ハルヒ「キョン、爆発するわよ!」  1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:02:34.61 ID:BwTvQZpN0 毎日毎日、放課後に飽きもせず文芸部室へと足を運ぶのも俺の習慣となっているのだが、 そこではいつもと変わらない光景、すなわちSOS団の日常……つまり、 無口文学少女が窓際の定位置で置物のように本を読んでいて、 ニヤケ面ハンサムに俺が古臭いボードゲームに誘われ、 ドジっ娘メイドがお茶汲みをして、 それに傲岸不遜の団長様がちょっかいをかけている…… ハルヒ「みくるちゃんって、ほんとにイイ体してるわよね!!」 「ふぇぇえ〜……涼宮さん、やめてくださいぃ」 長門「……」 ……うん、よくある光景だ。 ハルヒ「とくにこの胸!素晴らしいわ!触っていて飽きないもの」 キョン「……」 ……そのはず、なのだが。 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:03:17.52 ID:BwTvQZpN0 古泉「どうしました?さあ、あなたの番ですよ」 キョン「…あ、いや、なんでもないぞ」 俺は古泉の玉将の前に陣取る角の頭に、パチリと香車を張った。 が、俺は心ここにあらず……というか、さきほどからの部室の光景に、開いた口が塞がらない。 古泉「なんと…これはまた、手厳しいですね」 ハルヒ「みくるちゃん、お茶おかわり!!」 「はい涼宮さ……ひぇえぇ、いきなり耳を触らないでください〜」 ハルヒ「いいじゃない!ひやひや冷たくて、尖ってて気になるんだもん」 「くすぐったいですよぉ……」 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:04:24.99 ID:BwTvQZpN0 ハルヒ「それにしてもみくるちゃんの体、ものごっつ黒く硬くて逞しくゴツゴツしてて、最高だわ!      この赤くて平べったくて先っぽが尖ってる胸なんて、ファンタジーよ!!」 キョン「……」 いつもなら、わが心のメイド朝比奈さんを陵辱するハルヒを、引き剥がしにかかってるところだ。 だが、今日はどうも別のことが気になって、そういう発想が出てこなかった。 ハルヒ「みくるちゃん、ドジでお茶目で強くてカッコ良くて、これ以上ない無敵の萌えキャラよね!!」 マジンガーZ「ふぇええ…」 ハルヒ「そうね、たとえて言えうなら……『鉄(くろがね)の城』ってとこかしら!」 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:04:53.12 ID:BwTvQZpN0 キョン「……どうなってるんだ一体、これは…」 ああツッコみたい。朝比奈さん、何故そんな硬くて凶悪そうな格好をしているんですか… 古泉「おや、具合でも悪いのですか?」 キョン「……いや、ちょっと頭痛が」 ……どこから突っ込んでいいかわからない上、誰も気にしていないようだ。 今ここで突っ込んだら……いろいろと負けのような気がする。 少なくともハルヒのいる前では普通にしていなければ……耐えろ、耐えるんだ俺!! ハルヒ「みくるちゃん、お茶のおかわり、はやくちょうだい!」 マジンガーZ「あっ、お湯がなくなっちゃっていました、新しく沸かしますねぇ」 マジンガーZ「ふぅえぇい……みくるファイアー!!」 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:05:53.25 ID:BwTvQZpN0 俺がその掛け声に驚き、朝比奈さん(?)のほうを見ると、胸の放熱板(?)が真っ赤になっている。 相変わらずポカンと口を開けてそれを見ている俺に、ハルヒが青い顔をして怒鳴りつけてきた。 ハルヒ「キョン、爆発するわよ!」 キョン「……なんだと!?」 ハルヒ「いいから伏せなさい!!」 !!ドカーン!!! とっさの団長様からのアドバイスがなければ、俺はあやうく水蒸気爆発に巻き込まれるところだった。 マジンガーZ「ああっ!ヤカンが溶けちゃいました」 ハルヒ「まったくみくるちゃんってば、ほんとにドジねぇ……またそこがイイんだけど!」 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:06:49.81 ID:BwTvQZpN0 古泉は全く気にしないといった態度でいつものエセスマイルを崩さず、机の下から這い出してきた。 長門は相変わらず窓際でハードカバーに視線を落としたままだ。 ちなみに、朝比奈さん(?)は、やかん爆発の直撃をうけて、傷一つない。 俺は腰が抜けて立てなくなったが、必死で窓際まで這いずって行って、 困ったときの救いの女神、長門有希観世音菩薩様に「何が起こったんだ?」ときいた。 さあ出番だ、神さま仏さま長門さま。この状況をサクッと説明してくれ。 長門「朝比奈みくるは胸の放熱板より、3万度の熱線を発射した」 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:07:16.01 ID:BwTvQZpN0 いや……温度のことはともかく、それは見ればわかるんですけど、長門さん… アレが一応朝比奈さんだとして、朝比奈さん(?)のあの体は、いったいどうなっているんだ? 長門「格子欠陥のない金属『超合金Z』の装甲に覆われており、光子力エネルギーで稼動している」 いやいや、格子欠陥というが何なのかは知らんが、金属質だというのも見てわかる。 普通にアレ、スーパーロボットのマジンガーZじゃないっすか。エネルギーもともかく、超合金Zって…… 長門「日本の富士の裾野にしか存在しない、ジャパニウムという鉱物から生成される」 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:07:39.00 ID:BwTvQZpN0 なあ長門、今の朝比奈さんに関して、何か言う事は無いのか? 長門「ユニーク」 もういいです、長門さん。 ハルヒ「ちょっとキョン、何有希にやらしい話をさせてるのよ!!」 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:09:01.96 ID:BwTvQZpN0 おっと団長様がお怒りだ。いったい、今の話のどこがやらしいポイントなんだ? ハルヒ「どこが…って、全部よ全部!みくるちゃんのカラダのこと、あーだこーだと!」 マジンガーZ「ふみゅうぅ……キョンくぅん…」 おいハルヒ、お前が言うのかよ!さっきまでお前だって、同じ話をしていたじゃないか!! ハルヒ「あたしはいいのよ!女の子同士じゃない」 黄色いカチューシャがトレードマークのお前はともかく、今の朝比奈さんは女の子に見えな……い。 よな、うん。妙に内股なマジンガーではあるが、この際気にしないでくれ。 15 名前:>>14訂正[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:10:38.76 ID:BwTvQZpN0 ハルヒ「みくるちゃんがいくらカッコイイからって、ジロジロ見ないの!!」 カッコイイ……な、ハルヒ、そこは確かにお前の言うとおりだがな。 今回の朝比奈さんの変貌も、お前の不可思議パワーのおかげだろう、だがお前は解ってない。 何故アフロダイやダイアナン、ビューナスではなく、マジンガーなのだマジンガー!! ハルヒ「もうすぐ文化祭ね、今回も映画をとるわよ!明日はミーティングするから」 じゃあ用事があるから、と言い残し、ハルヒは部室を出て行った。 キョン「すまんが皆、集合」 俺の呼びかけに応じ、SOS団の団員たちは中央のテーブルに集まった。 宇宙人、未来人(?)、超能力者の三者会議だ。 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:11:48.04 ID:BwTvQZpN0 かなり恥ずかしいが、ここはあえてツッコミをいれさせてもらおう。 キョン「単刀直入に聞きますが、朝比奈さんって未来人の可愛い女の子じゃなかったですか?」 マジンガーZ「ふぇえ?どうしたんですか、キョン君、わたしはたしかに未来人だし、女の子ですよう」 古泉「あなたは何を今さら解りきったことを言うのですか」 長門「朝比奈みくるの容姿に関し、疑問を感じる理由が見つからない」 キョン「朝比奈さんは未来で生まれたんでしたよね?誕生日はいつですか?」 マジンガーZ「生年月日は禁則事項ですよぅ…」 長門「1972年10月10日完成」 マジンガーZ「ひえぇえっ、ダメですよ長門さん〜」 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:12:21.16 ID:BwTvQZpN0 キョン「思いっきり過去じゃないっすか!!しかも30台かよ!!」 マジンガーZ「ひゃわあぁん、キョン君、怖いです!!しかもレディの年齢を詮索するなんて!」 朝比奈さん(?)はグルグルと両手を回し、俺の頭を叩いてきた。 もし今の朝比奈さんが普通の女子高生だったなら、可愛いグルグルパンチといったところだろう。 ドゴゴゴォッ!!!!!!ガツン!!! キョン「へひぐゎべし!!!」 長門「大車輪ロケットパンチ」 古泉「……これは大変、彼の頭蓋骨が陥没しています」 長門「そう」 マジンガーZ「ごめんなさいキョン君、やりすぎちゃいましたぁ……」 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:13:16.99 ID:BwTvQZpN0 - - - 〜〜〜- - -〜〜〜- - -  〜 あの世 〜 朝倉「あら?キョン君じゃない、死んじゃうとは情けないわね」 キョン「朝倉、なんでお前がここに」 朝倉「ここは死後の世界だもの、私がいたっておかしくないでしょ?     ……ちょうどいいわ、暇だったの。死んじゃったキャラ同士、仲良くしましょう」 キョン「……また俺を殺すのか?」 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:13:53.15 ID:BwTvQZpN0 朝倉「あなたもう死んでるのに、これ以上どうやって殺せっていうのよ?」 キョン「質問に質問で返すなー!このテスト零点!!眉毛!!」 朝倉「何よ、ひどーい!言っとくけど私テストは平均98点だったのよ」 キョン「まあいい、お前に敵意がないことは解った……んで、何するんだ」 朝倉「ちょうどスーファミがあるから、ドカポン3.2.1でもやりましょう」 キョン「おう、負けたら罰ゲームだからな」 朝倉「その余裕の態度、相当やりこんでるみたいね……フフフ、負けないわよ」 - - - 〜〜〜- - -〜〜〜- - - 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:14:21.08 ID:BwTvQZpN0 古泉「……」 長門「……」 古泉「……あの、治さないのですか?」 長門「いい」 古泉「……それはまた、何故ですか?」 長門「うざい」 古泉「……はあ」 長門「キョンがうざい、略してキョうざい」 古泉「……」 長門「……」 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:15:17.91 ID:BwTvQZpN0 古泉「……本当の理由をどうぞ」 長門「……今日の彼はわたしをないがしろにし、朝比奈みくるばかりを見ている」 古泉「ほう、そうですか……でも、そういうわけにもいかないでしょう」 長門「仕方ない……ブツブツブツ」 復活 キョン「俺の村にビッグモンスターが!!……あれ?今日一日の記憶がないぞ」 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:15:44.23 ID:BwTvQZpN0 マジンガーZ「キョン君、お茶を淹れたので飲んでください」 アセアセ キョン「はあ、ありがとうございま……」 キョン「!?!?……ってぇえ、マジンガーじゃん!マジンガー!!!」 マジンガーZ「!?…ひぃいいいい!」 俺の本日最大の正統派ツッコミが炸裂したところで、 長門「うるさい、読書の邪魔」 低く殺気のこもった声が背後からきこえた。 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:16:51.54 ID:BwTvQZpN0 ――小一時間後 古泉「……なるほど、つまりあなたは昨日までの朝比奈みくるさんがマジンガーZではなかった、     ズバリそう言いたかったのでしょう、ズバリ」 クイッ キョン「何だそのグルグルメガネは」 古泉「いえ、このSSでは僕が空気なので、先にボケてみたんですが」 キョン「ああ、まさかハルヒのせいで、世界が改変されたのか?」 長門「ない」 キョン「なんだと?俺の頭がおかしくなったのか?」 長門「そう……いや、おそらく元々」 今日の長門はやけに不機嫌のようだ。 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:18:37.28 ID:BwTvQZpN0 キョン「しかしあの可憐な朝比奈さんがマジンガーというのは、どう考えてもおかしい」 なぜアフロダイやダイアナンでないのか。 たわわな朝比奈さんのおっぱいミサイルなら、何発受けても許せるのだが。 マジンガーZ「キョン君……さっきからひどいですよ、何でわたしの悪口ばかり言うんですか」 いや悪口を言ったつもりはないのですが…… 見れば、朝比奈さん(?)がブルブルと震えている。 長門「マジンパワー。朝比奈みくるの攻撃力が、驚異的に増大している」 古泉「僕たちは逃げたほうがよいですね」 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:19:16.63 ID:BwTvQZpN0 キョン「まてよ、偽者という可能性も……本当に朝比奈さんなのか?ちょっと失礼します」 俺は朝比奈さん(?)の放熱板をつかみ、そこにあるだろうものを確かめようとした。 もし本物の朝比奈さん、俺のスウィートエンジェルの朝比奈さんなら、胸元に星型のホクロがあるは…… マジンガーZ「みくるハリケーン!!!」 キョン「おぐぇえわっうぇぁあ!!」 古泉「……これは大変、彼が紫色の汁になってしまいました」 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:20:04.74 ID:BwTvQZpN0 長門「そう」 マジンガーZ「ごめんなさいキョン君、またやりすぎちゃいましたぁ……」 長門「もっとやれ」 - - - 〜〜〜- - -〜〜〜- - -  〜 あの世 〜 朝倉「あらキョン君、また来たのね」 キョン「よう朝倉」 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:20:32.91 ID:BwTvQZpN0 朝倉「早く早く!!さっきの続きをやりましょう」 キョン「ああ、コテンパンにしてやる」 (略) キョン「うわっ、デビルがついてやがる」 朝倉「ちょっとそんなとこにトーレナ岩おかないでよ」 キョン「フフフ、『けいやくしょ』を手に入れたぜ…地の果てまでおいつめてやる」 朝倉「そんな!いやぁ!ああん……来ないで!!この悪魔!」 キョン「よいではないか、よいではないか」 朝倉「あ〜れぇ〜(泣)」 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:21:07.85 ID:BwTvQZpN0 (略) 朝倉「……で、罰ゲームって何なのよ」 キョン「そうだな、ポニーテールにでもしていてくれ」 朝倉「えっ、それだけでいいの?」 キョン「不満か?それじゃ、ついでに膝枕でもしてもらおうか」 朝倉「わかったわ…んっ、これでいい…かな?」 キョン「……似合ってるぞ///」 朝倉「……もう///」 キョン「ああ、次は膝枕だ…」 - - - 〜〜〜- - -〜〜〜- - - 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:21:59.50 ID:BwTvQZpN0 古泉「もっとやれとは言っても、これ以上やるのは無理でしょう」 長門「……そう」 長門「それなら仕方ない、治す……ブツブツブツ」 復活 キョン「ムチムチ太ももーーー!!……あれ?俺は今まで何を?」 長門「朝比奈みくる、さあ続きを」 キラキラ マジンガーZ「長門さん、キョン君ごめんなさい、わたし帰ります。古泉くんまた明日」 キョン「はあ、そうですか朝比奈さん、さような……」 キョン「……って、ちょ!!?!うわっ、!!何でマジンガー!?!!!」 マジンガーZ「!?…ひぃいいいい!」 長門「しつこい」 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:22:36.08 ID:BwTvQZpN0 マジンガーZ「ほんとに帰ります、さよなら!!」 朝比奈さん(?)はジェットスクランダーを装着し、窓から空を飛んで帰っていった。 長門「……朝比奈みくる……くやしいがカッコイイ」 古泉「では我々も帰りましょうか」 長門「わたしも帰る」 キョン「……やれやれ」 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:28:35.21 ID:BwTvQZpN0 ……普通のハルヒSSだったら、ここでハルヒが騒動を起こした原因をしらべて、 「涼宮さんは昨夜、マジンガーZのDVDを見ていたようです」とかなんとか古泉がヌカして、 俺たちがあーでもないこーでもないと奔走し、最期には俺がハルヒに一言か二言かかけて、 結局すべてが元にもどって終わる…… なんていう流れになるんだろうな、だがあいにくこのSSにはヤマもなければオチもない。 ついでに何の意味もない、や・お・い?とはいえニヤケハンサムとはやらないし、やりたくもないのだが。 まあそういうエロパロ的展開になるなら、ぜひともハルヒや長門とからませて欲しいものだ 朝比奈さん?……あの50万馬力の逞しい腕で抱きしめられたら、俺はたちまち昇天してしまうだろうよ。 というわけで、事態は朝比奈さんの未来と、俺の命にかかわる。 ……ここは俺が何とかしなくてはいかんな。まずは情報収集からだ。 二人が帰ったところで、俺は団長席のパソコンを立ち上げる。 さてmikuruフォルダmikuruフォルダ……おお、あったあった。どれどれ…… キョン「なんてこった……」 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:30:15.17 ID:BwTvQZpN0 そこには、マジンガーZの画像データがこれでもかと詰め込まれていた。 機械獣と戦うマジンガー、ジェットスクランダーで空を飛ぶマジンガー、 プールの水を割って発進するマジンガー、両腕をロケットパンチで飛ばすマジンガー…… おお、だがこうして見ると、どこか燃えるものがあるな。 キョン「何だこれは……」 メイド服のマジンガー、ウェイトレス姿のマジンガー、スクール水着のマジンガー、 ……いやこれはどう頑張っても萌えん。 おや?CDドライブにDVDが入りっぱなしになっている。 何気なく起動して確かめてみると、例のオープニングが流れ出した。   ちゃらっちゃ〜♪ ちゃらっちゃ〜♪ ちゃらっちゃ〜♪ ちゃらっちゃ〜♪  ちゃらっちゃっちゃっちゃ ちゃらららちゃら〜ちゃっ♪ 『……空に〜そびえる〜くろがねの城〜♪』 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:31:29.72 ID:BwTvQZpN0 その内容はハリウッドでも作れないであろう、完璧に実写のマジンガーZだった。 キョン「おおっ!?……これは、凄い!なかなか」 俺は素直に驚き、画面に映る映像にワクワクしてさえいた。 アニメと違い、本物の迫力が桁違いだ。おいおい、空を飛ぶのも爆発も、全部実写なのかよ、コレ。 キョン「かっこいいな……燃えるぜ」 ハルヒ「そうね」 そうだ、コレが本題なのだが、ホクロがあるかないかを確認せねば。 ……あ、あったよ。 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:32:01.40 ID:BwTvQZpN0 キョン「そうか、アレは間違いなく俺の朝比奈さんであることが確認された訳だが」 ハルヒ「へぇ、そうなんだ」 おわっハルヒ!? ハルヒ「あんたのなんだ。てっきり団長である私のだと思ってたんだけど、勘違いだったようね」 キョン「いや、これは……その……」 ハルヒ「忘れ物を取りに戻ってきたら……何してんのよあんた」 いつのまにか俺の背後には、暗黒オーラをまとい、ひきつった笑顔のハルヒが立っていた。 キョン「世界が…いやちがうな、朝比奈さんがピンチ…というか、俺の生命がだな」 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:33:20.40 ID:BwTvQZpN0 ハルヒ「いい?あんたは私を裏切ったの。三つの意味でね」 ハルヒ「ひとつ。あんたがアタシに、あんなに削除しろと言った画像を、      あたしはちゃんと削除したのに、あんたが隠し持っていたこと。ユーノウ?」 キョン「あ…それは…すまん」 ハルヒ「口からクソ垂れる前後にサーをつけなさい!!!」 キョン「!?!?サー、イエス、サー!!」 ビクビク 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:33:56.18 ID:BwTvQZpN0 ハルヒ「ふたつ。あたしに少しは気を持たせるような態度をしておいて、そうじゃなかったこと」 キョン「サー!!?何だって!?おいおいそれはお前の」 ハルヒ「みーっつ!!!」 キョン「ぬおっ!?」 ハルヒ「みくるちゃんにひどいことして、泣かせたこと」 ――俺は唖然とした。SOS団長の顔をしたハルヒを、久しぶりに見た気がする。 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:34:37.57 ID:BwTvQZpN0 二つめのはともかく、ほかの二項目は、完全にこいつの言っていることが正しい。 あれは姿かたちは凶悪なものに変わったとはいえ、朝比奈さんであることに間違いは無いのだ。 キョン「……ハルヒ、俺が悪かった。すまん、このとおりだ」 俺は素直に頭をさげた。 ハルヒ「……まあ、反省してるならいいわよ…今度みくるちゃんに謝りなさい」 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:35:14.59 ID:BwTvQZpN0 ハルヒ「キョン、今から言う事は、あんたへの罰でもなく、団長命令でもなくて、      ひとりの女の子としての……あたしからのお願いとして、聞いてちょうだい」 ハルヒ「みくるちゃんに、ちゃんと想いを伝えて、大事にしてあげて」 俺は目を疑った。おいハルヒ……泣いてるのかよ? ハルヒ「バカ!!ほっといてよ!!」 全くだ、俺はバカな上にとんだニブチンであり、デリカシーのカケラすらも無かったようだ。 ハルヒは俺を押しのけて団長席に座ると、机に突っ伏し動かなくなってしまった。 時々、鼻をすする音が部室内の静寂にひびく。 ――さて、どうするべきか…… 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:36:17.50 ID:BwTvQZpN0 さっきのハルヒの『あたしに少しは気を持たせるような態度をして』という言葉が、胸にひびく。 古泉のやつも、今ごろは閉鎖空間で死ぬような思いをして戦っているのだろうな。 俺はハルヒに声をかけようかどうか、さんざん迷ったあげく、あの人を頼ることにした。 部室を出て、向かった先は、書道部の部室。窓越しに見て電気がついていたから、いるはずだ… 鶴屋「あれっ?キョン君、珍しいねっ!どうしたのさ??」 俺は鶴屋さんに頭をさげて、ことのあらましを伝えた。 鶴屋「……そうかい…そんなことがあったんだね」 キョン「先輩、助けてください。あなただけが頼りなんです」 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:36:55.26 ID:BwTvQZpN0 俺のあとをついて部室のドアの前まできた鶴屋さんは、俺を振り向いて、 鶴屋「キョン君、これは貸しだよ」 キッと真剣な表情をしたあと、 鶴屋「利息分も含めて、しっかり払っておいてね……あたしにじゃなくて、みくるにでいいから」 と言って、俺に「あとはお姉さんに任せて、今日は帰りなっ!!」と笑顔をみせた。 俺はおとなしく、昇降口へと向かった…… ……ちょっとまて、ギャグSSのはずが、何でこんなにシリアスになってるんだ!!!! 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:38:20.68 ID:BwTvQZpN0 まあそんな風に文句を言いながら、俺は苦い顔をして靴箱にたどり着き、 蓋をあけた……まあ、ここにあるコレを期待していたといえば、していた。 だが先の展開が見えないので、同時に恐ろしくもあるのだが…… そこには、ピンク色のかわいい封筒に、ハートのシールで丁寧に封をされた、手紙が入っていた。 十中八九間違いなく、未来からの指令書だ。 俺はその場で内容を確認する。 『今夜九時、あのときの公園のベンチに来て下さい』 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:39:43.84 ID:BwTvQZpN0 間違いない、朝比奈さん(大)のものだ。 公園と書いてあるが、場所は解りきっている。長門のマンションの近くの、あの公園だ。 膝枕してもらったときの、あのやわらかい太ももの感触が懐かしい。あのいい匂いが…… ……だが瞬時に、俺は今のアサヒナーZの冷たく硬い膝枕を想像し、かぶりをふった。 両手で自分の頬をぴしゃりとはたく。これは朝比奈さんのためでもある……が、 いいか俺、この生涯最大のピンチを、俺の人生最大のチャンスなのだと捉えるんだ。 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:40:24.94 ID:BwTvQZpN0 ハルヒや鶴屋さんの態度を見ればわかる。 俺と朝比奈さんは間違いなく、両想いなのだ! マジンガーZの朝比奈さんは、もの知り長門さんによると1979年製、過去の人ということになる。 なのに朝比奈さん(大)が未来人として存在し、ここに来ているとするならば、間違いなくこの後、 この間違いだらけの世界は元にもどることができるのだろう。 もしこのまま、俺がうまく与えられた役割を果たし、世界と朝比奈さんをもとに戻したなら、 あの学校屈指の美少女、朝比奈さんが、俺の彼女になるのである……しかも、ハルヒ公認で!! これほどモチベーションのあがる報酬が、他にありえるだろうか?いや、ない!!(反語)。 何故ベストを尽くさないのか!? (Why don't you do your best ?) キョン「上田ぁあー!!俺はやるぞ!!!」 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:42:06.35 ID:BwTvQZpN0 何故俺のテンションが高いのか、疑問をもったお前!! ……考えてもみろ、これから公園で会う朝比奈さん(大)は、 すでに未来において、俺と交際関係にあるのということに間違いない!!!! 俺は自分の家にスキップで帰り、晩飯をかっくらい、風呂を浴びて(特に局部を念入りに洗って)から、 落ち着かないので自分の部屋でエア自転車をこぎつつ、鼻息荒くのしのしと歩き回っていた。 キョン「バーイシコー!!バーイシコー!!バーイシコー♪アイウォントゥーライマイ♪」 妹「うわぁあーん!!ママー、ううぅ、キョンくんのあたまがガリレオフィガロー!!」 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:42:59.03 ID:BwTvQZpN0 「マグニフィコー!!」と泣きながら去ってゆく妹のことなど、もはや気にしない。 今の俺は無敵だ。朝倉の三匹や四匹、余裕で倒せそうな気がするぜ。 これからは俺のことを、ミスターファレンハイトとでも呼んでくれ。 夜8時を過ぎ、俺は夜の道をスーパーソニック自転車で飛ばし、目的地へと向かう。 この勢いなら、俺は某執事にだって自転車レースで勝てる気がするぜ。 古泉「こんばんは…あ、待って下さいよおおぅぅん」(ドップラー効果) 途中で誰かが俺に話しかけてきたようだが、華麗に無視した。 ドント・ストップ・ミー・ナウ!! 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:44:03.49 ID:BwTvQZpN0 さて、俺は呼び出されるままホイホイと公園までやってきた。 調子に乗って自転車を飛ばしてきたので、あと二十分はある。 あとは朝比奈さん(大)が来るのを待つだけだ。 期待に胸をはりさけんばかりに膨らませ、俺は待った。 ……が、 長門「……」 おい長門、何でお前まで、ここにいるんだ? 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:45:10.46 ID:BwTvQZpN0 長門「散歩」 そうか、夜は危ないから早く帰ったほうがいいぞ 長門「そう」 ここに何か用事があって来たんじゃないだろうな? 長門「ない、あなたに会ったのも偶然」 そうか。 …… あの、俺の隣に座ってから、もう20分くらいたちましたが 長門「……気のせい」 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:45:35.43 ID:BwTvQZpN0 …… 長門「……」 長門「ふたりきりで無言というのは、よい雰囲気なのだときいた」 長門「これを、俗にロマンチックという」 キョン「はあ?」 長門「ロマンチックが止まらない、胸が胸が苦しくなる」 キョン「そうか?」 長門「とめて」 あの、長門さん、なぜこちらに顔を向けて目をつぶるのですか? 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:46:48.56 ID:BwTvQZpN0 俺は長門の顔に両手をのばしー ―――ほっぺたをフニフニとした。 キスという雰囲気でもないし、俺には癒しのエンジェル朝比奈さんがいるからな。 長門「……」 9時の約束だ、もうすぐここに朝比奈さん(大)がやってくるかもしれない。 これで長門が空気を読んで、帰ってくれればありがたいものだが。 長門「……あなたがしないなら、私から」 ほっぺをフニフニする俺の手をふりはらい、長門が急に、 俺に顔を近づけてきた…… 「キョン君!!」 固まる俺と長門。 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:47:17.34 ID:BwTvQZpN0 「あたしはずっとキョン君だけに尽くしてきたのに……まさか浮気していたなんて」 背後から聴こえるこの甘い声は、朝比奈さん(大)のものに違いない。 俺は悪くない、未遂だし、今回のことは長門が勝手に… キョン「いえ朝比奈さん、それは誤解なんで……」 俺はうしろの朝比奈さん(大)へと振り返り、その姿を見て、ふたたび固まった。 とたん、俺は自分の愚かさを呪った。 ――笑ってくれ、このベタな展開を想像できなかった俺の頭を。 数時間前まで浮かれていた俺の情けない姿を。 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:48:38.84 ID:BwTvQZpN0 笑え>>53、お前の予知能力には恐れ入ったぜ。 ああ、俺の背後にいたのは、確かに朝比奈さん(大)だった……(大)なのだが、(大)というより、 ……いや、もっと適切な表現が見つかった、とりあえず話をきいてくれ。 ここで唐突に俺は『JOJOの奇妙な冒険』の話からはじめようと思う。 俺は杜王町という日本の町を舞台にした、第四部が好きだ。 ほかの部も面白い。が、海外へ、他の街へと出かけていってそこで出会う冒険というより、 自分の住む町で普通の生活をしていたら、とつぜん不思議な出来事に出会う……なんていう、 そっちのほうが、今の俺たちSOS団の現状とかなり似通っていて、他人事とは思えないからな。 その第四部の愛すべき主人公、『東方丈助』の口癖を借りて、 俺はたった今、夜九時のこの公園で起きた出来事を、ありのまま言い表すぜ。 キョン「………グレート」 ………だぜ。 グレートマジンガー「キョン君……ひどいわ」 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:49:48.13 ID:BwTvQZpN0 あの……怒っていらっしゃる?……そうですね、見ればわかりますね、朝比奈サン。 今にもカミナリが落ちそうだ。 グレートマジンガー「朝比奈サンダーブレーク!!!」 落ちました。 マジンガー朝比奈さん、(大)でも(小)でもいつもやり過ぎです。 ……(大)か(小)にでもレバーをひねれば、流れていってくれないもんかね。 - - - 〜〜〜- - -〜〜〜- - -  〜 あの世 〜 朝倉「おかえり、キョン君」 キョン「ただいま、朝倉」 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:50:57.75 ID:BwTvQZpN0 朝倉「えへへ…ごはんにする?お風呂にする?それとも……あたし?」 キョン「そうだな、飯と風呂は家で済ませたから……」 キョン「お前だー!!」 ガバッ 朝倉「……きゃっ///」 - - - 〜〜〜- - -〜〜〜- - - グレートマジンガー「……その、長門さんが一方的にやったことなんですね。   誤解はとけましたけど、あたし他にもまだ、どっかで浮気されてるような気がするんですよ…」 長門「とりあえず治す……ブツブツブツ」(呪文詠唱) キョン「ふぅ、なかなか良かったぜ……ハッ、ここは誰?俺はどこ?」 長門「かくかくしかじか」 キョン「……こいつぁグレートだぜ」 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:52:17.59 ID:BwTvQZpN0 グレートマジンガー「いいですか?ぶっちゃけこの際言ってしまいますけれど、  キョン君が小さいあたしに告白して、付き合うようになるのは、『規定事項』なんです」 長門「ショック」 グレートマジンガー「あくまでキョン君の意思を尊重したいので、強制はしませんけれど…」 ――俺は目の前が真っ暗になった。 俺はこの先、まさかマジンガーと恋愛して、ずっとマジンガーと交際しなければならんのか!? グレートマジンガー「とりあえず明日、あたしをデートに誘って下さい。用事はそれだけです」 そう言うと、 グレートマジンガー「キョン君、さっきのお詫びに、お家まで送っていきますよ」 朝比奈さん(グレート)は俺を――いわゆる、その……『お姫様だっこ』だが――抱いて、 グレートブースターを吹かし、夜の街の空へと飛び上がった。 71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:52:57.73 ID:BwTvQZpN0 グレートマジンガー「それでは、さようなら長門さん」 ダダッター、スクラーンブル、ダーッシュ♪ グレートマジンガー「落ちないように首に手をまわしてくださいね」 俺は地上をみおろし、息を呑んだ。 眼下に広がる街の明かりが、キラキラと輝いて見える。 グレートマジンガー「綺麗ですね……未来のキョン君も、この景色が好きだって」 未来の俺は、よくこうやって抱っこされて飛んでるんですか…… ――でも、素直に言おう。綺麗だった。 たった二人きりの夜間飛行なんて、これ以上ロマンチックなことがありうるだろうか? ……相手がグレートマジンガーであることは、この際置いといてだ。 72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:54:50.57 ID:BwTvQZpN0 朝比奈さん(グレート)の黒光りする超合金ニューZの装甲に、 街の明かり、月明かりが映りこんで、摩訶不思議な輝きを放っている。 この時、俺は、ほんの少しだが… …こういうのも、悪くないかもしれん…と、思った。明日は彼女にお詫びして、デートに誘い、 今日の鶴屋さんへの借りをちゃんと返そう…… 世界だってそのうちおいおい元に戻していけばいいさ、やるべきことをやってな。 朝比奈さん(グレート)の力強い腕にしっかりと抱かれながら、俺はそう心の中で誓った。 ――これが、俺のなかに、新ジャンル『マジンガー』の誕生した瞬間だ。 なんてな。つーか、こんな風にかっこつけても、俺の本音は、 ……ぶっちゃけもう、単にあきれ果てて力尽きただけなんだがな。 もういろんな気力が失せている、帰って泥のように眠ろう。俺はゲームオーバーだ。 そういうわけで俺は、長門にモノローグ役を交代してもらうことにした。 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:57:05.16 ID:BwTvQZpN0 - - - - - - 長門「……」 長門「……交代した。わたしは失恋した。スイーツ(笑)」 長門「……」 エラー確認。 長門「……朝比奈みくるの異時間同位体、彼の自宅前に着陸」 長門「彼らはお別れのキスをしている」 長門「わたしにはしてくれなかった」 ポロポロ ふたたびエラー。 74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:57:56.64 ID:BwTvQZpN0 長門「これで確認できた、彼の気持ちは私や涼宮ハルヒでなく、朝比奈みくるに向いている」 というのは、今回の件で私たちが特に注目を置いていた内容。 長門「しかも彼は、朝比奈みくるの容姿がいかなるものであろうと、その気持ちを変えない」 さて、読者の方々にだけ、今回の真相をあかそう。 『ああ。まさかハルヒのせいで、世界が改変されたのか?』 『ない』 あのやり取りは嘘ではない、が、真実のすべてを伝えてもいない。 前半について言うなれば、SOS団全体のせい。 後半についていえば、世界そのものではなく、朝比奈みくるとその周辺の情報が改変されただけ。 75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 22:59:42.79 ID:BwTvQZpN0 ――その結果世界がどのように変わったのか、ざっと説明する… 長門「どうでもいいことなので、説明は概略のみにとどめる」 20世紀(1972年)に突然マジンガーZと光子力パワーが出現したため、 光子力エネルギーの研究が発達し、その結果クリーンエネルギーが発明され環境問題が解決し、 軍事バランスが崩れたがあらゆる紛争が丸くおさまって世界が平和になり、 ジャパニウム特需のおかげで日本経済はかつての石油産出国をはるかに越える好景気、 失業率はゼロ、株価はうなぎ上り、病と貧困と派遣会社がなくなり、社会保障は250年先まで余裕、 光子力バリアーは戦略核をも無意味にし、マジンガーという強力な存在ゆえに 他国からの侵略も起きない……ずっと日本のターン…… ……などといった、考慮にも値しないささいな派生的変化が確認されていた。 76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 23:00:32.71 ID:BwTvQZpN0 が、そんなことはどうでもいい。わたしたちには、『彼』の意中の人を特定する必要があった。 ならびに、今回のような事例における、涼宮ハルヒの彼の行動に対する反応を確認する必要があった。 ……読者のあなたは、私が日本と世界平和について、ささいな派生的変化だ、というのが納得できない? ……そう ……理由は、 たとえ国がいくつ滅びようと、世界と情報統合思念体は残り続ける。 だが彼が涼宮ハルヒを不機嫌にするとなると、国どころか宇宙ごと、統合思念体も含め、全てが滅びる。 これでどちらが重要であるか、賢明なあなたは瞬時に理解してくれたと信じる。 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 23:01:39.77 ID:BwTvQZpN0 涼宮ハルヒにマジンガーZのDVDを見せたのは古泉一樹、ならびに彼の所属する機関の意向。 本来ならば、キョンと呼称される『彼』自身がマジンガーZになるはずだった。 その力の矛先を、朝比奈みくるへとシフトチェンジしたのは、私。 朝比奈みくるがマジンガーZでも不自然でないよう、情報操作を行なったのは思念体。 長門「……」 私は自分のマンションへと帰宅する。 長門「……お風呂」 風呂をわかし、お茶を淹れて一息ついたあと、 脱衣場服を脱ぎ、自分の薄い胸に手を当てて、ものを思う。 ――わたしの胸がもう少し大きければ、彼は振り向いてくれただろうか? ……いや、そのようなことがないということは、今回のことで証明された。 彼は外見がいかなるものであろうと、朝比奈みくるを慕うことをやめない。 78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 23:02:21.58 ID:BwTvQZpN0 長門「……今日は……疲れた」 お湯がすこし熱すぎたので、水でうすめ、肩までゆっくりとつかる。 以前のわたしは、通常の人間が行なうこのような行為を、必要とは感じていなかった。 だが、わたしにひとりの人間としての喜びや悲しみ、楽しみなどの感情を教えてくれたのは、『彼』。 それら感情は、人間とほぼ変わらない体(インターフェース)を与えられた私にとって、 ささいなことに喜びを見出し、必要なものや大切なものを見出したりする切っ掛けとなっていた。 いまではこのお風呂の時間が、わたしの大切なひととき。 ――それにしても、涼宮ハルヒは今回のことをよく耐えたものだ。 わたしは既に耐えられないほど、つらい。彼女はとても強い。 長門「……失恋は悲しい」 でも『彼』がいなければ、わたしはこの悲しみすらも感じることが無かっただろう。 この胸の痛みはわたしだけのもの……おそらく、わたしにとって大切なもの。 79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 23:03:30.64 ID:BwTvQZpN0 世界と朝比奈みくるは、私の手によって、いつでももとに戻せる。 ちなみに朝比奈(グレート)は、わたしの情報操作によって『戻らなかった未来から』来た。 長門「しばらく戻してやらない……ざまみろ」 マジンガーZと交際してあたふたする彼を、しばらく観察してみよう。 『彼』や朝比奈みくるへのネタばらしは、今後一切してやらない。 ポンコツ乳おばけは、イモムシ眉毛にでも浮気されていればいい。いい気味。 エラー。 長門「この感情は『憤り』と呼ばれるもの」 歯を磨いて、パジャマに着替え、電気を消して、 情報統合思念体に本日の報告分データをアップロードする。 就寝。 彼が以前ゲームセンターで取ってくれたぬいぐるみを抱きしめる。 枕が涙で濡れる。 長門「おやすみなさい」 82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 23:11:56.40 ID:BwTvQZpN0 - - - 起床。 長門「おはよう今日もいい天気だ」 長門「朝ごはんを食べよう パクパクモグモグ」 長門「パクパクモグモグ」 ポロポロ ……よくあるネタ。 顔を洗って、歯を磨き、制服に着替える。 登校。 『彼』と涼宮ハルヒのクラスメイト、谷口という男子生徒が、国木田という生徒と話している。 谷口「キョンの奴め……朝比奈さんと登校なんて……うらやましすぎる!!」 83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 23:12:58.11 ID:BwTvQZpN0 国木田「朝比奈さんはかっこいいからねぇ」 谷口「そうだよなぁ……男のロマンを……俺たちのマジンガーZを独り占めしやがって!!」 谷口「『無敵の力は僕らのために』じゃなかったのかよぉ!!裏切ったのかよぉ!!」 悲痛な叫び声が空に響いた。 きくところによると、『彼』は朝比奈みくるにお姫様だっこされながら、空中から通学してきたらしい。 ……ついに恥も外聞も捨てたか。 84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 23:14:02.92 ID:BwTvQZpN0 涼宮ハルヒの精神状態は、懸念されていたよりはるかに安定していた。 『みくるちゃんに取られたんじゃぁ……仕方ないわよねぇ』と言っていたそうだ。 昼休みは喜緑江美里とその交際相手を誘い、情報操作で学校を抜け出して、カレーを食べに行く。 SOS団の皆は、わたしが昼休みは文芸部室で過ごしていると思っているらしいが、それは違う。 必要があるときだけ部室に待機し、そうでないときはこうやって、食べ歩きを敢行している。 ここのお店のランチタイムは、特盛りカレーが通常の値段で食べられる。お得。 喜緑「長門さん……よくこんなに辛いものを食べられますね……」 長門「残すならわたしが貰う」 生徒会長「……さすがに……辛さ150はきついな…」 長門「……」 ポロポロ わたしは黙ってカレーを口にはこぶ。 86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 23:15:56.55 ID:BwTvQZpN0 喜緑「あの、涙出てますけど……無理しないほうが」 長門「涙はカレーの辛さのせい」 喜緑「そ…それならいいんですけど」 カレーがおいしい。カレーは至高、人間が生み出した食文化の極み。 わたしは偉大なるカレクックの頭にカレーの代わりに牛丼を載せたキン肉マンを、一生許さない。 生徒会長「……ところで長門くん、なぜ今日は私も連れてきたのかね」 それは、くだらない理由。わたしは今回の件で、 ――愛し合うもの同士は時間の許すかぎり、少しでも長く近くにいたいものだ、と学んだから。 87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 23:17:37.94 ID:BwTvQZpN0 食後に一服した生徒会長の服についたタバコのにおいを、カレーの匂いともども情報操作で消す。 生徒会長「…すまんね、喜緑くんが匂いにうるさいので、辟易していたところだ」 長門「そう」 生徒会長「……恋人に隠れて喫煙する……これは彼女を裏切っていることになるのかね?」 長門「知らない」 ――まったく男というものはこれだ。自分で考えればすぐにわかるものを。 88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 23:18:15.60 ID:BwTvQZpN0 放課後、涼宮ハルヒは昨日の宣言どおり、文芸部室に皆をあつめ、ミーティングを行なった。 ハルヒ「映画を撮るわよ!今年はじっくりと事前準備をしましょう」 古泉「それは素晴らしい考えです」 キョン「……どうせ止めてもやるんだろ」 マジンガーZ「うぅ、涼宮さん、まさか……」 ハルヒ「そう、もちろんみくるちゃんが主役よ!!タイトルは『マジンガーZ対暗黒大将軍』で決定!」 涼宮ハルヒが言うには、ジャンルは『恋愛ロボットアクション』。 ハルヒ「準主役、ヒロインはあんたよ、キョン!」 キョン「げげっ……」 ハルヒ「しっかりフィルムにのこしてやるわ、あんたとみくるちゃんがイチャイチャする様をね!!」 マジンガーZ「ふぇぇえ……」 89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/11(土) 23:19:06.43 ID:BwTvQZpN0 キョン「『暗黒大将軍』って何だよ……誰がその役をやるんだ」 ハルヒ「そうね、あたしがやろうかしら」 適役このうえなし。非常に興味深い。 ハルヒ「有希はあたしの手下の役でいい?それとも他にやりたい役はある?」 長門「ない」 願ってもない役。マジンガーを追い詰める悪者、それがわたし。 ハルヒ「じゃあ決まりね、古泉くんはマジンガーをサポートする博士の役ね!!」 古泉「拝領します」 ハルヒ「よし!今日はキョンとみくるちゃんに用事があるみたいだから、これで解散よ」 94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 00:00:51.09 ID:3wjhTWmw0 キョン「すまんなハルヒ」 マジンガーZ「涼宮さん、ありがとうございます」 ハルヒ「いいのよいいのよ!じゃ、あんたたちも映画のアイデアを考えておきなさい!じゃあね!」 そう言いのこし、涼宮ハルヒは部室を出てゆく。 キョン「んじゃ俺たちも……行きましょう朝比奈さん」 マジンガーZ「はい、キョン君…みなさん、お先に失礼しますね」 二人も出て行った。窓から。 古泉「……僕たち二人になってしまいましたね、どうでしょう長門さん、たまにはオセロなど」 長門「する…一回だけなら」 95 名前:モンキーマジックでニンニキニキニキくらってた[] 投稿日:2008/10/12(日) 00:02:33.15 ID:3wjhTWmw0 二人零和有限確定完全情報ゲーム、通称オセロ。 わたしは古泉一樹の正面に座り、盤に手を伸ばす。わたしが後手。 たった12手で、盤面の石は真っ白になった。 古泉「……」 私の目の前には、苦笑を顔に貼り付けた古泉一樹。 長門「わたしにも用事があるので、帰る」 そう言うと、古泉一樹は、 「彼は朝比奈さんと交際を始めてしまいましたし……」 古泉「僕には遊び相手がいなくなってしまいましたね」 と寂しそうにしていた。寂しいのなら、フリーになった涼宮ハルヒでも狙えばいいのに。 96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 00:04:12.89 ID:3wjhTWmw0 - - - 学校を出て、駅前にやってくる。 『彼』と朝比奈みくるは、いったんそれぞれの家に帰ってから、駅前で待ち合わせている。 長門「パーソナルネーム長門有希、これより状況を開始する」 喜緑「何やってるんですか、長門さん…わたしたちを急に呼び出して」 生徒会長「あそこに見えるのは…『例の彼』と朝比奈みくるだな」 長門「これよりあなたたちに」 長門「人間と機械の枠を超えた、超恋愛スペクタクルをご覧に入れる」 長門「……尾行開始」 98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 00:08:00.19 ID:3wjhTWmw0 - - キョン「すみません、待たせてしまいましたか」 マジンガーZ「いえいえ、私も今来たところです」 超合金で出来たからだをモジモジさせながら、 キョンが来たとたんに嬉しそうな仕草をするマジンガー。 - - 会長「……これは…」 ブルブル 喜緑「ちょっと…あの…」 プルプル 長門「……」 プルプル 会長「……プッ…クク…おい!…なんだこれは、シュールにも程があるぞ」 ブルブル 喜緑「…うう、あはは……何ですかあれ!!(泣笑)」 プルプル 長門「……ユニーク」 ちなみに、喜緑江美里はもとより、生徒会長には記憶をもとに戻した上で、ネタばらしをしている。 せっかくなのでこの面白さを誰かと共有したい、そう思ったから。 不可視音声遮蔽フィールドを展開しつつ、わたしたちは目下、彼と朝比奈みくるを絶賛尾行中。 99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 00:09:27.52 ID:3wjhTWmw0 - - マジンガーZ「……あの、嫌じゃなければ…手、繋いで…ほしい」 キョン「えっ!?……は、はい、喜んで」 マジンガーZ「キョン君の手……あったかい」 キョン「朝比奈さんの手…ゴツゴツしてて、逞しいですね」 マジンガーZ「……もう、キョン君ったら!恥ずかしい…」 - - 喜緑「……ううう、ごめんなさい、お腹が……よじれてっ(泣笑)」 ビクビク 会長「…人の真剣な恋路を笑うなんて……だが…これはこらえ切れん(泣笑)」 ヒクヒク 長門「……不謹慎な笑いほど、面白いもの」 100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 00:10:15.29 ID:3wjhTWmw0 - - キョン「映画にでも行きませんか」 マジンガーZ「あっ、あたしちょうど見たい映画があったんです」 キョン「…もうすぐ始まりますね」 マジンガーZ「急がないといけませんね、みくる・ゴー!!」 - - 喜緑「……マジンガーと…連れ立って…恋愛映画…っ(泣笑)」 ビクビク 会長「…しかも…カップル割引で……(泣笑)」 ヒクヒク 長門「…………原作が携帯小説……スイーツ(笑)」 102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 00:11:36.52 ID:3wjhTWmw0 - - キョン「映画、面白かったですね」 マジンガーZ「……あたし、何回も泣いちゃいましたぁ」 キョン「……そういえば、光子力ビームが漏れてましたね」 マジンガーZ「……んもう、違いますっ!みくる☆ビームですよぅ」 キョン「朝比奈さん、この後行きたいところはありませんか」 マジンガーZ「ねえ、キョン君……みくる、って呼んで」 キョン「み…みくる……………………Z」 マジンガーZ「キョン君……」 - - 喜緑「……えひっ……もうだめ…っ……笑い死ぬ……っ(泣笑)」 ビクビク 会長「…うぐぐぐ…息ができん…なんて間抜けな光景だ…(泣笑)」 ヒクヒク 長門「……これはひどい(笑)」 ピクピクブルブル 103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 00:12:25.49 ID:3wjhTWmw0 会長「……ゲホゲホッ、ゼェゼェ……ふう…おや、あそこにいるのは」 - - ハルヒ「…………」 ズーン ハルヒ「やっぱ尾行なんてするもんじゃなかったわ……」 ハルヒ「帰ろうかな」 ハルヒ「……いえ、でもアタシはSOS団長として、二人の恋路を見守る義務が……!!」 ゴゴゴゴ - - 喜緑「うわっ……恋敵……登場っ!!…あはははは(泣笑)」 ビクンビクン 会長「…あっはっは…ゼェゼェ……うっ、もうやめてくれぇっ(泣笑)」 ビクンビクン 長門「ブルブル……ユニークすぎる……もうだめ…涙腺が決壊する…(泣笑)」 ビクンビクン 104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 00:13:46.77 ID:3wjhTWmw0 - - マジンガーZ「……ここは」 キョン「気がつきましたか?朝比奈…いえ、みくるさんと俺が、最初の不思議探索で」 マジンガーZ「そうね……うん、あたしも、はっきりと覚えてます……」 キョン「あなたは綺麗で、優しくて、俺の理想の女性です」 マジンガーZ「キョン君……嬉しい…」 キョン「スーパーロボット朝比奈みくるZさん、俺はあなたが好きです」 マジンガーZ「あたしも……キョン君のことが大好きです」 - - ハルヒ「(小声)…そこよキョン!ガーっと行け!ぐわーっと!!」 桜の木の陰から、涼宮ハルヒがこっそりと二人を見ている。 わたしは彼女に近づき、遮蔽フィールドに取り込んでから、声をかけた。 長門「涼宮ハルヒ」 ハルヒ「……きゃっ!!!何?有希じゃない!!どうしたの、なんで有希がここに」 105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 00:15:16.65 ID:3wjhTWmw0 長門「それはいい、あなたに訊ねたいことがある」 ハルヒ「な、何よ……」 長門「あなたは二人に優しい。何故?」 これは、わたしが昨日から考えていた、とけない疑問。 わたしは彼らに(ちょうど今みたく)つらく当たらないと、失恋の重みに耐えられない。 なのに涼宮ハルヒは、わたしが耐え切れなかったそれにあっさりと耐え、 なおかつ彼と朝比奈みくるにたいして優しくしている。理解不能。 ハルヒ「……んー…そうねぇ」 111 名前:豊臣秀吉が強すぎです勝てません[] 投稿日:2008/10/12(日) 01:00:49.31 ID:3wjhTWmw0 キスをする『彼』とマジンガーZを横目で眺めつつ、涼宮ハルヒは、ぽつぽつとわたしに語り始める。 ハルヒ「……あたしの理解では、恋愛なんてのは精神病みたいなものなんだけど……」 そこで、困ったような笑顔を見せ、 一呼吸おいてから、 ハルヒ「…………病人にはやっぱり、優しくするべきなのよね」 と言った。 理解した。さすがSOS団を率いる我らが団長。 尊敬する。 112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 01:03:57.66 ID:3wjhTWmw0 - - キョン「……その、疲れましたね…あの、や…休んでいきませんか///」 マジンガーZ「………///」 コクリ 男性にいかがわしい場所へと誘われ、赤面しつつ頷くマジンガーZ。 - - 会長「あっ、おい!!あいつらホテル街に向かって行ったぞ!!」 喜緑「……ああっ、フェード・インするつもりですね……あははは(泣笑)」 ブルブル 会長「……それはライディーンだ…マジンガーなら、パイルダー……オン……(泣笑)」 ビクビク 長門「読者の皆様に画像や動画による情報を提供できず、非常に残念」 ハルヒ「不純異性交遊だわ!!…って、何で会長と手下その1がいるのよ」 115 名前:支援&保守thx[] 投稿日:2008/10/12(日) 01:05:26.65 ID:3wjhTWmw0 長門「……涼宮ハルヒ、『彼』と朝比奈みくるを、止めないの?」 ハルヒ「……う…いいわ、仕方ない、特別に見逃してあげる。   だって、もしあたしがキョンと付き合ってても、同じことをしたかもしれないし」 『彼』と朝比奈みくるZがホテルの中に消え、どうやら正義の心にパイルダー・オンするらしいので、 わたしたちは、ここでお開きにし、解散することにした。 会長「いやぁ、笑わせてもらったよ……くくく、ありがとう長門くん」 喜緑「…笑い死んでガンツの部屋で目覚めるかと思いました……あはは、当分思い出し笑いしそう…」 ハルヒ「うう…グスッ…やっぱりキョン、好きだよぅ……寂しいよぅ……」 ポロポロ 116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 01:06:43.86 ID:3wjhTWmw0 ハルヒ「でも……あたし団長だし、祝福しないと…」 グスン 長門「いい、あなたは立派」 今夜は私の家に来るといい。二人で語り明かし、泣きはらすべき。 あとで古泉一樹にフォローするように連絡しよう。 喜緑「…さて長門さん、そろそろ朝比奈さんをですね…ふうぐっ…その、マジンガーから元の姿に」 長門「わかった、本日は充分楽しんだ…そろそろ」                            __,,:::========:::,,__                         ...‐''゙ .  ` ´ ´、 ゝ   ''‐...                       ..‐´      ゙          `‐..                     /    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朝倉「えっ、交際?どういう意味?……ちょっとキョン君、どういうこと?」 キョン「……なあ、おい、まあ落ち着けよ二人とも」 ハルヒ「許さないわ!」 朝倉「駄目よ、キョン君にはお腹の子の責任を取ってもらうの!!」 キョン「……うわぁ、どうみても修羅場ですありがとうございました」 122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 01:14:59.51 ID:3wjhTWmw0 - - - 〜〜〜- - -〜〜〜- - - 会長「…おい、脳みそがはみ出てるぞコイツ…」 喜緑「ね、ねえ長門さん……これは…」 長門「大丈夫、治す……ブツブツブツ」 (復活) 朝倉「……あれっ?」 長門「…何故あなたが?」 朝倉「…長門さん……えっと、何で私がここに?」 長門「……推測するに、あなたの魂はあの世で『彼』と涼宮ハルヒの魂に非常に接近していた、   ゆえに私の情報操作に巻き込まれ、あなたが現世に下りてきたものと思われる」 朝倉「……え、そ…そうなんだ……びっくりしたわ」 123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 01:16:57.65 ID:3wjhTWmw0 長門「失敗した、もう一度……ブツブツブツ(詠唱:内訳=コノゲジゲジマユゲメマッタクテノカカル)」 (復活) キョルヒ「うわ「キャアッ」あっ」!!」 長門「……」 朝倉「……あの、ちょっと長門さん?」 キョルヒ「「な、何「よ」だコレ!?!?」」 会長「……」 喜緑「……」 127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 01:18:50.11 ID:3wjhTWmw0 キョルヒ「「説明し「ろ」なさーーーい!」!!!!!!!!!!」 会長「……」 ゴクリ 喜緑「……」 ゴクリ 長門「……人間一人分の構成情報リソースが先ほど朝倉涼子に使用されたので、  残った一人分の情報リソースに、二人分の魂が押し込められてしまった」 長門「…てへっ、失敗」 キョルヒ「「『てへっ』で済ませられるかーー!!」」 132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 01:37:53.81 ID:3wjhTWmw0 会長「……これは…」 ブルブル 喜緑「…そうですね、どう見ても……」 ビクビク キョルヒ「「さっさと元に戻し「てくれ」なさいー!!!」」 会長「……『あしゅら男爵』……ぶぼはっ!!!がひゃひゃひゃ(泣笑)」 ビクンビクン 喜緑「…もうダメ……こんなオチが……ライフ、ゼロ…あはあ…あははは(泣笑)」 ビクンビクン ダイラガー]X「もう……みなさんずっと見てたんですか?酷いです!!……あれ?」 朝倉「……だめだこりゃ♪」 長門「おわる」 133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 01:39:00.24 ID:3wjhTWmw0 支援&保守thx さるくらって大変でした ハルヒ「キョン、爆発するわよ!」 テイク1 はアッサリと了 137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 01:44:48.06 ID:3wjhTWmw0 テイク3まであるのだが、 鬱&長い&中二的最終回風 アッサリ短めギャグ 次はどちらを投下しようかな 143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 02:13:52.74 ID:3wjhTWmw0 テイク2 キョン「……」 ソワソワソワ ハルヒ「……」 キョン「……ぬうう」 ソワソワソワ ハルヒ「……」 144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 02:15:12.42 ID:3wjhTWmw0 キョン「……ぐ…」 ソワソワソワ ハルヒ「何よ、あたしの顔をジロジロと……」 キョン「……フッ!!ぐぅううう……ぐぬぬぅうう」 ソワソワソワ ハルヒ「……ちょっと!?ど…どうしたのよあんた、さっきから」 キョン「……うがあぁああ!!」 ハルヒ「……もしかして、調子悪いの?…大変だわ!」 キョン「言うべきか…言わぬべきか…それが問題だ…」 ハルヒ「……え?」 145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 02:16:40.19 ID:3wjhTWmw0 ハルヒ「……どうしたのキョン?あたしに何を言うの?」 キョン「…むう…ぐぎぎぎ」 ソワソワソワ ざわざわ…… 「どうしたキョンの奴」「とうとうおかしくなったか?」「具合悪いのかしら」 「涼宮さんに何か言おうとしてるのね」「まさか、愛の告白?」「えー!」 ガシッ ハルヒ「キャッ!、何よ一体!!」 キョン「……くっ、教室じゃ話せない、こっちだ、ついてこい!」 146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 02:18:29.74 ID:3wjhTWmw0 ――踊り場 ハルヒ「……ここ、覚えてるわ…SOS団発祥の場所ね」 キョン「ハァ……ハァ…ゼェゼェ」 キョン「………ゼヒィ……ゼェヒィ」 キョン「はあ……はあ……」 ソワソワソワソワ ハルヒ「で、何?…あたしをこんなところに連れてきて…」 ドキドキ キョン「……ゴクリ…俺は、お前が…」 147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 02:19:31.57 ID:3wjhTWmw0 ハルヒ「……ねぇ、まさか…ほんとに愛の告白?(キャーどうしようどうしよう、まだ心の準備が!!)」 キョン「……お前の……その……」 ソワソワ ハルヒ「……ポ、ポニーテールかしら!?」 キョン「!!…っ、確かにポニテも好きだが……それよりも、だ」 キョン「俺は…お前の…」 ハルヒ「……あたしの?」 ドキドキドキ 148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 02:19:55.45 ID:3wjhTWmw0 キョン「……スゥー…ハァ」 キョン「お前の鼻の穴から飛び出した糸こんにゃく萌えなんだ!!!」 ハルヒ「……はぁ?」 ハルヒ「………………え、何?」 149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 02:20:47.35 ID:3wjhTWmw0 キョン「似合ってるぞ」 ハルヒ「え!?ちょっ!!もしかして出てるの!?…(何!?あああ!!恥ずかしい!!)」 キョン「俺に、その……お前の鼻の穴から飛び出した糸こんにゃくを食わせてくれ!!!」 ハルヒ「あっ、ほんとに出て」 ズルッ キョン「……ひ…ひ」 プルプル ハルヒ「……?」 キョン「……引っ込んだァあぁああああああああああああッ!!!!」 ハルヒ「!?キャあぁあぁぁあ!!!」 ビクビクウッ 150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 02:22:23.63 ID:3wjhTWmw0 キョン「ハァ……ハァ…ゼェゼェ」 キョン「ハァ………」 ハルヒ「……何よ、びっくりしたじゃない!!」 キョン「……俺の……糸こんにゃくが……」 ハルヒ「あのさ、みんなに気づかれる前に教えてくれたことには感謝するけど…     一体何なの?…『食わせてくれ』って……あんた変態?」 ビョル キョン「また出たァあぁああああああああああああッ!!!!」 152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 02:23:08.07 ID:3wjhTWmw0 ハルヒ「!?きゃあぁあぁぁア!!!」 ビクビクウッ ズルッ キョン「あああ、また引っ込んだぁ!!」 ハルヒ「えっ!?」 ビョルルッ キョン「出たァあぁああ!!」 ハルヒ「何よ何よ何よ!!あたしまで釣られて叫んじゃったじゃない!」 ズボッ キョン「抜いたか…ハァハァ…ハルヒ、抜きやがった」 ハルヒ「変態!信じられない!!」 ポイッ キョン「捨てやがったァあぁああッ!!!この野郎おおおおッ!!」 153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 02:23:56.36 ID:3wjhTWmw0 ハルヒ「!?きゃあぁあぁぁア!!!」 ビクビクウッ キョン「ハルヒこんちくしょう!!」 ガシッ ガクガク ハルヒ「!!…ちょ、ちょっと、揺さぶらないでよ!!」 キョン「俺の……俺の糸こんにゃく……」 グスン ハルヒ「……」 キョン「…………俺の……」 シクシク ハルヒ「ちょっとキョン…あんた泣いてるの?……そんなに落ち込まなくても」 キョン「俺は、お前のだから……お前の鼻の穴から飛び出していたものだから…」 シクシク 155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 03:01:19.81 ID:3wjhTWmw0 キョン「朝比奈さんのでも長門のでも佐々木のでもない……お前のだから!!!」 バーン! ハルヒ「……」 ドキッ キュンキュン ハルヒ「…そんなに言うなら……ちょっと待ってなさい!!」 ゴソゴソ 二分後 キョン「……これは」 ハルヒ「さっき捨てた奴だけど……あんたのために拾って、食べられるように洗ってきてあげたわ…」 156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 03:02:39.28 ID:3wjhTWmw0 キョン「……ハルヒ」 ハルヒ「……あたしだって…その、恥ずかしいけど…感謝して食べなさい!///」 ポッ キョン「……ハルヒ、お前……お前って奴は!!」 キョン「ふざけるなぁああああああ!!!!!」 ブチブチッ ハルヒ「!?きゃあぁあぁぁア!!!」 ビクビクウッ キョン「この『糸こんにゃく洗い』を作ったのは誰だぁぁぁあ!!!」 ハルヒ「あああ、あたしですごめんなさい!!洗面所で洗いましたごめんなさい!!」ビクビク 157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 03:03:31.49 ID:3wjhTWmw0 キョン「洗ったら意味ないだろうがぁぁダボがぁ!てめえこのボケぇっ!頭沸いてんのか?!」 ハルヒ「キョンごめんなさい!ごめんキョン本当許して!」 ガクガクブルブル キョン「……ハァ……ハァ…ゼェゼェ」 ハルヒ「……グスン」 ウルウル キョン「…なあハルヒ、常識的に考えて、洗ったら駄目だろ?」 ハルヒ「…そ、そうよね…あたしが間違ってたわ……」(よかった…いつものキョンに戻った) 158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 03:04:15.63 ID:3wjhTWmw0 キョン「そして俺は、俺はお前の鼻の穴から、直接食べたかった」 ハルヒ「……直接?」 キョン「ああ」 ハルヒ「糸こんにゃくを?」 キョン「こんにゃく」 ……想像中 『ハルヒ…目をつぶってくれないか』『ん……』 ……想像おわり ハルヒ「……その…何ていうかゴメン、残念だったわね///」 キョン「残念だった?」 ピクッ 159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 03:06:11.10 ID:3wjhTWmw0 ハルヒ「え…」 キョン「……言うに事欠いて……残念だっただと?」 ピクッ ピクッ ハルヒ「…キョン?」 キョン「残念どころの話じゃねーだろ!!この黄色カチューシャ!!!」 ガシッ ハルヒ「!?ひいいいぃッ!!!」 ビクビクウッ キョン「出せコラ!!もっかい出しやがれこんちくしょう!!!コンニャクこんちくしょう!!」 ガクンガクン ハルヒ「ひえっ!……あわわ、わかったわ!やってみるから、揺さぶるのをやめて!!」 ガクンガクン キョン「ああ、頼むぜハルヒ」 ピタッ ハルヒ「……ちょ、ちょっと待っててね(…出すとは言ったけど…出るかしら?)」 ハルヒ「さっき洗ったやつ、まだ鼻から出せるだけの長さはあるわよね……」 パクッ 160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 03:07:45.95 ID:3wjhTWmw0 キョン「…お前ならできる…」 ハルヒ「ふんっ!」 ズビッ キョン「……」 ハルヒ「エックシュ!!」 ズビビッ キョン「……」 ハルヒ「…うう、鼻が痛いわ…」 ヒリヒリ ズズズ ハルヒ「ゴクン……あっ」 161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 03:09:32.98 ID:3wjhTWmw0 キョン「……飲んじまったか」 ハルヒ「…お願い……許してキョン」 キョン「……ゆ」 〜〜〜そのころの古泉クン〜〜〜 ピロリンピロリンピロリン♪ 古泉「おや、バイトですか」 みくる「ふぇぇ……古泉くん、大変ですね…」 古泉「あとちょっとでジグソーパズルが完成だったのに…」 古泉「仕方ありませんね…」 ガタッ みくる「気をつけてくださぁい」 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 03:10:48.60 ID:3wjhTWmw0 キョン「許さん……てやんでぃバーロイチキショイ!!」 ハルヒ「!!」 キョン「貴様のケツの穴から手ェ突っ込んで鼻からコンニャク出させてやるッ!!!」 ハルヒ「ひぇええっ!!」 長門「待つがよい」 ハルヒ「有希!!」 163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 03:11:54.39 ID:3wjhTWmw0 キョン「長門…何故ここに……はっ、それは!」 長門「……見て」 パッ キョン「糸こんにゃく!!」 長門「パク」 長門「フンガ」 ニョロッ キョン「……出しやがった」 長門「あなたはこれを食べるべき」 ハルヒ「何してるの有希!?……ちょっとキョン?」 キョン「……」 ソワソワ ハルヒ「…あたし以外のには……興味ない……んだよね?」 165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 03:13:11.61 ID:3wjhTWmw0 長門「どう?」 キョン「……」 ソワソワ ゾクゾクゾク キョン「すまんハルヒ、さっき言ったことだが……ありゃウソだった」 キョン「ワンダホー!!ワンダホー!!」 ガバッ 長門「きゃー(棒読み)」 キョン「いただ!!き!!ます!!!」 ズビズバ ブチュルブチュル 長門「……///」 キョン「うめぇ!!超うめーよ!!長門お前最高だ!!コンニャクこんちくしょう!!」 172 名前:さるにござる[] 投稿日:2008/10/12(日) 04:01:04.21 ID:3wjhTWmw0 ハルヒ「……キョン…」 キョン「ハルヒ、お前には失望した…じゃあな、俺これからの人生、長門と生きるわ」 ハルヒ「そ、そんなぁ……」 ポロポロ 鶴屋「あれ?みんな、こんなところで何やってるのかなっ?」 ハルヒ「鶴屋さん!…実は…カクカクシカジカ」 鶴屋「それは面白そうだねっ!あたしもやってみるっさ!」 キョン「無駄ですよ鶴屋さん、俺、長門一筋っすわ」 173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 04:02:03.33 ID:3wjhTWmw0 鶴屋「有希っこ、それちょうだい」 長門「どうぞ」 鶴屋「ありがとー!じゃいくよっ!!」 パクッ 長門「……(何があろうと、わたしの勝利はゆるがないはず…)」 鶴屋「3,2,1…ふぬっ!!」 ニョロニョロ キョン「何だと!?……にょろっと出しやがった」 鶴屋「どうにょろ?」 プラプラ キョン「あっ食います」 174 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 04:03:23.04 ID:3wjhTWmw0 キョン「ッ!!いた!!だき!!ますッっああ!!」 ハグッ!!ハグハグッ!!! キョン「うんめえええぇ!!マンモスうめぇええ!長門のやつの百倍うめぇ!!」 ベロベロブチュー 長門「…!」 ガーン ハルヒ「ええ!?」 ズガーン 鶴屋「……あっはっはっ、これは恥ずかしいねっ!!」 キョン「俺、長門いらないっス、一生鶴屋さんを離さないっスわ」 175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 04:04:25.86 ID:3wjhTWmw0 長門「……涼宮ハルヒ」 ハルヒ「……っ?」 長門「ここは手を組むべき」 キュピーン ハルヒ「……有希」 キョン「毎日朝昼晩三食、俺は鶴こんにゃくを摂取せねば生きていけない体になっちまったぜ」 長門「リベンジのチャンスを」 ハルヒ「そ、そうよ!納得いかないわ!」 鶴屋「おや?ハルにゃんに有希っこ、やってみるかい?いいよっ!」 キョン「さすが俺の鶴屋さんだ、心が広いな」 176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 04:07:21.94 ID:3wjhTWmw0 ハルヒ「有希、まだ糸コンニャクある?」 長門「…もうない、さっきのが最後」 キョン「俺糸こんにゃくになりてぇ、糸こんにゃくになって、鶴屋さんの鼻の穴からコンニチハするんだ」 ハルヒ「でもあたし、さっき鼻から出せなくて飲んじゃったのよ」 長門「了解した、わたしに策がある」 長門「手始めに、朝倉涼子を召還」 ブツブツ 朝倉「あれ?なんで私、ここに…」 177 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 04:08:36.47 ID:3wjhTWmw0 キョン「祝福しろ、それがお前がここにいる理由だ……俺は鶴屋さんと結婚する」 ハルヒ「朝倉?あんたカナダに転校したんじゃ……」 朝倉「それが私にも解らないのよ」 長門「朝倉涼子、あなたはおでんを作るべき」 朝倉「えっ?」 長門「さあ、いますぐ、ここで」 朝倉「今すぐ?」 長門「さあ」 朝倉「ま、待ってよ……材料を買ってこないと」 長門「三十分以内におでんを作るべき…遅れたらアレをする」 朝倉「そんなぁ!!いってきます」 ダダダっ 178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 04:09:58.12 ID:3wjhTWmw0 キョン「鶴屋さん、俺との幸せな将来のマンナンライフについて、一緒に語り合いませんか」 鶴屋「そうだねっ!キョンくん、こんにゃくゼリーのスモチ味が裏ルートで流通してるって知ってるかい?」 キョン「マジッすか!パネェっス!!」 ハルヒ「あっ枝毛…」 〜〜40分後 朝倉「ゼェ……ゼェ…つ、作ったわよ、朝倉涼子謹製、ハイパーおでんを」 179 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 04:10:52.54 ID:3wjhTWmw0 長門「遅い」 朝倉「ええっ、こんなに頑張ったのに!土佐のカツオ一本釣りから始めて、出汁を…ブツブツ」 長門「言い訳はいらない、『アレ』を執行する」 朝倉「えうっ…やめてぇ…ご無体な」 キョン「んでですね鶴屋さん、俺は将来あなたの副鼻腔に住みたいんです」 鶴屋「それはそれは、めがっさにょろっとした話だねっ!!敷金礼金はサービスだよっ!」 ハルヒ「……痛っ!指のささむけをいじってたらピッてやっちゃったわ」 180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 04:11:34.25 ID:3wjhTWmw0 〜〜〜そのころの古泉クン〜〜〜 古泉「ただいま…もう誰もいないでしょうが」 みくる「おかえりなさい、もう授業始まっちゃってますよぅ」 古泉「おや?もしや、待っていて下さったのですか」 みくる「うん…あたし…がんばってる古泉くんを応援することしかできないから」 古泉「…朝比奈さん」 ウルウル みくる「だから…せめて古泉くんに、」 ウルウル ピロリンピロリンピロリン♪ 古泉「!!」 みくる「!!」 古泉「…何…だと…また閉鎖…空…間」 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ハルヒ「んあ゙ー……やっぱ口内炎が気になるわ…イライラするー」 181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 04:13:09.66 ID:3wjhTWmw0 長門「涼宮ハルヒ」 ハルヒ「!!!?な…有希?びっくりしたじゃない!」 長門「作戦を教える」 ハルヒ「え?…あ、そうだったわねコンニャクの話してたんだったわ」 長門「これから皆でおでんを食す」 ハルヒ「ふんふん…それにしてもいい匂いね、朝倉さんの作ったおでん」 長門「あなたと私はおでんの具である糸こんにゃくを食す最中に、朝倉涼子の顔を見る」 ハルヒ「…そんだけ?」 長門「それだけ」 ハルヒ「手を組むって言ってたけど…あたしは何もしなくていいの?」 長門「いい」 (これ以上涼宮ハルヒが不機嫌になれば、機関が壊滅する) ハルヒ「ありがと有希!!あなたを恋のライバルとして認定するわ!」 185 名前:モンキーイングしてました&保守ベリーthx[] 投稿日:2008/10/12(日) 05:00:22.43 ID:3wjhTWmw0 長門「……あなたには負けない」 キョン「それでですね鶴屋さん、卒業後は鼻から飛び出し専用の糸こんにゃくを売って生計を立てるんですよ」 鶴屋「あはっ、キョン君は本当に鼻の穴から飛び出した糸こんにゃくが大好きなんだねっ!!」 ハルヒ「……キョンが本格的にやばいことになってるわ、早く始めましょう、おでんパーティ」 長門「そうする」 朝倉「味には自信があるわ!たーんと召し上がれ♪」 ハルヒ「いただきまーす」 長門「いただきます」 ガツガツガツ キョン「いただきます」 鶴屋「あたしもいただきまーす」 朝倉「みんな…そこまで私のおでんが食べたかったなんて、感激しちゃうわ」 186 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 05:01:48.78 ID:3wjhTWmw0 長門「タイミングは今…パーソナルネーム朝倉涼子に、『アレ』を施行」 モグモグ ハルヒ「あれ、コレ美味しいじゃない」 モグモグ 長門「情報操作開始」 ハルヒ「そうだ朝倉さん、カラシないの?カラシ…って、あなたソレ」 朝倉「カラシ?ああ、あるわよちゃんと、そこは抜かりなく……何?」 ハルヒ「眉毛が…」 朝倉「?…涼宮さん、何よいきなり」 ハルヒ「眉毛が繋がってるブフォッ!!!(噴出)」 バビューン ニョビョロロッ 長門「フンガモガ」 モビャーン 187 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 05:03:37.42 ID:3wjhTWmw0 朝倉「え?え?何したの長門さん……きゃあああ!!」 ピュー(逃走) ハルヒ「あっ、出たわ!!出たわ糸こんにゃく!!!!嬉しい!」 プラプラ 長門「よかった」 プラプラ ハルヒ「っ!!さすがは有希ね、鼻から飛び出したこんにゃくの束が、まるでおヒゲみたい…」 ハルヒ「…有希…手ごわい…ライバル…」 ハルヒ「でもキョンは言ったわ…あたしに、『お前のだから、食べたい』と!!」 ハルヒ「あたしは…やっぱりキョンを信じることに決めた!!」 ハルヒ「見て見てキョン!!出たわよ!!さあ食べなさい!!」 プラーン 188 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 05:04:51.13 ID:3wjhTWmw0 キョン「ん、どうした?」 ハルヒ「…な、何よその冷めた反応…食べたかったんじゃないの?あたしの鼻こんにゃく…」 プラプラーリ 長門「わたしのも」 プラニョーン キョン「何言ってんだお前……」 ハルヒ「はやく食べなさいよ!!恥ずかしいんだから!!」 プラミョビョーン 長門「わたしか涼宮ハルヒ、どちらかを選ぶべき」 キョン「それシラタキじゃねーか、馬鹿じゃねーの?」 ハルヒ「えっ!?」 ガーンプラプラ 長門「……しら……たき??」 ボーゼンプラプラ 189 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 05:05:42.05 ID:3wjhTWmw0 鶴屋「あっはっは!!!二人とも鼻の穴からシラタキ出すなんて、間抜けな顔してるにょろ!!」 ケラケラ ハルヒ「く…くやしいわ……」 プラションボリ 長門「……糸こんにゃくではなく、シラタキが入っているとは」 プラショボーン ハルヒ「でも……糸こんにゃくとしらたきって、どう違うのかしら?」 ドタドタ 朝倉「ちょっと長門さん!!ひどいじゃない!!つながり眉毛にするなんて!!」 長門「あなたは遅刻した、その罰」 キョン「あ…朝倉…お前…」 190 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 05:07:37.80 ID:3wjhTWmw0 朝倉「きゃあ!見ないでキョン君…恥ずかしい…」 キョン「お前…俺は…俺、実は!!」 プルプル キョン「……スゥー…ハァ」 キョン「つながり眉毛萌えだったんだ!!!!」 バーン バーン バーン 朝倉「……えっ?」 ゲジゲジー ハルヒ&長門&鶴屋「な、なんだってーーーー!?」 キョン「両津勘吉の次に好きです!!朝倉涼子、俺と三十分以内に結婚してくれ!!!」 朝倉「そ…そんな…で、でも…」 ゲジポッ 192 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 05:09:20.15 ID:3wjhTWmw0 キョン「糸こんにゃくなんぞに萌えていた俺がバカだった!つながり眉毛の他に俺は何もいらない!!」 長門「わたしはなんてことを……彼がこち亀を全巻そろえていることを失念していた…」 鶴屋「大変だっ、このままじゃオチがないにょろ!!」 ハルヒ「キョン、爆発するわよ!」 朝倉「ひいっ!!涼宮さん、そんな無理やりスレタイにつなげなくても」 ゲジゲジー ハルヒ「もうこんな世界に用はないわ」 イライライライラ 朝倉「だめだわ、目が据わってる……」 ゲジヒトー 〜〜〜そのころの古泉クン〜〜〜 ピロリンピロリンピロリン♪ 古泉「やっと……バイトが終わったのに…」 みくる「ひえええ…大規模な時空改変の兆候がぁ…」 古泉「もうここまでですか…」 194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 05:11:10.37 ID:3wjhTWmw0 みくる「でもあたし…最期の最期で古泉くんと一緒にいれて…嬉しい」 古泉「僕もですよ朝比奈さ」 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 キョン「つながり眉毛の他に俺は何もいらない!!つながり眉毛の他に俺は何もいらない!!」 ハルヒ「糸こんにゃくとシラタキって、どこが違うのよーーーーーーー!!」 朝倉「ダメだこりゃ♪」                            __,,:::========:::,,__                         ...‐''゙ .  ` ´ ´、 ゝ   ''‐...                       ..‐´      ゙          `‐..                     /                   \         .................;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::´                      ヽ.:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.................    .......;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙      .'                            ヽ      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投稿日:2008/10/12(日) 05:12:12.65 ID:3wjhTWmw0 支援&保守thx さるくらってやっぱり大変でした ハルヒ「キョン、爆発するわよ!」 テイク2は無理矢理了 212 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 14:15:08.40 ID:3wjhTWmw0 テイク2.5 長門「今日、家に来て」 キョン「はい?」 長門がパタンとハードカバーを閉じ、 ハルヒのやつは「また明日ね!」と帰ってゆき 朝比奈さんと古泉も帰ってしまった。 長門、お前は帰らないのか?と訊こうかと思った矢先だった。 213 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 14:15:57.30 ID:3wjhTWmw0 長門「今日、わたしの家に来て」 キョン「家って…お前の家にってことか?」 長門「そう」 キョン「何の用事なんだ?今ここでは言えないことか?」 長門「見て欲しいものがある」 深く銀河をたたえたような瞳が、俺を射抜いた。 214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 14:19:17.72 ID:3wjhTWmw0 キョン「わかった…今すぐか?」 長門「すぐ」 長門「もうすぐ…始まってしまう」 俺は誘われるままに、長門についてゆき、マンションへとやってくる。 そして、いつものように708号室へ…入ったとたん、俺は目を疑った。 この場所では見かけたことのないソファーと、大きなテレビが、リビングにすえつけられていたからだ。 キョン「これは…テレビ!?」 長門「そう」 215 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 14:20:17.21 ID:3wjhTWmw0 文芸少女を絵に描いたような長門、本さえあれば退屈など何処吹く風といった風体の長門が、 まさか自分の部屋にテレビなんぞを導入するとはな 長門「借り物」 ショートカットの本好き少女の話によると、喜緑さんに借りたものらしい。 そうか、でも妙に誇らしげな顔をしているのは何故だろうね? 長門「宇宙デジタル」 キョン「うちゅ……!?」 ……よくわからんが地上デジタルの100倍は凄いんだろうな キョン「見せたかったものって…もしかして、コレか?」 長門「そう、でも…わたしが見せたいのは…」 218 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 14:22:33.15 ID:3wjhTWmw0 そこで長門は少し言いよどむように、こちらから目をそらした。 長門「違う…わたしには、あなたと一緒に見たい番組がある」 長門「一緒に…見て欲しい」 キョン「ハイ」 俺は二つ返事でOKした。 こいつが俺と一緒に見たい宇宙的番組って、一体どんな代物だろう? ……それに興味があったからさ。 長門「番組はこれから15分後に始まる」 219 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 14:23:30.63 ID:3wjhTWmw0 そういや、こいつと二人きりで映画とかを見たことなど、今までなかったな。 促されるままにソファーに座ると、何か円筒形の物体を手渡された。これは? 長門「コカコーラ、およびポップコーン…キングサイズ」 それは気合のはいったことで。俺も本格的にくつろぐとしますか。 長門「わたしも」 俺の隣に長門が座り、テレビに向かってブツブツと詠唱を開始した。 長門との距離は妙に近く、俺の鼻をシンプルなシャンプーの匂いがくすぐる。 220 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 14:25:19.91 ID:3wjhTWmw0 少しドキドキ、ワクワクしてきた。 どんな番組なんだ?SFか?アニメか?ハリウッドみたいなものか? ―――まさか…ロマンチックな恋愛映画、とか…… キョン「そ、そんなはず…ないよな」 長門「……?」 俺はゴクリと生唾を飲み込んだ。 やがて、テレビの電源がともされ、見たこともない映画会社のロゴがうつり、 俺は緊張と多少の期待感におそわれつつも、 221 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 14:25:49.44 ID:3wjhTWmw0 現われたタイトルを 見やった。 『ゴジラ 対 喜緑さん』 キョン「………………え」 キョン「……………………………………って何すか!?!?!?」 長門「映画が始まった…静かに」 キョン「ハイ」 222 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 14:28:38.68 ID:3wjhTWmw0 - - - - - - - - - 宇宙船の中で、二人の女性が会話をしている。 朝倉『…とうとう、アレが目覚めてしまったわ』 長門『……』 朝倉『わたしたちにはどうすることもできない…』 長門『……』 朝倉『って、長門さんちゃんと演技してよ』 長門『そう』 - - - - - - - - - キョン「…これ、お前たちが作ったのか?」 長門「上映中は静かに」 キョン「ハイ」 223 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 14:29:37.65 ID:3wjhTWmw0 - - - - - - - - - 喜緑『この日のために……わたしは血の滲むような特訓を…』 大歓声……われんばかりなる騒音に埋め尽くされたスタジアム。 喜緑『ここは得意のシンカーで…決めますわ!!』 ヤンキース対レッドソックス、宿命の対決が今行なわれている… 二死満塁、一発逆転のピンチ。 マウンド上の喜緑江美里は、鋭い目つきでバッターボックスを睨みつける。 喜緑『つらい戦いに傷つき…倒れた仲間たち…死んだ大輔くんのためにも…』 松井『……』 ブンブン いかつい顔をしたバッターボックスの怪物は、バットを構えた…… - - - - - - - - - キョン「…って…そっちのゴジラかよ!!!何で松坂死んでるんだよ!!」 長門「静かに」 キョン「ハイ」 227 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 15:36:13.79 ID:3wjhTWmw0 - - - - - - - - - スタジアムに宇宙船が飛来してくる… 朝倉『大変よ!地球のみなさん、アレが目覚めて…もうすぐこっちに来るわ!!』 長門『来る』 スピーカーから、宇宙人姉妹(?)の声が流れる 松井『ぬぅん!!』 カキーン!! 喜緑『そんな…わたしのシンカーが打たれた!?』 朝倉『キャアアアア!!ホームランで宇宙船に穴が!!』 長門『……動力系に深刻なダメージ』 - - - - - - - - - キョン「……松井強すぎじゃね!?宇宙船がボロイのか?」 長門「静かに」 キョン「ハイ」 228 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 15:37:25.94 ID:3wjhTWmw0 - - - - - - - - - 朝倉『大変だわ!このままじゃ墜落してしまう!』 松井『ぬぅん!!』 カキーン!! 朝倉『宇宙船ごと打たれた!?』 喜緑『……太陽系外…ホームラン…』 長門『スタジアムは救われた』 - - - - - - - - - キョン「…………」 長門「…………」 キョン「ハイ」 229 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 15:41:29.18 ID:3wjhTWmw0 - - - - - - - - - 朝倉『最初から地球にテレポートしておくべきだったわ』 長門『アレが…来る……人類に打つ手は無い』 喜緑『おや、あれは…なんでしょう?』 スタジアムに現われたのは、何と言うか巨大なトカゲだった。 ティラノサウルスとイグアナとワニを足したような… 喜緑『あれは……』 ギリギリ 試合終了 ヤンキース 248x - 2 レッドソックス 喜緑『GODZILLA!!』 - - - - - - - - - キョン「…松井は何処いったんだ?それにハリウッドゴジラなんて黒歴史を掘り返すなよ!!」 長門「静かに」 キョン「それに248対2はどうみても一発逆転のチャンスには見えん!!」 長門「これからがいいところ」 キョン「ハイ」 230 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 15:42:30.61 ID:3wjhTWmw0 - - - - - - - - - 阿鼻叫喚…超満員のスタジアムを、GODZILLAが蹂躙してゆく… マウンド上の喜緑江美里は、放心したように動かない… 試合に負けたことがよほどくやしかったのだろうか 朝倉『ああ、わたしにはどうすることもできないわ』 キョン『俺にまかせろ!!!』 朝倉『キョンくん!!きてくれると信じてた!大好きよ!』 キョン『ああ…手始めに…巨大化ァ!!!』 ゴゴゴゴ 朝倉『キャーすてき!!」 全長100メートルほどに巨大化してゆくキョン。 巨大キョン『GODZILLA!!お前は俺が倒す!!」 ビシッ - - - - - - - - - キョン「……何故俺が出ている…巨大化って何だ!?…しかも修造ばりに熱いし」 長門「……」ソワソワ キョン「ハイ」 231 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 15:43:19.91 ID:3wjhTWmw0 長門「……」ソワソワ ……ところで長門さん、何かソワソワしてませんか 長門「Water Closet」 ああ、2リットルもコーラを飲んだら、出ますよね、それにしても流暢な発音ですね - - - - - - - - - 朝倉『あれ長門さんトイレいくの?じゃあ休憩にしましょう』 巨大キョン『そうだな、長門が帰ってくるまで待つか』 GODZILLA『ウー!!ワンワン!!!』 巨大キョン『待つっつってんだろこのダボがああああ!』  ドゲシ ドゲシ ガッシ ボカ GODZILLA『キャワワワアン!!』 GODZILLA『クーン……クーン』 巨大キョン『長門が帰ってきたらトドメをさしてやるぜ、ルソー…じゃなかったGODZILLAよ』 232 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 15:44:52.22 ID:3wjhTWmw0 - - - - - - - - - キョン「えっ…ルソーって言った?今…ルソーって言わなかった?」 長門「ただいま」 キョン「ハイ」 - - - - - - - - - 朝倉『あっ、長門さん帰ってきたわ、おねがいキョン君』 巨大キョン『くらえGODZILLA、必殺のサオトメ流…』 巨大キョン『ジョンスミスクラッシュ!』 ガッシ!! GODZILLA『ヒギャワーン!!!』 巨大キョン『ジョンスミスドリル!!!』 GODZILLA『グベッ………』 巨大キョン『ジョンスミスダイナマイト!!!』 GODZILLA『…………』 233 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 15:45:50.31 ID:3wjhTWmw0 巨大キョン『ジョンスミスクラッシュ!!!』 GODZILLA『…………』 巨大キョン『ジョンスミスサイクロン!!!』 GODZILLA『…………』 巨大キョン『トドメだ…バァァルカンッ!!』 ダ ダ ダ ダ 巨大キョン『悪は滅びた!!!』 - - - - - - - - - キョン「……なあ、俺ってこんな人間に見られてたのか」 長門「あなたは涼宮ハルヒにとっての鍵」 キョン「ハイ」 235 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 15:47:47.54 ID:3wjhTWmw0 - - - - - - - - - ハルヒ『ちょっと待ったあ!』 朝倉『涼宮さん!!』 巨大キョン『よおハルヒ、遅かったな……敵はもう倒しちまったぜ』 ハルヒ『今あたしの宇宙的ヤマ勘が反応したのよ!世界は滅びる!!』 長門『何だってー(棒読み)』 ハルヒ『天元突破ギャラクシーゴジラが宇宙の涯からこっちに向かってるわ』 巨大キョン『何だと!?くっ……俺たちはどうすればいい!?』 朝倉『ただ滅びを受け入れよと言うの!?』 ハルヒ『まだ手は残っているわ』 ハルヒ『喜緑さんよ!!この世界を救えるのは喜緑さんしかいないわ!』 - - - - - - - - - キョン「……」 長門「……」 キョン「あの…俺ツッコミキャラなんで、ツッコミすらさせてもらえないのはきついっす」 236 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 15:51:26.18 ID:3wjhTWmw0 - - - - - - - - - ギャラクシーゴジラ『ゴジラーッ!!!』 ハルヒ『な……もう来てしまった!!!  喜緑さんは次のホワイトソックス戦の先発に備え休暇に入ってしまったというのに!!』 巨大キョン『もはや止める術はないのか?』 古泉『僕と朝比奈さんにまかせてください!!ふんもっふ!!』 みくる『がんばります!!世界の未来は…私たちの手で!!』 ギャラクシーゴジラ『ゴジラーッ!!!』 古泉『ぎゃあー』 みくる『きゃあー』 巨大キョン『何てことだ、古泉と朝比奈さんが活躍の場もなく食われてしまった!!』 237 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 15:52:54.43 ID:3wjhTWmw0 巨大キョン『こうなったら…やむをえん!最後の手段だ、ハルヒ!!』 ハルヒ『キョン、爆発するわよ!』 巨大キョン『ああ!!お前の宇宙的エネルギーを、俺に送り込め!!』 ハルヒが両手を胸の前に合わせ、人差し指をたてて、なにかの印をむすぶ… ハルヒ『臨 兵 闘 者 皆 陳 烈 在 前!!!』 ハルヒ『行くわよー!!エネルギー注入!!!カンチョー!!!』 巨大キョン『アッーーー!!』 ハルヒ『モイッチョー!!!』 巨大キョン『アッーーー!!』 - - - - - - - - - キョン「……もう……見てられない…」 長門「……」 キョン「ハイ」 240 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 16:02:06.14 ID:3wjhTWmw0 - - - - - - - - - 巨大キョン『爆発します』 ハルヒ『爆発しましょう』 ギャラクシーゴジラ『ハイ』                            __,,:::========:::,,__                         ...‐''゙ .  ` ´ ´、 ゝ   ''‐...                       ..‐´      ゙          `‐..                     /                   \         .................;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::´                      ヽ.:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.................    .......;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙      .'                            ヽ   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- - 241 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 16:02:26.63 ID:3wjhTWmw0 キョン「すまん長門、俺もう帰るよ……」 ションボリ 長門「……そう」 キョン「じゃあな、おやすみ」 バタン 朝倉『だめだこりゃ♪』 長門「おわる」 242 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 16:03:46.68 ID:3wjhTWmw0 支援&保守thx 三十分程度で書いた保守ネタです ハルヒ「キョン、爆発するわよ!」 テイク2.5も無理矢理了 245 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 16:47:15.83 ID:3wjhTWmw0 テイク3 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ !!WARNING !! 以下の内容には、死にネタ・鬱展開が含まれております 気分を害されるかもしれないのでご注意ください ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ まるで蛇足のようになってしまったけど、やはり投下します 今までの3つとは完全に別物と考えてください あとgdgd長いので、見たい人だけ見てください 247 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 16:49:14.17 ID:3wjhTWmw0 ハルヒ「キョン、爆発するわよ!」 キョン「……へ?」 ハルヒ「団長のあたしが爆発してやるって言ってるのよ!ちゃんと見ておかなかったら     ただじゃおかないわよ!」 …ハルヒの言う事為す事は、すべて突拍子もないことだ。 それは時に、この世界を滅亡の危機へと追いやることもあるが、 基本的に俺たちを賑やかで楽しい非日常へ誘うものだと思っていた。 キョン「…いやお前…何を言ってるんだ?」 ――この日、このときまでは。 249 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 16:50:32.58 ID:3wjhTWmw0 ハルヒ「ねえキョン、もしちゃんと見てなかったら、あたしあんたを一生呪ってやるわ」 キョン「見るって……何をだ?」 ――俺は甘かった。 ハルヒ「コレよ!ほら見て、キョン…あたしのアソコ」  ペラっ キョン「おい、ちょっと待て!何をしている!」 ハルヒ「……太いのが…ずっぽり入ってるぅ…あはは」 みくる「ふぇぇ…!?」 ――我らがSOS団長、涼宮ハルヒが自分のスカートをゆっくりと捲った、 その内側、すべすべして綺麗な肌、へその下のちろちろとした茂みのさらに下、 股間の女性器に、黒く太い円筒形の物体が、無体にも突き刺さっている。 251 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 16:51:50.67 ID:3wjhTWmw0 キョン「お、おいハルヒ、ハルヒお前、自分が何やってるのか…」 ハルヒ「わかってるわよキョン。ここに火をつけるのよ……」 カチッ ボッ シュルシュル 古泉「す、涼宮さん…それは」 ハルヒ「あたし、綺麗な花火になるわ…キョンのために」 長門「……エマージェンシー」 古泉「うわあああああああっ!!」 長門が専用席の椅子をガタンと倒し立ち上がり、それと同時に 古泉が血相をかえ、変な叫び声を挙げてハルヒに飛び掛かっていったのが見えた。 長門「…ダイナマイト…間に合わな……うかつ」 バーーーン!!!! 252 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 16:54:41.47 ID:3wjhTWmw0 ――何が起こったのか。 体全体…とくに胸に何か強い衝撃を受け、俺は後方へと吹き飛ばされた。 古泉の叫び声が途切れたように聴こえなくなった。 体中がじんじんと痛み出す。耳がキーンとしている。焦げ臭い匂いに、胃液が逆流しかけた。 キョン「な…何が、何だ、何が起こった」 俺は目を開けた。硝煙と埃がごうごうと立ち込める文芸部室の惨状が見える。 体がガクガクと震えだした。俺は目をこすり、あたりを見渡す。 「ぐぅ……うぇええあ…ふぇえええ…うげっ…あああ」 まず視界に入ったのは、床にうつぶせに倒れている朝比奈さんの姿だ。 そして、血。朝比奈さんは真っ赤に染まる床、いちめんの血の海の中に倒れている。 253 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 16:56:02.86 ID:3wjhTWmw0 キョン「朝比奈さん!」 俺は体を無理やり起こそうとして、ふと自分の体に誰かが寄りかかっていることに気づいた。 ショートカットの後頭部……長門?どうやら俺は長門を抱きかかえているらしい。 ここからでは表情がよく見えないが、ぴくりとも動かない。俺をかばってくれたのか? キョン「おい…長門、大丈夫…か?」 長門「……」 返事がない。気絶しているのだろうか。俺は長門を揺さぶった。 長門「……」 クルッ キョン「長門っ!!」 俺は長門がこっちを振り向いてくれたものだと思った。 あいかわらずの無表情、ぱっちりと開いた目がそこにあったからだ。 254 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 16:58:10.26 ID:3wjhTWmw0 キョン「起きれるか?おい長門、怪我は…」 長門「」 ドサッ キョン「なが」 俺は絶句した。 長門の小さく華奢な体が、俺の支えを失い、力なく床へと倒れていったのを見た。 …俺の血まみれの腕の中に、ちぎれた首だけを残して。 キョン「ひわあああぁぁぁああわああ!!」 俺の手の中の軽くなった長門の、瞳孔の開いた目と目があって、俺はよくわからない叫び声をあげた。 255 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 17:02:53.21 ID:3wjhTWmw0 キョン「長門ぉ!!長門ぉ!!」 かつてたたえていた深い光を失った目、かつて俺に噛み付いたことのある小さな唇、さらさらした髪の毛。 返事が来ないので、俺はしばらくの間、ひたすら長門の名を呼び続けていたように思う。 「ひぐっ……ひぐっ…うえぇぇぇ…き、キョン君……キョンくぅん…」 長門の首を抱きしめ取り乱す俺を、ふと我にかえしたのは、 うっすらと聴こえる、蚊の鳴くようなすすり泣き声だった。 「……うぇえええ、痛いよぉぉ…キョンくんぅ…げほっ…痛いよぉおお……」 キョン「朝比奈さん!!」 俺は立ち上がろうとして尻餅をつき、自分の腰が抜けていることに気づいた。 ぐっ…と無理やりに両腕両足に力を込めたところ、胸が急にズキズキと痛んだ。 ゴトン。 思わず、長門の頭部をとり落としてしまった。わき腹も痛い、肋骨が折れているのかもしれない。 朝倉に刺されたときの比じゃない。結局、俺は立ち上がることができなかった。 それでも俺は必死に、倒れている朝比奈さんへ這い寄った。ぬるい血だまりがじゃぼじゃぼと音をたてた。 257 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 17:04:55.34 ID:3wjhTWmw0 キョン「朝比奈さん!!朝比奈さん!」 みくる「ふぇええ…キョン君…どこ?キョン君助けてぇ………痛いよぉ…」 天使のように愛らしい先輩が、うつぶせに倒れている。メイド服が血まみれだ。 先輩の右手、肘から先、あの可愛らしいうさぎのような手が、もぎ取られたように無くなっている。 そして、どす黒く染まるスカートからのぞく右足もぐちゃぐちゃで、当初の面影を残していない。 キョン「あ…朝比奈さん!」 ビクビクと痙攣している彼女を抱き起こした俺は、息を呑んだ。 まだあどけない面影を残している彼女の顔の、いたるところに白い破片が刺さっている。 ……これはきっと、歯と骨だ。誰の!? みくる「……キョン君…キョン君なの?寒い…寒いよぉ…暗くてよく見えないよ」 キョン「あ、朝比奈さ…ぐ…がはっ!!」 美少女の顔に、俺の口から血がぽたぽたと滴り落ちる。折れた肋骨が肺に刺さったのだろう。 ……長門、せっかく身を呈してかばってくれたのにスマない、俺は間抜けだな、もう駄目みたいだ 朝比奈先輩、お茶とお弁当、おいしゅうございました。 あなたをこの手に抱きながら一緒に逝けるなんて、俺はどんなに幸せものなのだろう 258 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 17:06:53.79 ID:3wjhTWmw0 視界がかすむ。口の中が鉄の味で満たされている。 ――ガシッ!!…ガシッ…!!背後からドアを蹴る音が聞こえた いつハルヒに蹴破られるかひやひやしていたボロイ扉だが、衝撃のせいで歪み、頑丈になっているのだろう。 ――ガシッ!!…ガシッ………ガシッ!!……!!!! ドガッ!!とうとう寿命を迎えたドアから、一人の女生徒が飛び込んできた。 喜緑「皆さん!!長門さ……ああっ!!」 さきほどの血相を変えた古泉の奇声もそうだが、真っ青になった喜緑さんの上擦った声というのも珍しい。 喜緑「何てこと!……ああ、何てこと!!」 惨状を目にし、喜緑さんは自分の頭を両手でかかえ、顔を覆いを繰り返し、何度もそう叫んだ。 朝倉みたいに暴走したTFEIというものは見たが、取り乱すTFEIなんぞも初めてだな。 みくる「……キョン、君…さ……寒い、よ……怖い…どこにも…いかないで…」 喜緑「どうして!?…直接情報操作が効きませんっ…二人に応急処置をします」 生徒会書記、喜緑江美里先輩が、スカートの乱れるのも気にせず、床に膝をつく。 セーラー服のスカートが、上履きや靴下が、みるみるうちに、血に染まってゆく。 喜緑さんは先に朝比奈さん、次に俺の手をとり、がぶりと噛み付いた。 259 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 17:08:51.05 ID:3wjhTWmw0 喜緑「たった今、治療用のナノマシンを注入しました…」 そのまま脈を取っていた喜緑さんが、眉をひそめ、みるみる険しい表情になってゆく。 治るのか?安心していいのか?俺と朝比奈先輩は助かるのか? 喜緑「嘘……ナノマシン効率15%…何で?何で?ああ、脈が…ああ何てこと…」 みくる「…キ…ョン、君……あ、あたし…もう死…ぬ、その前、に…」 朝比奈さんお願いですから、死ぬなんてそんなこと、言わないで下さい、 もしかして、治らないのか?そうか、これは宇宙的パワーを越えた、ハルヒの仕業だから… みくる「あたし…ず、ずっと前、から…キョ…ンく、んのこと……好き、で」 苦しそうにこぼす言葉、その続きがぱたりと途絶え、痙攣が止まった。 朝比奈さん、その言葉、心の底から嬉しいです……もし二人、生きて帰れた日には、俺と… 260 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 17:10:01.39 ID:3wjhTWmw0 喜緑「チアノーゼ!!緊急救命措置をします、朝比奈さんから離れてください」 そう言われても、よける力もなく、俺は朝比奈さんを離し、背後に倒れた。 割れた蛍光灯、こげた天井に、黄色のカチューシャが張り付いているのが見えた。 ――ハルヒ? そういえば、二人?さっき喜緑先輩は、確かに「二人に」と…朝比奈さん、俺……長門は? 長門は放っておいて大丈夫なのか?古泉は?そして、ハルヒはどうなった? 喜緑「なんとか止血完了…気道確保、電気ショック!!心臓マッサージ…人工呼吸……」 視界の片隅、床の上に、見慣れたブレザーの上着が目に入る。 上着の切れ端と、下半身と、左肩と左手が見える。そこから右上半分は、無かった。 あれはかつてのSOS団副団長、ボードゲーム好き男子生徒の成れの果てだろうか。 あいつはハルヒを……いや、この場にいる全員を助けようとしたのだろう、 ほぼ間に合わないだろうに、万が一の可能性に命をかけて、ハルヒに向かっていったのだ。 逃げるそぶりさえ見せず。結果はこうなってしまったが、 俺の一番の男友達は、確かにそうしたのだ。 261 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 17:11:00.40 ID:3wjhTWmw0 喜緑「輸血……私の体の分では足りないわ、救急車!!救急車はどうしたんですか!!」 「言われなくても、今呼んでいる!!畜生!!はやくこい!早く!」 この声には聞き覚えがある。生徒会長だ。はは、いつもの冷静な仮面が剥がれていやがるな。 みくる「……うえっ!!はっ!!はっ!」 喜緑「……呼吸、心拍が戻った!私から直接輸血して、脈も多少安定してきました……救急車はまだ?」 止血のため朝比奈さんの傷口に結ばれているのは、自分のリボンと会長のネクタイだろうか。 さすが喜緑さん、朝比奈さんを助けてくれて、恩に着ます。どんなに感謝しても足りないでしょう。 でもどうやら俺は、肺に血がたまってきているようです、さっきから呼吸が苦しい。 このままでは溺れてしまう。意識がまるで坂を滑り落ちるように、遠のきそうになる。 俺のよく当たる勘が叫んでいる、――『やばい、このまま寝たら死ぬ』。 会長「おい喜緑くん!こっちの彼も危険だ!喀血しているぞ!」 喜緑「わかりました、肺の血を取り除きます、彼と朝比奈さんを廊下へ!会長手伝って下さい!」 262 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 17:12:08.45 ID:3wjhTWmw0 生徒会書記の先輩は廊下に運び出されて横たわる俺にむかって体をかがめ、 俺の唇に、その薄い唇を押し付けた。柔らかい感触、死に瀕した甘美な口付け。 とたん胸の中が吸引される感覚、先輩は口を離すとそっぽを向き、ブッと大量の血を吐き出した。 喜緑「…酸素を送り込みつつ、肺を仮修復します」 血染めの口をぬぐいもせず、もごもごと短い詠唱のあと、再び彼女は俺に口付けをする 舌が入ってくる感触、ディープキスなんて初めてだ。喜緑先輩、最期に素敵な思い出をありがとう。 と、空気を吹き入れられる感触が。きっと肺の中をナノマシンと酸素が満たしてゆくのだ。 喜緑「これで大丈夫です…肺の局部遮蔽および気圧調整、酸素生成を行うナノマシンを注入しました。    あなたも朝比奈みくるさんも、助かりますよ…あと少しです、頑張って下さい」 すごいです先輩、あなたは俺の命の恩人です。 キョン「…先輩、な、長門は…がはっ!」 …助かるんですか?と言おうとして、再び胸に鋭い痛みを覚える 喜緑「喋らないで下さい!長門さんのことなら大丈夫です……今は安心して下さい!     他の人もどうにかして助けますから!もうすぐ救急車がやってきますよ!」 263 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 17:13:03.88 ID:3wjhTWmw0 他の人を助ける?……先輩まさか俺に気を使って……いや、長門は本当に大丈夫なのか? 喜緑「…大丈夫です、あなたも必ず助かりますから、そのまま楽にしていてください」 ようやっとセーラー服の袖口で口をぬぐい、先輩は俺に微笑みをみせてくれた。 ニヤケ面副団長のようなイヤミのない、安心できる笑顔だ。 でも、朝比奈さんにむりやり輸血をして貧血を起こしているのだろうか、その顔は青白い。 そして俺は彼女の目尻に貯まって今にもこぼれそうな、汗でないものを見逃さなかった。 先輩バレバレです、鼻声になってますよ。握ってくれている手もブルブル震えています。 喜緑先輩は一見腹黒そうに見えて、本当は優しいし、こういうとき嘘をつくのだって実は苦手なんですね。 でも今は、今だけは「大丈夫」という、その言葉を信じることにしておきましょう。 ボトン。 喜緑「…ひっ!?」 喜緑さんが、驚いて目をむく。 一心不乱に救護措置をしてくれていて、今まで気づかなかったのだろう。 血まみれのセーラー服の肩に引っかかっていたそれが、俺の目の前に落下してきた。 誰かの、眼球。 俺の意識は、そこで途切れる。 265 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 17:16:37.19 ID:3wjhTWmw0 - - - - - - 川沿いの道を、桜並木を背に、俺は歩いていた。 ここは……朝比奈さんと一緒に、亀を放り込んだ川だ。 「キョン君」 背後から肩をポンポンと叩かれる。 「二人きりなんて、久しぶりだね」 そこには、小動物を思わせる小柄な可愛らしい先輩が、笑顔を浮かべて立っていた。 キョン「朝比奈さん」 みくる「禁則が解けてうれしいな。今日からは、ずっと一緒にいようね」 キョン「はい、俺も嬉しいです。どこにでも付き合いますよ」 みくる「あたし、キョン君のこと大好きです」 キョン「もちろん俺も、先輩のことは大好きですよ」 朝比奈さんが差し出したすべすべした右手を、俺は左手でとって、ぎゅっと握った。 266 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 17:17:35.46 ID:3wjhTWmw0 憧れの先輩と手を繋いで歩く。夢みたいだ。 どこか現実感がないくらい、キラキラと輝く水面に俺たち二人の影が映りこむ。 キョン「川向こうのデパートに、茶葉を買いに行きましょう」 みくる「はい…あっ、あれは古泉くんかしら」 川を挟んで向こうの道から、古泉が手を振っている。 ニヤニヤ…いや、あれはニコニコとした、屈託のないハンサムな笑顔だ。 橋を中ほどまで渡ったところで、向こうからやってきた古泉と合流する。 キョン「よう古泉、奇遇だな、俺たちもそっちへ行こうと思ってたところだ」 古泉「お二人そろってデートですか?涼宮さんに怒られますよ」 みくる「やっと禁則が解けたんですよ、だから、涼宮さんだってきっと許してくれます」 キョン「なあ古泉、今だけは許せ、そんなつまらないこと言わないでくれ」 270 名前:おさるでござるちょんまげマーチ中でした[] 投稿日:2008/10/12(日) 18:00:07.83 ID:3wjhTWmw0 古泉「そうですか、わかりました…朝比奈さん、あなた方の言葉でいえば     これも『規定事項』のうちの一つなのですね」 みくる「いえ、『規定事項』ではないんですが…あたしの意思で決めたことですから」 古泉「では朝比奈さん、彼のことを…しばらくよろしくお願いします」 みくる「ふぇ!?…は、はい」 古泉「そして、あなたには朝比奈みくるさんを大事にしてもらいましょう」 キョン「何だよいきなり、改まって……そんなこと、言われるまでもないだろう」 古泉「これからあなた達二人は、とてもとても大変な思いをしてゆくことでしょう。     でも、その意志と覚悟を、必ず最後まで貫き通してください。     どうか志半ばで力つき、夢破れた僕たちのためにも」 キョン「おいおい古泉、お前まさかSOS団を辞めるなんて言い出すんじゃないだろうな。     ハルヒはアレだし、長門は読書だし、朝比奈さんはお茶くみで忙しい。     だからな、俺の大切な暇つぶし、ボードゲームの相手はお前しかいないんだぞ」 古泉「そうですか、それはそれは嬉しいお言葉、ありがとうございます     ふふふ、今こそあなたのキメ台詞をいただき、こう言うべき時でしょう。    ……『やれやれ』、と」 271 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 18:00:57.79 ID:3wjhTWmw0 とたん、古泉の手が赤く輝き、例の光球がぼんやりと浮かびあがる。 古泉「ふんもっふ!!!!」 何を思ったのか。古泉の手を離れた光の球は、俺たちの足元に炸裂し、二人を吹き飛ばした。 みくる「きゃああ!!」 キョン「うおおっ!?何をする!」 川に架かっていた橋が崩れてゆく。あれではデパートに茶葉を買いに行くことができない。 古泉が涼しい顔をして、川向こうで手を振っている。なんてムカツク野郎だ。 キョン「まったく古泉め…訳がわからん……何てことしやがる」 みくる「!?…キョン君!あれ…」 川の上流から、物凄い勢いで水の壁が走ってくるのが見える。 唖然とする俺たちの前で、鉄砲水が、橋の残骸を押し流していった。 272 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 18:02:12.09 ID:3wjhTWmw0 超能力者の一撃がなければ、俺たちもアレに巻き込まれていただろう。 俺たち二人があっけにとられてその光景を見ていると、 キョン「……っ!?」 唐突に背後から、誰かが俺のブレザーの裾を引っ張った。 俺と朝比奈さんは、ほとんど何もない、がらんとした部屋にいた。 カーテンのない、大きなガラス張りの窓、その向こうには街の夜景が見える。 部屋の真ん中には、布団のないむき出しのコタツが。 そのコタツの向こうに、今にもとけてなくなってしまいそうなほど淡い髪色の、 ショートカットの少女が、背筋を伸ばしてちょこんと座っている。 長門「すべての責任は私にある」 みくる「長門さん…?」 キョン「おいおい、何を言っているんだ」 273 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 18:03:19.34 ID:3wjhTWmw0 長門「私はSOS団を守りきれなかった」 長門「……ごめんなさい」 訳が解らない、いきなり手をついて謝られても反応に困る。 俺は困惑し、朝比奈さんはおろおろしている。 おいおい長門、お前が土下座する姿なんて、生涯で見たくないもののトップ3に入るぜ。 長門「私の力不足」 ……お前がぼろぼろ悲しみの涙を流すなんて、さらにトップ2に入る悲しい光景だ。 何を言っているのかわからないが、お前の責任じゃないことは確かだぜ。 だから気にするな、そう言った俺の顔を、長門は意志を感じる無表情で見つめた。 長門「統合思念体は、あなたたちを決して見捨てない」 俺たちが言葉を差し挟むのを躊躇するほど、真剣な表情で長門は続ける。 長門「今後、地球上におけるあなたたちへの直接的サポートは、喜緑江美里が行う」 キョン「長門……お前」 長門「私には、別の任務が待っている」 長門「あなたたちを守る」 274 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 18:04:17.95 ID:3wjhTWmw0 長門「守る……今度こそ」 そう言った長門の背後の壁が、ぐにゃりと暗く歪んだ。 白い壁から、赤いものが染み出してきている。……あれは…血!? みくる「ひえぇ…長門さんのうしろ…」 長門「大丈夫、ここは情報制御空間、私の支配下にある」 続いて、青白い手が二本、壁紙のスキマから這い出してきた。 べちゃり…べちゃりと、グロテスクな肉片が積み重なり、次第に形をなしてゆく。 むき出しの眼球が、俺たちをジロリと睨んだ。 「見つけた……キョン……みくるちゃん…………」 あれは……まさか…… 長門「させない」 凛とした声が、がらんとした部屋に響き渡った。 俺はだんだんと、何があったのかを思い出してきた。 とたん、胸がズキズキと痛みだし、俺は立っていられなくなる。 そこで、俺の視界は暗転した。 275 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 18:05:04.96 ID:3wjhTWmw0 - - - - - - 「……目が覚めましたか」 何か夢を見ていた気がする。優しくて、切なくて、怖ろしい夢だった。内容は思い出せない。 俺がぼんやりと白い天井を眺めていると、不意にそんな声がかけられた。 キョン「ここは……どこだ」 「病院の個室です、昨年の12月に、あなたが入院していたのと同じところですよ」 そう言われてみれば、見覚えがある。 清潔そうなベッド、一定のリズムを刻む点滴、枕元に飾られた花。 窓のカーテンの隙間から日差しが入り、壁に波打つような影を映し出している。 キョン「あなたは……喜緑さん?」 喜緑「はい、喜緑江美里です。長門さんに代わり、あなたたちのサポートを申し付かりました」 ふわふわした髪の先輩が、ベッド脇の椅子にすわり、にっこりと微笑んでいた。 277 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 18:15:03.52 ID:3wjhTWmw0 喜緑「よかった……このまま目が覚めないかと思いました…もう一週間も」 キョン「長門…そうだ、長門はどう……ぐっ、痛ててっ」 俺は意識を失う寸前の、文芸部室で起きたことを思い出した。 起き上がろうとした俺を、先輩はあわてて制止した。 胸が刺すように痛み、言葉を中断せざるを得なくなる。 喜緑「無理をしないで下さい、あなたは三回も手術をしたんです」 キョン「……長門は、どうなったのですか」 俺がやっとの思いで声を搾り出すと、 喜緑「……」 先輩は暗い顔をして黙り込んでしまった。 そして、重い口を開くようにして、ぽつり、ぽつりと語りだす。 喜緑「……長門さんの地球上における肉体は、修復不可能なほどに破損してしまいました」 280 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 18:20:07.37 ID:3wjhTWmw0 キョン「でも…長門は普通の人間じゃない…」 喜緑「いくら私たちがヒューマノイド・インターフェースといっても、限度はあるのです……     肉体の生成にはそれ相応の、人間の人生一つ分の情報を代価として必要とします。     我々情報生命体にとって、命と情報の質量は等価なのですから」 キョン「……」 成る程、むかし朝倉が長門に対して執拗に物理攻撃をしていたアレも、きっと無意味ではなかったのだ。 俺は喜緑さんが何を言わんとしているのか、うすうすながら気づきだしていた。 言いづらそうではあるが、「長門は生き返らない」と伝えてくれようとしているのだ。 喜緑「長門さんは有機情報連結を解除され、その意志は統合思念体へと回帰しています」 なんとなく解る。有機生命体としては死んだが、情報として消滅した訳ではないといいたいのか。 喜緑「私たちが何故『インターフェース』と呼称されているのか、解ってください。     私たちは全にして個、私たちを通じて、統合思念体は常にフィードバックを受けているのです」 先輩は俺の手を握り、ゆっくりと俺にもついていけそうな速度で語ってくれている。 281 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 18:20:55.90 ID:3wjhTWmw0 喜緑「長門さんが我々に残してくれたものは、非常に大きかった」 握られた俺の手に、ぽたぽたと暖かい水滴が落ちた。 喜緑「私たちは今、有機生命体の死の概念を、はっきりと理解しています」 彼女は、泣いていた。 喜緑さんが泣き止むまで、20分ほどかかった。 看護師さんがやってきて、食事を持ってきてくれたが、どれも喉を通らなかった。 看護師さんは、焦らず柔らかいものから食べられるようになっていけばいいと言った。 喜緑「あなたに謝らなければならないことがあります」 再び彼女は顔を上げ、俺に向かってそう言った。 喜緑「皆さんを助けるから大丈夫、安心してくれと、私は嘘をつきました」 キョン「…いえ」 古泉も長門も、……あの状況を作り出したハルヒも、即死だったそうだ。 俺の命を助けるためについてくれた嘘だ、俺はあなたに、嘘を許して余りある恩を受けています。 286 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 19:02:37.24 ID:3wjhTWmw0 キョン「…朝比奈さん…は?」 喜緑「朝比奈みくるさんは、少し前に集中治療室から普通の病室に移りました。    ひどい怪我でしたが、命に別状はありません。数日前から意識もあります。となりの病室にいますよ」 いてもたってもいられず、起き上がろうとして、俺はふたたび喜緑さんに止められた。 どうやら動けるようになるまで、まだもう少しかかるらしい。 それに、朝比奈さんには「別の人」がつきっきりでお見舞いに行ってくれているようなので、大丈夫だそうだ。 「キョンくん!やっと目が覚めたのかいっ!?よかったねっ!!」 笑顔とともに俺の病室へと飛び込んで来たのは、その「別の人」、我らがSOS団名誉顧問、鶴屋さんだ。 鶴屋「あらら、お邪魔だったかなっ?」 俺と喜緑さんの手と手をとりあった状況を見て、鶴屋さんはニシシと笑った。 287 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 19:03:14.66 ID:3wjhTWmw0 鶴屋「キョン君も罪つくりな人だねっ……みくるが悲しむっさ!!」 本気なのかどうなのかわからないことを、この人はよく言うのだ。 鶴屋「ついでに、あたしも悲しんじゃおうかな」 俺の手に重ねられた喜緑さんの手の上に、鶴屋さんが手を置いて、そういった。 それはどういう意味なんでしょうね? ちなみに今回の出来事については、鶴屋さんは何も言わないでいてくれた。 鶴屋「えみりん、キョン君が目を覚まして、よかったねっ」 喜緑「はい、本当に」 - - - - - - それからしばらくたって、鶴屋さんが、 鶴屋「さあみくる、愛しのキョンくんにょろ」 みくる「……キョン君」 朝比奈さんの車椅子を押して、なんと俺の病室へと連れてきてくれた。 288 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 19:04:25.21 ID:3wjhTWmw0 朝比奈さんのあまりに痛々しい姿を見て、俺は体中の血が抜けてしまったようにめまいがした。 キョン「朝比奈さん……」 ぎこちない笑顔が、何重にもまかれた包帯の下に、半分以上も隠されてしまっている。 車椅子の下半身を覆うピンクのひざ掛けに隠された足元には、両足の先が見当たらない。 そしてぐるぐると包帯で巻かれた右手も、肘から先が見当たらない。 みくる「……そこにいるのね、キョンくん」 おずおずと傷だらけの左手が伸ばされ、宙を手探りするように、さまよう。 キョン「朝比奈さん…まさか、まさか……目が」 みくる「見えないの……キョンくん、手、つないで…」 …………天よ、何故かような運命を、このか弱き美少女に与えたもうか。 鶴屋さんが朝比奈さんの手をつかんで誘導したので、俺はあわてて自分の手を伸ばす。 鶴屋「みくるってば、寝言でも、起きてても、キョン君のことばかりだったんだよ」 みくる「キョンくん……痛いよ」 俺は知らず知らずのうちに、朝比奈さんの左手を強く握りすぎてしまったらしい。 289 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 19:05:31.28 ID:3wjhTWmw0 俺がそのことを謝ると、 みくる「ううん……でも嬉しい」 再び、弱々しい笑みをみせた。 その後、鶴屋さんは喜緑さんをつれて、ランチを食べると言い出て行ってしまった。 気を利かせて二人きりにしてくれたのだろう。 しばらく、他愛ない雑談をする。SOS団のことにも、あの出来事のことにも触れずに。 目が覚めた喜び、病院の食事のこと、花のこと、天気のこと 俺は喋るのも痛くて大変なので、ほとんど聞き役に徹していたが。 朝比奈さんも目が見えないので、ほとんど鶴屋さんたちから聞いた話だというが。 鶴屋さんが学校をずっと休んで付き添ってくれていること 喜緑さんが俺につきっきりで、やきもち焼きの生徒会長とケンカしたこと 朝比奈さんの、ぼろぼろになってしまった髪の手入れを、鶴屋さんがしてくれたこと 鏡を見ることが出来ないと嘆くので、俺は良く似合っていますよ、と言った 290 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 19:10:42.35 ID:3wjhTWmw0 たくさんのことを話し、いろいろなことを知り、気づいた。 俺の妹が、俺を起こそうと泣きながらボディプレスをしようとして、鶴屋さんにゲンコツをくらったこと 機関の人たちが病室を無償で提供してくれていること 泣きはらした目をした森さんを新川さんが介抱していたこと 国木田が谷口を説得して、二人で俺のためにノートをとってくれているということ 佐々木、橘、九曜、そしてなんと藤原までもが俺たちのお見舞いに来てくれたということ 喜緑さんと周防九曜との間に、いつのまにか和平友好条約が結ばれていたこと そうか、皆はこんなにも優しかったのだ 朝比奈さんの、握った手の感触が、俺に生きていることを実感させてくれる。 みくる「キョン君、あたし…お嫁にいけない体になっちゃった」 言葉がとまったとき、朝比奈さんがぽつりともらした。 俺は一年ほど前に朝比奈さんに言われた言葉を思い出す。 『もしお嫁に行けなくなるような事になったら……もらってくれますか? 』 言おうとした想いが、言葉が、俺の喉につまった。 キョン「俺は……」 292 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 19:15:58.59 ID:3wjhTWmw0 でも、吐き出した。あのときの朝比奈さんの、死に瀕したときの言葉が、脳裏をよぎったからだ。 俺も覚悟しなければならない。残されたもの同士、手を取り合って生きていかなければ、と。 キョン「……朝比奈さん、俺のところに…俺が一生そばにいます…     ……いえ、いさせてください、俺と、一緒に……」 そんな枯れた声に、いつのまにか戻ってきていた鶴屋さんが、目尻に涙を浮かべながら、 「キョン君、みくる、これから大変だねっ……あたしも、えみりんも力になるっさ」 と言ってくれた。 朝比奈さんは、悲しそうな顔をして笑っているだけだった。 - - - - - - 入院中のときのことを、少し話そう。 ――両親と妹は、俺の命が助かったことを泣いて喜んでくれた。 谷口と国木田は、キョンが学校に戻るのを待ってるんだぞ、といってくれた。 293 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 19:17:33.97 ID:3wjhTWmw0 ――佐々木がひとりでふらりと見舞いにやって来て、一時間ほど喋らず、俺の横に居た。 あの多弁な佐々木が、珍しいもんだ。 帰り際、ぽつりと一言「寂しいことだね」と言い残して去っていった。「また来るよ」とも。 ――消灯時間が過ぎたとき、突然藤原がやってきて、もう二度とこの時代には来ない、と言った。 俺だってうすうす感づいていたことだ。そう、朝比奈さん(大)が一度も顔をみせていない。 きっとこの歴史は、朝比奈さんの未来にも藤原の未来にも繋がっていないのだ。 ――橘京子が森さんと新川さんに連れられてやってきた。 橘はポロポロと涙をこぼし、俺たちの状況を嘆いてくれた。力になるとも言ってくれた。 もう敵対する理由もない。こいつだって、芯から悪い奴では無かったのだな。 294 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 19:18:40.65 ID:3wjhTWmw0 ――喜緑さんはとうとう会長と別れ(実際に交際していたと聞いた)、しかも学校までやめてしまったらしい。 あれからずっとかいがいしく俺の世話をしてくれており、何故そこまでしてくれるのか 俺が尋ねたところ、「統合思念体の総意です」という言葉が返ってきた。 ――生徒会長は一度だけ見舞いに来たが、俺が命を助けてもらったときの礼を言うと、苦笑いをして、 彼は「古泉に免じて、お前を許す」と言った。そして目を瞑り一分間ほど黙り、「頑張れ」と言って去って行った。 新しい生徒会書記には、なんとうちのクラスの阪中が就任したらしい。 ――鶴屋さんは学校を休学しており、朝比奈さんと俺に「いっしょに学校に戻ろう」と言ってくれた。 とはいえ俺たちの復学のめどはたたず、困ったものだ。 ――あるとき、谷口が見舞いにきて、漫画雑誌を置いていった。 よくある、見開きのグラビアの載ってるやつだ。 一人の生活がご無沙汰だった俺は、それにムラムラっと来てしまい、ベッドで悶々としていた。 そんな俺に、喜緑さんが意地悪そうな笑顔で「手伝いましょうか」と耳打ちしてきた。 俺は「すみません」と言って、その後のことは、禁則事項だ。 ――やがて俺は少しずつだが歩けるようになり、 車椅子の朝比奈さんと一緒に(鶴屋さんと喜緑さんも一緒だが)リハビリをかねて散歩する毎日だ。 295 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 19:19:56.61 ID:3wjhTWmw0 ……古泉、長門、ハルヒのことは、なるべく思い出さないようにしていた。 あの出来事のことも、それ以前、楽しかったSOS団のことも…… 思い出すたびに、治りつつあるはずの胸が、ズキズキと痛むのだ。 - - - - - - 俺は毎日、朝比奈さんと、いろいろなことを話した。 季節のこと、食べ物のこと、友人たちのこと、音楽のこと、たくさんのことを。 目の見えない朝比奈さんは、何かあるとすぐに不安がり泣き出してしまい、 「こんな私に」「ごめんなさい」を繰り返し、 時には「死にたい」「生きているのがつらい」、「私のことはもう放っておいて」という事もあった。 俺と二人きりのときは、「未来に帰りたい」と、よく泣きながら訴えてきた。 どうやらTPDDが消滅してしまったらしい。帰還どころか、通信すらもできないようだ。 296 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 19:21:00.65 ID:3wjhTWmw0 俺は鶴屋さんや喜緑さんと、ああでもないこうでもないと、 朝比奈さんを元気付けるにはどうすればいいか、毎日話し合った。 鶴屋さんは「キョン君がそばにいてあげるのが一番っさ」と言った。 ある日、二人でいたとき、何気ない会話が何故かぴたりととまった。 俗に言う「天使が通った」というアレである。 しばらくして、朝比奈さんがぽつりと俺にこう言った。 「キョン君、あの時わたしが言ったこと、覚えてる?」 俺が迷わずに「もちろん覚えていますよ」と言うと、朝比奈さんは 「お願い、忘れて」 と言った。俺は即答する。 「できません」 304 名前:エテモンキーズアタック[] 投稿日:2008/10/12(日) 20:01:24.69 ID:3wjhTWmw0 朝比奈さんは涙をポロポロとこぼし、「でも……」と何かを言いかけた。 俺はその朝比奈さんの唇を自分の唇でふさぎ、続きを言えなくした。 朝比奈さんは俺に何をされたかわかったようで、布団をかぶってわんわんと泣き出してしまった。 「キョン君に、またお茶をのんでもらいたい」 次の日、集まった皆の前で、朝比奈さんはそう宣言して、 「だから、できるだけ元気になりたい」 と、笑顔でことばをつづけた。 鶴屋さんは俺にウインクすると、「キョン君、ありがとねっ」と言った。 306 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 20:02:26.34 ID:3wjhTWmw0 - - - - - - 退院するときに、俺はもう一度、朝比奈さんにキスをした。 朝比奈さんはまた泣いてしまい、俺の手をぎゅっと握って、しばらく離さなかった。 見ていた鶴屋さんは照れてしまい、「にょろ〜ん」と言った。 俺より重症だった朝比奈さんは、退院できるようになるまで、あと一ヶ月以上かかるらしい。 もちろん彼女の復学は不可能。退院しても、リハビリや社会復帰の練習に追われる毎日だろう。 毎日お見舞いに来る約束をして、俺と喜緑さんは病院をあとにした。 本当に申し訳ないことだが、俺一人では持ちきれない荷物の半分を、喜緑さんが持ってくれている。 人の居ないバス停で、やがて来るであろう都市バスを待ちながら、俺は言った。 キョン「喜緑さん、ありがとうございました。俺……明日から、学校に行ってみようと思います」 喜緑「はい、それがよいでしょう」 長門が身を呈して俺を守ってくれなければ、きっとこれだけのケガでは済まなかったことだろう。 長門のくれた時間だ、せめて朝比奈さんが退院するまでの間、俺はあの出来事に向き合うことにした。 喜緑「私は明日から、朝比奈みくるさんのお世話をしに、病院へ戻ります」 307 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 20:03:16.93 ID:3wjhTWmw0 鶴屋さんも学校を休みすぎて、卒業が怪しくなってしまっているらしい。 そんな訳で、俺の世話を終えた喜緑さん(高校中退)と、明日からバトンタッチということだ。 朝比奈さんのお見舞いに行けば会えるのだが、一応は喜緑さんとはしばらくお別れということになる。 キョン「……」 喜緑「……」 言うべきことが尽きてしまった。涼しい風が俺たちの間を吹きぬける。 俺の命を救ってくれた人だ。ずっとそばで一緒にいてくれた人だ。世話をしてくれた人だ。 相変わらず、いつものやわらかい笑みをうかべ、こっちを見ている。 喜緑「……どうしました?」 キョン「……あ、いえ」 観察対象が消滅した今、もしすべての役割を終えたなら、この人はどうなるのだろうか。 俺は思わず感極まり荷物を取り落とし、目の前の女性を、ガバッと抱きしめてしまう。 キョン「……本当にありがとうございました」 喜緑「いえ……これからも、よろしくお願いします」 俺たち二人の口から出た言葉は、そんな色気の無いものだった。 308 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 20:04:19.06 ID:3wjhTWmw0 バスを待つ俺たちの横に、突然、黒塗りのタクシーが止まった。見覚えのある車だ。 新川「おやおや、私も覗き見とは、野暮なことをしてしまいましたな」 突如あらわれた新川さんは、俺たちを家まで送ってくれるという。 俺はありがたく受けることにして、かさばる荷物をトランクに入れてもらう。 乗り込んだ後部座席には、大きな封筒が置いてあった。 封筒の中には、ゴツゴツとした、おそらくバインダーと思われる感触のするものが入っている。 新川「それは資料です、うちの森から、あなた方に渡してくれと」 ハンドルを握りながら、新川さんはバックミラーごしに、俺たちにそう言った。 妹「キョン君、おかえりー」 両親と妹は、安心した顔で、俺の帰宅を迎えてくれた。 309 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 20:05:21.70 ID:3wjhTWmw0 妹「ねえ、えみりお姉ちゃんってさ、いつキョンくんと結婚するの?」 この言葉がもし、あの出来事の前に発せられたものであったなら、 俺はいつものたちの悪い冗談だと流していたことだろう。 だが、こう言った妹の顔は、身近な女性を二人も失った俺を心から案じてくれたものに見えた。 キョン「……なあ、俺が将来誰と一緒になりたいのかどうかは、俺が決めることだぞ」 俺が妹の耳元でそう言うと、妹は複雑な苦笑いともつかぬ表情を浮かべた。 もしかすると、喜緑さんがこいつに変なことを吹き込んでいるのかもしれん。 喜緑さんは相変わらずニコニコと、笑顔を浮かべているだけだったのだが。 両親と妹は、喜緑さんとおしゃべりがしたくてたまらないらしい。 だが、俺は喜緑さんと話すことがあると告げ、二人で二階の自室へと行った。 新川さんに渡されたファイルに、目を通さなければならない。 俺と喜緑さんは、「極秘、閲覧した後は必ず消去すること」と書かれたバインダーを開いた。 310 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 20:08:42.83 ID:3wjhTWmw0 キョン「………『ガス爆発』…!?」 ――森さんが集めてくれた資料によると、あの日の出来事は、 『機関』と思念体によって「ガス爆発」であるという情報操作が行われているそうだ。 県立北高校、文芸部に所属する生徒三人が死亡、二人が重症。 新聞やテレビでも、かなり騒がれていた。 DVDプレーヤーの画面には、黄色いテープで封鎖された無残な文芸部室の姿が映し出されていた。 資料には森さんによるメモや注釈も付随されている。 校長を含む学校側の管理責任者が更迭されたそうだが、『機関』のはからいに よって彼らが刑事責任を問われることはないし、今後の生活にも困ることはないという。 ハルヒの持ってきたダイナマイトは、学校からかなり離れた工事現場から盗んだものらしい。 そっちの責任者の方には、機関によって秘密裏に「制裁」が下されたそうだ。 とはいえハルヒのとんでもパワーによる窃盗なので、責任を問うのも可哀相かもしれない。 その不思議パワーの元凶、涼宮ハルヒが消滅したというのに、 何故か『機関』の超能力者たちはその力を失っていないという。 世界中に超能力者たちの入れない『特殊な閉鎖空間』が存在し、固定化されているそうだ。 311 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 20:13:00.94 ID:3wjhTWmw0 俺はとなりで一緒にファイルを覗き込んでいる喜緑さんに、このことを確かめてみた。 喜緑「涼宮さんの『力』は、肉体という器を離れ、観測が不可能なほどに拡散しています」 喜緑さんの話によると、ハルヒという器を失った『力』――台風の目のような――の行方が解らないので、 統合思念体と天蓋領域は、強大な情報爆発の中でお互いに生き残るためにも、一致団結したらしい。 思念体たちのはからいで、古泉のいた『機関』と橘の組織が和解、協力体制を取ったという。 どのような悲しい出来事の結果であるにせよ、平和が一番なので、俺は少しだけホッとした。 残るは、未来人―― 未来人たちは、あれ以来、(朝比奈さんと藤原を除き)一切その姿を見せていないという。 俺たちの未来に何が起きるのか、あの出来事が未来にどんな影響を及ぼしたのか、 それは完全に闇の中であり、推し量ることも難しいようだ。 これから先、あんな悲しむべきことは二度と起きて欲しくはないのだが。 312 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 20:15:16.43 ID:3wjhTWmw0 そして、読み進めていくと、レポートはついに、あの出来事の核心へと迫っていった。 つまり、ハルヒが何故、あんなことをしたのか。俺はバインダーを閉じ、深呼吸する。 ……これは正直言うと、俺がもっとも触れたくないことであり、心当たりはないものの… というのは、『もしかすると俺のせいではないか』という恐ろしい考えが、 ほんの少しでも気を抜くと容赦なく、無防備な俺の心をギシギシと締め付けてくるからだ。 ……ともすると、もの凄い罪悪感とともに。 ――俺は意を決して、ふたたびファイルを開いた。 読み終わった後、俺は泣いていた。 目からボロボロと零れ落ちる涙は、どんなに止まれと念じても、止まらなかった。 アレが俺のせいなのかどうかは、わからない。いや、確実に俺のせいなのだろう。 313 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 20:16:42.48 ID:3wjhTWmw0 俺は、ハルヒが……あいつが俺に好意を寄せていることをうすうす、いやはっきりと知っていた。 ハルヒのやつが、その胸のうちにあるものを恋愛感情だと気づいていないということも、知っていた。 あなたたちには言い訳がましく聴こえるかもしれないが、 せめて言い訳をさせてくれ……ひとりで背負うには辛すぎるんだ…… だが、言葉を変えよう、あいつはソレを恋愛感情であると定義しないほうが良いと考えていたんだ。 もしそう定義してしまえば、何が失われてしまうのだろうか。 ――『SOS団』。高校時代の、かけがえのない時間を失う、とハルヒは考えていた。 ハルヒがいつも『恋愛は精神病、一時の気の迷い』と言っていたのも、筋が通っている。 もし俺と交際するとしても、高校時代をまるまる使って、自分の気持ちを見極めてからにすべき。 それは中学時代に何人もの異性をとっかえひっかえして得た、あいつなりの結論であり、意志なのだ。 ハルヒは自分以外の二人の女子が、俺に対して好意を持っていることも、知っていた。 どうして俺がこれまで「ハルにゃんにおいた」しなかったのかは、そのせいだ。 何故俺がそんなことを知っていたのか、って?いや、ずっと前から、とっくに気づいていたのさ。 それに「ハルにゃんには秘密だよ」と裏付けをくれたのは、鶴屋さんだったのだが。 314 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 20:17:41.39 ID:3wjhTWmw0 そして俺もまた、そのハルヒの気持ちを、先回りして受け入れたときに何が起きるのか、 それについて何度も悩んでいたんだ。何十回も、アイツに会うたびに。 モノローグにこそ出すことはなかったが、な。 ここまでの打算を持って人と付き合うなんて、嫌でしかたないから、隠してただけさ。 俺が本当に誰のことを好きだったのか…… ブリダンの驢馬のように、何人もの美女を前にフリーズしていたのかと皆は思うのかもしれない。 確かに朝比奈さんのことも、長門のことも、ハルヒのことも、俺は好きだった。 俺があえてハルヒを恋愛対象として意識しないようにしていた、という理由も大きいかもしれん。 俺は、特定の異性との関係を、他の全てを投げ打ってまで手に入れるべきでない、と思っていた。 人間関係とは、ふとしたバランスで崩れてしまう、あいまいなものだ。 磐石な関係なんてありはしない。ほんの少しのすれ違いで、全てが変わってしまう。 俺もハルヒも、それを望んでいなかった。それだけのことだ。 そんな絶妙なバランスが、とある要因によって無理やりに崩されてしまった 320 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 21:07:11.76 ID:3wjhTWmw0 森さんの報告書によると、一人の男が、今回の事件の直接原因だった。 SOS団にとっては外的な要因――そいつは、俺の知らない、ハルヒの元彼のひとりだ。 中学時代のハルヒとそいつとは、けっこう長い間、良好な関係が続いていたそうで、 一方的にハルヒに振られたその他の「元彼」とは、多少事情が違っていたらしい。 ふたりの仲がこじれた責任は殆どがハルヒにあったそうで、 あの傍若無人なハルヒが罪悪感で追い詰められるほどだったそうだ。 SOS団と出会い、そいつのことをすっかり忘れていたハルヒが、突然そいつと再会した。 あの部室での出来事の一ヶ月ほど前、ホテルから出てくる二人が、『機関』のエージェントに目撃されている。 その最中やその後、二人の間に何があったのかは誰も知らない。 『元彼』は文芸部室でのあの出来事の前日、死体で発見されている。自殺なのか他殺なのかは、不明。 この過程のどこかで、ハルヒが正気を失うほどの何かが起きたことは、確かだ。 俺は沸きあがる悲しみと怒りと情けなさに、声を上げて泣いた。 あれから一度も、俺は泣いてはいなかった。どこか…いや、何もかもが麻痺していたのだ。 失ったものの、あまりの大きさに、ハルヒに、長門に、古泉に。 朝比奈さんの悲劇に。 ハルヒの身勝手さに、俺の身勝手さに。裏目に出た信条に、めぐり合わせの不幸に。 321 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 21:08:11.74 ID:3wjhTWmw0 また、俺の涙がとまらないのには、もうひとつ理由がある… ――皆の優しさ、だ。 妹「キョンくん、ご飯できたけど……大丈夫?ごはん食べられる?」 妹が呼びに来るまで、喜緑さんは、泣き叫ぶ俺の背中を、ずっとやさしく撫でていてくれた。 323 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 21:13:12.65 ID:3wjhTWmw0 - - - - - - 気づけばすでに朝だった。 妹のフライング・ボディプレスが俺に炸裂し、俺は貴重な休日の朝の時間を、悶絶しながら過ごすはめになった。 まあ、休日とはいっても、今日は不思議探索の日だ。 まったく、学業に疲れた高校生に、少しはダラダラと過ごす休息の時間を与えてくれたっていいものを。 ハルヒ「遅い!死刑!」 みくる「ひぇえ、涼宮さん〜」 俺が駅前の待ち合わせ場所に到着すると、そこにはハルヒと朝比奈さんがいた。 ひどいなハルヒ、いきなり死刑かよ、俺が何をしたっていうんだ。 キョン「遅いって何だよ、待ち合わせの時間までには三十分もあるし、まだ古泉と長門が来ていないだろう」 324 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 21:14:56.86 ID:3wjhTWmw0 ハルヒ「今日は有希と古泉くんはお休みよ、用事が入ったんだって」 だからキョン、観念しなさい、死んだほうがマシだっていうくらいの罰を与えてやるんだから、と ハルヒは俺に言った。 おかしいな、表情を見る限り上機嫌に見えるが、テンションが上がってるのだろう。 はてさて、喫茶店で全メニューを奢りとかは勘弁してほしいな。ただでさえ幸薄い俺の財布がますます薄くなる。 ハルヒ「今日は三人で回るわよ!全員、不思議を見落とさないようにしなさい!」 団長様は俺たちの手を両手でむんずと掴み、引っ張っていく。こいつが一緒だと、気を抜く暇がない。 ああ、これがマイスウィートエンジェル朝比奈さんと二人きりなら、殺伐としたココロがどれほど休まることか。 俺も朝比奈さんも、ずんずんと進むハルヒについていくのがやっとだ。 327 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 21:18:10.39 ID:3wjhTWmw0 最初に音を上げたのは、やはりか弱き女性であるところの朝比奈さんだった。 みくる「涼宮さん〜、あたし……もう足が疲れて」 ハルヒ「もう、みくるちゃんってば、だらしないわね!!」 なんてことだ、ハルヒのやつ、さらにスピードを上げやがった。 みくる「ひゃああ!!」 とうとう朝比奈さんは足をもつれさせて転倒し、足をひねってしまった。 ハルヒ「何してるのよみくるちゃん、まったく駄目駄目じゃない!ちゃんとしないと、死刑よ!」 キョン「おいハルヒ、何て無茶をしやがる」 俺は思わず大声をあげた。 ハルヒ「うっさいわよキョン!!これは大切な不思議探索なのよ!!」 キョン「やりすぎだ!ちょっとは他人を労わろうという気持ちがないのか!?」 329 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 21:20:00.66 ID:3wjhTWmw0 ハルヒ「なによ、やけにみくるちゃんの味方をするわね」 ムスッとするハルヒを尻目に、俺は朝比奈さんに肩を貸して、近くのベンチに連れて行った。 みくる「ありがとう、キョン君…」 ハルヒはその間中、ずっと俺たちのことを睨んでいた。 まずい、これはそうとうゴキゲン斜めだ。一体何があったというのだ。 ハルヒ「……あんたたち、もう付き合っちゃえば?」 はぁ?突然何を言い出すんだ。 ハルヒ「みくるちゃん、正直に言って。キョンのこと好きなんでしょう」 みくる「ええ!?…い、いえ、違いますぅ、そんなことは…」 ハルヒ「嘘ついたら死刑よ」 331 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 21:22:26.90 ID:3wjhTWmw0 一瞬、朝比奈さんはビクリと震え、おずおずと言葉をつなげた みくる「は、はい、確かに、キョン君のことは好きですが……」 ハルヒ「よろしい」 みくる「でも、あたしは」 ハルヒ「黙りなさい」 みくる「……」 ハルヒはこちらを振り向いた。満面の笑みだ。だが油断はできないぞ…何を考えているんだ? なんてことだ、朝比奈さんの気持ちは天にも昇るがごとくに嬉しいが、いかんせん状況が悪すぎる。 ハルヒ「キョンも、みくるちゃんのこと好きでしょう」 キョン「あ……ああ」 ハルヒ「おめでとう、SOS団初のカップル成立ね!」 呆然とする俺たちを見ながら、ハルヒは手をパチパチと鳴らし、大きな声で宣言し、笑っていた。 333 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 21:24:34.32 ID:3wjhTWmw0 ハルヒ「じゃあ、お祝いしないとね、こういうのは何事も早く済ませたほうがいいのよ」 仁王立ちに腕組みし、にこやかな笑顔で、ウンウンと頷くハルヒ。 突然、辺りが暗くなった。地面、空、雲、街路樹、ベンチ、建物… それら全てが、灰色一色になってしまった。ここは見覚えがある…閉鎖空間!? ハルヒ「忘れたとは言わせないわ、SOS団内での恋愛は厳禁、あたしの定めたルールを破ったから、」 ハルヒ「死刑よ」 ―――空気が、変わった 334 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 21:25:52.01 ID:3wjhTWmw0 ――なんてこった、そんなルール知らんぞ、いつ決めたんだ!? なんてツッコミが通るはずもなく。 キョン「逃げましょう朝比奈さん!!」 みくる「ひ…ひぇええぇぇ……」 このとき、俺は全てを思い出していた。病院で寝ているときにも、同じことがあったな。 『死んだほうがマシだっていうくらいの罰を与えてやるんだから』 ゼエゼエと喉が鳴る。 ハルヒのさっきの言葉が、冗談などではないと、俺の第六感がゾクゾクと警告してきている。 『ちゃんと見てなかったら、あんたを一生呪ってやる』 あの時の宣言だって、嘘じゃなかったんだ。俺の背中に、滝のように冷や汗が流れだした。 とっさに朝比奈さんを背負って、俺はその場から離れようと、走り出した。 さすがに人をひとり背負って走るなんて、あまりにきつい。 あいつ……ハルヒのやつ、本気で俺たちを死刑にするつもりだ! ああ、必死に走っても走っても進まない、 なんてこった、地面がベルトコンベアーみたく動いていやがる!! 336 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 21:27:13.78 ID:3wjhTWmw0 みくる「キョン君!!あたしを置いて逃げて!」 朝比奈さん、せめてあなただけでも助けたい…守らなければ、どうすべきか、どうすべきか みくる「あ、あ、…キョン君…」 とたん朝比奈さんの右手が、両足の先が、黒く変色し、ボロボロと崩れていった。 彼女が現実世界で失ったものが、あの出来事を思いだしたせいだろう、どんどん失われてゆく。 ハルヒ「ほんとあんたたち、何をやらせてもダメね      みくるちゃんかわいそうに、眼が見えないの?」 無常にも、逃げられない俺たちの背後にずっと立っていたハルヒが、俺たちの肩に手を置いた。 ハルヒ「キョン、あれほど言ったのにちゃんと見てなかったなんて、極刑ものよ。      あんたのだって、そんな役にたたない目なんて、いらないわよね」 白く細い指が、スッと俺の目の前に差し出された。 その指は、ためらう様子などカケラも見せず、俺の右目へと直接に突っ込まれた。 341 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 21:49:41.26 ID:3wjhTWmw0 キョン「ああああ」 渇いてカラカラの喉は、まともな悲鳴すらあげさせてくれないらしい。 俺はハルヒの手をを思い切り振り払い、その華奢な体を突き飛ばした。 みくる「きゃあああ!!」 背負った朝比奈さんごと弾き飛ばされたのは、俺のほうだった。 ハルヒ「まったく、団長に逆らおうなんて、百万年早いのよ」 ゆっくりと近づいてくるハルヒ。 俺は痛みをこらえ、血がぬるぬると出ている右目をかばいながら、朝比奈さんを探した。 みくる「ひぃ、い、ひいぇえぅう」 そばに倒れている朝比奈さんの体には、いつのまにか沢山の蛆虫が喰らいついていた。 このままでは万が一ハルヒから逃げられたとしても、すぐ閉鎖空間から出なければ、まず助からない。 おいまさか、このハルヒは自分の力を自覚してやがるんじゃないか? どうすべきか、どうすべきか、俺に出来ることは……何だ? 力……自覚… 342 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 21:50:34.97 ID:3wjhTWmw0 ――そうだ、一つだけ、ひらめいた。 これが効くかどうかわからんが、一か八か、試してみるしかない…… キョン「なあハルヒ」 ハルヒ「なによキョン」 キョン「……お前に言っておくことがある」 ハルヒ「下らないこと抜かしたら、死刑じゃすまないわよ」 キョン「世界を大いに盛り上げる……ジョン・スミスを、よろしく」 ハルヒの目が見開かれ、歩みが止まった。 ハルヒ「……まさか…あんたが……?」 344 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 21:57:51.98 ID:3wjhTWmw0 ハルヒ「ねえキョン、あんたが?……あの……ジョン・スミスだっていうの?」 頼むハルヒ、正気に戻ってくれ。 俺は枯れた喉から必死で、俺とハルヒとの思い出をぽつりぽつりと語った。 あのときは楽しかったよな、お前だって、けっこう楽しんでいたじゃないか…… 秋だっていうのに桜が咲いて、映画を撮って、お前は長門とバンドをやって ハルヒ「……そう、やっぱりあんたが、あたしの運命の人だったのね」 俺の前で立ち止まるハルヒ、その両目はドス黒く、完全に瞳孔が開いていた。 ハルヒ「それならなおさら、みくるちゃんには渡せないわ、よ」 とつぜん地面がグニャグニャと脈動し、黒い影がいくつも立ち上がった。 345 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 21:59:57.94 ID:3wjhTWmw0  「キシシシシ」           「キシッシシシッ」 気づいたときには、俺たちは見るも恐ろしいバケモノにかこまれていた。 ハルヒ「キョン、あたしと一緒に来なさい、団長命令よ」 カマドウマとカマキリとゲジゲジとゴキブリを足して四で割ったようなやつらが4匹、 二十本はありそうな足の関節をギシギシならし、俺たちを取り囲んでいる。  「キシシシシ」 「……………」 「キシッシシシッ」     「キッシシシシ」 ハルヒ「見てキョン、すごいでしょ、これが新しいSOS団よ!みんなただの人間じゃないの」 もう駄目だ。 346 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 22:01:35.14 ID:3wjhTWmw0 完全に手に負えない。切り札も尽きた。 俺は呻き苦しみ続ける朝比奈さんを腕に抱いて、無事な左目でハルヒを睨みつけた。 ――その時だった。 バケモノのうちの一匹がゆらりと動き、まるで俺たちを庇うように、ハルヒの前に立ちふさがった。 「サセナイ」 他のバケモノより一回り小さいそいつは、腕だか触手だかよくわからないものを振り回し、 俺たちを取り囲んでいる怪物たちを一匹、また一匹と屠っていった。 「ワタシガマモル」 キョン「えっ!?」 ハルヒ「…………っ!!何よ!!アンタ、まだ逆らうつもりなの!?」 驚愕した表情を浮かべるハルヒに、小さなバケモノが勇敢にも、飛び掛っていくのが見えた。 そこで、俺の視界は暗転した。 350 名前:>>348は間違いです、訂正[] 投稿日:2008/10/12(日) 22:10:36.50 ID:3wjhTWmw0 - - - - - - ――目が覚めて、汗でシーツがぐっしょりと濡れていることに気づいた。 時計を見ると、朝方の4時半だ。カーテンの隙間から、朝日が少しずつ部屋に差し込んできている。 内容は思い出せないが、ひどく恐ろしい夢を見ていたような気がする。 右目がズキズキと痛い。 ふと右手に何かあるやわらかい感触に気づき、そちらを見やると、喜緑さんがいた。 俺の手を握ったまま、ベッドの脇に突っ伏した状態で、すやすやと寝息を立てているのが見えた。 どうやら昨日の俺は泣きつかれて、晩飯も食わず、そのまま眠ってしまったらしい。 目を覚ました喜緑さんと目が合って、俺たちはバツの悪そうな顔で笑いあった。 右目が痛くてたまらないので、学校に行くのは明日にして、病院へ行くことにした。 ついでという訳ではないが、朝比奈さんの見舞いにも行きたい。 352 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 22:15:00.35 ID:3wjhTWmw0 喜緑さんに俺がその旨を伝えると、彼女はそのキャラからは思いがけないような言葉を俺に言った。 喜緑「あなたは朝比奈みくるさんと生涯を共にするつもりなのですね」 キョン「ええ」 俺ははっきり、そのつもりだ、と言った。 朝比奈さんは生涯に影をおとすほどのケガを負い、未来にも帰れなくなり、 天涯孤独の身となってしまった。だから将来俺が手に職をつけたら、一生支えてやる、そう思っていた。 喜緑「……」 目の前の先輩は、どこか寂しそうな、困惑したような表情を浮かべている。 俺がどうしたのかと尋ねると、 喜緑「……いえ、何でもありません」 と答え、いつもの笑顔に戻った。だが、その表情にはどことなく陰りがあった。 しばらくして、俺たちはバスに乗り、病院へとやってきた。 眼科医に俺の右目を診察してもらったのだが、何の異常もないという。 痛み止めをもらい、朝比奈さんの病室へと向かった。 そこには、制服姿の鶴屋さんがいた。今日は来ないはずじゃなかったのか。 353 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 22:18:26.50 ID:3wjhTWmw0 鶴屋「やあキョンくん、えみりん、おはよう」 俺が「学校はどうしたのですか?」ときくと、鶴屋さんは「なんだか突然、みくるが心配になってさ」と答えた。 キョン「おはようございます鶴屋さん。……朝比奈さんは、まだ眠っていますね」 鶴屋「どうしたんだろね、みくる……今日はずっと目を覚まさないのさ」 SOS団名誉顧問、鶴屋さんは、心配そうな目でベッドの上の朝比奈さんを見ていた。 鶴屋「残念だけど、もうあたし、学校いかないと!  ……キョンくん、えみりん、あとはよろしくね!放課後、またここに戻ってくるからさっ!!」 俺たちにそういい残し、鶴屋さんは病室を出て行った。 俺と喜緑さんは、朝比奈さんが目を覚ますのを待つことにした。 354 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 22:19:42.75 ID:3wjhTWmw0 何時間たったのだろうか。 痛み止めのクスリを飲んだおかげか、俺の右目の痛みはやがて引いていった。 時刻はもう、午後三時。だが、朝比奈さんは一向に目を覚まさなかった。 そういえば、朝飯も昼飯も食っていなかった。 俺たちが食堂へ向かおうとしたとき、 ――病室に、思いもかけぬ訪問者があらわれた。 「キョン君、喜緑さん……ひさしぶり」 俺は唖然として、彼女を上から下まで眺めた。 355 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 22:20:54.90 ID:3wjhTWmw0 ここには絶対にこれないはずの人が、俺を見るなり、抱きつき、 みくる(大)「会いたかった……会いたかった」 涙をボロボロとこぼし、大声で泣き始めたのだ。 みくる(大)「キョン君…大好きだった……いえ、今でも愛してる……愛してるよぉ……」 わんわんと泣く彼女の腕の中、俺は魂が抜けたようになっていた。 俺は何故、と繰り返し尋ねるが、大人の朝比奈さんはひたすら泣き続けるだけだった。 この人がここにいる、ということは…… 悪い予感がする、これから再び、俺たちに、嘆き悲しまなければならないことがおきる。 みくる(大)「今日の三十分間だけ、時間断層に小さく細い抜け道が発生したんです。     あたしはそのチャンスに、小さいころの自分を、私たちのもといた時代へと連れ戻しにきました」 356 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 22:23:21.39 ID:3wjhTWmw0 俺は言葉を失って、俺の胸元で泣き続ける朝比奈さん(大)の背中に、そっと手を回す。 みくる(大)「見て、キョン君……あたし、こんなに元気になったんですよ」 そういえば目の前の大人バージョン朝比奈さんには傷がないし、 ちゃんと自分の足で立ってるし、 手もちゃんとついている。 それに、目も見えているようだ。クリクリした瞳が、俺を映している。 朝比奈さんは、「未来では再生医療が発達しているんです」と言って笑った。 みくる(大)「……だからあたしのことは、心配しないで。        これからあたしは未来に帰って、もう二度とキョン君とは会えません」 キョン「そんな……」 みくる(大)「あたしだってつらい……でもこれは『規定事項』なんです」 みくる(大)「キョン君と過ごせた、この時代のあたしは、心の底から幸せでした。        ここに来る直前までは、記憶にプロテクトをかけられていて、忘れていたんだけれど、        もう決して……二度と忘れないわ、絶対に」 357 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 22:24:50.64 ID:3wjhTWmw0 キョン「俺も……幸せでした……だけど、こんな」 俺は考えた。もし、このまま小さい朝比奈さんが現代に留まったらどうなるのか? そんなことは、ありえない。それが、『規定事項』というものなのだ。 なぜなら、俺は過去に、大人バージョンの朝比奈さんに出会ってしまっている。それが証拠だ。 小さい彼女は未来に帰り、あの悲劇の記憶を封印され、過去の俺に会いにこなければならない。 みくる(大)「本当はずっとキョン君と一緒にいたかった……        知らないうちに連れ戻されたあと、あたしは記憶プロテクトを受けるまで、何年も泣いて過ごしたの。        でもあたしを未来へと送還した人が、まさかあたし自身だったなんて」 なんてひどい運命のいたづらでしょう、と朝比奈さんはまた泣いてしまった。 困り果てて横を見ると、俺と同じく困惑した表情の喜緑さんがこちらを見つめていた。 喜緑「少し……席をはずしますね」 みくる(大)「あっ、ごめんなさい……いえ、もう、すぐ済みますから」 朝比奈さんは自分の唇をかんで、俺から離れた。 358 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 22:26:12.38 ID:3wjhTWmw0 そして、肩から提げていたカバンから何かを取り出す。 ――魔法瓶だ。 病室にあったマグカップふたつに、トクトクと魔法瓶から湯気のたつ液体をそそいだ。 泣き笑いの表情で、朝比奈さんは、俺と喜緑さんにそれを手渡した。 薫り高い、上質のお茶であった。 俺たちはそれを飲んで、「おいしいです」と言った。 みくる(大)「キョン君、あたしの十年越しの夢を、叶えてくれてありがとう」 朝比奈さんは涙をぬぐって、にっこりと笑った。 俺もいつのまにか流れっぱなしになっていた涙を袖口でぬぐう。 みくる(大)「もう時間がないわ……キョン君、喜緑さん、お世話になりました」 366 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 23:00:28.47 ID:3wjhTWmw0 キョン「……行かないでください」 俺は懇願した。ああ、情けないのは解ってるさ。この期に及んで。 お願いします、行かないで下さい、どうかこの時代に残ってください、俺と一緒に…… 突然、病院に似つかわしくない甘い匂いが俺の鼻腔をくすぐり、俺の唇にやわらかい感触があった。 みくる(大)「……ごめんなさい、どうか新しい恋を見つけてください。        詳しいことは『禁則事項』なのですが、安心して。きっとすぐに見つかるわ」 大人の朝比奈さんは、喜緑さんのほうをちらりと見やり、また笑顔を見せた。 みくる(大)「喜緑さん、さようなら……どうかキョン君のことをよろしく」 喜緑「……わかりました、お元気で」 朝比奈さんはベッド横へとツカツカと歩いてゆき、眠ったままの小さいころの朝比奈さんの左手を握る。 「さよなら、キョン君」 俺がもう一度涙をぬぐったとき、目の前のベッドには、誰も居なかった。 368 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 23:01:13.05 ID:3wjhTWmw0 とたん、背後でドサッと音がした。 床に落ちてるあれは、見覚えがある。シュークリームの箱だ。 少し前に俺が入院していたときも、お見舞いに持ってきてもらったことがある。 ――鶴屋さんが、放心したように立っていた。 「そっか……みくる、帰っちゃったんだ」 「あたしに挨拶もしないで……ひどいよみくる、ひどいよ」 力が抜けたようにヘナヘナと座り込んだ鶴屋さんは、そのまま大声で泣き出してしまった。 鶴屋さんがこれほどまでに泣くところを、俺は見たことがなかった。 キョン「……ちょっと待ってください、鶴屋さん」 370 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 23:02:08.69 ID:3wjhTWmw0 俺はあわてて、病室内を見回した。アレがあるはず、必ずある。 これほどまで親身になって世話をしてくれた鶴屋さんに、まさか一言もないなんて、 俺の良く知る朝比奈さんは、そんな人じゃないはずだ。鶴屋さん、あなたもそう思うでしょう。 喜緑「……ありました、これですね」 果たして、それはあった。ベッド脇のテーブルの上のかわいらしい封筒を、喜緑さんが掲げてみせる。 喜緑「『大好きな鶴屋さんへ』と書いてありますよ」 鶴屋さんはその封筒を受け取ると開封もせず、胸に抱きしめ、またわんわんと泣き出してしまった。 371 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 23:06:31.09 ID:3wjhTWmw0 - - - - - - 372 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 23:08:43.72 ID:3wjhTWmw0 - - - - - - 困ったことがおこった。 医師「……これは……どういうことですか?」 キョン「えっと……その……あれですね……」 鶴屋さんが帰ったあと、医師がナースをつれてやってきて、朝比奈さんのいた空のベッドを見てしまったのだ。 俺たちは説明を求められ、パニックに陥った。 慌てて言い訳をしたって、すぐばれるのがオチだ。知らぬ存ぜぬで通すしかない。 散歩に出た、と言いたいところだが、車椅子はベッドわきにたたんで置かれたままだ。 おまけに靴もスリッパも置きっぱなし。 医師たちはいぶかしみ、病院をあげて捜索を開始せんばかりの勢いだ。 俺が喜緑さんに、ちゃちゃっと情報操作でどうにかできないか、と耳打ちをすると、 喜緑「すみません……実は、私は今…情報操作が出来なくなっています」 373 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 23:10:48.88 ID:3wjhTWmw0 喜緑「すみません……実は、私は今…情報操作が出来なくなっています」 なんという、仰天すべき返事だろうか。 喜緑「なぜか統合思念体と……接続できません、今朝から多少の違和感がありましたけど、     たんなる接続エラーだけなら、宇宙の情報嵐の影響で、よくあることではあるんですが……」 困った……。どうしたものか、と俺が頭を抱えていると、 いつのまにか、真っ黒い影が、俺たちの前にぞぞぞっと湧き出したかのように、視界を遮った。 「――――朝比奈――みくるは――退院―――した」 黒い影……ソイツは、医師たちに向かってそう言った。すると、 医師やナースたちは、『そうか、そういえばそうでしたね』、などと言いながら、 三々五々と、それぞれの仕事へと戻っていった。 375 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 23:12:03.11 ID:3wjhTWmw0 「――――――喜緑―――江美里――」 周防九曜。 天蓋領域、統合思念体とかつて敵対していた広域宇宙存在のインターフェース。 突然現われたそいつ――周防九曜――が、目にも止まらぬ速さで喜緑さんへと飛びかかり、 なすすべもない喜緑さんの顔面を、片手を伸ばし、がっしりと掴んだ。 喜緑「……周防さん!?何するんですか」 キョン「おい、喜緑さんを離せ!」 たしか喜緑さんは、情報操作ができないと言っていた。今は普通の人間とかわらないだろう。 ここは俺が守ってやらなければならない…… 周防「――――――約束――――――した――――――――」 周防「―――――――仲良し―」 キョン「はあ?」 377 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 23:13:11.97 ID:3wjhTWmw0 突然、病室内に歌声が響き渡った。聴いたことのない英語の歌だった。 ――――I stand in front of you――   ――――I'll take the force of the blow …周防九曜が歌ってやがる。プロ顔負けの美声だ。 ――Protection 相変わらず言動の意味がわからん奴だ。誰か通訳してくれ 周防「―――守る―」 何から? 結論から言うと、まずは突風から守ってくれたのだった。 周防九曜の黒く長い髪の毛が、吹き飛ばされた俺の体に向かって伸びてきて、しっかりと巻きついた。 なんと、こいつは俺たちを助けてくれたのか。 病室内で突風だって?普通なら、ありえないと思うだろう。 だが、そこはいつのまにか『ありえる状況』になっていたのだ。この場所ならば、無理もない。 378 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 23:14:27.94 ID:3wjhTWmw0 俺が伏せていた顔を上げると、目の前には、灰色のガレキの荒野が広がっていた。 空も雲も太陽も、なにもかもが灰色 ……そう、ここは閉鎖空間。 「……見つけた……キョン…もう逃がさない」 一面のガレキのなかにたたずむソレを見て、俺は背筋が凍った。 生々しい肉の色をした、俺たちの背丈の倍はありそうな巨大なドーナッツのようなもの。 そのドーナッツには、短い手足がちょこんとついていて、のそのそとこっちへ歩いてくる。 379 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 23:15:46.22 ID:3wjhTWmw0 ドーナッツの天辺には、ちょろちょろと申し訳程度に毛が生えていて、黄色いリボンで結んである。 「………アンタ…ポニーテール萌え、なんでしょう……してみたわ、似合うかしら…」 何だと? おい、ちょっと待て、 勘弁してくれ、アレがハルヒだっていうのか? 何ということだ、もう普通の人間の姿を保つことすらも、できなくなっているのか。 このとき、俺は昨日までの、連日の『悪夢』を、再び思い出していた。 狂ったハルヒが『夢』と繋がった閉鎖空間を闊歩しており、俺をさらいにくる。 先に逝ってしまった古泉が、長門が、なんども俺と朝比奈さんをハルヒから助けてくれた。 長門は大丈夫だろうか。あんな可哀相な姿にされてまで、俺たちを守ってくれたのだが。 SOS団は、戦いつづけていた――大切な仲間のために。 あれは夢だけど夢じゃなかった。 俺は目が覚めるたびに、そんな大切なことを忘れてしまっていたのだ。 387 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 23:39:17.08 ID:3wjhTWmw0 そして閉鎖空間内部の、この惨状はどうしたんだ? まるで全世界を覆っているかのような、巨大な閉鎖空間の中で、見渡す限り全てが破壊されている。 俺が原因かもしれない。まさか、俺がハルヒにジョン・スミスというキーワードを言ってしまったせいで、 ハルヒの狂気はさらに進行し、干渉しうる限りの世界すべてを破壊してしまったのか? そして、夢だけがテリトリーだったハルヒが、 今回現実へと直接閉鎖空間を繋げることに成功したのも、もしかすると俺のせいなのか… 周防「―情報――統合―思念体も――――侵食――された」 周防「――――――――喜緑江美里――――に――――ファイヤーウォール――     ――プログラム――を――――インストール――中」 人間というもの、危機に陥っていても冷静でいられるときは、セブンセンシズとでも言うのかね、 頭が自分が思っているよりも回るようだ、周防九曜の言っていることがなんとなくわかる。 統合思念体はハルヒにハッキングされたが、天蓋領域は優れた防壁を築き、それを免れた。 修好条約にもとづく戦時同盟の約束にのっとって、周防九曜が目下参戦中というわけだ。 「……ちぇっ…せっかくみくるちゃんが居なくなったのに……また泥棒猫が…わいて」 ハルヒの指、…どう見ても指というよりハラワタにしか見えないものが、喜緑さんと、 その喜緑さんの顔面を相変わらず掴んだままの周防九曜に向かって、ぐにょぐにょと伸びていった。 389 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 23:42:00.42 ID:3wjhTWmw0 周防「――――」 ハルヒ「…痛っ」 周防九曜の髪の毛が逆立ち、鋭い棘となり、ハルヒの指をつらぬいた。 ハルヒ「ひっ、ひっ、…痛いっ、痛いっ、痛いっ   痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い………」 肉のドーナッツがピクピクと動いた。 キョン「やめろハルヒ!そいつらに手を出すな!」 俺は必死で叫ぶことしか、できなかった。 ハルヒ「キョン、うっさい!!そこで見てなさい!」 ――ゴツン!!!痛てえ!!ハルヒは俺に向かって、何かを投げつけた。 俺が頭をさすりながら起き上がると、それが昆虫の頭部のようなものだと解った。 391 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 23:45:13.67 ID:3wjhTWmw0 キョン「!!!……これは」 見覚えがある。あのとき俺と朝比奈さんを襲った、バケモノの頭部だ。 「…………」 ――だがソレは、『まだ死んでいなかった』。俺は確かに見て、聞いた。 それは弱よわしく、口のような部分を動かし、 「………ウレシイ…マタ……アエタ」 と言ったのだ。 「ダイスキ」 「………………マタ………トショカン………ニ」 それきり、何も言わなくなった。 393 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 23:48:46.55 ID:3wjhTWmw0 俺はその頭部を、そっと抱えあげる。 ……ごめんな、前の時、俺は気が動転していて、お前のかわいい顔を、放り投げてしまったもんな。 お前は何度も何度も、俺の命を助けてくれたのにな。自分が死んじまってからも、ずっと。 だが今度はもう、決して落としたりなんかしないぜ。ずっと抱いていてやるよ。 だから、今は俺やハルヒのことなんか気にせず、ゆっくり休んでくれ……。 全てが終わったら、一緒に図書館にでも行こうぜ。 俺はもの言わぬソレ――生きてるときも、無口だったな――に、そっと頬をよせた。 一方、周防九曜のほうは、防戦一方。けっこう苦戦しているようだ。 ハルヒ「……許さない……許さない」 触手は何本にも枝分かれし、襲い掛かってくる。周防はそれを髪の毛で防ぐが、 どうやら触手の一本一本が発熱しており、溶解液まで出しているようで、 九曜のあの漆黒の美しかった長い髪は、ところどころ焼け焦げ、見るも無残な様相を呈している。 398 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 23:50:49.21 ID:3wjhTWmw0 ドサリと音がした。 喜緑「きゃっ!」 周防「――――――インストール――終――了――――」 周防九曜は、喜緑さんの顔面をようやく離した。さっきのは、喜緑さんが尻餅をついた音だろう。 喜緑「ありがとうございます……インターフェース間の通信が回復しました、でも……     なんてこと…統合思念体がほぼ壊滅状態だなんて      情報が上書きされて、情報操作能力もかなり制限されています」 ハルヒ「…キョンをたぶらかす奴は……死刑よ」 無数の触手が寄り集まり、巨大な斧が形成され、目の前の標的へと振り下ろされた。 周防は文字通り間一髪、それを受け止めた。白刃取りとはさすがだな。 ハルヒ「……ああ…ちょっともう、しつこいわね、離しなさい!!」 押しても引いても九曜が斧を離さないので、ハルヒは溶解液攻撃に切り替えたようだ。 ジュウジュウと音を立てて、髪の毛が焼かれていく。 400 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 23:53:05.04 ID:3wjhTWmw0 喜緑「システム・リブートまで5分かかります、それまで持ちますか、九曜さん」 周防「―――――それ―――無理――」 喜緑「わかりました、それでは、たったいま要請した救援を頼ることにしましょう。     閉鎖空間というものは、内部からなら、案外簡単に情報制御できるものですよ」 喜緑さんが高速詠唱を始めた。 地面が光り、無数の光の粒が寄り集まり、人の形をなしてゆく。 ――まさか、こいつが俺たちを助けにくるとはな。 朝倉「こんにちはキョン君。ずいぶんお久しぶりね」 カナダへ転校したはずのクラス委員長、朝倉涼子が、 刃渡り2メートルはあろうかという巨大な刃物をかかげてあらわれた。 朝倉「私の派閥だけが難をのがれたのよ、独断専行出来ないようにって、切り離されちゃってたからね」 403 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/12(日) 23:57:37.15 ID:3wjhTWmw0 朝倉「……って、もしかしてアレが涼宮さんなの!?」 触手や溶解液まで出す文句なしのクリーチャーとなったハルヒを見て、朝倉は その特徴的な眉をヘの字に下げて、げんなりとした顔をしてから、俺に言った。 朝倉「ねえ、たしか私、前にあなたに『涼宮さんとお幸せに』とは言ったけどさ、     ……あなたあの涼宮さんと幸せになれる自信ある?」 キョン「……スマン、いや、ちょっとアレは……」 朝倉「やっぱ無理よね……しょせんあたしはバックアップかぁ、こんなオチは予想できなかったわ」 ……おい、お前やけに余裕だな、朝倉。九曜が丸坊主になっちまうぞ。 朝倉「キョン君にお願いがあるの……あの時、殺そうとしたときのこと、許して欲しいの」 何だ藪から棒に… 朝倉「ごめんなさい」 そう言って頭を下げた朝倉に、俺は手を振った。ああ、許してやる、だから行ってこい。 409 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 00:01:46.94 ID:+S/6zzN+0 朝倉「ありがとうキョン君!…じゃあ宇宙一の武闘派の力、見せてあげるわ!!」 朝倉涼子の巨大な刃物が、斧と化したハルヒの手の、ちょうど手首にあたる部分へと振り下ろされる。 ハルヒ「!!!!!な、何すんのよ!!!」 ハルヒ「よくもやったわね、朝倉!!あんたのこと、アタシ昔から気に食わなかったのよ!!」 朝倉「それは良かったわね、私もあなたのことが大嫌いよ」 ハルヒの触手は何度切りおとしてもすぐに再生し、朝倉へと襲い掛かった。 さすがに朝倉もタフなもので、何度触手につらぬかれても瞬時に修復し、ハルヒに立ち向かう。 そのとき、俺は違和感を感じていた。 何をやっているんだ、無力化された喜緑さんと違って、朝倉は情報操作能力を完璧に使えるはずだろう? 一体全体どうして、無駄なように見える物理攻撃ばかり続けて…… ……そうか、読めてきたぞ。むかし朝倉が俺を殺そうとしたとき、自分が敗北した作戦と同じだ。 あれほど目立つデカイ刃物を振り回しているのは、それが、『おとりだから』なんだよな。 411 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 00:05:16.57 ID:+S/6zzN+0 朝倉「終わったわ、ジャスト5分、稼いだわよ」 ハルヒ「何が?アンタのいい子ぶったつまんない人生が?」 突如、喜緑さんが高速詠唱を開始した。 朝倉「閉鎖空間の、扉を開くのよ……崩壊因子を仕込んでおくのに手間取ったけどね」 喜緑さんの詠唱にあわせ、朝倉と九曜が詠唱を始める。『デウス・エクス・マキナ』と歌っている。 高音、低音、リズム……俺の耳には、心地良いことばが聞こえてくる。 どこか遠くの異国の言葉にも聴こえ、それでいて安らぐものだった。 それはまぎれもなく、ハーモニーだった。 古来より人間は、儀式の際に歌をもちいてきた。 それは、神によびかけ、神にささげるためだ。 はじめに言葉ありき……と。 世界の創造は、神が天使達に合唱をさせることから始まった… 文芸部室にあった本、あれは確か、『シルマリルの物語』だったっけな。 そして、女神が光臨した。 ……三人の巫女たちによって、誰が召還されたのか、俺はすぐにわかった。 茜色の光が、俺たちを包み込んだからだ。 「やあキョン」 もうひとりの女神……俺の中学時代からの親友は、俺を見るとにっこりと微笑んだ。 412 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 00:07:29.65 ID:+S/6zzN+0 キョン「……佐々木」 佐々木「キミが元気そうで、良かったよ。前に病院で見たときは、ずいぶんとやつれていたからね」 それはたぶん朝比奈さんのお陰だ。 朝比奈さんとの将来のために、必死で元気になろうとしたのさ。 彼女と過ごした時間は、確実に俺の心と体を癒してくれていたんだが。 佐々木「そうかい、SOS団の癒しの天使は、伊達じゃなかったというわけか」 くっくっ、と笑った佐々木は急に真面目な顔をして、 佐々木「だがキョン、キミにはその愛しの朝比奈さんに対して、すこし申し訳ないことをしてもらわないと」 と言った。申し訳ないこと?何だそれは。 佐々木「僕にキスをしてくれないか」 冗談かと思った…しかし、佐々木の目は真剣そのものだ。 「他意はないんだ、今のこの状況を…」いいだろう、やってやろうじゃないか。 俺は佐々木の言葉を遮り、その唇を唇で奪った。 414 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 00:08:23.78 ID:+S/6zzN+0 ハルヒ「……こ、この…バカキョーーーーーーン!!!!!!」 この光景を見ていたのだろう、ハルヒが怒り狂って、触手の数を倍に増やして、俺たちに襲い掛かってきた。 無理もない、目の前で見せ付けられたんじゃな。 佐々木「ありがとうキョン、これで僕は無敵だ」 唇を離すと、佐々木はそう言って、ハルヒに向き直った。 手で唇をぬぐい、不敵に笑い、ゆっくりと右手をハルヒに向けて突き出した。 佐々木「涼宮ハルヒさん、私がもともと持つはずだった力……返してもらいます」 輝く茜色の閉鎖空間……佐々木のそれが、ハルヒの触手を弾いた。 佐々木「キョンはこちらに残ることを選んだのよ」 ハルヒ「うがああああああっ!!」 世界が茜色に染まってゆく。 突風が吹き、ガレキが吹き飛ばされてゆく。 空が、雲が、木が、花が、街が再生されてゆく。 ―――灰色の世界は、またたくまに消え去っていった。 415 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 00:09:52.55 ID:+S/6zzN+0 ハルヒ「……キョン……あたしのキョン……」 いつのまにか、茜色の病室に、俺たちは居た。 俺の目の前に佐々木がいて、床にはハルヒが倒れている。 ハルヒは俺の良く知る、以前の、普通の女の子の姿に戻っている… …が、その体は透けていて、向こう側の壁や床が見える。 キョン「……ハルヒ」 佐々木「涼宮さん、残念だけど、あなたはもう死んでるのよ。キョンは一緒にはいけないわ」 ハルヒ「そんな……そんなこと…」 窓の外に青い光が見えた。ハルヒの神人だ。 神人は、弱りきってる。暴れもせず、立ち尽くしている。 無数の飛行する赤い光の玉が、神人へと向かっていくのが見えた。 青い光の玉も、ちらほら混じっている…あれはきっと、橘の機関のやつらだろう。 418 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 00:10:58.21 ID:+S/6zzN+0 あれはきっと、弔い合戦だ。誰のものかは、言わずともわかるだろう。 見ろよ、あんなに沢山の人が、お前のために動くんだぜ、ニヤケハンサム野郎。 神人が倒されるのも、時間の問題だ。 振り返ると、喜緑さん、朝倉、九曜が戸口から俺たちを眺めていた。 彼女らは、俺と目が合うと、そっと頷いた。 俺は空いている右手でハルヒをそっと抱き起こした。ハルヒの体は、空気のように軽かった。 ハルヒ「……キョン、あたしやっぱりアンタのこと好きだったのよ」 キョン「ああ」 ハルヒ「でもね、あたしさ、どっちにしろアンタと付き合うことはできなかったのよ」 キョン「……」 ハルヒ「ヒトゴロシになっちゃったから」 キョン「そうか」 420 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 00:12:22.41 ID:+S/6zzN+0 ハルヒ「ごめんね、キョン」 キョン「ああ」 ハルヒ「あたし、キョン、みくるちゃん、有希、古泉くん…みんなと一緒に、幸せになりたかったわ」 キョン「……なれるさ」 ハルヒ「本当?」 キョン「ああ、本当だ」 俺がそう言うと、ハルヒはかすかに笑い、ガクリと力尽き、サラサラと光の粒になって、 線香花火が終わるようにして、散っていき、消えた。 俺はその光景を、終わってゆく夏を見るように、ただ眺めていた。 ……今度はちゃんと見届けたからな、ハルヒ。 誰からともなく、「綺麗だったね」という声がぽつりぽつりとこぼされた。 窓の外では、神人が倒れ、拡散していくのが見えた。 421 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 00:13:22.32 ID:+S/6zzN+0 朝倉「――大変!!閉鎖空間から出る前に、やっておかなきゃいけないことがあるわ!」 突然、キョン君それ貸して、と朝倉が俺に飛び掛ってきた。 なんだなんだ、また俺を殺してハルヒの出方を見るつもりか?ハルヒはもういないぞ。 朝倉「違うわよ!……何でそんなイジワルなこというのよ……あーもう!!」 と、俺がずっと胸に抱えていたゴツゴツしたもの……を、朝倉はひったくった。 キョン「おい、何をする!!」 朝倉「コレに含まれている炭素分をベースに、情報を現実世界へと持って帰れるようにするのよ」 とたんに始まる高速詠唱、病室の中を一瞬だけ、まばゆい光がつつみ…… 朝倉「アーカイヴ、完了。ありがとう、コレ返すわね」 と言って、朝倉は俺の手に、それを握らせた。これは…… 朝倉「ダイヤモンドよ……それを長門さんだと思って、大切にしてね」 423 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 00:17:16.69 ID:+S/6zzN+0 おい朝倉、今まで何かとお前に辛くあたって、悪かったな。 今回はお前にどれほど感謝しても、し足りない。 戻ったら…そう、何か礼をさせてくれ。おでんでも何でも奢ってやる。 朝倉「ごめんね、現実世界にあたしの有機情報体は存在しないの。だから、ここでお別れよ。     じゃあね、さよならキョン君。喜緑さんとお幸せに…」 閉鎖空間が弾けるとき、朝倉は俺にそう言い残して、サラサラと消えていってしまった。 - - - - - - 424 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 00:18:26.22 ID:+S/6zzN+0 - - - - - - 佐々木「さて、帰ってきたね」 俺たちはようやく、もとの世界の、病室に戻ってきた。 ハルヒがいなくなり、古泉が居なくなり、長門がいなくなり、朝比奈さんがいなくなり、 ハルヒは花火になって、一瞬の輝きを俺たちに残し、 古泉の意思は沢山の人の心に残って大きな力を生み、 長門はダイヤモンドになって、永遠の輝きを俺に託し、 朝比奈さんは俺と鶴屋さんに、生きる希望と、大切なものをたくさん残してくれた。 皆が争いをやめ、 手に手をとりあい、 それぞれの危機を乗り越えた。 終わったのか、という実感が、俺の胸を満たしたところで、佐々木がおもむろに口をひらいた。 佐々木「だけどキョン、まだ君と僕にはやることが残っている」 病室の戸口から現われた人物を見て、俺は驚いた。 藤原「……本当に二度とこないつもりだったが、他ならぬ佐々木の頼みだ、断れん」 430 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 00:25:35.33 ID:+S/6zzN+0 佐々木「このあたりには複数の時間軸が交差し、もつれ、複雑に絡まりあっている。      それを『きちんと分岐させるために』、僕たちはあの出来事の1ヶ月前に行く」 口をぽかんと開けた俺と、不機嫌そうな顔をした藤原の手を、佐々木が真ん中に入るようにして握った。 ――突如、眩暈、船酔いにも似た症状が俺を襲う。 何度か経験したことのあるそれは、タイムトラベル特有のものだ。 佐々木「着いたよ、キョン、さあ、この道をまっすぐ行こう。      何をすべきかは、君ならばすぐにわかるはずだ」 蒸し暑さが、俺たちを包む。さっきまではクーラーのきいた病室にいたのだが、 ここは外、光陽園駅から少し離れた繁華街の通りだ。 夜中の三時、あたりは暗く、うねった坂の脇の飲み屋街も、その多くがのれんを下ろしている。 432 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 00:26:49.79 ID:+S/6zzN+0 俺たちは佐々木に先導され、その坂をのぼってゆく。 やがて俺たちは、小さな川にかかった橋を渡って、いわゆる『ホテル街』へとやってきた。 佐々木「さて、このへんのはずだけれど」 藤原「いたぞ、あそこだ」 あいかわらず不機嫌な顔をした藤原が、アゴで指した方向を見て、俺はふたたび驚いた。 男が、ひとりの少女と一緒に歩いてくる。 いや、それは男といっても、俺たちと同年代くらいなのだが……。 少女の足取りはおぼつかない。酒でも飲んでいるのだろうか。 男の肩につかまり、ヨロヨロと歩いている。 その男の方は誰だかしらんが、少女が誰なのか、俺は一発で気がついた。 トレードマークの黄色いカチューシャは、していなかったがな。 キョン「ハルヒ」 ハルヒ「……キョン!?」 433 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 00:28:02.43 ID:+S/6zzN+0 キョン「こんな時間に、ここで何をやっているんだ…     それに、お前『二度と酒は飲まない』って誓ってたじゃないか」 ハルヒ「何って、アンタこそなんで、こんなとこにいんのよ!      あたしがいつどこで誰とお酒を飲もうと、あたしの勝手じゃない」 キョン「俺はお前を心配して、探しにきたんだ」 ハルヒ「……っ!?」 ぐでんぐでんに酔っ払ったハルヒの肩を支えていた男が、 いぶかしげな表情で俺たちのことを見ている。 俺はコキコキと指の関節をならし、首と肩をグキグキとやってから、 思い切り振りかぶって、 野郎の顔面に、力の限りパンチをくらわせた。 「あがっ!!」 435 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 00:34:07.17 ID:+S/6zzN+0 ハルヒ「きゃあっ!!!」 殴った手が痛い、骨でも折れたかな。 男と一緒にもんどりうって倒れたハルヒは放っておいて、 俺は倒れている野郎に一発蹴りを入れ、馬乗りになり、マウントポジションを取った。 ハルヒ「ちょっとキョン!!何てことするのよ!!」 騒ぐハルヒを無視し、俺はさらに男を2〜3発殴った。 声にならないうめき声をあげる男から離れ、ズボンの泥をはらい、声をかける。 キョン「いいか、二度とハルヒに近づくな」 そして俺は、怯えたような顔をして座り込むハルヒに向き直った。 キョン「おいハルヒ、もし俺が来なかったら、お前がどうなっていたのか……よく考えろ。     文句なら明日、いくらでもきいてやる。今日はタクシーで家まで帰れ」 酔いが一度にさめてしまったのであろう、ハルヒは青い顔をして、うなずいた。 436 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 00:35:13.85 ID:+S/6zzN+0 タイミングよくやってきたタクシー(新川さんではなかった)にハルヒを載せ、 去りゆくタクシーの後姿をしばらくながめたあと、俺は道端に転がる男を見て、ため息をついた。 佐々木「こいつが主犯だよ。こいつは悪い人間ではないのだが、一時の迷いで間違いを犯す。      もうすぐで涼宮さんはこいつに追い詰められ、短い人生を花火として散らすところだった」 いつのまにかそばによってきていた佐々木が、 「もはや何も悪いことをできないように、僕が情報操作をしてあげよう」 と言って、男の額に手をあてた。するとたちまちそいつは 女「あれ……何で私、こんなところにいるの?」 と声をあげ、何事もなかったかのように、起き上がった。おい、性別が反転してるぞ。 ちぇっ、俺が与えたケガまで治ったらしい……が、大切なモノをなくしたようなので、許してやるか。 佐々木「君は善良な一高校生だ、わき目も振らずしっかり勉強して、社会に貢献せよ」 女「はい」 女は眼の焦点がはっきりせずボーッとしていたようだが、そう返事をして、フラフラと去っていった。 佐々木「さあ、時間軸の分岐は終わったよ、涼宮さんたちが幸せに暮らせる世界を、僕たちは作った」 439 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 00:42:34.19 ID:+S/6zzN+0 俺はようやく、俺たちが何をしにここへとやってきたのかに気がついた。 そうか、これも『規定事項』だったのか。 俺はてっきり、自分たちの時間軸と、藤原や朝比奈さんの時間軸は別だ、と思っていた。 だが、それは俺の勘違いで、さっき藤原がアッサリとあの場へ来れたのを見てもわかるとおり、 SOS団の壊滅した『俺たちの時間軸』は、藤原のやってきた未来へと繋がる時間軸だったのだ。 そして、こうして朝比奈さんの未来へと繋がる『規定事項』がクリアされ、 もう一つの世界が、何事もなく俺がSOS団とともに幸せに生きる世界が、確定したのだ。 なあハルヒ、お前の最期の願い、叶ったぞ。よかったな。 佐々木「さあ、僕たちも自分の世界へと帰ろうか……あっちは君にとっては、少し寂しい世界かもしれないが」 くっくっ、と喉をならして笑う佐々木が、俺にそう言った。 やれやれ、ついでにあいつを殴ったせいでジンジンと痛む俺の手も、治療してくれないもんかね。 藤原「……待て、佐々木」 佐々木「なんだい?藤原くん」 藤原「こいつには選ぶ権利がある」 ずかずかと近づいてきた藤原が、俺と佐々木の間に入り、俺に真剣な目で問いかけた。 441 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 00:45:28.62 ID:+S/6zzN+0 藤原「いいか、ここに二つの時間軸、二つの世界が生まれ、存在していることは理解できるだろう。    お前は元の世界へと戻るか、それとも涼宮たちのいるこの世界にとどまるか、選ぶことができる」 俺は、これほど真剣な表情をした藤原の顔を、初めて見た。嘘はいっていない。 藤原「お前が望むなら、この世界のおまえ自身と、そっと入れ替わるんだ。誰にも気づかれない。    ……余ったもう一人のお前のことは気にするな、僕が100年前にでも捨ててきてやろう」 俺は笑って答えた。 アホか、そんなことは出来るはずもない、と。 藤原も笑って、「こんなチャンスを逃すお前こそアホだ」 「だがアホのお前ならそういうと思った」、と返した。 勘違いするな、この世界の明日の俺が受ける災難を思えば、思わず身震いがする、 ……理由はそれだけだ。藤原、お前の気遣いなんかいらないぜ。 藤原「お前だって解っていたのだろう、僕が最初から『お前』の味方だった、ってことをな」 ええい、気色悪いことを言うな。 こうして俺たちは、再びもとの時間軸へ、かつてスウィートエンジェル朝比奈さんがいた病室へと戻ってきた。 - - - - - - - - 445 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 00:48:43.52 ID:+S/6zzN+0 - - - - - - - - 喜緑「あら、おかえりなさい」 周防「――――――おかえ――り」 そこでは喜緑さんと九曜が、鶴屋さんの持ってきた高級シュークリームと 朝比奈さんの置いていった魔法瓶の特上のお茶で、優雅にティータイムを楽しんでいた。 俺たちがたった今何をしてきたのかを知っているのか知らないのか、ともかく、笑顔だった。 藤原が「俺の仕事は全て終わった、もはや今度こそ、会うこともないだろう」と言い、手を振って去っていった。 去り際に「世話になった、すこしは感謝してやる」と言い残して。 今回の出来事全てを通じていちばん『望みどおりの結果を得た』のは藤原だが、 当の藤原だってこんなことは本意ではなかったのだろう。妙に俺に気を遣いやがって、ツンデレめ。 無愛想だったが、悪い奴じゃなかったんだな。俺も今だけは、感謝しておいてやる。 もう一人、すべてにケリをつけてくれた、こいつに感謝しなければな。 佐々木「キョン」 参った、かける言葉が見つからない、と思ったとき、佐々木は俺に話しかけてきた。 佐々木「僕はこれから三年間、世界中を見て回ろうと思うんだ。      全能の力を得ても、僕は悲しいことに全知ではない……僕は自分の目で、僕の世界を見たい」 447 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 00:51:59.60 ID:+S/6zzN+0 そうか佐々木、お前もいなくなるのか。寂しくなるな。 佐々木「という訳なんだが、キョン」 ああ、三年後が待ち遠しいよ、帰ってきたら、いつでも家に遊びに来てくれ。 佐々木「……僕は、君も一緒に来ないか?と言っているんだよ」 俺は少しだけ迷った。そして、言った。 キョン「勿体無いお誘いだが、今は無理だな」 まだ俺はやることがある。 あの人の真意を、問いたださなきゃならない。 佐々木「そうか。じゃあ、旅先から手紙を出すよ。三年たったらまた会おう、約束だ」 ああ、約束だ。俺たちは親友、だろ。 そう言うと、佐々木も「そうだね、僕たちは親友だ……くっくっ」 と、笑いながら言って、俺たちは握手をした。 449 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 00:52:48.54 ID:+S/6zzN+0 周防「―――――わたしも―――いっしょに行く―――」 ああ、今回は世話になったな。九曜、佐々木のボディガードを頼むぜ。 ありがとう。 周防「―――ありがとう――感謝の―――ことば―」 周防「―――――――――――綺麗な―――――ことば――好き――――――」 つかつかと佐々木が病室のドアに立ち寄り、ガチャリとドアを開けると、 ドアの向こうには、なんと見渡すかぎりの牧草地が広がっていた。 佐々木「くっくっ…『どこでもドア』だよ、ついやってみたくなってね。      最初の行き先は、ずっと行ってみたかった、北海道を選んだよ」 ……なんだそりゃ、『世界を見たい』などと大きなことをぬかして、結局は完全に観光気分じゃないか。 まあ、何にせよお前が楽しくやれるのなら、なによりだが。 451 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 00:53:50.16 ID:+S/6zzN+0 佐々木「じゃあね、キョン、喜緑さん」 周防「――――――さよなら―――あなたたち――仲良く――」 二人は手を振って、ドアの向こうに消えた。 ドアがバタリと閉まる。 念のためもう一度ドアを開けてみたところ、そこは見慣れた病院の廊下に繋がっていた。 喜緑「行ってしまいましたね」 そうですね、と俺は答え、緊張の糸が一気に切れ、俺は病室の丸椅子へとこしかけた。 453 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 00:54:49.47 ID:+S/6zzN+0 喜緑「怪我をなさっていますね」 そうですね、と俺は答え、喜緑さんは俺の手を、ついでに右目を、治療してくれた。 喜緑「シュークリーム、いかがですか」 ああ、そういえばありましたね、と俺はシュークリームを受け取り、口にした。 魔法瓶から注がれたお茶はいまだに、最適の温度を保っていた。こりゃ未来技術でも使われているのかね? 二人きりになってしまいましたね、と言うと、そうですね、といつもの笑顔で返してくれた。 そうだ、あなたに訊いておかなければならないことがある。 喜緑さんは口では「何でしょう?」と言ったが、まるで訊かれる内容を知っているかのように、笑顔だ。 キョン「喜緑さん、長門が情報統合思念体に残したものって、『死の概念』だけではないのですね」 喜緑「はい、私は長門さんのバックアップも兼ねていたので、より多くのものを受け取りました」 居住まいをただし、ひざに手をおいて、こちらを見る喜緑さん。 455 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 00:56:48.38 ID:+S/6zzN+0 ある程度予測できていたこととはいえ、本人の口からきくと、感慨深いものだ。 喜緑「長門さんの記憶データが、私にインストールされているのです……     長門さんが今まで、あなたにどんな気持ちで接してきたのか、私はすべて知っています」 そうなんだ、何故この人が、いろんなことを投げ打ってまで、俺のために、 ずっと一緒に、そばにいてくれたのか、それが疑問だったんだ。 いや、違う、もはやそれは疑問ではないな。……俺だってとっくに気づいていたのさ。 俺のことを鈍感だ鈍感だと言っている奴ら、お前たちはとんでもない勘違いをしている。 これから目の前の女性が言うであろうことを、俺は喜んで迎え入れるつもりだ。 もちろん、朝比奈さんのことも忘れられないし……俺の心の傷は広がったままなのだが。 目の前の人と二人でなら、前向きに生きることができるようになれる、そんな気がするんだ。 喜緑「長門さんのデータを受け継いでから、私たちのなかに原因不明のエラーが発生しています。     統合思念体は現在、これを新たな進化の可能性への重要な手がかりと捉え、興味を持っています」 456 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 00:57:43.26 ID:+S/6zzN+0 俺の右手の中には、小さなダイヤモンドが、きらきらと光を放っている。 いつか、これをネックレスにでもしてもらって、目の前の女性につけてもらおう。 きっとよく似合うに違いない。 喜緑「私たちは今、愛することの概念を、はっきりと理解しています」 - - - - - - ――その後のことを少し話そう。 460 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 00:58:43.54 ID:+S/6zzN+0 朝比奈さんの残した私物のなかにあったもの…… 鶴屋さんがプレゼントしたMP3プレーヤー、病室で朝比奈さんが毎日聴いていたものだ。 そのメモリーには、今まで誰も聴いたことのないような、別れの歌が入っていた。 おそらくこれは、はるか未来の流行歌だ……と、俺は勝手にそう思うことにした。 鶴屋さんはあの後すぐに立ち直り、今も元気でやっている。 俺の住むアパートにしょっちゅう遊びに来ては、相変わらずの笑顔を振りまいている。 谷口と国木田は、今では同じ大学の一年先輩だ。彼らもよく俺のところに遊びにくる。 森園生さんが……いつのまにか結婚していたらしく、姓は変わってしまっていたが、 古泉の従妹を養子として引き取ったらしい。 その従妹は今年北高に進学し、従兄の想いを継がんとばかりに、なんとSOS団を再結成したそうだ。 彼女らの胸元には、小さな黄色いリボンが、シンボルとして結び付けられている。 462 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 01:00:24.77 ID:+S/6zzN+0 新生SOS団はどうやら市ぐるみの一大事業らしく、機関はそのサポートに追われているらしい。 なるほど、ここにきてようやく『あれはガス爆発だった』という情報操作が、本来の威力を発揮したのか。 新川さんは笑って「ようやく日の当たる健全な機関になれました」と言っていた。何のこっちゃ。 このあいだ、元生徒会長と阪中が仲良さげに歩いていたのを見た。 元生徒会長は大型犬の、阪中は愛犬ルソーの散歩中だったようだが。 佐々木は律儀に毎月絵葉書をよこしてくれていた。 エジプト、インド、パレスチナ、タイ、フランス、ノルウェー、赤道ギニア、オーストラリア…などなど、 世界中いたるところから、わざわざ切手を貼って郵便で送ってきた……なんとも佐々木らしいな。 俺は通信制の高校を卒業し、大学に通いつつ、ちょっと割の良いアルバイトをして生計を立てている。 何のアルバイトかって?……きっかけは思いつきで、とあるSF雑誌に投稿したことだったが 時を駆ける少女の物語、超能力者の少年の物語、宇宙人の少女の物語を書いてるのさ。 そいつらが元気いっぱいの女の子と、一般人の男の子と一緒に、幸せに暮らせる世界の話をな。 467 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 01:04:41.86 ID:+S/6zzN+0 この三年間、俺のとなりにはいつも、柔らかい笑顔を絶やさない人がいた。 ダイアモンドのネックレスがよく似合う、俺よりもひとつ年上の女性だ。 俺はこれからもこの人に、そばに居てほしいと思っているし、この人だってそう思っているとのことだ。 俺の心には、いつも風が吹いている。 あのとき文芸部室で起きた出来事の夢を、今でもかなりの頻度で見る。 俺はそんなときにいつも大声で泣いて、彼女にたくさんの迷惑をかけてしまったものだ。 もうすぐ佐々木と九曜が帰ってくる。 俺と喜緑さん、鶴屋さんで、せいいっぱい歓迎してやろう。 そうだ、どうせならあいつらに頼んで、いつか五人で旅行に行くというのはどうだろう。 さぞかし世界中の秘境やオススメスポットを、案内してくれることだろうさ。  完 479 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 01:07:13.59 ID:+S/6zzN+0 ハルヒ「キョン、爆発するわよ!」 テイク3了 二日間にわたる支援&保守thx これにて投下はおしまい、みなさまお疲れさまでした。