世にも奇妙ならき☆すた〜初夏の特別編〜 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 00:13:10.56 ID:1YhjmK1c0 柊 かがみ    ダイエット 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 00:19:52.92 ID:1YhjmK1c0 私には悩みがある。 ありきたりで、シンプルな、いえばきっと世界の2割くらいは共感を得られそうな、そんな悩み。 他人に言うのは少し恥ずかしいけど…ええい、言うわ! 「痩せたい」 「声に出てるよかがみん」 うぇ!?ちょっ! 「頭の中とリアルのセリフがごっちゃになっちゃってるねーラノベの読みすぎかな?」 な、なんでラノベ読みすぎるとセリフがごっちゃになるのよ!! 「いやーほら、現在改めて放送中の某青春SFラノベの普通っぽい人とさー」 「いやいや、関係ないから」 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 00:25:05.82 ID:1YhjmK1c0 「それでーかがみん。どうやらプロジェクトDはうまくいってないみたいだねー」 なによそれ?D? 「DはダイエットのDだよかがみん」 あんたね…って。 あきれるあたしのまえで、その人、泉こなたは、なにやら袋をとりだした。 「あんたまたチョココロネ?よく飽きないわね」 こなたは毎日のように昼食にチョココロネを食べている。チョココロネだけ。 「ぜーんぜん。かがみんも食べる?」 「う…遠慮しとくわ」 チョコレートとか、いかにも糖分のかたまり… 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 00:30:15.73 ID:1YhjmK1c0 「とか思ってるんでしょ」 「ちょ、コラ!かってに人の心理を読むな!!」 「いや〜かがみん顔にでやすいから〜」 そ、そうなのか…今度から気をつけようかしら…いやいや。 「でもさ、かがみん。これって結構理にかなってるって思わない?」 は?何がよ。 「チョココロネ」 「はぁ?」 「手軽に糖分摂取できるし、これだけだと量もそんなに多くないから、そこまで太らないと思うよ」 い、言われてみればそんな気も… 「どう?私と一緒にチョココロネダイエット!してみないか〜い?」 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 00:39:36.10 ID:1YhjmK1c0 騙されないわよ。 「へ?」 まず絶対飽きるでしょ。それに、それだったらカロリー少なめでおなかが膨れる もっと効率のいいやり方あるんじゃないの? 「かがみんがそんな器用なマネできるかな〜?」 や、やればできるんだから! 「だってさ、つかさ、がんばってね」 「へ?」 「な、なんでつかさなのよ!」 「だってつかさのほうが料理ウマイし」 じ、事実だけど、他人に言われるとなんかくやしいわね…。 「いいわ!やってやるわよ!」 「おお!かがみんが燃えてる!そして空回り。いつものパターン」 「うるさい!今回は違うのよ!」 私だってやるときゃやるんだから! 「お姉ちゃんがんばって!」「がんばってくださいかがみさん」 あ、みゆきいたんだった。 そんな話をしていたのが、昨日。 金曜日の昼休み。 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 00:44:41.46 ID:1YhjmK1c0 意気込んでみたものの…一体何をすればいいのやら。 テレビや雑誌で、ダイエット方法なんて無数に溢れてる。 でも、そんなにあると、本当に効果あるのかな?なんて疑ってしまうのよね。 つい最近でも、ある番組のダイエット企画が嘘っぱちだったなんてニュースになったばかり。 「はぁ…どうしたもんかなー」 運動するのが一番。ってわかってるけど、運動の仕方にもコツがあるとかなんとか。なんか難しそう。 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 00:52:16.96 ID:1YhjmK1c0 こなたはなんで太んないんだろ…つかさも、あんまり運動しないのに…。 「あっ」 そうよ、みゆき!みゆきに聞けばいいのよ! メディアの情報よりもみゆきのほうが確かなんて、おかしな話だけど、彼女にきけばなんでも正しい情報が手にはいるような気がする。 さっそく私は、みゆきに電話してみた。 「ダイエットですか?そうですねー…」 「なんかあてにしてごめんね。知らなかったらいいのよ」 「いえ。突然ですが、かがみさんは、ダイエットにおいてもっとも大切なことって、何かご存じですか?」 ダイエットにおいてもっとも大切なこと?そうね、適度な運動とか? 「確かに、それも大切なことですが、それよりも大切なことがあります」 67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 01:00:47.98 ID:1YhjmK1c0 「コホン、ダイエットにおいてもっとも大切なもの。それは、『周囲の理解』です」 周囲の理解?どういうこと? 「周囲の理解というのは、自分の周りの人。家族や友人、同僚など、自分の関係している人たちに、  自分はダイエットしているぞ、ということを理解していただく。ということです」 なるほど。せっかくダイエットをがんばっても、「今日の夕食はステーキだぞ!」なんて言われたら 意味ないものね。 「その通りです。なので、まずは周囲への理解と協力を求めることが先決だと思います」 でも、なんか恥ずかしいわね。自分はダイエットしてます!って宣言するの。 「確かにそうですね。しかし、自分が挫折しそうなときでも、応援してくれる方がいたほうが続くと思いますよ?」 確かに、みゆきに言うとおりだわ。 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 01:07:18.62 ID:1YhjmK1c0 「あと、具体的な方法ですと…そうですね。無駄をなくすために、手帳をつけてみるのはどうでしょうか?」 手帳?それで無駄がなくなるの? 「はい。一日の摂取したカロリーや消費カロリーなどを事細かに書くことで、どれだけ無駄を省けるかを  計算することができます」 なるほど、家計簿の応用ね。いいアイデアだわ! 「これはほかのことにも応用できるようですから、色々試してみるといいかもしれませんね」 分かった!みゆきがいった通りに試してみるから! 「お役に立てたなら幸いです」 それじゃあね!うまくいったらなんかおごってあげる! 「えっと、それでは意味がないのでh…」プツ 周囲の理解と無駄を省く。か… 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 01:12:45.77 ID:1YhjmK1c0 「あら?かがみ、もうごちそうさまなの?」 「ええ、今日はこれでいいの」 「もしかして、ダイエットかな〜?」 「そうよ」 「へ?」 「あたしは今日からダイエットするから!よろしくね!」 「また?どうせ今回も挫折するんじゃないのー?」 「今回は違うの!だからみんなも協力して!つかさも頼んだわよ!!」 「ほぇ?」 「あらあら」 「あっ!ちょっとまつり!!私のエビフライとったでしょ!!」 「ふっふーw油断大敵〜」 71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 01:18:27.27 ID:1YhjmK1c0 それから私は、周囲の人間への徹底周知に努めた。 「ええ!?ミートボール禁止!?なんでだってヴぁ!」 「私の前ではできる限り肉系は控えて!」 時に厳しく、時に深く頭を下げ。 「う…野菜ばっかり…」 「お姉ちゃんやっぱり足りなかった?私のちょっと食べていいよ」 「いや、これでいいのよ…」 手帳も付け始めた。 「あっと、これもうちょっと減らせるわね…」 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 01:26:55.10 ID:1YhjmK1c0 手帳をつけはじめて一週間、私はあることに気付いた。 (つかさ、ちょっと寝すぎよね。無駄が多すぎるわ) 自分の周囲の、無駄だと思えるものが、やけに目につくようになったのだ。 (こなたのゲームも無駄だし、みゆきの無駄知識も…まぁそれはいいか) まぁ無駄なものって人それぞれだしね。一概には言えないわよね。 「はいもしもし…え?樹海?そりゃないっすよあきら様ぁぁあああ!!」 …何アレ?やかましいやつね。 あ、そうだ。 「無駄なもの。『白石みのる』っと」 なんちゃってね。 74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 01:36:03.58 ID:1YhjmK1c0 次の日。 「おはよーこなたー。なんか元気ないじゃない。どうしたの?」 「ああ、それがさー聞いてよかがみん。昨日のらっきーちゃんねるさー急に中止に」 キーンコーン 「あ、やばい遅刻しちゃう!」 「あっとちょっとまってよかがみん!」 (朝の会って、めんどくさい。ほんと無駄。ほかに効率のいい方法あるでしょ) そんなことを考えながら、私は先生を待っていた。 私はその考えすら無駄に感じていた。 「全員席に着けー」 そう言いながら先生が入ってきた。(3分遅刻。無駄) そして、いつも通り礼をすませ、開口一番にこう告げた。 「隣のクラスの白石君が、昨日から行方が分かりません」 75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 01:41:48.93 ID:1YhjmK1c0 その時、私は妙にイラついていた。だから、ことの重大さに気がつかなかったのかもしれない。 (そんな話どうだっていいのよ。無駄) 『無駄なもの、朝の会』っと。 ま、メモしたところでどうにかなるわけでもないけどね。 次の日。 朝の会は行われなかった。 そのかわり、連絡事項は、すべて黒板の隅に記入され、一時間目がいつもより20分早く始まった。 79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 01:51:17.29 ID:1YhjmK1c0 「私のせい?そんなわけないよね?」 しかし、それから何日たっても、朝の会は行われなかった。 「ねぇ、峰岸」 「どうしたの柊ちゃん?」 「最近、朝の会なくなったよね?」 「朝の会?何それ?」 え? 「だって先週ぐらいまで、毎朝先生が連絡事項を」 「え?何言ってるの。いつも最初から一時間目だったじゃない」 …ボケたのか?それとも私をからかってるのだろうか? 「ねぇ峰岸」 「なぁに?」 「『白石』ってやつ、知ってる?」 「それ有名人なの?」 「ううん、なんでもない。もういいわ」 まて、まだこれだけじゃ確かな証拠とは言えない。もっと確かめないと。 「あ、ちょっとよばれちゃった。それじゃあね、柊ちゃん」 「あ、うん。それじゃ」 峰岸の髪、長いなぁ…。 80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 02:00:07.46 ID:1YhjmK1c0 「あれ?どうしたんだってばあやの!その髪!」 「ああ、みさちゃん。これ?実は彼がね、短いのもいいなぁって」 これは…本物なのか!? いや、これならまだ偶然のうちかもしれん…。 もっと色々試してみないと…。 何がどう作用しているのかわからない。 でも…。 「いやぁ〜最近ゲームとかやらなくなったら早く起きれるようになってさ」 「みなみちゃんって背が……普通だよね」 「結婚は人生の墓場やで」 82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 02:08:12.82 ID:1YhjmK1c0 もう疑いようもなかった。 この力は本物だ!手帳に書いた無駄なものが、次の日には消えちゃう! そうよ。私が望んだのはこれ。無駄のないスマートな生活。 この力があれば、世界のどんな無駄も省ける!無駄な時間、無駄な場所、無駄な……人間も。 それは、もはや神の力だった。 陰険な政治家も、某国のミサイルも、そして災害すらも。 すべて気に入らないものはすべて消してやった。 そんなものに金を使うぐらいなら。そんなものに人材をつかうなら。 もっと、もっとほかのことに。 そんな無駄なことしてないで。 84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 02:18:37.93 ID:1YhjmK1c0 「それじゃあみゆき、1時に駅前で」 「はい、わかりました」 今、私はとても機嫌が良かった。 念願のダイエットも成功し、おまけにこんな力まで手に入れたのだから。 「つかさ〜出かけるんだからいそぎなさいよー」 「はーい」 これから、以前みゆきとした約束のため、みゆきに食事をおごることになっていた。 今の生活は、いわばみゆきのおかげといっても過言ではない。結果論ではあるけど、彼女の助言がなければこうはならなかった。 「つかさ、まだなの?」 「おねーちゃん、私の携帯しらな〜い?」 「知らないわよ?ちゃんと決まった場所にしまっとかないからこうなるのよ!」 「ごめんなさい」 まったく、私の双子の妹のくせにどうしてこうなのかしら。 だいたい、つかさは無駄が多いのよ。いっつももたついてるし、物は無くすし、物忘れは激しいし。 ほんと、無駄。 89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/04(木) 02:34:04.92 ID:1YhjmK1c0 「や、おまたせ」 「いえ、私もたった今来たところですから」 「そ、それじゃ行きましょ」 「あ、あの…今日は、かがみさんだけですか?」 「え?そうだけど…ほかに誰かくるの?」 「いえ…いや、なんとなく気になったもので…」 「そう、それじゃ行きましょうか」 「はい、今日はどちらに?」 「えっと、最近、池袋にオープンしたカフェが…っと」 「あら、信号が赤ですね」 「まったく、なんでこんなに信号が多いのかしら?」 「都内では、車が多く通るので仕方がないのでは?」 「じゃあ車を減らせばいいじゃない」 「いや、それはどうかと…」 「だいたい、車以前に人が多すぎるのよ。そのせいで街が窮屈になってるじゃない」 「はぁ…」 「中には働かない人とか、犯罪者もいるって言うのに。そういうのって本当に無駄よ」 「人が増えれば仕方ないとも言えますが…」 「そいつらみんな消えれば、無駄がなくなってちょうど良くなると思わない?ねぇみゆき」 世にも 奇妙な らき☆すた