ハルヒ「そういうわけで、今日は廃校探検!」 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 17:29:45.94 ID:6Bg5MA9l0 ハルヒ「本当は夜やりたいんだけど……まあ、夏休みも終わっちゃったことだし、仕方ないとするわ」 キョン「なあ……こんな廃校、前からあったか? しかも、市内に」 古泉「さあ、僕はこの土地には詳しくないですから……ですが、実際にあるんですから、あった……のでしょうね」 みくる「こ、この学校に、入るんですか? すっごく古くて、今にも壊れちゃいそうですけど……」 ハルヒ「確かに、あたしもちょっとびっくりしたけどね。こんなソレっぽいのが、市内にあったなんて、噂にも聞いたことなかったもの」 キョン「……急ごしらえか」 古泉「の、ようですね」 ハルヒ「ん? 何?」 キョ泉「「なんでもありません」」 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 17:35:43.76 ID:6Bg5MA9l0 キョン「……古泉」 古泉「おや、そちらからお顔が近いというのも珍しい」 キョン「……大丈夫なんだろうな、ここ……」 古泉「それは僕に訊ねられましても……まあ、個人的には。むしろ、涼宮さん特製であることは、安全の保障でもあると楽観できると思いますが」 キョン「……あいつのことだから、ユーレイの一塊や二塊、学校のついでにこしらえてやいないだろうか」 古泉「どうでしょうねえ。まあ、たとえそれに似たものが彼女の力で作られていたとしても。     それはあくまで、彼女の理想の幽霊でしょうから……それなりに恐ろしいものかもしれませんが、僕らに危害をくわえたりはしないと思いますよ」 キョン「……しかしまあ」 古泉「半世紀ほどは経っているように見えますねえ……涼宮さんがもし映画監督にでもなられたら、日本の映画界の撮影場所事情は、それは潤うでしょうね」 キョン「夏に桜が咲きましたの非じゃぁねえぞ、こりゃ」 ハルヒ「ラッキー、正門から入れそうよ! 二人とも、なにもたもたしてんのよー!」 キョン「……ああ、今行くよ」 古泉「まあ……少しばかりのスペクタクルは覚悟しておくべきかもしれません」 キョン「少しばかりで済む事を祈る」 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 17:42:53.93 ID:6Bg5MA9l0 ――― ハルヒ「なんか、窮屈なつくりねぇ……グラウンドも狭いし、校舎と塀の幅も狭いし」 長門「建設されてから、70年ほど経過していると思われる」 ハルヒ「ふーん、70年前は、いろいろ立地条件も難しかったのかしら。まあ、こんな小山の上にあるんだし、狭いのは仕方ないか」 キョン(マジでぶっ潰れそうだな、こりゃ……木造で70年モノって、かなりヤバイだろ……) みくる「あの、外からぐるって見て回るぐらいじゃ……」 ハルヒ「却下よ」 みくる「ですよねー」 ハルヒ「じゃ、まずは昇降口ね……ワクワクして来たっ! 古泉「向こう側は……グラウンドに直通しているようですね」 キョン「……ん?」 ハルヒ「どしたの?」 キョン「いや……あの、グラウンドの隅っこに建ってるの、何だ?」 ハルヒ「グラウンドの隅っこ? ……よく見えないわ、とにかく中に入りましょ」 キョン(ありゃ……何かの塔か?) 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 17:51:17.83 ID:6Bg5MA9l0 ―― 一階 昇降口 ハルヒ「ゲタバコまでふっるいわね……まあ、当たり前か」 みくる「い、意外と普通……きゃっ!? あ、あの絵……びっくりしたあ」 キョン「絵? ……なんだこりゃ、仰々しい額縁にまで入って……なんでこんなもんが、昇降口に飾ってあるんだ?」 ハルヒ「美術部かなんかの作品なんじゃないの? にしても、やたら立派ねえ……腕利きの美術部員でもいたのかしら」 古泉「……すみません、ちょっと……いいですか?」 ハルヒ「?」 古泉「これは……『フレスコ画』ですね」 キョン「フラスコ?」 長門「フレスコ画。壁や石版に漆喰を塗り、乾燥するまえに塗料を用いて描く技法にて描かれた絵画」 ハルヒ「へえ……それって、すごいの?」 古泉「ええ。少なくとも、一介の学生の創作物とは思えませんね」 ハルヒ「へぇ、なんだかソレっぽいじゃない。かつて天才が在籍した学校なんて、いかにも何かありそうだわ。キョン、これ、撮影しといて!」 キョン「……心霊写真にでもならねえだろうな……」 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 17:54:39.62 ID:6Bg5MA9l0 キョン(まあ、携帯のカメラで心霊写真ってのもないか……) ガンッ!! キョン「のおっ!?」 古泉「!」 みくる「ひゃきゃっ!!?」 ハルヒ「え、何? どしたの、いま?」 キョン「……何だ、ドアがいきなり閉まったのか? 長門、お前が閉めたんじゃ」 長門「違う。……ひとりでに」 キョン「なんだそ」  ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ハルヒ「え、今度は何っ!?」 古泉「地震です!!」 キョン「なんですとっ!?」 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 17:59:19.16 ID:6Bg5MA9l0  ズ ド ド ド ド ド ド ド ド ド ハルヒ「な、何々何よっ!? ただの地震にしちゃ、うるさす……」 キョン「! やばい、入り口の扉から離れろ!」 みくる「ええっ!? 何でですかっ!?」 長門「……地震で、前面の斜面が崩壊した」 ハルヒ「つまりっ!?」 古泉「土砂が押し寄せてきます!!」 キョン「マジかよ!?」 ズドーン キョン「……あ、あぶねえ……俺らに直撃はしなかったが……」 古泉「入り口が……土砂で、完全にふさがってしまいましたね」 ハルヒ「びっくりした……何よ、こんな展開にならなくてもいいじゃない」 キョン(……ちょっと待った、なんかいやな予感が……) 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 18:04:11.74 ID:6Bg5MA9l0 ゾクッ ハルヒ「っ! な、何、いまの……なんか、ぞくって」 みくる「ふぇ……きゃああああ!!? あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ」 キョン(リップスライムかよ!) 長門「……あそこ。天井のほう」 古泉「こ、これは……!?」 亡霊「……」 キョン(長門の指差す方向に……古臭いセーラー服を着た、長髪の女子高生の姿がある……) ハルヒ「な、なにこれ……も、もしかして、これって」 みくる「お、おばっ……浮いて……」 亡霊「―――私の学校を―――荒らすのね、あなたたちも……」 みくる「ひっ……しゃべ……」 キョン(……ハルヒよ、ちょっとばかり……演出過多じゃないか、これは……それとも、まさか―――!) 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 18:11:06.57 ID:6Bg5MA9l0 亡霊「生きて帰さない……私たちの場所を……荒らす人は……誰一人……絶対に」 スゥ キョン(き、消えた……マジだ、やっぱり。ハルヒ特製なのか、どうかはしらんが……こりゃ、誰かのドッキリなんかじゃねえ……) みくる「ふぇ……い、いきてかえさないって……あ、あたしたち……ひゃあああっ!?」 古泉「お、落ち着いてください、朝比奈さん!」 ハルヒ「……そっ、そうよ、なんだかわからないけど……入り口が潰れたからって、何だっていうのよ! 学校よ? どっかの柵でも乗り越えれば、外に出られるわよ!」 みくる「で、でも……絶対にって……」 ハルヒ「大丈夫って言ってるでしょ! あ、あんなの……あれよ、幻覚よ! 蜃気楼よ!」 キョン(……ハルヒのこの反応……いや、まさかとは思いたいが……) 古泉「……とにかく、グラウンドに出ましょう。裏口があれば、そこから出られるはずです。斜面に面しているのは、正門だけでしたから」 ハルヒ「そ、そうよ! さっさとこんな学校……」 ガッ ガッ ハルヒ「……な、なにこれ、なんで開かないのよ……グラウンドに出られないじゃない! カギでも掛かってんの、廃校のくせに!」 古泉「どいてください、涼宮さん! ―――も―――っふ!!」 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 18:15:10.37 ID:6Bg5MA9l0 ドガッシャン ハルヒ「うきゃっ!?」 キョン(ゲタバコは投げるもんじゃねえッ! ……つか、おい、マジかよ!?) ハルヒ「び、びっくりした、もう……え、ちょっと……なんで、いまのでもびくともしないのよ! このドア、どうなってんの!?」 みくる「ま、まさか……あの、おばけの……怨念とか……」 ハルヒ「なっ……あ、ありえないわよ、そんなの! ……キョン、古泉君! 連係プレーでもう一発!」 キョン「ゲタバコなんか投げられるか!」 古泉「セカンドレイド――ッ!!」 ボッグォン キョン「……傷一つつかねえ……」 ハルヒ「う、うそでしょ……こんなの……」 古泉「……」 みくる「ひぇ……」 キョン(……どうしてこうなった……) 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 18:22:27.32 ID:6Bg5MA9l0 ――― みくる「」 ハルヒ「みくるちゃん、ちょっと、しっかりしてよ……もう」 キョン「……古泉、長門。朝比奈さんが目を覚ますまでに聴きたいことがあるんだが」 古泉「おそらく、答えられることはあまりないでしょうね……想定外の事態です」 長門「あの扉は、情報操作の及ばない位相にある力にて、封鎖されている……そして、この建造物内に、それと同様の空間封鎖が数件観測された」 古泉「長門さんの力の範囲外……と、言うと」 長門「……解析不可能な部分が多い。しかし、情報統合思念体の観測下に、この位相に近い概念が、一件のみ存在する」 キョン(……よくわからんが、次に長門が口に出す名前は、予測できる) 長門「涼宮ハルヒの力」 古泉「……」 キョン「しかし……何の根拠があるわけでもないが、俺には……どう見ても。この状況を、ハルヒの奴が、チョッピリとでも望ましく思っているように見えんのだが」 古泉「同意見です……だとすれば」 長門「あの少女の姿をした『思念体』の力……」 キョン「……あの亡霊の『怨念』が、ハルヒの力レベルだってのか?」 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 18:30:04.08 ID:6Bg5MA9l0 古泉「……長門さん。一般的な亡霊というのは、皆、そんな力を持っているものなんですか?」 キョン「そもそも亡霊は一般的じゃねえけどな……」 長門「有機生命体が亡霊、幽霊と称する概念には、個々の大小はあれど、通常空間に干渉を及ぼす力がある例は少なくない。     しかし、この学校を封鎖している力とは、根本的に異質なもの。     いくら強い……『霊力』を持つ霊体であっても、現状のような事態を引き起こすことは不可能」 キョン「……じゃあ、あの亡霊はいったい、何だってんだ……」 みくる「うーん……す、涼宮さん?」 ハルヒ「あ、気がついた? ちょっと、三人とも、なに円陣組んでるのよ? みくるちゃんが目を覚ましたわ、作戦会議よ……」 キョン「……ちなみに、その作戦ってのは、何を目的とする作戦だ?」 ハルヒ「決まってるでしょ? このふざけたからくり学校から、一刻も早く抜け出すのよ!」 キョン(……安心した) 古泉「……危険ではありますが。校内を探索しなければ、始まらないでしょうね」 ハルヒ「ええ、そのとおりよ……きっと、どこかから逃げられるはずよ」 キョン(しかし……あの亡霊が、マジで俺たちを殺しにかかる気だとしたら……太刀打ちできるのか?) ハルヒ「とりあえず……しらみつぶしに探すしかないわね。どっかに割れてるガラス窓なんかがないか、探すのよ」 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 18:40:25.01 ID:6Bg5MA9l0 ―― 一階 東側校舎 二年A組教室 ハルヒ「……うわ」 キョン「ど、どうした? ハルヒ……なんか、ヤバイもんでもあるのか?」 ハルヒ「いや……また、あの『フレスコ画』があるわ、壁に掛かってるの。それだけよ……多分、安全だと思うわ」 キョン(マジだ……教室の後ろの壁に、でっかく飾ってある) 古泉「……やはり、この学校の生徒か、少なくとも関係者が描いたものの様ですね……」 ハルヒ「だからって、こんなもん、そこらじゅうに飾っとくなんて、頭おかしくなるわよ……奇妙な絵だし」 長門「……やはり、窓は開かない。グラウンドへの扉と同じ状態」 キョン(……『封鎖』されてるってことか……) ハルヒ「そう……ま、まだまだ教室はほかにもあるんだから、さっさと次いきましょ。ほら、みくるちゃんも、角っこにうずくまってないで!」 みくる「ひゃ、ひゃい! ……あれ?」 ハルヒ「? どうしたのよ、みくるちゃん?」 みくる「いえ、ここの壁に……何か、文字が……」 古泉「文字、ですか? 失礼……『フレスコ画を光で照らせ』……と、読めますね」 キョン「何だって? ……誰が書いたんだ、そんなもん」 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 18:48:02.07 ID:6Bg5MA9l0 古泉「わかりませんが……試してみましょう。一応、懐中電灯は持ってきましたから」 カチリ ハルヒ「……何も起きないじゃない」 長門「……ここ」 キョン「! なんだこりゃ、絵に文字が浮かび上がってきやがった……!!     フレスコ画ってのは、こんな仕掛けもできるのか!?」 古泉「……いえ、通常なら、考えられません。何か、別のパワーによるものとしか……」 ハルヒ「えーっと……『虫には火、蝙蝠には光』……? 何これ、さっぱり意味わからないじゃない」 古泉「ええ……しかし、おそらく何かのヒントになるものなのでしょう。……そう考えるほかありません」 ハルヒ「つまり! この『フレスコ画』をみつけて、片っ端からライトを浴びせてやれば、謎が解けるってことね?」 キョン(すこしは異様がれよ、その状況を!) ハルヒ「みくるちゃん、いいものを見つけてくれたわ! 隅っこにうずくまってたからこそよ!」 みくる「は、はあ……」 古泉「解決の糸口が見つかっただけでも収穫です。では、ほかにもフレスコ画がないか、探して見ましょう……しかし」 キョン「何があるかわからん……注意はしないとな」 古泉「そういう事です」 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 18:53:02.03 ID:6Bg5MA9l0 ―― 一階 東側校舎 二年B組教室 ハルヒ「あれ、この部屋……何よ、ナマイキにカギなんか掛けてあるわ」 長門「……見せて」 ハルヒ「?」 ……カチリ 長門「……開いた」 キョン「!」 ハルヒ「へえ、すごい! 何、有希ったらそんな特技持ってたの? これは便利ね! さ、行くわよ」 ガラガラ キョン「……今のは?」 長門「単純に施錠が施されていただけ。操作が及んだ」 古泉「……校内を探索する分には、こちらもある程度無理が利くという事ですか」 キョン「……まるで、校内をうろつけと言われているようだな」 みくる「ふぇ……こ、怖いこと、言わないでくださいよぉ……」 ハルヒ「……この部屋に、フレスコ画はないわね。窓も閉まってるし……でも、一応何か手がかりがないか、探して見ましょっか」 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 18:59:15.23 ID:6Bg5MA9l0 古泉「……! 涼宮さん、あの机の上に、何か紙が置いてあります……」 ハルヒ「紙? 本当だ、何か書いてあるわ。えーっと」 ガタガタ キョン(! ―――俺の目に、今映ったものは……幻か!?     ハルヒの目指す机の脇に、何か、青白いもんが―――) 古泉「ッ、涼宮さん、危ない!」 バッ ハルヒ「へっ!? きゃああっ!?」 人形「カタカタカタカタカタカタカタカタカタ」 キョン(幻じゃねえ! 机の脇から、妙な人形が飛び出してきやがった!!) キラリ みくる「ひゃあああっ!? す、涼宮さ……あ、え……なんで……か、からだが……!?」 ハルヒ「みくるちゃんっ!? ちょ、このっ! まとわりつくなっ! 人形のくせにっ!」 キョン(今、人形の目が光った……朝比奈さんのほうを向いて!) 古泉「でぇぇい!!」 ガスッ 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 19:04:01.43 ID:6Bg5MA9l0 ハルヒ「うひゃっ! で、でかしたわ、古泉君!」 古泉「念のため、持ってきた木刀が役に立ちました! ですが、まだ動いています!」 キョン「念のため持ってくるものかよっ!? いや、それより! そいつの目を見るな、ハルヒ、古泉ぃ!!」 キラリ ハルヒ「えっ……なっ、なにこれ!? 体が……!」 古泉「しまっ……!」 人形「カタカタカタカタカタカタ」 キョン(やべえ、遅かった!! 人形がこっちにきやがっ―――) ドガッシャン 人形「」 長門「……動かなくなった」 ハルヒ「……あ。か、体が動くわ……びっくりした、今の、金縛り?」 キョン(久々に見たぜ、長門の膝蹴り……しかし) ハルヒ「今のが、あの亡霊の『怨念』だっての……!? 何よ、常識じゃないわよ……」 キョン(まさか、お前からんな言葉を聞ける日が来るとはな……) 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 19:10:36.91 ID:6Bg5MA9l0 みくる「あ、あの、この紙……ひえっ!? こ、これ……!!!」 ハルヒ「あ、そうだった、紙……! これ、見て、みんな!」 『むぎへ フレスコは重要な手がかり 手分けして探そう』 キョン「こりゃ……」 古泉「……僕らの他にも。ここを訪れた人が、居たという事ですね……おそらく」 長門「……書かれてから、十年ほど経過している」 キョン(やっぱり……ここは、急ごしらえの廃校なんかじゃ、ねえってことかよ……) ハルヒ「やっぱり、フレスコ画なんだわ……この手紙を書いた人たちも、きっと、フレスコ画を手がかりに、脱出したのよ! 此処を!」 キョン(そう、だといいんだが……この先で、もう一つの可能性の片鱗に出逢っちまったら……) 古泉「……この人たちは、分散して行動していたようです。僕らは、できるだけ固まっていたほうがいいでしょう……幸い、武器になるものもあります」 みくる「そ、それがいいです……そうしてくださいい……」 ハルヒ「絶対抜け出してやるんだから……こんなふざけた学校! 次のフレスコを探すわよ、みんな!」 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 19:19:18.40 ID:6Bg5MA9l0 ―― 一階 東側校舎 廊下 ハルヒ「! 何、あれ……紐みたいのが、格子みたいになって、進めなくなってるわ」 古泉「紐……? これは……『魔封じの紐』ですね。現在でも、神社などで使われているものです」 キョン「魔封じだって? 馬鹿言え、全然封じてねえじゃねえか……なんでそんなもんが、こんなところにあるんだ?」 古泉「わかりません、しかし……んんッ……ぬッ!! ……ふう。どうやら、この紐で封じられているのは、僕らのほうのようですね」 キョン「何だって?」 古泉「引き千切れそうにありません。あの、扉と似たようなもの、ですかね……」 ハルヒ「はあ? じゃあ、この先には行けないってこと?」 古泉「ええ……いや。『魔封じの紐』……なら、もしかすると……すみません、火打石などは持っていませんか?」 キョン「はぁ? 有るわけないだろ、そんなもん」 古泉「そうですか。でしたら……もっふ」カチッ ボウッ ハルヒ「きゃっ!? ……びっくりした、一瞬で燃えちゃった」 古泉「やはり。魔封じの紐は、最後に供養の際、火にくべるものなんです。……オイルライターで補えるか不安でしたが、問題ありませんでしたね」 キョン「この先は……階段か」 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 19:25:19.15 ID:6Bg5MA9l0 ハルヒ「二階に続いてるみたいね。さすが昔の学校、教室も少ないわ……? 何かしら、二階のほうが暗くなってる……」 古泉「どうやら、窓が木板で閉ざされているようですね……」 キョン「おい、足元も見えねえ、このまま上るのは危ねえぞ。懐中電灯はどうした?」 みくる「あ、え、はい、あたしが持ってます。えっと……」 カチ みくる「あ、点きまいええええええええ!!!?」 キョン「Yeah!?」 みくる「ちっ、ちgちggggちぎっちぎちっちが……そ、そそそそそそsこの壁のところに……いいい……」 古泉「こ、これはッ―――!?」 骸骨「」 ハルヒ「ひきゃあああっ!? が、がががががgっががががいこつ……!?」 キョン(朝比奈さんのライトが照らした先、階段の踊り場の隅に……骸骨が横たわってる……     科学室の模型なんかじゃねえ、ホンモノだ……なんつーか、こう! オーラでわかる!) みくる「まっ、まさかこれ、さっきの紙の……ひっ……」 古泉「なっ……何てこった……これは、ホンモノの……人骨のようですね……」 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 19:31:38.39 ID:6Bg5MA9l0 ハルヒ「う、うそでしょ……こ、こんなとこで、やられたっての……?」 古泉「……やはり、完全に白骨化していますが、死体です……」 みくる「はう」ふら 長門「キャッチ」がし みくる「あっ、す、すいませ……」 キョン(……! ちょっと待て、この骸骨の横の壁……!) キョン「おい、これ……血文字だ! こいつ、何かメッセージを残してるぞ……」 ハルヒ「! なんですって、メッセージ……?」 古泉「ほ、本当です! これは……滲んでいて、よく読めませんが……」 『きをつけて心の力でしかかてない』 キョン「心の力だって……? ……何だ、こりゃ? こいつの、味方へのメッセージか?」 古泉「はい……そして、あるいは。……『同じ運命を辿るもの』への……でしょうか」 みくる「そ、それって……」 ハルヒ「あたしたち……!? ……じょ、冗談じゃないわ、こんな……こんな目にあってたまるか!     行くわよ、みんな……絶対、何が何でも、あたしたちは生きて帰るんだから……!!」 キョン(……最悪の予想が、いきなり当たっちまった……) 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 19:39:31.43 ID:6Bg5MA9l0 ―― 二階 東側校舎 廊下 ハルヒ「古泉君の行ったとおり、窓がふさがってて、真っ暗だわ……電気なんかもちろん通ってないし」 古泉「ライトを使って、注意深く探索しましょう。何せこのボロ校舎です、床だって信用していいかわからない。     僕が先頭を行きますから、背後は頼みますよ」 キョン「あ? 俺か? ……まあ、このメンバーだ、そうなるわな。いいぜ、できる限り気をつける」 ハルヒ「なんか不安ねえ。あたしが後ろでもいいわよ?」 キョン「いや、さすがに俺の面子が立たねえよ……いいから、お前はいざって時に振り回せるように、木刀でも握っとけ」 ハルヒ「そ、そうね……わかったわ」 キョン(……ハルヒのやつ、かなり参ってるな……そりゃ、俺らだって参っちゃいるが。     あいつにとって、ここまで露骨な非現実なんか、初めてだろうしな……) 長門「……待って」 古泉「? どうかしましたか?」 長門「壁に、文字がある」 キョン「! マジか……マジだ、また『メッセージ』だ! だが、血文字じゃねえ……紙がねえから、壁に書いたってとこなのか……」 『澪ちゃんへ ふらすこは反対がわに見つけたよ! 危なかったら呼んでね!』 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 19:48:18.65 ID:6Bg5MA9l0 ハルヒ「反対側……ってことは、西側ってこと? どうも、こいつら、みんな単独行動だったみたいね……」 古泉「ええ……書置きを残すくらいだ。どうやら、『先行者』のうちの一部と僕らとは、似たように進んでいるようですね」 キョン「あまり喜べねえな、アレを見たあとじゃあよ」 ハルヒ「だ、大丈夫よ……あたしたちは、ちゃんと固まって動いてるんだから。こいつら、きっとあたしたちより若かったのね。やる事が軽薄だわ」 古泉「……先の人々のことを気にしてもいられません。とにかく、フレスコが西側にあるという情報は確かでしょう」 ハルヒ「そ、そうね……行きましょう」 キョン(それとなく、古泉の奴も余裕がねえな……まあ、当然だろうが。いつもより、言葉使いが荒いぜ) みくる「ふえ……」 キョン(朝比奈さんはいつもの調子だし……長門は精神的には問題ないかも知れんが、情報操作がいまいち頼れねえのは確かだ。     ……マジにならなきゃいかんな、こりゃ……) ―― 二階 西側校舎 廊下 キョン「ん……おい、古泉。こっち側にも道があるぞ……なんだ、こりゃ? 一階にあったか?」 古泉「道、ですか? ……本当ですね、廊下があります……西側はノーマークだったので、一階がどうだったかまではわかりませんが」 ハルヒ「じゃあ、フレスコはこっちにあるかもしれないって事?」 キョン「……すこし、見てくる。古泉、わるいが残っててくれ。未開の地だ、何が有るかわからんしな」 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 19:53:34.39 ID:6Bg5MA9l0 古泉「! しかし、分散するのはあまり……」 キョン「何、危なかったら大声でも上げるさ。俺もライトは持ってきてるし……外から見てわからなかったぐらいだ、大して長い道じゃないだろうよ」 古泉「……わかりました。僕らはここで待っていますよ」 ハルヒ「え、で、でも、キョン……大丈夫なの?」 キョン(……まあ、存分に怖いっちゃあ、怖いがな) キョン「ああ、ヤバかったら呼ぶって」 長門「……私も同行する」 キョン(! ……そう、だな。それがいい。今、一番きついのは朝比奈さんとハルヒだろう……二人が少しでも休めりゃいい) キョン「ああ、じゃあ、頼めるか?」 長門「いい」 ハルヒ「あ、危なかったら呼びなさいよ! あんたなんか、いつやられるかわかんないんだから……」 キョン「ああ、わかったよ。 じゃ、頼むぜ、古泉。行こう、長門」 長門「こくり」 キョン「口で言ったろ今」 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 20:00:50.30 ID:6Bg5MA9l0 ―― 二階 西側校舎 南側・図書室 キョン「……なるほど、図書室か……そういや、俺の中学もシンメトリーだったが、片側だけに、多目的ホールだかと図書室の出っ張りがあったな」 長門「……これ」 キョン「ん? ! ……こりゃ、学校の見取り図か。使えるな、こいつは……     ……しかし、何だ、ややこしい学校だな、随分。西側の廊下を北に進むと、そこから東側に折れる廊下があるのか……     左上だけ繋がってねえ四角形みたいなもんか……また、偉い造りだな。体育館はどこにあるんだ? プールもねえな……」 長門「……これ」 キョン「ん? いや、見取り図なら今携帯で撮影するぜ。さすがに、丁度よく半紙に刷られてもいないしな」 長門「違う、これ」 キョン「え? ……な、何だそりゃ!? ……これ、『斧』だよな……」 長門「……わからない。しかし、武器は重要……この場では、私の力が及ばない可能性が十二分にある」 キョン(! ……暗がりの中でだが、今、一瞬。長門の表情が、なんつーか、こう……申し訳なさそうに変化した気がする……) キョン「……ああ、わかったよ。大丈夫だ。お前がいてくれるだけでも、俺は随分助かってるぜ。精神的に、な」 長門「……そう」 キョン「……フレスコもねえみたいだし、戻るか」 キョン(……そうだ。今こそ、俺らがしっかりしねえとな……こうなっちまったんだ、ぼやいても仕方ねえ) 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 20:05:48.44 ID:6Bg5MA9l0 キョン「よし、戻―――」 長門「待って」 キョン「え……どうしっ―――うおっ!? 何だ、こいつらっ!」 蛆虫「「「「「「「「「「「「ウゾウゾウゾウゾウゾウゾ」」」」」」」」」」」」」」」 キョン(う、蛆だぁっ!? いや、そんなもんじゃねえ……デカい上に、多い! んだ、こりゃ、ベルゼバブの幼虫か!?) キョン「この野郎っ!!」 ブォン キョン「うわ、くそ、駄目だ、数が多すぎる!」 長門「―――火、虫には火を……」 キョン(! ―――そうだ、あのフレスコのメッセージ……! しかし、火だって!? 俺はライターなんか持ってきちゃいねえぞ!?) 長門「本を撒いて」 キョン「何っ!?」 長門「撒いて」 キョン(本―――この、山と本棚に押し込めてある、こいつらかッ!?) キョン「ええい、ままだっ!」 ブンッ バサバサバサバサ 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 20:10:21.36 ID:6Bg5MA9l0 ブチブチブチ キョン「おい、駄目だ! 何匹か潰れたぐらいで――――」 長門「%&''($#$%#$''()&@」 ブォッ キョン「うおっ!?」 蛆虫「「「コゲコゲコゲコゲ……」」」 キョン「び、ビビった……そうか、長門が火をおこしたのか……」 長門「可能かどうか不明だった……いや、厳密には、情報操作は及ばなかったはず」 キョン「……え? な、何だ?」 長門「情報操作で、発火を試みた。しかし、ロックが掛かっており、不可能だった……何故発火したのか、私にもわからない」 キョン(何だって……?) 長門「ただ、発火することを……願った」 キョン「願った……? もしかして……そりゃあ、あの骸骨の……」 長門「わからない……虫は退けた。一刻も早く、古泉一樹たちと合流すべき」 キョン「あ、ああ、そうだな……」 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 20:19:47.23 ID:6Bg5MA9l0 ―― 二階 西側校舎 廊下 ハルヒ「でかしたわ、キョン! この見取り図は使えるわよ……それに、曲がり角の向きで、どこにいるのかも完璧にわかるし!     ……ところで、何? その仰々しいの……」 キョン「……俺もわからん。まあ、武器になるのは確かだと面ってな。見つけてくれたのは、長門だが」 みくる「オノ、ですか……初めて見ました」 古泉「ぼくも、実際に見るのは初めてですね……刃も鋭利です。たしかに、色々と使えますね」 長門「南は、図書室があっただけ。あの書置きのフレスコは、この先にあるはず」 古泉「よし……進みましょう。いい武器が手に入っただけ、ラッキーです。それは、あなたが持っていてください」 キョン「ん」 古泉「向かいましょう。……十分に注意を払いながら、です」 キョン(……蛆虫どものことは、古泉に話した……俺たちがであったのは、あの人形と、蛆虫ぐらいだ。     ……『血文字』を残せるようなえげつねえ傷を負うようなやつが、ほかにもいるって事だ……) ハルヒ「よし、キョン、後ろは頼んだわよ! ……行くわよ、フレスコ画のところに!」 キョン(……少しだけだが、いつもの調子を取り戻せてるみたいだな……古泉がうまくあやしてやってくれたのか……) みくる「…………ごく……」 長門「…………」 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 20:26:47.96 ID:6Bg5MA9l0 ―― 二階 西側校舎 一年A組教室 古泉「……! 皆さん―――驚かずに聞いてください」 ハルヒ「! な、何?」 古泉「……フレスコは、ありました……それと、もう一つ。……また、『死体』があります。白骨化しています」 みくる「ひっ……!」 ハルヒ「ま、また……? ……も、もしかして、『ムギ』の? それとも、『澪』の……?」 古泉「わかりません……ライトで見る限り、危険なものは、ないようです。……死体に何かメッセージがないか、調べる必要があります……入れますか?」 みくる「だっ……だ、大丈夫です」 ハルヒ「……あたしも、平気。もう、なんていうか……ちょっとだけど、慣れてきたし、ね」 キョン「行こう、古泉」 古泉「……はい」 ――― キョン「……こいつの周りには、『血文字』は見当たらないな……這いずってきたような跡がある、ここまで逃げてきたってことか」 古泉「そのようですね……体躯からして、女性のものです。それも、まだ幼い……中学生か、高校生かでしょう。僕らと同じくらいです」 ハルヒ「あ、あんたたち……なんか、えらい場慣れしてない? いきなり……」 キョン「まあ、な……こいつは何の手がかりにもならんようだ。あとは、『フレスコ画』だ。ハルヒ、頼むぜ」 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 20:34:19.50 ID:6Bg5MA9l0 ハルヒ「う、うん……えーっと……! 出た、メッセージ!」 『ハンマーがあれば 妨げる 岩はもう 岩ではない』 ハルヒ「……なにこれ?」 キョン「えらく詩人だな、そのメッセージを残した奴は……ようするに、『ハンマー』を探せってことか」 古泉「ふむ……ハンマーですか。おそらく、道を妨げるような岩を破壊できるものならば、かなり大振りなものでしょう。     ここまでで、見落としてきているという事もないと思います……」 キョン「……そいつで、入り口の土砂をどうこうしようってのは、無理なんだろうな、やはり」 古泉「あれを叩くのは、あまり賢い行動ではないでしょう。むしろ、土砂がより進入してくるのを促してしまうかもしれません」 ハルヒ「……とにかく、他にもフレスコか、手がかりがないか、調べてみましょ。それでなきゃ――――」 みくる「ぅいひえああああああああっ!!!?」 ハルヒ「うっきゃあああっ!?」 古泉「朝比奈さんっ!? どうしま……なっ!!」 骸骨「う……あ……」 キョン(あ、あの白骨死体が……!! 朝比奈さんに縋るようにして、動いてやがるっ!?) 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 20:39:51.48 ID:6Bg5MA9l0 みくる「あっ……ひ、や、こないで……」 骸骨「う……わ…たし…………ライト……が……」 キョン(! 待て……この骸骨、襲ってきてるわけじゃないっ!?) 骸骨「ライトが……さえ……落ち……なきゃ……わたし……しな……」 骸骨「」 みくる「ひえ……」くらっ 長門「キャッチ」がしっ ハルヒ「み、みくるちゃん! しっかりして、骸骨はもう離れたわ!」 キョン(今のは……メッセージだ! こいつ、ずっとここで、死に切れずに……!?) 古泉「……これ以上動く様子はありませんね。……行きましょう。目指すは、フレスコ画と、ハンマーです」 ハルヒ「あ、う、うん……みくるちゃん、大丈夫?」 みくる「は、はい……だっ、いじょぶです……ごめんなさい、心配かけて……」 キョン(ちくしょう……見つけてやろうじゃねえか、ハンマーとやら……これ以上、誰もが神経擦り減らすだけの、こんなところにいられるかってんだ……!!) ハルヒ「よし……行くわよ、みんな。とりあえず、この、北側の校舎ね……目指すのは」 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 20:42:57.71 ID:6Bg5MA9l0 これ絶対おわんねーだろ 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 20:49:12.56 ID:6Bg5MA9l0 ―― 二階 北側校舎 廊下 古泉「どうやら、北側の校舎には、教室以外の部屋が集中しているようですね……ここは職員室、向こうは会議室になっています」 ハルヒ「職員室に、フレスコなんてあるかしら? あったら、本格的にクレイジーよ、この学校……」 古泉「フレスコを描いているのが教師か、それに順ずる方という可能性もあります。     いえ、むしろ、あの技術を学生が再現できるとも思えません……教室にも飾るあたり、校長や理事長あたりの作品という可能性もあります」 キョン「だとしたら、職員室はソレっぽいな……長門。カギ、開けられるか?」 長門「……可能」 カチリ 古泉「では、開けます……」 ガラリ 古泉「! これは……フレスコ画はありません、しかし……」 ハルヒ「何よ、古泉君? また、死体……! これ……『電灯』が、落ちてきたの?」 キョン「何だって?」 キョン(マジだ……なんで職員室にだけ、こんな豪華な電灯をぶら下げておいたかは知らんが……そいつが部屋のど真ん中に落ちてる……) みくる「もしかして、さっきの、骸骨の人がいってた、ライトって……」 ハルヒ「ここが……あの子がやられた場所、ってこと……なのね……」 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 20:58:12.28 ID:6Bg5MA9l0 ―― 二階 北側校舎 職員室 古泉「……くまなく探しましたが、この部屋には、『ハンマー』や『書置き』は見当たりません。フレスコもないようです」 キョン「ついでに、隣の『校長室』も見てきたぜ。成果は……ハンマーでも書置きでもねえが、これだ」 ハルヒ「? なにそれ、書類? ……これ、この学校のこと?」 キョン「ああ、長門が見繕ってくれた……この学校の『美術部』についてが書いてある」 ハルヒ「美術部? ……! やっぱり、あの『フレスコ画』を描いてるのは、ここの美術部員だって!」 古泉「ちょっと、すみません……美術部、部員は五人……どうやら、あのフレスコ画は、『美術部長』の作品のようですね……     ……間違いなく。涼宮さんの言っていたとおり、この方は『天才』です……あんなタッチのフレスコ画を描ける学生なんて」 キョン「……そのフレスコ画に手がかりが残っているってのは……無関係じゃないだろ、こりゃ」 ハルヒ「……『美術室』が、どこかにないかしら。きっと、そこに何かがある気がするわ」 古泉「可能性はありますね……ただ、おとなしく行かせてくれると楽観するべきではないでしょうが」 ハルヒ「やっぱり、当面は『フレスコ』と『ハンマー』ね……この部屋にはどっちもないみたいだし、次の『会議室』を見てみましょ」 キョン(そろそろ、何か出そうで怖いな……) みくる「『電灯』には、気をつけたほうがいいみたい、ですね……」 古泉「ええ。次から、確認します。大きな電灯が有る部屋は警戒しましょう……彼女からの、『メッセージ』ですからね」 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 21:04:23.70 ID:6Bg5MA9l0 ―― 二階 北側校舎 会議室 ガラ 古泉「さすが、広いですn―――! 何か、来ますッ!!」 ハルヒ「ふえっ!?」 蝙蝠「「「バササササササキィィィィコェェェェェェ」」」 キョン「ッ―――『コウモリ』だッ!! えっと、コウモリには……何だっけ!?」 長門「光」 キョン「光っ!? ライトかっ……この野郎っ!」ブンブン ハルヒ「駄目よ、全然効いてないわ!」 古泉「オラオラオラオラオラオラぁ!」ブンブンブンブン バシバシバシスカバシスカ 古泉「駄目です、木刀じゃ対処しきれない!」 ガブ キョン「いってぇ!! 噛まれたっ!? クソ、『光』じゃねェ―――のかよ!! ライトじゃ足りねえってのか!?」 みくる「ひええええっ!! こ、こないでぇぇぇぇぇぇ――――!!!」 カッ 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 21:09:40.18 ID:6Bg5MA9l0 キョン(!? 何だ、今、部屋中が、一瞬だけ明るくッ!?) 蝙蝠「「「ヤッダァーバァァァァ」」」 バサササササ 古泉「! に、逃げていきます……今の光は、一体!?」 みくる「ふぇ……え、あ、あたし……な、何したんですか? え?」 キョン(あ、朝比奈さん……? そのポーズは、咄嗟に取ったんですか? 所謂、みくるビームというやつの……     まさか……『心の力』……?) ハルヒ「び、びっくりした……でも、なんだか分からないけど、コウモリは逃げ……」 ガシッ ハルヒ「あっひゃあああっ!?」 キョン「なっ……ハルヒッ!?」 半身男「グググg……ガッバァァァァアァ」 ハルヒ「きゃああああっ!? 何、これ!? ぞんびっ、ゾンビぃ―――ッ!?」 キョン(ばっ……なんだ、このこれまで以上にえげつねえのは!? 下半身のねえ男が、ハルヒの体にしがみついてやがるッ!!) キョン「この野ッ……って、ヤバい……このままじゃ、オノでハルヒまでぶった切っちまうじゃねえかッ!?」 ガスガスガス ハルヒ「は、はなせえええっ!! だ、駄目、木刀じゃびくともしないわっ!! や、這い上がってくんなあっ!!」 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 21:14:04.74 ID:6Bg5MA9l0 半身男「ズビズバ」 ハルヒ「きゃっひいいいいっ!!? 舐めるなああああっ!!! だ、だめ、助けて、キョ―――ン!!」 キョン「んなっ、つったって、この状態じゃオノなんかッ!!」 古泉「―――!! WRYHAAAAAAA!!!」 カッ ボンッ        ドグボァァァァァ―――ッ!! ハルヒ「あっきゃあっ!!?」 キョン「ぬおっ!?」 半身男「くぁw背drftgyふじこlp;@:「」 ハルヒ「……え……えっ?」 古泉「あ…………あれ?」 キョン(い、今の……気のせい、じゃねえよな? 古泉の手から……例の『赤いの』が出て……ゾンビ野郎を、ブッ飛ばした……!) ハルヒ「な、何? 今の……」 古泉「え……わ、わかりません、ただ、涼宮さんを助けないとと……まさか、これが……あの、骸骨の血文字の……?」 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 21:22:03.77 ID:6Bg5MA9l0 長門「……聞いて」 キョン「うおっ!? な、長門……いきなり耳元で、何だよ!?」 長門「……今、この建造物を支配している力は、涼宮ハルヒの力に似たもの……やはり、間違っていない。     ……この場では、私たちに。僅かではあるが、涼宮ハルヒの影響による力が備わっている……今、それを観測できた」 キョン(何だって……いや、確かに、そりゃあとんでもなく心強くはあるが……) キョン「じゃあ……やっぱり、この学校を封鎖してる力ってのは……」 長門「……ありえない事。しかし、涼宮ハルヒとは別の、『涼宮ハルヒと同質の力』によるもの……     そして、その持ち主は。あの……『亡霊』の少女」 キョン(……んな、馬鹿な……! あの亡霊が、ハルヒと同じ……『神』だとでも言うのか……!?) 長門「……これ」 ハルヒ「へ? ……そ、それ、書置きじゃない! いつの間に見つけたの? 貸して……えっと、何々?」 『ムギちゃんたちへ この先の階段の上に、三枚目のフレスコがあるよ!』 古泉「……筆跡からして、あの『壁』の方と同じ方が書いたようですね……この先の階段の上というと、三階の北側の廊下……でしょうか」 ハルヒ「ったく、部屋も書いておいてくれれば手間が省けるのに。これ書いたの、相当の馬鹿ね……」 キョン(つまり、これを書いたのは……あの二人の死人の、どちらでもないわけか……) 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 21:28:48.79 ID:6Bg5MA9l0 ―― 三階 北側校舎 家庭科室 長門「階段の途中には、何も異常はなかった。最も近い部屋は、ここ」 キョン「家庭科室か……都合よく美術室だったら嬉しかったんだがな」 ガラリ 古泉「……ふむ、フレスコ画は見当たりませんが……! あの扉から、『準備室』へ行けるようです。そちらを見てみますか……」 ネズミ「チュウ」 古泉「ええ、注意しますよ……うっだぁぁああっ!!?」 ハルヒ「きゃっ!?」 みくる「うっきゃっ!?」 キョン「ぬがあっ!? こ、古泉? 何、お前にあるまじき声を……」 古泉「あ……い、いえ、すみません……何かと思ったら、ネズミでした……敵意はないようです、ただのネズミですよ」 ネズミ「ピッピカチュウ」 ハルヒ「なんだ、ネズミかあ……家庭科室なら、まあいるわよね。でも、こんな廃校の家庭科室に、食べ物なんてあるのかしら?」 ネズミ「ニコチュー」 古泉「確かに不思議ですが……まあ、敵ではないようですし。とにかく、『準備室』を見てみましょう。フレスコ画があるかもしれません」 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 21:36:25.23 ID:6Bg5MA9l0 ―― 三階 北側校舎 家庭科準備室 ハルヒ「! やったぁ、ビンゴぉ! また気味悪いフレスコ画が飾ってあるわ!」 みくる「ふえ……この部屋は、窓から日が差してますね……あっ、これ! フレスコ画のすぐとなりに、書置きがあります!」 古泉「あっ、本当です……よかった、血文字ではありません。やはり、また同じ筆跡です……」 『みんなへ はつでん器は東の中庭にあるよ 私もさがすね』 ハルヒ「はつでん器って、発電機のこと? ……それって、もしかしてこの学校の? それはいいわ、二階も三階も真っ暗だもの。     電気が通ったら心強いわよ、ライトでいちいち照らさなくても、見逃しなく探索できるじゃない!」 キョン「……しかし、妙だな、こりゃ。なんで自分も見つけてねえ発電機が、東の庭とやらにあると分かったんだ? こいつ……」 古泉「他の方からのメッセージか何かですかね……東の中庭ですか。東側の一階はまだ探索していませんし、こちらを優先すべきですかね……     いや……でも、やはり『ハンマー』が気になるな……」 長門「……フレスコ画が先」 ハルヒ「! そうだ、忘れるところだったわ……この『フレスコ画』のメッセージを確認しないとね」 カチッ みくる「……あっ、そこ、右下! 出ました、メッセージが!」 『ハンマーは 小さな獣の 部屋にある』 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 21:42:41.82 ID:6Bg5MA9l0 ハルヒ「小さな獣……? 何よ、それ。ってか、ハンマーが手がかりってフレスコに書いときなさいよ、こんなこと!」 みくる「小さなけもの……って、あのコウモリさんのこと……でしょうか?」 長門「会議室はいつの間にかくまなく探索した。しかし、ハンマーと思えるものは見当たらなかった」 キョン(いつの間にだよ) 古泉「……小さな獣。……もしかして、あのネズミ……あんなところにいるのは奇妙だと思っていましたが……     家庭科室に戻ってみましょう。どうも、あのネズミが引っかかるんです」 ―― 三階 北側校舎 家庭科室 ネズミ「ウッヂューwwww」 キョン「……まあ、小さな獣には違いないが……何かハラ立つな、このネズミ」 みくる「でも、この子、妙に人に慣れてますよね。普通、ドブネズミさんって、こんなふうに触れたりしないのに……よしよし」 キョン「うらやましい野郎だ」 ハルヒ「! やったぁー! ハンマー獲ったどーっ!!」 キョン「なっ、マジかよ!?」 ハルヒ「マジよ! 一個だけ閉まりきってない戸棚があると思ったら、これが無理矢理放り込んであったわ!」 古泉「これは……確かに、間違いなく『ハンマー』ですね。かなり重量もあります……並の岩なら削れるでしょう……どうやら、アタリですね」 76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 21:52:00.36 ID:6Bg5MA9l0 ―― 一階 北側校舎 廊下 ハルヒ「で、問題の東の中庭とやらを目指してきたけど……ハンマーが先に見つかってよかったわね」 キョン「ああ。階段を下りた目の前に、こんな岩があったら、どうにも行きようがねえしな。     おそらく、一階から回り込んでも、似たようなバリケードがあるんだろうよ」 古泉「では、失礼して……ドラァ!!」 ブオン ズガッシャン キョン「うおっ!? ……こ、古泉。お前、張り切りすぎじゃねえか……こんなデカイ岩が、一発って……」 古泉「……い、いえ。僕も驚いています。こんな腕力はないですよ、僕には……どうやら、この『ハンマー』であることが重要だったんでしょうね」 ハルヒ「ぬぐぐぐ……ムカツクわ、遊ばれてるみたいで……とにかく、発電機よ! 東の中庭っつったら、東側の校舎から行けるに決まってるわ!     この先よ、この先! 行くわよ、みんな!」 キョン(しかし、中庭なあ……見取り図にはそんなもん書いてないんだがな……) ―― 一階 東側校舎 廊下 古泉「! 見てください、東側の校舎側に折れる角に、このまま直進する道があります……     これは、どうやら『体育館』への通路のようです……」 長門「……向かってみるべき。敷地内の見取り図上、中庭と呼べる空間があるとしたら、この先である可能性が高い」 ハルヒ「また、偉い暗いわね……ライトがいるか。ま、発電機をたたき起こすまでの辛抱ね……じゃ、行くわよ」 79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 21:58:32.69 ID:6Bg5MA9l0 ―― 一階 渡り廊下 クククク…… ハルヒ「……ね、ねえ、キョン……この声って、あたしの空耳じゃ……」 キョン「……よかった。俺の空耳でもねえようだな……」 みくる「こ、こわいです……お、襲ってこないんでしょうか……」 古泉「……受け売りですが、この手の魔物たちは。暗闇のなかで、真の力を発揮すると聞きます。     発電機を手に入れるまでの辛抱で……! と、止まってください……何か! 何かが、僕の足元にいます!」 ハルヒ「ういぃっ!?」 何か「あ……う……人……?」 キョン「っ……! おい、待てこりゃ、骸骨じゃねえ……ゾンビでもねえ! ……人だ! まだ、肉体がある!」 古泉「! 朝比奈さん、ライトを! 照らしてください!」 みくる「は、はい!」 女の子「う……あ、あれ……そ、っか……きみたち、も……ここに……来ちゃった……ひと…………?」 キョン(! やっぱり―――いや、しかし、『生きて』るわけじゃない……これは、あの二枚目のフレスコの部屋に居たやつと、同じ……!) 82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 22:06:59.74 ID:6Bg5MA9l0 女の子「よかった……だれかと、話したくて……ずっと、ここで……」 みくる「ひ、酷い怪我……い、今、救急箱、わたし、持ってますから! 手当てを……」 女の子「ち、がうの……もう、わたしは、死んじゃってるから……      みんなに、いろんなこと、伝えようとしたんだけど……だめ、で……」 古泉「あなたは……もしかして、フレスコの手がかりを残した……!?」 女の子「……読んで……くれたんだ……よかった……      おねがい、聞いて……わたし、最後のふらすこで……読んだの……      『斧と槍』は……おばけから……まもってくれるって……      ……よかった……だれかに、教えてあげられて……もう、いくね……いま、いく……あずにゃ……みん……」 ハルヒ「! ちょ、ちょっと、しっかりして……!!」 女の子「」 キョン「……ハルヒ、違う。死んだんじゃない……こいつは、もうとっくの昔に……」 ハルヒ「そんな……だって、今まで! 今、あたしたちに! メッセージをくれたじゃない!」 古泉「……ずっと、彼女は……ここにいたんでしょうね。……誰かに、メッセージを伝えられたと知る、その時を待って……     彼女は、やっと、行くべき場所へ行けたのでしょう……」 キョン「……『斧』……そりゃ、やっぱり、これのことなんだろうな」 長門「……この先。……この少女が、たどり着けなかった道。私たちは、そこにたどり着かなくてはならない」 古泉「……行きましょう。何が有っても……進まなくては為らないんです、僕らは」 85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 22:14:30.65 ID:6Bg5MA9l0 ―――― 古泉「オラオラオラオラオラオラオラオラオラァーッ!!」 ズドドドドドドドドドドッグォン キョン(古泉。お前、岩壊しまくるの、正直楽しんでるだろ……) ハルヒ「しっかし、『ハンマー』がなきゃ、話にならないわね……何よ、この岩無双」 みくる「体育館まで、あと少しなんですけど……見つからないですね、庭への入り口」 古泉「思うに、体育館から、中庭へ出る扉がないかとにらんでいるのですが……まあ、扉はあてになりませんが、ね」 キョン(まあ、外界に出られる扉が封鎖されていないわけもないだろうな……) コウモリ「「「「キィィィィコエェェェェェ」」」」 キョン「のがっ!? またコウモリかよ!?」 みくる「あ、え、いま、倒します! み、みくるフラーッシュ!!」 ペカーン コウモリ「「「ヤッダァーry」」」」 長門「……今。一瞬、見えた……ここの壁に、また『書置き』がある」 87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 22:21:37.27 ID:6Bg5MA9l0 古泉「! 本当ですか……本当だ、書置きです! ……さっきの、あの女性の筆跡とは違います……」 ハルヒ「! ちょっと待ってよ、あの子たちは、『ハンマー』を手に入れられなかったはずじゃないの?     どうして岩を壊していった先に、『書置き』があるのよ!」 キョン「……繰り返しているんだろうよ、多分だけどな」 ハルヒ「!」 キョン「考えても見ろよ、俺たちが侵入したとき、正門はまったく、ぶっ壊された跡なんかなかっただろ。     ……多分、『あいつら』がこの場所にやってきたときも。同じように、土砂崩れに入り口をやられたんだ……」 ハルヒ「……わけ、わかんない……どうしてそんな事する必要があるのよ……?」 キョン(それは、俺にもわからん) 古泉「……メッセージは、こうです」 『ムギへ フレスコは体育館にあった 光がない、もしこの場所に来たら、メッセージを受け取って。  ハンマーは図書室に置いたから、使って』 ハルヒ「これ、最初に見つけた書置きと同じ文字だわ……この人。さっきのあの子に、会ったのかしら……」 キョン「……わからん。しかし、とにかく、この先にフレスコ画があるのは確かみたいだな」 古泉「ええ。この人たちの残したメッセージは、信用していいでしょう。……向かいましょう」 90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 22:29:55.90 ID:6Bg5MA9l0 ―― 一階 体育館 キョン「……どうだ、古泉、フレスコはあるか?」 ちょっとだけ充電 96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 22:43:30.41 ID:6Bg5MA9l0 古泉「……いえ。広いので、ここから照らしただけではわからない分もありますが、目の届くところには……」 ハルヒ「古泉君、みんな!」 みくる「ひゃっ!?」 キョン「! どうした、ハルヒ! また、何か出たかっ!?」 ハルヒ「違うわ……『この子』よ! この子も……まだ、生きてる! 何かを、私たちに『伝えてくれてる』の!」 古泉「何だって……? ! これは、さっきの人と同じ……まだ、肉体がある方です!」 女性「……聞いて……お、願い……フレスコの……メッセージを……」 キョン(これは……この人、とんでもない『火傷』だ……! 生きていられるはずない、でも……『メッセージ』を発している!) ハルヒ「……大丈夫、ちゃんと聞いて上げるから。話して……私たちが、聞いてあげるから」 女性「……東の、庭は……見えるの、この、先の……奥の扉の先の、廊下から……     でも、どうやったら、入るのか……私には、わからなかった……の……     フレスコも、壊されて……おねがい、聞いて……     『模様の部屋』には……一人しか、駄目なの……お願い、どうか……生きて、おねがい……」 女性「」 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 17:28:14.40 ID:deHZSp5P0 ―― 一階 体育館 女性「」 ハルヒ「……眠りに着けたのね、やっと……この子」 キョン「ああ……俺たちが来るのを、ずっと待ってたんだろうよ。誰かに、メッセージを伝えられるのを」 みくる「……ぐす……『模様の部屋』……そこには、一人しか入ったらいけない、そういうことなんでしょうか……」 古泉「ええ……そして、奥の扉から、廊下が伸びていると。     しかし、見取り図には、それらしき場所が確認できません……」 キョン「……とにかくよ。行ってみるしかねえと思うぜ。     奥に扉っつったら……一つ見当たるが、ありゃ、用具倉庫か?」 長門「他に、両脇の壁に鉄の扉が、二づつ」 古泉「……とりあえず、用具倉庫から調べて見ましょう。ただし、彼女の言う『模様の部屋』がどこにあるかわかりません。     十分に注意をしていきましょう……」 キョン「……ハルヒ、行けるか?」 ハルヒ「……当然よ」 ぐしぐし ハルヒ「この子の遺志、ちゃんと引き継いであげなくちゃ……絶対、脱出するのよ。この学校から」 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 17:36:43.42 ID:deHZSp5P0 ―― 一階 体育倉庫 ゴウンゴウン キョン「案の定、暗いな……古泉、ライト頼むぜ」 古泉「はい。……! フレスコ画です、こんな所にまであるとは……     ……壁にも床にも、『模様』と思われるものは、ありませんね」 ハルヒ「だったら、フレスコ画を確認しましょうよ。あの子の行ってた、廊下ってのがどこから行けるのかとか、分かるかもしれないし」 古泉「ええ、そうしましょう。朝比奈さん、涼宮さん。念のため、入り口で見張っていてください、何か現れないか」 みくる「は、はい」 ハルヒ「オッケーよ。大丈夫よ、みくるちゃん。こっちには武器があるんだから。あんたのみくるフラッシュとか、あたしの木刀とか」 キョン(木刀はまだしも、フラッシュはコウモリ限定じゃねえか……) 古泉「では、照らしましょう……三人で照らしたほうが、効率がいいでしょう」 キョン「しかし、えらく大量に用意してきたんだな、懐中電灯」 古泉「ふふ、もしもの時のためにと思いまして……結果的に役に立っているんですし、良いではないですか」 キョン(……実際に遭遇しちまったら、もしもでもなんでもねーじゃねーか) 長門「見つけた」 キョン「早っ!!」 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 17:44:58.19 ID:deHZSp5P0 『幻の部屋にて 窓辺に 銀の輝きを』 古泉「……幻の部屋、ですか……もしかすると、彼女の行っていた、あるはずのない『廊下』と関係しているのかもしれませんね。     フレスコのメッセージが告げるくらいです、やはり、この体育館にある扉のいずれかから、その『廊下』へ行けるのでしょう」 長門「探索を進めるべき」 キョン(古泉、フレスコのメモなんて取ってたのか。……まあ、この状況じゃ、やるほうがまともか……暇だな、しかし) チラッ キョン(ん? ……なんだ、そこの跳び箱の影に……     ! こいつは……!) 骸骨「」 キョン「なっ……!」 キョン(こ、こいつは……死体だ。やっぱり、若い女の子の……しかし、今までのヤツらと、骨の見た感じが違う……     それに、服も着てねえ。まさか、『敵』か……!?) キラッ キョン(! 違う、この骸骨……『眼鏡』をかけてる! こんなもんを掛けたゾンビはいねえ……     ……眼鏡越しの、眼窩が、天井を見上げて息絶えてる……天井ッ!?) 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 17:48:37.21 ID:deHZSp5P0 古泉「? どうかしましたか?」 キョン(まさか、ここは―――!!) バッ キョン「―――天井! 天井の一部に……『模様』がありやがる、古泉ぃぃぃ!!」 古泉「なッ―――!?」 キョン「『模様の部屋』は此k」 ボッグォン キョン「オウッフ」 古泉「ぐえっ!」 ハルヒ「きゃああっ!? な、何、敵!?」 ドッシャアアアア キョン(なっ……なんで、俺と古泉が、用具倉庫の外まで吹っ飛んだんだ!?     まっ、まさか―――) キョン「長門っ―――うおあッ!?」 ―――ボウッッンッ 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 17:54:35.25 ID:deHZSp5P0 ハルヒ「きゃああああっ!? ひ、火が、倉庫ん中に! 火があっ!!」 古泉「ばっ、馬鹿な……長門さん!! 火を、火を消すんだぁっ!!」 キョン(あのバカ、フルパワーじゃねえってのに……!!) みくる「きょ、キョン君!! これっ、消火器! どう使うんですかッ!?」 キョン「! 貸してください! ……こっんのヤロォォォォォォ!!」ブシャァァァァァア ドジュウウウウウウ…… ハルヒ「ちょ、もっと早く消火してよぉ、キョン!! 有希が、有希がああっ!!」 キョン(俺だって、この五倍は出て欲しいがよ! 機能的限界があんだよ!) シュウシュウシュウ…… 古泉「あらかた消えました……長門さん! くっ、煙で見えない……長門さん!!」 長門「無事」 古泉「うっはぁっ!?」 キョン(いきなり古泉の目の前に!) ハルヒ「ゆ、有希いいいい!! よかったあ、無事だったの……げほ、ゆ、有希、なんか、けむい……」 長門「消火ガス。そのうち希釈される」 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 18:02:25.46 ID:deHZSp5P0 ――― 古泉「なるほど……あの模様の真下のみが、炎が噴出しなかったと」 キョン「『一人しか入っちゃ行けない模様の部屋』の正体、か……確かに、あの模様の下には、一人しか入りきらんな」 長門「足に経度の低温火傷を負った。しかし、問題ないレベル。あなたたちへの蹴りのダメージのほうが大きい」 ハルヒ「もう、無茶しないでよね!」 長門「申し訳ない。しかし、説明する時間はなかった」 みくる「……えっと、それで。フレスコは、なんて?」 古泉「ああ、はい……『幻の部屋にて、窓辺に銀の輝きを』……と、ありました。     このメッセージがどのような意味を持つのかは分かりませんが……『幻の部屋』があるならば、『廊下』があってもおかしくないでしょう。     彼女の残したメッセージどおり、『庭の見える廊下』を探してみましょう」 ハルヒ「たしか、奥の扉って言ってたわよね。あの子が居た入り口から、奥っていうと……ステージ側の両脇にある、鉄の扉のどっちかね」 古泉「地理的に、入り口を入って左……つまり、北へ向かうほうの扉は、塀に面しているはずです。となると、おそらく……こちらの。南へ向かう扉が、そうなのではないかと思われます」 キョン「ま、開けてみりゃあいいさ。ハズレなら、おおかた開いてはくれないんだろうしよ」 ハルヒ「よし、いくわよ……この扉ね。あたしとみくるちゃんで開くから、何か飛び出してきたら、斧で真っ二つにしちゃっていいからね」 キョン「へいへい」 ゴウンゴウンゴウン 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 18:11:23.81 ID:deHZSp5P0 キョン「これは……ビンゴだな」 古泉「ええ、『廊下』です。……西向きに、渡り廊下と並行に続いているようです。そして、反対側の壁に『窓』がある」 ハルヒ「! 『中庭』よ、ついに見つけたわ! でも……うっそうとしてて、わけわかんないわね」 古泉「ええ……地理的に考えて、中庭というよりも、サブグラウンドといったところでしょうか。運動部のコートなどがあったものと思われますが。     草やら岩やらで、面影はないですね……あの、バスケットゴールの塔が、名残でしょうか」 キョン「いくつか、建物っぽいのが見えるのは、運動部の部室か……?」 ハルヒ「発電機が野外にうっちゃってあるとも思えないし……あそこが臭いわね」 長門「まだ、中庭にたどり着けたわけではない。『部屋』を探すべき」 ハルヒ「っと、そうだったわね……まあ、探すまでもなく、こっからでも見えるわよ、ほら、廊下の奥に、中庭のほうに向いたドアがあるわ」 キョン「……おい、古泉」 古泉「はい?」 キョン「……あのドアの先って、多分、この窓からも見える、あの部屋だよな」 古泉「ああ、本当ですね。おそらく、そうでしょう……それが、どうかしましたか?」 キョン「……あの、窓。……『割れて』ないか。人が一人通れるぐらいのデカさに」 古泉「……え……?」 ――― 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 18:18:50.77 ID:deHZSp5P0 ―― 一階 幻の部屋 ハルヒ「きゃーっ! 見て、窓! 割れてるわよ! ここからなら、中庭に出られるわ!」 キョン(こりゃあ……やっぱり) 古泉「『先行者』の方が、既に解いていたようですね、このからくりは……」 キョン「……なあ。いくつか気になってるんだが、やっぱり、この学校はおかしいぜ」 ハルヒ「は? 何を今更言ってんのよ、はなっから、おかしいのなんてわかりきってるじゃない」 キョン「そういうんじゃなくてだな、こう……あの『亡霊』が、俺らを此処でくたばらせるつもりなら。何故、『ヒント』なんてもんがある?」 ハルヒ「? ……さあ、でも……そういえば、そうかしら」 キョン「それに、この『先行組』だって、あの魔封じの紐や、岩どもを壊したはずだ。     しかし、岩や紐は、次に入ってきた俺たちの前にも立ちふさがった。だが、この窓だけはそのままってのはどういう事なんだ?」 みくる「ふぇ……そういえば……」 ハルヒ「うーん……わかんないわよ、見落としたんじゃないの? とにかく、今は中庭に行くのが……? あれ、なにこれ……書置き!」 古泉「え……『先行者』のですかっ?」 ハルヒ「多分……えっと」 『聡、律へ 電気を点けたのは私だ、だけど美術室には行けない。三階が明るくなったから、探索してみる』 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 18:25:52.85 ID:deHZSp5P0 キョン(こいつらは、発電機を見つけられたのか……そして、こいつが此処にあるってことは。やっぱ、発電機はこの先で間違いないな) ハルヒ「……また、初めて見る名前ね。この子達、何人で来たのかしら……」 みくる「えっと、これまでに、その……死んじゃった人と会ったのは」 古泉「四名ですね。しかし、いずれも女性でした。少なくとも、この『聡』という方とは、まだ出会ってないようです」 ハルヒ「……どこかで、あの子達みたいに、死ねずに待っているのかもしれないのね……」 古泉「はい、そして、おそらくこのメッセージの方とも、まだ出会っていないでしょう。この方は三階へ向かわれたようです。僕らは、まだ三階をまともに探索してはいません」 キョン「……こいつらの軌跡を追うのが、一番速そうだな」 ハルヒ「そうと決まれば、さっさと発電機よ! この陰鬱な世界に、光を叩き込んでやるの!」 キョン(そういや、いつの間にかか知らんが、空がドン曇りんなってやがるな……) 古泉「よし、行きましょう。何が有るかわかりません、注意してください……」 ――― ――― 東側 中庭 キョン(まったく手入れのされてねえ雑草が、わさわさと……ったく、ゾンビだらけだってのに、草ばっか元気に生きまくりやがって) 古泉「岩さえ壊してしまえば、部室までは遠くないですね……」 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 18:28:51.91 ID:deHZSp5P0 ハルヒ「よっし、いくわよ……ふんっ―――でえええりやあああ!!!」 ドッグバアアアアン キョン(……気持ちよさそうだな、実際、このハンマー……) グルルルルルルル…… キョン「ん? ……腹空いてんのか、古泉」 古泉「? ……え、僕ではないですよ? あなたじゃあないんです?」 キョン「いや、俺じゃ」 グルルルルルル…… 古泉「……これは、まさか」 キョン「……やべえっ、周りを気をつけろ!」 ハルヒ「へっ!?」 狂犬「ガウウウウ!!」 みくる「ひゃあああっ!!?」 長門「犬」 キョン「見れば分かる!」 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 18:33:45.76 ID:deHZSp5P0 狂犬「ガウウウウルルルッルルルルッルル……」 ハルヒ「な、何よこの目……ふ、フツーの野犬じゃないわよ!?」 古泉「……こいつらの食料、何だと思います? 僕は、一つしか予想できないんですが」 キョン「……俺も一つしか浮かばねえな」 みくる「こ、この犬、わ、私たちのこと、たっ――――」 狂犬「ガアアアアアアアアアウ!!」バッ みくる「きゃあああっ!?」 キョン「させるか犬畜生がっ!!」ブンッ バッゴォォォン 狂犬「アギャッ!!」 ハルヒ「うひゃっ!? の、脳天に……や、やりすぎなんじゃ……」 古泉「……涼宮さん、これはそういうレベルではありませんよ……こちらがやらなければ……僕らがエサにされてしまいます……それに、まだいます」              グルルル……                           ガウッガウッ……  グルル…             ルルル……      ガルルルル……                            ピッピカチュウ……  ウウウウ……   WRYYYY…… 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 18:37:24.79 ID:deHZSp5P0 ハルヒ「う、うそっ、囲まれてるっ!?」 キョン(多すぎないか、こりゃ……) 古泉「……来ますよ」 ボッ 狂犬「「「「ガアアアアウ!!」」」」ババババッ ハルヒ「うひゃあああっ!?」 ブンブンブンッ 古泉「ふもォォォォ―――っふ!!」 ドンドンドンドンドンドンドンドンッ キョン「くっそ……でええええい!!」ブウンッ 長門「…………火」ボソッ みくる「え」 ―――― ボウウウウッ!! 狂犬「「「「アイギャアアアッ!!」」」」 バタバタバタバタ…… 古泉「え?」 キョン「え?」 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 18:41:31.31 ID:deHZSp5P0 長門「……あたりの雑草を利用した」 スッ ボフッ キョン(あ、一瞬で消えた……長門、お前……図書室ん時より、随分レベルアップしてねえか?) 古泉「……な、なるほど、野生動物は火に弱いですからね……しばらく近寄ってこないでしょう」 ハルヒ「……な、なんか、夢見てるみたい……」ぐしぐし キョン「夢だとありがたいんだがな……」 長門「雑草も燃えて一石二鳥。今のうちに、あの部室まで」 キョン「よ、よし……岩は最低限だけ壊そう、またあんなんを呼び寄せたら洒落んならん……(なんとかなりそうだが)」 ハルヒ「あ、うん……え、あれってあたしが呼んじゃったの?」 キョン「わりとな」 ハルヒ「……ごめんなさい」 キョン「気にすんな」 古泉「よし、まずこの岩を壊して……無駄ァッ!!」ブゥンッ ボッグォン キョン(……俺もやりてえな、アレ) 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 18:45:17.81 ID:deHZSp5P0 古泉「よし、部室までの道を作りました。行きましょう」 長門「!」ダッ ボグシャァッ 古泉「あうろふっ!」 ドズッシャァァァッ…… キョン「な、長門!? お前、何やって―――ああっ!?」 ガブゥゥッ 長門「く……」 狂犬「アググググググ」 ハルヒ「! ま、まだ残って……有希いっ!!」 キョン「オラァ!!」 ズバッゴォン 狂犬「アグgレgッ……」ドサッ 長門「……うかつだった。残党がいた」だくだくだく…… みくる「な、長門さん、酷い怪我ですよっ!?」 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 18:51:35.61 ID:deHZSp5P0 古泉「つつ……と、とにかく、ここはまた、犬が来るかもしれない……この部室に! そこで、手当てを!」 キョン「な、長門、しっかりしろ! ……お前、回復は!?」 長門「情報操作の範囲外……」 キョン「くそ……とにかく、中に!」 ――― 運動部室 A ハルヒ「あーもう、ここも真っ暗! と、とにかく、有希をどっかに座らせて! みくるちゃん、救急箱!」 みくる「は、はいい! とにかく、血を止めないと!」 長門「……頼む。……あなたと古泉一樹は、室内を探索して。危険な可能性もある」 キョン「あ、ああ……(今度は正真正銘の無茶じゃねえか……!)」 古泉「そ、そうですね……落ち着かなくてはいけない。ここは……どうやら、サッカー部の部室のようですね……     見た限りは、安全です。今度こそ、天井にもどこにも『模様』はありません」 キョン「……ん? 何だ、このデカイ機械……パソコンか?」 古泉「? ……っ! これ、発電機です! 僕らの探していたものですよ!」 キョン「な、マジか!?」 古泉「はい、間違いありません! ……この紐がエンジンだ、これで電気が通るはずです!」 ビッ 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 18:57:00.89 ID:deHZSp5P0 キョン「……」 古泉「……あ、あれ?」 長門「……燃料を、見て」 キョン「! そうか、燃料……古泉、こういうのは、何を燃料にするんだ?」 古泉「ガソリン……でしょうか。でしたら、部室の隣に、災害時用の小屋がありました。そこにあると思います」 キョン「よし、俺たちで取りに行くぞ、古泉! ハルヒ、長門の様態は?」 ハルヒ「血は大体、止まったけど、かなり深いわ……しばらく休ませたほうがいいかもしれない」 長門「……問題ない。ほんの少しだけでいい。……燃料を取りに行って、二人とも」 キョン「あ、ああ、分かった。すぐ戻るが、俺ら以外が来ても、絶対にドアを開けるなよ! よし、行くぞ古泉!」 古泉「はい!」 ―― 中庭 キョン(ガソリン……あった、こいつか! このニオイ、間違いないぜ……) 古泉「よかった、無かったらまずいことになってましたよ……まあ、『先行組』が発電機を作動させられたなら、あるだろうとは思っていましたが」 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 19:06:30.45 ID:deHZSp5P0 キョン「よし、あいつらん所に戻……」 古泉「? ……どうかしましたか?」 キョン「……いや、このガソリン……校舎にぶっかけて、盛大に火を起こしちまうとかじゃ……駄目だろうな、やっぱ」 古泉「……分かりませんが、恐らく、効果はないと思いますよ。……『亡霊』の力が、涼宮さんのものと同レベルだとすれば、恐らく、何らかの方法で、僕らを束縛しつづけるでしょう」 キョン(ですよねー……) 古泉「……あの、長門さんは。……何故、あんな無茶なことを……」 キョン「!」 古泉「いえ、助けていただいたのは分かっています。ですが、今の長門さんは、情報操作の能力はかなり限られています。     ……こんなことを言うと、なんというか、縁起が悪いのですが。……心配なんです、今の彼女を見ていると。     いつもの調子で僕たちを助けようとして……こんなことが続けば、いつか、彼女は」 キョン(……確かに、な……今のあいつは、ちっとばかり火が起こせて、大人二人をぶっ飛ばせる蹴りを打てるだけの、一介の女子高生だ……) キョン「……あいつなりに、気にしてんだよ。いつもの調子が出ないことを」 古泉「……そうなのでしょうか」 キョン「ああ、そうだよ。……確かに、俺も、あの怪我は心配だ。こんなことがたびたびあったら……とも不安になるさ。     ……だから、全力で防ぐつもりだ。俺だって、いつもよりは、少しばかり戦力になれるんだしな。     次は長門がお前を蹴り飛ばす前に、俺がお前を蹴り飛ばす……それしかねーだろ」 古泉「……そう、ですね。すみません、迷うようなことを言って……よし、戻りましょう、みなさんのもとへ。     発電機を作動させなくては……先に進めません」 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 19:11:54.14 ID:deHZSp5P0 ――― 運動部室 A ハルヒ「あ、お帰り! どう、ガソリンはあった?」 キョン「ああ、見つけたよ。……ところで、こりゃどこに注げばいいんだ?」 古泉「少し、待ってくださいね……あった、恐らくこのキャップです。満タンまで入れれば、2、3日で切れるようなことは無いでしょう」 キョン(んな長居、絶対にしたくないがな……) 古泉「では……ふんっ」ビッ パッ ハルヒ「きゃっ! ……つ、点いた! ライトが点いたわよ、キョン!!」 キョン「ああ……これで、学校のほうにも回ったのか?」 古泉「恐らくですが。……どうやら、体育館の電灯も点いたようです。薄暗くなってきましたし、ちょうどいいタイミングでたどり着けましたね」 長門「あの書置きの目的地……三階へ行くべき」 キョン「あ、ああ……しかし、長門、お前の怪我は―――あ、あれ? ……お前、怪我は?」 ハルヒ「ふっふっふ……キ・ョ・ン。安心しなさい、有希のケガは、キレイさっぱり治してあげたわ。     このあたしが――――『心の力』でねッ!」 キョン「何ィィィィっ!?」 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 19:17:24.51 ID:deHZSp5P0 みくる「あ、あの、本当なんです。涼宮さんが、長門さんの腕をこう、ぎゅっと握ったら、長門さんが」 長門「治った」 みくる「って」 キョン(……え、ちょっと待てよ? たしか、この学校じゃ、あの亡霊の力……ハルヒに似た力が働いていて     それが俺たちに影響して、妙なパワーを発揮できるとか、そういう話だったよな?) 古泉「……どうやら、いつも通りの彼女の力というのとは、少し違うようですね」ボソ キョン「!」 古泉「彼女は基本的に、力を無意識に発揮します。自分の記憶にも残りません。     彼女も、僕らの『心の力』と同じく。その名のとおり、彼女自身の『心』が、この学校を包むパワーと呼応して発生したのでしょう」 キョン「……なるほどな」 古泉「しかし、回復が可能なのは心強い。……これは、少しばかり道が明るくなったと言って良いですね。二つの意味で」 ハルヒ「よし! 発電機が動いたら、もうこんな岩だらけの庭に用は無いわ! 目指すは三階!     あの書置きを残した人が、まだ、その先に居るかもしれないわ……行きましょう!」 キョン「ああ……そうだな」 ――― 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 19:27:24.93 ID:deHZSp5P0 キョン(道中。あの書置きに残されていた、『美術室にいけない』という記述の真の意味を俺たちはこの目で目撃した) ハルヒ「これ……東側の廊下が、ヘンな光の壁に覆われてるわ」 古泉「恐らく、『結界』でしょうね……さきほどは見落としましたが、こういうことだったのですか」 キョン(結界。恐らく、その動力源は……あの『亡霊』の『力』なのだろう。俺たちが破ろうとしても、無理だろうな) ―― 三階 北側校舎 廊下 ハルヒ「さて、ついたわね……明かりがあれば、こんなの、ただの木造建造物よ、怖くもなんとも無いわ」 キョン(ただの木造建造物に、怨霊は憑いてねえだろ、ただの木造建造物には!) 古泉「一番最初の部屋が、ハンマーを見つけた家庭科室……見た限り、突き当たりの角まで、部屋はありませんね」 キョン「あとは、バケモノの類が居ないか、だな……よし、行こう。古泉、今度、お前が後ろ頼む。俺の斧は前線向きだろ」 古泉「……これは頼もしい。なんだか、いつもの貴方からは想像できない、頼りがいのようなものを感じますね。今の貴方には」 ハルヒ「……ま、確かになかなかがんばってるわね、キョンにしちゃ。いいわ、あたしの前を行くことを許してあげる」 キョン(そりゃ、こんな状況だ、いやでも成長するっての……でねーと、ゾンビか犬のエサんなっちまうんだ) ハルヒ「みくるちゃん、いつでもみくるフラッシュできるように、準備しときなさいよ! 何なら、みくるビームでもいいからね!」 キョン「――ッ、あれはやめてくれッ! ノーコンにも程がある!」 みくる「ふぇ」 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 19:32:55.17 ID:deHZSp5P0 ―― 三階 東側校舎 廊下 キョン(……北側の廊下は、問題なく突っ切れた。そして、東に折れようとすると……) ハルヒ「あ、これ、たしか『魔封じの紐』だっけ?」 古泉「そのようですね。問題なく、ライターで」 長門「マジシャンズ・レッド」ボソッ ボォォォフッッッ 古泉「……それ以前の問題すらありませんでしたね」 キョン(長門。お前、ちょっと楽しんでるだろ) 長門「……紐があったと言う事は、この先、新たな敵が跋扈している可能性がある。注意して」 キョン「だな……」 みくる「でも、さっきから、あんまり人魂さんとか、ゾンビの人とかに会いませんね……」 古泉「恐らく、明かりが点った影響でしょうね。古来より、あの手のものは、暗い場所を好みますから」 ハルヒ「みくるちゃん、遠慮してないで、目から光なり紫外線なりぶっ放しちゃっていいからね?」 キョン「やめとけ、メラノーマんなるぞ」 みくる「ふぇ」 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 19:40:38.24 ID:deHZSp5P0 ――― 古泉「教室は、三つ……三年E組から、C組までですね。とりあえず、このE組には、『フレスコ画』もありませんでしたし、手がかりも見当たりませんでした」 キョン「つーことは、A組とB組もあんのか……また、時代の割りに、えらく大所帯な学校だな」 古泉「まあ、この規模ですからね。当時、それなりに敷居が高いか、門が広いかのどちらかだったのでしょう」 ハルヒ「一階の西側は確認したわよね? 東側は行けないし、二階は西側だけしか見てないけど、あの書置きからして、東にフレスコはなかったのね、きっと」 キョン「だろうな、でなきゃああは書かんだろ。西側って断定してたしな」 みくる「えーっと、二階の北側が、職員室と、校長室と、会議室でしたっけ?」 長門「そう。そして、一階の北側校舎には、科学室と音楽室があった。どちらも進入不可能」 ハルヒ「体育館も探したし……つまり、残りはこの三階にあるはずよね。何枚あるのか知らないけど」 キョン「ああ、とりあえず、東側はあと二部屋……」 ガラッ キョン(! D組のドアが、開きやがった……ひとりでに、前も後ろも同時に!) キョン「何か来る、気をつけろ! 教室から出てくる!」 ハルヒ「! な、何……ゾンビ、コウモリ!? 何でも来なさいよ!」 キョン(いや、ヤツらは、ドアなんか開ける力は無い……!) 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 19:45:45.15 ID:deHZSp5P0 ガッシャン ガッシャン 鎧×2「「……」」 キョン「なっ……鎧―――ッ!? 西洋の『甲冑』だ!」 ハルヒ「ハァッ!? なんで学校に『甲冑』なの!? 馬鹿なの!? 死ぬのッ!?」 キョン「俺が知るかぁっ!!」 みくる「な、何か持ってますぅ!!」 古泉「『槍』です!! まずい、来ます!」 キョン「『槍』だぁっ!? こっちは『斧』だぞチクショウっ!?」 長門「大丈夫、ファイエムなら有利」 キョン「此処はファイエムじゃねえ!」 鎧A「―――」ヒュッ キョン「やばい、散れ! 一突きにされんぞォ―――ッ!?」バッ ハルヒ「うっきゃああっ!?」バッ 長門「……マハラギダイン」ボソッ ゴオオオオォォォッ!! 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 19:50:18.62 ID:deHZSp5P0 メラメラメラ 鎧A「……」 ガシャンガッシャン キョン「駄目だ、効いてねえ! そりゃそうだな、中身がねえ鎧ならそうだろうよ畜生!!」 長門「解除」フッ 古泉「僕が隙を作ります、その隙に斧で攻撃を! ―――WAAAAAAAANAAAAAABEEEEEEE!!!」ドンドンドンッ ボグボグボグォォン 鎧A「―――」ふらっ キョン「っし、槍が来ない、今だ!」ブォンッ 長門「駄目」グイッ キョン「ぐえ゛ッ! な、何す」 ヒュッ←キョンの鼻先で槍先が止まった音 キョン「」 長門「もたもたしていたら、後ろの鎧が追いついてしまった」 キョン「すいませんでした!」 古泉「まとめてふらつかせればいいだけです……オラオラオラオラオラオラァ!」 ドンドンドンドンドンドンッ 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 19:53:35.61 ID:deHZSp5P0 ボグボグボグボグォォン 鎧AB「「……」」ぐらっ キョン「ウリャァァァァッ!!」ブンッ みくる「み、みくるフラ――――ッシュ!!」 カッ ガイィィィィイイインッ! キョン「いぎっ!?」 鎧A「……」ヒュッ 長門「危ない」グイッ キョン「ぐえッ!」 古泉「……斧が、効かない……!」 みくる「ふ、フラッシュもです……」 キョン「それはわかってます」 みくる「ふぇ」 ハルヒ「ちょ……来るってば!」 鎧AB「「――」」ヒュヒュヒュヒュヒュヒュッ 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 19:57:33.72 ID:deHZSp5P0 キョン「ぬおっ!?」 古泉「く……まずい、劣勢です! WRYYYYY!!」ドンドンドンッ!! ボグボグボグ 鎧AB「「―――」」フラ……ガシャッガシャッ 古泉「駄目です、コレでも、倒しきれません!」 みくる「こ、こうなったらっ! みくるビームッ!! ……あ、で、出ないですうう!」 キョン(え、今、あなたの目の前には俺の背中がないですか?) ハルヒ「心の力が足りないのよ!」 鎧A「――」ヒュヒュッ キョン「何ッ!?」ガンガンッ!! ハルヒ「『心の力でしか、抗えない』って言ってたじゃない、あの階段の子が!」 鎧B「――」ヒュオンッ キョン「だから、何だって!?」 ハルヒ「――――でえええええい!!」 カッ ――――ドヒュウウゥゥゥゥウウウッッッ!! 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 20:01:54.82 ID:deHZSp5P0 キョン(なっ、んだこりゃ、『風』かッ―――!?) ハルヒ「このっ――――フッ飛べぇぇぇぇ!!!」 ドギャァァァァァンッ 鎧AB「「!!」」 ズオォッ ドガッシャァァァァァン…… 鎧AB「「」」 キョン(……え、何だ、今の?) ハルヒ「……なんだ、割と簡単じゃない。『心の力』って」 古泉「……涼宮さんの言ったとおり、『フッ飛び』ました、鎧が……そして、何かが『抜け』ていくのを見ました。恐らく、霊魂かなにかでしょう……」 長門「……『心の力』に間違いない」 ハルヒ「……フフン、こんなもんよ」 みくる「た、倒しちゃった……今のだけで……」 キョン(……こいつの思い込みの強いのが、こんなとこで役に立つとは……) 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 20:10:12.68 ID:deHZSp5P0 ハルヒ「これ、割と応用が利くみたいよ。古泉くんも有希もみくるちゃんも、もっと色々できるんじゃない? 一種類だけじゃなくって」 古泉「……驚きましたね」 長門「……あの鎧は、もうただの無機物」 ハルヒ「ほんと? ねえ、じゃあ、あの槍! あれ、使えないかしら? あれなら結構軽そうよ! あたし、もうちょっとまともな武器が欲しかったのよね!」 タッタッタ…… キョン(……いらねえだろ、今のあったら……) 古泉「……兎に角、危機は逃れました。……涼宮さんが居てくれてよかったです。僕らだけでは、かなりまずい状況でしたよ」 キョン「ああ、マジにな……」 古泉「それに……『心の力』は、使いようだということも分かりました。彼女ほど柔軟には難しいかもしれませんが、僕らにもできることの幅が増えるかもしれません」 キョン「……正直、それっぽいもんをまだ発揮できてねえ俺には、えらく置いていかれちまった気分だ」 古泉「ふふ、あなたは常識的過ぎるのでしょうね。ここでは、常識なんて通用しません」 キョン「……お前の話じゃ、ハルヒはアレでかなりの常識人だったんじゃないのか?」 古泉「ええ。ですから、彼女は、この状況が『非常識』であることが、ちゃんと分かっているんです。其れもまた、『常識的』であるということですよ」 キョン(……コレをきっかけに、あいつの常識の箍が外れたりしなけりゃいいが) ハルヒ「キョン、この槍軽い! 使えるわよ! ほら、あの女の子が言ってたじゃない!     斧と槍は魔除けになるって! 良いもん拾ったわ。でも、片方は曲がっちゃって使い物にならないけど……もったいない 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 20:18:19.33 ID:deHZSp5P0 ―― 三階 南側校舎 廊下 キョン(さて、東側の残る二クラスも探索完了、問題なしとして。俺たちは、位置的に、あの昇降口の二階上となる、この南側廊下に居る) みくる「見取り図だと……此処は、中央の南側に『生徒会室』があるだけですね……あの扉がそうでしょうか?」 ハルヒ「それしか見当たらないわね。よし、行くわよ、みんな!」 キョン(いつのまにかハルヒに先頭になられちまった……) ハルヒ「! ……みんな、来て! この部屋のドアに、紙が張ってあるの、『書置き』よ!」 キョン「! また、『聡と律』へのか?」 ハルヒ「そうよ……でも、これ、どういうことかしら?」 『聡、律。この先の床はおかしい、ネバネバしてる。気をつけて』 古泉「また、この二人を名指しですね……察するに。この紙を書いた方が、僕らと同じ道のりを来たなら。     少なくとも、あの渡り廊下の少女と、体育館、体育倉庫、の死体は見かけているはずです。     すると、恐らく……この『聡と律』の二人とは、僕らはまだ、出会っていないのかもしれませんね」 キョン「あの、『ライトにつぶされた死体』と、『階段の白骨死体』のどっちかが、『律』のほうだって可能性はねえのか?」 古泉「……考えられます。しかし、確実に。僕らがこれまでに見かけてきた死体は、皆女性のものでした。『聡』という名前から、女性は想像できません。     『聡』と、このメモを書いた方……この二名は、少なくとも、まだ僕らが出会ってきた中には居ないと考えていいでしょうね」 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 20:24:56.62 ID:deHZSp5P0 ハルヒ「……この部屋は、安全かしら。中で電気は点ってるみたいだから、ゾンビやコウモリの類はいなさそうだけど……」 キョン「攻撃できる準備はしとくさ。それに、何かヤバイなら、この書置きに書いてあるだろ」 ハルヒ「それもそうね……じゃ、開けるわよ。せーのっ!」ガラッ 古泉「! ……敵は居ません、フレスコも……見当たりません。しかし、これは……」 キョン(『床』が、一切なくなってやがる……デカイ『穴』が開いてる。いや、ただの穴じゃない!     この穴……普通なら、下の階が見えるはずだ。だが、何も見えない……!) みくる「これ……な、なんだか、すっごく、深くないですか……?」 ハルヒ「……みくるちゃん、ちょっと、『ライト』やってくれる?」 みくる「え? あ、はい……」カチッ ハルヒ「違うわよ! ライトよ、目から『ライト』! 『みくるスポットライト』よ! 目からフラッシュ焚けるなら、それぐらいできるでしょ! つか、できるの! 思い込むのよ!」 みくる「ふぇ、は、はい……えーっと……ライト、ライト……むー……!」 キョン(またハルヒのやつは、アホなことを……) カッ キョン(マジで?) 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 20:30:36.40 ID:deHZSp5P0 みくる「ふえ? あれ、今、何か出てますかぁ?」 ハルヒ「それよそれ! みくるちゃん、穴を見下ろしてみて! その『ライト』で照らすの!」 みくる「は、はい」 キョン「……何も見えねえぞ。かなりの光量のライトだってのに」 古泉「……どう考えても、おかしいですね。下階を貫通しているというわけでもないようです……」 キョン「別世界につながってる、とか言うんじゃねーだろうな」 古泉「……心を読む心の力とは、恐ろしい」 キョン(マジかよ……) ハルヒ「……ま、別世界っていうか、ちょっとした次元のゆがみみたいのだったら、あってもおかしくないわね。こんな状況だもの」 みくる「あ、あの、なんだか目が熱いんですけど……」 キョン「! も、もう大丈夫です、光を止めてください」 みくる「あ、はい……あ、消えました、よね?」 古泉「はい。……実は、先ほどの鎧との戦いで、僕もすこし自覚していますが……『心の力』の多様は避けるべきかもしれません。     その名のとおり、僕らは『精神力』を消費して、あれらの能力を発揮しているようだ……あまり乱用すると、ガタが来るかもしれません」 ハルヒ「何よ、ややこしいわね……ま、いいわ。この部屋は、とりあえずほっといて……東側校舎を探索しましょ。教室が二つ残ってるはずよ」 キョン「ああ……しかし、この書置きが気になるな。ネバネバしてる……こりゃ、いったい何の話だ?」 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 20:38:17.86 ID:deHZSp5P0 長門「……あれ」 ハルヒ「? ……! な、なにあれ……電気の陰になって、見づらかったけど……あっちの床、なんか妙なもんが、床にぶちまけてあるわ!」 キョン(! マジだ、ありゃ……な、何だ? 溶岩みたいにも見えるが、違う……) 古泉「察するに、あれが『ネバネバ』というものでしょう。……ふむ、普通の靴だと、足をとられるかもしれませんね。     一応、雪山や泥濘を進む為の『安全靴』を二足持ってきてありますが……あいにく、僕のサイズでして」 キョン「いくつだよ」 古泉「27です。お三方にはまず大きいでしょう。あなたは」 キョン「27.5だ。まあ、ちっとキツいぐらいは我慢するさ。そのほうが足をとられんかもしれんしな」 ハルヒ「……え、もしかして、二人だけで行くの?」 キョン「あの床が正体不明だからな。ここらは安全のようだし、お前の『心の力』がありゃあ、少しの間くらい大丈夫だろ?」 ハルヒ「まあ、特に不安はないけど……有希の火もあるし、あたしの槍もあるしね。新兵器、みくるスポットライトも」 キョン(役に立つのか? あれ、敵に) 古泉「……よし、僕は準備できました。あなたも履き替えてください」 キョン「ん……サイズは問題ないな。じゃ……行くかね、三階東側、残り二部屋だ」 古泉「……何か、あるはずです。残るは、この先の二部屋だけだ……何らかの手がかりか。あるいは、この生徒会室の穴に関する情報……何かが」 キョン(その『何か』が……『聡』ともう一人の死体、でないことを、ひたすら祈るぜ……) 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 20:48:38.77 ID:deHZSp5P0 ―― 三階 東側校舎 ネバネバ廊下 キョン(……思っていたより、『ネバネバ』は強力じゃなかった。ローファーやらスニーカーやらではきついだろうが、この手の靴を履けば、問題なく歩行できる) 古泉「……手前の部屋は、『フレスコ』は見あたりません。それに、机や椅子といった類のものもありません……そのほかにも、目につくものはない。     こちらから壁を叩いた限り、入り口からは見えない位置に『フレスコ画』がかけられている様子も無い……扉を開ける必要はないでしょう」 キョン「えらく慎重だな……ま、ハルヒも居ないし、余計な動きはしないに越したことはないか」 古泉「ええ。……もし、次の教室に何も無ければ、この教室にも入ってみましょう」 キョン(次の教室……『三年B組』か) 古泉「……! この部屋……床が『ネバネバ』でありません。それに、机や椅子もある……     フレスコは、ここから見える場所にはありませんが……この部屋には、何かあるかもしれません」 キョン「分かった……行こう」 ガラッ キョン(……なんだ、この教室。なんつーか、妙だ……これまでの教室と、明らかに何かが違う。     ここまでの教室にあった『異様さ』が感じられない……) 古泉「……ありました、『フレスコ画』です! 廊下側の壁に掛けられている……!     遠巻きから照らします、メッセージを探してもらえますか?」 キョン「ああ、分かった…………いや、悪い。探すまでも無かった。ど真ん中に浮かび上がってきたぜ……『メッセージ』だ」 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 20:56:14.67 ID:deHZSp5P0 ―― 三階 東側校舎 三年A組 『彼女は事故で、愛する人を失ってしまった』 キョン「……なんだ、こりゃ? 何のヒントでもねえ……」 古泉「『彼女』とは、恐らく……あの『亡霊』の少女のことでしょうね」 キョン(……まあ、その程度の予測は、俺にもできる。しかし……本格的に、わけがわからねえぞ) キョン「やっぱり、この『フレスコのメッセージ』を残してるのは、あの『亡霊』の女とは別の誰かなのか……? なら、いったい誰が?」 古泉「……それは、わかりませんね……」 キョン(? 何だ、古泉の奴、一瞬何か言おうとしたような……) 古泉「……? すみません、少しいいですか……この、机」 キョン「机?(……古泉が、窓際の後ろから二番目の席に向かって、まっすぐ歩いていく)」 古泉「……これは……なんでしょう、『日記』……でしょうか?」 キョン(! 机の中から、古泉が取り出したのは……『本』だ。文学書の類じゃない、布張りの表紙の冊子……) キョン「日記だって? ……その、机の中に入ってたのか? ……お前、何でそんなもんがあるって分かったんだ? 中を見たわけでもないのに」 古泉「……わかりません。ただ、何か、呼ばれるような感覚が……!!     この日記……! 『美術部』の『部員日誌』です! 表紙に書かれている―――!!」 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 21:05:52.28 ID:deHZSp5P0 キョン「何だって……『美術部』!? マジか、それはっ!?」 古泉「っ、何でもマジかと訊かないでください! 書いてあるんです、ここに! 表紙です! 背表紙にも書かれてる!」 キョン(な、何だ、古泉……妙に気が立ってるってか……) キョン「……わ、悪い……だが、確かに『マジ』だ……『部活動日誌 美術部 八』……八? このほかには、無いのかよ?」 古泉「いえ、この机には、これしか……た、ただし、『鍵』が掛かっています、この日誌には……読めないんです。     でも……これは、持って行くべきです! 絶対に、何か、この中に記されている……     僕も、何故こんなことを強く感じるのかわからない! しかし、間違いない! これは、持って行くべきなんだ!」 キョン「わ、分かったって! 分かったから、少し落ち着け、古泉! 何でお前がそんなに焦ってんだァ!?     確かにそれは『怪しい』ぜ、俺だって間違いなく持って行く! 何しろ、『ヒント』になってる『フレスコ画』を書いたのは、この学校の『美術部員』だってんだ!     別に俺は、そいつを持っていくことを拒んだりしねえよ! お前、冗談抜きに、『心の力』の使いすぎで疲れてるんじゃねえか!?」 古泉「……い、いえ……すみません、確かに、今の僕はヘンでした……何か、ただ、この日誌を、決して離してはいけないような気がして……     ……え、っと……この部屋は、これくらい、でしょうか?」 キョン「ああ、いや、落ち着いてくれたなら良いんだがよ……そうだな、この部屋にはもう……ッ!?     ……いや、まだある……まだある、『手がかり』が! 何で……コレに、最初に気づかなかったんだ……!?」 古泉「え……! ……黒板に、文字!? こんなもの、外から見たときは見当たらなかったのに……     それに、教卓に何か乗っている……! ……これは、『ロープ』……いや、違う! 『縄梯子』だ!」 キョン「おい、古泉……この黒板の文字、『書置き』だ! しかし、『聡や律』にじゃねえ……この、『書置き』の送り先は―――!!」 『私たちと、同じ運命を辿ってきたしまった人へ』 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 21:18:46.43 ID:deHZSp5P0 『もしも、私たちと同じように、この呪われた学校を訪れてしまった人がいたなら。その人たちへ、このメッセージを残します。  この学校は。彼女、恐らく、あなたたちも出会ったであろう、あの女の子の亡霊の謎を解き明かさなければ、脱出することはできない。  私たちは、もう、二人きりになってしまった。けれど、できるだけ、あの亡霊を鎮める方法を探します。  生徒会室の穴を見ましたか? まだなら、見てください。あそこは、どこか別の場所へ続いている。その先に秘密があると思う。  私たちが見つけた縄梯子を、三つ置いていきます。これを使えば、穴の中へ降りていけると思います。  念のため、三つとも繋げて使ったほうがいいと思う。  どうか、ご武運を。 秋山澪 田井中聡』 キョン「これは……俺たちへの、メッセージだ……!!」 古泉「……二人、だって!? 馬鹿な、あの鎧相手ですら、僕ら五人でやっとだっていうのに!!     たった二人で、何ができるっていうんだ! ……しかも、僕らに、この縄梯子を残していったっていうのか!?     穴がどこまで降りているか分からない、いくつ持っていたか知らないが、あるだけつなげるべきだ!!     ……何故、こんな事を……!!」 ガンッ ガンッ キョン(いや、この書置きもショックだが……俺はむしろ、この古泉の錯乱っぷりのほうが気になる!) キョン「古泉、落ち着け。やっぱ、あの『穴』は重要だ、それは間違いない。     それにだ、こいつらがまだ生きている可能性だってゼロじゃねえだろ!     ……と、とにかく、今はこいつらの所業より、俺たち自身の事だ! この縄梯子を持って、ハルヒたちのところに帰るんだよ!     そして、あの穴の先に行くしかないんだ! 俺たちに他に道があるか? あ?」 古泉「……す、すみません。どうしたというんでしょう、僕は……」 キョン(俺が聞きたいんだよ、それは……     ……『秋山澪』と、『田井中聡』……こいつらが自分で言ってるんだ、恐らく、こいつらのほかの仲間は全滅したんだろう……この先にいるのか、あんたたちは……?) 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 21:26:53.85 ID:deHZSp5P0 ―― 三階 南側校舎 生徒会室・異次元への穴 ハルヒ「……つまり。やっぱり、あの『ムギ』って子や、『律』は……あたしたちが出会ってきたうちの、誰かだったのね」 キョン(そういうことになる、か……いったい、どいつがどいつだったのか、さっぱりわからんが……少なくとも、あいつらのうちの三人は。     ……どれほどの時間かしらんが、魂を持ち続けて。俺たちに、メッセージを伝えるために、この学校に留まり続けていたわけだ……) ハルヒ「で、この日誌ね……鍵つきなんて、めんどくさいわね。でも、鍵なんてどこにあるのかしら……やっぱり、美術部室かな?」 長門「何にしろ。今、行くべき道は、この『穴』の先にしかない」 キョン(……見れば、穴の淵に、でかい『出っ張り』がある。ここに、縄梯子の両端を掛けりゃいいのか。     ……『澪』に、『聡』……『縄梯子』は見当たらないが、きっと。そいつらも、この先へ降りたんだろうな……) 古泉「……大丈夫です、引っかかりました。三つの結び目も、可能な限り固く結びました。     ……いきましょう。この先に、何があるか……わかりませんが」 みくる「……ごく」 長門「……」 キョン「……一番手、失礼するぜ」 ハルヒ「え……キョン、あんた……」 キョン(……古泉も、理由はわからんが、かなりキテんだ。俺が行かなきゃ―――) ハルヒ「自分の次に有希を指名して、ノゾこうとか考えてんのね!?」 キョン(真にキテんのはこいつだったか……) 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 21:32:19.50 ID:deHZSp5P0 ―― ??階 異次元への穴 ギッ ギッ キョン(……縄梯子は丈夫に作られているようだが、やっぱ、不安なのは仕方ないよな……) ハルヒ「---ン!! --コエルー!!?」 キョン「ああ、聞こえるよ!! ……はあ」 キョン(しかし、もうとっくに、十階分ぐらいは降りた気がするんだが……相変わらず、暗闇は―――!!) ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…… キョン(……さっきまで、暗闇だったはずの、俺の真下に……いつの間にか! 目の届く位置に、『床』があるッ……!?     ……まさか。これが、『次元』を超えるってことなのか……!?) ギッギッギッ キョン(やっぱりだ……数段上を境に、この段を下りれば、床が見えるって地点がある……!) キョン「……ハルヒ、古泉、長門、朝比奈さあああん!! 大丈夫だ、床に通じてる!! 問題なく降りてこれるぞおおお!!!」 ……グッ キョン(……聞こえたみたいだな。梯子に、誰かが足をかける感覚があった……となると、縄の耐久力を考えて、俺はさっさと床に降りるべきか……) ――― 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 21:37:48.71 ID:deHZSp5P0 ―――??階 異次元の部屋 ギッギッ 古泉「ふう……これは、驚きましたね……『学校』とは、まったく無縁の内装だ。……まさに、異次元というところですか」 キョン(……梯子を降りた先は。『部屋』だった。扉があり、その左右に壁がある。その壁の一方には……) ハルヒ「これ、『フレスコ画』よね!? でも……どうして、異次元にまで『フレスコ』があるのかしら……」 みくる「そ、それより、この……この先って、どうなってるんでしょうか……?」 キョン(そう。この部屋には、当然、『天井』はない。天井は、『異次元』へとつながっているからだ。そして、それと同じく……) 長門「……扉と対面の壁が、『無い』……この先も、恐らく、別次元へ続いている」 キョン「……異次元ってのは、真っ暗なんだな……始めて知ったぜ」 ハルヒ「この先も、どっかに続いてるって事……? で、でも、進むべき道じゃ、ないわよね……?」 キョン「当たり前だ、こっちにまともなドアがあるってのに、なんでこんな得体の知れない風穴に飛び込まなきゃいけねーってんだ。     それより……『フレスコ』だ。こいつにも、メッセージは残されてるのか……長門、頼むぜ」 長門「分かった」 古泉「では、照らします……」 カチッ 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 21:50:21.61 ID:deHZSp5P0 長門「……見つけた。右上」 キョン「えらく見づらいところにあるな、おい……」 ハルヒ「っし、みくるちゃん! 『みくるテレスコープ』よ! 双眼鏡になったつもりになりなさい!」 みくる「は、はあ、えーっと……」 シュウウウウ…… みくる「はえ? あ、嘘! ほんとに、読めます!」 キョン(……この人、ハルヒが言えば、はかいこうせんすらぶっ放すんじゃないだろうか) みくる「えっと……? ちょっと、意味が分からないですけど、読みますね」 『緑の扉は、眠るべき場所へと続いている』 ハルヒ「……眠るべき場所? なにそれ、寝室?」 キョン「学校に寝室はねえだろ……こりゃ、俺の推測だが……」 キョン(……俺の脳裏に浮かんでいるのは。あの――昇降口から見えた、グラウンドの端に立てられていた、奇妙な『塔』……) ハルヒ「? 何よ、言ってみなさいよ」 キョン「……俺がみた、あの『塔』……ありゃあ、『供養塔』だったんじゃねえか? と、ふと思ったんだよ」 75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 21:59:14.60 ID:deHZSp5P0 ハルヒ「供養塔……って、あの、昔、お墓とかに、墓石代わりに立てたってやつ?」 キョン「ああ。今だってあるぜ、『原爆供養塔』だとか、その手の奴が、わりと。現代で、新しくおっ建てるやつは少ないかもしれんが」 みくる「それって、つまり……『眠るべき場所』っていうのは、あの女の子の幽霊の『眠るべき場所』……そういうことですか?」 キョン「……推測ですけど、大体、そんな感じです」 ハルヒ「うーん……でも、そんなの、学校の敷地内に建てる? 普通……」 長門「……これらの『フレスコ画』を描いたのが、あの『亡霊』の少女であるとするならば、可能性はある」 ハルヒ「学校が、『天才』の生徒のお墓を、敷地内に立てたっての? ……いまいち、納得いかないわね……」 キョン(ま、俺だってありえんと思うさ……しかし) みくる「『眠るべき場所』がどこだとしても、『フレスコ』が示す場所なら、そこを目指すべきなんじゃ……」 ハルヒ「そうね……たしかにそうね。で、つまるところ、この『緑の扉』っていうのは、この部屋を出た先にあるのかしら?     ……? なにしてんの、古泉くん?」 キョン(そういえば、古泉の声がしない……何してんだ、あいつ? ドアに耳を当てたりして……また、向こうの様子を探ってるのか?) 古泉「……いえ、すこし、奇妙な感覚がしまして……気づきませんか? この、音に」 みくる「音、ですか? ……そういえば、なんだか、すごくこう……重い音が聞こえる、ような?」 ハルヒ「あ……いわれてみれば、なんか聞こえるわね。どっかに『滝』でもあるのかしら……     っつっ! って、何今の……『耳鳴り』? なんでいきなり……」 76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 22:08:35.36 ID:deHZSp5P0 キョン(耳鳴りに、滝? ……そういえば、俺も感じる。妙な『重い』音……まるで、こりゃ、アレだ。『水族館』にでもいるような感じ……!?) 古泉「……は、梯子を……! 皆さん、『梯子』に上ってください!! この部屋の天井より高くにですっ!!     やっぱり、ぼくの気のせいじゃない! この、ドアの向こう……『水』があるんです! あるどころじゃあない、『張り詰めている』んです!     涼宮さんの『耳鳴り』も、そのせいだ……『気圧』がおかしくなってるんです! しかも、どんどん『水』は押し寄せている!!     このままじゃ……『壁』が、決壊します! 『水』が押し寄せてくる!!」 キョン「なっ……何ィィィィィッ!!?」 ハルヒ「う、嘘でしょォッ!? だって、こんな古い作りの建物……あ……」 キョン(……そう、この『異次元』の部屋は……さっきまでの『学校』とは、作りがまるで違う!     壁は、『コンクリート』のような、頑丈な材質でできてる―――しかし、それさえも!)    ピ   シ   ッ 古泉「! ―――まずい! 『決壊』する――早く、『梯子』へ上るんだあッ!!」 ハルヒ「ちょ、ちょっと、待っ……」 古泉「待ってる暇があったら、こんなに叫ばないィッ!! ―――駄目だ、間に合わないッ!! 壁が―――ッ!!」     ビ  シ  ッ    ピ キ ピ キ  ビ  キ  ビ  キ   バ     キ    バ     キ   …………                  ――――   ド  グ  ォ  ッ  ! ! ! キョン(うわ、マジだよ……『壁』が見る見るうちにひび割れて……『水』が押し寄せてきやがった―――まだ、誰も『梯子』に上れてねえじゃねえか) 80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 22:16:55.65 ID:deHZSp5P0   ズ   ド  オ  ォ  ォ  ォ  ォ キョン(そいや……毎年2、3人、『鉄砲水』で死ぬ奴がいるよな……まさに、これみたいなやつにやられるのか―――     うわ、やばい、なんかスローモーションで見えてきた……ここで『アウト』か? 亡霊でも、なんでもない、ただの『水』でリタイヤかよ……) 古泉「だッ―――!!」 ハルヒ「きゃああああっ!?」 みくる「ふえええっ!?」 長門「―――!!!」 キョン(長門――ああ、そうだ、今の長門は、こういうの向きじゃねえんだったっけ―――ああクソ、せめて古泉が、あの『赤玉』になれりゃいいのに……     ……あ、でも、全員俺より後ろに居るな―――いや、そういう問題じゃねーだろ、これ。俺が受け止めて、残るメンバーは助かりました。ってレベルじゃねえ。     このまま、仲良く吹っ飛ばされる以外に道はねえか……こういうのに向いた『心の力』って、無かったっけ?     ハルヒは……いまんとこ、回復と攻撃だけか。長門は火、朝比奈さんはバリエーション豊富な眼光線、古泉はふもっふ……あー、あと、誰だ。     俺か。あ、俺、そういやまだ何もねーか。     思い込めってか。     ……思い込んだら、何とかなるってか。     ……いいだろうよ、どうせこのままじゃ、全員くたばるんだ。     思い込めっつーなら、死ぬほど思い込んでやろうじゃねーか―――『水がなんだってんだ、畜生』ってなァ――!!) キョン「ッ――――んの―――ドチクショウがああああああ――――ッ!!」 カ ッ  82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[>>79正直きつい] 投稿日:2009/10/13(火) 22:21:18.90 ID:deHZSp5P0 ――――ドッグォォオオオオオオオオオン!!! 古泉「なっ―――!?」   ド  ド  ド  ド  ド  ド  ド  ド  …… キョン(……すげえな、コレ……マジで、思い込みでなんとかなるんだな、おい……) ハルヒ「な、なにこれ、『水』が、『割れ』てる……」 長門「……『壁』」 ハルヒ「え?」 長門「『壁』が発生している……彼を中心に。……『シールド』」  ド ド ド  ド  ド  ド  ド  ド  ッ………… 古泉「……お、収まった……『水』が、止まった……!!」 キョン(ああ…………こりゃ、確かに疲れるわ―――――――) 86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 22:29:30.30 ID:deHZSp5P0 ――― キョン「いや……おとなしく気絶もさせてくれんのか、お前は……」 ハルヒ「あ、当たり前じゃないの……このまんまくたばりそうだったから、無理矢理たたき起こしたのよ!!」 古泉「……な、何と言うか。しかし、これで一通りはそろいました。『攻撃』に『防御』に『回復』……『探索』向きの朝比奈さんを加えれば、かなり心強いですよ」 キョン(意識が遠のいたと思った十秒後、俺はハルヒの往復ビンタのもとに、敢え無くこの、非現実的現実世界に引っ張り戻された……正直、ちょっと寝たかったんだが) 古泉「……どうやら、先の鉄砲水で、この空間に溜まっていた『水』は排出されたようです……しかし、ところどころに『水溜り』があります」 長門「『流れ』もある。おそらく、まだ、どこかから『水』は出続けている。しかし、この部屋の『異次元への壁』が排出口の役目を果たす。先のような事態にはならない」 キョン「……えらく眺めがよくなったな……しかし、何だ、此処は……」 キョン(『鉄砲水』で決壊した壁の向こうには……なにやら、『洞窟』のような空間が広がっている。     明かりは無いが、壁全体が淡い光を帯びていて、薄暗くは無い……) ハルヒ「どう見ても、『現実』の世界じゃないわね……せっかくなら、『夢』だったらよかったのに」 キョン「同意権だ、畜生め」 古泉「……此処から先、正真正銘、何が居るか分かりませんね。     ですが、この先は、先ほどまで『水』が溜まっていた空間です。『生物』の敵が居るとは考えにくい……と、思いたいのですが」 キョン「逆に、『霊体』ならいくらだっているかもしれねーわけだ……ここの照明は、俺たちが発電機でともした明かりとは関係なさそうだしな」 88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 22:39:02.77 ID:deHZSp5P0 ―――異次元空間 『鏡の回廊』 ハルヒ「……見る限り、敵の類は見当たらないわね。……にしても、何か気分悪いわ……全体から『怨念』みたいのを感じるっていうか」 長門「間違いではない。この空間は、あの『亡霊の少女』が構築した、異空間であると思われる。『怨念』がその構成に含まれている可能性もある」 みくる「つまり、ここのどこから『ユーレイ』が出てきても、おかしくないんですよね……」 キョン(つっても、『霊体』なら、朝比奈さんのフラッシュだって十分通用する……俺は『魔除け』の斧、ハルヒは『魔除け』の槍を持ってる……     仮に、此処にいくら『人魂』が出ようと、俺らにはたいした問題じゃァないと思うが……) ハルヒ「ユレイの作った空間ねえ……その割には、リアリティが溢れてるけど。壁は岩っぽいし、天然の鍾乳洞みたいだわ。明かりがあるのを除けばね」 古泉「……長門さん。『松明』のような炎を作れませんか? ライトで一点を照らすより、全体を照らせたほうが都合がいいのですが」 長門「……」 ボゥッ キョン「うお」 長門「できた。この『炎』は、私を中心としたある程度の範囲内でならば、操れる。『精神力』の消耗も、たいした程度ではない」 ハルヒ「万能ね、有希……じゃ、あたしたちから、4〜5メートルくらい先に、浮かべていられる?」 長門「可能」 キョン(……なんつーか、さすが長門だな……     道は、今のところ一本道か。たしか、目指すのは『緑の扉』だったよな……んなもんがあるのか、果たして?) 92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 22:44:31.47 ID:deHZSp5P0 ―――チラッ ハルヒ「? 今、突き当りで、何か光ったわ……有希の炎が、何かに反射したみたい」 キョン「あ? ……突き当たり?」 トットット キョン「って、おい! また、不用意に近づいてんなよ!」 ハルヒ「……鏡だったわ。ただの。でも、こんな『洞窟』みたいな所に『鏡』なんて、ちょっと妙ね……」スイッ 古泉「――! 涼宮さん、その鏡――何か、おかしい! 離れてください!」 ハルヒ「えっ――――」 鏡「―――」 ヌ ゥ ッ ハルヒ「きゃあっ!!?」 キョン「! 鏡から、何か出やがった―――!! 古泉ィ、長門ォ――――!!」 古泉「ウリャァァァアアア!!」 ボッ――――ドンッ!! 長門「――――直進」 ギュンッ ボフッ!! ズドンッ!! 93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 22:50:32.95 ID:deHZSp5P0 鏡「」 パキィィィン……パラパラ ハルヒ「び、びっくりした……ふざけてんの!? 『鏡』と見せかけて、そっからなんか出てくるなんて!」 キョン「だから、油断するなっつったじゃねえか……ほれ、立て立て」スッ ハルヒ「う……言われなくったって、立つわよ!」グイッ みくる「あ、あの、今の鏡の向こう……これ、何か……『部屋』になってませんか……?」 ハルヒ「え?」 キョン(! 本当だ、ぶっ壊れた鏡の向こうに、別の空間が見える……だが、この部屋にあるのは……何だ、こりゃ?) 古泉「……これは、『噴水』……のように見えますね。周りの床に、噴出した水が溢れ出しています。なるほど、このあたりに散乱している『水』の水源は、これですか」 ハルヒ「噴水? あ、本当だ……なんか、すっごくキレイな水……ね、この部屋、調べてみない? 『手がかり』があるかもしれないわ」 古泉「そうですね……幸い、今の鏡が砕けた穴で、人が一人通るくらいのスペースは確保できましたし、調査してみましょう」 長門「噴水…………」 ――― 95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 22:57:40.25 ID:deHZSp5P0 ――異次元空間 『噴水の部屋』 古泉「……狭い部屋ですね。それだけ、探索もしやすいですが……見た限り、物陰の一つもありません。     気になるのは、この『噴水』くらいでしょうか……」 ハルヒ「ね、なんか、すごく綺麗よ、この水。透き通ってるし、何も混ざってない感じ……     キョン、あんたたしか、ペットボトル持ってたわよね?」 キョン「あ? ああ、あるが……汲むのかよ? こんな、わけわからねーとこの水なんか、飲むつもりか?」 ハルヒ「だって、ぜんぜん綺麗じゃない。ね、有希、この水って、問題ないわよね?」 長門「……解析完了。人体に支障のある成分は含有していない。硬度は低いが、飲用して問題はない」 ハルヒ「ね、やっぱり。キョン、どうせだし、あたしの水筒にも汲んでくれる?」 キョン(……長門の解析が通用したんなら、まあ、問題ねえだろうな) キョン「分かったよ。俺のボトルと、お前の水筒しか、空いてる容器はねえし、それだけだが、いいか?」 ハルヒ「ま、いいわ。……それにしても、なんていうか……久々に綺麗なものを見たからかしら、すごく……落ち着くわ……」 キョン(確かに……この噴水は、『綺麗』っつってもいいな……なんとなく、心が洗われるような……『心の力』で消費したものが、満たされてくような気がする……) みくる「本当、綺麗……とっても、おいしそう……」すっ ハルヒ「あ、ずるい……あたしも、飲んでみよ……」すっ ぱしゃ――― 97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 23:05:46.22 ID:deHZSp5P0 トクトクトクトク キョン(……ん、二人とも、水を飲んでるのか……まあ、いいだろ、別に。この水に、問題はないだろうしな) キョン「よし、汲み終わったぞ……ハル―――――なっ!!?」 ハルヒ「んく、んく……ぷは、キョン! この水、すごく美味しい! なんか、すごい! 体中が綺麗になるみたい!」 みくる「ぷは……ほ、本当……なんだか、汚れたものが、全部なくなっていくような……透き通って……て…………え…………?」 キョン(―――俺が、二人を見た、瞬間―――!!     何だ、こりゃ? さっきまで透き通っていた筈の! とんでもなく『綺麗』だった、筈の、噴水が―――『赤く染まって』いる―――!?) みくる「え、あれ……なんで、手が、汚れ……え、ひ……あ、あ、あああああ…………!!!」 ハルヒ「え、み、みくるちゃ……! ちょ、ちょっと、その口、どうしたの!? あっ、手も!     どうして『血まみれ』なの、みくるちゃんッ!!? 怪我でも―――え……う、うそ……」 キョン「っ、二人とも、噴水から離れろ!!!」 キョン(い、いきなり、『臭って』きやがった―――この! この『噴水』が吹き上げているのはっ!!) ハルヒ「な、なんで、『血』……わ、わたし、これ、飲んで……うっ……」 みくる「ひっあぐ……ぐ、げえ……ぐっ、えぐっ……げえええッ―――!!」 古泉「っ―――駄目だ、この部屋から―――出ましょう! ここは―――この空間は、全て! あの『亡霊』の支配下だ!!」 キョン(―――マジかよ……おい――!) 99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/13(火) 23:13:56.64 ID:deHZSp5P0 ガシャンッ ハルヒ「うっ、げぼ……あ、あたし……何、うそ、あの、噴水……綺麗な水が、あったのに……!!」 キョン「お、落ち着け、ハルヒ、朝比奈さん! こんなの、あれだ―――幻だ! ありえないだろうが、あんな噴水から―――『血』なんか出てくるわけねえ!」 みくる「で、でも゛っ、ぐっ、えぐっ……この、あじ……これ、ぜったい……うっ……げえっ―――っ!!」 バシャバシャッ キョン(赤い……やっぱり、『血』……! 長門……長門! 『解析』はっ!?) 長門「……間違いなく、これは、人間の『血液』……先刻の解析の結果と、全く異なっている……有り得ない」 ハルヒ「そ、んな……ぅ……えぐッ―――っ!」 ビシャッ バシャッ…… 古泉「……まずかった、あの部屋に踏み入ったのは……あの水を『飲んだ』のは……     この先、何があるか分からない! 『フレスコ』だ、『フレスコ』のメッセージ以外に、何も信じてはいけない……」 キョン(……ああ、思い知ったよ……これ以上、あの『亡霊女』の手の中で踊ってたら、こっちが参っちまう……!!     ……『フレスコ画』は! ただ一つ、この呪われた世界で、あの『亡霊女』ではない、誰かが残した『メッセージ』なんだ!) ハルヒ「う、うぐ……がほっ、げほっ!!!」 バシャッ  パシャッ……   ――― 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 16:03:41.35 ID:czgBrG4o0 ―――異次元空間 『鏡の回廊』 キョン(あのクソッタレ噴水部屋から抜け出して、三十分くらいが経っただろうか。     ようやく、ハルヒと朝比奈さんが、落ち着きを取り戻してくれた……しかし、まだとても本調子とは言えないな……) ハルヒ「……ごめん、もう大丈夫よ……先、進みましょ……」 長門「……この空間は、鏡にさえ近づかなければ、安全。まだ休んだほうがいい」 ハルヒ「……ありがと。でも、いいわ。こんな血だらけのところで休んでても、気なんか休まらないしね……」 キョン(そう……噴水の水が『血』に変わると同時に、それまで、この回廊の壁や、地面をぬらしていた『水』も、全部『血』に変わっちまいやがった。     たしかに、リラックスの為の休憩に適してる環境じゃねえわな、こりゃ……     だが、問題は……ハルヒや朝比奈さんが『動揺』を引きずったまま進むのは、まずい気がする。『心の力』に影響するかもしれねえ……) ハルヒ「これは、こういう『作戦』なのよ、あの亡霊の。あたしたちの気をすり減らして、進む元気を奪おうってんだわ。     姑息なやつ、こういう陰湿なのって大っ嫌い! さすが怨霊ね……ここで、へばってたら、アレの思う壺よ。進みましょう、みんな」 みくる「すいません、私ももう、大丈夫です……ちょっと、び、びっくりしちゃったけど、もう、落ち着きました……」 キョン(二人とも、洋服が真っ赤だな……ま、そう言う俺らだって、背中やらズボンの裾やらにしみこんだ『水』が『血』になりやがった所為で、十分血まみれだけどよ。     ……それに、この二人もそうだが、古泉も。あの『日記』を手に入れてから、何か様子がおかしい……) 古泉「……そうですね。『フレスコ』の言う、『緑の扉』も探さなければなりませんし……休むにしろ、何かほかに、適した場所を探したほうがいい。    では、もう五分ほど経ったら、出発しましょう。……」 キョン「ああ……ところで、古泉。お前、何をメモしてたんだ?」 古泉「ああ、これですか……僕らの装備を確認していたんですよ。現段階での、ね。よろしければ、どうぞ」 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 16:10:07.81 ID:czgBrG4o0 ・武器、武器になりえる物  ナイフ×2、木刀×1、ロープ(登山用)×2  魔よけの斧(重い)×1、魔よけの槍×1 ・その他  懐中電灯×10(現在5本使用中、フレスコに必要。切れれば朝比奈さんの力で代用可能?)  安全靴×2(女性サイズではない、ネバネバを回避) ライター(長門さんの力で十分? 温存のためにはある限りは使ったほうが?)  ハンマー×1(岩対策。武器としては微妙?)  食料(節約すれば5日ほどは保つ?)  日誌(鍵つき、重要な手がかり?) ・心の力(発展の可能性大。精神状態によって弱化・強化の可能性? 多用すれば精神疲労する)  回復、攻撃(突風? 威力大) − 涼宮さん  炎(かなり自在。鎧には効かない) − 長門さん  超能力(飛行は無理、エネルギー弾のみ、威力は中程度) − 僕  みくるフラッシュ(発光、幽霊には効果アリ)、みくるスポットライト(強いライト※長時間は体に負担?)  みくるテレスコープ(双眼鏡程度? 便利) − 朝比奈さん  シールド(力の加減や大きさ、形状が自在か不明。今のところ最高記録…一分ほど続いた鉄砲水を受け流しきった→威力・範囲大?) − キョン「……何で俺の名前だけ書いてないんだ」 古泉「いえ、今丁度、その部分を書いて、一通りまとまるというところでしたので。    すこしでも、落ち着かなくてはならないと思い、記してみただけですよ。現状を見直すというのは、冷静さを取り戻せるものです」 キョン「……そういうもんかね」 古泉「……正直、自分でも何故、こんなに取り乱しているのかわからないんです」 キョン「こんな状況だ、誰だってちっとは参るさ」 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 16:18:18.27 ID:czgBrG4o0 古泉「……ええ、それはわかっています。ですが……今、僕は冷静でいなければいけない……    涼宮さんが、こんな異常現象に、露骨に遭遇するのは初めてでしょう。彼女はかなり疲弊しているし、恐怖だってある。    朝比奈さんも、もともとこういった荒々しい事に向いた方でもありません。    僕や長門さんが、それをフォローしなければ……」 キョン「……そう気を張るから、余計まずいんだろ。お前がいくら場慣れしてるっつったって、ここはまるっきりのアウェーだろうが。     自分を無理に冷静にしようとしたって駄目だ、マジの意味で落ち着かなきゃな。ま、この状況でどう落ち着けってのかってのもわかるが……     フォローできるやつがフォローすりゃいい。んな状況じゃねーというかも知れねーがよ、無理に気合入れて空回りしちまったら、余計嵌るぜ?     少なくとも、長門はそれほど参っちまってはいないようだし、俺だって今は無力じゃねーんだ。そこらのザコ敵にむざむざ食われちまうほどの弱小パーティーじゃねえ。     だからよ、もう少し気ぃ抜いとけ……? 何だよ、その目は」 古泉「……いえ、なんというか……こういう言い方は、何ですが、まさかあなたに諭されるとは思わなくって」 キョン「……えらそうな事言って悪いな」 古泉「いえ、そんなことはありません。……むしろ、少し、落ち着きました。    ……しかし、正直、不思議だ。長門さんはわかりますが……あなたがこれほど、精神力の強い方だとは思っていませんでした」 キョン「そうかい」 キョン(……まあ、否定しない。正直、俺自身、どうしてこんなに落ち着いているのかわからんしな。     ただ、何だ。……何の所為なのかわからんが、こう……『恐怖』というものを、今ひとつ感じないんだよな、いつからか。     いや、もちろん、この先に何が出るか、どんな化け物が出るかと想像したら、怖いさ。また、噴水みてーなドッキリにいつ会うかとも思ってる。     しかし、なんだ? とてつもなく妙な言い方だが……何かが常に、俺を『安心』させているような気がする……     馬鹿な。こんな、イカレた亡霊の怨念にあてられながら、いったい何故『安心』なんぞを感じられるというのか。……しかし、実際感じているんだよな、これが。     ……俺、なんか、悪いものでも食ったっけ……?) ハルヒ「よし……そろそろ、五分でしょ。行きましょう、みんな。えーっと、『緑の扉』だったわよね」 古泉「はい。たしか、こちらから参りましたから……次は、この先ですね。『鏡』には注意してくださいね。では、行きましょう」 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 16:27:02.01 ID:czgBrG4o0 キョン(―――歩くこと、数分。『道』は突然行き止まりとなり。その少し手前の壁に、『扉』があった) 古泉「……大丈夫です、向こう側からは、何の気配も感じません。少なくとも、『水』が溜まってるだとかは無いでしょう」 ハルヒ「よし、あけるわよ……ていっ!」 ―――異次元空間 『緑の扉の部屋』 キョン「! おい、あるぞ、『緑の扉』だ……ついでに、『フレスコ画』もあるぜ」 古泉「……狭い上に、大して物も無い。安全なようですね……『模様』もありません」 ハルヒ「よし、まず『フレスコ』よ……ん、これね……また、高いところにあるわね。みくるちゃん、お願い」 みくる「あ、はい……えっと、読みますね」 キュウウウウン 『悲しみの血は、緑の扉を開く』 ハルヒ「血……? って、もしかして、この扉、開かないの?」 ガチャガチャ キョン「の、ようだな……『血』っつーと、やっぱさっきのを思い出すが……     まさか、アレをここまで汲んで来いってんじゃねーだろーな……さすがに勘弁して欲しいんだが」 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 16:33:17.10 ID:czgBrG4o0 ハルヒ「う……で、でも、血って言ったらやっぱあれなんじゃ……まさか、ここで生き血をささげろってんじゃないでしょーし……」 キョン「第一、汲むったって何で汲みゃいいんだ? ボトルは満タンだしよ」 古泉「……満タン、ですか?」 キョン「ああ、俺のボトルと、ハルヒの水筒しか空いてなかったろ? それには、さっきの噴水で水を汲んじまっ…………」 ハルヒ「……水筒? ……あきゃあああっ!?」ババッ  ゴトンッ ゴロンゴロン…… キョン「……そいや、アレ……当然、あの噴水の水なら……」 古泉「……け、結果オーライとしましょう。汲んでくる手間が省けましたし……」 キョン(……俺はなんつーもんをバッグに突っ込んでたんだ……) ごそごそ キョン「あ、ああ、やっぱり、ボトルの中身が真っ赤っかだぜ……このボトル、もう使えねーな」 ハルヒ「あたしの水筒もよ! どうしてくれんのよ、馬鹿!」 キョン「汲めっつったんはおめーだろうが! いいから、お前と朝比奈さんは、回れ右しとけ! トラウマ穿り返されてもしらねーぞ!」 ハルヒ「う……そ、そうね。じゃあ、お願い……」 キョン「……安直だが、これしか考えつかねーし、とにかくやってみるかね……」 ドポドポドポドポトポトポトポ キョン(……水にはねえヌメっぽい音が、気持ちわりい……) 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 16:40:22.11 ID:czgBrG4o0 長門「……扉の色」 キョン「あ? ……! なんだこりゃ、血が掛かってねえところまで……『赤』くなってくぞ」 古泉「どうやら、アタリのようですね……おそらく、これでこの扉の向こうへの道が開けたのでしょう」 キョン「あ、ああ……おい、二人とも、もう大丈夫だ。このボトルは……捨ててくか」 みくる「あ、はい……わ、と、扉が真っ赤に……」 ハルヒ「ちょっと、大丈夫なの? 『眠るべき場所』は緑の扉の先なんでしょ? これじゃ『赤の扉』じゃない」 キョン「どこの一休さんだよ、んな難癖つけるのは……『フレスコ画』がこうしろっつったんだから、いいんじゃねーのか?」 古泉「……『眠るべき場所』が、あなたの予測したとおりなら、この先は『グラウンド』に繋がっているはずです……気をつけてください、また『犬』が出るかもしれません」 長門「問題ない。焼き尽くす」ボッ 古泉「い、いえ、脅かすくらいで問題ないと思いますが。……では、開けましょう……行きます」 ガチャ キョン(これは―――やっぱり、俺の見たあの塔……『ここ』が、『眠るべき場所』―――!     しかし、其れより目に付くのは……この『壁』みたいのは、何だっ!?) ―― グラウンド 供養塔エリア 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 16:47:59.24 ID:czgBrG4o0 ハルヒ「……砂があるし、土もあるわ。確かに、ここは『グラウンド』みたいね……空も見えるわ、薄暗いけど。     でも……ここら一帯を覆ってる、これって何? なんか、太い毛糸で編んだ『編み物生地』みたい……」 みくる「まるで、校庭のネットみたいに、高くまで続いてますね……こんなの、前に見たときは無かったのに」 古泉「……これは、『魔封じの紐』と同様のものですね。しかし、これだけの太さと、量……    長門さん、ためしにこれを『燃やそうと』して見てくれませんか?」 長門「わかった」ボッ ギュンッ ドォンッ …………シュウウウウ…… キョン(! 一瞬、表面がうっすら焦げたようには見えたが……すぐに元通りになっちまいやがった) 長門「……あの『亡霊の力』によって、護られている。おそらく、最大火力をぶつけても、小さな穴程度しか開かない。それも、すぐに再生すると思われる」 古泉「なるほど……ひとまず、こいつを破るのは難しいようですね。    ……ならば、この『眠るべき場所』……『供養塔』を調べましょう」 キョン(『供養塔』……そうだ。俺が昇降口から見たのは、確かにこれだ。      しかし、妙な塔だ。見た感じじゃ、むしろ石の柱のような……いくつものでかい石を積み上げて、無理矢理固めたような形をしてる。      こんな形の石が、天然でできるわけもねえ。しかし、誰かが造ったものにしちゃ、前衛的すぎる……大体、誰を供養しているのかも書かれていねえ) みくる「この『塔』が、あの『亡霊』さんが眠るべき、『お墓』なんでしょうか……     ? あっ、あそこ……見てください、この『供養塔』、掘り返されてます!」 キョン「! 何だって……?」 古泉「―――あ、ほ、本当です! この塔の横の地面、『穴』が掘られている……    まさか……あの少女が『亡霊』となってしまったのは、これが原因なのか……!?」 14 名前:書き溜めおわた予想以上にはえええええ[] 投稿日:2009/10/14(水) 16:54:13.22 ID:czgBrG4o0 キョン(誰かが、この墓を荒らしたから……あの『亡霊』は、よみがえっちまったってのか?) ハルヒ「キョン、『ライト』を頂戴! この穴に、何かが残ってないか調べるわよ!」 キョン「! ああ……こりゃ、結構深いな。斜めに掘られてやがる、この『塔』の下まで続いてても、確かに、おかしくないな……     えっと、よし、点いた……」 ハルヒ「……何も、見つからないわね。ただの穴だわ、一番奥まで。普通、『お墓』なら、ただ埋めるだけじゃなくて、事前にお骨を入れるスペースを作るわよね?」 キョン「ああ、そのはずだ……やっぱ、この墓はおかしいぜ。この奇妙な供養塔といい、この穴の感じといい……     ……! ちょっと待った、今、穴のそこで、何か光ったぞ……」 ハルヒ「え……? ! 本当だ、何か落ちてる! キョン、取れる?」 キョン「やってみる……ん…………! 取れた……こりゃぁ―――『鍵』だ!」 古泉「っ―――『鍵』! まさか、この『日誌』の―――ッ!!?」   「いいや、違う。それは、この『学校』の『地下室』の鍵だ」 キョン(―――誰だ? 今、喋ったのは。男の声だ。しかし、俺でも古泉でもねえ―――) 古泉「ッ――皆さん、後ろですッ!!」 ボッ ハルヒ「っ、誰ッ!? 『敵』なのッ!?」 キョン(ハルヒや、古泉たちに遅れて、声のしたほうを振り返る―――     ……俺たちのやってきた、扉の前。そこに立っていたのは―――見たところ、40前くらいの、中年の男だった) 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 17:02:42.07 ID:czgBrG4o0 長門「……『亡霊』ではない、『人間』」 キョン「! 人間、だって……? 俺たちと同じ……『生きている』ってのか!?」 男「ああ。私は、君たちと同じようなものだと思ってくれていい」 古泉「……それは、つまり。この学校に迷い込んでしまい、脱出しようとしている……そういう事ですか?」 男「……その通りだ」 ハルヒ「あたしたちのこと……尾けてきたの!?」 男「いいや、それは違う……私は、君たちを待っていた。そう言った方がいいだろう……」 キョン(待っていた、だって……? まさか、この人……) 古泉「……あなたは、いつから此処に?」 男「……君たちが、この『世界』にきてしまうよりも、前からだ。それで十分だろう。   それより、問題は、君たちが持っている、その『鍵』だ。それは……おそらく『地下室』の鍵だ」 古泉「地下室……? 僕らは、そんな部屋があること自体、初めて耳にしますが。何故あなたはそんなことを……?」 男「細かいことは重要じゃない。……その『鍵』は、とても重要なものなんだ。   今まで、私には見つけることができなかった。……一体、どこで見つけたんだ?」 ハルヒ「……はあ? どこでも何も、今、たった今見つけたのよ。この、『供養塔』の穴の中から」 男「! ……何だって? 馬鹿な、私だって、そこは何度も調べたが……   ……ふむ。まあ、この状況だ。何が有っても、おかしくはないか……」 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 17:09:13.86 ID:czgBrG4o0 古泉「……あなたの言う『地下室』に、一体、何があるというのです?」 男「それは、わからない。しかし、それは間違いなく、大切なものだ。……『彼女』にとって」 キョン(! 『彼女』だって? こいつ……あの『亡霊』を、知っているのか?) 男「……どうやら、君たちは、知らないことがとても多いようだな。……私は、『彼女』を鎮める為に、君たちを待っていた。   ……その『鍵』が、今、君たちの手元にあるということは……おそらく、君たちこそが。『彼女』を鎮められるものなのだろう……   私の知っていることを話そう。ただ、時間を無駄にしたくない。歩きながらだ、着いてきてくれ」 ハルヒ「ちょ……ま、待ってよ! まだ、あんたのことを信用したわけじゃ―――」 古泉「……いえ、涼宮さん。彼は、信用していいと思います……それに、僕らの知らないことを知っているようだ」 ハルヒ「で、でも……そ、そうね……もし、妙なそぶりを見せたら、容赦なくぶっ叩くわよ! いい!?」 男「……ふ、構わないとも。私は君たちに敵意などないからな」 キョン(! ……なんだ、今……一瞬、こいつが微笑んだとき……     ……よくわからんが、何か感じた。こいつは、俺たちの敵じゃない。そんな『何か』だ……) キョン「……わかった、あんたの言う話を聞かせてくれ……こっちから質問するより、あんたが話したほうが早いだろ。     それとだ……できりゃ、あんたの『名前』くらい教えて欲しいんだが……」 男「……そうだな。『山村』とでも呼んでくれ……さて、君たちは、あの『亡霊』が何者か、知らない……そうだったな?   そこから説明しようか……彼女は、かつて、この学校の生徒だった少女だ。   この学校の、『美術部』の部長。とても、才能溢れる人だった……らしい。   それと、もう一つ。   ―――彼女には、『不思議な力』があったんだ。まるで、彼女の願いを全て実現させるかのような……そんな力がね」 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 17:22:14.20 ID:czgBrG4o0 古泉「ッ―――!」 みくる「えっ……!?」 長門「……」 ハルヒ「『不思議な力』……? そんなの、ありえるの……?」 キョン(……『やっぱりな』……って、所だな。俺や古泉からすりゃ……) 山村「ああ。しかし、普通の少女だった。彼女は、その力を自覚してはいなかったからね。     だが……ある事がきっかけで、その力が『暴走』してしまった……     率直に言えば。この『学校』を、このようなことに変えてしまったのは、彼女のその『力』によるものだ」 ハルヒ「あることって、何よ! もったいぶらずに教えてくれる!?」 山村「……君たちは、あの『三階』のフレスコを見たか? そこに残されていたメッセージの通りだ。     とある、事故で。彼女と、同じ美術部員だった少年を……彼女が思いを寄せていた人物が、死んでしまったんだ」 古泉「……それは、僕らも見ました。しかし、事故とは、一体どんな……?」 山村「……その少年の『作品』を、彼女がしまい忘れた所為で、誤って、ゴミとして、焼却炉へ運ばれてしまったんだ。     少年は、それを回収するために、一人、焼却炉へ向かった。幸い、その日のゴミが焼かれるのは翌日で、『作品』はまだ焼かれていないはずだったからな。     しかし……そのとき、大きな『地震』があった。少年は、誤って焼却炉に―――ッ!?」   ゴ  オ  ン  ッ キョン(―――その瞬間。俺たちの前を歩いていた、山村という男の体が……突然、何かに吹き飛ばされるように、左方へ―――消えたっ!?) 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 17:34:03.06 ID:czgBrG4o0 古泉「なっ―――!? 山村さんっ!?」 ハルヒ「な、何、今のっ!?」 キョン(ここは―――いつの間にか、あの『緑の扉』の部屋まで来ている……そして、鏡の回廊へ出たところで!     山村さんは何かに吹っ飛ばされた! たしか、あっちは『行き止まり』だ!) 山村「くっ……『噴水』だ! 『噴水』の下に、『地下室』はある……『心』を使え! 私に構うな!」 みくる「ふえええ、で、でもっ!」 山村「いいから、行けっ!」 キョン「っ、行くぞ! 何かわからんが、山村さんは『何か』に襲われてる……俺たちにも何かが来る前に、あの『噴水の部屋』に行くんだ!」 古泉「ッ……わかりました! 行きましょう!」 長門「――――」 キョン(……俺たちは、一本道の、血まみれ回廊を駆け抜け……     やがて、あのおぞましい『血の噴水』のもとへ、たどり着いた!) 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 17:38:53.89 ID:czgBrG4o0 ――― 異次元空間 『噴水の部屋』 キョン(噴水は、依然、変わりなく……おどろおどろい色の『血』を吹き上げている……) ハルヒ「『心』……よくわかんないけど、『心』って言ってた……     みんな、この『噴水』を囲んで! いっせいに、『心』を使うの!」 みくる「えっ……で、でも、どうすれば!?」 長門「念じる」 キョン「それだけかよ!?」 ハルヒ「それだけよ!」 古泉「急ぎましょう……いいですか、せーのです!」 キョン「っ、ああ、わかったよ! 何だって念じてやろうじゃねーか!」 ハルヒ「お願い……『地下室』に、私たちを連れてって――――!!」 長門「……」 みくる「――――っ!!」 古泉「―――!!」 キョン(―――! その瞬間―――!     俺は、噴水から『血』が引いていくのを見た! 並々と注がれていた血が、綺麗に消え……『噴水』からの排出も、止まった!     そして、現れた噴水の底―――小さな、『鍵穴』がある!!) 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 17:47:04.82 ID:czgBrG4o0 ハルヒ「これが、地下室への扉っ!? 古泉君、鍵を!」 古泉「はい―――!!」 ―――カチッ ……ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…… 古泉「うわっ!? こ、これは……『下』に向かって、『噴水』が開いていく……!」 キョン(なるほど……こりゃ、『血』がなみなみ溜まってたら、行けねえな―――地下室が、血の池になっちまう) みくる「あっ、は、梯子があります……この先が、『地下室』――!!」 古泉「ま、待ってください! 『噴水』が、完全に閉じてからのほうがいい、もしどこかに挟まったらまずい!」 ハルヒ「もう大丈夫よ、十分スペースはあるわ! いくわよ、みんな―――『地下室』へ! そこに、何かがあるのよ! あの『亡霊』を鎮めるための、何かが!」 ―― 異次元空間 地下室 キョン(……そう長くない梯子を降りた、俺たちを出迎えたのは……爛々と燃える、『炎』だった―――) ハルヒ「これ……なんで『地下室』にあるのか知らないけど!     ―――『焼却炉』だわっ! 山村さんが言ってた、『焼却炉』よ!」 キョン(……の、ようだ。しかし、何か奇妙だ……この焼却炉、『熱』を感じない……大体、閉ざされた地下室で、炎が消えずに燃え続けているわけがない) 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 17:52:37.11 ID:czgBrG4o0 古泉「……見てください、『フレスコ画』です」 ハルヒ「! キョン、ライト! はやく!」 キョン「分かってる! ……よし、おらっ!」カチッ 長門「……出た」 『少年の死は 彼女を狂わせ 彼女の力を 暴走させた』 ハルヒ「同じだわ……山村さんの、言っていた事と!」 みくる「え……で、でも、あの人は、此処には来たことが無かったはずじゃ……?」 キョン(……まさか……あの、『山村さん』ってのは……あの『亡霊』を、知ってるのか!?     ってことは、もしかして、あの人は―――!) 長門「待って―――」 キョン「え……どうした?」 長門「……」すっ ―――カチーン……―――。 キョン(! ……長門が、フレスコ画の中心に手をかざした、途端に―――『何か』が、フレスコ画のまえに、現れた?     地面に落ちた、小さな金属―――これは―――『鍵』!!) 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 17:57:59.71 ID:czgBrG4o0 古泉「ッ!! それは―――お、お願いします! 誰か、その鍵を僕に!」 キョン(ああ、わかってるッ! これは……この鍵は、間違いなく、『アレ』の鍵だ!     そして……あの、山村さんの言葉。そして、山村さんという人物の正体―――     それが、真実なら! ここに記されているのは―――!!) ―――カチリ 『三月×日 日次  わたしの最後の日記が、新しい日記の最初のページなんて、なんだかおかしいですね。  卒業式、泣いちゃいました。最後は、笑ってたかったのにな。少し残念です。  これで、美術部は、お二人だけになっちゃいますね。さびしいですけれど。  でも、このまま廃校になって。葉宮さんが、あの場所で、彼とずっと一緒に眠っていられるなら。  それでも、いいかなって思っちゃったりもするんです。  それで、もしできたら、葉宮さんの夢の中に、あたしや、二人もいたらな、なんて。  ごめんなさい、うまく言葉にできませんから、おしまいにしますね。  おふたりとも、もう会えなくなっちゃいますけれど   お元気で。                               日次サクラ』 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 18:04:25.53 ID:czgBrG4o0 『三月○日 行木六生  さようなら、日次さん。  僕も、とても寂しく思います。ですが日次さんの言葉を読んで、今は、それでもいいかな。なんて思っています。  これまで、ありがとうございました。  それと、神野さん。お二人だけになってしまいましたが、一年間、よろしくお願いします。』 『三月◇日 神野唯  また、部室で。』 みくる「こ……これ……うそ、こんなことって……!」 キョン(―――! こ、こりゃ……ありえねえとしか思えない、だが……『思ったとおり』だ、いや、それ以上!     っ、そうだ、ハルヒは! これをハルヒに読ませるのは、マズいんじゃ―――!) 古泉「大丈夫です、彼女は―――よくわかりませんが、あの『焼却炉』をじっと見ています。     そ、それより……ページを! お願いします、ページをめくってください!」 長門「……」パラ 『四月○日 行木六生  新学期ですね。それも、同じクラスになれるとは思っていませんでした。  改めて、一年間よろしくお願いします、神野さん。』 『四月×日 神野唯  よろしく。』 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 18:07:52.53 ID:czgBrG4o0 キョン(……それから、この、『行木』と『神野』という二人のやり取りが、延々と続いている。春が終わり、夏、秋が過ぎて、また春になる……。     やりとりが、二月の日付に入ったとき。俺たちは、再び。ページをめくる手を止めた……) 『二月○日 行木六生  本当は、こんなお話はしたくなかったのですが。  ですが、やはり、どうしてもお聞きしたいのです。  神野さんも、やはり、卒業したら、帰ってしまわれるのでしょうか?』 『二月×日 神野唯  人類の進化の鍵である葉宮スズの観測の役割は、あの日で既に終了している。  おそらく、私という個体は、卒業後、上位思念体へと帰還する。』 みくる「あ……や、やっぱり……じゃあっ……あ、あ、あ、あああああの、『亡霊』さんって……っ!!」 古泉「……」 キョン(……絶句。ってのは、こういうことを言うのか……) 長門「……」パラ 『二月△日 行木六生  そうですか。分かってはいましたが、やはりそうなんですね。  正直を言って、とても寂しく思います。僕ら五人のなかで、一人きり残されてしまうというのは。  ただ、それとは別に、どうしても、僕は気になるのです。  葉宮さんの力は、本当に失われてしまったのでしょうか?  あれから、口々に噂されている、彼女の呪いの噂を聞くと……彼女が眠った今でも、あの力は、彼女の元にあるのではないかと、そう思うのです。  それについては、上位思念体さんのほうからは、特に何もないのですか?』 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 18:12:27.12 ID:czgBrG4o0 『二月□日 神野唯  その確認のために、彼女の死後も、観測を続けることを、上位思念体は、私に命じた。  しかし、やはり、彼女が最後に創り出した、あの供養塔の地中からも  そのほかのどこからも、葉宮スズの力は観測されない。  流布している噂に該当するような現象も、発生していない。ただの噂。  一部の急進派は、あの供養塔の地中を解析し、そこにあるならば、彼女の肉体を検証すべきと主張しているが、その必要は無い。  上位思念体の大部分は、葉宮スズの力は完全に消滅したと判断した。よって、私は帰還させられる。』 『二月%日 行木六夫  そうですか。思念体が断定するくらいなんですから、そうなのでしょうね。  葉宮さんは、自分の願いで、彼の遺骨を引き寄せ、この思い出の地で、ともに眠りにつく事を選んだ。  きっと、彼女の力は、それで役目を終えたのですね。  分かりました。この話は、おしまいにしましょう。  試験勉強中は、気が張り詰めていて、気にならなかったのですが。  合格して以来、どうしても落ち着かなくて。すみませんでした。  もう、二月も終わりますね。あと少しの間ですが、よろしくお願いしますね。』 『三月×日 神野唯  私という個体は、あなたと、この学校と離れたくないと思っている。』 『三月○日 行木六生  ありがとうございます。  もう、明日が卒業式なんですね。早いものです。  この日記は、僕が持っているべきではないでしょう。この学校に、残していくことにします。  お別れと、ご挨拶は、直接いたしましょう。』 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 18:20:10.62 ID:czgBrG4o0 『三月△日  日次サクラさんから預かった印を、行木六生、神野唯が代印致します。  二人の友の、安らかなる眠りを祈り  一九××年 三月△日  ○○高校 美術部  部長  行木  副部長 神野  前部長 日次』 キョン「……これで……終わりだ」 みくる「ど、どういうこと、なんですか、これっ……こ、これ……こんな、ことって……」 古泉「……『別世界』……そうとしか、考えられない……!!」 長門「……」 キョン(この日誌を書いた……こいつらの言葉から、いくつかの事実が察せられる……     あの『供養塔』は、あの『亡霊』……『葉宮スズ』が、力……『ハルヒと同じ力』を使って作ったもの!     そして、『遺骨』……? 『葉宮スズ』は、そいつをあの供養塔の下に埋めたってのか!?     しかし、あの供養塔に掘ってあった『穴』の中には、そんなもんは無かった!) 古泉「……この、あと。この学校が『廃校』になった後で、あの『供養塔』が掘り返されたんだッ!     そうとしか、考えられない……そして、おそらく! 『彼』の遺骨を、そこから持ち去った! それが、『葉宮スズ』を眠りから覚ませてしまった!!」 みくる「じゃあ……あの『亡霊』……『葉宮』さんは、それを、ずっと探し続けて……」 キョン(……『遺骨』だって……? そんなモン、盗み出してどうするってんだよ……!) 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 18:25:04.29 ID:czgBrG4o0 ハルヒ「……ねえ、これ」 キョン「ひえっ!?」 古泉「うひゃぁっ!!?」 ハルヒ「……? 何びっくりしてんの?」 みくる「な、なな、な、な、なんでもない、でしゅ……ど、どうしたんですか?」 キョン(こいつのこと、忘れてた……ってか、ハルヒのやつ、なんか様子がおかしくねえか……     何、じっと焼却炉なんか見て……) ハルヒ「これ……もしかして」すっ キョン「! おい、馬鹿、危ない!」 ハルヒ「違うのよ、この『炎』、熱くない……幻なのよ。     この中に……やっぱり、これ……                  『あたし』だ」 古泉「え――ッ!? そ、それは……?」 みくる「……ひ! ……あ、あ、あわっわあああああっわ……」くら 長門「キャッチ」 がしっ キョン(ハルヒが、焼却炉から取り出したのは……『彫刻』だった。少女を象った―――『涼宮ハルヒ』に、そっくりな少女の、『彫刻』!) 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 18:33:50.88 ID:czgBrG4o0 ハルヒ「これ……あの山村さんが言ってた、あの子の好きな人の『作品』って……きっと、これよ!     これだけじゃ、駄目かもしれないけど……これはきっと、あの子を『鎮める』武器になるわ!」 キョン(……確かに、こいつは、滅茶苦茶重要なアイテムに思える……し、しかし……) ハルヒ「きっと、これ! あたしじゃなくって、『あの子』の顔なのよ!」 みくる「」 長門「しっかりして」 古泉「そ、s。そ、そうで、しょうか……?」 ハルヒ「そうよ、あの子の好きな人は、あの子の為に、これを彫ったのよ!     それに、だったら、あたしたちが此処に来ちゃった理由もわかるわ!」 古泉「」 キョン「そ、そりゃ……どんな、んだ?」 ハルヒ「あたしと顔がそっくりじゃない、この子。     顔が似てる人って、多分、なんかこう……オーラも似てると思うのよね。     きっと、ちょうど同い年ぐらいで、顔が似てるあたしのことを、あの子が呼び寄せたのよ!     多分、あの子の『不思議な力』ってやつだわ! それがあたしを呼び寄せたのよ!」 古泉「え」 みくる「え」 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 18:41:30.58 ID:czgBrG4o0 キョン(……顔って……いや、お前がいいならそれでいいし、俺らも都合はいいんだが……) ハルヒ「みんな、地下室の秘密は、これよ! 山村さんを助けに行きましょう!     きっと、あの子を鎮めるしかないんだわ……あたしたちが、この学校を脱出するには!」 古泉「はっ……そうだ、彼を助けなければ!」 キョン(っと、そうだった……心の力も月まで吹っ飛ぶような衝撃で、一瞬忘れかけてた―――!!) ハルヒ「行くわよ、みんな!」ダッ 古泉「……急ぎましょう。おそらく、あの『山村さん』は……」 キョン「ああ……俺も、なんとなく、予想がついてきた……!」 みくる「あ、ま、まってください、涼宮さあんっ!」 ハルヒ「何もたもたしてるのよ、急いで……えぇッ!? みんな、後ろ! 焼却炉から、何か来てるっ!!」 古泉「なッ―――!?」 ボウボウボウッ 青白い人魂「「「―――」」」 キョン「なっ―――ちくしょう、此処は安全じゃあなかったのかよっ!? ……待てよ、こいつら、動きがおかしい―――誰かを、狙ってるッ!?」 人魂「「「―――」」」バババッ 長門「!―――」 ボヒュゥンッ 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 18:45:30.19 ID:czgBrG4o0 キョン(なっ―――人魂が、一直線に長門に襲い掛かって―――長門を、覆っちまったっ!!?) ハルヒ「有希いいいっ!」 長門「―――? これ、は……」 ……ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ キョン「ッ! 何だ、この音、上から―――ッ!?     ハルヒ、やばい……『噴水』が閉まり始めたっ!! 閉じ込められたら、どう出りゃいいかわからねえっ!!」 ハルヒ「ええっ!? で、でも、有希があっ!!」 古泉「長門さん、抵抗してください! 長門さん!」 長門「……行って」 キョン「ッ!? 待て、長門、それだけは……ッ!」 長門「心配ない、あなた達の方が危ない―――扉が閉まる前に、上って」 古泉「しかしっ!」 長門「行って」スッ ――ドヒュゥゥゥンッ キョン(なっ―――か、『風』ッ!? 風が、俺たちを、出口に向かって吹き飛ばそうとしてる―――ッ!?) 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 18:49:00.85 ID:czgBrG4o0 みくる「いきゃああああっ!!」ドヒュウウウウッ キョン「なっ、長門おおおおおっ!!」 長門「―――大丈夫」 ドンッ キョン「げふっ!」 ズズッドサッ キョン(ふ、噴水の部屋の天井までぶっ飛ばされた……俺たち、四人とも!?) ゴゴゴゴ……ズウウウウン…… ハルヒ「ちょ、ちょっと待って、閉じるなああああっ!! 古泉君、もう一度鍵を―――ええッ!?」 ――――スゥッ キョン(……消えちまった……『噴水』が! ……まるで、はじめから、無かったかのように……     『噴水の部屋』から、『噴水』が消えちまった……『床』しかねえ!) 古泉「な……そんな、馬鹿な……自分のことだって、吹き飛ばせたはずじゃッ!?」 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 19:00:36.33 ID:czgBrG4o0 ハルヒ「う……うそ、でしょ? 有希いいい!!」 キョン(……何だ? 何故、長門は、あの人魂に抵抗しようとしなかったんだ……!?     俺たちを吹き飛ばすことはできたのに……?) 古泉「……駄目だ、『山村さん』を探しましょう! 彼なら、ほかに『地下室』へ行くルートを知っているかも!」 ハルヒ「でもっ、あのオッサン、あの部屋には行けなかったって、確かに言ってたじゃない!!」 古泉「……それは、そうですが! だとしても、ここから地下室にいけないのは、もう確かなんだ!     長門さんなら、きっと持ちこたえてくれるはずだ……だけどそれも、僕らが進まなきゃ、意味が無いんだっ!」 ハルヒ「う……わ、分かったわよ……!! そうよ……あの有希が、こんな、簡単にやられちゃうはずないもの……!!     あのおっさん、確か……『緑の扉の部屋』のむこうの、行き止まりで別れたのよね!?」 キョン「よし……そこだ! 古泉、また後ろを頼むぞ!?」 古泉「分かりました!」 キョン(……長門。お前の、あの行動には―――何か、意味があるんだよな……!?     信じてるからな、長門……絶対、もう一度、お前と会うからな―――ッ!!) ―― 異次元空間 『鏡の回廊』 『緑の扉の部屋』前 キョン「! あそこだ、山村さんが、何かと戦っていたのは―――おい、見ろ! 行き止まりの『壁』がブッ飛んで、どこかに通じてる!」 ハルヒ「何ですってッ!? ……あれ、どこかの『教室』よッ! この異次元空間じゃないわ―――もとの次元のどこかに通じてるのよ!」 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 19:09:55.11 ID:czgBrG4o0 ―――― ??階 フレスコの部屋 キョン(ぶち抜かれた壁の向こうは……ハルヒの行ったとおり、『学校』のどこかだった。     俺たちが発電機で通した電灯が点っている、そして―――『フレスコ』がある!) ハルヒ「またフレスコね……まどろっこしいわ、みくるちゃん、やっちゃって!」 みくる「は、ひゃいっ! みっ、みくるフラッシュ!!」  カ ッ キョン「……! 出やがった、メッセージだ! くそ、フラッシュ一瞬分ぐらいでいいなら、最初からそう言ってくれりゃよかったじゃねえか!」 古泉「それより、メッセージを読むんだ―――! これは、やっぱり……!」 『彫刻は 彼女の力に抗える 唯一の武器』 ハルヒ「ッ! これだわ……やっぱり、『これ』は『あの子』なのよ!     これなら、きっと、あの一階の廊下の、『結界』も破れる……『美術室』に行けるかもしれない!!     それで、あの子を鎮めたら、きっと、有希も助かるわ!」 古泉「この部屋……ドアは、これだけだ! 開けます!」 ハルヒ「行っちゃって!」 ―――バァァァンッ 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 19:16:33.16 ID:czgBrG4o0 ―― 一階 体育館 古泉「こ、此処は……体育館だって? こんな所に、扉があったなんて……」 ハルヒ「丁度いいわ、あの『結界』に近いじゃない―――もう、迷ってられないわ! きっと、山村さんもそっちにいるはずよ!」 キョン「その根拠は、何だよ!?」 ハルヒ「うっさい、黙ってろ!!」 鎧「――」ガシャンガシャン ハルヒ「邪魔!」 ドヒュゥゥゥンッ ボッグォン 鎧「」 キョン(な、何だか知らんが、ハルヒのテンションがとんでもねえ……いや、だが、この状態なら!     『心の力』とやらも絶好調であろう、この状態なら、マジで……いけるかも知れねえ!) 古泉「行きましょう、考えるより、進むんです!」 キョン(ちくしょう―――長門! 無事でいてくれ―――頼むから!) ――― 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 19:23:24.47 ID:czgBrG4o0 ―― 一階 東側校舎 廊下 キョン(……依然、変わりなく。あの『結界』は、そこにあった……     此処までで、山村さんとは出会えていない!) ハルヒ「待ったり、探したりしてる時間は無いわ……あたしたちだけでも、行くのよ!」スッ… ―――キィィィィン キョン(! ハルヒが、結界に向けて、『彫刻』をかざした瞬間……結界が、波打った!) ハルヒ「やっぱり、いける! でも、これだけじゃ足りない……『心』よ、『心』がいるの!」 みくる「えっ、でも、結界に有効なのは、その『彫刻』だけ、なんじゃあ……」 ハルヒ「『彫刻』に心を注ぐのよ! ―――ってりゃあああああ!!!」  カ ッ ズズ……ズズズズズ……ッ キョン「! 結界が、後退した! 古泉、朝比奈さん! 俺たちもやるんだ、『彫刻』に触れろ!」 古泉「はい! このまま……『美術室』まで、押し切りましょう!」 みくる「え、あ、はい! え、ええええい!!」 キィィィ……――――ズズズズズズズッ………!! 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 19:30:46.07 ID:czgBrG4o0 キョン(ぐ……た、確かに、押していけるが……かなり、きついぞ、これ……ッ!) ズズッ  ズズズズズズ……ググ…… ハルヒ「んぐぐぐぐ……ッ! び、美術室まで、あと、ちょっと……っ!      ―――ッ、きゃあああっ!?」 …………―――ドォォォォォンッ! キョン「ぬがっ、やば、押し返されっ―――ぐえっ!!!」ドン―――ズドンッ! ハルヒ「えうっ!」みくる「あきゃっ!」べしゃべしゃっ キョン「ぅぐえッ!?」 古泉「ぐ……も、元の場所まで、はじき返されてしまった……」 ハルヒ「も、もう一回よ! あと少しだったじゃない! 誰か、手ぇ抜いてない!?」 キョン「ねえっ! つか、こんなこと繰り返してたら、『心の力』のほうが尽きちまうんじゃねえか!?」 山村「大丈夫だ」 キョン「のおッ!? って! あんた、山村さん!?」 山村「地下室から、何か見つけてきてくれたようだな……なるほど、『それ』か……」 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 19:41:13.07 ID:czgBrG4o0 ハルヒ「あ、あんた! 無事だったのね……それより! 有希が、あたしたちの仲間が、地下室に取り残されたのよ!」 山村「……何だって?」 ハルヒ「この先よ、この先に、この子がいるんでしょ!? あの、『亡霊』の子が!     これがあれば、そこまでいけるの! 早くあの子を鎮めてあげなきゃ、有希が手遅れになるかもしれないのよ!」 山村「……そうか。わかった……確かに、彼女は、美術室にいると、私も思う。     しかし……『結界』は、押し返しても駄目だ。『破る』んだ。この『彫刻』と、君たちと私の『心の力』があれば、それができる」 キョン「破る……!? どうすりゃいいんだ、んなの!」 山村「……君」 ハルヒ「……? あたし?」 山村「君の、名前は?」 ハルヒ「名前? ……『涼宮ハルヒ』よ。それが、どうかした?」 山村「……いや、そうか。涼宮さん。彫刻を、僕に渡してくれないか。     僕が先頭を行こう……君たちは、後ろから、『心の力』を込めてくれ」 ハルヒ「……わかったわ」 みくる「あ、あの……! あ、あなたは……も、もしかして、『彼女』の……」 山村「……今は、どうでもいいことだ。もし、時間があれば……後で話そう。……行くぞ。この『結界』を破る……『彼女』のところへ、行くんだ」スッ…… ―――キィィィン――― 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 19:46:20.82 ID:czgBrG4o0 ドンッ キョン(! ……こ、この男が、彫刻をかざした途端……これまでの比じゃない、強力な『力』がッ!) 山村「早くしろ! いくらこの『彫刻』があっても、僕一人じゃあ足りないんだ!     念じるんだ……この向こうへ『行きたい』と!」 古泉「は――はい!!」 みくる「ううっ――――!!」キィィィン ハルヒ「―――――ッッッ!!」 キョン(頼む――――道を! 俺たちに、道をくれッ!!) キィィィィイイイイイイイイイ―――――――――――――ッ      ――――――― ピ シ ャ ァ ア ア ン ッ ! ハルヒ「きゃあっ!?」 古泉「うっく!」 キョン(―――! 『結界』が―――『割れた』ッ!!) 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 19:56:12.79 ID:czgBrG4o0 山村「……やはり……この『彫刻』の、力か……『以前』は、この先へ……僕は、行けなかった」 キョン(! ……『以前』だって……!?) 山村「……以前も、結界は破れた。しかし、僕はここで、力尽きてしまった……『彼女』のもとへは辿りつけなかった。     しかし、ようやく……僕は、彼女のもとへ……『あの部室』へ、行ける……」 ハルヒ「……? なっ、何言ってんのか、わかんないけど……! 『結界は破った』のね……?」 山村「……そうだ。立てるかい? かなり、『心』を消耗したろう」 古泉「……大丈夫です」 みくる「う、は、はい。……あたしも、大丈夫、です……」 山村「……『彼女』は、この先にいる。無理はしないでくれ……着いてこれるものだけ、着いてきてくれ。    それと……たとえ、私に何かがあったときは。彼女を鎮められるのは、君たちしかいない。    そのときは……お願いしますよ」 キョン「! ああ……分かった」 山村「……行くよ」 キョン(……ほんの、数秒しかかからない、美術室までの道のりが。まるで、何時間にも感じられるようだった。     男の……『そいつ』の背中に着いた、俺たちは。やがて―――『美術室』の扉の前へと、たどり着いた―――) 山村「……開けるよ」                   ――― ガ  ラ  ッ …… 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 20:06:18.55 ID:czgBrG4o0 ―― 一階 東側校舎 美術室 キョン(何だ……此処は! 俺たちは、『美術室』に入ったはずだ……     だが、山村が扉を開けた瞬間―――床もなければ、壁も、天井も無い!     まるで、宇宙のような空間に―――俺たちは、放り出されていたっ!) ハルヒ「な、なによ、これ! みんな、いっ、居るのっ!?」 キョン(! ハルヒ―――どこだ!?) 古泉「涼宮さん! 居ます、僕は、此処に! ―――! あ……っ!」 みくる「は、はい、ここですっ! ここ、どこで、どうなって……! や、山村さん……!」 キョン「!? 何だ、どこに―――!?」 キョン(……すこし、視点を動かせば。すぐに分かった。     俺たち四人は、何かを囲むように、この空間を浮遊している……そして、その中心に居るのは!) ハルヒ「! や、山村さん! それと―――っ!!」 亡霊「う……あ……私の……学校に……入ってこない、で……!!」 山村「……『葉宮』さん――――ようやく、会えましたね」 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 20:14:38.05 ID:czgBrG4o0 キョン(! ――やっぱり――あの、『山村さん』の、正体は!!) 古泉「くっ―――駄目だ、近づけないっ……!!」 山村「葉宮さん、落ち着いて、聞いていただけますか? ……もう、あなたを脅かすようなものは、この世界に居ません。     この世界には、何も―――もう、何も、無いんです。あなたたちのほかには」 葉宮「う……だ、れ……違う……いない……奪ったの……返して……!!」 山村「……僕が誰だか、分かりますか? 葉宮さん。……彼は、きっと。僕が見つけます。あなたと同じ場所へと、眠りに着かせます。     ……だから、どうか。先に、眠っていてください―――必ず。僕が、『彼』の遺骨を見つけます。     ですから―――」 葉宮「―――あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!」  ――――  ゴ  オ  オ  オ  オ  ッ  !  ! キョン「なっ―――! なんだ、こりゃあ―――体が、ちぎれちまうッ―――!!?」 ハルヒ「きゃああああっ!?」 山村「ぐああっ!? ――−や、はり……だ、め……!!!     もう―――彼女に、僕の声はっ……!!?」 古泉「や、山村さあああんッ!! だ、駄目だ、吹き飛ばされるッ―――!!」 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 20:20:02.95 ID:czgBrG4o0 葉宮「返して……かえして……私の、学校から、何も、奪わないでえェェェェェッ!!」     バ  ァ  ァ  ァ  ァ  ァ  ッ ! ! ! 山村「っ―――ぐあああああっ!!!」 キョン(! や、山村さんの体が―――黒い、『炎』のようなものに―――っ!!) ハルヒ「う、うそ……そんなあああぁぁぁぁぁっ!!」 山村「だ……め、だ、彼の……遺骨、を、さがさな、ければ…………きっと、あの……『彼女たち』も……おなじように……!!     き、みたち……たの、む……『遺骨』を、『遺骨』を、かの、じょ……葉宮さんに…………―――」  ――――――――――――――――ド  ジ  ュ  ゥ  ッ  …… みくる「ッ―――いやァァァァァァッ!! 山村さぁぁぁぁぁん!!」 キョン(や―――山村の体が! まるで、『融けていく』かのように―――ッ!!) 古泉「駄目だっ、次元から―――押出さっ、れるぅぅぅぅ!!」 ハルヒ「い―――いやァァァァァァァッ!!!」 ―――――― 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 20:29:27.05 ID:czgBrG4o0 ―― 一階 東側廊下 美術室 キョン(此処は……『美術室』だ……あの、異次元から……俺たちは、はじき出されたのか……) ハルヒ「……うそ、うそよ……や、山村さんが……あんな、ふうにっ……!!」 みくる「ぃ……う…………」カタカタカタカタ 古泉「……『遺骨』、だって……? そんな、馬鹿な……!」 キョン「……無事、なのか、みんな……」 ハルヒ「ッ―――無事じゃ、無いわよ! あんた、見なかったの!? や、山村さんが……あ、あの子に……っ!!     きっと……あの、人! あの子の……あの子を、『知ってた』のよ……!!     あの子の、名前も言ってた……っ、聞いたでしょ!?」 キョン(ああ……確かに、聴いたよ。あの、『日誌』に書かれていたのとおなじ名前を……あいつは、口にしていた……) 古泉「遺骨……遺骨を探せなんて……そんなの、いったい、どこにあるっていうんだ……ッ!?」 キョン「……わからねえ……だが。俺たちにできるのは……     ―――この、『フレスコ画』を辿ることくらいだろ……」 ハルヒ「! フレスコ画―――!? ……! 本当だ、あるわ……この、『美術室』に!! 『フレスコ画』が、ある……     まだ、『山本さん』も見ていないはずの『フレスコ画』が―――ここに、あるっ!!」 古泉「っ! 『フレスコ画』……!? まさか、どうして……これを書いているのは、『あの人』……『山村さん』じゃなかったのか……!?」 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 20:35:13.19 ID:czgBrG4o0 キョン「あの『地下室』にも、フレスコはあったんだ……あいつじゃねえんだろうよ」 みくる「でっ、でも……ほかに、誰がっ……!?」 ハルヒ「……私たちを『導いて』くれるものは、まだ、無くなっていないのよ……!!     みくるちゃん、お願い! はやく……『フレスコ』を、照らしてえぇぇぇぇっ!!」 『彼女が探し求めている 少年の遺骨のありかを 彼女に真実を』 キョン(……マジかよ――――それは、もう、聞いたぜ) ハルヒ「…………」へたっ みくる「…………もっ……もう、駄目……駄目……あたしたち、このまま……ッ!!」ガタガタガタガタ 古泉「…………」 キョン(……くそ……マジで――これで、終わりかよ、俺ら…………     このまま、あの、『先行組』の連中みたいに――――ここで―――) 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 20:42:52.37 ID:czgBrG4o0 モゾ   モゾ キョン(……? ……んだこりゃ、『蛆』か……ああ、此処で死んだら、こいつらの餌かね、俺たちも……) ウゾ ウゾ キョン(……床を見て、初めて気づいたが……この部屋、『蛆』が多いな……やたら) モゾモゾ…… キョン(……どっか、目指してるのか? こいつら……―――!) キョン「……『蛆』が……いる、だって……?」 古泉「…………え……?」 キョン「……古泉、見ろ……ハルヒに、朝比奈さんも……!!     ……『蛆』が、居るんだ、この部屋の床には……こいつらは、あの……     ……『準備室への扉』に近くなるにつれて、多くなってるんだ―――ッ!!」 ハルヒ「……準備、室……?     『蛆』――!! それって―――まさかぁっ!」      ド  ド  ド  ド  ド  ド  ド  ド  ド  …… キョン(……『山村』は、言っていた……『以前』は、結界は破れたが、自分は此処で力尽きたと―――     なら――『山村以外』は! 以前、既に、この部屋にたどり着いていたかもしれない―――!!     この、扉の向こう――『準備室』に、『居る』のは―――ッ!!!) 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 20:48:17.37 ID:czgBrG4o0 ――― 一階 東側校舎 美術準備室 骸骨「」 ハルヒ「……『死体』が、ある! この、美術室に……『一人』だけ、死体がっ!!」 みくる「う……う、『蛆』が、いっぱい……!!」 キョン(俺たちは―――少なくとも! まだ『二人』の先行者と会っていない!     ここに、『一人』の死体があるってことは―――『もう一人』は、『先に進んだ』かもしれない!) モゾ モゾ ウジャ ウジャ…… キョン「邪魔だ―――どけっ!!」 カッ   ズ  バ  ァ  ッ  !  ! 蛆「「「「」」」」」 バラバラバラバラッ ハルヒ「うきゃっ!? ちょ、き、気持ち悪いじゃない! やるなら言ってよ!」 古泉「それより! 調べるんだ……この、『先行者』が……何か! 何か『メッセージ』を残していないか!!」 キョン(! こいつは―――『男』だ! 洋服も男物だし……体は小さいが、骨格も、今までの『先行者』たちとは違う!     こいつが、『聡』なのか!? だとしたら、ここに居ない―――もう一人、この先へ進んだはずなのは―――!!) 72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 20:57:53.12 ID:czgBrG4o0 みくる「っ! こ、これ……キョン君、古泉君、涼宮さんっ!!     血……この人も、血で……文字を、書いてます!」 キョン「! 本当だ―――! だ、だけど、これは……っ」 ハルヒ「これじゃ――消えかけちゃってて、読めないわ! あの『蛆』どもが、這いずった所為!?」 古泉「見せてください! ……ほ、本当だ……読めない……     だけど! これしか……僕らには、もう、『これ』しか手掛かりは、無いのに―――!!」 みくる「……待って……古泉君」 古泉「!?」 みくる「……あの、何か……『絵の具』とか、ありませんか?」 キィンキィンキィンキィン…… キョン(! 朝比奈さんの、『目』が……なんだ、これ!? 今までのとは違う! 真っ白に光ってる……!?) 古泉「え、絵の具……ですか? えっと……あります、此処は美術準備室ですから……ですが、何を?」 みくる「……『見える』んです。えっと、これ、何なんでしょうか……もしかして、血の……『鉄分』か、何かなんでしょうか……     それとも、『赤血球』とか、そういうのなのか、わからないんですが……『見える』んです! この床に残ってる、『血文字』の形が!」 キョン「なっ―――こ、古泉いいいい!! 早く、『絵の具』を朝比奈さんに!!」 古泉「はっ、はい! え、と、どうぞ!!」 みくる「えっと……ちょっと、待って、くださいね……よく見てやらないと、間違えそうで……―――」 75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 21:05:43.44 ID:czgBrG4o0 キョン(……数分間。朝比奈さんが、『絵の具』をつけた『指』で、床をなぞる、僅かな音だけが、『準備室内』に響きわたった。     そして―――その文章は。『完成』した――――) 『ひとりでみおねえ いっちゃった しょうこ フレス』 古泉「『みお』、『澪』……あの、書置きの名前と一緒だ―――!!     『澪』……『秋山澪』は! この先へ行ったんだ―――何かの、手掛かりを得て!!」 ハルヒ「すごいわ……みくるちゃん、グレートよ!! 『みくるミクロスコープ』だわ!!     あなたは、絶対やればできると思ってたわよ、最初から!!」 みくる「はぇっ!? あ、え、あ、ありがとうございます……」 キョン(いくら顕微鏡でも、こんな芸当できねえだろ……つーか、『みくるマイクロスコープ』のが語呂よかないか?) 古泉「……フレスコ……まさか! あの、『昇降口のフレスコ画』! あのメッセージを、読みに行ったのか――『秋山澪』はッ!?」 ハルヒ「昇降口……? ! あの、一番最初に見つけたやつのことッ!?     だ、だけど―――あれ、たしか、土砂に埋もれちゃったんじゃないのッ!?」 古泉「ええ、そうです! だから、あの『フレスコ』を『発掘』しに行ったんだ、『秋山澪』は!!     あれが『最後のフレスコ』だ! いや、本当なら、僕らは『最初』に、あのフレスコに出会っていた……!!     最後の手掛かりだ――『昇降口のフレスコ』が!! きっと―――きっと! 『何か』が、そこに記されている!!     行くしかない、昇降口へ……これが、正真正銘! 僕らの、最後の『希望』なんだ―――っ!!」 ―― 78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 21:14:56.30 ID:czgBrG4o0 ―――思えば。全ては、この場所から始まったのだ。俺たちは、この呪われた学校に閉じ込められて……      昇降口。土砂に、全体の半分を埋め尽くされた、その空間に―――俺たちは、長いように感じられて、そう長くは無い時を経て。      再び、この場所に舞い戻った。 ―― 一階 南側校舎 昇降口 キョン「……『結界』は破ったし、もしかしてと思ったが。やっぱ、『グラウンド』へのドアは封鎖されたまま、みたいだな」 古泉「ええ……もっとも、解放されていたところで、目の前にあの『魔除けの紐の布』があるのですから、どうにもしようがありません。     やはり―――この『土砂』の中の、『フレスコ画』しか。僕らに、道は無い―――」 ハルヒ「えりゃあああっ!!」ブォンッ グシャァッ ボロボロボロ…… ハルヒ「……『岩』みたいに、ハンマーが軽快に効いたりしないわね……地道に掘るしかないのかしら」 みくる「でも……余計に、土砂が押し寄せてきたりとか、しないでしょうか?」 古泉「いえ……これは、僕の憶測ですが。あの、僕らが歩いてきた山道と、今のこの学校とは、切り離されていると考えていいと思います。     ……この学校が、まるごと『異次元』なんです。そうとしか、考えられません。     そもそも、この老朽化した建物に、『土砂』が押し寄せてきたら、こんな程度の被害で収まるはずが無い。下手すれば、建物が丸ごと飲み込まれてもおかしくないんです」 キョン(……この学校が『別世界』でなかったら、その時点で俺ら、全滅してたじゃねえか……) ハルヒ「よっし、掘るわよ! たしか、ここの壁だったわよね……もう、掘って掘って掘りまくるの、総勢で!」 キョン(やれやれ……最後の最後の希望は、えらい肉体労働の果てにでなけりゃ、手に入らんようだ……) 80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 21:23:22.12 ID:czgBrG4o0 ――― キョン(よりにもよって。最後の『フレスコ』のメッセージは、下の端に記されているらしく。     俺たちは、とことん掘る羽目になった。     せめてもの救いは、『敵』らしき『敵』が、現れなかったことか……) ハルヒ「はあ、はあ……み、みくるちゃん、ライト!」 みくる「は、はい……駄目です、やっぱり、何も浮かび上がりません……」 キョン「このフレスコ、どんだけ縦長なんだよ……!! もう、いい加減、額縁の底辺が見えてもいーんじゃねーか!?」 古泉「はあ、いえ……まだ、少なくとも、1/4は残っていると思います……これまでの、フレスコ画と、おなじ大きさなら……」 キョン(マジかよ……) ハルヒ「もたもたしてんなっ! 『斧』か『ハンマー』しか、つかえそうなモンが無いんだからね!?     次、あんた『斧』! さっさと掘れ!」 キョン「あーっ! 分かったよ、ちくしょう!! こんのっやろォ!!」ブォン ガスッ バラバラ…… キョン「ッ―――んで、こんなカタイんだ!? この土砂は!? これも『葉宮』の怨念か!?」 古泉「まあ……はあ、おそらく、彼女が、僕らを閉じ込めるために創り出した、ものでしょうから……間違っては、いないでしょう……     はあ、はあ……―――! ちょ、見えてます! 『額縁』が見えてるじゃないですか、もう!」 キョン「―――何っ!? くそ、あと少しで、全容が出てくるって事か!? ああちくしょう、掘りゃァ―――良いんだろ、掘りゃァ―――!!」ガスッガスッガスッ――― 82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 21:28:17.79 ID:czgBrG4o0 ――― ハルヒ「―――! 出てきた……額縁の、下の端まで、全部! 『フレスコ』が、出てきたわ!     キョン、ライト! ライトを渡すから―――読んで! そこに、『メッセージ』があるはずなのよ!!」 キョン(メッセージ……これで、もし『何も出なかった』りしたら、マジでうらむぜ……) カチ…… ハルヒ「……どう、キョン? 何か出て――――、きゃあっ!?」 古泉「え……うわあっ!?」 みくる「ひきゃあああっ!? キョン(!? な―――何だ!? 何が起きてんだ、そっちで!? ―――メッセージは、出た! 今、それを読もうとしたってのに!) キョン「おい、何だ、どうしたんだよッ!?」 ハルヒ「ど、『土砂』が……『人』! 『化け物』になって―――か、数が多すぎ―――いやああっ!!!」 キョン(何だって―――!!? この期に及んで、『化け物』だぁっ!!?) キョン「ハルヒ! 古泉、朝比奈さ―――――――――」   ――― ド  ギ  ュ  ゥ  ゥ  ゥ  ゥ  ン ッ ! ! 83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 21:33:02.24 ID:czgBrG4o0 キョン「ぬがぁっ!?」 キョン(な、何だ―――俺が、『穴』の外に出ようとしたら! なんか、こう、覚えのある『風』がッ―――!!) 土男「「ギャァァァァァァァ!!」」 ブオォォォッッ ……パラパラパラパ………… キョン「は、ハルヒ! こいず――――ッ!」 ハルヒ「な、何、今の―――! ……あ、あ――――!!」 長門「……無事?」 ハルヒ「―――ッ有希いぃぃぃぃぃッ!!」 バッ 長門「キャッチ」がしっ キョン(……長門? やっぱ―――やっぱり、無事で、いてくれたのか―――!!) みくる「な、長門さん……どうやって、ここに……で、でも、よかった……ふ、ふえええ……!!」 古泉「……っ、な、長門さん! あれから、何が有ったんですかッ!? あの、『地下室』から―――どうやって!?」 長門「―――……説明は、今はいい。それより―――『進む』先は、見つかったはず」 85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 21:38:30.16 ID:czgBrG4o0 キョン(! ―――長門が、俺を見た……そうだ! 今、『フレスコのメッセージ』を! 俺は、読んだはず―――!     そうだ、確か―――!) 長門「―――『全てがそろった時 供養塔で心を使え』」 キョン「! ……長門、なんで、そのメッセージを……?」 古泉「何だって……『供養塔』!?」 ハルヒ「え? そ、それが、その『フレスコ』のメッセージなの? ……で、でも、有希! 『全てがそろった時』って……あたしたち、まだ『遺骨』を……」 長門「……それは、もう―――『見つかっ』ている」 キョン「…………何だって?」 長門「『遺骨』のありかは、既に解き明かされている。……ずっと、昔に。『あなたたち』は、それを受け継げば良い。――来て」 ハルヒ「ちょ、ちょっと! どこに行くのよッ!?」 長門「『葉宮スズ』のもと―――『供養塔』」 88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 21:45:46.82 ID:czgBrG4o0 ――― グラウンド 供養塔エリア キョン(……長門は。俺たちを連れて、まっすぐに『此処』へやってきた……この、『供養塔』のもとへ) 長門「……『全ては揃ったはず』。……あとは―――ただ、『葉宮スズ』へ……『心』を届けるしかない」 ハルヒ「……有希……さ、さっきから何を言ってるの?     どうして、有希が……その名前を、知ってるのよ……?」 長門「―――――――――『同期』を行った」 キョン(!――) 古泉「同期……!? まさか、それは――!」 ハルヒ「え?」 長門「……正確には、一方的な同期。『私』から、『長門有希』への―――     ……今は、語るべき時ではない。     使って……『心の力』を。私たちは―――それで、『葉宮スズ』のもとへ行ける」 ―――あの『フレスコ画』のメッセージを、誰が残したのか。そして、あの『日誌』に、一行だけ書かれていた、『神野唯』の言葉――― ―――俺が、全てを理解するのに。そう、時間は必要なかった。 89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 21:54:53.17 ID:czgBrG4o0 ――― 異次元空間 ????? キョン(……第一印象は。あの、『美術室』で迷い込んだ空間と、似ているな―――などという、暢気なものだった。     しかし。此処には『床』があり、『壁』がある。そして、『道』がある―――) 長門「……此処が、『葉宮スズ』の構築した、異次元空間。彼女の魂の中枢は、この先に居る。     ……進める?」 古泉「う……え、ええ、なんとか……」 ハルヒ「だい、じょうぶ……でも、こ、此処、なんかおかしいわよ……重力が、あるんだかないんだかわからない……気を抜いたら、天井まで吹っ飛びそう……」 長門「『葉宮スズ』の精神が、不安定になっている為だと思われる。……『心』を使って。ここは、彼女の精神の内部。     自分の『心』を見失わなければ、まっすぐに進めるはず」 みくる「う……あ…た、立てました、なんとか……だ、大丈夫ですか、皆さん……?」 キョン「……はい、なんとか……」 キョン(……長門。いや――『お前』を、信じていいんだな―――?) 長門「……来て。きっと、途中で――『彼女』にも会える。     『葉宮スズ』ではない――あなたたちよりも、前に。『葉宮スズ』を、鎮めようとしたものにも」 91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 22:03:27.67 ID:czgBrG4o0 ――― キョン(……拍子抜けするほどに。道は、一本道だった。『精神世界』なんて言うもんだから、もっと、迷路のようになっているかと思ったが……     そして―――数分だろうか、数十分だろうか、数時間だろうか? もう、よくわからんが。     しばらく、『こいつ』の背中を追って、進んだ先に―――その人物は、居た) 少女「……あ……う……誰……?     ……誰、でも、いい……お願い……話、きい、て…………」 ハルヒ「! ―――あなた! 『秋山澪』なの!? ―――そう、なのねっ!?」 澪「……きい、て……そう、私は……   ……見つけた、私……『遺骨』……わかった……みつ、けた……んだ……でも、とどかなかっ、た、『彼女』に……」 古泉「『遺骨』……!? そんな……どこで、『遺骨』をッ!?」 澪「『遺骨』……『彼女』は、『奪われた』……おもって、た……   でも、違う……『遺骨』、は……『あった』……   『奪われて』な、んか、な、かった……『あった』の……『供養塔』に……   わたし、は、それを、掘り出して、ここに……   『昇降口』の、フレスコの、とおりに……でも、『スズ』には、届か、なくって……」 93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 22:13:13.10 ID:czgBrG4o0 キョン(―――何だって?     『葉宮スズ』は、あの供養塔を掘り返されたから、『よみがえった』んじゃ、ないのか―――!?) 長門「……葉宮スズを、呼び覚ましてしまったのは、私」 ハルヒ「え……?」 神野「『長門有希』ではない。―――わたしは、『神野唯』。     『葉宮スズ』の、観測を行っていた、対有機生命体用ヒューマノイド・インターフェース。     ……『上位思念体』の『急進派』に脅かされ、私が、『葉宮スズ』の魂を目覚めさせてしまった。     彼女は、『彼』の遺骨が奪われたと、そう勘違いをした―――『遺骨』は、もとから、『供養塔』の下で、眠っていた」 澪「―――『神野唯』……が、いる、の……?」 神野「……そう。あなたたちが地下室を訪れたとき、私は、あなたたちと同期を行えなかった。     私は、待っていた。私と―――『葉宮スズ』が目覚めたとき、この『学校』に巻き込まれた、私と。『同期』を行える存在が、この場所を訪れるのを。     それが――『長門有希』だった……」 澪「……ごめん、わから、な……   でも、これ……『遺骨』を、持ってって……『スズ』の、ところまで……」 神野「……分かってる。必ず、届ける。     『彼ら』なら、それができる。きっと……     だから、あなたは―――眠っていて」 澪「……あり、がと……やっと、わたしも、いけ、…………」 澪「」 94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 22:20:26.20 ID:czgBrG4o0 みくる「……いっちゃいました、この人も……やっと。『眠り』に、つけたんですね……」 ハルヒ「……これが……『遺骨』? はじめから、供養塔の下にあった……     それを掘り返して、この先の……『スズ』へ届けようとしたのが、この……『澪』……」 神野「そう」 ハルヒ「……あなたは……有希じゃ、ないのね……?」 神野「そう。記憶のみ、『長門有希』と同期を行った」 古泉「……『フレスコ』に、メッセージを残したのも、あなた……なのですか?」 神野「……そう。……私は、この学校の異世界化とともに、この世界に組み込まれてしまった。     私は、フレスコへ『手掛かり』を残すことしかできなかった。それから、ずっと、待ち続けていた。     私とおなじ存在。『長門有希』のような存在が、この学校を訪れるのを。     私の役目は、あと、わずか。     この『遺骨』を―――葉宮スズへ、届けるだけ。     その間だけでいい……『長門有希』の体を、借りる」 キョン「ま―――待ってくれ、お前は―――」 神野「……時間が無い」 古泉「!」 神野「『葉宮スズ』が、来る」 ――― 96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 22:29:42.83 ID:czgBrG4o0 ―― ?? ???? ?? ?????? キョン(また―――同じだ、あの、美術室の時と―――     俺たちは、また、あの宇宙のような空間にいる―――そして。     長門―――『神野唯』と。『葉宮スズ』が―――俺たち、四人の、中心に居る――) 葉宮「う……あ……どうして……何度も、何度も……あなたたちは、くるの……!?」 神野「……葉宮スズ。あなたが探し求めている……『彼』を、連れてきた。     もう、あなたが苦しむ必要は、ない。やっと……あなたに、彼を届けにこられた」 葉宮「―――ち、がう……私の、傍から消えたのは、『あいつ』……     そんな―――『骨』なんて―――ちがう―――!!」    ド   ォ   ン   ッ   !  ! キョン(ぐ――!! ば、ちくしょう、これじゃあ!! あの時と―――『山村』のときと、同じじゃねえか!!     『スズ』は! 『葉宮スズ』は、気づいていないんだ―――自分が、どうなったかも! あの『遺骨』のやつが、死んじまった事すら『見失って』る!!) ハルヒ「―――『これ』!! 『スズ』―――お願い、『これ』を見て!! ――この、『彫刻』をッ!!」 97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 22:37:34.72 ID:czgBrG4o0 葉宮「――――え? ――わ、たし――?     何――なん、で……そんな、ものを――――――」   ―――  ズ  ズ  ッ  ! キョン(!? ―――『力』が、弱まった―――!?) 神野「……あの、彫刻は。『彼』が、あなたへ……     あなたの『誕生日』へ、贈ろうとしていたもの」 葉宮「え――……?」 神野「思い出して―――あの日。布に包まれたままの、あの彫刻が。     『焼却物』として、持ち出されてしまった。『彼』は、それを回収しに行って―――」 葉宮「あ……『地震』……え―――『焼却炉』に――?     ……な、何? この、『記憶』―――う、うそ、こんな―――!! こんなの、うそ―――――!!!」    ド   ォ   ン   ッ   !  ! キョン(ぐっ――くそ、またっ! 『力』が、戻ってきちまった―――――!!?) 100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 22:46:05.22 ID:czgBrG4o0 神野「―――お願い、聞いて―――私を、思い出して―――」 葉宮「あ、知ら、ない……だって、『唯』は、私の傍に―――」 神野「そう。私は、ここに居る。―――『長門有希』が、此処に来てくれたおかげで。     こうして、あなたと―――『葉宮スズ』と、再び。出会えたの」 葉宮「―――うそ―――まだ、まだ、まだ―――私たちは―――あの、学校に―――」 古泉「は……みや、さん……!! 『これ』を……! この、『日誌』を、どうか―――!!」 葉宮「――『日誌』――どうして、あなたが―――? 『美術部』の、日誌―――持ってるの―――?     ―――八? ―――変、だって、日誌は、五冊目までしか―――!!」   ―――  ズ  ズ  ッ  ! 神野「……それは。あなたと―――『彼』が――『居なくなった後』の、日誌。     日次サクラと、行木六生―――そして、私、神野唯が、着け続けた、記録」 葉宮「ヒナミ…サクラちゃん……ユキキ君……ユイ……?     うそ……だって、わ、たしたちは、ずっと、ずっと、一緒に……わたしも、『アイツ』も、一緒に―――」 古泉「――――違うんです、『葉宮さん』……『僕ら』は。     あなたたちが、眠りについた後も……二年間。僕らは、あの『学校』に居たんです……三人で。最後は、二人で―――」 101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 22:54:16.91 ID:czgBrG4o0 キョン(! 古泉―――? いや、違う!  今、『古泉一樹』の中に居るのは―――!!) 行木「……僕らは。ずっと、見守っていたんです。     僕らの学校が、廃校になってしまう、その日まで。     あなたと、『彼』の眠る場所を……ずっと、この学校で」 葉宮「――うそ、で……しょ? ……あいつが……死んだ、なんて……     行木君、そんなの―――」 行木「嘘じゃ、ないんです。――彼は、事故で死んでしまった。     ……あなたは、彼を奪われたんじゃあないんです。     彼は―――もともと、あなたの作った『供養塔』に……あの『場所』に、いたんです」 神野「私は、其れを届けにきた。彼らのおかげで―――やっと、届けに来れた。     受け取って―――『彼』を」 葉宮「え――――――『キョン』――?」 行木「……葉宮さん。もう、眠りませんか? 僕も、神野さんも、あなたのそばにいます」 葉宮「―――ほん、と?」 神野「本当。私たちは、ずっと。あなたと共にいる―――ずっと。この世界は、もう、それしか残っていない―――――――」 スズ「――――」 102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 22:59:05.33 ID:czgBrG4o0 ――― キョン(―――俺たちは――どう、したんだろうか。 気がつくと……俺は。どこかの、やわらかいベッドの上に、寝そべらされていた) 男「! 目を覚ました……大丈夫か、君!」 キョン「……此処、は・」 男「救急車の中だ! 君たちは、土砂に巻き込まれたんだ―――おい! 目を覚ましたぞ!」 キョン「……『土砂』?」 男「ああ、そうだ、『地震』でな。斜面から、『土砂』が降りてきたんだ!   だが、奇跡的に、君たちは『五人とも、生きていた』んだ!! 君が、最後の一人だ―――!!」 ――― キョン(まさか。     全部、『夢』、『悪夢』だった――――     んな、アホな結末なわけは、ないよな?) 105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 23:08:33.07 ID:czgBrG4o0 ――― 部室棟 四階 SOS団部室 古泉「やあ、どうも……正直、焦がれる思いでしたよ、あなたが目覚めてくれるまで」 キョン「……俺は、どれだけ寝てたって?」 古泉「僕らより、一週間ほど長く、ですね。……ご安心を。涼宮さんには、あの一連を、僕らが記憶しているということは、隠してあります」 キョン「だと、思ったよ」 古泉「……すみません。できるなら―――僕としても。彼女だけを騙すような真似は、したくありませんでした。しかし―――」 キョン「言わなくても分かるさ。あの異次元での、長門……『神野』の言葉にしろ。あいつに聞かせないほうがいい単語だらけだったしな」 古泉「…正直。あなたが、何も覚えていなかったら……そんな不安も抱きましたが。どうやら、杞憂に済んだようで」 キョン「……俺が一番口は軽いかもしれんぜ?」 古泉「はは、そうかもしれませんが。……ですが。あなたが今のあなたになってくれたのは、なんというか……     正直。僕は、たとえ長門さんや、朝比奈さんが、全てを忘れてしまっても、あなたさえ覚えていてくれればいいとすら思っていました」 キョン「……んで、ありゃ、一体『何』だったんだ? 何かしらの結論は出たんだろ? 長門あたりから」 古泉「……あの、『世界』は。多くあると考えられる、『平行世界』の一種であると考えられます。     あの世界での『彼ら』は、『僕ら』と同一の存在ではない。しかし、そのありかたは、あまりにも似通っていました。     そして……あの世界は。『葉宮スズ』の力によって、あの学校を残して、全てが『滅亡』した世界。     ……おそらく、僕らや、彼らのような、こういった『構図』が完成した世界が、最も最悪の道を辿った場合の世界……だったのではないかと」 110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 23:16:38.71 ID:czgBrG4o0 キョン「……まあ、分からんでもない。で、あの『学校』が、俺たちの世界とリンクしたのは……」 古泉「わかりません。単純に、涼宮さんが『廃校』を探し求めたことで同期したのかも知れません。     あるいは、涼宮さんが言っていたように。『葉宮スズ』のほうから、涼宮さんの『力』に干渉してきたのかもしれません」 キョン「何のために」 古泉「……葉宮さんも、深層心理で分かっていたのかもしれません。自分が、もう……『未来』のない存在であることを」 キョン「……」 古泉「あるいは、彼女……あの世界に巻き込まれていた『神野』さんや、山村さん……『行木』さんの願いが、そこに多少の影響を及ぼしたのかもしれません。     何にしろ、ぼくらは、涼宮さんを介し、彼らに呼ばれ、あの世界に引き寄せられた……それは、間違いないと思います」 キョン「『秋山澪』たちは、何だったんだ」 古泉「僕らと同じでしょう。あの、『学校』のみになってしまった異世界に、たまたま『つながって』しまった人々です。     ……おそらくですが。あの『澪』さんという方……彼女が、『涼宮さん』や、『葉宮さん』に近い力を持っていたのだと」 キョン「あいつらも、また違う世界の住人か……」 古泉「ええ……おそらく、ですが」 キョン「……ま。とにかく、ハルヒはアレを『夢』だと思ってる。……なら、いいだろうよ」 古泉「……そう思います?」 キョン「ああ、そうさ。これまで通りだ。何かイカレた事が起きて、俺や、お前や、長門、朝比奈さんが、その対処をする。     ……『これ』が、俺たちにとって、一番いいんだろうよ……俺の『憶測』だけどな」 113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 23:22:01.26 ID:czgBrG4o0 バンッ! キョン「うおっ!?」 みくる「きょ、キョン君! よかった……め、目覚めて、くれたんですね……」 キョン「あ、朝比奈さん……は、はい、なんとか……びっくりした、ハルヒかと思いました」 みくる「あ、ご、ごめんなさい……でも、よかった……     キョン君が目覚めるまで、いつ、涼宮さんが、『あれ』が現実だったと気づいちゃうかって、不安で……」 キョン「そ、そうですか……(俺がいたって、大した力にはなれんと思うんですが)」 みくる「……? あの、長門さんは?」 古泉「長門さんでしたら、先ほどから、あちらの席に」 長門「……」 みくる「きゃっ! あ、す、すみません……」 長門「いい」 キョン(……『神野』は、長門に一方的な同期を行ったと言っていた……     つまり、俺たちを一度分かれたからの記憶は、長門にはない、ってわけだよな……) 長門「……資料として、二人から話は聞いた。     今回の件は、ただのリンクの異常と捉えるべき。……我々が、同様の危機に瀕する可能性は低い。きわめて低い。     ……あなたが忘れてしまいたければ、そうすることも可能。それを望む?」 115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 23:25:56.74 ID:czgBrG4o0 キョン「……いや、いいさ」 長門「……そう」 キョン「つか、そんなことができるなら、ハルヒのやつにそいつをかましちまうことは……」 長門「無理」 キョン「ですよねー……」 バンッ ハルヒ「やっほー! あ、ちゃんと揃ってる、みんな!」 古泉「ええ、どうも」 みくる「あ、こんにちはあ」 長門「……」 ハルヒ「キョンも復活して、やっと元通りね、SOS団も……しかし、あたしとしたことが、土砂崩れに巻き込まれるなんて、不覚だったわ」 キョン「……むしろ、全員生存した強運を誇っていいと思うがな」 ハルヒ「んー……ま、それもいっか。     あ、そだ、キョン。復帰突然で、頼みがあるんだけど。     ほら、映画撮影のとき、電気屋をスポンサーにしたの、覚えてる? あそこに交渉して、なんと、ストーブが譲ってもらえることになったのよ!」 116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 23:29:32.02 ID:czgBrG4o0 キョン「ストーブだあ? そんなもんを快く譲ってくれる店なんか、あるのかよ」 ハルヒ「そりゃ、あたしの口聞きがあってよ。なんだかんだ、もう十月下旬で、寒い時期じゃない?     そういうわけで、キョン。あんた、あの店まで言って、受け取ってきてくれる?」 キョン「あ!? 俺一人でかよ!?」 ハルヒ「当然でしょ、でなかったらあんたを名指しなんかしないわよ」 キョン(……ストーブって、普通、そこそこ重いよな……それを担いで、北高前の坂、上ってこいってのかよ……) ハルヒ「あんた、一週間も余計に休んだ分、労働が溜まってんのよ! ほら、いいから、さっさといく!」 キョン「交通費!」 ハルヒ「実費!」 キョン(ですよねー) みくる「あ、キョン君、よかったら、私のマフラー……」 キョン「あ、すみません」 ハルヒ「いいから、行け!」 みくる「ふぇ」 キョン(ですよねー……) ――― 117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 23:34:02.29 ID:czgBrG4o0 ―― 光陽園駅 ホーム キョン(……さみ) キョン(……しかし。『夢』とかわらねーよな、実際……あんなの) キョン(最も極端な世界、か……) キョン(しかし……あのハルヒが、『俺』が死んだだけで、あの『スズ』みたいになるってのか? はたして……) プァーン 『マモナク イチバンセンニ……』 キョン(来たか……ま、いいや。所詮、別世界の話だしな……)すくっ コツ コツ 『ハクセンノウチガワニ……』 プァーン キョン(ストーブ……重いだろうな、当然……) キョン(? ……今、後ろに何か―――ま、気のせいか) END 124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 23:41:27.00 ID:czgBrG4o0 スウィートホームの全員生存ったらこれしかねえんだよ! ちょっと空回りして正直二転三転しました つきあってくれてありがとうございました 132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/14(水) 23:48:17.87 ID:czgBrG4o0 けいおんは一応 踊り場の白骨…律 ライトで潰れた…梓 渡り廊下の死に損ない…唯 体育館の死に損ない…紬 模様の体育倉庫の焼死体…和 美術準備室の蛆虫まみれ…聡 異次元の死に損ない…澪 かな