ハルヒ「最近キョンと国木田が仲良いのよね」 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/08(土) 19:50:29.91 ID:mFiPueNn0 まあ、元々仲は良かったし同じ中学出身だっていうし、 仲が良いのは当然なんだけどさ… 「でね、その歯医者さんっていうのがまたひどくてさ…」 「はは、ほんと運悪いなあこの人」 …なんかこう…そうよ!前はキョン・谷口・国木田の三人 だったのが最近は2人だけのことが増えてるし、それに なんていうか親密っていうか… 「で、その整体の人が…」 「うんうん…」 だー!別にどうだっていいじゃないのよそんなこと! なんでこんなこと気にしてるのかしらあたし… 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/08(土) 19:56:01.26 ID:mFiPueNn0 ちなみに今キョンと国木田がなにをしているかというと、キョンは 窓によっかかっていて、国木田は何かの文庫本を読みながら… そのキョンによっかかっている。 なんていうかこう、なんていうんだろう…。 いやどうでもいいのよ!けど… 「でほら、ここ読んでよ」 「うん?」 「!!!」 キョンは国木田の持っている文庫本を両手でつかんだ。 キョンは国木田の後ろに立っているわけで、その後ろから両手を 回して本を読んでるわけだから、こ、これはなんていうか… 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/08(土) 19:58:52.54 ID:mFiPueNn0 キョンが国木田を後ろから抱いているようみ見える!これはいけない! そうよ、我がSOS団の団員に妙な噂が立ってはいけないわ! ここは団長であるあたしが一言いってあげるべきなのよそうなのよ! 「ちょ、ちょっと国木田くん!」 「え?ど、どうしたの涼宮さん…」 ………。 しまった…。なんで国木田の方に話かけてんのよ…。 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/08(土) 20:02:33.72 ID:mFiPueNn0 「え、えーっとね?」 「なんだ?お前が国木田に話かけるなんて珍しいな」 そうよ…あんたの方に話しかけるはずだったんだから…。 そして何も話す内容考えてないわあたし。 「さ、さいきんあんたキョンと仲良い…わよ…ね…」 「?」 「何いってんだ?お前」 だああ!これじゃ世間話じゃないの! 「元から仲良いよねー僕達」ヒョイ 「ん?んん」 「!!」 そ、その位置でキョンを見上げるな! 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/08(土) 20:08:25.64 ID:mFiPueNn0 「それがどうかしたの?涼宮さん」 「いや、その…ほ、ほら、最近谷口がいないじゃない!あんたたちいつも 3人組だったのにどうしたのかなーなんて思って…」 それらしい答えをとりあえず答えておく。あー勢いにまかせるんじゃなかった…。 「あ、谷口ねー。最近また彼女できたらしくってさー僕らなんかほったらかしなんだよ」 …なるほど。あいつらしいわ。 「ハルヒ、お前そんな事気にしてたのか?」 「べ、別に気にしてたってわけじゃないけどさ…」 うん、まあそういうことならいいのよ…。 「あ、わかった。涼宮さん焼き餅焼いてたんだー」 「!!!」 「はあ?」 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/08(土) 20:12:10.16 ID:mFiPueNn0 な、なんで国木田がそんなこと言うの!? 「ちちち違うわよ!」 「わけわかんねえな、お前ら」 「ふふ、違うんなら別に仲良くても良いんだよねー」 そう言って国木田はキョンの左腕に顔をぽんと寄せた。 あたし…かわいさでこいつに負けてる気がしてきた…。 「くううぅぅ…」 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/08(土) 20:18:23.34 ID:mFiPueNn0 「まあいいわ!とにかくキョン!あんた団活忘れてないでしょうね! あたし先に行ってるから、あんたも早く来なさいよ!」 とりあえずそう告げて足早に文芸部室改めSOS団の根城へ向かう。 …。ああ、よく考えたら余計なことばっかり言って肝心の あんまりひっついてると怪しく思われるわよ!ってのを言い忘れたわ… 「あ、涼宮さん〜」 「いやーハルにゃん!遊びにきてるよ〜!」 「あれ?彼はまだ来ないんですか?」 部室ではいつものようにみくるちゃんがメイド服でお茶を入れていて、 有希は無言で本を読んでいた。古泉くんはキョンが待ちきれないのか オセロを持ち出している。それと今日は鶴屋さんも遊びに来ていた。 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/08(土) 20:28:00.04 ID:mFiPueNn0 「…みんなさあ、国木田って子知ってる?」 あたしはとりあえず団長席につき、いつものようにパソコンを起動させると それとなく周りに切り出してみた。国木田って、そもそもどんな奴だろう? 「知ってますよ〜キョンくんと同じクラスの男の子ですよね」 「ええ、映画にも出てくれましたし野球にも参加してましたよね」 ふうん…みんな知ってるんだ…。いや、こんな話みんなにしても仕方ないんだけどさ。 「国木田くんの話?あの子めがっさかわいいよねっ!」 「そうですねぇ〜」 「…!」 そうなのか…国木田のかわいさってのはやっぱり侮れないのね。 鶴屋さんとみくるちゃんに言わせるんだからたいしたもんだわ… 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/08(土) 20:42:32.11 ID:mFiPueNn0 と、しばらく皆で談笑しているうちにキョンがやってきた。 よかった…来てくれたんだ。なんとなく来ないかと思ってた。 「遅いわよ!」 「わるかったな…あ、鶴屋さんも来てたんですね」 はぁ、なんでいちいち毒づいちゃうんだろあたし。 いや、それもこれもキョンと国木田があんなにひっつくから… いけない、イライラしてきた。なによ。別に国木田と仲良いのなんて 気にする必要ないのに…。 「で、盛り上がってたみたいだけどなんの話だ?」 「みんなで国木田くんはかわいいねって話してたのさっ」 「キョンくんは中学のころからのお友達なんですね〜」 「…!」 「こっちでも国木田の話か?まあでもかわいいですよね、あいつ」 「…!!」 みんな余計なことを…っ! なんだか知らないけどキョンにはこの話知られたくなかったのに。 それにしてもキョンからかわいいなんて言葉が出るなんて。 あたしになんか一言もいってくれないくせに…。 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/08(土) 20:50:59.76 ID:mFiPueNn0 「そ、そんな話どうだっていいのよ!真面目に団活しなさい!」 「はいはい…」 「今日こそは負けませんからね」 キョンは席に着くと無言で古泉くんとのオセロを始めた。 むくるちゃんはキョンのために新しいお茶を入れはじめ、有希はずーっと 無言で難しそうな本を読んでいる。今日は鶴屋さんにちょっかいだされながら。 そんなみんなを見ながら、私は私でネットで不思議探しのネタを探しはじめた。 そうよ。これでいいのよ…。 だいたい、キョンと国木田がどんなに仲良くたって、準団員のあいつは いつもキョンと一緒ってわけじゃないんだもの。そうよ。なにも心配ないわ…。 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/08(土) 21:02:21.85 ID:mFiPueNn0 すっかり気を良くしたあたしはグーグルマップで怪しい場所を探したり、 近所で変なニュースがないかチェックしたりしながら市内探索のことを 考えだした。 そうだ!次こそはキョンと一緒の組みになって市内を回ろう。 もうクジじゃなくて、あたしが適当に勢いで決めちゃえばいいんだ。 その日の服…どうしようかな。帽子とかかぶっていってみようかな…。 あ、その前にみんなに言っておかなきゃ。 「はーいみなさん!次の日曜日、久々に不思議探しをおこないまーす!  みんな遅刻しないこと!遅れたら罰金ね!あ、なんだったら鶴屋さんも来ない?」 ふふ…もちろん国木田は呼ばないわよ…って当然じゃない。なに考えてるのよ。 「あ…ハルヒ悪い」 「あん?」 「俺予定あるんだ」 「!」 あたしの幸せプランが頭の中でガラガラと崩れ落ちていく。 その音が脳内に響くのと同時に、古泉くんの携帯がなった。 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/08(土) 21:13:16.21 ID:mFiPueNn0 「予定って………なによ…」 「なにってお前、友達が見に行きたい展覧会があるって言うから一緒に行くだけだ」 「その友達って誰よ!」 「…」 「…国木田だ、それがどうした」 なんとなく険悪な空気が流れるのを感じたのか、みくるちゃんはおろおろしはじめた。 別に友達と2人でどこかに一緒に行くなんて変な事じゃない。 今までだって不思議探しに古泉くんやみくるちゃんが欠席することはあったし。 もちろんあたしに止めることなんてできない。 「…いいわ。行ってらっしゃい」 「ああ、ではそろそろ僕は失礼します。急用ができてしまいましたので  不思議探しはもちろんご一緒しますからね」 「あ、わ、わたしもそろそろ帰ります〜」 「あらら、みんな帰るのかいっ?ゆきんこも?そっかーじゃーあたしも帰ろっかなー」 「あ、じゃあ俺も…」 今日はお開きだ。もういいや。せいぜい国木田と展覧会だかなんだか行けばいいじゃない! ………。 …でも今日は途中まで一緒に帰ろう。どうせ途中まで一緒なんだしね! 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/08(土) 21:31:42.51 ID:mFiPueNn0 とりあえずキョンと一緒に帰り道をあるいているわけだけど、なんかこう… 「…なんかしゃべりなさいよね!」 「…お前がなにか話せばいいだろう」 ダメだ。一度けんか腰になった日はどうしてもぎくしゃくしちゃう。 はあ、キョンもキョンよ。みくるちゃん相手ならあんなにデレデレしてるくせに…。 …やめよう。そうよね。あたしが話したいならこっちから話題を振らなきゃ。 あたしが今話したいこと…。 キョンに聞きたいこと…。 「…国木田と本当に仲いいのね」 「なんだ?今日は国木田にやたらこだわるなあ」 「ちゃんと答えなさいよ!」 「わ、わかったよ…」 「まあ、なんていうかな、中学に入ったときからの友達だからさ。  そりゃあ俺にとっては大事な友達さ」 「谷口より?」 「いや、友達同士を比べたりはしないって…」 …そうよね。あたしなに聞いてんだろ 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/08(土) 21:38:24.13 ID:mFiPueNn0 「まあでも、谷口とちょっと違うのは事実かもな」 「え?な、なにそれどういうこと!?」 「い、いやそんなたいした意味じゃないんだけど…」 いけない…必死になりすぎかしら。 「だからさ、あいつはいつもナンパ最優先だし、今だって彼女できたからって  俺たちほっぽりだして彼女に夢中だろ?でも国木田はさ、そういうとこがなくて  いつも俺と一緒にいてくれるなあって、そういう意味」 「あ、そう…ふーん…」 やっぱり国木田ってキョンにとっては大事な友達なのよね…。 わかってるわよそんなことくらい。 キョンにとって大事な友達なら、あたしだってキョンの一緒にいたいって気持ちを 大事にしなきゃ。そんなことわかってるけど…。 でも「一緒にいてくれる」だって。あたしがあっちこっち連れ回しても ずーっと仏頂面してるくせに。 国木田は「一緒にいてくれる」なのね。ふん…。いいけどさ、別に。 「あ、キョン。…に涼宮さんだ」 「!!」 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/08(土) 21:55:45.17 ID:mFiPueNn0 「よぉー国木田。お前も今帰りかあ」 「うん。今日は図書館によってたからね。キョンと涼宮さんは部活帰り?」 「ああ、駅の方までは一緒だな。歩くか」 なんなのよなんなのよ…。国木田がなんで出てくるのよ! だいたいキョンのその態度はなんなのよ。あたしのときと全然違うじゃない。 「それにしてもキョンと涼宮さんって本当仲いいんだね」 「べ、べつに仲良くなんかないわよ!」 「ふふ、涼宮さんて本当…」 そこまで言って国木田は黙った。何よ、変なところで切るんじゃないわよ…。 だいたい距離近いのよ。肩が触れそう…っていうか触れてるじゃないの! なんでキョンを挟んで左右に立ってるのにあたしとの距離と国木田との距離が 全然違うのよ! 「国木田、もうダッフル着てるんだな」 「ん?ああうん。僕寒いの苦手だし最近遅くなるから」 「そうか…そのコート似合ってるよな」 「!!!」 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/08(土) 21:57:46.48 ID:mFiPueNn0 そのころ閉鎖空間             ドーン!             ( \/゚ω ゚;::::\    ●<わーいきなり強くなったぞー!             ;;;\     /:::::::::|                ^| 神人:::|::::|                |/::::::::|し'                | ハ  |  )ノ__ '|ロロ|/ ̄\A.::.|ロロ|/ ̄\ __ |ロロ|..__ / ̄\ _|田|_|ロロ|_| ロロ| | | _|ロロ|_| ロロ|_|田|.|ロロ|_|田|_.| ロロ|_ 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/08(土) 22:08:21.81 ID:mFiPueNn0 「ふふ、ありがと」 国木田はうれしそうにほほえんでいる。…うん、たしかにかわいい。 それに素直だ。あたしもこんな風に振る舞えれば…。 そうすればキョンももっと優しくしてくれるの…? 「そういやさっきの本、あれ貸してくれるか?読みたくてなってさ…」 「うんいいよ。もう前に読み切ったやつだし」 「そうか。ありがとな」 …なんでよ。なんであたしより国木田に優しくするのよ。 あたしの服、ほめてくれたことなんてないじゃない。 国木田が素直でかわいいから? あたしより長く一緒にいるから? 「…もういい」 「あ?」 「…」 「もういいって言ってるの!あんたたち2人で帰りなさいよ」 「はあ?お前なに怒って…おいハルヒ!」 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/08(土) 22:17:19.05 ID:mFiPueNn0 2人の方を振り向きもせずに、あたしは早足で駅の方に向かった。 ああ、キョンも国木田も変に思っただろうな…。 あたしが国木田に…嫉妬してるってキョンは気づいてないよね。 大丈夫よ。あのバカの鈍感さは破滅的なんだから。 だいたい男の子に嫉妬してるなんて思うわけ無いじゃない。 ばかばかしい。 …ほんと、バカみたい。 はあ、明日になったらキョンと普通に話して、それでもっと素直に 話せるように頑張らなきゃ。 …明日は休みか。はあ。 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/08(土) 22:31:07.32 ID:mFiPueNn0 退屈な土曜日を一人で過ごして、キョン以外のみんなで不思議探索をする 日曜日も終わった。私は有希と一緒にあっちこっち見て回って、 その間有希相手にほとんど一方的にキョンがらみの愚痴をこぼしていた。 あの子は誰かに喋ったりしないし、それになんだか安心して色々話せる。 で、なんとなく気を取り直して月曜日学校に来たわけだけど… 「ほらほらこの絵、入り口にあったのと同じやつだよ」 「あーほんとだ。本当に絵によって作風が変わるんだなあ」 そうよね。キョンはあたしの前の席で、国木田がキョンのところに来ることが 多いわけだから、どうしたってあたしの目の前で仲良くされるわけよね。 本を読んでたときだってそうだったわ…。 ちなみに今日は昨日2人で行った個展やってた人の画集だかなんだかを見ているらしい。 キョンは席にすわったまま大きな本を広げていて、国木田は隣の席の椅子を キョンのすぐ隣にもってきて、そして…肩をくっつけてキョンが読んでる本を のぞきこんでいる。 だから、なんでそんなにべったりくっつくのよ! 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/08(土) 22:44:48.54 ID:mFiPueNn0 国木田は座りながら、どう見てもキョンによっかかってるというか、体重をあずけている。 けれどキョンは全然嫌な顔をしない。いつもは古泉くんにちょっとでも 近づかれると過敏なくらい反応していやがるくせに。 …そうよ。古泉くんとも違うのよね扱いが。 「…でね、ほらこの絵なんかすごいでしょ」 「うわ、気持ち悪い」 「えー僕は奇麗だと思うけどなあ。ほら、下の方にもちゃんと人が描かれてて…」 「うんうん…」 キーッ!なによ!普段芸術なんて全然興味ないんでしょ!? それじゃまるでみくるちゃんといるときの態度じゃないのよ! いや、みくるちゃんともちょっと違う…もっと真剣な…ええ!? ガタッ! 「わ!びっくりしたあ」 「な、なんだハルヒか。いきなり勢いつけて立つなよ…」 なんだハルヒかですって…い、いけないあたし完全にどうかしてるわ… このままじゃもう国木田とキョンが気になって勉強が手に付かなくなって 赤点とりかねないじゃない!そんな余計なことしないように、しっかり 2人がただの友達だってはっきりさせればいいのよ! 「…谷口」 「へっ!?な、なんだよ!」 「静かに。ちょっと話があるのよ…」 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/08(土) 23:08:18.54 ID:mFiPueNn0 こうなったら今日は部活は後回しよ。3人組の片割れ谷口なら2人のことを よく知ってるでしょ。こいつに2人の関係をはっきりさせて、それでおしまいよ! とりあえずあたしは廊下の奥の方に谷口を連れて行った。 「涼宮が俺に話ってなんだよ?」 「国木田とキョンのことで聞きたいことがあるのよ」 「はぁ?なんだよそれ…俺は彼女と一緒に…」 「ここにみくるちゃんチアガールバージョンの生写真があるのよね」 「なんなりとどうぞ!」 ほんとこいつはわかりやすいわね…。国木田もこれぐらいアホで単純ならなあ。 と…。それはそうと、何を聞けばいいのかしら? 「えーっと、あの2人って仲がいいのよね?」 「は?そんなん見ればわかるだろ?」 いや、こうじゃないのよ…もっとこうふみこんで聞いて見なきゃ。 最近のいちゃいちゃ…じゃない!ベタベタ…じゃない! あ、あの妙にくっついてる感じは普通なのよねってことを。 「その…つまりよ。最近こう結構ボディタッチっていうかあの2人なんだか  距離が近いっていうかよくひっついてるじゃない?」 「ああ、そういうことか…そういえばそうかもな」 だー、要領を得ないわねこいつは! 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/08(土) 23:18:38.23 ID:mFiPueNn0 「だからさ、それってあの2人にとっては普通っていうか、自然なことなのよね?」 「はあ?なんかよくわかんねえ質問だなあ…。でもまあ、確かに前からああいうとこ  あったよ。自然に距離が近くなるっていうか、ほら、中学からのつきあいだからさ」 「そ、そうよね…」 そうよ。それでいいのよ。 「なんていうかキョンも俺も勉強できねーけどあいつは頭いいだろ?だから  宿題とか出ると頼りにさせてもらってるしさ。それで国木田は体強い方じゃないから  力仕事とか体育とかでキョンに助けてもらうことが多くて、自然と2人で  一緒にいることが多いんだってさ。傍目から見ると兄弟みたいだな」 「ふうん…」 兄弟か…。まあ健全だけど、なんかいいわねそれ。 よし、これで悩みは解決したわ!ありがとう谷口!あの2人は兄弟みたいで、 お互い頼りにしてて、で、つきあい長いから自然とひっついたりしてるのね。 そういうことがはっきりすればそれでいいのよ。 「ありがとね谷口!もう話は…」 「あ、でも国木田の場合はあれ、頼りにしてるっていうより慕ってるって感じかな〜」 「…え?」 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/08(土) 23:39:40.45 ID:mFiPueNn0 「どういう意味よ、それ!」 「な、なんだよ。いきなり大声出すなよ」 「あ…いや…」 慕ってる?なにそれ? 国木田は…キョンを頼りにしてるだけじゃないの? 国木田は…国木田の目は…キョンを見るとき… 「いや、なんつーかさ、それこそなかのいいお兄ちゃんについてく感じっていうかさー  あいつああ見えて結構毒舌なのにキョンの言うことは絶対聞くし、俺とか  他の友達には言わないような趣味の話もキョンにだけはするんだよ」 国木田は…キョンのことが… 「あいつにとっても他の友達とキョンってちょっと違うんだと思うぜ?  キョンの家泊まって宿題片づけたときなんか、みんなで雑魚寝してたら  あいつ寝ぼけてキョンにくっついて寝て怒られてたし、まあでもキョンも  弟みたいにかわいがってるけどな。あ、なんかこういう風に言うと怪しく  聞こえるか?あはははは」 だめよ!それじゃ安心できないじゃない! キョンにとって国木田はただの友達なんでしょ? 国木田にとっても… 国木田にとってキョンは… 75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/08(土) 23:45:31.12 ID:mFiPueNn0 「谷口、今度あの2人に何かあったら、あたしにメールで教えて」 「は?なにそれ?なんかってなに?」 「何かよ!とにかくあの2人がどっか行くとか、けんかしたとか一緒に  何かしてたとか!そういうことがあったらあたしに知らせるの!」 「はぁ?なんだよそれ?大体なんだって俺がそんなことしなきゃ…」 「写真いらないの?」チラッ 「や、やらせていただきます…」 「じゃ、頼んだわ!」 「っておーい!写真はー?」 「後払いに決まってるでしょ!」 急いで教室に戻ろう。教室に戻ってあの2人の様子をもう一度この目で 確かめるのよ。あの2人はただの友達だって。 あの2人は友達なのよ。 そうでなきゃだめよ。だって、そうでなきゃ…。 85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/08(土) 23:59:07.74 ID:mFiPueNn0 教室に入ったら、キョンも国木田もいなかった。 多分、国木田は帰ったんだ。キョンは部室よね。 何もしたくないし、なんだか疲れちゃったけど、キョンに会わないで帰るのは嫌だ。 あの場所なら、国木田は邪魔できない。あそこでキョンといつも通りにすごそう。 せめて部活の間くらい、いつも通りにすごさなきゃね。 部室に近づくと、キョンと古泉くんが話してる声が聞こえてきた。 よかった。キョンいたんだ。 …でも声が少し大きい。何の話? ドアのまえにたち、いざ開けようとすると、話の内容まで聞こえてきた。 「…だから俺だって努力してるし、ハルヒに気をつかってるさ、でもなあ、  別に後ろめたくもない友達づきあいまであいつに指図されるなんてねえだろ!」 「いえ、ですが我々としてもこれ以上涼宮さんの怒りを長引かせるのは…」 「わかってるし感謝してるさ。けどなあ…」 …あたしの話? 88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/09(日) 00:05:48.58 ID:GbFrmx0a0 ばんっ!っと大きな音をたててドアを開けると、そのままずかずかと 奥まで足を進め、団長席にどかっと座った。 部室の中をよく見てみれば、キョンと古泉くんだけじゃなく、 みくるちゃんも有希も来ている。 そしてみんなが、あたしを無言でみつめている。 ふんっ、みんなであたしの陰口でも叩いてたっていうの? 「…なによっ、なんか話してたんなら続ければ?」 「…いえ、なんでもないんです…」 古泉くんは珍しく表情に余裕がない。疲れているみたいに見える。 「…キョンは?」 「なんでもない…いや、ハルヒ、お前に言っておきたい事がある!」 「きょ、キョンくん…」 みくるちゃんははやくもお盆を抱えておろおろしはじめた。 101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/09(日) 00:20:13.88 ID:GbFrmx0a0 「なによ」 本当はあんまり聞きたい話じゃなさそうだったけど、そういうわけにもいかなそうだ。 「ハルヒお前な、一体何に怒ってるんだか知らないが、幸せになりたいならあんまり  イライラするもんじゃないぞ。そういうのはな、人に伝わっちまうもんなんだ」 「…はあ?」 「お前が怒っていればそれは表情に出るし、みんなを不安にさせちまうんだ。  お前も団長なら団長らしく、人の気持ちをだな…」 「うるさいっ!!」 思わずあたしは大声で怒鳴ってしまった。 105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/09(日) 00:22:40.65 ID:GbFrmx0a0 「あ、あんたはあたしの気持ちなんて考えてないじゃない!  なんなのよ!最近国木田とやたら仲良くして!不思議探しもほったらかして  国木田と個展行ってたんでしょう!?あんたがそんなだからあたしは嫌なのよ!」 「あ、あれはちゃんと話したじゃないか…。それにあれは国木田が好きな画家の個展で、  他に誘える人もいないからいっしょに行ってくれって頼まれて、だから…」 「国木田国木田ってなんなのよ!あんなやつ!」 「あんなやつってなんだよ!」 キョンの珍しく本気の声で、あたしは我に返った。 けれどその本気ぶりは長く続かなかったのか、すぐにキョンは 視線をおとし、気まずそうな顔をすると、もごもごした口調で続けた。 「お前はよく知らないだろうけど…俺の大切な友達なんだ…  あんなやつなんて言うなよ…」 「…わ…悪かったわよ…」 誰もなにも喋ろうとしない。もう嫌だ。帰ろう。イライラなんてしてられない。 なんかこう、ここにいるのがつらくなってきた…。 114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/09(日) 00:34:54.41 ID:GbFrmx0a0 結局、その日はみんなを残してすぐに帰った。 なんだかどっと疲れたから、早めに布団に入って、ゆっくり寝ることにした。 前にみたキョンと異世界に行く夢。あの夢を思い出してみたけど、 その続きを見ることはできなかった。 はあ、国木田…まさかあんたのことでこんなに悩む日が来るとは思わなかったわ…。 次の日から、あたしはなるべく普通に振る舞うようにした。 キョンの言うとおり、怒りはよくない。なんだか古泉くんやキョンにまで 心配かけてるみたいだし。あたしってそんなに顔に出るタイプなのかな…。 いつものように授業を受けて、たまにキョンをからかって、キョンもちゃんと 普段通り返してくれる。部室に行けばみんなもいつも通り迎えてくれる。 古泉くんも休みがちだったけど、だんだんいつも通りに来てくれるようになった。 いつもと同じ日常。その間に、国木田とキョンが仲良くしてるのを見せられるのは ちょっとイヤだけど。それでもきっと元通りになれる。そう思っていた矢先、 谷口からメールがきやがった。 「to:涼宮 from:谷口  件名:キョンと国木田が  日曜日に映画観にいくんだってよ!タイトルと上映時間無理矢理聞いて  おいたから、例の写真忘れんなよな!」 …はぁ。 120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/09(日) 00:46:12.24 ID:GbFrmx0a0 本文には確かに、タイトルと劇場名、上映時間、待ち合わせの日時まで ご丁寧に書いてあった。ご苦労様谷口。でも忘れててほしかったかも。 こんなの無視して、このままいつも通りのあたしでいつづけるべきかしら。 キョンはきっとそれを望んでるのよね。でもあたしは… 国木田の顔と、キョンの顔。2人が一緒にいるときの2人の顔を思い出してみる。 あの2人は友達。キョンにとって国木田はかわいい弟で、 国木田にとってキョンは頼れるお兄さん…? …。 あたしはクローゼットの奥から、なるべく使っていないコートと、 前キョンの前でかぶろうと思ってた帽子を取り出した。 123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/09(日) 00:57:45.71 ID:GbFrmx0a0 「あ、お待たせキョン。ごめん、待った?」 「いや、俺も今来たところだ。っていうかまだ時間前だぞ」 「なんだー。キョンいつも遅刻するから、僕相当遅れたのかと思っちゃった」 「お前な」 「ふふ、いこっキョン」 …なによあれ。あれじゃまるでラブラブのカップルじゃないのよ。 前不思議探索にあたしとキョンしかこなかったときは、 味もそっけもなかった気がするんだけど。ふん…いいけどさ、別に。 それにしてもキョンはともかく国木田の私服ってはじめてみるわね。 ゆったりしたズボンに…上はあったかそうなセーター。 確かに似合ってるわ。似合ってるけど、あんたがそれ着ると、なんだか…。 「お前、そんなの着てるとまたナンパされるぞ」 「そしたらキョンがまた助けてくれるんでしょ?」 「!!」 …これは…やはり目が離せないわ!とと、置いてかれちゃしょうがない。 …これあたしバレないわよね?わざわざサングラスまで買ってきたんだし。 128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/09(日) 01:09:07.67 ID:GbFrmx0a0 ふたりは雑談しながら映画館に入っていった。私は後ろの方の座席を買って、 2人が入場したのを確認してから、その数列後ろに開いている座席を見つけ、 適当に座った。 映画の内容なんて頭に入ってくる訳がない。けれど2人をみても動きはない。 そりゃそうだ。だって映画観てるんだし。 ただでさえ難しそうな映画を働かない頭で鑑賞していると、2人の動きはしない 影が少しずつみえてきた。国木田は、やっぱりすこしキョンのいる右側によって 座っている。キョンは真ん中に座ったままだけど。 2時間の上映中に得た情報はそれだけで、映画は終わった。 あ、2人より先に出て待ち伏せしてなきゃ!バレたら終わりなんだから! 130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/09(日) 01:17:27.84 ID:GbFrmx0a0 映画が終わった後人混みの中から出てきた2人をもう一度尾行すると、 映画館を出てすぐのレストランに入っていった。 く、屋内か…。 ちょっと戸惑ったけど、ここで引き返しては意味がない。 バレないわよ、大丈夫。と自分に言い聞かせ、少し間をおいてレストランに入った。 幸いというか、2人は奥の方に座っていたので、あたしは 入り口の近くの、店の奥を横目でみれる席に座った。 あ、サングラスって今気づいたけど視線を悟られない効果もあるわね。 お店の中は割とすいていたので、2人の会話も聞こうと思えば聞けた。 「でさ、あの子が席に帰ってきたら口紅つけてたでしょ?あのシーンでさあ…」 「え?口紅?」 「えー気づかなかったの?あそこすごくいいシーンなのにー」 …なんていうか国木田がいつもより明るい。2人だとこんな感じなのかしら…。 136 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/09(日) 01:26:04.29 ID:GbFrmx0a0 と、ここまできて気が付いたけど、あたしはなにをしようとしてるんだろう? キョンと国木田の関係を確かめたい。2人の気持ちを知りたい。 それはわかってるけど、2人をつけてどうするんだろう? そりゃあまあ、ふたりで、あ、あんなこととかこんなこととかしてれば、 それか映画館なんかじゃなくてああいうところに入っちゃったりすれば 一発でわかるけど、いくらなんでもそんなわけないじゃない。 っていうかそんなの死んでもイヤだけどさ…。 「そんであいつ結局だれの子だったわけ?」 「あーそれは人によって見え方違うかもねー」 なんだか知らないけど、ごく普通の映画の話しかしてない。 ああ、本当私バカだ。 とりあえずこの味のしないご飯をさっさと食べよう。 138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/09(日) 01:31:45.41 ID:GbFrmx0a0 「じゃ、そろそろ行くか」 「うん、いこう」 あたしが食欲のないままご飯を片付け、空いた時間をコーヒーを飲んで埋めていると、 キョンが不意にそういって席を立った。やっと動くのね… け、けどあたしは出入り口に近いんだった!先に出た方が良いかしら?無理よ! レジで並ぶことになっちゃう。それは危険!とりあえずここは外を眺めるふりで… 「お会計別でいいですか?」 「はい結構ですー?」 「えーとじゃあジンジャエールとBLTサンドが僕で…」 ち、近い!けれど気付かれはしないですんだ… お店のドアがカランコロンと鳴って2人が出て行くのを確認すると、 私も席をたって精算をすませた。 はあ、あと帰るだけか…。なにしにきたんだろ。 141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/09(日) 01:34:47.63 ID:GbFrmx0a0 駅に向かう2人の姿をみていると、確かにお似合いのカップルに見える。 けれど、仲の良い兄弟だと言われれば確かにそうも見える。 あの2人は仲が良い。わかるのはそれだけ。 結局何も前と変わらないじゃないこれじゃ…。 ……… …… …!! 国木田の手が、キョンの手を握っている。 145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/09(日) 01:41:58.66 ID:GbFrmx0a0 うそでしょう?なによそれ。それじゃあんまりみえみえじゃない…。 周りの人だって変に思うわよ! …思わないか。国木田、あんたかわいいもんね。 そうじゃない。そうじゃなくて。キョン、あんたなんでふりほどかないのよ。 男に手握られてるのよ?あんたはイヤじゃないの? 古泉くんが同じ事したら怒るくらいじゃすまないでしょ? 大体古泉くんの悪ふざけだってそこまでいかないわよ。 「キョン、そこの公園寄っていこ?」 「ん?どうかしたのか?」 「ん…ちょっとベンチ座りたい」 …もう嫌だ。帰りたい。けど帰れない。このまま帰ったら最悪だ。 悪いことしか考えられない。 でもついていったら…。 考えがまとまる前に、ふたりは大きい公園に入って行き、私も離れてついて行った。 150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/09(日) 01:52:25.07 ID:GbFrmx0a0 2人はベンチに腰掛けて、特に何を話すでもなくぼんやりと風景を眺めている ようだった。幸いベンチの後ろには、大きく曲がった通路を挟んで、草や木が植えてある 場所が広がっていたので、私少し距離を取ると木陰から2人の様子をうかがった。 我ながらひどい不審者ぶりだとおもうけど、もうそんなこと気にしてられない。 「疲れたのか?」 「うん…ちょっとだけ」 そう言葉を交わすと、それっきりだまったままじっと座っている。 けれど気まずさは全然ない。むしろ落ち着いて2人の時間を過ごしているように思える。 そのまま少し時間がたった後、国木田はぐっとキョンの方に体をあずけた。 そして頭をキョンの肩にのっけた。いつもよりあからさまに。 キョンはそれをいやがるでもなく座っているけど、もう驚かない。 「…お前、最近なんか嫌なこととかあったのか?」 「どうして?」 「お前が…こうやってくるときってほら大体疲れてるときとかだからさ」 「ううん…別に…」 「そうか」 キョンは国木田をいたわっている。 そうか…前から2人の時はこうしてたんだ…。 156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/09(日) 02:00:49.47 ID:GbFrmx0a0 「じゃ、もう行こうか!」 「うし、行くか。つっても駅すぐそこだけどな」 2人は立ち上がった。慌てて私は木の陰に隠れる。 「キョン…ちょっと…よっかかってもいい?」 「え?」 キョンが驚いたような声を上げる。今のは予想外なのね。 「ご、ごめんなんでもない!行こ!」 「…いや、べつにいいんだぞ」 …あたしだってもういいわよ。ふん…。 しばらく声がしなくなったのでそ〜っと木陰から覗いてみる。 2人は抱き合って…じゃない国木田がキョンに寄っかかって、 キョンの体に微妙に腕を回していて、キョンはキョンで国木田を支えてというか 肩の辺りに手を置いていた。 …ほぼ抱き合ってるじゃないの。 「…ありがとう。今度こそ行こっか」 「お前…なんか嫌なことあるなら言えよ?相談に乗るからな」 「ふふふ〜、僕の悩みにキョンが役に立つのかな〜?」 「あってめえこら!」 …もう十分よ。2人の気持ちはよ〜〜〜くわかったわ! あとは尾行するまでもないわ…。 でも…このまま終わりじゃないんだからね! 159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/09(日) 02:08:45.13 ID:GbFrmx0a0 月曜日、長い長い授業が終わって、やっと放課後がやってきた。 国木田が前の方からこっちにくるのを見つつばっとキョンの前に立った 「キョン!話があるのよ!」 「な、なんだ?あらたまって。」 「いいから来なさい!」グイグイ 「あっちょっとこら!襟首つかむなっておい!」 そのままごねるキョンを、人が来ない部室棟の階段の一番上、屋上手前の 行き止まりまで引っ張って行く。 「な、なんだってんだハルヒ!話なら部室でも教室でもいいじゃ…」 「ダメよ!ここでなきゃだめなの!!」 「は、はい…」 「…あんた、国木田のこと好きよね」 「は?そりゃあまあ…好きだからっていうか…好きで付き合ってんだよ」 …わかってる。ここでいう付き合ってるってのはそういう意味じゃないわね。 でもなんかイヤなかんじ! 「…そうね。あんたは友達として国木田が好き。でもその好きっていう気持ちは  国木田があんたを好きな気持ちとおんなじなのかしら?」 「…はっ?」 163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/09(日) 02:16:59.82 ID:GbFrmx0a0 「………な、なにが言いたいんだ?ハルヒ」 少し長めの沈黙のあと、キョンは引きつった笑顔で聞き返してきた。 あたしは動じない。 「そのままの意味よ。あんたの国木田を好きな気持ちと、国木田があんたを  好きな気持ちって、同じもの?」 「いや、だから意味が…」 「本当にわからない?」 「い、いやその…」 「じゃあ同じって言い切れる!?」 「は、ハルヒ…?お前一体…」 …うん。さすがにおかしいと思われるわよね。 しかたない。 「…あたしね。昨日あんたが国木田と歩いてるとこみたのよね」 「は!?な、なんだって!?」 「た、たまたまよ!?たまたま!偶然あんたら見かけたら、その…国木田が  あんたの手握ってたし…公園行ったの見たんだけど気になって…」 「つ、ついてきたのか…お前」 「うん」 キョンの顔が真っ青になっていく。そりゃあ、やっぱり見られたくはないわよね。 「キョン、もう一度答えて、あんたの気持ちは、国木田の気持ちと同じと言える?」 171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/09(日) 02:23:30.49 ID:GbFrmx0a0 「………」 「…そ、……それは…」 「言えないのね」 「…わ、わからないんだ…俺には…」 「なにがわからないの?」 矢継ぎ早に質問攻めをするあたしとしどろもどろなキョン。 本当はこんな問いつめるような真似はしたくない。けれど、ここでひいちゃいけない。 「俺は…俺にはあいつの気持ちがわからないんだ…俺は中学に入った時から  ずっとあいつは良い友達だと思ってる。けれど、あいつは俺をどう見てるのか…  あいつの俺への気持ちが、俺と同じにしては確かに少し態度がおかしいとは思う。  でも俺たちはずっと友達で、それで男同士なんだぞ?」 「…」 「あいつが、その、俺のことをそういう意味で好きだなんて…」 「好きなのよ!そうに決まってるでしょ!」 自分でもびっくりすような大声を出していた。 177 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/09(日) 02:35:00.32 ID:GbFrmx0a0 「好きじゃなきゃ手握ったりしないわよ!好きじゃなきゃあんな風に  くっついたり、抱きしめてもらおうなんて思わないわよ!当たり前でしょ!?  男同士ならなおさらじゃない!国木田は好きだから…だから…」 「…わ、わかった。たしかにその通りだ。国木田は…俺のことが好きなんだな」 「そうよ。で、あんたは友達としてしか見てないのよね」 「…ああ、それは間違いなくその通りだ。俺はあいつを友達としてしか見れない」 少しほっとした。けれど本当は、昨日の2人の態度を見ていてほとんどわかっていた。 キョンは国木田に手を握らせても握り返そうとはしなかったし、肩を貸しても 抱き寄せようとはしなかった。抱きしめることもしなかった。 だから、それを問いたださなきゃいけない。 「じゃあ、どうして手を握られてもふりほどいたりしなかったの?あんたは嫌じゃなかったの?」 「それはその…嫌では…なかった…あいつとの距離はいつも近かったし…それに…」 「それに?」 「つまりその、俺は…俺はあいつを失いたくないんだ」 178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/09(日) 02:38:49.50 ID:GbFrmx0a0 「…」 「俺にとってあいつは、友達としてかわいい存在で…むしろ弟みたいに思ってた。  その…お前の言うあいつの気持ちにも、本当は気づいてたのかもしれない。けど、  それを拒否してあいつがいなくなるのは嫌だったんだ」 「友達として大切なのね?」 「ああ…あいつは俺を頼ってくれるし、俺もあいつを頼りにしてる。色々相談されたし、  したこともある。だから…あいつが俺を好きだとしても、それは嫌だってわけじゃないし  手をつながれたりすることも、多分国木田には普通のことなんだと思って…」 「国木田に残酷なことしてるって思わないの!?」 184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/09(日) 02:45:25.00 ID:GbFrmx0a0 「え…?」 自分でも思っても見なかった言葉が口をついて出た。 「国木田がどんな思いであんたと接してると思ってるのよ!  あいつはあんたのことが好きで!でもあんたの気持ちも知ってるから!  だから必死に自分の想い隠してるのよ!」 「ハルヒ…」 「あんたの手握ったとき、あんたによっかかりたいっていったとき、  国木田がどんなに勇気出したと思ってるの!?あんたに嫌われないか、  あんたに嫌だって言われたらどうしようって、そう思って、でも  気持ちを抑えられないから言ってるんじゃない!それをあんたはそんな  中途半端な気持ちで受け流してるの!?国木田が可哀想でしょ!?」 私が堰を切ったように、国木田の気持ちを勝手に代弁している。 どうしたんだろう。こんなこと考えてなかったのに。 あたしはただキョンの気持ちを確かめて…それで…ベタベタすんなって…。 「は、ハルヒ…わかった。お前の言うとおりだ。国木田に悪いことをしてた…」 「なによ…国木田ばっかり…友達なら…友達なら…」 189 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/09(日) 02:52:25.95 ID:GbFrmx0a0 どうしよう。涙が出てきた。キョンの前で泣いたことなんてないのに。 言いたかったことが思い出せない。でも言葉がとまらない。 「友達なら…あたしだっているじゃない…あたしはSOS団の仲間で…友達でしょ…  悩んでるならあたしに言えばいいじゃないのよ…国木田のことだってなんだって  団長らしく相談にのるわよ…」 「ハルヒ、わかったから…わかったから泣かないでくれ。お前が泣いたりするなんて…」 もう国木田のことじゃなくてあたしの言いたいことになってる。 いつの間にかあたしはキョンの胸で泣いていた。 あたしの腕は中途半端にキョンの後ろに回っていて、キョンは私の肩を支えてる。 国木田、あたしはようやっとあんたと同じくらいになれたかもよ…。 「…もう大丈夫。ありがとう」 「そうか」 「…今日はもう帰る。」 「ん」 「…あんたは部活出るのよ。さぼんじゃないわよ」 「お、おう…」 はあ…。このままキョンと帰ったりしたらあたしが何言い出すかわかったもんじゃないわ …ちょっともったいなかったかな… 192 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/09(日) 02:57:55.41 ID:GbFrmx0a0 火曜日、いつも通りの日。キョンと国木田は相変わらず仲良くしている。 けれど、前みたいにくっついてない。 国木田がくっつこうとしたとき、キョンがどうするんだろうと思うと昨日から ハラハラして心配だったけど、国木田も不思議とそういうそぶりをみせない。 …このまま元に戻るのかな。 授業が終わった。このまま部室に行って、みんなと過ごして帰れば、元に戻るの? でも、なんか足りないっていうか、何かがかけてる気がする。 「涼宮さん、ちょっとお話できるかな」 「……国木田…くん…」 そうだ。 こいつと私の話が済んでないのよね。 195 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/09(日) 03:03:37.41 ID:GbFrmx0a0 国木田は、私を部室棟の階段の一番奥まで案内した。 …ここって昨日私がキョンと… 「昨日ね、僕もここにいたんだ」 「あーそれで……ってえええ!?」 「ふふ、僕下にいたんだけど、涼宮さんの声は特に良く聞こえたよー」 う…。あ、あんたには聞かれたくない話だったんだけどね…。 つけたこととか言っちゃったし…。 「涼宮さんさ、キョンのこと好きでしょ」 自分の顔が一気にかああっと熱くなるのを感じる 「あ、あたしは別にっ!」 「涼宮さん」 「…」 「誰にも…キョンにも言わないから…ね?」 「…」 …なんでそんなに優しい顔してるのよ。バカ。 199 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/09(日) 03:13:07.66 ID:GbFrmx0a0 「…そうよ。あたしはキョンが好き」 「知ってたよ」 「え…?」 「きっとそうじゃないかと思ってたよ…」 国木田は、あくまでも優しくほほえんでいる。けれど瞳が悲しい。 そんな顔しないでよ。あたしはどんな顔すればいいのよ。 っていうか今どんな顔してんのかしらあたし。 「僕もキョンが好きだよ。涼宮さんと同じ」 「うん…」 「これでお互い素直にお話できるね」 あたしはあんたと決闘するぐらいの気持ちで来たのよ。なんでそんなに…。 「ほんとはね、昨日涼宮さんが尾行してたの知ってたんだ」 そうなんだ…って… 「ええええ!?」 「ふふ、レストランの出口で気づいた。だから公園とかはずっーと知ってた」 「あ、あんた気づいててあんな…手つないだりあんな…」 「ていうか気づいてたからかな?涼宮さんへの宣戦布告っていうか、あてつけ」 「…ひどいわね」 「お互い様でしょ?せっかくのデートなのに尾行してたんだから」 ううぅ。だめだ。どうもこいつにはかなわない…。 202 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/09(日) 03:20:24.64 ID:GbFrmx0a0 「でも涼宮さんが僕をかばってくれたのは意外だったな」 「べ、べつにかばったわけじゃないわよ。ただああ言った方がキョンも  ベタベタしなくなるだろうって思っただけ!」 そうなのか?あたし。 「そうかな…。でもね、確かに僕、調子に乗ってた。谷口と3人でバランス  とれてたのに彼女できてから2人っきりが多くなったから、きっと舞い上がってたんだ。  涼宮さんの言うとおり、あんな風にくっついちゃダメだよね…」 「国木田くん…」 「だから、僕もうあきらめるよ。いつもどおり友達に戻る。涼宮さん安心して良いよ」 「で、でもあんたは…」 「大丈夫だよ。自分の気持ち押さえるのは慣れっこだもんだから…今まで通りに戻るだけだから…  僕は…前みたいに…距離…おいて…」 「国木田…」 ああもう…そこで泣かないでよ…。 最後までかっこつけてよ…。 208 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/09(日) 03:27:32.20 ID:GbFrmx0a0 「ひっく…うぐ…ご、ごめんね…泣くつもりなかったんだけど…泣かないはず  なんだけど…」 「…つらいのね…」 「え…?」 「…あたしもつらかったの」 「…うん。誰にも言えなくて…誰も…うっ…くっ…」 そうか…こいつもあたしも同じなんだ。 だからあんなこと言ったのね。あたし だから、こいつのキョンを見る目に気づいたんだ。 「ほら、涙ふいて…キョンがなんであんたにこだわるのかわかった気がするわ」 「うん…?」 かわいくて頭よくて、頼ってくれて優しくてそのくせやっぱりこんなにかわいいんじゃね…。 「…っていうかよく考えたらあんたが引く必要全然ないのよ」 「え?」 「だって悪いのはあんたの気持ち適当に受け止めてたキョンであってあんたじゃないわ」 「い、いやでもさ…」 「いまわかった!あんたとあたしは戦友なのよ!こっちおいで国木田!  あんたを良いところに連れていってあげる!」 「え、ちょ、ちょっと涼宮さん??」 ふふふ…そうよ!こいつだけ泣かせてさよならなんて、そんな卑怯な真似はしないわ! 216 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/09(日) 03:38:22.84 ID:GbFrmx0a0 「はいみんなこんにちわー!」 「え?ここって…」 「おや?どうしたんですか涼宮さん。今日はお客さんですか?」 「あれぇ?国木田くんじゃないですかあ」 「…」ジー 「く、国木田!?ハルヒ!?お前等一体…!?」 「はあい!本日付で準団員から団員に格上げになりました!国木田くんでーす!」 「えええええ!?涼宮さん!?ぼ、僕そんな…」 「は、ハルヒ、一体何がどうなったんだ?」 みんなポカーンとして、キョンはびっくりしてる。そりゃそうよね。 あたしだってびっくりしてるわよ。ここにだけは国木田も入れないからって 無理矢理安心してたのに。 「キョン!あたしたちは友達になったの!だからこの子も団員よ!  みんな顔と名前は知ってるわよね。すっごく良い子だから仲良くしてね!」 「涼宮さん…」 「それと、みんなに言っておくけどSOS団のメンバーには親睦を深めるという意味で  健全なスキンシップをおこなう権利があるわ!あたしがみくるちゃんにやってるようにね!  ただし、特別ってのはだめよ!だれかと手をつないだら、他の人ともつなぐのを  拒めない!とうぜんよねっキョン!」 「え?あ、ああ…その…ごもっともです…」 そうよ、何もおそれることなんか無いわ。こんなに良い子なんだもの。みんなと友達に なっちゃえばいいのよ!キョンも、みくるちゃんも、有希も古泉くんも、あたしも! みんなと同じに! 222 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/09(日) 03:52:52.13 ID:GbFrmx0a0 「ふっふふん♪ふっふふん♪」 今、あたしは大きな荷物を抱えてSOS団の部室に向かっている。以前と同じように。 けれど、いままでのなかでもしかしたら一番機嫌が良いかもしれない。 「はいみんな元気ー!?」 「あ、涼宮さん。長門さんオセロ強いねー。もう四隅取られちゃった」 「あらもう有希とうち解けたの。なかなかやるわねあんた。でも今日はそれ  どころじゃないのよ…あんたにとっておきのプレゼント!」 「な…なに?」 なんでひきつってるのよ。察しが良いわね。ガサゴソ。 「じゃーん!国木田くん専用メイド服でーす!」 「ええええ!?なにそれ!知らないよ僕!」 「ふっふっふ…国木田、あんたにもなにか不思議の要素はないかって考えたらね…  あったのよ…女装男子という新たなる萌え要素が!」 「や、やだよキョン!助けてよ!」 「ハルヒ!お前いやがってるのをそんな…」 「あら、あんたも見てみたいと思わない?この子のメイド服…」 「う…」 「きょ、キョン!?」 あらたな萌え要素も得たし、それにほかのみんなも前よりずっと元気になったみたい。 古泉くんは苦笑してるし、みくるちゃんはおろおろしてるし、有希は無表情で読書。 キョンはあわてふためいてる。うん。こうじゃなくっちゃ! キョンの言うとおり、人の機嫌って影響するものなのね。 223 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/09(日) 03:53:22.40 ID:GbFrmx0a0 「はーい写真とるわよー笑って〜」 「…こんなん格好で笑えないよ」 「あら〜?似合ってるわよ。ね、キョン」 「…ああ、にあってるぞ」 「…そ、そうかな…」 「…」イラッ でも一番うれしいのは私よ。なんてったって。こんな萌え要素で、しかも 私と唯一秘密を共有できる友達が仲間になれたんだもの。こんなうれしい ことってないわ! 「はーい次はバニーガールいってみよー」 「い、嫌だ!それだけは嫌だキョン助けてー!」 「あ、こらキョン!押さえつけなさーい!」 おわり 155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/09(日) 02:00:21.20 ID:R/TtvVcBO 映画、スカイクロラかな…なんとなく 231 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/11/09(日) 03:57:27.98 ID:GbFrmx0a0 まさかこんな長丁場になろうとは思ってもみませんでした…。 こんな長いSS書いたのは生まれて初めてです。 「続き」と言われるだけで張り切りました。 あと>>155はその通りです。誰もわからないかと思ってましたw 長々とおつきあい頂き、本当にありがとうございます! 国木田大好きです。