朝比奈みくるの決断 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 20:07:57.50 ID:vN1GLnt80 冷たい風が吹く中で、俺はいつものように気だるいこの長い坂を登っていた いつもと同じ登校シーン 最初はただただ登るのがつらかったこの坂も、慣れれば多少は楽なものである キョン「ふぅ…」 坂を登りきり、昇降口へと向かう いつものように下駄箱で靴を取り換え、教室へ 途中谷口に出会うが、またくだらない話の内容だったので聞き流しながら教室へ向かった 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 20:09:12.01 ID:vN1GLnt80 教室には、すでにハルヒがいた 退屈そうなわけでもなく、かといって楽しそうな素振りもない つまり、いつも通りだったってことさ キョン「よう」 ハルヒ「おはよう、キョン」 今日は何も起こらんだろう この時点で、俺は少しだけ胸を撫で下ろした 今日は金曜日 明日から束の間の休みだ 頼むから、何も起こらないでくれよ 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 20:10:27.53 ID:vN1GLnt80 程なくして、岡部が教室に入ってきた 岡部「最近風邪が流行っているから、気をつけろよ」 そう言い残し、教室から去っていく 素早く一時間目の準備をする …まぁ、寝て終わるのだが 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 20:11:49.69 ID:vN1GLnt80 案の定、授業のほとんどを睡眠に費やしてしまう 気づけばもう昼休みだ 俺の成績が悪い理由も納得ってもんだ 谷口「キョン、飯、食おうぜ」 国木田「僕も混ぜてよ」 いつものように、谷口と国木田が昼飯に俺を誘う 断る理由もなく二人と昼食を共にした 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 20:13:16.77 ID:vN1GLnt80 弁当を食べ終わったが午後の授業まで、まだまだ時間がありそうだ 教室にいてもいいのだが…何となく教室を出た 廊下を何の目的もなく歩いていると、中庭に誰かいるのを発見する それは、我がSOS団のマスコット兼お茶くみ係としてSOS団に所属する上級生の朝比奈みくるさんだった もう一人朝比奈さんと一緒にいるのは同じ上級生の鶴屋さんだ 何を話しているのか分からないが、朝比奈さんの眼には涙が溢れている 鶴屋さんも、いつものような元気が見受けられない どうしたのだろうか… またハルヒに何かされたのか? 考え込んでいると、昼休みの終了を告げるチャイムが鳴ってしまい、教室に戻った 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 20:15:21.77 ID:vN1GLnt80 午後の授業中も、先程の件が気になってしまい授業に集中が出来ない (もともと集中していたかどうかは甚だ疑問ではあるが) 放課後に、部室で理由を聞けばいいのか?それともやはり聞かないほうがいいのだろうか? そうこうしているうちに、放課後になってしまった 仕方ない…部室に言って聞いてみるか 俺は、荷物をまとめ、教室を出て、足早に部室に向かった 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 20:16:56.55 ID:vN1GLnt80 ――コンコン 誰か来ているのだろうか?一応ノックする … 全く返事がないということは少なくとも朝比奈さんの着替え中ではないようだな ガチャ キョン「…あれ?誰もいないな」 俺が一番とは珍しいな さて、誰か来るまで何をしてようか――― ガチャ 長門「…」 キョン「おう。長門か…いつもよりは遅かったんだな」 長門「ホームルームの時間が平均より3分22秒延びた」 キョン「他の奴らは?」 長門「涼宮ハルヒは掃除をしている。古泉一樹はまだ教室にいる。朝比奈みくるは既に学校内にはいない」 キョン「帰ったってことか?」 長門「…そう」 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 20:18:58.47 ID:vN1GLnt80 キョン「そうか…」 長門「なぜ?」 キョン「なぜって?」 長門「朝比奈みくるがここにいないことを聞いて、あなたは少し残念そうな顔をしている」 キョン「いや実はな、昼休みに朝比奈さんを見かけてな。何やら泣いてる様子だったもんだから、気になってたんだが―――」 ガチャ ハルヒ「みんな〜!揃ってる?」 キョン「ハルヒか…と、古泉も一緒か」 古泉「ちょうど、廊下で一緒になったんですよ」 ハルヒ「あれ?みくるちゃんは…?」 キョン「さぁな…わからん」 ハルヒ「そう…」 キョン「まぁ、何か用事があっていないんだろうし、仕方ないだろ」 ハルヒ「言われなくても分かってるわよ!キョン!お茶を淹れなさい」 キョン「なんで俺が…」 ハルヒ「ぶつぶつ言わない!みくるちゃんがいないんだから、代わりに雑用のあんたがやるのが筋ってもんよ」 口じゃかなわん…仕方ない、ここは大人しく従っとくか 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 20:20:23.49 ID:vN1GLnt80 古泉「やることがないのでしたら、どうです?一勝負」 キョン「いいだろう…今日は何をやるんだ?」 古泉「そうですね…では、将棋なんていかがです」 キョン「分かった」 と、俺と古泉が将棋をやり始め、長門はいつものようにぶ厚いハードカバーを、ハルヒはパソコンをいじっている 俺が古泉相手に5連勝を決めたあたりで パタン 長門が本を閉じて、今日の部活が終わった ハルヒ「今日はこれで解散ね!明日は…まだ決まってないけど、決まったら連絡するから」 キョン「たまには休みでもいいんじゃないのか」 ハルヒ「なに言ってるのよキョン!あんたがどう思ってんのか知らないけど時間は待ってくれないわよ」 キョン「やれやれ」 ハルヒは部室から出て行き、気付けば長門もいなくなっている 古泉「では、僕もこれで」 お前は負け分を払っていけ 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 20:21:53.56 ID:vN1GLnt80 古泉「すいません。今手持ちがあまりないので、今度利子を付けてまとめてお支払いいたします」 ニヤケ顔をしたまんま古泉は帰ってしまった …今日はみんなで帰らないんだな まぁ、たまには一人で帰るのもいいだろう 靴を変えようと下駄箱を開けると、手紙が入っているのに気付く しかも… 『19:00にいつもの公園で待ってます  みくる』 朝比奈さん? どうしたんだろうか… 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 20:24:22.08 ID:vN1GLnt80 一端家に帰り、少し時間をおいて俺は家を出た いつもの公園に行くと… まだ15分前だというのに朝比奈さんがベンチに座って待っていた その面持ちは真剣そのもので、とても告白なんぞしてくる様子ではない 少し残念だ キョン「どうしたんです?こんな時間に…」 みくる「あ…キョンくん」 キョン「手紙見ましたよ。何か俺に用があるんですよね?」 みくる「はい…」 キョン「また、過去に行ったりとかですか?」 みくる「そういうんじゃないんです……キョンくんに話があって」 キョン「話…ですか」 朝比奈さんは少し間をとる みくる「実は…」 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 20:25:55.78 ID:vN1GLnt80 みくる「私……未来に帰らなければならなくなりましたぁ」 キョン「…へ?」 みくる「……グスッ」 キョン「いや、朝比奈さん…??帰るって……」 みくる「どうしてこうなったか、私にも分からないんです…。昨日突然指令が来て…」 バカな… あまりに唐突な告白過ぎて言葉が出てこない みくる「明日……帰るんです」 キョン「…どうにかならないんですか?」 みくる「私は…末端の人間だから…」 キョン「…」 呆然と立ち尽くす。 いくらなんでも突然すぎる。せめて、卒業するまでは、俺たちと一緒にいると思ってたのに…やりきれない 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 20:27:31.08 ID:vN1GLnt80 みくる「キョンくんには、本当のことを言っておこうと思って」 キョン「本当のこと?」 みくる「みんなには、転校すると言ってます」 キョン「ハルヒが納得しないと思いますが…」 みくる「涼宮さんには…キョンくんから伝えておいてください。古泉くんと長門さんにはたぶんばれてると思いますが…」 まだ整理しきれない俺の頭をよそに、朝比奈さんは続ける みくる「SOS団…楽しかったです。たくさんの思い出、ありがとう」 朝比奈さんはぺこりと頭を下げ歩き去ってしまった 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 20:30:35.80 ID:vN1GLnt80 くそっ…このままじゃ本当に明日朝比奈さんは帰っちまう だが、どうしようもない…なんて無力なんだ… とぼとぼと、自転車を押して歩いていると… ???「こんばんは。こんな夜更けに奇遇ですね」 キョン「古泉か?お前こんな時間に何してんだ」 古泉「散歩…ですかね」 キョン「しらじらしい嘘はよせ。」 古泉「ばれましたか」 殴ってやろうか …そういえばこいつは知っているんだろうか? 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 20:32:52.91 ID:vN1GLnt80 古泉「朝比奈さんのことでしょうか?もちろん知ってます」 古泉「あなたにそのことで用があったのですよ」 キョン「やっぱ知ってたか。何だ…用って?」 古泉「おかしいと思いませんか?」 キョン「…」 古泉「あなたもご存知のように、涼宮さんには願望を実現する能力があります」 古泉「宇宙人や未来人や超能力者に会いたい…そういう願望が実現され、僕や朝比奈さんや長門さんが一堂に会しているのです」 キョン「俺は一般人だぞ」 古泉「それは一度置いておきましょう。それで、涼宮さん自身には自覚がないこともご存知ですね?」 キョン「そのせいで苦労してるんだからな」 古泉「まだ会ってもないのに途中であきらめるような人でもないはずです」 キョン「言い出したら聞かないからな」 古泉が一息つく まだ話は続きそうだな 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 20:35:33.99 ID:vN1GLnt80 古泉「ここからは、僕の推測にすぎないのですが…」 古泉「もしかすると、朝比奈さんが未来へ帰らなくなったのは何か別の理由があるのかもしれません」 キョン「そんなもん…未来人には未来人の都合があるんだろうよ」 古泉「あなたは、それでいいんですか?せめて、理由だけでも知りたいのでは?」 キョン「そりゃぁ…まぁ」 古泉「そこで、あなたにお願いがあるのですよ」 朝比奈さんのために俺にできることなら何だってしてやるさ 古泉「朝比奈さんの上司に当たる人たちを説得してほしいんです」 キョン「…は?」 古泉「彼女がいかにこの時代に有益だったか分かれば…あるいは」 キョン「お前が行けばいいじゃないか…明らかに俺じゃ役不足だ」 古泉「そうしたいのはやまやまなんですが…何せ、涼宮さんがいつアレを発生させるか分かりませんし」 キョン「長門は」 古泉「彼女の目的は、涼宮さんの観察だったはずです。おそらく無理かと」 うぅむ…さりげなくとんでもないことを俺は押し付けられてるんじゃないのか 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 20:36:55.88 ID:vN1GLnt80 古泉「どうしますか?あまり時間がありません。今日中にご決断を」 キョン「いや、行く…やってやろーじゃねーか」 古泉「ありがとうございます。あなたなら、おそらく出来るでしょう」 何を根拠に… だが、引き受けちまった以上やるしかあるまい 古泉「明日の午前7時に、長門さんのマンションで集合しましょう」 キョン「なぜ長門の家?」 古泉「一番都合がいいからですよ」 そこまで言うとニヤケ顔を終始崩さず、古泉は帰ってしまった 俺も帰るとするか …やれやれ 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 20:38:46.96 ID:vN1GLnt80 家に着くといつも出迎えてくれる妹の代わりにシャミセンが「みゃぁ」とだけ言ってどこかへ行ってしまった 晩飯を食べ風呂に入っている間中もいろいろ考えていたが、いつも使っていない俺の脳味噌では混乱するのが関の山なのでさっさと寝ることにした 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 20:41:31.61 ID:vN1GLnt80 … …… ……… 「ぅ〜ん」 「ョンくぅ〜ん」 「キョンく〜ん」 俺の安眠は妹の声にて掻き消されてしまった キョン「う〜…ん……」 妹「やっと起きたぁ。もう朝だよ?」 キョン「朝?何時だ!??」 眠気が一気に吹き飛ぶ 時計に目をやる 6時48分…ギリギリじゃねーか! キョン「やっべ!」 着替えをすぐに済ませ、家を飛び出す 妹「今日は土曜日なのに、変なキョンくん」 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 20:43:20.90 ID:vN1GLnt80 自転車のペダルを必死に漕ぐ 我が人生で、最速のスピードで長門の家に向かう … キョン「はぁ…はぁ……はぁ…」 間に…合った 長門の家にはすでにハルヒを除くSOS団の連中が全員居た ハルヒ…? しまった! 急いで携帯を見ると既に着信が12件、メールが3件来ていて全部ハルヒだ メールは最初は 『明日はいつもの場所に10時集合!』 とだけ書いてあるが2件目は… 『どうして電話に出ないの!?電話しないと、明日奢らせるわよ!!』 3件目は…見ないほうがいいだろう 古泉「ずいぶんと慌てておりますが、いかがなされましたか?」 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 20:45:34.97 ID:vN1GLnt80 と、俺に話しかけた古泉はいつもの0円スマイルを向けてくる 気持ち悪い奴め キョン「いや、ハルヒが昨日言ってたことをすっかり忘れててな…」 古泉「あぁ。それでしたら、僕と長門さんでなんとかしておきますからお気になさらず」 キョン「あぁ…」 古泉「では、本題に入りましょう」 みくる「あの…昨日の古泉くんの話だけじゃよく分からなかったんですけど…」 みくる「キョンくんが私と一緒に未来に来て、説得するって…」 古泉「その通りですよ」 みくる「でも…未来人の世界を見せるのは…その…禁則事項で」 長門「問題ない」 みくる「ふぇ?」 長門「彼に情報障壁を展開する。我々以外には存在を感知できない」 古泉「要はばれなきゃいいんです」 う〜む…。流石長門。準備のいいことこの上ないな みくる「でも、キョンくんはそれでいいんですかぁ?」 キョン「朝比奈さんのためでしたら、例え地獄の中でもついていきますよ!」 古泉「…では、ここで注意事項を」 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 20:47:57.28 ID:vN1GLnt80 古泉「時間なのですが、遅くとも明後日の月曜日までには帰ってきてください」 古泉「涼宮さんにはあなた達は休日どこかへ遊びに行ったといっておくので、明後日までに帰っていただかないと矛盾が生じてしまいます」 古泉「あぁもちろん。二人とも別々の場所に言っていると言っておきますが」 キョン「ハルヒには気をつけんとな」 古泉「僕の役目ですから。実は、このお願いをしたのにも理由がありまして」 やはりな… 古泉「もし、涼宮さんが朝比奈さんがいなくなったとわかったら、何をし出すか分かりません」 キョン「確かにな…転校先を突き止めるとか言い出しかねん」 古泉「ですから、時間についてはよろしくお願いします」 古泉「『機関』も今回の件について頭を悩ましています」 超能力者が未来人に干渉できるとは思えんがな というか、今更ながら俺に何ができるんだろうか? 長門の情報障壁で他人に見えないのはありがたいが、説得する時どうすんだ? 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 20:49:14.51 ID:vN1GLnt80 長門「心配ない」 キョン「何がだ?」 長門「あなたなら、できる」 宇宙人のお墨付きとは少しは自信も出てくる 古泉「では、長門さんお願いします」 わずかに頷いた長門が呪文を唱えている 長門「終わった」 キョン「もう…か。サンキュー」 長門「いい」 長門「…気を付けて」 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 20:51:11.83 ID:vN1GLnt80 みくる「じゃぁ…いきますよ?キョンくん」 キョン「いつでも大丈夫です!」 古泉「お気を付けて」 その瞬間――― 視界が真っ白になった そういえば、目を瞑ってなかったな う…ものすごいめまいが襲ってくる 何回やってもこればっかりは慣れないもんだ 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/02/01(日) 20:56:06.69 ID:vN1GLnt80 … ……… 目を開けるといつかの七夕のように朝比奈さんが俺をのぞいている しかも、状況もまた…膝枕だ 思わず顔がニヤケてしまう みくる「あのぉ〜…そろそろ起きてください。足がしびれてきちゃいます」 キョン「あ…あぁ!すいません。」 体を起こし辺りを見渡す ここは…どこだろうか 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 20:58:45.37 ID:vN1GLnt80 俺と朝比奈さんが立っていたのは地面の上ではなかった どういう原理だか分らんが未来では地球の重力を無視できるって言うのか? 人類もまだまだ安泰だ みくる「キョンくん…そろそろ行きますよ」 キョン「あ…はい。分かりました」 朝比奈さんの後をついていく 驚いたことに、空中に浮かんでいるはずなのに前に進める 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 21:00:11.95 ID:vN1GLnt80 そうこうしているうちに周りにたくさんの建物が建っている場所についた 東京のビル群に似た感じがするが、凝視すると違いがよくわかる まず、窓がない ドアもない なんだこれは…? 混乱する俺を余所に朝比奈さんは先に行ってしまう 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/02/01(日) 21:01:34.78 ID:vN1GLnt80 キョン「どこへ行くんです?」 みくる「私の所属している所ですよ」 みくる「ここです」 朝比奈さんが立ち止まった場所は――― やはり巨大なビルだった 朝比奈さんは建物に近づいていく ドアがないのにどうやって入るのだろうか… すると、突然建物の壁から1から9までの数字と、AからZまでのアルファベットが浮かび上がってきた どうやら、ここに入るためのパスワードみたいだな 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 21:03:32.95 ID:vN1GLnt80 みくる「キョンくんは、目を閉じててください」 機密事項だろうしここは見ないほうがいいだろう キョン「分かりました」 みくる「ありがとう…」 俺は目を閉じて待つ … ……… 妙だな 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 21:04:57.51 ID:vN1GLnt80 2、3分は経ったはずなのに何の変化もない キョン「あの〜…朝比奈さん?もう眼開けてもいいですか??」 返事が返ってこない キョン「開けますよー」 目を開けると、朝比奈さんが目の前でうずくまって泣いている キョン「どうしたんですか?」 みくる「パスワードが合わないんです…グスッ」 キョン「…へ?」 みくる「どうしても開かないんです…どうしよう……」 困った これじゃ、たどり着くことも出来ない 呆然と立ち尽くしていると ???「どうしたんだい?」 誰かが声をかけてきた 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/02/01(日) 21:06:33.38 ID:vN1GLnt80 俺の姿は見えてないので、必然的に朝比奈さんを見ているやつは少なくとも俺の知り合いではなかった もっとも、未来人の知り合いなんて、朝比奈さん以外には一人しか知らない 思い出したくもないが藤原とか言ってたな ???「君も構成員なのかい?」 みくる「ふぇ…?あなたは……??」 ???「ジャック…と呼んでくれ」 突然現れたその男はあからさまな偽名を言い放つ どう見たって日本人じゃねーか ジャック「ここのパスワードは1週間おきに変更される…って知らなかったのかい?」 みくる「あ…その……私、過去への駐在任務から帰って来たばっかりで」 ジャック「おや、そうっだったのか。なら、裏口に受付があるけど、行くのは面倒だろう」 ジャック「私の後に来ればいい。駐在任務から帰還したら、最初にすべきは報告だ」 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 21:08:28.30 ID:vN1GLnt80 そう言ってジャックは壁に現れている文字を打つ 程なくして、扉が現れた ジャックは足早にどこかへ去って行った 朝比奈さんは何やら難しい顔をしている キョン「どうか…したんですか?」 すると小声で みくる「ここでは、会話はしないほうがいいと思います。独り言が続くと怪しまれるし…」 それもそうか。 俺は頷いた 建物の中は、案外俺の知っている一般的なビルのようで一階には受付嬢もいるしエレベーターらしきものもあった こういうとこは進化してないんだな 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/02/01(日) 21:10:38.11 ID:vN1GLnt80 そのエレベーターらしきものに乗って、一番上の階(だと思うが)のボタンを押した 朝比奈さんの顔が少し緊張しているように見える 未来のエレベーターは振動一つ起きない高性能なものだった チーン 扉が開く この瞬間から、俺も焦りで顔がこわばっちまう エレベーターから降りると、一本道になっていて、前か後ろにしか道はなかった しばらく歩き続けると、少し明るい場所についた 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 21:13:02.93 ID:vN1GLnt80 ここは… 朝比奈さんと俺がついた場所は裁判所によく似ている場所だった というか、まんま裁判所だ 裁判長のような人間もいるし、進行役のような人間もいる ただ、検察や弁護人や傍聴人やらはおらず、かえってそれが俺を不安にさせた 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 21:15:02.96 ID:vN1GLnt80 みくる「朝比奈みくる…コード・・・・・・・・。只今帰還しました」 朝比奈さんがいつになくまじめな声でそう言うと、裁判長らしき人間が口を開いた 裁判長「御苦労であった」 みくる「観察対象涼宮ハルヒは今のところ特に大きな動きをとっておりません」 裁判長「そうか」 みくる「それで…その、お願いがあるんです!」 裁判長「申してみよ」 みくる「私を、もう一度行かせてください!」 裁判長「その前に一つだけ質問をさせてもらう」 俺はいつ説得に参加すべきなのかタイミングをうかがっている ていうか、声出しても届くのか? そんなことを考えているうちに裁判長は続ける 裁判長「なぜ、この時間平面上外の人間がここにいる?」 みくる「……え?」 …なっ 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 21:18:43.87 ID:vN1GLnt80 裁判長「聞こえなかったのか?何故涼宮ハルヒのいる時間平面の人間がいるのだ」 みくる「……嘘」 マジかよぉぉぉぉ!! 全部ばれてる!長門…お前ミスったのか?? 裁判長「捕らえよ」 それを合図に、俺の後方から3人の男どもが現れた くそっ…こんなの予定外だ みくる「キョンくん!!」 裁判長「戻れ。朝比奈みくる。まだ報告の任は終わってない」 キョン「あ…朝比奈さぁー…ん」 抵抗むなしく取り押さえられた俺は、妙なものを嗅がされ意識を失った 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 22:06:17.89 ID:vN1GLnt80 … …くっ…… 目を覚ますと… そこには朝比奈さんはいなかった 目の前には鉄格子… 未来版の牢屋にでも入れらているのだろうか…? ご丁寧に看守までつけやがって その看守が俺の意識が回復してたのを待ってたかのように何やら話しかけてくる… 看守「お前の処分について、今検討中だ」 キョン「……」 看守「心配しないでも、死ぬことはない」 キョン「…」 看守「何せお前は、涼宮ハルヒの大事な鍵だ。手荒には扱わん」 キョン「朝比奈さんはどこだ」 看守「お前に言う必要はない」 くそっ このままじゃ、ここに来た意味がなくなっちまう 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 22:10:41.82 ID:vN1GLnt80 牢屋に閉じ込められて何分経ったのだろうか 何も変化が起きないままただ時間が過ぎていく …くそっ。やっぱ、俺じゃだめだったて言うのか…? 長門や古泉には悪いが、何もできないまま終わってしまいそうだ そんなあきらめが頭の中で湧いては消えていく キョン「まだ諦めるわけには…」 その時だった ――バタッ 急に看守が倒れこんだ …?なんだ?? いきなり目の前で倒れこんじまいやがった でも誰が… ???「大丈夫ですか…?キョンくん」 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 22:17:57.36 ID:vN1GLnt80 キョン「あなたは…朝比奈さん!?」 俺の目の前に、鉄格子越しで立っているのは、朝比奈さんだった ただし、俺の知っている朝比奈さんではない…朝比奈さん(大)である キョン「なんでここに…」 朝比奈さん(大)「もちろん、あなたを助けに」 キョン「それはありがとうございます…でもなんでここに?」 朝比奈さん(大)「時間がないから、すぐに話すわ…よく聞いて」 朝比奈さん(大)のいつになく真剣な目と声が俺の意識を集中させる 朝比奈さん(大)「今すぐ、涼宮さんのいる元の時間帯に戻ってください」 朝比奈さん(大)「今回の一連の動向で不審な点をキョンくんも抱いたはずでしょ?」 突然の帰還を命じられたことについてか…やはり、不審だったんだな しかし、そのままだと俺たちがよく知っているほうの朝比奈さんはどうなる? 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 22:29:52.85 ID:vN1GLnt80 朝比奈さん(大)「それは大丈夫。詳しくは言えないけど…」 本人が言っているんだから、それはそれで説得力がある 朝比奈さん(大)「おそらく、元の時間に戻ったら、誰かがあなた達に接触してくるはずです」 キョン「へ?」 朝比奈さん(大)「その人物が…今回の…」 キョン「いや、ちょっと待ってください。いきなり言われても分けわかんないですよ…」 朝比奈さん(大)「それでも、今は聞いて。今回の一連の動作を起こしたのは私たちの組織に敵対している勢力です」 キョン「…」 朝比奈さん(大)「いつのまにか、スパイが紛れ込んでたみたいで、いつの間にか上層部までもがのっとられてしまったわ…」 キョン「はぁ…」 朝比奈さん(大)「そして涼宮さんに対して行動派を送り込んで何らかの変化を目論んだの」 キョン「だから朝比奈さんはこっちに戻って来いと…」 朝比奈さん(大)「ええ。このままだと私自身がいる時間平面の組織も乗っ取られたことになってしまうわ。そうなったらもう、手遅れ…」 キョン「どうなってしまうんですか?」 朝比奈さん(大)「涼宮さんの鍵としてあなたは狙われることになるわ。それも、かなりの人間が、同時に」 ……つい朝倉涼子を思い出してしまう あんなのが同時に、何人も?? 朝比奈さん(大)「だから、一度戻って長門さんや古泉君にも協力を要請して欲しいの」 キョン「それは構いませんが…でもハルヒはどうするんです?」 朝比奈さん(大)「しばらくの間眠っててもらいます…仕方ありません」 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 22:38:31.01 ID:vN1GLnt80 キョン「大体のことは分かりましたけど…具体的に何をすれば?」 朝比奈さん(大)「スパイの一味を倒してください」 いや、そんなこと言われても…俺にはあおんなスーパーマンみたいな力は備わってませんよ? 第一、誰がスパイかも分からないんだし… 朝比奈さん(大)「長門さんにお願いしてみてください」 キョン「何故長門です…?」 朝比奈さん(大)「物理的にスパイたちを殺したりしてしまうと、ここまで乗っ取られてしまった現状ではただの反乱分子になってしまいます」 朝比奈さん(大)「最初からなかったことにしていただかないと…」 キョン「はぁ…」 また長門にお世話になるのか…やれやれ 朝比奈さん(大)「時間移動の際には、私がいるので大丈夫ですよ」 朝比奈さん(大)「最初に、向こうに戻って古泉くんたちに状況を説明してください。全て準備が整い次第私に連絡してくれればまた、この時代に…」 キョン「…?どうかしましたか?」 朝比奈さん(大)「もうすぐ…誰か来ます…キョンくん、目を閉じてて」 キョン「あ、はい」 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 22:45:22.07 ID:vN1GLnt80 例の奇妙な感覚に襲われ、時間遡行を再び行う やはり気持ち悪さやらめまいがしそうな感覚やらは慣れそうにもないな… しばらくして目を開ける キョン「…ここは」 見慣れた俺の部屋だ…帰ってきたようだな キョン「…今は……」 携帯は日曜日の午後6時過ぎを表示している ついでに、新着のメールが15件、全部ハルヒだ まずは、古泉に連絡しないと… 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 22:52:58.44 ID:vN1GLnt80 ピピピ プルルル 古泉「古泉です、帰ってきたのですね?」 キョン「それが、帰ってきたには帰ってきたんだが…」 古泉「朝比奈さんが帰って来ない…そうですね?」 キョン「な…知ってたのか?」 古泉「いえ、実は今日、長門さんにそう言われましてね」 キョン「それで、どうなんだ…お前は?」 古泉「……『機関』は、この件について何も知りません、よって、この時空間から移動することについて許可が下りてません」 キョン「そんな…」 古泉「ですが、僕は行きますよ」 キョン「??何故だ?来てくれるのは嬉しいが…」 古泉「言ったでしょう…一度だけ、『機関』を裏切って、あなたに加担する…と」 キョン「……」 古泉「何より、このままだと涼宮さんが朝比奈さんについて忘れたままになってしまいそうですし」 キョン「…どういうことだ?」 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 23:03:42.20 ID:vN1GLnt80 古泉「今日、涼宮さんが学校でSOS団の活動をすると言いだされたのです」 古泉「あなたと朝比奈さんがいないので、ロクな事が出来ないと思っていたのでしょうか」 古泉「学校では、いつもの放課後のように特に何もしてなかったんですが…」 古泉「突然、見知らぬ男の方が現れまして、SOS団に入団したいと…」 古泉「確か、ジャック…と名乗ってましたね」 …………何てこった どうやらあの親切そうにしてやがった奴が黒幕ってわけか… 古泉「涼宮さんは、最初は不審がっていたのですが、いつのまにか打ち解けて言ってしまいまして…」 古泉「最終的に、入団を許可されたのです」 古泉「その男は、その後すぐに帰ってしまいましたが、涼宮さんはとても上機嫌でしたね」 古泉「しかし、その後なんですが…」 古泉「ふと、涼宮さんが『キョンたら、週末を二つとも休むなんて…いい度胸してるじゃい』…と言い携帯であなたに電話をし始めたんです」 古泉「しばらくして、繋がらないことに気付いて、ふとこんなことを言い出したんです」 古泉「『休日でも古泉くんも有希もちゃんと来てるのに…キョンだけ休むなんて…』…と」 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 23:12:12.72 ID:vN1GLnt80 古泉「おや?と思いましてね…聞いてみたんですよ、朝比奈さんもいないですよ・と」 古泉「すると…」 古泉「『朝比奈…?誰それ??知り合い?』」 古泉「驚きましたよ…涼宮さんは、まるで最初からいなかったかのように忘れているんですから」 古泉「部室にある衣装などで色々と質問してみたのですが、やはり知らない…と」 古泉「結局そのまま活動は終わってしまい、帰りに長門さんに聞いてみると、あなたたちが何やら問題に巻き込まれている可能性がある…と」 古泉「それで、あなたから電話がかかってきた、というわけです」 …俺が思ってたよりもはるかに早く、事は起きているらしい こうなったらぐずぐずしていられない…ことは一刻を争うのだ 古泉「長門さんもあなたに協力してくれるそうですよ」 キョン「本当か…?それは良かった」 古泉「すでに、長門さんのマンションでこのあと集まる約束をしています、あなたも来てください」 キョン「分かった…すぐ行く」 72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/02/01(日) 23:51:52.48 ID:vN1GLnt80 古泉との電話を切り、家を飛び出す 一刻も早く長門のマンションに行かないと 自転車は…そういや長門のマンションに置いてあるんだったな 仕方ない…走るか 靴紐をしっかり結び、走り始める だが、普段からロクに運動もしていない体では走り続けるので精一杯だ キョン「はぁ…はぁ……」 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 23:56:01.89 ID:vN1GLnt80 やっとの思いで長門のマンションに着く 全く、前回と変わってないな 汗だくのまま長門の部屋に入ると、すでに朝比奈さん(大)と古泉がいた 全く準備がいいな 古泉「その様子だと…大分お疲れのようですが…大丈夫ですか?」 キョン「はぁ…はぁ…し…仕方ないだろーが…今は…」 古泉「失礼しました。それで、いきなりで申し訳ないのですが準備のほうはよろしいですか?」 キョン「ちょっと待て…少し…休ませろ…はぁ…はぁ…」 3分程休憩をとらせてもらう 長門にも質問をしたかったから、ちょうどいい時間だ 74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/01(日) 23:59:22.52 ID:vN1GLnt80 キョン「…ふぅ。なぁ、長門…」 長門「なに」 キョン「お前は、いいのか?ここから移動しても…」 長門「情報統合思念体は、ジャックと名乗った人物に対し警戒している」 長門「排除できるのならば、優先的に排除をしたほうが良いと考え、私がこの時間から移動することを許可した」 よく分からんが協力してくれるらしいな すっかり落ち着いてきたし、そろそろ…行くか 75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/02(月) 00:05:06.74 ID:l6bgKt+20 朝比奈さん(大)「キョンくん。行きますよ?」 キョン「ええ…必ず俺達が何とかして見せますよ」 キョン(本当は俺は何もできないんだけどな…) 朝比奈さん(大)「じゃぁ、また眼を閉じてて…」 そう言い終わるのが早いか、またあの感覚に襲われる 少なくともあと一回はこの感じを体感しなくてはならないと思うと少し鬱になるが、今はそんなこと言ってる場合じゃないな… やがて感覚が収まり目を開ける 朝比奈さん(大)は既にいなくなっていた 本当に俺たちに任せたようだな 古泉「おや…不思議ですね……なぜ浮いているんでしょうか?」 知るか、長門なら知っているんじゃないのか 長門「…」 何も言わないってことは、どうなんだろうな… 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/02(月) 00:11:18.23 ID:l6bgKt+20 古泉「それで、朝比奈さんはどちらへ?」 キョン「あ…あぁ、確かこっちだったな…」 かなりうろ覚えだったが、古泉たちを連れてなんとか朝比奈さんがいる(と思う)ビル群に来た 古泉「なるほど…外観は今のビルとほぼ変わりませんが、やはりセキュリティーの問題でしょうか、入口が見当たりませんね」 ふと、大事なことを思い出す ……俺はパスワードを知らない ジャックが打ち込んでいるのを見てはいたが何を打っていたのかなんて覚えていないし… まずい…ここまで来て結局中に入れないんじゃ意味無いぞ? だが、そんな俺の心配を余所に、長門が何やらぶつぶつと呟く 次の瞬間、扉が現れ難無く中に入ることに成功した キョン「…今のはどうやったんだ」 古泉「さぁ?それは僕にも分かりません」 キョン「だろうな」 78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/02(月) 00:16:04.13 ID:l6bgKt+20 キョン「ていうか、今更だが俺たちの姿…浮かないか…」 長門「その心配はない」 キョン「へ?」 長門「以前あなたにかけた時よりも、より強力な情報障壁を展開した」 キョン「そうか…」 古泉「流石です」 と、俺たちはエレベーターを発見した キョン「確かこれに乗って…」 長門「いきなり扉が開くのは不自然」 キョン「へ…そうか?…だが今はそうも言ってられないしな」 古泉「誰かが使うのを待っているしかありませんね」 こう言う時、階段か何かあればいいのにな 便利過ぎて、かえって不便なこともあるとは 79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/02(月) 00:26:07.97 ID:l6bgKt+20 すると、エレベーターの現在どこにいるか分かるランプが徐々に動いているのに気付く 古泉「おや、誰かが降りてきますね」 ようやく上に上がれるのか… 目の前の扉が開いた だが、中にいたのは…なんと 82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/02(月) 00:39:41.17 ID:l6bgKt+20 ジャックだった しかも、朝比奈さんまで… ここで朝比奈さんに何か言っておきたいが、それでは長門がかけてくれた障壁の意味がなくなっちまう くそっ…ん? なんだ…? 朝比奈さんの様子がおかしい 何というか、目に力がない 泣いているわけでもないし…何というか生気が感じられない ジャック「おや…なんの用だい?」 突然ジャックが発言をする まさか…俺たちに言ってるんじゃないだろうな ジャック「そんな薄い障壁で隠れたつもりか?案外情報統合思念体ってのも大したことないんだな」 そんなバカな… 長門がまたミスをしたのか?それとも、未来人には通用しないのか? 83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/02(月) 00:47:43.94 ID:l6bgKt+20 ジャック「黙り込むことはないだろうが」 どうやら、本当に俺たちが見えているらしいな キョン「…あ、朝比奈さんに何をした」 ジャック「違反者にはそれなりのペナルティーが与えられるものさ」 古泉「どういう意味でしょうか?」 ジャック「簡単にいえば、記憶を改竄しているのさ」 最初にあったころとはずいぶん話し方が変わってしまっている どことなく、藤原に近い ジャック「君たちが何の用で来たのか…まさか我々の乗っ取りについてとか言い出すんじゃないだろうな?」 古泉「おや、そうだといったら?」 ジャック「ククク…あっそう…で、どうするんだ?」 古泉「長門さん…」 長門「……」 どうしたんだ?長門がここでこいつを消してしまえばそれで終わりじゃないのか… ジャック「ここの空間では情報統合思念体にはアクセスできないだろう?まして、この時代に来て間もないんだ」 古泉「…それは本当ですか?」 長門「……アクセス自体が何かによって遮断されてしまう。原因は不明」 これって…やばくないか? 84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/02(月) 00:53:37.39 ID:l6bgKt+20 ジャック「さて、ここで君たちに一つ話があるんだが…」 古泉「何でしょうか…?」 ジャック「見ての通り、朝比奈みくるは現在記憶を改竄され君達との記憶をすべて無くしている」 ジャック「不憫だと思わないか…?今まで必死にやってきたことが無になるなんて…」 ジャック「そこで、だ。取引をしよう」 ジャック「朝比奈みくるを元通りにする代わりに…」 何だ…何を言い出しやがるんだこいつは? 朝比奈さんを取引に使いやがって…絶対に殴ってやる! そう心に決めジャックの言葉を待っていると ジャック「涼宮ハルヒを差し出せ」 とんでもないことを言ってきやがった 86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/02(月) 00:59:55.96 ID:l6bgKt+20 ジャック「言っておくが、君達に拒否権はないぞ」 いつの間にか、何人もの屈強そうな方々が俺たちを囲んでいる ジャック「今から一人、私と時間遡行をしてもらう」 ジャック「涼宮ハルヒを連れて、この時代に来た時点で、朝比奈みくるを解放しよう」 ジャック「さぁ…どうする?」 ふざけやがって こんなの答えが出せるわけないだろ だが、どちらかを選ばなきゃならないんだ… ハルヒか?朝比奈さんか? 古泉も、俺に判断を委ねている…と思う 長門もいつもの無表情ではあるが何も言わない どうすれば…どうすればいいんだ 88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/02(月) 01:16:49.61 ID:l6bgKt+20 結局何も言えないまま、またあの牢屋のような場所に連れて行かれた ダメだなぁ…俺は 古泉「あなたが悪いわけではありませんよ」 キョン「だがこれからどうするんだ?」 古泉「そうですね…流石にこうも看守が厳しいと何もできませんし…」 前回の事もあってなのか、看守が3人になっている 長門「……もう少し待って」 キョン「へ?」 長門「情報統合思念体とのアクセスに成功した」 キョン「おお!そうか、それで、何とかなりそうなのか?」 長門「……………完了」 気がつけば、看守が消えていた よし、これで何とかなるかもしれないな… 90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/02(月) 01:23:29.52 ID:l6bgKt+20 牢屋を飛び出し、すぐに元の場所に戻った 今度こそ朝比奈さんを救える さっきと同じ場所にまだジャックはいた 少し驚いた顔をしている ジャック「どうやって出てき…なるほど、そう言うことか…」 長門を指差してジャックは続ける ジャック「まぁ、私には利かない。何故なら、ここには私をお消せるだけの十分な力が出せないからだ…違うか?」 キョン「…そうなのか?」 長門がわずかに頷く…何も状況は変わらないってのか ジャック「わざわざ出てきたんだ…決心がついたんだろう?」 ジャック「どっちを選ぶんだ?」 ……俺は…! 91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/02(月) 01:30:09.98 ID:l6bgKt+20 キョン「悪いが、お前の問いには答えられんな!ハルヒは渡さないし朝比奈さんも返してもらう」 ジャック「……君は馬鹿なのか?」 キョン「あぁ、どうせ俺には答えられるような問題じゃない。仮に朝比奈さんをそのままにしてみろ?ハルヒの能力とやらで世界を崩壊させてやる・・・!」 精一杯の虚勢と、脅しをかけてみた そうだ、SOS団は一人も欠けちゃいけない… こんないきなり出てきたわけ分からんやつに壊させてたまるか ジャック「もう少し利口だと思ってたんだがな…」 ジャックが少しずつ近付いて来る だが、俺は逃げない…ここで逃げたって何にもならん 殴り合いも覚悟してたあたりでやっと俺は異変に気付かされた 古泉「…おや、どういうことでしょうか」 最初に古泉がそう言うのを聞いて、俺が周りを見渡すと…ジャックの右腕が消えていた 92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/02(月) 01:33:08.01 ID:l6bgKt+20 ジャック「な…なんだこれは……」 どうやら、こいつにも分かってないらしい 長門「終わった」 なるほど…長門か ジャック「バカな…今の君の力では私を消せるはずが…」 すでに下半身のほとんどが消えている どうやら、このまま消えてくれそうだ 長門「私の力だけではない」 ???「そういうことよ」 …? なんだ?どこからか聞き覚えのある声が… 93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/02(月) 01:37:02.42 ID:l6bgKt+20 振り返ると…そこには、朝倉涼子が立っていた 朝倉「今回は、情報統合思念体が長門さんにバックアップの必要を見出したの。それで、仕方がなく私にバックアップの命が下ったってわけ」 キョン「それは分かったが、また俺を殺すんじゃないだろうな…」 長門「大丈夫。私がさせない」 古泉「いずれにせよ、これで何とか終わりそうですね」 ジャック「安心するのはまだ早いぞ…私の仲間はまだこの内部に…」 朝倉「全て消して来たわ」 ジャック「な?」 長門「あなたが最後」 ジャック「く…くそぉぉ………」 ジャックは完全に消え去った 96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/02(月) 01:40:20.08 ID:l6bgKt+20 朝倉「用が済んだし、私は消えるわ…じゃぁねキョンくん」 いつかのように消えていく朝倉を見て少し安堵する やれやれ…これで終わりか… ん?朝比奈さんは? ふと見ると、眠っている朝比奈さんを見つけた キョン「朝比奈さん?大丈夫ですか??」 みくる「…うぅ…ん。あれ?キョンくん?あたしなんでここに…あれ?」 記憶は消えてないらしい、ただの脅しか 俺は今までのいきさつを説明し、すべて終わったっことを伝えた 97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/02(月) 01:47:39.97 ID:l6bgKt+20 しかし、なんでこんなにあっさり終わってしまったのだろうか… いまいち腑に落ちない そんな俺を見かねたのか、古泉が話しかけてきた 古泉「もしかして、気付いていないのですか?」 キョン「…何にだ」 古泉「やはり、…あちらのほうを見てください」 古泉はちょうど俺の右方向を指さす そこにはどこの会社にもいそうな受付嬢が一人…はて、どこかで見たような… キョン「ってあれは森さんじゃないか?」 古泉「えぇ、そうです」 キョン「どういうことだ…大体、『機関』は今回の件について反対だったんじゃないのか?」 古泉「いいえ、あれは嘘です。あなたには黙っておいたほうがいいと思いまして…」 キョン「なんでそんなことする必要がある?」 古泉「そのほうが、時間が稼げると思ったんですよ。『機関』の中でも意見が割れてたのは本当だったんですが、何とか間に合ってよかったですよ」 なんてこった…牢屋に入れられるのはまさしくこいつの計画通りだったってわけか 全く、信じられない 98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/02(月) 01:51:54.19 ID:l6bgKt+20 キョン「だが、ここは閉鎖空間じゃいぞ。どうやって倒してったんだ…」 古泉「見ていないので、はっきりとは言えませんが、実は今回長門さんのお仲間も結構来ているみたいですよ。そのフォローをしていたのでしょう」 宇宙人と超能力者が未来人のために共闘する…うーむ、にわかに信じがたい 古泉「まぁ、おそらく一番大変だったのは朝比奈さん…あぁ未来のほうのですが、だと思いますよ」 それなりの人数をこの時代に運んでいたんだろう だから時間移動してすぐにいなくなってたわけか ま、これですべて終わったんだ…よかったかった 99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/02(月) 01:55:28.10 ID:l6bgKt+20 いまいち事情がつかめていない朝比奈さんに終わったことを告げる しかし、何やら表情が優れない みくる「…」 キョン「どうしました…?」 みくる「まだ、一つだけやるべきことが残っています」 キョン「へ…?」 みくる「キョンくん…それから古泉くんと長門さんも付いてきてください」 そう言われ、付いて言ったのは…あの裁判所だった 何をするのだろうか 100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/02(月) 02:01:41.39 ID:l6bgKt+20 裁判長のようなやつもいる…どうやら、乗っ取った一味じゃなかったんだな 裁判長「まずは…今回の件についてだが」 裁判長「ご苦労だった」 みくる「…」 裁判長「特別に何か一つ褒美を出すことが決まった。何でも申してみよ」 みくる「あの…私を……涼宮さんたちの世代にもう一度行かせてください!」 なるほど…これを言いたいがために俺たちを呼んだのでろう 少しの間沈黙が流れる 裁判長「よいのか?それで」 みくる「…」 裁判長「前にも聞かされていると思うが、あまりその時代の人間と深くかかわり合い過ぎても別れが悲しくなるだけだが、それでもいいんだな?」 … 今更だが、この任務のつらさを知った 朝比奈さんは…俺たちの事をどう思っているのだろうか 少なくとも俺は悲しい…いつかいなくなってしまうなんて 102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/02(月) 02:05:10.81 ID:l6bgKt+20 みくる「…かまいません!」 はっきりと、力強く朝比奈さんは言った 裁判長「ならb、行ってくるが良い」 そう言い残し、裁判長は消えた みくる「うふふ…これからも、よろしくお願いします」 俺たちに深々と礼をする朝比奈さん 古泉「こちらこそよろしくお願いします」 長門「…」 キョン「はい、よろしくお願いします」 みくる「うふふっ…みんなありがとう。それじゃぁ、帰りましょう」 俺たちは再びあの奇妙な感覚を味わい時間遡行した 103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/02(月) 02:08:08.59 ID:l6bgKt+20 気付くと、また俺の部屋だった 携帯も日曜の深夜11時を示している 全部終わったんだな… いつの間にか眠りに落ちていた 次の日 そういえば…学校だったな… 重い体を起こし、家を出る 学校に着くと、何故だか、ふと部室に向かっていた 104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/02(月) 02:15:30.46 ID:l6bgKt+20 コンコン  ガチャ 中に入ると全員がそろっていた 考えることはみんな同じか… 古泉「おはようございます」 長門「…おはよう」 ハルヒ「あらキョンじゃない…あんた、いったいどこに行ってたのよ!?」 キョン「いや、まぁ…その親戚の家にだな…」 ハルヒ「嘘つくんじゃないわよ!全くあんたにはSOS団の団員としての自覚が足りないのよ…そこに直りなさい……いま、性根をたたきなおしてやるから…!」 キョン「ま…待てハルヒ…!」 襲い掛かってくるハルヒの後ろには、いつものように朝比奈さんがいる みくる「うふふ」 そうさ…これでいいんだ たとえいつ別れがくるか分からなくても その分今を楽しめば… このSOS団にいて、本当に楽しかったと思えるように 朝比奈さん…これからも、よろしくお願いします    ―完― 107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/02(月) 02:17:24.16 ID:l6bgKt+20 終わりです いや、…本当に疲れました… こんな時間までこんな駄文を呼んでくれた皆さん…ありがとうございました 自分的には一杯一杯です とにかく、見てくれてありがとう!感謝!の一言です それではおやすみなさいませ