ハルヒ「ねぇ、キョン。次これなんてどうかしら?」 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/10(日) 19:44:28.85 ID:2NnjvUpP0 そもそもの始まりは、いつものようにハルヒが、 SOS団の部室でネットをしているというありふれた光景から幕を開ける。 周りはいつものように角で本を読んだり、お茶を汲んだりと本当にいつも通り。 各言う俺と古泉は、机の上で二人麻雀に精をだしていた訳だ。 古泉「あ、それロンです。リーチ、1発、平和、ドラ8」 キョン「マジかよ・・・安手でドラ仕込みすぎなんだよお前は」 古泉「どうも高い役は狙い難いモノでして。身に余る程度で十分満足してしまえるのです」 キョン「そうかい」 古泉「さぁ、キョン君。賭けていた200ml、きちんと血を抜いてくださいね」 俺と古泉がやっているのは賭け麻雀の一種。 詳細は鷲頭麻雀でググレば出てくるが、もちろん牌は普通のものだ。 金の無い俺が血を、古泉が金を。 それは極普通の高校生ならば真っ当な時間つぶしと言えたであろう。 ハルヒがあんなことになっているとは、この時の俺たちにはまだ知るよしもなかったのである。 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/10(日) 19:48:19.17 ID:2NnjvUpP0 次の日、放課後部室に集まった俺たちにハルヒは高々と宣言した。 ハルヒ「拷問するわよ!」 突然のハルヒの宣言に最初反応できなかった。 キョン「すまんハルヒ、もう一度言ってくれないか」 ハルヒ「拷問よ拷問」 キョン「またお前は唐突に・・・それで一体なにをするつもりなんだ?」 ハルヒ「とりあえず定番の【鉄の処女】をみくるちゃんで試してみたわ」 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/10(日) 19:54:17.12 ID:2NnjvUpP0 キョン「鉄の処女ってなんだ?」 ハルヒ「あんたそんなことも知らないの?ネットで検索しなさいよ無知」 古泉「あそこにある銅像の様な物がそうですね」 ハルヒ「さすが古泉君!副団長は目の付け所が違うわね」 確かに不気味な銅像が目に付いていた。 銅色の、人1人軽がると入るような人形。そこには不気味な顔型まで掘られている。 古泉「そもそも実在したかどうかも不明確な物を見つけるとは流石、涼宮さんですね」 キョン「それで?朝比奈さんはあの中なのか?まったく閉じ込めたりしたら可哀想だろ」 きっと今もあの中で泣いているに違いない。 俺はその銅像に近づいてそっと扉らしきものを解放した。 以外にも簡単に開くものだ。 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/10(日) 19:57:43.02 ID:2NnjvUpP0 キョン「な……」 古泉「これはこれは」 開け放つと共に大量の血液が足元に血だまりを作る。 中には穴の開いた朝比奈さん。 その様相は血の涙を流しているようにも見えた。 キョン「大丈夫ですか朝比奈さん?」 みくる「……」 古泉「死んでいるみたいですね」 ハルヒ「あ、やっぱり死ぬわよねコレ。どうもこんな棘が付いてたらヤバイと思ったのよ」 ナニヲイッテイルンダコイツラ? 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/10(日) 20:11:20.41 ID:2NnjvUpP0 まだ先週分観てなかったから再開するわorz どうやら俺はまたおかしな世界に来ちまったらしい。 それもとんでもなく狂った世界に。 キョン「やってしまったものは仕方ない。だが何故だ?」 ハルヒ「なにが?」 キョン「どうして朝比奈さんを拷問した」 ハルヒ「みくるちゃんにぴったりな名前だったからよ。鉄繋がりでユキにしようかと思ったんだけど」 古泉「あぁ、それもありですね」 ハルヒ「でもユキだとなんとなく拷問にならないような気がしてそれで」 キョン「朝比奈さんって訳か」 ハルヒ「あんたや古泉君じゃ処女のイメージじゃないしね」 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/10(日) 20:15:04.87 ID:2NnjvUpP0 キョン「待て。そもそもなんで突然拷問をしようと」 ハルヒ「楽しそうだったからよ」 伝家の宝刀抜いてきやがったこいつ。 だが、ハルヒは楽しそうな顔を一瞬で引っ込め、渋い顔になると腕を組んだ。 ハルヒ「でも拷問なのに死んでるわね」 キョン「そうだな」 ハルヒ「やっぱり粗悪品に手を出すもんじゃないわね。ネット通販も当てになんないわ」 キョン「バニーやメイドならまだ良かったのにな」 ハルヒ「全くよ」 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/10(日) 20:19:56.60 ID:2NnjvUpP0 古泉「どうでしょう。とりあえずここを片付けませんか?」 ハルヒ「そうね…みくるちゃんは蛙の中にでも隠しときましょ」 古泉「こんな所でこれが役に立つとは思いませんでしたね」 二人の会話を聞きながら、俺は長門のところへとすり足で急ぐ。 こういう状況を打開できるのはこいつしかいないからだ。 キョン「長門、お前の力で朝比奈さんを生き帰らせることはできないか?」 長門「出来ないこともない」 キョン「じゃあサクっと頼む」 長門「けれどここで朝比奈みくるを蘇らせたとしてもまた同じことの繰り返し」 キョン「なんだと?」 長門「涼宮ハルヒはまた朝比奈みくるを殺してしまう可能性が高い」 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/10(日) 20:24:22.04 ID:2NnjvUpP0 キョン「どういうことなんだ?」 長門「私はその問いに対する回答を持ち合わせていない」 キョン「お前が分からないなんて・・・」 長門「でも」 キョン「?」 長門「これは涼宮ハルヒが望んでいることだとは思えない」 キョン「なんだって?」 長門「これを」 長門の差し出した本には【世界の拷問】と銘打たれている。 いくらかの本を読む長門だがこういう類を読んでいるのは見た事がなかった。 長門「図書館の本がこの様な物に全て変わっていた」 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/10(日) 20:28:36.22 ID:2NnjvUpP0 長門「確かにこの世界を構築しているのは涼宮ハルヒかもしれない」 長門「でも明らかに世界そのものに作為的な何かを感じる」 キョン「・・・つまり?」 長門「涼宮ハルヒは何者かによって嗜好を与えられている可能性があるということ」 キョン「嗜好を与える?」 長門「涼宮ハルヒは外界に影響されやすい。それは自らそれを望んでいるから」 長門「それを逆手にとって一種の洗脳状態に落としている人物がいる。たぶん私の考えでは」 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/10(日) 20:32:52.60 ID:2NnjvUpP0 ハルヒ「ちょっとキョン!あんたもみくるちゃんの血を拭くの手伝いなさいよ!」 キョン「くっ」 かけられた声に怯んでしまう。 長門から答えを聞けぬまま朝比奈さんの血を拭う作業に入る。 こんな光景を前にも見たことがあった。 確かアレはまだ朝倉がこの世界に存在していた頃。 相手は長門と朝比奈さんの違いはあれど、こんな光景をまたも目にしてしまうとは。 鉛の臭いが酷くつらい。 ようやく奇麗にしたころには、もう俺の精神はずっと参っていた。 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/10(日) 20:38:15.30 ID:2NnjvUpP0 ハルヒ「思ったより時間がかかったわね。今日はこれで解散にするわ」 そういうと早足に部室を出て行ったハルヒ。 俺はというと上履きの血を落としに古泉とトイレに来ていた。 古泉「それにしても厄介な事になりましたね」 キョン「お前は随分と冷静なんだな」 古泉「どんでもない。これでも些か興奮状態なんですよ」 そうは見えないぞ古泉。 だがそんな古泉の態度で落ち着けてしまう俺も俺だ。 人の死に慣れているわけでもないのに、俺は自分でも驚くほど冷めていた。 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/10(日) 20:44:46.09 ID:2NnjvUpP0 古泉「しかし困りましたね」 キョン「何がだ?」 古泉「いえ、もし涼宮さんの状態がこのままであれば・・・次犠牲になるのは多分僕でしょう」 微笑を浮かべる古泉はまったくいつもと変わらない。 もしかしたら、この時すでに古泉も別の何かに囚われていたのかもしれない。 キョン「縁起でもないこと言うんだな」 古泉「考えてもみてください。今回使われた道具は鉄の処女…涼宮さんの中では女性用です」 キョン「何故そんな事が分かる」 古泉「まぁ、勘ですよ。たぶんアレで朝比奈さんを死なせてしまうとは涼宮さんの中でも無かったのでしょう」 キョン「あいつは馬鹿なのか?」 古泉「なんにしろ命を賭けるのはこれっきりでしょう。この後はそれ以上の苦しみがあるだけです」 キョン「なんだって?」 古泉「涼宮さんがやりたいのは拷問であり人殺しではありません。次からはその辺りも考慮してくるでしょう」 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/10(日) 20:49:57.04 ID:2NnjvUpP0 古泉「となると次の実験体は異性であるアナタか僕。涼宮さんはアナタには手を出さないでしょうから」 キョン「次はお前だと?」 古泉「たぶん間違いないとおもいます」 どこまでも変わらないポーカーフェイスに一抹の不安を覚えた。 俺のそんな顔が可笑しかったのか、古泉は笑みを深くして言う。 古泉「安心してください。僕もただで拷問される気はありませんから」 そう言って、古泉はただ笑っていた。 そしてその日から古泉を見かけることは無くなった。 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/10(日) 20:54:54.32 ID:2NnjvUpP0 朝比奈さんの死、古泉の失踪から数日が経ち、俺たちは惰性で部室に集まっていた。 事件のにおいを感じたハルヒは直ぐに行動を開始するかと思ったが、そんな素振りは見えない。 唯一頼りになる長門は何を言わず、ただ本を読みふけっていた。 キョン「そういえば朝比奈さんはどうなったんだ?」 ハルヒ「んー?みくるちゃんならコンピ研の部室よ。だって臭いんだもん。ここには置いておけないわ」 キョン「そうかい」 ハルヒ「そんなことよりキョン」 キョン「なんだ」 ハルヒ「ちょっとコレ試してみない?」 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/10(日) 21:00:33.23 ID:2NnjvUpP0 ハルヒはポケットから取り出した小さな金属を俺に投げてよこす。 二つの金属が噛みあう様な、横にはネジも付いていた。 キョン「なんだこれは?」 ハルヒ「親指潰しって言われてるんだけど、ちょっとやってみせてくれない?」 キョン「冗談も休み休み言え」 ハルヒ「なんでよ?いいからやって見なさいよ」 キョン「断る!」 その金属を床に叩きつけた音だけが室内に響く。 何故だかハルヒは心底驚いたような顔で俺を見ていた。 ハルヒ「わかったわ…無理強いはしないわよ」 キョン「当たり前だ」 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/10(日) 21:06:33.45 ID:2NnjvUpP0 ハルヒ「あぁ、つまんない。ユキは快くやってくれたのにアンタは本当にチキンね」 キョン「えっ?」 見ると確かに長門の本を支える右手に親指が添えられていない。 それは支えを失ったように外側に揺れていた。 キョン「長門・・・お前・・・」 長門「問題ない」 ハルヒ「ほら、みなさい。アンタもやってみたら?」 キョン「一体どうしたってんだよハルヒ!」 俺は限界に来ていたのかもしれない。 そういえば数日眠れていなかったような気もする。 だが、長門が傷つけられたことによって俺の理性は吹っ飛んだ。 キョン「お前おかしいぞ!?突然、拷問だとかなんだとか気でも狂ったか!」 ハルヒ「ハァ?なに大声出してるのよ。おかしいのはアンタじゃないの?」 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/10(日) 21:11:49.60 ID:2NnjvUpP0 キョン「ふざけるのもいい加減にしろハルヒ!」 ハルヒ「きゃ、ちょっとなにすんのよ!離しなさい」 俺はハルヒの肩を思い切り掴んでいた。 まるで万力のように沸いて出てくる力にハルヒは抵抗も出来ず絞められていく。 ハルヒ「い、痛いっ、止めて、止めてよキョン」 キョン「お前は痛いだけかもしれんが長門はもっと痛いんだ!朝比奈さんはもっと痛かったんだぞ!」 ハルヒ「だ、だって…」 キョン「だってもクソもあるか!言え!なんであんなことをしたんだ!」 ハルヒ「だって……あんたが言ったんじゃない」 キョン「ヱ」 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/10(日) 21:17:29.93 ID:2NnjvUpP0 ハルヒ「あんたが拷問したいって……だから」 キョン「ちょっと、ちょっと待て。俺がいつそんなことを」 長門「涼宮ハルヒから離れて」 長門が突然俺たちの間に強引に割り込んだかと思うと、以前のように俺を弾き飛ばした。 今度は足ではなかったが、俺はしこたま背中を殴打して一瞬息が止まる。 キョン「な、ナガト…一体なn」 言葉は続かなかった。 見れば長門はこちらを向いている。 いつもの表情で、ただ首だけがこちらに。 キョン「あ、あああああ、あっあああ」 長門「問題ない」 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/10(日) 21:26:05.91 ID:2NnjvUpP0 問題ないと言った長門の首はそのまま床に落ちてこちらに転がってきた。 大量の血が長門の体だったものから勢いよく噴出す。 そんなことあるはずないのに、それは勢いよく、まるで雨のように降ってきた。 ハルヒ「まったくユキったら。突然なんだもんびっくりしちゃった」 ハルヒは右手に持っていた鋸で、狂いも無く長門の首を切断していた。 びちゃびちゃになっている自身の顔を袖で拭きながら、にんまりといやらしい笑みをこちらへと向けた。 ハルヒ「ねぇ、キョン。これでよかった?」 キョン「う、ウォエアァぁあ」 ハルヒ「何よこの位で吐いちゃうなんて情けない。あ、でもまた掃除しなくちゃいけないし同じか」 いつもと変わ らぬ そんな 態  度で ハル 非h いあ 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/10(日) 21:33:21.12 ID:2NnjvUpP0 目覚めると薄暗い洞窟のような部屋にいた。 四肢は拘束され、猿ぐつわか何かを噛ませられている。 ハルヒ「あ、ようやく起きたんだ」 珍しくハルヒの私服をみたな、なんてとぼけた考えが浮かんでしまう。 そのハルヒの手にはあの時、長門の首を斬った鋸と、赤い棒のようなモノが握られている。 ハルヒ「起きないから、起こしてあげようとしてたのに。ほら、こんな風に」 キョン「んグアアアアアアアアアアアアアァxxあsfgh」」 それを太ももに押し付けられると焼けるような痛みがせりあがって来る。 痛みに声をあげようにもまったく意味をなさない叫びにかわってしまう。 ハルヒ「ただの焼きゴテじゃない大げさね。目が覚めたんだったらそろそろ褒めてよ」 褒める?一体何が褒められるようなことなのか俺には理解不能だった。 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/10(日) 21:38:32.05 ID:2NnjvUpP0 ハルヒ「だってアンタが興味あるって言うから一生懸命調べたの。みくるちゃん達を使って実験もした」 ハルヒ「だからアンタは絶対に死なせないようにして拷問の限りを尽くしてあげる」 ハルヒ「ねぇ、だからキョン。アタシを褒めてよ」 ひたひたとハルヒの手が俺をさぐる。 焼きついた腿から腹、胸、首、頬、髪。 途中で口付けをしてにこりと笑った。 ハルヒ「今はこれでいいわ。これからもっと喜ばせてあげるからねキョン」 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/10(日) 21:46:19.07 ID:2NnjvUpP0 もう何日が経ったのか俺には判断が付かない。 とにかく長いこと居たのだけは確かだ。 その間にもハルヒは俺にいろいろな事を試した。 ハルヒ「ねぇ、水責めでもやってみる?」 と言っては、浴槽の中で首を絞められ、 ハルヒ「ねぇ、これなんてどう?」 と言われては、皮膚を猫の爪で引き裂かれた。 今ではもう、俺を俺と認識できる人間が果たしているのだろうか? 俺ですら自分が何者だったかを忘れかけている。 今はただこの苦痛に耐える日々。 今日もまたハルヒの声が聞こえてきた。 今日はどんなことをされるやら…やれやれだ。 ハルヒ「ねぇ、キョン。次これなんてどうかしら?」 【完】 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/10(日) 21:47:35.78 ID:2NnjvUpP0 >>49のせいで面倒になったからこれで止めるわ。 読んでる奴が異常者とか言われたら俺も気分悪いしな。 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/10(日) 22:28:28.91 ID:2NnjvUpP0 俺もめんどくさくなったんで終らせたくなっちゃっただけなんだがね。 コテンパンに言われてるし、古泉の事だけは書いとくかね。 というか俺もこれじゃ消化不良だわ。ゴメンネ我が侭で。 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/10(日) 22:35:13.00 ID:2NnjvUpP0 トイレで別れた僕の前に長門ユキが立っている。 彼女からこちらに接触してくるとは意外なこともあるものだ。 古泉「どうしました長門さん。彼ならまだトイレですよ」 長門「結論から言わせて貰う。今回世界を狂わせているのは貴方」 古泉「へぇー、どうしてそう思うんですか?」 長門「あなたはこれまで何度と無く涼宮ハルヒの為に手を尽くしてきた」 長門「それが貴方達の組織と関係あるのかは別として、今回もまた涼宮ハルヒの精神に介入している」 古泉「涼宮さんの精神を安定させるためですよ。涼宮さんの破壊衝動を発散させつつ、大局の破壊を止める」 古泉「効率がいいことだと思いますがね」 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/10(日) 22:40:54.07 ID:2NnjvUpP0 長門「それを利用して彼を巻き込むなら、私は貴方を許さない」 古泉「ふふっ、人聞きが悪いですよ。それにコレは彼を守ることでもあるんです」 長門「?」 古泉「涼宮ハルヒの精神は限界に達しようとしている。あなた方にも分かるでしょ長門さん」 長門「・・・」 古泉「これはね長門さん。確かに強引な手かもしれない。その性で朝比奈さんが犠牲になったことも認めます」 古泉「それでも僕は彼を守りたいんですよ。この世界を誰より望んだ彼を…ね」 長門「言い分は分かった。でもこのまま行けば私たちは全滅する可能性が高い」 古泉「だから長門さん、少しだけお願いがあります」 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/10(日) 22:47:59.74 ID:2NnjvUpP0 現状打てる手なんか殆ど打ってしまった。 強硬派を押さえつけておけるのも時間の問題。 涼宮ハルヒの破壊衝動は日増しに増えていく。 それを抑える意味での【拷問】という目くらましの手は、長門ユキにも効果を発揮した。 経過は良好、後は結果を待つばかり。 だが、均衡は数日で崩れた。 涼宮ハルヒの暴走、精神汚染による妄言、そして彼が囚われる。 もちろん涼宮ハルヒだけの力ではない。 都合のいいように強硬派が使われている。 だが、全ては計算どおりに進んでいた。 長門ユキが死んだことは、計算外だったが、こちらにとっては都合が良い。 アレに対して常識が通じないのは脅威だったから。 これで未来、宇宙の意志が涼宮ハルヒによって消える。 そろそろこの世界も崩壊してしまうだろう。 だが、それでいい。これでようやく僕も動けると言うものだ。 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/10(日) 22:55:13.16 ID:2NnjvUpP0 ハルヒ「ねぇ、キョン。次これなんてどうかしら?」 ハルヒが取り出したのは小さな筒だった。 それが何を意味しているのかは俺には分からない。 もう考えたくも無い。 死ぬのだろう…たぶん俺は。 そう思った瞬間、ハルヒの手が爆ぜる。 いや、持っていた筒が破裂したのだ。どうやら発破物だったらしい。 ハルヒ「あ、あぁ嗚呼アアAAAAAAAAAAAAAAAAえええええええええええええええWEEええええええ」 古泉「いやー、ここまでうまく行くとは拍子抜けですよ」 そこにいたのは、あの時姿を消していた古泉だった。 言っちゃ悪いが死んだと思っていたから結構驚いた。 古泉は懐から黒い塊を取り出すと何度かハルヒに向け、チカチカ光を放つ。 大きな炸裂音と、ハルヒの痙攣。撃たれていると気づくのに時間を要した。 古泉「さて、お怪我は…無い分けないですね」 猿ぐつわを外された俺は、久々の生の臭いに2,3咳こんでしまう。 古泉「あぁ、無理はいけませんよ。何日もこんなところでよく耐えれたものです」 67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/10(日) 22:59:40.84 ID:2NnjvUpP0 キョン「ぉ、こず、なっで」 古泉「無理はしない方がいいんですが、あなたの回復を待ち次第おいおい話します」 その顔はあの時とまるで変わらない笑みを貼り付けていた。 こいつほど奥が見えない人物を俺は知らない。 古泉「もうすぐ世界は崩壊するかもしれません。神たる涼宮ハルヒを殺してしまいましたから」 キョン「そ、か」 古泉「怖いとか、そういう感情はありますか?」 キョン「わ、か、ない」 古泉「そうですか。実は僕もです。崩壊していく世界を見ながら、僕はそれでも恐怖を感じないんです」 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/10(日) 23:05:43.10 ID:2NnjvUpP0 あぁ、崩壊は決まっているのか。 古泉の言葉の矛盾に少しだけ笑ってしまう。 もちろん、それが出来ているかなんざ俺には見当もつかないが。 古泉「少し付き合ってもらいたい所があるんですがよろしいですか?」 コクリ、と目だけで了承を送ると細くなってしまった俺の体を軽々と持ち上げた。 キョン「から、だ、ちか・・・いんだよ」 古泉「こんな時でもその態度は変わらないんですね」 本当に嬉しそうに笑う古泉を気持ち悪いとは思えなくなった自分が情けない。 ただ誰かに抱かれるというのが、苦しいほど切ない気分にさせる。 俺はハルヒの拷問でさえ耐えてみせた涙を、ここで始めて流していた。 古泉「さぁ、行きましょう。主を失った閉鎖空間へ」 72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/10(日) 23:11:31.39 ID:2NnjvUpP0 そこには以前あった景色は無く、本当にさら地になった星の姿があった。 誰にも干渉されない、人の存在した街。 もちろん街なんて表現は適切じゃないなんて事は分かっている。 古泉「寂しくなってしまいましたねここも」 キョン「アあ」 古泉「もしかしたら、ここに居れば崩壊からは免れるかとも思いましたが無理のようです」 そうだろうさ。人が生きていく為には水もいれば、食料もいる。 サバイバルするにしたって生物や植物の欠片さえ見えない。 よくて餓死だ。 古泉「あなたは怒るかもしれませんが、僕はこの結果に満足しているんですよ」 キョン「?」 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/10(日) 23:16:59.40 ID:2NnjvUpP0 古泉「確かに楽しくはありました。皆さんでワイワイするのを僕は肯定していたのかもしれない」 古泉「でもどうしたって不安はありました。神人に殺されたかもしれない、涼宮さんの気まぐれで消されたかもしれない」 古泉「宇宙人が侵略を開始したかもしれない、未来人が過去を変えていたかもしれない」 古泉「何より僕はこの世界とここに生きる今を、誰かに否定されるのが怖かったのかもしれない」 古泉「だからあなたという無為の存在に…この異端の地で惹かれたのかもしれませんね」 古泉「まったく、困ったものです」 74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/10(日) 23:24:38.08 ID:2NnjvUpP0 キョン「こ、泉」 古泉「はい?」 キョン「さい、ごだから、言わせて貰うが俺もな」 キョン「おれ・・・・・・も」 そう最後まで言葉を紡げず彼は息を引き取った。 もう彼だと分かる痕跡は少ない。 だから・・・。 古泉「ズルイ人だ。最後まで僕はあなたの事が分からなかった」 お互い様だ、と言われた気がする。 僕は彼の亡骸を降ろすと後ろにいた長門ユキを見やる。 古泉「それでは長門さん。後はよろしくお願いします」 長門「引き受けた」 78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/10(日) 23:36:05.19 ID:2NnjvUpP0 古泉一樹から頼まれた依頼は3つ。 彼が消息を絶ってからは事態を静観すること。 古泉一樹に関する情報を涼宮ハルヒに極力与えないこと。 そして3つ目。これはまだ実行できる状態ではない。 情報統合思念体もこの件については保留を提示していた。 だが涼宮ハルヒ消滅に対して、その影響も考慮にいれ過去の私へのフィードバックを開始。 これで数年前の私が、彼の願いである古泉一樹本人を殺すに至るかは不明。 古泉一樹を殺した際の時代の変化は見過ごせないレベルになるだろう。 どうなるかはもう私の手には委ねられていない。 この世界からあの世界に帰った時、私も消えてしまうかもしれない。 止まっている彼らのように。 曖昧な話ではあるが、私自身は戻って欲しいと願っている。 どこか壊れた私の願いとしては、出来すぎているのかもしれないが・・・。 79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/10(日) 23:47:08.92 ID:2NnjvUpP0 そもそもの始まりは、いつものようにハルヒが、 SOS団の部室でネットをしているというありふれた光景から幕を開けた。 周りはいつものように角で本を読んだり、お茶を汲んだりと本当にいつも通り。 各言う俺と古泉は、机の上で二人麻雀に精をだしていた訳だ。 古泉「あ、ツモです。九蓮宝燈」 キョン「マジかよ・・・いや、おかしいだろお前。死ぬぞ」 古泉「まぁ、二人麻雀ですからこういうこともありますよ」 キョン「そうかい」 古泉「さぁ、キョン君。賭けていた服を、きちんと脱いでくださいね」 俺と古泉がやっているのは賭け麻雀の一種。 詳細は脱衣麻雀でググレば出てくるが、もちろん変な趣味は無い。 現在俺がパンツ1丁、古泉は無傷。 それは極普通の高校生ならば真っ当な時間つぶしと言えたであろう。 古泉「さぁ、キョンくん。早くそれ取ってくださいよ」 キョン「武士の情けはないのかお前には!」 古泉「ヌッガース↑」 キョン「やめろー!」 そんな二人をチラッとだけ見て、長門は無表情に本のページをめくる。 ただ少し、ほんの少しだけ温かな気持ちで。そんな事情をもう誰も知るすべはない。 81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/10(日) 23:48:36.62 ID:2NnjvUpP0 これで完だ。 変な期待を持たせた人には本当に謝る。 あとみくるファンにも謝る。 とりあえずここまでお付き合いいただきありがとうございました。