっかくだからお参りしていくことにした。 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 00:49:52.04 ID:xyIP7tWH0 鳥居をぐぐり、賽銭箱に十円を放り込むと、鐘を鳴らす。ああ、懐かしいな、この感じ。 俺は、「ハルヒの馬鹿が今後余計な事を思いつきませんように」と祈った。 神社を観察してみると、大分古いらしく、神主もいないようである。賽銭箱のすぐ前には寺って言うのか? そんな感じのものがある。 俺は好奇心から中に入ってみることにした。まあ、せっかくだしな 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 00:51:56.42 ID:xyIP7tWH0 建てつけの悪い木製の扉をつかむと、押し開ける。 多少埃くさいが、俺はこういう雰囲気はそんなに嫌いではないな。 俺は一応靴と靴下を脱ぐと、中に入った。 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 00:53:54.14 ID:xyIP7tWH0 広さは、そんなにない。 教室の三分の二ってくらいの大きさだ。 俺は奥に見える物に向かって歩く、あれは何だろうか。 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 00:58:07.87 ID:xyIP7tWH0 「何だこりゃ?」 思わずそう俺は呟いた。 目の前にあるもの、それは木で出来た狼?の彫刻だった。 鉄製の台の上に堂々と鎮座し、俺を睨み付けている。 狼にしてはかなりでかく、非常に迫力がある。 俺はこういう彫刻を見るのはそれなりに好きである。 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 01:00:13.98 ID:xyIP7tWH0 俺は狼の彫刻の頭の部分に手を触れる。 作られたのは状態を見る限り、80年以上は経過しているようだ。 それでも迫力を失わないのは、やはり職人の技なんだろうな。 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 01:03:20.02 ID:xyIP7tWH0 「さて、そろそろ出るかな」 独り言を呟くと、狼に背を向け、開けっ放しにしている寺の扉へと向かう。 中々いいものが見れたな、一応不思議らしきものは見つけたが、この彫刻の事はハルヒには言わない方がいいな。 あいつに、「無人の寺にでかい狼の彫刻がある」なんていったら 「きっとそれはすごい言い伝えとか伝説とかがあるに違いないわ!」と言って持ち帰って、 最悪ぶっ壊しかねない。 うん、言わないほうがいいな。俺はそう決めると、外に出ようとした。 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 01:06:24.85 ID:xyIP7tWH0 「バンッ!!!!」 「は?」 俺は一瞬、目の前で何が起こったのか分からなかった。 落ち着いて見ると、扉が閉まっている。いや、「目の前でひとりでに勢い良く閉まった」 といった方が正しいだろう。て、冷静に解説してる場合じゃねえぞ。どういうことだ? その時、 「ウォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!」 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 01:09:52.64 ID:xyIP7tWH0 慌てて後ろを振り向くと、そこには信じられない物が俺の目に写っていた。 「狼・・・・・・?」 そう、俺の目の前にいたのは、写真でしか見たことのない、とびきりでかい狼だった。 茶色の毛をしていて、眼光は鋭く、見るものを恐怖に陥れるような目だ。 俺はあんな狼の写真を見たことがある、そう、あれは 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 01:13:44.51 ID:xyIP7tWH0 100年程前まで生息されていたとされる、悲劇の肉食動物、ニホンオオカミだった。 な、何でこいつがここにいるんだ、そもそも何で生きてるんだ、絶滅したんじゃねえのかよ。 つかUMA発見じゃねえかよ、もう土産話のネタはいらねーよ、ところでオオカミに死んだふりは聞くのかと、あらゆる考え が浮かんでは消えた。 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 01:16:25.31 ID:xyIP7tWH0 そんなポンコツと化した俺の頭に浮かんだ考えは、「逃げる」というものだった。 考えというより本能だな。 俺は扉を引っ掴むと、引いて開けようとする。だが扉はまるで向こう側から押さえつけられてるかのように ビクともしない。くそ、押してあけるのか?そう思って慌てて押してもやはりビクともしない。 くそ、何で入るときはあんなにあっさり開いたのに、開かないんだ。 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 01:18:36.37 ID:xyIP7tWH0 「ウォーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」 背後のニホンオオカミが再び耳をつんざくような雄叫びを上げると、じりじりと少しずつ近づいてくる くそ、このクソ扉、開きやがれ! このままではあいつに食われる! 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 01:20:33.16 ID:xyIP7tWH0 力いっぱい押しても引いても、依然扉はびくともしない、何でだ! 背後のニホンオオカミがすぐ後ろに迫ってきている。 いっその事、戦おうかとポンコツ頭で悩んでいると、 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 01:24:58.97 ID:xyIP7tWH0 「ガルルルルルルルル!!!!!!!」 背後の、ニホンオオカミが、俺に、飛びかかってきた。 巨大なその体に押され、俺は寺の床に押し倒される。 「くそっ!食われてたまるか!」 俺は夢中でオオカミを殴りつけ、蹴りつけ、引き離そうとするが、目の前のニホンオオカミは 物凄い力で俺の手を跳ね除ける。 「ガルルルルルルル!!!!!!」 二度目の咆哮が聞こえたかと思うと、俺の首元にオオカミの鋭い牙が近づき・・・・・ 俺の意識は、そこで消えた。 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 01:27:39.64 ID:xyIP7tWH0 気がつくと、俺は、どこか知らぬ草地の上に立っていた。 どこだ、ここは? 直感的に、ここが鶴屋山ではないことを悟る。 俺が呆然としていると。 「ウオオオオオオオーーーーン!!」 「ウオオオーーン!!」 「ウオーーーーーーーーーン!!!!」 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 01:30:59.69 ID:xyIP7tWH0 幾多の遠吠えが、草原に響く。 いつのまにやら、辺りは悪天候になっており、暗闇に包まれている。 そして、俺の周りを、光る目が取り囲んだ。 姿を見なくても分かる、あれは、ニホンオオカミの群れだ。 目の前で、有り得ないことが起こっているにもかかわらず、俺はそう冷静に思考する。 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 01:35:11.69 ID:xyIP7tWH0 そして、為す術なく、俺はあっさりとニホンオオカミの群れに押し倒され、 のしかかられた。 ・・・・・ここまでか 俺は死に行く兵隊のように覚悟を決めると、目を閉じる。 ああ、死の淵って、案外怖くないもんなんだな。きっと、軍人もこんな風にして死んでいくんだろう。 悪いな、父さん、母さん、妹よ、そしてハルヒ、古泉、長門、朝比奈さん、国木田、谷口。 俺はどうやらここで死ぬみたいだ。 そして、別れを告げた俺の首に、鋭い犬歯が突き立てられた。 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 01:37:49.74 ID:xyIP7tWH0 さて、ここらで一段落といったところだろう。 は?お前死んだんじゃねーのかよ、だって? それじゃあ冒頭に繋がらないだろ、まあ、この先を読めば分かる。 それじゃあ、続きといこうか。 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 01:41:01.90 ID:xyIP7tWH0 「・・・・・ョン」 ・・・・俺は死んだのか? 「・・・・・・・キョン」 ・・・・誰だ?誰が俺を呼んでいる? だが、体が動かない、目の前には闇があるだけだ。 「・・・さいったら、キョン!」 ・・・うるせえな、死ぬときくらい静かにしなせろよ、誰だよ。 「起きなさいったら!こんの馬鹿キョン!!!!」 顔面に衝撃が走った。 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 01:43:19.57 ID:xyIP7tWH0 キョン「・・・・・・ここは天国か?」 そう呟くと、再び頬に衝撃が走る。 ハルヒ「アホッ!なによその典型的な寝惚けは!」 古泉「まったく、気持ちよさそうに寝ていましたね」 みくる「し、心配したんですよお?」 長門「・・・・・」 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 01:46:22.14 ID:xyIP7tWH0 起き上がると、目の前にはハルヒ、長門、古泉、朝比奈さんがいた。 ・・・・俺はニホンオオカミに食われたんじゃないのか? ハルヒ「ホラッ!もう遅くなっちゃうから帰るわよ!」 ハルヒはそう叫ぶと、俺の頭をひっぱたく。 キョン「おいハルヒ」 ハルヒ「何よ?」 キョン「ここは鶴屋さんの家の山だよな?」 ハルヒ「な〜に当たり前のこと聞いてんの?あったりまえじゃない!」 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 01:51:01.50 ID:xyIP7tWH0 俺はハルヒに促され、立ち上がる。そして、下山している途中で、古泉にはなしかける。 キョン「おい、俺はどうなってたんだ?」 古泉「あなたは山の中に倒れていたんですよ、それをついさっき、我々が見つけたんです」 どういうことだ?俺は神社の中にいたはずだ。いやそもそも、俺はオオカミにどこかで食われて死んだはずなのだ。 古泉「神社?そんなものはありませんでしたよ?夢でも見たのだと思いますよ」 キョン「んな訳あるか、寝惚けてあんなリアルな夢を見るかよ」 古泉「とりあえず、その話は今度にしましょう。あなたの容態も気になります。今日はひとまず帰って、 ゆっくり休みましょう」 俺はその言葉に渋々頷くと、さっさと山を降りた。 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 01:54:49.87 ID:xyIP7tWH0 ハルヒ「それじゃっ、解散!また明後日の月曜日にね!」 ハルヒは満面の笑顔でそう言うと、夕暮れのがさす道を駆けていって、見えなくなった。 キョン「じゃあ、今日は解散で」 古泉「ええ、また明後日、学校で」 長門「・・・・・・また」 みくる「さよならです」 俺はSOS団のメンバーと別れを告げると、家の方向へ歩き始めた 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 01:57:47.45 ID:xyIP7tWH0 三十分程歩くと、辺りはすっかり闇に包まれていた。もう夜になったか。 俺はもう近い家へと急いで歩く、腹が減った。 そういや、今日は昼から何も食っていない。 ふと空を見上げると、雲に隠れていて、月が見えない。 まあ、それは別にどうでもいいか。 そう思った矢先、俺にとんでもない事が起こった。 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 02:00:22.75 ID:xyIP7tWH0 「な、何だこりゃ!!!!!!」 思わず、そう俺は叫んでしまった。いや、当然の反応だな。 もし、目の前で腕、足、顔に深い毛が唐突に生えてきて、歯がまるで牙のように、鋭く、長くなり、 鋭く長い爪がいきなり生えてきて驚かない奴がいる訳がない。 ど、どうなってんだ!? 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 02:04:54.71 ID:xyIP7tWH0 両腕を見ると、茶色の深い毛が生えている、これは体毛って奴か? 口からはみだした牙はとても人間の物ではない。これだったら恐らく骨をも噛み砕けるだろう。 ふいに、体の奥から何かがこみ上げてくる。 そして、抑えきれなくなった体が、 「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーン!!!!」 今日何度か聞いた、あの、ニホンオオカミの雄叫びが、俺の体から飛び出た。 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 02:08:40.91 ID:xyIP7tWH0 おかしい、間違っている、一体俺の体はどうなってるんだ。 体からこみあげてくる物凄い力に押しつぶされそうになり、俺はおもわず電柱にすがり付いた。 苦しさから、電柱を握ると、恐ろしいことに電柱にヒビが入る。 この体の変化によって、どうやら怪力を得たようだ。 そんな風にのんきに状況を整理している内に、俺の体は完全体となった。 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 02:12:20.80 ID:xyIP7tWH0 両腕は深い茶色の体毛に覆われ、指先からは鋭い爪が生えている。目は鋭くなっており、 脚も深い体毛で覆われていて、既に俺は、どこからどう見ても、所謂、 半人半狼、つまり、狼男だった。 夜空を見上げると、満月が光り輝いている。 そういえば、狼男は満月で変身するらしいな・・・・と呑気に考えている状況ではなかった。 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 02:15:29.02 ID:xyIP7tWH0 もし、こんな姿を見られでもしたら、この住宅街は大騒ぎだ。 俺はこの場から急いで離れようと、慌てて走り出すと、 体が、信じられないほどの速さを叩き出した。 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 02:19:10.84 ID:xyIP7tWH0 そうだ、今の俺は半人半狼なんだ。 だから人間とはかけ離れた身体能力を持っているのか。 くそ、それはともかくこれじゃ家に帰れんぞ。 そもそも、戻れるかどうかも分からん。 隠そうにも、顔はもう俺の面影は残っておらず、どこからどう見ても狼だし、 でかい狼が服を着ているようにしか見えない状態だ。 こんな状態で家に帰ろうものなら母親は泡を吹いて気絶し、妹はきゃーきゃー大騒ぎし、 たちまち俺は家を飛び出すハメになるだろう。 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 02:23:25.35 ID:xyIP7tWH0 俺はゴミ捨て場を見つけると、急いでなぜか回収されていない大量のゴミ袋の後ろに隠れる。 今日がプラスチックの回収日だった事が不幸中の幸いである。 もしも生ゴミだったらさすがに無理だろうからな。 しかし、隠れたはいいものの、これからどうするか。 たぶん、俺の読み、満月が雲に隠れて見えなくなればこの体は元に戻るだろうが、 本当にそうなのかは分からない。 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 02:25:13.89 ID:xyIP7tWH0 携帯の天気予報では、そろそろ雨雲が近づいてくるらしい、 雨が降れば満月は見えなくなり、たぶん。俺の体も元に戻る。 ・・・それまでの辛抱だ。 俺は、身を小さくして、ゴミ袋の後ろで隠れる。 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 02:28:01.14 ID:xyIP7tWH0 しかし、一体なんでこんな体になったのか。 俺は原因を探る、そして、やはり鶴屋山の中の神社で見た、あの狼の彫刻と、ニホンオオカミの事に思い当たった。 原因は、どう考えてもあれしかない。何でだかしらないが、俺はたぶんあのとき狼にかまれ、 なんらかのウイルスにでも感染し、こうなったんじゃないか。 だが、狼に噛まれて半人半狼になるってどんなウイルスだよ、と俺は自分に突っ込んだ。 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 02:30:06.14 ID:xyIP7tWH0 その時、ゴミ捨て場の近くに、気配を感じた。 狼の嗅覚とでも言うのか、人間であることが本能的に理解できた。 もし見つかったら・・・・・ ごくり、と生唾を飲み込む。 ああ、早く雨雲よ来てくれよ。 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 02:33:52.26 ID:xyIP7tWH0 「まったく、朝なんでゴミ捨てを忘れたんだ、参ったなあ」 若い男の声がすぐ近くで聞こえる、どうやら、今頃になってゴミを捨てに来たようだ、 さっさとこの場から離れろ。 ドサッと俺が隠れているゴミ袋の山の向こうで音がした。 どうやら、ゴミを置いたようだ、よし、さっさとここから離れるみたいだ。 そんな安心した俺に、鉄槌が降りた。 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 02:36:42.20 ID:xyIP7tWH0 急に、俺を隠していたゴミ袋が積み上げられたゴミ山が崩れた。 猫の声が聞こえたから、恐らく、野良猫がゴミ山の上に乗っかって、それで この不安定なゴミ山のバランスが悪くなって、こうなったんだろう。 と、冷静に分析している余裕は、俺には残っていなかった。 1この場から逃げる 2目の前の男をいっそ殺して逃走する 3観念する 4この場で舌を噛み千切る 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 02:39:29.56 ID:xyIP7tWH0 そんな選択肢が頭に思い浮かんだが、あっさりと消えた。 キョン「・・・・・・・・・・・・・」 ???「・・・・・・・・・・・・・」 沈黙が俺ら二人、いや、一匹と一人の間で流れる。 キョン「こ、こんばんは」 俺が思わずそう挨拶すると、目の前の男は 「うわあああああああああああああああ!!!!!!」と悲鳴を上げると、逃走した。 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 02:41:52.13 ID:xyIP7tWH0 キョン「待て!待ってくれ!」 俺は逃げる男目掛けて、体当たりを食らわせた。 男があっさりと転ぶと、俺はしっかりと脚をつかみ、逃げられないようにする ???「わああああ!!!はなせえええええええ!!!」 キョン「待て!落ち着いて話を聞いてくれ!俺はあんたに危害を加えるつもりはない!」 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 02:44:16.62 ID:xyIP7tWH0 ???「既に危害を加えてるだろうが!」 極限状況の中、鋭い突っ込みが飛んでくる。 キョン「だから話を・・・・・ ???「くらえ!!!」 蹴りが跳んできて、俺らは取っ組みあい、俺は殴られながらも男を落ち着かせることに成功した。 良くやったぞ、俺。 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 02:47:51.15 ID:xyIP7tWH0 キョン「・・・・・ということなんだ」 俺は、事のいきさつを話した。 今俺らは灯だけが照らす児童公園のベンチの上に座っている。 ???「じゃあ、君は友達と山に出かけて、そこにあった神社の本堂に入って、 そこでオオカミに襲われて、気絶した。そして帰る途中に、そんな姿になった」 キョン「ああ」 ???「ということは、怪異か・・・」 キョン「信じるのか?そんなあっさりと」 ???「信じるも何も、目の前にあるんなら反論しようがないね」 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 02:51:49.72 ID:xyIP7tWH0 キョン「ところで、俺の名前は名乗ったが、お前の名前は?」 ???「僕?僕の名前は阿良々木 暦だ」 この男は阿良々木と言うようだ。 黒い制服を着ていて、頭の上にアホ毛があり、身長は160中間位。 どこにでもいそうな、学生だった。 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 02:55:27.11 ID:xyIP7tWH0 阿良々木「で、君はどうしたいんだ?」 決まっている。 キョン「元の姿に戻りたいさ、当たり前だろ」 阿良々木「・・・・それなら、たぶん力になれると思う」 キョン「本当か!?」 阿良々木「ああ、着いてきてくれるかな、案内するよ」 行くあてもなかった俺は、この男、阿良々木 暦に付いて行くことにした。 元の姿に戻れるのなら、どこにだって行ってやる。 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 02:59:39.22 ID:xyIP7tWH0 阿良々木「着いた・・・・ここだよ」 散々見つからないように苦労していると、着いたようだ。 阿良々木が指差す先には、廃ビルがあった。 一体ここが何だってんだ? 阿良々木「着いてくれば分かる」 そう言うと、阿良々木は廃ビルの中へと入っていった。 付いていくしかない俺は、それに続く。 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 03:04:12.45 ID:xyIP7tWH0 ???「やあ、阿良々木くん、こんな遅くにどうしたんだい?」 階段を昇った先の扉を開けると、そこにはアロハシャツを着て、ボサボサ頭の怪しい中年男がいた。 ???「おや・・・・今日は随分変わったのを連れてるみたいだね、いつもは女の子を連れているのに」 阿良々木「誤解を招く言い方はやめろ、忍野」 どうやら、目の前の男は忍野というようだ。 忍野「で、何のようだい?まあ、見れば大体はわかるけどね」 阿良々木「察しが良くて助かるよ」 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 03:07:04.23 ID:xyIP7tWH0 忍野「・・・つまり、そこのオオカミ男、キョン君は友達と山に行って、そこにあった古い神社の本堂で オオカミに襲われ、気絶した。そして、帰る途中、オオカミ男になった。 だから助けてくれ、そういう事だね?」 キョン「間違いありません」 阿良々木「忍野、どうすればいいんだ?」 忍野「まあまあ、そう慌てない。今考えてるんだ」 72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 03:16:04.52 ID:xyIP7tWH0 忍野「ふ〜ん・・・たぶん、キョン君は本堂でニホンオオカミに噛まれた時、その魂が君の 体に憑いたんだろう。そもそもニホンオオカミ百年前には絶滅してるからね」 キョン「とり憑いたって、どういうことですか?」 忍野「つまり、君が遭遇したニホンオオカミは恐らく怪物、妖怪の類で、乗り憑る器を探していたんだと思う。 あと、オオカミの彫刻があったと言ってたね。これも推測だけど、恐らくそれに昔の霊能力者達はニホンオオカミ の魂を封じ込めたのさ。だけど、君が本堂の扉を開け、彫刻に触れた、だから、封じ込められていた ニホンオオカミの魂が蘇り、具現化して君に襲い掛かって、乗り憑ったのさ、で、その結果君は 半人半狼になった、というわけさ」 キョン「じゃあ俺の体の中には今・・・」 忍野「オオカミがいる、正確には、その魂、それも強烈なね」 阿良々木「それで、どうすれば元に戻れるんだ?」 忍野「一度、キョン君の体からオオカミの魂を追い出す、そして再び別の何かに封じこめるのさ。」 キョン「それなら、あの彫刻がいいんじゃないんですか?」 忍野「いや、再びあの中に入ったら何が起こるか分からない、それに別にあれじゃなくてもいい。 この場でキョン君の中から、一旦オオカミを出して、あっちの世界に帰ってもらうのさ」 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 03:19:42.02 ID:xyIP7tWH0 阿良々木「それ、安全なのか?」 忍野「さあ、今回ばかりは分からない、なんせ相手は怪物の類だ、神様みたいに話しが通じる相手じゃない。 神様なら、そそうを謝れば許してくれるだろうけど、相手は怪物だ、 追い出した時、暴れるかもしれないし、もしかしたらそのまま帰ってくれるかもしれない」 キョン「そんな・・・」 75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 03:24:29.56 ID:xyIP7tWH0 忍野「どうする?やるかい?」 キョン「・・・・・やります」 忍野「よし、分かった」 阿良々木「ところで忍野、もし戦いになったら、僕はどうすればいいんだ?」 忍野「さっきも言ったように、相手は怪物、手を出してもいいよ。 というより、オオカミが抜けたらキョン君はただの人だ、手助けをしないと死ぬかもね」 阿良々木「分かった」 忍野「それじゃあ、始めようか、準備をするから、二人とも外にでてくれるかな?」 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 03:29:51.67 ID:xyIP7tWH0 忍野「それじゃあ、準備が出来たから二人とも入ってくれるかな」 キョン「はい」 阿良々木「よし」 俺は、扉を開ける、するとそこには、白い装束みたいなのを着た忍野さんがいて、 なにやら魔方陣のようなものが床に描かれている、先ほどとは、まるで違う部屋になっていた。 忍野「それじゃあキョン君、君はその魔方陣の真ん中に立ってくれるかな、阿良々木君、君はそのままそこにいてくれ」 阿良々木君「ああ」 キョン「はい」 80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 03:34:39.39 ID:xyIP7tWH0 俺は、魔方陣の真ん中に立つ。 忍野「よし、それじゃあ目をつぶってリラックスして・・・楽しいことを考えるんだ。 そしたら首を下に向ける、・・・よし、そうだ、そのまま、それじゃあ、始めるよ」 忍野「これから魔方陣で君の中にいるニホンオオカミの魂を引きずりだす、そして、出てきたら 僕が封じこめる、もし戦いになったら、君は落ち着いてていい、僕らが何とかしよう」 キョン「はい、助けてくれてありがとうございます」 忍野「助けるんじゃない、力を貸すだけさ、よし、それじゃあ行くよ」 81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 03:45:07.56 ID:xyIP7tWH0 忍野「キョン君、これから質問をするから、君はそれに答えてくれ。 そうして怪物を引きずりだす」 キョン「はい」 82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 03:46:41.22 ID:xyIP7tWH0 忍野「質問1 君は何て呼ばれてる?」 キョン「キョン、と呼ばれてます」 忍野「質問2 家族構成は?」 キョン「両親に、妹が一人、それと俺です」 忍野「質問3 年齢は?」 キョン「16です」 忍野「質問4 過去にあった一番嫌な事は?」 キョン「分かりません」 忍野「質問5 君は今日何を食べた?」 キョン「朝に、シリアルを食べて、それ以降は何も食っていません」 忍野「質問6 君は今日どこで何をした?」 キョン「友達と山に行って、一人で行動してるとき、神社に入りました。」 忍野「質問7 そこで何をした?」 キョン「そこでオオカミの彫刻を見つけて、頭の部分に手を触れました。 帰ろうとしたら、いきなり・・・・」 忍野「質問8 いきなり、何があった?」 キョン「オオカミに・・・・」 忍野「オオカミに?」 キョン「襲われました」 忍野「よし・・・出て来い、怪物」 83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 03:48:59.10 ID:xyIP7tWH0 いきなり、忍野さんの言葉と共に俺の体に強い衝撃が走った。 キョン「うわあああああああああああああああああああ!!!!!!!」 頭に割れるような痛みが襲い掛かる。 痛い、反則級に痛い。 体から、何かが出てくる。そんな不思議な感覚が走る。 85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 03:52:48.70 ID:xyIP7tWH0 「ウオオオオオオオオオオーーーン!!!!」 咆哮が聞こえたかと思うと、俺の体がら深い体毛が消え、爪は元に戻り、牙が消えた。 そして、目の前には、あのでかい、鋭い目のニホンオオカミがいた。 しかし、そんな風に呑気にしてる場合ではなかった。 阿良々木「危ない!」 気がつくと、オオカミが俺に襲いかかってきた、それを、阿良々木が蹴飛ばす。 オオカミが派手に吹っ飛び、壁に衝突する、だが、あまり効いてないようだ。 86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 03:56:47.53 ID:xyIP7tWH0 「グオオオオオオオオオオオオ!!!!!」 オオカミは立ち上がると、恐ろしい咆哮を上げる。 阿良々木「忍野!早く封じこめるんだ!」 忍野「分かってる、だから二人とも、そいつを捕まえてくれ」 キョン「そんな、無茶です!」 忍野「言ってる場合じゃないみたいだよ」 キョン「!!!」 オオカミが走って、俺のほうに接近している。 キョン「クソッ!!!!!」 俺と阿良々木は夢中でオオカミに飛びついた。 87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 03:59:33.68 ID:xyIP7tWH0 オオカミが恐ろしい力で俺らを振りほどこうとする。 だが、いくらオオカミでも、二人ががりで押さえつければ、簡単に逃げることは出来ない。 だが、振りほどかれるのも時間の問題だ。 忍野「二人とも!オオカミをそのままもうちょっとだけ捕まえててくれ!」 キョン「そ、そんな、グズグズしてたら振りほどかれます!」 阿良々木「忍野!急いでくれ!!!」 88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 04:02:37.79 ID:xyIP7tWH0 その時、オオカミがその鋭い牙で、阿良々木の腕に噛みつき、体当たりで壁まで吹っ飛ばした キョン「阿良々木!!!」 阿良々木「僕は大丈夫だ!それより逃げるんだ!」 だが、オオカミは既に俺に接近してきていた。 俺は無我夢中で反対側の壁へ逃げる。 89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 04:04:58.15 ID:xyIP7tWH0 だが、壁までついてしまい、俺は逃げ場を失った。 もう、打つ手は無い。 見ると、オオカミがにじりよってきている。 噛まれれば、今度は恐らく死ぬだろう。 俺は覚悟を決め、目を閉じた。 90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 04:06:15.55 ID:xyIP7tWH0 「グオオオオオオオオオオオオ!!!!」 再びオオカミは咆哮を上げると、俺の上にのしかかった。 もう・・・・・駄目だ・・・・・ 俺が死を受け入れようとした、その時。 91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 04:09:19.59 ID:xyIP7tWH0 「パン!!!!!!!!!!!!!!」 軽い、爆発音がしたかと思うと、 「グオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!」 俺の上にのしかかっていたオオカミが、咆哮、いや、悲鳴を上げた。 何があったんだ?こいつは一体・・・・ 俺が呆然と音がしたほうを見ると、銃を構えて立っている忍野さんがいた。 ・・・撃ったのか? そんなことを考えてるうちに、あの恐ろしいオオカミは忍野さんがうった弾に、 驚くべきことに、吸い込まれてしまった。 93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 04:13:54.86 ID:xyIP7tWH0 カラン、と弾丸が床に落ちる。俺が呆然としていると 忍野「成功だよ、キョン君」 忍野さんがそう言った。 俺は、安心のあまり、何もいえず、床の上に崩れた。 阿良々木「忍野、一体何をしたんだ?」 いつのまにか立ち上がっている阿良々木が言う。 忍野「二人とも、狼男は何が弱点か知ってるかい?」 俺らは首を振る 忍野「そこに転がっている、銀の弾丸さ、こいつを撃ち込まれると、死ぬ、もしくは封じこめられる、 君ら二人が時間を稼いでる間に、撃ったのさ」 94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 04:16:57.68 ID:xyIP7tWH0 忍野「それにしても遅くなって悪かったね、キョン君」 キョン「いえ、ありがとうございました」 阿良々木「良かったね、上手くいって」 忍野「それじゃあ、後は宜しく頼むよ、二人とも」 キョン&阿良々木「は???????」 忍野「は?って、この狼を封じ込めた銀の弾丸を山において来いって言ってるんだよ。 勿論、話にでてきた神社の本堂に」 96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 04:19:46.73 ID:xyIP7tWH0 キョン「ところで・・・お礼は?」 忍野「ああそうだった。本来ならお金をもらうところなんだけど、 まあその弾丸を僕の代わりに置いてきてくれるんなら、それでいいや。 ああでも、今度ミスタードーナッツでも持ってきてくれるかな、たっぷりと」 キョン「はい」 阿良々木「それじゃあ、仕上げに行こうか」 キョン「おう」 俺はそう答えると、忍野さんにお礼を言って、廃ビルから出た。 98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 04:25:16.56 ID:xyIP7tWH0 山を昇り、神社の本堂の前に着いた時には、 既に外は朝日が昇ろうとしていた。やれやれ、疲れた。 阿良々木「それじゃあ、中に入ろう」 キョン「ああ」 俺はそう答えると、相変わらず建てつけの悪い木製の扉を開ける。 靴を脱ぐと、オオカミの彫刻の前に立つ。 100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 04:29:28.99 ID:xyIP7tWH0 俺は銀の弾丸をオオカミの彫刻の足元に置くと、手を合わせた。 キョン「安らかに眠ってくれ、ニホンオオカミ。 俺のせいで面倒にまきこんで済まない。安心して、あっちの世界に帰ってくれ」 俺がそう言うと、阿良々木も手を合わせる。 すると、俺の気のせいかもしれないが、オオカミの彫刻が動いたような気がした。 そして、気がつくと銀の弾丸は消えていた。 たぶん、オオカミは天に昇ったのだろう、そう俺は信じた。 101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 04:37:01.61 ID:xyIP7tWH0 俺は丁寧に本堂の扉を閉めると、 阿良々木と共に、山を降りた。 そして道路に降り立ったときには、もうとっくに朝になっていた。 キョン「それじゃあ、世話になったな、阿良々木」 阿良々木「ああ、また会おう、ああそうだ、携帯番号でも教えておくよ」 キョン「ああそうだったな、俺も教えるから、たまに連絡してくれ」 そして携帯番号を交換すると、阿良々木は道の向こうへと歩いていった。 こうして、俺に襲い掛かった奇天烈で不思議な事件は、終わった。 103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 04:43:12.33 ID:xyIP7tWH0 妹「キョン君のばかああああああああああああ!!!!!!何で昨日は帰ってこなかったのーーーー!??」 帰宅した俺を待ってたのは、怒りでオーバーヒートした妹だった。 キョン「悪かったって、連絡しなかったのは」 妹「ふんだ、当分口聞いてあげないから!!」 妹はそういうと、二階へと行ってしまった、くそ、後でまた謝らないと。 ちなみに親は友達の家で勉強していたといったら、あっさりと許してくれた。 まあ、オオカミ人間になってたなんて口が裂けても言えないからな。 105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 04:52:18.35 ID:xyIP7tWH0 そして、数日後、俺はある用事があって再びあの廃ビルに訪れた。 忍野「やあキョン君、何日かぶりだね」 キョン「この前は世話になりました、で、これ。」 俺はたっぷり買ったミスタードーナッツを渡す。 忍野「確かに。で、今日はこれだけのためにわざわざ来たのかい?」 キョン「いえ・・・・それが一つ困った事がおきまして」 俺は腕を見せると、念じた、すると。 ・・・・俺の腕が、あの茶色の体毛に覆われた。 キョン「何か、俺の意思でオオカミに変身できるようになっちゃいました・・・・・・・」 ちくしょう、オオカミは俺の体から出たんじゃないのか 忍野「う〜ん、君の体からオオカミは消えたけど、たぶん一度憑依されたときに変身能力は 根付いちゃったんだろうね、自由に変身できるようになってるあたり、もともと素質があったんだと思うよ」 キョン「これ、何とかならないんですか・・・?」 忍野「ならないね♪」 ポンデリングをかじると、そう誇らしげに言った。 こうして、今日完全なる半人半狼がそこに誕生した、というか、それは俺だった。 どうやら俺は、宇宙人でも超能力者でも未来人でも異世界人でもなく、 怪物という役割に不本意ながら昇格?したみたいだぜ?ハルヒ。 俺はそう思って、苦笑した。 おしまい 106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/10(木) 04:54:11.87 ID:xyIP7tWH0 終わったあああああああああああああああああ!!!! これで眠れるぜ! 昼からは大学だけどな・・・・・orz そんな訳で、初めてのミックス系のssだったが思いつきにしては良く書けた。 んじゃ、付き合ってくれたおまいら、乙。