森「古泉キリキリ働きなさい」 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/05(日) 16:58:40.20 ID:Z5zTjAZy0 古泉「はい?」 森「バイトよバイト」 古泉「……え、でもケータイ鳴ってませんけど」 森「ああ、いつもの閉鎖空間と違うのよ。今回は」 古泉「……いや、でも僕これから虫取りに」 森「はい、車乗った乗った」 古泉「え、ちょ、待ってくださいって」 森「さて、いざ行かん桃色空間へ!」 古泉「え、いいの? 桃色空間とか言っちゃっていいの!?」 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/05(日) 17:01:12.38 ID:Z5zTjAZy0 http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1246728451/ に投下して途中で死んだやつの焼き直し 皆さんSSは酒の入ってないときに書きましょう 森さんとのお約束だぞ 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/05(日) 17:03:12.88 ID:Z5zTjAZy0 森「んで桃色閉鎖空間に着いたんだけど」 古泉「ちょっと待ってください いや、もっと待ってください」 森「何よ古泉」 古泉「えっと、僕らまだ閉鎖空間侵入してませんし、そもそも桃色って桃色は桃色だけどここ」 森「桃色で閉鎖された空間、ウソじゃないでよ」 古泉「そりゃ確かにここは閉鎖されてなきゃ困りますけど」 森「じゃさっさと付いてきなさい」 古泉「何で僕らがラブホテルに入っていかなきゃならないんですか!? 仕事は!?」 森「これが仕事だってば」 古泉「は?」 森「バイトよバイト」 古泉「何の?」 森「私たちの個人的な」 古泉「えっ」 森「っていうか、むしろ私の?」 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/05(日) 17:06:37.55 ID:Z5zTjAZy0 古泉「何でよりによってラブホテルなんですか」 森「時給いいのよここ」 古泉「僕16なんですけど……」 森「あんた老けてるから大丈夫よ」 古泉(ひでぇ……) 森「私はフロント、あんたは部屋の後片付け」 古泉「すっごい格差ありませんか?」 森「普段と違ってヘタ打ったら死ぬわけじゃないんだから、四の五の言わんと来なさい」 古泉(貴重な夏休みの残り時間が史上最低の理由で潰れてしまう……) ズルズル 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/05(日) 17:11:33.21 ID:Z5zTjAZy0 古泉「……なんやかんやで着替えさせられてしまった」 森「じゃ、昼休憩までは開いた部屋から片付けてきなさい」 古泉(昼休憩まで……って今早朝でんがな) 森「一部屋に15分以上掛けちゃダメだから」 古泉「きつくないですか、それ……」 森「そんな立派な部屋じゃないんだから、ちゃっちゃと終わるわよ。じゃ、まず304号室行って来て」 古泉「ちくしょうわかりましたちくしょう」 古泉「……これは確かに、桃色閉鎖空間って感じですね……」 古泉「まずシーツを……目立った汚れはないな、直すだけでいいや」 古泉「ベッドメイクよし、あとは洗面所……」 古泉「布巾で拭いて、道具を元の場所に戻す」 古泉「そんでお風呂場……」 古泉「湯船のお湯ぐらい抜いてってくださいよ……」 古泉「適当に拭いとけばいいですよね……」 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/05(日) 17:19:49.08 ID:Z5zTjAZy0 古泉「ゴミ箱回収、あと……化粧台の中の避妊具を補給……」 古泉「何やってんでしょう僕、せっかくの日曜に……」 古泉「今頃セミ取りしてるはずが、何悲しゅうてこんなゴム製の虫取り網を……」 古泉「って、やばい、時間オーバーしちゃうよ……ああもう、こんなもんでいいや! うん!」 森「ちょっと、お客さん、撮影とかダメだからねうちは」 古泉「終わりましたぁ」 森「13分か……まあまずまずってとこね。次、202号室」 古泉「はい……」 森「っと、もう30分か……」 ピポパ 森「……もしもしフロントです、ご利用時間オーバーしてますが……」 古泉(楽そうだなあ、フロント……) 森「延長いたしますか? かしこまりました」 古泉(カラオケかよ) 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/05(日) 17:25:49.37 ID:Z5zTjAZy0 古泉「うわ……シーツびっしょびしょ」 古泉「これって……いやいや、考えるな」 古泉「シーツを取り替えて……ひっで……これシーツ換えたってしょうがないんじゃ……」 古泉「……使い終わったゴムぐらい捨ててけよ……」 古泉「つーか四回って……」 古泉「……よし、お風呂場は……うわ、こっちもひどい」 古泉「はあ……やってらんない」 古泉「? 忘れ物かな、これ」 古泉「…………はぁ!?」 森「お客さん、うち男同士はちょっと―――」 古泉「森さん!」 森「うわ、びっくりした。なによ古泉」 古泉「あの、とんでもないもん拾ったんですけど……」 森「とんでもないもん? 何、人の小指の骨でも転がってたの?」 古泉「それもとんでもないけど! そうじゃなくてこれ、学生証……」 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/05(日) 17:29:25.90 ID:Z5zTjAZy0 森「学生証?」 森「…………たしかにこらとんでもないわね」 古泉「どっ、どうしよう森さん!?」 森「よし、落ち着きなさい古泉。まず息をすって、吐いて」 古泉「そんな事してる場合じゃないよ!?」 森「いや、呼吸やめたら死ぬから。あと口調戻して。ここは自宅じゃないのよ」 古泉「……失礼しました」 森「これ、どこで拾ったのよ?」 古泉「えーっと、207号室……でしたか」 森「207……昨日の晩から長時間で入ってて、さっきチェックアウトしてるわね」 古泉「あああああああやばいってやばいですって」 森「口調だけ戻してもちっとも落ち着いてないわよ」 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/05(日) 17:32:41.62 ID:Z5zTjAZy0 森「まず考えるのよ古泉。学生証がラブホの床に落ちる状況っていうのは、どういう条件下ならありうるものかしら?」 古泉「持ち主がラブホに入ること……ですよね」 森「ラブホには一人じゃ入らない」 古泉「えーっと……?」 森「……要するに。誰と入ったかによっては、あたしたちがあわてる必要はないわけで」 古泉「あっ……ちょ、ちょっと、確認してみます!」 森「……まあいいけど」 prrrrrr 古泉「あ、もしもし? 僕です、古泉です!」 古泉「え? いや、落ち着いてなんかいられません! いいですか、質問しますから、答えてください!」 古泉「あなたは昨日、ラブホに入りましたか?」 森(他に訊きようあるでしょうが……) 古泉「えっ? 冗談とかじゃないんですよ、大事なことなんです! あ、ちょっと!」 古泉「……死ねって言われて切られました」 森「そらそーよ」 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/05(日) 17:36:29.50 ID:Z5zTjAZy0 古泉「って、よく考えたら、たとえ相手が彼だったって問題は問題ですよ!」 森「いや、そらそうでしょうけど……でも、他の奴よりマシじゃないの?」 古泉「それは……まあ」 森「何、あんたまさか気になるってるの? こいつのこと」 古泉「そういうわけでもないですけど」 森「もう、これ直接返して、聴いちゃえばいいんじゃないの? 明日またなんか集まりあるんでしょ?」 古泉「今日だってあったんですよ、虫取り大会が」 森「なんで行ってないのよ、あんた」 古泉「森さんがバイトだからって無理矢理連れてきたんじゃないですか」 森「そうだっけ」 古泉「そうですよ!」 森「まあとにかくさ。相手が相手なんだから、妙な気を使うより、直接訊いちゃえばいいじゃない」 古泉「……僕がですか?」 森「当たり前でしょ。あたしはあんたよりもっと縁遠いんだから」 古泉「……」 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/05(日) 17:41:10.69 ID:Z5zTjAZy0 ――― 古泉「マジで翌日んなっちゃったよ……」 古泉「僕がこれを返すのか……彼女に」 古泉「嫌だなあ……」 ハルヒ「……古泉君?」 古泉「わ、お、おはようございます、涼宮さん」 ハルヒ「どないしたの、古泉君? なんか調子悪いん?」 古泉「いえ、そういうわけじゃ……」 ハルヒ「ウソやん、顔真っ白やで。疲れとるん? 昨日、急にバイト入ったんやって?」 古泉「ええ、まあ、疲れてるといえば、それなりに疲れてはいるんですが」 古泉(一日中他人の使ったコンドーム片付けてたら、疲れもするって……) ハルヒ「なんや悪いなあ、2日続けてアルバイトさせるっちゅうんも。あ、今日の予定は聞いた?」 古泉「ええ、近所のスーパーでアルバイトでしたよね」 ハルヒ「そ。まあ、立っとったらええような仕事やから。でも、あんましんどかったら言うてな、休ましたるから。怠けすぎはあかんけどね」 古泉「どうもありがとうございます」 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/05(日) 17:43:44.06 ID:Z5zTjAZy0 ――― 古泉(確かに立ってればいい仕事だったけど……この着ぐるみはいくらなんでも) キョン「終わった……死ぬかと思ったわ」 みくる「Tシャツが絞れそうです……」 長門「……」フー 古泉(長門さんでさえ、さすがに暑そうにしてる……) ハルヒ「みんなお疲れー! 店長のおっちゃんも感謝しとったわ」 キョン「おっちゃんの感謝はええから、バイト代をよこさんかい」 ハルヒ「あれ、言わんかったっけ? バイト代は、このカエルちゃん。現物払いやって」 みくる「へ? ……こ、これですか?」 ハルヒ「あたし、前からこれええなーって思っとったんよ。おっちゃんと交渉したら、みくるちゃんの可愛さに免じてくれるって!」 長門「……」 ハルヒ「記念に部室に飾っとくから、みくるちゃん、いつでも着たいときに着てええからね!」 キョン「……」ぱた 古泉(ひでえ……) 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/05(日) 17:47:46.08 ID:Z5zTjAZy0 森「……それで? 学生証はどうしたのよ」 古泉「え」 森「まさかまだ返してないの?」 古泉「だって……言い出しにくくて」 森「……はあ。あのね、古泉。まさかラブホに誘えって言ってるんじゃないのよ?」 古泉「分かってますよ! っていうか、そっちのほうが出来ません」 森「ウブなネンネがラブレターを渡し損ねてんじゃないんだから、さっさと返してきなさいよ」 古泉「森さんはいいですよ……そとからぐちぐち言うだけなんですから」 森「女々しいわね。いいわよ、じゃあ私が返してきてあげましょうか。あんたみたいに面倒くさくなく、今からでも直接家に……」 古泉「だあ、もう、やりますって! やりますから、明日! 明日のほうが都合がいいんで見送っただけです!」 森「明日、ね……で、あんた、その明日の用意は済んだの?」 古泉「用意? ……あっ、そうだ、天体望遠鏡! あれ、どこにしまったんだろ……」 森「おとなしく機関の金で買えばいいのに、何でわざわざふるいの引っ張り出すのよ?」 古泉「だって、なんていうか……僕で間に合うことは間に合わせたいんですよ、SOS団でのことは」 森「ふうん?」 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/05(日) 17:50:18.22 ID:Z5zTjAZy0 ――― キョン「で、これも機関で用意したん?」ボソボソ 古泉「いえ、これは僕の自前です。少年時代の趣味の賜物ですよ……見えました、火星です」 ハルヒ「これ、火星? ふーん……よく見えん、地表に住居はなさそうやね。したら、いるとしたら地底か……」 キョン「何がや」 ハルヒ「火星人に決まってるやん。きっとつつましくて物静かな連中なんやろね、地底でひっそり暮らしてるなんて」 キョン「地上じゃ暮らせへんだけちゃうん……火星の温度って、どんなもんやったっけ?」 古泉「平均が-40℃前後程度だったかと。もっとも高い時で、15℃くらいになるそうですよ」 ハルヒ「ふーん、ちょい寒いぐらいやね。地球より暑くさえなければ、もうちょい暖かくてええのに。火星人だけやなくて、火星そのものも控えめな性分なんかな」 キョン「あかん、つっこみ切れん」 長門「……」 みくる「くー……」 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/05(日) 17:52:05.69 ID:Z5zTjAZy0 ――― ハルヒ「すー……」 みくる「zzz……」 キョン「火星、木星、オレ、美声……アホちゃうか……むにゃ」 古泉(なんでまた都合よく、三人とも寝ちゃうかな……もう今しかないじゃないか) 古泉「あの、長門さん」 長門「何?」 古泉「あの……ですね」 長門「……」 古泉「何と言いますか、ちょっとした運命の手違いで。貴方にお返ししなければならないものがありまして」 長門「……」 古泉(考えてもみたら。夏休みのど真ん中で学生証を持ち歩いてるのなんて、年がら年中制服着てる、この人しかいないんだよな) 古泉「これ……なんですけど」 長門「……」 長門「……どこで?」 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/05(日) 17:53:55.79 ID:Z5zTjAZy0 古泉「一昨日、バイト先で……」 古泉(……って、これじゃ僕がバイトと偽って、ラブホテルに行ってたみたいじゃないか?) 古泉「あの、違うんですよ。僕はちょっと、アルバイトで……ええ、あの、その……隣町の、ホテルの部屋で……」 長門「……」 古泉「……あの、僕には関係のないことだとは、分かっているんですが……」 古泉「どうしてあなたが、あんなところに……?」 長門「…………」 古泉「……」 古泉(三点リーダがあまりにも気まずい……) 長門「……これもまた、エラー」 古泉「はい?」 長門「私が学生証を紛失していたこと。本来ならば、ありえないこと」 古泉「……え、ええ。たしかに、長門さんは落し物をされるタイプではありませんよね」 長門「私があの施設を利用した回数は、これまでに3598回。……こんな例は、初めて」 古泉「は?」 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/05(日) 17:56:44.36 ID:Z5zTjAZy0 古泉(今、なんて言った? 3598回? 何が?) 古泉「あの、仰ってる意味が分からないんですが……」 長門「……そのままの意味」 古泉「あのラ……ホテルを、そんなに何度も利用してらしたんですか?」 古泉(いや、バカな。3500って……毎日通ってたって10年近く掛かるじゃないか。たしか、長門さんが生まれたのはもっと最近だったはず……) 長門「……正確に、現時系列上の史実のみに限るなら、私があの部屋を訪れたんは、一度きり」 古泉(!) 古泉「……どういうことです? 時系列……時間が繰り返している、そう言うのですか?」 長門「……8月17日から8月31日までの14日間。今、私たちは、本来の時の流れから切り離された時空に居る」 長門「我々がその14日間を過ごした回数は……今回を含めて、丁度10000回」 長門「この事実を知ったんは……過去10000回の事例を通して、貴方が初めて」 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/05(日) 17:58:26.86 ID:Z5zTjAZy0 ――― 古泉「つまり……涼宮さんが、何らかの不満を残したまま夏休みを終えることを拒んだがために、世界は延々と終わらないループを繰り返している、そう仰るんですね?」 長門「そう。この事実にたどり着く可能性としては……朝比奈みくるが、この期間内に、時空遡行を試みた場合に発覚する可能性が最も高いと考えてた」 古泉「……なるほど。この世界はたった今、僕らが17日以前に存在していた、大いなる時の流れとは切り離された場所にある」 古泉「この世界に、9月1日から先の歴史は存在しない……それゆえに、朝比奈さんが未来へ帰ることも出来ない。そういうことですね?」 長門「そう」 古泉「……僕らは31日を終えると同時に、世界そのものと共に、一切の記憶を削ぎ取られ、17日の朝へと廻り返ってしまう」 古泉「しかし、その大いなるリセットを免れ、ただ一人、記憶を引き継ぎ続けていた人物が居る……それが、長門さん。貴方なんですね?」 長門「そう」 古泉(…・・・14日間を、10000回……?) 古泉(えらく簡単な計算だ。140000日。時間にすると……うん、これ無理) 長門「……おそらく、ループを繰り返すうちに、私と言う個体にエラーが蓄積された」 長門「その結果……私はあの場所を訪れるようになった」 長門「一度のループにつき、一度。河原での花火を終えた後に」 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/05(日) 18:00:17.27 ID:Z5zTjAZy0 古泉「……一昨昨日の、夜ですか」 長門「そう」 古泉(よく覚えてる。長門さんはあの夜、僕と彼が自転車で送ろうかと提案したのを拒否した) 古泉(彼女は向かったのか……あの後、夜の繁華街へと) 古泉(其の相手が誰だったか……なんてのは、考えたくもない) 古泉(あの日、彼女は浴衣を買うのに付いて来なかった。用事があるから、遅れるという理由で) 古泉「……あの日の午前中、僕らと共に居なかったのは?」 長門「……自宅に居た。用事があるいうんは……嘘」 古泉「何のために」 長門「……9999回目のシークエンスに、私と共にあの施設を利用した人が、私が浴衣でなく、制服を着用しとることを望んだから」 古泉「……はは」 古泉(そんな、バカな) 古泉(そんな馬鹿げたことが原因で、彼女は学生証を落として……僕がそれを見つけ、この事実に気づいたって言うのか?) 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/05(日) 18:06:29.60 ID:Z5zTjAZy0 古泉「僕らは、どうすればいいのでしょう? ……まさか、僕がそのループに気づいたことで、この世界が元の時間軸へ還る、などということは」 長門「可能性は、ゼロやない。でも、低い。私が学生証を落としたこと、貴方がそれを見つけたこと、私が貴方にこの現象を話した事」 長門「どれもこれまでのシークエンスでは発生しなかったこと。それが引き金となり、ループを脱却する可能性はゼロやない」 長門「しかし、この現象は涼宮ハルヒの意識によって生じている」 長門「よって、涼宮ハルヒが認識しない事象が、ループの終焉の引き金となる可能性は低い」 古泉(……つまり、世界はまた廻るのか) 古泉(僕がこうして事実へ行き着いたことも……すべては発生しなかった歴史とされて、僕はまた、時が来たら、17日の朝へと帰る) 古泉(そしてまた、終わらない二週間は続いて行く……あと何度? ……わからない。もしかしたら、永遠に……) 古泉(そして、彼女はその度、誰かとあの場所を訪れ……きっと、体を重ねる。汚される。あと何度? 永遠に……?) 古泉「……このことを、彼や朝比奈さんに打ち明けることは」 長門「私は推奨も拒否もしない。……過去にそういった事例がない為、参照することが出来ない」 古泉「そう……ですか」 古泉(全ては僕次第。この時間……彼女曰く、10000回目に中るこの時間が、ループの脱却に繋がり得る事だとして) 古泉(僕は何をすればいい? 出来ることといえば、誰かにこのことを打ち明けること……あるいは) 古泉(涼宮ハルヒ……彼女の心を、このループに繋ぎとめている何かを解き明かすこと……) 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/05(日) 18:09:17.87 ID:Z5zTjAZy0 ――― 森「おかえり」 古泉「……まだ、起きてらっしゃったんですね」 森「最近閉鎖空間もないからね。神様が夏休みに浮かれてて、こっちも夏休み気分よ」 古泉「浮かれて……はは、そうですね。確かに、涼宮さんはこのところ上機嫌のようです」 森「……なんかあったって顔してるわね」 古泉「そうですか? 特にこれといったイベントはありませんでしたが。僕の少年時代の趣味が役立って、何よりと言う気分です」 森「ふうん」 古泉(また嘘ついてるな、僕) 古泉(森さんにも、彼らにも嘘ばっかりついて……こりゃ、死んだときに地獄に落ちても文句言えないな) 古泉(死……か) 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/05(日) 18:11:43.84 ID:Z5zTjAZy0 森「あんたも飲む?」 古泉(!) 古泉「……どうしたんですか、今日は。せっかくですけど、遠慮しておきますよ。明日はバッティングセンターへ行くそうなんで、早めに……」 森「盗聴器」 古泉「!」 森「……私たちも、長門有希の動向には一目置いてるのよ。TFEIであるあの子が、あろうことか、ラブホで学生証を落としてくなんてミスを犯した」 森「そりゃ、調査の対象にもなるでしょ。……ああ、安心して。音声は、あんたの教育係である私が単独で聞いただけ。上層部は何も知らない」 古泉「……そう、ですか…………」 古泉(昔から、僕の嘘はすぐばれるんだ。……特に、この人には) 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/05(日) 18:16:13.09 ID:Z5zTjAZy0 ――― 古泉「……どうなさるおつもりですか?」 森「別に、どうもしないわよ」 古泉「上層部に通達は」 森「しないわ。したってどうしようもないでしょ」 古泉「……確かに」 森「このことをどうにかできるのは、上層部の頭のはげた連中なんかじゃない。あんたと、あんたの友達3人。あんたこそ、どうするつもり?」 古泉「……わかりません」 古泉(わからないんだ、本当に) 古泉(このことを彼らに打ち明けて、ループを終える手立てを探すのが最善の方法なのか……) 古泉(何もしなければ、世界はまためぐり、10000回に一度の希有なこの事象は泡のように消えてしまう……) 古泉(だけど……僕らに、何が出来るだろう?) 古泉(予想も出来ない神様の憂鬱を見つけ出し、世界を正しい道へ導く……) 古泉(僕らにそんなことが出来るだろうか?) 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/05(日) 18:19:12.11 ID:Z5zTjAZy0 ――― 森「あたしさ」 古泉「はい」 森「怖いよ」 古泉「……はい?」 森「……だってさ。31日を境に、あたしたちは記憶も何もかもを失って、過去に戻っちゃうんだろ?」 古泉(森さん……なんだろう? 彼女の声が震えてるような) 森「それってさ……死ぬのと同じじゃん」 古泉「!」 森「あたし……怖いよ、死ぬの。今生きてるあたしは、31日の夜に眠ったっきり、目が覚めないんだろ?」 森「……バカみたい。この何日か生きてたのが」 森「そんで……何も知らないバカなあたしが、9999回も、あの神様に、殺されて、るん、だってさ?」 森「そんなの……なくない?」 古泉「……」 森「ひっく……そんなのって、ひど、すぎない?」 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/05(日) 18:27:31.78 ID:Z5zTjAZy0 森「どうせ、この世界も、巻き戻るんだろ?」 古泉「森さん、それは……」 森「あたし、神様のために振り回されて、戦って……なんで? なんであたし、こんな目にあってんだろ?」 森「あたしだって、制服着て学校行って、友達と遊んでたとき、あったのに」 森「いつの間にか……こんなんなってて」 森「そんでも、いつか終わるだろって思ってがんばってたのに……これだよ?」 森「ひどいじゃん、って、今思ってることも、もう少ししたら忘れて……」 森「また同じことに気づくときがあったって、また忘れさせられて……」 森「なにこれ、あたし、どうなるの? どこいくの? どこもいけないじゃん?」 森「何が10000回だよ……勝手にやってろよ宇宙人って感じ」 森「ひぐ……何なんだよ……あたし、何のために、生まれてきたのよ……うっく……ぐす」 古泉「森さん……」 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/05(日) 18:32:58.65 ID:Z5zTjAZy0 古泉(初めて見たな、森さんが泣いてるの) 古泉(おかしくなって涙流してるのは、何度か見たことあるけど……) 古泉(こんな森さん……初めて見た) 森「……きっと無理なんでしょ」 森「あんたがループに気づいたって、そのループを抜け出せるわけない」 森「9999人もアンタがいたって見つけられなかったもんを、あんたが見っけられるわけないもん」 森「みんな死ぬんだ。……殺されんだ、神様に。31日……あと何日あんの? わかんないよ、もう……」 古泉(……そう) 古泉(涼宮さんの心の中で、一体何が引っかかってるのか……正直、見当も付かない) 古泉(彼女があの紙に書き出したすべてをこなす。それさえ叶えば、これ以上彼女を繋ぎとめることなんて……) 古泉(……あるとすれば。たった一つ、彼のこと……だけど) 古泉(彼女は彼と心を通わせることと、SOS団の存在を保たせること……一体どちらを望むのだろう?) 古泉(……分からない) 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/05(日) 18:38:40.87 ID:Z5zTjAZy0 ――― 古泉(……夜が明けた) 古泉(雨が降るのかな……空が、灰色の雲に包まれてる) 古泉(ああ、そうか……ここは閉鎖空間だったんだ) 古泉(この空間の源を斃さなければ、いずれ世界を飲み込んでしまう灰色の空間……) 古泉(そして、僕らはその源を、見つけることさえ出来ずにいる……) 古泉(ここは……閉鎖空間だったんだ) 森「古泉……いる?」 古泉「ええ、居ますよ」 古泉(……もう、ずっとこうしていようかな) 古泉(これは、何かの間違いだったんだ) 古泉(この世界が終わるまで……待ってようかな) 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/05(日) 18:43:22.07 ID:Z5zTjAZy0 ――― 古泉「これまでに、貴方がこれほど憤慨している様は見たことがありません。一体、何があったと言うのです?」 キョン「お前、いい加減にしとけよ」 古泉「……そう申されましても、思い当たる節がございません」 キョン「昨日はえらく盛り上がったぜ。隣町まで行って、安いカラオケ探してな。フリータイムで騒ぎまくった、妹までつれてってな」 古泉「妹さんの歌ですか。一度聴いて見たいですね」 キョン「どうして来ない?」 古泉「……主語を省かれてしまうと、いささか応対に困ります」 キョン「団活だよ」 古泉「……SOS団ですか」 キョン「他に何がある?」 古泉「はは。たしかに、"僕ら"にはSOS団以外にありませんね。神様の作った、鳥かごの中に居るわけですから」 キョン「……長門から聴いたよ」 古泉「そうですか」 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/05(日) 18:49:43.12 ID:Z5zTjAZy0 古泉「察するに、朝比奈さんの時間遡行に弊害が生じたことが原因でしょうか」 キョン「ああ。朝比奈さん、絶望してたよ。真っ先にお前に連絡したらしいが、携帯はうんともすんとも言わないってな」 古泉「携帯電話ですか? ……それはそうでしょうね。僕の手元に、携帯電話はもう存在しませんから」 キョン「……長門から聴いたよ。俺たちより先に、お前がこの無限ループに気づいたってな」 古泉「そうですか……それでは、彼女の浴衣のこともご存知なのですか?」 キョン「浴衣? ……何だ、そりゃ。あいつが浴衣を着てるとこなんか見たことないぜ」 古泉「……そうですか。彼女にも、他人に知られたくない秘密があったと言うことですか」 キョン「説明しろ」 古泉「なかなかアグレッシヴな事象ですよ? 知りたいですか? 長門さんに少なからず好意を持っている貴方には、ショッキングな話だと思います」 キョン「……オレにケンカを売ってるのか?」 古泉「それも悪くありませんね。貴方をどれだけ憤慨させようが、絶望させようが、僕らはどうせ、31日に死ぬのですから」 キョン「死ぬ……?」 古泉「そのようなものでしょう? 僕らは生まれ変わるんですよ。14日間という短い人生を、永遠に廻り続けるんです」 キョン「てめえ」 古泉「事実ですよ」 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/05(日) 18:53:27.44 ID:Z5zTjAZy0 古泉「長門さんの体は汚れています」 キョン「……なんだ?」 古泉「彼女は……何回でしたかね。正確な回数は覚えていませんが。3000何回かだったと思います」 古泉「彼女の体は、汚されているのですよ。どこの誰とも知らない、下賎な輩によって」 キョン「……」 古泉「彼女のボキャブラリを借りるなら、エラーです。彼女は14日という閉ざされた世界を、10000回繰り返し体感している」 古泉「あなたのおかげで、彼女は人間的な欲望や、思考を得ました。それも、彼女に言わせればエラーと呼ぶべきものなのでしょうが」 古泉「もっとあけすけに言って差し上げましょうか?」 古泉「彼女は立派な色情魔となっているんですよ。9999という、途方もない時空を過ごす上でね」 キョン「テメエ、本気で言ってんのか」 古泉「本気ですよ。彼女の口から直接聴かされた事ですから。……あるいは、長門さんがたびたび体を重ねた相手と言うのが、貴方であるという可能性もあったのですが」 古泉「どうやら、違ったようですね。安心しました。もし、彼女の体を幾度となく汚しているのが、貴方だったとしたら……また、色々な意味合いが違ってきますからね」 キョン「……本当なのか?」 古泉「はは、僕は其の顔が見たかったんです。……本当ですよ。何なら、彼女に聴いてみたらいかがです? きっと、僕に話したのと同じように」 古泉「彼女はありのままを、貴方に語ってくれるでしょう」 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/05(日) 18:56:55.18 ID:Z5zTjAZy0 古泉「どうせですし、教えて差し上げましょうか? 彼女曰く、今回は10000回目のシークエンスに中るそうですが」 古泉「それまでの9999回のシークエンスでは、彼女はあの日、盆踊りの日。涼宮さんの浴衣選びに同行し、卸したての浴衣を纏っていたそうです」 キョン「……オレの記憶が定かなら、あいつはあの日、制服のままだったが」 古泉「ええ、そうです。それは10000回目で、初めての試みだったそうですよ」 古泉「何故彼女が、この度、制服を着たまま盆踊り大会に出向いたのか」 古泉「彼女の体を幾度となく汚した下賎な輩が、この時間の一つ前のループで、求めたそうなんです」 古泉「長門さんの体をむさぼるに当たって、彼女が浴衣ではなく、制服を着用していることをね」 キョン「っ……てめえ」 古泉「僕に憤りを感じますか? ねえ、キョン君―――はは、こんな呼び方をするのは初めてでしたかね」 古泉「全ては彼女、長門有希の意思なのですよ? 彼女は自分の意思で……どこぞの下賎な輩の要望に応えたんです」 古泉「彼女らしからぬ、幼稚な嘘などをついてね。……どう思いますか? あなたがご執心だった長門有希が、どこかの下劣な男の好みに合わせて、僕らに嘘をついたのですよ?」 キョン「うるせぇ、黙れ、喋るんじゃねえ」 古泉「ふざけないでください。朝っぱらからこの部屋を訪ねてきたのは、貴方のほうです。……貴方に拒否権などはありませんよ」 キョン「…………」 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/05(日) 19:06:33.56 ID:Z5zTjAZy0 古泉「ですが、僕は少し安心していますよ。僕だけでなく、貴方がたがこの終わらないループにたどり着いたということに」 キョン「どういうことだ」 古泉「どういうことか? 本気で言っています? 説明するまでもないでしょう?」 古泉「これで公平です。涼宮さんの周りに居る僕ら全員が、残された時間を、絶望に食われながら生きる」 キョン「……俺はお前みたいにはならねえよ」 古泉「どうでしょうね? 貴方に何かできることがあるでしょうか?」 古泉「運命の日、31日まで、あと何日ありましたっけ? もう僕にはよくわかりません」 古泉「探してみたらいいじゃないですか? 彼女の心をこの八月に繋ぎとめている柵を」 キョン「……お前は、どうするつもりだよ」 古泉「……僕はここに居ますよ。運命の日がくるまで、ずっとずっと、この場所にね」 古泉「傍に居なきゃならないんです。僕は、彼女と共に、世界の終わりを迎える。もう、決めたことなんです」 古泉「どうせ巻き戻される時ですよ、あなたもお好きなようにしたらどうです?」 古泉「そうだな、たとえば……長門さんに、貴方のことを覚えてもらうとかはどうです?」 古泉「せっかくだから、どこかに生きた証を残したくありませんか?」 古泉「彼女もきっと悦びますよ。ほかならぬ貴方になら――――」 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/05(日) 19:12:08.44 ID:Z5zTjAZy0 古泉「……痛いですよ」 キョン「どうせ其の痛みだって、忘れちまうんだろう」 古泉「はは、ループを受け入れましたか? そうです、たとえ貴方が僕を殺そうと、時間はめぐり、また17日の朝に還る」 古泉「ははは、所詮貴方も神様の奴隷だったんですね。いいですよ、お好きなようにしていただいて」 古泉「もう僕に恐れるものなどありませんから」 古泉「誰が死のうが、どうなろうが、世界は巻き戻るんですよ。31日、その日の終わりが来れば」 古泉「あなたは馬鹿なんですか? まだ分かっていないんですか? 僕たちは殺されるんですよ、涼宮ハルヒという神様の手によってね」 キョン「うるせえっつってんだよ!」 古泉「僕の言葉が聴きたくないなら、この場から消えて頂けませんか」 キョン「っ……」 古泉「……貴方みたいな愚図に構ってるヒマなんて、ないんですよ」 古泉「僕は決めたんです。彼女と共に、世界の終わりを待つんです。」 古泉「……僕には誰も救えないんですよ。彼女の傍に居て差し上げることくらいしか、僕には出来ないんです」 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/05(日) 19:27:54.63 ID:Z5zTjAZy0 キョン「……もう、手遅れなんだな」 古泉「……物分りがよろしいんですね」 キョン「こんなぶっ壊れちまった時間、巻き戻ってくれないと困るだろ」 古泉「ええ、そうです。記念すべき一回目の奇跡は、残念な結果に終わってしまいました」 古泉「でも、もしも……これから先も、この二週間が巡り続けるとして」 古泉「僕らが今回のようにループに気づき、それを脱する手段を見つけられたとして」 古泉「それでも、長門さんは汚れたままです」 古泉「彼女は其の事実を僕らに知らせないまま、心にしまいこんだまま、そ知らぬ顔をして、あの部室へとやってくるんでしょうね」 古泉「どう思います、そういうの?」 古泉「今更長門さんを救えた所で、遅いんですよ」 古泉「僕らは騙され続けるんです、永久にね」 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/05(日) 19:36:28.45 ID:Z5zTjAZy0 ――― 古泉(救う、かあ) 古泉(一番救われたがってるのは……長門さんなんだよな) 古泉(何なんだろう、僕って) 古泉(……誰も知らなければ、それはないのと同じ) 古泉(僕があんなもん見つけなけりゃ……) 古泉(……) 古泉(いっか、もう) 古泉(どうせ忘れるんだから) 古泉(次は……もうちょっと幸せに過ごせたらいいな) END 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/05(日) 20:05:17.45 ID:Z5zTjAZy0 やべえ俺が立てたスレんなかで一番短ぇ