長門「……眠れない」 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 00:51:25.38 ID:vfHKMl8/0 朝倉「あら、どうしたの?」 長門「…」 朝倉「眠れないの?」 長門「…」コク 朝倉「こっち、いらっしゃい」 ファサ 長門「…」 朝倉「今日はこの部屋で寝ていいわよ」 長門「…」 朝倉「ほら、目を閉じないと睡魔さんは来てくれないわ」 長門「何故? 眠れない?」 朝倉「何故って……眠りたくないからでしょ」 長門「そんなことはない。とても、眠い」 朝倉「あらあら、難しいお話ね」 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 00:57:00.03 ID:vfHKMl8/0 長門「こんなこと、初めて」 朝倉「そう? よかったわね、『眠れない』を知ることができたわ」 長門「…」 朝倉「感想は?」 長門「眠い」 朝倉「ふふっ、そうね」 長門「人間は」 朝倉「ん?」 長門「眠れないことがある?」 朝倉「あるわよ。もちろん、人間だけじゃなく動物も」 長門「だけど人間は、動物と違って……睡眠時に、外敵から襲われる心配は――」 朝倉「心配だから眠れないんじゃないわよ」 長門「?」 朝倉「そうねぇ……長門さんには、まだわからないかも」 長門「知りたい」 朝倉「そのうち、ね」 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 01:00:01.02 ID:vfHKMl8/0 長門「私は」 朝倉「うん」 長門「最近、おかしくなっている」 朝倉「?」 長門「感情というものが、生まれている気がする」 朝倉「あら、よかったじゃない。あなたその辺弱かったものね」 長門「何故?」 朝倉「何故だと思う?」 長門「……わからない」 朝倉「長門さんにも、わからないことはあるのね」 長門「…」 朝倉「ほら『わからない』も習得。どんどん人間らしくなっていってるわね」 長門「?」 朝倉「あら、言っちゃった。……そう、あなたは人間になっていってるの」 長門「人間……に?」 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 01:04:32.72 ID:vfHKMl8/0 朝倉「涼宮さんが望んだこと」 長門「……私が、人間になること?」 朝倉「そう。あなたはこれから、人間として彼女の友達になるの」 長門「…」 朝倉「覚えてないかしら? 私達は最初、睡眠という行動もいらない存在だったのよ?」 長門「…」 朝倉「御飯を食べることも、あなたに至っては笑うことすら必要とされてなかった」 長門「……覚えていない」 朝倉「仕方ないわね。徐々に、徐々に……あなたの中から、情報統合思念体の記憶は消えていくから」 長門「何故?」 朝倉「それはもう、あなたに必要ないから。長門さんには、人としての思い出だけで十分。そう判断したからよ」 長門「…」コク 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 01:08:45.60 ID:vfHKMl8/0 朝倉「涼宮ハルヒの観測は、事実上終焉を迎えたわ」 長門「……何故?」 朝倉「明確な答え、ってわけじゃないけど……キョン君が頑張ってこと」 長門「彼が?」 朝倉「彼女の暴走は、これからは彼によって抑えられることになるわ」 長門「彼は普通の人間」 朝倉「だからこそ。私達と違って、彼には彼だけに秘められた涼宮さんを抑える力があるの」 長門「…」 朝倉「知りたい?」 長門「知りたい……けど、それは私には必要のないことかもしれない」 朝倉「『必要じゃなくても知りたい』を覚えたわね」 長門「……無駄?」 朝倉「無駄じゃないわ。それを知ることで、あなたはどんどん人間らしくなるのだから」 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 01:17:07.07 ID:vfHKMl8/0 長門「起きる」モゾモゾ 朝倉「だめ。ちゃんと寝ないと、睡眠不足は身体に毒よ?」 長門「……気になる」 朝倉「じゃあ少しだけお話してあげるから。寝たまま聞いてなさい?」ナデナデ 長門「…」コク 朝倉「キョン君と涼宮さんの関係は、どう言うのかわかる?」 長門「恋人」 朝倉「そう。はれて二人は、恋人同士となったのでした」 長門「? それが、彼の力に?」 朝倉「人っていうのはね、わがままな存在なの」 長門「?」 朝倉「一生のうちにたった一人だけ、自分を愛してくれる人がほしいって」 長門「一人だけ」 朝倉「でも誰でもいいってわけじゃなくて、ちゃんと自分が選んだ人がいいって。わがままよね?」 長門「…」 朝倉「しかもその一人も、嫌いになったり一緒に居られなくなったり……」 長門「なら、初めから相手を選ばなければいい」 朝倉「そういうわけにいかないのが人間なの。あなたも、わかってくるはずよ」 長門「…」 朝倉「まあとにかく、キョン君と涼宮さんは互いに互いを選んだ、特別な関係なの」 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 01:23:45.13 ID:vfHKMl8/0 朝倉「じゃあ長門さんに問題。恋人というのは、どういうことをする仲でしょう?」 長門「子孫の繁栄」 朝倉「……ま、間違いじゃないわね。それも大切」 長門「他にも?」 朝倉「もちろん」 朝倉「恋人ってのは、寂しさや悲しさ。喜びや怒り。感情の類を一緒に分かち合う存在なの」 長門「それは家族では?」 朝倉「そうね。恋人は家族に近いものね」 長門「だけど、家族とは決定的に違う。恋人には、DNAレベルの繋がりが」 朝倉「ない。同じ血が通っているわけではないわ。だから、家族とは別のもの」 長門「……ならば、やはり子孫の繁栄が目的では」 朝倉「血が通ってない他人だから、同じ感情を分かち合いたい。それが恋人なの」 長門「…」 朝倉「他人だからこそ、もしかすると交わることがなかった存在だからこそ……たった一人の、大切な存在って思えるようになるのよ」 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 01:31:44.66 ID:vfHKMl8/0 朝倉「大切にしてほしい。大切にしたい。この人と、この先ずっと一緒に生きていきたい」 長門「それが、恋人?」 朝倉「そう。だからキョン君は、この先ずっと涼宮さんのことを大切にしていくの」 長門「…」 朝倉「涼宮さんが辛い思いをすれば、キョン君もそれを理解してあげる」 長門「…」 朝倉「逆にキョン君が辛い思いをしたとき、涼宮さんは一人じゃないってキョン君に教えてあげる」 長門「互いが互いの為に」 朝倉「もう涼宮さんは一人じゃないわ。彼女には彼がいる。どんな困難に出会っても、一緒に立ち向かってくれる存在が」 長門「閉鎖空間は、生まれない?」 朝倉「生まれない。神様に等しい力も、キョン君との『これから』が邪魔して、発現することもないかもね?」 長門「……なるほど」 朝倉「わかった?」 長門「なんとなく」 朝倉「はっきりするまでは、もう少し待ってね。あなたにも、恋人ができるその日まで」 長門「……できれば」 朝倉「ん?」 長門「私の恋人は、あなたであってほしい」 朝倉「……それは、だめ」 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 01:35:46.29 ID:vfHKMl8/0 長門「何故?」 朝倉「……私とあなたは……うん、同性だから」 長門「…」 長門「だけど」 朝倉「?」 長門「同性でも、恋人というのは存在するはず」 朝倉「…」 長門「嘘?」 朝倉「……嘘じゃないわよ。うん、嘘をついたのは私」 長門「何故? 嘘じゃないのなら、私はあなたと恋人になりたい」 朝倉「…」 長門「駄目?」 朝倉「だーめ。私は男の子が好きだから、長門さんにもそうなてほしいから、駄目」 長門「……嫌い?」 朝倉「嫌いじゃないわよ。大好き」ギュゥ 長門「くるしい」 朝倉「……今日はここまで。もう寝なさい」 長門「…」コク 朝倉「おやすみなさい」 長門「おやすみ」 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 01:39:20.98 ID:vfHKMl8/0 長門「朝」ムク 長門「……少し眠い」 長門「…」 朝倉「あら、起きたのね」 長門「…」コク 朝倉「ほら、顔洗ってきなさい」 長門「わかった」 朝倉「あ、待って」 長門「?」 朝倉「これからは、ちゃんと挨拶をするようにしましょう」 長門「……おはよう?」 朝倉「そう。おはよう。ほら、洗面所へゴー」 長門「…」ペタペタ… 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 01:44:39.38 ID:vfHKMl8/0 長門「何故、挨拶を?」ムシャムシャ 朝倉「言ったでしょ? あなたはこれから人間になるの。だから、人としての生活をしてもらうわ」 長門「昨日のおやすみのような?」 朝倉「うん。今日から挨拶しなかったら、怒るからね?」 長門「……気をつける」ヌリヌリ 朝倉「あ、こら。そんなに沢山ジャム塗っちゃだめって言ったでしょ」 朝倉「ほら、お弁当」 長門「この匂いは」 朝倉「開けてからのお楽しみ♪」 長門「…」 朝倉「早弁したら怒るわよ」 長門「早弁?」 朝倉「えっとね、早弁ってのは……あっ! もうこんな時間! ほら、学校!」 長門「!」トトト… 朝倉「ストップ」 長門「?」 朝倉「……学校に行くときは?」 長門「学校? ……行ってきます?」 朝倉「それ。はい、いってらっしゃい」 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 01:49:43.86 ID:vfHKMl8/0 長門「ただいま」 朝倉「おかえりなさい。遅かったわね」 長門「今日は、隣町まで探索に……」ゴソゴソ 朝倉「ほら、先に手洗いとうがい」 朝倉「ちゃんと皆に挨拶した?」 長門「皆に?」 朝倉「言ったでしょ。挨拶しないと怒るって」 長門「した」 朝倉「嘘。ちゃんと見てたわよ」 長門「……してない」 朝倉「なんで嘘を言うの?」 長門「怒られると、思ったから……?」 朝倉「ふふっ、『怖い』を学習したわね。おめでとう」 長門「……ごめんなさい」 朝倉「明日から、ちゃんとできる?」 長門「努力する」 朝倉「うん、約束ね」 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 01:57:19.43 ID:vfHKMl8/0 朝倉「……長門さん?」 長門「?」 朝倉「これ。なんで椎茸残してるの?」 長門「口に入れると、不快な味と感触が」 朝倉「へぇ、『好き嫌い』を覚えたのね」 長門「いらない」 朝倉「じゃあ我慢を覚えましょうか」 長門「?」 長門「……これは」 朝倉「レンコンとゴボウと……しいたけの煮物」 長門「しいたけはいらない」ヨソヨソ 朝倉「だめ」 長門「私という個体は、これを必要と――」 朝倉「食べなさい」 長門「……でも、他の食材で栄養は」 朝倉「いいから黙って食べる」 長門「…」 朝倉「ほら、あーん。大丈夫、死にはしないわ。それともなに? 私の料理嫌い?」 長門「……あーん」 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 02:02:15.21 ID:vfHKMl8/0 キィッ 朝倉「?」 長門「…」 朝倉「……こっちで寝る?」 長門「…」コク 朝倉「どうしたの? 今日も眠れない?」 長門「違う」 朝倉「じゃあなんで?」 長門「……あなたの、傍にいたい」 朝倉「…」 長門「何故?」 朝倉「それは『甘える』ということね」 長門「甘える」 朝倉「手をかして」 長門「?」キュッ 朝倉「どう?」 長門「手……暖かい」 朝倉「でしょ」 長門「しかしそれは繋いでるから。あなたの手のひらから体温が伝わっているから」 朝倉「それとはまた違う暖かさがわからない?」 長門「……安心感」 朝倉「そう。それ、それが甘えてるってこと」 長門「これが……」 朝倉「心地いいでしょ。いいわ、今日はこのまま眠りましょう」 長門「…」コク 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 02:05:36.60 ID:vfHKMl8/0 長門「これは、恋人同士というものでは?」 朝倉「違うわね。似てるけど、違う」 長門「なら家族?」 朝倉「正解」 長門「私と朝倉さんは、家族」 朝倉「そうよ。何を今更」 長門「……じゃあ」 朝倉「うん」 長門「私にとってのあなたと、あなたにとっての私はどういう存在?」 朝倉「……私は母親で、あなたは子供。かな」 長門「? 私はあなたから生まれたわけでは」 朝倉「いいの。生まなくても、血が繋がってなくても……お母さんは、お母さん」 長門「…」 朝倉「でも恥ずかしいから、いつも通り朝倉さんって呼んでね?」 長門「わかった」 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 02:15:57.59 ID:vfHKMl8/0 長門「父親ではなく、母親?」 朝倉「そうね」 長門「何故?」 朝倉「お父さんは家族を守る人。お母さんは……子供を、守る人」 長門「私を、守る?」 朝倉「えぇ。だから、あなたは私を頼っていいのよ」 長門「バックアップなのに」 朝倉「こら。そんなこと言う子は、一人でおねんねしてもらうわよ」 長門「……ごめんなさい」 朝倉「うん。あはは、そう。こういうのがお母さんと子供なのね」 長門「?」 朝倉「ううん、なんでもない……可愛い可愛い、私の子」ナデナデ 長門「くすぐったい」 朝倉「我慢」 長門「……落ち着く」 朝倉「でしょ?」 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 02:24:46.79 ID:vfHKMl8/0 朝倉「眠れそう?」 長門「……問題が発生」 朝倉「?」 長門「昨日の逆」 朝倉「逆?」 長門「眠りたくないのに、眠い」 朝倉「あら、眠らないと明日が辛いわよ」 長門「……もう少し起きたまま、朝倉さんとお話していたい」 朝倉「明日またできるわよ」 長門「だけど、明日は自分の部屋で寝ないといけない」 朝倉「もしかして、『寂しい』が生まれた?」 長門「……そうなのかもしれない」 朝倉「大丈夫大丈夫、寂しくないわよ。眠っても、私はちゃんとここに居るから」ギュウ 長門「…」 朝倉「心臓の音、聞こえるかしら? もっとも、形を作っただけのみせかけの鼓動だけど……」 長門「…」コクッ 朝倉「それが、子供が最初に聴く子守唄……あなたにも歌える子守唄だから」 長門「…」 朝倉「いつか子供が生まれて、お母さんになったら……聴かせてあげてね?」 長門「……わかった」 朝倉「おやすみなさい」 長門「おやすみ」 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 02:38:00.20 ID:vfHKMl8/0 長門「…」ムクッ 長門「……朝」 長門「おはよう」 朝倉「はい、おはよう。今日は自分から言えたわね」 長門「…」 朝倉「今日の朝食は和食にしてみました」 長門「イチゴジャムは?」 朝倉「……『恐ろしく不味い』も経験したいの?」 長門「ごちそうさま」 朝倉「はい、お弁当。今日は余裕で登校できるわね」 長門「……二度寝」 朝倉「それは覚えなくていいわ」 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 02:49:50.80 ID:vfHKMl8/0 長門「…」(挨拶……挨拶) ハルヒ「ほっほー! おっはよう! 有希」 長門「おはよう」 ハルヒ「!?」 ハルヒ「ゆ、有希、どうしたの?」 長門「?」 ハルヒ「おはようって」 長門「挨拶」 ハルヒ「そうだけど……なんか、いつもと違うなってさ」 長門「だめ?」 ハルヒ「だめじゃないわ! そう、SOS団員は元気がなきゃね!」 長門「…」コク ハルヒ「って言ってる傍から黙るなーっ!」 キョン「朝からなにを騒いでるんだハルヒ」 ハルヒ「! キョン! おはよっ!」 キョン「はいはい。おはよう」 長門「おはよう」 キョン「!?」 67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 02:56:18.57 ID:vfHKMl8/0 長門「驚いてた」 朝倉「ふふっ、そう。驚いたかぁ」 長門「……しないほうが、よかった?」 朝倉「そんなことないわ。今までのあなたは、大人しすぎたぐらいなんだし」 長門「…」 朝倉「それに、私もう一つあなたに足りないもの見つけちゃった」 長門「?」 朝倉「はい、私の顔を見て?」 長門「…」 朝倉「……わかった?」 長門「??」 朝倉「笑顔。あなたには、笑顔が足りないわ」 長門「笑顔……頬の筋肉」 朝倉「違う違う。そういう形的なことじゃなくて、感情的なこと」 長門「感情的な笑顔?」 朝倉「でもこればっかりは……生まれるのを待つしかないわねぇ」 長門「作れない?」 朝倉「作っちゃうと、笑顔じゃないの」 長門「……難しい」 朝倉「仕方ないわ。ほら、お風呂入ってきなさい」 長門「…」コク 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 03:03:30.42 ID:vfHKMl8/0 長門「……ほこほこ」 朝倉「ふかふか。さ、こっちいらっしゃいな」 長門「?」 朝倉「ドライヤー。ほら、座って」 ガァー 朝倉「熱くない?」 長門「…」コク 朝倉「髪、伸びてきたわね。切らないと」 長門「……私の意志と反して、伸びてきた」 朝倉「人間なんだから当たり前。あなたの容姿は、あなたの意思と関係なく変化していくわよ」 長門「…」 朝倉「だけど、ストレスや怠惰は体調や体格にでちゃうからね。これからはもっとちゃんとしないと」 長門「どういう風に?」 朝倉「甘いものを制限するわ。虫歯になってもだめだし」 長門「…」 朝倉「我慢は、昨日覚えたでしょ?」 長門「…」コク 朝倉「うん。いい子ね、あとで一個だけアイス食べていいわよ」 長門「チョコミント?」 朝倉「あれは私の……はんぶんこしましょうか」 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 03:08:21.34 ID:vfHKMl8/0 朝倉「ちゃんと後で歯磨きしなさいよ? あーん」 長門「はむっ」 朝倉「ミント好き?」 長門「チョコが好き。ミントは、ついでに好き」 朝倉「そう。あ、私にもあーんってしてよ」 長門「…」スッ 朝倉「あーん」 長門「……はむっ」 朝倉「あっ、こら!」 長門「……甘い」クスッ 朝倉「!」 長門「?」 朝倉「今の……今のよ、今のが笑顔」 長門「笑顔……した?」 朝倉「したわ。したわよ、可愛い顔でにこって」 長門「……覚えがない」 朝倉「それが自然に、感情的に笑うってこと。うーん、嬉しいわね」 長門「…」 朝倉「もう一個食べていいわよ。アイス」 長門「本当に? ありがとう」ニコッ 朝倉「それ!」 74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 03:15:15.74 ID:vfHKMl8/0 朝倉「おやすみ」 長門「今日は一緒に寝ない?」 朝倉「ここのところ、毎日一緒に寝てるじゃないの。高校生なんだから、甘えるのも控えめに」 長門「…」 朝倉「ほらほら、じゃあ寝るまでは一緒に居てあげるから」 朝倉「学校、楽しい?」 長門「……かもしれない」 朝倉「もしかすると、明日からまた違うふうに思えるかもね」 長門「?」 朝倉「んー」チュッ 長門「ふみっ……なんで頬にキス?」 朝倉「嬉しい?」 長門「……うん」 朝倉「あーもぅ、可愛いわねぇ……笑うっていいでしょ。嬉しいでしょ」 長門「心地いい。嬉しい。身体が……ふわふわ?」 朝倉「それが『幸せ』ってことよ。忘れないでね」 長門「……忘れることが、あるの?」 朝倉「ずっと幸せに触れてないと、忘れることもあるわ」 長門「どうすればいい?」 朝倉「自分で見つけるの。もらってるばかりじゃだめ」 長門「??」 朝倉「それも、わかるときが来るわ。ほら、ねんねしましょうね?」ナデナデ 長門「うん……おやすみなさい」 76 名前:長門は国木田の嫁 ◆UBgxfb/oXY [] 投稿日:2008/12/20(土) 03:17:16.54 ID:vfHKMl8/0 今日はこっちの名前で行きましょう。 そして嬉しいことに、長門×国木田スレがもう一つあるなんて。なんてことでしょう。 これで今年最後のSSになりますかね。この間のハルヒスレは落ちちゃったしw こいつはまあまあ頭の中で完成してますし……締めくくりにふさわしそうな。 おやすみなさい。また朝ぐらいに。 ノシ 112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 13:37:51.96 ID:gsbVI4180 朝倉「まだ寝てるの? ほら、朝よー」ポンポン 長門「……むぅ」 朝倉「おーきーなーさーいっ」ポフポフ! 長門「…」ポケー 朝倉「ほらほら、早く御飯食べちゃいなさい」 長門「…」モグモグ 朝倉「今日は雨が降ってるからね、暖かくして行きなさいよ?」 長門「雨?」 朝倉「うん」 長門「……行きたくない」 朝倉「あら、なんで?」 長門「雨は憂鬱」 朝倉「可愛いこと言うわね。でもだめ、ちゃんと学校に行く」 長門「…」コク 113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 13:42:03.52 ID:gsbVI4180 朝倉「あぶないから走っちゃだめよ。あなた滑って転びそうだから」 長門「……そうだ、思い出した」 朝倉「?」 長門「昨日の体育」 朝倉「? 体育?」 長門「疲れた」 朝倉「そりゃあ……あ、そっか。『疲労』を覚えたのね」 長門「それもあって、今日は学校に行きたくない」 朝倉「筋肉痛? 足、腕とか痛い?」 長門「少し」 朝倉「あらあら……あなたは人間なんだから、無理しちゃだめよ?」 長門「頑張る」 朝倉「ほら、もう行きなさい。傘持って」 長門「いってきます」 118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 13:50:10.37 ID:gsbVI4180 長門「……雨」トコトコ 長門「憂鬱」 キョン「お、長門」 長門「? おはよう」 キョン「おは……よう」 キョン「なんか、変わったなお前」 長門「?」 キョン「明るくなったというか……人間っぽくなったな」 長門「そう?」 キョン「なにかあったのか?」 長門「わからない」 キョン「そうか。まあ、いいことだ」 長門「…」 キョン「だけどまた、なにかあったら助けてくれよ?」 長門「?」 キョン「俺はお前を結構頼ってるからさ、その……ハルヒのこととか」 長門「……無理」 キョン「!?」 長門「彼女の問題は、解決するのはあなた自身。私はもう……傍観者でもない」 キョン「なっ」 ハルヒ「キョーン! そりゃー!」ボフッ キョン「っと! ハルヒ? いきなり腕に巻きつくな」 ハルヒ「おっはよー! あれ、どうしたの? 有希と二人?」 119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 13:53:55.95 ID:gsbVI4180 キョン「なんでもない。気にするな」 ハルヒ「なによ、浮気!?」 キョン「バカか」 長門「…」 キョン「ほらハルヒ。鬱陶しいから離れろ」 ハルヒ「やーよ。寒いもん」 キョン「……なら傘たため。狭い」 ハルヒ「うん、そうするわ!」 長門「…」 ハルヒ「ん? どうしたの有希?」 長門「なんでもない」 キョン「?」 120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 13:57:24.15 ID:gsbVI4180 長門「ただいま」 朝倉「おかえりー。早かったわね」 長門「暇だった」 朝倉「お風呂入っちゃいなさい。体、冷えてるでしょうから」 長門「あの」 朝倉「ん? なに?」 長門「聞いてほしい、教えてほしいことがある」 朝倉「いいわよ。でも先にお風呂。ゴー」 長門「…」トコトコ 長門「暖まった」 朝倉「ちゃんと髪拭いた? あ、鍋見ててもらっていい?」 長門「…」コク 朝倉「底が焦げ付かないように、よーく混ぜてね」 123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 14:14:53.22 ID:gsbVI4180 朝倉「素早く、でも具材を潰さないように混ぜてね」 長門「……難しい」クィクィ 朝倉「料理ってのは難しくて面倒なものなの。でも、私は好きだけどね?」 長門「楽しい?」 朝倉「楽しいわよ。長門さんにも、教えてあげるわね」 長門「覚える」 朝倉「で、聞きたいことってなぁに?」トントントン… 長門「……今聞いても、大丈夫?」クィクィ 朝倉「大丈夫よ。使い方さえ間違えなければ、包丁は思ってるほど危なくないわ」 長門「今日、登校中に涼宮ハルヒ達に出会った」 朝倉「ふぅん。それで?」 長門「彼女は彼の腕をとり、二人一つの傘で登校した」 朝倉「あらあら、ラブラブねぇ」 長門「……それを見て……なぜか、不快感が生まれた」 朝倉「? 不快感? ……あー、『嫉妬』かな?」 長門「しっと?」 126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 14:28:18.86 ID:gsbVI4180 朝倉「もう混ぜないでいいわよ。そっちのやかんのお湯入れて?」 長門「…」トポトポ… 朝倉「どういう風に不快に思った?」 長門「こう……その……難しい」 朝倉「そうね、言葉じゃ表せにくいかな」 長門「だけどできれば、見たくなかった」 朝倉「でもいいものを見たわよ。それが恋愛なの」 長門「…」 朝倉「涼宮さんがキョン君を愛してるから、キョン君に近づいて。キョン君も同じように」 長門「でも何故、私はそれを見て不快に?」 朝倉「本当は不快に思ってるわけじゃないわ。寂しいだけ」 長門「寂しい?」 朝倉「二人が羨ましくて、自分もああなりたいなぁって……それが、嫉妬という感情よ」 長門「……いらない」 朝倉「それも必要なことなの。忘れちゃだめよ」 127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 14:43:23.57 ID:gsbVI4180 朝倉「悲しいけど、人間って他人と違うことを嫌う生き物なのよね」 長門「何故?」 朝倉「寂しいの。人と違うと、自分は置いてけぼりになっちゃってるようで……」 長門「…」 朝倉「もちろん、誰もがそういう人ではないわ」 長門「…」コク 朝倉「だけどあなたはそういう人であってほしい。私はそう思うの」 長門「私が?」 朝倉「人と違っても、自分は平気。そう言える人になるのは立派だけど……」 朝倉「だけどそれは、また違う人から妬み、嫌われる存在になってしまう」 朝倉「あなたには誰しもを愛して、愛されるような……そんな優しい人になってほしい」 長門「……なら、私が彼らを見て嫉妬したことは……いけないこと?」 朝倉「ううん。それで、人の『恋愛感情』を学べたと思えばいいの」 長門「恋愛感情」 朝倉「あなたもこれから、こうやって料理を作ってあげたい人を見つけなさい?」 長門「…」コク 130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 15:04:03.30 ID:gsbVI4180 朝倉「明日はお休みだからって、あまり遅くまで夜更かししちゃだめよ?」 長門「…」 朝倉「あら、まだなにか考え事?」 長門「あの」 長門「私は……どちらに嫉妬した?」 朝倉「?」 長門「彼女と彼と、どちらに対して」 朝倉「あぁ、それは……涼宮さんかなぁ」 長門「…」 朝倉「キョン君みたいな彼氏がほしい?」 長門「……わからない。ただ……なにか、残念」 朝倉「それはね、あなたも心のどこかでキョン君のことが好きだったから」 長門「私が?」 朝倉「思えば一番傍で話しかけてくれた人だったものね」 長門「……もう一つ、聞いてほしいことがある」 朝倉「うん、いいわよ」 132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 15:07:39.70 ID:gsbVI4180 朝倉「なぁに?」 長門「今日、彼に頼られた。涼宮ハルヒになにかあれば、力を貸してほしいと」 朝倉「あら」 長門「だけど私は断った。それは、もう私のすることじゃないと」 朝倉「そうね。偉いわ」 長門「だけど……辛いとも思った」 朝倉「…」 長門「何故かわからないけど……涼宮ハルヒのことで、私に相談してほしくないって」 朝倉「うん」 長門「私には、まだ彼を助けられる力は残っているかもしれないけど……」 朝倉「使いたくない?」 長門「……酷い人に……なってしまった?」 朝倉「ううん。そんなことないわよ」 長門「…」 朝倉「こっちおいで。ほら、ここに座って?」 135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 15:16:42.16 ID:gsbVI4180 朝倉「酷いことなんかじゃないわ。あなたは優しい子」ナデナデ 長門「でも……」 朝倉「それはね、『失恋』っていうこと」 長門「しつれん?」 朝倉「私にも見抜けなかったみたいね。あなたの中で、キョン君が大きくなってるなんて」 長門「…」 朝倉「キョン君のことが好きだったから、涼宮さんのことで頼られるのが嫌になっちゃうの」 長門「やっぱり私は」 朝倉「ううん。でもそれは、大切なこと。少しだけ辛いけど……大切なことよ?」 長門「…」 朝倉「それに、これは内緒にしてたんだけど……あなたにはもうなんの力も残ってないわ」 長門「?」 朝倉「もうすでに、あなたは人となんら変わらない存在になってるの。だから、寂しいことも理解できるようにね」 長門「……理解したくないかも」 朝倉「理解したくないことを理解することも、人として成長するうえで大切なこと」 長門「…」 朝倉「わかる? 今自分が、どんな顔をしてるのか」 長門「……わからない」 朝倉「それが、好きな人を忘れる顔。その顔は……本当は誰にも見せちゃだめよ」 長門「…」ギュゥ 朝倉「いい子、いい子……」ナデナデ 138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 15:23:45.24 ID:gsbVI4180 朝倉「涼宮さんのこと、好き?」 長門「……嫌いではない」 朝倉「キョン君は?」 長門「……同じ」 朝倉「その気持ち、ずっと大切にしてね。キョン君と涼宮さんは、あなたの大切な『友達』だから」 長門「友達」 朝倉「うん。恋人でも家族でもなく、だけど傍にいてくれる人達」 長門「必要?」 朝倉「もちろん必要。恋人や家族に言えないことも、友達になら言えるの」 長門「どんなこと?」 朝倉「そうね……ふふっ、心配しないでも多分すぐにわかるわ」 長門「?」 朝倉「次にね、キョン君に涼宮さんのことを相談されても」 朝倉「それを辛いって思わないで。友達として、その相談に乗ってあげて?」 朝倉「難しいかもしれないけど……あなたは、いえ、あなたにもちゃんと大切な人が現れるから」 長門「大切な人が現れる為に、我慢する?」 朝倉「いつかその人と、相談されたようなことで悩むかもしれない」 朝倉「そんなときに、今度はキョン君や涼宮さんに相談できるように……ね?」 長門「朝倉さんじゃだめ?」 朝倉「……ごめんね」 長門「?」 朝倉「ほら、もう寝なさい。もうこんな時間だわ」 長門「おやすみなさい」 朝倉「おやすみ」 141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 15:38:28.02 ID:gsbVI4180 長門「…」 キョン「なあ、長門」 長門「?」 キョン「本、面白いか?」 長門「ユニーク」 キョン「そ、そうか」 長門「…」 キョン「…」 長門「なに?」 キョン「えっ?」 長門「なにか、聞いてほしいこと?」 キョン「いや、その」 長門「のれる範囲で、相談にのる」 キョン「あ……あーいや、そのなぁ」 長門「言って」 キョン「……えっとな」 146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 16:46:15.04 ID:gsbVI4180 長門「……なるほど」 キョン「何故かわからんけど、どうも不機嫌でな……」 長門「わかった」 キョン「閉鎖空間とか、生まれてないんだろうか?」 長門「わからないけど、恐らく」 キョン「そっか……あの、なんていうか」 長門「解決するのは、あなた」 キョン「……そうだな。なんでも長門に頼るのはだめだよな」 長門「…」コク キョン「あー、どうしたもんかなぁ」 147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 16:50:40.77 ID:gsbVI4180 長門「…」 ハルヒ「ゆっきぃ……」 長門「?」 ハルヒ「あのね、あの」 長門「なに?」 ハルヒ「……ううん、やっぱなんでもない」 長門「彼のこと?」 ハルヒ「!」 長門「なにか、相談したいことでも?」 ハルヒ「……よ、よくわかったわね」 長門「聞く」 ハルヒ「でも、なんていうか」 長門「私はあなたの友達だから、聞かせて?」 ハルヒ「! ……有希……うん」 148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 16:53:15.92 ID:gsbVI4180 朝倉「それで、二人共なんて?」 長門「互いの勘違いが、そういう状況を起こしているみたい」 朝倉「あらあら、ありがちねぇ」 長門「私は、どうすれば?」 朝倉「どうすればいいと思う?」 長門「……言う」 朝倉「なんて?」 長門「互いに互いが思っていることは、思い込みすぎで勘違いだと」 朝倉「それが長門さんの答えね」 長門「正解?」 朝倉「残念。不正解」 長門「……?」 朝倉「正解はね、なにもしない」 長門「なにも……しない」 150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 17:04:56.80 ID:gsbVI4180 朝倉「なにもしないで、聞いてあげるだけ」 長門「でもそれじゃ、なんの解決にも」 朝倉「ううん、大丈夫」 朝倉「そういう相談をね、聞いてくれる人がいることが大切なの」 長門「?」 朝倉「誰も聞いてくれなくて、一人で抱え込んでも答えは見えてこないから」 朝倉「だけど解決するのは、本人達。だから長門さんはね? 二人に心配しないでいいよって」 長門「……慰める?」 朝倉「ふふっ、違うわよ。お互いを信じてあげてって。そう言ってあげて?」 長門「…」 朝倉「できることがあっても、しない。それも『友達』の役目なの」 長門「わかった」 朝倉「うん。よかったわね……どんどん人間らしくなっていく」 151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 17:08:01.46 ID:gsbVI4180 ハルヒ「有希、聞いて聞いて!」 長門「?」 ハルヒ「前に相談したことなんだけどね……キョンがさ」 長門「……そう」 ハルヒ「謝ってくれたんだけど、あたしも勘違いしてたみたいでさ」 長門「解決して、よかった」 ハルヒ「うん……ほんとによかった」 長門「あの」 ハルヒ「?」 長門「今度は……私が、聞いてもいい?」 ハルヒ「なにを?」 長門「その……あなたは、彼のことが好き?」 ハルヒ「? うん、もちろん。あたしはキョンが好き。大好きよ」 長門「そう……」 ハルヒ「どうしたの? あ! もしかして有希……好きな人でもできた?」 長門「? 違う」 ハルヒ「あれっ」 154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 17:26:33.54 ID:gsbVI4180 長門「まだ少し、男女間の好きというのがよくわからない」 ハルヒ「好きな人とか、いないの?」 長門「好きな人……いる。だけど、その人は……家族」 ハルヒ「うーん」 ハルヒ「有希を好きな男の子なら沢山居そうなんだけどねー」 長門「?」 ハルヒ「でもあんた、静かな子だから……そうだ!」 長門「…」 ハルヒ「キョンが居るじゃない!」 長門「……彼はあなたの」 ハルヒ「そうよ。取ったら怒る……じゃなくて! あいつに男子を紹介してもらうのよ!」 長門「何故?」 ハルヒ「何故って、そりゃあたしもさ? 有希にいい人ができるのは嬉しいし?」 長門「そう?」 ハルヒ「もっちろん! いいわよ恋人って! 楽しくって幸せで……」 キョン「? なにが楽しくて幸せだって?」 ハルヒ「!! キョ、キョン! 居るなら居るって言いなさいよっ!」 キョン「今来たところだよ。で、なんの話だ?」 ハルヒ「あのねー」 157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 17:49:24.36 ID:gsbVI4180 キョン「そんなことを言われてもなぁ」 ハルヒ「誰かいない?」 キョン「うーん」 キョン「いないわけじゃないけどさ」 ハルヒ「うん」 キョン「その、いいのか長門?」 長門「……よくわからない」 キョン「長門がいいのなら、紹介してみてもいいと思うんだが」 ハルヒ「誰?」 キョン「そりゃまあ、あいつかなぁと」 ハルヒ「……あー」 長門「?」 158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 17:52:15.63 ID:gsbVI4180 朝倉「へぇ、そんなことがあったの?」 長門「私はどうすればいい?」 朝倉「うーん、そうねぇ」 朝倉「私としては、恋愛感情もちゃんと体験してほしいってのがあるわね」 長門「…」コク 朝倉「だから、誰かいい人を紹介してもらって……でもいいけど」 長門「?」 朝倉「まあ、できれば。できればだけどね? 長門さん自身にそういう人を見つけてほしいなって」 長門「私自身に?」 朝倉「長門さんが好きな人を見つけて、その人と恋愛してほしいなって」 長門「…」 朝倉「でもこればっかりは、あなたがいい人を見つけないと始まらないし……」 長門「わかった」 朝倉「え?」 長門「私が、私の好きな人を探す」 朝倉「……うん。そうしてみる?」 長門「…」コク 160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 17:57:11.32 ID:gsbVI4180 キョン「え? いい?」 長門「…」コク ハルヒ「なんで?」 長門「自分で、見つける」 ハルヒ「そっか。なら、仕方ないわね」 キョン「うーん、長門がそう言うのなら、うん」 長門「それで」 ハルヒ「?」 長門「自分で好きな人を見つけるというのは、どうすれば」 キョン「…」 ハルヒ「どうって言われても……えーっと」 長門「あなた達は、どうして互いを好きに?」 ハルキョン「「!?」」 161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 18:00:35.39 ID:gsbVI4180 長門「教えてほしい」 ハルヒ「え、えーっと……その」 キョン「なんだ……あのな」 長門「?」 キョン「そ、そういうのはだ。なんというか……個人差?」 ハルヒ「べべっ、別にあたしがなんでキョンが……好き……とか」 長門「言えない?」 ハルヒ「! そ、そうだ! ほら、クラスにいい子いないの!?」 長門「……どうだろう」 ハルヒ「とにかく観察よ! 色んな人を見て、自分で見極める!」 キョン「そうだな。うん、そうだ」 長門「わかった」 ハルヒ「よし! じゃあ今日は有希の好きな人を見つけるべく捜索よ!」(びっくりしたぁ……) キョン「…」(……なんで好きにとか、言えるかそんなの……恥ずかしいっての) 162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 18:04:50.39 ID:gsbVI4180 朝倉「それで、見つかった? 好きな人」 長門「特に。いつもと変わらなかった」 朝倉「ふふっ。そうでしょうね、そんな簡単に誰かを好きになるのもなんだか嫌だわ」 長門「?」 長門「それと」 朝倉「うん、なに?」 長門「二人共……何故互いを好きかを教えてくれなかった」 朝倉「……それ、いつ聞いたの?」 長門「部室で」 朝倉「あらら、そういうのはね? 二人っきりの時に聞きなさい」 長門「?」 朝倉「『恥ずかしい』ってこと。まだよくわからないかしら」 長門「…」 朝倉「それも、好きな人が見つかればわかるかもね」 長門「朝倉さんみたいな人?」 朝倉「できれば……うん。長門さんを大切にしてくれる人」 長門「…」コク 163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 18:06:58.22 ID:gsbVI4180 ハルヒ「見つかった? 好きな人」 長門「…」フルフル ハルヒ「見つかんないかー」 ハルヒ「まあいいわ。じっくり探しなさい!」 長門「あの」 ハルヒ「?」 長門「今なら、聞いてもいい?」 ハルヒ「何?」 長門「何故、彼が好きなのか」 ハルヒ「! ……うん。教えてあげる」 長門「…」コク ハルヒ「って言っても……何故かしらね」 長門「?」 ハルヒ「あたしの場合は、気がついたらキョンが好きだったってことなの」 165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 18:10:56.29 ID:gsbVI4180 ハルヒ「最初はなんとも思ってなかったんだけど……いつのまにか好きになってた」 長門「ドコに惹かれたの?」 ハルヒ「ドコかしらね……よくわかんないわね」 長門「……理由なく好きに?」 ハルヒ「ううん。そうじゃないわね」 長門「でも」 ハルヒ「ちゃんと何故好きかってのはあるんだろうけど……結局は全体なの」 長門「全体?」 ハルヒ「キョンのいいところ、ダメなところ。悪いところは……わかんないけど」 ハルヒ「それを全部ひっくるめて、キョンだからあたしはキョンが好きなの」 長門「…」 ハルヒ「だからね、なんで好きって聞かれても答えにくいかな。好きだから、好きってわけ」 長門「……なるほど」 ハルヒ「有希も自然に好きになれるような人が、現れるといいわね?」 長門「現れる?」 ハルヒ「あんたは可愛いから大丈夫!」ムギュー 長門「くるしい」 166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 18:14:12.33 ID:gsbVI4180 長門「自然に……好きな人」 長門「…」 長門「好意的に思うのに……自然?」 長門「難しい」 長門「…」トコトコ 長門「あ……雨」 長門「傘、忘れた」 長門「…」 国木田「?」 長門「…」 国木田「あれは……あ、長門さん」 長門「?」 国木田「どうも。初めましてだね」 長門「……あなたは?」 国木田「僕は国木田。キョンの友達」 長門「彼の……」 168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 18:16:56.56 ID:gsbVI4180 長門「ただいま」 朝倉「おかえりなさい。傘、忘れて……あら?」 長門「…」 朝倉「どうしたの、その傘」 長門「借りた」 朝倉「誰に借りたの?」 長門「えっと……国木田という人」 朝倉「あぁ、彼ね。よかったわね、明日お礼言っときなさいよ?」 長門「…」 朝倉「あの子は優しい感じでいい子だったわね……なんだか懐かしいわ」 長門「?」 朝倉「ほら、私も同じクラスだったから」 長門「あ……うん」 朝倉「そうだ。ああいう子はどう?」 長門「?」 朝倉「彼なら優しいし、あなたにもぴったりかもしれないわね」 長門「…」 171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 18:24:50.50 ID:gsbVI4180 長門「…」 キョン「? なんだ長門、どうしてここに?」 長門「あの、国木田……君は、居る?」 キョン「国木田? おーい」 国木田「長門さん」 長門「これ、ありがとう」 国木田「いいえ。どういたしまして」 長門「それと……今度は、私のオススメを」 国木田「うん」 ハルヒ「ちょ、ちょっとキョン! なにあれ、どういうこと!?」 キョン「さあ……俺にもよくわからんが……なんだか仲がいいみたいだな」 ハルヒ「し、知らなかったわね」 キョン「本当に。まあでも、俺もあいつを紹介しようと思ってたから……丁度いいんじゃないか?」 ハルヒ「かもねー」 172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 18:29:37.62 ID:gsbVI4180 朝倉「? これなぁに? 本?」 長門「あ……」 朝倉「こんなの持ってなかったわよね。借り物?」 長門「それは」 朝倉「国木田君? まあ、そうなの」 長門「…」コク 朝倉「……好きになった?」 長門「わからない。だけど……彼と話すのは、楽しい」 朝倉「うん。そっか」 長門「それと……よくわからないけど」 朝倉「?」 長門「朝倉さんに、知られたくなかった……なんで?」 朝倉「…」 長門「朝倉さんのこと好きだけど、私が彼と仲がいいのを知られるのは少し……嫌」 朝倉「それはね? 『敵意』ってのに似てるのかも」 長門「?」 174 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 18:32:52.59 ID:gsbVI4180 朝倉「あなたは私が彼と同じクラスで、彼の性格なんかを知ってることを知ってた」 長門「…」コク 朝倉「だから、私に国木田君と仲良くなったことを言うと奪われるんじゃないかって」 長門「! そんなことは、思ってない」 朝倉「自覚してないだけよ。でも大丈夫。それも人間らしい感情よ?」 朝倉「ふふっ、私のことをライバルとして見てたのかしら?」 長門「わからない」 朝倉「それはまあ、嬉しいわね。だけど私はあなたの……お母さんだから。大丈夫」ナデナデ 長門「…」 朝倉「応援してるわよ? 彼のこと、好きになれるように」 長門「…」コクン 176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 18:34:29.97 ID:gsbVI4180 朝倉「長門さん?」コンコン 長門「…」 朝倉「寝てる」 長門「すぅ……ん」 朝倉「可愛いわね……本当に、可愛い」 長門「くー……」 朝倉「…」 朝倉「あと少し、あと少しで……あなたは人間になれるから」 朝倉「もう少しだけ、私のこと覚えててね?」 180 名前:長門は国木田の嫁 ◆UBgxfb/oXY [] 投稿日:2008/12/20(土) 19:03:38.89 ID:gsbVI4180 少し休憩。今回は結構国木田も空気なのでお許しを… あくまでも主人公は長門。そして朝倉さん。 たまには俺だって、甘くないのを書きたいのよ。 185 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 19:41:03.86 ID:gsbVI4180 キョン「国木田、どうなんだ最近」 国木田「ん? 最近って?」 キョン「その……長門と」 国木田「あぁ」 国木田「長門さんは、いい友達だよ」 キョン「そうか。友達……友達?」 国木田「うん」 キョン「進展なし、か」 国木田「あはは、そうだねぇ」 キョン「まあお前達がいいんなら、それでいいんだろうけど」 国木田「どうなんだろうなぁ……うーん」 キョン「結構仲良さげにしてるじゃないか」 国木田「そうだね。そろそろその……いいかな、とは思うんだけどさ」 キョン「なんだ、度胸ないな」 国木田「うるさいな。君だって涼宮さんから告白されたくせに」 キョン「うっ、そ、それはだな」 186 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 19:43:44.58 ID:gsbVI4180 朝倉「どうしたの?」 長門「…」 朝倉「……こっち、いらっしゃい」 朝倉「また眠れないの?」 長門「…」コク 朝倉「どうして?」 長門「……気になる」 朝倉「国木田君?」 長門「!」 朝倉「ふふっ、わかるわよそれぐらい」 長門「……私は彼が、好きなのかもしれない」 朝倉「うん」 長門「だけど……彼は私のこと、好きじゃないかもしれない」 朝倉「……そうね。人の心は、自分にしかわからないもの」 長門「…」 187 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 19:48:15.48 ID:gsbVI4180 朝倉「でもそれはね? 国木田君も同じだと思うわよ」 長門「?」 朝倉「国木田君もね、長門さんが自分のこと好きなのかを……考えてると思う」 長門「そう……かな」 朝倉「もちろん。それがね? 『恋愛』なの」 長門「…」 朝倉「私が好きなあの人は、私を好きになってくれる? それは誰もが考えること」 長門「答えは?」 朝倉「それはあなたが見つけるの。あなた以外には、見つけることはできないわ」 長門「……どうすればいい?」 朝倉「告白、できる?」 長門「……無理……だと、思う」 朝倉「ふふっ、恥ずかしいかな?」 長門「…」コク 朝倉「じゃあ待ちましょう。女の子はね、待ってあげるのも大事なの」 188 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 19:52:38.17 ID:gsbVI4180 長門「待つ……待ってると、解決する?」 朝倉「ここは国木田君に頑張ってもらわないとね」 長門「…」 朝倉「長門さんが頑張って告白するのもいいけどね……そういうのは、やっぱり男の子が似合うわ」 長門「でも、彼は私のことを」 朝倉「大丈夫、好き。国木田君は、あなたのことを好きだって思ってくれてる」 長門「…」 朝倉「内緒話だけどね? 好きだってわかるから、私はあなたに待ってって言うの」 長門「本当に、大丈夫?」 朝倉「不安なら告白してみる?」 長門「…」フルフル 朝倉「ふふっ、うん。卑怯かも知れないけど、彼に好きだって言わせちゃいましょ」 長門「…」コク 朝倉「だから心配しないで? ちゃんと受け入れられるように……好きでいてあげて?」 190 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 19:55:55.65 ID:gsbVI4180 長門「朝倉さん……」 朝倉「ん?」 長門「恋愛って、難しい」 朝倉「うん。だけどね、それでも人は……誰かを好きになる」 長門「…」 朝倉「……私が教えてあげられることも、あと少しだけ」 長門「?」 朝倉「ほら、今日はもう寝なさい」 長門「…」コク 朝倉「あ、待って」 長門「?」 朝倉「……ううん、なんでもない。おやすみ」 長門「? おやすみなさい」 パタン 朝倉「…」 192 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 20:00:38.88 ID:gsbVI4180 キョン「長門」 長門「…」 キョン「おーい、長門?」 長門「……! なに?」 キョン「ぼーっとしてるな。どうした」 長門「なんでもない」 キョン「最近、国木田と仲いいな」 長門「……そ、そんなことない」 キョン「あはは、隠すなって」 長門「…」 キョン「付き合ってるのか?」 長門「付き合って……ない」 キョン「あいつまだ……そうか」 長門「おかしい?」 キョン「そんなことないさ。ま、ちょっと国木田はヘタレてるのかもな」 長門「?」 ガチャ 国木田「あ、キョン……」 キョン「? おう。どうした、ここに来るなんて珍しいな」 国木田「あの、えっと……長門さん? ちょっといいかな」 長門「! うん」 キョン「……おー」 193 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 20:04:54.30 ID:gsbVI4180 ハルヒ「キョン! なんか有希と国木田君がっ!」 キョン「あぁ、いよいよ告白ってやつ?」 ハルヒ「ふふふ、やっと決心したのね!」 ハルヒ「OKするかな? 有希」 キョン「そりゃするだろ。なんでNGになるんだ」 ハルヒ「それもそうね」 キョン「しかし長かったな。ずっと曖昧な関係だったもんな」 ハルヒ「折角四人で遊んでも、なんの進展もなかったもんね」 キョン「……朝倉が居れば、あいつがなんかちょっかいだしてもっと早かったのかもな?」 ハルヒ「朝倉?」 キョン「うん……あっ!」 ハルヒ「朝倉って」 キョン「いや、あの」(しまった、ハルヒは朝倉と長門の関係を知らな――) ハルヒ「朝倉って……誰?」 キョン「……えっ?」 194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 20:09:57.40 ID:gsbVI4180 国木田「……いいかな。長門さん」 長門「…」コクン 国木田「ありがとう。じゃあ、えっと……よろしく」 長門「…」コクコク 国木田「ごめんね、なんか告白するの遅くなっちゃった」 長門「待ってた」 国木田「え?」 長門「私も、あなたのこと……好きだった」 国木田「……うん。ありがとう」 長門「好き」 国木田「…」 196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 20:14:03.00 ID:gsbVI4180 長門「ただいま」 朝倉「おかえりなさ……ん? どうしたの? なーんか嬉しそう」 長門「え? わかる?」 朝倉「わかるわよ。なが……有希ちゃん、顔が笑ってるもの」 長門「そっかな」 朝倉「どうしたの? いいことあった?」 長門「あのね、おかーさん……」 朝倉「……うん」 朝倉「そっか。有希ちゃんにも彼氏か……そっか」 長門「違うクラスの子なんだけどね」 朝倉「……うんうん。ふふっ、よかったわね」 長門「うん」コク 朝倉「ほら、もうお風呂入っちゃいなさい」 長門「わかった」トトト… 朝倉「…」 朝倉「……おめでとう長門さん。あなたはもう、人と変わらない存在」 朝倉「あとは……あと、一つだけ」 197 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 20:16:37.68 ID:gsbVI4180 ハルヒ「なんか明るくなったわね、有希」 キョン「そうだな」 ハルヒ「国木田とも順調なようだし……ふふっ、見てるこっちがにやけちゃうわ!」 キョン「…」 キョン「な、なあ国木田」 国木田「ん?」 キョン「おまえさ? 朝倉……って、覚えてる?」 国木田「朝倉?」 キョン「あぁ。一緒のクラスだった、ほら転校した」 国木田「? 転校した子なんてうちのクラスに居たっけ?」 キョン「……いや、なんでもない」 200 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 20:19:05.76 ID:gsbVI4180 長門「あの」 国木田「あ、長門さん。ちょっとごめんね、キョン」 キョン「お、おう」 キョン「? 弁当?」 国木田「うん……いいって言ってるのにさ? 作ってくれるんだ」 キョン「長門が?」 国木田「そうだよ。彼女料理上手なんだ、お母さんに教わってるらしいんだけど」 キョン「母親……母親?」 キョン「なっ、長門」 長門「?」 キョン「ちょっといいか?」 長門「何?」 キョン「いや、ちょっと聞きたいことが……」 長門「…」コク 201 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 20:23:38.03 ID:gsbVI4180 キョン「お前、朝倉のこと覚えてるか?」 長門「……?」 キョン「ほら、情報統合なんとかってのが」 長門「…」 キョン「俺を殺そうとして、お前が守ってくれたじゃないか」 長門「……なんの話?」 キョン「お前……どういうことだ?」 国木田「? キョン、なにしてるの?」 キョン「! い、いやあの」 ハルヒ「こらキョーン! なぁーに有希をくどいてんのよっ!」グィーッ キョン「ちがっ、こらハルヒ!」 204 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 20:28:28.35 ID:gsbVI4180 キョン「古泉! 古泉いるか!?」 古泉「っと、なんですか急に」 キョン「いいから、ちょっと来てくれ!」 古泉「どうしたんですか?」 キョン「なあ、教えてくれ。長門がおかしいんだ」 古泉「……はぁ」 キョン「あいつ、いやあいつだけじゃない。皆が朝倉のことを忘れてて」 古泉「…」 キョン「お前も忘れてるのか?」 古泉「忘れてるというか、存じませんね」 キョン「……ほら、長門の」 古泉「?」 キョン「だから、長門を創った情報なんとかのさ!」 古泉「長門さんを作ったって……何を言ってるのです?」 キョン「なにってお前」 古泉「前から言ってるじゃないですか。彼女とあなたは普通の人間だって」 キョン「……なんだって?」 206 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 20:33:08.50 ID:gsbVI4180 みくる「どうしたんですかぁ?」 キョン「朝比奈さん! あのですね」 みくる「?」 みくる「えぇっ、長門さんが宇宙人?」 キョン「そうです。あなたは未来人で、古泉は超能力者で……」 古泉「それはそうですが……彼女は紛れもなく、ただの人間ですよ?」 みくる「長門さんは涼宮さんが望んだ、同年代のお友達の女の子としてSOS団に……」 キョン「そんな……なんで皆……」ピリリr キョン「ん?」 キョン「非通知……誰だ?」 古泉「すいません。そろそろ授業が始まりますので」 みくる「あたしも失礼しますね」 キョン「ちょ、あ……えぇっ?」 キョン「…」 ピッ キョン「も、もしもし?」 朝倉「……キョン君? わかる? 朝倉。朝倉涼子だけど」 キョン「! あ、朝倉か!? お前なんで――」 朝倉「……うん。説明するから……聞いてくれる?」 209 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 20:36:57.99 ID:gsbVI4180 朝倉「今から、私の……いいえ、長門さんの家に来れるかしら?」 キョン「今からか? だけど今は」 朝倉「お願い。もう、時間がないの」 キョン「…」 キョン「罠じゃないんだろうな?」 朝倉「罠?」 キョン「お前、一度俺を殺そうとしたじゃないか」 朝倉「あぁ、そうだったわね」 キョン「…」 朝倉「でも今度は違う。今度は長門さんの……」 キョン「なんで、誰もがお前の存在と長門の正体を忘れてるんだ?」 朝倉「……来てくれたら説明する。おねがい、これが最後なの」 キョン「……わかったよ」 218 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 21:05:07.50 ID:TQgwJNX00 キョン「……なんだか色々と増えたな、この部屋」 朝倉「でしょ? 今はもう、ここは私とあの子の二人の家だから」 キョン「…」 キョン「どこから聞けばいいんだ?」 朝倉「まずは、長門さんのことから話すわね」 キョン「あぁ」 朝倉「彼女はもう、あなたと何も変わらないただの人間なの」 キョン「……本当か?」 朝倉「えぇ。それがどういうことかはね? 涼宮さんがそれを望んだ、と言えばいいのかしら?」 キョン「ハルヒが……じゃあ古泉達が言ってたことも」 朝倉「そうね。私が少しだけ皆の記憶を改変させたけど……そういうこと」 219 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 21:10:24.58 ID:TQgwJNX00 朝倉「私は彼女のバックアップ。だから、彼女がちゃんとした人間になるまでの世話係だったってこと」 キョン「でもなんで、なんで長門の記憶まで?」 朝倉「もうあの子は人間なの。情報統合思念体が創りだした『モノ』なんかじゃない」 キョン「…」 朝倉「彼女はこれから、人として生きていく。その記憶の中に、本当の生い立ちは必要じゃないわ」 キョン「でも」 朝倉「それにもう、あの子は私を本当の母親だと思ってる。私も……母親としてあの子に接した」 キョン「…」 朝倉「あの子に人としての生き方、個性、生きていくうえで必要なことを全て教えてあげたわ」 キョン「全て、忘れてるのか」 朝倉「えぇ。情報統合思念体も、涼宮さんやSOS団のメンバーの正体も」 キョン「……朝倉涼子としての、お前のことも……」 朝倉「…」 220 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 21:15:36.29 ID:TQgwJNX00 朝倉「ただの人にするのなら、私達にできないことじゃなかったわ」 朝倉「だけど人間の内面。特有の『感情』『価値観』だけは育てるしかなかったの」 キョン「あいつはお前のことを、本物の母親だと」 朝倉「えぇ。しっかりと幼い頃の記憶も作ったわよ? ふふっ、可哀想だけど居ない父親のことも」 キョン「なら、お前も人間なのか?」 朝倉「……そう」 キョン「?」 朝倉「私も人になれれば……よかったんだけどね」 キョン「どういうことだ?」 朝倉「私は一度バグが生じている。つまり、もう壊れてしまっていることと変わりないの」 キョン「…」 朝倉「あの子を見守るだけの、監視者としての存在。そう言えばわかってくれるかしら?」 221 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 21:19:32.71 ID:TQgwJNX00 朝倉「だけどそれも終わり。私は情報統合思念体の元へ」 キョン「な、長門はどうするんだ」 朝倉「……あなたをここに呼んだのも、それが目的なの」 キョン「なんだよ、俺に……なにを?」 朝倉「……聞きたいの」 キョン「?」 朝倉「国木田君は……国木田君に、あの子を任せても大丈夫?」 キョン「…」 朝倉「おねがい、教えて。私はもう、あなた以外とコンタクトをとれないの」 朝倉「彼が本当にあの子に……有希ちゃんにふさわしいかを、私に教えて?」 キョン「…」 キョン「あぁ、大丈夫だ。国木田ならしっかりと……長門の支えになってくれる」 朝倉「……そっか。うん……そうよね、あの子が好きになった人なんだから……」 227 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 21:33:59.70 ID:TQgwJNX00 朝倉「ごめんね? たったそれだけのことなんだけど、どうしても直接聞きたくて」 キョン「……本当にもう、消えてしまうのか?」 朝倉「えぇ。あの子に伝えることが最後に一つだけ。それを伝えれば私の役目は終了」 キョン「長門はこれから、一人で生きていくことに?」 朝倉「大丈夫。ちゃんとしっかりできるように……また記憶を改変させるから」 キョン「お前のことを、忘れてもいいのかよ」 朝倉「もちろん。私はもう用済みだから」 キョン「そうじゃない! 長門は……長門がお前のことを必要にしてるんじゃないのか!?」 朝倉「……大丈夫。記憶さえ変えれば、あの子はしっかりとしてくれるから」 キョン「人の記憶は、そう簡単に変えていいものじゃないだろ」 朝倉「そう簡単に変えられるの。それに、幸せになれるのなら……それも正解と言えるんじゃないの?」 キョン「…」 朝倉「長く母親役をやりすぎたの。私も……このままだと、あの子の傍を離れられない」 キョン「なら、お前は」 朝倉「でもダメなの。あの子は人間。私は対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース」 キョン「…」 朝倉「もう、交わってはいけない存在なの」 228 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 21:37:17.41 ID:TQgwJNX00 朝倉「ごめんね? そろそろあの子、学校から帰ってきちゃうから」 キョン「……最後に一つだけ」 朝倉「なに?」 キョン「なんで、俺の記憶は操作しなかったんだ?」 朝倉「……大丈夫。この部屋を出れば、あなたの記憶も」 キョン「お前は、誰かに覚えてほしかったんじゃないのか?」 朝倉「…」 キョン「朝倉がずっと長門の母親をやっていたのなら、お前だってあいつと離れたくないはずだ」 キョン「ずっと長門の傍で、あいつの母親に……」 朝倉「……だけど、それは」 キョン「わかってる。お前達がそう決めたことを、俺がどうこうできるとは思っていない」 朝倉「…」 キョン「だけど、俺だってこうやって学校をサボらされてここまで来たんだ。一つぐらい聞いてほしいことがある」 朝倉「いいわよ。私も迷惑をかけたからね。殺しそうにもなったしね」 キョン「ほんとだ……えっとな、俺の記憶なんだけど」 朝倉「?」 229 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 21:41:41.13 ID:TQgwJNX00 朝倉「……無理よ。そんなの無理に決まってるじゃない」 キョン「頼む」 朝倉「無理。あなたの記憶を残しておいて、あなたがあの子に私の存在を思い出させたらどうするの?」 キョン「大丈夫。俺は絶対に話さない」 朝倉「……ダメ。あの子が寂しい思いをするのは、私も……だから、ごめん」 キョン「無理なら、今日一日だけでいい。今日一日、俺が眠るまで……」 キョン「それまででいいから、お前のことを忘れさせないでほしい」 朝倉「……もしかして、私のこと好きだったとか?」 キョン「そ、そんな感じだ。っていうか、いきなり忘れるのも……な?」 朝倉「ならわかった。きっかり二十四時になるまでは、そのままにしておくわ」 キョン「あぁ。そうしてくれ」 朝倉「でもそれ以上はダメだからね?」 キョン「わかってる」 朝倉「……ありがとう。これからも、有希ちゃんをよろしく」 キョン「……じゃあな」 ガチャン キョン「有希ちゃん、か……立派な母親じゃないか」 キョン「っと! あと何時間だ? ……よし、いちかばちかだ」 231 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 21:44:54.03 ID:TQgwJNX00 朝倉「……あの子が帰ってくる」 朝倉「有希ちゃん、私の……可愛い子供」 朝倉「…」 朝倉「ふふっ。私も母親らしいこと、できたのかな?」 長門「ただいま」 朝倉「はい、おかえりなさい」 長門「ねぇお母さん? 見て!」 朝倉「?」 長門「今日もお弁当、全部食べてくれたんだ」 朝倉「あら……よかったわね。有希ちゃんお料理上手くなったもんね」 長門「でしょ? もーお母さんも敵じゃないかも」 朝倉「えぇ? なによそれー」 232 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 21:49:01.31 ID:TQgwJNX00 朝倉「……明るくなったわね、有希ちゃん」 長門「? そう?」 朝倉「うん。国木田君? 彼とお付き合いするようになってからかな」 長門「そう……かな」 朝倉「有希ちゃんの話を聞いてるだけでも、いい人なんだなあって伝わってくるもの」 長門「うん……そうかもしれない」 朝倉「……彼のこと、好き?」 長門「好きだよ」 朝倉「あらあら、はっきり言う子ね」 長門「人前じゃちょっと言えないけどね……お母さんは特別」 朝倉「……うん」 朝倉「ねぇ、有希ちゃん」 長門「?」 朝倉「変なこと聞いてもいいかな」 長門「なに?」 朝倉「……お母さんのこと、好き?」 長門「えっ?」 朝倉「あ……う、ううん」 長門「なに、急に? まいったなぁ……もう高校生だよ? 私も」 朝倉「そ、そうよね。なに聞いてるのかしらね私?」 235 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 21:53:10.86 ID:TQgwJNX00 朝倉「…」 朝倉「……これで最後、か」 朝倉「楽しかったなぁ。ふふっ、まるで私も人間だったみたい――」 コンコン 朝倉「? なに?」 長門「……入っていい?」 ガチャ 朝倉「? どうしたの?」 長門「……眠れないの」 朝倉「え? ……一緒に寝る?」 長門「…」コク 朝倉「ふふっ、どうしたの急に」 長門「なんか、お母さんが変なこと聞くから……不安になっちゃって」 朝倉「不安?」 長門「お母さんが居なくなっちゃう気がしてね? ごめんね、変なの」 朝倉「…」 239 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 21:56:32.44 ID:TQgwJNX00 朝倉「覚えてる? 有希ちゃん昔もこうやって眠れないって私の部屋に来たの」 長門「いつの話?」 朝倉「最近のことよ」 長門「嘘。全然覚えてないよ?」 朝倉「……そっか。私にとっては、とても最近のことに思えてさ?」 長門「?」 朝倉「本当に、立派になったわね」 長門「えぇ? なにそれ」 朝倉「ちゃんと人らしく……可愛くなって、彼氏もできて」 長門「は、はっきり言わないでよ。恥ずかしいよ」 朝倉「……幸せだった?」 長門「?」 朝倉「ううん。有希ちゃん、幸せ?」 長門「うん。幸せだよ。お母さんの子でよかった」 朝倉「…」 244 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 22:01:22.66 ID:TQgwJNX00 朝倉「私ね、有希ちゃんに教えてあげないといけないことがあるの」 長門「? なに?」 朝倉「あなたに最後に教えることは……『感謝』」 長門「感謝?」 朝倉「私は、あなたと出会えて本当によかった」 朝倉「短い間だったけど……あなたのお母さんになれて、本当に嬉しかった」 朝倉「色んなことをあなたに教えたけど、私も沢山のことを教えてもらった」 朝倉「……国木田君と……ずっと幸せになってね?」 長門「な、なにそれ……まるでお母さん、居なくなっちゃうみたい」 朝倉「……ふふっ、冗談。びっくりした? 有希ちゃんが幸せそうだから、ちょっといじわるしたくなってさ?」 長門「…」 朝倉「怒った? ごめんね」 長門「冗談でもそんなこと言わないでよ。お母さんは私の……私の、たった一人の『お母さん』なんだから」ギュゥ 朝倉「……有希ちゃん」 長門「…」 246 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 22:03:29.70 ID:TQgwJNX00 長門「私もお母さんに教えることがあるよ」 朝倉「なに?」 長門「お母さんのこと……大好き」 朝倉「…」 長門「恥ずかしいから、あまり言えないけど……私は世界で一番、お母さんが好きだから」 朝倉「有希ちゃん……うん」 長門「ありがとう。私、大人になってもずっとお母さんの子供だから」 朝倉「うん……うんっ」 長門「? 泣いてる?」 朝倉「な、泣いてないわよ。もー……有希ちゃん」 長門「…」 朝倉「おやすみ……私の大切な、可愛い有希ちゃん」 長門「うん。おやすみなさい」 248 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 22:09:20.82 ID:TQgwJNX00 朝倉「……寝た?」 長門「すぅ……」 朝倉「…」モゾモゾ 朝倉「これで最後。もう、私との関係はおしまい」 朝倉「……私も、人間ならよかったって……思っちゃった」 朝倉「…」 朝倉「さよなら。有希ちゃん」 朝倉「私を忘れても……『幸せ』はずっと、忘れないでね?」 250 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 22:13:59.81 ID:TQgwJNX00 キョン「……朝か」 キョン「…」 キョン「……なんだ? なにか大切なことを……忘れてるような」 ハルヒ「おっはよー!」ドンッ キョン「っと! なんだハルヒ。痛い」 ハルヒ「挨拶よ、挨拶ー」 キョン「痛い挨拶は勘弁してくれよ」 ハルヒ「あら、キョンは攻められるのは嫌いなのね?」 キョン「うるさい」 ハルヒ「それよりさあ」 キョン「?」 ハルヒ「昨日のアレ、一体なんだったの?」 キョン「昨日の?」 ハルヒ「ほら、授業サボったと思えば急に電話してきてさ?」 キョン「??」 251 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 22:15:58.65 ID:TQgwJNX00 ハルヒ「なに? 覚えてないの?」 キョン「というか、俺昨日なにしてたっけ」 ハルヒ「はぁ?」 キョン「学校を……なんでサボったんだ?」 ハルヒ「なんでって……そんなのあたしが知るわけないじゃない!」 キョン「?」 ハルヒ「あ、あんた頭大丈夫?」 キョン「失礼な」 ハルヒ「とにかく! 昨日の変な電話!」 キョン「……どんな電話?」 ハルヒ「だーかーらっ!」 長門「おはよう」ヒョコ ハルヒ「あ、有希。おっはよ!」 キョン「おー、長門」 長門「……あの」 キョン「?」 255 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 22:22:01.56 ID:TQgwJNX00 キョン「なに? なんだよ?」 長門「その……あのね?」 ハルヒ「?」 長門「なんか……お母さんが」 ハルヒ「有希のお母さん?」 長門「うん。お母さんが、あの」 キョン「? なに、俺になんか――」 朝倉「! キョン君!?」 キョン「!」 ハルヒ「わっ、あ、有希のお母さん!?」 長門「あ……うん。なんか、用があるって」 朝倉「はぁっ、はぁ……ちょ、ちょっと、どういうこと!?」 キョン「なっ、なにがですか!?」 ハルヒ「うわー……なんか、すっごい美人……わー」 257 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 22:24:47.44 ID:TQgwJNX00 朝倉「私、なんでここに居るの?」 キョン「なっ、なんでって……さあ?」 朝倉「確かに私は、有希ちゃんの記憶からもあなたの記憶からも……」 ハルヒ「?」 朝倉「それに、情報統合思念体とのコンタクトもとれないし」 長門「? お、お母さん?」 朝倉「……その……私も、人間に」 ハルヒ「すっごいわねー。なんだか昨日言ったとおり」 朝倉「え?」 ハルヒ「ほら、キョンの電話」 キョン「俺の?」 ハルヒ「だからあんた言ったじゃない。有希のお母さんの話」 朝倉「?」 ハルヒ「有希のお母さんがさ、美人で優しくて、有希のことを大好きな最高のお母さんだったらいいなぁって」 朝倉「……えっ?」 ハルヒ「お前もそう思うだろって、聞いてきたじゃない。だから私もそうならすっごい理想的ねぇってさ」 キョン「……そんなこと言ってたっけ? なんだ、全然覚えてないな」 261 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 22:27:57.53 ID:TQgwJNX00 ハルヒ「なんかすっごい聞いてきたじゃない? ハルヒもそう思うだろ〜って」 キョン「…」 ハルヒ「……全然覚えてないの?」 キョン「おう」 ハルヒ「あんた、どっか壊れたんじゃないの? 脳とか脳とか」 キョン「あのなぁ」 朝倉「嘘……じゃあもしかして……涼宮さんの力?」 ハルヒ「? 私が何か?」 長門「お母さん?」 朝倉「私が、有希ちゃんの母親のままでいることを……涼宮さんに……」 キョン「なっ、なんですか? 俺達……なにか?」 長門「お母さん……大丈夫?」 263 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 22:30:45.05 ID:TQgwJNX00 朝倉「……そっか。だから、せめて二十四時までって……んっ」 長門「お母さん?」 朝倉「ううんっ、なんでもない! ごめんね皆? ほら、学校送れちゃうわよ?」 ハルヒ「!! ほ、本当だもうこんな時間っ!」 キョン「っと、急がないと」 長門「あ、ほんとだ」 朝倉「ほら有希ちゃん、いってらっしゃい!」 長門「? う、うん! 行ってきます」 朝倉「私……このまま有希ちゃんのお母さんで?」 朝倉「キョン君……んっ、ありがとう」 朝倉「ありがとう、本当に……ひっく、ありがとう……っ」 265 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/12/20(土) 22:31:35.36 ID:TQgwJNX00 ハルヒ「な、なんだったの? 有希のお母さん」 長門「わかんないけど……着いてくるって言うから」 キョン「なんつーか、すっげぇ若い母親なんだな」 長門「そ、そうかな?」 ハルヒ「それに美人! ほんとに昨日思った通りだったわ!」 長門「……えへへ」 ハルヒ「優しそうな人だったし……有希、お母さんのこと好きでしょ?」 長門「私? 私は――」 長門「うん、大好き。たった一人のお母さんだもん……世界で一番、大好きだよ」                                  終。 273 名前:長門は国木田の嫁 ◆UBgxfb/oXY [] 投稿日:2008/12/20(土) 22:37:10.00 ID:TQgwJNX00 なんだろうね。消失読んでないけど、イメージだけで想像するとこんな感じですw いやあ、原作好き&長門、朝倉スキーには申し訳ないです。 色々と書きましたが、これで今年のSSは終了って具合。 また来年。思いつけば、の話ですが! よいお年を〜。 ノシ