佐々木「キョン、もうすぐファイターズの試合があるのだが……」 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 17:49:57.52 ID:/r5PnwQ+0 「ああ、見ていくか? 俺の勉強も一段落したところだしな」 「恩に着るよ、キョン。この季節、我が家のチャンネル選択権は虎党の父に握られているからね」 「気にすんなよ。試合が始まっちまうし、下に行こうぜ」 「そうだね、善は急げだ」 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 17:51:25.79 ID:/r5PnwQ+0 ※このスッドレは『涼宮ハルヒの分裂』に登場した僕っ娘『佐々木さん』を愛する1が楽しむスレです ※分裂までのネタバレがあるかもしれません。アニメだけしか観てない人は注意してください ※話の流れは実際の試合展開に順じます   ⇒ 試合を観戦したい方は↓から   http://baseball.yahoo.co.jp/npb/   『生中継を見る』というボタンで見れます 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 17:52:57.78 ID:/r5PnwQ+0 「しかし、佐々木が日ハムファンだとは意外だな」 「そうかい?」 「だってそうだろ。お前の周りだって阪神ファンがほとんどじゃないか?」 「それは否定できないね。しかし、贔屓のチームを周りに合わせる必然性はないはずだ」 「まあ、そりゃそうだな」 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 17:54:49.23 ID:/r5PnwQ+0 「しかしまた、なんで日ハムなんだ?」 「そうだね、北海道日本ハムにはいいところがたくさんある。 ファンを大切にし、地元密着型のサービスを意欲的に取り入れている。その潜在的経済効果は計り知れないよ」 なんというか佐々木らしい着眼点だ。経済効果なんてのはアナリストに任せておけばいいんだよ。 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 17:56:40.85 ID:/r5PnwQ+0 テレビでは素人さんが試合開始前の国歌斉唱を行っている。 がんばってはいると思うが、お世辞にも上手いとはいえないぞ……。 「……これも地域密着サービスなのか?」 「そ、そのようだね。意外にも競争率は高いようだよ」 聞いてる方はいい迷惑なんじゃないだろうか。 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 17:58:40.51 ID:/r5PnwQ+0 「まあ僕がファンになった直接的要因は、好きな選手がいるからというありきたりなものだよ」 「へぇ、ダルビッシュあたりか? あいつかっこいいもんな」 「確かに彼は容姿端麗だ。それについては僕も素直に認めるところだよ。 しかし、それだけでは好意を持つ理由にならないのさ。僕にとって容姿は重要なファクターではないからね」 「そうだよね、キョンくんかっこよくないし」 普段は騒がしい妹が珍しく大人しくしていると思っていたのだが、唐突に妙なことを言い出しやがった。 かっこよくないってことは認めざるを得ないが、俺を引き合いに出す場面じゃないだろう。 佐々木、我が愚妹にツッコミを入れていいぞ。生憎とハリセンの持ち合わせはないがな。 「…………」 なぜ黙る。そしてなぜ顔を赤らめているんだ、佐々木。 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 18:03:33.04 ID:/r5PnwQ+0 1回表 公0−0鯉 二死 「中田はスタメンじゃないのか」 「彼のポジションはDHかファーストに限られるからね」 「ああ、守備に難ありって聞いたことあるな」 「今日は右腕のルイスだから、DHは左のヒメネスになる それにファーストはチームの四番が守っているからね」 「それじゃ仕方ないか」 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 18:06:49.59 ID:/r5PnwQ+0 1回表 公0−0鯉 チェンジ 赤松 左飛 「こんなに小さいのに三番打ってるのか」 「彼は勝負強い打撃が持ち味なのさ それにパワーだってある。ホームランだって打っているんだよ」 「へぇ、見かけによらないもんだな」 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 18:09:48.71 ID:/r5PnwQ+0 1回裏 公0−0鯉 一死 田中 からさん 「さっき話してた好きな選手ってのは中田あたりか?」 「違うよ」 「んじゃ稀哲か?」 「彼はおもしろい存在だが、そこまでではないのだよ」 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 18:10:37.35 ID:/r5PnwQ+0 1回裏 公0−0鯉 ニ死 森本 三ゴ 「次は稲葉か」 「…………」 「WBCじゃイマイチだったけど、よく打ってるみたいだな」 「…………」 「どうしたんだ佐々木? さっきから黙りこんで」 「キョンうるさい! 静にして!」 こいつか。 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 18:13:54.83 ID:/r5PnwQ+0 1回裏 公0−0鯉 チェンジ 稲葉 からさん 「ああ、稲葉さん……」 ここは何か声をかけるべきなんだろうか……。 「さ、佐々木。そんなに気にするなよ、まだ始まったばっかりだろ? それに稲葉は月間MVPを取ったらしいじゃないか。落ち込むことなんてないぞ」 「稲葉さん……」 だめだこいつ。 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 18:18:04.93 ID:/r5PnwQ+0 二回表 公0−0鯉 二死 栗原 遊ゴ 嶋 左飛 マクレーン 三内安 「そういや稲葉の顔にアザがあるけど、あれってどうしたんだ?」 「ああ、デッドボールの痕だとか思われることもあるが あれは生まれついてのものらしいよ」 「怪我のせいじゃないんだな」 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 18:20:25.77 ID:/r5PnwQ+0 二回表 公0−0鯉 一塁 チェンジ 岩本 からさん 「痣がついていようとも、稲葉さんの魅力に何ら変わりはないけどね」 だめだこいつ早く何とかしないと……。 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 18:24:11.74 ID:/r5PnwQ+0 二回裏 公0−0鯉 無死一塁 信二 三内安 「お、ヒット出たな」 「相手はゼロのルイスと呼ばれた投手だからね。僥倖と言っていいんじゃないかな」 佐々木、その二つ名はどこで聞いたんだ? 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 18:25:18.23 ID:/r5PnwQ+0 二回裏 公0−0鯉 一死二塁 糸井 犠打 「ああ、学校のクラスメイトが話していたのを仄聞してね」 ……それでいいのか、灘高生。 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 18:28:21.94 ID:/r5PnwQ+0 二回裏 公0−0鯉 二死二塁 小谷野 からさん 「うーん、小谷野はよくないなぁ」 「こいつ四月はかなり打ってたんじゃないか?」 「四月は不動の四番だったのだけれどね 五番に降格し、今日はついに六番だよ」 「たいへんだな」 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 18:31:04.23 ID:/r5PnwQ+0 二回裏 公0−0鯉 チェンジ 二塁残塁 ヒメネス 投ゴ 「コイツすげえ体型だな」 「守備はからきしだが、長打力が魅力だね。それに足も遅くない 頼もしい助っ人だよ」 「けっこう濃いキャラが多いんだな……」 「ふふ、それは褒め言葉として受け取っておくよ」 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 18:33:26.15 ID:/r5PnwQ+0 三回表 公0−0鯉 一死 石原 二ゴ 「佐々木、お茶でも飲むか?」 「ああ、ありがとう。頂くとするよ」 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 18:35:10.63 ID:/r5PnwQ+0 三回表 公0−0鯉 一死一塁 小窪 中安 「佐々木、煎餅食うか?」 「僕はお茶で充分さ。厚意は嬉しいのだが、体重が気になるのでね」 「気にするような体型じゃないだろう。寧ろ痩せすぎじゃないのか?」 「ふふ、裏がありはしないかと気になるが、ここはありがとうと返礼しておこう」 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 18:37:52.11 ID:/r5PnwQ+0 三回表 公0−0鯉 二死一塁 梵 遊ゴ(二塁フォースアウト) 「広島の応援はすごいな。立ったり座ったりで」 「僕も詳しくは知らないのだがスクワットという応援ではないだろうか」 「なんかすげえ痩せそうだな」 ピクッ ……佐々木が反応した気がするが、気のせいということにしておこう。 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 18:40:58.32 ID:/r5PnwQ+0 三回表 公0−1鯉 二死一塁 東出 左安 (梵盗塁成功) 「点を取られてしまった……」 「広島にとっちゃラッキーだったな」 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 18:45:41.63 ID:/r5PnwQ+0 三回表 公0−1鯉 チェンジ 一塁残塁 赤松 遊飛 佐々木が、ううむ……と呻吟している。どうした? 「ルイス投手相手に失点してしまったのは痛いね……」 「一点くらい大丈夫じゃないか? 日ハムはよく打ってるし、稲葉もいるだろ」 「その通りだよキョン! キミはよくわかってるじゃないか!」 佐々木って意外と単純な奴じゃないだろうか。 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 18:46:43.94 ID:/r5PnwQ+0 三回裏 公0−1鯉 一死 鶴岡 からさん 「なんだこのアホっぽい顔は」 「キョン、その発言は坂田師匠に失礼だぞ」 お前の発言はこの選手に失礼だ。 「鶴岡捕手は体こそ大きくないが、打撃やリード面で充分な働きをしてくれているよ」 「動きにも愛嬌があって、あのファニーフェイスだ。 ファイターズのマスコット的存在だね。所謂ゆるキャラというやつだ」 いや、違うだろ。 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 18:50:12.43 ID:/r5PnwQ+0 三回裏 公0−1鯉 二死一塁 金子 中安 賢介 からさん 「なんか小道具多いな。今の誠の旗もあったし」 「確かにそうかもしれないね。誠の応援には新撰組の旗を使うし、 セギノールだったか――今ひとつ記憶が定かではないのだが―― バナナを使用していたこともある」 「田中はピンクの応援グッズか」 「どうだい? 多芸だろう」 自慢することなのだろうか……。 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 18:53:27.47 ID:/r5PnwQ+0 三回裏 公0−1鯉 チェンジ 一塁残塁 稀哲 からさん 「前から気になってたんだが、稀哲の頭って剃ってるのか?」 「今はそうだね。しかし幼少の頃はそうではなかったようだよ」 「どういうことだ?」 「全身の毛が抜けるという奇病に罹患したようでね 当時の辛苦を忘れないために今でも剃毛しているようだ」 「なんか意外な美談だな……」 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 18:56:04.14 ID:/r5PnwQ+0 四回表 公0−1鯉 二死 栗原 二飛 嶋 二ゴ 「こら、キョン。煎餅のカケラがついているぞ」 「お、おい、自分で取れるっての」 「大人しくするんだ。暴れると床に落ちてしまうだろう」 くそ、何の罰ゲームだ……。広島に興味がないからって、それはないだろう。 妹がキョトンとした表情で、こちらを眺めている。やめろ、こっち見んな。 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 18:57:12.54 ID:/r5PnwQ+0 四回表 公0−1鯉 二死 マクレーン 捕邪飛 「よし、取れたぞ」 煎餅のカケラを手に微笑む佐々木。破顔一笑といった風情だ。 そして何の躊躇もなくその煎餅を口に……って、食っちまった。 「あっ」 嚥下してから、自分のした行動の恥ずかしさに気付いたようだ。 顔を真っ赤にするくらいなら最初からするんじゃない……。 「あれれ〜、キョンくんも顔赤いよ〜?」 うるさい。 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 18:59:24.94 ID:/r5PnwQ+0 四回表 公0−1鯉 稲葉 「……」 「なぁ、佐々木……」 キッ! 視線で殺された。黙っているのが得策だな。 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 19:01:58.98 ID:/r5PnwQ+0 四回表 公0−1鯉 一死 稲葉 からさん 「そんなぁ……」 君子危うきに近寄らずだ。 「うう……」 佐々木は大層悲しんでいる。しかし同じ轍を踏むわけには……。 「キョン! 親友が悲しんでいるのに憐憫の情すらわかないのか!?」 俺にどうしろと……。 76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 19:03:23.41 ID:/r5PnwQ+0 四回表 公0−1鯉 一死二塁三塁 信二 単打 糸井 中二 「あれ?」 あれ? じゃねーだろ、贔屓のチームくらい真面目に応援しろ。 80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 19:06:11.89 ID:/r5PnwQ+0 四回表 公1−1鯉 二死二塁 小谷野 犠飛 「やったぁ! 同点だよー♪ さすが小谷野さんだねっ!」 「…………」 俺のいぶかる視線に、ようやく佐々木が気付いたようだ。 「……キョン」 どうした? 「親友からの願いだ。今のは忘れて欲しい……」 82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 19:09:21.75 ID:/r5PnwQ+0 四回表 公1−1鯉 チェンジ二塁 ヒメネス 遊飛 「嗚呼、好機が潰えてしまったか……」 「そうだな」 「ヒメネスの尽力には多大な恩恵を受領しているとはいえ、この状況下での軽打には得心できかねるね」 佐々木、うっかりはしゃいで恥ずかしいのはわかるが、無理にキャラを戻さなくていいんだぞ……。 寧ろやりすぎだ、意味がわからん。 86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 19:13:31.24 ID:/r5PnwQ+0 五回表 公1−1鯉 無死一塁 岩本 中安 「そういや、この岩本ってのはルーキーなんだろ?」 「そうらしいね、随分と勝負強いバッティングをする」 「こりゃ広島強くなりそうだな」 「ま、まあ球界にとってはいいことさ」 今強くならなくてもいいじゃん、という呟き声が聞こえた気がしたが無視するか。 89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 19:16:28.77 ID:/r5PnwQ+0 五回表 公1−1鯉 二死 石原 遊併殺 「これは僥倖だね」 「フォアボールだったら、ノーアウト一二塁だったしな」 「ふふ、ルイス投手を相手に勝ちも見えてきたね」 言い過ぎだ。 92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 19:18:42.79 ID:/r5PnwQ+0 五回表 公1−1鯉 チェンジ 小窪 からさん 「ここ最近スウィーニーの調子がよくなかったのだが、今日はよく投げている」 「まあルイスのが調子いいみたいだけどな」 「……キョン、何か言ったかい?」 その目はやめろ。怖いんだよ……・。 93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 19:21:02.02 ID:/r5PnwQ+0 五回裏 公1−1鯉 一死 鶴岡 からさん 「しかし、この鶴岡って奴は見れば見るほど……」 「坂田師匠に似ているのだが、他にも似ている人物がいるような……」 「そうなんだよ、俺もそれが誰か思い出せないんだ」 「うーん……」 97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 19:23:01.59 ID:/r5PnwQ+0 五回裏 公1−1鯉 二死 金子 右飛 「そういや稲葉ジャンプってやってないよな?」 「そうだね、今日はまだだ」 「あれっていつやるんだ?」 「稲葉ジャンプはね、稲葉さんのチャンステーマなのさ だから得点圏に走者がいない限りやらないのだよ」 「へぇ、意外な制限がかかってたんだな」 100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 19:24:17.17 ID:/r5PnwQ+0 五回裏 公1−1鯉 二死一塁 賢介 振り逃げ 「おや、珍しいね」 「振り逃げか、久しぶりに見たぞ」 「それだけルイス投手の球が変化しているということなのだろう」 お前も珍しく殊勝だな 103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 19:26:00.45 ID:/r5PnwQ+0 五回裏 公1−1鯉 二死二塁 森本 (賢介盗塁成功) 「ふふ、この僕が稲葉さんの応援をしらないとでも?」 「佐々木ちゃーん、あたしも稲葉ジャンプしたいー」 「妹くん、素晴らしい向学心だ。その意気に応えて稲葉ジャンプの真髄を伝授しよう」 「まずはジャンプしながら歌うんだ。いいかい? ♪ラー ラララーラーラーラーラー……」 104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 19:27:58.09 ID:/r5PnwQ+0 五回裏 公1−1鯉 チェンジ 二塁残塁 森本 遊ゴ 佐々木と妹がピョンピョン跳ねながら、ラララと歌っている。 お遊戯を教える保母さんと園児のようで、実にほほえましい光景だ。 優しく導くように妹の手を取る佐々木には、エリート官僚やお医者様なんかより、 お嫁さんが一番似つかわしく思えた。 だってそうだろ?姦しく跳ね回る親友と妹は、さながら仲のよい母子に見えるじゃないか。 ……そういや俺の役回りはどうなるんだ? 113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 19:33:29.62 ID:/r5PnwQ+0 六回表 公1−1鯉 一死 梵 中飛 「そういや、次の回の先頭は稲葉だな」 「そうだね」 「それじゃチャンステーマのジャンプはできないんじゃないか?」 「!!」 佐々木、ビックリしすぎだ。 「そんなぁ……」 佐々木、ガッカリしすぎだ。 117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 19:37:14.32 ID:/r5PnwQ+0 六回表 公1−1鯉 一死一二塁 東出 中安 赤松 投安 「あれ? このヒゲって吉井じゃないか?」 「そうだよ、吉井さんはコーチとして残ってくれたんだ」 「なんか吉井が投げた方が抑えられそうじゃないか……?」 「キョン、それはいいっこなしだよ……」 123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 19:43:25.91 ID:/r5PnwQ+0 六回表 公1−1鯉 一死満塁 栗原 よんたま 「そんな、どうしよう……」 佐々木、落ち着け。 「今日も負けてしまったら、また稲葉さんのヒロインが聞けないよ……」 「よく考えろ、ここで点を取られても、稲葉が取り返せばヒーローインタビューされるじゃないか」 「キョン! キミの慧眼には時々驚かされるよ!」 俺はお前の単純さに驚かされるよ……。 128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 19:46:11.66 ID:/r5PnwQ+0 六回表 公1−2鯉 二死一二塁 嶋 犠飛 「失点してしまったか……」 「まあ、痛み分けってところだろ。アウトカウントが増えただけでも良しとしようぜ」 「そうだね。キョン、ありがとう」 佐々木が柔らかい微笑を浮かべている。なんだろう、胸の辺りがムズムズするな……。 131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 19:49:01.51 ID:/r5PnwQ+0 六回表 公1−2鯉 二死満塁 マクレーン よんたま 「うう、また満塁か……」 「次抑えれば大丈夫だろ」 「次はヒットを打っている岩本だよ? そんなのわからないじゃないか!」 「いいからテレビ見ろ。クッションに顔埋めてたら何も見えないぞ」 「う、うるさい!」 俺の肩をポカポカ叩くな。痛くはないが、恥ずかしいだろ……。 135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 19:54:31.09 ID:/r5PnwQ+0 六回表 公1−2鯉 チェンジ 満塁 岩本 からさん 「ねえキョン、どうなった?」 耳押さえてたら俺の声も聞こえないんじゃないか? 「ねえ、どうなったんだよ? もったいつけないで教えてくれよ!」 「安心しろ、抑えたぞ」 「ほんと? よかったー。キョン、すぐに教えてくれてもいいじゃん! ボクほんとに怖かったんだよ?」 「…………」 「すまない、キョン。これは発作みたいなものなんだ……、忘れてくれ」 お前も大変なんだな 136 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 19:56:15.02 ID:/r5PnwQ+0 六回裏 公1−2鯉 無死一塁 稲葉 死球 「いーまーみーせろー おまえのそーこー……ああっ!」 「デッドボールか、ラッキーだったな」 「そんなやけないだろ! 乱闘だ! ルイスを血祭りだ!」 落ち着け、頼むから。 138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 19:57:29.20 ID:/r5PnwQ+0 六回裏 公1−2鯉 一死二塁 高橋 遊ゴ(進塁打) 「ボテボテで助かったな」 「そうだね! 僕の恨みが勝ったよ!」 やめろ、お前の場合はシャレにならん。 144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 20:00:05.46 ID:/r5PnwQ+0 六回裏 公2−2鯉 一死一塁 糸井 中前タイムリー! 「やったぁ! さすが稲葉さんだよ!」 「稲葉の足もすごいが、今のは糸井の殊勲だろ?」 「まあ彼もがんばったね。よくやった、糸井くん褒めて使わそう」 佐々木、お前のキャラが見えないぞ……。 147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 20:03:52.63 ID:/r5PnwQ+0 六回裏 公2−2鯉 チェンジ 小谷野 併殺 「もー、コヤノールはホントにダメだなぁ」 「そうだな……」 「あれ? キョンどうしたの?」 「いや、お前って意外とおもしろい奴なんだなと思って……」 そんなにビックリするなよ、つっこんだ俺が悪者みたいじゃないか。 「キョン、忘れてくれ……」 クッションに顔を埋めながら足をバタバタさせている。 そんなに恥ずかしいならやらなきゃいいじゃないかと思うのは野暮なのだろうか。 153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 20:06:33.01 ID:/r5PnwQ+0 七回表 公2−2鯉 一死 P:菊池 岩本 からさん 「このピッチャーって数珠つけてんのか?」 「…………」 「仏教徒だったりしてな、ハハ……」 「…………」 ヤバい、完全に臍を曲げたようだ。 154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 20:08:59.50 ID:/r5PnwQ+0 七回表 公2−2鯉 一死 P:菊池 小窪 みのさん 「佐々木、見てみろよ。菊池が抑えてるぞ」 「……うん」 よし、反応した。 「佐々木、煎餅食うか?」 「うん」 なんとかなりそうだな。 155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 20:10:08.50 ID:/r5PnwQ+0 七回表 公2−2鯉 二死一塁 P:菊池 梵 右安 「やっぱりいらない……」 おい! 菊池! ちゃんと抑えろよ! 159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 20:12:21.37 ID:/r5PnwQ+0 七回表 公2−2鯉 チェンジ 一塁残塁 P:菊池 東出 中飛 「なあ、佐々木」 無言。 「さっきのだけど、そんなに気にするなよ」 無言。 「お前は恥ずかしかったかもしれないけど、なんていうか……その、かわいかったぞ」 「!!」 お、反応した。 162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 20:17:59.89 ID:/r5PnwQ+0 七回裏 公2−2鯉 チェンジ P:ルイス ヒメネス からさん 鶴岡 フライ 金子 三ゴ 「キョン、ほんとに……?」 「どうした?」 「その、かわいいって……ほんと?」 「も、もちろんだ」 ここは同意するしかないだろう、気恥ずかしさのせいで多少声が上ずったのは聞かなかった事にしてくれ。 「ごめんよ、ちょっと取り乱してしまった」 「気にすんなよ、応援しようぜ」 「うん、そうだね!」 やれやれ、やっと機嫌を直してくれたか。俺も応援してやらないとな、恥ずかしがりのお姫様のためにも。 「キョンくん、日ハムの攻撃終わっちゃったよ〜」 「ええっ!!」 166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 20:21:22.41 ID:/r5PnwQ+0 七回裏 公2−2鯉 一死 P:館山 赤松 遊ゴ 栗原 「栗原のスイングはすごいな」 「そうだね。空振りでも肝を冷やしてしまうy……キャー!」 「安心しろ、ファールだ」 「そ、そうだね……」 167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 20:23:18.28 ID:/r5PnwQ+0 七回裏 公2−2鯉 二死 P:館山 栗原 からさん 「佐々木」 「なんだい?」 「栗原は三振だったぞ」 「そ、そうか。良かった……」 ピンチの時に目を閉じる癖は止めたほうがいいと思うぞ 171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 20:26:39.81 ID:/r5PnwQ+0 七回裏 公2−2鯉 チェンジ P:館山 嶋 ニゴ 「なんつーか、地味な展開だな」 「玄人好みと言ってくれたまえ」 「俺にはパカパカホームランが出る展開のが面白いんだが」 「だから、読売ファンなんだね……」 172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 20:28:08.10 ID:/r5PnwQ+0 八回裏 公2−2鯉 無死一塁 P:横山 賢介 よんたま 「よし! 賢介よく選んだ!」 「稀哲が送ればチャンスになるな」 「そうだよ! やっと稲葉ジャンブができるじゃないか!」 それか。 175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 20:29:54.95 ID:/r5PnwQ+0 八回裏 公2−2鯉 無死三塁 P:横山 稀哲 (横山牽制悪送球) 「おお、ラッキーだな」 「うう……」 「どうした? あんまり嬉しそうじゃないが」 「だって、ここで稀哲がタイムリーを打ったら、ジャンプができなくなるじゃないか……」 いい加減稲葉から離れろ。 179 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 20:31:57.06 ID:/r5PnwQ+0 八回裏 公3−2鯉 無死三塁 P:横山 稀哲 左二 「やったぁ!」 「よかったな、稀哲も二塁だからジャンプできるぞ」 「うん! さあいくよ!!」 180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 20:32:43.95 ID:/r5PnwQ+0 八回裏 公3−2鯉 無死三塁 P:横山 稲葉 ジャンプ中 「♪ラー ラララーラーラーラーラー ラーラーラー ラーラーラー ララララー イ・ナ・バー!」 佐々木は満足そうだ。ついでに妹もな。 182 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 20:34:06.76 ID:/r5PnwQ+0 八回裏 公3−2鯉 無死一三塁 P:横山 稲葉 右安 「さすが僕の稲葉さんだ!」 「よく打ったな」 「僕の祈りが天に通じたのさ!」 だからやめろ、本当にシャレにならん。 185 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 20:38:17.30 ID:/r5PnwQ+0 八回裏 公3−2鯉 無死一三塁 P:横山 → 梅津 信二 「♪ラーラーララララしんじー!」 「これって『北の国から』のテーマか」 「北海道らしくていいだろう? 他には『ジンギスカン』もあるのだよ」 「まさに地元密着だな」 187 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 20:41:13.58 ID:/r5PnwQ+0 八回裏 公4−2鯉 無死一三塁 P:梅津 信二 二安 「やったぁ! いいそ、その調子だ!」 ノリノリだな。 やれやれ、我に返った時が心配だ……。 190 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 20:44:10.25 ID:/r5PnwQ+0 八回裏 公7−2鯉 無死 P:梅津 糸井 右本(信二盗塁成功) 「キャーキャー! ねえキョン見た? 糸井が打ったよ!」 「さすがだな」 「不調の小谷野を下げたのは正解だったよ、我がファイターズは好調を取り戻したね!」 お前はずっと絶好調だがな。 193 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 20:46:58.55 ID:/r5PnwQ+0 八回裏 公7−2鯉 一死 P:梅津 小谷野 遊ゴ 「しかし稲葉か、かっこいいもんな」 「べ、別に好きとかそういうんじゃないんだ! 確かに好意に似た感情を抱いてはいるが、 あくまで偶像に対する憧憬のようなもので、アイドラトリーに属するものだ!」 とりあえず落ち着け、何いってるのかわからんぞ。俺にもわかる言語を話してくれ。 「そ、その……、稲葉さんはかっこいいけど、恋人になりたいとかそういう気持ちとは違うんだ……」 195 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 20:48:53.96 ID:/r5PnwQ+0 八回裏 公7−2鯉 一死 P:梅津 ヒメネス → 坪井 テレビから坪井の応援が聞こえる。 ♪ぴ〜える〜 あおがく〜 とおしば〜 「だから、キョンは気にしないd……はんしーん! あっ!」 なんだよ、弁解するのか応援するのか、どっちかにしろ……。 196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 20:50:40.56 ID:/r5PnwQ+0 八回裏 公7−2鯉 二死 P:梅津 坪井 遊飛 佐々木の言い分によれば、俺が朝比奈さんに持ってる感情のようなものってことだろう。 可憐な未来人様は身近な存在だが、手が届かないってのは共通項だしな。 「キョン」 やけにキッパリとした言い方で返してきやがった。……どうした、佐々木? 顔が怖いぞ。 「キョンは朝比奈さんが好きなのか?」 「えー、キョンくんそうなのー?」 助けを求めるために、視線を彷徨わせたのがマズかった。 ダイニングに居た母親のニヤケ顔は、向こう十年トラウマになりそうだ……。 197 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 20:53:37.12 ID:/r5PnwQ+0 八回裏 公7−2鯉 チェンジ P:梅津 → 林 鶴岡 中飛 「…………」 リビングは水を打ったような静寂に支配されている。賑やかなテレビが少し怨めしい。 佐々木は怒っているのだろうか。そして俺は弁解すべきなのだろうか。――だが何を? 「あのな、佐々木……」 無言。 「俺は別に朝比奈さんをそういう目で見てるわけじゃ……」 「キョンはいつだって朝比奈さんのことをデレデレした目で見てるじゃないか」 「朝比奈さんはずっと先にいる人だ。だから、俺がどうこうできるような存在じゃないだろ?」 妹やお袋がいる手前、朝比奈さんの正体は公言できない。多少苦しいが、佐々木だけに伝わるよう話すしかないな。 「俺がそういう感情を持てるのはもっと近い人間だ。……例えば、お前みたいな」 現代人に限られるってこった。 204 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 21:03:24.72 ID:/r5PnwQ+0 九回表 公7−2鯉 P:館山 → 江尻 三凡で試合終了 佐々木は驚いたように目を見開いていたが、いくぶん間が空いたあとに「うん」と小さく呟いた。 予想とは違ったリアクションだったものの、どうやら佐々木は納得してくれたようだ。 「すまなかったね、キョン。僕も少しばかり大人げなかったよ」 柔らかな笑顔が眩しい。先ほどまで緊張を強いられていたせいか、その温もりが胸の内まで染み入るようだ。 だが、何かが引っかかっている。嚥下した喉に小骨が引っかかっているような違和感が……。 「キョンがそんな風に想っていてくれたなんて知らなかったよ。僕はてっきり……」 「てっきり?」 「いや、なんでもない。ほら、試合も終わってしまったよ」 いや、しかし……と食い下がる俺を佐々木は視線で制した。 「キョン、キミは妹くんやお義母様の前でそんなことを言わせたいのかい?」 偽悪的な笑みを浮かべながらも、聞き分けのない子供を諭すような口調で囁いた。 そうか、佐々木は朝比奈さんの未来人設定に言及できないから話を切り上げたのだ。そうだ、そうに違いない。 208 名前:1[] 投稿日:2009/06/03(水) 21:13:09.56 ID:/r5PnwQ+0 1です。 クソスレにお付合いいただきありがとうございました。 日ハムばっかりでちょっと閉鎖的になってしまったかもしれませんね。 また立てるかは不明ですが、次やるときは気をつけようと思います。 それではまたどこかで。 217 名前:1[] 投稿日:2009/06/03(水) 21:59:48.15 ID:/r5PnwQ+0 ちょっとオマケを投下 野球とは全く関係ないです 221 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 22:03:25.90 ID:/r5PnwQ+0 「楽しい時間は早く過ぎ去ってしまうものだね。もうこんな時間だ、急いで帰らねば」 「送っていくぞ、もうだいぶ遅くなっちまった」 「僕は大丈夫だよ。見知った道だ、迷う事もない」 「こんな時間に女の子が一人歩きするもんじゃないぜ」 お前みたいな人間は特にな。若さを持て余した小僧だけじゃなく、宇宙人や未来人まで惹き寄せそうな属性持ちなんだ。 橘一派が護ってくれているのかも知れんが、あいつらのことは好きになれそうにないんでね。 223 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 22:05:25.82 ID:/r5PnwQ+0 「二人乗りをするのも久しぶりだね」 日中は真夏のような陽射しが燦燦と降り注いでいるが、朝晩はかなり涼しい――というか寒い。 俺の上着を貸したとはいえ、夏服姿の佐々木には厳しいのではないだろうか。 「佐々木、寒くないか?」 「大丈夫だよ、キョンの上着もあるし。それにこうしていれば温かい」 そう言った佐々木は腰に回していた腕に力を込め、俺の背中にぴったりとくっついてしまった。 「キョンの背中は広いね」 早鐘のような激しい鼓動を気取られまいかという事ばかり気になってしまい、どんな返答をしたのか今一つ憶えていない。 男だから、とかいうユーモアのかけらもない言葉を口にした気がしないでもないが、そんなことはどうだっていいんだよ。 224 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 22:08:07.75 ID:/r5PnwQ+0 塾への道のりとは違い、佐々木の家まではゆるやかな上り坂となる。 かつて佐々木と歩んだ道だ。なんとなく時の流れというものを感じてしまった。 「懐かしい道だね。知り合いに逢うかもしれないよ」 挑発的な口調ではあるものの、佐々木だって相応に恥ずかしいのだろう。 さっきから俺の背中に顔を埋めている。全く、誰かに見られたらバレるのは俺だけじゃないか。 でも、不思議と心は軽かった。かつての通学路を二人で通り、なんとなくノスタルジックな気持ちになったのかもしれない。 佐々木が北高に来ていたら、なんて詮無いことさえ頭に浮かんでしまうくらいに。 225 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/03(水) 22:13:48.23 ID:/r5PnwQ+0 「送ってくれてありがとう、キョン」 礼を言われるようなことじゃないさ。 「僕を女の子として扱ってくれたのは諧謔かと思ってしまったよ」 「なに言ってんだ。お前はどこからどうみても、か弱い女の子だろ」 そう、お前は普通の女の子なんだ。ちょっと変わったところもあるが、普遍性を逸脱することなんてない。 佐々木は少し驚いたようだが、満足そうに口元をくつろげると、おやすみという短い挨拶と共に家へと入っていった。 一年半ほど前、あのバス停でも感じていたが、俺から何か言われるのを待っているような節があるような気がする。 それが何か未だにわからないのは、正直へこんでしまう。あれから成長していないように感じられるんでね。 まあ、そんなことよりも気にすべき事がある。それは誰かに見られていたら、口止めしなければならないって任務だ。 だってそうだろ? いつだって騒動の中心はあいつなんだ。涼宮ハルヒという名の変態的存在がな。 ハルヒに見つかった時の言い訳を考えながら、俺は家路についた。 思いついた言い訳は、涼やかな夜風に全部さらわれちまったがね。 -おわり- 231 名前:1[] 投稿日:2009/06/03(水) 22:24:53.92 ID:/r5PnwQ+0 ありがとうございました。 佐々木大好き、野球大好き、ラブコメ大好きってことで纏めてしまったんですが、 中途半端になってしまったかなもしれませんね。 次には野球メインにしようかと思います。 それではまたどこかで。