長門「本になれるのなら」 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/31(金) 18:25:11.64 ID:ELsQBGDbO 私は歩いている、そこには冷たくそびえ立つ建物が続く、私は歩む、何もない先に向かって 待ってる者も無く、見送ってくれる者もいない。私は拒まれた もう戻ることはできない。私の罪は重い、この命ですら罪を償う事はできない 私は歩く 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/31(金) 18:29:00.84 ID:ELsQBGDbO 今の私に情報操作能力は無い、情報統合思念体は私を破棄した 私は歩く 残ったのは着慣れた高校の制服、私の思い出 戻れない過去、後ろを見ても何も無い 私は必要とはされていない、帰ろう 私の部屋に 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/31(金) 18:31:22.07 ID:ELsQBGDbO 文芸部室、私はそこにいた しかしもうあの場所には戻れない、誰にも会うことはない 私は拒まれた そう、全てに失うものはもはや長門有希という個体のみ 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/31(金) 18:34:06.14 ID:ELsQBGDbO 涼宮ハルヒ、朝比奈みくる、古泉一樹、そして彼 持ってはいけなかった 私が持ってはいけなかったものを私は持ってしまった。 足が冷たい、冬の寒さは生身の人間にはこたえる ………何も感じない 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/31(金) 18:38:02.95 ID:ELsQBGDbO 普段なら人の一人は必ずいる道、しかしその人影は見当たらない。 これが今から歩く最後の道 わからない 何故か朝倉涼子が笑っている気がする。進めば進む程、その声は大きくなっていく 止まる事は出来ない、ただ進むだけ 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/31(金) 18:42:40.64 ID:ELsQBGDbO ……私が壊したものは私が得たものよりも大きかった、知っていた なのに私は壊してしまった。体が動いていた 世界の均衡が崩れさり消えていく、後は彼がどうするのか 私は知らない、知ることができない まわりは暗かった 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/31(金) 18:47:16.46 ID:ELsQBGDbO 暗闇に白く光るものが見えた、それは切なく、溶けていく ………もう体が自由に動かなくなっていた。それでも私は少しずつ前に進む 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/31(金) 18:52:10.03 ID:ELsQBGDbO …光ではなかった、ただの雪 もう消えないように必死に集まり大きさを増していく。 完全に私は体が動かなくなった 意識もだんだんと薄れていく、しかし雪は容赦せず積もっていく 目元だけは雪は溶けていた 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/31(金) 18:57:50.67 ID:ELsQBGDbO 私の生命活動は終えようとしてきていた その時、声が聞こえた 朝倉涼子ではなく、どこか懐かしい声 応えることは今の私には不可能だった ……呼んでいる私を、誰が?なんのために? 声がやむことはなかった。しだいに声は小さくなっていく 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/31(金) 19:16:35.06 ID:ELsQBGDbO 私の体が温かくなる それが最後の私の感覚だった。私の時間は止まった なにも見えない暗闇の中でまた私は歩き続けた。後ろからはさっきまで呼んでいた声が聞こえていた 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/31(金) 19:20:54.14 ID:ELsQBGDbO 私が後ろを振り向くと朝倉涼子がいた 朝倉涼子は笑っていた。しかし笑顔とはまた違う顔で 私の体が消えていく、雪が溶けるように 感情はもう無い、もういらない、感情は全てを壊してしまうから 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/31(金) 19:26:03.69 ID:ELsQBGDbO もし、私が本なれるのなら、なれたなら、私の物語が書いてあるのだろうか どんなに薄くても、内容が理解できなくても 私は長門有希だった 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/31(金) 19:31:32.66 ID:ELsQBGDbO 私は透明になった。消えたのではなく透明になった ただ透明に もう一度、選べるならば私は長門有希を選ぶだろう …誰かが私を見ている、誰? 見ていたのは私だった、眼鏡をかけた私 ずっと私は私を見ている、最後に私は笑った そして全てが透明になった