涼宮ハルヒの怪談 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 16:33:31.40 ID:D6Nft/lrO つまらない前スレ http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1237968312/ 今日も落ちるまで、ハルヒで怪談都市伝説等。 ありきたり、パクリ、改悪の三拍子揃ったつまらないオナニーをどうぞ。 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 16:36:23.09 ID:D6Nft/lrO 『口裂け女と長門』 「私、綺麗?」 帰宅途中、長門はマスクをした女に出会った。 「……口裂け女」 「あら、知ってるの?」 「……有名」 「なら、話が早いわね。」 そう言うと口裂け女はマスクを外して、耳元まで裂けた口を長門に見せた。 「私、綺麗?ちゃんと答えて?さもないと……」 口裂け女は刃物を振り上げた。長門が、どのような返事をしても降り下ろすつもりで。 しかし、長門の返事はあまりにも意外な物だった。 「……私のほうが綺麗」 「へ?」 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 16:39:18.10 ID:D6Nft/lrO 長門はそう呟やくと、カッターナイフを取り出した。 そして自分の口に突っ込み、ギチギチギチと右側がら引き裂き始めた。 カッターナイフは口の内側から頬を引き裂き、耳元に来ても勢いは止まらない。 耳を引き裂きながらそのまま後頭部へ。血が吹き出しているがお構い無しに引き裂き続ける。 そして、左耳から口元まで一気に引き裂いた。 「……私と貴方、どっちが綺麗?」 長門は血を吹き出しながら、口裂け女に質問した。 「こ、こんなのって……こんなのってないわよ!」 口裂け女は泣き出した。 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 16:40:25.34 ID:D6Nft/lrO 「私より口を引き裂く女がいるなんて……これじゃあ私……!」 泣き叫ぶ口裂け女。 長門はやれやれと言う顔をして、口裂け女をその場に残して帰っていった。 長門は帰りながら、自分で引き裂いた場所を手のひら撫でた。 そのままぐるりと回すと、長門の顔は何事もなかったように元に戻っていた。 12 名前:元ネタ。高橋葉介[] 投稿日:2009/03/26(木) 16:42:38.00 ID:D6Nft/lrO 『通学路』 「ピッカピカの一年生だねっ!少年もこれから学校かいっ?」 横断歩道で信号待ちをしていた鶴屋は、真新しいランドセルを背負った少年に話しかけた。 少年の帽子と制服を見る限り、近くにある小学校の入学生だとわかる。 元気に話しかけた鶴屋をチラリと見て、少年は返事をした。 「横断歩道が渡れないんだ」 「へ?」 「僕、横断歩道が渡れないんだ。 だから学校に行けないんだ」 「なぁに言ってんのさっ!ほら、お姉ちゃんが手をつないであげるから、一緒に渡ろっか!」 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 16:44:12.03 ID:D6Nft/lrO 鶴屋は少年の手をつかんで、一緒に横断歩道を渡ろうとした。 「ここ」 「ん?少年、何か言ったかい?」 スウッ 一緒に手をつないでいたはずの少年が横断歩道の途中で消えてしまった。 驚いて後ろを振り返ると、先程話しかけた場所に少年が哀しげな表情で立っていた。 「……僕、そこで車に車に轢かれたんだ」 「昨日の入学式の日に」 「だから僕、この横断歩道は渡れないんだ」 「あっ……」 先程から違和感を感じていた鶴屋は、少年が霊だという事。そして横断歩道を渡れない理由を知った。 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 16:45:03.09 ID:D6Nft/lrO 「じゃあこうすればいいっさ!」 鶴屋は笑顔で少年の元に駆け寄って手を握ると、少し離れた別の横断歩道に向かって歩き出した。 「あっち側を歩けばいいのよ!」 「え?え?」 少年の霊は驚いた。車で轢かれ、ここに縛りつけられたと思っていた自分をぐいぐい引っ張って行く鶴屋に。 「あの、こういうのって『あり』なの?」 「いいのよ!何だって『あり』なのっ! 」 鶴屋は笑顔で戸惑う少年の手を引っ張り、別の横断歩道を渡りだした。 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 16:45:54.15 ID:D6Nft/lrO 「ほら、渡れた!」 今度は少年の霊は途中で消えなかった。 「少年!これで学校に行けるね!」 「うん!」 少年の霊は笑顔で消えていった。 ……… …… … 「お母さん、手術は成功しました。お子さんは助かりますよ」 「本当ですか!良かった……!」 「大変でしたね、入学式の日に車に轢かれるなんて。 でも、もう大丈夫です。後遺症の心配もありません。元気に学校へ行けますよ。」 手術室から運ばれて来たのは横断歩道を渡れなかった少年と同じ顔をしていた。 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 16:47:18.15 ID:D6Nft/lrO 『読書』 昼休み その日も一人、部室で黙々と読書を長門有希は続けていた。 読んでいるのは『流川涼』という作家の『分裂の春』 物語が佳境に差し掛かった時の事だった。 「はやく次のページを開いてよ」 「……待って、まだ読んでいる……?」 後ろを振り返ると、血塗れの見知らぬ少女が立っていた。 「……貴女は?」 長門有希が問いかけると、血塗れの少女は驚いた顔をして消えた。 「………」 しかし、まだ気配を感じる。 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 16:48:36.54 ID:D6Nft/lrO 「……出てきて」 返事は返って来ない。 「……大丈夫、一緒に読みましょう」 「ホントに?」 目の前にスウッと、血塗れの少女が現れた。 「私が見えるんでしょ?怖くないの?」 長門有希は静かに頷いた。 「貴女みたいな人、初めてだわ」 「……邪魔をしなければ、特に気にはしない」 「ホントに?さっきは急かせてごめんね。 じゃあ早速、一緒に続きを読みましょうよ!ねえ!?」 「………」 長門有希は椅子に座って、血塗れの少女と一緒に読書を再開した。 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 16:50:15.61 ID:D6Nft/lrO 「うふふ、貴女に会うためにずっと幽霊やってたかも」 読み終わった長門有希に、血塗れの少女は話しかけた。 「私ね、下校中に車に轢かれて死んだの。その日は大好きな作家の新刊日でね、それで急いじゃって」 「………」 「……幽霊と話すのは嫌い?」 「……そういう訳では無い」 「まあ、いっか。私、立石って言うのこれからも宜しくね」 「……私は、長門有希」 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 16:53:35.29 ID:D6Nft/lrO 「ねえ、この『分裂の春』の続編はないの?」 「……まだ刊行されていない。延期になっている」 「え?なんで?」 「……私にもそればかりは」 「延期って事は……有希さん、会ったばかりだけど私ちょっとやる事出来ちゃった。 暫くしたら貴女のトコに戻ってくるから待っててね!」 そう告げると消えていった。 「………」 それから暫くして『驚愕の春』の刊行日が決まったと、ニュースで伝えられた。 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 16:54:36.68 ID:D6Nft/lrO 「ただいま!」 「……貴女の仕業?」 長門有希の手には、購入したばかりの『驚愕の春』があった。 「ええ、そうよ。出版社やら何やらゴタゴタがあったみたいけど」 「……何をしたの?」 「うふふ、関係者全員の枕元に立って囁いたの『読みたかった』って、ただ一言ね。 血塗れの私が毎日囁くんだから。効果はてきめんよ」 「……そういう事は作品のクオリティを落とす事に」 「大丈夫よ。原稿はほぼ完成していたわ。それに今回のような時だけよ。こういう事をするのは……ってそれより、はやく一緒に読みましょうよ!」 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 16:56:27.22 ID:D6Nft/lrO 長門有希は少し溜め息をついて椅子に座り、本を開いた。 「私、永遠にこのまま幽霊でもいいわ。ずっと本が読めるもの。有希さんもそう思わない?」 後ろに回り込んだ血塗れの少女が囁いた。 長門有希はそれも良いかも知れないと思い、無言で頷いてページをめくった。 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 17:03:03.15 ID:D6Nft/lrO 『右肘の印』 「赤ちゃん?」 休み時間の事だった。 ふと、廊下を見るとハイハイしている赤ちゃんがいた。 どうやら他の人は気づいていないらしい。 「もしかして母親を探しているのかな?」 予想通り、ちょっと遊んでそうな上級生の元に嬉しそうに向かっていった。 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 17:06:07.33 ID:D6Nft/lrO 赤ちゃんはその上級生の足元にたどり着くと、そのままよじ登り始めた。 「お腹にいくのかな?」 今度は予想が外れた。 赤ちゃんはそのまま上級生の右肘に触れるとニッコリ笑って、スウッと消えていった。 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 17:10:50.60 ID:D6Nft/lrO 「あの人、妊娠したのかな?」 「ちょっと貴女、何を言っているの!?」 しまった。上級生に聞こえたみたいだ。うっかり大きな声を出してしまった。 右肘に赤ちゃんが消えた上級生が、私に凄い剣幕で近づいて来た。 「誰から聞いたのよ?」 「えっと……その……」 「ちょっとトイレに来て!」 「ひゃっ!?」 私は上級生にトイレに連れ去られた。 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 17:17:31.21 ID:D6Nft/lrO 「誰から聞いたの!?」 威圧的な態度の上級生に、私はすっかり脅えていました。 「な、何となくそんな気がして……ご、ごめんなさい!」 まさか赤ちゃんの幽霊が、なんて言えるはずもなく、ひたすら頭を下げた。 「……まあ、いいわ。誰にも言わないでよ!?」 「ひゃ、ひゃあい!」 「私が堕ろした事、言いふらしたりしたら後でヒドイわよ!?わかったわね!」 「え?」 堕ろした?じゃああれは……!! 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 17:23:34.33 ID:D6Nft/lrO 上級生の右肘を見ると、肘の中心辺りに針で刺したような赤い点が付いていた。 「みくる、大丈夫かい?なんもされなかった?」 「……ありがとう鶴屋さん。あっちの勘違いだったみたいで……」 教室に戻り、心配してくれる鶴屋さんに大丈夫だと伝えた。 そっか。あれは水子の…… 「あの人達、あんまりよくない噂ばっかり聞こえてるからさ、みくるは関わっちゃダメだよ?」 小声で話す鶴屋さんの右肘が視界に入る。 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 17:28:25.71 ID:D6Nft/lrO 「よかった……」 赤い印は付いていない。 「うん、無事でホントによかったね!みくる」 その日から私は他人の右肘を注意深く見る事にしました。 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 17:31:15.34 ID:D6Nft/lrO 『やっぱり幽霊より』 古泉一樹はある教師を見つめていた。 「お前にも『見える』ようだな」 後ろからキョンが、もうウンザリだと言う顔で話しかけて来た。 「ええ、正直驚いていますよ」 「俺もな。全くハルヒのヤツ……ところでありゃあ何?数学の山村の隣にいる女は? 普通の幽霊や妖怪の類いとは違うみたいだが」 先程から古泉一樹が見つめていたのは数学教師の山村。 その隣には三十代と思われる女が付き添うように立っている。 「彼の愛人です」 「はあ?」 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 17:35:51.52 ID:D6Nft/lrO 「生き霊の類いですよ。あの女性はまだご存命です。 機関の調査資料に乗っていました。まあ、彼以外に影響を与える存在では無いようですし、ほっといても大丈夫でしょう」 「……俺は幽霊や妖怪よりオマエの『機関』とやらが恐ろしいよ。」 前髪を指で弾きながら古泉一樹はニッコリと笑顔で答えた。 「生きている人間が恐ろしいのは当然ですよ」 視線を生き霊の女に移す。 生き霊の女は刃物を握りしめて、ずっと愛妻家で有名な数学教師の山村を見詰めていた。 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 17:58:51.87 ID:D6Nft/lrO 『遺影』 「この方を知りませんか?」 遺影を持った老婆が話しかけてきた。明らかに悪霊やら妖怪の類い。 「知りませんよ」 めんどくさい。関わりたくない。というわけで知らない事にする。 大体遺影の人物を知っていたら何だと言うんだ。俺はそんな事に付き合っている暇は無い。 「見もしないで答えないで下さいよ。この方です。知りませんか?」 ズイッと目の前に遺影を出されて、俺はつい叫んでしまった。 「朝比奈さん!?」 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 18:09:06.40 ID:D6Nft/lrO 「朝比奈さんって言うんですか。どうやらお知り合いのようですねえ」 ヒヒヒッと小刻みに笑う黒い老婆。 落ち着け俺。慌てて行動したらこいつらの思う壷だ。 「彼女を知ってどうするんですか?」 「決まっているさね。遺影は既に準備してあるんだ。独身のまま寂しく逝ってしまった息子が寂しく無いように、この娘を送るのさ」 言っている意味が理解出来ないぞババア。 「……ところで、その写真はどこから?」 「息子が撮影したみたいだねえ。それを引き延ばしたのさ」 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 18:16:31.86 ID:D6Nft/lrO 大体わかって来たぞ。 女子高生を盗撮するような変態だが可愛い一人息子。 多分母子家庭だろう。溺愛する息子を亡くして発狂した母親の霊ってトコか。 「ところでその『あさひら』さんだったかねぇ。何処にいるか教えてくれないかい?」 どうやら耳は遠いようだ。それに、遺影をわざわざ他人に見せて何処にいるか尋ねるとは目も悪いのか? 「朝倉です」 「あさくら?」 「朝倉涼子ですよ」 「朝倉涼子ねえ……ありがとうよ坊や。ヒヒヒッ」 俺は青いマジックを取り出し、ババアを言いくるめて朝比奈さんの写真の髪の毛を青くし、太めの眉毛にした。 「これで直ぐに見つかりますよ」 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 18:33:10.90 ID:D6Nft/lrO 『きりこさん』 「キョン、きりこさんって知ってる?」 ハルヒが早く話したいっていう表情をしている。 しょうがない聞いてやろう。貴重な休み時間だ。手短にな。 「昔、酷い暴行を暴走族にくわえられて、自殺した女の人の幽霊なんだって。 『きりこさん』は物凄く男を恨んでいるのよ。それで女に恨まれるような事をした男の前に現れてね、 「そんな物はきりとってやる」 って大きなハサミで……」 はいはい小学生レベルだな。どの漫画で知ったんだ? 「キョンはきりこさんに狙われるような事はしてないでしょうね!?」 聞きたいのは結局そこかハルヒ 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 18:41:00.47 ID:D6Nft/lrO あるわけないだろう。俺はこれでも健全な高校生活を送っているつもりだぞ。 「まあ、古泉君ならともかくキョンはねえ……」 何が言いたい。起こるぞ。 「まあ、きりこさんに狙われないような男になりなさいって話よね。 ……万が一って事があるから古泉君にきりこさんの事話しちゃ駄目よ? 実は、この話を聞いた男子のトコに……」 大きなハサミを持ったきりこさんとやらが現れるってオチか。 面白そうだな。話してやるか。 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 18:50:53.36 ID:D6Nft/lrO 放課後、きりこさんの話なんてすっかり忘れていた俺は今日の夕飯は何だろうな、と腹を空かせて家路についていた。 シャキンッ 何だか気味の悪い音が背後から聞こえた。 シャキンッ どう聞いてもハサミです。ありがとうございました。 そうだ……最近麻痺してすっかり忘れていた。『ハルヒの望んだ事が実現する世界』だったな。 まあ落ち着けきりこさん。 やましい事は俺には何も無いぞ。女を本気で泣かせたのは妹ぐらいだ。くだらない事でな。 きりこさんとやら、そんな俺のトコに現れても無駄足だぜ? 余裕を持って後ろを振り返った。 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 18:58:35.95 ID:D6Nft/lrO 俺は後悔した。 大きなハサミを持ったきりこさんと思われる女性の隣には…… 「きりこさん、私あの人に酷い事されたんです!こらしめてやってください!」 「朝倉涼子」がいた。 久しぶりだな。黒い老婆は現れたかい? 「現れたわよ!しかも気持ち悪い息子も一緒に! あやうく、あの腐った息子に……本気で危なかったんだから!」 きりこさんは大きなハサミで、シャキンッシャキンッと音を鳴らしながら近づいてくる。 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 19:08:32.51 ID:D6Nft/lrO 「そんな物はきりとってやる……」 待て、きりこさん。きりこさんならわかるはずだ。どちらが嘘を付いているか。 「男は嘘つきよ!騙されないできりこさん!」 黙れ眉毛!お前の眉毛をきりこさんに切り取って貰え! 「ひどっ……!!きりこさん聞いた!?女を女と思わない言動! あんなやつのちんこ、きりこさんがきっちゃってよ!」 藪蛇だったか……くそ、もう少し時間を稼ぎたいが 先程からの問答中に空メを送ったが返事はまだ無し。 携帯を握りしめる手が汗ばむ。長門、古泉、はやく来てくれ。 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 19:17:13.92 ID:D6Nft/lrO きりこさんが大きなハサミを開いてニタリと笑みを浮かべる。 絶対絶命……何が策は……大抵弱点があるはず……こういう類いから逃れるパターンを思い出せ……!! 「暴走族!?」 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 19:24:32.38 ID:D6Nft/lrO きりこさんがビクッと身体を動かした。これか! 「暴走族!暴走族!暴走族!」 きりこさんは悲鳴をあげながら消えていった。 「なによそれ……そんな単純な言語が弱点……?」 そんなもんだよ。こういう類いは。お前には理解出来ないかも知れんがな。 「……もう少し特性の把握が必要か……まあ、いいわ。キョン君。 また会いましょう。長門さんにも宜しくね。」 朝倉涼子も消えていった。 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 19:27:54.32 ID:D6Nft/lrO また会いましょう?二度と会いたくないな。 それにしても悪霊や妖怪だけでも大変なのに朝倉まで出てくるとはな。 とりあえず疲れた。……やっと来たな古泉、長門。 事の顛末を話すから飲み物を奢ってくれ。 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 19:49:12.83 ID:D6Nft/lrO 『手紙』 「お嬢ちゃん、ちょっといいかね」 帰り道、私は初老の男性に声をかけられた。 「頼みがあるんだが……いや、決してやましい事では無い」 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 19:54:42.81 ID:D6Nft/lrO 「この手紙をあちらにいる女性に渡して欲しいんだ」 男が指差す方向に大きな木があり、その木の側に若い女性が佇んでいました。 「はあ……」 なにか渡せない理由でもあるのだろうか、謝礼はするからと強引に手紙を押し付けられ、上手く断る事の出来なかった私は男の手紙を女性に渡す事になりました。 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 20:08:20.94 ID:D6Nft/lrO 「すいませんこれを……」 手紙を女性に渡そうと声をかけた時、私はハッとした。この女性は生きている人にじゃない。 「………私に?」 「は、はい。あちらの男性が貴女にと……」 「……あの人はまだ見えていないのに、貴女は見えるのね」 どういう事だろう? 「……手紙を広げて貰えないかしら……」 私は手紙を広げた。 「……貴女は見ちゃダメよ……」 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 20:17:34.15 ID:D6Nft/lrO 女性は手紙を読み続けた。時折クスクスと笑いながら。 そして読み終わったのか、男性を見つめて呟きました。 「……馬鹿な男」 女性は男性の元に歩いていきました。 男性には女性は見えていません。ずっと私の方向をハラハラしながら見つめていましたた。 「今、近くに行きましたあっ!」 私は男性に向かって叫びました。何故か伝えなきゃいけない気がして。 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 20:35:32.28 ID:D6Nft/lrO 男性はキョロキョロとあらぬ方向を探していました。 女性は少し悲しい顔をしましたが、直ぐにっこり笑って男性に口づけをしました。 そしてそのまま消えていきました。 「いったい、どういう事だったんですか?」 私の質問に、男性は答えてくれました。 「あれは木の精と呼ばれる存在です……私の初恋の相手でした」 男性は恥ずかしそうに、話を続けました。 幼い頃、一度だけ出会ったあの女性がいつまでも忘れられなかった事。 あらゆる修行を行ったものの、才能が無いのか幼いあの日以来一度も姿が見えなかった事。 それでもいつかはと、あの木を残す為に、身を粉にして働き、地主に金を支払い続けた事。 そして……自分の余命が残り僅かだと言う事。 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 20:44:58.45 ID:D6Nft/lrO 「この手紙に私の思いを全て込めました……道行く人に頼みましたが、彼女が見えたのは貴女だけでした」 男性は深々と頭を私に下げました。 「いえ……そんな……私は別に大したこと……」 「これで私に悔いはありませんよ、お嬢ちゃん」 自分の唇を思い出すように擦りながら、男性はにっこり笑いました。 「あ……」 「インチキ臭い修行も、彼女を守り続けた事も無駄ではなかった。……口づけはOKのサインでね。彼女が私と一緒にあの世に行ってくれる事の」 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 20:51:43.76 ID:D6Nft/lrO 男性は謝礼にと、かなりの金額を渡そうとしましたが、さすがに受け取れませんでした。 帰り道。 いつか私にも、あの男性みたいに想ってくれる人が現れないかな、と思いました。 キョン君の顔を思い浮かべてしまったのは涼宮さんには秘密です。 71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 21:44:04.72 ID:D6Nft/lrO 『助かる方法』 「まなこさんって知ってる?」 まだ怪談話に飽きないのかハルヒよ。 ……はいはい、名前通り『まなこ』を潰すのか。で、助かる方法は? 「さあ?知らない。無いんじゃないの?」 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 21:52:45.69 ID:D6Nft/lrO 以上が俺の一番ゾッとした話だ。 ハルヒが『助かる方法が無い』と言いきるって事は、『本当に助かる方法が無い』って事だからな。 急いで古泉に頼んで『恐怖の学校怪談!』なる本を作成して、まなこさんの記述に回避方法をでっち上げた。 なんとか信じてくれたのか、俺の前にまなこさんが現れた時にはその回避方法で素直に消えていくれたよ。 回避方法を教えてくれだって? そうだな、この『機関』作成の『恐怖の学校怪談!』500円でどうだい? 75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 22:36:40.02 ID:D6Nft/lrO 『遺影。其の二』 「やっと見つけたよ」 聞き覚えのある老婆の声を聞いた瞬間、俺は心臓が止まるのかと思った。 「よくも騙してくれたね」 朝比奈さんの遺影を持った黒い老婆だ。 そんなにお前の息子は朝比奈さんを連れて行きたいのか。 ……ちょっと気持ちはわかるけど。 「さあ、案内しな」 「わかった、わかった、今日の放課後、屋上に来てくれ」 「約束したよヒヒヒッ」 老婆は笑いながら消えた。 さて、どうしようか。 76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 22:46:50.30 ID:D6Nft/lrO 放課後、屋上に行くと老婆と息子らしき腐乱死体が待っていた。 朝倉の言う通り、腐っているという表現が似合うのはこの息子以外、該当しないだろう。 「朝比奈……みくるだったかい?ちゃんと連れて来たんだろうね?」 「ああ」 俺の後ろに隠れている朝比奈さんを見ると、腐乱死体は歓喜の声をあげた。 肉片を飛び散らせながら。 「よかったねえ、よかったねえ」 遺影を持った老婆も泣いている。 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 22:56:22.28 ID:D6Nft/lrO 「喜ばしい所に水を指してしまうのですが、ちょっといいですか?」 俺は歓喜する老婆と腐乱死体に話しかけた。 「なんだい、今更。こんな美しい嫁はいない。貰っていくさね」 腐乱死体もフゴーッフゴーッと訳のわからん叫び声をあげている。 「実は彼女には問題があってですね」 俺はまち針を手に取り、朝比奈さんの胸を点いた。 パンッ パンッ 風船の割れる音。朝比奈さんの胸はなくなった。 あっけに取られる老婆と腐乱死体にトドメを刺すべく、朝比奈さんのスカートをまくりあげた。 スカートの下にはボクサーパンツ。そしてあの形状がくっきりと。 「朝比奈さんは、男なんです!」 78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 23:04:35.46 ID:D6Nft/lrO 「おとっ……あんた、男を嫁にしようとしたのかい!?」 腐乱死体は少し考えるようにして、フゴーッフゴーッと叫んだ。 「むしろ男でもかまわない?馬鹿言ってんじゃないよ!!嫁が男だなんて、あの世でどんな面晒す気だい!」 フゴーッフゴーッと泣き叫ぶ腐乱死体。 「まあ、そういう事でして」 「まったく……可愛い一人息子だからと甘やかしたのがいけないのかねえ、あんたにも迷惑かけたねえ」 いえいえ別にと言う俺に何度も頭を下げた老婆は、腐乱死体の首根っこ辺りを捕まえた。 「息子はあの世で教育し直すさね」 そう言って成仏していった。 80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 23:13:47.52 ID:D6Nft/lrO 「上手くいったな」 「……今回限りだからね、キョン」 朝比奈さんに化けた国木田が膨れっ面で呟いた。 制服とカツラだけで、ここまで騙せるとはな。それにしてもだ。 「似合ってるぞ国木田」 俺は国木田の両肩を叩いた。 「冗談でも起こるぞキョン」 少し涙目なな国木田。 「ちょっとバカキョン!SOS団活動を休んで屋上でなにやって……!?」 いきなり屋上に乗り込んで来たハルヒ。 女装した国木田の肩に手を回す俺。 涙目の国木田。 ……誰かフォロー頼む。 81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 23:15:36.57 ID:D6Nft/lrO 誤字脱字ありすぎワラタ うまく脳内補完たのむ 83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 23:51:12.38 ID:D6Nft/lrO 『手話』 喉を横一線、ザックリ斬られた女性が、身振り手振りで道行く人に何かを訴えようとしている。 しかし、女性の姿は普通の人には見えない。もちろん声も。女性は死んでいる者なのだから。 僕は女性が何を伝えたいのか、興味を持った。 女性と目があった。 「手話はつかえますか?」 女性は首を横にふった。 「何か伝えたい事があるんですか?」 コクリと頷くと手招きをして、歩き出した。 僕は彼女の後をついていった。 84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 23:55:28.95 ID:D6Nft/lrO 彼女は歩きながら、僕に何かを必死に訴えようとしている。 僕も必死に、彼女の伝えたい事を読み取ろうとしていた。 暫く歩いた時に、彼女が笑顔になって立ち止まった。 笑顔?目的の場所に着いたのでしょうか?ここは…… 「何をぼーっとしているんだ古泉!」 ぐいっと後ろに引っ張られる。 ハッと気付くと、目の前を電車が通り過ぎていった。 「これは……?」 いつの間にか、踏切まで来ていた。 「あの女か!」 さっきまで何かを伝えようと身振り手振りをしていた女性は、ニタニタ笑みを浮かべながら、きれいに手話を使い始めた。 「邪魔が入らなければ連れていけたのに」 やれやれ、見えすぎるのも、困りますね。 85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/03/26(木) 23:56:22.20 ID:D6Nft/lrO ガチで寝る