長門「うふ、うふふふふふ」 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 19:35:50.89 ID:/Vtfdyzv0 古泉「長門さんの様子がおかしい?」 キョン「ああ」 古泉「そりゃ普通の女生徒の挙止動作と比べれば彼女は変わっていますが・・・」 キョン「そういう話をしているんじゃない。真面目に聞いてくれ」 古泉「・・・具体的に、長門さんがどのようにおかしいのか説明して頂けますか?」 キョン「なんかこう・・・雰囲気が・・・全体的におかしいんだよ」 古泉「・・・考えすぎじゃないですか?」 キョン「お前も見たら分かるって!いつもと全然違うんだ、異常な」 バタン! キョン・古泉「・・・・・・・・・」 長門「うふ、うふふふふふ」 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 19:37:28.92 ID:/Vtfdyzv0 勢いよく開かれた扉の向こうに、口元を歪ませ引きつった笑いを浮かべる長門が立っていた。 白い頬には笑い皺が寄り、持ち上がった頬の筋肉によって目は醜い微笑を形作っている。 キョン「(な、言っただろ)」ボソボソ 古泉「(・・・確かにこれは異常ですね)」ボソボソ 長門はニタニタ笑いながらいつもの席に腰かけると、 そのままの表情でいつものようにハードカバーを読みだした。 古泉「何がそんなに可笑しいのでしょうねぇ」 キョン「おい・・・!聞こえるだろ」 古泉「心配ありません。彼女は読書に夢中でこちらには毛程の注意も向けてませんよ」 長門「うふふふふ、うふふふふふふふふ」 キョン「・・・まあ確かに」 長門は狂気じみたように血走った目を大きく開き、活字を上から下へ追っている。 一行終えると再び上に視線を飛ばしてそれを繰り返す。 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 19:40:46.29 ID:/Vtfdyzv0 古泉「彼女はいつからこのように?」 キョン「今日の昼休みに、借りた本を返しに行って、ついでに昼飯を一緒に食べたんだ」 古泉「その時にはもう既に・・・?」 キョン「いや、最初からじゃなかったような気がする・・・少なくとも飯を食べてる時は普通だった」 キョン「でも食べ終わって帰り際に、長門が笑ったんだ」 古泉「・・・」 キョン「ちょうどあれみたいな、ヤバい笑い方でな」 古泉「うーん、一体どうしたことでしょうね」 キョン「またハルヒ絡みなのか?」 古泉「その可能性もありますが、今のところはまだなんとも言えません」 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 19:42:50.00 ID:/Vtfdyzv0 キョン「・・・」 古泉「涼宮さんにとって長門さんは、SOS団に必要な無口キャラです。改変のしようがない」 キョン「じゃあ、他の何かからの干渉ってわけか」 古泉「断言できませんが、その可能性も高いです」 古泉「そして、もしそうであった場合・・・我々にも危険が及ぶかもしれません」 古泉「長門さん一人を狙っているのか、我々全員を標的にしているのか」 長門「うふふふふふ」 キョン「・・・おい長門」 古泉「!」 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 19:45:24.36 ID:/Vtfdyzv0 長門「うふ・・・・・・?」 キョン「お前、気分とか悪いのか?大丈夫か?」 長門「・・・・・・」 キョン「・・・・・・」 古泉「・・・・・・」 長門「うん、だいじょうぶ、だいじょうぶ、ふふふふ」 キョン「本当に大丈夫か?なんか調子悪そうだし、早退でもしたらどうだ?」 長門「・・・そう、そうする、うふふ」 意外なことに長門は俺の提案を驚く程あっさりと承認し、 パイプ椅子から立ち上がりフラフラと部室を後にした。 キョン「・・・今ハルヒや朝比奈さんが来たら面倒だと思って言ったつもりだったのだが」 古泉「・・・こんなにあっさりだと不気味ですね」 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 19:47:33.97 ID:/Vtfdyzv0 長門が去った後、俺と古泉が原因や対策等をあーでもないこーでもないと話し合っている最中、 不意にハルヒが部室のドアを開けた。 バタン! ハルヒ「・・・」 キョン「・・・」 古泉「こんにちは涼宮さん」 ハルヒ「今日の活動は無し。以上」 バタン! 古泉「やけにカリカリしてましたね」 キョン「・・・実は昨日ちょっとケンカしてな、多分それだ」 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 19:50:20.04 ID:/Vtfdyzv0 古泉「・・・僕の睡眠時間をあまり奪わないで下さいよ」 キョン「でもちょうど良かったな。長門の件は知られずに済んだ」 古泉「ですがそれも時間の問題です。我々がどうにかして、一刻も早く長門さんを正常に治さなければなりません」 朝比奈さんには後ほど古泉が説明する事になり、その日はひとまず解散した。 キョン「やれやれ・・・これからどうなるやら」 もしこれが何か他の超常的な存在からの攻撃だとしたら、 SOS団の最後の砦と言うべき長門が真っ先にやられてしまったわけだ。 一体これから何が起きるんだ? キョン「・・・!」 長門「・・・・・・」 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 19:53:24.68 ID:/Vtfdyzv0 キョン「・・・長門、お前・・・早退したんじゃなかったのか?」 長門「うふふふ、待ってた、ふふっ」 キョン「ずっと・・・校門の前で・・・か?」 長門「そう、うふふふふふふふふふふ」 コンクリート製の正門の裏に隠れるように立っていた長門はこちらを見上げるようにして言った。 焦点が定まっておらず、狂気じみた瞳は小刻みに揺れている。 キョン「・・・何か俺に用があったのか?」 長門「そう、そう」 キョン「・・・それは一体なんだ?」 長門「ついてきて、きて」 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 20:00:18.85 ID:/Vtfdyzv0 長門はそう言うと、おぼつかない歩みで先導し始めた。 仕方なくついていく俺。 長門「ふふっ、たのしい、たのしいね」 キョン「・・・」 この長門は果たして、俺の知っている長門なのだろうか? 以前長門がとんでもない世界改変を行った時のように、全く別な人格、別な存在かもしれん。 それとも何か裏で糸を引いている奴が長門を操っているのか?皆目見当つかん。 長門「ネェ、ネェ」 キョン「ん?どうした長門」 長門「わたし、アレがたべたいのぉ。うふっ」 キョン「あれ・・・?」 長門は寿司屋の看板を指差して言った。 キョン「・・・」 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 20:02:39.88 ID:/Vtfdyzv0 長門「うふふ、ふふふふふ」 キョン「・・・なあ長門、高校生だけで寿司屋に入るのはちょっと」 長門「いい、いいの」 キョン「いいってそんな・・・」 長門「まぐろ、まぐろがほしいの、うふふふふふふふふ」 マグロ? 長門の口からそんな単語が出てくるとは。 キョン「・・・そんなに食べたいのか?」 長門「まぐろ、まぐろッ、まぐろがイイの、ふふっ、ふふふふ」 文字通り口が裂けているような笑みを浮かべ、長門は渋る俺をよそに言い続けた。 足に根を張ったごとくそこから動こうとしない。 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 20:06:00.67 ID:/Vtfdyzv0 キョン「(・・・マグロ一つだけ頼んで、ことなきを得るか)」 キョン「・・・しょうがねぇな、マグロ少しだけならいいぞ。行こう長門」 長門「ふふふ、うれしィィ、ふふふふふふふふふ」 一番安いマグロ寿司(けれど俺の財布に大打撃を与えるのは容易いメニュー)を選び、しばらく待った。 やがて運ばれてきたマグロを、長門は物凄い形相で凝視していた。 キョン「・・・食べないのか?」 長門「・・・たべる、たべるヨォ」 震える箸をなんとか操りながら、長門はマグロを頬張っていった。 キョン「美味いか?」 長門「・・・」モグモグ キョン「これで満足できたか?長門」 長門「・・・」モグモグ キョン「・・・」 長門「・・・」ゴクン 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 20:07:35.95 ID:/Vtfdyzv0 長門は何も言わなかった。 食べ終わった俺たちは外へ出て、また歩き出した。 俺たちは一体全体どこへ向かっているんだ? 長門「ネェ、ネェ」 キョン「なんだ?」 長門「たべたいんじゃないの、みたいの」 キョン「・・・?」 長門「ふふふふふ」 キョン「もしかして、マグロの事を言ってるのか?」 長門「うん、ふふっ」 キョン「マグロならさっき見たじゃないか。お前の食べた料理だよ」 長門「ちがうの、アレじゃないのォ」 キョン「・・・どうしたもんかな」 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 20:09:00.07 ID:/Vtfdyzv0 俺たちは本屋へ向かった。 適当な子供向けの魚類図鑑を広げ、マグロの図解を長門に見せた。 キョン「ほら長門。これがマグロだ」 長門「・・・」 キョン「満足できたか?」 長門「・・・」 長門は何も言わなかった。 見終わった俺たちは外に出て、また歩き出した。 おれたちはいったいぜんたいどこへむかっているんだ? 長門「ネェ、ネェ」 キョン「なんだ?」 長門「あれじゃないの、あれじゃないまぐろなの、ふふっ」 キョン「あれじゃないのか?」 長門「そう、そうなの、うふふふ」 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 20:13:17.11 ID:/Vtfdyzv0 キョン「・・・」 長門「うふふ、ふふふふふふふふ」 長門が見たいんじゃあ仕方ないな。 俺は踏切をくぐり、うるさく鳴り響く線路に寝そべった。 キョン「これで満足か?長門」 轟音を立てて列車が迫ってくる。 ライトがまぶしく、長門の姿を確認することができない。 朝倉「キョン君っ!!何をしているのっ!!!」 頭が列車に踏み潰されるかされなかったかの刹那、 俺は意識を失った。 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 20:18:17.52 ID:/Vtfdyzv0 気付くと、長門のマンションにいた。 キョン「・・・・・・う・・・」 朝倉「キョン君?大丈夫?」 キョン「・・・朝倉・・・?何でお前・・・長門は?」 朝倉「長門さんなら隣の部屋で江美里が診てるわ。大丈夫」 キョン「喜緑さん・・・?」 朝倉「長門さんがおかしくなった事は私たちには筒抜けなのよ。分かると思うけど」 キョン「・・・」 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 20:21:08.81 ID:/Vtfdyzv0 朝倉「ひとまず監視に徹しようと思っていたけど、さっきは緊急だったしね、飛び出しちゃった」 キョン「・・・ありがとな、朝倉」 朝倉「いいのよ」 キョン「俺はどれくらい寝てたんだ?」 朝倉「2時間程度ね。あなたが錯乱したのが午後7時くらいだったから」 キョン「・・・?」 寝起きの頭に、先刻の記憶が蘇ってきた。 そうだ、俺は何故か線路に寝そべって・・・ キョン「なんで俺はあんな事を・・・」 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 20:24:43.66 ID:/Vtfdyzv0 朝倉「・・・多分だけど、長門さんの影響でしょうね」 キョン「長門の?」 朝倉「ええ、長門さんが望んで自発的にそうさせたのか、一緒にいただけで勝手に影響が出たのかは分からないけど・・・」 キョン「・・・お前らも、長門がおかしくなった件について、全然見当がつかないのか?」 朝倉「・・・そうなの。情報統合思念体にアクセスしても、何も分からないの」 キョン「(・・・こいつらにも原因がわからんとは、こりゃとうとうまずいな)」 朝倉「・・・キョン君、お腹空いてない?何か食べる?」 キョン「・・・ああ、少しもらえたら助かる」 制服姿の朝倉は冷蔵庫から色々と食材を取り出し、キッチンに向かった。 あいつも疲れているんじゃないか?迷惑か?といった思いがよぎったが、すぐに消えた。 彼女らは人間ではないのだ。おそらく睡眠も食事もそこまで要らないのだろう。 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 20:28:56.09 ID:/Vtfdyzv0 長門の部屋は相変わらず家具などの物品が少なく、 何もないフローリングの空間に俺の寝ていた布団が敷かれているだけだった。 朝倉「おかゆでも食べる?」 キョン「そんなに病人扱いするな、もう平気だから」 朝倉「そう?んじゃカレーでも作ろうかしら」 キョン「悪いな」 朝倉「ふふ、なんだか新婚さんみたいね」 朝倉は笑いながら、リズミカルに包丁を鳴らした。 制服の上に着重ねたエプロンが実にいい味を出している。 キョン「・・・」 朝倉「ふんふ〜ん♪」 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 20:33:28.26 ID:/Vtfdyzv0 キョン「そう言えばさっき、喜緑さんもいるって言ってたが」 朝倉「江美里なら襖の向こうよ。長門さんもね」 キョン「・・・もう大丈夫なのか?」 朝倉「長門さんならもう平気よ。今は眠ってるわ」 その言葉に安心し、胸を撫でおろした。 俺は襖に近寄って中を垣間見ようとした。 キョン「(・・・電気付けてないのか)」 襖の間から漏れる光は無く、ただ昏々と暗闇がのぞくばかりである。 手をかけ、ゆっくりと襖を開いた。 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 20:38:52.75 ID:/Vtfdyzv0 キョン「うわあああああああっ!!」 そこに広がっていた光景は常軌を逸したものだった。 布団や枕を引きちぎったのであろうか、真っ白い綿と羽がまるで雲のように部屋全体を漂っていた。 その舞う羽毛の中に、こちらからの光に照らされる長門の姿があった。 怪しい輝きを放つ視線を、俺に向けて突き刺す程投げかけていた。 緩んだ口から、気違いのような笑い声が溢れ出した。 長門「うふふふふ、ふふふふあはあはあはあはあはあはあはあはあはあはあはあはあは」 その長門の壮絶な笑みを直視し、俺は脇の下に嫌な冷たい汗が出るのを感じた。 キョン「・・・!喜緑さん?喜緑さんはどこだっ!」 部屋の奥にいた彼女を捉えたのと、俺がそう叫んだのはほぼ同時の事だった。 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 20:44:27.73 ID:/Vtfdyzv0 俺は絶句した。 部屋の奥、壁にもたれかかるようにして立っていた喜緑さんは、 口を狂気に歪め、頬に刻みつけたような笑い皺を浮かべていた。 焦点の定まらない濁った瞳で俺を一瞥すると、静かに笑いだした。 喜緑「・・・わたしはわたしあなたはいったいなんなのわからないわからないわからないふふふふへへへへへへ」 だらしなく開けた口から涎を垂らし、喜緑さんは笑っていた。 二人の笑い声がこだまして、部屋を包み込んだ。 キョン「・・・!!」 朝倉に助けを求めようと思い、俺はその部屋から一歩退いた。 しかし、妙だ。 俺の悲鳴や長門たちの笑い声が聞こえていた筈なのに、 朝倉は何事も無かったかのように未だエプロン姿でキッチンに立っている・・・。 キョン「・・・・・・朝倉・・・?」 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 20:49:05.65 ID:/Vtfdyzv0 朝倉「・・・鉄分も多く摂らないといけないわあとカリウムと硝酸にリンも有機生命体だからたくさん食べないと・・・」ブツブツ ブツブツと支離滅裂な言葉を口走りながら、朝倉は煮沸かしている鍋の中に、 鉛筆や、鉄製食器や、何だかよくわからない錠剤のカプセルや、食卓塩まるごとを入れてかき回していた。 キョン「・・・っ・・・!」 朝倉「あらキョンくんおきてたの?」 キッチンに向かっていた朝倉が突然首を90°近くひねり、背後に立つ俺を見つめた。 汗が頬を伝って顎に滴った。 朝倉「だめよおきちゃキョンくんねてないと。いけないのよふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふあははははははははははははははははぁははははははははははははははは はははははははははははあはははははははぁははははははははぁははははははははははははははははははははははははぁ」 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 20:53:42.74 ID:/Vtfdyzv0 ここは危険だ。 本能的にも頭でも理解した俺はドアを勢いよく開け、長門のマンションを飛び出した。 俺は携帯を取り出し、古泉に繋がるのを走りながら息が詰まる思いで待った。 古泉「おや、どうされました」 キョン「おい、やべえのは長門だけじゃねえ、朝倉も喜緑さんもだ」 古泉「朝倉さんたちも・・・?ちょっと詳しく説明していただけますか」 俺は今までの顛末を古泉に話した。 話しながら後ろを振り返ってみたが、追手はないようだ。 古泉「なるほど・・・」 キョン「これは一体なんなんだ!?長門たち宇宙人が狙われてるのか!?」 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 21:58:01.75 ID:/Vtfdyzv0 古泉「いや、僕はそうは考えません」 キョン「!?」 古泉「貴方の話によれば、朝倉さんは錯乱した貴方を助け、介抱までした」 古泉「つまり、少なくとも朝倉さんは途中まで至って正常だった訳です」 キョン「それがどうしたんだ」 古泉「・・・今回の一連の騒動の原因は、何かウイルスのようなものではないかと疑っています」 キョン「ウイルス?」 古泉「あくまで比喩です。人から人へ伝染する狂気、を分かりやすく言ったまで」 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 22:04:32.40 ID:/Vtfdyzv0 ウイルスが感染して、長門たちはおかしくなっちまった訳ってか? お前のその発想力には辟易するぜ。コペルニクスも仰天するだろうよ。 キョン「なんでそんな突飛な事を思いつくんだ?根拠はあるのか」 古泉「・・・・・・心当たりがあるのですが、それは考えが纏まってからお話しします」 キョン「そうかい。ところで、電話じゃ話しづらい。どこかに集まって会議を開きたいんだが」 古泉「・・・残念ながらその御希望には賛成しかねます」 キョン「なに!?」 古泉「先程申し上げた通り、僕はウイルスが原因だと考えています。     長時間長門さんの部屋にいた貴方に会うのは少々危険な行為だと思われますので」 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 22:08:58.79 ID:/Vtfdyzv0 キョン「俺はもう正常だ!狂ってなんかない!」 古泉「・・・念のためです、分かって下さい」 俺は狂った長門たちに恐怖して、冷や汗流しながら必死で逃げてるんだ。 これのどこが狂った人間だ? 俺は普通じゃないか。 古泉との通話を終える頃、ちょうど自宅に着いた。 やれやれ、とんでもない一日だった。俺は部屋に戻りベッドに横たわった。 妹「キョン君ー、はさみー」 キョン「ああ、勝手に取ってけ」 75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 22:13:05.93 ID:/Vtfdyzv0 これからどうすればいいのか、俺は考えを巡らしていた。 もし古泉が言うように、人を狂わすウイルスが蔓延っているとしたら、おちおち外にも出られない。 考えながらしばらく経つと、妹がハサミを持って部屋に入って来た。 キョン「随分長い事使ってたんだな」 妹「うん。キョンくんのはさみおもしろいから」 キョン「面白い?」 妹「うん。キョンくんのはさみはおもしろいの」 キョン「・・・?」 妹「キョンくんのはさみはなんでもきれちゃうのよなんでもなんでもぐちゃぐちゃなのすごくおもしろいのよ」 79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 22:17:12.32 ID:/Vtfdyzv0 まさか、と俺は思った。 妹の顔は子供らしくない嫌な笑い方で歪んでいた。 俺は妹を押しのけ、隣の部屋を見た。 妹の部屋は、切り裂かれたぬいぐるみと本でごちゃごちゃになっていた。 キョン「お前・・・!」 妹「たのしいのおもしろいのなんでもきれちゃうからとってもとってもとってもとってもとってもとってもとってもとってもとっても」 怖くなった俺は、笑う妹をそのままに家から走り出た。 もう俺はどこへ行ったらいいか分からなくなっていた。 静かな夜の街を、行き先も考えず走っていた。 キョン「はぁ・・・はぁ・・・畜生・・・」 84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 22:20:49.55 ID:/Vtfdyzv0 走り疲れて立ち止まり、パニック状態の頭を少し落ち着かせた。 キョン「家の中にもウイルスが・・・一体どこから入ってきたんだ・・・?」 キョン「一般家庭にも侵入してくるくらいじゃあ・・・もうこの街に安全な所なんて無いんじゃないのか・・・?」 いやしかし、俺はすぐその考え方を頭の中で否定した。 いつだって非日常な出来事は、俺の身の周りしか起こらなかった。 つまり、これを仕組んでる奴らの標的は俺なのだ。 俺の行く先々にウイルスを撒いて、何故か知らんが俺を窮地に追い込んでいるんだ。 俺は思わず身震いした。 キョン「糞・・・どうしたら」 88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 22:24:17.06 ID:/Vtfdyzv0 どこか匿ってくれそうな所はないか? 長門のマンションは論外だ。普段だったら一番安全で頼もしい場所なのに。 朝比奈さんの家はどこにあるか知らないし、夜に上がらせてもらうなんてそれはそれで気が引ける気がする。 古泉は会ってくれもしない。ハルヒは・・・ プルルルルルルルル キョン「!!」ビクッ キョン「朝比奈さんから・・・?」 キョン「もしもし?」ピッ みくる「キョン君?今どこにいるの?」 91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 22:28:22.00 ID:/Vtfdyzv0 キョン「今は・・・えーっと・・・駅の南口に近い所です」 みくる「・・・今から言う場所に来てくれませんか?」 キョン「いいですけど・・・それって大丈夫なんですか?」 みくる「ふえ!?」 キョン「古泉によるとなんだかウイルスが蔓延してるみたいで・・・俺にも感染の疑いがあるみたいですよ」 みくる「・・・・・・」 キョン「・・・」 みくる「私はそれでも構いませんっ!!お願いです来て下さいっ!」 ああ、なんて優しい人なんだ。 俺は心底感動した。 97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 22:31:46.64 ID:/Vtfdyzv0 朝比奈さんの指示した場所は、七夕の時や長門との待ち合わせに使った公園だった。 白い街灯の光が辺りを照らし、ひっそりとしていた。 キョン「(朝比奈さんまだかな・・・)」 しばらく待つと、遠くから人影がこちらに歩いてくるのが見えた。 それを朝比奈さんと確認すると、俺は手を振って挨拶した。 キョン「こんばんは、朝比奈さん」 みくる「こんばんはキョン君・・・」 朝比奈さんはどこか元気が無いように見えた。 単にこの出来事を怖がっているだけかもしれないが。 キョン「一体どうしたんですか?何か分かった事でもあるんですか?」 みくる「・・・」 102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 22:34:07.59 ID:/Vtfdyzv0 朝比奈さんは黙って答えない。 そして俺から一歩退いて、言った。 みくる「キョン君・・・ごめんなさい」 朝比奈さんがそう言うのとほぼ同時に、俺は背後から近づいてきていた何者かに羽交い締めにされ、 茂みから飛び出してきた黒ずくめの男によって脚と腕を拘束された。 キョン「うわっ!!?」 一体何が起きているのか分からない。完全に動きを封じられた俺は地面に転がった。 混乱の中見上げると、古泉が俺を見下ろしていた。 古泉「森さん、新川さん、お疲れ様です」 キョン「おい・・・これは一体どういう事だ」 109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 22:37:30.25 ID:/Vtfdyzv0 古泉「大変残念な事ですが・・・我々はこのような処置を取らざるを得ません」 キョン「訳が分からん!説明しろっ!」 古泉「僕は貴方に電話で、ウイルスの可能性を話しました。貴方はそれを突飛な説だとお思いになったでしょう?」 キョン「・・・」 古泉「実は、ウイルス説を裏付けるものを僕は知っていました。だからこそ確信を持てたのです」 キョン「ウイルスが本当かどうかって事が、俺をこんな目に会わせる事とどう関係があるんだ」 古泉「まあ焦らずに・・・順序立てて説明します」 キョン「・・・」 111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 22:41:55.83 ID:/Vtfdyzv0 古泉「まず、長門さんがおかしくなってしまった事が今回一連の出来事の始まりでした。     そして朝倉さんと喜緑さん、それに加えて誰か他におかしくなった人が多数いるのでしょう?」 キョン「・・・」 古泉「彼女らに共通しているのは、貴方との長時間に及ぶコンタクトです」 古泉「長門さんは、貴方と三十分近く同じ部屋でランチを食べていた・・・     朝倉さんと喜緑さんは、貴方や長門さんと同じ部屋に二時間以上いた・・・」 言っている事がさっぱり理解できない。 一体はこいつは何が言いたいんだ? みくる「・・・」 古泉「今日の放課後、僕が貴方と部室で話していたのは十分弱程でした。     それが感染に至る時間に及ばなかったのは最大の幸運だったと言えるでしょう」 キョン「おい古泉、何言ってるのか全然わからんのだが」 古泉「・・・・・・はっきり申し上げましょうか。貴方が病源なんですよ」 114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 22:46:14.09 ID:/Vtfdyzv0 キョン「・・・は?」 古泉「今述べた仮説なら、全てつじつまがあってしまうのです」 みくる「・・・」 古泉「貴方がウイルスを振り撒く震源地なんですよ」 キョン「ちょ、ちょっと待ってくれ!意味が分からん!んじゃ俺は今、ウイルスに感染してるってことか!?」 古泉「・・・」 キョン「俺は感染なんかしてない!俺は狂ってないぞ!至って普通だ!いつもの俺だ!」 古泉「・・・」 キョン「俺は狂っているのか!?むしろ狂ってるのはお前らの方じゃないのか!?」 古泉「・・・」 キョン「なんか答えてくれよ!!古泉っ!!朝比奈さんっ!!」 古泉「・・・」 みくる「・・・」 118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 22:49:37.88 ID:/Vtfdyzv0 古泉「・・・貴方は、自分が狂っていないと、自覚しているのですか・・・?」 キョン「当たり前だ!」 古泉「・・・」 キョン「・・・」 古泉「・・・御自分で気付いていないんですか?」 キョン「・・・!?」 古泉「貴方の今浮かべている顔が、おかしくなった長門さんと同じように、口は歪み、焦点の合わない血走った眼をしている事に」 124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 22:52:31.09 ID:/Vtfdyzv0 キョン「え・・・!?」 みくる「・・・・・・」 古泉「放課後に貴方と部室で会った時、内心ギョッとしましたよ。     いつもの貴方とは思えない、狂気じみた顔を浮かべてましたからね」 そんな事あり得ない。 俺は狂ってなんかない。 おれはくるってないおれはくるってないおれはくるってないおれはくるってないおれはくるってないおれはくるってない おれはくるってないおれはくるってないおれはくるってないおれはくるってないおれはくるってないおれはくるってない おれはくるってないおれはくるってないおれはくるってないおれはくるってないおれはくるってないおれはくるってない おれはくるってないおれはくるってないおれはくるってないおれはくるってないおれはくるってないおれはくるってない おれはくるってないおれはくるってないおれはくるってないおれはくるってないおれはくるってないおれはくるってない おれはくるってないおれはくるってないおれはくるってないおれはくるってないおれはくるってないおれはくるってない 132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 22:56:36.32 ID:/Vtfdyzv0 森「・・・古泉、そろそろ」 古泉「そうですね。そろそろ終わりにしましょう。新川さん、後はよろしくお願いします」 新川「了解。護送先は予定通り第3支部地下」 古泉「朝比奈さん、少し御同行お願いします。短いコンタクトでしたが、念の為に殺菌消毒をうけてもらいますから」 みくる「・・・はい」 古泉「・・・自分は狂っていないと信じて疑わない人が、大抵一番狂っているものですよ」 ・・・・・・・・・ ・・・・・・ ・・・ ・ 138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 23:00:38.44 ID:/Vtfdyzv0     ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 古泉「なんでまた喧嘩なんてしたんですか?」 ハルヒ「だってキョンったら酷いのよ!?あたしの気持ちなんてちっとも分かってないんだから!」 古泉「・・・」 ハルヒ「何かにつけて、キョンがあたしの事『まあお前は変人だからな』とか言うのよ?      会話の中で何回も言われたから、すごく腹が立ってきたの」 ハルヒ「あいつは私が変人扱いされてきた辛さを全然分かってないからそれをネタにイジれるのよ」 古泉「それは酷い話です」 ハルヒ「でしょ!?あたしが変人・除け者扱いされてきた辛さを・・・あいつには分かってほしかったのに」 古泉「・・・」 ハルヒ「あいつもあたしと同じ境遇を味わえばいいって思った。みんなから頭がおかしい人扱いされればいいんだって思ったわ」 古泉「なるほど」 144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/26(日) 23:03:20.76 ID:/Vtfdyzv0 ハルヒ「ところでそのバカキョンはいつまで学校さぼるつもりかしら!?」 古泉「・・・」 涼宮さん。彼はもう学校に来ませんよ。 貴女の彼は、今頃くらーい部屋の中で独りぼっちです。 貴女が望んだ事なんですよ? まぁ今となってはきっかけにすぎませんでしたけどね。 さて、これから世界はどんなカタルシスを迎えていくのか、非常に楽しみです。 古泉「うふ、うふふふふふ」 <終わり>