長門「僕女の子だよぉ」 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/11/15(土) 17:35:33.83 ID:6b8uecE70 長門「僕女の子だよぉ」 静まり返った部室の静寂を破るようにして放たれたその言葉に団員一同目を丸くする。 古泉と俺は顔を向き合わせる。古泉は手のひらを上に向け、お手上げのポーズ。 今ハルヒはいない。団長のいないこの状況で、質問を投げかけるのは俺の役目のようだ。 一体どうしたんだ? 簡潔に聞く。こういうときは遠回りに聞いても駄目だ。 長門「僕は女の子。スポーツが好き。よろしく。」 まさかの自己紹介。口調はいつもの長門ようだが・・・。 「みんな、なんでこんなに良い天気の日に部屋でじっとしているんだい?外でサッカーをしようよ!」 いつもの長門ではない。口調もどこか男の子っぽくなったぞ。 長門「ほらほら、行くよ!先にいって場所とっとくからね。」 そういってボール片手に部屋の扉を勢いよく飛び出し、無人の廊下を走り去った。 一同沈黙。 長門が出て行って間もなく、ハルヒが扉を開けて入ってきた。 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/11/15(土) 17:49:04.05 ID:6b8uecE70 ハルヒ「有希が階段をすごい勢いで下りていったけど何かあったの?」 流石のハルヒも困惑している様子。 なんと説明していいものか・・・長門が急に男の子っぽくなった。 間違っちゃいないが、どう考えても納得できる答えじゃない。 長門は・・・実は男の子だったんだ。 これこそSOS団緊急会議ものだ。 どうするものか。参ってしまった俺は、古泉と朝比奈さんに助けを求める。 と、その時窓の外から元気のよい小学生のようなはつらつとした声が飛び込んできた。 長門「おーい!みんなも早く降りておいでよ!」 手を振る長門。困惑する部室内部。 ハルヒ「あれ・・・有希よね?」 ハルヒにも少しは人を見分ける能力があったようだ。 困り果てて言葉の出ない俺達はとりあえず 元気の良い小学生の待つグラウンドへと向かった。 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/11/15(土) 18:06:35.68 ID:6b8uecE70 ハルヒ「有希、一体どうし―――」 長門「何する1鍵閉めた!」 うおっ、小学生かよ。しかも1って・・・ 長門はいつの間にか体操服に着替えていて、夏の草むらを飛び回る虫のようにピョンピョンと飛び跳ねている。 しかし制服姿の多い長門だが、体操服姿の長門・・・悪くない。 いつもは制服で完全防備の長門だが、体操服は少し露出部分が多い。 クラスが違うからあんまり見れないし、良い目の保養になりそうだ。 ハルヒ「ちょっとキョン、何ニヤニヤしてんのよ。」 不意打ち。驚いて振り向くと、口をアヒルのようにしたハルヒが立っていた。 先ほどまで制服を着ていたハルヒは、こちらもいつの間にか体操服に着替えている。 嫌な予感がするな・・・。 この一年間、俺の嫌な予感は大抵あたっており、もはや予測の域を超え、予知である。 「おーい、キョーン」 遥か後ろから俺を呼ぶ声。あれは・・・いや、見なかったことにしよう。 谷口「おい、キョン聞こえてんだろ?無視すんなって。」 体操服姿の谷口に返す言葉がなかった。 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/11/15(土) 18:15:22.60 ID:6b8uecE70 谷口「サッカーするんだって?俺達も混ぜろよ。」 体操服姿の谷口と国木田が俺に駆け寄ってくる。 谷口「聞いたぜ、そこの長門さんに。」 国木田「僕、長門さんの事、誤解してたなぁ。結構活発な人だったんだね。」 流石長門。行動力が桁違いだ。 「お〜い、私も入れて欲しいにょろ〜」 この声は・・・鶴屋さん、あなたもですか。 朝比奈「なんで鶴屋さんもいるんですかぁ〜」 不安そうな顔で尋ねる朝比奈さん。 鶴屋「有希っこに誘われたにょろ〜」 ああ、もう何がなんだか。 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/11/15(土) 18:29:49.55 ID:6b8uecE70 「本当に返してくれるんだろうね?」 あなたもですか・・・コンピューター研部長氏。 あなたは一番SOS団の被害を受けているお方ではないですか。 なのになぜ。 部長「なぜって、パソコン返してくれるっていうから来たんだろ。」 おいおい、長門。いいのかよそんな約束して。 ハルヒの耳に入ったら部長氏の命が危ないぞ・・・。 とりあえず今は黙っておいたほうがよさそうだな。 「君が代表者かい?」 今度は誰―――誰? 俺の後ろに立っていたビックリするほど図体の良い男はサッカー部の部長だそうだ。 サ部長「今日は良い試合をしよう。あと、試合に負けたらなんでもいう事を聞く。      言いだしっぺはそっちなんだから忘れんなよ!」 サッカー部の部長氏は高笑いを上げながら去っていった。 おいおい・・・なんなんだよこれ・・・。 いつの間にか俺達は"絶対に負けられない戦い"に引きずり出されていた。 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/11/15(土) 18:38:11.12 ID:6b8uecE70 ハルヒ「キョン!サッカーは何人でやるスポーツなの?」 ハルヒの顔はすでに光り輝いていた。 さっきまでの困惑した表情はどこへいった。 ハルヒ「キーパーを入れて11人・・・ってことはあと二人ね!」 本当にやる気かよ。ハルヒ・・・実はこの勝負に負けてしまうと――― 古泉「僕が手配いたしましょう。」 古泉・・・お前どうする気だよ。 古泉「青春じゃないですか。飛び散る汗、深め合う絆。実によい。それに」    「僕はバイトよりはサッカーのほうが楽なんでね。」 そう言って古泉は携帯を取り出しメールを送り始めた。 数分後、そこには現れたのは生徒会長と古泉の上司の森さんだった。 斯くして11人のフィールドプレイヤー達は強敵、北高サッカー部へと立ち向かう事になった。 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/11/15(土) 18:49:10.00 ID:6b8uecE70 FW      ハルヒ      鶴屋 MF          長門        国木田     谷口     キョン              会長 DF  朝比奈    森     部長氏 KP          古泉 決め方はもちろんくじ引き。 まあハルヒだけは最初から決まっていたがな。 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/11/15(土) 18:55:22.87 ID:6b8uecE70 キックオフの笛とともにハルヒが一人で突っ走る。 ハルヒ「ほらほら〜どきなさぁああああい!!」 一人、二人。サッカー部の精鋭達の間をドリブルできりさいてゆく。 いきなりなんでも卒なくこなすあたりは流石だ。 いつのまにか相手キーパーとの1対1。 そしてシュート。 強烈なシュートが相手ゴールに突き刺さる。 前半始まってすぐ、SOS団が先制するという形で試合の幕は切っておろされた。 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/11/15(土) 19:29:34.72 ID:6b8uecE70 一点先制されてサッカー部の連中の目の色が変わった。 弱小であろうとそこはサッカー部の意地というものがあるのだろう。 こんな訳の分からん連中に一点取られたこと自体が恥なのだろう。 どんどんと攻め込んでくるサッカー部。 こちらのDFはというと・・・。 朝比奈さんと部長氏と森さん。 朝比奈さんは相手FWのドリブルの邪魔にならないよう気を利かせてラインの近くで丸くなっている。 部長氏は相手のFW睨まれて、苦笑いを浮かべているところだ。 部長氏、相手は1年ですよ・・・。 そんな訳でこちらのDF陣は崩壊中。 ただ森さんだけは違った。人間離れした体力と走力で両サイドを駆け回っている。 今も丁度メイド服の森さんのスライディングが決まったところだ。 でもスカートでスライディングって・・・。 しかしスカートの中は絶妙な角度で見えなかった。流石その辺は抜かりがないようで。 相手FW「くっそ・・・。」 突破が無理と踏んだサッカー部は森さんの足の届かないところからロングシュートを打ってきた。 これが幸運。すごい速さでボールがゴールの右隅を襲う。 しかし、間一髪古泉が右腕一本でセーブした。 おい、誰かその止めた後のモデルの様な笑顔をやめさせろ。 前半はここで終了。 なんとなんと1対0。下馬評を完全に覆すようにSOS団+αリードで折り返した。 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/11/15(土) 19:42:22.35 ID:6b8uecE70 後半開始。 鶴屋「有希っこ〜、行くにょろよ〜」 長門「オッケー!」 後半開始早々、鶴屋さんと長門がワンツーで相手陣地にぐんぐんと攻め込む。 ていうか、長門さん?あなたキャラ変わりすぎじゃありませんか? そんな疑問もおかまいなし、サイドを駆け上った俺にパスがでる。 どうする、あんな遠くまでボールが蹴れるか? 球技は上手くもないが下手でもないと自負している。 ただ今回は相手が相手だ。 いつも体育の授業でやっているようなおちゃらけサッカーじゃない。 俺はこけそうになりながらも必死でボールを蹴る。 予想外にちゃんと飛んだボール。 そこに鶴屋さんがどんぴしゃのタイミングで入ってきてヘディングでシュート。 運動神経抜群の鶴屋さんのおでこから放たれたシュートはキーパー顔スレスレを通りゴールに決まった。 優勝パレードの様にみんなとハイタッチをしながら戻ってくる鶴屋さん。 しかしふと鶴屋さんの後ろを見ると、なにやらサッカー部員の輪が出来ていた。 その中心にいたのは長門。苦痛で顔を歪めている様だ。 サッカー部員「引っかかってこけてしまった様なんだ。足をひねってるらしい。」 さっきまで元気いっぱいにフィールドを駆け回っていた長門はもういなかった。 長門「まだでき・・・痛っ。」 今までに見せた事のないような表情で痛がる長門。 これは続行不可能だな。俺は文句を垂れるハルヒを余所に、長門をおんぶして保健室へと向か 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/11/15(土) 19:42:39.28 ID:6b8uecE70 った 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/11/15(土) 19:54:58.92 ID:6b8uecE70 背負っている長門はとても軽かった。 女の子はみんなこんなに軽いのか。少し驚きだ。 保健室へと向かう道すがら長門、今は僕っこの長門と話をした。 「痛いか?」 「ちょっとだけ・・・でも大丈夫。」 「全く、無理するからだぞ。」 「してないもん。」 「っていうか長門、今日はどうしちゃったんだ?」 「どうって?」 「なんていうか・・・キャラが違うっていうか・・・男の子っぽいっていうか・・・。」 「キョンくんの言ってる事よく分かんない。僕はいつもこうだよ。」 「まいったね・・・。」 「・・・・。」 「・・・・。」 「あのね、キョンくん。」 「なんだ?」 「背中大きいね。」 一瞬、時が止まった気がした。いや、今の言葉には時計の針を止めるくらいの破壊力はあったはず。 長門は俺の背中に顔をくっつけた。 長門の体温が俺の背中から伝わってくる。 俺の顔は真っ赤に染まった。まるで夕焼けのように。 誰もいない廊下にやけに大きな心臓の音が木霊する。 「まあな。男だからな。」 そんな気の利かない言葉しか出てこなかった。 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/11/15(土) 20:09:49.22 ID:6b8uecE70 保健室につく。誰もいないのになぜか鍵だけは開いていた。 適当に氷をビニール袋に入れて、その上からタオルをまいてひねった箇所に当てた。 「ひゃっ・・・!」 長門はそんな声を上げたあと、少しだけ頬を赤らめた。 放課後の保健室、女の子と二人だけ。 俺の思考回路はすでに暴走中。これはやばい。 俺は氷を一握りだけ持ってくると、ハンカチに包み熱暴走中の頭に押し当てた。 暴走中の頭を静めなければ・・・。頭を抱えるようにして俯く。 思い出せ。これは長門だ。どんなにキャラが違っても長門なんだ。 踏み外すな。長門は宇宙人で、俺はただの人間。 交わる事はないんだ。 その一言が急に俺の熱を冷まし、俺を現実の世界へと押し戻した。 「ははっ、運動したらすげー熱くなったな」 なんていいながら顔を起こす俺。 その瞬間、長門が俺の唇を奪った。 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/11/15(土) 20:27:16.66 ID:6b8uecE70 どれだけこうしていただろう。 頭の中では自問自答が繰り返される。 どうなってるんだ。なぜ。どうして。 しかし、この"ありえない"状況が俺をさらに冷静にさせた。 どうして放課後なのに谷口達は学校に残っていたんだ・・・。 いつもなら一目散に変えるのに。今日は・・・。 今日?今日の放課後以前の記憶が全くない。 まさか・・・ 俺は少女を突き放した。 少女はこちらを悲しそうな目で見ている。 その表情は今までに見た中で何よりも綺麗で。でもどこか寂しくて。 この表情が俺の胸を締め付けている事だけは確かだった。 夕日が反射して目にはいる。 少女の頬を雫が伝い、一滴、また一滴と床に落ち、消えていく。 そこにハルヒ、朝比奈さん、古泉の三人が入ってきた。 ハルヒ「有希、どうしたの?」 ただ、俺達の耳にはその声はもう届いていなかった。 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/11/15(土) 20:27:35.41 ID:6b8uecE70 「また、行っちゃうの?」 「ああ。」 「でもこれだけは覚えていて、この世界の事がすべて嘘ではないということを。」 「どういうことだ?」 「この世界にはあちらの世界の事も少しは反映されているってこと。」 「そうか。」 「これでこちらの僕とはさよならね。」 少女は小さく何かをつぶやいた。 すると俺の体が少しずつ光の結晶になってゆく。 「僕、君に背負われている時、ずっと君の事見てたんだよ。」 「わりいな。それどころじゃなくて気づかなかった。」 「ひどいなあ。女心をもっと理解するべきだよ。」 「今度からは善処する。」 「涼宮さんだけじゃなくて、あっちの僕にも少しはかまってよね。」 「ははっ、やきもちか?やきもち、焼くんだな。」 俺は少し笑いながら言った。 「あたりまえだよ。だって、 僕女の子だよぉ 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/11/15(土) 20:28:06.21 ID:6b8uecE70          , ‐'´            `ヽ、         _/   /    /         \      ー=ァ'´/ /.., ´  〃  /   ヽ:..   ::::::ヽ      /イ/ .:/ .::/: .::/ /  .,′   ..:ハ::..  :::::::::      〃 / .:/ .::/:: .:::/.:::l:::  ::| {:.  .::::|::::::::::::   l       /' ,′.:::l .:::l::.__:/ !:/{:::. .::! ::ヽ:.  ::::|::::::::::::::.....|      | ::/:::j ::::l:::::/゙`i:ト ',:::..::::l、.:::!ヽ::...:::|:::::::::::::::::::|      l ::{:::!ハ::::|代尓ミkハ::::::::iム七弋 :::l:::::::::::::::::::l      ∨N':::ヽ:{' rf;;;i./` \:::{ ィテ与、:j::::,::::::j :::八          l :::::lヽゝー'       rf;;j /リ::,' :::/:/l:!         ハ::::::l ///    '    ''‐ ' /:::/:::/}/. リ         _,∧ .::ト、     _    ///:::/:::/ノ          ,∧:ヽ \        ィ':/;イ(: 、             \l/}iヽ、 _,, <〃::/ " おしまい。 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/11/15(土) 20:28:56.95 ID:6b8uecE70 読んでくれた方ありがとう。