キョン「なあ、お前…今暇か?」 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 01:41:09.56 ID:zbXQEvox0 古泉「暇ですよね」 とりあえず前のお題「キョンと古泉が三人をどう思ってるか」 みたいなのから投下します 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 01:42:33.83 ID:zbXQEvox0 「なあ、古泉」 「はい、何でしょう」 ハルヒ達はいなかった。 残された男二人で、暇つぶしのオセロに興じる。 「丁度俺達だけだし、腹割って話さないか」 古泉はくすりと笑うと、見当外れな位置に白を置いた。 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 01:43:32.00 ID:zbXQEvox0 「それは光栄です。ですが一体、議題は何でしょう」 空いていた緑のマスを埋め、黒を増やす。 「議題はずばり、SOS団の女子をどう思っているか、だ」 「ほう……」 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 01:44:27.79 ID:zbXQEvox0 朝比奈さんが淹れてくださったお茶を啜る。 俺自らがこういった話題を振るのは中々珍しいことだと自分でも思う。 だが、いつも美人三人組に囲まれているというのにこいつは自分から歩み寄ろうとしたりはしない。 そこが妙に引っ掛かっていた。 「ふむ、そうですね」 古泉は顎に手を置き、考えるフリをした。 どうせ吐くセリフなど決まっているんだろう。 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 01:46:08.61 ID:zbXQEvox0 「三人とも、とても素敵な方だと思います」 ああ、ああ、何だそのテンプレートな賛辞は 「おや、失礼しました」 全然謝罪の意が込められていないが、まあそれは置いておこう。 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 01:46:50.92 ID:zbXQEvox0 なあ、古泉よ 「はい、何でしょう」 「偶にぐらい、お前の本音とやらを聞かせてくれても良いんじゃないのか」 「そうは言われましても…」 「おっと、言わないならこの森さん秘蔵のお前の水着写真を校内にばらまくぞ」 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 01:48:57.14 ID:zbXQEvox0 「な!なんですかそれ!」 「ほらほら、これ何かすごく良い笑顔だぞ、女子が群がるんじゃないのか」 ポケットから取り出した幾枚かの写真。 それをちらつかせると古泉は慌てだした。 「な、何で貴方がそんなものを…!」 「何、ちょっとした取引をな」 「何なんですかもう!」 おお、少し仮面が剥がれてきたか? 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 01:50:17.85 ID:zbXQEvox0 「……ひとつ言っておきますが」 「なんだ?」 「僕があまり本心を話さないのは、僕の意志ではありません」 諦めたように古泉が椅子にもたれた。 ギ、と軋むパイプイス。 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 01:51:15.03 ID:zbXQEvox0 「上からの命令ですよ。先だってお話しましたが、涼宮さんの力を狙っている組織は他にもありますからね。あまり其処かしこで本当のことは話せないのです」 そこらの事情は俺には詳しく分からん。 だが、部室で、しかもハルヒがいない時くらい良いんじゃないか? 「……今回だけですよ」 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 01:52:04.15 ID:zbXQEvox0 「よし、という訳で早速本題に入ろうか」 止まっていたオセロが再開する。 「お前、朝比奈さんのことどう思ってる?」 あ、ちなみに魅力的な人ですとかそういうありきたりな感想は却下な。 古泉は今度は顎に手を当てなかった。 代わりに眉を寄せ、言葉を探しているようだ。 「朝比奈さん、ですか…」 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 01:52:53.66 ID:zbXQEvox0 「はっきり言ってお前さ、あの映画の時本気でキスしようとしてただろ」 「…………」 「大体、何でお前が朝比奈さんの身体に触れるんだよ、俺のアフロディテを抱きかかえやがって」 「…………」 「ったくよ、ちょっと面が良いからって調子乗ってんじゃねえか?」 「……ふ、随分な言いようですね」 おお、なんか笑みが偽悪的になってやがる。 「ええ、貴方が僕に嫉妬するのも分かりますよ、その顔では仕方ありません」 「なんだと、この…」 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 01:53:44.69 ID:zbXQEvox0 「ああ、朝比奈さんでしたっけ。彼女すごく軽かったですよ、それに抱き心地も良くてね、はは、貴方には一生分かりませんよね」 こ、この野郎…蓋を開ければ毒舌男だったのか 「いや、映画の時なんてそれはもう、僕は理性を総動員してましたよ。何しろ酔っぱらってましたし」 「…………」 「あの潤んだ瞳を至近距離で覗くなんて自殺行為だと思いません?あ、貴方は見てないから分かりませんよね、ははっ」 何だろう。この、心の奥から湧いてくる赤い感情は。 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 01:55:00.19 ID:zbXQEvox0 「あー、思いだすだけでも勃起ものですよあの表情」 「て、てめえ!!なんてこと言いやがる!!!」 「何今さら正義漢ぶってるんですか、彼女のフォルダまで作ってる人が」 「だ、だからって勃起とか言ってんじゃねえええええええええ!!」 「じゃあ貴方は今まで一度も彼女をオカズにしたことがないとでも?」 「う………」 何でこいつこんな堂々と勃起とか言ってんだよ。 つうかまさかこいつ俺のミューズをズリネタにしてねえよな… 「お、お前はどうなんだよ」 「僕ですか?ふうむ、まあ、あれから2、3日はお世話に…」 「てめえええええ死にさらせええええええええええええ」 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 01:55:56.12 ID:zbXQEvox0 「何怒ってるんですか、そんなことこの学校の男のほとんどが…」 「ぎゃあああああああああてめえそれ以上言うなあああああ!!!」 古泉はやれやれとばかりに肩を竦め、件の人物が注いだお茶を飲んだ。 俺も口に運んだが、朝比奈さんの痴態(妄想)が浮かんできて、思わず噎せた。 「それじゃあ古泉、お前長門のことどう思う」 「長門さんですか?」 なんかさっきより顔が晴れ晴れとしてないか、こいつ。 「長門さんは、そうですね…僕が話しかけても無視ばかりじゃないですか、彼女」 「ああ……まあ、そうかもな」 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 01:56:46.98 ID:zbXQEvox0 「あれって地味に傷つくんですよね」 何だお前傷ついてたのか。 いつもニコニコしてるから気付かなかったぜ。 「僕も人間ですから」 「じゃあ、あんまり長門のことは好きじゃないのか」 「いえ、そういう訳でもありませんよ。最近彼女の仕草の意外なかわいらしさに気がついたんです」 「仕草?」 「ええ、ほら、小首を傾げたり、あの身体なのにすごくよく食べるでしょう。そういうペットじみたところが可愛いな、と思うようになりまして」 「…………おまえ」 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 01:57:27.25 ID:zbXQEvox0 「まあ、最初の頃は空気程度にしか思っていませんでしたが」 「……………」 こいつ、実は結構ひどい奴なんじゃないか。 「それにしても、遅いですね彼女たち」 「ん?ああ、そうだな」 もう陽も落ちかけている。 今日は女性陣が揃って駅前のコスプレ専門店に出かけていた。 誰もいない団長席に、夕日が眩しい。 ヴヴヴヴヴヴヴヴヴ 「お?」 携帯が鳴った。 このタイミングの良さはもしかして、とディスプレイを確認する。 『着信:ハルヒ』 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 01:58:35.07 ID:zbXQEvox0 「はい、もしもし」 「あ、キョン?」 俺の携帯なんだから俺が出るだろう、そりゃ。 「屁理屈は良いわ!今あたし達駅前の喫茶店にいるのよ。買い物も終わったし、あんた達も暇なら来なさい!」 「まあ暇といえば暇だが」 「じゃ、いつものとこにいるから!20分以内に来ないと罰金よ!」 「へえへえ」 「何よその返事は!古泉くんも連れてきてね」 「ああ、分かったよ、じゃあな」 ピ、と携帯を切る。 やれやれ、オセロも粗方片がついていたし、さっさと出るか。 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 01:59:53.17 ID:zbXQEvox0 「おい、古泉、ハルヒが喫茶店に来いだとよ」 「おや、そうですか、では片づけましょう」 カタ カタ トン トン トン 「…貴方は」 「ああ?」 駒を揃えていた古泉が、作業を止めずに口を開いた。 「貴方は涼宮さんのこと、どう思っているんですか?」 返答に窮する。 俺は湯呑を重ねながら答えた。 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 02:00:36.97 ID:zbXQEvox0 「どうって、何だ」 「そのままの意味ですよ。貴方自身が彼女に抱く感情の種類は」 「答えなきゃいけないのか?」 「僕は割と素直に答えたつもりですがね」 あれが素直って…お前やっぱり分厚い仮面かぶってんだな、いつも。 「そ、そりゃあ、あいつは傍若無人だし、猪突猛進の独裁女で…」 いつも いつも 振り回されて 「彼女にするなら朝比奈さんが良いとは思う…」 「ほう……」 「だが、そんな風に思ってても、あいつから目が離せないんだ」 俺も大概、Mかもしれんな。 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 02:01:20.49 ID:zbXQEvox0 「ふふ、」 「何がおかしい」 「いえ、僕も時々、似たようなことを思うのでね」 「お前の場合は離したくとも離せないんだろ」 「それもそうですが…いや、ホッとしました」 何でお前が安心するんだ。 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 02:02:03.25 ID:zbXQEvox0 「本当は、貴方が涼宮さんを見離したりしないか心配だったんです」 古泉がゆっくりと笑む。 「色々と、不器用な人ですから、彼女は」 「もしも、見離すようなことを言っていたらどうしたんだ」 「さて…ぶん殴って、オセロ盤でひっぱたくくらいですかね」 おいおい、随分凶暴だな 「冗談です」 お前の冗談は冗談に聞こえん。 ほら、片づけ終わったなら、さっさと出るぞ。 「はい」 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 02:03:56.56 ID:zbXQEvox0 オセロを仕舞って部室から出る。 「どんなコスプレ買ったんだろうな」 「何でしょうね、スク水だと良いんですが」 「!」 「冗談です」 だからお前の冗談は冗談に聞こえない! 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 02:05:37.92 ID:zbXQEvox0 ――キィ ―――バタン 本当はあの時、古泉はハルヒのことが好きなのではないかと思った。 懐かしそうに微笑むその姿から、その懐かしみが何処へ向けられているのか、分かった気がした。 隠されたものを暴きたてようとすると、とんでもない不発弾にぶち当たる。 すっかりさっきのドS面を潜めさせた古泉を見ながら、そんなことを思った。 ―完― 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 02:07:00.10 ID:zbXQEvox0 と、いう訳でお題消化 つまんなかったらすまんこ 他にお題出してくれる人いる? 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 02:07:59.91 ID:++++A9Md0 ハルヒが授業中にションベン漏らす 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 02:09:24.99 ID:zbXQEvox0 >>37 お前それ… まあいいか、thx 溜めてくる。落ちたら落ちたで 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 04:23:24.05 ID:zbXQEvox0 清々しくも陽気な朝。 まだ眠い身体を引きずって、俺は学校へとぼとぼと歩いた。 「おっはよー、キョン!」 バシン、と小気味良い音を立てて背中が燃える。 痺れるような痛みが後ろから突きぬけた。 「いってーなあ!」 眠気も吹っ飛ぶようなビンタに振り返る。 案の定、団長様が立っていた。 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 04:24:07.42 ID:zbXQEvox0 「何よ、あんたの眠気を覚ましてあげたんだからお礼くらい言ったらどう?」 「寝言は寝て言ってくれ。ただの暴力に何で感謝しなきゃいかんのだ」 朝っぱらから50Wくらいの笑顔。 何でこいつはこんなに元気なんだ。 「ほら、シャキっとしなさい、シャキっと!」 ハルヒの鞄が俺の背中にタックルを決めた。 持ち主に似て凶暴なのかねえ。 「さ、今日も一日張り切るわよ!馬鹿キョン!」 やれやれ。 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 04:25:05.16 ID:zbXQEvox0 ◆ 「なあ、ハルヒ」 「……何?」 「何不機嫌になってんだ?それより、さっきの問題の答え教えてくれ」 2限が終了してすぐ、振り向いてそう言うとハルヒは露骨に嫌そうな顔をした。 朝はふつうだったってのに、何なんだ? 「別に!……さっきの問題って、ああ、これ?」 腕組みをしたハルヒは一瞬考えこんだが、すぐに教科書を覗きこんだ。 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 04:26:36.27 ID:zbXQEvox0 「ちょっとやだ、アンタこんなのも分かんないの!?初歩よ初歩!」 「む、悪かったな。俺はあいにく、お前のような頭の回転はしてないんだ」 全くしょうがないわねえ、と呟きながら、ハルヒは意外にも懇切丁寧に解き方を教えてくれた。 何だかんだ言って、やはり頭の良い奴だ。 「あ!もうこんな時間じゃない!」 「ああ、もうすぐ3限始まるな」 「……………仕方ないわね」 「すまんな、なんか用事でもあったのか?」 「な、何でもないわよ!」 そこで怒鳴る意味がわからんが、まあ良いか。 「ま、何にせよありがとな」 そう言うとハルヒはそっぽを向いて、唇を尖らせた。 「べ、別にいいわよ、このくらい」 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 04:27:31.82 ID:zbXQEvox0 ◆ 「よーし、じゃあ今日はここまでだー」 鐘の音に、50分の拷問から解放される。 大きく伸びをして、そういえば寝ぼけて聞いてなかった単語の意味をハルヒに聞こうと振り返った。 「ん?おい、ハルヒ、どっか行くのか?」 「へ?」 丁度立ち上がりかけていたハルヒとばっちり目が合う。 「どっか行くのか?」 「は?…えっと、」 そのままの姿勢で10秒ほど固まった後、するすると椅子に戻っていく。 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 04:28:35.60 ID:zbXQEvox0 「どこも行かないわよ!ただ背中が疲れたからストレッチしようと思っただけ!」 ストンと腰かけ、顔を反らしながら言った。 「そうか。で、急ぎでないなら聞きたいんだが」 「またあ?」 「ああ、ちょっと授業聞いてなくて」 「あんた弛んでるわよ!で、何処?」 「ああ、ここなんだが…」 結局その後も授業開始までハルヒに質問を繰り返した。 礼を言うとまたそっぽを向いたが、何かを我慢するように顰められた眉が何だか気になった。 「では、授業を始めます。この前の続きからね」 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 04:29:31.90 ID:zbXQEvox0 ◆ 起立、気をつけ、礼 4限目も終わり、いよいよ昼休み突入だ。 今日の昼飯はなんだろうと期待に胸を膨らませながら弁当を取り出す。 「あ、ちょっと涼宮さん」 科学の女教師が、ハルヒに話しかけた。 食堂へ駈け出そうとしたのか、不自然な格好で固まるハルヒ。 何となく俺はそれを眺めていた。 「あのね、岡部先生から伝言なんだけど。あなた音楽係でしょ?HRで校歌の練習をするから、電子ピアノを運んできて欲しいって言われたの」 「はあ…」 おや。いつもならそこで『何であたしがそんな事しなくちゃいけないのよ!』くらい言う癖に、妙にしおらしいじゃないか。 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 04:30:13.27 ID:zbXQEvox0 「5階の音楽準備室、開いてるから取りに行って欲しいんですって。お昼休み中に。大丈夫かしら」 「え、ええ、大丈夫よ!じゃあ、早速行って…」 「あ、待って!女の子一人じゃ危ないわ。えっと…そうね、貴方も行ってもらえる?」 そこで女性教諭が俺を見た。 …腹は減ってるが、ハルヒ一人で行かせるよりはマシか。 「ああ、大丈夫です」 「え、ちょっとキョン、良いわよ私一人で!」 「何だハルヒ、そのくらいで遠慮するな」 「そうじゃなくて…」 「じゃ、お願いね」 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 04:31:06.94 ID:zbXQEvox0 ◆ 「別にアンタが来なくても良かったのに…」 「何だよ、人がせっかく、」 「……………」 それにしてもハルヒの奴、妙に階段を上るのが遅くないか? 「おいハルヒ、お前そんなチンタラ上ってたんじゃ昼休み終わっちまうぞ」 「う、うるさいわね!」 「…ハルヒ、お前今日変だぞ」 「何がよ!」 「あれか?もしかして、便所行きたいのか?」 「ばっかキョン!!!!しね!!!!!!!!!!!」 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 04:32:15.08 ID:zbXQEvox0 ◆ 「な、おい、ハルヒ」 「………何、よ」 何とか5階にたどり着いたのは良かったが、ハルヒの様子はますますおかしかった。 「お前体調悪いんじゃないか?」 「………平、気…さっさと、運ぶわよ」 青ざめた顔で脂汗混じりに言われても、全くと言って良いほど説得力ないぞ。 「…とりあえず、運ぶか」 「………うん」 「じゃあ、せーのでいくぞ」 「…………」 「せーのっ!」 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 04:33:14.36 ID:zbXQEvox0 む。予想より重たい。 男の俺でさえ結構な重みを感じているんだから、ハルヒには荷が重いんじゃないだろうか。 「おいハルヒ、大丈夫か…ってうわ!」 「おも、い…きょん、ごめ、はなしていい、?」 「あ、ちょっと待てバランスが、あ、まだ離すな、ハルヒ!」 「あ、!」 ハルヒの手が電子ピアノから離れる。 揺れた本体に突き放されるように、ハルヒが尻もちをついた。 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 04:35:51.25 ID:zbXQEvox0 「いった!!」 「おい、大丈夫か?」 準備室の埃が舞い上がる。 倒れかかったピアノをぎりぎりで支え、尻もちをついたまま固まるハルヒに声をかけた。 「…………」 「おい、ハルヒ?」 ハルヒは俯いたまま、スカートを抑えていた。 「ハルヒ?」 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 04:36:53.49 ID:zbXQEvox0 「きょん………どうしよう」 え、と思った次の瞬間にはもう、俺はそれに気が付いていた。 ハルヒの足の隙間から流れる、一筋の水に。 ◆ すんすんとハルヒが啜り泣く。 俺は咄嗟に自分のブレザーを放り、 「体育着、取ってくる」 意外にも冷静な判断が出来たのは、妹がいて、こういった事には耐性がついていたからだろう。 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 04:38:11.56 ID:zbXQEvox0 階段を滑るように降りる。 俺はとにかく急いだ。 飯の途中だった谷口が、食ってたものを喉に詰まらせるほどの形相で。 とにかく急いだ。 「ハルヒ!」 準備室でうずくまったままのハルヒが、びくりと身体を震わせる。 「とにかく、体育着持ってきたから、トイレで着替えてこい」 俺のブレザーを握りしめたまま、俯いている。 仕方なく体育着を膝に乗せた。 「…雑巾とか持ってきたし、今なら誰もいないから、行って来い」 スックと立ち上がると、ブレザーを持ったままハルヒは駈けて行った。 後に残る水の筋に、どう反応すれば良いのか戸惑う自分がいた。 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 04:38:53.04 ID:zbXQEvox0 「とりあえず、拭くか」 乾いた雑巾に、生温かい水が吸い込まれる。 全部拭きとる頃に、ハルヒは戻ってきた。 「おう、おかえり」 「一応全部拭いたし、多分大丈夫だろ」 「……………、めん」 「ん?」 「…………ごめん」 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 04:42:14.09 ID:zbXQEvox0 ポツリ。 小さくて悲しげの声だった。 「引いたでしょ」 「………いや、別に」 「嘘!絶対引いたわよ!こんな、高校生にもなって、お、おもらし、なんて!」 「…引かねえよ。そりゃ、ちょっとビックリしたけど」 「…………嘘よ」 「嘘でも何でも構わんが、とりあえず保健室でも行くか?」 「…………帰る」 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 04:44:45.97 ID:zbXQEvox0 ◆ トン トン トン 心ここにあらずといった風に、ハルヒが階段を下りる。 その様子を後ろから見ている俺にとっては、非常に危なっかしいというかなんというか。 「おい、ハルヒ、階段は気をつけないと…」 「わぷ!!!!」 言ったそばから、ハルヒは階段を転げ落ちた。 手を伸ばそうにも、間に合わず、だがそんなに高い位置ではなかったのは幸運だろう。 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 04:46:37.86 ID:zbXQEvox0 「いったあ…」 「おい、大丈夫か?」 短パンから伸びる膝。 そこには、擦りむいた跡があった。 「うう…」 「血が出てるな…立てるか」 「うう、」 「………ハルヒ?」 「うああああああああ!!!!もう、何なのよ!!どうしてあたしがこんな目に遭うのよ!!」 「お、おい」 「もう嫌!!何なのよ!!信じらんない信じらんない信じらんない!…恥ずかしくって死にそうよ!!」 「漏らすし、転ぶし、擦りむくし、もう最っ低!!!」 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 04:47:34.24 ID:zbXQEvox0 うううううう、と唸るようにハルヒが泣き始める。 子供のように、豪快に。 「おまけにキョンは見てるし!学校でなんて、よりにもよってキョンなんて…!」 死にたいだの恥ずかしいだの叫び続けるハルヒ。 しばらくそれを見ていたが、そのままにする訳にもいかない。 俺は泣き喚くハルヒに背を向けてしゃがみ込んだ。 「ハルヒ、行くぞ」 「な…ぐすっ、何よ」 「歩けないだろ、それじゃ」 「何言ってんのよ、乗れないわよ!」 「いいから。さっさとしないと置いてくぞ」 またしばらく唸っていたが、ハルヒは渋々俺の肩に手をかけた。 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 04:48:56.40 ID:zbXQEvox0 「よいしょっと…おお、意外に重いな」 「何よ!う、うう…」 「おいハルヒ、そんなに泣くなよ」 「あ、アンタには分かんないわよ、こんな、こんな惨めな気持ち…!」 「むう…だがな、少しは分かるぞ」 「は?」 子どものようなハルヒを背負って、一段一段下りていく。 いつだったかこんな風に、妹を背負って歩いたことがあったっけ。 「じゃあ、ハルヒにだけ教えてやるよ」 「………なによ」 「………実はな、俺は中2までおねしょをしていた」 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 04:50:59.30 ID:zbXQEvox0 「えええええええええ!?アンタ、中2って結構最近じゃない!」 「そうだ。しかもな、中3の時なんて、我慢出来ずにプールで漏らした」 「はあああああ!?」 「あれは我ながら最悪だと思ったな。その後他のクラスが水泳やってたし」 「あ、あんた…」 「……なあ、ハルヒ。人間なんて、こんなもんだ。誰にでも失敗なんかあるし、隠したいことも、消したい過去もある」 「…………たかがお漏らしくらい、気にすんなよ」 67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 04:52:45.58 ID:zbXQEvox0 「気に、」 「…気に、するわよ」 おう。 「でもね、きょ、今日のことは、幸いアンタしか見てないんだから。だから、アンタの秘密をばらされたくなかったら、今日のことも忘れること!い、良いわねっ?」 「はいはい」 「はいは一回!」 「…あんまりうるさいと、振り落とすぞ」 「……な、何よ!」 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 04:54:04.81 ID:zbXQEvox0 お、もう一階か。 「で、どうする?教室戻るか?」 「………このまま帰る」 「担がれたまま?」 「あったりまえでしょ!」 ………はあ。 お前、少しは痩せたらどうだ?重いぞって、いってえ!! 「耳をつねるな!」 「ばっかキョン!!!!しね!!!!!」 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 04:57:02.30 ID:zbXQEvox0 ◆ 「ねえ、キョン」 「……なんだ?」 「今日のこと、絶対誰にも言わないでよね」 首元に、サラリとした髪がかかった。 「言わないさ。このネタは、お前がばあさんになっても、俺がからかい続けてやるからな」 「馬鹿キョン……あたしだって、プールのことはあんたの孫にまで語ってやるわ」 て、てめえ! きゃはは!ばーか! ―完― 72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/06(水) 04:59:50.13 ID:zbXQEvox0 保守とかしてくれたひとサンクスwwwww いつのまにか空が明るいな… 眉キョンもいけたらいってみる オナニーに付きあってくれてありがとうwwww