かがみ「ずっと一緒にいられたらいいな」 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/03(金) 20:38:30.36 ID:8AofnLM30 同じ時に生まれ、 同じ体験を重ね、 同じ日々を過ごしてきた。 とても温厚で、 とても純朴で、 とても懸命で、 でも間が抜けている。 そんな私の妹。 ずっと一緒にいられたらいいなって。 ただ漠然とそう思っていた。 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/03(金) 20:42:45.96 ID:8AofnLM30 かがみ「ほら、早く起きて着替えなさい!」 つかさ「焦らなくてもまだ間に合うよぉ〜……」 かがみ「既に朝食抜きが確定しいてるこの状況で、よくもまぁ言えたものだわね」 つかさ「ほら、この前台風が来てたでしょ〜? だから今日はきっとぉ……」 かがみ「外を見なさい、この見事に秋晴れた空を!」 つかさ「あっ……なんだか私、風邪を引いていたような……」 かがみ「あからさまに取って付けた嘘はやめなさい」 つかさ「……」 かがみ「はい、それじゃあ早いとこ立って」 つかさ「うぅ〜ん……眠いよぅ〜……」 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/03(金) 20:48:40.17 ID:8AofnLM30 かがみ「お弁当サンキュー! ……あ、キノコ付きだ」 みき「つかさは?」 つかさ「生きてまぁ〜す……」 かがみ「半分は寝ちゃってるけどね。ほら、つかさ鞄を出して」 みき「流石はお姉ちゃんなのね」 かがみ「どう致しまして。じゃ、いってきまーす!」 みき「いってらっしゃい」 つかさ「いってらっしゃーい」 かがみ「あんたも来るのよ!」 つかさ「……?」 かがみ「ほんっと朝は駄目なんだな……」 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/03(金) 20:54:47.55 ID:8AofnLM30 つかさ「引っ張らないでぇ〜!」 かがみ「ノロノロしてたら乗り遅れちゃうでしょうがっ」 つかさ「だってぇ、お腹が減って力が出ないよぉ〜」 かがみ「なら、コーンフレークでも齧ってなさい」 つかさ「もう我慢できないっ」 かがみ「はぁ、口だけはよく動くんだから……」 つかさ「ぐぅ〜れいとぉ〜」 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/03(金) 20:55:49.22 ID:8AofnLM30 かがみ「よし、車は来ていないわね」 つかさ「ちょっと待って、信号赤だよ!」 かがみ「このまま突っ切るわよー」 つかさ「危ないってぇ〜!」 かがみ「大丈夫大丈夫、この辺は空いてるから。現にこの通り――」 つかさ「えっ!? きゃああ――」 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/03(金) 20:58:17.21 ID:8AofnLM30 かがみ「……ふぅ、びっくりしたぁ。まさか車も信号を無視して左折してくるとはね」 つかさ「……」 かがみ「にしても、あんにゃろー……いけしゃあしゃあと逃げやがってぇー……」 つかさ「……」 かがみ「あ、つかさ大丈夫?」 つかさ「……」 かがみ「……つかさ?」 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/03(金) 21:06:28.63 ID:8AofnLM30 電車内 かがみ「ハァハァ……なんとか間に合ったようね……」 つかさ「朝から……運動会……だねっ……」 こなた「間近にあるのは学園祭だけどね」 かがみ「うおっ、出た!」 つかさ「びっくりしたよぉ」 こなた「そんなに驚かなくたっていーじゃーん。それじゃあまるで――」 ――わたしが幽霊みたいじゃないか かがみ「ごめんごめん、遅れそうで焦ってたからさ。ようやく一息つけて気が抜けちゃってたのよ」 つかさ「そうだねぇ」 こなた「そういう事ならさ、遅刻に慣れちゃえば焦る必要もなくなると思うよ」 つかさ「うわぁ、名案かも!」 かがみ「……」 こなた「……」 つかさ「……放置デスカー」 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/03(金) 21:09:38.22 ID:8AofnLM30 つかさ「で、いつも通りにとうちゃーく」 かがみ「じゃあね、また後で」 こなた「じゃあねーかがみん」 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/03(金) 21:21:11.74 ID:8AofnLM30 かがみ「おーっす」 みさお「おぅーっす!」 あやの「おはよう、柊ちゃん」 かがみ「日下部は相変わらずみたいね」 みさお「なんだー?」 かがみ「今日も元気だってこと」 みさお「へへっ、まぁなー!」 かがみ「……別に褒めてはいないのに」 みさお「そんなことより宿題の答え合わせでもやらないかー」 あやの「そうね、わたしも気になる所があったし」 かがみ「あれ? 宿題なんてあったっけ?」 みさお「あっただろー?」 あやの「三時間目の数学で章末問題のところだけど……もしかして忘れちゃってたの?」 かがみ「……そう言われてみればそうだったような」 みさお「しっかたねぇなー、わたしが見せて進ぜよう!」 かがみ「なんだか釈然としないわね……」 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/03(金) 21:31:29.33 ID:8AofnLM30 朝(ホームルーム後) かがみ「あいたたた……手も疲れちゃったし、ちょっと3Bにでも行ってこようかな」 みさお「この隙間のよーな時間でわざわざ隣に行かなくてもいいんじゃね?」 かがみ「そりゃそうだけど、なんだか落ち着かないのよね」 みさお「まるで習慣病や依存症みたいだなー」 かがみ「嫌な言い回しに変えるのはやめてくれ」 あやの「宿題のほうは間に合うの?」 かがみ「まあ、1時間目と2時間目、ついでにその休み時間もあるし」 あやの「あはは……授業中にやるのは感心できないかな〜……」 みさお「それほどまでに3Bが大事なんだよ、察してあげようぜー……」 かがみ「……別にそんなんじゃないけどさ」 みさお「そしてそういうのを繰り返していくうちに、オーバードーズっていって引き返せなくなるわけだなー」 あやの「現代社会の闇ね」 かがみ「事有るごとに社会問題にまで発展させるのはやめないか」 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/03(金) 21:47:14.45 ID:8AofnLM30 ななこ「ダチョウにエガにモンスターねぇ……」 かがみ「あ、先生おはようございます」 ななこ「お、柊か……」 かがみ「……? なんだかお疲れなんですね」 ななこ「そりゃそうや、色々あるからな……」 かがみ「色々って?」 ななこ「色々や」 かがみ「はぁ、そうですか」 ななこ「教師というものはホンマに大変やからな。      どの辺りがかって言うと、生徒の為を思えば思う程に苦しんでしまう、非常に不条理な職業なんや。      ……自分も教師にだけはならんほうがええで」 かがみ「ええっと……」 ななこ「そいじゃな」 かがみ「自分で言っちゃあお終いでしょうに……」 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/03(金) 21:49:38.40 ID:8AofnLM30 かがみ「よっ!」 こなた「わざわざこの隙間のような、」 かがみ「その話はもう聞いたわ」 こなた「……まだ何も言ってないんですけど」 みゆき「おはようございます」 かがみ「おはよ、みゆき。ところで黒井先生に何かあったの?」 みゆき「ええと、それは――」 こなた「この時期は大変らしいからね、色々と」 みゆき「……」 かがみ「ふーん、そういうものなのかねぇ」 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/03(金) 21:59:05.37 ID:8AofnLM30 一時間目 教師「いいかぁ〜お前等ぁ〜! 人という字はだなぁ〜」 かがみ(国語教師の目を盗みながら数学に勤しむ……) 教師「この倒れそうな人間を、別の人間がぁ〜」 かがみ(ポテチを食べつつノートに書き留める気分がわかったような気がするわね) 教師「こら柊! 内職でもやってんのかぁ〜?」 かがみ「えっ?」 教師「先生の話を聞いてどう思ったか……考えを言ってみろこのばかちんがぁ〜」 かがみ「あ、はい……漢字は所詮、文字にすぎないと思います」 教師「……」 かがみ「……」 教師「はい、じゃあ授業を続けましょうかー!」 かがみ(スルーかよ) 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/03(金) 22:09:31.87 ID:8AofnLM30 二時間目 教師「よし、ではスペクトル分析についてだが……その前に僕が担当したことのある自然発火事件について聞かせてあげよう」 かがみ(休み時間も潰したのに終わらない……うぅ、積分は面倒なのよね……) 教師「鏡が光を反射する性質を持っていることは言うまでも無いが、これを利用してレーザー光を……」 かがみ(日下部の字、きったないわね) 教師「通常の自然光、つまりは日光などならば被写体との距離が開くにつれて分散してしまうが、高い収束力を持つレーザー光は……」 かがみ(イクォールが”Z”みたいになってるのが非常に気になる) 教師「同時に高いエネルギーを持っている為、遠く離れた可燃性の物質に当てて、あたかも自然発火を引き起したかのような……」 かがみ(でも、ギリギリ間に合いそうね) 教師「さて、どう思うかな柊君?」 かがみ「えっ?」 教師「君の意見を伺いたい」 かがみ「じ、実に面白いと思います」 教師「結構」 かがみ(やたら当てられるわね今日は……) 教師「その時、僕は言ったんだ。さっぱり分からない、ってね。だが、世の中に解けない問題など無い……」 かがみ(それにしてもこの教師、毎回話が逸れるわね) 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/03(金) 22:19:32.92 ID:8AofnLM30 二時間目の中休み みさお「終わったかぁ〜?」 かがみ「次で最後だから、あとちょっと」 あやの「本当に授業中を潰してたのね」 かがみ「うふふ、私が宿題を忘れるなんて、起こり得てはならないのよ」 みさお「おー、その意気だぞぉ〜!」 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/03(金) 22:22:39.91 ID:8AofnLM30 三時間目 教師「はーい、それじゃあ課題ノートを提出してねー!」 かがみ(ふぅ……ぎりぎりセーフというものね) 教師「それじゃー授業をやっちゃいますねー」 かがみ「これで一段落っと。助かったわ、日下部、峰岸、ありがとねっ」 みさお「なーに、いつもの礼みたいなもんだから気にすんなー」 あやの「持ちつ持たれつっていうからね」 かがみ「なんという優しさ……五年という時間の流れは偉大なものね……」 みさお「だから昼御飯は一緒に食べようぜー」 かがみ「お断りします」 みさお「あやのぅ〜!」 あやの「ほらほら、嘆かない嘆かない」 教師「こらー、一応は授業中ですよー?」 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/03(金) 22:31:00.10 ID:8AofnLM30 三時間目の中休み みさお「また隣へ行くのか?」 かがみ「そうだけど、何?」 みさお「はくじょーものぉ〜」 かがみ「うわっ、分かった。分かったから絡みつくな!」 あやの「みさちゃんは毎回必死なのね」 みさお「五年間の重みに賭けて、わたしは柊を離さないからなー」 かがみ「別に……そんなにベタベタしなくとも、私が消えたりはしないわよ」 みさお「わかんねーぞー? 世の中、未来に何があるのかは完璧に謎なんだし」 あやの「言われてみれば、明日もまた柊ちゃんに会えるという確証は無いものね」 みさお「そう、一寸先は闇って奴だ!」 あやの「正に現代社会の闇ね」 かがみ「分かった分かった、そういう事にしておくわよ……」 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/03(金) 22:41:19.51 ID:8AofnLM30 昼休み かがみ「あぁ〜……日下部を振り払っていたら、無駄な時間を過ごしちゃった」 こなた「お、来た来た」 かがみ「おっす」 みゆき「おや、少しばかり授業が長引かれたのでしょうか?」 かがみ「違う違う、ちょっとした生霊を払ってただけよ」 こなた「やっぱり巫女、」 かがみ「うるさい。ところで、つかさは?」 みゆき「えっとですね――」 こなた「ちょっと先生のところへ用事らしいよ」 みゆき「……」 かがみ「そうなの? 待ってようかしら」 こなた「いやぁ〜あの様子だと恐らく、昼休み一杯潰れちゃうだろーなぁー」 かがみ「なら、仕方ないのかもね。先に食べましょっか」 みゆき「そうですね……」 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/03(金) 23:02:42.85 ID:8AofnLM30 かがみ「実はさぁ、おやつを持って来たんだよね」 みゆき「まぁ」 かがみ「はい、きのこの山」 こなた「きのこねぇ……やっぱり、おやつと言えばたけのこの里だよねぇ」 みゆき「そうですね、きのこの山には一歩及びませんが」 こなた「……何を言ってるの、みゆきさん? たけのこの里のほうが上でしょ?」 みゆき「今、なんと仰いましたか?      わたしの聞き間違いでなければ、たけのこ風情がきのこに楯突こうなどのようにお受け取りしましたが」 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/03(金) 23:03:38.98 ID:8AofnLM30 こなた「現実を見ようよ、売り上げという実数的データとして”たけのこ > きのこ”の構図が定められているんだよ?」 みゆき「おや、実数的データですか……これだから困るんですよ、たけのこ派の方々は……」 こなた「……それ、どういう意味なのかな?」 みゆき「その情報が虚位と操作によって創り出されたものであることを疑いもせずに、      マジョリティと群衆心理を利用して有利な立場を築き上げておられるのですよ、たけのこ派の方々は。      誰だって”実際に売れている”などと先入観を与えられれば、イーブンな状況下においては風評が判断基準となり得ますのでね」 こなた「ふーん……みゆきさんは頭が良いもんね。だったらそういうのを何というのかも知ってるよね?」 みゆき「仰りたいことがあるのでしたら、はっきりと申されては如何でしょうか?」 こなた「そういうのをね、負け惜しみって言うんだよ。      ましてや有りもしない事柄を捏造してまで強者の足を引っ張ろうとする、実に浅ましい策定だね」 みゆき「そのお言葉、そっくりそちらへとお返し致します。お望みならば、菓子折りもお付け致しましょうか?」 かがみ「とかなんとか言いつつも、しっかりと仲良く食べているのよね、この二人は」 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/03(金) 23:17:11.78 ID:8AofnLM30 五時間目 かがみ(次の授業が移動教室の美術だったから早めに教室へと戻った訳たけど……つかさはどうしているんだろう?      結局、こなたとみゆきの論争で訊けなかったし……) みさお「わたしは思うんだけど、視聴覚室って必要なくね?」 あやの「どうして?」 みさお「だってよぅ、年に1回くらいしか活用されてねぇじゃん?」 あやの「それはそうだけど……      でも、そんな事を言い出したら無駄に複数用意されている多目的室のほうが必要ないと思うな」 みさお「あと、最上階のトイレも必要性がわかんねーよなー」 あやの「掃除当番に当たれば、楽が出来るんだけどね」 みさお「不思議だー」 かがみ「別に……至って普通でしょ」 みさお「あ、不思議で思い出したんだけどさ、陵桜学園の七不思議って奴が」 かがみ「そういうのはまたの機会にでいいわ。それより、少しは風景を描きなさいよ」 みさお「こんなの小学生や中学生の頃に描いた過去作品を再利用すれば……」 かがみ「まったく……進歩がない人間ね、あんたは」 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/03(金) 23:29:38.36 ID:8AofnLM30 あやの「流石にこの季節ともなれば、日中と言えど冷えてくるのね」 みさお「あ、そうだ」 かがみ「はいはい、七不思議とかはいらないから」 みさお「違うってば。季節ネタの一つを思い出したんだから聞いてくれよぅ」 かがみ「季節ネタ?」 みさお「そうそう、日射病ってあるじゃん?」 かがみ「いやぁ〜な季節ネタだな、おい」 みさお「まぁまぁ……わたしは陸上やってるしさ、後学の為だと思って聞いてくれよ」 かがみ「昼休みの埋め合わせ程度でいいのなら構わないけど」 みさお「えっへん、そんじゃあいくぞぉ〜」 あやの「パチパチパチパチ〜」 かがみ「はーい、パチパチー……」 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/03(金) 23:42:22.72 ID:8AofnLM30 これは昔、先輩に聞いた話なんだけど…… 今現在じゃスポーツ科学が浸透したのか迷信として否定されているようなことでも、 昔はそれが紛うごとなき真実だと、強く言い聞かされていた時代があってなー。 んで、昔ってのは縦の繋がりって奴が強ぇーだろぉ? いや、実際のところは知らないけどさ、そう聞かされたんだよぅ。 んでな、その当時の陸上部では、『部活中に水を飲んではいけない』って決まりがあったんだ。 水は運動能力の成長を妨げるっていう、昔ではよくあった迷信のうちの一つだな。 それを破っちまうと先輩等から苛烈な灸を据えられるし、 なにより、それなりに名の通っていたらしいウチの部活動では『強くなりたい』という個人間の願望もあってさ。 皆で頑張っていたらしいぜ。 でもやっぱり無理ってもんだろぉー? 人間の体ってのは水分量が6割近くを占めているからなー。 それほどに水ってのは大事だし、運動した熱を逃がすには水分によって作り出される汗が最重要なんだよ。 だから殆どの部員は表沙汰では決まりを守るフリをしつつも、 互いの眼を盗んでは水分を取ったりしていたらしいんだ。 例えば個人ロードワーク中に予め隠しておいた水を飲んだり、さり気なく遠出してジュースを買ったり、 はたまた田んぼの水を飲んでた奴も居るらしいってな。 だけどな、中には居るんだよ。 根っからの真面目くんで無理しちまう奴がよぅ。 その真面目くんであるAは、その日も何時もと同じように運動場のトラックを―― 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/03(金) 23:52:31.59 ID:8AofnLM30 かがみ「ちょっと待て。しれっと七不思議方向へとシフトしていないか?」 みさお「え……いやぁ……まさかねぇ……」 あやの「うふふ、みさちゃんは嘘が下手なのね」 かがみ「これだからコイツは……!」 みさお「あやのぅー」 あやの「よしよし、大丈夫大丈夫」 かがみ「はぁ……どこかのチビ助さんを思い出すわね」 みさお「むっ!」 かがみ「何よ?」 みさお「あのなー、日射病ってのは本当に怖いんだぞ? なんてったって自覚症状が出ないからさ。      ……いやさ、冷静な状態ならば容易に見抜けるんだろうけどさ、既に本人の判断力自体が鈍っちゃってるからな。      他者から見れば異常が一目瞭然でもよ、素質のあるアスリートってのは”まだイケる”なんて思いこんじまうし。      で、気が付いた時にはもう取り返しがつかない程に病状が進んじまって、      発症した瞬間に気を失い、そのままバッタリと……ってのが夏の風物詩って奴さ」 かがみ「自覚症状ねぇ……まぁ普段から気を付けておけば問題ないんでしょ?」 みさお「だから、それが分からないから怖いんだって」 かがみ「ま、注意しておくわ」 みさお「おぅおぅ、それでいーのだ」 74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/04(土) 01:45:52.54 ID:tVlg/zUS0 六時間目 みさお「暇だなー」 かがみ「だったら手を動かしなさいよ」 みさお「いやさ、美術ってのはこうやって風景を眺めつつ、ぼーっとする為にある時間だろ?」 かがみ「まあ、わかるけどさ」 あやの「わたしも何となく分かるかな、それ」 みさお「だろ? それで小話をしようと思ったんだって」 かがみ「あんたはいつだってグータラだったでしょうが」 みさお「へへっ、そりゃそーだけどさ……もう間近じゃん?」 かがみ「間近というと……アレか」 あやの「学園祭の、桜藤祭ね」 みさお「なんだかなー」 かがみ「珍しく憂鬱気だわね」 75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/04(土) 02:00:29.64 ID:tVlg/zUS0 みさお「だってさ、学園祭が終わっちまうともう二学期も終了間際って事だよなぁ?」 かがみ「そりゃそうだけど、それでもまだ一月半くらいあるでしょ」 みさお「一月半しかねぇんだぜー? それが終わると短い三学期だし」 かがみ「まあ、ねぇ……」 あやの「あらあら、みさちゃんは気が早いのね」 みさお「べっつにぃー、そんなんじゃないから」 かがみ「桜藤祭かぁ」 あやの「わたし達もクラスの皆も、お化け屋敷の準備で追われているからね」 みさお「はぁー……やだなぁ……祭りの後ってのは苦手なんだよなぁ……」 かがみ「それも何となく分かる……」 あやの「はいはい、始まってもいないのに暗くならないの」 みさお「うーっす」 かがみ「わかってるわよー」 76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/04(土) 02:14:29.71 ID:tVlg/zUS0 帰りのホームルーム 担任教師「えー……という訳で、皆さん高校生活最後の学園祭です。怪我の無きよう適当に頑張りやがってください」 かがみ「今日も準備で遅くなりそうね」 あやの「そうね、暗がりを作る為の黒カーテンに段ボールに……えーと」 みさお「あと、かがみの変装用カツラもだなー」 かがみ「こんにゃく吊るす役の奴に言われたくはないわね」 みさお「なんだとー?」 あやの「こらこら、些細な事で張り合わないの」 みさお「あやのは砂掛け婆だっけ? ハハッ、似合ってるよなー」 かがみ「なんとなく貫禄があるもんね、アハハッ」 みさお「むしろ特殊メイクいらねぇ〜みたいな?」 あやの「へぇ〜……なかなか笑えない冗談を言ってくれるのね」 かがみ「日下部、言い過ぎよ」 みさお「うわっ、寝返りやがったこいつ」 担任教師「そんじゃまー、ホームルームはこれにて終了。皆さん気張っていきまっしょい」 78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/04(土) 02:21:44.15 ID:tVlg/zUS0 放課後 かがみ「あ、ちょっと隣へ行ってくる」 みさお「まーた3B症候群かよぅ」 かがみ「妹の様子が気になってたからさ」 あやの「お姉ちゃんは大変ね」 かがみ「別に、そんなんじゃないわよ。大変なんて思った事もないしね」 みさお「おぅおぅ、妹の方が大変な思いをしてるかもしんねーぞー。兄を持つこのわたしが保障する」 あやの「それはみさちゃんが手を焼かせているだけだって、お兄さんは言ってたわよ?」 かがみ「どっちも余計なお世話ってやつよ。それじゃあね、すぐ戻るからさ」 みさお「いってらー」 あやの「いってらっしゃい」 80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/04(土) 02:35:15.05 ID:tVlg/zUS0 かがみ「やっほ」 こなた「お、本日三回目の来場だね」 かがみ「一々数えてたのかこの暇人め……ってあれ、どうしたのみゆき?」 みゆき「桐箪笥の良さも分からない、こんな世の中では……」 かがみ「んー?」 こなた「まぁまぁ、古傷を抉ってやるまいに。      支持者が自分だけだったという現実を黒板に晒された黒歴史を、未だに引き摺っておられるのさ」 みゆき「ポイズンです……」 かがみ「なんだか分からないけれど、それはそうとして、つかさは?」 こなた「黒井先生んとこ」 かがみ「あの子、朝から何やってるのよ?」 こなた「うぅー……まぁ、それは御自分の目で御確かめになったがよろしいかと」 みゆき「既に、かがみさんも当事者のようですしね」 かがみ「えっ、一体なんのこと?」 こなた「かがみんのツッコミに敵う奴が居なかったってこと」 かがみ「はぁ?」 81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/04(土) 03:02:12.07 ID:tVlg/zUS0 ななこ「せやけどなぁ、うちのクラスは占いやし、オープニングセレモニーは他で埋まっとるからなぁ」 つかさ「そこをなんとかーっ!」 ななこ「いや、センセも必死に掛け合ってはみたんやけど……なにぶん、申し込むのが遅すぎて一杯らしいんや……」 かがみ「ちょっと、何やってるの?」 つかさ「あ、お姉ちゃん! バッチリなタイミングで来てくれたんだね!」 かがみ「えっ……?」 つかさ「先生、越えられると思うんです。私と……お姉ちゃんが居ればっ!」 かがみ「え、あ……はい?」 82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/04(土) 03:03:08.18 ID:tVlg/zUS0 つかさ「ダチョウ倶楽部も、江頭も、モンスターエンジンさえも! 絶対に越えてみせます! たぶん!」 かがみ「何そのハチャメチャなラインナップ。それに絶対を即、不確かにしてどうする」 つかさ「ほらぁ見てください、お姉ちゃんはこんなにもやる気なんですよ!?」 かがみ「ちょっと待て、何の話よ?」 ななこ「しかしやな……」 つかさ「私……朝、車に轢かれそうになって思ったんです。人生は一瞬で終わる。そう、”やるなら思い立った今しかないんだ”って」 ななこ「……しゃーない、もう一回話を付けたるわ! ぶん殴ってでも通してやる!」 つかさ「ありがとうございますっ! 頑張りますから私……と、お姉ちゃんの二人で!」 かがみ「なっ!?」 つかさ「オープニングセレモニーの漫談!」 かがみ「全然聞いてないってそんな話!」 83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/04(土) 03:04:39.56 ID:tVlg/zUS0 何かありそうで何も無い。 そんな私の日常は、今日も続いていくらしい。 けれども、以前つかさが口にしていた進路のこと。 そして私が目指している将来像。 その二つは全くの別物。 ずっと一緒に居られると思っていた。 そう思い込んでいた。 でも、それは都合の良い解釈だった訳で。 多分、学園祭を終えてしまえば各々が往く路の違いが、より明確なものとなるんだろう。 だったらそれまでは…… せめて卒業までは…… ずっと一緒にいられたらいいな。 なんてね。 ちなみに、つかさは一過性であるお笑いの熱から三日で覚めたようで、 今は私の隣でセレモニーヘと向け、うんうんと唸りながらネタを考えている最中だったり。 まったく。 私が居ないと駄目なんだから。 でも、一緒に居ようね。 可愛い可愛い私の妹。 84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/04(土) 03:05:39.68 ID:tVlg/zUS0                − 完 − 85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/04(土) 03:10:48.11 ID:tVlg/zUS0 これを読むのに掛けた期待と時間はきっと、掛替えのない程に無駄なモノとなったと思う けれどもそういうものも大事だと思うんだ うん、イラっと来たならば遠慮なく叩いてくれて構わない 正直、引っ張り過ぎたと反省はしている が、後悔はしていない ここまで付き合わせてしまった方々に精一杯の謝意と感謝を込めておやすみなさい