長門「あなたはアフガニスタソに行ってきた」 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 03:43:58.20 ID:liNIMfJ2O キョン「な、なんでそんな事わかる」 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/06/06(土) 03:56:12.70 ID:liNIMfJ2O 日曜日の午前10時、俺はいつもの様に新聞を読みながらソファでくつろいでいた。  目の前では長門が大きなマホガニィ製の机の前で本を読んでいる。これもいつもの事だ。  それにしても高そうな机に本を広げて読んでいる長門って絵になるよな。  そこはかとなく気品が漂う気がするぜ。「机と本と長門」なんて言う絵画がオークションに出品されたら是非買い落とさせてもらいたい所だ。  って俺は一体何言ってるんだろうね。 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/06/06(土) 04:01:05.86 ID:liNIMfJ2O 二次創作では往々にしてあることだが、原作と設定やキャラが微妙に違っていたりすることも珍しくない。 このSSもその類であることを最初に言っておこう。 例えば電話帳で長門の住所を探すとそこにはこう載っている。「長門探偵事務所」と。 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/06/06(土) 04:03:06.74 ID:liNIMfJ2O  前置きが長くなってしまったな。俺はその長門探偵事務所のスタッフというわけだ。 事務所は日曜日しか開けてないが、これは俺達は普段はまっとうな高校生として生活しているから仕方あるまい。 むしろ貴重な日曜日を探偵業に費やすなんて奇特な奴だと友人一同には思われてる。 でも考えてみろよ。長門と一日中一緒に過ごせるんだぜ。 これに勝る喜びが他にあろうか、いやない。多分。 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/06/06(土) 04:05:49.71 ID:liNIMfJ2O とまあ、こんなことを考えながら新聞をだらだらと流し読みしていたところ、冒頭の言葉を長門にかけられた。 キョン「どうしてわかった?」 長門「秘密」 確かに家族旅行で先週アフガニスタソに行ったがどこへ行ったか長門には伝えなかった。 キョン「おかしいな。俺なんか手掛かり残したっけ?」 長門「それはない」 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/06/06(土) 04:11:39.17 ID:liNIMfJ2O よかった。どうやら気付かないうちにタリバンと書かれたTシャツを着ていたり、 言葉の節々にペルシャ語を挟んでいることはなさそうだ。 キョン「アッサラーム」 長門「何?」 キョン「いや、ヒントを……」 長門「必要ない」 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/06/06(土) 04:15:32.38 ID:liNIMfJ2O アッサラームがペルシャ語かという問題はさておき、長門がこのように秘密を見抜くという事は珍しくない。 なにせ長門は探偵なのだから。読心術なんて探偵の必須スキルってやつだ 長門が本を広げている机には探偵と書かれた下品な三角錐こそないが、長門はこの事務所の所長なのだ。 ちなみにスタッフは俺一人ではなく後一人いる。 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/06/06(土) 04:17:26.49 ID:liNIMfJ2O 朝倉「何言ってるのよ。キョン君はお給料貰ってないただのお手伝いでしょう。本当のスタッフは私だけです 」 そうか、俺は給料貰ってなかったのか……。衝撃的な事実を告げられても不思議と落ち込みはしなかった。 長門と過ごせる時間はプライスレスだから。 朝倉「一時間三千円ね」 キョン「金とるのかよ」 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/06/06(土) 04:24:11.89 ID:liNIMfJ2O まあ、朝倉は冗談好きなやつなんだよな。クラスじゃ真面目な委員長キャラをやってるけど、 本当の魅力はそのギャップにある所を知っているのは俺だけだ。 朝倉「何勝手な事言ってるのよ。そんな事ばかり言ってると事務所を出入り禁止にするわよ」 キョン「おいおい、そんな事言っていいのか?せっかくアフガニスタソ土産を買ってきたのに、お前はいらんと言うんだな」 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/06/06(土) 04:28:39.80 ID:liNIMfJ2O 朝倉「へぇぇ、キョン君にしては気が利くわね。それで、何をプレゼントしてくれるの?」  俺はおもむろに懐からそいつを取り出した。 キョン「どうだ、アリババの空飛ぶ絨毯だ。スルタンが所有していたという由緒ある品物だぞ」 朝倉「またいい加減な事ばかり言って。どこからそんなもの手に入れたのよ。 それに別に懐から取り出したんじゃなく普通にでっかい荷物しょって来たから驚いたわよ」 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/06/06(土) 04:35:19.20 ID:liNIMfJ2O キョン「叙述トリックってやつだ」 朝倉「違うでしょ」 長門「……」 たまには長門も喋らないとこの場にいないと思われるからな。 朝倉「喋ってないじゃない。さっきから黙々と本を読んでるわよ。それはそうと、 もちろん長門さんにもお土産買ってきたわよね?」 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/06/06(土) 04:45:06.07 ID:liNIMfJ2O キョン「そりゃもちろんだ 」 俺は今度こそ本当に懐からそれを取り出した。 キョン「どうだ。ラピスラズリの指輪だぞ。アフガンゲリラが戦乱のどさくさに紛れて美術館から盗み出したものを横取りしたやつだ」 朝倉「指輪って……なんかマジプレゼントじゃない。キョン君、あなた……」 キョン「そっ、そういう意味じゃないぞ。ただ長門の好みそうなのを統計的にだな……」 朝倉「長門さんがヒカリモノを好むとは思えないけど」 長門「……」 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/06/06(土) 04:52:29.05 ID:liNIMfJ2O ところどころ改行おかしいですね。 すいません。 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 04:55:11.41 ID:liNIMfJ2O よく見ると長門の頬に朱が注している。若干照れているようだ。 長年長門を観察してきた長門ウオッチャーだからこそわかる変化というやつだ。  うん、かわいいぞ長門。 朝倉「どこがよ。長門さんの体温、脈拍、血圧どれも変化無しよ。ああもう、すぐにお客さんが来るから早く絨毯を私の部屋へ持って行って」 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 04:59:15.39 ID:liNIMfJ2O  おおっと、依頼人(お客さん)が来るらしい。そそくさと絨毯を担いだところでインターフォンが鳴った。  この高級マンションの七階にある事務所は長門の実家兼となっており、 さらには長門とルームシェアしている朝倉の家でもある。名前は、なんて言ったっけ? 長門「ホワイトホースマンション」 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 05:03:49.63 ID:liNIMfJ2O  そうだった。白亜の高級マンションの一画に居を佇む二人の生活は慎ましやかにも潤いのある、、、 我々男性一同の想像を刺激して有り余ると言うものだ。  きっと下着の貸し借りとかしてるんだろうなぁ。  朝倉の下着を頑張って着けようとしている長門(長門「私にもこのブラジャーは着衣可能」 朝倉「むっ、無理よ長門さん。私は長門さんのブラは着けられないわ」長門「ムカッ」) を想像して涅槃の極致に到ろうとしていた所で、朝倉が依頼人を中へ通した。 依頼人「ウィーッス」 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 05:07:09.50 ID:liNIMfJ2O  第一声がウィーッスかよ。最近の依頼人も質が落ちたもんだぜ。先ずは自己紹介から入るのが筋だろうに。 キョン「なあ長門、この依頼断らないか?」 依頼人「おい」 キョン「嫌な依頼にはビシッと意思表示するのも探偵の努めだと思うぜ」 依頼人「ちょっ」 キョン「だいたい自分の氏名も明らかにしない奴なんて胡散臭いと思うぜ」 依頼人「だあああっ、俺にも喋らせろ。だいたい自己紹介も何もお前とは毎日顔を突き合わせてるじゃねえか、キョン」 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 05:15:41.54 ID:liNIMfJ2O キョン「それもそうだな、谷口」 谷口「あっさり認めやがったよこいつ……」 朝倉「ああもう、さっさと話しを進めて。それでなんなの谷口君。依頼って?」 谷口「うん、それなんだけどな、どうやら忘れちまったらしいんだ」 キョン&朝倉「はぁ?」 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 05:21:36.87 ID:liNIMfJ2O  何だこいつ、依頼を忘れちまったのにここに来たって言うのか?それともなんだ、  忘れられた依頼を探してほしいとなにやら哲学チックな命題をかけようというのか?それならよそでやってくれ。 谷口「だあああっ、違うよ。忘れ物をしたんだよ」 キョン「忘れ物?それなら取りに帰れよ」 谷口「いやどこに忘れちまったか覚えてなくて……」 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 05:24:27.85 ID:liNIMfJ2O キョン「なんだそりゃ、お前まさかとは思うが酔っ払ってでもいたのか」 谷口「うーん、それはないと思うが……」 朝倉「そもそも何を忘れたの?」 谷口「……実はそれすら思い出せない」 キョン「はぁ?するとなにか、お前はどこかで何かを無くしてそれを俺達に捜せと言うのか?」 谷口「ありていに言えばそうだ。」 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 05:27:38.13 ID:liNIMfJ2O 朝倉「それでどうして何か忘れ物をしてるなんて気付いたのよ?」 谷口「いや、今日朝起きたらだな、モヤモヤつーか損失感みたいなのが頭に渦めいていたんよ。あー俺何か忘れ物をしてるって」 キョン「それでうちに依頼したわけか。自分で探そうとは思わなかったのか?」 谷口「直感よ、直感。ここに聞けばきっと見つかるって言う天のお告げさ」 キョン「……」 朝倉「……」 長門「……」  長門、何だ?言いたい事あるんならはっきり言ってみろ。 長門「続く」 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 05:43:23.11 ID:liNIMfJ2O 長門「前回までのあらすじ。」  はまだ必要ないよな、長門。 キョン「それで、何か手掛かりでもあるのか?」 朝倉「そうねえ。先ずはなんでも覚えてることがあったら話してみなさいよ」 谷口「そうだな。覚えてることは昨日学校から帰って来てそれから……」 キョン「それから?」 谷口「それ以降の記憶がない」 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 05:50:51.27 ID:liNIMfJ2O  なんだそりゃ、随分と都合のいい記憶喪失だな。 長門「それであなたの依頼は何?」  うおっ、突然喋ったな。そろそろスイッチが入ったか? 谷口「と言うと?」 長門「あなたの望みは忘れ物を見つける事?それとも記憶を取り戻す事?」 谷口「そりゃもちろん両方だ」 長門「そう、それだったら」 朝倉「それだったら相談料五千円の他に追加料金が発生します」  ちゃっかりしてるな。 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 06:00:27.91 ID:liNIMfJ2O 谷口「がめついな……いいよ、忘れ物が見つかれば記憶も自然と戻るかも知れないしな」  ははん。魂胆が読めたぞ。記憶が蘇ったとしてもこいつが自己申告しなきゃそうだとはわからないからな。 こいつは最後までとぼけるに違いない。 キョン「それで。なーんも覚えていないじゃどうしょうもねえじゃないか」 長門「いや、手掛かりはある」 キョン&谷口「何?」 長門「それが、これ」 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 06:12:56.32 ID:liNIMfJ2O  と言って長門はそれまで本の栞代わりに使ってた短冊を俺達に見せた。 何やらメッセージが書いてある。 それにしても……短冊にメッセージとはタイムリーな事だぜ、と感慨に耽っていた俺を尻目に長門は話しを続ける。 長門「これがこの事件唯一の手掛かり」 朝倉「短冊にはなんて書いてあるの?」  俺はそのメッセージを読み上げた。 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 06:19:01.48 ID:liNIMfJ2O  ANIKI-92-547  そこには確かにそう書いてあった。 キョン「どういう意味だ?」 朝倉「何かの暗号かしら?」 谷口「あっ!」 キョン「ん?どうした谷口」 谷口「これ……俺の字だ」 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 06:56:53.30 ID:liNIMfJ2O キョン「谷口、お前これに見覚えあるのか?」 谷口「いや、まったくねぇ」 キョン「これに書かれてあるメッセージには何か心当たりは?」 谷口「それもまったくねぇ」  全然便りにならない奴だな。忘れ物よりも自分の将来を心配したほうがいいんじゃないか。  進路相談とかいつでも話し聞いてやるぞ。聞くだけだがな。 朝倉「そもそもどうしてこれを長門さんが持っていたの?それにどうしてこれが手掛かりだってわかるの?」 長門「……」  そこはだんまりかよ。探偵の特権ってやつだな。 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 07:12:16.70 ID:liNIMfJ2O  長門は相変わらず黙々と本を読み続けている。これできちんとこっちの話しを聞いているのだからたいしたものだ。  うん?そういえば栞代わりにしていた短冊を証拠物件Aとして提出したのだから長門はこれから読書を中断するときどうするんだろうな。  そうだ、その時は俺が長門に教えてやろう。愛を囁くように長門の耳元で呟くんだ。  その時は誤って俺の吐息が長門の耳にかかるかもしれない。長門がどんなリアクションをするのか見たいかもしれない。 長門「それはない」  あっさりと現実に引き戻される俺。まだまだ妄想力が足りないらしい。 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 07:20:55.41 ID:liNIMfJ2O 朝倉「先ずはこのメッセージについて考えてみたほうがいいんじゃないかしら」 谷口「うん、それはいいとして……朝倉、どうしてお前がここにいるんだ?」  おいおい、いまさらそれを突っ込むのかよ。朝倉は長門の秘書兼マネージャーで長門のバックアップは全て受け持っているからに決まってるだろう。 そんなのもわからないのか。このバカチンが。 谷口「無茶言うなっての」 朝倉「ゴホン。それでキョン君は何か考えがあるの?」 キョン「ああ、もちろんあるぞ」 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 07:31:24.18 ID:liNIMfJ2O キョン「さっき涅槃をさ迷っていて気がついたんだがな、これは本のページを示しているのさ」 朝倉「どういう事?」 キョン「おう。実は昨日の夜に洋画を観たんだよ、プレミアムステージ」 朝倉「なんだか長くなりそうね。前置きはいいから早く本題に入って」 キョン「まあ聞けよ」 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 07:40:04.44 ID:liNIMfJ2O キョン「昨日の洋画はほらあれだった、なんだ、そのトムクルーズが出てくるやつ。み、ミッション」 長門「いんぽーたんと」  おっ、そうくるか、ならおじさんも負けないぞ〜ウヒヒ。 キョン「インポーテン」 朝倉「ストップ。それはいいから早く進めなさい」イライラ 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 07:55:09.87 ID:liNIMfJ2O キョン「その映画でな、似たような暗号が出て来た」 朝倉「へえ、それってなんの暗号だったの?」 キョン「それはずばり聖書の一節を指していたのさ」  俺はずばりと言うところで谷口をビシッと指し示した。俺のカッコイイ所を長門は見てくれただろうか。 長門「……」  残念。文学少女は絵空事のイケメンに夢中だ。 朝倉「それで、どういう事?」 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 08:12:06.00 ID:liNIMfJ2O キョン「だから、このANIKI-92-547ってメッセージも聖書の一文を指してるんじゃないかな」 朝倉「……」  朝倉は呆然として俺を見つめている。まいったな、探偵というポジションはこうも人を虜にするものなのだろうか? どうやら探偵行為の異性に与える印象度について再考する必要がありそうだ。 谷口「どうしてそれが聖書に繋がるんだよ」  ……谷口、まさかお前に突っ込まれるとはな。 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 08:20:59.72 ID:liNIMfJ2O キョン「そ、それはもちろんインスピレーションだ。てっ天の声ってやつだ」 朝倉「それってただの思い付きじゃない。それにそういうのって長門さんの専売特許じゃない」  そうだった。長門は大宇宙におわしますという情報統合なんたらからの電波を受け取って、 それを元にせいり、ではなく推理をすると言ういわゆる電波推理の使い手だ。  第一級のメタ探偵として長門の名前は西日本探偵協会に広まっている。 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 08:28:42.82 ID:liNIMfJ2O  長門のせいりと聞いて心に何かピンと来る物があったらそれは恥ではない。むしろ誇らしい。  そうだ、長門にせいりがくるSSとか読みたいな。などと考えていると、 朝倉「それがもし聖書を示しているのだとして、ANIKIってどういう意味なのよ」  やっぱり崇高な思推の時間を邪魔するのはこういうやつなんだ。きっと朝倉はすでにあがっているに違いない。 朝倉:ジロリ  睨まれた。 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 08:40:42.89 ID:liNIMfJ2O キョン「それはだな。おそらくアニキ伝だとかアニ記、アニキ黙示録とかを指してるんじゃないかな」 長門「アニキによる福音書第92節547行」 キョン「そうそう、そういうの」 朝倉「そんなのあるわけないでしょ!それに仮にあったとして聖書なんて山ほどあるのよ。いったいどの聖書を言ってるのよ。」 キョン「それもそうだな。谷口、お前の家に聖書はあるか?」 谷口「い〜や、ねえ。家は浄土宗だ」 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 08:49:47.72 ID:liNIMfJ2O  よかったよ。お前の家が一家総出でお題目を唱えてますなんて言わなくて。  いや、別に特定の宗教を差別しているわけではないぞ。  というより俺は池田〇作の大ファンである。  部屋に氏のポスターを飾っているくらいだ。 朝倉「キョン君?」 キョン「いやあ、朝倉聞いてくれよ。俺の部屋の池田〇作ポスターを妹が落書きしまくって大変な事に……」 朝倉「誰もそんなの聞いてないわよ!」ムカムカ  ……さっきはあがったと言ってしまったが、重いの間違いかもしれない。 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 08:58:42.23 ID:liNIMfJ2O  どうでもいい事だが、池田〇作ポスターの真向かいには金〇日ポスターが鎮座ましましている。  池田氏と金氏が睨み合っている俺の部屋のなんと崇高な事か。きっと三千世界を滅ぼす神人でさえ 俺の部屋は跨いで行くに違いない。  どちらも妹の心ない落書きに汚されているとしても。 キョン「まあ、それはそうとして」 朝倉「また勝手に自己完結して……」 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 09:25:34.09 ID:liNIMfJ2O キョン「話しを戻すぞ。お前はアニ記だとかアニキ黙示録なんかがないと言ったがそれはどうだろうな」ニヤリ 朝倉「どういう意味よ」 キョン「朝倉、お前死海文書って知ってるか?」 朝倉「何よそれ。知ってる?長門さん」 長門「感知している。死海文書は聖書の原典」 朝倉「感知しているって、知っているって意味なのよね、きっと。それってどういう……」 キョン「つまりだ」 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 09:38:51.81 ID:liNIMfJ2O キョン「現在の聖書なんて時の聖職者達が自分達の都合の良いようにと言ったら語弊があるかもしれんが、 必要な物、必要でない物を取捨選択して作られた物なのさ」 キョン「その作業の中で捨てられたいくつかの項目がそれ以前のオリジナルには残っている。そのオリジナルの一つが」 長門「死海文書て言うわけ」  ナイスタイミングだぜ長門。やっぱり俺達はベストパートナーだよな。 谷口「じゃあするってえと何か?その死海文書にアニキ黙示なんとかがあるってわけか?」  ここが決め時だぜ。ビシッと決めろよキョン。俺は重々しく頷いた。 キョン「……そうだ」 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 09:41:03.30 ID:liNIMfJ2O 長門「情報の伝達に齟齬が生じた。死海文書て言うわけではなく死海文書と言うわけ。うっかり」 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 10:01:07.55 ID:liNIMfJ2O 朝倉「はあああああああああああああっ!?ばっっっっっっっかじゃないの!」  まったく俺の絶対推理賢者タイムを邪魔するとは野暮なやつめ。 キョン「何?証拠か。それだったらあの辺りで紛争が治まればそのうち掘り出されるさ」 朝倉「勝手にアフガンだろうがヨルダンだろうがイスラエルだろうが行って発掘してきなさいよ!」 長門「ゴホン」  ん?なんだ?長門が珍しく意思表示をしようとしている。 長門「今からこの部屋の選択時空間内の流体結合情報を凍結する」 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 10:21:24.02 ID:liNIMfJ2O  暗転、スポットライト。  ようやく私の時間が訪れる。  この時空間内を動けるのは私だけ。  別に全てが提示されたわけではない。  私だけが知りうる情報もある。  でも聞いて。  ほどけない問題などありはしないと  知ってても複雑な  段階が物語作って行く。 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 10:27:17.63 ID:liNIMfJ2O 長門「私にも〜」 キョン「……」 長門「ただ一つの〜」 朝倉「……」 長門「が〜んぼうが持てるなら〜」 谷口「……」 長門「きおくのなか〜……ハッ」  そうか歌いたかったのか長門よ。  歌詞はうろ覚えだ。気にするな。 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 10:36:29.67 ID:liNIMfJ2O 朝倉「ようやく解決編って所ね」 長門:コクン 長門「話しは昨日に遡る。先ずはこの短冊を手に入れることになった経過を説明する」 朝倉「最初からそれを言えばこんな回りくどいことに、モガッ」 キョン「まあまあ、せっかく長門が話す気になったんだ。黙って拝聴しようぜ」 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 10:39:35.48 ID:liNIMfJ2O 長門「昨日私は夕食の買い物に」 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 10:48:30.81 ID:liNIMfJ2O 長門「フライングだった」  ああ、ではあらためて。 長門「昨日私は夕食の買い物に生教まで来ていた」 朝倉「ちょっと生教って言ったら隣町じゃない」 長門「昨日は生教が卵1パック33円の特売日だった」 谷口「卵1パックの為に隣町までいったのかよ……ぱねえな長門さん」 キョン「だろう、自慢の娘だ」 長門「聞いて」 一同「はい」 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 11:01:33.01 ID:liNIMfJ2O 長門「その帰りに光陽園学院の女学生と思われる個体に遭遇した」  ふむふむ 長門「彼女は酷く恐れていて著しく正気を失っているようだった」 長門「その時に彼女から渡されたのがその短冊。彼女は変な男に無理矢理渡されたと言った」 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 11:15:45.48 ID:liNIMfJ2O キョン「何だかイマイチ要を得んが、つまりお前がその女の子を看病したんだよな」 長門「そう」 キョン「それでどうした?」 長門「彼女に問題は見受けられなかったので、私はその男を追跡することにした。彼女の進路をたどれは追跡は簡単だった」 長門「その男が」 谷口「……もしかして俺か?」 67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 11:22:01.52 ID:liNIMfJ2O 長門「そう」 谷口「そ、それで俺はどうしたんだ?」 長門「あなたはこの短冊や彼女に関する記憶を消したいと言っていた」  まさか、お前…… 谷口「それで!?」 長門「私はあなたの記憶を消去した」 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 11:32:50.74 ID:liNIMfJ2O 谷口「そうか、記憶を消去したんだな。それで?」  どうやって消したのか疑問に思わないのか。話しの展開上助かるぞ。 長門「話しはここまで。記憶を消去しておしまい」 キョン「おいおい、それじゃ何も説明してないも同然じゃないか。一体谷口はどんな記憶を消したかったんだ?」 長門「それは……」チラッ 谷口「?」 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 11:35:18.23 ID:liNIMfJ2O キョン「なんだ、谷口に気を使ってるのか。別にこんなやつ気にしなくていいぞ。真実を白日の元にさらすことこそが俺達の勤めじゃないか」 長門「なら話す」 谷口「おいおい、俺の了解は?」 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 11:39:22.42 ID:liNIMfJ2O 長門「それはその短冊に書かれたメッセージに関係している」 朝倉「一体何が書いてあるの?」 長門「それはあなたが言った解法に大きな間違いはない」  何?俺もしかして結構いいせんいってたのか? 71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 11:45:58.43 ID:liNIMfJ2O 長門「だがそれは聖書ではない。とあるインターネットの巨大掲示板」 朝倉「巨大掲示板?」 長門「そう。その掲示板でアニキで始まる板はただ一つ。その板のパート92番目のスレの547目に彼の忘れ物がある」 一同「そ、それは一体」 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 11:56:49.07 ID:liNIMfJ2O  長門はパソコンを起動するとそのスレを開いた。その間実に1500秒。いやはや技術の進歩は凄いね。  そして俺達はそれを見た。 74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 12:04:52.83 ID:liNIMfJ2O 一同「これは……」 キョン「いやはやなんとも」 朝倉「なんかいたたまれないわね」 谷口「やめてくれ」 長門「彼はとある二次元キャラを愛していた。それにもかかわらず、三次元の女性を愛してしまった」 長門「それゆえ彼は二次元キャラへの思いを封印し、それを三次元の想い人へ伝えようとした」 キョン「それがあの短冊って訳か」 長門「そう。しかし、その想いが遂げられなかった時、彼は全てを忘れたいと願った」 75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 12:08:42.45 ID:liNIMfJ2O キョン「それで、谷口はそのことをお前に話したのか?」 長門「いや、私の推理」  そうか。さすが電波探偵だ。実に電波的だ。 谷口「そうか……全て思い出したぜ………」 長門「……」  長門の横顔が寂しそうに見えるが、きっと気のせいだろう。 朝倉「話しは終わった?」 76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 12:20:42.76 ID:liNIMfJ2O 朝倉「もう12時よ。お昼にしましょう。冷蔵庫に卵がたくさんあったからオムライスを作ってみました」  昼からオムライスか。なかなかヘビーだな。 長門「いただきます」  流石だな。もう食べ始めてるよ。さて、俺もいただくか、やれやれだ。 谷口「おっ、おい、俺はどうなるんだよ」 キョン「ん?まだいたのかよ。さっさと相談料五千円置いて帰れ」 谷口「そんな……」  朝倉の昼食もここへ来る楽しみの一つである。今日も堪能させてもらおう。いただきます。 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/06(土) 12:21:42.16 ID:liNIMfJ2O とまあひとまず終わりです。お疲れ様でした。初SSでした。お粗末さまです。