キョン「……また同じ日の繰り返しか…」 19 名前:25[] 投稿日:2009/04/09(木) 03:11:44.08 ID:/R0MeKuF0 違和感といって良いのかどうか分からない。 俺の記憶が根拠と言ったら頼りないが、この普段過ごしている日常がループしているような気がするのだ。 こうやってSOS団の部活でいつも通り朝比奈さんのお茶を飲みながら 古泉と代わり映えのしないオセロをしたとき。 ハルヒが俺に無理難題を言い、朝比奈さんがそれにフォローを加え古泉がバイトが 出来たと言い部室から出て行きそして長門が本を閉じる音で終わる。 デジャブというやつなんだろうか。 確かに普段からこんな日々を過ごしていると言われれば、そんな気がするが 俺の脳にチクリと何かが差しているようなそんな錯覚を覚えた。 「じゃあキョン。明日も来なさいよ」 そう言うや涼宮ハルヒは荷物を持ってドアから出て行った。 「ああ、また明日な」 俺は朱色に染まった部室でぼんやりと思索に耽っていた。 特に用事はないが、なぜかここにいなければならない…気がする。 「明日が来れば良いですよね」 ガラリとドアを開けて入ってきたのは古泉だった。 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 03:13:28.53 ID:/R0MeKuF0 バイトはどうしたんだ? そう尋ねようとする前に古泉はゆっくりとソファに座り込む。 そして、ポケットから優等生で通ってる古泉にふさわしくない四角い箱を取り出す。 そして箱の中からタバコを取り出して火をつけた。 俺はここで注意しなければならなかったのだが、なぜかそんな気がしなかった。 古泉がタバコを吸うのは当たり前と本来ならありえない認識をしていたからだ。 「あなたも吸います?」 古泉が手馴れた仕草で一本だけ飛びさせて俺に向ける。 「いや、俺は良いよ」 そう言って断ると、古泉がにやけ面を浮かべながらつぶやいた。 「あなたは何回勧めてもタバコだけは吸いませんよね」 そう言うとまた黙ってタバコを吸い始めた。 部室にふさわしくないタバコの煙がゆっくりと充満する。 「いつになったら今日が終わるんでしょうね…」 古泉が吐き捨てるように言った。 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 03:15:25.39 ID:/R0MeKuF0 「今日はあの宇宙人がいないから何回目なのかも分かりませんね」 宇宙人?長門のことか。こいつがこんな言い方をするのも始めて聞いた…ような気がした。 「しかし涼宮さんもひどいことをしますよね。こんな解決法の分からない謎かけをするなんて」 自嘲気味に古泉は笑う。 普段の快活な笑い声と違ってのどの奥にひりつくようなかすれた笑い声だ。 そして古泉の顔はひどく疲れていて高校生が見せる顔ではなかった。狂気じみたものを感じる。 「なあ古泉。もしかしてこの世界はループしているのか?」 聞いてはいけない気がしたが、なぜか聞かないといけない気がした。 「はあ…今回はあなたは記憶なしですか」 愕然とした表情でゆっくりと灰皿でタバコの火を消す古泉。 「それじゃあなたは前回したことも忘れてしまったのですね?」 声色が変わる。 「何をしたんだ?」 古泉の目が怖かったので消えかけのタバコの火を眺めた。 「涼宮さんを殺害したことですよ」 タバコの火が完全に消えていなかったのだろう。 まだかすかに煙がくすぶっていた。 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 03:16:57.07 ID:/R0MeKuF0 「どういうことなんだ?」 「だから涼宮さんを殺したんですよ。僕たちで」 ひどく冷たい声に聞こえる。 「おい!まさかお前ハルヒを殺害したのか!」 思わず俺は古泉の胸倉を掴んだ。 「ええ、僕とあなたが共謀して部室にて涼宮ハルヒが来たときに金属バットで頭部を 激しく殴打して首を絞めましたね」 古泉は俺に首をつかまれながらもいつも通りの笑みを浮かべていた。 「そして死亡が確認されたあと焼却場まで持っていきましたね。いやああのとき 教師に血のりがばれて危なかったですね」 「お前!」 淡々と語る古泉に恐怖を覚える。こいつはこんなやつだったのか? 「僕が提案してあなたも同意したじゃないですか。そのことも忘れたんですか? あなたも嬉々として涼宮さんをバットで殴ってたじゃないですか」 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 03:18:55.74 ID:/R0MeKuF0 どういうことだ? まさか…俺がハルヒを…? 頭が痛い。脳裏に断片的に記憶がよぎる。 …俺が古泉と一緒に居ていつも通り来たハルヒ。振りかぶる。殴る。 何が起こったか理解できない表情のハルヒ。そこを俺が高々とバットを振り上げて…。 蒼白としたハルヒから血が血が血が…。 「うわああああああああああああああああああああああああああ」 何だ何だ何だ。今の記憶は。 本当に俺がハルヒを殺したのか。 「ふん、ようやく思い出したんですか。まったく」 崩れた襟を直しながら古泉は立ち上がる。 「次はどうすれば戻れるかでも相談しようとしたんですが、この調子じゃ無理ですね しょうがないので、帰らせてもらいます」 古泉は頭を抱えて坐っている俺を一瞥した後、部室のドアを開けた。 「それじゃあまた明日…いや今日にでも会いましょうか」 再び部室に沈黙が残る。 「キョン君入りますよ」 困惑していた俺に声をかけたのは朝比奈さんだった。 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 03:19:40.20 ID:/R0MeKuF0 「…朝比奈さん?」 朝比奈さんがよいしょと軽い掛け声を出しながら俺の横に座った。 いつものように天使のような笑顔をしているが、部屋でさっきまで古泉が 吸っていたタバコの臭いに気づいたのだろう。顔を軽くしかめた。 「やだ。またあいつが来たのね」 あいつとは古泉のことなんだろう。聞いてみることにした。 「古泉のことですか?」 「そうよ。あいついつもキョン君にまとわりついてるから私大嫌い」 話題に出すだけでも嫌そうな顔をしている。 いつもというのは、普段の日常なんかじゃなくて古泉が言ってたループしている世界?の ことなんだろうか。 「もう何をしても無駄だってのにね」 クスクスと朝比奈さんが笑う。 普段ならこの笑顔によって癒されていたが、今の笑顔からは 嫌なものしか感じない。 「朝比奈さん。これはどういうことなんですか?」 いつもと違う朝比奈さんに困惑するが、まだ朝比奈さんなら教えてくれるかもしれない。 「キョン君は今回は記憶無しですか」 「古泉も言ってましたが、記憶無しってどういうことなんですか? あとハルヒは何を…」 まだしゃべろうとする俺の口が急に柔らかいものでふさがれた。 朝比奈さんが俺にキスをしたのだ。 「朝比奈さん!!な、何するんですか?」 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 03:21:25.64 ID:/R0MeKuF0 「どうでも良いじゃないですか。そんなこと」 キスをした後朝比奈さんがゆっくりと俺の顔をなでる。 その顔はとても妖艶なものだった。 「あ、朝比奈さん変ですよ。何があったんですか?」 緊張で喉がカラカラになった。 「ただ今日が永遠に続くだけなんです。未来も過去もありません。だから 難しいことなんか考えないで今を楽しみましょう」 そう言うとまたキスをしようとしたので俺は思い切り朝比奈さんを突き飛ばした。 「きゃあ!」 「失礼します」 俺は足早に部室を出ることにした。古泉も朝比奈さんもおかしい。 俺は知らず知らずの内に長門に電話をしていた。 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 03:24:06.64 ID:/R0MeKuF0 「お、おい長門。一体これはどういうことなんだ!?」 ワンコールも立たずに出た長門に対して俺は声を荒げた。 「…この時刻に電話をするのはこれで873回目」 やや物憂げな声で長門が答える。 「何を言ってるんだ!?」 「あなたの記憶がなくて私に説明を求めるのも688回目」 淡々と事務的に答える長門にも恐怖を覚える。 一体この世界はどうなっているのだ。 「な、長門!今から俺の家に行くからな」 「あなたが私の家に来るのも646回…」 糞!これ以上電話で話してもきりがない。 俺は通話ボタンを切って長門の家へと向かうことにした。 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 03:25:42.96 ID:/R0MeKuF0 長門のマンションには数えるくらいしか行ったことがないのに何故か一度も迷わずに着いた。 まるで何度もこのマンションに来たかのように…。 この出来事も俺の焦りを加速させていく。 ピンポンピンポンピンポーン。 非常識だとは分かっていたが、チャイムを何度も鳴らした。 早く、長門に会って、この事態を、どうにかしてもらわねば。 ドアが開く。 「入って」 普段通り制服姿の長門がそこにはいた。 靴を脱ぎ、通路を歩き、居間で机をはさんで長門と向かい合う。 「長門。この世界はどうなってるんだ!?」 この俺の一連の行動はすべて既知の事なんだろうか。 うんざりしているような顔で長門が俺の疑問に答えた。 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 03:27:20.16 ID:/R0MeKuF0 「涼宮ハルヒが何らかの原因によってこの世界をループさせた。今の世界は4325回目」 4325回…。どうやらとんでもないくらい世界は今日を繰り返してたみたいだ。 思わず気が遠くなるのを感じる。 「それで長門!げ…」 「原因は不明」 長門は俺の疑問の声にはさむ形で答える。 俺のこの疑問もまた何回もしたものだというのか…。 「最初はあなたたちには記憶が残らなかった。しかし世界が幾度か繰り返されると あなたたちにも記憶が残るようになった。しかし、あなたは記憶がないときのほうが多い」 この台詞も何度も使いまわされたものなんだろうな。 定年間際の教師がテープレコーダーのように授業をきっちり進めていくさまを思い出した。 「…じゃあ俺たちは今まで何をしたのかも知っているのか?」 「知っている」 長門の黒曜石のように黒い瞳が俺をじっと見つめる。 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 03:28:38.14 ID:/R0MeKuF0 「最初にあなたたちは涼宮ハルヒが機嫌を損ねているのかと話し合い機嫌を直させようと行動した しかし、物事は改善しなかった。そこであなたたちはやり方を変えて、あえて彼女に閉鎖空間を作ってもらう方針へと変えた」 いつの間にか用意したのだろうお茶が置いてあった。 すすりながら黙って説明を聞く。 「最初は部活をボイコットしたりして、あえて彼女の機嫌を損ねたりしたが閉鎖空間は特に発生せず 物事は改善しなかった」 「そのためあなたたちは次第に何をしても無駄ということに気づく」 いつの間にか夜になったのだろうか窓の外が真っ暗になっていた。 電気もつけていないため長門の白い肌がぼんやりと見える。 「そこであなたたちは原因が涼宮ハルヒの存在にあると思い始め、彼女の存在を 抹消しようとし始めた。そして涼宮ハルヒの殺害を繰り返す」 何だって?じゃあ俺と古泉が殺したのは一回だけじゃなくて。 「そう。涼宮ハルヒを98回殺害した」 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 03:31:03.98 ID:/R0MeKuF0 ということは俺はハルヒを…何度も殺して…。 全身に鳥肌が立つ。 「あなたと古泉一樹が共謀して殺すのが38回、古泉一樹が単独で殺した回数が17回…」 「やめろ」 「あなたが単独で殺したのが31回…」 「長門。これ以上言うな」 「回数の傾向から判断するにあなたが一番積極的に涼宮ハルヒを殺…」 「言うなって言ってるのが聞こえないのか!!!!」 いつの間にか俺は長門を押し倒していた。 そんな俺に長門は抵抗もせずじっと見つめる。 「あなたが説明を求めたから言っただけ」 そう言ったきり長門は口を閉ざした。部屋を沈黙が包む。 あるのは俺と長門の息が微かに聞こえる程度。 長門の上に乗っている部分から長門の体温を感じる。 このまま時間が永遠に経ちそうな錯覚を覚える。 「あなたが逆上して私を押し倒したのは342回」 沈黙を破ったのは長門だった。 「そして欲情したあなたが私に性交渉をしたのは198回」 暗闇で長門の表情が良く見えない。 「今回あなたはどうする?」 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 03:32:30.97 ID:/R0MeKuF0 俺は気が遠くなるほど同じことを繰り返しているのか。 長門の顔を見る。 長門は無表情だ。きっと俺が考えているようなことは全部してきたんだろうな。 「帰るよ」 俺はゆっくりと立ち上がった。ついでに長門の手をつかんで起こす。 「そう」 長門の手はぞくりとするほど冷たかった。 玄関に行き靴を履く。 「なあ長門。ちなみに俺がこうやって帰ったのは何回なんだ?」 背中越しに聞く。 これもまた聞きなれた質問なんだろうな。長門は戸惑いもせず答えてくれた。 「あなたがこうやって帰ったのは93回。そして回数を尋ねたのは58回」 返事をするのも憂鬱だ。俺はドアを閉める。 ドアの音が予想以上に大きくて俺は少し怖かった。 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 03:34:29.13 ID:/R0MeKuF0 家に帰って寝ることにした。 あいつらの言ってることが嘘に違いないと信じて。 AM7時18分 朝、目が覚める。 今日は良い天気だ。 「キョン君朝だよ」 妹が部屋に来て俺を起こす。 「はいはい今起きたから」 「キョン君は今日は珍しく早起きさんだね」 その言葉はいつかどこかで聞いたような気がするが聞き流して支度をする。 AM8時12分 クラスに着くとハルヒが今日は先に来てたようだ。 「今日は珍しく早いのね」 「ああ、何故か目が覚めてな」 「珍しい。雨でも降るんじゃないかしら」 ハルヒの冗談を適当に流して雑談をする。 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 03:35:34.68 ID:/R0MeKuF0 PM0時45分 「キョン。食堂に行こうぜ」 谷口が誘ってくる。 「ああ、良いぜ」 「あ、そういえば前借りてた500円今返すな」 「ったくもっと早く返せよ」 「すまんすまん」 PM3時48分 「キョン。今日は私が掃除当番だから先行ってなさい」 ハルヒがほうきで俺を突付きながら言う。 「へえへえ。早く来いよ」 PM3時55分 「ちーっす」 中には古泉と長門がいた。 誰も俺に返事しない。 まあこいつらにも機嫌が悪いときはあるだろう。 椅子に座ったら古泉がオセロの板を広げてた。 「用意が良いな。今日はオセロをしたいと思ってたからな」 「……そうでしょうね」 古泉がぽつりとつぶやいた。 おかしい。どこかでこのセリフを聞いたような。 しかし、気にしないでオセロをすることにする。今日も古泉は弱い。 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 03:36:58.23 ID:/R0MeKuF0 オセロの途中で朝比奈さんが入ってくる。 朝比奈さんも無言だ。 みんな機嫌が悪いなどうしたんだろう。 朝比奈さんの着替えが終わったあと再び古泉とオセロの続きをする。 負けた。 おかしい。普段の古泉とはありえない強さだ。 「今日は強いな古泉」 「……今日もあなたは記憶なしですか」 古泉はそう言うとため息をつく。なぜかタバコの臭いがする。 こいつはタバコを吸ってたっけ? 小さな疑問がわいた。 PM4時12分 「遅れてごめ〜ん」 ハルヒが入ってくる。 一瞬全員の空気が変わったような気がしたが、すぐ戻った。 うん。やっぱり機嫌が悪そうに見えたのは気のせいだったな。 しばらくするとハルヒが俺に無理難題を言い、朝比奈さんがそれにフォローを加え古泉がバイトが 出来たと言い部室から出て行きそして長門が本を閉じる音で終わった。 「じゃあキョン。明日も来なさいよ」 そう言うや涼宮ハルヒは荷物を持ってドアから出て行った。 ふ〜今日も一日が終わりだな。 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 03:39:03.33 ID:/R0MeKuF0 特に用事はないが、なぜかここにいなければならない…気がしたけど誰も来なかった。 しょうがないから今日は家に帰ることにした。 明日も晴れると良いな。 AM7時18分 朝、目が覚める。 今日は良い天気だ。 「キョン君朝だよ」 妹が部屋に来て俺を起こす。 「はいはい今起きたから」 「キョン君は今日は珍しく早起きさんだね」 その言葉はいつかどこかで聞いたような気がするが聞き流して支度をする。 AM8時12分 クラスに着くとハルヒが今日は先に来てたようだ。 「今日は珍しく早いのね」 「ああ、何故か目が覚めてな」 「珍しい。雨でも降るんじゃないかしら」 ハルヒの冗談を適当に流して雑談をする。 このやりとりもどこかでした気がする。 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 03:41:15.25 ID:/R0MeKuF0 PM0時45分 「キョン。食堂に行こうぜ」 谷口が誘ってくる。 谷口の顔を見ると何か思い出す。 「ああ、良いぜ……500円だっけ?」 「お、おう。良く分かったな。今返すな」 返してもらったけど何だ…この気持ちは? 「すまんすまん。って返すの遅れたからってそんな怖い顔するなよ」 どうやら無意識に顔が引きつってたらしい。 おかしいな別に腹は立ってないのに。 PM3時48分 「キョン。今日は私が掃除当番だから先行ってなさい」 ハルヒがほうきで俺を小突こうとした。から軽く後ろに下がった。 「あら?良くよけれたわね」 「ったく。早く部室に来いよ」 ハルヒのイタズラをよけれたのは自分でも謎だったが、気にしないで部室に行くことにした。 PM3時55分 「ちーっす」 中には古泉と長門がいる。 誰も俺に返事しない。 まあこいつらにも機嫌が悪いときはあるだろう。 椅子に座ろうとしたらそこにはオセロが…オセロ?オセロは昨日…。 俺の頭の中で何かが蠢いている。 「……今日はどっちですか?」 古泉の冷たい目が俺を俺を俺を……。 そうだ、また今日が今日だったのだ。 「う、うわああああああああああああああああああああああああ」 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 03:42:03.30 ID:/R0MeKuF0 「……ようやく記憶が戻りましたか」 古泉がオセロの板を地面にたたき付けた。 激しい音と共に白と黒のオセロがちらばる。 「お、おい古泉。これはどうなってるんだ!!?」 「やれやれ、何度も忘れられるあなたがうらやましい。宇宙人さん今は何回目ですか?」 古泉が本を読んでる長門に声をかけた。 「5012回目」 無機質な声で長門が答える。 5012回…だと?前に聞いたときより増えているのか。 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 03:44:44.41 ID:/R0MeKuF0 「いやあ大変でしたよ。あなたが最近は全然記憶が戻りませんでしたからね。 何回も同じオセロをするというのも苦痛で苦痛で」 ゆがんだ笑いで古泉が足元のオセロをかき回す。 「じゃあ今日は何をしますか?将棋にします?チェスにします?それともトランプが 良いですか?まあ全部やったことありますけど、ははははは」 俺は無言で椅子に座る。 目の前の古泉が、無言で本を読んでいる長門が 足元のオセロが、すべてのものに嫌悪感を感じる。 ああ、そうかこいつらが返事をしないのもこういう訳か…。 何てたってずっとずっと何も変わらないんだから。 ドアが開いた。 ハルヒの来る時間ではなかったから朝比奈さんだろう。 「うわ、何この床?誰がしたんですか?」 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 03:46:02.56 ID:/R0MeKuF0 とげとげしい声だ。 もう俺は二度と朝比奈さんの声で癒されることなんてないんだろうな。 「ああ、今日は彼の記憶が珍しく戻ってるみたいなのでオセロはやめさせてもらいました」 古泉が朝比奈さんに向かって言った。 「そうなんですか。でも誰が掃除すると思ってるんですか?」 朝比奈さんは無表情のままだ。 「それはあなたの仕事でしょう。何てたってSOS団でそう決まってますからね」 「白々しい。長門さん、涼宮さんが来るまでに直しておいてくださいよ」 長門は返事をしない。 重苦しい空気だ。いつからここがこんなに居づらい場所になったのか。 「なあ。もう一度脱出の方法を考えてみないか?」 俺が言うと全員が俺のほうを見る。 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 03:47:17.31 ID:/R0MeKuF0 無言の部室で沈黙を破ったのは古泉だった。 「あなたは毎回同じことを言いますね。これで何回でしたっけ?あ、宇宙人さん 別に言わなくても良いですよ。別にそんなことが知りたいわけじゃあない」 どうやら俺の提案も毎回されているようだ。 「だが、このまま繰り返してもしょうがないだろう。きっと何か手がかりがあるはずだ」 部室に聞こえるくらい大きなため息をつく古泉。 「あなたは言いますがね。どれほど解決に向けてしてきたのか忘れたんですか?」 脳裏に浮かぶはハルヒの死体。 血を出し尿を漏らし困惑しながら俺らに命乞いをして死んでいく姿。 気分が悪くなる。 「キョン君はあなたなんかと違って真面目なのよ」 クスクスと笑いながら朝比奈さんが口をはさむ。 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 03:49:29.95 ID:/R0MeKuF0 朝比奈さんの笑い声で露骨に顔を引きつる古泉。 「ふん、あなたのような淫売に言われたくはないですね」 朝比奈さんが舌打ちをした。 「そう言っておきながらあなたは私にしたことを忘れるつもりですか?」 以前、と言っても今日の出来事なんだろうが朝比奈さんが俺に迫ってきたときを 思い出した。 きっと古泉と朝比奈さんの間にも何かがあったのだろう、俺の知りたくない何かが。 この膠着した状況を打破したのは長門の一声だった。 「4時11分、涼宮ハルヒが来る時間」 この一声で古泉と朝比奈さんが言い争うのをやめた。 二人は離れた。今日もまた同じことを繰り返さないといけないのだろう。 机には先ほど古泉が床に投げつけたオセロが乗っていた。 「それではまた始めますか」 古泉が椅子に座る。俺も古泉に習って座ることにした。 ガラリとドアを開け入ってきたは涼宮ハルヒ。 「送れてごめ〜ん」 先ほどまで皆、無表情だったがハルヒがドアを開けたときに仮面をつけるように 変わった。もちろん俺も皆に合わせる。 楽しくもないのに笑うということはこんなにも辛いことなのか。 しばらくするとハルヒが俺に無理難題を言い、朝比奈さんがそれにフォローを加え古泉がバイトが 出来たと言い部室から出て行きそして長門が本を閉じる音で終わった。 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 03:50:31.21 ID:/R0MeKuF0 終わり?いやまた今日の始まりなのか。 数え切れないほど今日を繰り返して過去も未来もない永久の今日。 今日が終わって今日が始まる。 しかし、記憶は引き継がれ蓄積していく悪意と憎悪。そして絶望。 まるで砂時計の中に閉じ込められた錯覚に陥る。 「じゃあキョン。明日も来なさいよ」 そう言うや涼宮ハルヒは荷物を持ってドアから出て行こうとしたとき、俺はハルヒの 手を掴んでいた。 「な、何よキョン」 急に掴まれて戸惑った声を出すハルヒ。 「あ、…」 糞、言葉が出ない。 思い浮かぶ言葉はすべていつか使った気がする。 きっと俺は何回かは知らないだけでこうやって直接 ハルヒと接触を取ろうとしたんだろうな。 掴んだまま何もしゃべろうとしない俺にハルヒは業を煮やす。 「ちょっとキョン。言いたいことがあるならはっきり言いなさいよ」 言いたいこと? たくさんあるさ。 お前の望みは何なんだ?どうやったら解決できるだ? 何をしたらこの監獄ともいえるべき日常から解放してくれるんですか? 明日を返してください。元のSOS団に戻してください。 そして…殺してごめんなさい。 「う…う…ぁ」 知らない間に…俺の頬から涙が溢れてきた。 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 03:51:52.48 ID:/R0MeKuF0 「どうしたのよ、キョン何かあったの?」 ハルヒが俺の顔を心配げに見つめる。 何かあったわけじゃなくて何もなくて、でもそれが苦痛で。 「ち、違う…何も…ないんだ」 分かってくれ。分かってくれ。分かってくれ。 「そうなの?じゃあ帰るけど嫌な事あるのならちゃんと言いなさいね。相談には乗るから」 そう言うとまたハルヒは荷物を持ってドアから出て行った。 今日がまた始まる。 いや、始まりたくない。もうこんな日常は嫌だ。 先ほどから朱色の光が差している窓に俺は近づこうとしたら背後から声がかかる。 「無駄ですよ」 古泉だ。 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 03:52:49.76 ID:/R0MeKuF0 「今日は終わらないんですよ。例えあなたが死んでも」 タバコを吸ったんだろうか、背中越しに煙が漂うのが分かる。 「あなたじゃありませんが以前、朝比奈さんが手首を切って自殺したんです」 彼女は精神が弱いからですねと古泉は付け足す。 「しかし、それでも無駄でした。彼女が死んでも何も変わらないまま今日を迎えました ただ彼女には死の体験が追加されましたがね」 そうか…朝比奈さんの態度や言動が変になったのはそれが…。 「まあ元々あんなやつでしたから自殺したのが関係あるかは知りませんが」 俺の疑問も一度はこいつに聞いたことがあるんだろうな。 以前の長門のように聞いてもいないことをスラスラと答えてくれた。 「疑うなら今あなたを殺して差し上げましょうか?僕なら飛び降りるなんかより 楽に殺すことができますよ」 俺は古泉の方を向いた。 古泉はタバコを吸っているが、その目はどことなく虚ろだった。 「なあ、古泉。何でハルヒはこんなことを願ったんだろうな。お前の仮説でも 良いから聞かせてくれないか」 古泉は答えない、と思ったらボソリとつぶやいた。 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 03:54:30.26 ID:/R0MeKuF0 「涼宮ハルヒは神様なんです」 それは知ってると言おうとしたが黙る。 「そう。しかもそこらにいる神などとは比較にならないほど現実に実現させる能力がある。 あなたは神には何が必要なのか分かりますか?」 「何が必要…?願いをかなえる能力か?」 ちがいますと古泉は言う。 「神に必要なものは願いをかなえる能力じゃないんです。そりゃあったらあったで良いですが そこらにいる神は別に願いなんかかなえてくれませんよね?」 ふと俺は身の回りの神と呼ばれるものを思い出す。 確かに神に祈っても願いなんかかなわないというのは誰でも知ってる話だ。 「じゃあ何が必要かと聞かれると神を神足らしめるもの、それは信仰です」 「しかし、それは神は何か奇跡を起こすから信仰が集まるのじゃないか?」 「いえ、奇跡なんかは後付けで良いんです。神を信じることによって神が神になれるのです」 お前の言ってることは良く分からんな。俺は言う。 「ええ、だから何度でも説明して差し上げましょう」 そう言いながら笑みを浮かべる古泉。 少しぎこちなかったが昔の古泉の顔に戻った気がした。 「それでその信仰とハルヒがどう関係あるんだ?」 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 03:55:20.94 ID:/R0MeKuF0 「まあここからは僕の仮説ですがね」 古泉は短くなったタバコを灰皿に押し付ける。 「彼女は願いをかなえる能力を持っている。そして彼女は神である。 しかし誰も彼女を信じる人はいない」 「俺らはハルヒの能力を知ってるだろ」 俺ももちろん古泉も長門も朝比奈さんも。 そのためにSOS団が結成されたのだから。 「そこが違うんです。知っているじゃなくて信じないといけない。そして神に 何をされてもそれを受け入れてさらに信仰をする。…そんな人を欲してるのではないのでしょうか」 ということは…。 俺はとんでもない仮説に気づいてしまった。 「つまりこの永遠に続く今日というものはあいつの…俺たちに対する試練というやつなのか?」 出来の悪い生徒をようやく問題の答えを理解させた教師のように古泉は答える。 「ご名答。まああくまでも僕の仮説ですけどね」 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 03:56:51.53 ID:/R0MeKuF0 そろそろ日が沈む時間なのだろうか。 電気をつけていない部室が暗くなってきた。 「じゃ、じゃあ俺たちはどうすれば良いんだ…?」 古泉はポケットからタバコの箱を取り出す。 こんどはいつも吸ってるものじゃなくて小さな箱のものだった。 「何。昔から言われてるでしょう。信じるものは救われる…って。僕たちは何をされようとも 何をしようとも彼女を信じれば良いんです」 いつの間にか部室が真っ暗になってきた。 古泉の吸うタバコの火しかみえない。 「じゃあ、仮説も言ったし帰りますよ。今日はあの未来人も僕がここにいるから 来ないでしょうし。それでは…また今日にでも会いましょう」 そう言うと古泉は俺に何かをぶつけて出て行った。 追いかけようと思ったが投げられたものが何か見てみる。 それはタバコだった。タバコには特に興味がないが箱に印刷されてるものを 暗い部室の中、目をこらして見てみる。 そこには「HOPE」と印刷されていた。 「希望……か」 無性にタバコが吸いたくなったが、周りにライターがないからやっぱりやめた。 しょうがないので俺は長門の家に行ってみることに決めた。 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 03:57:42.90 ID:/R0MeKuF0 長門のマンションに着く。 どうせ俺が来ることは知ってるだろうからノックをしないでそのまま入った。 長門が机の前でチョコンと一人で座っている姿が見える。 机にはお茶が二つ並んでた。 「よう」 長門は返事をしない。 「古泉から聞いた仮説があるんだが」 「その話は24回目」 長門が重い口を開く。 そうか、24回か。だが何度でも言ってやる。 「この仮説をお前はどう思う?」 「ユニーク。だが非現実的。神は信仰などなくても存在し得るもの。あらゆるものを 超越したところにいるものがそのようなものを必要とはしない」 なるほど。朝比奈さんの意見も聞いてみたいところだが、きっと三人とも違うことを 言うんだろうな。 なぜかそんな気がした。 「じゃあ長門はハルヒが何でこんなことをしたと思うんだ?」 長門がチラッと俺を見る。おっともう回数を言うのはやめろ。 「彼女の気まぐれ」 長門の答えは非常にシンプルなものだった。 「以前彼女が望んだときは夏休みというものを永遠に味わいたかったから そして今回も恐らく彼女が何らかの理由で今が過去になることに恐怖を覚えたから今を固定した」 「じゃあどうすれば解決するんだ?」 67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 03:58:45.11 ID:/R0MeKuF0 「原因は不明」 なるほど。長門は以前聞いたときと答えが変わってないわけか。 「ただ彼女の無意識の中で今日を繰り返しているという認識はあるはず」 「ということは?」 「彼女が飽きればもとの世界に戻る」 なるほど。じゃあ5000回も今日を繰り返してなおも飽きないというのは何でなんだろうな。 「分からない」 そうか…。 「ただ」 うん? 「人というものは無限の可能性の今を見てみたいという欲求がある」 なるほど、パラレルワールドというやつか。 「そう。おそらく彼女は何度も同じ日を繰り返すことによってどのように世界 が変化するのかを見てみたいと願ったはず」 お茶をすすりながら長門は説明する。 長門は何回このお茶を飲んできたんだろうな。とつまらんことを考えそうになった。 だが、古泉も長門もアプローチの方法は違うがハルヒが今日を繰り返しているのは何かを 求めているということははっきり分かった。 「長門。帰るわ」 俺はお茶を飲まずに立ち上がった。 「分かった。頑張って」 長門は俺が何かをしようということは分かってるんだろうな。 長門のマンションを出て俺はハルヒに電話をすることにした。 71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 04:08:25.47 ID:/R0MeKuF0 コールの音がする。 ただハルヒと電話をするだけで何でこんなに緊張するんだろうな。 7コール目でようやくハルヒが出た。 「もしもし。キョン?どうしたの?」 「ハルヒ。良かったら今から会えないか?」 声が震えないように声をつむぎだす。 「はあ?あんた何言ってるのよ。こんな夜中に」 ハルヒが怒るのはもっともだ。俺だってこんな時間に来いと言われたら同じ ことを言うだろう。 「すまん。ちょっとお前に用事があるんだ。だから来てくれないか?」 しばらくの沈黙の後ハルヒが答えた。 「……分かったわ。で、どこに行けば良いの?」 「ああ、学校に来てくれないか?」 「学校?まあ良いわ。じゃあ準備をするから待っててね。」 ぷつりと電話が切れた。 時計を見る。 時刻はもう11時だった。 果たしてどうなるのだろうか。俺の考えは成功するのだろうか。 ポケットに入れたタバコを握り締める。 74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 04:30:28.10 ID:/R0MeKuF0 学校に着く。 時刻はすでに11時30分。 まだハルヒは来ない。 心臓が自分の物とは思えない速さで脈動している。 この不安感を紛らわそうと思ってウロウロするが落ち着かない。 果たして今自分がしたことが、すでに過去の自分がしたことなのかと思えば 今しようとすることも徒労に終わるだろう。 だけど、もうこれ以上今日をしたくない。 きっと回数を重ねていけばもっと嫌なことが増えてしまうはず。 古泉はこれを試練と言っていたが、ただの凡百な人間の俺には耐えることができない。 だから俺は神を殺そうとしてまで今日を抜け出ようとしたんだろうな。 また脳裏にハルヒが、ハルヒの姿が思い浮かぶ。 「あんたさっきから何ウロウロしてるの?」 俺の背後からハルヒが声をかけた。 「あ、ああ。ハルヒかそんなにウロウロしてたのか俺は?」 「ええ。まるで動物園の運動不足のパンダみたいだったわ」 ハルヒはいつもの制服姿だった。 「制服で来たんだな」 悪いとでも言いたげな表情でハルヒが答える。 「だって学校なんだから制服で来ないと」 こういうところは真面目なんだなと俺は返す。 「失礼ね、でももし警備員にばれても制服姿なら学校に忘れ物をしましたって 言ったら済むからってところもあるけど」 そう言って俺にいたずらっ子のような笑顔を見せる。 「それで用事って何?」 84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 05:09:31.31 ID:/R0MeKuF0 「ああ、ここで話すのもあれだから部室で話をしないか?」 「良いからさっさと用事を言いなさいよ。私はこういうチマチマした 前置きが嫌いなんだから」 さすが天下のSOS団の団長様だ。必死に俺はハルヒをなだめる。 「頼む。ちょっと長引きそうなんだ。それにここにずっと居たら怪しまれるだろ その点部室周りには警備員も来ないし」 俺の嘆願が効いたのだろう。ハルヒは渋々承諾をした。 「良いけどその代わり私に変なことをしたらぶっ飛ばすからね」 「はは、それは安心しろ」 そう言うと二人で校門の柵を乗り越えて部室に行くことにした。 部室に入ると電気が付かないから携帯の光で明かりの代わりにする。 馴れてるのだろう。ハルヒはわずかな光でも物にぶつかることなく自分の席に 座った。俺も普段古泉とゲームをしている椅子に座る。 「それにしても今日のあんたはいつもより変ね。何かあったの?」 椅子にもたれてハルヒは俺に聞く。 パソコンが点かないで手持ち無沙汰なんだろうハルヒはゆっくりと椅子を動かしている。 そんなハルヒに俺は汗ばんだ手を握りながら聞いてみることにした。 「なあハルヒ」 そう…今までの謎を。 「何よキョン」 部室に椅子がきしむ音が響く。 「本当はお前は知ってるんだろ?今日が何回も続いてるって」 ぴたりと椅子のきしむ音が消える。 部室に静寂が戻る。 携帯の光だけが青白く俺を照らしていた。 87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 05:34:34.90 ID:/R0MeKuF0 「もうこんな日が続くのは嫌なんだ。戻してくれよ」 ハルヒは無言だ。 「一体何をしたら満足なんだ?教えてくれ。延々と続く今日ってやつは実は試練で俺らを試してるのか? それともただお前がパラレルワールドというものを体験してみたいからなのか?」 ハルヒがこっちを見る。 携帯の光が消えて部室がまた暗くなった。 「……面白い話よね。あんたの言ってることって。SF作家とかでも目指したら」 暗闇の中ハルヒが言う。 「それで言いたいことってまさかそれだけ?それならもう帰らせてもらうわね あんまり遅いと怒られちゃうし」 ハルヒが立ち上がって部屋から出て行こうとする。 そんなハルヒに俺は逃がさないように肩を掴む。 「おいハルヒ待ってくれ!明日を…明日を返して欲しいんだ」 92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 06:57:23.01 ID:/R0MeKuF0 「だから何でそれを私に言うわけ?」 「そ…それは…」 言葉につまる。ハルヒが神であるということを本人に言うのはどうなのか。 俺の覚えている限りハルヒにハルヒが神だからはと直接は言ってはいない。 これを言えばハルヒの自我が暴走して世界が崩壊する可能性もある…から。 「ないなら帰るわ。本当ならこんなことを言うために呼んだことを怒るけど何か あんたも勘違いしてるみたいだから許してあげるわ」 ハルヒが俺の掴んだ肩をふりほどく。 時刻は11時50分。また同じ今日が来るのか。 もう嫌だ嫌だ嫌なんだ。 ハルヒがドアへと向かって行く。 何でこいつは俺の言うことを分かってくれないんだ?もう十分じゃないか? 分かってくれないならいっそ…。 ハルヒがあまりにも無防備に背中を向けていたから思わず後ろから首を絞めようと…。 長門の言葉を思い出す。 『回数の傾向から判断するにあなたが一番積極的に涼宮ハルヒを殺…』 駄目だ。このままじゃまたゲームオーバーだ。 ここまで来たならおそらくハルヒはまた俺の記憶を消して、今日を繰り返すだろう。 今まで俺が一番記憶があるときが少ないのはきっとハルヒに直接何かをする確率が高いから。 だから俺は何度も同じ毎日を繰り返す。 刻々と時計の針が進んでいく。 考えろ。何をすればハルヒは分かってくれるのか。 しかし、その時ふと古泉の言葉を思い出した。 『あなたじゃありませんが以前、朝比奈さんが手首を切って自殺したんです』 ということは…。すべての回路が結びつく。 「ハルヒ!俺は今から死ぬぞ!!」 98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 07:40:17.14 ID:/R0MeKuF0 ハルヒが俺を見る。 「あんたさっきから何言ってるの!?やっぱり頭おかしいんでしょ?」 おかしい?そうかもしれない。 だけどおかしくならないとこんな日常をやってなどいられない。 「俺は今日が繰り返されるたびに自殺をし続ける!」 机の上にあったハサミを喉に押し付ける。 刃物の冷たい感触が喉に伝わる。 「馬鹿な真似はよしなさい!」 「動くな!」 俺に近づくハルヒに怒鳴りつける。 俺が今までの中で自殺をしなかったのは、けして精神的に強い人間だからではない。 まず物事を解決するためにハルヒを殺そうと考えるような弱くて自己保身をすることしか 考えていない卑怯な人間だ。 こんな人間が神に対抗しようと思ったらどうすれば良いか。 そう、こんな卑怯で能力もない人間が神を乗り越えるためには 死を持って対抗せねばならないのだ。 ハルヒのこの世界を抜けるためには俺の世界を消滅することによって成り立ち、また ハルヒの能力に対して俺が死という対価を払う行為をする、つまり俺はハルヒの ために殉教をする。 古泉と長門の仮説を証明するために、そしてこの忌まわしい世界からも抜けるためにも 俺は喉にゆっくりとハサミを刺した。 喉からほとばしる赤い液体。瞬時に脳が暗転する。 スローモーションのようにハルヒが俺に駆け寄ってくるのが見える。 これが正解なのか…? いや、もうどうでも良い。 これで、これで俺はこの世界から抜け出すことが出来るはずだ。 すべてが無になっていく。 102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 07:57:41.95 ID:/R0MeKuF0 AM7時54分 気づけば朝だ。 何か長い夢を見ていたような気がする。 悪夢のせいか体がだるい。 窓の外を見れば雨が降っていた。 憂鬱だ。晴れればよかったのに。 妹が俺を起こしに来た。 「キョン君朝だよ」 妹が部屋に来て俺を起こす。 「ん〜まだ寝たりないな」 「キョン君、早く行かないと遅刻しちゃうよ」 時計を見るとギリギリの時間だ急がねば。 朝飯も食わないで俺は家を飛び出る AM8時25分 クラスに着くとハルヒも今着いたようだ。 「相変わらず遅いのね」 「ああ、何か疲れてて起きれなかったんだ」 ハルヒと適当に雑談をする。 104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 08:09:48.80 ID:/R0MeKuF0 PM0時44分 「キョン。食堂に行こうぜ」 谷口が誘ってくる。 「ああ、良いぜ」 「あ、そういえば今日ちょっと金足りねえんだ。500円だけ貸してくれない?」 「ったく明日返せよ」 「すまんすまん」 PM3時45分 「キョン。掃除を済ませたら早く来るのよ」 カバンを持ったハルヒが俺に言う。今日は俺が掃除当番の日だ。 「へえへえ。分かりました」 俺はとりあえずほうきを持って床を掃く。 教室が終わったと思ったら、違うクラスも掃除をしに行けと担任に言われた。 何やら今日は校内の大掃除の日らしい。時間がかかりそうだ。 ハルヒにその旨をメールで送っとく。 今日は遅れそうだと。 110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 09:15:13.06 ID:/R0MeKuF0 PM4時12分 掃除を終え部室に行くことにした。 「遅れてすまん」 部室に入る。 ハルヒが相変わらずの仏頂面でパソコンを睨んでいて、長門が相変わらず本を読んでいて 俺がいないからだろうか古泉が朝比奈さんと珍しくオセロをしている。 糞、俺と代われ。 「キョン遅い!」 ハルヒが不機嫌そうに俺に怒鳴る。 まあまあと適当にハルヒをなだめつつ、朝比奈さんと代わり古泉とオセロをする。 相変わらず古泉は弱い。 朝比奈さんは朗らかな笑顔で俺にお茶を汲む。 ああ、あなたの笑顔は俺のオアシスです。 そうこうしているうちにいつも通り長門の本を閉じる音で部活が終わった。 長門は早々に帰り、それに続いて朝比奈さんも帰った。 古泉は何か用事があるから部室に残るらしい。 俺も帰る準備をしていたら、ふとハルヒが俺を見つめている。 「どうした?」 と、ハルヒに聞いてみた。 ハルヒは首を振る。 「いや何でもないわ」 ハルヒが笑ったような気がした。 「じゃあキョン。明日も来なさいよ」 そう言うとハルヒは部室から出て行った。何かが俺の心にひっかかる。 しかし、気にしないことにした。 ふ〜今日も一日が終わりだな。 113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 09:37:33.03 ID:/R0MeKuF0 廊下を歩いていたら尿意を催した 「便所に行くか」 誰に言うでもなく一人つぶやく。 トイレが終わって鏡の前でポケットの中のハンカチを取り出そうと思ったら 中に四角い箱が入っていたのに俺は気づいた。 なぜこんなものが入ってるのかと手に取ったらそれはタバコだった。 そのとき、脳に電撃が走る。 そうだ、俺はすべての記憶を思い出してしまったのだ。 あの忌々しい記憶を。 今日は、今日は何日なんだ!?慌てて周囲の掲示板に張られている日付を見る。 すると今日はあの忌まわしい日の一日前。 つまり昨日。 ということは、ということは 明日を迎えるたびにまたあの永久に続く日がやってくるのか!? まさか俺が明日を返して欲しいと言ったからお前は一日だけ明日を返してくれたのか!? そうなのか?涼宮ハルヒ?! 俺の脳裏に流れてくる。古泉がタバコを吸っていたこと、朝比奈さんがおかしくなってること、 長門がただの記録係に過ぎないロボットのようになってること。ハルヒを何度も殺したこと。 そして、俺の死ぬときの痛み。 どうやら今回は鮮明と記憶に残っているようだ。 想像するだけでも吐きそうになる。 恐らく今回記憶を保持しているのは俺だけ。 また長い一日が続く。 ふと、鏡の前で蒼白とした表情の俺が笑う。俺は分かったのだ。 俺の顔はひどく疲れていて高校生が見せる顔ではなかった。狂気じみたものを感じる。 …なるほど、こういうことか。 ポケットの中のタバコの箱を握りつぶす。 115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 09:59:05.93 ID:/R0MeKuF0 部室に戻る。 古泉が一人で椅子に座っていた。 「おや、あなたですか。どうされました?」 「いや、ちょっと用事を思い出してな。お前こそどうしたんだ?」 何かを喪失としたような表情で古泉が言う。 「いえ、何故か今まで長い夢を見ていた気がしましてね」 俺はポケットの中のくしゃくしゃのタバコの箱からタバコを取り出し、火をつける。 「急にそんなことをされてどうしたんですか?」 俺は無言で煙を吸う。喉にむせそうだ。 だが、我慢してタバコを吸う。俺にタバコは向いてないんだなと思ったが何、どうせいつかは馴れるだろ。 時間はたっぷりあるんだ。 「お前も吸うか?」 くしゃくしゃのタバコを古泉に見せる。 「僕は良いです」 古泉がそう言って断るの聞くと、思わずにやけ面を浮かべてしまう。 どこかで聞いたような台詞だ。 117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 10:04:15.92 ID:/R0MeKuF0 もしかしたらハルヒに俺の願いがかなって明日は来ないかもしれないし、俺の 願いを無視して来るかもしれない 分かったことは俺の最後の抗議がハルヒに有効だということだ。 だが、もう俺みたいなつまらなく卑怯で無力な人間はもうあの痛みに耐えることは無理だろう。 あんなこと一度体験しただけで真っ平ごめんだ。 やはり俺みたいな人間は神には逆らえないんだな。 俺の行動で神に逆らおうとしたことが愚かな行為なんだ。 俺みたいなやつはただ願うことしか許されていないのだろうな。 ありもしない希望と言う奴を。 白い煙はゆらゆらと部室に広がり、そして消えていった。 外を見る。鈍い色をした曇天の空が広がっている。 まるで今の俺の気持ちを代弁しているかのような素晴らしい天気だ。 俺はゆっくりと煙を吐いた。 そして、俺が急にタバコを吸ったせいで困惑した表情をしてる古泉に言うことにした。 「明日が来なければ良いよな」と 118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 10:05:33.96 ID:/R0MeKuF0 キョン「……また同じ日の繰り返しか…」 終わり 123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 10:15:02.12 ID:/R0MeKuF0 いやあループ物は難しいですね しかしこのスレは何か魅力があるのか知らないけどやたら頑張って乗っ取りしたがる人が いましたね 別にタイトル使って違うss書くのは構わないんだけど人の文章も取ってタイトルまで変える くらいなら別にスレを立て直して欲しかったというのが個人的な感想ですね それか文章と設定を借りてるくらいは一言言って欲しかった こっちがパクリといわれるのは嫌なんで それでは 130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/09(木) 10:32:45.69 ID:/R0MeKuF0 オリジナルを書いたのに書いてないか… 乗っ取った人のss見てないんだけどな まあまた違うssスレ立てますから見てください